JP7352388B2 - ベイキング用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ベーカリー食品が有する風味や、サンド・トッピング・注入・包餡等されたフィリングの風味を強く感じさせることのできるベイキング用油脂組成物に関する。
ベーカリー食品は、パン生地自体の種類の多さに加えて、各種フィリングや副原料との組合せにより、多種多様な商品が存在している。特に根強い人気を博している種類のベーカリー食品として、フィリングをトッピングやサンド、包餡や塗布等することにより、フィリングとパンとを複合させてなるベーカリー食品(以下、単に菓子パンと記載する場合がある)が挙げられる。
ここで、菓子パンの風味の向上においては、菓子パンの風味に占める割合の高い、フィリングの風味を向上させることが従来検討されてきた。従来、フィリングの風味を向上させる方法として(1)フィリング中の糖などの呈味材や香料の含有量を高め呈味を強める方法や、(2)例えばチョコフィリングであればカカオ分、ミルクフィリングであれば乳固形分のように、フィリング中におけるフィリングの風味を向上させる原料の含有量を高め、風味強度を高める方法等がとられてきた。
しかし、フィリングの風味を向上させる方法として上記(1)(2)のような方法をとると、使用するフィリング毎に呈味材や香料、フィリングの風味を向上させる原料を添加してフィリングを調製する必要があり、工程が煩雑になる他、フィリング自体のコストが高くなりやすいという問題点があった。
ところで、菓子パンの風味の向上においては、フィリングの風味を向上させることと同時に、フィリングとパンとの風味の調和が重視される。菓子パンにおいて、フィリングの風味のみを強めると、菓子パン全体としての風味の調和がとれない他、風味を強めたフィリングにあわせて、パン自体の風味を強めると、菓子パン全体の風味の調和がとれる場合もあるが、菓子パン全体の風味の強度が高すぎて消費者に好まれない場合がある。このため、菓子パン全体の風味の向上と調和を図る観点から、菓子パンの分野において、フィリングの風味の向上をパン生地の側から行う検討が、近年なされている。
例えば、特許文献1では、フィリング入りのパンにおいて、スクラロースをパン生地に添加することを特徴とするフィリングの風味向上方法が開示されている。
また、パン生地の製造に使用する油脂組成物と、フィリングの製造に使用する油脂組成物のいずれにも用いることのできる油脂組成物を使用することで、フィリングの風味の向上をパン生地の側からも行い、菓子パン全体の風味の向上を図る検討もなされている。このような検討に用いられる油脂組成物としては、例えば特許文献2に開示された、10℃の固体脂含有量が20%以下である乳脂分別軟質部を含有し、特定トリグリセリド組成を有する、バタークリーム又はベーカリー製品用可塑性油脂組成物を挙げることができる。
特開2013-009646号公報 特開2016-082888号公報
従来の複合させるパンの側からフィリングの風味を向上させ、菓子パン全体の風味向上を図る手法には、次のような課題があった。例えば、特許文献1の手法では、高甘味度甘味料であるスクラロースを用いるため、菓子パン全体の風味として甘さが強くなりやすいという課題があった。また、特許文献2で提案されているようなパン生地やフィリングの製造の双方に用いることのできる油脂組成物を使用する方法においては、フィリング製造時とパン生地製造時に同一の油脂組成物を用いる必要があるため、フィリングやパン生地のそれぞれの配合に制限がかかりやすいという課題があった。
菓子パンにおいて、その風味を向上させる場合に、フィリングの風味の向上をパン生地の側から行う手法については、未だ改善の余地があった。
本発明者等による鋭意検討の結果、特定の原料を使用し、好ましくは灰分組成が特定の範囲となるように調整されたベイキング用油脂組成物をパン生地の製造時に用いることで、パン生地を焼成して得られるパンに優れたコク味が生じ、またフィリングと複合させた場合には、フィリングの風味とコクを強く感じることができるようになり、結果として菓子パン全体の風味が向上することを知見した。
本発明は上記知見に基づくものである。本発明は、以下を提供する。
[1]次の(A)~(D)を含有するベイキング用油脂組成物。
(A)蛋白質濃縮ホエイ
(B)苦汁
(C)乳清カルシウム
(D)油脂
[2]上記の蛋白質濃縮ホエイが、蛋白質の含有量が25~30質量%であり、炭水化物の含有量が40~55質量%であり、かつ灰分の含有量が15~25質量%である蛋白質濃縮ホエイであることを特徴とする、1に記載のベイキング用油脂組成物。
[3]ベイキング用油脂組成物中の無脂固形分中のカルシウム含有量とマグネシウム含有量の質量比(カルシウム含有量/マグネシウム含有量)が5.0~10.2であることを特徴とする、1又は2に記載のベイキング用油脂組成物。
[4]油脂油相 中に動物油脂を含有しないことを特徴とする、1~3のいずれか1項に記載のベイキング用油脂組成物。
[5]1~4のいずれか1項に記載のベイキング用油脂組成物が使用されたパン生地。
[6]5に記載のパン生地の加熱処理品であるパン。
[7]6に記載のパンとフィリングとが複合された菓子パン。
本発明によれば、コク味を有するベーカリー食品が得られる。
本発明のベイキング用油脂組成物を用いたベーカリー食品と、フィリングとを複合させた場合においては、フィリングの風味をより好ましく感じられるようになり、食品全体の風味が向上する。
以下、本発明のベイキング用油脂組成物について述べる。はじめに、本発明のベイキング用油脂組成物が含有する(A)蛋白質濃縮ホエイ、(B)苦汁、(C)乳清カルシウム、(D)油脂についてそれぞれ詳述する。
