JP6418673B2 - 光学部品用樹脂組成物およびそれを用いた光学部品 - Google Patents

光学部品用樹脂組成物およびそれを用いた光学部品 Download PDF

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Description

本発明は、光学的応用を目的とする透明樹脂において光信号を低損失で通す高い透明性を有し、耐熱性に優れた光学レンズや集光拡散レンズ、光学部品間の接着等の各種光学部品材料等に好適な光硬化型樹脂組成物およびそれを用いた光学部品に関するものである。
最近の光学部品、例えば携帯電話やデジタルカメラ等で用いられる撮像装置では撮像用の光学レンズが搭載されているが、レンズ材料としては一般的に光学用ガラスや透明プラスチック材料が使用されている。特に、近年の撮像機能つき携帯電話の普及率増加に伴い、より安価に光学レンズを製造する必要があることから、光学的に透明、かつレンズ設計上の簡便性からポリオレフィン材料がプラスチックレンズ材料の主流となっている。一方で、撮像装置のプリント基板への搭載はこれまでソケットを用いたピン挿入タイプ、あるいは撮像素子をプリント基板上へハンダリフロー実装した後、レンズユニットを撮像素子にとりつける方式が一般的であったが、より安く大量に生産することを目的に撮像装置そのものをプリント基板上へハンダリフロー実装することが強く要望されている。
しかしながら、撮像装置そのものをハンダリフロー方式によりプリント基板上へ実装する場合においては、上述したプラスチックレンズは軟化点以上の高温環境下に曝されることから、軟化・寸法変形するといった課題が生じてしまう。そこでこのような課題を解決するべく、光学レンズ等光学部品の材料として耐熱性の高いエポキシ樹脂を主成分とした樹脂組成物が検討されている。例えば、耐熱樹脂である光硬化型樹脂を用いたインプリント方式による製造方法が実用化されつつあるが、このインプリント方式は、成形用加工型を樹脂材料に押し当て、特定の微細パターンあるいは凹凸形状物を形成するという方法などがあげられる(例えば、特許文献1)。
最近では光学レンズの薄型化や高解像度化に伴い、より高屈折率な樹脂材料が求められている。樹脂組成物の屈折率を高めるには、高い屈折率を有する原材料を使用する必要があるが、例えば、骨格にベンゼン環を有する材料などは一般的に屈折率が高いことが知られており、屈折率を上げるためには有用であるが、相反して芳香環の光吸収に起因し透明性が低下したり、加熱変色性が悪いことが知られている。また、一般に高屈折材料は剛直な構造をとるが故に、常温で固体の性状で融点が高温であるものがほとんどである。例えば、高屈折率材料として知られるフルオレン骨格のエポキシ樹脂では種々検討がなされているが、常温で固形であり、溶融後も材料の粘度は高いため、高屈折化に伴う添加量増加に従って樹脂も高粘度となり、ハンドリング性の悪化が懸念される。また、同様に、一般に使用されているパラ位にグリシジル基を有するビフェニル骨格のエポキシ樹脂等も、常温下は固形で融点も高いため、得られる組成物が高粘度となり、ハンドリング性に劣る懸念がある。これに対して、溶剤配合や液状のエポキシ樹脂を混合する等して対策がとられてきた(特許文献2、3)。
特許第3926380号公報 特開2012−129010号公報 特開2011−225773号公報
このように従来技術では、樹脂の高屈折率化では、粘度が高くなりハンドリング性に欠けるという課題や、高い透明性が得られないというような問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、優れたハンドリング性と高い透明性を有しつつ、耐熱性にも優れた光学部品材料として好適な、硬化後屈折率が高屈折率となりうる光学部品用樹脂組成物およびそれを用いた光学部品の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、光学部品用樹脂組成物の25℃における粘度が0.1〜8.7Pa・sの範囲であり、40℃における粘度が0.05〜1.3Pa・sの範囲であり、光学部品用樹脂組成物を下記硬化条件1で硬化した硬化物の屈折率が1.57以上で、アッベ数が20〜40の範囲である光学部品用樹脂組成物であって、上記光学部品用樹脂組成物に含まれるエポキシ基含有化合物が、下記の一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物および屈折率が1.60以上のフルオレン型エポキシ樹脂からなり、かつ、上記光学部品用樹脂組成物中の全樹脂成分に対する上記フルオレン型エポキシ樹脂の割合が60重量%未満である光学部品用樹脂組成物を第1の要旨とする。
