JP6654359B2 - 乳風味付与材 - Google Patents
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しかし、牛乳の組成はその90%程度が水であり、乳風味の主体である無脂乳固形分含量は8〜10質量%と含有量が少ないため、飲食品に添加したり、食品加工用として使用する場合、付与できる乳風味は弱いという欠点がある。
また、これらの粉乳類は、分離・濃縮や粉末化の際に風味がやや変化しているため、飲食品に豊かな乳風味を付与することが難しいという問題がある。また、無脂乳固形分の主体である乳蛋白質も乳糖も、水溶性とはいえ溶解度が低いため、水に溶解しにくく、とくに飲料では、経日的に分離したり、沈殿したり、ザラが出たりする問題がある。さらに、乳蛋白質を多く含有する飲食品の製造時に加熱殺菌処理する場合や、乳蛋白質を多く含有する飲食品を加熱調理する場合には、乳蛋白質の変性や、アミノカルボニル反応による褐変、さらにはコゲを生じてしまうという問題もある。
また、これらの粉乳類、とくにもっとも一般的で安価な脱脂粉乳は乳製品全体の需給関係により生産量が定まるため流通量が一定ではなく、需給の逼迫により品薄状態となる場合が多く、その場合、コストアップにつながるといった課題がある。また、原料生乳の産地や牛の肥育環境によって品質がばらつきやすいという問題もある。
そのため、飲食品において、粉乳類を使用せずに、豊かな乳風味を付与する方法、すなわち、飲食品に乳風味を付与する方法が各種研究され、提案されている。
そのため、天然の食品素材を使用した乳風味付与材が考案された。例えば、ペプチドとカルボニル化合物とのアミノ−カルボニル反応物(例えば特許文献1参照)、アルカリ処理したビール酵母の乾燥物(例えば特許文献2参照)、スクラロース(例えば特許文献3参照)、コーン粉末と油脂との反応物(例えば特許文献4参照)などが提案されている。
しかし、これらの素材は、実際には乳風味自体を付与しているのではなく、コク味を付与することにより乳風味を得ている。そのため、乳蛋白質を含有しない飲食品の場合は、コク味は付与されるが、乳風味は付与されないという問題があった。また、乳蛋白質含量がある程度の量がある飲食品の場合であっても、乳風味以外の成分の風味をも同様に増強してしまい、乳風味が付与されたように感じられない、という問題があった。
しかし、この乳清ミネラルには乳脂や乳タンパク質のもつ豊かな乳風味が含まれないため、飲食品に対し乳のコク味を付与することはできても、豊かな乳風味は付与されない、という問題があった。
まず、本発明で使用する乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限りタンパク質や乳糖を除去したものであり、そのため、高濃度に乳の灰分(ミネラル)を含有し、且つ、固形分に占める灰分の割合が極めて高いという特徴を有する。そして、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエー中のミネラル組成に近い比率となる。
なお本発明においては上記乳清ミネラルが流動状、ペースト状など固形以外の性状である場合は、その固形分を乳清ミネラルとして扱うものとする。
上記乳酸発酵風味素材とは、乳酸菌が資化可能な基質を乳酸発酵して得られた風味素材であるが、その基質としては良好な乳風味が得られる点で乳原料を使用することが好ましい。該乳原料としては、牛乳、濃縮乳、練乳、ホエイ、クリーム、バター、バタークリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の乳や乳製品をはじめ、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダーなどの粉乳類や、脱脂乳などの乳糖を含有する乳製品も使用可能である。
また、本発明では、上記乳酸発酵風味素材は、基質や発酵条件の異なる2種以上の乳酸発酵風味素材を用いてもよい。
また、ミックス液は、風味が強化された乳酸発酵風味素材が得られる点で、遊離脂肪酸を好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.02〜0.1質量%含有することが好ましい。0.01質量%を下回ると遊離脂肪酸を含有することによる風味強化の効果が得にくく、0.2質量%を上回ると乳酸発酵風味素材に脂肪酸臭が残存し、好ましくない。ミックス液中の遊離脂肪酸含量を上記範囲とするためには、遊離脂肪酸含量の高い乳原料を使用する方法や、別途遊離脂肪酸や遊離脂肪酸含量の高い原材料を添加する方法、さらには油脂を含有するミックス液をリパーゼ等の脂質分解酵素で分解する方法などが挙げられるが、本発明では良好な風味の乳酸発酵風味素材が安定して製造可能であることから、バター分解物、バターオイル分解物、クリーム分解物、チーズ分解物などの遊離脂肪酸含量の高い乳原料を使用する方法であることが好ましく、特に好ましくはバター分解物を使用する。
