JP6366264B2 - 像加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式等の複写機やプリンタその他の画像形成装置に搭載される画像の加熱定着装置として用いれば好適な電磁誘導加熱方式の像加熱装置に関する。また、当該像加熱装置を搭載した画像形成装置に関する。
像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を加熱して固着画像として定着する或いは仮定着する加熱定着装置、記録材に定着された画像を再加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢度増大装置(画像改質装置)等を挙げることができる。
電子写真方式の複写機・プリンタ等の画像形成装置に装備される加熱定着装置を例にして説明する。従来、加熱定着装置は、定着ローラ(熱ローラ)とそれに圧接する加圧ローラとで形成されるニップ部に未定着画像を支持した記録材を通過させて定着を行うものである。
近年、定着ローラの加熱方法に電磁誘導加熱方式が提案されている(特許文献1)。電磁誘導加熱方式は、被加熱材を直接加熱することができるため、昇温速度が速くクイックスタート性に優れ、プリント待ち時間短縮に有利である。
電磁誘導加熱方式において、磁性体に巻線を施した励磁コイルを定着ローラ内部に配置し、上記励磁コイルに交流電流を通電させ、上記励磁コイルにて生成された交番磁束を上記磁性体の内部に誘導して磁路を形成する。そして、導電体で形成された定着ローラ内部に誘起された起電力によって電流を発生させ、そのジュール熱により定着ローラを加熱する構成が提案されている(特許文献2、3)。
特開平8−129313号公報 特開昭51−120451号公報 特開昭52−139435号公報
先行文献で提案された加熱方式において、ウォームアップ時間を更に短くしようとした場合、発熱体である定着ローラの基層の厚みを薄くして熱容量を小さくする方法がある。しかし、定着ローラの基層を薄くしすぎた場合、定着ローラの強度が不足し加熱定着装置内に異物が混入した場合等に定着ローラが破損してしまい、装置のロバスト性(頑強性)が低下してしまう。従って、上記の熱容量の低減とトレードオフ(二律背反)となる。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、発熱体である像加熱用回転体の基層の厚みを薄くしてロバスト性を低下させずとも、ウォームアップ時間を短縮できるようにすることを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明の第1の好適な態様は、導電層を有する回転体と、前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と実質平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、前記螺旋形状部の中に前記母線方向に沿って配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、を有し、記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置において、前記磁性コアは、材質が強磁性体であり、前記回転体の外部でループを形成しない形状であり、前記導電層のパーミアンスと前記導電層と前記磁性コアの間の領域のパーミアンスとの和が前記磁性コアのパーミアンスの28%以下であり、前記回転体は、基層と、前記基層の外側に形成された前記導電層と、を有し、前記基層の材質の体積電気抵抗率は、前記導電層の材質の体積電気抵抗率よりも大きい事を特徴とする像加熱装置である。
本発明の第2の好適な態様は、記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記記録材に形成された未定着画像を固着画像として定着する加熱定着装置と、を有する画像形成装置であって、前記加熱定着装置が上記の像加熱装置である事を特徴とする画像形成装置である。
本発明によれば、小型で、電力の変換効率が高く、かつ、回転体の強度を満足させつつウォームアップ時間を短縮する事が可能であり、ロバスト性を低下させる事なくウォームアップ時間を短縮する電磁誘導加熱方式の加熱定着装置を提供することが出来る。
実施例1の定着スリーブの層構成を示す横断面模式図 実施例1における画像形成装置の概略構成図 実施例1における定着装置の途中部分省略の縦断正面模式図 同定着装置の要部の拡大横断右側面図と制御系統のブロック図 同定着装置の説明図(その1) 同定着装置の説明図(その2) 同定着装置の説明図(その3) 比較例1の定着スリーブの層構成を示す横断面模式図 実施例1と比較例1の定着スリーブの効果検証グラフ 実施例2の定着スリーブの層構成を示す横断面模式図 実施例2の定着スリーブの層構成を示す横断面模式図 発熱メカニズムの説明図(その1) 発熱メカニズムの説明図(その2) 磁気等価回路 磁性コアを複数分割した場合の図 回路の効率に関する説明図 等価回路 電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を表した図 導電層の外側ルートを通過する磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったグラフ 導電層の内側(磁性コアと導電層の間の領域)に温度検知部材を有している装置構成の図 図20の装置において温度検知部材が無い領域部分と温度検知部材が有る領域部分の断面構造模式図
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図2は本発明に従う像加熱装置を画像定着装置として搭載した画像形成装置の一例の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタである。
101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)であり、矢示R101の時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。ドラム101はその回転過程で接触帯電ローラ102により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
103は画像露光手段としてのレーザービームスキャナである。このスキャナ103はイメージスキャナ・コンピュータ等の外部機器(ホスト装置)1000(図4)から制御回路(制御手段)6に入力する画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応してオン/オフ変調したレーザー光Lを出力する。そして、その出力レーザー光Lでドラム101の帯電処理面を走査露光(照射)する。この走査露光によりドラム101の表面の露光明部の電荷が除電されてドラム101の表面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
104は現像装置であり、現像スリーブ104aからドラム101の表面に現像剤(トナー)が供給されてドラム101の表面の静電潜像が可転写像であるトナー像として順次に現像される。
105は給紙カセットであり、記録媒体としての記録材Pを積載収納させてある。記録材Pは画像形成装置によってトナー像が形成されるシート状の部材であり、例えば、定型或いは不定型の普通紙、厚紙、薄紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHTシート、光沢紙等が含まれる。以下、用紙と記す。また、本実施例における説明では、便宜上、記録材(シート)Pの扱いを通紙、排紙、給紙、通紙部、非通紙部などの用語を用いて説明するが、記録材は紙に限定されるものではない。
給紙スタート信号に基づいて給紙ローラ106が駆動されて給紙カセット105内の用紙Pが一枚ずつ分離給紙される。そして、用紙Pは、レジストローラ107を介して、ドラム101と接触型・回転型の転写部材としての転写ローラ108との当接ニップ部である転写部位108Tに所定のタイミングで導入される。すなわち、ドラム101上のトナー像の先端部が転写部位108Tに到達したとき、用紙Pの先端部もちょうど転写部位108Tに到達するタイミングとなるようにレジストローラ107で用紙Pの搬送が制御される。
転写部位108Tに導入された用紙Pはこの転写部位108Tを挟持搬送され、その間、転写ローラ8には不図示の転写バイアス印加電源から所定に制御された転写電圧(転写バイアス)が印加される。転写ローラ8にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加されることで転写部位108Tにおいてドラム101の表面側のトナー像が用紙Pの表面に静電的に転写される。
転写部位108Tにおいてトナー像(未定着画像)の転写を受けた用紙Pはドラム101の表面から分離されて搬送ガイド109を通って像加熱装置としての加熱定着装置(定着器:以下、定着装置と記す)Aに導入されてトナー像の熱定着処理を受ける。用紙Pが定着装置Aに搬送されるまでの画像形成機構部が用紙Pに未定着画像T(図4)を形成する画像形成部である。定着装置Aについては次の(2)項で詳述する。
一方、用紙分離後(用紙Pに対するトナー像転写後)のドラム101の表面はクリーニング装置110で転写残トナーや紙粉等の除去を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。定着装置Aを通った用紙Pは、排紙口111から排紙トレイ112上に排出される。
(2)定着装置
2−1)概略構成
図3は定着装置Aの途中部分省略の縦断正面模式図、図4は定着装置Aの要部の拡大横断右側面図であり、制御系統のブロック図も記載してある。