硬化条件1:光学部品用樹脂組成物を、1×1.5×0.5cmの成形型に流し込み、紫外線を10,000mJ/cm2照射し硬化させた後、型から外し150℃×1時間の加熱処理を行う。
Figure 0006418673
また、本発明は、上記第1の要旨に係る光学部品用樹脂組成物の硬化からなる光学部品であって、屈折率が1.57以上で、アッベ数が20〜40の範囲、波長400nmにおける透過率が80%以上である光学部品を第2の要旨とする。
本発明者らは、高屈折率を有し、耐熱性にも優れた光学部品用樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた結果、硬化前の樹脂組成物の粘度、樹脂組成物の硬化物の屈折率およびアッベ数に着目し、これらの好適範囲について実験を重ねた。その結果、光学部品用樹脂組成物の25℃における粘度が0.1〜20Pa・sの範囲であり、40℃における粘度が0.05〜1.6Pa・sの範囲であり、光学部品用樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.57以上で、かつアッベ数が20〜40の範囲である光学部品用樹脂組成物により、所期の目的が達成できることを見出し本発明に到達した。さらに、本発明の光学部品用樹脂組成物は、無溶剤系にて使用可能であるため、成形時にボイド等も発生せず、光学部品として使用するのに良好であると言える。
このように、本発明の光学部品用樹脂組成物は、25℃における粘度が0.1〜20Pa・sの範囲であり、40℃における粘度が0.05〜1.6Pa・sの範囲であることから、ハンドリング性等に優れ、上述のように有機溶剤を使用せずとも上記のような粘度を示すことから、その光硬化、成型時に、有機溶剤が揮発し、硬化物中にボイドを発生させる問題を解消することができる。このように、本発明の光学部品用樹脂組成物はガラス板等の透明基板上で光硬化させることができることから、上記透明基板と一体化させることにより高品質なハイブリッドレンズを製造することも可能である。また、光学部品用樹脂組成物の硬化物は、高屈折率で低アッベであるため、透明性が高く、加熱変色も抑えることができ、薄膜での光学設計性が向上する。また、光学部品用樹脂組成物単独使用での硬化により、例えば、耐熱性の高いプラスチックレンズとして製造することも可能である。したがって、本発明の光学部品用樹脂組成物を、レンズ等の光学部品用の成形材料および光学部品固定用光硬化型接着剤等に用いる場合、高信頼性の良好な光学製品を得ることができるため有用である。
そして、本発明の光学部品用樹脂組成物が、後述の一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物を含有するため、高屈折でありながら、粘度を低下させる粘度調整成分としての効果を期待できるようになる。
さらに、屈折率が1.60以上のフルオレン型エポキシ樹脂を併用すると、より高屈折となる。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
《光学部品用樹脂組成物》
本発明の光学部品用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という場合がある。)は、硬化前の樹脂組成物の25℃における粘度が0.1〜20Pa・sの範囲であり、40℃における粘度が0.05〜1.6Pa・sの範囲であり、樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.57以上で、アッベ数が20〜40の範囲である。なお、粘度等の物性については、後述する。
このような物性を備えた本発明の光学部品用樹脂組成物は、例えば、各種エポキシ基含有化合物、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤、その他の添加剤(オキセタン樹脂等)等を適宜組み合わせて得ることができる。そして、本発明の光学部品用樹脂組成物は、前述のとおり無溶剤系にて使用可能である。
以下、各種成分について順に説明する。
エポキシ基含有化合物、エポキシ樹脂>
上記エポキシ基含有化合物、エポキシ樹脂(これらを「エポキシ樹脂等」ということがある)は、所望の粘度や屈折率、光硬化性の観点から各種エポキシ樹脂を適宜選択することが可能であるが、高屈化のためには、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ビスフェノール型エポキシ樹脂等が用いられる。
そして、高屈折でありながら、粘度を低下させる粘度調整成分としての効果が期待できるエポキシ樹脂としては、ベンゼン環のオルト位にグリシジル基を有するビフェニル骨格のエポキシ基含有化合物があげられ、具体的には、下記の一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物である。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
