JP2017097144A - 定着装置および加熱回転体 - Google Patents
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Abstract
【課題】電磁誘導によって加熱された円筒形回転体を有する定着装置において、非通紙領域の発熱を抑えて消費電力を低減する。
【解決手段】導電層1aを有する円筒形回転体1の内周面側に螺旋状の励磁コイル3と磁力線を誘導するためのコア2を備えた定着装置Aにおいて、導電層1aの端部にスリット状の切り込み20を入れることにより、非通紙領域の周回電流による発熱を効率的に抑制する。
【選択図】図1
【解決手段】導電層1aを有する円筒形回転体1の内周面側に螺旋状の励磁コイル3と磁力線を誘導するためのコア2を備えた定着装置Aにおいて、導電層1aの端部にスリット状の切り込み20を入れることにより、非通紙領域の周回電流による発熱を効率的に抑制する。
【選択図】図1
Description
本発明は、電磁誘導加熱方式の定着装置およびこの定着装置に用いられる加熱回転体に関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置は、加熱回転体と、それに接触する加圧ローラと、で形成されたニップ部で未定着トナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー像を記録材に定着するものが一般的である。
近年、加熱回転体の導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が開発され実用化されている。電磁誘導加熱方式の定着装置は、ウォームアップ時間を短く出来るという利点がある。
特許文献1に開示されている定着装置は、加熱回転体の導電層を、磁束を通しやすい鉄やニッケル等の磁性金属で構成し、定着ロールの内側に軸線方向に螺旋状の励磁コイルを配置させ、磁界発生手段から発生した磁束を加熱回転体の導電層に誘導する。加熱回転体の導電層に誘導された磁束は、主に導電層内部に渦電流を発生させることにより、加熱回転体をジュール発熱することが出来る。
また、特許文献2に開示されている定着装置は、定着ロールの内側に軸線方向に螺旋状の励磁コイルを配置させ、螺旋状の励磁コイルの中に磁力線を誘導するためのコアを備え、励磁コイルから発生した磁束を加熱回転体の導電層を通らないように誘導する。つまり、定着装置を磁気回路に見立て、円筒形回転体の長軸方向への磁気の通りやすさの指標である長手方向の磁気抵抗において、「磁性コアの長手方向の磁気抵抗は十分小さい」状態を実現する。かつ「円筒形回転体と円筒形回転体の内側の長手方向の磁気抵抗が十分大きい」状態を実現する。
それにより、コアに磁束が集中し円筒形回転体と円筒形回転体とコアの間の空間に磁束が通らない磁路設計を施すことが出来る。加熱回転体の導電層には、周回方向の起電力がかかり、周回電流によって効率的にジュール発熱することが出来る。本方法は特許文献1の方法に比べて、加熱回転体の導電層に磁束を誘導する必要がないため、導電層の厚みや材質の制約が少ないというメリットがある。
定着装置は記録材(以下、紙或いは用紙と記す)を加熱することを目的としているため、紙の通過しない、所謂非通紙領域の発熱は極力少なくすることが望ましい。
特許文献3では、特許文献1で開示されているような、磁界発生手段から発生した磁束を加熱回転体の導電層に誘導し、導電層内部に渦電流を発生させる定着装置を用いて、非通紙領域の電力を削減する方法が開示されている。そこでは、非通紙領域の発熱を抑制するため、加熱回転体の導電層の非通紙部において軸線方向にスリットを設ける構成が提案されている。これにより、スリットで切り取った導電層の体積分において、渦電流による発熱は抑制されるため、非通紙領域の発熱を削減できる。
しかしながら、特許文献3では、スリットにより切り取っていない非通紙領域の導電層は渦電流により発熱してしまうため、非通紙領域における電力の損失は少なくない。
上記課題を鑑みて、本発明は、螺旋状の励磁コイルの中に磁力線を誘導するためのコアを備えた定着装置において、非通紙領域の発熱を効果的に抑制することが可能である定着装置およびこの定着装置に用いられる加熱回転体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る定着装置の代表的な構成は、導電層を有する筒状の回転体と、前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、前記導電層の端部にスリット状の切り込みが設けられていることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る加熱回転体の代表的な構成は、導電層を有する筒状の加熱回転体と、前記加熱回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記加熱回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置に用いられる前記加熱回転体であって、前記導電層の端部にスリット状の切り込みが設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、記録材の非通過領域(非通紙領域)の発熱を効果的に抑制することが可能である定着装置およびこの定着装置に用いられる加熱回転体を提供することができる。
《実施例》
(1)画像形成装置の構成
以下、図面に基づき本発明の実施例について説明する。図4は本実施例の定着装置Aを搭載した画像形成装置100の一例の概略構成図である。この画像形成装置100は、電子写真方式のレーザービームプリンタであり、コンピュータ等の外部機器60から制御部50に入力される画像情報に対応したトナー画像を記録材Pに形成して出力する。制御部50は画像形成装置100の画像形成動作を統括的に制御する。
(1)画像形成装置の構成
以下、図面に基づき本発明の実施例について説明する。図4は本実施例の定着装置Aを搭載した画像形成装置100の一例の概略構成図である。この画像形成装置100は、電子写真方式のレーザービームプリンタであり、コンピュータ等の外部機器60から制御部50に入力される画像情報に対応したトナー画像を記録材Pに形成して出力する。制御部50は画像形成装置100の画像形成動作を統括的に制御する。
ここで、以下の説明においては記録材の扱いについて便宜上、給紙、排紙、通紙部、非通紙部等の紙に纏わる用語を用いているが、記録材は紙に限られず、樹脂やその他の材質のシート状の部材も含まれる。
101は像担持体としての感光体ドラム(以下、ドラムと記す)であり、矢示の時計方向に所定のプロセススピード(周速度)にて回転駆動する。ドラム101はその回転過程で帯電ローラ102により所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
103は画像露光手段としてのレーザービームスキャナである。このスキャナ103は、外部機器60から制御部50に入力され、制御部50の画像処理手段によって生成されたデジタル画像信号に対応してオン/オフ変調されたレーザー光Lを出力して、ドラム101の帯電処理面を走査露光する。この走査露光によりドラム表面の露光明部の電荷が除電されてドラム表面に画像信号に対応した静電潜像が形成される。
104は現像装置であり、現像ローラ104aからドラム表面に現像剤(トナー)が供給されて、ドラム表面の静電潜像は、可転写像であるトナー像として順次に現像される。
105は給紙カセットであり、記録材Pを積載収納させてある。給紙スタート信号に基づいて給紙ローラ106が駆動されて、給紙カセット105内の記録材Pは、一枚ずつ分離給紙される。そして、レジストローラ対107を介して、ドラム101と接触して従動回転する転写ローラ108との当接ニップ部である転写部位108Tに、所定のタイミングで導入される。
すなわち、ドラム101上のトナー像の先端部と記録材Pの先端部とが、同時に転写部位108Tに到達するように、レジストローラ107で記録材Pの搬送が制御される。その後、記録材Pは転写部位108Tを挟持搬送され、その間、転写ローラ108には不図示の転写バイアス印加電源から所定に制御された転写電圧(転写バイアス)が印加される。転写ローラ108にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加され、転写部位108Tにおいてドラム101の表面側のトナー像が記録材Pの表面に静電的に転写される。
転写後の記録材Pはドラム表面から分離されて搬送ガイド109を通り定着装置Aに導入され、トナー画像の熱定着処理を受ける。一方、記録材Pに対するトナー像転写後のドラム表面はクリーニング装置110で転写残トナーや紙粉等の除去を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。定着装置Aを通った記録材Pは、排紙口111から排紙トレイ112上に排出される。
(2)定着装置の構成
本実施例において、定着装置Aは電磁誘導加熱方式の装置である。図1の(a)は本例の定着装置Aの要部の横断側面模型図、(b)は要部の正面模型図である。この定着装置Aは、大別して、加熱部材としての加熱アセンブリ10と、加圧部材(ニップ形成部材)としての加圧ローラ8と、これらを収容した装置シャーシ9と、を有する。
本実施例において、定着装置Aは電磁誘導加熱方式の装置である。図1の(a)は本例の定着装置Aの要部の横断側面模型図、(b)は要部の正面模型図である。この定着装置Aは、大別して、加熱部材としての加熱アセンブリ10と、加圧部材(ニップ形成部材)としての加圧ローラ8と、これらを収容した装置シャーシ9と、を有する。
加熱アセンブリ10は、筒状の加熱用の回転体(加熱回転体)としての定着スリーブ(定着フィルム)1を有する。また、定着スリーブ1の内部部材としての、磁性コア2、励磁コイル3、コイルホルダ4、加圧用ステイ5、スリーブガイド(フィルムガイド:ニップ部形成部材)6を有する。
また、加熱アセンブリ10は、スリーブガイド6の一端側と他端側に外嵌されて配設されたフランジ部材12a・12bを有する。フランジ部材12a・12bはそれぞれ規制部材13a・13bにより所定の位置に位置が固定されている。定着スリーブ1はフランジ部材12a・12b間において上記の内部部材2〜6に対して回転可能にルーズに外嵌されている。
加圧ローラ8は、芯金8aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた弾性材の層(弾性層)8bとで構成されており、表層に離型層8cを設けてある。弾性層8bは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよい材質が好ましい。芯金8aの両端部は装置シャーシ9の一端側と他端側の側板9a・9b間にそれぞれ導電性軸受け9cを介して回転自由に保持させて配設してある。