ここで、この定着装置A若しくはその構成部材に関して、正面側とは定着装置Aを用紙入口側から見た面、背面側とはその反対側の面(用紙出口側)である。左右とは定着装置Aを正面側から見て左(一端側)または右(他端側)である。また、上流側と下流側は用紙搬送方向a(図4)に関して上流側と下流側である。長手方向(幅方向)や用紙幅方向とは、用紙搬送路面において、用紙Pの搬送方向aに直交する方向に実質平行な方向である。短手方向とは用紙搬送路面において、用紙Pの搬送方向aに実質平行な方向である。
この定着装置Aは電磁誘導加熱方式の像加熱装置であり、左右方向を長手とする横長の装置である。定着装置Aは、大別して、加熱ユニット50と、この加熱ユニット50と相互圧接してニップ部Nを形成する対向部材としての弾性を有する加圧ローラ7と、これらを収容した筐体60と、を有する。
加熱ユニット50は、筒状の像加熱用回転体としての定着スリーブ(定着フィルム:円筒形回転体)1、定着スリーブガイド(フィルムガイド:ニップ部形成部材)9、磁性コア2、励磁コイル3などの組立て体である。定着スリーブ1は、後述するように、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層(発熱層)を有する。本実施例ではこの定着スリーブ1は全体的に可撓性を有する円筒形回転体である。
定着スリーブガイド9は耐熱性樹脂PPS等で構成されている。加熱ユニット50は定着スリーブガイド9の左右の端末構造部9L、9Rをそれぞれ筐体60の左右の側板61L、61R間に位置決め固定して配設されている。
加圧ローラ7は像加熱用回転体としての定着スリーブ1と協働して用紙Pを挟持搬送して加熱するニップ部Nを形成する対向部材であり、上記の加熱ユニット50の下側において加熱ユニット50に対して実質平行に配列されている。そして、芯金7aの左右の端末軸部がそれぞれ軸受け手段としての軸受け部材71L、71Rを介して筐体60の左右の側板61L、61R間に回転可能に保持されて配設されている。
軸受け部材71L、71Rはそれぞれ側板61L、61Rに対して上下方向にスライド移動可能に配設されており、かつ、付勢手段(付勢部材)としての付勢ばね72L、72Rにより所定の押圧力Fで押し上げ付勢されている。これにより、加圧ローラ7は弾性層7bの弾性に抗して定着スリーブ1を挟んで定着スリーブガイド9の下面部に圧接されている。
本実施例においては、加圧ローラ7を総圧約100N〜200N(約10kgf〜約20kgf)の押圧力をもって上記のように圧接させている。この圧接により加圧ローラ7の弾性層7bが変形して、定着スリーブ1と加圧ローラ7との間に用紙搬送方向aに関して所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nが形成される。
定着装置Aの定着シーケンス(定着処理)の動作は次のとおりである。制御回路(制御手段)6は、所定の制御タイミングで加圧ローラ7を駆動回転体として図4の矢印R7の反時計方向に所定の速度で回転駆動させる。加圧ローラ7の回転駆動は芯金7aの右側の端末軸部に固着された駆動ギアGに制御回路6により制御されるモータ(駆動源)Mの駆動力が駆動伝達系(不図示)を介して伝達されてなされる。
加圧ローラ7が回転駆動されることで、ニップ部Nにおいて定着スリーブ1に加圧ローラ7との摩擦力で回転トルクが作用する。これにより、定着スリーブ1がその内面を定着スリーブガイド9に密着させて摺動しながら、定着スリーブガイド9、励磁コイル3、磁性コア2の組み立て体の回りを回転周速度とほぼ同じ周速度で矢印R1の時計方向に従動回転する。定着スリーブ1の左右の端面は、それぞれ、定着スリーブガイド9の左右の端部構造部9L、9Rのフランジ面9a(図3)で規制されている。これにより、定着スリーブ1の回転に伴う長手方向への移動(蛇行)が規制される。
また、制御回路6は高周波コンバータ(励磁回路)5から励磁コイル3に対して高周波電流を流す。これにより発生する交番磁界の作用により定着スリーブ1の後述する導電層1bが電磁誘導発熱して定着スリーブ1が有効全長域に渡って急速に加熱されて昇温する。その定着スリーブ1の昇温が定着スリーブ1の外側において定着スリーブ1の長手方向(幅方向、母線方向)のほぼ中央部に接触させて或いは僅少な隙間を存して対向させて配設された温度検知素子(検温素子:サーミスタ)4によって検知される。本実施例において温度検知素子4として非当接型サーミスタを用いている。
制御回路6は温度検知素子4で検知される定着スリーブ温度に基づいて定着スリーブ温度が所定の目標設定温度(定着温度:例えば約150℃〜200℃)に昇温して温調されるように高周波コンバータ5から励磁コイル3への供給電力を制御する。
この定着装置Aに対して転写部位108T側から未定着トナー像Tを担持した用紙Pがトナー像担持面側上向きで導入される。なお、図3において、Pmaxは装置に導入可能な用紙Pの最大通紙領域幅(記録材の最大搬送領域幅)である。そして、ニップ部Nにおいて用紙Pが挟持搬送される過程において定着スリーブ1の熱とニップ部Nにかかっている圧力によって未定着トナー像Tが固着像として用紙Pに熱圧定着される。ニップ部Nを出た用紙Pは定着装置Aから外に送り出される。
2−2)定着スリーブ
図1は本実施例における筒状の像加熱用回転体としての定着スリーブ1の層構成を説明する横断面模式図である。定着スリーブ1は横断面の層構成が内側から基層1a、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層(発熱層)1b、最外側の表層1cで構成された、全体的に可撓性を有し自由状態においては円筒状を呈している部材である。定着スリーブ1の直径は10〜100mmが適している。本実施例では定着スリーブ1の外径は24mmとした。
ここで、筒状の像加熱用回転体としての定着スリーブ1は、上記のように、基層1aと、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する発熱層である導電層1bと、を機能分離し、基層1aの外側に導電層1bを形成する。そして、基層1aの材質の体積電気抵抗率は、導電層1bの材質の体積電気抵抗率よりも大きい構成とする。更には、基層1aの材質の比重は、導電層1bの材質の比重よりも小さい構成とする。このような構成により、基層1aはある程度の厚みをもたせあまり発熱しない材料で形成し、導電層1bは薄い例えば金属層で形成する構成をとることができる。
したがって、像加熱用形回転体としての定着スリーブ1の強度を満足させつつウォームアップ時間を短縮する事が可能であり、ロバスト性を低下させる事なくウォームアップ時間を短縮する定着装置を提供することが出来る。
以下、定着スリーブ1の構成をより具体的に説明する。基層1aの材質は非磁性の性質を持ち、体積電気抵抗率が高く、耐熱性に優れた物質が適している。例えば、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)等に代表される耐熱性樹脂、CFRP(炭素繊維強化樹脂)やGFRP(ガラス繊維強化樹脂)等に代表される繊維強化樹脂等がある。
上記した各物質の体積電気抵抗率、耐熱温度を表1に示す。体積電気抵抗率ρは、断面積S、長さがLの試料体に一定電流Iを通電した時の試料体両端の電位差Vを計測し、
ρ=(V・S)/(I・L)
という計算式で算出する。基層1aの厚みは20〜200μmが適している。本実施例では基層1aはPI(ポリイミド)で形成し、厚みは60μmとした。
基層1aの外面に導電層1bを形成する。導電層1bは交番磁界の作用により電磁誘導発熱する発熱層である。この発熱層としての導電層1bの材質は体積電気抵抗率の低い金属が適している。例えば、金、銀、銅、鉄、白金、スズ、ステンレス(SUS)、チタン、アルミニウム、ニッケル等がある。上記した各金属の体積電気抵抗率、及び比重を表2に示す。
表1と表2の対比において、表1に記載のすべての材料(物質)の体積電気抵抗率は表2に記載のすべての材料(物質)の体積電気抵抗率よりも大きい。また、表1に記載のすべての材料の比重は表2に記載のすべての材料の比重よりも小さい。また、表1に記載のすべての材料はいずれも高い耐熱性を有している。
したがって、基層1aは例えば表1に記載の材料を用い、導電層1bは例えば表2に記載の材料を用いることで、基層1aの材質の体積電気抵抗率は導電層1bの材質の体積電気抵抗率よりも大きい構成とした形態の定着スリーブ1を構成することができる。更には、基層1aの材質の比重は導電層1bの材質の比重よりも小さい構成とした形態の定着スリーブ1を構成することができる。
導電層1bの形成方法の一例を説明する。上記金属の微粒子とポリイミド前駆体溶液を含む塗料を作製し、その塗料をブレードやスクリーン印刷等の手段により基層1aの上に塗布して塗膜を形成する。上記塗膜を300〜500℃程度まで徐々に加熱して乾燥させイミド化を進行させる。
導電層1bの厚みは導電層1bの周回抵抗Rによって適切な範囲がある。周回抵抗Rは
R=(ρ×定着スリーブ導電層直径)/(定着スリーブ導電層厚み×定着スリーブ
導電層幅)
という計算式で算出する。
周回抵抗が高すぎると導電層1bに周回電流が流れず発熱できない。周回抵抗が低すぎると周回電流は流れるが抵抗が小さいため発熱量が小さくなり定着に必要な熱量を発生させる事ができない。よって、導電層1bの周回抵抗は適切な範囲がある。
本実施例の場合、導電層1bの周回抵抗は0.1[mΩ]〜50[mΩ]が適している。よって、導電層1bの材質が金や銀、銅、アルミニウムの場合は厚みは0.1μm〜50μm、黄銅の場合は0.5〜150μm、鉄や白金、スズの場合は1〜100μm、SUSやニッケル、チタンの場合厚みは5〜200μmが適している。本実施例では導電層1bの材質は銀を用い厚みは5μmとした。
なお、特許文献1に示すような定着ローラ構成においては、本実施例のような薄い金属の導電層を形成した場合、発熱効率が良くなく定着に必要な熱量を発生させる事は困難である。
導電層1bの外面に離型層1cを形成する。離型層1cは定着スリーブ1へのトナーの付着、及び画像不良の発生を防止する事を目的として最外側の機能層として形成する。
