JPH0133572B2 - - Google Patents

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JPH0133572B2
JPH0133572B2 JP59169199A JP16919984A JPH0133572B2 JP H0133572 B2 JPH0133572 B2 JP H0133572B2 JP 59169199 A JP59169199 A JP 59169199A JP 16919984 A JP16919984 A JP 16919984A JP H0133572 B2 JPH0133572 B2 JP H0133572B2
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pitch
spinning
carbon fibers
solvent
temperature
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JP59169199A
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Hideharu Sasaki
Tooru Sawaki
Yoshiaki Yoshioka
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Teijin Ltd
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Teijin Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は高強度高モジユラスのピツチ系炭素繊
維を良好な工程調子で安定に製造する方法に関す
るものである。さらに詳しくは、新規な方法で調
製された特殊な光学異方性ピツチを用いて高強度
高モジユラスのピツチ系炭素繊維を優れた工程調
子で良好な生産性を維持しつつ製造する方法に関
するものである。 従来技術 石炭系又は石油系ピツチを原料として高性能グ
レードの炭素繊維を製造する技術は、高性能グレ
ード炭素繊維製造コスト低減の可能性があるため
に注目を集めており、これまでに種々の提案がな
されている。 例えば、特開昭49−19127号公報には、光学異
方性ピツチを溶融紡糸したピツチ繊維を不融化・
焼成して得た炭素繊維は、それまでの光学等方性
ピツチ系炭素繊維に比して高強度高モジユラスの
ものが得られることが示されている。 このような光学異方性ピツチを前駆体とする炭
素繊維の技術開発は、紡糸性の良好な光学異方性
ピツチの調製に重点をおいて進められてきてお
り、従来、種々の光学異方性ピツチが提案され、
例えば特開昭49−19127号、特公昭55−37611号公
報記載のピツチでは、光学異方性相がキノリン不
溶部に相当し、40〜90%が光学異方性相であるも
のが好ましいとしている。しかし、このようなピ
ツチは融点が高くかつ光学異方性相と光学等方性
相との混合物であり、粘度斑が大きくて、紡糸調
子が悪いため、均質で高物性の炭素繊維を得るこ
とが困難であつた。 そこで、低融点でかつ均質な光学異方性ピツチ
が提案され、かかるピツチは、例えば特開昭54−
160427号、特開昭54−55625号、特開昭57−88016
号公報等に開示されている。これらのピツチは、
製造方法はそれぞれ異なるものの、いずれも分子
量分布を制御し二相間の相溶性を増加させること
によりピツチの均質化を目指したものである。し
かし、前記の各方法は、特殊な石油系ピツチを用
いてはじめて実現し得るものである上、ピツチの
均質性においてはまだ不十分であつた。 また、特開昭57−100186号、特開昭57−168987
号、特開昭58−18421号公報には、原料ピツチを
予め水素化処理した後、熱処理をする方法が記載
されている。この方法の出現により使用可能な原
料ピツチが大幅に拡大されることになり、ピツチ
系炭素繊維の工業化が促進されることになつた。
しかし、この方法では得られる光学異方性ピツチ
の低融点化は達成できるものの、均質性が未だ不
十分で紡糸調子が今一歩であるばかりでなく、焼
成後に得られる炭素繊維は、ほとんどの場合断面
方向の結晶子構造がいわゆるラジアル構造となつ
てクラツクが生じており、高物性の発現は充分で
なかつた。 そこで、炭素繊維の断面構造を制御することに
より更に高物性を発現しようという研究がなされ
た。すなわち、ピツチ系炭素繊維の断面構造とし
ては、ランダム、ラジアル、オニオン構造又はそ
の複合構造が存在し、ラジアル構造はクラツクを
生じ易くマクロ欠陥による物性低下が生じるため
好ましくないとされている(米国特許4376747号、
特開昭59−53717号参照)。また、ピツチ系炭素繊
維におけるランダム構造は、実際はラメラのサイ
ズが小さいラジアル構造である場合が多く、強度
的には好ましい構造ではあるが、ピツチ調製及び
紡糸の高ドラフト化又は急冷化が充分でないとク
ラツクが生じ易く、製造条件が限定されてくる。
オニオン構造は現象的には紡糸ピツチの粘性変化
温度よりも高い温度で紡糸することによつて得ら
れるが(特開昭59−53717号参照)、通常の光学異
方性ピツチにおいては、この粘性変化温度が350
℃以上の高温であることが多く、従つてこのよう
な高温では、揮発物の発生により紡糸調子が悪
く、得られる繊維もボイドを含むものになり易
