JPH05304927A - 幼児及び成人の栄養のための脂肪混合物 - Google Patents

幼児及び成人の栄養のための脂肪混合物

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 幼児及び成人の栄養補給のための脂肪混合物
を提供する。 【構成】 家畜の大脳からの燐脂質、少なくとも１種の
植物油、及び／又は少なくとも１種の動物性脂肪、及び
／又は少なくとも１種の魚油、及び／又は中鎖トリグリ
セリドの混合物であって、オレイン酸／リノール酸／α
−リノレン酸の比率、アラキドン酸／ドコサヘキサエン
酸の比率及び燐脂質含量が母乳及び地中海式食餌のもの
と同様であるような混合物から構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の分野】本発明は、単離した形態で又は他の栄養
製品と組み合わせて用いることができる可食性脂肪混合
物に関する。かかる栄養製品は、幼児用の調合物又は健
康及び病気の両方の成人の栄養のための食餌であってよ
い。
【０００２】
【発明の背景】現在、多不飽和脂肪酸（ＰＵＦＡと称す
る）の幾つかの群が存在することは知られている。人間
の生命に必須のものと見なされているｎ６シリーズは、
リノール酸（１８：２ｎ６）から生じる。人間の早産児
に現在必須と見なされているｎ３シリーズは、α−リノ
レン酸（１８：３ｎ３）から生じる。ｎ９シリーズはオ
レイン酸（１８：１ｎ９）から、そしてｎ７シリーズは
パルミトレイン酸（１６：１ｎ７）から生じる。これら
の２つの群は、生体内で合成することができる。
【０００３】長鎖ＰＵＦＡ（１８個よりも多い炭素原
子）は、それらの前駆物質から連続的な脱飽和及び伸長
を経て合成される。該群の各々には同様な鎖長及び不飽
和度を持つ脂肪酸が存在するけれども、しかしながら、
１つの群の物質のどれも他の群の対応する物質と全く同
じものはない。というのは、各群は、独特なものであ
り、異なる前駆物質から物質代謝で誘導され、相互転化
させることができず、しかも異なる官能基を有するから
である。
【０００４】加えて、酵素６−デサチュラーゼ（これ
は、α−リノレン酸に対する強い親和性を有する）に対
してα−リノレン酸（１８：３ｎ３）、リノール酸（１
８：２ｎ６）及びオレイン酸（１８：１ｎ９）の間で競
争反応が存在することが知られている。研究によれば、
リノール酸／α−リノレン酸の比率は、ｎ６及びｎ３シ
リーズの代謝物質の膜組成に影響を及ぼすことが証明さ
れている。また、食餌中のリノール酸／α−リノレン酸
比の高い値は、α−リノレン酸のその長鎖代謝物質への
伸長及び脱飽和を抑制し、且つ身体の組織におけるｎ６
シリーズの代謝物質の望ましくない蓄積を増加する可能
性があることも示されている。更に、５−脱飽和は過剰
のリノール酸及びα−リノレン酸によって、また６−脱
飽和はｎ６及びｎ３の高級ホモローグの存在によって抑
制されることも証明されている。加えて、エイコサペン
タエン酸（２０：５ｎ３）及びドコサヘキサエン酸（２
２：６ｎ３）は、シリーズ２のプロスタグランジン、ト
ロンボキサン及びロイコトリエンの生成に影響を及ぼす
アラキドン酸（２２：６ｎ３）に対するシクロオキシゲ
ナーゼ及びリポオキシゲナーゼの競争的抑制剤である。
【０００５】動物性の膜に見い出される主な脂質はコレ
ステロール及び燐脂質であり、そして両成分間の比率は
膜の流動性及び機能性に対する決定要因である。膜の流
動性に対する燐脂質の寄与は、存在する異なる燐脂質と
アシル基の性状との間のバランスに依存する。
【０００６】ｎ６及びｎ３シリーズの脂肪酸間の食餌バ
ランスは、膜中の脂肪酸の組成に対する重要な要因であ
る。加えて、オレイン酸の摂取は、長鎖ＰＵＦＡにおけ
るリノール酸及びα−リノレン酸の転化、それ故に、膜
の燐脂質の組成に一部分影響を及ぼす。
【０００７】膜特に大脳の灰白質及び網膜におけるドコ
サヘキサエン酸（２２：６ｎ３）の蓄積は、食餌中のリ
ノール酸／α−リノレン酸比の増大によって有害になる
程に減少され得る。例えば、ベニバナ油及びヒマワリ油
並びに高い１８：２ｎ６／１８：３ｎ３比を有する他の
脂肪は、網膜及び大脳において１８：２ｎ２（リノール
酸）から生じる２２：５ｎ６のレベルを高め、そして１
８：３ｎ３（α−リノレン酸）から合成される２２：６