Figure 0006418673
上記式(1)において、特に好ましい態様はR1〜R8が全てH(水素原子)の場合である。
上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物は、エポキシ当量が100〜500の範囲であることが好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物は、屈折率が1.57以上で、融点が90℃以下であることが好ましく、特に好ましくは屈折率が1.58以上で、融点が85℃以下である。
上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物としては、具体的には、三光社製のOPP−G等があげられる。
上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物の含有量は、光学部品用樹脂組成物中の全樹脂成分(当該エポキシ基含有化合物を含む)に対して5〜75重量%であることが好ましく、特に好ましくは10〜70重量%である。すなわち、含有量が少なすぎると、目的とする低粘度で高屈折の樹脂組成物を得ることが困難となる可能性があり、含有量が多すぎると、樹脂組成物の脆性が低下する傾向がみられるからである。
さらに、高屈折率化のためには、フルオレン型エポキシ樹脂を併用することが好ましい。上記フルオレン型エポキシ樹脂は、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂であればよく、所望の粘度や屈折率、光硬化性の観点から各種フルオレン型エポキシ樹脂を適宜選択することが可能である。具体的には、大阪ガスケミカル社製のPG−100、EG−200等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記フルオレン型エポキシ樹脂の含有量は、光学部品用樹脂組成物中の全樹脂成分に対して60重量%未満であることが好ましく、特に好ましくは50重量%未満である。すなわち、含有量が多すぎると、高粘度となりハンドリング性に欠ける傾向がみられるからである。
また、上記フルオレン型エポキシ樹脂は、屈折率が1.60以上であることが好ましく、特に好ましくは屈折率が1.62以上である。
また、ハンドリング性や信頼性を高める観点から、所望の屈折率を満たす範囲内において、上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物だけでなくフルオレン型エポキシ樹脂以外の1官能あるいは2官能のエポキシ樹脂等を配合することもできる。上記エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシや水添ビスフェノール型エポキシ樹脂等があげられるが、特に高屈率化を目的とした場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
<エポキシ樹脂用硬化剤>
上記エポキシ樹脂用硬化剤としては、光重合開始剤や熱酸発生剤、イミダゾール系硬化触媒等のようなエポキシ樹脂の重合反応を進行させる硬化剤や、あるいは硬化助剤がその用途に応じて適宜使用される。例えば、光重合開始剤の場合としては、カチオン重合を開始させることができるものであればよく、例えば、アンチモンまたはリン等からなるアニオン成分と、スルホニウムやヨードニウム、ホスホニウム等のカチオン成分とで形成されるオニウム塩等が使用できる。具体的には芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等を用いることができる。その中でも、光硬化性の観点から、芳香族スルホニウム塩が好ましい。
上記エポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、例えば、光重合開始剤の場合は、光学部品用樹脂組成物の樹脂成分100重量部に対して0.05〜3重量部に設定することが好ましく、特に好ましくは0.05〜2重量部である。すなわち、含有量が少なすぎると、硬化性が悪化する傾向がみられ、多すぎると、硬化性は向上するが硬化物の透明性が損なわれる傾向がみられる。
<その他の添加剤>
