JP2017072779A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】筒状の回転体の導電層の厚み差に起因する発熱ムラを抑制可能な定着装置を提供すること。【解決手段】筒状の回転体1の導電層1aは前記回転体の母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材Rp上の画像Tの最大通過領域の一端から他端までの区間において、コア2の磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、前記回転体に挿通した前記コアは、前記導電層から一定量のはみ出し量a1,b1を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量b1が薄い側のはみ出し量a1よりも少ないことを特徴とする。【選択図】図17
Description
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載する電磁誘導加熱方式の定着装置に関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置として、加圧ローラと共にニップ部を形成する筒状の加熱回転体の導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が知られている。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で搬送されつつ加熱され、これによってトナー画像は記録材上に定着される。このタイプの定着装置はウォーミングアップ時間が短く、消費電力も低いという利点を持つ。
特許文献1には、交番磁束が通る磁気回路内に導電体にて形成した筒体を備え、筒体に誘起された起電流と筒体の電気抵抗とにより筒体が電磁誘導発熱する定着装置が開示されている。このタイプの定着装置は、筒体そのものがヒータとして作用するため、簡単な構成で熱効率が高い等のメリットがある。
ところで、複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置は、加熱回転体の母線方向について、プリント可能な最大サイズの記録材幅に対応した加熱領域をニップ部に有する。加熱領域はトナー画像に定着ムラが発生しないように均一に発熱することが望ましい。
特許文献1のように筒体が電磁誘導発熱する定着装置では、筒体の母線方向について、筒体の一方の端部側と他方の端部側とで厚み差がある場合、厚い側の電気抵抗が低く、薄い側の電気抵抗が高いことに起因して筒体に発熱ムラが生じる。
本発明の目的は、筒状の回転体の導電層の厚み差に起因する発熱ムラを抑制可能な定着装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コアは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする。
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コアは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする。
また、本発明に係る定着装置は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コア、及び前記コイルは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする。
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コア、及び前記コイルは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする。
本発明によれば、筒状の回転体の導電層の厚み差に起因する発熱ムラを抑制可能な定着装置の提供を実現できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の好適な実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は以下の実施例により限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において他の構成に置き換えることは可能である。
[実施例1]
(1)画像形成装置100
図1を参照して、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置を説明する。図1は電子写真記録技術を用いた画像形成装置(本実施例ではモノクロプリンタ)100の一例の概略構成を示す断面図である。
(1)画像形成装置100
図1を参照して、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置を説明する。図1は電子写真記録技術を用いた画像形成装置(本実施例ではモノクロプリンタ)100の一例の概略構成を示す断面図である。
画像形成装置100において、記録材Rpにトナー画像を形成する画像形成部IFは、像担持体としての感光ドラム101と、帯電部材102と、レーザスキャナ103と、を有する。更に画像形成部IFは、現像器104と、感光ドラム101の外周面(表面)をクリーニングするクリーナ110と、転写部材108と、を有する。以上の画像形成部IFの動作は周知であるので詳細な説明は割愛する。
画像形成装置本体100A内のカセット105に収納された記録材Rpは、ローラ106の回転によって1枚ずつ繰り出された後に、ローラ107の回転によって感光ドラム101と転写部材108とで形成された転写部に搬送される。転写部でトナー画像が転写された記録材Rpは画像定着部としての定着装置Fに送られ、トナー画像は定着装置Fで記録材に加熱定着される。定着装置Fを出た記録材Rpはローラ111の回転によってトレイ112に排出される。
(2)定着装置F
本実施例に示す定着装置Fは電磁誘導加熱方式の装置である。図2は定着装置Fの概略構成を示す断面図である。図3は図2に示す定着装置Fを記録材Rpの搬送方向aの上流側から見たときの正面図である。図4は磁性コア2と励磁コイル3による定着フィルム1の電磁誘導加熱を説明するための図である。
本実施例に示す定着装置Fは電磁誘導加熱方式の装置である。図2は定着装置Fの概略構成を示す断面図である。図3は図2に示す定着装置Fを記録材Rpの搬送方向aの上流側から見たときの正面図である。図4は磁性コア2と励磁コイル3による定着フィルム1の電磁誘導加熱を説明するための図である。