また、これらの乳酸菌は、乳酸菌を含む発酵乳の形態で使用することも可能である。また、更に、乳酸発酵風味素材の風味を向上させる目的で、Candida kefyr、Kluyveromyces marxianus var. marxianus、Saccharomyces unisporus、Saccharomyces florentinus等の酵母を含むスターターを使用してもよい。
乳酸発酵時間は基質濃度や乳酸菌の添加量等に応じ適宜選択可能であるが、好ましくは、乳酸発酵後のpHの値が4〜6、より好ましくは4.0〜5.5、更に好ましくは4.2〜5.2、最も好ましくは4.3〜4.8となる時間とする。
なお、上記乳酸発酵時は静置状態であってもよいが、好ましくは攪拌をおこなう。好ましい攪拌条件は、1分間に5〜50回転、より好ましくは10〜30回転である。
ここで、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対する(B)乳酸発酵風味素材の含有量が固形分として0.001質量部未満であると本発明の効果が得られず、5質量部を超えると酸味により風味が悪化してしまう。
なお、上記(C)リン脂質含量には、(B)乳酸発酵風味素材や下記のその他の成分に含まれるリン脂質についても算入する。
本発明の乳風味付与材では、上記のリン脂質そのものよりも、上記のリン脂質を含有する食品素材を用いる方が好ましい。このリン脂質を含有する食品素材としては、卵黄、大豆、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、馬乳、人乳等の乳があげられるが、風味と食感の面から乳由来のリン脂質を含有する食品素材を用いるのが好ましく、牛乳由来のリン脂質を含有する食品素材を用いるのがさらに好ましい。
上記乳由来のリン脂質を含有する食品素材の固形分中のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。但し、抽出方法等については乳由来のリン脂質を含有する食品素材の形態等によって適正な方法が異なるためこの定量方法に限定されるものではない。
上記のクリームからバターを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度である。一方、クリームまたはバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、その製法の違いにより組成が大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
クリームからバターを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで乳化破壊機で脂肪球を破壊して凝集させ、バター粒を形成させる工程でバターの副産物として発生するものである。
ここで、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対する(D)糖類の含有量が固形分として0.5質量部未満であると糖類を添加することによるプラスの効果が得にくく、40質量部を超えると甘味が強すぎて、風味バランスを損なってしまうことがある。
なお、上記(D)糖類含量には、(B)乳酸発酵風味素材、上記リン脂質を含有する食品素材、さらには下記のその他の成分に含まれる糖類についても算入する。
この範囲内とすることにより、粉乳類、とくに脱脂粉乳の代替として一般的に使用することができる。
本発明の飲食品は、上記本発明の乳風味付与材を添加して得られた飲食品であり、粉乳類、とくに脱脂粉乳の使用量が少ない場合、さらには粉乳類を含有しない場合であっても、飲食品に豊かな厚みのある乳風味を付与されているという特徴を有するものである。
飲食品における上記本発明の乳風味付与材の添加方法はとくに制限されず、飲食品の製造時、加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれる。
なお、本発明の飲食品における上記本発明の乳風味付与材の添加量は、上述のとおりである。
本発明の飲食品の乳風味付与方法は、上記本発明の乳風味付与材を飲食品に添加するものであり、粉乳類、とくに脱脂粉乳の使用量が少ない場合、さらには粉乳類を含有しない場合であっても、飲食品に豊かな厚みのある乳風味を付与するものである。
本発明の乳風味付与材を飲食品に添加する方法、及び、添加量については上述のとおりである。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
