JP2016086739A - 起泡性水中油型乳化油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】低油分、とくに40質量%以下であっても、乳化安定性が良好であり、適度な起泡時間であり、且つ、得られるホイップドクリームの耐熱保形性、口溶け(シャープさとみずみずしさ)、風味(乳風味とコク味)が良好である、起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供すること。
【解決手段】低置換度カルボキシメチルセルロースを0.01〜1質量%含有することを特徴とする、起泡性水中油型乳化油脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、起泡性水中油型乳化油脂組成物又はそれを起泡してなるホイップドクリームに関する。
近年、食生活の多様化や健康志向の高まりから、飲食品のライト化や低カロリー化等が要求されてきている。ホイップクリーム(起泡性水中油型乳化油脂組成物)についても例外ではなく、ライト化や低カロリー化等のために、油分を減少させる要望が高くなってきている。
従来の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、生クリーム同様油分を45%程度含んでいるものが主流であったのに対し、上記要望により、油分含量を45%未満、更には40%以下とした低油分起泡性水中油型乳化油脂組成物の要望が多くなってきている。
しかし、このような低油分起泡性水中油型乳化油脂組成物は、乳化安定性が低下してしまうため保管中に分離沈降を起こしやすいという問題や、起泡時間が極端に長くなってしまう問題や、オーバーランが高くなりすぎるという問題があった。
そして得られたホイップドクリーム(起泡したホイップクリーム)も、低油分であるためコク味に乏しく、また、フワフワとしてコシがなく、耐熱保形性のないクリームになってしまうという問題があった。
更に、低油分起泡性水中油型乳化油脂組成物であっても無脂乳固形分については風味の面から従来と同等とする必要があるため、相対的に水相中の無脂乳固形分濃度が下がってしまうこととなる。無脂乳固形分のうち、乳蛋白質は乳風味の主要成分であると同時に起泡性水中油型乳化油脂組成物をはじめとする水中油型乳化物の乳化安定性に一定の効果を有する成分であることから、低油分起泡性水中油型乳化油脂組成物はこの面からも更に、乳風味を感じにくくなることに加え、乳化安定性が悪化してしまうものであった。
また、起泡性水中油型乳化油脂組成物では、特にさっぱりした風味を求める場合や他の風味成分と併せる場合等、その無脂乳固形分を更に減じる必要がある場合もある。
このような起泡性水中油型乳化油脂組成物において低油分であると、更に乳風味が薄くなることに加え、乳化安定性が更に低下するため、保管中の分離沈降の発生がより顕著になり、起泡後のホイップドクリームの耐熱保形性も更に悪化してしまうという問題があった。
これらの欠点を改善する方法として、特定の乳化剤や増粘安定化剤を選択的に多量に加える方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、この方法では、乳化剤や増粘安定化剤を多量に加えているので、起泡時間が延びてしまったり、ホイップドクリームのツノがダレたり、口溶けのシャープさが失われ、もったりした口溶けになるという問題があった。
このため、特定のキサンタンガムをごく少量使用する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
しかし、この方法であると、たとえばホイップしてから時間がたった場合や保管温度が高かった場合、スポンジにナッペあるいはサンドした場合など吸水性の高い素材と組み合わせた場合などにみずみずしい食感が失われ、口溶けが悪くなりやすいという問題があった。
また、不溶性の食物繊維をごく少量使用する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
しかし、この方法であっても同様に、みずみずしい口溶けが十分ではないという問題があった。
特開平07−023711号公報 特開2011−010574号公報 特開2010−193811号公報
従って、本発明の目的は、低油分であっても乳化安定性が良好であり、適度な起泡時間であり、且つ、得られるホイップドクリームの耐熱保形性、口溶け(シャープさとみずみずしさ)、風味(乳風味とコク味)が良好である、起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供することにある。
そこで、本発明者等は鋭意検討した結果、低置換度カルボキシメチルセルロースをごく少量添加することで、上記問題を全て解決可能であることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、低置換度カルボキシメチルセルロースを0.01〜1質量%含有することを特徴とする、起泡性水中油型乳化油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記の起泡性水中油型乳化油脂組成物を起泡してなるホイップドクリームを提供するものである。
本発明によれば、低油分であっても乳化安定性が良好であり、適度な起泡時間である起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、耐熱保形性、口溶け(シャープさとみずみずしさ)、風味(乳風味とコク味)が良好であるホイップドクリームを得ることができる。
以下、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物で用いることができる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の各種植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1つ又は2つ以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。本発明においては、上記の油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、ラウリン系油脂を、乳脂以外の油脂のうちの50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有することがより口溶け、とくにみずみずしさに優れた起泡性水中油型乳化油脂組成物が得られる点で好ましい。ここで、「ラウリン系油脂」とは炭素数12の脂肪酸を多く含有する油脂のことをいい、具体的には、ヤシ油、パーム核油、又はこれらを原料として水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂等をいう。
尚、ラウリン系油脂を原料の一部として水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用する場合は、その原料に使用したラウリン系油脂の含量を用いて算出するものとする。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物中の、その他の配合原料中に含まれる油脂分も含めた油分含有量は特に制限はないが、本発明の効果は低油分起泡性水中油型乳化油脂組成物での効果が高いことから、45質量%未満であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、さらに35質量%以下とすることも可能である。
尚、下限については、好ましくは10質量%、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは20質量%である。
ここで、本発明で使用する「低置換度カルボキシメチルセルロース」について述べる。
上記低置換度カルボキシメチルセルロースは、セルロースに対しカルボキシメチルエーテル化法により、グルコース単位当たりのカルボキシメチルエーテル基置換度が0.01〜0.4、好ましくは0.03〜0.38となるようにカルボキシメチル基をエーテル結合して得られるものである。