く、安定かつ均質なものを得ることが難しいのが
現状である。 叙上の如く、従来は、可紡性良好な光学異方性
ピツチの製造方法について技術開発がなされてい
るが、紡糸条件変更による断面内部構造の制御に
ついては紡糸温度を上げるという手段が提案され
ているだけで、この提案は安定紡糸という観点か
らは好ましくない方向へ逆行するものであつた。
更に、従来技術では高物性が発現するといつて
も、強度は高々300Kg/mm2、モジユラス20〜
25T/mm2程度であり、PAN系炭素繊維の強度レ
ベルが300Kg/mm2から更に400〜500Kg/mm2まで改
善されているのに対して、低レベルにとどまつて
いるのが現状である。 発明が解決しようとする課題 本発明者は、光学異方性ピツチの溶融紡糸時に
特定の形状・寸法を有するスリツト状の紡糸孔を
穿設した紡糸口金を採用することにより潜在的に
特殊な内部構造を形成せしめ、これを不融化・焼
成することによつて繊維断面においてリーフ状ラ
メラ配列を有する炭素繊維となし、PAN系炭素
繊維に匹敵する物性を有するピツチ系炭素繊維を
開発した(特開昭61−6313号、特開昭61−6314
号)。 しかしながら、この方法では特殊な紡糸口金を
使用するために、紡糸性が必ずしも良好でなく、
このため、通常の光学異方性ピツチを使用した場
合には、その長所を充分に発揮することが困難で
あるという問題があつた。 本発明者は、特殊な紡糸口金を使用する場合で
も、良好な工程調子で円滑な紡糸が可能であり、
かつ、PAN系炭素繊維に匹敵する良好な物性を
有するピツチ系炭素繊維を製造し得る光学異方性
ピツチの調製方法について研究の結果、それ自体
新規な方法によつて調製された光学異方性ピツチ
は、前述の特殊な紡糸方法に適合し、その効果を
充分に発現し得ることを見い出し、本発明に到達
した。 課題を解決するための手段 前述の課題は、光学異方性ピツチを溶融紡糸
し、不融化・焼成してピツチ系炭素繊維を製造す
る方法において、 (a) 原料ピツチを25℃における溶解係数が8.5〜
10の範囲内にある有機溶剤で処理して該溶剤不
溶部を採取する第一工程と、該溶剤不溶部100
重量部に対し水素化した2環以上の縮合多環芳
香族化合物及び/又は水素化した含窒素芳香族
化合物を100〜300重量部加え、自生圧下、400
〜500℃の温度で水素化処理するか、又は、該
溶剤不溶部100重量部に対し2環以上の縮合多
環芳香族化合物及び/又は含窒素芳香族化合物
100〜300重量部を加え水素添加用触媒の存在
下、50Kg/cm2以上の水素加圧下で、350〜500℃
の温度で水素化処理する第2工程と、得られた
溶液状の水素化処理物を過する第3工程と、
該過物を400℃以上の温度で減圧下あるいは
常圧下で熱処理する第4工程とを順次行うこと
により、融点が260〜320℃である実質上均質な
光学異方性ピツチを製造し、 (b) 上記光学異方性ピツチを、紡糸孔に少くとも
1つのスリツト状開口部を有し、各スリツト部
における中心線距離をLn、それに対応するぬ
れぶち幅をWnとしたをき、Lnの少くとも1つ
が、次式 Ln<10(mm) ………() 1.5Ln/Wn20 ………() を同時に満足する紡糸孔を有する紡糸口金から
溶融紡糸し、 (c) 得られたピツチ繊維を不融化・焼成して、繊
維断面にリーフ状ラメラ配列を有する炭素繊維
を形成せしめる、本発明の方法により達成され
る。 以下、本発明方法を紡糸用ピツチの調製、溶融
紡糸、不融化・焼成処理の順に詳細に説明する。 (a) 紡糸用ピツチの調製 本発明方法において、所期の目的とする高強
度・高ヤング率の炭素繊維を製造するための紡
糸用ピツチとして、融点が260〜320℃でかつ完
全に単一相の実質的に100%光学異方性のピツ
チを用いるか、又は融点が260〜320℃で光学等
方性相が球状で混在する光学異方性ピツチであ
つて、等方性相の量が15%以下であつて、しか
も、その球状等方性相の平均直径が15μm以下
で100μmを超える球状液体を含まずその個数
が100個/mm2以上と極めて微小かつ均質に分散
して存在しているもの(以下、これを「実質上
均質な光学異方性ピツチ」と総称する)を用い
ることが、紡糸性を良好に保ちかつ均質な炭素
繊維を得る上で必要である。 光学異方性相量が85%未満の光学異方性ピツ
チは、通常、球状の光学等方性の直径が大き
く、これによる粘度斑が出て可紡性が低下し、
得られる炭素繊維の物性及び均質性が低下する
ため好ましくない。また光学異方性相量が更に
低くなると後述する紡糸条件でも炭素繊維にリ
ーフ状ラメラ配列が発現し難く、繊維物性も低
いものとなる。 また、該ピツチは融点が260〜320℃と従来の
光学異方性ピツチよりは低融点でかつ実質上均
質な光学異方性ピツチであることが必要であ
る。 本発明者は、ピツチ調製と後述する特殊な紡
糸口金を使用するときの紡糸性及び炭素繊維の
性能との関係について研究を重ねた結果、紡糸
性の悪いピツチから得られる炭素繊維の物性は
良くないこと、及び、紡糸性の悪いピツチは、
ピツチの融点が260〜320℃の範囲内に入つてい
ても、光学異方性相中に分散する球状の光学異
方性相の量が15%より多いか又はその粒径が
100μmより大きいものを含んでいたり、平均
粒径が15μmより大きいこと等を確認した。 ここで言う「光学異方性相」の意味は従来必
ずしも学会又は文献等で厳密に定義されていな
かつたが、本発明では紡糸性との相関及び定量
化の観点より「光学異方性相」は、次のように
