JP2006290688A - 透光性セラミックス - Google Patents

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Abstract

【課題】高い透過率を示し、かつ機械的強度に優れたスピネル型結晶構造の透光性マグネシウム・アルミニウム複合酸化物セラミックスを提供する。
【解決手段】スピネル型結晶構造のマグネシウム・アルミニウム複合酸化物とホウ素とを含んでなる焼結体であって、ホウ素を酸化ホウ素換算で0.001〜2.0wt%含有し、燒結体の平均結晶粒径が0.3〜5μmであり、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が20%以上を有する透光性セラミックスであり、このようなセラミックスは、ホウ素化合物とマグネシウム・アルミニウム複合酸化物とを添加・混合して、成形・燒結した相対密度95%以上を有する平均結晶粒径0.3〜5μmの燒結体を、熱間静水圧プレス(HIP)処理することにより得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は高強度かつ高透光性を兼備したスピネル型結晶構造のマグネシウム・アルミニウム複合酸化物(以下、スピネルと称することがある)セラミックスに関する。
透光性セラミックスに関して、従来からいくつかの報告がある。例えば、非特許文献1にはマグネシウム・アルミニウム共沈水酸化物を焼成した粉末に酸化カルシウムを添加し、1800℃以上の高温で燒結することにより透光性燒結体を作成する方法が示されている。特許文献1にはハイドロタルサイト様化合物を含むマグネシウム・アルミニウム共沈物の焼成粉末を1700℃の高温で燒結することにより透光性燒結体を作成する方法が示されている。また、非特許文献2にはマグネシアとアルミナの混合粉末をホットプレスし、圧力80MPa、1400℃で透光性燒結体を得る方法が記載されている。
特開2002−154870号公報 R. J. Bratton, J. Am. Ceram. Soc., vol.57, No.7, 283−86(1974) 浜野建也、神崎修三、窯業協会誌、85[5]225−30(1977)
非特許文献1および特許文献1に示される透光性スピネルセラミックスは1700℃以上の高温で燒結されるため、結晶粒径が10μm以上に肥大化しており、強度の向上をより図る必要があった。非特許文献2に示される透光性セラミックスは特殊高圧ホットプレスという装置が必要であり、工業的に適用することが困難であり、また複雑な形状のものを成形しずらい面があった。
これに対して、本発明は結晶粒径が微細であり、それ故高強度が期待でき、またいかなる複雑形状にも対応可能である透光性セラミックスを提供するためになされた。
本発明者はスピネル粉末の燒結において微量のほう素化合物の添加が燒結温度を著しく低下させる燒結促進効果を有することを見出し、さらにこの様な低温で焼結した結晶粒径の小さい燒結体を高温高圧処理すれば、空孔など欠陥の消滅が顕著に促進され、透光性が発現されることを見出し、高強度と高透光性を同時に達成することが可能となり、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の透光性セラミックスは、スピネル型結晶構造のマグネシウム・アルミニウム複合酸化物とホウ素とを含有する燒結体であって、ホウ素を酸化ホウ素(B)換算で0.001〜2.0wt%含有し、燒結体の平均結晶粒径が0.3〜5μmであり、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が20%以上を有するものである。この中には、平均曲げ強度が350MPa以上を有し、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が40%以上を有する高強度と高透過率を兼備したセラミックスが含まれる。
