JP6996840B2 - 負極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、負極の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)等の非水電解質二次電池は、既存の電池に比べて軽量且つエネルギー密度が高いことから、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源として用いられている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として今後ますます普及していくことが期待されている。
リチウムイオン二次電池に用いられる負極は、典型的には、負極集電体上に負極活物質層が設けられた構成を有する。負極活物質層は、典型的には、炭素材料等の負極活物質を含む。負極活物質は、電荷担体であるリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な物質である。リチウムイオン二次電池に用いられる負極は、典型的には、負極集電体の片面または両面に、負極活物質を含む混合ペーストを塗布して乾燥した後、プレス(圧延)して製造される。このような製造方法によれば、負極活物質を高密度で充填配置することができる。
しかしながら、負極活物質間に隙間が存在する。そこで、特許文献1では、負極活物質層を作製するためのペーストにセラミック粒子を混合して、負極活物質層間に存在する隙間にセラミック粒子を配置することが提案されている。特許文献1には、これにより、負極の機械強度が向上し、サイクル特性が向上することが記載されている。
特開平10-255807号公報
負極ペーストを調製する際には、負極活物質の分散性を向上させ、負極ペーストの粘度を調整するために、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤を添加することが一般的に行なわれている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、負極活物質、およびセラミック粒子を含有する負極ペーストに、カルボキシメチルセルロース等の一般的な増粘剤を用いた場合には、セラミック粒子による負極の機械強度向上効果が得られず、電池のサイクル特性向上効果を得ることが困難であることを見出した。
そこで本発明の目的は、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を用いて負極を製造する方法であって、電池のサイクル特性向上効果を与える負極を容易に製造することができる方法を提供することにある。
ここに開示される負極の製造方法は、負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程と、前記塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程と、を包含する。前記増粘剤は、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を含む。前記負極ペーストにおいて、前記低分子ゲル化剤は、前記負極ペーストの全固形分に対して0.5~10質量%含有されている。前記負極ペーストにおいて、前記セラミック粒子は、前記負極ペーストの全固形分に対して3~20質量%含有されている。
このような構成によれば、増粘剤として脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いたことにより、負極ペースト混練時のせん断力により、一時的に増粘剤を低分子化することができ、負極ペーストを低粘度化できる。よって、負極ペーストが低粘度であるため、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質間の隙間への増粘剤およびセラミック粒子の移動が起きて、負極活物質間の隙間にセラミック粒子を十分に配置することができる。そして、乾燥完了時までに低分子ゲル化剤が自己組織化して高分子ファイバー化することにより、負極活物質層の強固な骨格を構築することができる。このため、電池のサイクル特性向上効果を与える負極を容易に製造することができる。
本発明の一実施形態に係る負極の製造方法の各工程を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いたリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いたリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない負極の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
以下、一実施形態を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。
図1に、本実施形態に係る負極の製造方法の各工程を示す。本実施形態に係る負極の製造方法は、負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程(ペースト塗工工程)S101と、当該塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程(乾燥工程)S102と、を包含する。当該増粘剤は、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を含む。当該負極ペーストにおいて、当該低分子ゲル化剤は、当該負極ペーストの全固形分に対して0.5~10質量%含有されている。当該負極ペーストにおいて、当該セラミック粒子は、当該負極ペーストの全固形分に対して3~20質量%含有されている。
まず、ペースト塗工工程S101について説明する。ペースト塗工工程S101は、例えば、次のようにして実施することができる。まず、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有するペーストを用意する。なお、本明細書において、「ペースト」とは、固形分の一部またはすべてが溶媒に分散した混合物のことをいい、いわゆる「スラリー」、「インク」等を包含する。
負極活物質としては、従来の二次電池に用いられるものを特に限定なく使用し得る。例えば、少なくとも一部にグラファイト構造を有する炭素材料が挙げられ、中でも、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を好適に用いることができる。炭素材料の表面は、非晶質炭素膜で被覆されていてもよい。
負極活物質の平均粒子径は、特に限定されず、従来の二次電池と同程度であってよい。負極活物質の平均粒子径は、例えば50μm以下、典型的には20μm以下、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは5μm~15μmである。
なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に
より測定される粒度分布おいて、累積度数が体積百分率で50%となる粒子径(D50)のことをいう。
負極活物質は、負極ペーストの全固形分中、50質量%を超えて含有されることが好ましく、より好ましくは70質量%~96質量%、さらに好ましくは、75~95質量%含有される。
セラミック粒子としては、充放電反応に関与しないものが好ましく、その例としては、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。セラミック粒子は、通常、炭素材料である負極活物質粒子よりもはるかに硬い材料であるため、負極活物質層の機械強度、例えば、硬さを高めることができる。その結果、本実施形態の製造方法により得られる負極を用いた二次電池は、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、サイクル特性(特にハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。
セラミック粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の平均粒子径の1/5以下であることが好ましい。
負極ペーストにおいて、セラミック粒子は、負極ペーストの全固形分に対して3~20質量%含有される。セラミック粒子の含有量が3質量%未満だと、セラミック粒子を含有させることにより得られる負極活物質層の機械強度向上効果、ひいては電池のサイクル特性向上効果を十分に得ることができない。一方、セラミック粒子の含有量が20質量%を超えると、セラミック粒子は抵抗体となる成分であるため、負極活物質層中に抵抗体となる成分の割合が増加し、電池のサイクル特性の低下を招く。
また、負極ペーストは溶媒を含有する。溶媒としては、水系溶媒が好ましく用いられる。水系溶媒とは、水または水を主体とする混合溶媒を指す。当該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(例、低級アルコール、低級ケトン等)が挙げられる。水系溶媒は、好ましくは、80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、水を含む。水系溶媒として最も好ましくは、水である。
本実施形態においては、増粘剤には、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いる。脂質ペプチド化合物は、脂肪酸とペプチドとがアミド結合によって結合してなる化合物、またはその塩である。低分子ゲル化剤には、脂質ペプチド化合物を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪酸の炭素数(後述の式(1)および式(2)におけるアシル基の炭素数に相当する)は、例えば10~30である。なお、ここでいう炭素数は、カルボニル基(-CO-)の炭素を含む。
ペプチドは、例えば2~10程度のアミノ酸残基を有する。ペプチドを構成するアミノ酸残基は、2種以上のアミノ酸の残基であってもよく、1種のアミノ酸の残基であってもよい。アミノ酸は、20種のアミノ酸から選択することができ、例として、グリシン、ヒスチジン等が挙げられる。
ペプチドを構成するアミノ酸残基の数が2である場合(ペプチドがジペプチドである場合)、脂質ペプチド化合物は、例えば下記の式(1)で表される。また、ペプチドを構成するアミノ酸残基の数が3である場合(ペプチドがトリペプチドである場合)、脂質ペプチド化合物は、例えば下記の式(2)で表される。下記の式(1)および式(2)に示されるように、脂質ペプチド化合物は、疎水性の脂質部(アシル基)と親水性のペプチド部から構成される。
Figure 0006996840000001
Figure 0006996840000002
式(1)および式(2)において、Rは、例えば、炭素数9~29程度の直鎖状脂肪族基(例、アルキル基など)である。R~Rは、それぞれ独立に、例えば、全20種のアミノ酸から選択されるいずれかのアミノ酸に由来する基、すなわち、アミノ酸をR-CH(CH)COOHで表したときのRに相当する基(ただし、アミノ酸がグリシンである場合は、水素)である。
なお、脂質ペプチド化合物は式(1)および式(2)において、ペプチド部が有するアミノ基(R~Rが有するアミノ基を含む)に、アミド化反応によりさらに1つ以上の脂肪酸が結合された化合物であってもよい。
脂質ペプチド化合物(1分子)の分子量は、例えば50~1000程度である。また、低分子ゲル化剤は、通常、複数の脂質ペプチド化合物の集合体を含んでいてもよく、低分子ゲル化剤の重量平均分子量は、例えば50~10000程度である。なお、低分子ゲル化剤の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
脂質ペプチド化合物は、溶媒中で一次元的に自己集合(自己組織化)して擬似的な高分子ファイバー(超分子ファイバー)を形成する特性を有している。例えば、脂質ペプチド化合物が水系溶媒中に投入されると、複数の脂質ペプチド分子は、疎水性の上記脂質部を中心として集合する。また、複数の脂質ペプチド分子の間で、上記ペプチド部のペプチド結合(-CONH-)の水素同士が水素結合を形成する。つまり、複数の脂質ペプチド分子が、分子間非共有結合を形成する。このようにして、脂質ペプチド化合物は、高分子ファイバーを形成する。
また、形成された高分子ファイバーは、容易に切断されて低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子となる。これは、高分子ファイバーを形成しているのは、結合力の弱い水素結合であるためである。そして、切断後の低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子は、溶媒中にある限り、自己組織化して、高分子ファイバーを再形成し得る。
したがって、増粘剤として、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いた場合には、乾燥工程S102の実施前は、脂質ペプチド化合物を低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子の状態にし、乾燥工程S102の実施後は、自己組織化した高分子ファイバーの状態にすることができ、これにより、セラミック粒子を負極活物質間の隙間に多く配置することができ、また負極活物質層の強度を向上させることができる。