定義する。すなわち、常温近くで固化したピツ
チ塊の断面を研磨し反射型偏光顕微鏡で直交ニ
コル下で観察したときに認められる光学異方性
を有する部分を光学異方性相といい、直前の熱
履歴は問わない。そして光学異方性が認められ
ない部分を光学等方性相という。 この光学異方性相と光学等方性相の定量は、
反射型偏光顕微鏡を用い、直交ニコル下で写真
撮影し、画像解析装置を用いてそれぞれの占有
する面積率を測定して行なうが、これは統計上
実質的に体積%を表わす。また近似的には体積
%と重量%とはほぼ等しいと考えてよい。 前述のような特性をそなえる好適な紡糸用ピ
ツチは、原料ピツチを有機溶剤処理して、該溶
剤不溶部を採取する第1工程と、該溶剤不溶部
を水素化処理する第2工程と、水素化処理物を
過する第3工程と、過物(液)より溶剤
を除去したのち400℃以上の温度で減圧下ある
いは常圧下で熱処理をする第4工程とを経て、
融点が260〜320℃で実質上均質な光学異方性を
有するピツチとする方法によつて製造される。 次に、第1〜第4の各工程について詳述する。 なお、原料ピツチとしては、コールタールピツ
チ、石炭液化物中の重質歴青物等石炭系高炭素含
有ピツチ、あるいは、ナフサ熱分解時の副生ター
ルピツチ、軽質油の流動接触分解法あるいは水蒸
気分解法によつて得られる分解タールピツチ、原
油の蒸留残渣及びこれらの残渣の熱処理によつて
得られるタールピツチ等の石油系炭素含有ピツチ
が用いられる。このような光学等方性ピツチ中に
は、フリーカーボンあるいは溶剤不溶な高分子量
物を含有することがあるが、後述の第3工程で一
括過するので、含有していてもさしつかえな
い。すなわち、原料ピツチが高炭素含有ピツチで
あり炭素含有量が85%以上であればよい。 [第1工程] この工程では、原料ピツチに対し、ピツチの水
素化処理工程の前に、有機溶剤処理を施し、該溶
剤に可能な部分を予め除去し、溶剤不溶分を次工
程に供給する。 また、溶剤処理に用いる有機溶剤は、原料ピツ
チ中から、水素化処理を施しても光学異方性能の
低いピツチを水素化処理前に予め除去することが
できるような溶剤が用いられ、一般にその溶解係
数が25℃で8.5〜10の範囲にある溶剤が好ましい。
例えば、コールタールピツチでは、トルエン、キ
シレン、ベンゼン等が特に有効であるが、その他
原料ピツチによつては、フラン、ジオキサン、テ
トラハイドロフラン、クロロホルムでもよく、ま
た、これら溶剤を含む混合溶剤系であつてもかま
わない。 また、市販の石油系ピツチ「アシユランド240」
に対しては、アセトンが最も有効である。 この溶剤処理によつて、原料ピツチの分子量及
び化学構造の分布を制御し、水素化処理ピツチが
後工程の熱処理時に光学異方性化する速度のバラ
ツキを制御することになり、後述の特殊な溶融紡
糸法で使用するに適した実質的に均質で紡糸性の
優れた光学異方性ピツチが形成される。 溶剤処理の温度は、溶剤の原料ピツチに対する
溶解性に応じて適宜選定すべきであるが、一般に
20〜200℃の範囲内で選定される。 溶剤不溶留分の採取方法は、原料ピツチを100
メツシユ径以下に粉砕した後、前記溶剤の十分な
量と十分接触させ、不溶な留分を分離する。過
時の温度は室温が適当である。 [第2工程] かくして得られた溶剤不溶留分ピツチを水素化
する。この方法としては、次の〜のような方
法を用いることができる。 すなわち、 原料ピツチから得られる溶剤不溶留分100重
量部に対し、水素化した2環以上の縮合多環芳
香族化合物の混合物100〜300重量部を加え自生
圧下、400〜500℃の温度で水素化処理する方
法、 原料ピツチから得られる溶剤不溶留分100重
量部に対し、水素化した含窒素芳香族化合物又
はその混合物100〜300重量部を加え自生圧下、
400〜500℃の温度で水素化処理する方法、 原料ピツチから得られる溶剤不溶留分と未水
素化溶剤とを同時に水素添加用触媒存在下水素
加圧下で実施する方法、例えば原料ピツチから
得られる溶剤不溶留分100重量部に対し2環以
上の縮合多環芳香族化合物の混合物あるいは含
窒素芳香族化合物100〜300重量部を加え、水素
添加用触媒存在下、50Kg/cm2以上の水素加圧下
で350〜500℃の温度で水素化する方法、 等が採用される。 ここでいう2環以上の縮合多環芳香族化合物の
混合物としては、例えばアンスラセン油、クレオ
ソート油、吸収油、ナフタリン油及びナフサ熱分
解時に副生する経由等のうち高沸点部常圧換算沸
点360℃以上をカツトしたものがあげられる。ま
た、含窒素芳香族化合物としてはキノリン、ピリ
ジン等があげられ、水素化した含窒素芳香族化合
物としてはテトラハイドロキノリン、ピペリジン
等があげられる。 水素添加用触媒としては、銅、クロム、モリブ
デン、コバルト、ニツケル、パラジウムあるいは
白金などの金属あるいはこれらの酸化物あるいは
硫化物を無機固体に担持させたもの等が用いられ
る。溶剤の水素化条件は、使用する触媒の種類に
より異なるものであるが、通常、温度が150〜450
℃、好ましくは300〜400℃で水素ガス圧は50〜
200Kg/cm2Gで行う。 このようにして調製した水素化溶剤を原料ピツ
チの溶剤不溶部100重量部に対して100〜300重量
部加え、例えばオートクレブのような密閉容器に
入れて不活性ガス雰囲気下で撹拌しながら400〜
500℃に加熱する。保持時間は1時間以内で十分
である。 溶剤の水素化とピツチの水素化を同時に行う場
