JPH0699602B2

JPH0699602B2 - 農業用フイルム

Info

Publication number: JPH0699602B2
Application number: JP62007492A
Authority: JP
Inventors: 邦彦角田; 純三辻本
Original assignee: Mikado Chemical MFG Co
Current assignee: Mikado Chemical MFG Co
Priority date: 1987-01-16
Filing date: 1987-01-16
Publication date: 1994-12-07
Anticipated expiration: 2009-12-07
Also published as: JPS63175072A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は農業用フィルムに関する。

〔従来の技術〕

熱可塑性樹脂より成る農業用フィルムに要求される，最
も重要な性質は耐久性である。フィルムは空気中の酸素
の存在下太陽光中の紫外線により劣化し強伸度が低下し
破損する。これの改良のため各種の耐候性安定剤（劣化
防止剤）が開発され、フィルム中に添加利用されてい
る。これを大別すると以下の２種類がある。

紫外線吸収剤：紫外線を吸収しカットすることにより
劣化の開始を抑え耐候性を改良する。農業用フィルムは
薄いため（約20〜150μ程度が多い紫外光線を十分にカ
ット除去することが難しく改良効果が低い。もしも十分
なカットレベルまで吸収剤を添加するとフィルム表面へ
のブリード白化とコストアップが問題である。

（例）チバ・ガイギー社：チヌビン326,327 アメリカン・サイアナミッド社：サイアソーブUV−531
等光安定剤：紫外光線により開発した劣化反応を複雑な
反応機構で停止することにより耐候性を改良する。薄い
農業用フィルムには有効であり、改良効果が大きい。添
加量は少なく、コストも安く耐候性改良剤の主流になっ
ている。

光安定剤としては、従来はニッケル系化合物が中心
（例；チバ・ガイギー社：イルガスタブ2002,アメリカ
ン・サイアナミッド社：サイアソーブUV-1084等）であ
ったが、近年多くのヒンダードアミン系化合物が光安定
剤として開発され、これらはその優れた性能から少量添
加でよいため、現在の耐候性安定剤の主流となってい
る。

本発明で特に適するヒンダードアミン系安定剤とは、分
子量が250以上の４−位に置換基を有する2,2,6,6,−テ
トラアルキルピペリジン誘導体であり、その４−位の置
換基としては、例えばカルボン酸残基，アルコキシ基，
アリロキシ基，その他種々の基が考えられる。

実際に使用されている化合物の代表例は下記の通りであ
る。

・三共株式会社〔サノール LS 770〕・チバガイキー社〔チヌビン 622〕・アデカアーガス社〔マークLA-57〕・モンテフロス社〔スピヌベクス A36〕・アメリカン・サイアナミッド社〔サイアソーブ UV-33
46〕この他にも、耐候性改良効果を持ち，ヒンダードアミン
系化合物の基本構造を有する化合物であれば、この代表
例に限らず使用可能である。

このヒンダードアミン系安定剤を添加したフィルムを各
種施設栽培に使用すると（ハウス，トンネル，マルチ等
の栽培）通常の条件では本来の耐候性能を発揮する。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかし、このヒンダードアミン系光安定剤を用いた農業
用フィルムはしばしば極端な性能低下を示す時がある。
原因は作物栽培時に使用される各種の農薬が関係してい
ることが判明した。

ヒンダードアミン系安定剤はアミンの一種であり、本
来、酸性化合物とは強く反応する。一度反応し変質して
しまうと安定剤としての性能は大幅に変化・低下する。

一方、一般に使用される農薬（殺虫剤，殺菌剤，除草
剤，殺線虫剤等）は、有機イオウ系，有機塩素系，有機
リン系等の化合物が多い。例えば、有機イオウ系：マンネブ，チウラム，ジネブ有機塩素系:PCP,TPN（ダコニール）,PCNB（ブラシサイ
ド），クロルピクリン有機リン系：ダイアジノン,EPN,マラリン,MEP（フェニ
トロチオン）〔種類名で示す。（）内は一般名）〕等、多数がある。

