JP6659091B2 - 加圧ローラ、加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents

加圧ローラ、加熱装置及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置の定着装置等に搭載される加圧ローラ、この加圧ローラを備えた加熱装置及び画像形成装置に関する。
従来の画像形成装置において、被記録材形成担持させた未定着画像(トナー画像)を被記録材面に加熱定着させる定着装置として、たとえば、フィルム加熱方式が広く用いられている。
この定着装置は、加熱体としてのヒータと、このヒータに接触して加熱されつつ回転する可撓性を有する回転体としての定着フィルムと、定着フィルムを介してヒータと定着ニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラとから構成される。そして、定着ニップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着トナー像を坦持させた記録材を導入し、定着フィルムと同時に挟持搬送することで、定着フィルムを介してヒータの熱を与えながら定着ニップ部の加圧力で未定着トナー像を記録材面に定着させるものである。
しかしながら、フィルム加熱方式を採用する従来の加熱定着装置においては、加圧ローラ長手方向の温度ムラや、定着ニップ部における紙搬送スピードの長手ムラが原因で前記定着装置を記録材である紙が通過するときに定着ニップ部において紙にシワが発生する場合があった。
このシワを抑制する手法としては、加圧ローラの形状を逆クラウン形状(長手方向両端部付近の径が中央部より大きい形状)にすることが知られている。このメカニズムとしては、加圧ローラを逆クラウン形状にすることにより、加圧ローラの周速が中央部より両端部付近で速くなる速度差を利用している。すなわち、紙の搬送力を中央よりも端部で大きくすることによって、紙を外側に引っ張り、搬送中に紙の中央付近が弛まないようにすることで、シワの発生が抑えられると考えられている。
特開平4−44076号公報
ところで、加圧ローラに断熱効果を持たせるためにシリコーンゴムを発泡して形成した弾性スポンジゴム層を用いることや、或いは、シリコーンゴム層内に中空のフィラー(マイクロバルーン等)を分散させ、硬化物内に気体部分を持たせて断熱効果を高めた空隙を有する弾性層を用いることが効果的である。
しかしながら、空隙を有する弾性層に用いた加圧ローラのローラ本体の長手形状を逆クラウン形状にした場合、ローラ本体の長手中央部と端部の紙搬送速度差が生じず、紙の搬送を安定してコントロールできず、シワが発生してしまう問題があった。すなわち、スポンジゴムのような空隙のあるゴム弾性材は、ゴム自体の弾性が大きいため、ゴムの変形により中央部と端部の紙搬送力差が吸収され、紙の挙動に影響を与えることは少ない。
本発明は上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的は、断熱性を高めた空隙のある弾性層を用いても記録材のシワを防止できる加圧ローラ、加熱装置及び画像形成装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、
加熱部材に圧接して加熱ニップ部を形成するゴム状弾性を有するローラ本体を備え、前記加熱ニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱を行う加圧ローラであって、前記ローラ本体の長手方向における形状が、長手方向両端部側の径が中央部より大きい形状を有する加圧ローラにおいて、
前記ローラ本体は、空隙を有する第1の弾性層と、該第1の弾性層の外周に配置され前
記第1の弾性層よりも硬質で前記加熱ニップ部で外周長変化が無い状態で弾性変形する第2の弾性層と、を備えた積層構造となっており、前記第2の弾性層はシリコーンゴムにカーボンファイバーを入れることで前記第1の弾性層よりも硬度を高くしたシリコーンゴム層であることを特徴とする。
また、本発明の加熱装置は、加熱部材と、該加熱部材に圧接して加熱ニップ部を形成するゴム状弾性を有するローラ本体を備え、前記加熱ニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱を行う前記加圧ローラと、を備えた構成となっている。