脱脂粉乳(リン脂質含量0.3質量%未満)10質量部、ホエイパウダー(リン脂質含量0.2質量%未満)2質量部及び水82.99質量部を混合し、55℃に加熱し、ケミコロイド社製シャーロットコロイドミルにてクリアランス0.2mm、回転数3500rpmにて均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、無脂乳固形分が12質量%、遊離脂肪酸含量が0.01質量%未満であるミックス液を調製した。この乳原料を含有するミックス液にLactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis及びLeuconostoc mesenteroides subsp. Cremorisの2種から成る乳酸菌スターター0.01質量部を加え、30℃で15回転/分で攪拌しながら5時間発酵した。ここで、リン脂質として、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含量3.7質量%、蛋白質含量12質量%、無脂乳固形分33.4質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質含量9.8質量%)5質量部を添加し、更に第2乳酸発酵工程として、30℃で10回転/分で攪拌しながら7時間発酵し、固形分12質量%、リン脂質を0.2質量%、糖類を5質量%含有し、pHが4.71である乳酸発酵風味素材Aを得た。
脱脂粉乳(リン脂質含量0.3質量%未満)4.5質量部、ホエイパウダー(リン脂質含量0.2質量%未満)3.5質量部、トータルミルクプロテイン1質量部(リン脂質含量0.1質量%未満)、無塩バター(リン脂質含量0.5質量%未満)4質量部、バター分解物(デリシャンバターテイストHB−2、大洋香料株式会社製)0.2質量部、及び水86.78質量部を混合し、55℃に加熱し、ケミコロイド社製シャーロットコロイドミルにてクリアランス0.2mm、回転数3500rpmにて均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、無脂乳固形分が9質量%、遊離脂肪酸含量が0.035質量%であるミックス液を調製した。この乳原料を含有するミックス液にLactobacillus helveticus及びLeuconostoc mesenteroidesの乳酸菌スターター各0.01質量部を加え、30℃で15回転/分で攪拌しながら12時間発酵し、固形分13質量%、リン脂質を0.05質量%未満、糖類を6質量%含有し、pHが4.54である乳酸発酵風味素材Bを得た。
〔実施例1〜11〕
上記乳清ミネラルA、上記乳酸発酵風味素材A、市販プレーンヨーグルト(ブルガリアヨーグルト:株式会社明治製)、ヨーグルトパウダー(ヨーグルトパウダーYP−A:森永乳業(株)製)、製パン用乳酸発酵風味素材(ポルテTZ−10: MCフードスペシャリティーズ株式会社製)、 クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の粉末化品、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物、高純度リン脂質(レシオンP:理研ビタミン製)、乳糖、還元水あめ(PO−500:三菱商事フードテック)、ガラクトオリゴ糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業)、及び、水を使用し、表1の配合にしたがって、本発明の乳風味付与材A〜Kを製造した。
実施例4については、ハイスピードバキュームドライヤFS-VDGS-10J(アーステクニカ)を使用して、乳酸発酵風味素材以外の原料を混合し、続いて乳酸発酵風味素材を添加・混合し、その後、45℃、減圧下で乾燥し、固形分含量98.0質量%の粉末状の乳風味付与材Dを得た。
実施例5については、ハイスピードバキュームドライヤFS-VDGS-10J(アーステクニカ)を使用して、乳酸発酵風味素材以外の原料を混合し、続いて乳酸発酵風味素材及び乳素材(濃縮物)を添加・混合し、その後、45℃、減圧下で乾燥し、固形分含量97.8質量%の粉末状の乳風味付与材Eを得た。
得られた乳風味付与材A〜Kの、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対する(B)乳酸発酵風味素材の固形分含有量、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対する(C)リン脂質の含有量、及び、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対する(D)糖類の固形分含有量については表2に記載した。
また、得られた乳風味付与材A〜Kの、乳清ミネラル、乳酸発酵風味素材、リン脂質及び糖類の4成分の合計した固形分含有量については表3に記載した。
