〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1における画像形成装置としての複写機1Aおよび複写機1Aにおける画像形成方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。複写機1Aは、画像データを用紙(記録材)Pに印刷(画像形成)するものである。
(複写機1Aの構造)
複写機1Aの構成について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、複写機1Aの構造を示す概略図である。図2は、複写機1Aの要部の構成を示すブロック図である。
複写機1Aは、図1および図2に示すように、スキャナー部2と、給紙カセット3と、ピックアップローラ(取り出しローラ)4と、レジスト前検知部6と、アイドルローラ(滞留ローラ)5と、画像形成部10と、光センシング部20Aと、排紙ローラ7と、記憶部50と、制御部60Aとを備えている。
スキャナー部2は、原稿トレイ(不図示)に載置された原稿の画像データ(原稿データ)の読み取りを行うためのものである。スキャナー部2は、読み取った画像データを、後述する記憶部50または画像処理部61に送信する。
給紙カセット3は、複写機1Aによって印刷が行われる用紙Pを収めている容器である。
ピックアップローラ4は、給紙カセット3に収められている用紙Pを主搬送路R1に給紙するためのローラである。なお、主搬送路R1とは、給紙カセット3を起点とし、後述する画像形成部10を通過し、排紙ローラ7を終点とする搬送路のことである。
レジスト前検知部6は、主搬送路R1における、ピックアップローラ4と後述するアイドルローラ5との間に配置されたスイッチである。レジスト前検知部6は、ピックアップローラ4によって給紙された用紙Pが通過したことを検知すると、アイドルローラ5に検知信号を送信する。本実施形態における複写機1Aでは、レジスト前検知部6は、ピックアップローラ4とアイドルローラ5との間に配置されているが、これに限るものではなく、レジスト前検知部6が配置される位置は、ピックアップローラ4によって給紙された用紙Pが通過したことを検知してアイドルローラ5に検知信号を送信できる位置であればよい。
アイドルローラ5は、主搬送路R1において、ピックアップローラ4と後述する画像形成部10との間に配置され、用紙Pを一時的に滞留させるためのローラである。アイドルローラ5は、レジスト前検知部6から用紙Pの通過の検知信号を受信すると、用紙Pを一時的に滞留させ、所定のタイミングで用紙Pの滞留を解除する。
画像形成部10は、スキャナー部2で読み取った原稿の画像データで示される画像を用紙Pに印刷する。画像形成部10は、感光体ドラム(像担持体)11と、帯電器12と、レーザースキャニングユニット13と、現像装置14と、転写装置(転写部)15と、定着部16と、クリーニング装置(不図示)とを備えている。
ここで、画像形成部10による用紙Pへの印刷の基本的な動作について、説明する。なお、複写機1Aにおける詳細な印刷動作については後述する。
画像形成部10による印刷では、まず、帯電器12が、感光体ドラム11を一様に所定の電圧で帯電させる。なお、感光体ドラム11は、ドラム形状をしており、図1における感光体ドラム11の内部に示した矢印方向に回転する。
次に、レーザースキャニングユニット13が、感光体ドラム11にレーザー光を露光させる。これにより、画像処理が施された画像データに基づく静電潜像が感光体ドラム11の表面に形成される。
次に、現像装置14が、現像装置14の内部に格納されているトナー剤(現像剤)を感光体ドラム11の表面に付着させ、前述した静電潜像に基づくトナー像(顕像)を感光体ドラム11の表面に現像する。詳細には、現像装置14は、現像ローラ(不図示)を備えており、当該現像ローラには、現像バイアスが印加されるようになっている。そして、現像ローラに印加された現像バイアスと感光体ドラム11の表面の帯電状態とに応じて生じる電位差によって、感光体ドラム11の表面にトナー剤が付着する。これにより、感光体ドラム11の表面に、静電潜像に基づくトナー像が現像される。
次に、転写装置15が、感光体ドラム11の表面に現像されたトナー像を用紙Pに転写する転写処理を行う。詳細には、転写装置15に転写電位を印加し、転写電流を供給することによって、感光体ドラム11の表面に現像されたトナー像を用紙Pに転写する。転写装置15に印加される転写電位、および転写装置15に供給される電流は、後述する画像形成条件設定部65によって設定されたものである。
次に、定着部16が、用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着(固着)させる。詳細には、定着部16は、加圧ローラ16aと、熱源としてのハロゲンランプ(不図示)とを備えており、トナー像が転写された用紙Pをハロゲンランプによって加熱すると共に、加圧ローラ16aによって用紙Pを所定の圧力で加圧する。これにより、用紙P上に転写されたトナー像が融解し、用紙Pに定着(固着)する。加圧ローラ16aが用紙Pを加圧する圧力、熱源(ハロゲンランプ)を駆動する電流、および、定着時の用紙Pの搬送速度は、後述する画像形成条件設定部65によって設定されたものである。
以上のように、画像形成部10では、感光体ドラム11が画像データに基づく静電潜像をトナー剤により現像することで得られたトナー像を担持し、転写装置15がトナー像を用紙Pに転写する転写処理を行うことにより、画像データで示される画像が用紙Pへ印刷される。
また、クリーニング装置が転写後の感光体ドラム11の表面に残留するトナー剤を除去し、帯電器12が感光体ドラム11を一様に所定の電圧で帯電させることによって、感光体ドラム11を次の印刷処理を行える状態にする。
排紙ローラ7は、印刷された用紙Pを排紙トレイ(不図示)に排出するためのローラである。排紙ローラ7は、用紙Pを外部に排出させる方向、およびその逆方向の両方向に回転できるようになっている。
また、複写機1Aは、副搬送路R2を備えている。副搬送路R2は、用紙Pに対して複数回(例えば、両面に)、印刷する際に用いられる搬送路である。副搬送路R2は、定着部16と排紙ローラ7との間において主搬送路R1から分岐しており、該分岐点から、主搬送路R1におけるピックアップローラ4と光センシング部20Aとの間までを繋ぐ搬送路である。
上記分岐点には、分岐爪が設けられており、分岐爪を2つの側に操作することができるようになっている。分岐爪を一方の側(主搬送路R1側)に操作すると、定着部16を通過した用紙Pが排紙ローラ7に搬送される。一方、分岐爪を他方の側(副搬送路R2側)に操作し、かつ、用紙Pを排紙トレイに排出する方向とは反対方向に排紙ローラ7を回転することにより、排紙ローラ7に搬送された用紙Pが主搬送路R1における進行方向とは逆方向に搬送され(すなわち、スイッチバック搬送され)、上記分岐点から副搬送路R2へと搬送される。副搬送路R2に搬送された用紙Pは、副搬送路R2を介して主搬送路R1におけるピックアップローラ4と光センシング部20Aとの間に搬送される。このとき、用紙Pは、直前に画像形成部10を通過したときとは、表裏が反対になっており、かつ、上下が逆になった状態となる。これにより、用紙Pに対して複数回、印刷が行えるようになっている。
(光センシング部20A)
光センシング部20Aは、アイドルローラ5に滞留された1枚の用紙Pに光を照射し、用紙Pを透過した光の強度、並びに、用紙Pにより反射または拡散(散乱)された光の強度を測定する。光センシング部20Aにより測定された光の強度は、後述する制御部60Aに出力され、制御部60Aにおける用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量(単位面積当たりの紙の重さ)の算出に使用される。なお、本明細書における「紙種」とは、紙の厚さ、坪量、および紙表面の平滑性といった紙の特性が違う紙、並びに、普通紙や上質紙のように含まれる成分が異なる紙などの、異なる性質を持つ紙の種類として定義する。
図3は、光センシング部20Aの構成を示す概略図である。図2および図3に示すように、光センシング部20Aは、第1照射部(第1の照射部、第2の照射部)21と、第1受光部(反射光受光部)31と、第2受光部32(透過光受光部)と、標準反射板40とを備えている。
第1照射部21は、1つの光源21aと、光源21aを収納する筐体21bとを備えている。
光源21aは、半導体発光素子(LED:Light Emitting Diode)からなる。光源21aが照射(発光)する光の波長は、特に限定されるものではないが、800nm以上1100nm以下であることが好ましい。光源21aが照射する光の波長が1100nmよりも大きい場合、高価な半導体発光素子を使用する必要があるため好ましくない。また、光源21aが照射する光の波長が800nmよりも小さい場合、(1)用紙Pに含まれる水分による光の吸収が小さくなる点、および(2)可視光領域であるため用紙Pが色のついた用紙である場合において用紙Pの色によって光の透過および反射が影響されてしまい、後述する用紙Pの紙種の判別の精度が低下する点により好ましくない。なお、第1照射部21(光源21a)が照射する光の波長および強度は、複写機1Aの構成や測定する用紙Pの紙種などに応じて適宜選択される。
図3に示すように、光源21aは、筐体21bの外面よりも筐体21bの内部に配置されている。これにより、第1照射部21(光源21a)から照射された光が後述する第1受光部31に直接受光されることを防ぐことができるようになっている。
なお、本実施形態では、第1照射部21の光源21aとしてLEDを備える構成であるが、これに限られない。本発明の一態様の照射部の光源は、用紙Pの判別や含水率・坪量の算出が可能な波長の光を照射できる光源であればよく、例えば、ハロゲンランプや蛍光体を備える構成であってもよい。ハロゲンランプや蛍光体のように発光する光の波長が一定の範囲を有する光源の場合は、その光には複数の波長が含まれる。そこで、光源としてハロゲンランプや蛍光体を備える構成である場合においても、光源に所定の光の波長の光を透過させる波長フィルタを備えさせ、照射部が波長の半値幅の小さい光を照射することが好ましい。
第1受光部31は、図3に示すように、1つの受光素子31aと、受光素子31aを収納する筐体31bとを備えている。第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。
受光素子31aは、フォトダイオードにてなっている。第1受光部31は、受光素子31aにて受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値を増幅回路(不図示)により増幅した後、AD(Analog-Digital)コンバータ(不図示)によりデジタル信号に変換し、記憶部50に出力する。受光素子31aは、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長を含む波長範囲の光を検知するように選定される。
図3に示すように、受光素子31aは、筐体31bの外面よりも筐体31bの内部に配置されている。これにより、第1照射部21(光源21a)から照射された光が第1受光部31に直接受光されることを防ぐことができるようになっている。
なお、本実施形態における受光素子31aは、フォトダイオードにてなっているが、本発明の複写機はこれに限られない。すなわち、本発明の複写機における第1受光部31の受光素子は、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード、または光電子倍増管であってもよい。ただし、安価でスペースをとらないため、第1受光部31の受光素子はフォトダイオードにてなっていることが好ましい。
第2受光部32は、図3に示すように、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられている。第2受光部32は、1つの受光素子32aと、受光素子32aを収納する筐体32bとを備えている。第2受光部32の構成は、第1受光部31の構成と同様であるため、説明を省略する。第2受光部32は、受光素子にて受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値を増幅回路(不図示)により増幅した後、AD(Analog-Digital)コンバータ(不図示)によりデジタル信号に変換し、記憶部50に出力する。
本実施形態における第2受光部32は、第1照射部21から用紙Pの表面に対して垂直に照射され、用紙Pを透過した光を受光する。ただし、本発明の一態様における第2受光部32は、第1照射部21から用紙Pの表面に対して垂直ではない角度で照射され、用紙Pを透過した光を受光する態様であってもよい。
標準反射板40は、第1照射部21と標準反射板40との間に用紙Pが無い状態において第1照射部21から照射された光を、第1受光部31に反射させるための反射板である。本実施形態における複写機1Aでは、標準反射板40は、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられている。ただし、本発明の複写機では、第1照射部21が設けられる箇所はこれに限られない。第1照射部21が設けられる箇所は、第1照射部21から照射され、標準反射板40に反射された光が遮られることなく直接、第1受光部31に受光される箇所であればよい。標準反射板40は、反射率の高い部材にてなっており、本実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にてなっている。第1照射部21から照射され、標準反射板40の表面に反射し、第1受光部31によって受光された光の強度は、後述する用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出において、参照用データとして用いられる。
記憶部50は、複写機1Aにおける印刷に必要な情報を記憶する。例えば、記憶部50は、スキャナー部2にて読み取った画像データを一時的に記憶するための領域、後述する制御部60Aの各部が実行する各種のプログラム、該プログラムにおいて使用されるデータを記憶するための領域などを備えている。また、記憶部50は、ユーザが設定した条件に応じて変更される、画像形成部10の各要素に印加・供給される電圧・電流などの複写機1Aの内部の制御データや、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、用紙Pの坪量の算出に使用される各種式を記憶するための領域を備えている。
制御部60Aは、複写機1Aの各部の動作を制御する。また、制御部60Aは、図2に示すように、画像処理部61と、紙種判別部(演算部)62Aと、含水率算出部(演算部)63Aと、坪量算出部(演算部)64Aと、画像形成条件設定部(設定部)65とを備えている。
画像処理部61は、スキャナー部2において読み取った画像データ、またはスキャナー部2において読み取られ記憶部50に記憶されている画像データに対して画像処理を施す。画像処理部61は、画像処理を施した画像データを画像形成部10へ出力する。
紙種判別部62A、含水率算出部63Aおよび坪量算出部64Aは、光センシング部20Aが測定した光の強度に基づいて、それぞれ用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出を行う。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
画像形成条件設定部65は、紙種判別部62Aが判別した用紙Pの紙種、含水率算出部63Aが算出した用紙Pの表面の含水率、および坪量算出部64Aが算出した用紙Pの坪量の少なくとも1つに基づいて用紙Pに対する画像形成条件を設定する。画像形成条件設定部65による画像形成条件の設定方法の詳細については後述する。
(複写機1Aの印刷動作)
次に、複写機1Aの印刷動作(画像形成方法)について、図4を参照しながら説明する。ここでは、複写機1Aを用いて同一の用紙Pに対して両面印刷を行う動作について説明する。図4は、複写機1Aを用いて用紙Pに対して両面印刷を行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する動作は、特に断らない限り制御部60Aによって制御される。また、以下では、用紙Pの一方の面を第1面、他方の面を第2面として説明する。
図4に示すように、ユーザから印刷要求(画像形成要求)がなされると(S1)、複写機1Aは、ユーザによって指定された、印刷枚数、印刷倍率、用紙Pのサイズ、片面/両面印刷などの印刷条件の設定を行う(S2)。
