JP7048205B2 - 負極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、負極の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)等の非水電解質二次電池は、既存の電池に比べて軽量且つエネルギー密度が高いことから、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として用いられている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として今後ますます普及していくことが期待されている。
リチウムイオン二次電池に用いられる負極は、典型的には、負極集電体上に負極活物質層が設けられた構成を有する。負極活物質層は、典型的には、炭素材料等の負極活物質を含む。負極活物質は、電荷担体であるリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な物質である。リチウムイオン二次電池に用いられる負極は、典型的には、負極集電体の片面または両面に、負極活物質を含む混合ペーストを塗布して乾燥した後、プレス(圧延)して製造される。このような製造方法によれば、負極活物質を高密度で充填配置することができる。
しかしながら、負極活物質間に隙間が存在する。そこで、特許文献1では、負極活物質層を作製するためのペーストにセラミック粒子を混合して、負極活物質層間に存在する隙間にセラミック粒子を配置することが提案されている。特許文献1には、これにより、負極の機械強度が向上し、サイクル特性が向上することが記載されている。
特開平10-255807号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の記載の方法により作製した負極を用いた二次電池において、サイクル特性に改善の余地があることを見出した。
そこで本発明の目的は、負極活物質、およびセラミック粒子を用いて負極を製造する方法であって、サイクル特性に優れた電池の作製を可能にする負極を製造する方法を提供することにある。
ここに開示される負極の製造方法は、負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程と、前記塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程と、前記負極活物質層をプレスする工程と、前記増粘剤を溶解可能な溶媒を、前記プレスした負極活物質層に、その含有量が500ppm以上5000ppm以下となるように吸収させる工程と、を包含する。前記負極ペーストにおいて、前記セラミック粒子は、前記負極ペーストの全固形分に対して1~20質量%含有されている。前記プレスする工程を実施した後の負極活物質層の多孔度は、30%以上55%以下である。
このような構成によれば、プレス処理を行った際に負極活物質層の骨格(負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤により形成される骨格)の破壊が起きた部分において、吸湿した水分によって増粘剤が再溶解することで骨格が再形成され、負極活物質の強度を向上させることができる。その結果、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いることにより、サイクル特性に優れた二次電池を作製することができる。
本発明の一実施形態に係る負極の製造方法の各工程を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いたリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いたリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない負極の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
以下、一実施形態を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。
図1に、本実施形態に係る負極の製造方法の各工程を示す。本実施形態に係る負極の製造方法は、負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程(ペースト塗工工程)S101と、当該塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程(乾燥工程)S102と、当該負極活物質層をプレスする工程(プレス工程)S103と、当該増粘剤を溶解可能な溶媒を、当該プレスした負極活物質層に、その含有量が500(質量)ppm以上5000(質量)ppm以下となるように吸収させる工程(吸収工程)S104と、を包含する。当該負極ペーストにおいて、当該セラミック粒子は、当該負極ペーストの全固形分に対して1~20質量%含有されている。また、当該プレスする工程を実施した後の負極活物質層の多孔度は、30%以上55%以下である。
まず、ペースト塗工工程S101について説明する。ペースト塗工工程S101は、例えば、次のようにして実施することができる。まず、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有するペーストを用意する。なお、本明細書において、「ペースト」とは、固形分の一部またはすべてが溶媒に分散した混合物のことをいい、いわゆる「スラリー」、「インク」等を包含する。
負極活物質としては、従来の二次電池に用いられるものを特に限定なく使用し得る。例えば、少なくとも一部にグラファイト構造を有する炭素材料が挙げられ、中でも、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を好適に用いることができる。炭素材料の表面は、非晶質炭素膜で被覆されていてもよい。
