JP6588706B2 - 油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー製品 - Google Patents

油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー製品 Download PDF

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本発明は、油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー製品に関する。
マーガリン等の油中水型乳化油脂組成物は、バターの代替品として、スプレッド、バタークリーム、製菓・製パンの練り込みやロールイン、調理用等として広く使用されている。
この油中水型乳化油脂組成物は、バターに比べて可塑性、乳化安定性に優れ、取り扱い易い反面、風味の点で劣るため、フレーバーや呈味剤等の呈味成分を添加したり、乳脂肪を添加したりすることによって風味を向上させることが行われている。
また特許文献1には、脱脂粉乳等の乳タンパク質及び乳清ミネラルを水相中に含有させることで風味と口溶けの改善を図る技術が提案されている。しかし、乳清ミネラルは、乳清から乳清(ホエイ)タンパク質と乳糖を分離除去し精製して得られたものであるが、乳清ミネラルにはエグ味があるため、乳タンパク質と併用してもコク味が得られにくい。
特許文献2、3には、灰分量が少ないホエイタンパク質を添加することによって油中水型乳化油脂組成物の安定性の改善を図る技術が提案されている。
特許文献2には、脂肪分60質量%以下と油分の少ないスプレッドにおいて、比較的多量のホエイタンパク質を熱処理してゲル化させ、カルシウムを低減することによって、低脂肪でありながらエマルションの水相を安定化し、安定性のよいスプレッドを得る技術が提案されている。特許文献2で使用されるホエイタンパク質は、タンパク質濃縮ホエイ(WPC、WPI)と呼ばれるものであり、WPCはホエイから限外濾過によって乳糖とミネラルを除いたもので、タンパク質量が比較的多く、灰分量が少ない。WPIはイオン交換膜によってホエイからタンパク質のみを吸着分離したもので、乳糖、乳脂肪をほとんど含まず、タンパク質量が比較的多く、灰分量が少ない。
特許文献3には、チーズホエイタンパク質又はレンネットホエイタンパク質を添加することによって、乳化剤をこれらのホエイタンパク質で代替し、乳化剤無添加であっても油中水型乳化油脂組成物の乳化状態の安定化を図る技術が提案されている。特許文献3では、乳化状態の安定化を図るために低ゲル化タイプのタンパク質濃縮ホエイが使用されているが、この低ゲル化タイプのタンパク質濃縮ホエイも、ホエイから限外濾過やイオン交換によって乳糖や灰分を除去したものである。
しかしながら、特許文献2、3で使用されているようなタンパク質濃縮ホエイは、灰分量が少ないため、風味、特にコクのあるバター風味を良好にすることはできない。
また、パンや菓子等のベーカリー製品においては、生地に油中水型乳化油脂組成物を添加した場合、焼成工程における加熱等によって油中水型乳化油脂組成物中の呈味成分に由来する風味は低減してしまう場合が多く、焼き残りの風味が良好なベーカリー製品が得られなかった。
例えば、特許文献4には、ベーカリー製品に自然なバター風味を与えることを目的として、バター由来の油溶性成分とホエイ由来の水溶性成分を組み合わせる技術が提案されている。ここで使用されるホエイ由来の水溶性成分も、特許文献2、3と同様のものであるが、焼き残りの風味が十分ではなかった。
特開2009−195161号公報 特開2007−509619号公報 特開2010−11800号公報 特開2010−4807号公報
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好な油中水型乳化油脂組成物とそれを用いたマーガリン類及びベーカリー製品を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の油中水型乳化油脂組成物は、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有することを特徴としている。
この油中水型乳化油脂組成物は、タンパク質濃縮ホエイを組成物全量に対して0.1〜6.0質量%含有することが好ましい。
この油中水型乳化油脂組成物は、油脂としてヤシ油を含有し、ヤシ油の添加量が、組成物全量に対して5.0〜25質量%であることが好ましい。
この油中水型乳化油脂組成物は、油脂としてヤシ油及び液状油を含有し、ヤシ油と液状油との質量比(ヤシ油/液状油)が0.5〜2.5であることが好ましい。
この油中水型乳化油脂組成物は、呈味油を含有する粉末素材を水相に含有することが好ましい。
本発明のマーガリン類は、前記の油中水型乳化油脂組成物からなる。
本発明のベーカリー製品は、前記のマーガリン類を含有する生地を焼成して得られる。
本発明によれば、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを含有することを特徴としている。このタンパク質濃縮ホエイを使用することで、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も向上させることができる。