合は、原料ピツチの溶剤不溶部100重量部に対し
溶剤100〜300重量部加え、水素化用触媒として前
記の水素添加用触媒をピツチに対し5〜10重量部
加え、水素圧50〜200Kg/cm2G、350〜500℃で処
理する。処理時間は60分以内で十分である。 [第3工程] かくして水素化処理したピツチは溶液状を呈し
ているが、これを過することにより、その中に
含まれるフリーカーボン、触媒等が除去される。
この過段階では水素化処理ピツチ中の高分子量
物のうち、この処理液系内で不要なものもフリー
カーボン等と同時に沈澱し過によりスムーズに
除去される。これは、原料ピツチの溶剤処理によ
り該ピツチ中から低分子量ピツチを予め除去して
おくことにより、水素化ピツチの水素化処理後の
混合液に対する溶解度が低下しているため、水素
化処理ピツチ中の高分子量物が沈澱するためと思
われる。すなわち、原料ピツチを予め溶剤処理す
ることにより、過終了後のピツチは分子量及び
化学構造とも従来法と比較して一層均質化される
のである。 過方法としては公知の技術が適用されるが、
材として焼結金属フイルターで目開が3μm以
下のものが好適に用いられる。 [第4工程] 以上のような第3工程を経て得られた液よ
り、溶剤を400℃以下の温度で分離した後、ピツ
チを第4工程において400℃以上の温度で減圧下
あるいは常圧下で熱処理する。この熱処理では、
好ましくは450〜500℃の温度で60分以内で処理が
行なわれる。減圧下で行う場合は30mmHg以下で
行い、常圧下で行う場合は、窒素ガス等の不活性
ガスを吹き込むことによつて行う。従来のピツチ
調製法では、この段階での軽質油分の量が多いた
め、重合反応を再現性よく実施することが困難で
あつたが、この方法によれば、第4工程で除去さ
れる軽質油分量が少ないため、重合反応が再現性
よく実施でき、かつ光学等方性相の平均直径が
15μm以下になるまで熱処理を施しても得られる
ピツチの融点は、260〜320℃と低融点に抑えるこ
とができる。 原料ピツチに溶剤処理を施さない場合は、融点
を260〜320℃に抑えようとすると球状光学等方性
相の平均直径が数十μm以上でかつ直径100μm
以上のものも多数含有した状態になりピツチの紡
糸性が悪くなる。また、球状光学等方性相を減少
させるために熱処理を更に追加すると融点が320
℃を超えることになり、やはり紡糸性が低下す
る。 (b) 溶融紡糸 本発明方法では、前述のような紡糸用ピツチ
を溶融紡糸するに際し、紡糸口金として、少く
とも1つのスリツト部を有しかつ各スリツト部
における中心線距離をLn(mm)、ぬれぶち幅を
Wn(mm)としたとき、Lnの少くとも1つが下
記式()及び() Ln<10(mm) ………() 1.5Ln/Wn20 ………() を同時に満足する紡糸孔を1個又はそれ以上穿
設した紡糸口金を用いて溶融紡糸する。 本発明方法では、紡糸口金としていわゆるス
リツト部を有する紡糸孔を1個又は複数個穿設
した紡糸口金を用いるが、本発明方法ではその
うちでも前記中心線距離Ln及びぬれぶち幅Wn
が前記式()()を同時に満足するものを
選定する必要がある。ここでいう中心線距離
(Ln)及びぬれぶち幅(Wn)は次のごとく定
義される値である。 [紡糸孔における中心線距離Ln(mm)] 紡糸孔(開孔部)が単一のスリツトで構成され
ている場合には、そのスリツトの長手方向の中心
線の長さをLnとする。例えば第1図の如き直線
状の単一スリツトの場合は、その長手方向の中心
線の長さL1が中心線距離であり、この場合はス
リツトの長さと一致する。また、第2図の如き曲
線状の単一スリツトの場合も同様に長手方向の中
心線の長さL1である。第3図の如き未拡がり状
のスリツトの場合は、頂点aから底辺の中心cま
で直線の長さL1が中心線距離となる。 第4,5図の如く紡糸孔(開孔部)が互いに交
差する複数本のスリツトで構成されている場合
は、交差部に描いた内接円を除いた部分の各スリ
ツト中心線の長さである。例えば第4図の如きY
字形紡糸孔の場合は、3本のスリツトの各先端
a1,a2,a3から紡糸孔の中心cを結ぶ各直線1
a2c,3において、各先端から交差部の内接円の
円周に達するまでの長さL1,L2,L3が各スリツ
ト部の中心線長さとなる。従つてこのような紡糸
孔では各スリツトの長さが同一の場合はL1=L2
=L3となり、各スリツトの長さがそれぞれ異な
る場合にはL1≠L2≠L3となる。 また、第5図の如きH字形紡糸孔の場合には、
各スリツト先端a1,a2,a3,a4から各交差点中心
c1,c2における内接円の円周に至るまでの長さ
L1,L2,L3,L4及び両交差点中心c1,c2を結ぶ直
1 2のうち各内接円に含まれない部分の長さL5
が、それぞれ中心線距離となる。 また、1つの紡糸孔単位が独立した(交差しな
い)複数のスリツトで構成されている場合は、各
スリツトの中心線の長さをいう。例えば第6図の
如き2個の長円形の小孔で構成されている場合
は、それぞれの小孔における長手方向の中心線の
長さL1,L2が中心線距離となる。 [紡糸孔におけるぬれぶち幅Wn(mm)] 紡糸孔において前述の中心距離(Ln)算出の
基準となる各スリツトの最大幅すなわち各中心線
(Ln)と直交する直線の最大長をぬれぶち幅Wn
とする。 本発明で特定した紡糸孔において、中心線距離
Lnは大きいほどよいが、紡糸の安定性及び最終
炭素繊維の糸径を考慮すると10mm未満がよく、な
かでも0.07〜5mm程度に、特に0.1〜1mmが好ま
