JP6654360B2 - コク味強化材 - Google Patents

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Description

本発明は、飲食品に含まれるコク味、とくに乳風味のコク味を少ない添加量で強化することができるコク味強化材に関する。また、本発明は飲食品のコク味強化方法に関する。
飲食品の風味には、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5種類の基本風味があるが、その他にもコク味という風味の存在が知られている。
このコク味とは、上記基本風味の広がり、持続性という観点から風味を評するものであり、単なる嗜好としてではなく、飲食品のもつ固有の風味や美味しさを引きたて食欲増進効果もあることから、飲食品の風味として極めて重要である。
一般的に飲食品にコク味を付与するには、グルタミン酸ナトリウム等のうま味調味料や、酵母エキス、蛋白加水分解物、魚介エキス、畜肉エキス等のうま味天然調味料を使用することが多い。これは、うま味自体、他の基本風味に比べて味の広がりが良好で持続性があることから用いられるものであるが、飲食品のもつ風味にうま味が付与されてしまう問題があった。すなわち、飲食品固有の風味を変えることなく、コク味のみを付与するものではなかった。
そこで、コク味のみを飲食品に付与することができる、または、飲食品のもつコク味のみを、少ない添加量で強化することができるいわゆるコク味強化材が各種提案されている。
たとえば、ピラジン化合物類(例えば特許文献1参照)、N末端から1および2番目のアミノ酸が、それぞれグリシンおよびL−プロリンであり、かつ分子量が1000以下のペプチド(例えば特許文献2参照)、スルホン基含有化含物、リン酸塩およびベタイン(例えば特許文献3参照)、ゼラチンおよびトロポミオシンの酵素分解物(例えば特許文献4参照)、分子量1000〜5000のペプチドとカルボニル化合物とのアミノ−カルボニル反応物(例えば特許文献5参照)、O/W型の乳化組成物(例えば特許文献6参照)、アミノ酸の混合物(例えば特許文献7参照)、乳清ミネラルの加熱処理物(例えば特許文献8参照)等を添加する方法等が知られている。
しかし、特許文献1〜5はうま味を有する飲食品にコク味を付与するため、あるいは飲食品にコクのあるうま味を付与する物質の発明であり、特許文献6記載の物質はコク味が強化された可塑性油脂組成物であり、飲食品に対して少ない添加量でコク味を付与するものではない。また、特許文献7は加熱工程を含む飲食品、とくにベーカリー食品の乳製品の良好な香り、呈味やコク味は付与するが、加熱工程を含まない飲食品ではそのコク味は厚みがあまり感じられずやや不自然なものであった。特許文献8はコク味と共にロースト風味を付与するものであり、飲食品の基本風味に影響なく、コク味のみを強化するものではなかった。
このように従来のコク味強化材は、飲食品に含まれるコク味、とくに乳風味のコク味を少ない添加量で強化することができるコク味強化材に関するものではなかった。
特開平11−313635号公報 WO2004/107880 特開平8−289761号公報 特開平8−228715号公報 特開2002−335904号公報 特開平10−179026号公報 WO2009/101972 特開2013−233089号公報
従って本発明の目的は、少量の添加量で、飲食品の基本風味を損なわずに、コク味、とくに乳風味のコク味をごく自然に強化することができるコク味強化材を提供することにある。また、本発明の目的は、少量の添加量で、飲食品の固有の風味を損なわずに、コク味、とくに乳風味のコク味をごく自然に強化することができる飲食品のコク味強化方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、糖類に対し特定の乳原料を特定比で添加した場合、上記課題を解決可能なコク味強化材とすることが可能なことを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、以下の(A)、(B)及び(C)を、5〜50:1〜30:30〜90の固形分質量比で含有することを特徴とするコク味強化材を提供するものである。
(A)乳清ミネラル
(B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料
(C)糖類
ただし(A)、(B)及び(C)の固形分の合計を100とする。
また、本発明は、該コク味強化材を含有する飲食品を提供するものである。
また、本発明は、該コク味強化材を飲食品に含有させることを特徴とする飲食品のコク味強化方法を提供するものである。
本発明によれば、飲食品の基本風味を損なうことなく、コク味、とくに乳風味のコク味がごく自然に強化された飲食品を得ることができる。
以下、本発明のコク味強化材について詳述する。
本発明のコク味強化材は以下の(A)(B)(C)を含有する。
(A)乳清ミネラル
(B)乳由来のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料
(C)糖類
そこでまず本発明で使用する(A)乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエー(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエー中のミネラル組成に近い比率となる。
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、より自然なコク味の飲食品が得られる点、及び、コク味強化の効果が高い点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。尚、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルは、乳又はホエーから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエーを用いる方法、あるいは、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にカルシウムを除去する工程を挿入することで得ることができるが、工業的に実施する上での効率やコストの点で、甘性ホエーから乳清ミネラルを製造する際にある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
