JP6996840B2 - 負極の製造方法 - Google Patents
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Description
このような構成によれば、増粘剤として脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いたことにより、負極ペースト混練時のせん断力により、一時的に増粘剤を低分子化することができ、負極ペーストを低粘度化できる。よって、負極ペーストが低粘度であるため、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質間の隙間への増粘剤およびセラミック粒子の移動が起きて、負極活物質間の隙間にセラミック粒子を十分に配置することができる。そして、乾燥完了時までに低分子ゲル化剤が自己組織化して高分子ファイバー化することにより、負極活物質層の強固な骨格を構築することができる。このため、電池のサイクル特性向上効果を与える負極を容易に製造することができる。
以下、一実施形態を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。
負極活物質の平均粒子径は、特に限定されず、従来の二次電池と同程度であってよい。負極活物質の平均粒子径は、例えば50μm以下、典型的には20μm以下、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは5μm~15μmである。
なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に
より測定される粒度分布おいて、累積度数が体積百分率で50%となる粒子径(D50)のことをいう。
負極活物質は、負極ペーストの全固形分中、50質量%を超えて含有されることが好ましく、より好ましくは70質量%~96質量%、さらに好ましくは、75~95質量%含有される。
セラミック粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の平均粒子径の1/5以下であることが好ましい。
これに対し、高分子増粘剤の代わりに低分子増粘剤を用いて、負極ペーストの粘度を低くすることが考えられる。低分子増粘剤を用いた場合には、負極ペーストの粘度が低いため、乾燥工程S102において、溶媒の除去により生じた空間に、低分子増粘剤増粘剤が移動し、これに伴いセラミック粒子も移動する(なお、この移動は、溶媒が乾燥により減少するにつれ、狭い空間(負極活物質間の隙間)へ残溶媒が移動しようとする毛細管現象を駆動力として起こる)。その結果、負極活物質間の隙間に、セラミック粒子を効果的に配置することができる。しかしながら、低分子増粘剤は、分子鎖が短く、負極活物質間を結合する力が弱いために、負極活物質層において強固な骨格を構築することができない。その結果、負極活物質層の機械強度が弱くなる。
しかしながら、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤によれば、乾燥工程S102の実施前に、脂質ペプチド化合物を低分子ファイバーまたは脂質ペプチド分子の状態にすることにより、乾燥工程S102において、溶媒の除去により生じた空間に、毛細管現象による溶媒の移動に伴って低分子ゲル化剤が移動し、さらにこれに伴ってセラミック粒子も移動する。その結果、負極活物質間の隙間に、セラミック粒子を効果的に配置することができる。そして乾燥完了時には、自己組織化により低分子ゲル化剤が高分子ファイバーの状態となっており、負極活物質同士を十分な強度で結合させることができ、負極活物質層において強固な骨格を構築することができる。よって、セラミック粒子による負極活物質層の機械強度向上効果を効果的に得ることができる。そして、本実施形態の製造方法により得られる負極を用いた二次電池は、負極活物質層の圧縮変形が抑制されているため、サイクル特性(特にハイレートサイクル特性)に優れたものとなる。
結着剤は、負極ペーストの全固形分中、0.1質量%~8質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.2質量%~3質量%、さらに好ましくは0.3質量%~2質量%含まれる。
負極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様に、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられ、なかでも、銅が好ましい。負極集電体の形状は、得られる負極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であってよい。好適には、負極集電体は、シート状または箔状である。負極集電体の厚みは特に限定されないが、負極集電体として銅製シートまたは銅箔を用いる場合、その厚みは、例えば6μm~30μmである。
以上のようにして、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を得ることができる。
以下、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて作製されるリチウムイオン二次電池の構成例について説明する。なお、本実施形態に係る製造方法により得られる負極を用いて構成される二次電池は、以下の例に限られない。
なお、上記非水電解液中は、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
負極活物質としての平均粒子径10μmの黒鉛と、セラミック粒子と、結着材としてのSBRと、増粘剤とを、これらの材料の質量比が、黒鉛:セラミック粒子:SBR:増粘剤=99-x-y:x:0.5:yとなるよう混練機に投入し、水で粘度を調整しながら混練して、負極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。混練の際、せん断力を与えるために、回転数は50rpmとした。ただし、負極B1の作製時のみ回転数は20rpmとした。使用したセラミック粒子の種類と添加量(上記比のx)、および増粘剤の種類と添加量(上記比のy)を表1に示す。この負極ペーストを厚み10μmの長尺状の銅箔(負極集電体)の両面に105mm幅で塗布し、乾燥後、所定の厚みにプレスすることによって、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極シートを作製した。