これについて詳細に説明すると、乾燥工程S102において、溶媒が除去されることによって、溶媒が存在した場所に空間が生じ得る。従来のようにカルボキシメチルセルロース等の高分子増粘剤を用いた場合には、負極ペーストの初期粘度は高く、乾燥するにつれてさらに粘度は上昇していく。したがって、乾燥工程S102において、負極ペーストの粘度が高くなり過ぎて、高分子増粘剤およびセラミック粒子は移動することができず、溶媒の除去により生じた空間を高分子増粘剤およびセラミック粒子により埋めることができない。よって、負極活物質層において、負極活物質間の隙間にセラミック粒子を効果的に配置することができず、セラミック粒子による負極活物質層の機械強度向上効果(さらには電池のサイクル特性向上効果)を十分に得ることが困難である。
これに対し、高分子増粘剤の代わりに低分子増粘剤を用いて、負極ペーストの粘度を低くすることが考えられる。低分子増粘剤を用いた場合には、負極ペーストの粘度が低いため、乾燥工程S102において、溶媒の除去により生じた空間に、低分子増粘剤増粘剤が移動し、これに伴いセラミック粒子も移動する(なお、この移動は、溶媒が乾燥により減少するにつれ、狭い空間(負極活物質間の隙間)へ残溶媒が移動しようとする毛細管現象を駆動力として起こる)。その結果、負極活物質間の隙間に、セラミック粒子を効果的に配置することができる。しかしながら、低分子増粘剤は、分子鎖が短く、負極活物質間を結合する力が弱いために、負極活物質層において強固な骨格を構築することができない。その結果、負極活物質層の機械強度が弱くなる。
しかしながら、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤によれば、乾燥工程S102の実施前に、脂質ペプチド化合物を低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子の状態にすることにより、乾燥工程S102において、溶媒の除去により生じた空間に、毛細管現象による溶媒の移動に伴って低分子ゲル化剤が移動し、さらにこれに伴ってセラミック粒子も移動する。その結果、負極活物質間の隙間に、セラミック粒子を効果的に配置することができる。そして乾燥完了時には、自己組織化により低分子ゲル化剤が高分子ファイバーの状態となっており、負極活物質同士を十分な強度で結合させることができ、負極活物質層において強固な骨格を構築することができる。よって、セラミック粒子による負極活物質層の機械強度向上効果を効果的に得ることができる。そして、本実施形態の製造方法により得られる負極を用いた二次電池は、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、サイクル特性(特にハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。
負極ペーストにおいて、低分子ゲル化剤の含有量は、負極ペーストの全固形分に対して0.5~10質量%である。低分子ゲル化剤の含有量が0.5質量%未満だと、負極活物質間を結合する低分子ゲル化剤の量が少なくなり過ぎて、負極活物質層において十分に強固な骨格を構築することができない。一方、10質量%を超えると、負極ペーストの粘度が高くなり過ぎて、増粘剤およびセラミック粒子は移動することができず、乾燥時に溶媒の除去により生じる空間にセラミック粒子を十分に配置することができなくなる。
負極ペーストは、結着剤を含有していてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)およびその変性体、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびその変性体、アクリルゴムおよびその変性体、フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、SBRが好ましい。
結着剤は、負極ペーストの全固形分中、0.1質量%~8質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.2質量%~3質量%、さらに好ましくは0.3質量%~2質量%含まれる。
負極ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内で、低分子ゲル化剤以外の増粘剤を含有していてもよい
負極ペーストの固形分濃度は、好ましくは40質量%~80質量%であり、より好ましくは45質量%~60質量%である。固形分濃度が上記範囲内であることにより、負極ペーストの乾燥効率を向上させることができる。また、負極ペーストの取り扱いが容易となり、均一な塗工が容易となるため、均一な厚みを有する負極活物質層を容易に形成することができる。
負極ペーストの調製は、負極活物質と、セラミック粒子と、溶媒と、増粘剤としての低分子ゲル化剤とを公知の混合装置、混練装置等を用いて混合することにより、行うことができる。混合または混練の際には、低分子ゲル化剤を構成する脂質ペプチド化合物が、低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子の状態になるようなせん断力が生じる条件を選択する。例えば、脂質ペプチド化合物の種類と量に応じて、混合装置や混練装置の回転数等を、脂質ペプチド化合物が、低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子の状態になるように調整する。
次いで、調製したペーストを、負極集電体上に塗工する。
負極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様に、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられ、なかでも、銅が好ましい。負極集電体の形状は、得られる負極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であってよい。好適には、負極集電体は、シート状または箔状である。負極集電体の厚みは特に限定されないが、負極集電体として銅製シートまたは銅箔を用いる場合、その厚みは、例えば6μm~30μmである。
負極集電体への上記負極ペーストの塗工は、公知方法に従い行うことができる。例えば、グラビアコーター、コンマコーター、スリットコーター、ダイコーター等の塗布装置を用いて、負極集電体上に上記負極ペーストを塗布することにより行うことができる。なお、負極活物質層は、負極集電体の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよく、好ましくは、両面に形成する。したがって、上記負極ペーストの塗工は、負極集電体の片面または両面に行われ、好ましくは両面に行われる。