<油脂組成物>
[(A)蛋白質濃縮ホエイ]
本発明のベイキング用油脂組成物が含有する(A)蛋白質濃縮ホエイについて述べる。
本発明に用いられる蛋白質濃縮ホエイとは、脱脂乳からカゼイン蛋白質を得る際に生じるホエイや、生乳からチーズを製造する過程で生じるホエイ等を原料とし、該ホエイに対して脱乳糖処理を行った乳原料である。本発明においては、乾燥させ、粉末化した蛋白質濃縮ホエイを用いることが好ましい。粉末化した蛋白質濃縮ホエイを用いる場合、蛋白質濃縮ホエイの水分含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
通常、いわゆる、日本国内における乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)によれば、蛋白質濃縮ホエイパウダーは、乳固形分が95質量%以上であり、乳蛋白量が15~80質量%として定められている。しかしながら、本発明においては、蛋白質含有量が80質量%超となるまでさらに濃縮された、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)やホエイ蛋白質分離物(WPI)等についても蛋白質濃縮ホエイに包含される。
本発明においては、任意の蛋白質濃縮ホエイを使用することができるが、ベイキング用油脂組成物中の灰分含有量、特にナトリウム含有量とカリウム含有量を高め、コクのある呈味を有するベーカリー食品が得られ易く、またベーカリー食品をフィリングと複合させた場合においてはフィリングの風味とコクが向上する効果が得られ易い点から、例えば、灰分の含有量が2.5~25質量%である蛋白質濃縮ホエイを用いることができ、特に蛋白質の含有量が25~30質量%、炭水化物の含有量が40~55質量%、かつ灰分の含有量が15~25質量%である蛋白質濃縮ホエイを用いることが好ましく、また蛋白質の含有量が25~30質量%、炭水化物の含有量が45~52質量%、かつ灰分の含有量が17~22質量%である蛋白質濃縮ホエイを用いることがさらに好ましい。なお本発明に関して成分の、量又は含有量の値を示すときは、特に記載した場合を除き、その値は、当業者に慣用されている方法で測定された値である。測定法により異なる値が得られる場合は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載された測定方法に拠る。
本発明において用いられる蛋白質濃縮ホエイの製造方法は、上記の成分範囲を満たすものであれば、特に限定されない。例えば、膜処理により脱乳糖を行う方法や、ホエイを加熱により濃縮し、乳糖を結晶化させて脱乳糖を図る方法等により得られた蛋白質濃縮ホエイを本発明に用いることができる。
本発明において、蛋白質濃縮ホエイとして用いることのできる市販品としては、例えばFondlac SL(メグレ社製)等が挙げられる。
本発明のベイキング用油脂組成物中の蛋白質濃縮ホエイの含有量は、固形分として、0.25~8.0質量%とすることができ、1.5~7.0質量%であることが好ましく、2.0~6.0質量%であることがより好ましい。本発明のベイキング用油脂組成物に、蛋白質濃縮ホエイを上記範囲となるように含有させることで、コクのある呈味を有するベーカリー食品が得られ易く、またフィリングと複合させた場合においては、フィリングの風味とコクが向上する効果が得られ易い。なお、本発明に関してベイキング用油脂組成物における成分の含有量に関し、「固形分として」というときは、特に記載した場合を除き、組成物全体の質量に占める、成分の固形分の質量の割合として求められる値をいう。例えば、ベイキング用油脂組成物100質量部中に、100gあたり4gの水分を含む蛋白質濃縮ホエイを3.10質量部含む場合、ベイキング用油脂組成物中の蛋白質濃縮ホエイの含有量は、固形分として2.9質量%である(3.10×(100-4)/100=2.9)。
[(B)苦汁]
次に、本発明のベイキング用油脂組成物が含有する(B)苦汁について述べる。
苦汁とは海水から塩化ナトリウムを採取する際の副生物であり、その組成は、製塩方法、濃縮度及び濃縮温度等の条件により異なるが、主成分は塩化マグネシウムである。
本発明のベイキング用油脂組成物においては、任意の苦汁を使用することができるが、より良好なコク味をベーカリー食品に付与することができ、またフィリングと複合させた場合においては、フィリングの風味とコクをより高めることができる点で、灰分中のマグネシウム含有量が5質量%以上、特に10質量%以上の濃縮苦汁が好ましい。尚、該マグネシウム含有量の上限は、特に制限されるものではないが、本発明品を使用したベーカリー食品に異味を付与しない観点から、好ましくは30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。なお本発明に関して、ある組成物又は原料におけるマグネシウム等のミネラルの含有量を灰分中の含有量の値として示すときは、特に記載した場合を除き、ミネラル量を灰分量で除して得られる値を指す。例えば、100gあたり29.0gの灰分を含む苦汁が、マグネシウムを3380mg含有する場合は、灰分中のマグネシウム含有量は、11.7質量%である(3.38/29.0×100=11.7)。