ｎ３（ドコサヘキサエン酸）の含量を制限する。加え
て、アマニ油又は大豆油を基にした食餌（低い１８：２
ｎ２／１８：３ｎ３比を有する）は、燐脂質中の２０：
５ｎ３（エイコサペンタエン酸）の含量を増大するがし
かし２２：６ｎ３（ドコサヘキサエン酸）の含量を増大
しない。これは、人間には低レベルの４−デサチュラー
ゼ活性が存在することを示唆している。
【０００８】現在市販されている成人及び幼児の栄養の
ための人工調合物は、それらの脂肪酸組成における相対
的に低いオレイン酸レベル及び高いリノール酸レベルに
よって通常特徴づけられている。それらの大部分は、α
−リノレン酸を含有せず、そして長鎖ＰＵＦＡ（ｎ５及
びｎ３シリーズの両方）特に２０：４ｎ６（アラキドン
酸）及び２２：６ｎ３（ドコサヘキサエン酸）も含有し
ない。
【０００９】例えば、英国特許第２０６７５８７Ｂ号に
は、１０〜１５％のラウリン酸（ココヤシ油、ババスー
ヤシ油、パーム核油）、２０〜５０％のパーム油、１０
〜２５％のオレイン酸（オリーブ油）及び０〜２０％の
リノール酸（トウモロコシ油、大豆油、ヒマワリ油、ベ
ニバナ油）よりなる幼児栄養製品用の脂肪混合物が開示
されている。
【００１０】この幼児栄養製品用の脂肪混合物の例に関
連する主な問題は、（ａ）α−リノレン酸（１８：３ｎ
３）の含量が低く、実際にその存在が特定されていない
こと（その結果、オレイン酸、リノール酸及びα−リノ
レン酸の間に不適当な比率が存在する）、（ｂ）ラウリ
ン酸（１２：０）の含量が高いこと（アテローム発生に
対する感受性を増大する）、（ｃ）パルミチン酸（１
６：０）のレベルが高いこと（コロット発生の可能性を
増大し、かくして脂肪の吸収を減少する）、（ｄ）長鎖
ＰＵＦＡが存在しないこと、である。
【００１１】また、ヨーロッパ特許第１２９９９０号に
は、３０％のパーム油、２０％のオレイン酸（オリーブ
油及びオレイネート）、２７％のラウリン酸、２２％の
リノール酸（大豆油）及び１％のレシチンの組成を有す
る幼児栄養製品用の脂肪混合物が開示されている。オレ
イン酸、リノール酸及びα−リノレン酸の間の適切な比
率の利益については記載されておらず、そして高レベル
のラウリン酸（１２．７％）、リノール酸（１６〜１９
％）及びα−リノレン酸（２．４％）が提案されてい
る。開示されている脂肪混合物は、長鎖ＰＵＦＡを含有
しない。
【００１２】長鎖ＰＵＦＡの源に関連して、２種の生物
源が今日まで使用されてきた。（１）魚：一般には高い
脂肪含量のために青い色の魚。魚油の脂肪酸組成は、飽
和脂肪酸及びｎ６シリーズの長鎖ＰＵＦＡの低レベルに
よって特徴づけられる。他方、魚油は、ｎ３シリーズの
長鎖ＰＵＦＡ特に２０：５ｎ３（エイコサペンタエン
酸）及び２２：６ｎ３（ドコサヘキサエン酸）の高レベ
ルを示す。しかしながら、ＰＵＦＡの源として魚油を排
他的に使用すると、ｎ３及びｎ６シリーズのＰＵＦＡ間
の比率におけるバランスの欠如から生じる幾つかの問題
が起こる。この源ではｎ３及びｎ６シリーズの長鎖ＰＵ
ＦＡ間の比率は極めて高く、これによってアラキドン酸
及びドコサヘキサエン酸間の比率（２０：４ｎ６／２
２：６ｎ３）において極めて低い値がもたらされ、これ
は一般的な食餌では勧められない。加えて、たいていの
種類の魚は、２０：５ｎ３（エイコサペンタエン酸）の
高含量及び２２：６ｎ３（ドコサヘキサエン酸）の低含
量を有する。これは、２０：５ｎ３／２２：６ｎ３の比
率（例えば、母乳では約１／２〜３、魚油では２〜３／
１である）を変更する。 （２）卵：この化学的組成は、約１０％の脂肪レベル
（この大部分は卵黄から生じる）によって特徴づけられ
る。卵の脂肪酸組成では、飽和脂肪酸の高レベル（約３
６〜４０％）、α−リノレン酸（１８：３ｎ３）の不在
並びに存在するｎ６及びｎ３シリーズの長鎖ＰＵＦＡの
減少が著しい。長鎖ＰＵＦＡの源として卵を使用するに
際しての主な問題は、そのコレステロール含量が５００
ｍｇ／１００ｇと高く、しかして成人用の食餌の調合に
は不適当であるということである。加えて、この源にお
ける長鎖ＰＵＦＡの低含量によって、人工調合物の全脂
肪において卵脂肪の高い百分率を使用することが必要に
なり、かくしてコストが極めて高くなる。
【００１３】その上、卵から得たＰＵＦＡを含有する幼
児用調合物（食餌Ｉ）、ＰＵＦＡを含有しない幼児用調