次に、乾燥工程S102について説明する。当該工程S102は、公知方法に従い行うことができる。例えば、負極ペーストが塗工された負極集電体から、乾燥炉等の乾燥装置を用いて上記溶媒を除去することにより行うことができる。乾燥温度および乾燥時間は、使用する溶媒の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。乾燥温度は、例えば70℃超200℃以下(典型的には110℃~150℃)である。乾燥時間は、例えば10秒~240秒(典型的には30秒~180秒)である。
乾燥後、負極に適宜プレス処理を施すことによって、負極活物質層の厚み、目付量、密度等を調整することができる。
以上のようにして、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を得ることができる。
本実施形態に係る負極の製造方法によれば、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを用いながらも、電池のサイクル特性向上効果を与える負極を容易に製造することができる。本実施形態に係る製造方法により得られる負極を、二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)に用いた場合には、サイクル特性(特に、ハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。
以下、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて作製されるリチウムイオン二次電池の構成例について説明する。なお、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて構成される二次電池は、以下の例に限られない。
図2に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解液(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型のリチウムイオン二次電池100である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解液を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された正極シート50と、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。なお、捲回電極体20の捲回軸方向(上記長手方向に直交するシート幅方向をいう。)の両端から外方にはみ出すように形成された正極活物質層非形成部分52a(即ち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)と負極活物質層非形成部分62a(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)には、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)や、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)が挙げられる。正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
負極シート60には、上述の本実施形態に係る製造方法により得られる負極が用いられる。
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
非水電解質は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、上記非水電解液中は、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
以上のようにして構成されるリチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<負極A1~7および負極B1~6の作製>
負極活物質としての平均粒子径10μmの黒鉛と、セラミック粒子と、結着材としてのSBRと、増粘剤とを、これらの材料の質量比が、黒鉛:セラミック粒子:SBR:増粘剤=99-x-y:x:0.5:yとなるよう混練機に投入し、水で粘度を調整しながら混練して、負極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。混練の際、せん断力を与えるために、回転数は50rpmとした。ただし、負極B1の作製時のみ回転数は20rpmとした。使用したセラミック粒子の種類と添加量(上記比のx)、および増粘剤の種類と添加量(上記比のy)を表1に示す。この負極ペーストを厚み10μmの長尺状の銅箔(負極集電体)の両面に105mm幅で塗布し、乾燥後、所定の厚みにプレスすることによって、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極シートを作製した。
<負極ペースト粘度測定>
負極ペーストの粘度を、B型粘度計を用いて回転速度20rpmの条件で測定した。
<ばね定数測定>
上記作製した負極を5cm×5cm角に50枚切り出し、積層して測定用サンプルを作製した。このサンプルをSUS板で挟み、オートグラフ精密万能試験機にて荷重を印加した。「ばね定数=Δ荷重/Δ厚み変位」としてばね定数を算出した。このばね定数が高いほど、負極活物質層の機械強度が高いといえる。
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
上記作製した負極を用いて、評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、正極活物質としての平均粒子径5μmのLiNi1/3Mn1/3Co1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比がLNCM:AB:PVdF=92:5:3となるよう混練機に投入し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、正極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。この正極ペーストを厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に100mm幅で塗布し、乾燥後、所定の厚みにプレスすることによって、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
上記で作製した正極シートと負極シートとを、2枚の厚み24μmのセパレータシート(PP/PE/PPの三層構造の多孔質シート)とともに積層し、捲回した後、側面方向から押圧して拉げさせることによって扁平形状の捲回電極体を作製した。次に、捲回電極体に、ケース蓋体と接続された正極端子および負極端子を溶接し、注液孔を有する角型の電池ケース本体に挿入した。そしてケース蓋体と電池ケース本体とを溶接して封止した。