加圧部材としての加圧ローラ8は、芯金8aと、芯金8aの外周面上にローラ状に設けられた耐熱性の弾性層8bと、弾性層8bの外周面上に設けられた離型層8cと、を有する。弾性層8bの材質は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよいものが好ましい。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向(図3参照)について、加圧ローラ8の芯金8aの両端部は定着装置Fの左右のフレーム(不図示)に軸受けを介して回転自由に保持されている。また、ステイ5の両端部と、左右のフレーム側のバネ受け部材18a,18bとの間に、それぞれ、加圧バネ17a,17bを縮設することでステイ5に押し下げ力を作用させている。本実施例の定着装置Fでは、耐熱性樹脂ポリフェニレンサルファイド(PPS)等で構成されたニップ形成部材6の加圧ローラ8とは反対側の座面6aに保持させたステイ5に総圧約100N〜250N(約10kgf〜約25kgf)の押圧力を与えている。
ステイ5を保持したニップ形成部材6の外周には、導電層を有する筒状の回転体としての定着フィルム(以下、フィルムと称する)1がルーズに外嵌させてある。ステイ5に押圧力を与えると、ニップ形成部材6の加圧ローラ8側の平坦面6bがフィルム1の外周面を加圧ローラ8の外周面に圧接する。これにより、フィルム1を介してニップ形成部材6の平坦面6bと加圧ローラ8の外周面とで所定幅のニップ部N(図2参照)が形成される。
加圧ローラ8はモータ(不図示)により矢印方向に回転駆動し、この加圧ローラ8の回転に追従してフィルム1はフィルム1の内周面がニップ形成部材6の平坦面6bに摺動しながら矢印方向に回転する。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、ステイ5の両端部にはフランジ12a,12bが外嵌されている。フランジ12a,12bは、それぞれ、規制部材13a,13bによりフレームに固定されている。各フランジ12a,12bは、フィルム1側の内面に規制面12a1,12b1(図3参照)を有し、フィルム1の回転時に規制面12a1,12b1でフィルム1の端部を受けてフィルム1の母線方向に沿う寄り移動を規制する。フランジ12a,12bの材質としては、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂等の耐熱性の良いものが好ましい。
フィルム1は、外径24mmの発熱に寄与する導電性部材でできた筒状の導電層1aと、その導電層1aの外周面に積層した弾性層1bと、その弾性層1bの外周面に積層した離型層1cと、からなる複合構造の可撓性を有する筒形回転体である。導電層1aの材質は金属フィルムである。導電層1aとして、比透磁率1.0のSUS304を用いている。
弾性層1bとして、硬度が20°(JIS−K6253準拠のタイプA)のシリコーンゴムを0.3mm〜0.1mmの厚さに加工したものを用いている。そして、弾性層1b上に離型層1cとして50μm〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、導電層1aの長さは230mmである。この導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させて発熱する。この熱が弾性層1b、離型層1cに伝達されて、フィルム1全体が加熱され、ニップ部Nに導入される記録材Rpを加熱して未定着トナー画像Tの定着がなされる。
導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させる原理と構成について詳述する。図4は磁性コア2と励磁コイル3によるフィルム1の電磁誘導加熱を説明するための図である。
磁性芯材としての磁性コア2は、不図示の固定手段でフィルム1の中空部を貫通して配置させ、磁極NP,SPを持つ直線状の開磁路を形成している。つまり、磁性コア2は、後述する励磁コイル3の螺旋形状部3cの中にフィルム1の母線方向に沿って配置されている。
磁性コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金や、パーマロイ等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が好ましい。本実施例では、比透磁率1800の焼成フェライトを用いる。コア2の形状は直径14mmの円柱形状をしている。記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、コア2の長さは240mmである。
磁界発生手段としての励磁コイル3は、通常の単一導線をフィルム1の中空部において、磁性コア2を収納させたコアホルダ14(図5参照)に螺旋状に巻き回してフィルム1の母線方向と平行な螺旋形状部3cを形成している。その際、記録材Rpの搬送方向aに交するX軸方向に関し、磁性コア2の左右両側の開磁路端部(以下、端部と称する)において巻間隔が密になるように巻き、これらの端部間の中央部において巻間隔が疎となるように巻く。本実施例においては、長さ240mmの磁性コア2に対し、コイル3は18回巻きつけている。その巻間隔は端部において10mm、中央部において20mm、その端部と中央部の中間において15mmとなっている。
このように磁性コア2に対しフィルム1の回転軸Xaと交差する方向に単一導線を巻き回して励磁コイル3を形成している。この励磁コイル3に給電接点部3a,3bを介して高周波コンバータ16から高周波交流電流を供給し、磁性コア2の記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に交番磁束(交番磁界)を発生させる。この交番磁束により導電層1aの周回方向に誘導電流が流れ、導電層1a自身の電気抵抗によってジュール熱を発生させることで、導電層1aを発熱させる。このとき導電層1aは導電層1aの外周全域で発熱する。
つまり、励磁コイル3は、フィルム1の内部に配置され、螺旋軸3cxがフィルム1の母線方向と略平行である螺旋形状部3cを有し、フィルム1の導電層1cを電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための部材である。そして、磁性コア2は、励磁コイル3の螺旋形状部3cの中に配置され、上記交番磁界の磁力線を誘導するための部材である。ここで、螺旋軸3cxは螺旋形状部3cの中心線である。
図5は、磁性コア2を備えるユニットU1と、このユニットU1を移動可能に収納するコイルホルダ4と、磁性コア2の位置を調整するコアスペーサー19と、の関係を説明するための断面図である。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、磁性コア2は筒状のコアホルダ14に収納され、このコアホルダ14の外周面には励磁コイル3が螺旋状に巻かれている。つまり、磁性コア2と励磁コイル3のそれぞれをコアホルダ14に保持させることで、磁性コア2及び励磁コイル3は一体のユニットU1として構成されている。