合物（食餌II）及び母乳（食餌III ）を２１日間与えた
子供の長鎖ＰＵＦＡの血漿含量の百分率に及ぼす影響が
記載されている。得られるＰＵＦＡの血漿百分率は、特
にアラキドン酸及びドコサヘキサエン酸に関して次の表
に記載されるものである。
【００１４】 アラキドン酸 ドコサヘキサエン酸 （２０：４ｎ６） （２２：６ｎ３） 食餌III １．２０ ０．６４ 食餌I ０．９０ ０．４１ 食餌II ０．４９ ０．２６ 上記の表から、少なくともこれらの２種の脂肪酸につい
て食餌I では血漿百分率が向上するけれども、その値は
母乳におけるものよりもはるかに低いことを認めること
ができる。
【００１５】米国特許第４，６７０，２８５号には、卵
黄の脂質を基材（７５〜９５％）としヤシ油及び大豆油
を含有しそして魚油の添加の可能性を示唆する幼児の栄
養のための脂肪混合物が記載されている。この脂肪混合
物の使用は、いくつかの問題を提起する。コレステロー
ル含量が極めて高く、しかして混合物は成人の栄養製品
に対して不適当になる。加えて、卵の脂質（これは混合
物におけるこれらの酸のキャリヤーである）には長鎖Ｐ
ＵＦＡが低い比率で存在する。これは、かなりの量の長
鎖ＰＵＦＡに達するには混合物に多量の卵脂質を供給す
ることを暗示している。記載される脂肪混合物にはα−
リノレン酸が低含量（０．３〜０．４％）で存在する。
テラピア油を含む混合物はドコサヘキサエン酸（２２：
６ｎ３）を提供せず、そして高い２０：５ｎ３／２０：
４ｎ６比が存在する。
【００１６】ドイツ特許第３，６０３，０００号には、
動物性及び／又は植物性脂肪好ましくはレバー脂肪、卵
脂質、オレオマーガリン、トウモロコシ油、大豆油、パ
ーム油、パーム核油又はヤシ油及び魚油を混合すること
によって得た長鎖ＰＵＦＡを含む脂肪混合物が記載され
ている。これは、１８：１ｎ９（オレイン酸）、１８：
２ｎ６（リノール酸）及び１８：３ｎ３（α−リノレン
酸）間の最適比率を開示していない。この混合物のコレ
ステロール含量は極めて高く、従って成人特に心臓血管
患者の栄養のためには適当でない。加えて、２０：４ｎ
６（アラキドン酸）及び２２：６ｎ３（ドコサヘキサエ
ン酸）での２．５／１の比率は、母乳の０．１〜１／
０．１〜１の範囲に比較して極めて高い。混合物への燐
脂質の添加は考慮されていない。
【００１７】フランス特許第２，５５３，２６１号に
は、動物の胎盤からの燐脂質をＰＵＦＡの源として含有
する人工ミルクが記載されている。この脂肪混合物に
は、人間の物質代謝を変更することができるエストロゲ
ンが高レベルで存在する。その脂肪酸組成を母乳と比較
すると、高レベルのパルミチン酸（１６：０）及び低含
量のオレイン酸（１８：１ｎ９）が存在する。ＰＵＦＡ
含量の限り、α−リノレン酸が全く存在せず、そして混
合物中のアラキド酸（これは、２０：４ｎ６／２２：６
ｎ３比を変える）のレベルは母乳の値の０．１〜１／
０．１〜１の範囲と比較して５／１と極めて高い。
【００１８】これらの従来技術にかんがみ、そして長鎖
ＰＵＦＡ生成の調節剤としてまたアイコサノイドの物質
代謝について１８：１ｎ９（オレイン酸）、１８：２ｎ
６（リノール酸）及び１８：３ｎ３（α−リノレン酸）
並びにそれらの誘導体の食餌中の役割を考慮すると、膜
の最適条件に好適な摂取レベルを知ることが望ましいで
あろう。その上、これらのレベルについて直接的なデー
タは全く入手できないので、この情報を母乳の組成の如
き他の因子から、また地中海地方の如き心臓血管疾病の
危険性が低い住民の食餌における脂肪酸摂取から得るこ
とが望ましいであろう。
【００１９】オレイン酸は人間には必須でないけれど
も、それは膜構造の維持において重要な役割を果たし、
そしてその摂取は脂肪吸収及びコレステロール物質代謝
の変化を引き起こす。リノール酸を基材とする人工調合
物を与えた幼児は、オレイン酸を基材とする人工調合物
を与えたもの（１３３ｍｇ／ｄ１）よりもかなり低い血
漿コレステロールレベルを示した。オレイン酸を基材と
する人工調合物を与えた幼児は、リノール酸を基材とす
る調合物を与えたものよりも高いＨＬＤ−コレステロー
ルレベル並びにアポ蛋白体Ａ−Ｉ及びＡ−IIレベルを示
した。オレイン酸を基材とする人工調合物を与えた子供
では、ＬＤＬ−ＶＬＤＬ／ＨＤＬのコレステロール比が
低くなることが分かった。
【００２０】現在、モノ不飽和脂肪酸即ちＭＵＦＡ（オ