負極活物質の平均粒子径は、特に限定されず、従来の二次電池と同程度であってよい。負極活物質の平均粒子径は、例えば50μm以下、典型的には20μm以下、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは5μm~15μmである。
なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に
より測定される粒度分布おいて、累積度数が体積百分率で50%となる粒子径(D50)のことをいう。
負極活物質は、負極ペーストの全固形分中、50質量%を超えて含有されることが好ましく、より好ましくは70質量%~96質量%、さらに好ましくは、75~95質量%含有される。
セラミック粒子としては、充放電反応に関与しないものが好ましく、その例としては、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。セラミック粒子は、通常、炭素材料である負極活物質粒子よりもはるかに硬い材料であるため、負極活物質層の機械強度、例えば、硬さを高めることができる。その結果、本実施形態の製造方法により得られる負極を用いた二次電池は、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、サイクル特性(特にハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。
セラミック粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の平均粒子径の1/5以下であることが好ましい。
負極ペーストにおいて、セラミック粒子は、負極ペーストの全固形分に対して1~20質量%含有される。セラミック粒子の含有量が1質量%未満だと、セラミック粒子を含有させることにより得られる負極活物質層の機械強度向上効果、ひいては電池のサイクル特性向上効果を十分に得ることができない。一方、セラミック粒子の含有量が20質量%を超えると、セラミック粒子は抵抗体となる成分であるため、負極活物質層中に抵抗体となる成分の割合が増加し、電池のサイクル特性の低下を招く。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマーや、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、なかでも、CMCが好ましい。
増粘剤は、負極ペーストの全固形分中、好ましくは0.3質量%~3質量%、より好ましくは0.4質量%~2質量%含まれる。
また、負極ペーストは溶媒を含有する。溶媒としては、水系溶媒が好ましく用いられる。水系溶媒とは、水または水を主体とする混合溶媒を指す。当該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(例、低級アルコール、低級ケトン等)が挙げられる。水系溶媒は、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、水を含む。水系溶媒として最も好ましくは、水である。
負極ペーストは、結着剤を含有していてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)およびその変性体、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびその変性体、アクリルゴムおよびその変性体、フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、SBRが好ましい。
結着剤は、負極ペーストの全固形分中、0.1質量%~8質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.2質量%~3質量%、さらに好ましくは0.3質量%~2質量%含まれる。
負極ペーストの固形分濃度は、好ましくは40質量%~80質量%であり、より好ましくは45質量%~60質量%である。固形分濃度が上記範囲内であることにより、負極ペーストの乾燥効率を向上させることができる。また、負極ペーストの取り扱いが容易となり、均一な塗工が容易となるため、均一な厚みを有する負極活物質層を容易に形成することができる。
負極ペーストの調製は、負極活物質と、セラミック粒子と、増粘剤と、溶媒と、任意成分とを公知方法に従い混合することにより、行うことができる。
次いで、調製したペーストを、負極集電体上に塗工する。
負極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様に、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられ、なかでも、銅が好ましい。負極集電体の形状は、得られる負極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であってよい。好適には、負極集電体は、シート状または箔状である。負極集電体の厚みは特に限定されないが、負極集電体として銅製シートまたは銅箔を用いる場合、その厚みは、例えば6μm~30μmである。
負極集電体への上記負極ペーストの塗工は、公知方法に従い行うことができる。例えば、グラビアコーター、コンマコーター、スリットコーター、ダイコーター等の塗布装置を用いて、負極集電体上に上記負極ペーストを塗布することにより行うことができる。なお、負極活物質層は、負極集電体の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよく、好ましくは、両面に形成する。したがって、上記負極ペーストの塗工は、負極集電体の片面または両面に行われ、好ましくは両面に行われる。
次に、乾燥工程S102について説明する。当該工程S102は、公知方法に従い行うことができる。例えば、負極ペーストが塗工された負極集電体から、乾燥炉等の乾燥装置を用いて上記溶媒を除去することにより行うことができる。乾燥温度および乾燥時間は、使用する溶媒の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。乾燥温度は、例えば70℃超200℃以下(典型的には110℃~150℃)である。乾燥時間は、例えば10秒~240秒(典型的には30秒~180秒)である。
