JP6666782B2 - 可塑性油中水型乳化油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、持続性のある甘くコクのある乳風味を有する可塑性油中水型乳化油脂組成物に関する。
バターは、保存性が高く、持続性のある甘くコクのある乳風味を有し、さらにバターを使用したベーカリー製品も持続性のある甘くコクのある乳風味を有することから、製菓・製パン業界では広く使用されている。
しかし、バターは、その油脂特性により口溶けは良好であるが低温で硬く融点もやや低いため、夏場等は極度に軟化したり、油分分離したり溶解してしまう等、物性面において使いやすいものではなかった。そのため、乳脂以外の各種動植物油を使用した油相と、脱脂粉乳等の粉乳類を溶解した水相を油中水型に乳化し冷却可塑化することで得られる可塑性油中水型乳化油脂組成物が、製菓・製パンをはじめ様々な飲食品の製造に使用されている。この可塑性油中水型乳化油脂組成物は、作業性が良好で、ベーカリー製品をはじめ、各種飲食品にある程度のバター風味を付与することもできることから、バターに代わり広く使用されている。
上記可塑性油中水型乳化油脂組成物の水相に使用する粉乳類として、従来は牛乳を粉末化した全粉乳や、脱脂乳を粉末化した脱脂粉乳の使用が主流であった。その理由は、全粉乳や脱脂粉乳は牛乳あるいは牛乳の水相成分をそのまま粉末化したものであるため、風味的にバター同様の優れたコクのある乳風味を付与することができる点にある。
しかし、近年は、より濃厚な風味を求める目的やコストダウン等の目的で、さらに乳蛋白質が濃縮された粉末状の乳製品が用いられる場面が増えてきている。具体的には、ホエイを粉末化したホエイパウダー、さらにはホエイプロテインコンセントレート(WPC)・ホエイ蛋白質単離物(WPI)・トータルミルクプロテイン(TMP)・カゼインナトリウム・カゼインカリウム等の乳蛋白質である。
しかし、これらの粉末状の乳製品は、乳の中の好ましくない風味成分まで濃縮されているため、乳の甘味が感じられず、エグ味が強く感じられてしまうという問題があった。
そのため、可塑性油中水型乳化油脂組成物において、乳製品、特に乳蛋白質の使用量を減じた場合であっても、バター同様の持続性のある甘くコクのある乳風味を付与する方法が各種研究され、提案されている。
まず、一般的には、香料や乳脂分解物等の風味成分が使用される。しかし、この方法では乳風味は増強されるが、味に厚みがなく、優れたコクのある乳風味の可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られないという問題があった。
また、発酵乳や醗酵バターを使用する方法も行われるが、この方法では、特有の発酵風味が付与されてしまうという問題があった。
そのため、少量の乳製品に乳風味増強剤を併用する方法(例えば特許文献1〜6参照)、バターに代えてアミノ酸組成物を使用する方法(例えば特許文献7参照)等が提案されている。
しかし、特許文献1〜6の乳風味増強剤を併用する方法は、実際には乳風味自体を付与しているのではなく、単にコク味を付与することにより乳風味を増強しようとするものである。そのため、コク味の強さの割りに乳風味、特に乳の甘い風味が感じられないという問題があった。また、乳風味以外の成分の風味をも同様に増強してしまい、乳風味が目立って増強されたように感じられない、という問題もあった。また、これらの素材はコク味を付与するために素材自体の風味が強く、添加量を増やすとそれらの風味が感じられてしまうという問題もあった。
また、特許文献7に記載のアミノ酸組成物を使用する方法は、バター風味を強化するためにアミノ酸の添加量を増やすと、エグ味が出るおそれがあるという問題があった。
また、ごく少量の添加量で乳風味を増強あるいは付与可能な成分として、特定の組成の乳清ミネラルが提案されている(例えば特許文献8、9参照)が、これらの方法では乳のコク味がやや不足するという問題があった。そこで、該乳清ミネラルにカゼインを含まない乳製品を併用する方法(特許文献10参照)、乳酸発酵風味素材を併用する方法(特許文献11)も提案されているが、これらの方法では甘い乳風味が不足気味になり、特に乳製品の含量を削減していくと、乳風味以外にエグ味が感じられるようになってしまうという問題があった。
特開2007−202492号公報 特開2010−057434号公報 特開平07−236451号公報 特開2000−135055号公報 特開2008−259447号公報 特開2000−004822号公報 再表2009−101972号公報 特開2014−050336号公報 特開2014−050337号公報 特開2015−188357号公報 特開2015−144591号公報
したがって、本発明の目的は、持続性のある甘くコクのある乳風味を有する可塑性油中水型乳化油脂組成物、及び、持続性のある甘くコクのある乳風味を有するベーカリー製品を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく種々検討した結果、乳風味付与材として知られる乳清ミネラルを、粉乳類の含量の低い可塑性油中水型乳化油脂組成物の水相に使用した場合、油相の油脂配合によりその効果が大きく影響を受けることを見出し、さらに検討を進めたところ、その機作は不明であるが、驚くべきことに、乳脂ではなく、豚脂や牛脂を使用した場合に、持続性のある甘くコクのある乳風味が得られ、上記課題を解決可能であることを見出した。そしてこの効果は、乳清ミネラルだけでなく、乳清カルシウムについても同様に見られることも見出した。