離型層1cの材質は非粘着性に優れた物質が適している。例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン樹脂)がある。また、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン樹脂)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン樹脂)等がある。本実施例では離型層1cの材質はPFAを用い、厚みは15μmとした。
なお、定着スリーブ1は熱容量が小さい程、素早く昇温することが出来、定着装置Aをクイックスタートさせるのに有利である。そのため、定着スリーブ1は可能な限り基層1a、導電層1b、離型層1cを薄く形成し、直径は小さくする方が構成として望ましい。
2−3)磁性コア
図5により定着スリーブ1、磁性コア2、励磁コイル3の関係構成を説明する。像加熱用回転体として定着スリーブ1の内部にて、この回転軸線方向(定着スリーブ1の長手方向(幅方向、母線方向)、以下同じ)に磁性コア2が挿通されている。磁性コア2は、定着スリーブ1を1回以上巻きまわして閉磁路を形成している。即ち、図3のように、磁性コア2は、定着スリーブ1の母線方向において、定着スリーブ1の端面よりも定着スリーブ1の外側に突出して定着スリーブ1の外部でループを形成している。
そして、図3のように、磁性コア2は定着スリーブ1の端面よりも外側に突出した左右の両端部分がそれぞれ定着スリーブガイド9の内側において定着スリーブガイド9の左右の端部構造部に対して位置決め固定支持されて配置される。磁性コア2の断面は四角形状をしており、定着スリーブ1の内部にはほぼ中央に配置させている。
なお、本実施例では磁路は閉磁路で形成しているが、閉磁路に限定される訳ではなく、開磁路で形成しても良い。即ち、磁性コア2は定着スリーブ1の内部のみに配置して開磁路を形成してもよい。つまり、磁性コア2は定着スリーブ1の外部でループを形成しない形状であってもよい。
磁性コア2は、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着スリーブ1の内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく、比透磁率の高い材料や高透磁率の酸化物や合金材質で形成されることが望ましい。例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイ等がある。
磁性コア2は円筒形状部材である定着スリーブ1の内部に収納可能な範囲で、極力断面積を大きくとることが望ましい。磁性コア2の形状は必ずしも角柱形状である必要は無く、円柱形状などで形成してもよい。また、磁性コア2を長手方向に複数分割し、各コア間にギャップ(空隙)を設けても良いが、その際はギャップ距離を極力小さく構成することが望ましい。
2−4)励磁コイル
励磁コイル3は、通常の単一導線を定着スリーブ1の中空部において、磁性コア2に巻数約10巻〜100巻で螺旋状に巻き回して形成される。本実施例では巻き数20回で構成している。円筒形状部材である定着スリーブ1の内部にて、この回転軸線(定着スリーブ1の母線方向)に交差する方向に巻き回されている。そのため、この励磁コイル3に給電接点部3a、3bを介して高周波電流を流すと、円筒形回転体としての定着スリーブ1の軸Xに平行方向に磁界を発生させることが出来る。
即ち、本実施例の定着装置Aは、上記の構成を有する定着スリーブ1を備えている。また、この定着スリーブ1の内部に配置され、螺旋軸が定着スリーブ1の母線方向と実質平行である螺旋形状部を有し、定着スリーブ1の導電層1bを電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイル3と、を備えている。また、コイルの螺旋形状部の中に配置され、交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コア2を備えている。
2−5)温度制御手段
図4、図5における温度検知素子4は、定着スリーブ1の表面温度を検知するために設けられる。本実施例では、温度検知素子4として非当接型サーミスタを用いている。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。また、電源部品コストの観点では、周波数は低いことが好ましい。よって、本実施例では、利用周波数帯の下限付近21kHz〜40kHzの領域において周波数変調制御を行う。制御回路6は、温度検知素子4によって検出された温度を元に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着スリーブ1は電磁誘導加熱されて表面の温度が所定の目標温度に維持・調整される。
2−6)加圧ローラ
加圧ローラ7は、芯金7a、弾性層7b、離型層7cを有している。加圧ローラ7は、図3で説明したように、スライド移動可能な軸受け部材71L、71R及び付勢部材72L、72Rにより所定の加圧力をもって、定着スリーブガイド9との間に定着スリーブ1を挟み圧接させて配置される。付勢部材72L、72Rにより定着スリーブ1と加圧ローラ7が圧接され、加圧ローラ7の弾性層7bが変形して所定幅のニップ部Nが形成される。
芯金7aの材料としては、ステンレス(SUS)やアルミ、鉄等の金属が適している。弾性層7bの材料として耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等が適している。また、断熱性を向上させるため、次のような、低熱容量でありかつ断熱性を有する材料を加圧ローラ弾性層7cとして形成しても良い。即ち、マイクロバルーンなどの中空フィラーなどを配合したバルーンゴム、吸水性ポリマーが含有されたシリコーンゴム、シリコーンゴムを水発泡させたスポンジゴム等である。
離型層7cは加圧ローラ7へのオフセットトナーの付着、及び画像不良の発生を防止する事を目的として形成する。離型層7cの材質は非粘着性に優れた物質が適している。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン樹脂)がある。また、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン樹脂)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン樹脂)等がある。
なお、本実施例では加圧ローラ7の外径は30mm、芯金7aの材質はアルミニウムを用いた。弾性層7bの厚さは3mmで材質はシリコーンゴムを用いた。離型層7cの厚さは30μmで材質はPFAチューブを用いた。
(3)発熱原理
3−1)磁力線の形状と誘導起電力
まず、磁力線の形状について説明する。図6は、強磁性芯材としての磁性コア2を励磁コイル3の中心に挿通して磁路を形成した磁界の模式図である。点線と黒矢印が磁力線と向きを示している。図6での磁力線の向きは、矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。磁性コア2は、励磁コイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する。
3−2)導電層内部の周回電流
図7のa)は、定着スリーブ1、磁性コア2及び励磁コイル3の断面構成の概念図を示す。中心から磁性コア2、励磁コイル3、円筒形回転体としての定着スリーブ1が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加している時は、磁力線が磁性コア2の中を通過している。磁路の中を通過する磁力線Binを、磁力線が図中奥行き方向に向かう記号(○の中に×)で示す。そして定着スリーブ1の外側に配置されている磁性コア2を通る磁力線Boutが図中手前方向に向かう記号(○の中に●)で示す。
これによると、定着スリーブ1の内部に配置された磁性コア2を奥行き方向に向かう磁力線Binは、定着スリーブ1の外側に配置されている磁性コア2の中を手前方向に戻ってくる。励磁コイル3の中に電流が矢印Iの向きに電流が増加している瞬間は、磁路の中に磁力線Binが形成される。実際に交番磁界を形成した時には、このように形成されようとする磁力線を打ち消すように、定着スリーブ1の導電層(発熱層)1bの周方向全域に誘導起電力がかかり、電流は図中の矢印Jの方向に流れる。
図7のb)は、磁性コア2の磁路の中を通過する磁力線Binと、磁路の外を帰ってくる磁力線Boutと、定着スリーブ1の導電層1bの内部を流れる周回電流Jの方向を示す長手斜視図である。導電層1bに電流が流れると、導電層1bが持つ電気抵抗によりジュール熱が生じる事で、導電層1bを発熱させることが出来る。
(効果検証1)
本実施例1の定着スリーブ1は、上記のように、内側から基層1a、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層1b、最外側の表層1cの順で構成されており、基層1aの材質の体積電気抵抗率は導電層1bの材質の体積電気抵抗率よりも大きい構成である。より具体的には、2−2)項に記載したように、基層1aは厚み60μmのPI(ポリイミド)、導電層1bは厚みは5μmの銀、表層(離型層)1cは厚み15μmのPFAである。定着スリーブ1の外径は24mmである。
本実施例1の定着スリーブ1を用いた場合のウォームアップ時間の短縮効果を確認するため、比較例の定着スリーブを用いた場合との対比において、以下のような検証を行った。
図8は比較例1として用いた定着スリーブ11の断面図である。この定着スリーブ11は、層構成が内側から、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層としての基層11aと、離型層としての表層11bとで構成される。定着スリーブ11の外径は24mmとした。
定着スリーブ11の導電層としての基層11aの材質はSUS304を用いた。その厚みは30μmとした。基層11aの外面に離型層としての表層11bを形成した。表層11bは定着スリーブ1へのトナーの付着、及び画像不良の発生を防止する事を目的として形成する。表層11bは基層11aの上にPFAをコートして形成し厚みは20μmとした。