次に、ユーザにより原稿がスキャナー部2の原稿トレイに載置される(S3)。なお、本工程は、ユーザからの印刷要求がなされる前(すなわち、ステップS1の前)に行われてもよい。
次に、スキャナー部2が原稿データ(画像データ)の読み取りを行う(S4)。ここでは、1枚の原稿の両面(表面および裏面)の画像データを読み込む動作について説明する。画像データを読み込む動作では、スキャナー部2が原稿の表面の画像データを読み込む。読み込まれた表面の画像データは、記憶部50に送信され、記憶部50に記憶される。次に、スキャナー部2が原稿の裏面の画像データを読み込む。読み込まれた裏面の画像データは、記憶部50に送信されることなく、画像処理部61に送られる。画像処理部61に送られた原稿の裏面の画像データは、画像処理部61によって画像処理され画像形成部10のレーザースキャニングユニット13に送信され、用紙Pの第1面の印刷に用いられる。続いて、記憶部50に記憶された原稿の表面の画像データが画像処理部61に送られる。画像処理部61に送られた原稿の表面の画像データは、画像処理部61によって画像処理され画像形成部10のレーザースキャニングユニット13に送信され、用紙Pの第2面の印刷に用いられる。
次に、制御部60Aが、全ての原稿の画像データを読み取ったかを判断する(S5)。読み取るべき原稿がまだ残っている場合(S5でNO)、次の原稿の画像データを読み取る(すなわち、ステップS4を繰り返す)。
一方、全ての原稿の画像データを読み取りが完了した場合(S5でYES)、複写機1Aが用紙Pに印刷を行う(S6、印刷処理)。複写機1Aによる用紙Pへの印刷処理(S6)の詳細については、後述する。
次に、制御部60Aがユーザにより要求された印刷処理が完了しているか否かの判定を行う(S7)。要求された印刷が完了していない場合(S7でNO)、具体的には、1つの原稿に対して複数枚の印刷要求がある場合に要求枚数の印刷を行っていない場合、または他の原稿に対する印刷が完了していない場合、ステップS6を繰り返す。一方、要求された印刷が完了している場合(S7でYES)、すべての印刷処理が完了し、複写機1Aは待機状態となる。
なお、全ての原稿の読み取りが完了する前に(すなわち、ステップS5が完了する前に)、印刷処理(S6)を開始してもよい。一般に、複写機では印刷速度の高速化への要求が極めて厳しく、1秒でも短縮させることが好ましい。そのため、原稿の読み取り完了を待たずに印刷処理を始めることが必須となっている。また、ユーザが印刷要求をした直後に(すなわち、ステップS1が行われた直後に)、印刷処理(S6)を開始してもよい。また、原稿読み取り処理(S4)と印刷処理(S6)とを並行して行ってもよい。これにより、印刷処理を短時間で行うことができる。
<複写機1Aの印刷処理>
次に、複写機1Aによる用紙Pへの印刷処理(S6)の詳細について図5を参照しながら説明する。図5は、複写機1Aにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、複写機1Aによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、後述する用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出のために使用される参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S11)。
具体的には、初めに、第1照射部21と第2受光部32との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aを消灯させた状態において、第1受光部31および第2受光部32が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31および第2受光部32は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1および電気信号値Vb2をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1を記憶部50に出力する。また、同時に、第2受光部32が光源21aから照射された光を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr2を記憶部50に出力する。
なお、本実施形態では、第1受光部31が光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を用いて参照用データとしての電気信号値Vr1を取得していたが、これに限られない。本発明の一態様では、標準反射板40を用いずに、複写機1Aの内部の部材に反射された光を用いて参照用データとしての電気信号値を取得してもよい。標準反射板40は、光を反射しやすい部材が使われているので第1受光部31における受光量を多く得られるという利点があるが、複写機1Aの内部の部材からに反射された光を用いて後述する吸光度を算出することができ、複写機1Aの部品数を減らすことができる。
また、本実施形態では、ユーザからの印刷要求がなされた後にキャリブレーションを行っているがこれに限られるものではない。本発明の一態様では、1日に1回(例えば、早朝など)キャリブレーションを行い、当該キャリブレーションにおいて出力された電気信号値Vb1、電気信号値Vb2、電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を同日の印刷処理において使用する態様であってもよい。特に、工場など温度や湿度が管理されており、温度や湿度の変化が小さい環境においては、1日に1回のキャリブレーションでも良好に後述する用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出を行うことができる。
次に、図5に示すように、ピックアップローラ4が給紙カセット3に収められている用紙Pを1枚取り出し、主搬送路R1へ搬送する(S12)。
次に、用紙Pが主搬送路R1を搬送されると、レジスト前検知部6が用紙Pの通過を検知し、検知信号をアイドルローラ5に送信する。アイドルローラ5は、レジスト前検知部6から前記検知信号を受信すると、主搬送路R1を搬送されてきた用紙Pを一時的に滞留させる(S13)。
次に、光センシング部20Aが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S14、第1測定工程、第2測定工程)。具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1を記憶部50に出力する。また、同時に、第2受光部32が光源21aから照射され、用紙Pを透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp2を記憶部50に出力する。
次に、紙種判別部62A、含水率算出部63Aおよび坪量算出部64Aが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う(S15、演算工程)。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
次に、画像形成条件設定部65が、ユーザによって指定された印刷条件、紙種判別部62Aにより判別された用紙Pの紙種、含水率算出部63Aにより算出された用紙Pの表面の含水率および坪量算出部64Aにより算出された用紙Pの坪量に基づいて、用紙Pに対する画像形成条件(具体的には、転写条件(転写装置15に印加する電圧、転写装置15に供給する電流値)、および定着条件(加圧ローラ16aが用紙Pを加圧する圧力、熱源(ハロゲンランプ)を駆動する電流、および、定着時の用紙Pの搬送速度))を設定する(S16、設定工程)。画像形成条件設定部65による画像形成条件の設定のさらなる詳細については後述する。画像形成条件設定部65により設定された画像形成条件は、転写装置15および定着部16にそれぞれ出力される。
次に、感光体ドラム11の表面に対する画像データの書き込みを開始する(S17)。具体的には、まず、帯電器12により帯電した感光体ドラム11の表面に対して、レーザースキャニングユニット13が画像処理部61によって画像処理された画像データの静電潜像の形成を行う。次に、現像装置14が該静電潜像にトナー剤を付着させてトナー像を現像する動作を開始する。感光体ドラム11の表面に対する画像データの書き込みを開始した後、該画像データに関する書き込み処理が引き続き行われる。
次に、感光体ドラム11の表面に対する画像データの書き込みが開始されると、アイドルローラ5が用紙Pの滞留を所定のタイミングで解除する(S18)。すなわち、感光体ドラム11に現像されたトナー像が転写装置15によって用紙Pの所定の位置に転写されるように、アイドルローラ5による用紙Pの滞留を解除する。
次に、転写装置15が感光体ドラム11に現像されたトナー像を用紙Pの第1面に転写する(S19)。ここで、転写装置15に印加される転写電圧および転写装置15に供給される転写電流は、画像形成条件設定部65により設定された転写電圧および転写電流である。
次に、定着部16が、転写装置15により用紙Pの第1面に転写されたトナー像を用紙Pに定着させる(S20)。加圧ローラ16aが用紙Pを加圧する圧力、熱源(ハロゲンランプ)を駆動する電流、および定着時の用紙Pの搬送速度は、画像形成条件設定部65によって設定されたものである。これにより、用紙Pの第1面への印刷が完了する。
次に、制御部60Aは、用紙Pの第2面に対して印刷したかどうかを判定する(S21)。
第2面への印刷が完了していない場合(S21でNO)、第1面に印刷処理された用紙Pは、排紙ローラ7の回転により、主搬送路R1上を搬送され、排紙ローラ7に到達する。用紙Pが排紙ローラ7に達すると、用紙Pは、排出方向における後端部が排紙ローラ7に挟まれた状態で一旦滞留させられる。次に、制御部60Aが分岐点を副搬送路R2側に切り替える。次に、制御部60Aが排紙ローラ7を先ほどとは逆に回転させることにより、用紙Pを副搬送路R2に搬送する。これにより、用紙Pは、直前に画像形成部10を通過したときとは、第1面と第2面とが反対になっており、かつ、上下が逆になった状態で、主搬送路R1におけるピックアップローラ4と光センシング部20Aとの間に搬送される。そして、用紙Pの第2面について、ステップS13〜S20を行い、第2面に対する印刷を行う。
第2面への印刷が完了した場合(S21でYES)、分岐爪を主搬送路R1側に切り替え、定着部16から排紙ローラ7に用紙Pを搬送する。なお、分岐爪の切り替えは、用紙Pが副搬送路R2に搬送された後であれば、いずれのタイミングで行ってもよい。次に、用紙Pが排紙ローラ7を通過し、排紙トレイに排出される(S22)。以上により、複写機1Aによる1枚の用紙Pへの印刷処理(S6)が完了する。
<用紙Pの紙種の判別>
次に、紙種判別部62Aによる用紙Pの紙種の判別方法(図5におけるステップS15)について、図6および図7を参照しながら説明する。
まず、紙種判別部62Aは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散された光における吸光度である第1反射吸光度Ar1を算出する。
具体的には、まず、紙種判別部62Aは、光源21aから照射され標準反射板40に反射され第1受光部31に受光された光の強度である第1参照用受光強度V1r0を算出する。なお、受光強度とは、光源が点灯している場合に受光部が受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値と、光源が消灯している場合に受光部が受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値との差である。具体的には、紙種判別部62Aは、ステップS11において測定した電気信号値Vb1および電気信号値Vr1を記憶部50から読み出し、下記の式(1)を用いて第1参照用受光強度V1r0を算出する。紙種判別部62Aは、算出した第1参照用受光強度V1r0を記憶部50に出力する。
V1r0=Vr1−Vb1 …(1)。
次に、紙種判別部62Aは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散され第1受光部31に受光された光の強度である第1反射受光強度V1rを算出する。具体的には、紙種判別部62Aは、ステップS11において測定した電気信号値Vb1およびステップS14において測定した電気信号値Vp1を記憶部50から読み出し、下記の式(2)を用いて第1反射受光強度V1rを算出する。紙種判別部62Aは、算出した第1反射受光強度V1rを記憶部50に出力する。
V1r=Vp1−Vb1 …(2)。
次に、紙種判別部62Aは、第1反射吸光度Ar1を算出する。具体的には、紙種判別部62Aは、記憶部50から第1参照用受光強度V1r0および第1反射受光強度V1rを読み出し、下記の式(3)に示すランベルト−ベール則を適用することにより第1反射吸光度Ar1を算出する。
Ar1=log(V1r0/V1r) …(3)。
上記logは、常用対数(底を10とする対数)である。なお、本実施形態では、ランベルト−ベール則を用いて吸光度を算出しているが、本発明の画像形成装置はこれに限られず、例えば、クベルカ−ムンク則を用いて吸光度を算出してもよい。
次に、紙種判別部62Aは、光源21aから照射され第2受光部32に直接受光されたた光の強度である第2参照用受光強度V2r0を算出する。具体的には、紙種判別部62Aは、ステップS11において測定した電気信号値Vb2および電気信号値Vr2を記憶部50から読み出し、下記の式(4)を用いて第2参照用受光強度V2r0を算出する。紙種判別部62Aは、算出した第2参照用受光強度V2r0を記憶部50に出力する。
V2r0=Vr2−Vb2 …(4)。
次に、紙種判別部62Aは、光源21aから照射され用紙Pを透過し第2受光部32に受光された光の強度である第1透過受光強度V1tを算出する。具体的には、紙種判別部62Aは、ステップS11において測定した電気信号値Vb2およびステップS14において測定した電気信号値Vp2を記憶部50から読み出し、下記の式(5)を用いて第1透過受光強度V1tを算出する。紙種判別部62Aは、算出した第1透過受光強度V1tを記憶部50に出力する。
V1t=Vp2−Vb2 …(5)。
次に、紙種判別部62Aは、第1透過吸光度At1を算出する。具体的には、紙種判別部62Aは、記憶部50から第2参照用受光強度V2r0および第1透過受光強度V1tを読み出し、下記の式(6)に示すランベルト−ベール則を適用することにより第1透過吸光度At1を算出する。
At1=log(V2r0/V1t) …(6)。
次に、紙種判別部62Aは、算出した第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を用いて、用紙Pの紙種を判別する。具体的には、予め導出され記憶部50に記憶されている、紙種の特徴を表す指標である紙種度を算出する紙種度算出式に、第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの紙種を判別する。
上記の紙種度は、類似性(測定されたサンプル同士の類似度合い)、分離性(測定されたサンプル同士の特徴の隔たり度合い)、または確率(測定されたサンプルの特徴の分布を推測して、その分布が他のサンプルの分布の許容範囲内にあるかまたは十分区別できるかを確率的に判別する、すなわち特徴が近いあるいは同じとみなせるかの度合い)のいずれかを用いる事ができる。なお、紙種度は紙種の種類に応じて適宜選ぶことができる。
上記の紙種度算出式の導出方法は、例えば、サポートベクターマシーン、パターン認識、クラスター分析、マハラノビスの距離による分析、SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)判別分析、または正準判別分析法などを挙げることができる。いずれの紙種度算出式の導出方法を用いるかは、判別する紙種の種類、第1照射部21が照射する光の波長、複写機1Aの搬送路の構成などに応じて適宜選択される。
本実施形態における紙種度算出式は、下記の式(7)である。
紙種度=A1+A2×Ar1+A3×At1 …(7)。
ここで、係数A1〜A3は、予め多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に正準判別分析によって導出した係数である。すなわち、上記紙種度算出式は、算出した第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1に重み付けを行うことにより紙種度を算出する算出式である。この重みづけは、光センシング部20Aにおける測定における、光の波長、反射・透過の角度、および光路長と、紙種との相関の強さを示している。