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、油相中に動物油脂を50質量%以上(油相基準)含有し、水相に乳清ミネラル及び/又は乳清カルシウムを含有することを特徴とする可塑性油中水型乳化油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、該可塑性油中水型乳化油脂組成物を配合したベーカリー製品を提供するものである。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、乳蛋白質、バターや乳脂の含量が少ない場合であっても、エグ味のない持続性のある甘くコクのある乳風味を有する。
また、本発明のベーカリー製品は、乳蛋白質、バターや乳脂の含量が少ない場合であっても、エグ味のない持続性のある甘くコクのある乳風味を有する。
以下、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物について好ましい実施形態に基づき詳述する。
まず、本発明で使用する乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、より良好な乳風味と口溶けを有する可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルを得る方法としては、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、あるいは甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法が挙げられるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記乳清ミネラルの含量は、組成物基準で、固形分として好ましくは0.03〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1%である。上記乳清ミネラルの含量が0.03質量%未満であると、本発明の効果、特にコク味が弱くなるおそれがあることに加え、呈味の持続性が見られにくく、また、2質量%を超えると、苦味やエグ味等の雑味を感じるおそれがある。
続いて、本発明で使用する乳清カルシウムについて述べる。
乳清カルシウムとは、乳又はホエイ(乳清)から得られるカルシウムを多く含有する灰分を主体とする乳原料のことであり、好ましくは、酸ホエイから可能な限り蛋白質や乳糖を除去後、溶液をpH6.0から8.0に調整し、生成した不溶物を分離して得られるものである。本発明の乳清カルシウムとしては、このような工程により調製したものを用いることができるほか、市販されている乳清カルシウムを用いることもできる。
本発明で使用する乳清カルシウムとしては、より良好な乳風味と口溶けを有する可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られる点で、灰分中のカルシウム含量が20質量%以上、特に25質量%以上の乳清カルシウムを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは70質量%以下、好ましくは45質量%以下である。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記乳清カルシウムの含量は、組成物基準で、固形分として好ましくは0.03〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1%である。上記乳清カルシウムの含量が0.03質量%未満であると、本発明の効果が見られにくく、また、2質量%を超えると、異味を感じるおそれがある。
本発明においては乳清ミネラルと乳清カルシウムを併用することにより、持続性のある甘くコクのある乳風味がよりはっきりと感じられる点で好ましい。
本発明において乳清ミネラルと乳清カルシウムを併用する場合、その好ましい合計含量は組成物基準で、固形分として好ましくは0.03〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1%であり、また、その好ましい含量比は固形分の質量比(前者:後者)で好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは10:90〜80:20、さらに好ましくは10:90〜67:34である。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、さらに苦汁を含有するものであると、甘くコクのある乳風味の呈味の持続性を向上させることができる点で好ましい。
苦汁とは海水から塩化ナトリウムを採取する際の副生物であり、その組成は、製塩方法、濃縮度及び濃縮温度等の条件により異なるが、主成分は塩化マグネシウムである。
本発明で使用する苦汁としては、より良好な乳風味と口溶けを有する可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られる点で、灰分中のマグネシウム含量が5質量%以上、特に10質量%以上の濃縮苦汁が好ましい。尚、該マグネシウム含量の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記苦汁の含量は、組成物基準で、固形分として好ましくは0.03〜0.6質量%、より好ましくは0.05〜0.4質量%、さらに好ましくは0.075〜0.25%である。上記苦汁の含量が0.03質量%未満であると、甘味の持続性の改良効果が弱くなってしまいやすく、また、0.6質量%を超えると、苦味を感じるおそれがある。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、さらに乳酸発酵風味素材を含有するものであると、より良好な乳風味、特に乳蛋白質との相互作用により、優れた甘くコクのある乳風味を得ることができる点で好ましい。