実施例1と比較例1の構成とで電力投入後から定着スリーブ11がプリント温度に到達するまでのウォームアップ時間を比較して本実施例1の効果を検証した。本検証ではプリント温度を150℃とした。この理由は定着スリーブ11の表面温度を変えて定着性を評価した際に表面温度が150℃であれば十分定着できるのを確認したためである。
投入電力は900Wとし、定着スリーブの表面温度の時間変化を計測した結果を図9に示す。図9より比較例1と比べて本実施例1の方がスリーブ表面温度の昇温速度が速い事が分かる。
次に、電力投入後からプリント温度に到達するまでのウォームアップ時間を比較した。その結果を表3に示す。表3より比較例1と比べて本実施例1の方が0.4[s]プリント温度に到達するまでの時間が短い事が分かる。この理由を以下に説明する。定着スリーブ11の熱容量を比較すると比較例1は2.45[J/K]に対し本実施例1は2.19[J/K]であり、本実施例1の熱容量は比較例1と比べて約10%小さい。
次に、定着スリーブ表面温度が常温(23℃)からプリント温度(150℃)に昇温するのに必要な熱量を比較した。なお、実施例1の構成では定着スリーブ表面温度が150℃に昇温した場合、定着スリーブ基層の温度は100℃であったため、定着スリーブ基層は常温(23℃)から100℃に昇温するのに必要な熱量を算出した。その結果、実施例1の構成は180[J]なのに対し、比較例1の構成は310[J]であり、実施例1の方が必要な熱量が130[J]小さい事が分かる。この熱量差が実施例1の方がプリント温度に速く到達できた要因である。
以上の検証により、本実施例1は比較例1と比べてウォームアップ時間を短縮する効果がある事を確認できた。
[実施例2]
本実施例2における、画像形成装置の構成、及び加熱定着装置の磁性コア、励磁コイル、温度制御手段、加圧ローラは実施例1と同様である為、再度の説明を省く。
本実施例2は実施例1の定着装置Aにおいて、定着スリーブの基層がある程度の厚みを持ち、定着スリーブが非可撓性であることを特徴とする加熱定着装置である。本実施例2の目的は定着スリーブ内部に位置して定着スリーブの軌跡を規制するスリーブガイド部材を無くす事で、定着スリーブとスリーブガイド部材との摺擦を無くし定着スリーブの耐久性を向上させる事である。
図10は本実施例2における定着スリーブ21の断面図である。実施例1の定着スリーブ1と同様に、内側から基層21a、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層21b、最外側の表層(離型層)21cの順で構成されている。そして、基層21aの材質の体積電気抵抗率は導電層21bの材質の体積電気抵抗率よりも大きい構成である。直径は10〜100mmが適している。本実施例2では定着スリーブ21の外径は24mmとした。
基層21aの材質は実施例1の定着スリーブ1の基層1aで例示したものと同様の物質が適している。基層21aの厚みは0.2mm〜10.0mmが適している。本実施例2では基層21aはCFRP(炭素繊維強化樹脂)で形成し、厚みは1.0mmとした。
導電層21bの材質や厚みなどに関しても実施例1の定着スリーブ1の導電層21bについて記載したと同様である。本実施例2では発熱層21bの材質は銀を用い厚みは5μmとした。
離型層としての表層21cの材質や厚みなどに関しても実施例1の定着スリーブ1の表層1cについて記載したと同様である。本実施例2では離型層21cの材質はPFAを用い、厚みは15μmとした。
なお、定着スリーブ21は熱容量が小さい程、素早く昇温することが出来、定着装置をクイックスタートさせるのに有利である。そのため、定着スリーブ21は可能な限り導電層21b、離型層21cを薄く形成し、直径は小さくする方が構成として望ましい。基層21aも耐久性を満足できる範囲でできうるだけ薄く形成する事が望ましい。
(効果検証2)
本実施例2の定着スリーブ21の効果を確認するため以下のような検証を行った。実施例1の構成の定着スリーブ1と実施例2の上記構成の定着スリーブ21とで定着スリーブの耐久性を比較した。双方の構成にて通紙耐久試験を行い、定着スリーブの耐久劣化具合を比較検証した。本検証では製品耐久寿命が150[千枚]のプリンタを用い、通紙耐久試験のプリントスピードは230[mm/s]、記録材はキヤノンMJのExtra 80[g/cm2]を用いた。その結果を表4に示す。
実施例1の構成では製品耐久寿命は大きくクリアするものの約800千枚通紙させた事で基層1aが部分的に削れきる事が確認された。一方、実施例2の構成では1000[千枚]通紙させても基層21aは削れきる事は無く実施例1の構成と比べて耐久劣化に強い構成である事が確認できた。なお、実施例1の定着スリーブ1において基層1aをGFRP(ガラス繊維強化樹脂)で形成した場合でも本検証と同様の効果があった。以上の検証により本実施例2の効果を確認する事ができた。
[実施例3]
本実施例3における、画像形成装置の構成、及び定着装置の磁性コア、励磁コイル、温度制御手段、加圧ローラは実施例1と同様である為、再度の説明を省く。
本実施例3は実施例1の定着装置において、定着スリーブの層構成が内側から基層、弾性層、導電層、表層である事を特徴とする加熱定着装置である。本実施例3の目的は基層と導電層の間に弾性層を形成し、ニップ部Nにてトナーを包みこむ効果を付与する事で定着品質を向上させる事である。
図11は本実施例3における定着スリーブ31の断面図である。本実施例3の定着スリーブ31は、内側から基層31a、弾性層31b、交番磁界の作用により電磁誘導発熱する導電層31c、最外側の表層(離型層)31dの順で構成されている。そして、基層31aの材質の体積電気抵抗率は導電層31cの材質の体積電気抵抗率よりも大きい構成である。直径は10〜100mmが適している。本実施例3では定着スリーブ31の外径は24mmとした。
基層31aの材質は実施例1の定着スリーブ1の基層1aで例示したものと同様の物質が適している。基層31aの厚みは20μm〜10mmが適している。本実施例3では基層31aはポリイミドで形成し、厚みは60μmとした。
基層31aの外面に弾性層31bを形成する。弾性層31bの材質は耐熱温度の高いゴムが適している。例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等がある。弾性層31bの厚みは30μm〜5mmが適している。本実施例3では弾性層31bの材質はシリコーンゴムを用い厚みは300μmとした。
弾性層31bの外面に導電層31cを形成する。導電層31cの材質や厚みなどに関しても実施例1の定着スリーブ1の導電層21bについて記載したと同様である。本実施例3では導電層31cの材質は銀を用い厚みは5μmとした。
導電層31cの外面に離型層としての表層31dを形成する。表層31dの材質や厚みなどに関しても実施例1の定着スリーブ1の表層1cについて記載したと同様である。本実施例3では離型層31dはPFAをコートして形成し厚みは15μmとした。
なお、定着スリーブ31は熱容量が小さい程、素早く昇温することが出来、定着装置をクイックスタートさせるのに有利である。そのため、定着スリーブ31は可能な限り弾性層31b、導電層31c、表層31dを薄く形成し、直径は小さくする方が構成として望ましい。基層31aも耐久性を満足できる範囲でできうるだけ薄く形成する事が望ましい。なお、本実施例3では基層31aと導電層31cの間に弾性層31bを形成したが、導電層31cと表層31dの間に弾性層31bを形成しても良い。
(効果検証3)
本実施例3の定着スリーブ31の効果を確認するため以下のような検証を行った。実施例1の構成の定着スリーブ1と実施例3の上記構成の定着スリーブ31とでテープ剥がし試験により定着品質を比較した。評価画像は5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を用いた。記録材(用紙)はキヤノンMJのExtra 80[g/cm2]を用いた。プリントスピードは230[mm/s]、定着スリーブ31の表面温度が150℃に制御されている状態で通紙した。
パッチ画像にニチバン社製のポリエステルテープ(No.5515)を貼り、テープの上から200gfの荷重を10秒間加えた後にテープを剥がし、テープ剥がし前後の光学濃度の低下率を比較した。光学濃度測定はエックスライト社製 X−rite 504濃度計を用いて行った。光学濃度の低下率は式(1)で算出した。なお、このテープ剥がし試験において濃度低下率が20%以下であれば実使用上は問題無いレベルである。比較結果を表5に示す。
濃度低下率=(試験前の濃度−試験後の濃度)/(試験前の濃度)×100…(1)
表5より実施例1、実施例3共に濃度低下率は20%以下であり実使用にて問題無いレベルである事が分かる。また、実施例1と比べて実施例3の方が濃度低下率は低く、定着品質が向上している事が分かる。この理由として、実施例3の定着スリーブ31は弾性層31bがあり、定着ニップ部Nにてトナーを包みこむ効果が付与されるため定着品質が向上したと考えられる。なお、本実施例3では基層31aと導電層31cの間に弾性層31bを形成したが、導電層31cと表層31dの間に弾性層31bを形成した場合でも本検証と同様の効果があった。
以上の検証により、本実施例3の構成は定着品質を向上させる効果がある事を確認できた。
[その他の実施の形態]
以上、本発明に係る実施例について詳述したが、本発明の思想の範囲内において種々の構成の他の公知の構成に置き換えることは可能である。
1)定着スリーブ1(21、31)に対する対向部材としての加圧ローラ7は定置配設とし、この加圧ローラ7に対して定着スリーブ1(21、31)を加圧付勢してニップ部Nを形成する装置構成にすることもできる。また、定着スリーブ1(21、31)と加圧ローラ7の両方を加圧付勢してニップ部Nを形成する装置構成にすることもできる。
2)定着スリーブ1(21、31)に対する対向部材はローラ体に限られず、回転する或いは回動するエンドレスベルトにすることもできる。
3)定着スリーブ1(21、31)を回転駆動させる装置構成にすることもできる。定着スリーブ1(21、31)を回転駆動させる装置構成の場合は、定着スリーブ1(21、31)との間でニップ部Nを形成する対向部材は非回転部材とすることもできる。例えば定着スリーブ1(21、31)や記録材Pとの当接面である表面の摩擦係数が小さいパッドや板状部材などの非回転部材の形態のものにすることもできる。