このユニットU1は筒状のコイルホルダ4に収納され、そのコイルホルダ4をステイ5の内側でニップ形成部材6の座面6bに固定保持させている。ここで、X軸方向について、コイルホルダ4、及びコアホルダ14の長さは同じである。そしてこのコイルホルダ4、及びコアホルダ14の長さは磁性コア2よりも長い。
磁性コア2はコアホルダ14内をX軸方向に移動可能である。コイルホルダ4の右側の端部には位置調整手段としてのコアスペーサー19が交換可能に装着されている。X軸方向に移動可能な磁性コア2の左側の端部を不図示のバネで加圧し磁性コア2の右側の端部をコアスペーサー19に当接させることによって、磁性コア2の位置がコアスペーサー19で規定される。よって、厚さの異なるコアスペーサー19を複数準備しておき、これらのコアスペーサー19の交換を行うことで、フィルム1の導電層1a、及び励磁コイル3に対する磁性コア2の相対位置を調整することができる。
不図示のバネ、及びコアスペーサー19の材質は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いている。
図6は、フィルム1と、コイルホルダ4と、フランジ12a,12bと、規制部材13a,13bと、の位置関係を説明するための図である。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、導電層1aを有するフィルム1は回転時にフランジ12a,12bの規制面12a1,12b1によって位置が規制される。フィルム1の位置が規制されることで、コイルホルダ4と導電層1aの相対位置は固定される。コイルホルダ4内で磁性コア2の位置はコアスペーサー19の厚さを変えることで変更可能なことから、フィルム1の導電層1a位置に対する磁性コア2の相対位置を変更することが可能である。
(3)温度制御
図2、図3に示すように、非接触型サーミスタによって構成される検温素子としての温度検知素子9,10,11は、記録材Rpの搬送方向aに関し、ニップ部Nの上流側でフィルム1に対向させて配設してある。
図2、図3に示すように、非接触型サーミスタによって構成される検温素子としての温度検知素子9,10,11は、記録材Rpの搬送方向aに関し、ニップ部Nの上流側でフィルム1に対向させて配設してある。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に関し、フィルム1の中央に配設された温度検知素子9は、大サイズ記録材と小サイズ記録材が必ず通過するフィルム中央部(通過領域)の温度を検知する。この温度検知素子9の検出温度に基づきフィルム1は表面の温度が所定の定着温度(目標温度)に維持・調整される。フィルム1の両端部に配設された温度検知素子10,11では、大サイズ記録材が通過し小サイズ記録材が通過しないフィルム端部(非通過領域)の昇温具合を検知することができる。
図4に示す高周波コンバータ16は、励磁コイル3に、給電接点部3a,3bを介して高周波電流を供給する。温度制御部としての制御回路15は、温度検知素子9,10,11によって検出された温度を基に高周波コンバータ16を制御する。これによりフィルム1の導電層1aは電磁誘導加熱される。そしてこの制御回路15は、フィルム1の表面温度が所定の目標温度(約150℃〜200℃)になるように高周波コンバータ16の制御を行う。
(4)発熱原理
導電層1aの発熱原理について、導電層1aの膜厚が記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に均一な場合を例に説明する。
導電層1aの発熱原理について、導電層1aの膜厚が記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に均一な場合を例に説明する。
4−1)磁力線の形状と誘導起電力
まず、磁力線の形状について説明する。図7(a)は、励磁コイルとしてのソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の磁界の模式図である。視認性を良くするため図7(a)は巻き数を減らし、形状を単純化してある。また、磁性コア2の長手方向の中心位置を位置Oとしている。矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。ここで、磁性コア2に関し長手方向とはスリーブ1の母線方向と平行な方向をいう。
まず、磁力線の形状について説明する。図7(a)は、励磁コイルとしてのソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の磁界の模式図である。視認性を良くするため図7(a)は巻き数を減らし、形状を単純化してある。また、磁性コア2の長手方向の中心位置を位置Oとしている。矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。ここで、磁性コア2に関し長手方向とはスリーブ1の母線方向と平行な方向をいう。
磁性コア2は、ソレノイドコイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する部材として機能する。本実施例の磁性コア2は、環状になっているものではなく、磁性コア2の長手方向にそれぞれ端部を有するものである。そのため、磁力線は、大多数がソレノイドコイル3中央の磁路に集中して通って、磁性コア2の長手方向の端部において拡散する形状の開磁路となる。両極から出た磁力線は、外周の遥か遠くで繋がる形状の開磁路となる(図の表記上は遠方の磁力線は省略している)。
図7(b)は、ソレノイド中心軸Xsにおける磁束密度の分布を示す。磁束密度は、グラフ上の曲線Bに示すように、台形に近い形状となる。
4−2)誘導起電力
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。
図8(a)に示すソレノイドコイル3の磁性コア2の端部近傍に、ソレノイドコイル3と磁性コア2より直径の大きな回路Sを置き、ソレノイドコイル3には高周波電流を流す場合を考える。高周波電流を流した場合、ソレノイドコイル3周辺には交番磁界が形成される。その時、回路Sに発生する誘導起電力は、以下の式(1)に従い、ファラデーの法則より回路Sの中を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
V:誘導起電力
ΔΦ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