次に、紙種判別部62Aは、算出した紙種度を用いて用紙Pの紙種を判別する。図6は、用紙Pの紙種度と、用紙Pの紙種との対応関係を示す表である。紙種判別部62Aは、図6に示す表を用いて、算出した紙種度がどの紙種の範囲であるかを判定することによって、用紙Pの紙種を判別する。図6に示す表は、様々な紙種について様々な含水率である場合における紙種度を予め測定して作成され、記憶部50に記憶されている。
なお、本実施形態では、図6に示す表を用いて1つの指標を使って用紙Pの紙種を判別しているが、本発明の画像形成装置はこれに限られない。本発明の一態様では、複数の指標を算出して用紙Pの紙種を判別してもよい。図7は、2つの指標(指標Aおよび指標B)を用いて用紙Pの紙種を判別する場合に使用するグラフである。本発明の一態様では、紙種判別部62Aは、図7に示すように、例えば、指標Aおよび指標Bによって決まる点が白い丸のようにプロットされる場合には用紙Pが紙種αであると判別する。このように、複数の指標を用いて用紙Pの紙種を判別することにより、判別精度をさらに向上させることができる。なお、図7に示すグラフでは2次元プロットを行っているが、指標を3つ使って3次元プロットを行ってもよい。
図6に示す表を用いて1つの指標から紙種の判別をするか、図7に示すグラフを用いて複数の指標から紙種の判別をするかは、画像形成装置が扱うと想定される紙種の種類や、ユーザがどの程度厳密に判別を行いたいかによって適宜決定される。また、図6に示す表における基準値、および、図7に示すグラフにおける基準領域も同様に適宜決定される。
ここで、用紙Pの紙種によっては、用紙Pの表面に対する水分子の付着の状態、または用紙Pの内部における水分子の状態が異なることが知られている。そこで、本実施形態における紙種判別部62Aは、用紙Pによって反射または拡散された光における第1反射吸光度Ar1と、用紙Pを透過した光における第1透過吸光度At1とに基づいて、用紙Pの紙種を判別している。ここで、用紙Pの表面に反射された光は、用紙Pの表面に付着する水分子の状態の情報を含んでおり、用紙Pに拡散された光は、用紙Pの内部の情報(例えば、用紙Pの内部における水分子の状態の情報)を含んでいる。また、用紙Pを透過した光は、用紙Pの厚さおよび坪量の情報を含んでいる。したがって、紙種判別部62Aは、第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を用いることにより、用紙Pの含水率、内部の情報、厚みおよび坪量を加味して紙種を判別することができる。その結果、用紙Pの紙種を精度良く判別することができる。
従来では、用紙Pを透過した光の強度、または用紙Pによって反射・拡散された光の強度から紙種を判別していた。これらの光強度は紙種によって重要性が変わるため、用紙Pの判別の精度が低かった。これに対して、本実施形態における複写機1Aでは、上記紙種度算出式を用いることにより、用紙Pを透過した光の強度と、用紙Pによって反射・拡散された光の強度とを結び付けて総合的な「紙種度」という指標を作成することにより、判別精度を向上させている。
例えば、従来では、普通紙とOHP紙とのように明らかに材質や光沢度が異なるものしか紙種の判別を行うことができなかったが、本実施形態の複写機1Aでは、図6に示すように、普通紙と上質紙とのように材質の近い用紙についても紙種を判別することができる。
<用紙Pの含水率の算出>
次に、含水率算出部63Aによる用紙Pの表面の含水率の算出方法(図5におけるステップS15)について説明する。
まず、含水率算出部63Aは、紙種判別部62Aが算出した第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を記憶部50から読み出す。
次に、含水率算出部63Aは、予め導出され記憶部50に記憶されている含水率算出式に、第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの表面の含水率を算出する。
本実施形態における含水率算出式は、下記の式(8)である。
含水率=B1+B2×Ar1+B3×At1 …(8)。
ここで、係数B1〜B3は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Aの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。係数B1〜B3は、多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に重回帰分析により求められている。
以上のように、含水率算出部63Aは、用紙Pによって反射または拡散された光における第1反射吸光度Ar1と、用紙Pを透過した光における第1透過吸光度At1とに基づいて、用紙Pの表面の含水率を算出している。その結果、用紙Pの様々な情報(例えば、内部の情報、厚み、坪量など)を加味して用紙Pの表面の含水率を算出することができる。その結果、用紙Pの表面の含水率を精度良く算出することができる。
従来では、予め紙種ごとに透過光量の減衰量や反射光の角度依存性を計測したデータを用意し、当該データと測定した値と比較していた。そのため、予めわかっている紙種の含水量しか算出することができなかった。これに対して、本実施形態では、上記の式(8)を用いることにより、予めデータを用意していない紙種であっても、用紙Pの表面の含水率を算出することができる。
また、吸光度は、測定対象物に含まれる成分量とほぼ比例することが知られている。その結果、用紙Pの含水率を式(8)における係数B1〜B3に容易に反映させることができる。これにより、用紙Pの表面の含水率を精度良く算出することができる。
また、本実施形態では、用紙Pの紙種を判別した後に、用紙Pの表面の含水率を算出する。これにより、紙種判別部62Aにより判別された紙種に対応した含水率算出式を用いることができるので、用紙Pの表面の含水率をさらに精度良く算出することができる。なお、本発明の一態様では、含水率算出部63Aは、紙種判別部62Aにより判別された紙種を反映せずに用紙Pの表面の含水率を算出してもよい。
なお、吸光度ではなく、透過率または反射率を用いて用紙Pの表面の含水率を算出することもできる。しかしながら、透過率や反射率は測定対象物に含まれる成分量とは比例しないので、紙種ごとに違う成分の情報が反映されにくい。そのため、吸光度を用いた算出に比べて精度が低下し、また、含水率を算出するための式が煩雑な式になってしまう。
また、複写機1Aでは、用紙Pの表面の含水率を算出する際に、重回帰分析により含水率算出式を求めているが、本発明の画像形成装置はこれに限られない。すなわち、本発明の一態様の画像形成装置における含水率算出式は、複数の吸光度を用いて用紙Pの表面の含水率を算出できる多変量解析手法であれば、他の解析手法を用いて求めてもよい。例えば、解析手法としてPLS(Partial Linear Square)回帰分析などの他の解析手法を用いて含水率算出式を求めてもよい。
<用紙Pの坪量の算出>
次に、坪量算出部64Aによる用紙Pの坪量の算出方法(図5におけるステップS15)について説明する。
まず、坪量算出部64Aは、紙種判別部62Aが算出した第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を記憶部50から読み出す。
次に、坪量算出部64Aは、予め導出され記憶部50に記憶されている坪量算出式に、第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの坪量を算出する。
本実施形態における坪量算出式は、下記の式(9)である。
坪量=C1+C2×Ar1+C3×At1 …(9)。
ここで、係数C1〜C3は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Aの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。係数C1〜C3は、多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に重回帰分析により求められている。
以上のように、坪量算出部64Aは、用紙Pによって反射または拡散された光における第1反射吸光度Ar1と、用紙Pを透過した光における第1透過吸光度At1とに基づいて、用紙Pの坪量を算出している。その結果、用紙Pの様々な情報(例えば、含水率、内部の情報、厚みなど)を加味して用紙Pの坪量を算出することができる。その結果、用紙Pの坪量を精度良く算出することができる。
従来では、予め紙種ごとに透過光量の減衰量や反射光の角度依存性を計測したデータを用意し、当該データと測定した値と比較していた。そのため、予めわかっている紙種の坪量しか算出することができなかった。これに対して、本実施形態では、上記の式(9)を用いることにより、予めデータを用意していない紙種であっても、用紙Pの坪量を算出することができる。
また、吸光度は、測定対象物に含まれる成分量とほぼ比例することが知られており、用紙Pに含有されている成分の重さは坪量に影響する。その結果、用紙Pに含まれる様々な成分の成分量を式(9)における係数C1〜C3に容易に反映させることができる。これにより、用紙Pの坪量を精度良く算出することができる。
また、本実施形態では、用紙Pの紙種を判別した後に、用紙Pの坪量を算出する。これにより、紙種判別部62Aにより判別された紙種に対応した坪量算出式を用いることができるので、用紙Pの坪量をさらに精度良く算出することができる。なお、本発明の一態様では、坪量算出部64Aは、紙種判別部62Aにより判別された紙種を反映せずに用紙Pの坪量を算出してもよい。
なお、吸光度ではなく、透過率または反射率を用いて用紙Pの坪量を算出することもできる。しかしながら、透過率や反射率は測定対象物に含まれる成分量とは比例しないので、紙種ごとに違う成分の情報が反映されにくい。そのため、吸光度を用いた算出に比べて精度が低下し、また、坪量を算出するための式が煩雑な式になってしまう。
<画像形成条件の設定>
次に、画像形成条件設定部65による画像形成条件の設定方法(図5におけるステップS16)について説明する。
画像形成条件設定部65による画像形成条件の設定では、画像形成条件設定部65は、ユーザによって指定された印刷条件に加えて、紙種判別部62Aにより判別された用紙Pの紙種、含水率算出部63Aにより算出された用紙Pの表面の含水率、および坪量算出部64Aにより算出された用紙Pの坪量に基づいて、上記画像形成条件を設定する。
より詳細には、予め、紙種判別部62Aにより判別された用紙Pの紙種ごと、含水率算出部63Aにより算出された用紙Pの表面の含水率の所定の範囲ごと、および坪量算出部64Aにより算出された用紙Pの坪量の所定の範囲ごとに、画像形成条件が予め設定されており記憶部50に記憶されている。画像形成条件設定部65は、予め設定されている画像形成条件と、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量に基づいて、画像形成条件を設定する。
複写機1Aでは、用紙Pの表面の含水率が精度良く算出されているので、画像形成条件設定部65は、例えば、用紙Pの第1面の表面の含水率の1%刻みの範囲で画像形成条件を設定することもできる。
なお、本発明の一態様の画像形成装置では、画像形成条件設定部65は、転写装置15に印加される電圧、転写装置15に供給される電流、加圧ローラ16aが用紙Pを加圧する圧力、熱源(ハロゲンランプ)を駆動する電流、および定着時の用紙Pの搬送速度の少なくとも1つの値を設定するようにしてもよい。画像形成条件設定部65によって、設定された転写条件および定着条件は、画像形成部10(より詳細には、転写装置15および定着部16)に出力される。
以上のように、本実施形態における複写機1Aでは、用紙Pによって反射または拡散された光の強度と、用紙Pを透過した光の強度とに基づいて、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を判別・算出している。その結果、用紙Pの様々な情報(例えば、内部の情報、厚み、坪量など)を加味して用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を判別・算出することができる。その結果、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を精度良く算出・判別することができる。したがって、適切な画像形成条件を設定することができる。
なお、本実施形態では、画像形成条件設定部65は、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量に基づいて画像形成条件を設定していたが、本発明の画像形成装置はこれに限られない。すなわち、本発明の一態様における画像形成装置では、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量の少なくとも1つに基づいて画像形成条件を設定する態様であってもよい。
また、本実施形態における光センシング部20Aでは、第1照射部21が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを照射する。これにより、光センシング部20Aにおける照射部を1つにすることができるため(すなわち、照射部を2つ設ける必要が無いため)、光センシング部20A(換言すれば、複写機1A)の構成を簡素化することができる。
また、本実施形態における複写機1Aでは、アイドルローラ5によって一時的に滞留された用紙Pに対して、光センシング部20Aが用紙Pに対する測定を行う構成である。これにより、印刷に要する時間を短縮させることができる。
また、本実施形態では、光源21aが照射する光の波長が800〜1100nmであるため、光源21aが照射する光が用紙Pの内部に浸入することができかつ水分に吸収されやすい。これにより、用紙Pに含まれる水分の情報をより多く得ることができる。したがって、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を精度良く判別・算出できる。
なお、本発明の一態様における画像形成装置では、温度センサをさらに設け、温度センサによって測定した温度によって上記のキャリブレーションにおける各電気信号値、紙種度算出式、含水率算出式、および坪量算出を補正する態様であってもよい。これにより、キャリブレーションの頻度を少なくすることができる。
また、本実施形態では、用紙Pの両面に印刷する態様について説明したが、本発明の一態様では、用紙Pの片面のみに印刷する態様であってもよい。
また、一般的に、紙(用紙P)は、中央部にくらべて端部が水分をより含有しやすいという性質を有している。すなわち、用紙Pの含水率は、場所によって分布している。そこで、本発明の一態様の複写機1Aでは、用紙Pの含水率の分布を考慮して複数箇所に光を照射してもよい。図8は、光センシング部20Aによる用紙Pに対する光の照射箇所を示す用紙Pの上面図である。図8に示すように、光センシング部20Aの第1照射部21は、用紙Pに対して2箇所、光を照射する。具体的には、まず、第1照射部21は、アイドルローラ5によって滞留している用紙Pに対して光を照射して一度目の測定を行う。次に、アイドルローラ5によって用紙Pを所定量搬送させ、再び用紙Pを滞留させる。そして、第1照射部21は、一度目に照射した位置とは異なる位置において用紙Pに対して光を照射して二度目の測定を行う。一度目の照射位置と二度目の照射位置は、一方が用紙Pの中央部、他方が用紙Pの端部となるようにする。すなわち、光センシング部20Aは、用紙Pの中央部と端部とにおいて測定を行う。これにより、紙種判別部62Aは、例えば、一度目の測定結果と二度目の測定結果との平均値を用いて第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1を算出することができるので、第1反射吸光度Ar1および第1透過吸光度At1における用紙Pの表面の含水率の分布の影響を小さくすることができる。なお、光センシング部20Aによる用紙Pに対する光の照射箇所は、3箇所以上であってもよい。
また、本実施形態では、一枚ごとに用紙Pに対する測定と印刷処理条件の設定とを行っているが、これに限るものではない。本発明の一態様では、一度に大量に印刷する際などは何枚かおきに用紙Pに対する測定と印刷処理条件の設定とを行ってもよい。
また、本実施形態では、画像形成装置として複写機1Aを説明したが、本発明の画像形成装置は複写機に限られない。画像形成装置は、例えば、商用印刷機、プリンタ、ファクシミリ装置などであってもよい。画像形成装置が、商用印刷機やプリンタやファクシミリ装置である場合には、原稿読み取り処理(図4におけるステップS4)に代わって、画像形成装置はネットワークを介してデータとして画像データを受け取る処理を行うことになる。