本発明のコク味強化材における上記(A)乳清ミネラルの含有割合は、上記(A)、(B)及び(C)成分の固形分の合計量に占める上記乳清ミネラルの固形分の割合、すなわち固形分比として5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。上記乳清ミネラルの配合割合が5質量%未満であると、本発明の効果が見られず、また、50質量%を超えると、塩味や苦味が強まり風味バランスが崩れて自然なコク味が強化されないおそれがあることに加え、高い塩濃度が物性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
続いて、本発明で使用する、(B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料(以下単に「乳原料」ということもある)について詳述する。
本発明のコク味強化材は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分基準で0.5質量%以上、好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である乳原料を使用する。乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%未満である乳原料を用いると、本発明の効果が得られない。
上記の乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを示す。
また、上記の乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から本発明における乳原料として用いないのが好ましい。
乳原料のリン脂質の定量方法は、例えば以下のような方法にて測定することができる。但し、抽出方法などについては乳原料の形態などによって適正な方法が異なるためこの定量方法に限定されるものではない。
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料100g中のリン脂質の含有量gを求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/乳原料採取量(g)〕×25.4×(0.1/1000)
上記の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上である乳原料としては、例えば、クリームからバターを製造する際に生じる水相成分(バターミルク)や、クリームまたはバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分があげられる。
上記のクリームからバターを製造する際に生じる水相成分は、その製法の違いにより組成が大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5〜1.5質量%程度である。一方、クリームまたはバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
すなわち本発明では、上記の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上である乳原料として、クリームまたはバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分を使用することが好ましい。
次に上記のクリームからバターを製造する際に生じる水相成分の製造方法について説明する。
クリームからバターを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで乳化破壊機で脂肪球を破壊して凝集させ、バター粒を形成させる工程でバターの副産物として発生するものである。
上記のクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まずバターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
また、本発明においては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上であれば、上記水相成分をそのまま用いてもよく、また噴霧乾燥、濃縮、冷凍などの処理を施したものを用いてもよい。
また、本発明では、上記乳原料中の乳原料の一部または全部をそのままリゾ化してもよく、また濃縮した後にリゾ化してもよい。またさらに得られたリゾ化物をさらに濃縮、あるいは、噴霧乾燥処理等を施してもよい。
乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上である乳原料中の、リン脂質をリゾ化するにはホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置き換える作用を有する酵素である。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。ホスホリパーゼAは作用する部位の違いによってA1、A2に分かれるが、A2が好ましい。
また、本発明では、上記の乳原料に、pHを3〜6となるように酸処理を行ったものを使用してもよい。
上記酸処理を行うには、酸を添加する方法であっても、また、乳酸醗酵等の醗酵処理を行う方法であってもよいが、好ましくは酸を添加する。該酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルト等の有機酸を含有する飲食品も用いることができるが、本発明においてはより酸味が少なく、風味に影響しない点でフィチン酸及び/又はグルコン酸を使用することが好ましい。
上記酸の添加によるpHの調整は、上記酸を上記乳原料自体に添加することにより行ってもよいし、本発明のコク味強化材を製造する際に、又は製造後に上記酸を添加することにより行ってもよい。
また、本発明では、上記の乳原料に、リン脂質含有量1質量部あたり、0.01〜1質量部のカルシウム塩を添加したものを使用してもよい。
上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明で用いる上記の乳原料は、分散性が良好である点、経日安定性が良好である点で、均質化処理を行なったものであることが好ましい。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。また、粘性が高い等の場合は、加水により粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。
上記均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミル等があげられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモジナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行っても良い。