また、本発明の画像形成装置は、記録材にトナー画像を形成する画像形成部と、画像形成部にてトナー画像が形成された記録材を加熱して記録材に定着する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、前記定着装置として前記加熱装置を用いることを特徴とする。
本発明によれば、空隙のある弾性層に用いた加圧ローラにおいて、記録材のシワを防止することができる。
本発明の実施の形態1に係る画像形成装置の断面図。 図1の加熱装置の概略拡大断面図。 (A)は図2の加圧ローラの中心軸を通る面で切断した断面図、(B)、(C)は(A)の変形例を示す断面図。 本実施の形態の加圧ローラの作用効果メカニズムを説明する図。 図4の加圧ローラの長手方向断面と加熱部材との関係を示す図。 図4の作用効果メカニズムを説明するための参考図。 図4の作用効果メカニズムを説明するための参考図。 実施の形態1の高硬度層のマイクロ硬度とカーボンファイバーの入れ目との関係を示すグラフ。 実施の形態1の作用効果確認方法を説明する図。 実施の形態1の紙開き量の測定結果を示す図。 本発明の実施の形態2の加圧ローラ表面のマイクロ硬度のカーボンファイバーの入れ目との関係を示すグラフ。 実施の形態2の紙開き量測定結果を示す図。
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
[実施の形態1]
<画像形成装置>
まず、図1を参照して、本発明が適用される画像形成装置の全体構成について簡単に説明する。
画像形成装置は、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンターであり、像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラム1と記す)を備え、矢印Aの時計方向に所定の周速度(プロセススピード)にて回転駆動される。感光ドラム1は、OPC・アモルファスSe・アモルファスSi等の感光材料層を、アルミニウムやニッケルなどのシリンダ(ドラム)状の導電性基体の外周面に形成した構成から成る。
感光ドラム1は、その回転過程で帯電手段としての帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。その感光ドラム1の一様帯電面に対してスキャナ3から画像
情報に応じて変調制御(ON/OFF制御)されたレーザービームによる走査露光Lがなされる、感光ドラム1面に、目的の画像情報の静電潜像が形成される。そして、感光ドラム1に形成された静電潜像が、現像装置4でトナーTにより現像されて可視化される。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、たとえば、イメージ露光と反転現像との組み合わせで用いられる。
一方、給紙ローラ8の駆動により給紙カセット9内に収容されている記録材Pが一枚ずつ繰り出されて、ガイド10及びレジストローラ11を有するシートパスに沿って搬送される。搬送されるシートは、感光ドラム1と転写ローラ5の圧接部である転写ニップ部に所定の制御タイミングにて給送され、その記録材Pの面に感光ドラム1面側のトナー画像が順次に転写されていく。
上記した感光ドラム1、帯電ローラ2、スキャナ3、現像装置4及び転写ローラ5が、記録材Pにトナー画像を形成する画像形成部を構成する。
転写ニップ部を出た記録材は、感光ドラム1の面から順次に分離され、搬送装置12で加熱装置としての定着装置6に導入されてトナー画像の熱定着処理を受ける。定着装置6については次の項で詳述する。
定着装置6を出た記録材Pは、搬送ローラ13、ガイド14及び排紙ローラ15を有するシートパスを通って、排紙トレイ16に排紙される。
また、記録材分離後の感光ドラム1表面はクリーニング装置7により転写残りトナー等の付着汚染物の除去処理を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。
<定着装置>
次に、本発明の特徴である加圧ローラ及び加熱装置としての定着装置について、図2を参照して詳細に説明する。