加熱アセンブリ10は加圧ローラ8の上側にスリーブガイド6を加圧ローラ8に対向させ加圧ローラ8にほぼ平行に配設してある。そして、加圧用ステイ5の一端側と他端側および装置シャーシ9側の一端側と他端側のバネ受け部材18a・18bとの間に、それぞれ、加圧バネ17aおよび17bを縮設することでステイ5に押し下げ力を作用させている。本実施例の定着装置Aでは、総圧約100N〜300N(約10kgf〜約30kgf)の押圧力を与えている。
これにより、耐熱性樹脂PPS等で構成されたスリーブガイド6の下面と加圧ローラ8の上面とが定着スリーブ1を挟んで加圧ローラ8の弾性層8bの弾性に抗して圧接して記録材搬送方向aに関して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ8は、制御部50で制御される駆動手段(モータ)51の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して芯金8aに伝達されることで、矢示R8の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。この加圧ローラ8に伴い、定着ニップ部Nにおける加圧ローラ8と定着スリーブ1の外面との摩擦力で定着スリーブ1に回転力が作用して、定着スリーブ1が矢示R1の反時計方向に従動回転する。
フランジ部材12aおよび12bは定着スリーブ1の回転時に定着スリーブ1の端部を受けて定着スリーブ1のスリーブガイド6の長手に沿う寄り移動を規制する役目をする。フランジ部材12aおよび12bの材質としては、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂等の耐熱性の良い材料が好ましい。
本実施例における定着スリーブ1は、直径10〜50mmの、基層となる導電性部材でできた導電層1aと、その外面に積層した弾性層1bと、その外面に積層した離型層1cの複合構造の筒形の回転体である。図2の(a)はこの複合構造の定着スリーブ1の外観斜視模型図である。20はこの定着スリーブ1の両端部にそれぞれ設けたスリット状の切り込みである。この切り込み20については後述する。
導電層1aは、膜厚10〜50μmの金属スリーブ(金属フィルム)とし、弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.1mm〜0.3mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として10μm〜50μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。
図1、図2において、W1は定着スリーブ1の長手幅(長手長さ)、W8は加圧ローラ8の長手幅(弾性材層8bの長手幅)、WPは記録材Pの通紙領域の幅(装置に使用可能な最大幅サイズの記録材の通紙領域の幅:最大通紙領域幅)である。加圧ローラ8の長手幅W8は通紙領域の幅WPよりも大きく、定着スリーブ1の長手幅W1は加圧ローラ8の長手幅W8よりも大きい(W1>W8>WP)。
また、導電層1aの通紙領域WPより両端部側の領域、すなわち非通紙部領域には、それぞれ定着スリーブ端面より定着スリーブ中央部側に、導電層1aの母線方向に軸線を有するスリット状の切り込み20が、周方向にほぼ等間隔をおいて複数設けられている。本実施例では、幅(定着スリーブの周方向)2〜10mm、深さ(定着スリーブの母線方向)5〜20mmの切り込み20が定着スリーブ1の周方向の1〜6ヵ所に形成されている。本実施例では4ヵ所に切り込み20を形成している。
本実施例では弾性層1bおよび離型層1cも含めて導電層1aを切り欠いてスリット状の切り込み20を設けているが、導電層1aだけにスリット状の切り込み20を設けた形態の定着スリーブ1にすることもできる。
また、図2の(b)のように、導電層1aの切り込み20と弾性層1bおよび離型層1cが長手方向で間隔を空けてオーバーラップしない層構成にした形態の定着スリーブ1にすることもできる。弾性層1bおよび離型層1cを無しにした導電層1aだけの形態の定着スリーブ1にすることもできる。導電層1aと弾性層1bまたは離型層1cの一方との組み合わせの層構成形態の定着スリーブ1にすることもできる。
励磁コイル3は定着スリーブ1の内部に配置され螺旋軸が定着スリーブ1の母線方向と平行(略平行(実質平行)も含まれる)である螺旋形状部を有し、導電層1aを電磁誘導発熱させる交番磁界の磁力線を誘導するためのコイルである。コア2はコイル3の螺旋形状部の中に配置され上記の交番磁界の磁力線を誘導するための磁性芯材である。
導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させて発熱する。この熱が弾性層1b、離型層1cに伝達されて、定着スリーブ1全体が加熱され、定着ニップ部Nに通紙される記録材Pを加熱してトナー像Tの定着がなされる。
導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させる機構について詳述する。図3は定着スリーブ1の導電層1aと、磁性コア2と、励磁コイル3の斜視図である。
磁性芯材としてのコア2は、不図示の固定手段で定着スリーブ1の中空部を貫通して配置させ、磁極NP,SPを持つ直線状の開磁路を形成している。コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)や、パーマロイ等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が好ましい。本実施例においては、比透磁率1800の焼成フェライトを用いる。形状は直径5〜40mmの円柱形状をしており、長手長さは240mmである。
コイル3は、通常の単一導線を定着スリーブ1の中空部において、コア2に螺旋状に巻き回して形成される。その際、開磁路端部において巻間隔密、中央において巻間隔疎となるように巻く。長手寸法240mmのコア2に対し、コイル3は18回巻きつけている。その巻間隔は端部において10mm、中央部において20mm、その中間において15mmとなっている。
コイル3は定着スリーブ1の母線方向に交差する方向に巻き回されているため、このコイル3に給電接点部3aおよび3bを介して高周波コンバータ(励磁回路)16で高周波電流を流し、交番磁束を発生させる。この交番磁束が導電層1aに作用して誘導電流を発生させて発熱する。この熱が弾性層1b、離型層1cに伝達されて、定着スリーブ1全体が加熱される。
240は定着スリーブ1の表面温度を検知するための温度検知部材であり、例えば、非当接型または当接型のサーミスタである。制御部50は温度検知部材240によって検出された温度を基に定着スリーブ1の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられて維持されるように高周波コンバータ16からコイル3に供給する電力を制御する(例えば、周波数変調制御)。
(3)定着スリーブの導電層に切り込みが入ってない場合の発熱原理
本実施例の発熱原理について、定着スリーブ1の導電層1aに切り込み20が入ってない場合について説明する。
本実施例の発熱原理について、定着スリーブ1の導電層1aに切り込み20が入ってない場合について説明する。
3−1)磁力線の形状と誘導起電力
図5の(a)を用いて本実施例の定着装置の発熱メカニズムについて説明する。コイル3に交流電流を流して生じた磁力線が筒状の導電層1aの内側のコア2の内部を導電層1aの母線方向(SからNに向かう方向)に通過し、コア2の一端(N)から導電層1aの外側に出てコア2の他端(S)に戻る。その結果、導電層1aの内側を導電層1aの母線方向に貫く磁束の増減を妨げる方向の磁力線を発生させる誘導起電力が導電層1aに生じて導電層1aの周方向に電流が誘導される。
図5の(a)を用いて本実施例の定着装置の発熱メカニズムについて説明する。コイル3に交流電流を流して生じた磁力線が筒状の導電層1aの内側のコア2の内部を導電層1aの母線方向(SからNに向かう方向)に通過し、コア2の一端(N)から導電層1aの外側に出てコア2の他端(S)に戻る。その結果、導電層1aの内側を導電層1aの母線方向に貫く磁束の増減を妨げる方向の磁力線を発生させる誘導起電力が導電層1aに生じて導電層1aの周方向に電流が誘導される。
この誘導電流によるジュール熱で導電層1aが発熱する。この導電層1aに生じる誘導起電力Vの大きさは、下記の式(1)から導電層1aの内部を通過する単位時間当たりの磁束の変化量(Δφ/Δt)及びコイルの巻き数Nに比例する。
3−2)導電層の外側を通る磁束の割合と電力の変換効率との関係
ところで、図5の(a)のコア2はループを形成しておらず端部を有する形状である。図5の(b)のようなコア2が導電層1aの外でループを形成している定着装置における磁力線は、コア2に誘導されて導電層1aの内側から外側に出て内側に戻る。
ところで、図5の(a)のコア2はループを形成しておらず端部を有する形状である。図5の(b)のようなコア2が導電層1aの外でループを形成している定着装置における磁力線は、コア2に誘導されて導電層1aの内側から外側に出て内側に戻る。
しかしながら、図5の(a)のようにコア2が端部を有する構成の場合、コア2の端部から出た磁力線を誘導するものはない。そのため、コア2の一端を出た磁力線がコア2の他端に戻る経路(NからS)は、導電層1aの外側を通る外側ルートと、導電層1aの内側を通る内側ルートと、のいずれも通る可能性がある。以後、導電層1aの外側を通ってコア2のNからSに向かうルートを外側ルート、導電層1aの内側を通ってコア2のNからSに向かうルートを内側ルートと呼ぶ。
このコア2の一端から出た磁力線のうち外側ルートを通る磁力線の割合は、コイル3に投入した電力のうち導電層1aの発熱で消費される電力(電力の変換効率)と相関があり、重要なパラメータである。外側ルートを通る磁力線の割合が増加する程、コイル3に投入した電力のうち導電層1aの発熱で消費される電力の割合(電力の変換効率)は高くなる。
この理由は、トランスにおいて漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと原理は同じである。つまり、本実施例においては、コア2の内部を通過する磁束と、外側ルートに通過する磁束の数が近い程、電力の変換効率は高くなり、コイル3に流した高周波電流を導電層1aの周回電流として効率よく電磁誘導できることになる。
これは、図5の(a)におけるコア2の内部をSからNに向かう磁力線と、内側ルートを通る磁力線は向きが反対であるから、コア2を含めた導電層1aの内側全体で見ると、これらの磁力線は打ち消しあうことになる。その結果、導電層1aの内側全体をSからNに向かって通過する磁力線の数(磁束)が減り単位時間当たりの磁束の変化量が小さくなる。単位時間当たりの磁束の変化量が減少すると、導電層1aに生じる誘導起電力が小さくなり、導電層1aの発熱量が小さくなる。