一般のカルボキシメチルセルロース(置換度が0.4超)が水溶性であるのに対し、この低置換度カルボキシメチルセルロースは、水不溶性でありながら膨潤性を有し、さらには乳化性が高く、保水性に優れるという特徴を有する。
なお、本発明において、カルボキシメチルセルロースにはカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を含むものとする。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、上記低置換度カルボキシメチルセルロースを0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.05〜0.2質量%含有する。該低置換度カルボキシメチルセルロースの含有量が0.01質量%未満であると、該低置換度カルボキシメチルセルロースの膨潤による本発明の効果が見られない。また、該低置換度カルボキシメチルセルロースの含有量が1質量%超であると、起泡性水中油型乳化油脂組成物を安定して製造できないことに加え、得られるホイップドクリームの口溶け(シャープさとみずみずしさ)が悪化してしまう。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物では、より乳風味が良好で、且つ、併せた他の風味成分が引き立つ起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることが可能な点で、乳清ミネラルを添加することが好ましい。
上記乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、乳蛋白質を多く含有する場合であっても殺菌時に焦げが生じない点、良好な乳風味と口溶けを有する起泡性水中油型乳化油脂組成物が得られる点で、固形分中のカルシウム含有量が2質量%未満、好ましくは1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含有量は低いほど好ましい。
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含有量が5質量%以上である。このため、上記カルシウム含有量が2質量%未満の乳清ミネラルを得るためには、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、更には冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、或いは甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法等を採ることができるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物における上記乳清ミネラルの含有量は、固形分として0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1.5質量%、より好ましくは0.1〜0.8質量%である。上記乳清ミネラルの含有量が固形分として0.01質量%未満であると、本発明の効果が見られず、また、5質量%を超えると、苦味を感じる場合がある。
また、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物では、より良好な乳風味を呈し、且つ、乳化剤の使用量を減じても乳化安定性が良好な起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることが可能な点から、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を使用することが好ましい。
上記乳原料としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分を基準として、3質量%以上である乳原料を使用することが好ましく、更に好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を使用する。
上記乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。
また、上記乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明においては、上記乳原料として用いないのが好ましい。
乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に限定されるものではない。
先ず、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の脂質をFolch法により抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する乳原料−乳由来のリン脂質を含有する乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。該クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、おおよそ2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明において、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料として、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した濃縮物、或いはその乾燥物を用いることは可能である。
上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
上記クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いることができる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、上記バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いることができる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
本発明で用いることができる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上であれば、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また、噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
但し、乳由来のリン脂質は、高温加熱するとその機能が低下するため、上記加温処理や上記濃縮処理中或いは殺菌等により加熱する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。
また、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物では、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料として、上記乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、上記乳原料をそのままリゾ化したものであってもよく、また上記乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであってもよい。また、得られたリゾ化物に、更に濃縮或いは噴霧乾燥処理等を施してもよい。