この定着装置6は、いわゆる、テンションレスタイプのフィルム加熱、加圧ローラ駆動方式の定着装置である。すなわち、加熱部材としての加熱回転体20と、加熱回転体20に圧接して加熱ニップ部としての定着ニップ部Nを形成するローラ本体を有する加圧ローラ21と、を有し、定着ニップ部Nで被加熱材としての記録材Pを挟持搬送して加熱を行うようになっている。
加熱回転体20は、加熱体としてのヒータ19と、このヒータ19に接触して加熱されつつ回転する可撓性を有する定着フィルム201と、ヒータ19を支持すると共に定着フィルム201を案内するフィルムガイド部材18と、を備えている。さらに、長手両端に受けた加圧力をフィルムガイド部材18の長手方向に対して均一に伝えるための定着ステー22を備えている。
ヒータ19は、フィルムガイド部材18によって保持された状態で、定着フィルム201を挟んで加圧ローラ21に所定の押圧力をもって圧接している。そして、加圧ローラ21が回転すると、定着フィルム201外面との摺動摩擦力により、定着フィルム201に回転力が作用し、定着フィルム201がヒータ19を保持したフィルムガイド部材18の外回りを矢印の方向に回転する。
フィルムガイド部材18は、横断面略半円弧状・樋型で、図面に垂直方向を長手とする横長の部材であり、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイト)や液晶ポリマー等の耐熱性樹脂の成型品として成形される。
ヒータ19は、横長の部材板で、フィルムガイド部材18の下面の略中央部に長手に沿って形成された溝内に収容保持させている。ヒータ19はアルミナ、AlN等の横長・薄板状の基板19a、その表面側(フィルム摺動面側)に長手に沿って形成具備させた線状あるいは細帯状のAg/Pdなどの通電発熱体(抵抗発熱体)19bを備えた低熱容量のセラミックヒータである。抵抗発熱体19bはガラスコート層19cによって被覆され、基板19aの裏面側にはサーミスタ等の検温素子19dが配設されている。このヒータ19は、抵抗発熱体19bに対する不図示の電極からの電力供給により迅速に昇温した後、
検温素子19dを含む電力制御系により所定の定着温度(制御温度)を維持するように制御される。
定着フィルム201は、フィルムガイド部材18にルーズに外嵌させたエンドレスベルト状の耐熱性フィルムである。定着フィルム201の内面はヒータ19表面のガラスコート層19cと接触して摺動する。この摺動抵抗を下げるために潤滑剤としてのグリースがガラスコート層19cの表面(ヒータ19表面)に塗布される。
定着フィルム201は、熱容量を小さくして装置のクイックスタート性を向上させるために、膜厚を総厚400μm以下、好ましくは30μm以上300μm以下とした複合層フィルムである。
定着フィルム201の基層として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂、あるいは耐熱性、高熱伝導性を有するSUS、Al、Ni、Ti、Zn等の金属部材を単独ないし複合して形成してある。基層の上にトナー定着性能を良化させるための弾性層を形成しても良く、熱伝導フィラー、補強材等が添加されたシリコーンゴム、フッ素ゴム等が好適に用いられる。定着フィルム離型層のメインポリマーはフッ素樹脂で構成され、必要に応じてカーボンブラック、イオン導電性物質等の導電性部材を含有させても良い。
定着フィルム201は、少なくとも画像形成実行時に加圧ローラ21が矢印bの反時計方向に回転駆動されることで、加圧ローラ21の回転に従動する。つまり、加圧ローラ21を駆動すると定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ21と定着フィルム201の外面との摩擦力で定着フィルム20に回転力が作用するのである。定着フィルム20が回転している際には、定着フィルム内面が定着ニップ部Nにおいてヒータ19の表面保護層としてのガラスコート層19cに密着して摺動する。定着ニップ部Nは、フィルム20Aを挟んでヒータ19に圧接させた加圧ローラ21の弾性層の弾性変形によってヒータ19との間に形成される。
加圧ローラ21は、駆動源Mの駆動力が不図示のギア等の動力伝達機構を介して伝達されて所定の周速度で矢印bの反時計方向に回転駆動される。