本発明の光学部品用樹脂組成物には、ハンドリング性や硬化性向上の観点から、オキセタン樹脂を添加することも可能である。上記オキセタン化合物としては1分子に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物が用いられる。例えば、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[2−(3−オキセタニル)ブチル]エーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、4,4′−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4'−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,2'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビフェニル、3,3',5,5'−テトラメチル[4,4'−ビス(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、2,7−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ナフタレン、1,6−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、3(4),8(9)−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル−トリシクロ[5,2,1,2,6]デカン、1,2−ビス{[2−(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]エチルチオ}エタン、4,4'−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]チオジベンゼンチオエーテル、2,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]ノルボルナン、2−エチル−2−[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシメチル]−1,3−o−ビス[(1−エチル−3−オキセタニル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−o−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−o−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−プロパン−1,3−ジオール、1,4−o−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]−ブタン−1,4−ジオール、2,4,6−o−トリス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]シアヌル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記オキセタン化合物の含有量は、光学部品用樹脂組成物中の全樹脂成分に対して5〜40重量%に設定することが好ましい。すなわち、含有量が多すぎると、所望とする高い屈折率が得られ難くなる傾向がみられる。
また、本発明の光学部品用樹脂組成物には、硬化性を高める目的で、アントラセンなどの光増感剤や酸増殖剤を配合することができる。さらには、ガラス等の基材上に硬化物を作製する用途においては、基材との接着性を高めるために、シラン系あるいはチタン系のカップリング剤を添加してもよい。また、その他の成分として、合成ゴムやシリコーン化合物等の可撓性付与剤、さらに酸化防止剤、消泡剤、各種顔料、染料、無機充填材等の添加剤も、必要に応じて適宜に配合することができる。一方で、ハンドリング性向上を目的とした有機溶剤等の添加は、成形時のボイドの発生や特性低下の観点から好ましくなく、無溶剤系として設計されることが好ましい。
本発明の光学部品用樹脂組成物は、例えば、上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物やフルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤と、さらには必要に応じてその他の添加剤(オキセタン化合物等)とを、所定の割合で配合し、加熱溶融混合することにより作製することができる。
このようにして得られる本発明の光学部品用樹脂組成物は、以下の物性(1)〜(3)を全て備えており、これが本発明の特徴である。
(1)粘度
本発明の光学部品用樹脂組成物は、25℃における粘度が0.1〜20Pa・sの範囲であり、好ましくは0.1〜18Pa・sの範囲である。すなわち、粘度が低すぎると、例えばインクジェット方式等で滴下する際に溶液量のコントロールが難しく、粘度が高すぎると、ハンドリング性が劣るからである。
上記光学部品用樹脂組成物の粘度測定は、例えば、25℃の温度条件下、東機産業社製のE80型粘度計(RE−80U)にて、標準ローター(1°34′×R24)を用いて測定することができる。