更に本発明で用いる上記の乳原料は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
(B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料は、蛋白質含量が固形分中の20質量%以上であることが乳原料の調整しやすさや良好な風味が得られる点から好ましく、固形分中の80質量%以下であることがコク味強化材中に乳タンパク等の粒や沈殿が生じることを防止しやすい観点から好ましい。この観点から乳原料中の蛋白質含量は、固形分中の20質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
このようにして得られる本発明で用いる上記の乳原料や乳原料加工品は、液状、流動状、ペースト状、粉末状、固形状等の状態のものとすることができ、本発明のコク味強化材では何れの状態のものでも使用できるが、上記乳原料や乳原料加工品は、液状、流動状又はペースト状のものを使用することが、本発明の効果が安定して得られる点で好ましい。液状、流動状又はペースト状である上記乳原料や乳原料の固形分含量としては、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。上記乳原料や乳原料加工品として粉末状又は固形状のものを使用すると、本コク味強化材製造時に分散性が悪くなる場合があるほか、風味が劣ったものとなる場合があるため好ましくない。
本発明のコク味強化材における上記(B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料の含有割合は、上記(A)、(B)及び(C)成分の固形分の合計量に占める上記乳原料の固形分の割合、すなわち固形分比として、1〜30質量%、好ましくは4〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%である。上記乳原料の配合割合が1質量%未満であると、本発明の効果が見られず、また、30質量%を超えると、コク味強化材中に乳タンパク等の粒や沈殿が顕著になるおそれがあることに加え、風味バランスが崩れて自然なコク味が強化されないおそれがある。
さらに本発明で使用する(C)糖類について詳述する。
本発明で使用することができる糖類としては、乳糖をはじめ、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖、還元パラチノース、ソルビトール、還元乳糖、L-アラビノース、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖等の糖類や糖アルコール等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で特に乳風味を持つ飲食物に対して自然なコク味を付与する場合には、上記糖類の中でも、乳糖を選択し、使用する糖類の固形分中の好ましくは70質量%以上、より好ましくは全部に乳糖を使用する。ここで乳風味を持つ飲食物としては、乳や乳製品、あるいは乳や乳製品を多く含有する飲食品を挙げることができ、その具体例としては、「乳や乳製品、あるいは乳や乳製品を多く含有する飲食品」の例として後述する各種の飲食品を挙げることができる。
また、本発明では、コク味強化材を加熱殺菌時等の加熱工程を有する飲食品に使用する場合は、加熱工程の際の褐変が抑制される点で、上記糖類の中でも、還元澱粉糖化物、還元水飴、還元パラチノース、ソルビトール、還元乳糖、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチノース、パラチノースオリゴ糖等の糖アルコールを使用し、上記糖類の固形分中の一部、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上又は全部が糖アルコールとなるように使用することが好ましい。
さらに、本発明では、低温での摂食時でもはっきりしたコク味強化効果を得るためのコク味強化材を求める場合は、上記糖類の中でも、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖などの果糖を使用し、上記糖類の固形分中の果糖含有量が好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上となるように使用することが好ましい。
本発明のコク味強化材における上記糖類の含有割合は、上記(A)、(B)及び(C)成分の固形分の合計量に占める上記(C)糖類の固形分の割合、すなわち固形分比として、30〜90質量%、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは65〜85質量%である。上記糖類の配合割合が30質量%未満であると、本発明の効果が見られず、また、90質量%を超えると、コク味強化材を添加した飲食品に甘味を付与してしまうほか、風味バランスが崩れて自然なコク味が強化されないおそれがある。なお後述するその他の原料が糖類を含有している場合、その糖類の量を含めて上記(C)糖類の固形分の割合を算出する。
さらに本発明において、加熱工程の際の褐変の抑制や甘味度の調整、低カロリー化などの目的で、糖類の一部又は全部を高甘味度甘味料に置換することも可能である。
なお、本発明で使用することができる高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、甘草、羅漢果、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩、ジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリン等が挙げられる。
本発明のコク味強化材は上記(A)、(B)、(C)成分に加え、(D)乳酸発酵風味素材を含有するものであることが、飲食品により強いコク味を付与可能な点で好ましい。
以下、本発明で使用する、(D)乳酸発酵風味素材について説明する。
上記乳酸発酵風味素材とは、乳酸菌が資化可能な基質を乳酸発酵して得られた風味素材であるが、その基質としてはより自然なコク味が付与できる点で乳原料を使用することが好ましい。該乳原料としては、牛乳、濃縮乳、練乳、ホエイ、クリーム、バター、バタークリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の乳や乳製品をはじめ、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダーなどの粉乳類や、脱脂乳などの乳糖を含有する乳製品も使用可能である。