従って、交流電流の周波数を高周波数にすることは、断面積の小さな磁性コア2で大きな誘導起電力を発生させることができるため、小さな定着装置で大きな熱量を発生させたい場合に非常に有効である。本実施例では、交流電流の周波数を21kHz〜100kHzの高周波数帯で用いている。
ΔΦ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
従って、交流電流の周波数を高周波数にすることは、断面積の小さな磁性コア2で大きな誘導起電力を発生させることができるため、小さな定着装置で大きな熱量を発生させたい場合に非常に有効である。本実施例では、交流電流の周波数を21kHz〜100kHzの高周波数帯で用いている。
交番磁界によって高効率で回路Sに誘導起電力を発生させるためには、回路Sの中を磁束がより多く通過している状態を設計する必要がある。しかし、交番磁界においては、回路Sに誘導起電力が発生した際の反磁界の影響等も考慮する必要があり、現象が複雑となってしまう。本実施例の定着装置を設計するためには、誘導起電力の発生していない静磁界の状態の磁力線の形によって議論を進めることによって、より簡単な物理モデルで設計を進めることが出来る。すなわち静磁界における磁力線形状を最適化することによって、交番磁界において高効率に誘導起電力を発生させる定着装置が設計できる。
図8(b)は、ソレノイド中心軸Xsにおける磁束密度の分布を示す。コイルに直流電流を流して静磁界を形成した場合を考えると、回路Sを位置X1に置いたときの磁束に対して、位置X2に置いたときに、回路Sを垂直に貫く磁束はBに示すように増加する。そして位置X2において、磁性コア2に束縛された磁力線がほぼ全て回路Sの中に納まり、位置X2よりもXs軸正方向の安定領域Mにおいては、回路を垂直に貫く磁束は飽和し、常に最大となる。
図9(a)に示すように、本実施例における磁力線構成としては、静磁界を形成した場合において導電層としての円筒形回転体1aを覆せる。そして磁性コア2の一端(磁極NP)から他端(磁極SP)まで、円筒形回転体1aの外部を磁束が通る磁力線の形状を設計する。
従って、円筒形回転体1a、磁性コア2、及び磁性コア2に巻き回した励磁コイル3の巻き領域の長さを最大の画像加熱領域ZLよりも長い構成とすることで、記録材Rp上のトナー画像Tを記録材Rp端部まで加熱することが可能となる。また、円筒形回転体1aの母線方向の長さは、最大の画像加熱領域(以下、画像加熱領域とも記す)ZLより長く構成することが必要である。
本実施例において、図9(a)に示すソレノイドコイル3で磁場を形成した際に、2つの磁極NPとSPが画像加熱領域ZLよりも外側に出ていることが重要である。そうすることによって、画像加熱領域ZLの範囲に熱を発生させることができる。尚、画像加熱領域ZLの代わりに記録材Rpの最大搬送領域よりも円筒形回転体1aを長くすることでもよい。
理想的な発熱のためには、画像加熱領域ZLの範囲を位置X2から位置X3の間である安定領域Mを用いて記録材の画像を加熱することが望ましい。しかし、磁性コア2、及び励磁コイル3の巻き領域の両方の長さを画像加熱領域ZLよりも長い構成とする必要があるため装置が大型化してしまう。磁性コア2、及び励磁コイル3の巻き領域の長さを、記録材Rp上のトナー画像Tの定着可能な範囲で短くして磁束が飽和していない領域でも使いこなすことで装置が小型化できる。ここで、最大の画像加熱領域ZLとは、フィルム1の母線方向に関し記録材Rp上の画像Tの最大通過領域の一端から他端までの区間をいう。
図9(b)に示すように、本実施例の定着装置Fでは、最大の画像加熱領域ZLの範囲を位置X4から位置X5の間とし、円筒形回転体1aの厚みが均一な時に、安定領域Mに対して画像加熱領域ZLの端部で10%低下する設計にしている。
4−3)円筒形回転体1a内部の周回電流
図9(a)において、磁性コア2の中心から励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加している時は、同図に示す概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
図9(a)において、磁性コア2の中心から励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加している時は、同図に示す概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
図10(a)は、図9(a)の位置Oにおける断面構成の概念図を示したものである。
磁路の中を通過する磁力線Binを、図中奥行き方向に向かう矢印(×印8個)で示す。そして図中手前方向に向かう矢印Bout(●印8個)は、静磁界を形成した時に磁路の外から戻ってくる磁力線を表している。これによると、円筒形回転体1aの中を紙面奥方向に向かう磁力線Binは8本であり、円筒形回転体1aの外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線Boutも8本である。
励磁コイル3の中に電流が矢印Iの向きに増加している瞬間は、磁路の中に図中奥行き方向に向かう矢印(○の中に×印)のように磁力線が形成される。実際に交番磁界を形成した時には、このように形成されようとする磁力線を打ち消すように、円筒形回転体1aの周方向全域に誘導起電力がかかり、電流は矢印Jの方向に流れる。この、円筒形回転体1aに電流が流れると、円筒形回転体1aは金属なので電気抵抗によりジュール発熱する。
本実施例の構成は、静磁界において磁性コア2の内部を通過する磁力線Binが円筒形回転体1aの中空部を通過し、磁路コア2の一端から出て磁性コア2の他端に戻ってくる磁力線Boutが円筒形回転体1aの外部を通過する。これは、交番磁界において、円筒形回転体1a内部において周回電流が支配的となり、磁束が円筒形回転体1aの材料内部を母線方向に貫いて発生する渦電流は発生しにくい。以後、一般に誘導加熱の説明で使用される「渦電流」と区別するため、本実施例の構成では円筒形回転体1aを矢印Jの方向(またはその逆方向)に一様に流れる電流を「周回電流」と呼ぶ。
ファラデーの法則に従う誘導起電力は、円筒形回転体1aの周回方向に生じているので、この周回電流Jは円筒形回転体1a内部を流れる。そして磁力線は、高周波電流により生成消滅と方向反転を繰り返すため、周回電流Jは高周波電流と同期して生成消滅と方向反転を繰り返し、円筒形回転体の材料の厚み方向全域の抵抗値によってジュール発熱する。図10(b)は、磁性コア2の磁路の中を通過する磁力線Binと、磁路の外から戻ってくる磁力線Boutと、円筒形回転体1a内部を流れる周回電流Jの方向を示す円筒形回転体1aの母線方向の斜視図である。
4−4)磁気回路とパーミアンス、磁気抵抗
「周回電流」を利用して円筒形回転体1aを発熱させる構成の条件の実験について説明する。定着装置の各構成部品の円筒形回転体1aの母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことが出来るものである。