続いて、電池ケースの注液孔から非水電解液を注入し、当該注液孔に封止用のネジを締め付けることにより、気密に封止した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。電池ケースの側面をSUS板で500kgfの荷重で拘束して、評価用リチウムイオン二次電池(電池設計容量:5Ah)を得た。
<電池抵抗の測定>
作製したリチウムイオン二次電池をSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の環境雰囲気下に置いた。20Cの電流値で10秒間の放電を行い、放電開始から10秒後の電圧値を測定し、電池抵抗を算出した。これを初期電池抵抗とした。
<ハイレート充電サイクル試験>
電池抵抗を測定したリチウムイオン二次電池をSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の環境雰囲気下に置いた。そして30Cで10秒間の定電流充電、10秒間の休止、1Cで300秒間の定電流放電、10秒間の休止を1サイクルとする充放電を2000サイクル行なった。2000サイクル後の電池抵抗を上記と同様の方法で求めた。(2000サイクル後電池抵抗/初期電池抵抗)×100より、抵抗増加率(%)を算出した。
Figure 0006996840000003
表1より、高分子増粘剤を用いた負極B1では、負極ペーストの粘度が高く、負極のばね定数(すなわち、負極活物質層の強度)が低かった。また、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、高分子増粘剤を用いた場合には、負極ペーストの粘度が高く、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質層の空間への増粘剤およびセラミック粒子の移動が起こらず、負極活物質間の隙間にセラミック粒子が十分に配置されなかったためと考えられる。
高分子増粘剤を用いた負極B2では、負極ペースト混練時の回転数を増大させることにより、高いせん断力を与えて高分子鎖を切断し、増粘剤の低分子化を行なった。その結果、負極ペーストの粘度は低下したものの、負極のばね定数の増大はほとんど見られず、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、増粘剤の低分子化により負極ペーストの粘度が低下し、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質層の空間への増粘剤およびセラミック粒子の移動は起きたが、増粘剤が低分子量であるため、負極活物質層の骨格を強固にすることができなかったためと考えられる。
これに対し、負極A1~A7は、ばね定数(すなわち、負極活物質層の強度)が非常に高く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が低かった。これは、増粘剤として脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いたことにより、負極ペースト混練時のせん断力により、一時的に増粘剤を低分子化することができ、負極ペーストを低粘度化できたためであると考えられる。すなわち、負極ペーストが低粘度であるため、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質層の空間への増粘剤およびセラミック粒子の移動が起きて、負極活物質間の隙間にセラミック粒子が十分に配置されたためであると考えられる。そして、これに加え、乾燥完了時までに低分子ゲル化剤が自己組織化して高分子ファイバー化することにより、負極活物質層の骨格を強固にすることができたためと考えられる。
負極B3では、セラミック粒子の添加量を2質量%にしたが、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、セラミック粒子の添加量が少なすぎて、負極活物質層中のばね定数が増加されていない部分による悪影響が顕著となったためと考えられる。
負極B4では、セラミック粒子の添加量を25質量%にしたが、負極のばね定数は高かったものの、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、抵抗体となる、負極活物質間に存在する以外のセラミック粒子の量が多くなり、電池抵抗が増大したためと考えられる。
負極B5では、低分子ゲル化剤の添加量を0.3質量%にしたが、負極のばね定数の増大は小さく、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、低分子ゲル化剤の添加量が少なすぎて、負極活物質間を十分に結合させることができず、負極活物質層の強固な骨格を構築することができなかったためと考えられる。
負極B6では、低分子ゲル化剤の添加量を12質量%にしたが、負極のばね定数の増大は小さく、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、低分子ゲル化剤の添加量が多すぎて負極ペーストの粘度が増加し、負極B1と同様の現象が起きたものと考えられる。
以上の結果より、本実施形態に係る負極の製造方法によれば、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを用いながらも、電池のサイクル特性向上効果を与える負極を容易に製造することができることがわかる。そして、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を、二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)に用いた場合には、サイクル特性(特に、ハイレートサイクル特性)に優れたものとなることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池

Claims (1)

  1. 負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程と、
    前記塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程と、
    を包含する負極の製造方法であって、
    前記増粘剤は、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を含み、
    前記負極ペーストにおいて、前記低分子ゲル化剤は、前記負極ペーストの全固形分に対して0.5~10質量%含有されており、
    前記負極ペーストにおいて、前記セラミック粒子は、前記負極ペーストの全固形分に対して3~20質量%含有されている、
    負極の製造方法。
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