次にプレス工程S103について説明する。当該工程S103は、公知方法に従い行うことができる。このプレス工程S103を実施することにより、負極活物質層の厚み、密度等を所望の値に調整することができる。
ただし、プレス工程S103は、プレス後の負極活物質層の多孔度が、30%以上55%以下となるように行なわれる。負極活物質層の多孔度が30%未満だと、プレスにより負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤により形成された骨格が破壊されやすくなり、また、負極活物質層間の隙間が少な過ぎるため、後述の吸収工程S104における骨格の再形成が起こり難くなる。その結果、負極活物質層の機械強度が十分に向上しなくなる。一方、多孔度が55%を超える負極活物質層は、作製が困難である。
なお、負極活物質層の多孔度は、負極活物質の総体積に対して負極活物質層の空洞部分が占める割合のことをいい、例えば、下記式により算出することができる。
「多孔度」=(1-負極活物質層の各固形分の体積の和/負極活物質層の体積)×100
次に、吸収工程S104について説明する。
増粘剤を溶解可能な溶媒としては、負極ペーストの作製に用いる溶媒と同様のものが挙げられる。例えば、増粘剤が、CMC等のセルロース系ポリマーである場合には、当該溶媒には、上記水系溶媒を用いることができる。増粘剤と当該溶媒の好ましい組み合わせとしては、CMCと水である。
負極活物質層に上記溶媒をその含有量が500ppm以上5000ppm以下となるように吸収させる方法には、特に制限はなく、好適な方法としては、当該溶媒の蒸気を含む雰囲気下に、プレス工程S103を経た、負極活物質層が形成された負極集電体を置く方法が挙げられる。例えば、上記溶媒が水であった場合には、湿度を高く設定した恒温恒湿槽内に所定時間、負極活物質層が形成された負極集電体を置く。
吸収工程S104を経ることによって、負極活物質層の機械強度を向上させることができ、これにより、本実施形態の製造方法により得られる負極を用いた二次電池は、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、サイクル特性(特にハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。その理由は以下のように推測される。
乾燥工程S102を実施することにより、塗工された負極ペーストから溶媒が除去されて、負極活物質層において、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤による骨格が形成される。
プレス工程S103を実施することにより、負極活物質層の高密度化がなされるが、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤による骨格の一部がプレスの際の圧力により破壊される。負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤のうち、固化した増粘剤の強度が一番低いため、骨格の破壊は、主に固化した増粘剤の破断により起こる。
ここで、吸収工程S104を実施することにより、負極活物質層に、増粘剤を溶解可能な溶媒が吸収される。これにより固化した増粘剤が再溶解し、上記増粘剤が破断した部分が、溶解した増粘剤分子同士が混ざり合うことによって、再結合する。その結果、増粘剤が破断した部分での骨格の再形成が起こり、負極活物質層の機械強度が向上する。
このような機械強度が向上した負極活物質層を有する負極を二次電池に用いた場合には、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、充放電に伴う負極活物質層の体積変化が小さく、体積変化に伴う電解液の負極活物質層からの流出を防止することができ、充放電を繰り返した際の抵抗増加を抑制することができる。
ここで、再溶解した増粘剤による骨格の再形成を効果的に起こすために、負極活物質層における上記溶媒の含有量は、500ppm以上5000ppm以下である。上記溶媒の含有量が500ppm未満だと、骨格の再形成に十分な量の増粘剤を再溶解することができない。一方、上記溶媒の含有量が5000ppmを超えると、増粘剤の再溶解量が多くなり過ぎて、増粘剤がセラミック粒子と共に負極活物質全体を覆うように移動する。その結果、負極活物質層の骨格形成に寄与するセラミック粒子と増粘剤の量が減少する。
以上のようにして、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を得ることができる。本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いることにより、サイクル特性(特に、ハイレートサイクル特性)に優れた二次電池を作製することができる。
以下、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて作製されるリチウムイオン二次電池の構成例について説明する。なお、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて構成される二次電池は、以下の例に限られない。
図2に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解液(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型のリチウムイオン二次電池100である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された正極シート50と、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。なお、捲回電極体20の捲回軸方向(上記長手方向に直交するシート幅方向をいう。)の両端から外方にはみ出すように形成された正極活物質層非形成部分52a(即ち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)と負極活物質層非形成部分62a(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)には、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)や、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)が挙げられる。正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