このタンパク質濃縮ホエイは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素もしくは酸を加えてできた乳清(ホエイ)の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものである。例えば、チーズ製造や酸カゼイン製造時に副産物として生成する甘性ホエイや酸ホエイを脱乳糖処理することによって製造することができる。このタンパク質濃縮ホエイ(脱乳糖ホエイパウダー)は、分離濃縮のために限外濾過やイオン交換を行っていないため灰分量が多い。
このタンパク質濃縮ホエイのタンパク質量は25〜30質量%、灰分量は15〜20質量%である。これよりもタンパク質量が多いものは、分離濃縮時に灰分量も低下する傾向があり、良好な風味の油中水型乳化油脂組成物が得られない。また水への分散性が悪くなるため、乳化安定性も低下する傾向がある。これよりもタンパク質量が少ないものは、タンパク質量が不足で良好な風味の油中水型乳化油脂組成物が得られない。このように、本発明の油中水型乳化油脂組成物は、低タンパク質かつ多灰分のタンパク質濃縮ホエイを用いたことを特徴としている。
このタンパク質濃縮ホエイの組成は、これに限定されるものではないが、例えば、タンパク質25〜30質量%、灰分(Na、K、Ca等を含む)15〜20質量%、水分3質量%以下、脂質3質量%以下、炭水化物50〜55質量%である。
本発明の油中水型乳化油脂組成物におけるタンパク質濃縮ホエイの含有量は、水分に対して0.2〜21質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましい。この範囲内であると、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好で、油中水型乳化油脂組成物の製造も容易である。タンパク質濃縮ホエイの含有量が0.2質量%以上であると良好な風味が得られ、21質量%以下であると油中水型乳化油脂組成物の製造時におけるタンパクの焦げ付きが少なくなり油中水型乳化油脂組成物の製造が容易になる。
また本発明の油中水型乳化油脂組成物におけるタンパク質濃縮ホエイの含有量は、油中水型乳化油脂組成物全量に対して0.1〜6.0質量%が好ましく、0.4〜5.0質量%がより好ましい。この範囲内であると、コクのあるバター風味を有するマーガリン類が得られ、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好である。タンパク質濃縮ホエイの含有量が0.1質量%以上であると良好な風味が得られ、6.0質量%以下であるとエグ味が出て風味が低下することを抑制できる。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、呈味油を含有する粉末素材を水相に含有することが好ましい。この呈味油を含有する粉末素材をタンパク質濃縮ホエイと併用することで、前記のように風味が良好であることに加えて、油中水型乳化油脂組成物の風味の持続性が向上し、ベーカリー製品の焼き残りの風味の持続性も向上する。
呈味油を含有する粉末素材としては、呈味油を粉末化基材で被覆したものであれば、その他特に限定されず、使用することができる。
粉末化基材としては、乳タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、全脂粉乳、脱脂粉乳、小麦粉、デンプン、ゼラチン、プルラン等の増粘多糖類、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、、デキストリン等の糖質を用いることができる。
乳タンパクとしては、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエイタンパク、それらの酵素分解物である乳ペプチド、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテイン等が挙げられる。
デンプンとしては、例えば、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン、緑豆デンプン、サゴデンプン、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ等を原料とし、これをエーテル化処理したカルボキシメチルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、エーテル化処理したヒドロキシプロピルデンプン、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプン等が挙げられる。
デキストリンとしては、水あめ、粉あめ、マルトデキストリン、サイクロデキストリン、焙焼デキストリン、分岐サイクロデキストリン等が挙げられる。
粉末化基材は、粉末素材中の割合が10〜95質量%となるように配合することが好ましい。
粉末化基材で被覆される呈味油として、呈味性を有する油脂や油溶性の呈味成分を用いるか、呈味性を有さない油脂に油溶性の呈味成分を添加することにより、呈味性を付与することができる。