上記乳酸発酵風味素材とは、乳酸菌が資化可能な基質を乳酸発酵して得られた風味素材であり、その基質としては、良好な乳風味が得られる点で、乳原料を使用することが好ましい。該乳原料としては、牛乳、濃縮乳、練乳、ホエイ、クリーム、バター、バタークリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の乳や乳製品をはじめ、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー等の粉乳類や、脱脂乳等の乳糖を含有する乳製品も使用可能である。
尚、本発明では上記乳酸発酵風味素材として、乳酸発酵を利用した市販の飲食品や風味素材、例えばクリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、発酵乳飲料、製パン用発酵種等を使用することもできる。
また、本発明では、上記乳酸発酵風味素材として、基質や発酵条件の異なる2種以上の乳酸発酵風味素材を用いることもできる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における上記乳酸発酵風味素材の含量は、組成物基準で、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは2〜6質量%である。0.01質量%よりも少ないと使用効果が見られず、また20質量%よりも多いと酸味が強くなり、風味のバランスが大きく崩れてしまう。
以下、上記乳酸発酵風味素材の製造方法について、乳酸菌が資化可能な基質として乳原料を使用した場合の好ましい実施態様を詳述する。
上記乳酸発酵風味素材を得るためには、まず乳酸菌が資化可能な基質、好ましくは乳原料を含有するミックス液を調製する。
具体的には、牛乳、濃縮乳、ホエイ、クリーム、バター、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の水分を多く含有する乳や乳製品、あるいは水に、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー等の粉乳類や、乳蛋白質、乳糖、バター等の乳原料を添加し、水分含量が好ましくは20〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%となるように調整して、乳原料を含有するミックス液とする。また、該乳原料を含有するミックス液は、食用油脂を添加した水中油型乳化物とすることもできるが、良好な風味バランスの乳酸発酵風味素材を得るため、本発明では、ミックス液の油脂含量を好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下とする。
ミックス液は、風味が強化された乳酸発酵風味素材を安定して製造可能な点で、上記乳原料の含量が無脂乳固形分として2〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
また、ミックス液は、風味が強化された乳酸発酵風味素材が得られる点で、遊離脂肪酸を好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.02〜0.1質量%含有することが望ましい。0.01質量%を下回ると遊離脂肪酸を含有することによる風味強化の効果が得られにくく、0.2質量%を上回ると乳酸発酵風味素材に脂肪酸臭が残存するおそれがある。ミックス液中の遊離脂肪酸含量を上記範囲とするためには、遊離脂肪酸含量の高い乳原料を使用する方法や、別途遊離脂肪酸や遊離脂肪酸含量の高い原材料を添加する方法、さらには油脂を含有するミックス液をリパーゼ等の脂質分解酵素で分解する方法等が挙げられるが、本発明では良好な風味の乳酸発酵風味素材が安定して製造可能であることから、バター分解物、バターオイル分解物、クリーム分解物、チーズ分解物等の遊離脂肪酸含量の高い乳原料を使用する方法が好ましく、特に好ましくはバター分解物を使用する。
次に、必要に応じて、この乳原料を含有するミックス液を加熱する。加熱する温度は、好ましくは35〜75℃である。さらに、必要に応じて均質化を行なう。均質化を行なうための均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサー等の高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられ、好ましくは1〜200MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。
均質化後、必要に応じて、加熱殺菌を行なう。該加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波、ジュール加熱式等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の50〜160℃、好ましくは55〜100℃の加熱処理を行なうことができる。
このようにして調製された乳原料を含有するミックス液に乳酸菌を添加して、乳酸発酵を行なう。