「周回電流」を利用して円筒形回転体1aを発熱させる構成の条件の実験について説明する。定着装置の各構成部品の円筒形回転体1aの母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことが出来るものである。
磁気回路の基礎計算式は、電気回路に関するオームの法則と同一であり、全磁束をΦ、起磁力をV、磁気抵抗をRとすると、この3つの要素は
全磁束Φ=起磁力V/磁気抵抗R・・・・・(2)
の関係にある。従って、電気回路における電流は磁気回路における全磁束Φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する。
全磁束Φ=起磁力V/磁気抵抗R・・・・・(2)
の関係にある。従って、電気回路における電流は磁気回路における全磁束Φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する。
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。従って上記(2)は
全磁束Φ=起磁力V×パーミアンスP・・・・・(3)
で置き換えられる。
全磁束Φ=起磁力V×パーミアンスP・・・・・(3)
で置き換えられる。
このパーミアンスPは、磁路の長さをC、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとした時、
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長C・・・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Cが短く、磁路断面積S及び透磁率μが大きい程大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束Φがより多く形成される。
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長C・・・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Cが短く、磁路断面積S及び透磁率μが大きい程大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束Φがより多く形成される。
図9(a)に示すように、静磁界において磁性コア2の長手方向の一端から出る磁力線の大部分が円筒形回転体1aの外部を通って磁性コア2の他端まで戻るように設計する。その設計の際は、定着装置を磁気回路に見立て、「磁性コア2のパーミアンスは十分大きく、かつ円筒形回転体1aと円筒形回転体1a内側のパーミアンスが十分小さい状態」にすれば良い。
図11(a)、(b)では円筒形回転体(導電層)1aを円筒体と記す。図11(a)は、円筒体1a内部に、半径:a1[m]、長さ:C[m]、比透磁率:μ1の磁性コア2に、巻き数:N[回]の励磁コイル3を巻いた有限長ソレノイドを配置した構造体である。ここで、円筒体1aは、長さ:C[m]、円筒体1a内側の半径:a2[m]、円筒体1a外側の半径:a3[m]、比透磁率:μ2の導体である。円筒体1a内側および外側の真空の透磁率:μ0[H/m]とする。ソレノイドコイル3に電流:I[A]を流したときに、磁性コア2の任意の位置の単位長さ当たりに発生する磁束をφc(x)とした。
図11(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な断面を拡大した図である。図中の矢印は、ソレノイドコイル3に電流:Iを流したときに、磁性コア2の内部、円筒体1a内外の空気、及び、円筒体1a内を通る磁性コア2の長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア2中を通る磁束をφc(=φc(x))、円筒体1aの内側の空気中を通る磁束をφa_in、円筒体1a内を通る磁束をφcy、円筒体1a外側の空気中を通る磁束をφa_outとしている。
図12に、図11(b)に示した単位長さ当たりの磁性コア2、励磁コイル3、及び円筒体1aを含む空間の磁気等価回路を示す。
磁性コア2を通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コア2のパーミアンスをPc、円筒体1aの内側の空気中のパーミアンスをPa_in、円筒体1a内のパーミアンスをPcy、円筒体1a外側の空気のパーミアンスをPa_outとしている。円筒体1a内部または円筒体1aのパーミアンスPa_in、Pcyに比べて磁性コア2のパーミアンスPcが十分大きい時、以下の関係が成り立つ。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・・・(5)
すなわち、磁性コア2の内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コア2に戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記ようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・・・(10)
図11(b)より、励磁コイル3の断面積:Sc、円筒体1a内側の空気の断面積:Sa_in、円筒体1aの断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2) ・・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)2−(a2)2) ・・・・(13)
更に、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体1a外側の空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)2
−π・μ0・((a2)2−(a1)2)
−π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・・・(14)
各領域を通る磁束は、式(5)〜式(10)に示すように、各領域のパーミアンスに比例する。式(5)〜(10)を用いれば、各領域を通る磁束の比率を算出することができる。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・・・(5)
すなわち、磁性コア2の内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コア2に戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記ようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・・・(10)