呈味性を有する油脂としては、食用油脂であれば特に限定されず、乳脂、乳脂分別軟質部、ごま油、牛脂、ラード、鶏油、ピーナツ油、アーモンド油、レモン油、ライム油、オレンジ油、オリーブ油、動植物油脂等の部分水素添加油、動植物油等に香味野菜の香気成分を付与した葱油、山椒油、ガーリック油、ジンジャー油、バターを加熱して焙煎臭を付与した焦がしバター油等が挙げられる。また油溶性の呈味成分としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー、クリームフレーバー、ナッツフレーバー、フルーツフレーバー、乳製品の酵素分解物等が挙げられる。
呈味油を含有する粉末素材としては、粉末化基材で被覆された粉末油脂が好ましい。この粉末油脂は、粉末化基材を含む水相に油相を添加し、ホモミキサー等で攪拌後、ホモゲナイザー等で均質化することにより、水中油型乳化物とし、その後、乾燥粉末化して得ることができる。水中油型乳化物を乾燥粉末化する方法としては、一般的に知られている噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法等を用いることができる。乾燥粉末化して得られた粉末油脂は、再溶解後、熱に安定な水中油型乳化物を形成するため、二重乳化油脂組成物の最内相として、ベーカリー製品の生地中に練り込んだり、ロールインすることで、焼成後も乳化が壊れにくく、ベーカリー製品の風味の持続性を向上させることができる。
この粉末化基材で被覆された粉末油脂は、再溶解することによって水中油型乳化物(O1/W)となり、連続相である油相(O2)中に分散相として分散した構造となる。この最内相の油相(O1)が呈味性を有することで、油中水型乳化油脂組成物の風味の持続性が向上し、ベーカリー製品の焼き残りの風味の持続性も向上する。例えば、呈味性を有する油脂として乳脂肪を多く含んだ油脂を使用すると、微細な油滴で自然な乳脂のコク味が徐々に広がり、少量の乳脂肪でコクのあるバター風味が付与され、この風味が持続する。
粉末油脂に用いられる粉末化基材として、特に乳タンパク及び/又はオクテニルコハク酸デンプンを含有することが好ましい。乳タンパク及び/又はオクテニルコハク酸デンプンを含有すると、ベーカリー製品の風味に悪影響を及ぼす虞のある乳化剤を全く使用しないか、あるいは乳化剤の使用量を少なくしても、再溶解後、安定な水中油型乳化物(O1/W)を得ることができるため、風味が更に向上する点で好適である。また、二重乳化の安定性も向上するため、ベーカリー製品の風味の持続性も更に向上する点で好適である。
粉末油脂を再溶解して水中油型乳化物(O1/W)を得る方法としては、粉末油脂を水に添加し、プロペラで攪拌する方法等が挙げられる。
粉末油脂を再溶解させた水中油型乳化物(O1/W)の油脂粒子のメディアン径は、0.3〜2μmとして最外相の油相(O2)に分散させることが好ましい。メディアン径がこの範囲であると、二重乳化の安定性が向上するため、ベーカリー製品の風味や風味の持続性も更に向上する。
本発明の油中水型乳化油脂組成物における呈味油を含有する粉末素材の含有量は、風味の持続性等を考慮すると、水分に対して1〜50質量%が好ましい。また水相部の粘度上昇を抑制する点を考慮すると、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。そして前記のタンパク質濃縮ホエイとの比率(呈味油を含有する粉末素材:タンパク質濃縮ホエイ)は質量比で1:0.01〜50が好ましい。また作業性の向上とコストの低減を考慮すると、1:0.02〜50がより好ましく、1:0.04〜25が更に好ましい。
本発明の油中水型乳化油脂組成物における水分の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは組成物全量に対して5〜45質量%である。
本発明の油中水型乳化油脂組成物に使用される油脂としては、液体、固体の動植物油脂、硬化した動植物油脂、動植物油脂のエステル交換油、分別した液体油又は固体脂等、食用に適するものであれば特に限定されない。具体的には、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、ごま油、カカオ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物性油脂、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物性油脂、及びこれらの油脂の硬化油又はエステル交換油等の物理的または化学的処理を施した油脂を使用することもできるし、或いはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、油脂としてヤシ油を含有し、ヤシ油の添加量が、組成物全量に対して5.0〜25質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。ヤシ油をこの範囲の添加量で使用すると、抱卵性が良好である。抱卵性が良好であるため、本発明の油中水型乳化油脂組成物と全卵や卵白又は卵黄を、粉糖や液糖等と一緒にホイップすると分離せずにバター風味のクリームを得ることができ、クッキーやバターケーキ等の各種の用途に好適に使用できる点で、練り込み用として使用することが好ましい。ヤシ油の添加量が5.0質量%以上であると抱卵性が向上し、ヤシ油の添加量が25質量%以下であると油中水型乳化油脂組成物の食感がごりついてしまうことを抑制できる。