尚、本発明で使用する乳酸菌としては特に制限されるものではないが、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis、Lactobacillus casei subsp. casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis、Lactobacillus jugurti、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus kefyr、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Streptococcus thermophilus、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris 、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium breve等が挙げられ、これらを単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、これらの乳酸菌は、乳酸菌を含む発酵乳の形態で使用することも可能である。また、さらに、乳酸発酵風味素材の風味を向上させる目的で、Candida kefyr、Kluyveromyces marxianus var. marxianus、Saccharomyces unisporus、Saccharomyces florentinus等の酵母を含むスターターを使用することも可能である。
本発明では、より良好な香味を有する乳酸発酵風味素材が得られる点で、Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis、Lactobacillus helveticus、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremorisのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、より好ましくは、Lactococcus lactis subsp. Lactis var. diacetylactisと、Leuconostoc mesenteroides subsp. Cremorisの2種を併用するか、又は、Lactobacillus helveticusと、Leuconostoc mesenteroidesの2種を併用する。
乳酸菌の添加量は、後述するpHの乳酸発酵風味素材を効率よく得る観点から、ミックス液100質量部に対して、乾燥質量で0.001〜0.2質量部であることが好ましく、0.004〜0.05質量部であることがより好ましい。
また、乳酸発酵の条件は、温度については、使用される各乳酸菌に好適な発酵温度(例えば20〜40℃)を適宜選択すればよい。
乳酸発酵時間は、基質濃度や乳酸菌の添加量等に応じ適宜選択可能であるが、好ましくは、乳酸発酵後のpHの値が4〜6、より好ましくは4.0〜5.5、さらに好ましくは4.2〜5.2、最も好ましくは4.3〜4.8となる時間とする。
上記乳酸発酵時は、静置状態とすることもできるが、好ましくは攪拌を行なう。好ましい攪拌条件は、1分間に5〜50回転、より好ましくは10〜30回転である。
このようにして得られる乳酸発酵風味素材の固形分含量は、5〜20質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることがより好ましい。
次に、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物に使用する油脂について説明する。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、動物油脂を油相中に50質量%以上(油相基準)含有するものであり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上含有する。油相中における動物油脂の含有量の上限は、特に制限されるものではないが、好ましくは100質量%以下である。
動物油脂とは、動物から得られる油脂の総称であり、動物油脂としては、魚油、肝油、鯨油等の海産動物油脂と、さなぎ油、牛脚油、骨油、牛脂、豚脂、馬脂、鶏油、卵油、骨脂、乳脂等の動物脂が挙げられる。本発明では、動物油脂として、上記各種動物油脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。
本発明においては、上記動物油脂の中でも、牛脂、豚脂、乳脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂のうちから選ばれた、1種又は2種以上の油脂を使用することが好ましく、さらに好ましくは牛脂及び/又は豚脂、特に好ましくは牛脂及び豚脂を使用する。牛脂と豚脂とを併用する際には、牛脂:豚脂が質量比で好ましくは10〜50:50〜90、より好ましくは10〜30:70〜90となるように使用する。
尚、本発明においては、上記動物油脂と後述する植物油脂とを組み合わせた加工油脂を使用することもできるが、その場合は動物油脂に由来する質量を上記動物油脂の含量として算入するものとする。
また、下記のその他の原料に動物油脂が含まれる場合は、その動物油脂の純分について上記動物油脂の含量として算入するものとする。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物においては、特に乳脂を多く含有するものでなくても良好な甘くコクのある乳風味を得ることができるが、油相中に乳脂を油相基準で3〜10質量%、好ましくは3〜7質量%含有させることで、香りとコクを向上させることができるため、特に動物油脂の含量が50〜60質量%の場合には、乳脂を添加することが好ましい。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の油相に使用することのできる上記動物油脂以外の油脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂等の各種植物油脂、並びにこれらの油脂を、水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における油脂の含量は、特に制限されるものではないが、好ましくは40〜98質量%、より好ましくは60〜98質量%、さらに好ましくは60〜90質量%である。尚、該油脂含量は、下記のその他の原料に含まれる油脂分も含めた含量である。