なお、本発明では上記発酵風味素材として、乳酸発酵を利用した市販の飲食品や風味素材、たとえばクリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、発酵乳飲料、製パン用発酵種等を使用することもできる。
また、本発明では、上記乳酸発酵風味素材は、基質や発酵条件の異なる2種以上の乳酸発酵風味素材を用いてもよい。
本発明のコク味強化材における上記乳酸発酵風味素材の含有割合は、上記(A)、(B)及び(C)の固形分の合計100質量部に対し、下記(D)を、固形分として、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。上記乳酸発酵風味素材の配合割合が上記(A)、(B)及び(C)の固形分の合計100質量部に対し0.5質量部未満であると、上記乳酸発酵風味素材の添加効果が弱いものになってしまう。また、配合量が10質量部を超えると、酸味が強まり風味バランスが崩れて自然なコク味が強化されないおそれがあることに加え、低いpHが物性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
以下、上記乳酸発酵風味素材の製造方法について、乳酸菌が資化可能な基質として乳原料を使用した場合の好ましい実施態様について詳述する。
上記乳酸発酵風味素材を得るためには、まず乳酸菌が資化可能な基質、好ましくは乳原料を含有するミックス液を調製する。
具体的には、牛乳、濃縮乳、ホエイ、クリーム、バター、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等の水分を多く含有する乳や乳製品、あるいは水に、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダーなどの粉乳類や、乳蛋白質、乳糖、バターなどの乳原料を添加し、水分含量が好ましくは20〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%となるように調整して乳原料を含有するミックス液とする。
ミックス液は、風味が強化された乳酸発酵風味素材を安定して製造可能な点で、上記乳原料の含量が無脂乳固形分として2〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
次に、必要に応じて、この乳原料を含有するミックス液を加熱する。加熱する温度は、好ましくは35〜75℃である。更に、必要に応じて均質化を行なう。均質化を行なうための均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられ、好ましくは1〜200MPaの均質化圧力にて均質化を行なう。
均質化後、必要に応じて、加熱殺菌を行なう。該加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波、ジュール加熱式等の直接加熱方式、又は、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の50〜160℃、好ましくは55〜100℃の加熱処理を行なえば良い。
このようにして調製された乳原料を含有するミックス液に乳酸菌を添加して、乳酸発酵を行なう。
上記乳酸菌としては、特に制限されるものではないが、Lactococcus lactis subsp. lactis、Lactococcus lactis subsp. cremoris、Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis、Lactobacillus casei subsp. casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis、Lactobacillus jugurti、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus kefyr、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Streptococcus thermophilus、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris 、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium breve等が挙げられ、これらを単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、これらの乳酸菌は、乳酸菌を含む発酵乳の形態で使用することも可能である。また、更に、乳酸発酵風味素材の風味を向上させる目的で、Candida kefyr、Kluyveromyces marxianus var. marxianus、Saccharomyces unisporus、Saccharomyces florentinus等の酵母を含むスターターを使用してもよい。
ここで本発明では、より良好な香味を有する乳酸発酵風味素材が得られる点で、Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis、Lactobacillus helveticus、Leuconostoc mesenteroides、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremorisのうちの1種、又は2種以上を用いることが好ましく、より好ましくは、Lactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactisと、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremorisの2種を併用するか、または、Lactobacillus helveticusと、Leuconostoc mesenteroidesの2種を併用する。
乳酸菌の添加量は、後述するpHの乳酸発酵風味素材を効率よく得る観点から、ミックス液100質量部に対して、乾燥質量で0.001質量部以上0.2質量部以下であることが好ましく、0.004質量部以上0.05質量部以下であることがより好ましい。
また、乳酸発酵の条件は、温度については、使用される各乳酸菌に好適な発酵温度(例えば20〜40℃)を適宜選択すればよい。
乳酸発酵時間は基質濃度や乳酸菌の添加量等に応じ適宜選択可能であるが、好ましくは、乳酸発酵後のpHの値が4〜6、より好ましくは4.0〜5.5、更に好ましくは4.2〜5.2、最も好ましくは4.3〜4.8となる時間とする。
なお、上記乳酸発酵時は静置状態であってもよいが、好ましくは攪拌をおこなう。好ましい攪拌条件は、1分間に5〜50回転、より好ましくは10〜30回転である。