本発明の油中水型乳化油脂組成物に使用されるヤシ油は、ラウリン酸含有量が40質量%以上のものであれば特に限定されず、未加工のヤシ油やその分別油、またそれらを加工した硬化油やエステル交換油を使用することができ、例えば、ヨウ素価10以下のものを使用することができるが、ヨウ素価1以下のものが好ましい。
また、油脂としてヤシ油及び液状油を含有し、ヤシ油と液状油との質量比(ヤシ油/液状油)が0.5〜2.5であることが好ましい。ヤシ油と液状油をこの質量比の範囲で使用すると低温でのクリーミング性が向上する。例えば、ヤシ油と液状油をこの質量比の範囲で含有する本発明の油中水型乳化油脂組成物をシュガーバッター法において砂糖と混合した場合、低温(18℃)でのクリーミング性は、バターや従来品の油脂組成物と比較しても優れている。低温から扱いやすいため、バター風味のクリームを容易に得ることができ、クッキーやバターケーキ等の各種の用途に好適に使用できる。ヤシ油と液状油の質量比が0.5以上であると低温でのクリーミング性が向上し、この質量比が2.5以下であると油中水型乳化油脂組成物の保形性の低下を抑制できる。液状油は、5℃で流動状を呈する油脂であり、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、ごま油、オリーブ油等の液状油や、動植物油の分別軟質油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の油中水型乳化油脂組成物における油脂の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは組成物全量に対して55〜95質量%である。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、急冷捏和し、可塑化して使用する場合、上記の油脂以外に、油脂としてエステル交換油を含有することが好ましい。エステル交換油の中でも、ラウリン系油脂とパーム系油脂のエステル交換油が好ましく、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とをエステル交換したものがより好ましく、ラウリン系油脂10〜28質量%と、パーム系油脂72〜90質量%とをエステル交換したものが更に好ましい。低温から高温までの広温度域において可塑性を有する油中水型乳化油脂組成物を得ることができる点で、上記エステル交換油のヨウ素価は、20〜45が好ましく、20〜40がより好ましい。更に、これらの範囲内のヨウ素価を持つ上記エステル交換油を原料に用いて得られた本発明の油中水型乳化油脂組成物は、他の油脂との相溶性が極めて良いため、長期保存しても油脂の染み出しや硬さの変化等の極めて少ない安定性に優れた油中水型乳化油脂組成物を得ることができる。上記エステル交換油の含有量は、組成物全量に対して5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油をこの範囲内の量で使用すると油中水型乳化油脂組成物の口溶けが良好である。
なお、上記エステル交換油の原料であるラウリン系油脂は、全構成脂肪酸中のラウリン酸含有量が30質量%以上の油脂であり、例えば、パーム核油、ヤシ油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。上記エステル交換油の原料であるパーム系油脂は、全構成脂肪酸中の炭素数16以上の脂肪酸含有量が35質量%以上の油脂であり、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、油脂として乳脂分別軟質部を含有すると、ベーカリー製品の風味の広がりが向上するだけでなく、経時的な硬さ変化が起こりにくくなる点から好ましく配合される。特に、油中水型乳化油脂組成物がロールイン用である場合、低温での生地の伸展性も向上する。
乳脂分別軟質部は、10℃の固体脂含量(SFC)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。また、融点が25℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下である。
なお、ここで固体脂含量は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法)」の温度条件を変更し(0℃±2℃で30分保持後、26℃±0.2℃で30分保持し、その後0℃±2℃で30分保持する操作を除く)、10℃で7日間保存し測定する。融点は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9−2013 融点(上昇融点)」で測定する。