負極シート60には、上述の本実施形態に係る製造方法により得られる負極が用いられる。
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
セパレータ70のばね定数に対する負極60のばね定数の比(負極60のばね定数/セパレータ70のばね定数)は、1.2以上であることが好ましい。
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、上記非水電解液中は、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
以上のようにして構成されるリチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<負極A1~9およびB1~9の作製>
負極活物質としての平均粒子径10μmの黒鉛と、セラミック粒子と、結着材としてのSBRと、増粘剤としてのCMCとを、これらの材料の質量比が、黒鉛とセラミック粒子の合計:SBR:CMC=99:0.5:0.5となるよう混練機に投入し、水で粘度を調整しながら混練して、負極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。使用したセラミック粒子の種類と量を表1に示す。
この負極ペーストを厚み10μmの長尺状の銅箔(負極集電体)の両面に105mm幅で塗布し、乾燥した。次いで、負極活物質層が表1に記載の多孔度となるような条件でプレス処理を行った。
負極B1~4およびB9については、次の吸湿操作を行なわず、この段階で負極の完成とした。
負極B1~4およびB9以外については、次いで、温度25℃、湿度70%に設定した恒温恒湿槽に置いて吸湿させた。このとき、吸湿量を恒温恒湿槽に置く時間により制御した。恒温恒湿槽から取り出して、負極A1~9およびB5~8を得た。
<多孔度の決定>
負極活物質層の多孔度は、下記式に基づいて算出した。
「多孔度」=(1-黒鉛、セラミック粒子、SBR、およびCMCの体積の和/負極活物質層の体積)×100
なお、黒鉛、セラミック粒子、SBR、およびCMCの体積の和は、各構成材(黒鉛、セラミック粒子、SBR、およびCMC)の体積をそれぞれ求め、その合計を算出した。
各構成材の体積=(5cm×5cmの負極活物質層重量)×(各構成材の固形分率)/(各構成材の真密度)
なお、真密度としては、次の値を用いた。
黒鉛:2.2g/cc、アルミナ:4.0g/cc、ベーマイト:3.0g/cc、水酸化アルミニウム:2.4g/cc
負極活物質層の体積は、(5cm×5cm×負極活物質層の厚み)として計算し、負極活物質層の厚みは、(サンプル厚み-銅箔厚み10μm)として計算した。
<含水率の測定>
得られた負極について、カールフィッシャー法により、負極活物質層中に含まれる水分量を測定した。なお、測定温度は120℃、測定時間は30分として、最大の水分量を求め、負極活物質層中の最大含水率を求めた。
<ばね定数測定>
上記作製した負極を5cm×5cm角に50枚切り出し、積層して測定用サンプルを作製した。このサンプルをSUS板で挟み、オートグラフ精密万能試験機にて荷重を印加した。「ばね定数=Δ荷重/Δ厚み変位」としてばね定数を算出した。
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
上記作製した負極を用いて、評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、正極活物質としての平均粒子径5μmのLiNi1/3Mn1/3Co1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比がLNCM:AB:PVdF=92:5:3となるよう混練機に投入し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、正極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。この正極ペーストを厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に100mm幅で塗布し、乾燥後、所定の厚みにプレスすることによって、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
上記で作製した正極シートと負極シートとを、2枚の厚み24μmのセパレータシート(PP/PE/PPの三層構造の多孔質シート;ばね定数:90kN/mm)とともに積層し、捲回した後、側面方向から押圧して拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体を作製した。次に、捲回電極体に、ケース蓋体と接続された正極端子および負極端子を溶接し、注液孔を有する角型の電池ケース本体に挿入した。そしてケース蓋体と電池ケース本体とを溶接して封止した。
続いて、電池ケースの注液孔から非水電解液を注入し、当該注液孔に封止用のネジを締め付けることにより、気密に封止した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。電池ケースの側面をSUS板で500kgfの荷重で拘束して、評価用リチウムイオン二次電池(電池設計容量:5Ah)を得た。
<電池抵抗の測定>
作製したリチウムイオン二次電池をSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の環境雰囲気下に置いた。20Cの電流値で10秒間の放電を行い、放電開始から10秒後の電圧値を測定し、電池抵抗を算出した。これを初期電池抵抗とした。