レイン酸及びパルミトレイン酸）は、アテローマ性動脈
硬化症及び心臓血管疾病の防止に関してかなりの注目を
受けつつある。オリーブ油に富み且つ低い飽和脂肪レベ
ルを持つ食餌では虚血疾病の発生率が低いことが示され
ている。また、ＭＵＦＡに富む食餌を与えた若者は、対
照食餌及びＰＵＦＡに富んだ食餌を与えたものに比較し
て低レベルのＬＤＬ及びＨＤＬを示す。
【００２１】また、オリーブ油に富んだ食餌は初老の人
達のＨＬＤ−コレステロールレベルを増大するが、ＰＵ
ＦＡに富んだ食餌はこれらのレベルを初老の人達及びト
リグリセドが正常又は高レベルの人達の両方において低
下させることも示されている。
【００２２】それ故に、望ましい脂肪混合物は、血漿コ
レステロールのレベルに及ぼす減少効果がＨＤＬレベル
の増加と平行するような比率の脂肪酸、ＭＵＦＡ及びＰ
ＵＦＡを含有したものであろう。
【００２３】哺乳動物、脂肪を含まない非経口的栄養物
を受けた人間又は脱脂乳を与えた子供では、リノール酸
の欠乏が検出されている。人間のリノール酸必要量は、
全カロリー摂取量の１％であると考えられている。
【００２４】最近の研究によれば、胎児期及び早産期に
おける必須脂肪酸の必要量を完全に満足させるにはリノ
ール酸だけでは十分でない場合があることが示されてい
る。α−リノレン酸及び／又は長鎖ＰＵＦＡの必要量
は、脂肪を含まない非経口的溶液を与えた人間では脂肪
酸の分布の変更が視覚及び精神機能に影響を及ぼすよう
な基準を基にして設定することができる。
【００２５】最近になって、実験動物において抗高凝固
性を示すプロスタシクリンＰＧＩ２のレベルは、食餌が
オリーブ油に富むと増大し、これに対してトウモロコシ
油に富むと減少することが示されている。同時に、オリ
ーブ油に富んだ食餌を与えた動物ではＰＵＦＡに富んだ
食餌を与えた動物と比較して低いレベルのトロンボキサ
ンＴＸＢ２が見い出される。
【００２６】２０：３ｎ６（エイコサトリエン酸）、２
０：４ｎ６（アラキドン酸）及び２０：５ｎ３（エイコ
サペンタエン酸）の如き脂肪酸は、３種の異なるプロス
タグランジン系列及び他の関連するエイコサノイド（こ
れらは特定の性質を有しそして各種の生理機能を調整す
る）の前駆物質であることを考慮すると、食餌中でのこ
れらの脂肪酸の割合の変更は膜組織の組成及び人間の生
理機能の変化を引き起こす可能性がある。
【００２７】他方、これらの脂肪酸及び２２：６ｎ３
（これは大脳及び網膜の発達において特に重要な化合物
である）の適切な供給が人間の発育に必須である。再
び、母乳及びいわゆる地中海式食餌の如き食餌中の脂肪
酸の分布の配向要因を持つのが望ましい。滋養物を与え
られていない出生前及び出生後の子供は、特にｎ６／ｎ
３脂肪酸の間の比率を変えた食餌を与えたものでは網膜
の２２：６ｎ３（ドコサヘキサエン酸）レベルの有意の
増大を示すことが証明されている。
【００２８】成人用食餌の長鎖ＰＵＦＡの補給は、肝硬
変及びクローン病の如きある種の疾病が存在する場合に
時に重要である。これらの疾病では、食餌中へのノルマ
ルリノール酸及びα−リノール酸の配合並びに血漿中に
おけるこれらの脂肪酸の通常レベルの存在にもかかわら
ず、ｎ３及びｎ６シリーズの長鎖ＰＵＦＡの分布が変更
することが観察された。このことは、前駆物質の脱飽和
及び／又は伸長の機構の変更を示唆している。これらの
場合には、予備形成した長鎖ＰＵＦＡを食餌中に配合す
ることが特に重要になる。
【００２９】近年になって、多くの研究によって、食餌
中の過剰量のＰＵＦＡから生じる可能性がある負の効果
について検討された。長期間効果は証明されていないけ
れども、短期間効果は膜脂質の不飽和度の増加それに対
応した脂質の酸化感受性の向上及びトコフェロール所要
量の増加を示すようである。疫学的研究及び動物実験に
よれば、過剰のＰＵＦＡ摂取は公知の発ガン物質の作用
を高める可能性があることが示されている。また、ＰＵ
ＦＡの過剰摂取と乳ガンとの間の関係も示されている。
食餌中における過剰のＰＵＦＡで観察される脂質の過酸
化の増大は、腫瘍主要の高発生率の原因になるようであ
る。
【００３０】アラキドン酸（２０：４ｎ６）はエイコサ
ノイドの２シリーズの前駆物質であり、そして食餌中に
おけるｎ６シリーズのこの代謝物質の過剰又はその前駆
物質の過剰は、血栓形成の増加、出血時間の短縮、多形