上記乳原料の一部又は全部として、上記リゾ化物を本発明で用いることにより、更に乳化安定性を改良させることができる。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物では、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を、固形分として、好ましくは0.1〜8質量%、更に好ましくは0.5〜7質量%、最も好ましくは0.5〜4質量%含有する。尚、上記乳原料の起源となる乳としては、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳を例示することができるが、特に牛乳が好ましい。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物では、本発明の効果を阻害しない範囲内で所望により、乳化剤、安定剤、増粘安定剤、蛋白質、上記以外の乳製品、糖類や高甘味度甘味料、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、調味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤等の、一般的な起泡性水中油型乳化油脂組成物に使用することのできるその他の成分を、必要に応じ任意に配合することができる。
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明における上記乳化剤の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。尚、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を使用する場合は、乳化剤の含量を減じることができ、その場合の乳化剤の好ましい含有量は0.001〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。
上記安定剤としては、リン酸塩(ヘキサメタリン酸、第2リン酸、第1リン酸)、クエン酸のアルカリ金属塩(カリウム、ナトリウム等)等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記増粘安定剤としては、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、低置換度カルボキシメチルセルロース以外のカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なかでも本発明では、キサンタンガム及び/又はグアーガムを使用することが好ましい。
本発明において増粘安定剤を使用する場合の好ましい含有量は、0〜2質量%が好ましく、0〜1質量%であるが、とくに本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物中の油分含有量が40質量%以下、さらに35質量%以下とした場合には、本発明の効果を安定的に発揮させるためには好ましくは0.005〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.2質量%使用することが好ましい。なおその場合は上記増粘安定剤の中でもキサンタンガム、グアーガム、澱粉、化工澱粉のうちの1種または2種以上を使用することが好ましい。
上記蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、α−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン、血清アルブミン等のホエイ蛋白質、カゼイン、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン等の小麦蛋白質、プロラミン、グルテリン等の米蛋白質、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて1種ないし2種以上の蛋白質として、或いは1種ないし2種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
上記糖類や高甘味度甘味料としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、甘草、羅漢果、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩、ジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリン等の糖類や高甘味度甘味料が挙げられる。これらの糖類や高甘味度甘味料は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、1種ないし2種以上の糖類や高甘味度甘味料を含有する食品素材の形で添加してもよい。
次に、本発明の起泡性水中油型乳化組成物の製造方法について以下に説明する。
先ず、油脂及び必要によりその他の原料を含有させた油相と、水及び必要によりその他の原料を含有させた水相とをそれぞれ個別に調製し、次いで、該油相と該水相とを混合乳化し、水中油型に乳化することにより、本発明の起泡性水中油型乳化組成物が得られる。
この際、水溶性成分は水相に、油溶性成分は油相に含有させるのが基本であるが、水相への溶解性が乏しくだまになりやすい場合など、水溶性成分を油相に添加してもよい。
なお、必須成分である上記低置換度カルボキシメチルセルロースについても、水相に添加してもよく、また油相に添加することができるが、本発明の効果が確実に安定して得られる点で水相に添加するのが好ましい。ただし、増粘安定剤を併用する場合は、作業性の点から、増粘安定剤及び上記低置換度カルボキシメチルセルロースは共に油相に添加することが好ましい。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の製造においては、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により圧力0〜100MPaの範囲で均質化することが好ましい。また、必要によりインジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、或いはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理を施しても良く、或いは直火等の加熱調理により加熱しても良い。また、加熱後に必要に応じて再度均質化しても良い。また、必要により急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施しても良い。
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、起泡してホイップドクリームとすることで、フィリング用、サンド用、トッピング用、ナッペ用、センター用に主に使用することができる。なお、本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、起泡して或いは起泡することなく、コーヒーホワイトナーや食品練り込み用クリームとしても用いることができる。
上記の食品としては、例えば、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、クロワッサン、フランスパン、セミハードロール、シュー、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーンなどのベーカリー製品、洋菓子、和菓子、チョコレート菓子などの菓子類、冷菓、プリン、ムースなどのデザート類、シチュー、グラタン、ドリアなどの調理食品、コーヒー、紅茶等の飲料を挙げることができる。
次に、本発明のホイップドクリームについて以下に説明する。
本発明のホイップドクリームは、上記本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物を起泡させたものである。尚、その好ましいオーバーランは100〜140、より好ましくは110〜130である。
尚、起泡する際に、グラニュー糖、砂糖、液糖等の糖類、ブランデー、ラム酒、リキュール等のアルコール類、カカオ、コーヒー、ジャム等の風味原料、香料、増粘安定剤、生クリーム等を添加してもよい。