本発明のベイキング用油脂組成物における苦汁の含有量は、固形分として、好ましくは0.03~0.3質量%、より好ましくは0.05~0.15質量%である。苦汁の含有量が上記範囲内であると、より良好なコク味をベーカリー食品に付与することができ、またフィリングと複合させた場合においては、フィリングの風味とコクをより高めることができる。また、苦汁の含有量が0.3質量%超であると、ベイキング用油脂組成物中の灰分含有量が過度に高まり、ベーカリー食品を喫食した際に、コク味と共に苦味を感じるおそれがあり、またフィリングと複合させた場合においては、食品全体としての風味を損ねてしまうおそれがある。
[(C)乳清カルシウム]
次に、本発明のベイキング用油脂組成物が含有する(C)乳清カルシウムについて述べる。
乳清カルシウムとは、乳又はホエイ(乳清)から得られるカルシウムを含有する、灰分を主体とする乳原料のことである。乳清カルシウムは、典型的には、カルシウムを灰分中15質量%以上含む。好ましくは、酸ホエイから可能な限り蛋白質や乳糖を除去後、溶液をpH6.0~8.0に調整し、生成した不溶物を分離して得られるものである。本発明の乳清カルシウムとしては、このような工程により調製したものを用いることができるほか、市販されている乳清カルシウムを用いることもできる。
本発明のベイキング用油脂組成物においては、任意の乳清カルシウムを用いることができるが、より良好な風味を有するベーカリー食品が得られる点で、灰分中のカルシウム含有量が20質量%以上、特に25質量%以上の乳清カルシウムを使用することが好ましい。なお、カルシウム含有量の上限は、特に制限されるものではないが、本発明品を使用したベーカリー食品に異味を付与しない観点から、好ましくは70質量%以下、好ましくは45質量%以下である。
本発明のベイキング用油脂組成物における乳清カルシウムの含有量は、固形分として、好ましくは0.03~1.5質量%、より好ましくは0.05~1.0質量%、さらに好ましくは0.1~0.6%である。乳清カルシウムの含有量が、0.03質量%未満であると、ベーカリー食品にフィリングを複合させた際に、フィリングの風味向上効果が見られにくい。また、乳清カルシウムの含有量が、2質量%を超えると、ベーカリー製品自体に異味を感じる場合があり、フィリングを複合させた食品全体としての風味を損ねてしまうおそれがある。
[(D)油脂]
次に、本発明のベイキング用油脂組成物が含有する(D)油脂について述べる。
本発明のベイキング用油脂組成物に用いられる油脂は、食用に適する油脂であれば特に限定されず、公知の食用油脂を用いることができる。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、シア脂、サル脂及びカカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物油脂、並びにこれらの油脂に、水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。加工油脂の例としては、パーム油を例に挙げると、パームオレイン(パーム油の液体画分)、パームスーパーオレイン(パームオイルの液体画分を特に制御された結晶化過程によりヨウ素価60以上にした油)、及びこれらのエステル交換油が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて油脂配合物として用いることもできる。
本発明のベイキング用油脂組成物における油脂の含有量は、好ましくは40~99.5質量%であり、より好ましくは60~95質量%であり、さらに好ましくは70~95質量%である。なお、本発明のベイキング用油脂組成物に、油脂を含有する下記のその他の成分が含まれる場合、その成分に含まれる油脂の含有量を上記の油分含有量に含めるものとする。
ここで、本発明においては、次の2つの理由から、動物油脂を含有しないことが好ましい。第一の理由として、本発明のベイキング用油脂組成物の油脂中に動物油脂を含有させると、上記(A)~(C)を含有させることによるパンのコク味を強める効果と相まって、本発明のベイキング用油脂組成物を使用したベーカリー食品、例えばパンの風味が過度に強くなり、フィリングと複合させて菓子パンを調製した場合においても、パン自体の風味が強く感じられてしまいやすく、フィリングの風味が感じられにくくなる。また、パンに合わせてフィリングの風味強度を高めた場合であっても、菓子パン全体の風味強度が過度に強いものとなりやすい。なお、ここではパンを例に説明したが、個々での説明は他のベーカリー食品の場合にもあてはまる。第二の理由として、昨今、例えばハラルやコーシャといった、様々な宗教の思想に基づく食事制約を念頭においた製品開発を進めることが求められていることが挙げられる。本発明のベイキング用油脂組成物について、豚脂や牛脂といった動物油脂を使用すると、風味は改質されるが、幅広い需要者に商品を提供できなくなるため、好ましくない。なお、本発明において、「動物油脂を含有しない」とは、本発明のベイキング用油脂組成物に含有し得るその他成分由来の動物油脂も含めて、動物油脂の含有量が5質量%以下であること、好ましくは0.5質量%以下であること、好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
[乳清ミネラル]
本発明のベイキング用油脂組成物は、上記(A)~(D)に加えて、乳清ミネラルを含有することが好ましい。乳清ミネラルを含有することにより、一層良好なコク味をベーカリー食品に付与でき、フィリングと複合させた場合にはフィリングの風味を向上させることができるからである。
乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明のベイキング用油脂組成物においては、任意の乳清ミネラルを用いることができるが、より良好な風味を有するベーカリー食品が得られる点で、固形分中のカルシウム含有量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。カルシウム含有量は低いほど好ましい。カルシウムが多いほど、飲食品に使用した場合に、濁りや沈殿、苦味が生じやすい。
本発明のベイキング用油脂組成物における乳清ミネラルの含有量は、上記(A)~(C)、及びベイキング用油脂組成物が含有し得るその他成分と合わせて、後述する灰分含有量やCa/Mg、K/Naを好ましく満たす任意の含有量とすることができる。ベイキング用油脂組成物における乳清ミネラルの好ましい含有量は、本発明のベイキング用油脂組成物中の上記(A)~(C)の含有量や組成等にもよるが、例えば、固形分として、0.1~4.0質量%である。
[水分]
本発明のベイキング用油脂組成物は、水分を含有していてもよい。本発明のベイキング用油脂組成物が水分を含有する場合、その含有量は0.1~60質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがさらに好ましい。なお、本発明のベイキング用油脂組成物に含有させることのできる、下記のその他の成分が水分を含有する場合、その成分に含まれる水分の含有量を上記の水分含有量に含めるものとする。
[その他の成分]
本発明のベイキング用油脂組成物には、上記の他にも、本発明の効果を損ねない範囲で、その他の成分を含有させることができる。本発明のベイキング用油脂組成物に含有させることができるその他の成分としては、例えば、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳等の乳、及び上記(A)(C)以外の乳製品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
本発明のベイキング用油脂組成物におけるその他の成分の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で任意でよいが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となる範囲で含有させる。
[灰分、カルシウム、ナトリウム]
ここで、本発明のベイキング用油脂組成物中の灰分、灰分に含有されるカルシウム等の量について述べる。
本発明のベイキング用油脂組成物は、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウム等を含むために、灰分を一定量含む。本発明のベイキング用油脂組成物における灰分は、ベーカリー製品に好ましいコク味を付与する観点や、フィリングと複合させた際にフィリングの風味とコクを好ましく向上させる観点、また異味を付与しない観点から、ベイキング用油脂組成物における灰分は0.1~2.0質量%とすることができ、0.8~1.9質量%とすることが好ましく、1.5~1.7質量%とすることがより好ましい。なお、本発明のベイキング用油脂組成物における灰分は、上記の(A)~(C)の他、乳清ミネラル、及びその他の成分が含む灰分についても考慮する。
また、本発明のベイキング用油脂組成物においては、ベーカリー製品のコク味の更なる向上や、フィリングと複合させた場合のフィリングの更なる風味とコクの向上を図る観点から、ベイキング用油脂組成物中の無脂固形分中のカルシウム含有量とマグネシウム含有量の比(カルシウム含有量/マグネシウム含有量。以下単にCa/Mgと記載する場合がある。)は、3.5~12.0とすることができ、5.0~10.2であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましく、7.8~8.9であることがさらに好ましい。なお、ベイキング用油脂組成物に関し、無脂固形分中のカルシウム等のミネラル量は、(D)の油脂及び水を除く成分に含まれるカルシウム等のミネラルの合計量を指す。例えば、油脂配合物82質量部、水13.80質量部、蛋白質濃縮ホエイ(100gあたり、カルシウム 1150mg)3.10質量部、乳清カルシウム(100gあたり、カルシウムを28600mg含む。)0.30質量部、苦汁(100gあたり、カルシウムを1230mg含む。)0.20質量部、10%加塩卵黄(100gあたり、カルシウムを137mgを含む。)0.60質量部からなるベイキング用油脂組成物100質量部における、無脂固形分中のカルシウムは、12.5質量部である(1.15×3.10+28.6×0.30+1.23×0.20+0.137×0.60=12.47)。
また、同様の観点から、ベイキング用油脂組成物中の無脂固形分中のカリウム含有量とナトリウム含有量の比(カリウム含有量/ナトリウム含有量。以下、単にK/Naと記載する場合がある。)は、0.1~2.4とすることができ、1.9~2.4であることが好ましく、2.1~2.4であることがより好ましい。
[形態]
本発明のベイキング用油脂組成物は、灰分を比較的多く含むことから、水を連続相とする水中油型乳化油脂の形態とした場合には、外相に灰分成分が局在しやすい。そのためベーカリー食品のための生地とした場合は、生地が締まりやすく、また焼き色や風味にも影響を及ぼしやすい。このため、本発明のベイキング用油脂組成物は、ショートニングタイプや、油中水型乳化物、油中水中油型乳化物等の油脂を連続相とする形態をとることが好ましい。
<油脂組成物の製造方法>