核単球及び白血球の炎症応答性の向上並びにアレルギー
に対する迅速な筋反応性の向上をもたらす可能性があ
る。これとは対照をなして、エスキモーの食餌の如きｎ
３シリーズの長鎖ＰＵＦＡを主材とする食餌は、出血時
間の増長並びにアテローム性動脈硬化症、関節炎、喘息
及び心臓血管疾病の如き疾病の低い発生率をもたらす。
これは、これらの酸がエイコサノイドの３シリーズの前
駆物質であるという事実によるものである。
【００３１】本発明は、燐脂質の適切なレベルと、オレ
イン酸、リノール酸及びα−リノレン酸間の適切な比率
と、ｎ６及びｎ３シリーズの両方の長鎖ＰＵＦＡの適切
なレベルとを有する新規な食用脂肪混合物を提供するも
のである。加えて、本発明に従った脂肪混合物は、アラ
キドン酸とドコサヘキサエン酸との間の適切な比率を有
する。これらの脂肪混合物は、幼児用の食餌又は調合物
では母乳の脂肪酸含量について、そして成人用の栄養製
品では地中海式食餌について標準化される。これらの食
餌は、幼児の成長及び発達を促進し、そして栄養及び健
康状態の改善並びに成人のある種の疾病の防止及び治療
に寄与する。
【００３２】母乳は、次の成分即ち約９８％のトリグリ
セリド、０．８％の燐脂質及び０．３％のコレステロー
ルから構成される脂質を約４ｇ／ｄｌ含有する。脂肪酸
の組成に関して言えば、母乳は、一般には、３０〜４０
％のオレイン酸（１８：１ｎ９）、約２０〜２５％のパ
ルミチン酸（１６：０）、約５〜７％のステアリン酸
（１８：０）及び約４〜７％のミリスチン酸（１４：
０）を含有する。通常、リノール酸含量は全脂肪酸含量
の６〜１６％の間を変動しそしてα−リノレン酸は１．
２〜１．３％の間を変動する。
【００３３】母乳（スペイン人）中の脂肪酸の平均組成
及び本発明で特に興味がある脂肪酸の隔たりのおよその
百分率を表１に記載する。
【００３４】
【表１】
【００３５】母乳は、中鎖及び長鎖脂肪酸の両方を含有
し、そしてｎ６及びｎ３シリーズのＰＵＦＡに特に富ん
でいる。これらの脂肪酸のすべては、早産の子供を持つ
母親の母乳に特に豊富である。
【００３６】先に記載したように、オレイン酸／リノー
ル酸／α−リノレン酸比（１８：１ｎ９／１８：２ｎ６
／１８：３ｎ３）は、長鎖ＰＵＦＡ及びエイコサノイド
の合成における調整因子である。母乳中のこの比率の値
は、約３０〜４５／６〜２０／０．３〜１．８の範囲内
である。
【００３７】食餌中の他の重要な長鎖ＰＵＦＡ比は、大
脳及び網膜中の膜脂質の成分としての２２：６ｎ３の重
要性のためにアラキドン酸／ドコサヘキサエン酸比（２
０：４ｎ６／２２：６ｎ３）である。母乳では、この比
率はおよそ０．１〜１／０．１〜１の範囲内である。
【００３８】成人の栄養に関して言えば、地中海地方の
食餌は、これらの地方で示されるアテローム性動脈硬化
症、心臓血管疾病及びガンの如き疾病の低い発生率のた
めに望ましいモデルと現在見なされている。
【００３９】標準の地中海式食餌中の脂肪酸の平均組成
及び本発明で特に興味がある脂肪酸の隔たりのおよその
百分率を表２に記載する。
【００４０】
【表２】
【００４１】１８：１ｎ９／１８：２ｎ６／１８：３ｎ
３比（オレイン酸／リノール酸／α−リノレン酸）は、
約３０〜８０／３〜１８／０．３〜３の範囲内である。
長鎖ＰＵＦＡでは、２０：４ｎ６／２２：６ｎ３比（ア
ラキドン酸／ドコサヘキサエン酸）は、約０．１〜２／
０．１〜３の範囲内である。
【００４２】この食餌を取る地方で観察される心臓血管
疾病の低い発生率を考慮すると、上記の脂肪酸比は、成
人の栄養のための食餌を作るための標準モデルと見なす
ことができよう。
【００４３】特定の病変を持つ患者向けの食餌では、食
餌に所定の長鎖ＰＵＦＡを補給するのが望ましいだろ
う。例えば、心臓血管患者には、食餌にｎ３シリーズの
長鎖ＰＵＦＡ具体的にはエイコサペンタエン酸（２０：
５ｎ３）を補給するのが好都合である。また、肝硬変患
者には、食餌にｎ３及びｎ６シリーズの両方の長鎖ＰＵ
ＦＡを補給するのが好ましいであろう。
【００４４】加えて、膜燐脂質中の構造成分としてのＰ
ＵＦＡの重要性を考慮すると、またこれらの燐脂質から
ホスフォリパーゼの作用によってエイコサノイドの長鎖
ＰＵＦＡ前駆物質が得られることにかんがみ、食餌に添
加されたＰＵＦＡを燐脂質と結合させるのが望ましい。
母乳では、燐脂質は、全脂質の０．７〜０．８％にほぼ