本発明の透光性セラミックスの製造方法は、ホウ酸または酸化ホウ素などのホウ素化合物とスピネル型結晶構造のマグネシウム・アルミニウム複合酸化物とを、ホウ素含有量としてこれらの合計量に対して酸化ホウ素(B)換算で0.001〜2.0wt%となるように添加・混合して、成形し、燒結した相対密度95%以上を有する平均結晶粒径0.3〜5μmの燒結体を、熱間静水圧プレス(HIP)処理することを特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透光性セラミックスは、ホウ素を酸化ホウ素(B)換算で0.001〜2.0wt%含有する。ホウ素含量が0.001wt%未満となった場合、或いは2.0wt%を超えた場合、どちらにおいても透光性を示すセラミックスを得ることは困難となる。これは、ホウ素含量が0.001wt%未満ではホウ素の燒結促進効果が十分ではなく、また、2.0wt%を越えた場合にはホウ素が燒結体粒界にスピネル相以外の結晶相を生成するなど悪影響をもたらすためと推定される。高い光透過率を得るためにより好適なホウ素含量は0.03〜0.30wt%である。
本発明の透光性セラミックスは、平均結晶粒径が0.3〜5μmの範囲にある。平均結晶粒径が0.3μm未満の緻密な燒結体を作成することは事実上困難であり、また、5μmを越える燒結体は強度の低下をもたらすので適当でない。高強度と高い光透過率を両立させるためにより好適な平均結晶粒径は0.5〜2μmの範囲である。燒結体の結晶粒径はホウ素含量と燒結温度に強く依存し、例えば、ホウ素を含まない場合、燒結温度は約1650℃において平均結晶粒径が5μmを越えるが、ホウ素含量0.015wt%の場合、その温度は約1480℃まで低下すると共に、平均結晶粒径は1μmとなる。
本発明の透光性セラミックスは、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が20%以上を有する。さらに、平均結晶粒径を0.5〜2μmに調整した好適なサンプルでは直線透過率40%以上を示し、曲げ強度は350MPa以上を示す。通常のスピネルセラミックスは結晶粒径10μmを越え、その曲げ強度は300MPa程度であるので、粒径を0.5〜2μmと小さくすることによって大幅な強度向上が得られたものと思われる。
続いて、本発明の透光性セラミックスの製造方法を詳細に説明する。
原料となるマグネシウム・アルミニウム複合酸化物スピネルとしては、スピネル型結晶相だけからなる高純度微粉末が適している。一般にこのような粉末は化学合成法で製造され、その製法例としては、例えば、特開2002−154870号公報に記載されている易焼結性スピネル粉末の製造法や特開平8−268752号公報に記載される方法が例示できる。粉末の比表面積は10〜20m/gのものが適しており、平均結晶粒径は0.05〜0.2μmが好ましい。
ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、酸化ホウ素、ボロンアルコキシド等を例示することができる。ホウ素化合物を含有させる方法としては、スピネルの合成過程で行ってもよいし、或いはあらかじめ生成したスピネルにホウ素化合物を添加混合する方法によってもよい。ホウ酸等のホウ素化合物を溶解した水、エタノール等の溶媒とスピネルとを混合し、溶媒を蒸発させる方法は簡便な方法の一つとして挙げられる。
ホウ素の添加量としては、スピネルとホウ素化合物との合計重量に対して、酸化ホウ素(B)換算で、0.001〜2.0wt%、好ましくは0.03〜0.30wt%添加すればよい。
これらを混合した粉末の成形は通常のセラミックス成形法、例えば金型プレス、冷間静水圧プレス、スリップキャスティング、インジェクションモールディング等で行うことができる。
続いて、上述の成形体を燒結して相対密度95%以上を有する平均結晶粒径0.3〜5μmの燒結体を作成する。スピネル粉末は難焼結性の場合があり、通常、結晶粒子成長を抑制して平均結晶粒径を5μm以下にして相対密度95%以上まで緻密化させることは難しく、一方、粒径2μm以下にまで抑制して緻密化することは、非特許文献2のような特殊装置を用いない限りさらに困難である。結晶粒子成長を抑制するためには緻密化温度を低下させなければならない。