次に、本発明のベイキング用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明のベイキング用油脂組成物は、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウム、油脂を含有する他は、通常のベイキング用油脂組成物と同様に製造することができる。製造方法は特に制限されるものではなく、公知の方法で製造することができる。以下、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウム、油脂を用いて、油中水型乳化物であるベイキング用油脂組成物を製造する場合を例に述べる。
油中水型乳化物であるベイキング用油脂組成物を製造するには、蛋白質濃縮ホエイと苦汁と乳清カルシウムとを、好ましくは得られるベイキング用油脂組成物の灰分量やCa/Mg、K/Naの値が上記範囲内となるような量で、適宜水相又は油相に含有させる。次に、油相と水相とを混合し、油中水型に乳化して予備乳化液を得る。そして、得られた予備乳化液を冷却、好ましくは急冷可塑化することにより、油中水型乳化物である本発明のベイキング用油脂組成物を得ることができる。
具体的には、まず、油脂に必要に応じて乳化剤等のその他の成分を含有させた油相と、水相とを混合乳化して予備乳化液を調製する。蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウムは、適宜、水相又は油相に分散させる。乳清ミネラルを用いる場合、水相に含有させることが好ましい。
得られた予備乳化液は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でもよく、プレート式熱交換器や掻き取り式熱交換器を用いた連続方式でもよい。また殺菌温度は、好ましくは80~100℃、より好ましくは80~95℃、さらに好ましくは80~90℃とする。その後、必要に応じ、油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行う。予備冷却の温度は、好ましくは40~60℃、より好ましくは40~55℃、さらに好ましくは40~50℃とする。
次に、必要に応じ予備冷却した予備乳化液を冷却する。好ましくは急冷可塑化を行う。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター及びケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート式熱交換器、開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせを用いて行うことができる。急冷を行うことにより、予備乳化液が可塑性を有する油脂組成物となる。急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
本発明のベイキング用油脂組成物が、ショートニングのような水分を殆ど含有しない形態の場合は、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウム、並びに必要に応じて乳清ミネラル等のその他の成分を、得られるベイキング用油脂組成物の灰分量や、Ca/Mg、K/Naの値が上記範囲内となるような量で、油相に混合・分散させることにより、製造できる。なお、本発明のベイキング用油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させてもよく、含気させなくてもよい。
<油脂組成物の用途、油脂組成物が使用された食品>
[ロールイン用、練り込み用]
本発明のベイキング用油脂組成物は、パン類、焼き菓子等の各種ベーカリー食品に使用することができ、特にパンのロールイン用や練り込み用として用いるのに適している。本発明のベイキング用油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いる場合は、急冷可塑化後にベイキング用油脂組成物をシート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状とする。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状の場合は縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mmである。ブロック状の場合は縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mmである。円柱状の場合は直径1~25mm、長さ5~100mmである。直方体の場合は縦5~50mm、横5~50mm、高さ5~100mmである。本発明のベイキング用油脂組成物を、ベーカリー食品の練り込み用として用いる場合、急冷可塑化後にベイキング用油脂組成物をケースやカップなどの容器に流し込むことが好ましい。
[パン生地]
本発明は、本発明のベイキング用油脂組成物が使用されたベーカリー食品生地を提供する。本発明のベーカリー食品生地はパン生地とするのに適しており、パン生地は、特に限定されず、任意の種類のパン生地とすることができる。具体的には、食パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、セミハードロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地等が挙げられる。