図11(b)より、励磁コイル3の断面積:Sc、円筒体1a内側の空気の断面積:Sa_in、円筒体1aの断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2) ・・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)2−(a2)2) ・・・・(13)
更に、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体1a外側の空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)2
−π・μ0・((a2)2−(a1)2)
−π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・・・(14)
各領域を通る磁束は、式(5)〜式(10)に示すように、各領域のパーミアンスに比例する。式(5)〜(10)を用いれば、各領域を通る磁束の比率を算出することができる。
「円筒体1a母線方向への磁気の通りやすさを表現する形状係数」として、上記した「単位長さ当たりのパーミアンス」を利用する。式(5)〜(10)を用いて磁性コア2、ニップ形成部材6、円筒体1a内空気、円筒体1aに対して、断面積と透磁率から単位長さ当たりのパーミアンスを計算する。そして最後に、式(14)を用いて円筒体1a外空気のパーミアンスを計算する。
本計算は、「円筒体1aに内包し、磁路になり得る部材」は全て考慮する。そして磁性コア2のパーミアンスの値を100%として、各部分のパーミアンスの割合が何%になるかを示している。これによれば、どの部分において最も磁路が形成されやすいか、磁束がどの部分を通過するかについて磁気回路を用いて数値化することが出来る。
パーミアンスの代わりに磁気抵抗R(パーミアンスPの逆数)を用いても良い。なお、磁気抵抗を用いて議論する場合、磁気抵抗は単純にパーミアンスの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことが出来、単位は「1/(H・m)」である。
4−5)電力の変換効率
フィルムの円筒形回転体(導電層)1aを発熱させる際は、励磁コイル3に高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体1aに電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることが出来る。その交番磁界によって励磁コイル3と円筒形回転体1aが磁気結合して、励磁コイル3に投入した電力が円筒形回転体1aに伝達される。
フィルムの円筒形回転体(導電層)1aを発熱させる際は、励磁コイル3に高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体1aに電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることが出来る。その交番磁界によって励磁コイル3と円筒形回転体1aが磁気結合して、励磁コイル3に投入した電力が円筒形回転体1aに伝達される。
ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイル3に投入する電力と、円筒形回転体1aにより消費される電力の比率である。励磁コイル3に対して投入した電力と、円筒形回転体1aで発生した熱として消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式で表すことができる。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイル3に投入して円筒回転体1a以外で消費される電力は、励磁コイル3の抵抗による損失、磁性コア3材料の磁気特性による損失などがある。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイル3に投入して円筒回転体1a以外で消費される電力は、励磁コイル3の抵抗による損失、磁性コア3材料の磁気特性による損失などがある。
R1は励磁コイル3および磁性コア2の損失分、L1は磁性コア2に周回した励磁コイル3のインダクタンス、Mは巻き線と円筒形回転体1aとの相互インダクタンス、L2は円筒形回転体1aのインダクタンス、R2は円筒形回転体1aの抵抗である。円筒形回転体1aを取り外した時の等価回路を図13(a)に示す。図13(a)、(b)、(c)では円筒形回転体を導電層と記す。
インピーダンスアナライザやLCRメータといった装置により、励磁コイル3両端からの直列等価抵抗はR1、等価インダクタンスL1を測定すると、励磁コイル3両端から見たインピーダンスZAは
ZA=R1+jωL1 ・・・・・(15)
とあらわされる。この回路に流れる電流は、R1により損失する。即ちR1は励磁コイル3及び磁性コア2による損失を表している。
ZA=R1+jωL1 ・・・・・(15)
とあらわされる。この回路に流れる電流は、R1により損失する。即ちR1は励磁コイル3及び磁性コア2による損失を表している。
円筒形回転体1aを装荷したときの等価回路を図13(b)に示す。この時の直列等価抵抗Rx及びLxを測定しておけば、図13(c)のように等価変換することで以下のような関係式を得ることが出来る。
Mは励磁コイル3と円筒形回転体1aの相互インダクタンスを表す。
図13(c)に示すように、R1に流れる電流をI1、R2に流れる電流をI2とおくと
図13(c)に示すように、R1に流れる電流をI1、R2に流れる電流をI2とおくと
が成り立つため、
となる。
効率は抵抗R2の消費電力/(抵抗R1の消費電力+抵抗R2の消費電力)で表される為、
効率は抵抗R2の消費電力/(抵抗R1の消費電力+抵抗R2の消費電力)で表される為、
となる。
円筒形回転体1aを装荷する前の直列等価抵抗R1と、円筒形回転体1aを装荷した後の直列等価抵抗Rxを測定すると、コイルに投入した電力のうち、どれだけの電力が円筒形回転体で発生する熱として消費されるかを示す電力の変換効率を求めることが出来る。
なお、電力の変換効率の測定には、Agilent Technologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。まず、円筒形回転体1aの無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗R1を測定し、次に円筒形回転体1aに磁性コア2を挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。この時電力の変換効率は式(21)により、求めることが出来る。以後この電力の変換効率を用いて、電磁誘導加熱方式の定着装置の性能を評価する。