相当する２３．８〜８１．５ｍｇ／ｄｌの範囲内の濃度
で存在する。燐脂質の中で、最も重要な画分は、フォス
ファチジルコリン２８〜２９％、フォスファチジルエタ
ノールアミン２６〜２７％、スフィンゴマイエリン３０
〜３２％、フォスファチジルセリン５〜６％及びフォス
ファチジルイノシトール４〜４％である。
【００４５】母乳中に存在する長鎖ＰＵＦＡの大半は燐
脂質と結合されており、この理由によって、食餌に添加
されたＰＵＦＡを燐脂質と結合させることが勧められ
る。
【００４６】加えて、乳の燐脂質は、プロスタグランジ
ンの細胞保護効果を調停するので胃粘膜を保護すること
ができることが証明されている。
【００４７】表３には、子牛及び豚の大脳の燐脂質のお
よその脂肪酸組成が、ＰＵＦＡの他の源例えば米国特許
第４，６７０，２８５号及びドイツ特許第３，６０３，
０００号で使用された卵黄脂質並びにフランス特許第
２，５５３，２６１号の胎盤脂質の脂肪酸組成と比較し
て示されている。
【００４８】
【表３】
【００４９】従って、本発明の目的は、 −オレイン酸（１８：１ｎ９）、リノール酸（１８：２
ｎ６）及びα−リノレン酸（１８：３ｎ３）の適切な脂
肪酸比、並びにｎ６及びｎ３シリーズの長鎖ＰＵＦＡの
適切なレベル及びアラキドン酸対ドコサヘキサエン酸の
適切な脂肪酸比（２０：４ｎ６／２２：６ｎ３）を有す
る脂肪混合物を提供することである。これらの比率は、
満期出産又は早産の授乳幼児の適切な栄養摂取、成長及
び発達を促進し、且つ成人のある種の疾病の補足的な予
防及び治療の他に栄養摂取を高めるように企図されてい
る。 −燐脂質特に子牛若しくは豚の大脳から又は他の家畜か
ら得られたものの適切なレベルを有する食用脂肪製品を
提供することである。 −未熟児で生まれた幼児又は満期出産の幼児の栄養補給
のための調合物、並びに母乳と同様な燐脂質及び脂肪酸
の組成を持つラクトース不含調合物及び加水分解たんぱ
く質調合物を提供することである。 −標準地中海式食餌と同様な燐脂質及び脂肪酸の特定の
組成を持つ経口又は経腸の成人栄養補給用の様々な食餌
を提供することである。 −１８：１ｎ９／１８：２ｎ６／１８：３ｎ３比から独
立してｎ６及びｎ３シリーズの両方のＰＵＦＡに富む栄
養製品であって、肝硬変の如きある種の成人病の食餌療
法に有用な栄養製品を提供することである。
【００５０】加えて、上記の目的及び／又は特徴に従っ
て調製した脂肪混合物は、ヌクレオチド及び／又はヌク
レオシドを添加されると、幼児の下痢の治療に特に効果
的であることが示された。提案される混合物は、下痢の
発生率及び期間を制御する。
【００５１】例えば、１９３人の子供達で３ケ月間行っ
た実験では、本発明に従った脂肪混合物並びにヌクレオ
チド及び／又はヌクレオチドを添加したミルク（ミルク
Ｉ）を飲んだものは、通常のミルク（ミルクII）を飲ん
だ子供達と比較して次の結果を示した。 ミルクＩ ミルクII 評価した子供の人数 ８９ ８４ 下痢の人数 ３８ ５４ 発生率（％） ４２．７ ６４．３
【００５２】先に行った実験では、下痢の期間の有意な
短縮も観察された。 ミルクＩ ミルクII 平均期間（日数） ６．２６ ８．２９ 下痢の全日数 ６（１７．１％） １３（２７．１％） １０日間の人数
【００５３】それ故に、本発明の他の目的は、ヌクレオ
シド及び／又はヌクレオチドの混合物、ウリジン及び／
又はウリジンモノホスフェート、グアノシン及び／又は
グアノシンモノホスフェート、アデノシン及び／又はア
デノシンモノホスフェート、シチジン及び／又はシチジ
ンモノホスフェート、並びにイノシン及び／又はイノシ
ンモノホスフェートを添加した脂肪混合物を提供するこ
とである。この具体例は、特定の製品として、又は食餌
の一部分を構成する他の栄養製品用の添加剤として使用
することができる。
【００５４】
【発明の概要】本発明に従えば、食用脂肪製品の例は、
家畜好ましくは子牛又は豚の大脳からの燐脂質、オリー
ブ油、大豆油及びトウモロコシ油の群からの少なくとも
１種の油、及び／又は少なくとも１種の動物性脂肪（乳
脂肪又はラード）、及び／又は少なくとも１種の魚油、
及び／又は植物油の精製から得られた中鎖トリグリセリ
ド（ＭＣＴ）の混合物である。この混合物では、オレイ
ン酸／リノール酸／α−リノレン酸の間の比率がそれぞ
れ３０ー８０／３ー２０／０．３ー３の範囲内であり、