本発明のパン生地における、本発明のベイキング用油脂組成物の配合量は、従来のベイキング用油脂組成物の場合と同様であり、パン生地の種類や求める効果の強度等によって適切な含有量が選択される。例えば、食パン生地に練り込む場合、ベイキング用油脂組成物の配合量は、穀粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下であり、また好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上である。またロールイン用として用いる場合、ベイキング用油脂組成物の配合量は、穀粉類100質量部に対して、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下であり、また好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。
本発明のパン生地に配合される穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のパン生地は、穀粉類として、小麦粉を含有することが好ましい。穀粉類中の小麦粉の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本発明のパン生地が小麦粉以外の穀粉類を含有する場合、パン生地はグルテンを含有することが好ましい。パン生地におけるグルテンの含有量は、穀粉類とグルテンとを合わせた合計量に対し、蛋白質含有量が好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~18質量%となる量である。
本発明のパン生地には、必要に応じ、一般の製菓製パン材料として使用することのできる、その他の原料を配合することができる。その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、卵や卵製品、澱粉類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意の量で使用することができる。水は、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料は、穀粉類100質量部に対して、合計で、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で配合する。なお、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、上記の水には、その他の原料に含まれる水分も含めるものとする。
本発明のパン生地は、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等が挙げられ、通常製パン法として使用されている、あらゆる製パン法により製造することができる。中種法で製造する場合は、本発明のベイキング用油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。
本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
[パン]
次に、本発明のパンについて述べる。
本発明は、本発明のベイキング用油脂組成物が使用されたパン生地の加熱処理品であるパンを提供する。本発明のパンは、本発明のベイキング用油脂組成物を用いることにより、良好なコク味を有する。また、後述するとおり、本発明のパンと、各種フィリング類とが複合された菓子パンは、フィリングの風味及びコクを、好ましく強く感じることができるようになり、結果として菓子パン全体の風味が向上する効果が得られる。
加熱処理は、特に限定されず、パン生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。加熱処理の条件としては、公知の条件を特に制限なく採用することができる。また、得られた本発明のパンは、冷蔵又は冷凍保存することができ、また保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
本発明のパンの種類は、本発明のベイキング用油脂組成物が使用されたパン生地を加熱処理して得られるものであれば特に限定されないが、例えば食パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、セミハードロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパン等が挙げられる。上述のとおり、本発明のベイキング用油脂組成物を使用したパンは、フィリングと複合させた際に、そのフィリングの風味を好ましく強めることができるため、本発明のパンは、フィリングと複合された菓子パンとすることが好ましい。
[菓子パン]
ここで、本発明の菓子パンについて述べる。
本発明は、上記のパンとフィリングとが複合された、菓子パンを提供する。パンとフィリングとの複合は、包餡、焼成後注入、トッピング、サンド、コーティング、折込等することによる。なお、複合させるタイミングは、加熱処理前に包餡、折込等行って複合させてもよく、加熱処理後に注入やトッピング等行って複合させてもよい。
本発明の菓子パンに用いられるフィリングは、通常製パンで用いられるものであれば、どのような形態をとるものであってもよく、例えば、クリーム、ジャム、餡、チョコレート等を挙げることができる。好ましいフィリングの例は、乳風味のあるクリームである。
本発明に用いられるフィリングがクリームである場合、水中油型乳化物や油中水型乳化物、二重乳化物等の乳化物を適宜ホイップして得られる、ホイップクリームやバタークリーム、ファットスプレッド等の含気したクリームや、フラワーペーストのようにペースト状やシート状のクリームであってもよい。これらは複合させるパンの生地配合や求める食感等により、適宜選択される。パン生地が比較的リーンな配合であるセミハードロールやハードロール、フランスパンのようなパンとフィリングとを複合させる場合は、ガス抜きの濃厚な風味の練乳クリーム、バタークリーム、ファットスプレッド等のフィリングを選択することが好ましい。