以上述べたことから、本実施例の定着装置は必要な電力の変換効率を得るために外側ルートを通る磁力線の割合を管理することが重要になる。
3−3)導電層の外側を通る磁束の割合を示す指標
そこで、定着装置における外側ルートを通る磁力線の割合を磁力線の通り易さをパーミアンスという指標を用いて表す。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁力線が通る磁路の回路を電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができる。磁気回路は、電気回路に関するオームの法則が適用可能である。電気回路の電流に対応する磁束をΦと、起電力に対応する起磁力をVと、電気抵抗に対応する磁気抵抗をRと、すると、次の式(2)を満たす。
そこで、定着装置における外側ルートを通る磁力線の割合を磁力線の通り易さをパーミアンスという指標を用いて表す。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁力線が通る磁路の回路を電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができる。磁気回路は、電気回路に関するオームの法則が適用可能である。電気回路の電流に対応する磁束をΦと、起電力に対応する起磁力をVと、電気抵抗に対応する磁気抵抗をRと、すると、次の式(2)を満たす。
Φ=V/R・・・(2)
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。パーミアンスPを用いると、上式(2)は次の式(3)ように表せる。
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。パーミアンスPを用いると、上式(2)は次の式(3)ように表せる。
Φ=V×P・・・(3)
更に、このパーミアンスPは、磁路の長さをBと、磁路の断面積をSと、磁路の透磁率をμと、すると下記の式(4)のように表せる。
更に、このパーミアンスPは、磁路の長さをBと、磁路の断面積をSと、磁路の透磁率をμと、すると下記の式(4)のように表せる。
P=μ×S/B・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、断面積S及び透磁率μに比例し、磁路の長さBに反比例する。
で表される。パーミアンスPは、断面積S及び透磁率μに比例し、磁路の長さBに反比例する。
図6の(a)は、導電層1aの内側に、半径a1[m]、長さB[m]、比透磁率μ1の磁性コア2に、コイル3を螺旋軸が導電層1aの母線方向と略平行になるようにN[回]巻いたものを表した図である。ここで、導電層1aは、長さB[m]、内径a2[m]、外径a3[m]、比透磁率μ2の導体である。導電層の内側及び外側の真空の透磁率をμ0[H/m]とする。コイル3に電流I[A]を流したときに、コア2の単位長さ当たりに発生する磁束8をφc(x)とする。
図6の(b)は、コア2の長手方向に垂直な断面図である。図中の矢印は、コイル3に電流Iを流したときに、コア2の内部、導電層1aの内側、導電層1aの外側を通るコア2の長手方向に平行な磁束を表している。コア2の内部を通る磁束をφc(=φc(x))、導電層1aの内側(導電層1aと磁性コア2の間の領域)を通る磁束をφa_in、導電層そのものを通る磁束をφs、導電層の外側を通る磁束をφa_outとする。
図7の(a)に、図5の(a)に示した単位長さ当たりのコア2、コイル3、導電層1aを含む空間の磁気等価回路を示す。コア2を通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コア2のパーミアンスをPcとする。また、導電層1aの内側のパーミアンスをPa_in、定着スリーブ1の導電層1aそのものの内部のパーミアンスをPs、導電層1aの外側のパーミアンスをPa_outとする。
ここで、PcがPa_in及びPsに比べて十分に大きい時、コア2の内部を通過してコア2の一端から出た磁束は、φa_in、φs、φa_outの何れかを通過して磁性コア2の他端に戻ると考えられる。よって、以下の関係式(5)が成り立つ。
φc=φa_in+φs+φa_out・・・(5)
また、φc、φa_in、φs、φa_outはそれぞれ以下の式(6)〜(9)で表される。
また、φc、φa_in、φs、φa_outはそれぞれ以下の式(6)〜(9)で表される。
φc=Pc×Vm ・・・(6)
φs=Ps×Vm ・・・(7)
φa_in=Pa_in×Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、式(5)に(6)〜(9)を代入するとPa_outは次の式(10)示すように表される。
φs=Ps×Vm ・・・(7)
φa_in=Pa_in×Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、式(5)に(6)〜(9)を代入するとPa_outは次の式(10)示すように表される。
Pc×Vm=Pa_in×Vm+Ps×Vm+Pa_out×Vm
=(Pa_in+Ps+Pa_out)×Vm
∴Pa_out=Pc−Pa_in−Ps ・・・(10)
図6の(b)より、コア2の断面積をSc、導電層1aの内側の断面積をSa_in、導電層1a自身の断面積をSs、とすると、パーミアンスPは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
=(Pa_in+Ps+Pa_out)×Vm
∴Pa_out=Pc−Pa_in−Ps ・・・(10)
図6の(b)より、コア2の断面積をSc、導電層1aの内側の断面積をSa_in、導電層1a自身の断面積をSs、とすると、パーミアンスPは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2)・・・(12)
Ps=μ2・Ss=μ2・π・((a3)2−(a2)2)・・・(13)
これらの(11)〜(13)を式(10)に代入すると、Pa_outは式(14)で表せる。
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2)・・・(12)
Ps=μ2・Ss=μ2・π・((a3)2−(a2)2)・・・(13)
これらの(11)〜(13)を式(10)に代入すると、Pa_outは式(14)で表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Ps
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Ss
=π・μ1・(a1)2−π・μ0・((a2)2−(a1)2)−
π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・(14)
上記の式(14)を使用することによって導電層1aの外側を通る磁力線の割合であるPa_out/Pcを計算することができる。
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Ss
=π・μ1・(a1)2−π・μ0・((a2)2−(a1)2)−
π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・(14)
上記の式(14)を使用することによって導電層1aの外側を通る磁力線の割合であるPa_out/Pcを計算することができる。
尚、パーミアンスPの代わりに磁気抵抗Rを用いても良い。磁気抵抗Rを用いて議論する場合、磁気抵抗Rは単純にパーミアンスPの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができて、単位は「1/(H・m)」である。
以下、実施例の装置のパラメータを使用して具体的な計算した結果を表1に示す。
コア2は、フェライト(比透磁率1800)で形成され、直径14[mm]であって、断面積は1.5×10−4[m2]である。スリーブガイド6は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)(比透磁率1.0)で形成され、断面積は1.0×10−4[m2]である。導電層1aは、アルミニウム(比透磁率1.0)で形成され、直径24[mm]、厚み20[μm]で断面積1.5×10−6[m2]である。
尚、導電層1aと磁性コア2の間の領域の断面積は、直径24[mm]の導電層1aの内側の中空部の断面積からコア2の断面積とスリーブガイド6の断面積を差し引いて計算している。弾性層1b及び表層1cは、導電層1aより外側に設けられており、発熱に寄与しない。従って、パーミアンスを計算する磁気回路モデルにおいては導電層1aの外側の空気層であるとみなすことができるので計算に入れる必要はない。
表1からPc、Pa_in、Psは、次のような値になる。
Pc=3.5×10−7[H・m]
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
Ps=1.9×10−12[H・m]
これらの値を用いて、次の式(15)からPa_out/Pc計算することができる。
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
Ps=1.9×10−12[H・m]
これらの値を用いて、次の式(15)からPa_out/Pc計算することができる。
Pa_out/Pc=(Pc−Pa_in−Ps)/Pc=0.999(99.9%)
・・・(15)
尚、コア2を長手方向で複数に分割し、分割した各コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。この場合、この空隙が空気又は比透磁率が1.0とみなせるものやコアの比透磁率よりもずっと小さいもので満たされている場合、コア2全体の磁気抵抗Rは大きくなり磁力線を誘導する機能が劣化することになる。
・・・(15)
尚、コア2を長手方向で複数に分割し、分割した各コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。この場合、この空隙が空気又は比透磁率が1.0とみなせるものやコアの比透磁率よりもずっと小さいもので満たされている場合、コア2全体の磁気抵抗Rは大きくなり磁力線を誘導する機能が劣化することになる。
このような分割されたコア2のパーミアンスの計算方法は複雑になる。以下に、コアを複数分割し、空隙またはシート状非磁性体を挟んで等間隔に並べた場合のコア全体のパーミアンスの計算方法について説明する。この場合長手全体の磁気抵抗を導出し、それを全体長さで割って単位長さ当たりの磁気抵抗を求め、その逆数を取って単位長さ当たりのパーミアンスを求める必要がある。