しい。 この紡糸孔においてLn/Wnの値がきわめて重
要であり、Ln/Wnが1.5未満では、後述するリ
ーフ構造が生成しない。Ln/Wnの値も大きい程
よいが、吐出安定性の観点から20以下とすべきで
ある。好適なLn/Wnの範囲は、紡糸孔の形状に
よつて異なるが、単一スリツトの場合は3
Ln/Wn15が特に好ましく、Y字形、十字形、
*形等の複数のスリツトが交わつたものの場合は
1.5Ln/Wn10が特に好ましい。 本発明者らの研究によれば、実質上中心線距離
Lnの全部又は殆んどが0.07〜5mmの範囲内にあ
り、かつ1.5Ln/Wn20の条件を満たすもの
が、繊維断面におけるリーフ構造の占める割合が
高くなるので、特に好適である。 中心線の数は1〜10、特に1〜6が好ましく、
中心線の数が多すぎるものは、紡糸口金工作上コ
スト高になるだけ不利である。 なお、従来のピツチ繊維の溶融紡糸に使用され
ている円形紡糸孔はLn=WnであつてLn/Wn=
1であり、このような紡糸孔では、本発明で特定
したピツチの性能を炭素繊維の物性に反映するこ
とができない。すなわち、円形紡糸孔では不融
化・焼成処理後の炭素繊維はラジアル構造をと
り、クラツクが発生して強度が低下する。また、
異形紡糸孔でも上述の条件を満足しないものはラ
ジアル構造及び/又はランダム構造となり、高強
度を発現しない。 本発明の方法で得られるピツチの性能を有効に
発現するために紡糸孔の形状は、前記()()
式を満足する範囲内で任意に選定し得るが、工業
的に実施する場合は、例えばY字形、十字形、*
形等の紡糸孔や直接状の単一スリツトの紡糸孔
が、紡糸孔の紡糸調子等の観点から特に好適であ
る。しかし、他の形状、例えばC字形、S字形、
H字形、L字形、T字形、ラセン形の字形等の形
状でもよい。いずれの紡糸孔もスリツトの隅部に
丸味(アール)をつけたものが、紡糸性がすぐれ
ているので好ましく、従つて第1,2,4,6図
のようなものが好適である。 溶融紡糸における紡糸温度としては紡糸ピツチ
の融点より40〜80℃高い温度を採用するのが好ま
しい。 本発明でいう融点とはDSCで測定される値で
あり、測定方法は後述するが、紡糸用ピツチの融
解開始温度を示す。 本発明において、紡糸温度は口金温度であり、
この温度は繊維断面形状(外形)及び内部構造
(ラメラ配列)に大きく影響する。紡糸温度を高
くすると繊維断面形状の紡糸孔形状からの変化が
大きく円形断面に近づく。更に高温にすると可紡
性が低下し、得られる繊維もボイドを含んだもの
となりやすい。口金温度が低い程、得られる繊維
の断面形状は紡糸孔の形状に近くなる。更に低温
にするとドラフト率が低下し糸径を細くすること
が困難となる。従つて、本発明方法では、紡糸温
度として、ピツチの融点より40〜80℃高い温度の
範囲内で、所望の繊維断面形状に応じて適宜選定
するのが適当である。 一方、紡糸温度が高い程炭素繊維の断面に見ら
れるリーフ状ラメラ配列構造(以下、「リーフ構
造」と略称する)の中心軸の直線からの変形が大
きくなるため、リーフ構造そのものも変形し、若
干判別しにくくなるが、リーフ構造であることに
かわりはなく、繊維はすぐれた物性を発現する。
具体例をあげるとY字形の紡糸孔を有する口金を
用いて紡糸すると、口金温度が低いと、外形はト
ライローバル形となり温度を上げるにつれてトラ
イアングルから円形へ連続的に変化する。リーフ
構造は、口金温度が低いと、中心軸も直線状で構
造も明瞭であるが、温度を上げるにつれて中心軸
が繊維断面形状(外形)の変化と対応して変形
し、構造もやや不明瞭になる。 こうして特殊な紡糸孔を有する紡糸口金から溶
融吐出されたピツチ繊維は、ドラフト率30以上、
好ましくは50以上で引取ることが好適である。こ
の値が大きいことは紡糸時の変形速度が大きく、
他の条件が同一の場合はドラフト率が大きい程、
急冷効果が大となる。 紡糸引取り速度は本発明で用いる紡糸用ピツチ
が均質であるため、1000m/分以上の高速でもき
わめて円滑に紡糸することができるが、通常300
〜2000m/分の範囲が好ましく用いられる。 (c) 不融化・焼成処理 このようにして得られたピツチ繊維は、次い
で酸素の存在下で加熱され不融化処理される。
この不融化処理工程は生産性及び繊維物性を左
右する重要な工程でできるだけ短時間で実施す
ることが好ましい。 このため、不融化温度、昇温速度、雰囲気ガ
ス等をピツチ繊維に対し適宜選択をする必要が
あるが、本発明方法で用いる紡糸用ピツチは低
分子物の少ない均質なピツチであること、及び
繊維断面形状が非円形であるときは単位断面積
当りの表面積が大きいこと等により、通常の円
形断面から紡糸された従来のピツチ繊維よりも
処理時間を短縮することが可能である。 このように不融化処理した繊維は次に不活性
ガス中において通常1000〜1500℃の温度で焼成
することにより、本発明方法の目的とする炭素
繊維を得ることができる。このものをそのまま
使用してもよいが、更に約3000℃程度まで加熱
して黒鉛化させてから使用することもできる。 発明の効果 本発明方法では、紡糸用ピツチが従来の光学異
方性ピツチと比較して融点が低く、かつ、顕微鏡
学的形態が特異であり、実質的に均質な光学異方
性ピツチであるため、紡糸調子が良好で、前述の
特殊な紡糸孔を有する紡糸口金を用いた溶融紡糸
により、従来の炭素繊維には全く見られなかつた
断面のラメラ配列がリーフ状の構造を有する新規
は炭素繊維が、安定かつ良好な均質性にてに製造