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物における水の含量は、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。尚、該水の含量は、上記乳清ミネラル、乳清カルシウム、苦汁、乳酸発酵風味素材、及び下記のその他の原料に含まれる水分も含めた含量である。
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物には、上記乳清ミネラル、乳清カルシウム、苦汁、乳酸発酵風味素材、動物油脂等の油脂、水以外に、通常、マーガリン、ショートニング等の可塑性油中水型乳化油脂組成物に使用されることが知られているその他の原料を、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
上記その他の原料としては、例えば、澱粉、乳化剤、増粘安定剤、乳清ミネラル・乳清カルシウム以外の乳や乳製品、蛋白質、糖類/甘味料、卵類、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の各種食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記澱粉としては、コーン、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、小麦、米、もち米由来等の澱粉が挙げられ、必要に応じて、エステル化、リン酸架橋、α化、熱処理等の化学的、物理的処理を施したものを使用することができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記の乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。本発明においては、必要に応じて、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳清ミネラル・乳清カルシウム以外の乳や乳製品としては、牛乳、脱脂乳、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することが出来る。
上記蛋白質としては、特に限定されないが、例えばα−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン、血清アルブミン等のホエイ蛋白質、カゼイン、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて1種ないし2種以上の蛋白質として、あるいは1種ないし2種以上の蛋白質を主成分とする食品素材の形で添加することができる。本発明においては、良好な乳風味の可塑性油中水型乳化油脂組成物が得られる点で上記蛋白質の中でも乳蛋白質を使用することが好ましく、その好ましい含量は、上記乳清ミネラル・乳清カルシウム以外の乳や乳製品に含まれる蛋白質を合せて、蛋白質純分として0.1〜4質量%、好ましくは0.2〜4質量%、より好ましくは0.2〜2質量%である。
上記糖類/甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、はちみつの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
次に、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の可塑性油中水型乳化物は例えば、乳清ミネラル及び/又は乳清カルシウムを含有させた水相を調製し、動物油脂を50質量%以上含有する油相と該水相とを乳化、可塑化させることによって得ることができる。
詳しくは、先ず、動物油脂並びに必要に応じてその他の油脂及びその他の原料を50℃以上に加熱しながら混合して、油相を調製する。この際、油相における動物油脂の含量が50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上となるように油相を調製する。
次に、水に乳清ミネラル及び/又は乳清カルシウム、さらに、好ましくは苦汁及び/又は乳酸発酵風味素材、必要に応じてその他の原料を添加・混合し、水相を調製する。このときの、上記乳清ミネラル、乳清カルシウム、苦汁及び乳酸発酵風味素材等の配合量は上述のとおりである。
続いて、得られた油相へ水相を加え、混合乳化し予備乳化物を得る。油相と水相の混合比率(前者:後者)は、質量比で、50:50〜98:2が好ましく、70:30〜95:5がより好ましい。尚、混合乳化は、当該技術分野で公知の方法及び条件で行うことができる。
次に、この予備乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式で行うことができ、またプレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも行うこともできる。
次に、上記予備乳化物を冷却し、可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。
冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状とすることができる。