まず、長手方向で複数に分割したコア2の長手方向の構成図を図8に示す。コアc1〜c10は、断面積Sc、透磁率μc、分割されたコア1個当たりの幅Lcとし、ギャップg1〜g9は、断面積Sg、透磁率μg、1ギャップ当たりの幅Lgとする。このコアの長手方向における全体の磁気抵抗Rm_allは、以下の式(16)で与えられる。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・・・+Rm_c10)+
(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9)
・・・(16)
(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9)
・・・(16)
本構成の場合は、コアの形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次の式(17)〜(19)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g) ・・・(17)
Rm_c=Lc/(μc・Sc) ・・・(18)
Rm_g=Lg/(μg・Sg) ・・・(19)
式(17)に式(18)及び式(19)を代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは次の式(20)のように表せる。
Rm_c=Lc/(μc・Sc) ・・・(18)
Rm_g=Lg/(μg・Sg) ・・・(19)
式(17)に式(18)及び式(19)を代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは次の式(20)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lc/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9
・・・(20)
=(Lc/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9
・・・(20)
ここで、単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると次の式(21)となる。
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9)・・・(21)
以上から、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下の式(22)ように求められる。
=Rm_all/(L×10+Lg×9)・・・(21)
以上から、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下の式(22)ように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all
=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]
・・・(22)
=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]
・・・(22)
ギャップLgを大きくすることは、コア2の磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。本実施例の定着装置を構成する上で、発熱原理上、コア2の磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、コア2の破損防止のためにコア2を複数に分割してギャップを設ける場合がある。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁力線の割合をパーミアンスもしくは磁気抵抗を使って表すことができることを示した。
3−4)装置に必要な電力の変換効率
次に、本実施例の定着装置で必要な電力の変換効率について述べる。例えば、電力の変換効率が80%である場合、残り20%の電力は導電層以外のコイルやコア等で熱エネルギーに変換されて消費される。電力の変換効率が低い場合は、コアやコイル等の発熱すべきでないものが発熱し、それらを冷却するための対策を講じる必要性がある場合がある。
次に、本実施例の定着装置で必要な電力の変換効率について述べる。例えば、電力の変換効率が80%である場合、残り20%の電力は導電層以外のコイルやコア等で熱エネルギーに変換されて消費される。電力の変換効率が低い場合は、コアやコイル等の発熱すべきでないものが発熱し、それらを冷却するための対策を講じる必要性がある場合がある。
そこで、導電層1aの外側ルートを通る磁束の割合を振って電力の変換効率を評価する。図9は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を表した図である。金属シート1Sは、幅230mm、長さ600mm、厚み20μmのアルミニウム製のシートである。この金属シート1Sを磁性コア2とコイル3とを囲むように円筒状に丸めて、太線1ST部分において導通することによって導電層とする。
コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm2、長さ230mmの円柱形状をしている。コア2を不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置する。コア2にはコイル3が巻数25回で螺旋状に巻かれている。金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、導電層の直径1SDを18〜191mmの範囲で調整することができる。
図10は、導電層の外側ルートを通過する磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったグラフである。
図10のグラフ中のプロットP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超えており、矢印で示すレンジR1では電力の変換効率が70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、レンジR2において80%以上となっている。P4以降のレンジR3においては電力の変換効率が94%以上と高い値で安定している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは導電層に効率的に周回電流が流れ始めたためである。
下記の表2は、図10のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
本構成は、コア2の断面積が26.5mm2(5.75mm×4.5mm)で、導電層1aの直径が143.2mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は64%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、導電層1aの発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って、最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となり、その損失はコイル3及びコア2の発熱となる。
本構成は、コア2の断面積が26.5mm2(5.75mm×4.5mm)で、導電層1aの直径が143.2mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は64%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、導電層1aの発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って、最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となり、その損失はコイル3及びコア2の発熱となる。
本構成の場合、立ち上げ時、数秒間1000Wを投入しただけでもコイル温度は200℃を超える場合がある。コイル3の絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトのコアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%ではコイル等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、コア2の温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置に供給した電力の約45%が導電層1aの発熱に使用されないので、導電層1aに900W(1000Wの90%を想定)の電力を供給するためには約1636Wの電力供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流をオーバーする可能性がある。よって、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
本構成は、コア2の断面積はP1と同じで、導電層1aの直径が127.3mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は71.2%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は70.8%である。定着装置のスペックによっては、コイル3及びコア2の昇温が課題になる場合がある。
本構成は、コア2の断面積はP1と同じで、導電層1aの直径が127.3mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は71.2%である。この装置のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は70.8%である。定着装置のスペックによっては、コイル3及びコア2の昇温が課題になる場合がある。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、導電層1aの回転速度は330mm/secとなり、導電層1aの温度を180℃に維持することが望ましい。導電層1aの温度を180℃に維持しようとすると、コア2の温度は20秒間で240℃を超える場合がある。