される。 ここで言う「リーフ状の構造」とは、炭素繊維
の長さ方向にほぼ垂直な方向で切断した断面を走
査型電子顕微鏡によつて観察するときに認められ
るもので、走査型電子顕微鏡で見た断面に、第7
〜11図に示すごとく中心軸から対称に15〜90゜
の角度で両側にのびた木の葉状のラメラ配列を有
する構造をいう。 第7〜11図は、それぞれ本発明方法により得
られる炭素繊維における断面を走査型電子顕微鏡
で観察したときの内部構造を模式的に図示した見
取図であるが、第7図のものは4つのリーフ状ラ
メラの組合せを有するものであり、第8〜10図
のものは3つのリーフ状ラメラの組合せを有する
ものである。第11図のものは2つのリーフ状ラ
メラが組合さつてあたかも1つのラメラのように
見えるものである。 第7〜11図より明らかな如く、本発明方法に
よる炭素繊維には、リーフ状ラメラ配列を有する
リーフ構造の部分(A)とその周りの構造の不明確な
部分(B)とが共存するが、従来の炭素繊維に多く見
られるようなラジアル構造は存在しない。 そして、繊維の内部構造がこのようなリーフ状
ラメラ配列をとることにより、不融化・焼成段階
でのクラツクの発生を防止することができ、構造
の緻密化が可能となり引張り強度400Kg/mm2以上、
モジユラス20T/mm2以上の高強度・高モジユラス
が発現する。 すなわち、本発明方法により得られるリーフ構
造を有するピツチ系炭素繊維は、その特異な内部
構造に起因してクラツクの発生が防止され、さら
に不融化・焼成段階での収縮が円滑におこなわれ
るため、強度・モジユラスが飛躍的に増大し
PAN系炭素繊維の物性を凌駕するものとなる。 更に、本発明方法で調製した紡糸用ピツチは、
低融点かつ均質であるため比較的低温で良好に紡
糸でき、紡糸調子も飛躍的に向上する。しかも、
得られる炭素繊維の物性バラツキも非常に小さく
均質性のすぐれたものとなる。 しかも、本発明方法では、炭素繊維の内部構造
を制御するために、特開昭59−53717号に記載の
ごとく紡糸に際し一旦高温を経由する必要もな
く、比較的低温で紡糸できるため、ピツチの熱安
定性を心配することもない。したがつて紡糸条件
が緩和される。 各指標の測定法 次に本発明におけるピツチ及び繊維の特性を表
わす各指標の測定法について説明する。 (a) 紡糸用ピツチの融点 パーキンエルマー社製SDC−1D型を用い、
アルミニウムセル(内径5mm)に100メツシユ
以下に粉砕したピツチ微粉末10mgを入れ、上か
ら押えた後、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分
で400℃近くまで昇温しつつ測定し、DSCのチ
ヤートにおける融点を示す吸熱ピークをもつて
紡糸ピツチの融点とする。この点はピツチが固
体から液体に転移を開始する温度である。 (b) 紡糸用ピツチの光学異方性量 固化した紡糸用ピツチ塊の断面を研磨し、反
射型偏光顕微鏡を用いて写真撮影する。写真撮
影時の倍率は得られたピツチによつて適宜選択
し、球状光学等方性相の数が最小100個以上に
なるよう測定視野をきめる。 次いで画像解析処理装置LUZEX500を用い
て、球状光学等方性相の全体に対する面積率、
円相当平均直径、単位面積当りの個数、直径の
分布を求める。 (c) 炭素繊維の物性 引張強度、伸度、モジユラスはJIS R−7601
「炭素繊維試験方法」に従つて測定する。 繊維径(単糸径)の測定は、円形断面繊維に
ついてはレーザーによる測定を行い、非円形断
面繊維については走査型電子顕微鏡写真よりn
=15の断面積の平均値を算出する。なお後述す
る実施例等においては相当する断面積を有する
円に換算したときの直径(μm)で平均値を示
し、バラツキはS.D.で表示した。 (d) リーフ状ラメラ配列の分率 炭素繊維断面の走査型電子顕微鏡写真より断
面積当りのリーフ状ラメラ配列部分の面積比率
で表わす。 実施例 以下、実施例をあげて本発明の方法を更に詳細
に説明する。 なお、後述する各実施例及び比較例において使
用した紡糸口金の紡糸孔は次の一覧表に示す通り
である。なお、表中のθは放射状スリツトの中心
線のなす角をラジアンで表示したものである。
【表】 実施例 1〜4 市販のコールタールピツチ(軟化点80℃、キノ
リン不溶部3.5%、ベンゼン不溶部18%、固定炭
素量52%)を、室温にてトルエンで処理した、ト
ルエン不溶部をとり出し、この不溶留分700gに
対し、テトラハイドロキノリン(THQ)2100g
を5のオートクレーブ中に仕込み窒素置換後、
撹拌下で昇温し450℃で1時間反応を行い水素化
した。冷却後とり出し、金網フイルター(3μm
以上カツト)を用いて反応液を100℃で加圧下に
おいて過した。ついで過より溶剤及びピツチ
中の低分子量物を減圧蒸留により留去した後、
460℃で、25分間減圧下(≒10mmHg)に高温短時
間の熱処理を施し、前面流れ構造の光学異方性ピ
ツチを得た。このピツチの融点は281℃、光学異
方性量が100%で実質的に光学等方性相を含有し
ないもので、キノリン不溶部が40%であつた。 該紡糸用ピツチを、溶融脱泡後、加熱ヒーター
を供えた定量フイダーに仕込み、別に設けた加熱
ゾーンを経て前掲の一覧表に示すY字形紡糸孔を
有する口金(イ)を用いて、口金温度を変化させ溶融
紡糸を行つた。 この場合のフイーダー吐出量を0.06ml/分/
孔、フイダー部温度(T1)を330℃、加熱ゾーン
温度(T2)を330℃一定にし、口金温度(T3)は
