JP6389506B2 - インクジェット用水性インク組成物、固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法及び固体製剤 - Google Patents
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Description
すなわち、ある特定の染料は、印刷後においても、一定の湿度下において他の染料より固体製剤に対する浸透性が高いことが確認された。そのため、例えば、その特定の染料のみを用いて単色で固体製剤表面に印刷した場合には、時間の経過と共に固体製剤に浸透する結果、印刷画像の彩度が低下し褪色を発生させる。また、他の染料と混合した染料インクで固体製剤表面に印刷した場合には、特定の染料は他の染料よりも固体製剤に対する浸透性が高いことから両者は分離し、他の染料だけが固体製剤表面に残存する。これにより、印刷画像としては他の染料だけで表されることになり、印刷画像の変色が発生する。
本実施の形態に係るインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)について、以下に説明する。
HLB値=20×(親水基の式量の和/分子量)
HLB値は0〜20の範囲内の値となり、HLB値が大きいほど親水性が強くなり、HLB値が小さいほど疎水性が強くなる。
本実施の形態の固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法は、前述の水性インク組成物を含むインクジェット用水性インク(以下、「水性インク」という場合がある。)を準備する準備工程と、水性インクを用いて固体製剤に対しインクジェット方式印刷する印刷工程と、印刷画像の褪色を抑制する褪色抑制工程とを少なくとも含む。
Δa* 1=a* 1−a* 0 (1)
(但し、前記a* 0は印刷工程直後の固体製剤における印刷画像のL*a*b*表色系における値を表し、前記a* 1は温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下で、24時間保管した後の固体製剤における印刷画像のL*a*b*表色系の値を表す。)
前記L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味し、日本工業規格ではJIS Z 8730に規定されている。
ΔE*(ab)=((ΔL* 2)2+(Δa* 2)2+(Δb* 2)2)1/2 (2)
但し、前記ΔL* 2、Δa* 2及びΔb* 2は、それぞれ以下の通り表される。
ΔL* 2=L* 2−L* 0
(前記L* 0は固体製剤の印刷画像における印刷工程直後のL*a*b*表色系の明度を表し、前記L* 2は固体製剤の印刷画像における積算光量120万luxの可視光を照射した後のL*a*b*表色系の明度を表す。)
Δa* 2=a* 2−a* 0
(前記a* 0は、固体製剤の印刷画像における印刷工程直後のL*a*b*表色系の値を表し、前記a* 2は、固体製剤の印刷画像における積算光量120万luxの可視光を照射した後のL*a*b*表色系の値を表す。)
Δb* 2=b* 2−b* 0
(前記b* 0は固体製剤の印刷画像における印刷工程直後のL*a*b*表色系の値を表し、前記b* 2は、固体製剤の印刷画像における積算光量120万luxの可視光を照射した後のL*a*b*表色系の値を表す。)
本明細書において、「固体製剤」とは食品製剤及び医薬製剤を含む意味であり、固体製剤の形態としては、例えばOD錠(口腔内崩壊錠)、素錠、FC(フィルムコート)錠、糖衣錠等の錠剤又はカプセル剤が挙げられる。また、固体製剤は、医薬品用途であってもよく、食品用途であってもよい。食品用途の錠剤の例としては、錠菓やサプリメント等の健康食品が挙げられる。
下記表1に示す通り、アゾ系染料(特定染料)として2.4質量%の赤色2号、その他の染料として3質量%の黄色5号及び0.6質量%の青色1号、15質量%の褪色抑制剤、表面張力調整剤として2質量%のポリグリセリン脂肪酸エステル類(商品名:SYグリスター、阪本薬品工業(株)製)、湿潤剤として7.5質量%のポリエチレングリコール、及び69.5質量%のイオン交換水を混合して、黒色のインクジェット用水性インク組成物Aを作製した。但し、褪色抑制剤については、後述の通り、実施例毎にそれぞれ変更した。
下記表1に示す通り、アゾ系染料(特定染料)として3.6質量%の赤色40号、その他の染料として1.68質量%の黄色5号及び0.72質量%の緑色3号、15質量%の褪色抑制剤、表面張力調整剤として2質量%のポリグリセリン脂肪酸エステル類(商品名:SYグリスター、阪本薬品工業(株)製)、湿潤剤として10質量%のポリエチレングリコール、67質量%のイオン交換水を混合して、黒色のインクジェット用水性インク組成物Bを作製した。但し、褪色抑制剤については、後述の通り、実施例毎にそれぞれ変更した。
下記表1に示す通り、アゾ系染料(特定染料)として6質量%の赤色102号、その他の染料として2質量%の黄色5号及び2質量%の青色1号、15質量%の褪色抑制剤、表面張力調整剤として2質量%のポリグリセリン脂肪酸エステル類(商品名:SYグリスター、阪本薬品工業(株)製)、湿潤剤として7.5質量%のポリエチレングリコール、65.5質量%のイオン交換水を混合して、黒色のインクジェット用水性インク組成物Cを作製した。但し、褪色抑制剤については、後述の通り、実施例毎にそれぞれ変更した。
インクジェット用水性インク組成物Dについては、褪色抑制剤を添加せず、さらに下記表2に示す配合割合としたこと以外は、水性インク組成物Aと同様にして作製した。