本発明の菓子パンに用いられるフィリングの風味は特に限定されず、例えば、牛乳風味、練乳風味、ヨーグルト風味、チーズ風味等の乳系の風味を有するフィリング、卵黄風味、プリン風味、カスタード風味等の卵系の風味を有するフィリング、アーモンド風味、ヘーゼルナッツ風味等の堅果類系の風味を有するフィリング、各種果実の風味を有するフィリング、抹茶風味、紅茶風味、コーヒー風味、カフェオレ風味等の茶・コーヒー系の風味を有するフィリング、はちみつ風味、メープルシロップ風味、黒糖風味等の甘味料系の風味を有するフィリング、チョコレート風味、キャラメル風味等の菓子系の風味を有するフィリングを挙げることができる。
本発明においては、乳系の風味を有するフィリング、卵系の風味を有するフィリングを選択することで、本発明の効果をいっそう好ましく得ることができる。この理由の一つは、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウムを含有する本発明のベイキング用油脂組成物の好ましい灰分組成(Na/K、Ca/Mg)が一般的な生乳の値と同等であるために、乳が有する風味を、違和感なく特に増強することができるからだと考えられる。
以下、本発明を実施例を基に詳述する。
<製造例:油脂配合物>
以下の比較例1~5、実施例1~6で使用する油脂は、油脂配合物として以下のとおり調製した。すなわち、パーム油18質量部、パームスーパーオレインのランダムエステル交換油67質量部、及びパームオレインのランダムエステル交換油15質量部を、それぞれ60℃に加熱して溶解した後、混合し、油脂配合物を得た。
<製造例:乳清ミネラル>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、濃縮甘性ホエイを得た。得られた濃縮甘性ホエイを80℃、20分で加熱処理し、その結果生じた沈殿を遠心分離して濃縮甘性ホエイから除去した。沈殿を除去した濃縮甘性ホエイをさらにエバポレーターで濃縮し、固形分37%の乳清ミネラルを得た。
<他の原料>
以下の実施例および比較例では、蛋白質濃縮ホエイ(A)としてFondlacSL(メグレ社製)を用いた。また、蛋白質濃縮ホエイ(B)として、ラクプロダン80(アーラフーズ社製)を用いた。また、乳化剤は使用せず、乳化性を有する成分の一例として、10%加塩卵黄を使用した。また乳清カルシウムとして (株)明治フードマテリア製の品を用い、卵殻カルシウムについては三州食品(株)製の品を用い、濃縮苦汁については(株)日本海水製の品を用いた。
ベイキング用油脂組成物の製造に用いた、油脂配合物及び水以外の原料の成分組成を表1に示した。
Figure 0007352388000001
<比較例1~6、実施例1~6:油脂組成物>
下記に示す表2の配合となるように、下記の手順に基づき、ベイキング用油脂組成物A~Lを製造した。
まず、油脂配合物を60℃に加熱して溶解し、蛋白質濃縮ホエイ(A)、蛋白質濃縮ホエイ(B)、乳清カルシウム、卵殻カルシウムに加えて、加塩卵黄を混合・分散させ、これを油相とした。一方、水に乳清ミネラル、苦汁、精製塩、塩化カリウムを混合・分散させた水相を調製した。調製した油相と水相とを混合して油中水型乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分)で練り合わせながら冷却し、ベイキング用油脂組成物A~Lを得た。
Figure 0007352388000002
<実施例7~12、比較例7~12:セミハードロール、菓子パン>
上記のようにして得られたベイキング用油脂組成物A~Lを用いて、下記の配合・製法でセミハードロールを得た。セミハードロールを得た後、各セミハードロールの側部に切れ込みを入れ、フィリングとして「北海道練乳クリーム」(丸和油脂 製)を15gサンドし、菓子パンを調製した。得られたセミハードロールと、菓子パンを、下記評価基準に則って10名の専門パネラーによって評価した。その結果を◎+:46~50点、◎:40~45点、○:34~39点、△:28~33点、××:27点以下として、表3及び表4に示す。得られた結果が、全ての評価項目において◎+、◎、若しくは○を獲得したサンプルのみ合格品として扱った。なお、評価に先立ち、事前にパネラー間で各評点に対応する官能の程度をすり合わせた。
また、比較例13のセミハードロール、及び比較例13のセミハードロールを使用した菓子パンをそれぞれの評価時のコントロールとした。
なお、以下、比較例13のセミハードロールを使用した菓子パンの実験例について、比較例13-2として表す場合があり、実施例7~12、比較例7~12のセミハードロールを使用した菓子パンの実験例においても同様に表す場合がある。
〔セミハードロールの配合〕
Figure 0007352388000003
〔セミハードロールの製法〕
ショートニング、ベイキング用油脂組成物以外の原料を全てミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分混合した。ここにショートニング、ベイキング用油脂組成物を投入して、さらに低速で3分、中速で4分混合した。捏ね上げ温度は26℃であった。このセミハードロール生地を生地ボックスに入れ、温度29℃、相対湿度75%の恒温室で、1時間発酵を行い、パンチを行った後、フロアタイムを30分とり、セミハードロール生地を得た。この生地を70gに分割・丸目を行ない、次いでベンチタイムを30分とった後、モルダーを使用し、セミハードロール型に成形した。34℃、相対湿度85%で60分ホイロをとった後、クープを入れ、200℃に設定した固定窯に入れ、蒸気を入れ、15分焼成してセミハードロールを得た。