4−6)「円筒形回転体外部磁束の比率」に求められる条件
静磁界において円筒形回転体1a外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイル3に投入した電力が円筒形回転体1aに伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒形回転体1a外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コア2の内部を通過する磁束と、円筒形回転体1aの外部を通過する磁束の数が近い程、周回電流への電力の変換効率は高くなる。
静磁界において円筒形回転体1a外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイル3に投入した電力が円筒形回転体1aに伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒形回転体1a外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コア2の内部を通過する磁束と、円筒形回転体1aの外部を通過する磁束の数が近い程、周回電流への電力の変換効率は高くなる。
これは、磁性コア2の長手方向の一端から出て他端に戻る磁束(磁性コア2の内部を通過する磁束と向きが反対の磁束)が、円筒形回転体1aの中空部を通過し磁性コア2の内部を通過する磁束をキャンセルする割合が少ないということである。円筒形回転体1a外部磁束の比率を高くすることによって、励磁コイル3に流した高周波電流を円筒形回転体1a内部の周回電流として効率よく誘導することである。具体的にはニップ形成部材6、円筒形回転体1a内空気、円筒形回転体1aを通る磁束を減らすことである。
円筒形回転体1aの外部磁束の比率を高くし、電力の変換効率を高くできる条件を求める為、以下の実験を行った。図14は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置の図である。
金属シート1Sは、面積230mm×600mm、厚み20μmのアルミニウムシートであり、磁性コア2と励磁コイル3を囲むように円筒上に丸め、太線1ST部分において導通することによって円筒形回転体1aと同じ導電経路を形成している。
磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm2、長さC=230mmの円柱形状をしている。磁性コア2は不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置させており、長さC=230mmの円筒の中空部を貫通して、円筒の内部に磁路を形成する。励磁コイル3は円筒の中空部において、磁性コア2に巻数25回で螺旋状に巻き回して形成される。
ここで、金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、円筒の直径1SDを小さく出来る。この実験装置を用いて、円筒の直径1SDを191mmから18mmまで変化させながら、電力の変換効率を測定した。なお、1SD=191mmの時の円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表1に示し、1SD=18mmの時の円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表2に示す。
電力の変換効率の測定は、まず、フィルム1の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗R1を測定する。その次に、フィルム1の中空部に磁性コア2を挿入した状態において励磁コイル3両端からの直列等価抵抗Rxを測定し、式(21)に従って電力の変換効率を測定する。図15は、円筒の直径に対応する円筒形回転体1aの外部磁束の比率[%]を横軸にとり、電力の変換効率を縦軸にとったものである。
図15のグラフ中のプロットP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超えており、矢印で示す領域R1では電力の変換効率が70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、領域R2において80%以上となっている。P4以降の領域R3においては電力の変換効率が94%以上と高い値で安定している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは、円筒形回転体1aの内部に効率的に周回電流が流れ始めるようになったことに起因する。
電磁誘導加熱方式の定着装置を設計する上で、この電力の変換効率は極めて重要なパラメータである。例えば電力の変換効率80%であった場合、残り20%の電力は、円筒形回転体1a以外の箇所に熱エネルギーとして発生する。
発生する箇所は、主に励磁コイル3、磁性コア2、円筒形回転体1a内部に磁性体等の部材を配置した場合はその部材に発生する。つまり電力の変換効率が低ければ、励磁コイル3や磁性コア2に発生する熱のための対策を講じなければならない。そしてその対策の程度は、電力の変換効率70%、80%を境界として大きく変化する。従って領域R1,R2,R3の構成において、定着装置としての構成が大きく異なる。設計条件R1,R2,R3の3種類と、いずれにも属さない定着装置の構成について説明する。以下に定着装置を設計する上で、必要な電力の変換効率について詳細を説明する。
下記の表3は、図15に示すP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
定着装置P1の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の直径が143.2mmの場合である。この定着装置P1のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒体の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失は励磁コイル3及び磁性コア2の発熱となる。
定着装置P1の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の直径が143.2mmの場合である。この定着装置P1のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒体の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失は励磁コイル3及び磁性コア2の発熱となる。