(2)屈折率
本発明の光学部品用樹脂組成物は、硬化物の屈折率が1.57以上であり、好ましくは1.59〜1.64の範囲である。すなわち、硬化物の屈折率が低すぎると、例えばモバイル機器などの光学レンズ等を成形する場合にレンズが厚くなるため、カメラモジュールの低背化が難しくなる恐れがあるからである。
上記硬化物の屈折率は、光学部品用樹脂組成物(液状樹脂)を、所定の大きさ(1×1.5×0.5cm)の透明成形型に流し込み、紫外線(UV)を照射(10,000mJ/cm2)し硬化させた後、型から外し所定条件(150℃×1時間)にて加熱処理を行う。このようにして得られた成形物の表面を、グラインダーを用いて研磨した後、屈折率計(アタゴ社製)を用いて、25℃環境下での屈折率を測定することができる。
(3)アッベ数
本発明の光学部品用樹脂組成物は、硬化物のアッベ数が20〜40の範囲であり、好ましくは20〜35の範囲である。すなわち、硬化物のアッベ数が小さすぎると、得られる硬化物の波長依存性が大きくなり用途によっては色にじみ等の懸念があるからである。
本発明において、アッベ数とは、いわゆる光学レンズ等の光学部品(硬化体)における逆分散能を指称するものであって、JIS Z 8120に準じ、例えば、光学部品用樹脂組成物の硬化体(試験片)を用い、アッベ屈折率計により、25±10℃にて測定され、下記の数式(x)にて算出される値である。
アッベ数=([589nmにおける屈折率]−1)/([486nmにおける屈折率]−[656nmにおける屈折率])・・・(x)
上記硬化物のアッベ数数の測定は、例えば、硬化物(光学部品等)の表面をグラインダーにより研磨した後、屈折率計(例えば、アタゴ社製)を用いて測定することができる。
さらに、本発明の光学部品用樹脂組成物は、40℃における粘度が0.05〜1.6Pa・sの範囲である。すなわち、粘度が低すぎると、例えばインクジェット方式の場合に液量コントロールが難しい傾向がみられ、粘度が高すぎると、ハンドリング性が劣る傾向がみられる。
また、本発明の光学部品用樹脂組成物は、硬化物の波長400nmにおける透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは83%以上である。すなわち、透過率が低すぎると、透明性が劣る傾向がみられる。
本発明の光学部品用樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして使用される。すなわち、ガラス等の透明基板上に上記樹脂組成物をポッティングし、その上から所望の成形加工型を押し当てることにより、上記成形加工型内へ上記樹脂組成物を充填させ、そこへ光照射を行うことにより硬化させることができる。そして、その後、上記成形加工型を成型型より取り外すことにより、透明基板上で一体化された上記樹脂組成物の硬化体(成形加工物)を得ることができる。あるいは、光を透過する透明型内へ樹脂組成物を充填し光硬化させることも可能である。本発明の光学部品用樹脂組成物は、このような製法により、例えばハイブリッドレンズを作製することができる。また、本発明の光学部品用樹脂組成物は、成形加工型内でそれ自身単独で硬化させて光学レンズ等の光学部品とすることもできる。このようにして得られた成形体(硬化体)は、成型型より取り外し、さらに必要に応じて所定の温度での加熱処理を行ってもよい。上記加熱により、硬化物の耐熱安定性を高めて、特に透明基板との積層物の場合には、基板と樹脂硬化物間の密着力を高めることができる。
上記光照射には、例えば、装置としてUVランプや特定波長のシングルバンドのランプ等を用いることができ、光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射量としては、2000〜200000mJ/cm2が好ましい。すなわち、照射量が上記範囲未満では、硬化不充分のために、基板上に所望の硬化物形状が得られない可能性があり、上記範囲を超えると、過度の照射による光劣化が生じ、その後の加熱処理等により着色し透明性が損なわれるおそれがあるからである。また、上記光照射後の加熱処理の条件としては、80〜170℃で1時間程度が好ましい。
なお、本発明の光学部品用樹脂組成物は、上記のような成形加工型によらず、シート状に成形することもできる。
そして、上記のようにして得られる本発明の光学部品用樹脂組成物は、ハンダリフロー時の熱によっても変色の小さい、熱ストレスに対し安定した機械特性が得られるといった効果が得られる。そのため、本発明の硬化物を搭載した部品等をハンダリフローにより一括搭載する際に有利に使用する事ができる。
本発明の光学部品用樹脂組成物は、先に述べたような製法により、光学レンズ等の光学部品用の成形材料(光学部品用材料)として用いられる他、光導波路や光学部品固定用光硬化型接着剤等に用いることができる。