また、定着ステー22は、鉄、ステンレス、SUM、ジンコート鋼板等の剛性のある材料を使用し、断面形状をコの字型にすることで剛性を高めている。
記録材Pが定着ニップ部Nで挟持搬送されることにより記録材P上のトナー像は加熱定着される。そして、定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着フィルム201の外面から分離されて搬送される。また、回転する定着フィルム201には、定着ニップ部N以外には実質的にテンションが作用しておらず、フィルム寄り移動を規制する規制手段としては、定着フィルム201の端部を単純に受け止めるだけの不図示のフランジ部材のみを配設している。
[加圧ローラの構成]
次に、本発明の特徴である加圧ローラについて詳細に説明する。
加圧ローラ21は、鉄やアルミニウム等の材質の丸軸の基体としての芯金21aと、芯金21aの外周に設けられる第1の弾性層として断熱性を有する発泡化した弾性層21bを有し、弾性層21bの外周には高硬度の層21c(以下、高硬度層21cと呼ぶ)が配置されている。さらに、高硬度層21c上には、最外層の表層であるPFA、PTFE、FEP等のフッ素樹脂から成る耐熱性の離型層21dが形成された3層の積層構造となっており、全体としてゴム状弾性を有するローラ本体210を構成し、定着フィルム201に圧接する定着ニップ部Nを形成する。
この実施の形態では、中間層の高硬度層21cが、弾性層21bよりも硬質で定着ニップ部Nで加圧された際に、外周長変化が無い状態で変形する第2の弾性層である。もっとも、離型層21dについても、高硬度として第2の弾性層を構成するように調整してもよ
い。
弾性層21bは、クイックスタート性を向上させるために、樹脂マイクロバルーン等を入れたシリコーンゴムを発泡して断熱化させて成る弾性層であり、厚みは2〜10mmが望ましい。なお本実施の形態の効果確認で用いた弾性層1の厚みは、加圧ローラ21の長手中央部で3.5mmである。
高硬度層21cとしては、加圧ローラ21表面のマイクロ硬度を高めるために、耐熱性のシリコーンゴムや、カーボンファイバーを入れ込んで配向させたシリコーンゴム等によって成形される。また、離型層21dと弾性層21bを接着する接着層が高硬度層21cを兼ねてもよい。
詳細は後述するが、高硬度層21cのマイクロ硬度は、シワ抑制から25°以上が望ましく、記録材Pの搬送力からマイクロ硬度は50°以下が望ましい。
図3(A)は、加圧ローラ21の長手方向断面を示している。
加圧ローラ21は、芯金21aがローラ本体210よりも長く、芯金21aの両端がローラ本体210よりも長手方向に突出している。このローラ本体210の長手方向における形状が、長手方向両端部側の径が中央部より大きい形状、図示例では、加圧ローラ21の長手方向の中央部から両端部にかけて外径を徐々に増加させた逆クラウン形状となっている。
ここで、長手方向の中央位置をL1、長手方向端部の内、一方の端部位置をL2(図中左端)、他方の端部位置をL3(図中、右端)とすると、逆クラウン量は、中央位置L1から左端L2、及び右端L3までの距離Loと、中央位置L1と左端L2、中央位置L1と右端L3の外径差δで設定される。この例では、たとえば、Loを100mm、δが150μmに設定され、中央位置L1〜左端L2、中央位置L1〜右端L3を放物線形状でつないだ形状である。
このローラ本体210の長手形状としては、放物線形状に限らず、図3(B)に示すように、テ―パー形状としてもよい。中央位置L1と同一径となる長手方向に一方の中間位置をL4(左中間位置)、他方の中間位置をL5(右中間位置)とすると、左中間位置L4と右中間位置L5間の距離は30mmである。中央位置L1、左中間位置L4、右中間位置L5の各点を結んだ外径形状はストレート形状であり、中央位置L1、左中間位置L4、右中間位置L5を結んだ直線と左端L2、右端L3の外径差が150μmである。
図3(A)、(B)では、高硬度層21cと離型層21dは、その径方向の厚さが長手方向全長にわたって均一の厚さで形成されており、高硬度層21cとの境界面となる弾性層21bの外周形状が、ローラ本体210の外周に倣った逆クラウン形状となっている。高硬度層21cの厚みは、たとえば、150μmに設定される。