本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、各種食品に用いることができ、例えば食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、パイ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリー製品に、練り込み用、ロールイン用、サンド・フィリング用、スプレー・コーティング用、フライ用等として使用することができるが、なかでも、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、ベーカリー生地製造時に練り込み用及び/又はロールイン用として配合することが好ましい。
また、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物は、他にも、カレールウ用、バッター用、ソース用、フライ用等の調理・総菜用としても使用することができる。
次に本発明のベーカリー製品について説明する。
本発明のベーカリー製品は、上述のように本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物を配合したものである。配合方法の例としては、ベーカリー生地製造時に練り込み用及び/又はロールイン用として配合する方法が挙げられる。
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地等の菓子生地や、食パン生地、フランスパン生地、バラエティブレッド生地、ブリオッシュ生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、マフィン生地、ピザ生地、スコーン生地、蒸しパン生地、ワッフル生地、イングリッシュマフィン生地、バンズ生地等のパン生地が挙げられるが、本発明のベーカリー生地は、良好なミルク風味が得られる点でパン生地であることが好ましい。
上記のベーカリー生地における本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物の配合量は、ベーカリー生地の種類により異なるが、練り込み使用する場合で、菓子生地の場合は菓子生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2〜150質量部、より好ましくは5〜100質量部であり、パン生地の場合はパン生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜21質量部である。
また、ロールイン使用する場合で、菓子生地の場合は菓子生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは30〜150質量部、より好ましくは50〜100質量部であり、パン生地の場合はパン生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部である。
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉及び全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉等の澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
本発明では、澱粉類中、小麦粉類を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用することが望ましい。
本発明のベーカリー製品を得るには、上記ベーカリー生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理する。
上記成形においては、任意の形状に成形することができ、型詰めを行うこともできる。成形は、手作業で行うことができ、また連続ラインを用いて全自動で行うこともできる。
上記加熱処理としては、例えば、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を行うことができるが、焼成によることが好ましい。
また、得られた本発明のベーカリー製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例により何等制限されるものではない。
<乳清ミネラルAの製造>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
<乳酸発酵風味素材Aの調製>
脱脂粉乳(無脂乳固形分96質量%、蛋白質含量34質量%)4.5質量部、ホエイパウダー(無脂乳固形分98質量%、蛋白質含量11質量%)3.5質量部、トータルミルクプロテイン(無脂乳固形分95質量%、蛋白質含量91質量%)1質量部、無塩バター(無脂乳固形分1.2質量%、蛋白質含量0.5質量%、乳脂肪分83質量%)4質量部、バター分解物(デリシャンバターテイストHB−2、大洋香料株式会社製)0.2質量部、及び水86.78質量部を混合し、55℃に加熱し、ケミコロイド社製シャーロットコロイドミルにてクリアランス0.2mm、回転数3500rpmにて均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、無脂乳固形分が9質量%、遊離脂肪酸含量が0.035質量%、乳脂含量が3.3質量%であるミックス液を調製した。この乳原料を含有するミックス液にLactobacillus helveticus及びLeuconostoc mesenteroidesの乳酸菌スターター各0.01質量部を加え、30℃で15回転/分で攪拌しながら12時間発酵し、固形分が13質量%、pHが4.54である乳酸発酵風味素材Aを得た。
<可塑性油中水型乳化油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