アラキドン酸／ドコサヘキサエン酸の間の比率がそれぞ
れ０．１ー２／０．１ー３の範囲内であり、そして燐脂
質含量が混合物１００ｇ当り２ー２５重量部の範囲内で
ある。
【００５５】本発明に従った脂肪混合物は、好ましくは
ヌクレオチド及び／又はヌクレオシドの混合物を添加し
た特定の製品として供給することができる。加えて、本
発明に従った脂肪混合物は、幼児用調合物又は成人用食
餌又は一般には栄養補給製品の一部分になり得る。
【００５６】本発明に従った脂肪混合物及び該混合物を
含有する製品は、下記の表４〜１９を参照することによ
って更に良く理解されよう。各表には、脂肪混合物並び
に該混合物を配合した幼児及び成人用の栄養製品の例が
開示されているが、これらに限定されるものではない。
【００５７】表４〜９及び例１〜６は、成人用調合物に
相当する。表１０〜１３及び例７〜１０は、成人用食餌
に相当する。各混合物の粉末又は液体の表示及び（ｂ）
が魚油を含有しそして（ａ）がそれを含有しない表示が
理解されよう。表１４〜１９には、脂肪混合物の組成、
相対値及び絶対値での脂肪酸組成、１８：１ｎ９／１
８：２ｎ６／１８：３ｎ３脂肪酸比及び２０：４ｎ６／
２２：６ｎ３脂肪酸比が開示されている。
【００５８】幼児及び成人用の栄養製品中の脂肪酸組成
は、それぞれ、母乳及び地中海式食餌の対応する必須脂
肪酸と同様である。加えて、本発明に従った脂肪混合物
は、ラウリン酸及びミリスチン酸の低い含量を有する。
ステアリン酸含量は脂肪を基にして１０％未満であり、
そしてパルミチン酸のそれは２０％未満である。これら
の酸の高含量は、脂肪の吸収を抑制する凝塊をもたらす
可能性がある。
【００５９】オレイン酸（１８：１ｎ９）に関して言え
ば、それが製品中で提供するエネルギーは、全エネルギ
ーのおよそ１５〜２０％の範囲内である。必須脂肪酸で
あるリノール酸及びα−リノレン酸によって供給される
エネルギーは、それぞれ全エネルギーのおよそ３〜８％
及び０．４〜０．５％の範囲内である。
【００６０】混合物中の長鎖ＰＵＦＡ含量は、アラキド
ン酸（２０：４ｎ６）が約０．４０％であり、そしてド
コサヘキサエン酸（２２：６ｎ３）が全脂肪酸の約０．
３〜０．４％である。本発明に従った脂肪混合物中の２
０：４ｎ６／２２：６ｎ３比は０．１〜２／０．１〜３
好ましくは０．１〜１／０．１〜１の範囲内で変動し、
そして２０：５ｎ３（エイコサペンタエン酸）の含量は
幼児用栄養製品では０．０３％よりも多くない。
【００６１】また、１８：１ｎ９／１８：２ｎ６／１
８：３ｎ３比及び２０：４ｎ６／２２：６ｎ３比も母乳
及び地中海式食餌のものと同様である。本発明に従った
脂肪混合物中に用いられるＰＵＦＡの生物源（豚、子牛
又は他の家畜の大脳）に関して言えば、食餌に供給され
る長鎖ＰＵＦＡは燐脂質と結合される。燐脂質は大脳か
らの脂質の約７０％に相当し、残りの３０％はセレブロ
サイド、スルファチド及びコレステロール（２．２％）
である。食餌中の長鎖ＰＵＦＡが燐脂質と結合されると
いう事実は、組織中の長鎖ＰＵＦＡが膜の燐脂質の構造
成分であることを特に考慮すると有益である。
【００６２】
【表４】
【００６３】
【表５】
【００６４】
【表６】
【００６５】
【表７】
【００６６】
【表８】
【００６７】
【表９】
【００６８】
【表１０】
【００６９】
【表１１】
【００７０】
【表１２】
【００７１】
【表１３】
【００７２】
【表１４】
【００７３】
【表１５】
【００７４】
【表１６】
【００７５】
【表１７】
【００７６】
【表１８】
【００７７】
【表１９】
【００７８】
【表２０】
【００７９】
【表２１】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ａ６１Ｋ 31/23 ＡＤＤ 8413−4Ｃ 31/70 8314−4Ｃ 35/78 Ｃ 7180−4Ｃ (72)発明者 ヘスス・ヒメネス スペイン国グラナダ、プリマベラ４

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 オレイン酸／リノール酸／α−リノレン
    酸の間の比率をそれぞれ３０ー８０／３ー２０／０．３
    ー３の範囲内にしたことを特徴とする幼児及び成人の栄
    養のための脂肪混合物。