<シワ抑制メカニズム>
次に、本実施の形態1の高硬度層21cを加圧ローラ21に備えた場合に、逆クラウン形状によってシワ抑制効果が生じるメカニズムについて、空隙を有さないゴムを使用した加圧ローラ及び高硬度層21cを有さない加圧ローラと比較して説明する。
図6は、空隙を有さないゴム(以下、ソリッドゴムと称す)を弾性層に用いた加圧ローラ71の非加圧状態(A)、および加圧状態の断面模式図(B)である。
定着ニップ部Nにて、加圧ローラ71が加圧されると、加圧部の弾性層71bが潰され変形するものの、非加圧部において潰された分が膨張するように変形するため、加圧されても加圧ローラ71の外周長変化はほとんどない。そのため、加圧ローラ71は加圧されても外周長が維持され、加圧ローラ71に逆クラウン形状をつけると加圧時においても長手中央部と端部の搬送力差が生じ、シワ抑制効果が得られる。
図7は、高硬度層を有さず、空隙を有するゴムを弾性層81bと離型層81cのみで構
成される加圧ローラ81の非加圧状態時(A)および加圧状態時の断面模式図(B)である。
加圧ローラ81が加圧されると加圧部の弾性層81bが潰され変形するが、ソリッドゴムと異なり、非加圧部の変形は小さいため、加圧ローラ81は加圧されると潰された分だけ外周長が短くなる。特に、加圧ローラ81に逆クラウン形状をつけた場合、端部の外径が大きく、長手中央部分に比べて端部が潰れやすくなるため、中央と端部の外周長差が小さくなる。
そのため、加圧ローラ81は加圧されると外周長が変化するため、加圧ローラ81に逆クラウン形状をつけても所望の長手中央部と端部の搬送力差が得られ難く、シワの抑制効果が小さい。
図4は、本発明の加圧ローラ、すなわち、弾性層21bの外周に高硬度層21cを有する加圧ローラ21の非加圧状態(1)および加圧状態(2)の断面模式図である。
加熱回転体20との定着ニップ部で、加圧ローラ21が加圧されると(図5参照)、図4に示すように、加圧部の弾性層21bが潰され、弾性層21bおよび高硬度層21cは変形する。しかし、弾性層21bよりも硬質の高硬度層21cが殻のような役割を担い、非加圧部においても外周長を維持するようなソリッドゴムに似た挙動をするため、加圧されても加圧ローラ21の外周長変化はほとんどない。
そのため、ソリッドゴムと同様に外周長が維持されやすく、所望の逆クラウン形状による長手中央と長手端部の記録材Pの搬送力差が得られやすくなり、シワ抑制効果が得られる。
次に、本実施の形態の効果を確認するために行ったシワ測定実験の結果について、以下に説明する。
<作用効果確認方法>
作用効果は、加圧ローラ21の高硬度層21cのマイクロ硬度値を変化させた時のシワを測定することと、高硬度層21cのマイクロ硬度値を変化させた時の加圧ローラ21長手中央と端部の記録材搬送力差を測定することで、確認した。
高硬度層21cのマイクロ硬度の測定は、マイクロ硬度計(高分子計器株式会社製、MD−1、製品名)を用いた。本実施の形態では離型層21dがあるため、マイクロ硬度測定時には離型層21dを剥がして測定した。
また、高硬度層21cのマイクロ硬度は、高硬度層21cに入れ込む繊維系充填材としてのカーボンファイバー(繊維長250μm)の量を変化させることで、変化させた。
図8には、本実施の形態で使用した高硬度層21cのマイクロ硬度とカーボンファイバーの入れ目量の関係を示している。
このグラフは、カーボンファイバーの入れ目量を増すと高硬度層21cのマイクロ硬度が増大することを示している。グラフから、カーボンファイバーの入れ目量を、40部から60部の範囲とすれば、高硬度層21cのマイクロ硬度が好適な範囲である25°〜50°の範囲となることがわかる。
シワ評価に関しては、定着装置が常温の状態から印字サンプリングをスタートし、記録材[Business4200(Xerox社、商品名)]200枚の連続プリントを行い、シワ発生有無を確認し、シワが全く発生しない場合を○、発生した場合を×として、評価を行い、評価結果を表1に示した。
Figure 0006659091

表1に示すように、マイクロ硬度25°以上で全てランク○、20°以下では全て×という結果となり、マイクロ硬度25°以上でシワの発生を抑制できることがわかる。
一方、加圧ローラ21長手中央と端部の記録材搬送力差について、記録材を加圧ローラ21長手の両端部に引っ張る力とした紙開き量を測定することで評価した。