なお、上記乳酸発酵風味素材は、乳原料を含有するミックス液を発酵させる第1乳酸発酵工程と、その後、リン脂質を添加して乳酸発酵させる第2乳酸発酵工程を経て得られる乳酸発酵風味素材であることが、より良好なコク味強化材を得ることができる点で好ましい。
そこで、上記2段階で乳酸発酵させる際の、好ましい製造方法について詳しく述べる。
上記第1段階の乳酸発酵については、終点を、香気成分の生成が始まり、且つ、香気成分の分解が始まっていない段階とする以外は、上述の製造方法と同様に行うことができる。
この終点の判断方法としては、香気成分の分解が始まると乳酸が発生して、ミックス液のpHの低下が始まることから、このことを利用し、好ましくは乳酸発酵されたミックス液のpHの値が、乳酸菌の添加時点から0.1〜0.5、より好ましくは0.1〜0.3低下した時点を第1乳酸発酵工程の終点と判断する。
なお、第1乳酸発酵工程に使用するミックス液は、リン脂質を含有しないことが好ましい。リン脂質を含有する場合には、0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下とする。
以下に、第2乳酸発酵工程について説明する。
第2乳酸発酵工程においては、第1乳酸発酵工程後のミックス液にリン脂質を添加して、乳酸発酵(以下、第2段階の乳酸発酵ともいう)を行なう。
上記第2乳酸発酵工程で使用する上記リン脂質は、特に限定されるものではなく、食品に使用できるリン脂質であればどのようなリン脂質でも構わない。上記リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸等のジアシルグリセロリン脂質を使用することができ、更に上記リン脂質に対し、ホスホリパーゼ等により酵素処理を行い、乳化力を向上させたリゾリン脂質、上記リン脂質や上記リゾリン脂質を含有する食品素材を使用することができる。上記第2乳酸発酵工程ではリン脂質としてこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では、上記のリン脂質そのものよりも、得られるコク味強化材を使用した飲食品が豊かな深いコク味を有する点で、上記のリン脂質を含有する食品素材を用いる方が好ましい。このリン脂質を含有する食品素材としては、卵黄、大豆、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳が挙げられるが、極めて良好な風味バランスの乳酸発酵風味素材が得られる点から乳由来のリン脂質を含有する食品素材を用いるのが好ましく、牛乳由来のリン脂質を含有する食品素材を用いるのが更に好ましい。
すなわち、上述の「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料」を使用することが好ましい。なお、この場合、乳酸発酵風味素材の製造に用いた該乳原料は乳酸発酵の過程で消費されるため、上記(B)の含有量には含めないものとする。
ここで上記リン脂質の添加量は、ミックス液100質量部に対し、リン脂質を0.05〜2質量部添加することが好ましい。リン脂質のより好ましい添加量は0.1〜0.5質量部、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
なお、上記のリン脂質はリゾリン脂質も含むものとする。
また、リン脂質として上記の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が0.5質量%以上、好ましくは2質量%以上の乳原料である食品素材を用いる場合、該食品素材をミックス液100質量部に対し、固形分として、好ましくは0.03〜15.0質量部、更に好ましくは0.5〜10.0質量部、最も好ましくは3.0〜7.0質量部添加するのがよい。
上記第2段階の乳酸発酵の条件は、温度については、第1段階同様、使用される各乳酸菌に好適な発酵温度(例えば20〜40℃)を適宜選択すればよい。
この第2段階の乳酸発酵は、良好な風味の乳酸発酵風味素材とするため、乳酸発酵が十分でありながら且つ過度に行われていないことが必要である。そのため、好ましくは、乳酸発酵したミックス液のpHの値が4〜6、より好ましくは4.0〜5.5、更に好ましくは4.3〜5.2、最も好ましくは4.5〜5.0となった時点を第2乳酸発酵工程の終点と判断する。
なお、上記第1乳酸発酵工程、第2乳酸発酵工程とも、乳酸発酵時は静置状態であってもよいが、好ましくは攪拌を行う。好ましい攪拌条件は、1分間に5〜50回転、より好ましくは10〜30回転である。
このようにして上記2段階で乳酸発酵することで得られた乳酸発酵風味素材は、通常の1段階で乳酸発酵することで得られた乳酸発酵風味素材に比べて、風味が強化され、且つ、糖や蛋白の分解により生じる香気成分や呈味成分がバランスよく含まれているため、コク味強化効果が高いという特徴を有する。
なお本発明のコク味強化材は、乳脂等の油脂を実質的に含有しないものであることが好ましい。
ここで、「油脂を実質的に含有しない」とは、レーゼゴットリーブ法で測定した場合、コク味強化材における油脂の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下となる含量である。ここで油脂の含量が1.0質量%を超えると、コク味強化効果が阻害されるおそれがあり、また、乳化の問題から食品加工用としての汎用性が損なわれるおそれもある。
本発明のコク味強化材は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、上記(A)、(B)、(C)及び(D)以外のその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリデキストロース等のゲル化剤や安定剤、レシチン、酵素処理レシチン等の天然乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、金属イオン封鎖剤、食塩、岩塩等の塩味剤、無機塩、有機酸塩、無機酸、有機酸、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン・難消化性デキストリン等のデキストリン類、水、アルコール、プロピレングリコール、食用油脂、蛋白質、着香料、苦味料・調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤、酵素、賦形剤、固結防止剤、分散剤、光沢剤、ビタミン剤などを配合してもよい。
なお、本発明では、上記その他の原料は、コク味強化材の固形分中、固形分として80質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、最も好ましくは20質量%以下とする。