乳風味付与材A〜F及びH〜Jについて炭水化物濃度が4.8質量%になるように表4に記載の配合にしたがって水に溶解し、水溶液とし、乳風味評価試験に供した。
一方、脱脂粉乳の9質量%水溶液を用意し、上記乳風味付与材の水溶液と、トップの乳風味、乳風味の伸び、苦み及びえぐ味、の3点について1〜7点の7段階評価(脱脂粉乳9質量%水溶液を4点としたときの強弱を、最も強い場合を7点、最も弱い場合を1点として点数化)を行い、10名のパネラーの平均点を表5に記載した。
表5の結果から、本発明の乳風味付与材A〜F及びH〜Jは、脱脂粉乳と同等の風味のプロフィールを有しながら、苦みやえぐ味が軽減されていることがわかる。
〔実施例12〕
市販レギュラーコーヒー40gをお湯620gで抽出したものをコーヒー抽出液とした。このコーヒー抽出液370質量部に砂糖35質量部、牛乳40質量部、乳風味付与材G1.5質量部、水50質量部を混合し、カフェオレAを作成した。
市販レギュラーコーヒー40gをお湯620gで抽出したものをコーヒー抽出液とした。このコーヒー抽出液370質量部に砂糖35質量部、牛乳40質量部、脱脂粉乳6質量部、水49質量部を混合し、カフェオレBを作成した。
対照として、上記コーヒー抽出液370質量部に砂糖35質量部、牛乳95質量部を混合して得られたカフェオレCを用意し、上記実施例12で得られたカフェオレAと比較例1で得られたカフェオレBの風味の比較を行ったところ、比較例1のカフェオレBは、牛乳のみを使用した対照のカフェオレCに比べ、乳脂量が少なく、カロリーを低減したものであるが、コクが無く、粉臭のするものであった。一方、実施例12のカフェオレAは、比較例1のカフェオレBと比べ、炭水化物量が少ないため、さらに低カロリーとなっているにもかかわらず、牛乳のみを使用した対照のカフェオレCに近いコクがあり、異味のない、豊かな厚みのある乳風味を付与されていた。
乳風味付与材G1.5質量部に代えて乳風味付与材K1.5質量部に変更した以外は実施例12と同様の配合・製法でカフェオレDを作成し、実施例12と同様にカフェオレB及びカフェオレCとの風味の比較を行ったところ、カフェオレDは、比較例1のカフェオレBと比べ、炭水化物量が少ないため、さらに低カロリーとなっているにもかかわらず、牛乳のみを使用した対照のカフェオレCに近いコクがあり、異味のない、豊かな厚みのある乳風味を付与されていた。
〔実施例14〕
カカオマス90質量部、砂糖164質量部、全粉乳50質量部、脱脂粉乳10質量部、乳風味付与材D20質量部、難消化性デキストリン13質量部、ココアバター125質量部、ハードバター25質量部、レシチン2.5質量部、香料1質量部 の配合で、常法によりミルクチョコレートAを得た。
カカオマス90質量部、砂糖164質量部、全粉乳50質量部、脱脂粉乳43質量部、ココアバター125質量部、ハードバター25質量部、レシチン2.5質量部、香料1質量部の配合で、常法により比較用のミルクチョコレートBを得た。
上記2種のミルクチョコレートの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例14で得られたミルクチョコレートAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例15〕
パームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部及びパームステアリン5質量部を均一に混合した混合油脂72.47質量部に、グリセリン脂肪酸エステル3質量部、60%トコフェロール0.01質量部を、添加、混合、溶解した油相を60℃に保温した。一方、水20.89質量部に、乳風味付与材E2.43質量部、食塩1質量部、香料0.2質量部を、添加、溶解した水相を油相に添加し、予備乳化液とし、90℃1分蒸気を用いて殺菌処理したのち、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、マーガリンAを得た。
水を20.89質量部から19.32質量部に変更し、さらに乳風味付与材E2.43質量部に代えて脱脂粉乳4質量部に変更した以外は実施例15の配合・製法と同様にして、比較用のマーガリンBを得た。
上記2種のマーガリンの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例15で得られたマーガリンAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例16〕