また、本実施形態の複写機1Aは、感光体ドラムを1つ備える構成であった。しかし、本発明の画像形成装置は、これに限られない。本発明の一態様の画像形成装置は、用紙Pに対してカラー印刷を行うことができる画像形成装置であってもよい。
<変形例1>
次に、実施形態1の変形例としての紙種判別部62Aについて図面を参照しながら説明する。
図9は、本変形例における紙種判別部62Aによる用紙Pの紙種の判別を行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
実施形態1における紙種判別部62Aは、1つの紙種度算出式を用いて、用紙Pが複数の紙種のうちどの紙種であるかを判別していた。これに対して、本変形例における紙種判別部62Aは、複数の紙種度算出式を用いて、用紙Pの紙種を段階的に判別する。
本変形例では、紙種判別部62Aは、6つの紙種度算出式F1〜F6を用いる。紙種度算出式F1〜F6は、予め記憶部50に記憶されている。紙種度算出式F1〜F6は、式(3)における係数A1〜A3が異なっている。紙種度算出式F1は、用紙Pが坪量300g/m2以上の紙種であるかを判別するための算出式である。紙種度算出式F2は、用紙Pが坪量60g/m2未満の紙種であるかを判別するための算出式である。紙種度算出式F3は、用紙Pが坪量200g/m2以上300g/m2未満の紙種であるかを判別するための算出式である。紙種度算出式F4は、用紙Pが坪量100g/m2以上200g/m2未満の紙種であるかを判別するための算出式である。紙種度算出式F5は、用紙Pが再生紙であるかを判別するための算出式である。紙種度算出式F6は、用紙Pが普通紙であるかを判別するための算出式である。
本変形例における紙種判別部62Aは、図9に示すように、まず、紙種度算出式F1を用いて紙種度を算出し、算出した紙種度が所定の範囲であるかどうかを判定することにより、用紙Pが坪量300g/m2以上の紙種であるかを判別する(S31)。算出した紙種度が所定の範囲である場合(S31でYES)、用紙Pの種別を用紙Pが坪量300g/m2以上の紙種であると判別する。
一方、算出した紙種度が所定の範囲でない場合(S31でNO)、紙種判別部62Aは、紙種度算出式F2を用いて紙種度を算出し、算出した紙種度が所定の範囲であるかどうかを判定することにより、用紙Pが坪量60g/m2未満の紙種であるかを判別する(S32)。
以降では同様に、紙種判別部62Aは、用紙Pの坪量が200g/m2以上300g/m2未満であるかどうかを判定するための紙種度算出式F3(S33)、用紙Pの坪量が100g/m2以上200g/m2未満であるかどうかを判定するための紙種度算出式F4(S34)、用紙Pが再生紙であるかどうかを判定するための紙種度算出式F5(S35)、および用紙が普通紙であるかどうかを判定するための紙種度算出式F6(S36)を用いて、ステップS31と同様の処理を行う。
また、ステップS36において用紙Pが普通紙ではないと判定した場合、紙種判別部62Aは、用紙Pがいずれの紙種でもない「その他の紙種」であると判定する(S37)。なお、この場合、紙種判別部62Aは、用紙Pが複写機1Aでは使うことができない紙種であると判別してもよい。
坪量300g/m2以上などの極端な厚紙は、表面の平滑性が似た紙種が多く、他の紙種の特性と区別がしやすいため、判別が容易である。一方、再生紙は、様々な紙を混合してリサイクルして製造されているため、成分が多様であり、さらに厚さも普通紙に近く判別が難しい紙種である。そこで、本変形例における紙種判別部62Aは、特徴があり判別しやすい紙種から段階的に用紙Pの紙種を判別する。これにより、用紙Pの紙種を精度良く判別することができる。
<変形例2>
次に、実施形態1の変形例としての複写機1Bについて図面を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図10は、複写機1Bの要部の構成を示すブロック図である。図10に示すように、複写機1Bは、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aに代えて、光センシング部20Bを備えている。
図11は、光センシング部20Bの構成を示す概略図である。図10および図11に示すように、光センシング部20Bは、第1照射部(第1の照射部)21と、第2照射部(第2の照射部)22と、第1受光部(透過光受光部、反射光受光部)31とを備えている。
本変形例では、図11に示すように、第1照射部21から照射された光は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31によって受光される。
第2照射部22は、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられている。第2照射部22は、1つの光源22aと、光源22aを収納する筐体22bとを備えている。第2照射部22の構成は、第1照射部21の構成と同様であるため、説明を省略する。第2照射部22から照射された光は、用紙Pを透過して第1受光部31によって受光される。第2照射部22の光源22aが照射する光の波長は、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1受光部31は、図11に示すように、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光と、第2照射部22から照射され用紙Pを透過した光とを受光する。
次に、複写機1Bの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図12を参照しながら説明する。図12は、複写機1Bにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、複写機1Bによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S41)。
具体的には、初めに、第2照射部22と第1受光部31との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aおよび第2照射部22の光源22aを消灯させた状態において、第1受光部31が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1を記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1を記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源22aから照射された光を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr2を記憶部50に出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Bが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S44)。具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1を記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源22aから照射され、用紙Pを透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp2を記憶部50に出力する。
以降の処理(ステップS15〜S22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
以上のように、本変形例においても、用紙Pによって反射または拡散された光の強度と、用紙Pを透過した光の強度とに基づいて、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を判別・算出している。その結果、用紙Pの様々な情報(例えば、内部の情報、厚み、坪量など)を加味して用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を判別・算出することができる。その結果、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量を精度良く算出・判別することができる。したがって、適切な画像形成条件を設定することができる。
また、本実施形態における光センシング部20Bでは、第1受光部31が、用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを受光する。これにより、光センシング部20Bにおける受光部を1つにすることができるため(すなわち、受光部を2つ設ける必要が無いため)、光センシング部20Bの構成を簡素化することができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図13は、本実施形態における複写機1Cの要部の構成を示すブロック図である。図13に示すように、複写機1Cは、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aおよび制御部60Aに代えて、光センシング部20Cおよび制御部60Bを備えている。
図14は、光センシング部20Cの構成を示す概略図である。なお、図14では、簡略化のため、用紙Pに拡散された光の図示を省略している(以降の図面においても同様)。図13および図14に示すように、光センシング部20Cは、第1照射部(第1の照射部、第2の照射部)21と、第1受光部(第1反射光受光部)31と、第2受光部(第2反射光受光部)32と、第3受光部(透過光受光部)33とを備えている。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1受光部31と並んで配置されている。第2受光部32は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を、第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光する。
第3受光部33は、第1照射部21から照射され、用紙Pを透過した光を受光する。第3受光部33は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられている。第3受光部33は、1つの受光素子33aと、受光素子33aを収納する筐体33bとを備えている。第3受光部33の構成は、第1受光部31の構成と同様であるため、説明を省略する。
制御部60Bは、実施形態1の制御部60Aにおける紙種判別部62A、含水率算出部63A、および坪量算出部64Aに代えて、紙種判別部62B、含水率算出部63B、および坪量算出部64Bを備えている。
次に、複写機1Cの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図15を参照しながら説明する。図15は、複写機1Cにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15に示すように、複写機1Cによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S51)。
具体的には、初めに、第1照射部21と第3受光部33との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aを消灯させた状態において、第1受光部31、第2受光部32および第3受光部33が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31、第2受光部32および第3受光部33は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1、電気信号値Vb2および電気信号値Vb3をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第3受光部33が光源21aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr3を記憶部50に出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Cが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S54)。具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1および電気信号値Vp2を記憶部50に出力する。また、同時に、第3受光部33が光源21aから照射され用紙Pを透過した光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp3を記憶部50に出力する。
次に、紙種判別部62B、含水率算出部63Bおよび坪量算出部64Bが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う(S55)。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
以降の処理(ステップS16〜S22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
<用紙Pの紙種の判別>
次に、紙種判別部62Bによる用紙Pの紙種の判別方法について説明する。
まず、紙種判別部62Bは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散され、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第1反射吸光度Ar1および第2反射吸光度Ar2を算出する。第1反射吸光度Ar1および第2反射吸光度Ar2の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。ただし、実施形態1にて説明した算出方法を用いる際には、測定した各電気信号値の記号や添え字(Ar2のr2の部分など)を、実施形態1にて説明した算出方法における記号や添え字を本実施形態に対応したものに読み替えて算出する。前述の通り、吸光度はlog((用紙Pが無い時における光の強度−バックグラウンドの光の強度)/(用紙Pに対して光を照射した時の光の強度−バックグラウンドの光の強度))で算出されるものであり、この式に代入する光の強度の測定値は、同じ光源と受光素子との組み合わせ(バックグラウンドの光の強度の場合は同じ受光素子)によって測定したものである。したがって、この組み合わせに対応したものに添え字を読み変えて算出する。以降の各実施形態においても同様に、吸光度の算出においては各実施形態に対応した添え字に読み替えて算出するものとする。
次に、紙種判別部62Bは、光源21aから照射され用紙Pを透過し、第3受光部33に受光される光における吸光度である第1透過吸光度At1を算出する。第1透過吸光度At1の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Bは、予め導出され記憶部50に記憶されている紙種度算出式に、算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの紙種を判別する。
本実施形態における紙種度算出式は、下記の式(10)である。
紙種度=A4+A5×Ar1+A6×Ar2+A7×At1 …(10)。
ここで、係数A4〜A7は、予め多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に正準判別分析によって導出した係数である。
次に、紙種判別部62Bは、算出した紙種度がどの紙種の範囲であるかを判定することによって、用紙Pの紙種を判別する。
<用紙Pの含水率の算出>
次に、含水率算出部63Bによる用紙Pの表面の含水率の算出方法について説明する。
まず、含水率算出部63Bは、紙種判別部62Bが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2および第1透過吸光度At1を記憶部50から読み出す。
次に、含水率算出部63Bは、予め導出され記憶部50に記憶されている含水率算出式に、第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの表面の含水率を算出する。
本実施形態における含水率算出式は、下記の式(11)である。
含水率=B4+B5×Ar1+B6×Ar2+B7×At1 …(11)。