コア2として用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であるから、フェライトがキュリー温度を超えてコア2の透磁率は急激に減少し、コア2で磁力線を適切に誘導することができなくなる場合がある。その結果、周回電流を誘導して導電層1aを発熱させることが難しくなる場合がある。
従って、外側ルートを通過する磁束の割合がレンジR1の定着装置を、前述した高スペックの装置にすると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
本構成は、コア2の断面積はP1と同じであり、導電層1aの直径が63.7mmの場合である。この装置のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%である。コア2及びコイル3等に定常的に熱量が発生するものの、冷却手段が必要なレベルではない。
本構成は、コア2の断面積はP1と同じであり、導電層1aの直径が63.7mmの場合である。この装置のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%である。コア2及びコイル3等に定常的に熱量が発生するものの、冷却手段が必要なレベルではない。
本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると導電層1aの回転速度は330mm/secとなる。導電層1aの表面温度を180℃に維持する場合があるものの、磁性コア(フェライト)の温度は220℃以上に上昇することはない。従って、本構成において、定着装置を前述した高スペックする場合は、キュリー温度が220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁束の割合がレンジR2の構成の定着装置は、高スペックで使用する場合は、フェライト等の耐熱設計を最適化することが望ましい。一方、定着装置として高スペックを要求しない場合は、このような耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成は、コア2の断面積がP1と同じであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。この装置でインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%である。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置(導電層の回転速度は330mm/sec)で導電層1aの表面温度を180℃に維持する場合であっても、コア2やコイル3等は、180℃以上に達することはない。従って、コア2やコイル3等を冷却する冷却手段及び特別な耐熱設計は不要である。
本構成は、コア2の断面積がP1と同じであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。この装置でインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%である。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置(導電層の回転速度は330mm/sec)で導電層1aの表面温度を180℃に維持する場合であっても、コア2やコイル3等は、180℃以上に達することはない。従って、コア2やコイル3等を冷却する冷却手段及び特別な耐熱設計は不要である。
以上述べたことから、外側ルートを通過する磁束の割合が94.7%以上であるレンジR3は、電力の変換効率が94.7%以上となり電力の変換効率が十分高い。よって、更なる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は不要である。
また、電力の変換効率が高い値で安定しているレンジR3においては、導電層1aとコア2の位置関係の変動によって導電層1aの内側を通過する単位時間当たりの磁束の量が若干変動しても、電力の変換効率の変動量は小さい。そのため導電層1aの発熱量が安定する。可撓性を有する定着スリーブ1のように、導電層1aとコア2との距離が変動しやすい定着装置において、この電力の変換効率が高い値で安定している領域R3を用いることは、大きなメリットがある。
以上述べたことから、本実施例の定着装置は少なくとも必要な電力の変換効率を満たすために外側ルートを通過する磁束の割合が70%以上である必要があることがわかる。
3−5)装置が満たすべきパーミアンス又は磁気抵抗の関係式
導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が70%以上であることは、導電層1aのパーミアンスと導電層1aの内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和がコア2のパーミアンスの30%以下であることと等価である。従って、本実施例の特徴的な構成の一つは、磁性コア2のパーミアンスをPc、導電層1aの内側のパーミアンスをPa、導電層1aのパーミアンスPsとした時に、次の式(23)を満足することである。
導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が70%以上であることは、導電層1aのパーミアンスと導電層1aの内側(導電層と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和がコア2のパーミアンスの30%以下であることと等価である。従って、本実施例の特徴的な構成の一つは、磁性コア2のパーミアンスをPc、導電層1aの内側のパーミアンスをPa、導電層1aのパーミアンスPsとした時に、次の式(23)を満足することである。
0.30×Pc≧Ps+Pa・・・(23)
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記の式(24)になる。
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記の式(24)になる。
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(25)ように計算する。
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記のパーミアンスもしくは磁気抵抗の関係式を、定着装置の記録材Pの最大搬送領域全域(最大通紙領域幅WP)で、円筒形の回転体である定着スリーブ1の母線方向に直交する方向の断面において満足することが望ましい。
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記のパーミアンスもしくは磁気抵抗の関係式を、定着装置の記録材Pの最大搬送領域全域(最大通紙領域幅WP)で、円筒形の回転体である定着スリーブ1の母線方向に直交する方向の断面において満足することが望ましい。
同様に、本実施例のレンジR2の定着装置は導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が90%以上であるから、パーミアンスの関係式は以下の式(26)になる。
0.10×Pc≧Ps+Pa ・・・(26)
上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(27)ようになる。
上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(27)ようになる。
更に、本実施例のレンジR3の定着装置は導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が94%以上であるから、パーミアンスの関係式は以下の(28)ようになる。
0.06×Pc≧Ps+Pa・・・(28)
上記のパーミアンスの関係式(28)を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(29)になる。
上記のパーミアンスの関係式(28)を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(29)になる。
ところで、定着装置の最大の画像領域内(領域幅内)の部材等が長手方向で均一な断面構成を有している定着装置についてパーミアンス及び磁気抵抗の関係式を示した。ここでは、長手方向で定着装置を構成する部材が不均一な断面構成を有する定着装置について説明する。図11は、導電層1aの内側(磁性コア2と導電層1aの間の領域)に温度検知部材(サーミスタ)240を有している。その他の構成は図1と同様で、定着装置は導電層1aを有する定着スリーブ1と、磁性コア2と、スリーブガイド6と、を備える。
コア2の長手方向をX軸方向とすると、最大画像形成領域はX軸上の0〜Lpの範囲である。例えば、記録材Pの最大搬送領域幅(最大通紙領域幅WP)をLTRサイズ215.9mmとする画像形成装置の場合、Lp=215.9mmとすれば良い。
温度検知部材240は、比透磁率1の非磁性体によって構成されており、X軸に垂直方向の断面積は5mm×5mmであり、X軸に平行方向の長さは10mmである。X軸上のL1(102.95mm)からL2(112.95mm)の位置にて配置されている。ここで、X座標上0〜L1を領域1、温度検知部材240が存在するL1〜L2を領域2、L2〜LPを領域3と、呼ぶ。
領域1における断面構造を図12のA)に、領域2における断面構造を図12のB)に示す。図12のB)に示すように、温度検知部材240は定着スリーブ1に内包されているため、磁気抵抗計算の対象となる。厳密に磁気抵抗計算を行うためには、領域1と、領域2と、領域3と、に対し、別々に「単位長さ当たりの磁気抵抗」を求め、各領域の長さに応じて積分計算を行い、それらを足し合わせて合成磁気抵抗を求める。まず、領域1または3における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を、下記の表3に示す。
領域1における磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗rc1は下記のようになる。
rc1=2.9×106[1/(H・m)]
ここで、導電層1aと磁性コア2との間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは、スリーブガイド6の単位長さ当たりの磁気抵抗rfと導電層1aの内側の磁気抵抗rairの単位長さ当たりの磁気抵抗との合成磁気抵抗である。従って、下記の式(30)を用いて計算できる。
ここで、導電層1aと磁性コア2との間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは、スリーブガイド6の単位長さ当たりの磁気抵抗rfと導電層1aの内側の磁気抵抗rairの単位長さ当たりの磁気抵抗との合成磁気抵抗である。従って、下記の式(30)を用いて計算できる。