本発明の油中水型乳化油脂組成物には、以上の各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、乳化剤、乳化安定剤、酸味料、調味料、着色料、糊料、酸化防止剤、保存料、フレーバー、強化剤、香辛料抽出物、酵素等の、マーガリン類等に通常添加される食品素材や食品添加物等が挙げられる。なお、本発明の油中水型乳化油脂組成物には、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の乳化剤を添加することができるが、風味の点を考慮すると、乳化剤は添加しないことが好ましい。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、次の手順で製造することができる。
まず、前記のタンパク質濃縮ホエイを含有する水相を調製する。また前記の呈味油を含有する粉末素材を油中水型乳化油脂組成物に配合する場合には、これを水相に添加する。
また、食用油脂を含有する油相を調製する。これらの水相と油相は、50℃〜90℃、好ましくは65℃〜85℃に加熱し、添加した成分を完全に溶解しておくことが望ましい。これらの水相と油相を加熱下で混合し乳化する。例えば、加熱された油相に加熱された水相をゆっくりと添加しながら乳化する。その後、必要に応じて、フレーバー等の他の添加成分を加えてもよい。
その後、加熱された乳化物をコンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し、可塑化して本発明の油中水型乳化油脂組成物を可塑性油脂組成物として得ることができる。更に、必要に応じて、可塑性油脂組成物を15〜35℃で熟成してもよい。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、コクのあるバター風味が良好で、マーガリンやファットスプレッド等のマーガリン類に好適である。本発明において、マーガリンは、油脂を80質量%以上含む、ファットスプレッドは、油脂を80質量%未満含む油中水型乳化油脂組成物である。
また本発明の油中水型乳化油脂組成物を原料に用いて生地を作製し、この生地を焼成することによってベーカリー製品が製造される。このベーカリー製品は、焼き残りの風味が良好である。
本発明の油中水型乳化油脂組成物は、練り込み用可塑性油脂組成物としてベーカリー製品の生地に練り込んで使用することで、パンや菓子等のベーカリー製品を得ることができる。また、ロールイン用可塑性油脂組成物として生地へ層状に折り込んで、生地と可塑性油脂組成物の薄い層を何層にも作り上げることで、デニッシュ、クロワッサン等のベーカリー製品を得ることができる。
生地は穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、ベーカリー製品の生地に配合されるものであれば、特に限定されないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられる。
生地には、穀粉と油中水型乳化油脂組成物以外にも、通常、ベーカリー製品の生地に使用されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、ベーカリー製品の生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく適宜の量とすることができる。具体的には、水、糖、糖アルコール、卵、卵加工品、澱粉、食塩、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、チーズ、生クリーム、合成クリーム、ヨーグルト、全脂粉乳、脱脂粉乳、牛乳、濃縮乳、合成乳、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、可塑性油脂、甘味料、調味料、香辛料、着色料、香料等が挙げられる。
ベーカリー製品としては、穀粉を原料として加熱調理されるものであれば、その他特に限定はなく、例えば、食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッド等のパン類、シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツ等のイースト菓子、デニッシュ、クロワッサン、パイ等のペストリー、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジケーキ、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフル等のケーキ、ビスケット、クッキー等が挙げられる。
生地中における本発明の油中水型乳化油脂組成物の使用量は、各種のベーカリー製品にそれぞれ使用されるバター、マーガリン、ショートニング等の油脂類の通常の使用量と同等でよい。
食パン、テーブルロール、菓子パン等のパン類や、デニッシュ、クロワッサン等のペストリーの場合は、ベーカリー製品中の穀粉100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。
イーストドーナツ、ケーキドーナツ等のドーナツ類の場合は、ベーカリー製品中の穀粉100質量部に対して、1〜20質量部が好ましい。
クッキー、ビスケット等の菓子類の場合は、ベーカリー食品中の穀粉100質量部に対して、10〜100質量部が好ましい。