本発明者はこの問題をホウ素化合物の添加により解決した。スピネルへのホウ素化合物の添加は燒結を促進し、緻密化温度を低下させる。例えば、相対密度を95%以上に緻密化させる温度はホウ素化合物無添加粉末を用いた場合、約1550℃であるが、ホウ素を0.05wt%(B換算)添加した粉末では約1370℃、ホウ素を0.15wt%(B換算)添加した粉末では約1270℃、ホウ素を0.5wt%(B換算)添加した粉末では約1250℃となり、著しく緻密化温度を低下させることができる。その結果、相対密度95%以上を有する平均結晶粒径0.3〜5μmの燒結体が容易に作成できるようになった。
燒結の雰囲気として真空、大気、酸素等が適用できるが、透光性を得るための最適雰囲気は真空である。
次いで、得られた燒結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理する。この処理によって、燒結体は相対密度ほぼ100%まで緻密化し、透光性を付与することができる。処理ガスはアルゴン、窒素、酸素等いずれのガスを用いることも可能であるが、通常よく用いられるアルゴンでよく、ガス圧力は100〜200MPaでよい。処理温度は燒結体の燒結温度より低い温度が好ましく、1200〜1400℃、好ましくは1250〜1350℃の範囲が適している。
HIP処理前の燒結体の相対密度が95%以上でない場合、HIP処理中に処理ガスが燒結体内部に侵入し緻密化が進まないことがある。また、HIP処理前の燒結体の平均結晶粒径が5μmを超える場合、相対密度はほぼ100%まで緻密化するが、透光性を示すものは得られない。透光性を得るためには、HIP処理前の燒結体の平均結晶粒径は極めて重要であり、0.5〜2μmが好適である。これはこのように結晶粒を小さくすることにより、結晶粒組織の塑性流動性が増すため空孔の消滅が促進されるためと推定される。
本発明において、平均結晶粒径は焼結体の研磨エッチング面の走査電子顕微鏡観察から測定される値であり、具体的にはJ.Am.Ceram.Soc.,52[8]443−6(1969)に記載されている方法に従い、(1)式により求めるものとする。
D=1.56L ・・・(1)
D:平均結晶粒径(μm) L:任意の直線を横切る粒子の平均長さ(μm)
Lの値は100本以上の実測長さの平均値とした。
曲げ強度はJIS R 1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に基づいて測定された10本の平均値である。
本発明の透光性セラミックスは高い光透過率と高強度を兼備している。さらに、通常のセラミックス成形法が適用できるため複雑形状物品も製造可能である。透光性セラミックスとして一般的である透光性アルミナと比較した場合、光透過率において格段に優れている。従って透光性アルミナを代替する用途にさらに性能的に優れたものとして利用できる。例えば、歯列矯正セラミックスブラケット、セラミックスランプ管、耐熱・耐プラズマ透明材料等の工業用途に広く利用することが可能である。
以下、本発明を実験例により具体的に説明する。
実験例1〜2
大明化学工業製の純度99.9%、比表面積12m/gの高純度スピネル(MgAl)微粉末(平均結晶粒径:0.14μm)にホウ酸(HBO)を、ホウ素量がその合計重量に対してB換算で0.15wt%になるよう添加し、エタノール溶媒に入れ、エバポレーターで撹拌しながら乾燥した。得られた粉末を金型プレスした後、ラバープレス(圧力200MPa)で成形した。成形体を電気炉に入れ、真空下で50℃/hで昇温し所定温度(1250℃、1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、1500℃および1550℃)で2時間保持し燒結した。
ホウ酸無添加の上記スピネル粉末についても同様の操作で燒結体を製造した(実験例2)。燒結体の密度、平均結晶粒径を測定し、表1の結果を得た。ホウ素添加により燒結が促進されていることが明らかである。
次いで、1250℃、1300℃、1350℃および1400℃の各燒結体、並びにホウ酸無添加の1550℃燒結体をHIP処理した。処理条件はアルゴンガス媒体圧力150MPa、1300℃、1時間保持であった。