また、本発明のコク味強化材の(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料、及び(C)糖類を合計した固形分含有量(但し(D)乳酸発酵風味素材を含有する場合は、(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料、(C)糖類及び(D)乳酸発酵風味素材を合計した固形分含有量)は、本発明のコク味強化材の固形分中に好ましくは20〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。
本発明のコク味強化材の形態としては、特に制限されず、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状のいずれの形態であってもよいが、飲食品製造時に均質に分散させるのが容易である点で流動状又は液状であることが好ましい。
なお、本発明のコク味強化材が流動状又は液状の形態である場合の固形分含有量は、本発明のコク味強化材中に好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。なお、上限については、保存性、飲食品に添加した際の分散性などの面から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
本発明のコク味強化材は、各種食品に含有させることにより、食品のコク味を強化するものであるが、なかでも乳風味のコク味の強化作用に優れている。
また本発明のコク味強化材は、乳風味とのマッチング性が良好である風味のコク味の強化作用にも優れている。このような風味の例としては、いちごみるくにおけるイチゴ風味、ガナッシュクリームにおけるカカオ風味、カスタードクリームにおける卵風味などを挙げることができる。
次に、本発明の飲食品について述べる。
本発明の飲食品は、上記本発明のコク味強化材を含有する飲食品であり、飲食品の基本風味を損なわずに、コク味、とくに乳風味のコク味がごく自然に強化されているという特徴を有するものである。
本発明の飲食品における、本発明のコク味強化材の含有量は、特に限定されず、使用する飲食品や、求めるコク味の強さに応じて適宜決定されるが、飲食品100質量部に対し、(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料及び、(C)糖類の合計した固形分(但し(D)乳酸発酵風味素材を含有する場合は、(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料、(C)糖類及び(D)乳酸発酵風味素材を合計した固形分)として、好ましくは0.02〜5.0質量部、より好ましく0.1〜3.0質量部、さらに好ましくは0.2〜2.0質量部となる量である。本発明のコク味強化材の含有量が上記固形分として0.02質量部未満、又は、5.0質量部を超えると、コク味強化効果が認められ難く、また5.0質量部を超えると、塩味や苦味が感じられるおそれがある。
なお、本発明でいうところの飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、ふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、スープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、ソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、豆腐、納豆、湯葉、黄な粉、おから、油揚げ、厚揚げ等の大豆加工品、ポテトチップス、煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、蒸しパン、クッキー等のベーカリー食品類、煮物、ポテトコロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、トンカツ、天ぷら、フリッター等の揚げ物、茶わん蒸しなどの蒸し物、焼き物、カレー、クリームシチュー、ブラウンシチュー、グラタン、ドリア、ピザ、ごはん、おかゆ、乳がゆ、おにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、ラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、ホイップクリーム、カスタードクリーム、ガナッシュクリーム、フラワーペースト、バタークリーム、餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、フライ食品用ミックス粉等のミックス粉、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、焼きスイートチョコレート、焼きミルクチョコレート、ソフトキャンディー、ハードキャンディー、ゼリー、ガム等の菓子類、アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、アイスキャンディー、カキ氷、シャーベット、サンデー、フラッペ、フローズンヨーグルト等の氷菓、ケーキ、シュークリーム、プリン、ババロア、タルト、アップルパイ、スフレ、バウムクーヘン、ドーナツ等の洋菓子類、饅頭、カステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、緑茶、抹茶、ココア、フルーツ牛乳、乳酸菌飲料、麦芽飲料、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、スポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、サワー等のアルコール飲料類、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、チーズ、加糖練乳、無糖練乳、バターミルク、脱脂濃縮乳等の乳や乳製品等があげられる。
なお、本発明のコク味強化材は上述のように、乳風味のコク味の強化作用に優れているため、上記の飲食品の中でも乳や乳製品、あるいは乳や乳製品を多く含有する飲食品であることが好ましい。