計算の結果、領域1における磁気抵抗ra1、及び、領域1における磁気抵抗rs1は下記のようになる。
ra1=2.7×109[1/(H・m)]
rs1=5.3×1011[1/(H・m)]
また、領域3は領域1と同じであるから下記のようになる。
rs1=5.3×1011[1/(H・m)]
また、領域3は領域1と同じであるから下記のようになる。
rc3=2.9×106[1/(H・m)]
ra3=2.7×109[1/(H・m)]
rs3=5.3×1011[1/(H・m)]
次に、領域2における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を下記の表4に示す。
ra3=2.7×109[1/(H・m)]
rs3=5.3×1011[1/(H・m)]
次に、領域2における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を下記の表4に示す。
領域2の磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗rc2は下記のようになる。
rc2=2.9×106[1/(H・m)]
導電層1aと磁性コア2の間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは次の3つの合成磁気抵抗である。即ち、スリーブガイド6の単位長さ当たりの磁気抵抗rfと、サーミスタ240の単位長さ当たりの磁気抵抗rtと、導電層1aの内側の空気の単位長さ当たりの磁気抵抗rairと、の合成磁気抵抗である。従って下記の式(31)で計算できる。
導電層1aと磁性コア2の間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raは次の3つの合成磁気抵抗である。即ち、スリーブガイド6の単位長さ当たりの磁気抵抗rfと、サーミスタ240の単位長さ当たりの磁気抵抗rtと、導電層1aの内側の空気の単位長さ当たりの磁気抵抗rairと、の合成磁気抵抗である。従って下記の式(31)で計算できる。
計算の結果、領域2のおける単位長さ当たりの磁気抵抗ra2及び単位長さ当たりの磁気抵抗rc2は下記のようになる。
ra2=2.7×109[1/(H・m)]
rs2=5.3×1011[1/(H・m)]
領域3の計算方法は領域1と同じであるので省略する。
rs2=5.3×1011[1/(H・m)]
領域3の計算方法は領域1と同じであるので省略する。
尚、導電層1aとコア2の間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗raにおいて、ra1=ra2=ra3となっている理由について説明する。領域2における磁気抵抗計算は、サーミスタ240の断面積が増加し、導電層1aの内側の空気の断面積が減少している。しかし両方とも比透磁率は1であるため、結局サーミスタ240の有無によらず磁気抵抗は同一となる。
すなわち、導電層1aとコア2の間の領域に非磁性体のみが配置されている場合には、磁気抵抗の計算は空気と同じ扱いをしても、計算上の精度としては十分である。なぜなら、非磁性体の場合、比透磁率は殆ど1に近い値になるからである。これとは逆に、磁性体(ニッケル、鉄、珪素鋼等)の場合は、磁性体ある領域をその他の領域と分けて計算した方が良い。
導電層1aの母線方向の合成磁気抵抗としての磁気抵抗R[A/Wb(1/H)]の積分は、各領域の磁気抵抗r1,r2,r3[1/(H・m)]に対して下記の式(32)ように計算できる。
従って、記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間におけるコアの磁気抵抗Rc[H]は下記の式(33)ように計算できる。
また、記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層とコアとの間の領域の合成磁気抵抗Ra[H]は、下記の式(34)ように計算できる。
記録材の最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層の合成磁気抵抗Rs[H]は次の式(35)のようになる。
上記の計算を、それぞれの領域において行ったものを以下表5に示す。
上記表5から、Rc、Ra,Rsは下記のようになる。
Rc=6.2×108[1/H]
Ra=5.8×1011[1/H]
Rs=1.1×1014[1/H]
RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(36)で計算できる。
Ra=5.8×1011[1/H]
Rs=1.1×1014[1/H]
RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(36)で計算できる。
以上の計算から、Rsa=5.8×1011[1/H]となるので、下記の式(37)を満たしている。
このように、導電層の母線方向で不均一な横断面形状を有している定着装置の場合は、導電層の母線方向で複数の領域に分けて、その領域毎に磁気抵抗を計算し、最後にそれらを合成したパーミアンス又は磁気抵抗を計算すればよい。ただし、対象となる部材が非磁性体である場合は、透磁率がほぼ空気の透磁率と等しいため、空気とみなして計算して良い。
次に、上記計算に計上すべき部品について説明する。導電層とコアとの間の領域にあり、少なくとも一部が記録材の最大搬送領域(0〜Lp)のに入っている部品に関しては、パーミアンス又は磁気抵抗を計算することが望ましい。逆に、導電層の外側に配置された部材は、パーミアンス又は磁気抵抗を計算する必要はない。
なぜなら、前述したようにファラデーの法則において誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例するものであり、導電層の外側の磁束とは無関係だからである。また、導電層の母線方向における記録材の最大搬送領域外に配置した部材は、導電層の発熱には影響しないため、計算する必要はない。
3−6)円筒形回転体の導電層の等価回路
図13の(a)は切り込み(スリット)20が入っていない場合の円筒形回転体(定着スリーブ)1の導電層1aの斜視図である。本実施例の構成によると、円筒形回転体1の導電層1aに対して周回方向の起電力が掛かることにより、図中矢印に示す方向に周回電流Iが流れる。図13の(a)の等価回路として、円筒形回転体1の導電層1aを切り開いて、両端に直列電圧を印加した回路が図13の(b)である。導電層1aの母線方向の長さをL、周回方向における円周長をθ、厚みをd、電気抵抗率をρとすると、導電層1aの全抵抗Rは次の式(38)で表せられる。
図13の(a)は切り込み(スリット)20が入っていない場合の円筒形回転体(定着スリーブ)1の導電層1aの斜視図である。本実施例の構成によると、円筒形回転体1の導電層1aに対して周回方向の起電力が掛かることにより、図中矢印に示す方向に周回電流Iが流れる。図13の(a)の等価回路として、円筒形回転体1の導電層1aを切り開いて、両端に直列電圧を印加した回路が図13の(b)である。導電層1aの母線方向の長さをL、周回方向における円周長をθ、厚みをd、電気抵抗率をρとすると、導電層1aの全抵抗Rは次の式(38)で表せられる。
故に、図13の(b)の導電層1aに起電力Vが掛かった場合、導電層1a全体の発熱量Wと導電層1aの単位体積当たりの発熱量ωはそれぞれ、式(39)、式(40)と計算できる。
(4)定着スリーブの導電層に切り込みが入っている場合の発熱原理
本実施例の発熱原理について、定着スリーブ1の導電層1aに切り込み20が入っている場合について説明する。
本実施例の発熱原理について、定着スリーブ1の導電層1aに切り込み20が入っている場合について説明する。
4−1)切り込みによって余剰発熱が抑制される原理
本実施例に示すような導電層に流れる周回電流によって加熱される方式の定着装置において、円筒形回転体の導電層に切り込みが有る場合と無い場合を比較し、切り込みがあることによって余剰発熱が抑制される原理を電気回路網計算により示す。
本実施例に示すような導電層に流れる周回電流によって加熱される方式の定着装置において、円筒形回転体の導電層に切り込みが有る場合と無い場合を比較し、切り込みがあることによって余剰発熱が抑制される原理を電気回路網計算により示す。
図14の(a)は図13の(a)で示した円筒形回転体1の導電層1aに切り込み20を入れた場合の斜視図である。この状態において起電力Vが周回方向にかかった時、図中矢印に示す方向に周回電流I’が流れる。図14の(a)の等価回路として、円筒形回転体1の導電層1aを切り開いて、両端に直列電圧を印加した回路が図14の(b)である。
切り込み20の円筒形回転体1の母線方向における切り込み深さをa、円筒形回転体1の円周方向における切り込み幅をbとすると、図14の(b)に示すように導電層1aはA〜Eまでの5つのゾーンに場合分けして考えることができる。このA〜Eまでの5つのゾーンにおける電気抵抗をRA〜REとし、導電層1aにおける周回方向の電流のみが発熱に寄与すると近似すると、図14の(b)は図15の回路図に書き直すことができる。図15における導電層の全抵抗R’は式(41)で表せられる。
今切り込み20の数は1個の為、円筒形回転体1の円周方向中央に切り込みが位置していると考えると、RA〜REは式(42)〜(44)で表せられる。
式(41)に式(42)〜(44)を代入すると、式(45)のように整理できる。
故に、図15の全抵抗における発熱量、すなわち、図14の(b)の導電層1aに起電力Vが掛かった場合の導電層1a全体の発熱量W’が式(46)と求められる。
同じ起電力Vの場合に、切り込み20が有る場合の発熱量W’式(46)と無い場合の発熱量W式(39)を比較すると、式(47)のようになる。
式(47)よりW’<Wが成り立つため、切り込み20によって余剰発熱が抑制されることが示された。
4−2)切り込み端部で局所発熱が発生する原理
図14の(b)のような回路図を考えた場合、切り込み20があることによって導電層1a全体の発熱量が減らせることを示した。しかし一方で、切り込み端部に位置するBゾーンにおいては、DゾーンおよびEゾーンからの迂回電流により電流量が増加することから、局所発熱が発生する場合がある。この切り込み端部の局所発熱により、定着部材の破損等の問題に繋がる可能性がある。
図14の(b)のような回路図を考えた場合、切り込み20があることによって導電層1a全体の発熱量が減らせることを示した。しかし一方で、切り込み端部に位置するBゾーンにおいては、DゾーンおよびEゾーンからの迂回電流により電流量が増加することから、局所発熱が発生する場合がある。この切り込み端部の局所発熱により、定着部材の破損等の問題に繋がる可能性がある。