得られたホイップドクリームは、各種菓子、パン、惣菜等の各種食品に対し、フィリング用、サンド用、トッピング用、ナッペ用、センター用として使用することができる。
また、得られたホイップドクリームは、冷凍することもできる。
また、得られたホイップドクリームと他の食品素材とあわせ、各種風味のホイップドクリーム、あるいは、ムース、シフォンケーキ等の洋菓子を製造することもできる。
次に実施例、及び比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
〔実施例1〜8及び比較例1〜4〕
[起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造]
表1の油相成分の欄に記載された原料を混合し、65℃に加温溶解し、油相とした。一方、表1の水相成分の欄に記載された原料を混合し、65℃に加温溶解し、水相とした。尚、乳清ミネラルAについては、下記の製法で得られたものを使用した。上記水相と上記油相を混合、乳化して、予備乳化物を調製し、3MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度5MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、実施例及び比較例の起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
<乳清ミネラルAの製造>
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、更に逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これを更にエバポレーターで濃縮したのち、固形分が40質量%となるように水で希釈し、乳清ミネラルAとした。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
[起泡性水中油型乳化油脂組成物の評価]
得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物に関し、保管中の乳化安定性について、下記の方法で評価を行なった。結果を下記表2に示す。更に、得られた起泡性水中油型乳化油脂組成物100質量部に上白糖8質量部を添加してミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーを使用して毎分700回転の速度で最適起泡状態に達するまで起泡させ、起泡時間、オーバーランを測定し、結果を表2に記載した。また、得られたホイップドクリームについて、耐熱保形性、口溶け(シャープさとみずみずしさ)、風味(乳風味とコク味)について、下記の方法で評価を行った。結果を下記表2に示す。
<乳化安定性の評価方法>
5℃の冷蔵庫に2週間おいたときの分離沈降状況について目視によって観察し、分離沈降が全く発生していないものを◎、分離沈降がほとんど発生していないものを○、わずかに分離沈降が見られるものを△、はっきりとした分離沈降が見られるものを×として評価した。
<起泡時間の評価方法>
起泡時間が4分以上6分未満のものを◎、3分以上4分未満又は6分以上7分未満のものを○、3分未満又は7分以上のものを×として評価した。
<オーバーランの評価方法>
オーバーランが110以上130未満のものを◎、100以上110未満又は130以上140未満のものを○、100未満又は140以上のものを×として評価した。
<耐熱保形性の評価>
ホイップドクリームを絞り袋で星型口金を用いて造花し、20℃の恒温槽中で24時間放置した場合の嵩落ちを測定し、嵩落ち量が0.5mm未満のものを◎、0.5mm以上1mm未満のものを○、1mm以上5mm未満のものを△、5mm以上のものを×として評価した。
<口溶け(シャープさ)の評価>
ホイップドクリームを口にふくんだときの溶け易さを、15人のパネラーにて官能試験した。口溶け性が良好(シャープな口溶け)なもの、口溶け性が不良(もったりしている)なもの、及びどちらともいえないものの3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が25点以上のものを◎、20〜24点のものを○、15〜19点のものを△、14点以下のものを×とした。
<口溶け(みずみずしさ)の評価>
ホイップドクリームを10℃で2日間保管したものを口にふくんだときのみずみずしさについて、15人のパネラーにて官能試験した。良好なもの、不良なもの、及びどちらともいえないものの3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が25点以上のものを◎、20〜24点のものを○、15〜19点のものを△、14点以下のものを×とした。
<風味(乳風味)の評価>
ホイップドクリームを口にふくんだときの乳風味を、15人のパネラーにて官能試験した。乳風味が良好なもの、乳風味が不良なもの、及びどちらともいえないもの、3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が29点以上のものを◎++、26〜28点のものを◎+、23〜25点のものを◎、20〜22点のものを○、15〜19点のものを△、14点以下のものを×とした。
<風味(コク味)の評価>
ホイップドクリームを口にふくんだときのコク味を、15人のパネラーにて官能試験した。コク味が良好なもの、コク味が不良なもの、及びどちらともいえないものの3段階で評価し、良好なものに2点、どちらともいえないものに1点、不良なものに0点を与え、合計点が28点以上のものを◎+、25〜27点のものを◎、20〜24点のものを○、15〜19点のものを△、14点以下のものを×とした。
Figure 2016086739
Figure 2016086739
表2の結果から、低置換度カルボキシメチルセルロースを使用した実施例1〜8の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、保管中の分離沈降が防止され、適度な起泡時間及びオーバーランでホイップドクリームを得ることができた。更に、実施例1〜8の起泡性水中油型乳化油脂組成物を起泡して得られたホイップドクリームは、耐熱保形性、口溶け(シャープさとみずみずしさ)と、風味(乳風味とコク味)が良好であった。
一方、低置換度カルボキシメチルセルロースを使用せず、さらに増粘安定剤も使用しない比較例1の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、保管中の乳化安定性が悪く、また、耐熱保形性が非常に悪いものであった。また、シトラスファイバーを使用した比較例2や小麦ファイバーを使用した比較例3では、保管中の乳化安定性が特に悪く分離沈降が生じ、風味(乳風味とコク味)の大きく劣ったものであった。さらに、低置換度カルボキシメチルセルロースにかえて一般的な増粘安定剤であるキサンタンガムを使用した比較例4の起泡性水中油型乳化油脂組成物は、乳風味が弱く、口溶け(シャープさとみずみずしさ)が不良であった。

Claims (5)

  1. 低置換度カルボキシメチルセルロースを0.01〜1質量%含有することを特徴とする起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  2. 油分含量が40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  3. 乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  4. 乳清ミネラルを含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物を起泡してなるホイップドクリーム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020078274A (ja) * 2018-11-13 2020-05-28 株式会社Adeka 水中油型乳化油脂組成物

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