ここで、係数B4〜B7は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Cの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
<用紙Pの坪量の算出>
次に、坪量算出部64Bによる用紙Pの坪量の算出方法について説明する。
まず、坪量算出部64Bは、紙種判別部62Bが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2および第1透過吸光度At1を記憶部50から読み出す。
次に、坪量算出部64Bは、予め導出され記憶部50に記憶されている坪量算出式に、第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2および第1透過吸光度At1を適用することにより用紙Pの坪量を算出する。
本実施形態における坪量算出式は、下記の式(12)である。
坪量=C4+C5×Ar1+C6×Ar2+C7×At1 …(12)。
ここで、係数C4〜C7は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Cの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
以上のように、本実施形態における複写機1Cでは、第1受光部31および第2受光部32において、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を互いに異なる角度で受光する。そして、紙種判別部62B、含水率算出部63Bおよび坪量算出部64Bは、これらの測定結果を用いて用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
これにより、光センシング部20Cは、用紙Pの表面に対する水分子の付着の状態の情報、および用紙Pの内部における水分子の状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、紙種判別部62B、含水率算出部63Bおよび坪量算出部64Bは、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量をそれぞれさらに精度良く判別・算出できる。特に、用紙Pに反射された光には用紙Pの表面に対する水分子の付着の状態の情報が含まれているため、含水率算出部63Bによる用紙Pの表面の含水率の算出精度を向上させることができる。
また、本実施形態における光センシング部20Cでは、第1照射部21が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを照射する。これにより、光センシング部20Cにおける照射部を1つにすることができるため、光センシング部20Cの構成を簡素化することができる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図16は、本実施形態における複写機1Dの要部の構成を示すブロック図である。図16に示すように、複写機1Dは、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aおよび制御部60Aに代えて、光センシング部20Dおよび制御部60Cを備えている。
図17は、光センシング部20Dの構成を示す概略図である。図16および図17に示すように、光センシング部20Dは、第1照射部21と、第1受光部(反射光受光部)31と、第2受光部(第1透過光受光部)32と、第3受光部(第2透過光受光部)33とを備えている。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられている。第2受光部32は、第1照射部21から照射され、用紙Pを透過した光を受光する。
第3受光部33は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第2受光部32と並んで配置されている。第3受光部33は、第1照射部21から照射され用紙Pを透過した光を、第2受光部32が受光する角度とは異なる角度で受光する。
制御部60Cは、実施形態1の制御部60Aにおける紙種判別部62A、含水率算出部63A、および坪量算出部64Aに代えて、紙種判別部62C、含水率算出部63C、および坪量算出部64Cを備えている。
次に、複写機1Dの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図18を参照しながら説明する。図18は、複写機1Dにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18に示すように、複写機1Dによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S61)。
具体的には、初めに、第1照射部21と、第2受光部32および第3受光部33との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aを消灯させた状態において、第1受光部31、第2受光部32および第3受光部33が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31、第2受光部32および第3受光部33は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1、電気信号値Vb2および電気信号値Vb3をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が、光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第2受光部32および第3受光部33が光源21aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr2および電気信号値Vr3を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Dが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S64)。具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1を記憶部50に出力する。また、同時に、第2受光部32および第3受光部33が光源21aから照射され、用紙Pを透過した光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp2および電気信号値Vp3を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、紙種判別部62C、含水率算出部63Cおよび坪量算出部64Cが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う(S65)。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
以降の処理(ステップS16〜S22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
<用紙Pの紙種の判別>
次に、紙種判別部62Cによる用紙Pの紙種の判別方法について説明する。
まず、紙種判別部62Cは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散され、第1受光部31に受光される光における吸光度である第1反射吸光度Ar1を算出する。第1反射吸光度Ar1の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Cは、光源21aから照射され用紙Pを透過し、第2受光部32および第3受光部33に受光される光における吸光度である第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2をそれぞれ算出する。第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Cは、予め導出され記憶部50に記憶されている紙種度算出式に、算出した第1反射吸光度Ar1、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの紙種を判別する。
本実施形態における紙種度算出式は、下記の式(13)である。
紙種度=A8+A9×Ar1+A10×At1+A11×At2 …(13)。
ここで、係数A8〜A11は、予め多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に正準判別分析によって導出した係数である。
次に、紙種判別部62Cは、算出した紙種度がどの紙種の範囲であるかを判定することによって、用紙Pの紙種を判別する。
<用紙Pの含水率の算出>
次に、含水率算出部63Cによる用紙Pの表面の含水率の算出方法について説明する。
まず、含水率算出部63Cは、紙種判別部62Cが算出した第1反射吸光度Ar1、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を記憶部50から読み出す。
次に、含水率算出部63Cは、予め導出され記憶部50に記憶されている含水率算出式に、第1反射吸光度Ar1、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの表面の含水率を算出する。
本実施形態における含水率算出式は、下記の式(14)である。
含水率=B8+B9×Ar1+B10×At1+B11×At2 …(14)。
ここで、係数B8〜B11は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Dの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
<用紙Pの坪量の算出>
次に、坪量算出部64Cによる用紙Pの坪量の算出方法について説明する。
まず、坪量算出部64Cは、紙種判別部62Cが算出した第1反射吸光度Ar1、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を記憶部50から読み出す。
次に、坪量算出部64Cは、予め導出され記憶部50に記憶されている坪量算出式に、第1反射吸光度Ar1、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの坪量を算出する。
本実施形態における坪量算出式は、下記の式(15)である。
坪量=C8+C9×Ar1+C10×At1+C11×At2 …(15)。
ここで、係数C8〜C11は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Dの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
ここで、用紙Pの紙種によっては、その成分が複雑であり、また各成分量もさまざまである。例えば、紙種によっては、インクが紙の裏側に浸み出して字が裏に透けて見えないようにするために添加物が加えられていたり、強度を向上させるために微粒子が加えられていたり、用紙を白くして品質のよいイメージを与えるために蛍光剤を混ぜたりされている。さらに、紙は、セルロース繊維が幾重にも重ねられた多層構造であり複雑な構造をしている。そのため、用紙Pに対して垂直に透過した光の強度を用いるだけでは、複雑な成分や繊維からなる紙の本質的な特性の情報を十分に得る事ができず、紙種の判別、表面の含水率の算出、および坪量の算出の精度が低下してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態における複写機1Dでは、第2受光部32および第3受光部33の少なくとも一方において、第1照射部21から照射され用紙Pを垂直ではない角度で透過した光を受光し、受光した光の強度を用いて用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
用紙Pを垂直ではない角度で透過した光は、用紙Pの成分およびセルロースの状態から用紙Pを垂直に透過した光とは異なる影響を受ける。したがって、光センシング部20Dは、用紙Pの成分およびセルロースの状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、紙種判別部62C、含水率算出部63Cおよび坪量算出部64Cは、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量をそれぞれさらに精度良く判別・算出できる。
また、本実施形態における光センシング部20Dでは、第1照射部21が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを照射する。これにより、光センシング部20Dにおける照射部を1つにすることができるため、光センシング部20Dの構成を簡素化することができる。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図19は、本実施形態における複写機1Eの要部の構成を示すブロック図である。図19に示すように、複写機1Eは、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aおよび制御部60Aに代えて、光センシング部20Eおよび制御部60Dを備えている。
図20は、光センシング部20Eの構成を示す概略図である。図19および図20に示すように、光センシング部20Eは、第1照射部21と、第1受光部31(第1反射光受光部)と、第2受光部(第2反射光受光部)32と、第3受光部(第1透過光受光部)33と、第4受光部(第2透過光受光部)34とを備えている。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1受光部31と並んで配置されている。第2受光部32は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を、第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光する。
第3受光部33は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられている。第3受光部33は、第1照射部21から照射され、用紙Pを透過した光を受光する。
第4受光部34は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第3受光部33と並んで配置されている。第4受光部34は、1つの受光素子34aと、受光素子34aを収納する筐体34bとを備えている。第4受光部34の構成は、第1受光部31の構成と同様であるため、説明を省略する。第4受光部34は、第1照射部21から照射され用紙Pを透過した光を、第3受光部33が受光する角度とは異なる角度で受光する。
制御部60Dは、実施形態1の制御部60Aにおける紙種判別部62A、含水率算出部63A、および坪量算出部64Aに代えて、紙種判別部62D、含水率算出部63D、および坪量算出部64Dを備えている。
次に、複写機1Eの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図21を参照しながら説明する。図21は、複写機1Eにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図21に示すように、複写機1Eによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S71)。
具体的には、初めに、第1照射部21と第3受光部33および第4受光部34との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aを消灯させた状態において、第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33および第4受光部34が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33および第4受光部34は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1、電気信号値Vb2、電気信号値Vb3および電気信号値Vb4をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源21aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr3および電気信号値Vr4を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Eが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S74)。