乳や乳製品、あるいは乳や乳製品を多く含有する飲食品の具体例としては、ホワイトソース、ポタージュスープ、ポテトコロッケ、クリームコロッケ、クリームシチュー、グラタン、ドリア、ピザ、マーガリン、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド、ホイップクリーム、カスタードクリーム、ガナッシュクリーム、フラワーペースト、バタークリーム、ミルクチョコレート、焼きミルクチョコレート、アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、フローズンヨーグルト、プリン、ババロア、コーヒー牛乳、ミルクティー、ココア、フルーツ牛乳、乳酸菌飲料、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、チーズ、加糖練乳、無糖練乳、バターミルク、脱脂濃縮乳等を挙げることができる。
なかでも本発明では1回の摂取量が多く、口溶け性が重要視される、ホイップクリーム、カスタードクリーム、ガナッシュクリーム、フラワーペースト、バタークリーム、アイスクリーム、生クリーム等のクリーム状の食品に使用することが特に好ましい。
次に、本発明の飲食品のコク味強化方法について述べる。
本発明の飲食品のコク味強化方法は、飲食品に対し上記本発明のコク味強化材を添加するものであり、飲食品の基本風味を損なうことなく、コク味を強化するものである。
本発明のコク味強化材を飲食品に添加する方法は、特に限定されず、対象となる飲食品の製造時、加工時、調理時、飲食時等に、飲食品またはその素材に混合、散布、噴霧、溶解等任意の手段により行なわれるが、本発明では飲食品に対して添加することが好ましい。
本発明のコク味強化材の、飲食品への添加量は、上述のとおり、飲食品100質量部に対し、(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料、及び(C)糖類の合計した固形分(但し(D)乳酸発酵風味素材を含有する場合は、(A)乳清ミネラル、(B)上記乳原料、(C)糖類及び(D)乳酸発酵風味素材を合計した固形分)として、好ましくは0.02〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部、さらに好ましくは0.2〜2.0質量部となる量である。本発明のコク味強化材の添加量が固形分として0.02質量部未満、又は、5.0質量部を超えると、コク味強化効果が認められ難く、また5.0質量部を超えると、塩味や苦味が感じられるおそれがある。
なお、本発明のコク味強化材により飲食品の乳風味のコク味が強化されるため、乳や乳製品の含有量の少ない場合であっても含有量の多い場合と同等の乳風味のコク味が感じられるようになる。そのため、たとえば生クリーム含量の少ないコンパウンドクリームやラクトアイスなどに使用することで、クリーム含量の高い生クリームやアイスクリームと同等の乳のコク味とすることも可能である。
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
<乳清ミネラルの製造>
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は2.2質量%であった。
〔製造例2〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエーをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルBを得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
<乳酸発酵風味素材の調製>
〔製造例3〕
脱脂粉乳(リン脂質含量0.3質量%未満、無脂乳固形分99質量%、蛋白質含量11質量%)10質量部、ホエイパウダー(リン脂質含量0.2質量%未満、無脂乳固形分99質量%、蛋白質含量34質量%)2質量部及び水87.69質量部を混合し、55℃に加熱し、ケミコロイド社製シャーロットコロイドミルにてクリアランス0.2mm、回転数3500rpmにて均質化し、プレート式熱交換器にて80℃で3分間加熱殺菌後、プレート式熱交換器にて30℃に冷却し、無脂乳固形分含量が11.9質量%であり、リン脂質含量が0.034質量%未満である、乳原料を含有するミックス液を調製した。第1乳酸発酵工程として、この乳原料を含有するミックス液にLactococcus lactis subsp. lactis var. diacetylactis及びLeuconostoc mesenteroides subsp. cremorisの2種から成る乳酸菌スターター0.01質量部を加え、30℃で15回転/分で攪拌しながら5時間発酵した。なお、乳酸菌スターターを加えた時点の乳原料を含有するミックス液のpHは6.54であり、第1乳酸発酵工程終点でのpHは6.35であった。ここで、リン脂質として、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含量3.7質量%、蛋白質含量12質量%、無脂乳固形分33.4質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質含量9.8質量%)5質量部を添加し、更に第2乳酸発酵工程として、30℃で10回転/分で攪拌しながら7時間発酵し、pHが4.71であり固形分含量が12.6質量%である乳酸発酵風味素材Aを得た。
<乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料の調製>
〔製造例4〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)100質量部に水30質量部を添加し、ホモミキサーで均質化し、これを「乳原料A」とした。乳原料Aは乳固形分29質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%、乳固形分中の蛋白質含量36質量%であった。
〔製造例5〕
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)100質量部に水30質量部及び50質量%フィチン酸水溶液0.43質量部を添加・混合してpH5.2に調整し、ホモミキサーで均質化し、これを「乳原料B」とした。乳原料Bは乳固形分29質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%、乳固形分中の蛋白質含量36質量%であった。
<コク味強化材の製造>
〔実施例1〜11、及び、比較例1〜5〕
上記乳清ミネラルA、上記乳清ミネラルB、上記乳酸発酵風味素材A、上記乳原料A、上記乳原料B、乳糖、上白糖、及び、水を使用し、表1の配合にしたがって混合・溶解し、さらにこれをホモゲナイザーを使用して均質化し、本発明のコク味強化材A〜K及び比較例のコク味強化材L〜Pを製造した。
得られたコク味強化材A〜Pの、(A)乳清ミネラル、(B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料、及び(C)糖類の該(A)、(B)及び(C)の固形分の合計量に対する固形分比については表2に記載した。