まず、図9を参照して、紙開き量の測定に関して説明する。
図9に示すように、記録材P[Business4200(Xerox社、商品名)]を、記録材Pの先端より30mmの記録材短手中央位置から記録材搬送方向後端にかけて切れ目を入れ、非切れ目側から記録材Pを定着装置6に通して、記録材搬送方向後端30mmの位置が定着装置ニップ部に突入する直前で搬送を停止し、記録材搬送方向後端10mmの位置における記録材の切れ目開き量を測定した。
比較例1として、ソリッドゴムを使用した加圧ローラ71についても(形状は本実施の形態同様の逆クラウン形状、弾性層71b長手中央部厚み:3.5mm、高硬度層は有さない、離型層71cは有す、離型層を剥がした場合の弾性層71bマイクロ硬度:30°)測定した。
図10には、この紙開き量の測定結果を示している。
この結果より、マイクロ硬度が増大すると紙開き量が増大し、25°以上と25°以下で比較すると、25°以上で紙開き量が急激に増大することがわかる。グラフの破線で示した比較例1の紙開き量は5.7mmであり、マイクロ硬度25°以上とほぼ同等であるため、マイクロ硬度25°以上で、シワを抑制できる程度の、加圧ローラの長手方向中央と長手方向端部の記録材搬送力差が得られることがわかる。
このように、表1、図10から、マイクロ硬度が25°以上であればシワ抑制効果が得られる結果であるが、マイクロ硬度が大きい場合、紙の搬送力が低下する弊害が懸念される。マイクロ硬度が大きい場合、紙に対する加圧ローラ表面のグリップ力が低下し、特に高湿度環境下や吸湿度が高い紙において、定着装置通過時に紙から水蒸気が発生することにより、加圧ローラ表面に水滴がつくことで、紙がスリップすることがある。
表2に、マイクロ硬度を変化させた場合のスリップ確認の結果を示す(実施の形態1の紙搬送性確認結果)。
Figure 0006659091
確認方法は、温度32℃、湿度85%の環境下に48時間放置した紙(坪量:60g/m2、製品名:GF−600)を定着装置に通紙させて、スリップせず紙搬送ができた場合に○、スリップしてしまい紙搬送ができなかった場合に×として評価をした。
評価結果より、マイクロ硬度50°以上の加圧ローラ21においてスリップが発生する結果であった。したがって、マイクロ硬度50°以上でグリップ力が低下するため、高硬度層21cのマイクロ硬度は50°以下が望ましい。
以上の確認結果から、高硬度層21cのマイクロ硬度は、25°以上50°以下程度とすることが望ましく、この範囲であれば、加圧ローラ21によって弊害無く記録材のシワを抑制できることが確認できた。
なお、本実施の形態1における高硬度層21cの厚さは、長手均方向に均一であるが、図3(C)に記載される構成でもよい。すなわち、加圧ローラ21の弾性層21bはストレート形状であるが、長手方向中央部から端部にかけて高硬度層21cの厚みが厚くなっている。このようにすれば、端部で高硬度層21cのマイクロ硬度が高くなり、中央部に比べて端部付近の外周長が維持されやすい構成となり、長手中央と端部の搬送力差が生じやすくなるため、シワを抑制し得る構成となる。
一方で、端部の厚みが増す分、加圧ローラ端部の断熱効果が低下するため、画像端部の定着性能が低下する懸念があり、シワ抑制効果と定着性能のバランスで適宜選択される。
[実施の形態2]
次に本発明の実施の形態2について説明する。
上記実施の形態1とは、加圧ローラの構成のみが相違するだけで、画像形成装置、定着装置の構成は、実施の形態1と同様の構成である。したがって、以下の説明では、加圧ローラの構成についてのみ説明し、画像形成装置、定着装置の構成については、説明は省略する。
実施の形態1においては、加圧ローラの高硬度層21c自体のマイクロ硬度を規定したが、本実施の形態2においては、加圧ローラ21のローラ本体210の表面のマイクロ硬度を規定する。加圧ローラ21の層構成と層の材質および、長手形状は実施の形態1と同様のため省略する。
本実施の形態2の効果を確認するために、実施の形態1同様に、加圧ローラのローラ本体表面のマイクロ硬度を変化させ、シワの発生確認と紙開き量および紙搬送性確認実験を行った。