330〜345℃の範囲内で第1表に示す如く変化させ
て紡出し、引取り強度800m/分で巻取り、ピツ
チ繊維を製造した。紡糸調子は良好で紡糸時間1
時間の間に断糸することは全くなかつた。 このピツチ繊維を乾燥空気中にて10℃/分の昇
温速度で200℃から300℃まで昇温加熱し、300℃
で30分間保持した。 次いで窒素雰囲気中500℃/分の昇温速度で
1300℃まで昇温加熱し、3分間維持することによ
り焼成を行い、炭素繊維とした。 得られた炭素繊維の断面形状、リーフ状ラメラ
分率及び物性を第1表に示す。
【表】 実施例 5〜7 市販のコールタールピツチ(軟化点158℃、キ
ノリン不溶部2.2%、ベンゼン不溶部79%、固定
炭素量90%)をトルエン処理し、該ピツチ中のト
ルエン不溶部を用い実施例1と同様に水素化、
過及び熱処理を実施して光学異方性ピツチを得
た。このピツチの融点は274℃、光学等方性量は
8.5%、光学等方性相の平均粒径は6.2μm、球状
個数は1800個/mm2で100μm以上の径を有する球
状等方性相は含有していなかつた。 該紡糸用ピツチを用い、前掲の一覧表に示す口
金、(ロ)、(ハ)、(ニ)を使用して、実施例1と同様に紡
糸した。ただし、T1=320℃、T2=320℃、T3
340℃とし引取速度は800m/分とした。1時間に
わたつて紡糸したが、それぞれ紡糸調子は良好で
断糸回数は0であつた。 次いで実施例1と同一の条件で不融化・焼成処
理して炭素繊維を製造した。得られた炭素繊維の
断面形状物性等を第2表に示す。
【表】 実施例 8 市販の石油ピツチ(「アツシユランド」240)中
のアセトン不溶部を用いて実施例1と同様にし
て、光学異方性ピツチを得た。このピツチの融点
は279℃で光学異方性量はほぼ100%であつた。 該紡糸ピツチを用い前掲の一覧表に示す口金(イ)
を使用してT1=T2=320℃、T3=345℃とし、引
取り速度800m/分で1時間紡糸した。この間の
紡糸調子は良好で断糸回数は0であつた。 次いで実施例1と同一条件で保融化・焼成処理
して炭素繊維を製造した。得られた炭素繊維の断
面形状は円形に近いトライアングルで、リーフ状
ラメラ率は80%、糸径平均値は7.46μm、S.
D.0.25μm、強度455Kg/mm2、伸度1.98%、モジユ
ラス23T/mm2であつた。 実施例 9 市販のクレオソート油を減圧蒸留し、常圧換算
沸点約350℃以下の留分を採取した。該留分3
を5オートクレーブに仕込み触媒としてパラジ
ウムカーボン15gを加え、水素加圧下400℃で水
添を実施し、水素吸収がなくなつた後、冷却過
として水素化クレオソート油を得た。 実施例5で得られたトルエン処理後のトルエン
不溶部700gに対し前記水素化クレオソート油2
を5オートクレーブに仕込み、実施例1と同
様にして450℃で1時間反応さて水素化した。反
応液を取出した後、金網フイルター(3μm以上
カツト)を用いて、120℃で反応液を加圧過し
た。次いで液より溶剤を留去した後、460℃、
減圧下(≒10mmHg)、27分間熱処理を施し、全面
流れ構造の光学異方性ピツチを得た。融点は292
℃、光学異方性量は実質的に100%であつた。 該紡糸用ピツチを、前掲の一覧表に示すスリツ
ト状口金(ニ)を用いて、実施例1と同様にして紡糸
した引取速度800m/分で巻取りピツチ繊維を製
造したが、紡糸調子はきわめて良好で1時間紡糸
を続けたが、断糸は全くなかつた。 次いで、実施例1と同一の条件で不融化・焼成
を行い、断面にリーフ構造を有する炭素繊維を得
た。この繊維の物性は、糸径7.7μm、強度452
Kg/mm2、伸度1.92%、モジユラス23.5T/mm2であ
つた。 実施例 10 実施例9で得た蒸留クレオソート油2と実施
例5で得たトルエン不溶ピツチ700gに対し、触
媒としてパラジウムカーボン15gを加え、5オ
ートクレーブに仕込み窒素置換後、内温を400℃
に上昇した後、水素加圧下で水素化処理を実施
し、水素吸収がなくなつた後、冷却し実施例9と
同様に過をして、液を得た。 該液より溶剤を留去した後、460℃、減圧下
(≒10mmHg)、25分間熱処理を施し、融点283℃で
光学異方性量が実質的に100%の全面流れ構造の
ピツチを得た。この紡糸用ピツチを用いて実施例
1と同様に紡糸し、不融化・焼成処理したとこ
ろ、実施例1と同様の断面にリーフ構造を有する
炭素繊維を得た。 実施例 11 市販のコールタールピツチ(軟化点91℃、キノ
リン不溶部9.5%、ベンゼン不溶部29%、固定炭
素量58%)より、室温でトルエンに不溶な留分を
取出し、この不溶留分800gに対し、テトラハイ
ドロキノリン(THQ)2000gを混ぜて5オー
トクレーブ中に仕込み、窒素置換素、撹拌下で昇
温し430℃で30分間反応させ水素化した。冷却後
取出し、金網フイルター(3μm以上カツト)を
用いて反応液を100℃で加圧下において過した。
次いで液より溶剤及びピツチ中の低分子量物を
減圧蒸留により留去した後440℃、13分間減圧下
(≒10mmHg)に高温短時間の熱処理を施し全面流
れ構造の光学異方性ピツチを得た。このピツチの
融点は276℃、光学等方性相の含有量は4.9%、該
等方性相の平均粒径は5.1μm、球状個数は2300
個/mm2で、50μm以上の径を有する球状等方性相
を全く含有しないものであつた。 該紡糸ピツチを用い、単一スリツト型紡糸孔を
有する口金(ニ)を使用して、T1=320℃、T2=320
℃、T3=345℃とし、引取り速度は800m/分と