スポンジケーキの場合は、ベーカリー食品中の穀粉100質量部に対して、10〜50質量部が好ましい。バターケーキやパウンドケーキの場合は、ベーカリー製品中の穀粉100質量部に対して、50〜120質量部が好ましい。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1〜表3、表5及び表6に示す配合量は質量%、表4に示す配合量は質量部を示す。
表1、表2、表5の実施例及び表3、表6の比較例において、タンパク質濃縮ホエイAは、タンパク質26質量%、灰分17質量%のタンパク質濃縮ホエイ、タンパク質濃縮ホエイBは、タンパク質81質量%、灰分3質量%のタンパク質濃縮ホエイを用いた。
ヤシ油は、極度硬化油(ヨウ素価0.4)を用いた。
乳脂分別軟質部は、融点が10℃、10℃での固体脂含量が0%のものを用いた。
呈味素材Aは、バター酵素分解粉末を用いた。このバター酵素分解粉末は、呈味油としてバター酵素分解物を含有し、マルトデキストリンで被覆した粉末素材である。
呈味素材Bは、高乳脂粉末油脂を用いた。この高乳脂粉末油脂は、呈味油として乳脂を多く含有し、カゼインナトリウムとデキストリンで被覆され、再溶解後のメディアン径が1μmの粉末素材である。
呈味素材Cは、粉末油脂を用いた。この粉末油脂は、呈味油としてバターフレーバーを添加したパーム油を含有し、オクテニルコハク酸デンプンで被覆され、再溶解後のメディアン径が1μmの粉末素材である。
呈味素材Dは粉末香料を用いた。この粉末香料は、呈味油としてバターフレーバーを含有し、デキストリンで被覆した粉末素材である。
呈味素材Eは、高乳脂クリームチーズを用いた。この高乳脂クリームチーズは、呈味油として乳脂を多く含有する乳製品である。
(エステル交換油の製造)
エステル交換油1
パーム核極度硬化油20質量%、パーム油55質量%、パーム油極度硬化油25質量%を混合し、触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下で、エステル交換した。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色しエステル交換油1を得た。エステル交換油1のヨウ素価は30であった。
エステル交換油2
パームオレイン(ヨウ素価56)に触媒としてナトリウムメチラートを添加し、減圧下でエステル交換した。エステル交換反応後、水洗、脱水、脱色、脱臭しエステル交換油2を得た。
(油中水型乳化油脂組成物の製造)
表1、表2の実施例及び表3の比較例の配合の油中水型乳化油脂組成物を次の手順に従って調製した。
1)水にタンパク質濃縮ホエイ、呈味素材、及び乳清ミネラルを適宜添加し、80℃まで加熱して溶解し水相を得た。
2)油脂を70℃まで加熱して溶解し、混合して油相を得た。
3)油相に水相をゆっくりと添加しながら乳化した後、油溶性フレーバーを添加した。
4)乳化物を急冷で練り合わせ、可塑性を有する油中水型乳化油脂組成物を得た。
5)得られた油中水型乳化油脂組成物は、5℃で保管した。
(クッキーの製造)
薄力粉100質量部、上白糖40質量部、卵15質量部、実施例又は比較例で得られた油中水型乳化油脂組成物60質量部の生地配合にてミキシングして生地を作製し、棒状に成型後、冷蔵庫で一旦生地を休ませた。この生地を10mm厚に輪切りし、鉄板に並べて、170℃で15分間焼成し、クッキーを得た。得られたクッキーは、30分放置して粗熱を取った後、ポリ袋に入れて密封し、25℃にて1週間保存した後、下記の風味評価を行った。
実施例及び比較例で得られた油中水型乳化油脂組成物とクッキーについて、次の評価を行った。
[油中水型乳化油脂組成物の風味]
油中水型乳化油脂組成物をパネル20名で試食し、以下の基準でその風味を評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価
○:20名中10名〜15名が良好と評価
△:20名中5名〜9名が良好と評価
×:20名中4名以下が良好と評価
[油中水型乳化油脂組成物の口溶け]
油中水型乳化油脂組成物をパネル20名で試食し、以下の基準でその口溶けを評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価
○:20名中10名〜15名が良好と評価
△:20名中5名〜9名が良好と評価
×:20名中4名以下が良好と評価
[ベーカリー製品の風味]
油中水型乳化油脂組成物を使用して製造した前記のクッキーをパネル20名で試食し、以下の基準でその風味を評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価
○:20名中10名〜15名が良好と評価
△:20名中5名〜9名が良好と評価
×:20名中4名以下が良好と評価
[ベーカリー製品の風味の持続性]
油中水型乳化油脂組成物を使用して製造した前記のクッキーをパネル20名で試食し、飲み込んだ後の風味の持続時間を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が20秒以上と評価
○:20名中10名〜15名が20秒以上と評価
△:20名中5名〜9名が20秒以上と評価
×:20名中4名以下が20秒以上と評価
[抱卵性]