具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1および電気信号値Vp2を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源21aから照射され、用紙Pを透過した光の一部を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp3および電気信号値Vp4を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、紙種判別部62D、含水率算出部63Dおよび坪量算出部64Dが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う(S75)。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
以降の処理(ステップS16〜S22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
<用紙Pの紙種の判別>
次に、紙種判別部62Dによる用紙Pの紙種の判別方法について説明する。
まず、紙種判別部62Dは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散され、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第1反射吸光度Ar1および第2反射吸光度Ar2をそれぞれ算出する。第1反射吸光度Ar1および第2反射吸光度Ar2の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Dは、光源21aから照射され用紙Pを透過し、第3受光部33および第4受光部34に受光される光における吸光度である第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2をそれぞれ算出する。第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Dは、予め導出され記憶部50に記憶されている紙種度算出式に、算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの紙種を判別する。
本実施形態における紙種度算出式は、下記の式(16)である。
紙種度=A12+A13×Ar1+A14×Ar2+A15×At1+A16×At2 …(16)。
ここで、係数A12〜A16は、予め多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に正準判別分析によって導出した係数である。
次に、紙種判別部62Dは、算出した紙種度がどの紙種の範囲であるかを判定することによって、用紙Pの紙種を判別する。
<用紙Pの含水率の算出>
次に、含水率算出部63Dによる用紙Pの表面の含水率の算出方法について説明する。
まず、含水率算出部63Dは、紙種判別部62Dが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を記憶部50から読み出す。
次に、含水率算出部63Dは、予め導出され記憶部50に記憶されている含水率算出式に、第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの表面の含水率を算出する。
本実施形態における含水率算出式は、下記の式(17)である。
含水率=B12+B13×Ar1+B14×Ar2+B15×At1+B16×At2 …(17)。
ここで、係数B12〜B16は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Eの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
<用紙Pの坪量の算出>
次に、坪量算出部64Dによる用紙Pの坪量の算出方法について説明する。
まず、坪量算出部64Dは、紙種判別部62Dが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を記憶部50から読み出す。
次に、坪量算出部64Dは、予め導出され記憶部50に記憶されている坪量算出式に、第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2を適用することにより用紙Pの坪量を算出する。
本実施形態における坪量算出式は、下記の式(18)である。
坪量=C12+C13×Ar1+C14×Ar2+C15×At1+C16×At2 …(18)。
ここで、係数C12〜C16は、第1照射部21によって照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Eの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
以上のように、本実施形態における複写機1Eでは、第1受光部31および第2受光部32において、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を互いに異なる角度で受光する。また、第3受光部33および第4受光部34において、第1照射部21から照射され用紙Pを透過した光を互いに異なる角度で受光する。そして、紙種判別部62D、含水率算出部63Dおよび坪量算出部64Dは、これらの測定結果を用いて用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
これにより、用紙Pの表面に対する水分子の付着の状態の情報、および用紙Pの内部における水分子の状態の情報を正確に取得するとともに、用紙Pの成分およびセルロースの状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、紙種判別部62D、含水率算出部63Dおよび坪量算出部64Dは、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量をそれぞれさらに精度良く判別・算出できる。
また、本実施形態における光センシング部20Eでは、第1照射部21が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを照射する。これにより、光センシング部20Eにおける照射部を1つにすることができるため、光センシング部20Eの構成を簡素化することができる。
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図22は、本実施形態における複写機1Fの要部の構成を示すブロック図である。図22に示すように、複写機1Fは、実施形態4の複写機1Eにおける光センシング部20Eに代えて、光センシング部20Fを備えている。
図23は、光センシング部20Fの構成を示す概略図である。図22および図23に示すように、光センシング部20Fは、第1照射部21(第1の照射部)と、第2照射部(第2の照射部)22と、第1受光部(第1透過光受光部、第1反射光受光部)31と、第2受光部(第2透過光受光部、第2反射光受光部)32とを備えている。
本実施形態では、図23に示すように、第1照射部21から照射された光は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。
第2照射部22は、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられている。第2照射部22から照射された光は、用紙Pを透過して第1受光部31および第2受光部32によって受光される。第2照射部22の光源22aが照射する光の波長は、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光の一部と、第2照射部22から照射され用紙Pを透過した光の一部とを受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1受光部31と並んで配置されている。第2受光部32は、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光の一部を第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光するとともに、第2照射部22から照射され用紙Pを透過した光の一部を第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光する。
次に、複写機1Fの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図24を参照しながら説明する。図24は、複写機1Fにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図24に示すように、複写機1Fによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S81)。
具体的には、初めに、第2照射部22と、第1受光部31および第2受光部32との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aおよび第2照射部22の光源22aを消灯させた状態において、第1受光部31および第2受光部32が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31および第2受光部32は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1および電気信号値Vb2をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射された光を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr3および電気信号値Vr4を記憶部50に出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Fが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S84)。具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1および電気信号値Vp2を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射され、用紙Pを透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp3および電気信号値Vp4を記憶部50にそれぞれ出力する。
以降の処理(ステップS75およびステップS16〜S22)は、実施形態4と同様であるため説明を省略する。
以上のように、本実施形態における複写機1Fでは、第1受光部31および第2受光部32において、第1照射部21から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を互いに異なる角度で受光する。また、第1受光部31および第2受光部32において、第2照射部22から照射され用紙Pを透過した光を互いに異なる角度で受光する。そして、紙種判別部62D、含水率算出部63Dおよび坪量算出部64Dは、これらの測定結果を用いて用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
これにより、用紙Pの表面に対する水分子の付着の状態の情報、および用紙Pの内部における水分子の状態の情報を正確に取得するとともに、用紙Pの成分およびセルロースの状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、紙種判別部62D、含水率算出部63Dおよび坪量算出部64Dは、用紙Pの紙種、用紙Pの表面の含水率、および用紙Pの坪量をそれぞれさらに精度良く判別・算出できる。
また、本実施形態における光センシング部20Fでは、第1受光部31および第2受光部32が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを受光する。これにより、光センシング部20Fにおける受光部を2つにすることができるため、光センシング部20Fの構成を簡素化することができる。
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図25は、本実施形態における複写機1Gの要部の構成を示すブロック図である。図25に示すように、複写機1Gは、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aおよび制御部60Aに代えて、光センシング部20Gおよび制御部60Eを備えている。
図26は、光センシング部20Gの構成を示す概略図である。図25および図26に示すように、光センシング部20Gは、第1照射部21(第1の照射部)と、第2照射部22(第3の照射部)と、第3照射部23(第2の照射部)と、第4照射部(第4の照射部)24と、第1受光部(第1透過光受光部、第1反射光受光部)31と、第2受光部(第2透過光受光部、第2反射光受光部)32とを備えている。
本実施形態では、図26に示すように、第1照射部21から照射された光は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。
第2照射部22は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1照射部21と並んで配置されている。第2照射部22から照射された光は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。第2照射部22の光源22aが照射する光の波長は、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長とは異なっている。
なお、本実施形態では、第1照射部21の光源21aおよび第2照射部22の光源22aは、半導体発光素子であるが、これに限られない。本発明の一態様における光源は、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出が可能な波長の光を照射できる光源であればよく、例えば、ハロゲンランプまたは蛍光体であってもよい。光源としてハロゲンランプまたは蛍光体を用いるときは、例えば、第1照射部21の光源および第2照射部22の光源に、互いに異なる波長の光を透過させる波長フィルタを設けることにより、第1照射部21と第2照射部22とが、互いに異なる波長の光を照射する構成にしてもよい。
第3照射部23は、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられている。第3照射部23は、1つの光源23aと、光源23aを収納する筐体23bとを備えている。第3照射部23の構成は、第1照射部21の構成と同様であるため、説明を省略する。第3照射部23から照射された光は、用紙Pを透過して第1受光部31および第2受光部32によって受光される。第3照射部23の光源23aが照射する光の波長は、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長と同じである。
第4照射部24は、主搬送路R1に関して、第1照射部21とは反対側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第3照射部23と並んで配置されている。第4照射部24は、1つの光源24aと、光源24aを収納する筐体24bとを備えている。第4照射部24の構成は、第1照射部21の構成と同様であるため、説明を省略する。第4照射部24から照射された光は、用紙Pを透過して第1受光部31および第2受光部32によって受光される。第4照射部24の光源24aが照射する光の波長は、第2照射部22の光源22aが照射する光の波長と同じである。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21および第2照射部22から照射され用紙Pにより反射または拡散された光と、第3照射部23および第4照射部24から照射され用紙Pを透過した光とを受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1受光部31と並んで配置されている。第2受光部32は、第1照射部21および第2照射部22から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光するとともに、第3照射部23および第4照射部24から照射され用紙Pを透過した光を第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光する。