4)本発明の像加熱装置は実施例のように記録材Pに担持された未定着トナー像Tを加熱加圧して固着画像として加熱定着する定着装置としての使用に限定されない。記録材Pに一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)を加熱加圧して光沢度を向上させるなどの画像の表面性を調整する加熱処理装置としても有効である。
5)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。インクジェット方式で記録材に画像を形成して加熱乾燥定着する方式ものであってもよい。
6)実施例において定着装置Aは、実施例の電子写真プリンタ以外の画像形成装置、カラー複写機、カラーファクシミリ、カラープリンタ、これらの複合機等で実施されてもよい。即ち、実施例の定着装置及び電子写真プリンタは、上述した構成部材の組み合わせには限定されず、それぞれの代替部材で一部又は全部を置き換えた別の実施形態で実現してもよい。
[実施例の定着装置の更なる説明]
(1)実施例の定着装置の発熱メカニズム
図12の(a)を用いて実施例1乃至3の定着装置Aの発熱メカニズムについてより詳細に説明する。ここでは、実施例1の定着装置Aを代表して説明する。
コイル3に交流電流を流して生じた磁力線(点線示)が定着スリーブ1における筒状の導電層1bの内側の磁性コア2の内部を導電層1bの母線方向(SからNに向かう方向)に通過する。そして、磁性コア2の一端(N)から導電層1bの外側に出て磁性コア2の他端(S)に戻る。その結果、導電層1bの内側を導電層1bの母線方向に貫く磁束の増減を妨げる方向の磁力線を発生させる誘導起電力が導電層1bに生じて導電層1bの周方向に電流が誘導される。
この誘導電流によるジュール熱で導電層1bが発熱する。この導電層1bに生じる誘導起電力Vの大きさは、下記の式(500)から導電層1bの内部を通過する単位時間当たりの磁束の変化量(Δφ/Δt)及びコイルの巻き数に比例する。
(2)導電層の外側を通る磁束の割合と電力の変換効率との関係
ところで、図12の(a)の磁性コア2はループを形成しておらず端部を有する形状である。図12の(b)のような磁性コア2が導電層1bの外でループを形成している定着装置Aにおける磁力線は、磁性コア2に誘導されて導電層1bの内側から外側に出て内側に戻る。
しかしながら、磁性コア2が端部を有する構成の場合、磁性コア2の端部から出た磁力線を誘導するものはない。そのため、磁性コア2の一端を出た磁力線が磁性コア2の他端に戻る経路(NからS)は、導電層1bの外側を通る外側ルートと、導電層1bの内側を通る内側ルートと、のいずれも通る可能性がある。以後、導電層1bの外側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを外側ルート、導電層1bの内側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを内側ルートと呼ぶ。
この磁性コア2の一端から出た磁力線のうち外側ルートを通る磁力線の割合は、コイル3に投入した電力のうち導電層1bの発熱で消費される電力(電力の変換効率)と相関があり、重要なパラメータである。外側ルートを通る磁力線の割合が増加する程、コイル3に投入した電力のうち導電層1bの発熱で消費される電力の割合(電力の変換効率)は高くなる。
この理由は、トランスにおいて漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと原理は同じである。つまり、磁性コア2の内部を通過する磁束と、外側ルートを通過する磁束の数が近い程、電力の変換効率は高くなり、コイル3に流した高周波電流を導電層の周回電流として効率よく電磁誘導できることになる。
これは、図12の(a)におけるコア2の内部をSからNに向かう磁力線と、内側ルートを通る磁力線は向きが反対であるから、磁性コア2を含めた導電層1bの内側全体で見ると、これらの磁力線は打ち消しあうことになる。その結果、導電層1bの内側全体をSからNに向かって通過する磁力線の数(磁束)が減り単位時間当たりの磁束の変化量が小さくなる。単位時間当たりの磁束の変化量が減少すると、導電層1bに生じる誘導起電力が小さくなり、導電層1bの発熱量が小さくなる。
以上述べたことから、実施例の定着装置Aは必要な電力の変換効率を得るために外側ルートを通る磁力線の割合を管理することが重要になる。
(3)導電層の外側を通る磁束の割合を示す指標
そこで、定着装置Aにおける外側ルートを通る磁力線の割合を磁力線の通り易さをパーミアンスという指標を用いて表す。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁力線が通る磁路の回路を電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができる。磁気回路は、電気回路に関するオームの法則が適用可能である。電気回路の電流に対応する磁束をΦと、起電力に対応する起磁力をVと、電気抵抗に対応する磁気抵抗をRと、すると、次の式(501)を満たす。
Φ=V/R・・・(501)
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。パーミアンスPを用いると、上式(501)は次の式(502)ように表せる。
Φ=V×P・・・(502)
更に、このパーミアンスPは、磁路の長さをBと、磁路の断面積をSと、磁路の透磁率をμと、すると下記の式(503)のように表せる。
P=μ×S/B・・・(503)
で表される。パーミアンスPは、断面積S及び透磁率μに比例し、磁路の長さBに反比例する。
図13の(a)は、導電層1bの内側に、半径a1[m]、長さB[m]、比透磁率μ1の磁性コア2に、コイル3を螺旋軸が導電層1bの母線方向と実質平行になるようにN[回]巻いたものを表した図である。ここで、導電層1bは、長さB[m]、内径a2[m]、外径a3[m]、比透磁率μ2の導体である。導電層1bの内側及び外側の真空の透磁率をμ0[H/m]とする。コイル3に電流I[A]を流したときに、磁性コア2の単位長さ当たりに発生する磁束8をφc(x)とする。
図13の(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な断面図である。図中の矢印は、コイル3に電流Iを流したときに、磁性コア2の内部、導電層1bの内側、導電層1bの外側を通る磁性コア2の長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア2の内部を通る磁束をφc(=φc(x))、導電層1bの内側(導電層1bと磁性コア2の間の領域)を通る磁束をφa_in、導電層そのものを通る磁束をφs、導電層の外側を通る磁束をφa_outとする。
図14の(a)に、図12の(a)に示した単位長さ当たりのコア2、コイル3、導電層1bを含む空間の磁気等価回路を示す。磁性コア2を通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コア2のパーミアンスをPc、導電層1bの内側のパーミアンスをPa_inとする。また、定着スリーブ1の導電層1bそのものの内部のパーミアンスをPs、導電層1bの外側のパーミアンスをPa_outとする。
ここで、PcがPa_in及びPsに比べて十分に大きい時、磁性コア2の内部を通過して磁性コア2の一端から出た磁束は、φa_in、φs、φa_outの何れかを通過して磁性コア2の他端に戻ると考えられる。よって、以下の関係式(504)が成り立つ。
φc=φa_in+φs+φa_out・・・(504)
また、φc、φa_in、φs、φa_outはそれぞれ以下の式(505)〜(508)で表される。
φc=Pc×Vm ・・・(505)
φs=Ps×Vm ・・・(506)
φa_in=Pa_in×Vm ・・・(507)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(508)
よって、式(504)に(505)〜(508)を代入するとPa_outは次の式(509)示すように表される。
Pc×Vm=Pa_in×Vm+Ps×Vm+Pa_out×Vm
=(Pa_in+Ps+Pa_out)×Vm
∴Pa_out=Pc−Pa_in−Ps ・・・(509)
図13の(b)より、磁性コア2の断面積をSc、導電層1bの内側の断面積をSa_in、導電層1b自身の断面積をSs、とすると、は以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・(510)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2
・・・(511)
Ps=μ2・Ss=μ2・π・((a3)2−(a2)2)・・・(512)
これらの(510)〜(512)を式(509)に代入すると、Pa_outは式(513)で表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Ps
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Ss
=π・μ1・(a1)2
−π・μ0・((a2)2−(a1)2
−π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・(513)
上記の式(513)を使用することによって導電層1bの外側を通る磁力線の割合であるPa_out/Pcを計算することができる。
尚、パーミアンスPの代わりに磁気抵抗Rを用いても良い。磁気抵抗Rを用いて議論する場合、磁気抵抗Rは単純にパーミアンスPの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができて、単位は「1/(H・m)」である。
以下、実施例の装置のパラメータを使用して具体的な計算した結果を表6に示す。