油中水型乳化油脂組成物300gと砂糖300gを合わせて卓上ミキサー(キッチンエイド)を用いて比重0.75付近までホイップし、その後少量ずつ全卵を加えてホイップした。
分離せずに混合できた全卵質量を油中水型乳化油脂組成物質量に対する比率で表したものを抱卵量とし、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:100%以上
○:90%以上100%未満
△:75%以上90%未満
×:75%未満
[低温でのクリーミング性]
油中水型乳化油脂組成物500gを18℃の調温下で、卓上ミキサー(キッチンエイド)を用いてホイップし、開始から9分、12分、15分後の油中水型乳化油脂組成物の比重を測定して以下の基準で評価した。
評価基準
◎:9分で比重0.3以下
○:12分で比重0.3以下
△:15分で比重0.3以下
×:15分で比重0.3を超える
[タンパクの焦げ付き]
油中水型乳化油脂組成物の製造工程において、ストレーナーへの目詰まりを目視により確認し、タンパクの焦げ付きを以下の基準で評価した。
評価基準
○:目詰まりがない
△:目詰まりが少しある
×:かなり目詰まりしている
[二重乳化の安定性]
呈味素材A〜Eを水相に再溶解させた水中油型乳化物(O1/W)を、連続相である表2の油相(O2)中に分散相として分散させた構造を有する実施例10〜12、14〜18の二重乳化油脂組成物を75℃の湯浴中で加熱して、油相と、水中油型乳化物の相とに分離させ、分離した上部油相の質量を測定し、その質量と最外相(O2)に用いた油脂の配合質量との差を、水中油型乳化物(O1/W)が破壊されて生じた油脂質量(ΔO1)とし、ΔO1を、油相(O1)の配合質量で除した値の百分率を、油相(O1)量の変化率として求め、以下の基準で評価した。
評価基準
最良:変化率が20%未満
良:変化率が20%以上、35%未満
普通:変化率が35%以上、80%未満
不良:変化率が80%以上
評価結果を表1〜表3に示す。
表1及び表2より、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有する油中水型乳化組成物を用いた実施例1〜18は、コクのあるバター風味が良好で、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好であった。
油脂としてヤシ油を含有し、ヤシ油の添加量が、組成物全量に対して5.0〜25質量%である実施例5〜12は、更に抱卵性が良好であった。
油脂としてヤシ油及び液状油を含有し、ヤシ油と液状油との質量比(ヤシ油/液状油)が0.5〜2.5である実施例8〜12は、更に低温でのクリーミング性が良好であった。
呈味油を含有する粉末素材(呈味素材A〜D)を水相に含有する実施例10〜12、14、15、17、18は、更に風味の持続性が良好であった。乳蛋白やオクテニルコハク酸デンプンで被覆された粉末油脂(呈味素材B、C)を含有するものは、風味の持続性が特に良好であった。
表3より、比較例1〜3は、タンパク質濃縮ホエイを配合せず、又は配合量が適切でなかったため、風味が悪くなり、或いは、油中水型乳化油脂組成物の製造工程においてタンパクの焦げ付きによってストレーナーが目詰まりして製造が困難であった。
比較例4は、タンパク質濃縮ホエイとしてタンパク質が多く灰分の少ないものを使用したが、風味に向上が見られなかった。比較例5は更に乳清ミネラルを併用したが、乳清ミネラルにエグ味があるため、風味に向上が見られなかった。
(ロールイン用油中水型乳化油脂組成物の製造)
表5の実施例及び表6の比較例の配合の油中水型乳化油脂組成物を次の手順に従って調製した。
1)水にタンパク質濃縮ホエイ、呈味素材、及び乳清ミネラルを適宜添加し、80℃まで加熱して溶解し水相を得た。
2)油脂を70℃まで加熱して溶解し、混合して油相を得た。
3)油相に水相をゆっくりと添加しながら乳化した後、油溶性フレーバーを添加した。
4)乳化物を急冷で練り合わせたのち、シート状に成型し、可塑性を有するロールイン用油中水型乳化油脂組成物を得た。
5)得られた油中水型乳化油脂組成物は、5℃で保管した。
(クロワッサンの製造)
1)ロールイン用油中水型油脂組成物以外の表4に示す生地材料を、捏ね上げ温度24℃となるようミキサーにて混合した。
2)捏ね上げた生地を湿度75%、温度27℃で20分間発酵後、0℃で一晩冷却した。
3)冷却後の生地をリバースシーター等を使用して適宜延ばし、15℃に調温したロールイン用油中水型油脂組成物を包んだ。
4)さらに生地を延ばして3つ折りを2回し、生地温度が10℃以下となるまで冷却した。
5)冷却後の生地を延ばして3つ折りし、生地温度が0℃付近となるまで冷却した。
6)冷却後の生地を3mm厚付近まで延ばし、適宜カットしてクロワッサンの成型を行った。
7)湿度75%、温度35℃で最終発酵後、200℃で14分間焼成してクロワッサンを得た。
実施例及び比較例で得られた油中水型乳化油脂組成物とクロワッサンについて、次の評価を行った。
[油中水型乳化油脂組成物の風味]
油中水型乳化油脂組成物をパネル20名で試食し、以下の基準でその風味を評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価