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
まず、実施例に先立ち、下記に示すエポキシ基含有化合物、エポキシ樹脂用硬化剤、その他の添加剤等を準備した。
<エポキシ基含有化合物
[a−1]
前記式(1)において、R1〜R8が全てH(屈折率1.59、融点50℃、エポキシ当量226g/eq)
[a−2]
前記式(1)において、R5がフェニル基でR8が−O−Gly(Gly:グリシジル基)であり、それ以外のR1〜R7はH(屈折率1.62、融点70℃、エポキシ当量165g/eq)
[a−3]
前記式(1)において、R3が−O−Gly(Gly:グリシジル基)であり、それ以外のR1〜R8はH(屈折率1.585、融点40℃、エポキシ当量113g/eq)
<エポキシ樹脂用硬化剤>
[b−1]
アニオン成分がSb6 -、カチオン成分が下記構造式(2)である、トリアリールスルホニウム塩系光重合開始剤(光酸発生剤)(50重量%プロピレンカーボネート溶液)
Figure 0006418673
<その他の添加剤>
[c−1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175g/eq、固体(25℃)、軟化点45℃、屈折率1.57)
[c−2]
フルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量259g/eq、屈折率1.64)
[c−3]
3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
[c−4]
シラン系カップリング剤:3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
[c−5]
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド
[c−6]
フルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量311g/eq、屈折率1.68)
[YX4000]
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製)
[YX4000H]
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製)
〔実施例1〜、参考例1〜3、比較例1〜5〕
上記各成分を、後記の表1および表2に示す割合で配合し、加熱溶融混合を行い、光学部品用樹脂組成物を作製した。
このようにして得られた実施例、参考例および比較例の光学部品用樹脂組成物に関し、下記の基準に従って各特性評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示す。
[屈折率]
光学部品用樹脂組成物(液状樹脂)を、1×1.5×0.5cmの透明成形型に流し込み、紫外線(UV)を10,000mJ/cm2照射し硬化させた後、型から外し150℃×1時間の加熱処理を行った。このようにして得られた成形物の表面を、グラインダーを用いて研磨した後、屈折率計(アタゴ社製)を用いて、25℃環境下での屈折率を測定した。その結果、屈折率が1.57未満となったものを×、屈折率が1.57以上であったものを〇と評価した。
[アッベ数]
屈折率測定サンプルを使用して、屈折率測定と同装置(アタゴ社製)のアッベ測定モードにて上述の数式(x)に基づきアッベ数を算出した。その結果、アッベ数が20未満もしくは40を超えたものを×、アッベ数が20以上40以下となったものを〇と評価した。
[25℃粘度]
光学部品用樹脂組成物の25℃環境下における粘度を、東機産業社製のE80型粘度計(RE−80U)にて、標準ローター(1°34′×R24)を用いて測定した。その結果、粘度が0.1Pa・s未満もしくは20Pa・sを超えたものを×、粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下のものを〇として評価した。
[40℃粘度]
光学部品用樹脂組成物の40℃環境下における粘度を、東機産業社製のE80型粘度計(RE−80U)にて、標準ローター(1°34′×R24)を用いて測定した。その結果、粘度が0.05Pa・s未満もしくは5Pa・sを超えたものを×、粘度が0.05Pa・s以上5Pa・s以下のものを〇として評価した。
[耐熱変色性a(透明性)]
光学部品用樹脂組成物を用いて、シリコーン離型処理を施したPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイアホイルMRF−50)上に、厚み300μmとなるよう製膜し、これに光照射(光量10,000mJ/cm2)を行い一次硬化させた。その後、150℃×1時間の加熱処理をし、硬化体(試験片)を得た。この試験片について、分光光度計(日本分光株式会社)を用いて評価し、波長400nmの光透過率を測定し確認した。その結果、光透過率が70%未満のものを×、光透過率が70%以上80%未満ものを△、光透過率が80%以上のものを〇として評価した。