した。8時間にわたつて紡糸を継続したが断糸回
数は0であり、紡糸調子はきわめて良好であつ
た。 次いで実施例1と同一の条件で不融化・焼成処
理して炭素繊維を製造した。得られた炭素繊維の
断面は、リーフ構造を示し、該繊維の物性は、糸
径7.6μm、強度480Kg/mm2、伸度2.02%、モジユ
ラス23.8T/mm2であつた。 比較例 1 実施例1で用いた市販のコールタールピツチを
トルエン処理しないでそのまま使用し、高温短時
間熱処理条件を460℃、10mmHg下、30分とした以
外は実施例1と同様にして光学異方性ピツチを得
た。該紡糸ピツチの融点は275℃、光学等方性量
は17.3%、平均粒径79μm、個数24個/mm2で100μ
m以上の光学等方性相を多数含有していた。 該紡糸ピツチを前掲一覧表に示す口金(イ)を使用
してT1=T2=230℃、T3=340℃で紡糸引取速度
800m/分の条件以外は実施例1と同様にして1
時間紡糸したところ断糸回数は32回であつた。得
られた糸を実施例1と同様の条件で不融化・焼成
した炭素繊維の物性は、糸径7.50μm、S.D.1.25μ
m、強度425Kg/mm2、伸度1.77%、モジユラス
24.0T/mm2で、物性の平均値は高いが糸径、強度
ともバラツキが大きかつた。 比較例 2 実施例1で用いた紡糸用ピツチを、直径180μ
mの円形断面紡糸孔を有する口金を用い、吐出量
0.06ml/分/孔、T1=T2=320℃、T3=340℃で
紡糸し引取速度800m/分で巻取つた。 紡糸調子は良好であつたが得られたピツチ繊維
を実施例1と同一条件で不融化・焼成を実施した
ところ、得られた炭素繊維の断面はラジアル構造
で角度120゜程度のクラツクが生じており、リーフ
構造は全くみられなかつた。この繊維の物性は、
直径8.10μm、強度250Kg/mm2、伸度1.05%、モジ
ユラス23.8T/mm2であつた。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第6図は、それぞれ本発明方法で使用
する紡糸口金における紡糸孔の形状を例示する説
明図であり、各図におけるL,L1,L2…L5はそ
れぞれ紡糸孔スリツト部の中心線距離Lnを示し、
W,W1,W2…W5はそれぞれぬれぶち幅Wnを示
す。第7図〜第11図は、それぞれ本発明方法に
より製造される炭素繊維の断面内部構造を例示す
る見取図であり、各図におけるAはリーフ構造の
部分、Bは構造が不明確な部分を示す。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 光学異方性ピツチを溶融紡糸し、不融化・焼
    成してピツチ系炭素繊維を製造する方法におい
    て、 (a) 原料ピツチを25℃における溶解係数が8.5〜
    10の範囲内にある有機溶剤で処理して該溶剤不
    溶部を採取する第一工程と、該溶剤不溶部100
    重量部に対し水素化した2環以上の縮合多環芳
    香族化合物及び/又は水素化した含窒素芳香族
    化合物を100〜300重量部加え、自生圧下、400
    〜500℃の温度で水素化処理するか、又は、該
    溶剤不溶部100重量部に対し2環以上の縮合多
    環芳香族化合物及び/又は含窒素芳香族化合物
    100〜300重量部を加え水素添加用触媒の存在
    下、50Kg/cm2以上の水素加圧下で、350〜500℃
    の温度で水素化処理する第2工程と、得られた
    溶液状の水素化処理物を過する第3工程と、
    該過物を400℃以上の温度で減圧下あるいは
    常圧下で熱処理する第4工程とを順次行うこと
    により融点が260〜320℃である実質上均質な光
    学異方性ピツチを製造し、 (b) 上記光学異方性ピツチを、紡糸孔に少くとも
    1つのスリツト状開口部を有し、各スリツト部
    における中心線距離をLn、それに対応するぬ
    れぶち幅をWnとしたとき、Lnの少くとも1つ
    が、次式 Ln<10(mm) ………() 1.5Ln/Wn20 ………() を同時に満足する紡糸孔を有する紡糸口金から
    溶融紡糸し、 (c) 得られたピツチ繊維を保融化・焼成して、繊
    維断面にリーフ状ラメラ配列を有する炭素繊維
    を形成せしめる、 ことを特徴とするピツチ系炭素繊維の製造法。 2 第1工程において、使用する有機溶剤が、ア
    セトン、トルエン、キシレン、テトラハイドロフ
    ラン、クロロホルム、ジオキサンから選ばれた少
    なくとも1種の溶剤である特許請求の範囲第1項
    記載のピツチ系炭素繊維の製造法。 3 第2工程において使用する水素化した2環以
    上の縮合多環芳香族化合物の混合物が、アンスラ
    セン油、クレオネート油、吸収油、ナフタリン
    油、又はナフサ熱分解時に副生する軽油等のうち
    高沸点部(常圧換算沸点360℃以上)をカツトし
    たもの等を水素化したもの等から選ばれたもので
    ある特許請求の範囲第1項記載のピツチ系炭素繊
    維の製造法。 4 第2工程において使用する水素化した含窒素
    芳香族化合物が、テトラハイドロキノリン、ピペ
    リジンから選ばれたものである特許請求の範囲第
    1項記載のピツチ系炭素繊維の製造法。
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