制御部60Eは、実施形態1の制御部60Aにおける紙種判別部62A、含水率算出部63A、および坪量算出部64Aに代えて、紙種判別部62E、含水率算出部63E、および坪量算出部64Eを備えている。
次に、複写機1Gの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図27を参照しながら説明する。図27は、複写機1Gにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図27に示すように、複写機1Gによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S91)。
具体的には、初めに、第3照射部23および第4照射部24と、第1受光部31および第2受光部32との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21a、第2照射部22の光源22a、第3照射部23の光源23a、および第4照射部24の光源24aを消灯させた状態において、第1受光部31および第2受光部32が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31および第2受光部32は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1および電気信号値Vb2をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr3および電気信号値Vr4を記憶部50に出力する。
次に、第2照射部22の光源22aを消灯させる。次に、第3照射部23の光源23aを点灯させ、光源23aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源23aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr5および電気信号値Vr6を記憶部50に出力する。
次に、第3照射部23の光源23aを消灯させる。次に、第4照射部24の光源24aを点灯させ、光源24aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源24aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr7および電気信号値Vr8を記憶部50に出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Gが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S94)。
具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1および電気信号値Vp2を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp3および電気信号値Vp4を記憶部50に出力する。
次に、第2照射部22の光源22aを消灯させる。次に、第3照射部23の光源23aを点灯させ、光源23aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源23aから照射され用紙Pを透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp5および電気信号値Vp6を記憶部50に出力する。
次に、第3照射部23の光源23aを消灯させる。次に、第4照射部24の光源24aを点灯させ、光源24aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源24aから照射され用紙Pを透過した光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp7および電気信号値Vp8を記憶部50に出力する。
次に、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う(S95)。それぞれの判別・算出方法の詳細については後述する。
以降の処理(ステップS16〜S22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
<用紙Pの紙種の判別>
次に、紙種判別部62Eによる用紙Pの紙種の判別方法について説明する。
まず、紙種判別部62Eは、光源21aから照射され用紙Pに反射または拡散され、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第1反射吸光度Ar1および第2反射吸光度Ar2をそれぞれ算出する。次に、紙種判別部62Eは、光源22aから照射され用紙Pに反射または拡散され、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第3反射吸光度Ar3および第4反射吸光度Ar4をそれぞれ算出する。第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第3反射吸光度Ar3、および第4反射吸光度Ar4の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Eは、光源23aから照射され用紙Pを透過し、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第1透過吸光度At1および第2透過吸光度At2をそれぞれ算出する。次に、紙種判別部62Eは、光源24aから照射され用紙Pを透過し、第1受光部31および第2受光部32に受光される光における吸光度である第3透過吸光度At3および第4透過吸光度At4をそれぞれ算出する。第1透過吸光度At1、第2透過吸光度At2、第3透過吸光度At3、および第4透過吸光度At4の算出方法は、実施形態1にて説明した算出方法と同様であるため説明を省略する。
次に、紙種判別部62Eは、予め導出され記憶部50に記憶されている紙種度算出式に、算出した各吸光度を適用することにより用紙Pの紙種を判別する。
本実施形態における紙種度算出式は、下記の式(19)である。
紙種度=A17+A18×Ar1+A19×Ar2+A20×Ar3+A21×Ar4+A22×At1+A23×At2+A24×At3+A25×At4 …(19)。
ここで、係数A17〜A25は、予め多様な紙種を様々な含水率の条件下に置いて測定したデータを元に正準判別分析によって導出した係数である。
次に、紙種判別部62Eは、算出した紙種度がどの紙種の範囲であるかを判定することによって、用紙Pの紙種を判別する。
<用紙Pの含水率の算出>
次に、含水率算出部63Eによる用紙Pの表面の含水率の算出方法について説明する。
まず、含水率算出部63Eは、紙種判別部62Eが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第3反射吸光度Ar3、第4反射吸光度Ar4、第1透過吸光度At1、第2透過吸光度At2、第3透過吸光度At3、および第4透過吸光度At4を記憶部50から読み出す。
次に、含水率算出部63Dは、予め導出され記憶部50に記憶されている含水率算出式に、各吸光度を適用することにより用紙Pの表面の含水率を算出する。
本実施形態における含水率算出式は、下記の式(20)である。
含水率=B17+B18×Ar1+B19×Ar2+B20×Ar3+B21×Ar4+B22×At1+B23×At2+B24×At3+B25×At4 …(20)。
ここで、係数B17〜B25は、第1照射部21、第2照射部22、第3照射部23および第4照射部24によってそれぞれ照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Gの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
<用紙Pの坪量の算出>
次に、坪量算出部64Eによる用紙Pの坪量の算出方法について説明する。
まず、坪量算出部64Eは、紙種判別部62Eが算出した第1反射吸光度Ar1、第2反射吸光度Ar2、第3反射吸光度Ar3、第4反射吸光度Ar4、第1透過吸光度At1、第2透過吸光度At2、第3透過吸光度At3、および第4透過吸光度At4を記憶部50から読み出す。
次に、坪量算出部64Dは、予め導出され記憶部50に記憶されている坪量算出式に、各吸光度を適用することにより用紙Pの坪量を算出する。
本実施形態における坪量算出式は、下記の式(21)である。
坪量=C17+C18×Ar1+C19×Ar2+C20×Ar3+C21×Ar4+C22×At1+C23×At2+C24×At3+C25×At4 …(21)。
ここで、係数C17〜C25は、第1照射部21、第2照射部22、第3照射部23および第4照射部24によってそれぞれ照射される光の波長、用紙Pの紙種、複写機1Gの内部の構成などの条件によって決められる係数であり、予め各種条件に応じた係数が重回帰分析により求められ記憶部50に記憶されている。
以上のように、本実施形態における複写機1Gでは、第1照射部21および第2照射部22によって照射された互いに異なる波長の光が用紙Pに反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。そして、受光した光の強度を用いて、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
ここで、用紙Pの紙種によっては、用紙Pの表面の水分子の状態、およびセルロース繊維の状態に応じて、照射された光の波長によって反射・拡散の挙動が異なることが知られている。したがって、上記の構成を有することにより、複写機1Gは、用紙Pの表面の水分子の状態、およびセルロース繊維の状態の情報をより多く取得することができる。その結果、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eは、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出を精度良く行うことができる。
また、本実施形態における複写機1Gでは、第3照射部23および第4照射部24によって照射された互いに異なる波長の光が用紙Pを透過して第1受光部31および第2受光部32によって受光される。そして、受光した光の強度を用いて、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。
ここで、用紙Pの紙種によっては、成分、およびセルロース繊維の状態に応じて、照射された光の波長によって透過の挙動が異なることが知られている。したがって、上記の構成を有することにより、複写機1Gは、用紙Pの成分、およびセルロース繊維の状態の情報をより多く取得することができる。その結果、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eは、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出を精度良く行うことができる。
また、本実施形態における光センシング部20Gでは、第1受光部31および第2受光部32が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを受光する。これにより、光センシング部20Gにおける受光部を2つにすることができるため(すなわち、受光部を4つ設ける必要が無いため)、光センシング部20Fの構成を簡素化することができる。
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図28は、本実施形態における複写機1Hの要部の構成を示すブロック図である。図28に示すように、複写機1Hは、実施形態6の複写機1Gにおける光センシング部20Gに代えて、光センシング部20Hを備えている。
図29は、光センシング部20Hの構成を示す概略図である。図28および図29に示すように、光センシング部20Hは、第1照射部21と、第2照射部22と、第1受光部31(第1反射光受光部)と、第2受光部(第2反射光受光部)32と、第3受光部(第1透過光受光部)33と、第4受光部(第2透過光受光部)34とを備えている。
本実施形態では、図29に示すように、第1照射部21から照射された光の一部は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。また、第1照射部21から照射された光の他の一部は、用紙Pを透過し第3受光部33および第4受光部34によって受光される。
第2照射部22は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1照射部21と並んで配置されている。第2照射部22から照射された光の一部は、用紙Pによって反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。また、第2照射部22から照射された光の他の一部は、用紙Pを透過し第3受光部33および第4受光部34によって受光される。第2照射部22の光源22aが照射する光の波長は、第1照射部21の光源21aが照射する光の波長とは異なっている。
第1受光部31は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられている。第1受光部31は、第1照射部21および第2照射部22から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を受光する。
第2受光部32は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と同じ側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第1受光部31と並んで配置されている。第2受光部32は、第1照射部21および第2照射部22から照射され用紙Pにより反射または拡散された光を第1受光部31が受光する角度とは異なる角度で受光する。
第3受光部33は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられている。第3受光部33は、第1照射部21および第2照射部22から照射され、用紙Pを透過した光を受光する。
第4受光部34は、主搬送路R1に関して、第1照射部21と反対側に設けられており、用紙Pが搬送される方向に沿って第3受光部33と並んで配置されている。第4受光部34は、第1照射部21および第2照射部22から照射され用紙Pを透過した光を、第3受光部33が受光する角度とは異なる角度で受光する。
次に、複写機1Hの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図30を参照しながら説明する。図30は、複写機1Hにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図30に示すように、複写機1Hによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、参照用データを取得するキャリブレーションを行う(S101)。
具体的には、初めに、第1照射部21および第2照射部22と、第3受光部33および第4受光部34との間に用紙Pが無く、かつ、第1照射部21の光源21aおよび第2照射部22の光源22aを消灯させた状態において、第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33、および第4受光部34が光の強度(すなわち、バックグラウンドの光の強度)を測定する。第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33、および第4受光部34は、測定した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vb1、電気信号値Vb2、電気信号値Vb3、および電気信号値Vb4をそれぞれ記憶部50に出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr1および電気信号値Vr2を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源21aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr3および電気信号値Vr4を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射され、標準反射板40に反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr5および電気信号値Vr6を記憶部50に出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源22aから照射された光の一部を直接受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vr7および電気信号値Vr8を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、ステップS12およびステップS13を行う。ステップS12およびステップS13は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Hが、アイドルローラ5に滞留された用紙Pに対して測定を行う(S104)。