〔セミハードロールの風味評価〕
5点 ・・・コントロールと比較して、優れたコク味を強く感じる。
4点 ・・・コントロールと比較して、コク味を感じる。
3点 ・・・コントロールと比較して、ややコク味を感じる。
2点 ・・・コントロールと同様のコク味である。若しくは異味が感じられる。
1点 ・・・コントロールよりも、コク味が感じられない
〔菓子パンの風味評価〕
5点 ・・・コントロールと比較して、フィリングの乳風味やコクが引き立ち、異味も感じられず、好ましく強化されて感じられた。
4点 ・・・コントロールと比較して、フィリングの乳風味やコクが引き立ち、異味も感じられず、おおむね良好であった。
3点 ・・・コントロールと比較して、フィリングの乳風味やコクがやや強化されていた。
2点 ・・・コントロールと同様の風味であった。若しくは異味が感じられた。
1点 ・・・コントロールよりも風味が乏しかった。若しくは異味が強く感じられた。
Figure 0007352388000004
まず、実施例12と比較例7~12、及び実施例12-2と比較例7-2~12-2を比較する。この比較によれば、単に油脂配合物を含有するだけでは、セミハードロール自体の風味の向上や菓子パン全体の風味の向上の効果が得られず、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、及び乳清カルシウムを組み合わせて含むことで目的の効果が得られることが分かった。
また、実施例7~12や、実施例7-2~12-2について比較すると、灰分量や、含有されている、無脂固形分中のカルシウム含有量とマグネシウム含有量の比(Ca/Mg)や、無脂固形分中のカリウム含有量とナトリウム含有量の比(K/Na)によっても得られる効果に差異があることが確認された。とりわけ、実施例9-2、実施例10-2の評価結果から分かるように、無脂固形分中のカルシウム含油量とマグネシウム含有量の比(Ca/Mg)と無脂固形分中のカリウム含有量とナトリウム含有量の比(K/Na)が所定の範囲内であることが、菓子パン全体の風味の向上に重要であることが示唆された。
また、実施例7や実施例7-2と、比較例8や比較例8-2の評価結果の比較から分かるように、カルシウム源として乳清カルシウムを用いることによって、より優れた風味向上効果が得られることが確認された。この理由は明らかになっていないが、卵殻カルシウムは多孔質であるポーラス構造であり、風味に関わる成分を吸着してしまったものと推定している。
一方で、比較例9や比較例9-2については、塩化カリウム由来のものと思われる異味が確認され、菓子パンとしての風味評価も不良であった。このことから、フィリングの風味を引き立て、菓子パンの風味を全体として向上させるためには、パン生地に使用するベイキング用油脂組成物中の無脂固形分中のカルシウム含有量とマグネシウム含有量の比(Ca/Mg)や、無脂固形分中のカリウム含有量とナトリウム含有量の比(K/Na)を、単に好ましい所定の範囲内に揃えることだけでなく、蛋白質濃縮ホエイ、苦汁、乳清カルシウムを組合せることが必要であることがうかがわれた。

Claims (6)

  1. 次の(A)~(D)を含有するベイキング用油脂組成物。
    (A)蛋白質濃縮ホエイ
    (B)苦汁
    (C)乳清カルシウム
    (D)油脂(ただし油脂中に動物油脂を含有しない。)
  2. 上記の蛋白質濃縮ホエイが、蛋白質の含有量が25~30質量%であり、炭水化物の含有量が40~55質量%であり、かつ灰分の含有量が15~25質量%である蛋白質濃縮ホエイであることを特徴とする、請求項1に記載のベイキング用油脂組成物。
  3. ベイキング用油脂組成物中の無脂固形分中のカルシウム含有量とマグネシウム含有量の比(カルシウム含有量/マグネシウム含有量)が5.0~10.2であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のベイキング用油脂組成物。
  4. 請求項1~のいずれか1項に記載のベイキング用油脂組成物が使用されたパン生地。
  5. 請求項に記載のパン生地の加熱処理品であるパン。
  6. 請求項に記載のパンとフィリングとが複合された菓子パン。
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ADEKA・オリンピアメロースライス 500g [クール便],2014年06月09日,pp.1-3,retrieved on 2023.06.20, retrieved from the internet,https://www.amazon.co.jp/ADEKA-ADEKA%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0CP%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B9EF-500g-%E3%80%90%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E4%BE%BF%E3%80%91/dp/B00KOS0X4Q

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