ここでは、本実施形態に示すような導電層1aに流れる周回電流によって加熱される方式の定着装置において、円筒形回転体1の導電層1aに切り込み20が有る場合と無い場合を比較する。そして、切り込み20があることによって、切り込み端部で局所発熱が発生する原理とその抑制方法を電気回路網計算により示す。
切り込み端部に位置するBゾーンにおける発熱量WBは、図15の回路図の条件において、式(48)のように表せられる。
式(48)に式(43)、(45)を代入し整理すると、式(49)が得られる。
式(49)をBゾーンの体積で割ることにより、Bゾーンにおける導電層1aの単位体積当たりの発熱量ωBが式(50)と求まる。
同じ起電力Vの場合に、切り込み端部に位置するBゾーンにおける導電層1aの単位体積当たりの発熱量ωB式(50)と、切り込みが無い場合の導電層1aの単位体積当たりの発熱量ω式(40)を比較すると、式(51)のようになる。
式(51)よりωB>ωが成り立つため、切り込み端部で局所発熱が発生することが確認できた。式(51)から、局所発熱を抑制するためにはa(θ−b)できる限り小さくすることが有効であることが分かる。
すなわち、切り込み深さaは小さく、切り込み幅bは大きい方が、局所発熱の抑制には有利となる。局所発熱の発生で最も懸念されることは、定着部材が耐熱温度を超えることにより破損等の事象を起こすことである。故に、通紙領域における導電層1aの目標温度をTM、導電層に隣接する定着部材の耐熱温度をTLとした場合に、式(52)を満たすように切り込み深さaおよび切り込み幅bを設定することが好ましい。
4−3)切り込みが複数ある場合
図16の(a)は導電層1aの両端に複数個の切り込み20が存在している場合の円筒形回転体1の導電層1aの斜視図である。図16の(a)の等価回路として、円筒形回転体1の導電層1aを切り開いて、両端に直列電圧を印加した回路が図16の(b)である。この場合、図中破線で示した領域毎の切り込み端部の局所発熱量を見積もることで、定着部材破損を起こさない切り込み形状を見積もることができる。
図16の(a)は導電層1aの両端に複数個の切り込み20が存在している場合の円筒形回転体1の導電層1aの斜視図である。図16の(a)の等価回路として、円筒形回転体1の導電層1aを切り開いて、両端に直列電圧を印加した回路が図16の(b)である。この場合、図中破線で示した領域毎の切り込み端部の局所発熱量を見積もることで、定着部材破損を起こさない切り込み形状を見積もることができる。
余剰発熱の抑制割合を示す式(47)と切り込み端部の局所発熱を示す式(51)において、Lを導電層1aの母線方向の有効長さ、θを周回方向における有効長さと定義し直す。図14の(a)のように導電層1aの片端のみに切り込みがある場合は「L=導電層の母線方向の長さ」のままでよい。
しかし、図16の(a)のように導電層1aの両端に切り込みがある場合は「L=導電層の母線方向の長さ÷2」とする。また、円筒形回転体1の円周方向にn個の切り込みがほぼ等間隔である場合は「θ=導電層の円周方向の長さ÷n」とする。
もし図16の(c)のように切り込みが等間隔に配置されてない場合は、図16の(c)の破線で示すように、円周方向における両隣の切り込み間の中点を取ることで領域を分け、θを求めることができる。
4−4)切り込み形状による違い
図17の(a)〜(d)に示す回路図は、長方形状(略長方形状も含まれる)以外の切り込み形状を導電層1aに入れた場合の一例である。これらの場合、厳密には各回路図において導電層1aのDゾーンおよびEゾーンにおける抵抗値式(44)を再定義して計算することが望ましい。
図17の(a)〜(d)に示す回路図は、長方形状(略長方形状も含まれる)以外の切り込み形状を導電層1aに入れた場合の一例である。これらの場合、厳密には各回路図において導電層1aのDゾーンおよびEゾーンにおける抵抗値式(44)を再定義して計算することが望ましい。
しかし、切り込み20による余剰発熱の抑制割合を示す式(47)、および、切り込み端部の局所発熱による部材破損を抑制するための式(52)を確認するだけならば、切り込み端部の形状に着目して式(47)、および、式(52)を解いてやればよい。
例えば、図17の(a)、(b)のような台形状の切り込みや、図17の(c)のような多角形状の切り込みの場合は、式(47)、および、式(52)の切り込み幅bを「切り込み端部における発熱体円周方向の切り込み幅」と再定義する。また、図17(d)のような切り込み端部にカーブ形状が付いている場合は、カーブの終着地点での切り込み幅bを定義するものとする。
4−5)以上述べた切り込み20に関してまとめると次のとおりである。
切り込み20は、導電層1aの母線方向に切り込み深さa[mm]、前記導電層の周回方向に切り込み幅b[mm]の大きさを有しており、切込み深さa[mm]および切り込み幅b[mm]が次の[1]の式を満たすことを特徴とする。
(Lθ/(Lθ−a(θ−b)))2<TL/TM ・・・・[1]
式中、Lは導電層1aの母線方向における有効長さ[mm]で、切り込み20が導電層1aの片端のみの場合は導電層1aの母線方向長、切り込み20が導電層1aの両端にある場合は導電層1aの母線方向長の半分の長さである。θは導電層1aの円周方向における有効長さ[mm]で、導電層1aの片端において切り込み20が1本の場合は導電層1aの円周長である。導電層1aの片端において切り込み20が2本以上ある場合は円周方向における両隣の切り込みとの中点から中点までの長さである。TMは通紙領域における導電層1aの表面温度[℃]であり、TLは各定着部材の耐熱温度[℃]である。
式中、Lは導電層1aの母線方向における有効長さ[mm]で、切り込み20が導電層1aの片端のみの場合は導電層1aの母線方向長、切り込み20が導電層1aの両端にある場合は導電層1aの母線方向長の半分の長さである。θは導電層1aの円周方向における有効長さ[mm]で、導電層1aの片端において切り込み20が1本の場合は導電層1aの円周長である。導電層1aの片端において切り込み20が2本以上ある場合は円周方向における両隣の切り込みとの中点から中点までの長さである。TMは通紙領域における導電層1aの表面温度[℃]であり、TLは各定着部材の耐熱温度[℃]である。
切り込み20が長方形状以外(略長方形状以外)の形状を有している場合、切り込み20の先端部における切り込み深さをa[mm]、切り込み幅をb[mm]と再定義した場合に、前記[1]の式を満たすことを特徴とする。
切り込み20の先端部にカーブ形状が付いている場合、カーブの終着地点で切り込み幅bを定義することを特徴とする。
前記[1]の式におけるTLが、導電層1aの上に積層された弾性層1bの耐熱温度であることを特徴とする。
4−5)効果の確認
これまで回路網計算で示してきた本実施例の定着装置の発熱原理について、実験によりその効果の確認を行った。また、実験結果と回路網計算による計算結果を比較することにより、計算による見積もりの妥当性を確認した。
これまで回路網計算で示してきた本実施例の定着装置の発熱原理について、実験によりその効果の確認を行った。また、実験結果と回路網計算による計算結果を比較することにより、計算による見積もりの妥当性を確認した。
(実施例1)
下記の表6は、コア2の有無と、切り込み20による電力削減量を比較した結果である。実施例1の定着装置は図1および図3で説明した定着装置Aであり、定着スリーブ1は図2の(a)で説明した、導電層1aと、弾性層1bと、離型層1cの複合構造で、切り込み20を設けた筒形の回転体である。
下記の表6は、コア2の有無と、切り込み20による電力削減量を比較した結果である。実施例1の定着装置は図1および図3で説明した定着装置Aであり、定着スリーブ1は図2の(a)で説明した、導電層1aと、弾性層1bと、離型層1cの複合構造で、切り込み20を設けた筒形の回転体である。
定着ローラ1の導電層1aは、特許文献3で使われているような厚さ0.5mm、直径30mm(円周方向の長さはおよそ94mm)、長手長さ260mmの鋼である。導電層1aの外周面側には、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムから成る弾性層1bを0.3mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として20μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。
表6中の比較例1は、実施例1の定着装置から、コア2を除いた定着装置である。定着スレーブ1には、幅10mm、深さ20mmの切り込み20を導電層1aの両端部にほぼ等間隔で4本設けている。
定着スリーブ1の長手全域は日本アビオニクス(株)製の赤外線サーモグラフィーR300SRを用いて測定しており、定着スリーブ1の長手中央部の表面温度が170℃になるように高周波コンバータ16への投入電力を調整している。
導電層1aに切り込み20が無い場合に必要な投入電力は、実施例1および比較例1共に800Wである。この800Wに対して、切り込み20による電力削減量を表6に示している。
表6を見ると、実施例1の方が比較例1よりも電力削減量が多くなっており、実施例1の方が切り込み20によって効率的に電力が削減できていることが分かる。比較例1の電力削減量を100%とした場合、実施例1は20%削減率を向上させたことになる。
これは、比較例1が導電層1aに発生する渦電流によって発熱しているのに対して、実施例1は導電層1aの円周方向に発生する周回電流によって発熱していることに起因している。すなわち、渦電流で発熱する導電層1aの領域を減らす手法よりも、本実施例1のように周回電流の向きを変更する手法の方が、電力削減効率が高いことを示している。
(その他の実施例)
下記の表7は、切り込み20の深さaと幅bを変えた場合の実施例2〜7の余剰発熱の抑制割合W’/Wと切り込み端部の局所発熱割合ωB/ωの実験結果および計算結果である。
下記の表7は、切り込み20の深さaと幅bを変えた場合の実施例2〜7の余剰発熱の抑制割合W’/Wと切り込み端部の局所発熱割合ωB/ωの実験結果および計算結果である。
実施例2〜7は切り込み形状以外の定着装置構成は実施例1とほぼ同一である。この時の定着スリーブ1の導電層1aは、直径30mm(円周方向の長さはおよそ94mm)、長手長さ260mm、厚み35μmのSUS304である。また、導電層1aの両端に同じ形状の切り込み20が4個ずつ入っており、それらは導電層1aの円周方向でほぼ等間隔に配置されている。切り込み20の深さaおよび幅bは各実施例および比較例で異なっており、表7に記載している通りである。