磁性コア2は、フェライト(比透磁率1800)で形成され、直径14[mm]であって、断面積は1.5×10-4[m]である。定着スリーブガイド9は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)(比透磁率1.0)で形成され、断面積は1.0×10-4[m2]である。導電層1bは、アルミニウム(比透磁率1.0)で形成され、直径24[mm]、厚み20[μm]で断面積1.5×10-6[m2]である。
尚、導電層1bと磁性コア2の間の領域の断面積は、直径24[mm]の導電層の内側の中空部の断面積から磁性コア2の断面積と定着スリーブガイド9の断面積を差し引いて計算している。表層1cは導電層1bより外側に設けられており、発熱に寄与しない。また、実施例3において発熱層31cと表層31dの間に弾性層31bを形成した形態の場合における弾性層31b及び表層31dは導電層31cより外側に設けられており、発熱に寄与しない。従って、パーミアンスを計算する磁気回路モデルにおいては導電層の外側の空気層であるとみなすことができるので計算に入れる必要はない。
表6からPc、Pa_in、Psは、次のような値になる。これらの値を用いて、次の式(514)からPa_out/Pc計算することができる。
Pc=3.5×10-7[H・m]
Pa_in=1.3×10-10+2.5×10-10[H・m]
Ps=1.9×10-12 [H・m]
Pa_out/Pc=(Pc−Pa_in−Ps)/Pc=0.999(99.9%)
・・・(514)
尚、磁性コア2を長手方向で複数に分割し、分割した各磁性コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。この場合、この空隙が空気又は比透磁率が1.0とみなせるものや磁性コア2の比透磁率よりもずっと小さいもので満たされている場合、磁性コア2全体の磁気抵抗Rは大きくなり磁力線を誘導する機能が劣化することになる。
このような分割された磁性コア2のパーミアンスの計算方法は複雑になる。以下に、磁性コア2を複数分割し、空隙またはシート状非磁性体を挟んで等間隔に並べた場合の磁性コア全体のパーミアンスの計算方法について説明する。この場合、長手全体の磁気抵抗を導出し、それを全体長さで割って単位長さ当たりの磁気抵抗を求め、その逆数を取って単位長さ当たりのパーミアンスを求める必要がある。
まず、磁性コア2の長手方向の構成図を図15に示す。磁性コアc1〜c10は、断面積Sc、透磁率μc、分割された磁性コア1個当たりの幅Lcとし、ギャップg1〜g9は、断面積Sg、透磁率μg、1ギャップ当たりの幅Lgとする。この磁性コアの長手方向における全体の磁気抵抗Rm_allは、以下の式(515)で与えられる。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・・・+Rm_c10)+
(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9)・・・(515)
本構成の場合は、磁性コア2の形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次の式(516)〜(518)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)・・・(516)
Rm_c=Lc/(μc・Sc)・・・(517)
Rm_g=Lg/(μg・Sg)・・・(518)
式(516)に式(517)及び式(518)を代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは次の式(519)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lc/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9・・・(519)
ここで、単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると次の式(520)となる。
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9)・・・(520)
以上から、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下の式(521)ように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all
=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]
・・・(521)
ギャップLgを大きくすることは、磁性コア2の磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。実施例の定着装置Aを構成する上で、発熱原理上、磁性コア2の磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、磁性コア2の破損防止のために磁性コア2を複数に分割してギャップを設ける場合がある。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁力線の割合をパーミアンスもしくは磁気抵抗を使って表すことができることを示した。
(4)定着装置に必要な電力の変換効率
次に、実施例の定着装置Aで必要な電力の変換効率について述べる。例えば、電力の変換効率が80%である場合、残り20%の電力は導電層以外のコイルやコア等で熱エネルギーに変換されて消費される。電力の変換効率が低い場合は、磁性コアやコイル等の発熱すべきでないものが発熱し、それらを冷却するための対策を講じる必要性がある場合がある。
ところで、実施例において、導電層1bを発熱させる時は、励磁コイル2に高周波の交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は導電層1bに電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることができる。その交番磁界によって励磁コイル3と導電層1bが磁気結合して、励磁コイル3に投入した電力が導電に伝達される。ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイルに投入する電力と、導電層により消費される電力の比率である。
実施例の場合、図4、図5に示す励磁コイル3に対して高周波コンバータ5に投入した電力と、導電層1aで消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式(522)で表すことができる。
電力の変換効率=導電層で消費される電力/励磁コイルに供給した電力
・・・(522)
励磁コイル3に供給して導電層1b以外で消費される電力は、前励磁コイル3の抵抗による損失、磁性コア材料の磁気特性による損失などがある。
図16に回路の効率に関する説明図を示す。図16の(a)において、1bは定着スリーブ1の導電層、2は磁性コア、3は励磁コイルである。図16の(b)は等価回路を示す。R1は励磁コイル3および磁性コア2の損失分、L1は磁性コア2に周回した励磁コイル3のインダクタンス、Mは巻き線と導電層1bとの相互インダクタンス、L2は導電層のインダクタンス、R2は導電層の抵抗である。
導電層1bを有する定着スリーブ1を装着していない時の等価回路を図17の(a)に示す。インピーダンスアナライザやLCRメータといった装置により、励磁コイル3の両端からの直列等価抵抗はR1、等価インダクタンスL1を測定すると、励磁コイル両端から見たインピーダンスZAは式(523)のように表せる。
A=R1+jωL1 ・・・・・(523)
この回路に流れる電流は、R1により損失する。即ちR1はコイル3及び磁性コア2による損失を表している。
導電層1bを有する定着スリーブ1を装着した時の等価回路を図17の(b)に示す。この導電層1bを有する定着スリーブ1の装着時の直列等価抵抗Rx及びLxを測定しておけば、図17の(c)のように等価変換することで、関係式(524)を得ることが出来る。
Mは励磁コイルと導電層の相互インダクタンスを表す。
図17の(c)に示すように、R1に流れる電流をI1、R2に流れる電流をI2とおくと式(527)が成り立つ。
効率(電力の変換効率)は、抵抗R2の消費電力/(抵抗R1の消費電力+抵抗R2の消費電力)で表されるから式(529)のように表せる。
導電層1bを有する定着スリーブ1の装着前の直列等価抵抗R1と、装着後の直列等価抵抗Rxを測定すると、励磁コイル3に供給した電力のうち、どれだけの電力が導電層1bで消費されるかを示す電力の変換効率を求めることが出来る。尚、実施例においては、電力の変換効率の測定には、AgilentTechnologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。
まず、定着スリーブ1の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗R1を測定し、次に定着スリーブ1に励磁コイル3を巻線した磁性コア2を挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。R1=103mΩ、Rx=2.2Ωとなり、この時電力の変換効率は式(529)により、95.3%と求めることが出来る。以後この電力の変換効率を用いて、定着装置の性能を評価する。
ここで、装置で必要な電力の変換効率を求める。導電層1bの外側ルートを通る磁束の割合を振って電力の変換効率を評価する。図18は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を表した図である。
金属シート1Sは、幅230mm、長さ600mm、厚み20μmのアルミニウム製のシートである。この金属シート1Sを磁性コア2とコイル3とを囲むように円筒状に丸めて、太線1ST部分において導通することによって導電層とする。
磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm2、長さ230mmの円柱形状をしている。磁性コア2を不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置する。磁性コア2にはコイル3が巻数25回で螺旋状に巻かれている。
金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、導電層の直径1SDを18〜191mmの範囲で調整することができる。
図19は、導電層の外側ルートを通過する磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったグラフである。図19のグラフ中のプロットP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超えており、矢印で示すレンジR1では電力の変換効率が70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、レンジR2において80%以上となっている。P4以降のレンジR3においては電力の変換効率が94%以上と高い値で安定している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは導電層に効率的に周回電流が流れ始めたためである。
下記の表7は、図19のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
本構成は、磁性コアの断面積が26.5mm2(5.75mm×4.5mm)で、導電層の直径が143.2mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は64%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、導電層の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って、最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となり、その損失はコイル及び磁性コアの発熱となる。
本構成の場合、立ち上げ時、数秒間1000Wを投入しただけでもコイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置に供給した電力の約45%が導電層の発熱に使用されないので、導電層に900W(1000Wの90%を想定)の電力を供給するためには約1636Wの電力供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流をオーバーする可能性がある。よって、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
本構成は、磁性コアの断面積はP1と同じで、導電層の直径が127.3mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は71.2%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は70.8%である。定着装置のスペックによっては、コイル及びコアの昇温が課題になる場合がある。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、導電層の回転速度は330mm/secとなり、導電層の温度を180℃に維持する必要がある。導電層の温度を180℃に維持しようとすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超える場合がある。磁性コアとして用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であるから、フェライトがキュリー温度を超えて磁性コアの透磁率は急激に減少し、磁性コアで磁力線を適切に誘導することができなくなる場合がある。その結果、周回電流を誘導して導電層を発熱させることが難しくなる場合がある。
従って、外側ルートを通過する磁束の割合がレンジR1の定着装置を、前述した高スペックの装置にすると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
本構成は、磁性コアの断面積はP1と同じであり、導電層の直径が63.7mmの場合である。この装置のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%である。磁性コア及びコイル等に定常的に熱量が発生するものの、冷却手段が必要なレベルではない。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると導電層の回転速度は330mm/secとなり導電層の表面温度を180℃に維持する場合があるものの、磁性コア(フェライト)の温度は220℃以上に上昇することはない。従って、本構成において、定着装置を前述した高スペックする場合は、キュリー温度が220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁束の割合がレンジR2の構成の定着装置は、高スペックで使用する場合は、フェライト等の耐熱設計を最適化することが望ましい。一方、定着装置として高スペックを要求しない場合は、このような耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成は、磁性コアの断面積がP1と同じであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。この装置でインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%である。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置(導電層の回転速度は330mm/sec)で導電層の表面温度を180℃に維持する場合であっても、励磁コイルやコイル等は、180℃以上に達することはない。従って、磁性コアやコイル等を冷却する冷却手段及び特別な耐熱設計は不要である。
以上述べたことから、外側ルートを通過する磁束の割合が94.7%以上であるレンジR3は、電力の変換効率が94.7%以上となり電力の変換効率が十分高い。よって、更なる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は不要である。
また、電力の変換効率が高い値で安定しているレンジR3においては、導電層と磁性コアの位置関係の変動によって導電層の内側を通過する単位時間当たりの磁束の量が若干変動しても、電力の変換効率が変動量は小さく導電層の発熱量が安定する。可撓性を有するフィルムのように、導電層と磁性コアとの距離が変動しやすい定着装置において、この電力の変換効率が高い値で安定している領域R3を用いることは、大きなメリットがある。
以上述べたことから、実施例の定着装置は少なくとも必要な電力の変換効率を満たすために外側ルートを通過する磁束の割合が72%以上である必要があることがわかる(
表7において本実施例のレンジR1の定着装置は導電層の外側ルートを通過する磁束の割合71.2%であるが、測定誤差等を考慮して72%以上とする)。
(5)装置が満たすべきパーミアンス又は磁気抵抗の関係式
導電層の外側ルートを通過する磁束の割合が72%以上であることは、導電層のパーミアンスと導電層の内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの28%以下であることと等価である。
従って、実施例の特徴的な構成の一つは、磁性コアのパーミアンスをPc、導電層の内側のパーミアンスをPa、導電層のパーミアンスPsとした時に、次の式(529)を満足することである。
0.28×Pc≧Ps+Pa・・・(529)
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記の式(530)になる。
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記のパーミアンスもしくは磁気抵抗の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域若しくは記録材上の画像が通過する最大領域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足することが望ましい。
同様に、本実施例のレンジR2の定着装置は導電層の外側ルートを通過する磁束の割合が92%以上である。尚、表2によると本実施例のレンジR2の定着装置は導電層の外側ルートを通過する磁束の割合91.7%であるものの、測定誤差等を考慮して92%とする。導電層の外側ルートを通過する磁束の割合が92%以上であることは、導電層のパーミアンスと導電層の内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの8%以下であることと等価である。よって、パーミアンスの関係式は以下の式(532)になる。

0.08×Pc≧Ps+Pa ・・・(532)
上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(533)ようになる。
更に、本実施例のレンジR3の定着装置は導電層の外側ルートを通過する磁束の割合が95%以上である。尚、表7によると本実施例のレンジR3の定着装置は導電層の外側ルートを通過する磁束の割合は94.7%であるが、測定誤差等を考慮して95%とする。導電層の外側ルートを通過する磁束の割合が95%以上であることは、導電層のパーミアンスと導電層の内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの5%以下であることと等価である。よって、パーミアンスの関係式は以下の式(534)になる。
0.05×Pc≧Ps+Pa・・・(534)
上記のパーミアンスの関係式(534)を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の