<ハイレート充電サイクル試験>
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃の温度条件にて、30Cで10秒間の定電流充電、10秒間の休止、1Cで300秒間の定電流放電、10秒間の休止を1サイクルとする充放電を2000サイクル行なった。2000サイクル後の電池抵抗を上記と同様の方法で求めた。(2000サイクル後電池抵抗/初期電池抵抗)×100より、抵抗増加率(%)を算出した。
Figure 0007048205000001
表1より、吸湿操作を行なわなかった負極B1は、負極のばね定数が低く、そのため、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。
吸湿操作を行なわなかった負極B2は、負極B1よりも負極活物質層の多孔度を低くしたが、負極のばね定数が低下し、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率がより高くなった。これは、負極活物質層の多孔度が低くなると、プレス処理を行った際の負極活物質層の骨格(負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤により形成される骨格)の破壊量が大きいためであると考えられる。
吸湿操作を行なわなかった負極B3は、負極B1よりもセラミック粒子の添加量を大幅に小さくしたが、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率がより高くなった。これは、負極活物質層中のセラミック粒子が配置されておらずばね定数の低い部分の影響が顕著になったためであると考えられる。
吸湿操作を行なわなかった負極B4は、負極B1よりもセラミック粒子の添加量を大幅に大きくしたが、結果は負極B1と同様であった。
吸湿操作を行なった負極A1~7は、負極のばね定数が高く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が低かった。これは、プレス処理を行った際に負極活物質層の骨格(負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤により形成される骨格)の破壊が起きた部分において、吸湿した水分によって増粘剤が再溶解することで骨格が再形成されたためであると考えられる。
一方、負極活物質層の多孔度が低い負極B5は、吸湿操作を行なってもばね定数があまり増大せず、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、負極活物質層の多孔度が低くなると、プレス処理を行った際の負極活物質層の骨格の破壊量が大きく、また、負極活物質間の隙間がほとんど無くなるため、吸湿させても骨格が再形成しにくいためであると考えられる。
また、セラミック粒子を添加しなかった負極B6は、吸湿操作を行なっても負極のばね定数が低く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。
セラミック粒子の添加量を大幅に大きくし、吸湿操作を行なった負極B7は、負極のばね定数は高かったものの、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、抵抗体となる、負極活物質間に存在する以外のセラミック粒子の量が多くなり、電池抵抗が増大したためと考えられる。
吸湿操作を長時間行なった負極B8は、負極のばね定数の増大の程度が小さく、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率の減少の程度が小さかった。これは、吸湿量が多くなり過ぎて増粘剤の再溶解量が多くなり、増粘剤がセラミック粒子と共に負極活物質全体を覆うように移動するためであると考えられる。そして、その結果、負極活物質層の骨格形成に寄与するセラミック粒子と増粘剤の量が減少するためと考えられる。
また、セラミック粒子を添加せず、吸湿操作を行なわなかった負極B9は、負極のばね定数が低く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。
吸湿操作を行なった負極A8およびA9では、セラミック粒子の種類を変更したが、セラミック粒子の種類を変更しても、負極のばね定数が高く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が低いという所望の結果が得られた。
以上の結果より、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を、二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)に用いた場合には、サイクル特性(特に、ハイレートサイクル特性)に優れたものとなることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池

Claims (1)

  1. 負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程と、
    前記塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程と、
    前記負極活物質層をプレスする工程と、
    前記増粘剤を溶解可能な溶媒を、前記プレスした負極活物質層に、その含有量が500ppm以上5000ppm以下となるように吸収させる工程と、
    を包含する負極の製造方法であって、
    前記負極ペーストにおいて、前記セラミック粒子は、前記負極ペーストの全固形分に対して1~20質量%含有されており、
    前記プレスする工程を実施した後であって、前記吸収させる工程の前の負極活物質層の多孔度は、30%以上55%以下である、
    負極の製造方法。
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