○:20名中10名〜15名が良好と評価
△:20名中5名〜9名が良好と評価
×:20名中4名以下が良好と評価
[ベーカリー製品の風味]
油中水型乳化油脂組成物を使用して前記の方法で製造したクロワッサンをパネル20名で試食し、以下の基準でその風味を評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が良好と評価
○:20名中10名〜15名が良好と評価
△:20名中5名〜9名が良好と評価
×:20名中4名以下が良好と評価
[ベーカリー製品の風味の持続性]
油中水型乳化油脂組成物を使用して製造した前記のクロワッサンをパネル20名で試食し、飲み込んだ後の風味の持続時間を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:20名中16名以上が20秒以上と評価
○:20名中10名〜15名が20秒以上と評価
△:20名中5名〜9名が20秒以上と評価
×:20名中4名以下が20秒以上と評価
[タンパク質の焦げ付き]
油中水型乳化油脂組成物の製造工程において、ストレーナーへの目詰りを目視により確認し、タンパク質の焦げ付きを以下の基準で評価した。
評価基準
○:目詰りがない
△:目詰りが少しある
×:かなり目詰りしている
[二重乳化の安定性]
呈味素材A〜Dを水相に再溶解させた水中油型乳化物(O1/W)を、連続相である表5の油相(O2)中に分散相として分散させた構造を有する実施例22〜24、27〜29の二重乳化油脂組成物を75℃の湯浴中で加熱して、油相と、水中油型乳化物の相とに分離させ、分離した上部油相の質量を測定し、その質量と最外相(O2)に用いた油脂の配合質量との差を、水中油型乳化物(O1/W)が破壊されて生じた油脂質量(ΔO1)とし、ΔO1を、油相(O1)の配合質量で除した値の百分率を、油相(O1)量の変化率として求め、以下の基準で評価した。
評価基準
最良:変化率が20%未満
良:変化率が20%以上、35%未満
普通:変化率が35%以上、80%未満
不良:変化率が80%以上
評価結果を表5及び表6に示す。
表5より、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有する油中水型乳化組成物を用いた実施例19〜29は、コクのあるバター風味が良好で、ベーカリー製品の焼き残りの風味も良好であった。
呈味油を含有する粉末素材(呈味素材A〜D)を水相に含有する実施例22〜24、27〜29は、更に風味の持続性が良好であった。乳蛋白やオクテニルコハク酸デンプンで被覆された粉末油脂(呈味素材B、C)を含有するものは、風味の持続性が特に良好であった。
表6より、比較例6〜8は、タンパク質濃縮ホエイを配合せず、又は配合量が適切でなかったため、風味が悪くなり、或いは、油中水型乳化油脂組成物の製造工程においてタンパクの焦げ付きによってストレーナーが目詰まりして製造が困難であった。
比較例9は、タンパク質濃縮ホエイとしてタンパク質が多く灰分の少ないものを使用したが、風味に向上が見られなかった。比較例10は更に乳清ミネラルを併用したが、乳清ミネラルにエグ味があるため、風味に向上が見られなかった。

Claims (6)

  1. タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有し、
    呈味油を含有する粉末素材を水相に含有する油中水型乳化油脂組成物。
  2. タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.5〜5.0質量%含有し、
    呈味油を水相に含有し、
    油脂として、パームオレインのエステル交換油を含有する油中水型乳化油脂組成物。
  3. タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有し、
    油脂として、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とのエステル交換油を組成物全量に対して5〜30質量%含有する油中水型乳化油脂組成物。
  4. 油脂として、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とのエステル交換油(但し、1,3位に特異性のあるリパーゼ製剤により処理したエステル交換油を除く。)を組成物全量に対して5〜30質量%含有する請求項3に記載の油中水型乳化油脂組成物。
  5. タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.2〜21質量%含有し、
    油脂として、ラウリン系油脂5質量%以上30質量%未満と、パーム系油脂70質量%超95質量%以下とのエステル交換油(但し、1,3位に特異性のあるリパーゼ製剤により処理したエステル交換油を除く。)を組成物全量に対して5〜50質量%含有する油中水型乳化油脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の油中水型乳化油脂組成物を含有する生地を焼成して得られるベーカリー製品。
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