具体的には、まず、第1照射部21の光源21aを点灯させ、光源21aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が、光源21aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp1および電気信号値Vp2を記憶部50にそれぞれ出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源21aから照射され用紙Pを透過した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp3および電気信号値Vp4を記憶部50にそれぞれ出力する。
次に、第1照射部21の光源21aを消灯させる。次に、第2照射部22の光源22aを点灯させ、光源22aの発光状態が安定するまでの所定の時間(ミリ秒単位)待機する。次に、第1受光部31および第2受光部32が光源22aから照射され、用紙Pに反射または拡散された光を受光し、受光した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp5および電気信号値Vp6を記憶部50に出力する。また、同時に、第3受光部33および第4受光部34が光源22aから照射され用紙Pを透過した光の強度に応じた大きさの電気信号値Vp7および電気信号値Vp8を記憶部50にそれぞれ出力する。
以降の処理(ステップS95およびステップS16〜S22)は、実施形態5と同様であるため説明を省略する。
以上のように、本実施形態における複写機1Hでは、第1照射部21および第2照射部22によって照射された互いに異なる波長の光が用紙Pに反射または拡散され第1受光部31および第2受光部32によって受光される。また、第1照射部21および第2照射部22によって照射された互いに異なる波長の光が用紙Pに透過し第3受光部33および第4受光部34によって受光される。そして、受光した光の強度を用いて、紙種判別部62E、含水率算出部63Eおよび坪量算出部64Eが、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの表面の含水率の算出、および用紙Pの坪量の算出をそれぞれ行う。したがって、実施形態6における効果を同様の効果を奏する。
また、本実施形態における光センシング部20Hでは、第1照射部21および第2照射部22が用紙Pによって反射または拡散される光と、用紙Pを透過する光とを照射する。これにより、光センシング部20Hにおける照射部を2つにすることができるため(すなわち、照射部を4つ設ける必要が無いため)、光センシング部20Hの構成を簡素化することができる。
〔実施形態8〕
本発明の他の実施形態について説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図31は、複写機1Iの構造を示す概略図である。
図31に示すように、複写機1Iでは、光センシング部20Aが設置される位置が、実施形態1の複写機1Aにおける光センシング部20Aが設置される位置と異なっている。
本実施形態では、光センシング部20Aは、主搬送路R1において、給紙カセット3とピックアップローラ4との間に配置されている。
次に、複写機1Iの印刷処理(図4に示すステップS6)について、図32を参照しながら説明する。図32は、複写機1Iにおける印刷処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図32に示すように、複写機1Iによる用紙Pへの印刷処理(S6)では、まず、ステップS11およびステップS12を行う。ステップS11およびステップS12は、実施形態1におけるステップS11およびステップS12と同様であるため説明を省略する。
次に、光センシング部20Aが、ピックアップローラ4によって給紙カセット3から取り出されている1枚の用紙Pに対して測定を行う(S114)。具体的な測定は、実施形態1におけるステップS14と同様であるため説明を省略する。
以降の処理(ステップS15〜S20、およびS22)は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
以上のように、本実施形態における複写機1Iでは、光センシング部20Aが、ピックアップローラ4によって給紙カセット3から取り出されている間において用紙Pに対して測定を行う。これにより、画像形成条件設定部65による画像形成条件の設定を早く行うことができるので、印刷に要する時間を短縮することができる。例えば、定着温度は電流のようにすぐには変更できないので、光センシング部20Aによる測定を早めて時間に余裕を持たせることにより良好な印刷を実現することができる。また、各ローラの搬送スピードなどの条件をより手前で設定できるため、例えばアイドルローラ5において用紙Pが紙詰まりを起こすエラーを低減できるという効果が得られる。
また、光センシング部20Aによる測定のために用紙Pの搬送を停止させる必要が無くなるため、印刷に要する時間をさらに短縮することができる。
さらに、光センシング部20Aが搬送されている用紙Pに光を照射しているので、光センシング部20Aが、用紙Pの端から中央まで範囲に光を照射することができる。その結果、用紙Pに水分や厚さの分布があったとしても、その分布の偏りを平均化したデータを得ることができるので、用紙Pの紙種の判別、用紙Pの坪量および含水率の算出を精度良く行うことができる。
なお、アイドルローラ5の前(実施形態1における光センシング部20Aが配置される位置)に別の光センシング部を設けても良い。これにより、用紙Pの第1面の印刷において加圧ローラ16aによって用紙Pが熱されて用紙Pの水分が蒸発し光センシング部20Aによって測定した含水率とずれが生じている場合において、上記別の光センシング部により再度用紙Pに対して測定することで用紙Pの第2面に対する印刷条件を好適に調整することができる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
複写機1A〜1Iの制御ブロック(特に、制御部60A〜60E)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、複写機1A〜1Iは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る画像形成装置(複写機1A〜1I)は、記録材(用紙P)に画像を形成する画像形成装置であって、前記記録材に光を照射する、第1の照射部(第1照射部21、第2照射部22、第3照射部23、第4照射部24)および第2の照射部(第1照射部21、第2照射部22)と、前記第1の照射部から照射され、前記記録材を透過した光の一部を受光する透過光受光部(第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33、第4受光部34)と、前記第2の照射部から照射され、前記記録材に反射または拡散された光の一部を受光する反射光受光部(第1受光部31、第2受光部32)と、前記透過光受光部、および前記反射光受光部が受光した光の強度に基づいて、前記記録材の、含水率、種類または坪量の少なくも1つを算出または判別する演算部(紙種判別部62A〜62E、含水率算出部63A〜63E、坪量算出部64A〜64E)と、前記演算部が算出または判定した結果に基づいて前記記録材に対する前記画像の画像形成条件を設定する設定部(画像形成条件設定部65)と、を備える。
上記の構成によれば、記録材によって反射または拡散された光の強度と、記録材を透過した光の強度とに基づいて、記録材の種類、記録材の表面の含水率、および記録材の坪量を判別・算出することができる。その結果、記録材の様々な情報(例えば、表面の水分子の状態、内部の水分子の情報、厚みなど)を加味して記録材の種類、記録材の表面の含水率、および記録材の坪量を判別・算出することができる。その結果、記録材の種類、記録材の表面の含水率、および記録材の坪量を精度良く算出・判別することができる。したがって、適切な画像形成条件を設定することができる。
本発明の態様2に係る画像形成装置(複写機1D〜1H)は、上記態様1において、前記透過光受光部は、第1透過光受光部(第1受光部31、第2受光部32、第3受光部33)と、第2透過光受光部(第2受光部32、第3受光部33、第4受光部34)とを備え、前記第1透過光受光部と、前記第2透過光受光部とは、前記記録材を透過した光の一部を互いに異なる角度で受光する構成であってもよい。
ここで、記録材を垂直ではない角度で透過した光は、記録材の成分およびセルロースの状態から記録材を垂直に透過した光とは異なる影響を受ける。したがって、上記の構成によれば、記録材の成分およびセルロースの状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、記録材の種類、記録材の表面の含水率、および記録材の坪量をそれぞれさら
に精度良く判別・算出できる。
本発明の態様3に係る画像形成装置(複写機1C、1E〜1H)は、上記態様1または2において、前記反射光受光部は、第1反射光受光部(第1受光部31)と、第2反射光受光部(第2受光部32)とを備え、前記第1反射光受光部と、前記第2反射光受光部とは、前記記録材に反射または拡散された光の一部を互いに異なる角度で受光する構成であってもよい。
上記の構成によれば、記録材の表面に対する水分子の付着の状態の情報、および記録材の内部における水分子の状態の情報をより正確に取得することができる。その結果、記録材の種類、記録材の表面の含水率、および記録材の坪量をそれぞれさらに精度良く判別・算出できる。特に、記録材に反射された光には記録材の表面に対する水分子の付着の状態の情報が含まれているため、記録材の表面の含水率の算出精度を向上させることができる。
本発明の態様4に係る画像形成装置(複写機1G、1H)は、上記態様1〜3のいずれかにおいて、前記第1の照射部(第1照射部21、第3照射部23)が照射する光の波長とは異なる波長の光を照射する第3の照射部(第2照射部22、第4照射部24)をさらに備え、前記透過光受光部は、前記第1の照射部および前記第3の照射部から照射され、前記記録材を透過した光の一部を受光する構成であってもよい。
上記の構成によれば、記録材の成分、およびセルロース繊維の状態の情報をより多く取得することができる。その結果、記録材の紙種の判別、記録材の表面の含水率の算出、および記録材の坪量の算出を精度良く行うことができる。
本発明の態様5に係る画像形成装置(複写機1G、1H)は、上記態様1〜3のいずれかにおいて、前記第2の照射部(第1照射部21、第3照射部23)が照射する光の波長とは異なる波長の光を照射する第4の照射部(第2照射部22、第4照射部24)をさらに備え、前記反射光受光部は、第2の照射部および第4の照射部から照射され、前記記録材に反射または拡散された光の一部を受光する構成であってもよい。
上記の構成によれば、記録材の表面の水分子の状態、およびセルロース繊維の状態の情報をより多く取得することができる。その結果、記録材の紙種の判別、記録材の表面の含水率の算出、および記録材の坪量の算出を精度良く行うことができる。
本発明の態様6に係る画像形成装置(複写機1A、1C〜1E、1H)は、上記態様1〜5のいずれかにおいて、前記第1の照射部および前記第2の照射部は、同一の照射部である構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の照射部および第2の照射部を1つの照射部にすることができるので、画像形成装置の構成を簡略化することができる。
本発明の態様7に係る画像形成装置(複写機1B、1F、1G)は、上記態様1〜6のいずれかにおいて、前記透過光受光部および前記反射光受光部は、同一の受光部である構成であってもよい。
上記の構成によれば、透過光受光部および反射光受光部を1つの受光部にすることができるので、画像形成装置の構成を簡略化することができる。
本発明の態様8に係る画像形成装置(複写機1A〜1H)は、上記態様1〜7のいずれかにおいて、前記記録材を収める給紙カセットと、前記給紙カセットから前記記録材を取り出す取り出しローラ(ピックアップローラ4)と、前記記録材に転写処理を行う前に、前記記録材を搬送路上で一時的に滞留させる滞留ローラ(アイドルローラ5)とを備え、前記第1の照射部および第2の照射部は、前記取り出しローラにより前記給紙カセットから取り出され、前記滞留ローラにより一時的に滞留された前記記録材に対して光を照射する構成であってもよい。
上記の構成によれば、滞留ローラによって一時的に滞留された記録材に対して、測定を行う構成であるので、画像形成に要する時間を短縮させることができる。
本発明の態様9に係る画像形成装置(複写機1I)は、上記態様1〜7のいずれかにおいて、前記記録材を収める給紙カセットと、前記給紙カセットから前記記録材を取り出す取り出しローラ(ピックアップローラ4)とを備え、前記第1の照射部および第2の照射部は、前記取り出しローラにより前記給紙カセットから取り出され、前記取り出しローラにより搬送されている前記記録材に対して光を照射する構成であってもよい。
上記の構成によれば、設定部による画像形成条件の設定を早く行うことができるので、印刷に要する時間を短縮することができる。
本発明の態様10に係る画像形成装置(複写機1A〜1I)は、上記態様1〜9のいずれかにおいて、前記第1の照射部および第2の照射部は、前記記録材の中央部と端部との少なくとも2箇所に光照射する構成であってもよい。
上記の構成によれば、記録材の中央部と端部における特性(水分量、厚みなど)の影響を抑制することができる。
本発明の態様11に係る画像形成装置(複写機1A〜1I)は、上記態様1〜10のいずれかにおいて、前記第1の照射部および前記第2の照射部が発光する光の波長は、800nm以上1100nm以下である構成であってもよい。
上記の構成によれば、第1の照射部および第2の照射部が照射する光が記録材の内部に浸入することができかつ水分に吸収されやすい。これにより、記録材に含まれる水分の情報をより多く得ることができる。
本発明の態様12に係る画像形成装置(複写機1A〜1I)は、上記態様1〜11のいずれかにおいて、画像データに基づく静電潜像を現像剤(トナー剤)により現像することで得られた顕像(トナー像)を担持する像担持体(感光体ドラム11)と、前記像担持体に担持された前記顕像を記録材に転写する転写処理を行う転写部(転写装置15)と、前記転写部により転写された前記現像剤を前記記録材に固着させる定着部(16)とを備え、前記画像形成条件は、前記転写部に印加される電圧値、前記転写部に供給される電流値、前記定着部において前記記録材に加えられる圧力、前記定着部において前記記録材を加熱する温度、および前記定着部において前記記録材を搬送する速度のうち少なくとも1つの設定値であってもよい。
本発明の態様13に係る画像形成方法は、記録材(用紙P)に画像を形成する画像形成方法であって、第1の照射部(第1照射部21、第2照射部22、第3照射部23、第4照射部24)から照射され、前記記録材を透過した光の強度を測定する第1測定工程と、第2の照射部(第1照射部21、第2照射部22)から照射され、前記記録材に反射または拡散された光の強度を測定する第2測定工程と、前記第1測定工程および前記第2測定工程において測定した光の強度に基づいて、前記記録材の、含水率、種類または坪量の少
なくも1つを算出または判別する演算工程と、前記演算工程において算出または判定した結果に基づいて前記記録材に対する前記画像の画像形成条件を設定する設定工程と、を備える。
上記の構成によれば、態様1と同様の効果を得ることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。