これらは、もともと酸性を示すものであり、さらにこれ
らが分解消失していく段階で硫酸，塩酸，リン酸系統等
の強酸性物質に変質していくことが類推される。そし
て、これら農薬及び多くの酸性分解生成物は低分子物質
であり、農業用フラスチックフィルム中に侵入透過し得
る。これがヒンダードアミン系安定剤と反応し営農を低
下させると考えられる。

この作用即ちフィルムの大幅な品質低下は常に発生する
ものではない。一般には数種の農薬が複合使用されてお
りそれらの複雑な複合反応によったり、またその時の気
象条件，土壌条件等が重なったりして強く作用する場合
に発生する。

本発明者はこれの改良を種々研究し、酸性物質を中和す
るアルカリ性物質や各種の吸着剤等を種々試験した結
果、ハイドロタルサイト類化合物が総合的に有利なこと
が判明し、本発明を完成した。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明はポリエチレン，又はエチレン−酢酸ビニル共重
合体，又は、ポリ塩化ビニルよりなる熱可塑性樹脂に光
安定剤であるヒンダードアミン系化合物とハイドロタル
サイト類化合物を配合し農薬耐性を付与したことを特徴
とする農業用フィルムである。

さらに、上記ヒンダードアミン系化合物の濃度が約0.05
〜1.0重量％、上記ハイドロタルサイト類化合物の濃度
が約0.1〜2.5重量％，好ましくは約0.1〜1.0重量％であ
る。

さらにまた、上記ハイドロタルサイト類化合物がフィル
ムの片側又は両側に濃縮配合された多層構造フィルムで
も有効である。

〔作用〕

ポリエチレン，又はエチレン−酢酸ビニル共重合体，又
は、ポリ塩化ビニルよりなる熱可塑性樹脂は光安定剤で
あるヒンダードアミン系化合物によって耐候性が増加す
ると共にハイドロタルサイト類化合物によって農薬より
保護され、耐候性が持続するものである。

〔実施例〕

本発明において用いるハイドロタルサイト類化合物と
は、下記に例示する構造物を示す。

ハイドロタルク石群：一般式 Mg₆R₂（OH）₁₆CO₃・4H₂O（Ｒ＝Al,Cr,Fe）で示
される含水炭酸塩鉱物（ソ連のウラル地方、ノルウェーのスナルム地方等にわ
ずかに産する天然鉱物）以下に記載の合成ハイドロタルサイト類： M²⁺:Mg,Ca,Znからえらばれた二価金属イオン An^-:n価のアニオン、例えば Cl^-,Br^-,I^-,No₃ ^-,ClO₄ ^-,S▲Ｏ^2- ₄▼Ｃ▲Ｏ^2- ₃▼,Si▲Ｏ
^2- ₃▼,HP▲Ｏ^2- ₄▼,P▲Ｏ^2- ₄▼,Fl（CN▲）^4- ₄▼,CH₃CO
O^-, これら微粉末の望ましい形状は、農薬害を防止するとい
う性能を十分発揮させるには同一添加量なら表面積の大
きい方が優れており、二次凝集が問題にならない範囲で
粒径はできるだけ小さく、比表面積はできるだけ大きい
方がよい。そして、フィルム外観，強伸度，成形性等に
悪影響を及ぼさない範囲であればよく、限定されるもの
ではない。但し、粒径はフィルム透明性，外観の点より
約５μｍ以下が望ましい。

ハイドロタルサイト類化合物の添加量（以下Ｂ）はフィ
ルムに含有されているヒンダードアミン系安定剤の濃度
（以下Ａ）及び使用条件（農薬種類，量，気象条件，土
壌条件等）によって定まる。その量は各種の農薬でテス
トした結果、多くの使用条件下でヒンダードアミン系安
定剤の種類，濃度で決まる耐候性能（耐候性ライフ）を
十分発揮させうる範囲であればよい。

さらに具体的にはヒンダードアミン系安定剤は農業フィ
ルム用途ではＡ＝約0.05〜1.0重量％，さらにコスト，
性能を考慮すると、Ａ＝約0.1〜0.5重量％の範囲が好ま
しい。この場合、ハイドロタルサイト類化合物はＢ＝約
0.1〜2.5重量％の範囲で十分に効果を発揮する。