負極ペーストの粘度を、B型粘度計を用いて回転速度20rpmの条件で測定した。
上記作製した負極を5cm×5cm角に50枚切り出し、積層して測定用サンプルを作製した。このサンプルをSUS板で挟み、オートグラフ精密万能試験機にて荷重を印加した。「ばね定数=Δ荷重/Δ厚み変位」としてばね定数を算出した。このばね定数が高いほど、負極活物質層の機械強度が高いといえる。
上記作製した負極を用いて、評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、正極活物質としての平均粒子径5μmのLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比がLNCM:AB:PVdF=92:5:3となるよう混練機に投入し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、正極ペースト(固形分濃度50質量%)を調製した。この正極ペーストを厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に100mm幅で塗布し、乾燥後、所定の厚みにプレスすることによって、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
作製したリチウムイオン二次電池をSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の環境雰囲気下に置いた。20Cの電流値で10秒間の放電を行い、放電開始から10秒後の電圧値を測定し、電池抵抗を算出した。これを初期電池抵抗とした。
電池抵抗を測定したリチウムイオン二次電池をSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の環境雰囲気下に置いた。そして30Cで10秒間の定電流充電、10秒間の休止、1Cで300秒間の定電流放電、10秒間の休止を1サイクルとする充放電を2000サイクル行なった。2000サイクル後の電池抵抗を上記と同様の方法で求めた。(2000サイクル後電池抵抗/初期電池抵抗)×100より、抵抗増加率(%)を算出した。
高分子増粘剤を用いた負極B2では、負極ペースト混練時の回転数を増大させることにより、高いせん断力を与えて高分子鎖を切断し、増粘剤の低分子化を行なった。その結果、負極ペーストの粘度は低下したものの、負極のばね定数の増大はほとんど見られず、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、増粘剤の低分子化により負極ペーストの粘度が低下し、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質層の空間への増粘剤およびセラミック粒子の移動は起きたが、増粘剤が低分子量であるため、負極活物質層の骨格を強固にすることができなかったためと考えられる。
これに対し、負極A1~A7は、ばね定数(すなわち、負極活物質層の強度)が非常に高く、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が低かった。これは、増粘剤として脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を用いたことにより、負極ペースト混練時のせん断力により、一時的に増粘剤を低分子化することができ、負極ペーストを低粘度化できたためであると考えられる。すなわち、負極ペーストが低粘度であるため、乾燥時に溶媒の除去により生じる負極活物質層の空間への増粘剤およびセラミック粒子の移動が起きて、負極活物質間の隙間にセラミック粒子が十分に配置されたためであると考えられる。そして、これに加え、乾燥完了時までに低分子ゲル化剤が自己組織化して高分子ファイバー化することにより、負極活物質層の骨格を強固にすることができたためと考えられる。
負極B3では、セラミック粒子の添加量を2質量%にしたが、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、セラミック粒子の添加量が少なすぎて、負極活物質層中のばね定数が増加されていない部分による悪影響が顕著となったためと考えられる。
負極B4では、セラミック粒子の添加量を25質量%にしたが、負極のばね定数は高かったものの、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、抵抗体となる、負極活物質間に存在する以外のセラミック粒子の量が多くなり、電池抵抗が増大したためと考えられる。
負極B5では、低分子ゲル化剤の添加量を0.3質量%にしたが、負極のばね定数の増大は小さく、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、低分子ゲル化剤の添加量が少なすぎて、負極活物質間を十分に結合させることができず、負極活物質層の強固な骨格を構築することができなかったためと考えられる。
負極B6では、低分子ゲル化剤の添加量を12質量%にしたが、負極のばね定数の増大は小さく、電池とした際のハイレート充電サイクル試験後の抵抗増加率が高かった。これは、低分子ゲル化剤の添加量が多すぎて負極ペーストの粘度が増加し、負極B1と同様の現象が起きたものと考えられる。
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 負極集電体上に、負極活物質、セラミック粒子、および増粘剤を含有する負極ペーストを塗工する工程と、
前記塗工した負極ペーストを乾燥して負極活物質層を形成する工程と、
を包含する負極の製造方法であって、
前記増粘剤は、脂質ペプチド化合物から構成される低分子ゲル化剤を含み、
前記負極ペーストにおいて、前記低分子ゲル化剤は、前記負極ペーストの全固形分に対して0.5~10質量%含有されており、
前記負極ペーストにおいて、前記セラミック粒子は、前記負極ペーストの全固形分に対して3~20質量%含有されている、
負極の製造方法。
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