実施例5の切り込み深さと幅は特許文献3に開示されているスリット形状を参考にした。定着スリーブ1の長手全域は日本アビオニクス(株)製の赤外線サーモグラフィーR300SRを用いて測定しており、定着スリーブ1の長手中央部の表面温度が170℃になるように高周波コンバータ16への投入電力を調整している。導電層1aに切り込み20が無い場合に必要な投入電力は600Wである。実験における余剰発熱の抑制割合は「W’/W=切り込みがある場合の投入電力/切り込みが無い場合の投入電力」として定義した。また、計算における余剰発熱の抑制割合W’/Wは式(47)から求めた。
一方で、実験における切り込み端部の局所発熱割合については、「ωB/ω=切り込み端部の定着スリーブ表面温度/定着スリーブの長手中央部の表面温度」として定義した。計算における切り込み端部の局所発熱割合ωB/ωは式(51)から求めた。
表7の実施例2〜4は切り込み幅b=5mm固定で、切り込み深さaが異なっている。実験結果および計算結果を見ると、切り込み深さaが長いほど、余剰発熱割合W’/Wは低くなっているが、局所発熱割合ωB/ωは高くなっていることが分かる。また、実験結果と計算結果はおおよそ良い一致を示している。
表7の実施例4〜7は切り込み深さa=20mm固定で、切り込み幅bが異なっている。実験結果および計算結果を見ると、切り込み幅bが大きいほど、余剰発熱割合W’/Wと局所発熱割合ωB/ωはともに低くなっており、余剰発熱の削減および局所発熱の抑制に有利な構成になっている。また、実験結果と計算結果はおおよそ良い一致を示している。
またこれらの結果から、切り込み幅が0.5mmと狭い実施例5の場合、余剰発熱抑制効果がある一方で、定着部材の破損のリスクがあることが分かる。本実施例の定着装置の場合、定着部材の耐熱温度で最も厳しい部材は導電層1aの外側に積層されているシリコーンゴムから成る弾性層1bであり、その耐熱温度TLは230℃である。本実施例の定着装置における普通紙の目標定着温度TMを170℃とすると、式(52)におけるTL/TMはおよそ1.35になる。
実施例5における局所発熱割合ωB/ωは実験で1.43、計算で1.39となっており、いずれも1.35を超えている。これは、本実施例の定着装置のような導電層1aに周回電流を流して発熱させる定着装置に、特許文献3に開示されている幅0.5mm、深さ20mm程度の細長い切り込みを入れてしまうと、弾性層1bの破損を引き起こす可能性を示している。
以上の考察より、実施例5には余剰発熱抑制効果はあるが、定着スリーブ1の弾性層1bが破損するリスクがあることが確認された。このリスクを回避するためには、切り込み形状が式(52)を満たす構成にするのがより望ましい。
また、このリスクを回避するもう一つの構成として、図2の(b)に示す定着スリーブ1のように、切り込み20と弾性層1bが長手方向で間隔を空けてオーバーラップしない層構成にすることが望ましい。
下記の表8は、切り込み20を導電層1aの片端のみに入れた場合の実施例8、および、切り込み20の本数を変えた場合の実施例7、9〜11の余剰発熱の抑制割合W’/Wと切り込み端部の局所発熱割合ωB/ωの実験結果および計算結果である。他の実験および計算条件は、表7の時と同じである。実施例7〜11において切り込み1本の深さaは20mm、幅bは5mmである。また、各実施例において切り込み20は導電層1aの円周方向でほぼ等間隔に配置されている。
表8の実施例7と8は、切り込み20が導電層1aの両端に有る場合か、片端のみの場合かの違いである。両端に切り込み20がある実施例7の方が、余剰発熱抑制割合W’/Wが低く有利になっている。しかし、局所発熱割合ωB/ωに関しては、片端のみに切り込み20がある実施例8の方が低く、有利になっている。また、実験結果と計算結果はおおよそ良い一致を示している。
表8の実施例7、9〜11は、切り込み20の本数がそれぞれ異なっている。切り込み本数が多いほど、余剰発熱割合W’/Wと局所発熱割合ωB/ωはともに低くなっており、余剰発熱の削減および局所発熱の抑制に有利な構成になっている。また、実験結果と計算結果はおおよそ良い一致を示している。
下記の表9の実施例12〜15は、実施例7の略長方形の切り込み形状を図17の(a)〜(d)に変えた定着装置である。切り込み形状以外の条件は表7の実施例7と同じである。実施例12〜15の各切り込みにおいて、切り込み先端までの深さaは20mm、切り込み先端の幅bは10mmである。実施例15の切り込みは、切り込み先端にカーブ形状が付与されており、切り込み先端までの深さaは20mm、カーブの終着地点での切り込み幅bは10mmである。
表9には、実施例12〜15の定着装置を用いた場合の、余剰発熱の抑制割合W’/Wと切り込み端部の局所発熱割合ωB/ωの実験結果および計算結果を示している。切り込み形状の違いに依らず余剰発熱割合W’/Wと局所発熱割合ωB/ωは共に同程度の値を示していることが分かる。また、実験結果と計算結果はおおよそ良い一致を示している。
以上説明したように、導電層1aを有する円筒形回転体1の内周面側に螺旋状のコイル3と磁力線を誘導するためのコア2を備えた定着装置において、導電層1aの端部にスリット状の切り込み20を入れる。これにより、非通紙領域の周回電流による発熱を効率的に抑制できる。また、切り込み20の形状が式(52)を満たすことで、局所発熱による定着スリーブ1の弾性層1bの破損を抑制できる。
なお、定着装置Aは記録材上に形成された未定着トナー像を加熱して定着する装置に限られない。半定着又は定着済みトナー像を再加熱して画像の表面光沢を調整する処理にも用いられる装置(この場合も定着装置と呼ぶことにする)も包含される。
A・・定着装置、1・・筒状の回転体、1a・・導電層、2・・コア、3・・コイル、20・・切り込み、P・・記録材、T・・画像
Claims (16)
- 導電層を有する筒状の回転体と、前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、前記導電層の端部にスリット状の切り込みが設けられていることを特徴とする定着装置。
- 前記切り込みは、前記導電層の周方向に間隔をおいて複数が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記切り込みは、前記導電層の両端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
- 前記導電層の外周面側に弾性層が形成されており、前記弾性層は前記切り込みと接触しない領域で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の定着装置。
- 前記切り込みは、前記導電層の母線方向に切り込み深さa[mm]、前記導電層の周回方向に切り込み幅b[mm]の大きさを有しており、切込み深さa[mm]および切り込み幅b[mm]が次の[1]の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の定着装置。
(Lθ/(Lθ−a(θ−b)))2<TL/TM ・・・・[1]
(式中、Lは前記導電層の母線方向における有効長さ[mm]で、切り込みが導電層の片端のみの場合は導電層の母線方向長、切り込みが導電層の両端にある場合は導電層の母線方向長の半分の長さであり、θは導電層の円周方向における有効長さ[mm]で、導電層の片端において切り込みが1本の場合は導電層の円周長、導電層の片端において切り込みが2本以上ある場合は円周方向における両隣の切り込みとの中点から中点までの長さであり、TMは通紙領域における導電層の表面温度[℃]であり、TLは各定着部材の耐熱温度[℃]である。) - 前記切り込みが長方形状以外の形状を有している場合、前記切り込みの先端部における切り込み深さをa[mm]、切り込み幅をb[mm]と再定義した場合に、前記[1]の式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
- 前記切り込みの先端部にカーブ形状が付いている場合、カーブの終着地点で切り込み幅bを定義することを特徴とする請求項5または6に記載の定着装置。
- 前記[1]の式におけるTLが、前記導電層の上に積層された弾性層の耐熱温度であることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の定着装置。
- 導電層を有する筒状の加熱回転体と、前記加熱回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記加熱回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置に用いられる前記加熱回転体であって、前記導電層の端部にスリット状の切り込みが設けられていることを特徴とする加熱回転体。
- 前記切り込みは、前記導電層の周方向に間隔をおいて複数が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の加熱回転体。
- 前記切り込みは、前記導電層の両端部に設けられていることを特徴とする請求項9または10に記載の加熱回転体。
- 前記導電層の外周面側に弾性層が形成されており、前記弾性層は前記切り込みと接触しない領域で形成されていることを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の加熱回転体。
- 前記切り込みは、前記導電層の母線方向に切り込み深さa[mm]、前記導電層の周回方向に切り込み幅b[mm]の大きさを有しており、切込み深さa[mm]および切り込み幅b[mm]が次の[1]の式を満たすことを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載の加熱回転体。
(Lθ/(Lθ−a(θ−b)))2<TL/TM ・・・・[1]
(式中、Lは前記導電層の母線方向における有効長さ[mm]で、切り込みが導電層の片端のみの場合は導電層の母線方向長、切り込みが導電層の両端にある場合は導電層の母線方向長の半分の長さであり、θは導電層の円周方向における有効長さ[mm]で、導電層の片端において切り込みが1本の場合は導電層の円周長、導電層の片端において切り込みが2本以上ある場合は円周方向における両隣の切り込みとの中点から中点までの長さであり、TMは通紙領域における導電層の表面温度[℃]であり、TLは各定着部材の耐熱温度[℃]である。) - 前記切り込みが長方形状以外の形状を有している場合、前記切り込みの先端部における切り込み深さをa[mm]、切り込み幅をb[mm]と再定義した場合に、前記[1]の式を満たすことを特徴とする請求項13に記載の加熱回転体。
- 前記切り込みの先端部にカーブ形状が付いている場合、カーブの終着地点で切り込み幅bを定義することを特徴とする請求項13または14に記載の加熱回転体。
- 前記[1]の式におけるTLが、前記導電層の上に積層された弾性層の耐熱温度であることを特徴とする請求項13乃至15の何れか1項に記載の加熱回転体。
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