式(535)になる。
ところで、定着装置の最大の画像領域内の部材等が長手方向で均一な断面構成を有している定着装置についてパーミアンス及び磁気抵抗の関係式を示した。ここでは、長手方向で定着装置を構成する部材が不均一な断面構成を有する定着装置について説明する。図20は、導電層1bの内側(磁性コアと導電層の間の領域)に温度検知部材240を有している。その他の構成は実施例と同様で、定着装置は導電層1bを有する定着スリーブ1と、磁性コア2と、定着スリーブガイド9と、を備える。
磁性コア2の長手方向をX軸方向とすると、最大画像形成領域はX軸上の0〜Lpの範囲である。例えば、記録材の最大搬送領域をLTRサイズ215.9mmとする画像形成装置の場合、Lp=215.9mmとすれば良い。
温度検知部材240は、比透磁率1の非磁性体によって構成されており、X軸に垂直方向の断面積は5mm×5mmであり、X軸に平行方向の長さは10mmである。X軸上のL1(102.95mm)からL2(112.95mm)の位置にて配置されている。
ここで、X座標上0〜L1を領域1、温度検知部材240が存在するL1〜L2を領域2、L2〜LPを領域3と、呼ぶ。領域1における断面構造を図21のA)に、領域2における断面構造を図21のB)に示す。
図21のB)に示すように、温度検知部材240は定着スリーブ1に内包されているため、磁気抵抗計算の対象となる。厳密に磁気抵抗計算を行うためには、領域1と、領域2と、領域3と、に対し、別々に「単位長さ当たりの磁気抵抗」を求め、各領域の長さに応じて積分計算を行い、それらを足し合わせて合成磁気抵抗を求める。まず、領域1または3における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を、下記の表8に示す。
領域1における磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗rc1は下記のようになる。
c1=2.9×106[1/(H・m)]
ここで、導電層と磁性コアとの間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは、定着スリーブガイドrfの単位長さ当たりの磁気抵抗と導電層の内側の磁気抵抗rairの単位長さ当たりの磁気抵抗との合成磁気抵抗である。従って、下記の式(536)を用いて計算できる。
計算の結果、領域1における磁気抵抗ra1、及び、領域1における磁気抵抗rs1は下記のようになる。
a1=2.7×109[1/(H・m)]
s1=5.3×1011[1/(H・m)]
また、領域3は領域1と同じであるから下記のようになる。
c3=2.9×106[1/(H・m)]
a3=2.7×109[1/(H・m)]
s3=5.3×1011[1/(H・m)]
次に、領域2における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を下記の表9に示す。
領域2の磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗rc2は下記のようになる。
c2=2.9×106[1/(H・m)]
導電層と磁性コアの間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは、定着スリーブrfの単位長さ当たりの磁気抵抗と、サーミスタrtの単位長さ当たりの磁気抵抗と、導電層の内側の空気rairの単位長さ当たりの磁気抵抗と、の合成磁気抵抗である。従って下記の
式(537)で計算できる。
計算の結果、領域2のおける単位長さ当たりの磁気抵抗ra2及び単位長さ当たりの磁気抵抗rc2は下記のようになる。領域3の計算方法は領域1と同じであるので省略する。
a2=2.7×109[1/(H・m)]
s2=5.3×1011[1/(H・m)]
尚、導電層と磁性コアの間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raにおいて、ra1=ra2=ra3となっている理由について説明する。領域2における磁気抵抗計算は、サーミスタ240の断面積が増加し、導電層の内側の空気の断面積が減少している。しかし両方とも比透磁率は1であるため、結局サーミスタ240の有無によらず磁気抵抗は同一となる。
すなわち、導電層と磁性コアの間の領域に非磁性体のみが配置されている場合には、磁気抵抗の計算は空気と同じ扱いをしても、計算上の精度としては十分である。なぜなら、非磁性体の場合、比透磁率は殆ど1に近い値になるからである。これとは逆に、磁性体(ニッケル、鉄、珪素鋼等)の場合は、磁性体ある領域をその他の領域と分けて計算した方が良い。
導電層の母線方向の合成磁気抵抗としての磁気抵抗R[A/Wb(1/H)]の積分は、各領域の磁気抵抗r1,r2,r3[1/(H・m)]に対して下記の式(538)ように計算できる。
従って、記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間におけるコアの磁気抵抗Rc[H]は下記の式(539)ように計算できる。
また、記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層と磁性コアとの間の領域の合成磁気抵抗Ra[H]は、下記の式(540)ように計算できる。
記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層の合成磁気抵抗Rs[H]は次の式(541)のようになる。
上記の計算を、それぞれの領域において行ったものを以下表10に示す。
上記表10から、Rc、Ra,Rsは下記のようになる。
Rc=6.2×10[1/H]
Ra=5.8×1011[1/H]
Rs=1.1×1014[1/H]
RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(542)で計算できる。
以上の計算から、Rsa=5.8×1011[1/H]となるので、下記の式(543)を満たしている。
このように、導電層の母線方向で不均一な横断面形状を有している定着装置の場合は、導電層の母線方向で複数の領域に分けて、その領域毎に磁気抵抗を計算し、最後にそれらを合成したパーミアンス又は磁気抵抗を計算すればよい。ただし、対象となる部材が非磁性体である場合は、透磁率がほぼ空気の透磁率と等しいため、空気とみなして計算して良い。
次に、上記計算に計上すべき部品について説明する。導電層と磁性コアとの間の領域にあり、少なくとも一部が記録材の最大搬送領域(0〜Lp)のに入っている部品に関しては、パーミアンス又は磁気抵抗を計算することが望ましい。
逆に、導電層の外側に配置された部材は、パーミアンス又は磁気抵抗を計算する必要はない。なぜなら、前述したようにファラデーの法則において誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例するものであり、導電層の外側の磁束とは無関係だからである。また、導電層の母線方向における記録材の最大搬送領域外に配置した部材は、導電層の発熱には影響しないため、計算する必要はない。
100・・画像形成装置、A・・像加熱装置(加熱定着装置)、P・・記録材(用紙)、T・・画像、1・・像加熱用形回転体(定着スリーブ)、1a・・基層、1b・・導電層(発熱層)

Claims (10)

  1. 導電層を有する筒状の回転体と、
    前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と実質平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
    前記螺旋形状部の中に前記母線方向に沿って配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
    を有し、記録材に形成された画像を加熱する像加熱装置において、
    前記磁性コアは、材質が強磁性体であり、前記回転体の外部でループを形成しない形状であり、
    前記導電層のパーミアンスと前記導電層と前記磁性コアの間の領域のパーミアンスとの和が前記磁性コアのパーミアンスの28%以下であり、
    前記回転体は、基層と、前記基層の外側に形成された前記導電層と、を有し、前記基層の材質の体積電気抵抗率は、前記導電層の材質の体積電気抵抗率よりも大きい事を特徴とする像加熱装置。
  2. 前記基層の材質の比重は、前記導電層の材質の比重よりも小さい事を特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  3. 前記導電層は金属にて形成されている事を特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
  4. 前記基層は耐熱性樹脂で形成されている事を特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の像加熱装置。
  5. 前記耐熱性樹脂はポリイミドであるとする事を特徴とする請求項4に記載の像加熱装置。
  6. 前記基層は繊維強化樹脂で形成されている事を特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の像加熱装置。
  7. 前記繊維強化樹脂は炭素繊維強化樹脂であるとする事を特徴とする請求項6に記載の像加熱装置。
  8. 前記繊維強化樹脂はガラス繊維強化樹脂であるとする事を特徴とする請求項6に記載の像加熱装置。
  9. 前記基層と前記導電層の間に弾性層を有する事を特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の像加熱装置。
  10. 記録材に未定着画像を形成する画像形成部と、前記記録材に形成された未定着画像を固着像として定着する加熱定着装置と、を有する画像形成装置であって、前記加熱定着装置が請求項1乃至9の何れか一項に記載の像加熱装置である事を特徴とする画像形成装置。
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