本実施の形態においても、高硬度層21cにカーボンファイバー(繊維長250μm)を入れり込んでいるが、高硬度層21c自体のマイクロ硬度を調整するのではなく、高硬
度層21cに入れ込むカーボンファイバー(繊維長250μm)の量を変化させることで、ローラ本体表面のマイクロ硬度を調整している。
図11には、本実施の形態で使用したローラ本体表面のマイクロ硬度と、カーボンファイバーの入れ目量の関係を示している。高硬度層21cのカーボンファイバーの入れ目量を増すと、ローラ本体表面のマイクロ硬度が増大している。すなわち、ローラ本体表面は、高硬度層21cの外周に形成される離型層21dの外周面であるが、測定されるローラ本体の表面硬度は、高硬度層21cと密接に関係している。グラフによれば、カーボンファイバーの入れ目が20部程度で、ローラ本体表面のマイクロ硬度が60°程度に上昇していることがわかる。
表3には、ローラ本体表面のマイクロ硬度と、シワ評価結果を示している(実施の形態2のシワ発生有無評価結果)。
なお、比較例2として、ソリッドゴムを使用した加圧ローラ71(形状は本実施例2同様の逆クラウン形状、弾性層71b長手中央部厚み:3.5mm、高硬度層は有さない、離型層71cは有す、加圧ローラ71表面のマイクロ硬度:56°)の評価結果も示している。
この表3のシワ評価結果から、ローラ本体表面のマイクロ硬度が、50°以上で全てランク○、50°以下では全て×という結果となり、マイクロ硬度50°以上でシワの発生を抑制できることがわかる。
Figure 0006659091
次に、図12には、図9と同様の方法で、ローラ本体表面のマイクロ硬度と紙開き量の関係を測定した、測定結果を示している。
この結果より、マイクロ硬度が増大すると紙開き量が増大し、50°以上と50°以下で比較すると、50°以上で紙開き量が急激に増大することがわかる。グラフの破線で示した比較例2の紙開き量は5.8mmであり、マイクロ硬度50°以上とほぼ同等であるため、マイクロ硬度50°以上で、シワを抑制できる程度の、加圧ローラの長手方向中央と端部の記録材搬送力差が得られることがわかる。
このように、表3、図12から、マイクロ硬度が50°以上であればシワ抑制効果が得られる結果であるが、マイクロ硬度が大きい場合、実施の形態1と同様に、紙の搬送力が低下する弊害が懸念される。
表4に、マイクロ硬度を変化させた場合のスリップ確認の結果を示す(実施の形態2の紙搬送性確認結果)。
確認方法は、上記実施の形態1と同様に、温度32℃、湿度85%の環境下に48時間放置した紙(坪量:60g/m2、製品名:GF−600)を定着装置に通紙させて、スリップせず紙搬送ができた場合に○、スリップしてしまい紙搬送ができなかった場合に×として評価をした。
その結果、加圧ローラ21表面のマイクロ硬度65°以上の加圧ローラ21において、スリップが発生することがわかった。
Figure 0006659091

以上の結果から、加圧ローラ21のローラ本体表面のマイクロ硬度65°以上でグリップ力が低下し、スリップが発生するため、ローラ本体表面のマイクロ硬度は65°以下が望ましい。
表3、表4の結果から、ローラ本体表面のマイクロ硬度は、50°以上65°以下程度とすることが望ましく、この範囲であれば、加圧ローラ21によって弊害無く記録材のシワを抑制できることが確認できた。
なお本実施の形態2における加圧ローラ21のローラ本体表面のマイクロ硬度は、高硬度層21cを備えることで調整しているが、離型層21dを硬化させることでマイクロ硬度を高めてもよい。すなわち、離型層21dの厚みを厚くする、もしくは離型層21dが薄膜の場合にはカーボンファイバー等の繊維系充填材を添加することにより調整することができる。
また、加圧ローラ21表面のマイクロ硬度が50°以上65°以下であれば、高硬度層21cを設ける必要はない。離型層21dを硬化させた際の作用効果は、上述同様であるため省略する。
1 感光ドラム、2 帯電ローラ、3 スキャナ、4 現像装置、5 転写ローラ
6 定着装置
20 加熱回転体、
201 定着フィルム、18 フィルムガイド部材、19 ヒータ、
19a 基板、19b 抵抗発熱体、19c ガラスコート層、19d 検温素子
21 加圧ローラ
210 ローラ本体
21a 芯金(基体)、21b 弾性層、21c 高硬度層、21d 離型層
N 定着ニップ部(加熱ニップ部)