豚脂、牛脂、パームステアリン、菜種油を70:20:5:5の質量比で混合した混合油脂80.5質量部を60℃に加熱し、グリセリンモノステアリン酸エステル0.5質量部及びレシチン0.5質量部を添加・溶解した油相を用意した。一方、水18質量部を混合後60℃に加熱し、乳清ミネラルA0.5質量部を添加・溶解した水相を用意した。上記油相と水相を油中水型の乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分)にかけ、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物1を製造した。
〔実施例2〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.05質量部を、市販の乳清カルシウム(灰分中のカルシウム含量が35質量%)0.5質量部に置換した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物2を製造した。
〔実施例3〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物3を製造した。
〔実施例4〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、市販の濃縮苦汁(固形分30質量%、灰分中のマグネシウム含量が11質量%)0.5質量部を添加し、水18質量部を17.5質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物4を製造した。
〔実施例5〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、実施例4で使用した濃縮苦汁0.5質量部及び脱脂粉乳0.9質量部を添加し、水18質量部を16.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物5を製造した。
〔実施例6〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、実施例4で使用した濃縮苦汁0.5質量部、ホエイプロテインコンセントレート(蛋白質含量80質量%)0.4質量部及び乳糖0.5質量部を添加し、水18質量部を16.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物6を製造した。
〔実施例7〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、実施例4で使用した濃縮苦汁0.5質量部及び乳酸発酵風味素材A4質量部を添加し、水18質量部を13.5質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物7を製造した。
〔実施例8〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、実施例4で使用した濃縮苦汁0.5質量部、脱脂粉乳0.9質量部及び乳酸発酵風味素材A4質量部を添加し、水18質量部を12.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物8を製造した。
〔実施例9〕
実施例1で使用した乳清ミネラルA0.5質量部を、乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部に置換し、実施例4で使用した濃縮苦汁0.5質量部、ホエイプロテインコンセントレート(蛋白質含量80質量%)0.4質量部、乳糖0.5質量部及び乳酸発酵風味素材A4質量部を添加し、水18質量部を12.6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物9を製造した。
〔実施例10〕
実施例8の使用混合油脂を、豚脂、牛脂、パームステアリン、菜種油を20:70:5:5の質量比で混合した混合油脂に変更した以外は実施例8と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物10を製造した。
〔実施例11〕
実施例8の使用混合油脂を、 豚脂、パームステアリン、菜種油を80:15:5の質量比で混合した混合油脂に変更した以外は実施例8と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物11を製造した。
〔実施例12〕
実施例8の使用混合油脂を、 豚脂、パームステアリン、菜種油を50:38:12の質量比で混合した混合油脂に変更した以外は実施例8と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物12を製造した。
〔実施例13〕
実施例8の使用混合油脂を、乳脂、豚脂、パームステアリン、菜種油を5:50:35:10の質量比の質量比で混合した混合油脂に変更した以外は実施例8と同様の配合及び製法で、本発明の可塑性油中水型乳化油脂組成物13を製造した。
〔比較例1〕
実施例8で使用した乳清ミネラルA0.2質量部及び市販の乳清カルシウム0.3質量部を無添加とし、水12.6質量部を13.1質量部に変更した以外は実施例8と同様の配合及び製法で、比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物14を製造した。
〔比較例2〕
実施例1で使用した混合油脂を、 パームスーパーオレインのランダムエステル交換油、パームステアリンを95:5の質量比で混合した混合油脂に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で、比較例の可塑性油中水型乳化油脂組成物15を製造した。