強力粉(イーグル:日本製粉製)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種発酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種発酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、本捏ね工程として更に、強力粉(イーグル:日本製粉製)30質量部、上白糖5質量部、乳風味付与材H22.2質量部、食塩1.5質量部及び水5質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、ショートニング8質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、 モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成して、プルマン型食パンAを得た。
乳風味付与材H22.2質量部を脱脂粉乳2質量部に変更し、さらに、本捏ね工程の水5質量部を27質量部に変更した以外は実施例16の配合・製法にしたがって、比較用のプルマン型食パンBを得た。
上記2種のプルマン型食パンの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例16で得られたプルマン型食パンAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例17〕
乳風味付与材K8.5質量部、グラニュー糖44質量部、乳糖11質量部、水18質量部を70℃まで加温して混合、溶解した後、生クリーム(乳脂45%品)を18.5質量部加えて混合し、常温まで冷やし、加糖練乳風味の組成物Aを得た。(該組成物の乳脂含量8.4%、炭水化物56%、うちショ糖44%であった)
実施例17の配合のうち、乳風味付与材K 8.5質量部、乳糖11質量部に替えて脱脂粉乳22質量部とし、また生クリーム(乳脂45%品)の配合量を18.3質量部としたた以外、実施例16と同様の方法で比較用の加糖練乳風味の組成物Bを得た。(該組成物の乳脂含量8.4%、炭水化物56%、うちショ糖44%であった。)
いちご30gを軽く潰し、実施例17で得られた加糖練乳風味の組成物A及び比較例5の加糖練乳風味の組成物Bをそれぞれ5gかけ、和えるように混合し、デザートを作成し、風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある練乳風味であったが、実施例17で得られた加糖練乳風味の組成物Aを使用したデザートの方が豊かな練乳風味が感じられた。
〔実施例18〕
パーム油45質量部、レシチン0.5質量部、ショ糖脂肪酸エステル0.5質量部、香料0.1質量部を混合し油相とする。一方、水4.35質量部、水あめ(糖分70質量%、水分30質量%)35質量部、20%加糖卵黄3.5質量部、グリシンを主剤とする日持ち向上製剤1.4質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1質量部、実施例17で得た加糖練乳風味の組成物A8.5質量部、脱脂粉乳1質量部、食塩0.05質量部を混合し水相とする。この油相と水相とを混合、乳化し、急冷可塑化してファットスプレッドAを得た。
実施例18記載の配合のうち、加糖練乳風味の組成物Aに替えて比較例5で得た加糖練乳風味の組成物Bとした以外、実施例18と同様の方法で比較用のファットスプレッドBを得た。
実施例18及び比較例6で得られたファットスプレッド0.5gをそれぞれ1cmの厚さにスライスしたバケット(約10g)に塗布し、風味を評価したところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例18で得られたファットスプレッドAの方が豊かな練乳風味が感じられた。
〔実施例19〕
パーム核油2.5質量部、パーム核ステアリン2.5質量部、バターオイル30質量部を65℃に加温溶解し、油相とした。一方、乳風味付与材E 2質量部、ショ糖脂肪酸エステル0.2質量部、高粘度キサンタンガム0.04質量部、水55.76質量部を混合し、65℃に加温溶解し、水相とした。上記水相と上記油相を混合、乳化して、予備乳化物を調製し、3MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度5MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、ホイップクリームAを得た。
実施例19記載の原料のうち、乳風味付与材E2質量部に替えて脱脂粉乳3.2質量部とした以外、実施例19と同様にして比較用のホイップクリームBを得た。
実施例19及び比較例7で得られたホイップクリームをそれぞれホイップしてホイップドクリームとし、風味を評価したところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例19で得られたホイップクリームAから得られたホイップドクリームの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例20〕
薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部、乾燥全卵15質量部、粉糖15質量部、乳風味付与材E5質量部を粉体混合機によって混合し、ケーキドーナツプレミックス粉を調製した。このプレミックス粉136質量部に対し、水67質量部を添加、混合し、ケーキドーナツ生地を得た。このケーキドーナツ生地をドーナツ成型した後、160℃の油で揚げ、ケーキドーナツAを得た。
実施例20記載の原料のうち、乳風味付与材E5質量部に替えて脱脂粉乳8質量部とした以外、実施例20と同様にして比較用のケーキドーナツBを得た。
実施例20及び比較例8で得られたケーキドーナツの風味を評価したところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例20で得られたケーキドーナツAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例21〕
市販の紅茶葉30質量部に対し、熱水900質量部で抽出したものを紅茶抽出液とした。この紅茶抽出液70質量部に砂糖5.5質量部、乳風味付与材K0.25質量部、乳糖0.52質量部、水23.73質量部を加え、ミルクティーAを作成した。
実施例21記載の原料のうち、乳風味付与材K及び乳糖に替えて脱脂粉乳1質量部とし、また実施例21記載の水23.73質量部を23.5質量部とした以外、実施例21と同様にして比較用のミルクティーBを作成した。
実施例21及び比較例9で得られたミルクティーの風味を評価したところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例21で得られたミルクティーAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例22〕
卵黄90質量部にグラニュー糖68質量部を加え、白くなるまでしっかり撹拌した後、牛乳50質量部、乳風味付与材B50質量部、水50質量部を添加してさらに撹拌した。弱火で少しとろみがつくまで加熱後、氷水で冷却したのち、バニラエッセンス0.05質量部を加えた。さらに、攪拌しながら予めホイッパーで8分立てに泡立てた純生クリーム150質量部を少しずつ添加し、市販アイスクリーマー(Panasonic製 BH-941P)を使用し、冷凍庫で攪拌し(−18℃、3時間)アイスクリームAを作成した。
実施例22記載の原料のうち、牛乳50質量部、乳風味付与材B50質量部、水50質量部に替えて牛乳150質量部とした以外、実施例22と同様にして比較用のアイスクリームBを作成した。
上記2種のアイスクリームの風味の比較を行ったところ、実施例22で得られたアイスクリームAは比較例10で得られたアイスクリームBに比べ、濃厚で豊かで厚みのある乳風味が感じられる良好なものであった。
〔実施例23〕
市販の乳性炭酸飲料(スコールホワイト:南日本酪農共同株式会社製)(糖類含量12質量%)100質量部に乳風味付与材G0.5質量部を加えて良く混合し、乳性炭酸飲料Aとした。
実施例23で使用した市販の乳性炭酸飲料をそのまま比較用の乳性炭酸飲料Bとした。
上記2種の乳性炭酸飲料の風味の比較を行ったところ、実施例23で得られた乳性炭酸飲料Aは比較例11の乳性炭酸飲料Bに比べ、濃厚で、豊かで厚みのある乳風味が感じられる良好なものであった。
〔実施例24〕
卵黄80質量部とグラニュー糖20質量部をよくすり混ぜ、さらに薄力粉15質量部を加え、実施例17で得た加糖練乳風味の組成物Aを加え、十分に混合した。粘性が出てくるまで加熱しながら混合を続け、加熱を停止した後、バニラエッセンス0.2質量部を加え、混合した後、冷却し、カスタードクリームAを作成した。
実施例24の配合のうち、加糖練乳風味の組成物Aに替えて比較例5で得られた加糖練乳風味の組成物Bとした以外、同様にして比較用のカスタードクリームBを作成した。
上記2種のカスタードクリームの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例24で得られたカスタードクリームAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例25〕
グラニュー糖170質量部、水飴300質量部、水100質量部を鍋に入れて加熱し、粘度が出たところで乳風味付与材A180質量部を添加しよく混合した。ある程度冷えたところで棒状に伸ばし、適当な大きさに切り、粉糖をまぶしながら手で丸め、ミルクキャンディーAを得た。
実施例25の配合のうち、乳風味付与材A180質量部に替えて脱脂粉乳300質量部とした以外、実施例25と同様にして比較用のミルクキャンディーBを得た。