また、得られたコク味強化材A〜Pの、乳酸発酵風味素材の上記(A)、(B)及び(C)の固形分の合計100質量部に対する含有量(質量部)については表3に記載した。
Figure 0006654360
Figure 0006654360
Figure 0006654360
〔実施例12〜22、及び、比較例6〜10〕
<コク味強化試験1> ホイップドクリーム
ミキサーボウルに生クリーム100質量部及び上白糖7質量部を投入し、ここに上記コク味強化材A〜Pをそれぞれ5質量部添加したのち、卓上ミキサーにセットし、高速で5分ホイップし、実施例12〜22及び比較例6〜10のホイップドクリームA〜Pを得た。一方、コク味強化材を添加しないで同様にホイップしたホイップドクリームQを得た。
得られたホイップドクリームA〜Qをそれぞれ、星形口金を装着した絞り袋に入れ、ポリカップに絞り、5℃で1晩保管した後、17人のパネラーにより、ホイップドクリームQと比較試食し、各人が下記の評価基準1に従って7段階評価し、その合計点数を評価点数とし、その評価点数を下記の評価基準2に従って区分評価し、その結果を表4に記載した。
(評価基準1)
10点・・・ホイップドクリームQに比べ優れたコクのある乳風味が感じられた。
5点・・・・ホイップドクリームQに比べコクのある乳風味が感じられた。
1点・・・・ホイップドクリームQに比べややコクのある乳風味であった。
0点・・・・ホイップドクリームQと同等の乳風味のコク味であった。
−1点・・・ホイップドクリームQに比べ乳風味にコク味が感じられない。
−2点・・・不自然な乳風味であった。
−5点・・・乳風味とは異質な風味が感じられる。
(評価基準2)
100点以上:◎
50〜99点:○+
20〜49点:○
5〜19点:○−
−5〜4点:△
−5点未満:×
Figure 0006654360
<コク味強化試験2> カスタードクリーム
ミキサーボウルにカスタード風味フラワーペースト(株式会社ADEKA製「パリッシュ900」100質量部を投入し、ここに上記コク味強化材A〜Pをそれぞれ2質量部添加したのち、卓上ミキサーにセットし、中速で2分混合し、実施例23〜33及び比較例11〜15のカスタード風味フラワーペーストA〜Pを得た。一方、コク味強化材を添加しないで同様に製造したカスタード風味フラワーペーストQを得た。
得られたカスタード風味フラワーペーストA〜Qをそれぞれ、ポリカップに充填し、5℃で1晩保管した後、17人のパネラーにより、カスタード風味フラワーペーストQと比較試食し、各人が下記の評価基準1に従って7段階評価し、その合計点数を評価点数とし、その評価点数を下記の評価基準2に従って区分評価し、結果を表5に記載した。
(評価基準1)
10点・・・カスタード風味フラワーペーストQに比べ優れたコクのある卵感の強いカスタード風味であった。
5点・・・・カスタード風味フラワーペーストQに比べコクのある卵感が感じられるカスタード風味であった。
1点・・・・カスタード風味フラワーペーストQに比べややコクのある卵感が感じられるカスタード風味であった。
0点・・・・カスタード風味フラワーペーストQと同等のコク味のカスタード風味であった。
−1点・・・・カスタード風味フラワーペーストQに比べコク味が感じられない。
−2点・・・・不自然なカスタード風味であった。
−5点・・・・カスタード風味とは異質な風味が感じられた。
(評価基準2)
100点以上:◎
50〜99点:○+
20〜49点:○
5〜19点:○−
−5〜4点:△
−5点未満:×
Figure 0006654360
<コク味強化試験3> ガナッシュクリーム
ミキサーボウルにガナッシュクリーム(株式会社ADEKA製「エースガナッシュホイップ」100質量部を投入し、ここに上記コク味強化材A〜Pをそれぞれ2質量部添加したのち、卓上ミキサーにセットし、中速で5分混合し、実施例34〜44及び比較例16〜20のガナッシュクリームA〜Pを得た。一方、コク味強化材を添加しないで同様に製造したガナッシュクリームQを得た。
得られたガナッシュクリームA〜Qをそれぞれ、ポリカップに充填し、5℃で1晩保管した後、17人のパネラーにより、ガナッシュクリームQと比較試食し、各人が下記の評価基準1に従って7段階評価し、その合計点数を評価点数とし、その評価点数を下記の評価基準2に従って区分評価し、結果を表6に記載した。
(評価基準1)
10点・・・ガナッシュクリームQに比べ優れたコクのあるカカオ感の強いガナッシュ風味であった。
5点・・・・ガナッシュクリームQに比べコクのあるカカオ感が感じられるガナッシュ風味であった。
1点・・・・ガナッシュクリームQに比べややコクのあるカカオ感が感じられるガナッシュ風味であった。
0点・・・・ガナッシュクリームQと同等のコク味のガナッシュ風味であった。
−1点・・・ガナッシュクリームQに比べコク味が感じられない。
−2点・・・不自然なガナッシュ風味であった。
−5点・・・ガナッシュ風味とは異質な風味が感じられた。
(評価基準2)
100点以上:◎
50〜99点:○+
20〜49点:○
5〜19点:○−
−5〜4点:△
−5点未満:×
Figure 0006654360

Claims (6)

  1. 以下の(A)、(B)及び(C)を、5〜50:1〜30:30〜90の固形分質量比で含有し、当該(A)、(B)及び(C)の固形分の合計100質量部に対し、下記(D)を、固形分として0.5〜10質量部含有することを特徴とするコク味強化材。
    (A)乳清ミネラル
    (B)乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として0.5質量%以上である乳原料
    (C)糖類
    ただし(A)、(B)及び(C)の固形分の合計を100とする。
    (D)乳原料を基質とした乳酸発酵風味素材
  2. 糖類中、乳糖の割合が70質量%以上である、請求項1に記載のコク味強化材。
  3. 固形分含量が5質量%以上の流動状又は液状であることを特徴とする請求項1又は2記載のコク味強化材。
  4. 強化するコク味が乳風味のコク味である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコク味強化材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコク味強化材を含有する飲食品。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のコク味強化材を飲食品に含有させる飲食品のコク味強化方法。
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