インクジェット用水性インク組成物Eについては、褪色抑制剤を添加せず、さらに下記表2に示す配合割合としたこと以外は、水性インク組成物Bと同様にして作製した。
インクジェット用水性インク組成物Fについては、褪色抑制剤を添加せず、さらに下記表2に示す配合割合としたこと以外は、水性インク組成物Cと同様にして作製した。
実施例1〜24でそれぞれ用いた水性インク組成物は、下記表3〜表5に示す通りとした。また、褪色抑制剤についても、それぞれ下記表3〜表5に示すものを用いた。尚、実施例16〜18で用いた還元イソマルツロースとしては、パラチニット(登録商標、三井製糖(株)製)を用いた。
比較例1〜3でそれぞれ用いた水性インク組成物は、前記表5に示す通りとした。
実施例1〜24及び比較例1〜3のサンプルにおける水性インク組成物の変色抑制性については、以下の試験を行うことにより評価した。先ず、各実施例及び比較例のサンプルに印刷された画像について、それぞれ色彩色差計(型番:VSS7700、日本電色工業(株)製)を用いて、L*a*b*表色系におけるL* 0、a* 0、b* 0の初期値をそれぞれ測定した(表6〜表14では、保管時間0時間でのL*、a*、b*の値)。
ΔL* 1=L* 1−L* 0
Δa* 1=a* 1−a* 0
Δb* 1=b* 1−b* 0
ΔE*(ab)1=((ΔL* 1)2+(Δa* 1)2+(Δb* 1)2)1/2
ΔC*(ab)1=((Δa* 1)2+(Δb* 1)2)1/2
ΔH*(ab)1=(ΔE*(ab)1 2−ΔL* 1 2−ΔC*(ab)1 2)1/2
各実施例の水性インク組成物の褪色抑制性については、以下の試験を行うことにより評価した。すなわち、各実施例及び比較例に係る水性インク組成物によるインクジェット印刷後の糖衣錠(サンプル)について、それぞれ色彩色差計(型番:VSS7700、日本電色工業(株)製)を用いて、L*a*b*表色系におけるL* 0、a* 0、b* 0をそれぞれ測定した(表15〜表23では、積算光量0luxでのL*、a*、b*の値)。
ΔE*(ab)2=((ΔL* 2)2+(Δa* 2)2+(Δb* 2)2)1/2
ΔL* 2=L* 2−L* 0
Δa* 2=a* 2−a* 0
Δb* 2=b* 2−b* 0
ΔC*(ab)2=((Δa* 2)2+(Δb* 2)2)1/2
ΔH*(ab)2=(ΔE*(ab)2 2−ΔL* 2 2−ΔC*(ab)2 2)1/2
表14に示す通り、比較例1〜3のサンプルにおいては、糖衣錠に印刷された印刷画像のa*値が、温度25℃、相対湿度60%の環境下で24時間保管した後に、大きく減少することが示された。すなわち、Δa* 1の値が極めて小さくなり、印刷画像が黒色から緑色に変色していることが確認された。
Claims (6)
- 固体製剤への印刷に用いられるインクジェット用水性インク組成物であって、
可食性の染料と、褪色抑制剤とを含み、
前記染料が、赤色2号、赤色4号、赤色40号、赤色102号、黄色4号及び黄色5号からなる群より選ばれる少なくとも1種の特定染料と、任意成分としての他の染料とを含むものであり、
前記褪色抑制剤が、還元イソマルツロースであり、
さらに、前記褪色抑制剤の含有量が前記水性インク組成物の全質量に対し50質量%以下であるインクジェット用水性インク組成物。 - 固体製剤に印刷される印刷画像の褪色抑制方法において、
可食性の染料と、褪色抑制剤とを含むインクジェット用水性インク組成物であって、前記染料が赤色2号、赤色4号、赤色40号、赤色102号、黄色4号及び黄色5号からなる群より選ばれる少なくとも1種の特定染料と、任意成分としての他の染料とを含むものであり、前記褪色抑制剤が還元イソマルツロースであり、前記褪色抑制剤の含有量が前記水性インク組成物の全質量に対し50質量%以下であるインクジェット用水性インク組成物、を含むインクジェット用水性インクを準備する準備工程と、
前記インクジェット用水性インクを用いてインクジェット方式により前記固体製剤表面に印刷し、前記印刷画像を形成する印刷工程と、
前記印刷画像中の褪色抑制剤が、前記特定染料の前記固体製剤への浸透を抑制する褪色抑制工程とを含む固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法。 - 前記褪色抑制工程は、印刷工程直後の固体製剤における印刷画像を基準に、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気下で、24時間保管した後の固体製剤における印刷画像の、JIS Z 8730に準拠するL * a * b * 表色系のΔa * を−18以上にする請求項2に記載の固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法。
- 前記印刷画像中の褪色抑制剤が、前記特定染料の光分解を抑制する光褪色抑制工程をさらに含む請求項2又は3に記載の固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法。
- 前記光褪色抑制工程は、印刷工程直後の固体製剤における印刷画像を基準に、積算光量が120万ルクスの可視光を照射した後の固体製剤における印刷画像の、JIS Z 8781に準拠するL * a * b * 表色系の色差ΔE * (ab)を17以下にする請求項4に記載の固体製剤の印刷画像の褪色抑制方法。
- インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、
前記インクジェット用水性インクは、請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物を含むものである固体製剤。
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