ホウ酸を添加したHIP処理燒結体は透光性を示したが、ホウ酸無添加のHIP処理燒結体は白色不透明であった。HIP処理後の密度を測定した結果、ホウ酸添加試料は3.58g/cmを示し、相対密度は100%であったが、ホウ酸無添加試料は3.55g/cmを示し、相対密度は99.1%であった。
HIP処理後の上記各燒結温度における燒結体の平均結晶粒径、波長550nmにおける可視光透過率、曲げ強度の測定結果を実験例3〜7として表2に示す。
Figure 2006290688
Figure 2006290688
実験例8〜15
特開2002−154870号公報の実施例1の記載に従って調製した、純度99.9%、比表面積15m/gの高純度スピネル(MgAl)微粉末(平均結晶粒径:0.12μm)に、ホウ酸(HBO)をホウ素量がB換算で0.02wt%(実験例8)、0.05wt%(実験例9)、0.15wt%(実験例10)および0.50wt%(実験例11)となるよう添加した4種類の粉末を調製した。
これらの試料の各々をエタノール溶媒に入れ、エバポレーターで撹拌しながら乾燥し、得られた粉末を金型プレスした後、ラバープレス(圧力200MPa)で成形した。成形体を電気炉に入れ、真空下で50℃/hで昇温し、所定温度(1275℃、1300℃、1375℃および1400℃)で2時間保持し燒結した。これらの燒結体の密度、平均結晶粒径を測定し、表3の結果を得た。ホウ素添加量が増加するほど燒結温度が低下していることがわかる。
得られた燒結体の中で、(1)ホウ素添加量:0.02wt%・1400℃燒結、(2)ホウ素添加量:0.05wt%・1375℃燒結、(3)ホウ素添加量:0.15wt%・1300℃燒結および(4)ホウ素添加量:0.50wt%・1275℃燒結の4種類をHIP処理した。処理条件はアルゴンガス媒体圧力100MPa、1300℃、1時間保持であった。いずれの試料も透光性を示し、密度は3.58g/cm、相対密度100%であった。
HIP処理後の上記各燒結温度における燒結体の平均結晶粒径、波長550nmにおける可視光透過率、曲げ強度の測定結果を実験例12〜15として表4に示す。
なお、燒結体の化学分析によりホウ素含量(B換算)を求めた結果、ホウ素添加量:0.02wt%の場合には0.015wt%、ホウ素添加量:0.05wt%の場合には0.04wt%、ホウ素添加量:0.15wt%の場合には0.10wt%、ホウ素添加量:0.5wt%の場合には0.4wt%であり、添加量の70〜80%のホウ素が残存していることがわかった。
Figure 2006290688
Figure 2006290688
実験例16
実験例13で得られた、ホウ素添加量:0.05wt%(B換算)・1375℃燒結体をHIP処理した試料の可視光透過率曲線を図1に、実験例14で得られた、ホウ素添加量:0.15wt%(B換算)・1300℃燒結体をHIP処理した試料の結晶粒径写真を図2に示す。
本発明の透光性セラミックスの可視光直線透過率曲線の1例を示す図である。試料厚み:1mm。 本発明の透光性セラミックス表面の結晶粒径の一例を示す図である。

Claims (3)

  1. スピネル型結晶構造のマグネシウム・アルミニウム複合酸化物(一般式MgAl)とホウ素とを含んでなる焼結体であって、ホウ素を酸化ホウ素換算で0.001〜2.0wt%含有し、燒結体の平均結晶粒径が0.3〜5μmであり、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が20%以上を有する透光性セラミックス。
  2. 平均曲げ強度が350MPa以上であり、燒結体厚み1mmのとき波長550nmの可視光の直線透過率が40%以上を有する請求項1記載の透光性セラミックス。
  3. ホウ素化合物とマグネシウム・アルミニウム複合酸化物とを、ホウ素量がこれらの合計重量に対して酸化ホウ素(B)換算で0.001〜2.0wt%となるように添加・混合して、成形し、燒結した相対密度95%以上を有する平均結晶粒径0.3〜5μmの燒結体を、熱間静水圧プレス(HIP)処理することを特徴とする透光性セラミックスの製造方法。
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