[耐熱変色性b(透明性)]
光学部品用樹脂組成物を用いて、シリコーン離型処理を施したPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイアホイルMRF−50)上に、厚み300μmとなるよう製膜し、これに光照射(光量10,000mJ/cm2)を行い一次硬化させた。その後、150℃×1時間の加熱処理をし、硬化体(試験片)を得た。この試験片にて、260℃、10秒のリフロー炉を通したものを、分光光度計(日本分光株式会社)を用いて評価し、波長400nmの光透過率を測定し確認した。その結果、光透過率が60%未満のものを×、光透過率が60%以上70%未満のものを△、光透過率が70%以上のものを〇として評価した。
Figure 0006418673
Figure 0006418673
上記結果から、低粘度であり、高屈折率低アッベの実施例品は、比較例品に比べて、透明性に関して良好な結果が得られた。したがって、実施例品の光学部品用樹脂組成物の使用により、高い屈折率で、耐熱変色性に優れた光学レンズ等の光学部品を提供することが可能となる。また、この樹脂組成物を用いてなる光学部品は、ハンダリフロー時の熱によっても変色をすることなく、熱ストレスに対し安定した機械特性を有するため、撮像装置をハンダリフローにより一括搭載する際に有利に使用することができる。
これに対して、比較例1〜3品は、25℃での粘度が極めて高く、40℃での粘度も極めて高いため、ハンドリング性に劣る。特に比較例1,2品は、透明性が低く光学部品材料としては適さないことは明らかである。また、比較例4品は、硬化物のアッベ数が高く屈折率が低く、40℃における粘度も低すぎるため、溶液を一定量滴下する際のコントロールに難があった。比較例5品は、硬化物のアッベ数が低く、また25℃での粘度も高いため、ハンドリング性に劣る。さらに比較例5品は、数時間常温に置いただけで樹脂が白濁しており、実使用は困難であることが確認された。
本発明の光学部品用樹脂組成物は、高い透明性を有しながら、高い屈折率を有する立体造形物(硬化物)となり得るため、光学レンズ等の光学部品用の成形材料(光学部品用材料)や、光学部品固定用光硬化型接着剤等の光学用途として有用である。また、本発明の光学部品用樹脂組成物を用いた光学部品は、信頼性が高いため、光学レンズ等の光学部品(光学製品)に用いることができる。

Claims (4)

  1. 光学部品用樹脂組成物の25℃における粘度が0.1〜8.7Pa・sの範囲であり、40℃における粘度が0.05〜1.3Pa・sの範囲であり、光学部品用樹脂組成物を下記硬化条件1で硬化した硬化物の屈折率が1.57以上で、アッベ数が20〜40の範囲である光学部品用樹脂組成物であって、上記光学部品用樹脂組成物に含まれるエポキシ基含有化合物が、下記の一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物および屈折率が1.60以上のフルオレン型エポキシ樹脂からなり、かつ、上記光学部品用樹脂組成物中の全樹脂成分に対する上記フルオレン型エポキシ樹脂の割合が60重量%未満であることを特徴とする光学部品用樹脂組成物。
    硬化条件1:光学部品用樹脂組成物を、1×1.5×0.5cmの成形型に流し込み、紫外線を10,000mJ/cm2照射し硬化させた後、型から外し150℃×1時間の加熱処理を行う。
    Figure 0006418673
  2. 光学部品用樹脂組成物を下記硬化条件2で硬化した硬化物の波長400nmにおける透過率が80%以上である請求項1記載の光学部品用樹脂組成物。
    硬化条件2:光学部品用樹脂組成物を、厚み300μmとなるよう製膜し、これに光量10,000mJ/cm2の光照射を行い硬化させた後、150℃×1時間の加熱処理を行う。
  3. 上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有化合物の屈折率が1.57以上で、融点が90℃以下である請求項1または2記載の光学部品用樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光学部品用樹脂組成物の硬化からなる光学部品であって、屈折率が1.57以上で、アッベ数が20〜40の範囲、波長400nmにおける透過率が80%以上であることを特徴とする光学部品
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