上記2種のミルクキャンディーの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例25で得られたミルクキャンディーAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例26〕
バター55質量部を鍋に入れて弱火で溶かし、小麦粉50質量部を3回に分けて入れ、良く混合した。次いで、40℃の水380質量、乳風味付与材F30質量部を加え、良く混合した。そのまま弱火で加温を続け、とろみが出たところで、塩0.2質量部、こしょう0.3質量部、コンソメ5.5質量部を混合し、ホワイトソースAを作成した。
実施例26の配合のうち、乳風味付与材F30質量部に替えて脱脂粉乳50質量部とした以外、実施例26と同様にして比較用のホワイトソースBを作成した。
上記2種のホワイトソースの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強度の厚みのある乳風味であったが、実施例26で得られたホワイトソースAの方が豊かな乳風味が感じられた。
〔実施例27〕
市販カルーア30質量部と牛乳40質量部、乳風味付与材J3質量部、水47質量部を混合し、カルーアミルクAを作成した。
実施例27の配合のうち、乳風味付与材J3質量部に替えて脱脂粉乳5質量部、水45質量部とした以外、実施例27と同様にして比較用のカルーアミルクBを作成した。
上記2種のカルーアミルクの風味の比較を行ったところ、両者はほぼ同等の強さの厚みのある乳風味であったが、実施例27で得られたカルーアミルクAの方が豊かな乳風味が感じられた。
Claims (9)
- (A)乳清ミネラル、(B)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材、(C)リン脂質、及び(D)糖類を、(A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、それぞれ(B)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材を固形分として0.001〜5質量部、(C)リン脂質を固形分として0.0001〜0.5質量部、及び(D)糖類を固形分として0.5〜40質量部含有し、油脂を実質的に含有しないことを特徴とする粉末状又は液状の乳風味付与材。
- 上記(C)リン脂質として、固形分中のリン脂質含量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料を使用したことを特徴とする請求項1記載の乳風味付与材。
- 上記(D)糖類として、乳糖、ガラクトオリゴ糖、及び、糖アルコールのうちの1種または2種以上を使用したことを特徴とする請求項1又は2記載の乳風味付与材。
- (A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、それぞれ(B)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材を固形分として0.01〜2質量部、及び(C)リン脂質を固形分として0.0005〜0.1質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳風味付与材。
- (A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、それぞれ(B)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材を固形分として0.05〜0.8質量部、及び(C)リン脂質を固形分として0.001〜0.05質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳風味付与材。
- (A)乳清ミネラルの固形分1質量部に対し、それぞれ(B)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材を固形分として0.05〜0.71質量部、(C)リン脂質を固形分として0.005〜0.19質量部、及び(D)糖類を固形分として5.19〜12.73質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳風味付与材。
- 脱脂粉乳代替用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳風味付与材。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の乳風味付与材を使用した飲食品。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の乳風味付与材を、脱脂粉乳の代替として使用することを特徴とする乳風味付与材の使用方法。
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