上記可塑性油中水型乳化油脂組成物1〜15について、下記の風味評価及びベーカリー試験を行なった。
<可塑性油中水型乳化油脂組成物の風味評価>
12人のパネラーにより、可塑性油中水型乳化油脂組成物1〜15それぞれを直接喫食した際の香り、味、味の持続性、雑味について、それぞれ下記評価基準に従って官能評価し、12人のパネラーの合計点を評価点数として、結果を下記のようにして表1に示した。
51〜60点:◎++、41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
<評価基準>
・香り
5点…甘い香りがはっきりと感じられる。
3点…甘い香りが感じられるがやや弱い。
1点…甘い香りがわずかに感じられる。
0点…甘い香りが感じられない。
・味
5点…良好なコクのある甘味が感じられる。
3点…コクのある甘味が感じられる。
1点…甘味は感じられるがコクがない。
0点…甘味が感じられない。
・味の持続性
5点…トップからラストまで呈味が感じられる。
3点…トップからミドルにかけて呈味を感じるがラストの呈味が弱い。
1点…トップには呈味を感じるが、ミドルからラストにかけての呈味が弱い。
0点…トップには呈味を感じるが、すぐに消えてしまう。
・雑味
5点…まったくエグ味が感じられず、極めて良好である。
3点…ほとんどエグ味が感じられず、良好である。
1点…エグ味が感じられ、やや不良である。
0点…はっきりしたエグ味が感じられ、不良である。
Figure 0006666782
<ベーカリー試験>
上記可塑性油中水型乳化油脂組成物1〜15について、下記に示す配合及び製法により菓子パンを製造し、風味の評価を行った。
〔菓子パンの配合・製法〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、砂糖18質量部、食塩1.3質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵(正味)10質量部、イースト5質量部、イーストフード0.1質量部、水50質量部をミキサーボールに入れ、たて型ミキサーを用い、低速で3分、中速で4分混捏した後、可塑性油中水型乳化油脂組成物(1〜15の中からいずれか1種)10質量部を加えてフックを使用し、低速で3分、中速で4分混捏した。得られた生地は、フロアタイムを30分とった後、60gに分割し、菓子パン生地を得た。
得られた菓子パン生地は、フロアタイムを30分とり、50gに分割した。さらに30分ベンチタイムを取った後、丸め成形をし、38℃、相対湿度85%、50分のホイロを取った後、上火200℃、下火200℃のオーブンで10分焼成した。
得られた菓子パンを室温で1時間冷却した後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)に保管し、1日後に下記の方法で風味評価を行なった。
<ベーカリー製品の風味評価>
12人のパネラーにより、得られた菓子パン1〜15それぞれを直接喫食した際の香り、味、味の持続性、雑味を、それぞれ下記評価基準に従って官能評価し、12人のパネラーの合計点を評価点数として、結果を下記のようにして表1に示した。
51〜60点:◎++、41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
<評価基準>
・香り
5点…甘い香りがはっきりと感じられる。
3点…甘い香りが感じられるがやや弱い。
1点…甘い香りがわずかに感じられる。
0点…甘い香りが感じられない。
・味
5点…良好なコクのある甘味が感じられる。
3点…コクのある甘味が感じられる。
1点…甘味は感じられるがコクがない。
0点…甘味が感じられない。
・味の持続性
5点…トップからラストまで呈味が感じられる。
3点…トップからミドルにかけて呈味を感じるがラストの呈味が弱い。
1点…トップには呈味を感じるが、ミドルからラストにかけての呈味が弱い。
0点…トップには呈味を感じるが、すぐに消えてしまう。
・雑味
5点…まったくエグ味が感じられず、極めて良好である。
3点…ほとんどエグ味が感じられず、良好である。
1点…エグ味が感じられ、やや不良である。
0点…はっきりしたエグ味が感じられ、不良である。
Figure 0006666782

Claims (6)

  1. 油相中に動物油脂を50質量%以上(油相基準)含有し、水相に乳清ミネラル及び/又は乳清カルシウム並びに苦汁を含有することを特徴とする可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  2. 上記乳清ミネラルの固形分中のカルシウム含量が2質量%未満である請求項1に記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  3. 苦汁の主成分が塩化マグネシウムである、請求項1又は2記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  4. さらに乳酸発酵風味素材を0.1〜20質量%(組成物基準)含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  5. 上記動物油脂が、牛脂、豚脂、乳脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂のうちから選ばれた、1種又は2種以上の油脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の可塑性油中水型乳化油脂組成物を配合したベーカリー製品。
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