勿論、2.5重量％以上でも効果は完全に発揮されるが、
その他のフィルム品質及びコスト等をも考慮すると、Ｂ
＝約0.1〜1.0重量％の範囲が好ましい。ハイドロタルサ
イト類化合物ｂの添加方法は第１図示のようにフィルム
１中に均一にヒンダードアミン系安定剤ａと分散混合し
て使用するのが一般的である。他の方式はハイドロタル
サイト類化合物ｂを第２図（イ）（ロ）示のようにフィ
ルムの片側、あるいは第３図示のように両側の濃縮層1a
にヒンダードアミン系安定剤等と共に濃縮し、分散混合
して使用可能である。この方が、外部からの農薬による
作用をより効果的に防止でき、さらに全添加量が少なく
ても有効である。

使用可能な熱可塑性樹脂は現在、一般に農業用フィルム
として多く使用されているポリ塩化ビニル、低密度ポリ
エチレンを主とするポリエチレン，エチレン酢酸ビニル
共重合体である。そしてこれらは農薬等の低分子物によ
る外部からの侵入害を受け易く、本発明に示す改良効果
を最も有効に享受できる。

フィルムの使用法及び厚みは下表の通りである。

実施例及び比較例で本発明を詳述する。

低密度ポリエチレン（三菱油化株式会社，ユカロン
AF30）及びエチレン・酢酸ビニル共重合体（三菱油化株
式会社，ユカロン−エバEVA41H），をベースに表に示す
ようにヒンダードアミン系安定剤、ハイドロタルサイト
類化合物を配合してインフレーション成形法により0.05
mm厚の単層及び厚み比1/2の２層のフィルム即ち第２図
（イ）の構造で、全体厚み層50μで濃縮層1aの厚み16.7
μのフィルムを得た。

軟質ポリ塩化ビニルフィルム（PVC）はをベースにして表に示す配合のフィルム（厚み0.05mm）
を通常のカレンダー成形により得た。

得たフィルムの耐候性テストはフィルムへの影響が大き
い代表的な３種の農薬を通常に近い使用条件でフィルム
に散布，又は密閉ミニハウス内で土壌処理した。フィル
ムは第４図示の金属パイプ３製ミニハウス２に密閉張り
とした。

1.クロルピクリン：土壌処理 40cc/回×３回（晴天日）７月フィルム表面散布、市販原体1g水1000ccの割合で希釈、
霧吹きで乾かしながら均一散布（溶液100cc/各サンプ
ル）８回／月（晴天日）７月８月の２カ月昭和59年５月24日にフィルムを張り、フィルムが劣化破
損するまでのライフ（日）を測定した。（場所：市原
市，みかど化工株式会社試験圃場）その結果を次の表に
示す。

〔発明の効果〕以上のように本発明によれば農業用フィルムの寿命を農
薬の使用条件下でも大幅に延長することができるもので
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例のフィルムの説明図、第２図
（イ）（ロ）は本発明の第２実施例の説明図、第３図は
本発明の第３実施例の説明図である。第４図は本発明の
実施例で用いたミニハウスの寸法説明図である。ａ……ヒンダードアミン系化合物、ｂ……ハイドロタル
サイト類化合物。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ポリエチレン，又はエチレン−酢酸ビニル
共重合体，又は、ポリ塩化ビニルよりなる熱可塑性樹脂
に光安定剤であるヒンダードアミン系化合物とハイドロ
タルサイト類化合物を配合し農薬耐性を付与したことを
特徴とする農業用フィルム。
【請求項２】上記ヒンダードアミン系化合物の濃度が約
0.05〜1.0重量％、上記ハイドロタルサイト類化合物の
濃度が約0.1〜2.5重量％，好ましくは約0.1〜1.0重量％
である特許請求の範囲第１項記載の農業用フィルム。
【請求項３】上記ハイドロタルサイト類化合物がフィル
ムの片側又は両側に濃縮配合された多層構造となってい
ることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の農業用
フィルム。