  2. 【請求項２】 アラキドン酸／ドコサヘキサエン酸の間
    の比率をそれぞれ０．１ー２／０．１ー３の範囲内にし
    たことを特徴とする幼児及び成人の栄養のための脂肪混
    合物。
  3. 【請求項３】 燐脂質含量を２３．８ー８１．５ｍｇ／
    ｄ１の範囲内にしたことを特徴とする幼児及び成人の栄
    養のための脂肪混合物。
  4. 【請求項４】 燐脂質含量を混合物１００ｇ当り２ー２
    ５重量部の範囲内にしたことを特徴とする幼児及び成人
    の栄養のための脂肪混合物。
  5. 【請求項５】 燐脂質含量が主として哺乳動物の大脳燐
    脂質に由来することを特徴とする請求項１〜４のいずれ
    かに記載の幼児及び成人の栄養のための脂肪混合物。
  6. 【請求項６】 哺乳動物の大脳からの燐脂質、オリーブ
    油、大豆油及びトウモロコシ油の群からの少なくとも１
    種の油、及び／又は少なくとも１種の動物性脂肪、及び
    ／又は少なくとも１種の魚油、及び／又は中鎖トリグリ
    セリドの混合物からなり、しかもオレイン酸／リノール
    酸／α−リノレン酸の間の比率がそれぞれ３０ー８０／
    ３ー２０／０．３ー３の範囲内であり、アラキドン酸／
    ドコサヘキサエン酸の間の比率がそれぞれ０．１ー２／
    ０．１ー３の範囲内であり、そして燐脂質含量が２３．
    ８ー８１．５ｍｇ／ｄ１の範囲内であることを特徴とす
    る請求項１〜５のいずれかに記載の幼児及び成人の栄養
    のための脂肪混合物。
  7. 【請求項７】 哺乳動物の大脳からの燐脂質、オリーブ
    油、大豆油及びトウモロコシ油の群からの少なくとも１
    種の油、及び／又は少なくとも１種の動物性脂肪、及び
    ／又は少なくとも１種の魚油、及び／又は中鎖トリグリ
    セリドの混合物からなり、しかもオレイン酸／リノール
    酸／α−リノレン酸の間の比率がそれぞれ３０ー８０／
    ３ー２０／０．３ー３の範囲内であり、アラキドン酸／
    ドコサヘキサエン酸の間の比率がそれぞれ０．１ー２／
    ０．１ー３の範囲内であり、そして燐脂質含量が混合物
    １００ｇ当り２ー２５重量部の範囲内であることを特徴
    とする請求項１〜６のいずれかに記載の幼児及び成人の
    栄養のための脂肪混合物。
  8. 【請求項８】 請求項１〜７のいずれかに記載の脂肪混
    合物を含むことを特徴とする幼児及び成人の栄養のため
    の栄養製品。
  9. 【請求項９】 ヌクレオシド及び／又はヌクレオチドの
    混合物、ウリジン及び／又はウリジンモノホスフェー
    ト、グアノシン及び／又はグアノシンモノホスフェー
    ト、アデノシン及び／又はアデノシンモノホスフェー
    ト、シチジン及び／又はシチジンモノホスフェート、並
    びにイノシン及び／又はイノシンモノホスフェートを添
    加したことを特徴とする請求項１〜７のいずれかに記載
    の脂肪混合物。
  10. 【請求項１０】 請求項１〜７のいずれかに記載の脂肪
    混合物と、ヌクレオシド及び／又はヌクレオチドの混合
    物、ウリジン及び／又はウリジンモノホスフェート、グ
    アノシン及び／又はグアノシンモノホスフェート、アデ
    ノシン及び／又はアデノシンモノホスフェート、シチジ
    ン及び／又はシチジンモノホスフェート、並びにイノシ
    ン及び／又はイノシンモノホスフェートとを含むことを
    特徴とする幼児及び成人のための栄養製品。
  11. 【請求項１１】 肝硬変の食餌療法に使用することを特
    徴とする上記請求項のいずれかに記載の脂肪混合物。
  12. 【請求項１２】 肝硬変の食餌療法に使用することを特
    徴とする上記請求項のいずれかに記載の脂肪混合物を含
    む栄養製品。
  13. 【請求項１３】 下痢の食餌療法に使用することを特徴
    とする請求項９記載の脂肪とヌクレオチド及び／又はヌ
    クレオシドとの混合物。
  14. 【請求項１４】 下痢の食餌療法に使用することを特徴
    とする請求項１０記載の脂肪とヌクレオチド及び／又は
    ヌクレオシドとの混合物を含む栄養製品。
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