P 記録材

Claims (16)

  1. 加熱部材に圧接して加熱ニップ部を形成するゴム状弾性を有するローラ本体を備え、前記加熱ニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱を行う加圧ローラであって、前記ローラ本体の長手方向における形状が、長手方向両端部側の径が中央部より大きい形状を有する加圧ローラにおいて、
    前記ローラ本体は、空隙を有する第1の弾性層と、該第1の弾性層の外周に配置され前記第1の弾性層よりも硬質で前記加熱ニップ部で外周長変化が無い状態で弾性変形する第2の弾性層と、を備えた積層構造となっており、
    前記第2の弾性層はシリコーンゴムにカーボンファイバーを入れることで前記第1の弾性層よりも硬度を高くしたシリコーンゴム層であることを特徴とする加圧ローラ。
  2. 前記ローラ本体は、最外層の表層を有し、前記第2の弾性層は前記第1の弾性層と表層の間に配置される中間層である請求項1に記載の加圧ローラ。
  3. 前記中間層のマイクロ硬度が25°以上50°以下である請求項2に記載の加圧ローラ。
  4. 前記中間層は前記第1の弾性層と前記表層を接着する接着層である請求項2又は3に記載の加圧ローラ。
  5. 前記第1の弾性層の長手方向における形状が、前記ローラ本体の長手方向の形状にならって、長手方向両端部側の径が中央部より大きい形状となっており、前記中間層の厚みが、前記ローラ本体の長手方向全長に亘って均一である請求項2乃至4のいずれかの項に記載の加圧ローラ。
  6. 前記第1の弾性層の厚みが、前記ローラ本体の長手方向全長にわたって均一で、前記中間層の厚みが前記ローラ本体の長手方向中央部から長手方向端部に向かって厚くなっていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかの項に記載の加圧ローラ。
  7. ローラ本体表面のマイクロ硬度が50°以上65°以下に設定される請求項1に記載の加圧ローラ。
  8. 前記第2の弾性層の外周に表層が設けられ、前記ローラ本体表面のマイクロ硬度は、前記第2の弾性層を硬化させることで調整される構成である請求項7に記載の加圧ローラ。
  9. 前記第1の弾性層の外周に表層が設けられ、該表層が第2の弾性層を構成する請求項7に記載の加圧ローラ。
  10. ローラ本体表面のマイクロ硬度は、前記表層を硬化させることで調整される請求項9に記載の加圧ローラ。
  11. ローラ本体表面のマイクロ硬度は、前記表層の厚みによって調整される請求項9に記載の加圧ローラ。
  12. ローラ本体表面のマイクロ硬度は、前記表層に繊維系充填材を添加することにより調整される請求項9に記載の加圧ローラ。
  13. 加熱部材と、該加熱部材に圧接して加熱ニップ部を形成するゴム状弾性を有するローラ本体を備え、前記加熱ニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱を行う加圧ローラと、を備えた加熱装置であって、
    前記加圧ローラとして請求項1乃至6のいずれかの項に記載の加圧ローラが用いられることを特徴とする加熱装置。
  14. 加熱部材と、該加熱部材に圧接して加熱ニップ部を形成するゴム状弾性を有するローラ本体を備え、前記加熱ニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱を行う加圧ローラと、を備えた加熱装置であって、
    前記加圧ローラとして請求項7乃至12のいずれかの項に記載の加圧ローラが用いられることを特徴とする加熱装置。
  15. トナー画像が形成された被加熱材としての記録材を加熱ニップ部で加熱してトナー画像を記録材に定着する請求項13又は14に記載の加熱装置。
  16. 記録材にトナー画像を形成する画像形成部と、該画像形成部にてトナー画像が形成された記録材を加熱して記録材に定着する定着装置と、を備えた画像形成装置であって、前記定着装置として前記請求項15に記載の加熱装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
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