本構成の場合、定着装置P1の立ち上げ時、数秒間、円筒体に1000Wを投入しただけでも励磁コイル3の温度は200℃を超える場合がある。励磁コイル3の絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、磁性コア(フェライト)2のキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル3等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コア2の温度がキュリー点を超えると励磁コイル3のインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置P1に供給した電力の約45%が円筒体の発熱に使用されないので、円筒体に900W(1000Wの90%を想定)の電力を供給するためには約1636Wの電力を供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流は15Aという制限がある場合、許容電流をオーバーする可能性がある。よって、円筒体の外側を通る外部磁束の比率64%以上、電力の変換効率54.4%以上である定着装置P1は、定着装置P1に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
定着装置P2の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が127.3mmの場合である。この定着装置P2のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。定着装置P2の加熱定着処理動作によっては、磁性コア2及び励磁コイル3等に定常的に大きな熱量が発生し、特に磁性コア2の昇温が課題となる場合がある。
定着装置P2の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が127.3mmの場合である。この定着装置P2のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。定着装置P2の加熱定着処理動作によっては、磁性コア2及び励磁コイル3等に定常的に大きな熱量が発生し、特に磁性コア2の昇温が課題となる場合がある。
本構成の定着装置P2を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置に搭載して使用すると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。よって、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースがある。そうすると、磁性コア2の温度は20秒間で240℃を超え、円筒体の温度より高くなる場合が考えられる。
磁性コア2として用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であり、フェライトがキュリー温度を超えた場合、透磁率は急激に減少する。透磁率が急激に減少すると、磁性コア2の中に磁路を形成することができない。磁路を形成することができなくなると、円筒体に周回電流を誘導して円筒体を発熱させることが難しくなる場合がある。
従って、円筒体の外側を通る外部磁束の比率が71.2%以上である領域R1(表3参照)の定着装置P2を、前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用すると、磁性コア2の温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
定着装置P3の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が63.7mmの場合である。この定着装置P3のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。磁性コア2及び励磁コイル3等には定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱出来る熱量を大きく上回ることはなかった。
定着装置P3の構成は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が63.7mmの場合である。この定着装置P3のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。磁性コア2及び励磁コイル3等には定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱出来る熱量を大きく上回ることはなかった。
本構成の定着装置P3を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置に搭載して使用すると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。従って、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースであっても、磁性コア(フェライト)2の温度は220℃以上に上昇することはなかった。そのため、本構成の定着装置P3を前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用する場合、キュリー温度220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。
従って、円筒体の外側を通る外部磁束の比率が91.7%以上である本構成の定着装置P3を前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用する場合は、フェライトコア等の耐熱設計を最適化することが望ましい。本構成の定着装置P3を前述した高スペックの画像形成装置に搭載しない場合は、そこまでの耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成の定着装置P4は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が47.7mmの場合である。この定着装置P4のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。
本構成の定着装置P4は、磁性コア2の断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層1a)の外径が47.7mmの場合である。この定着装置P4のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。
本構成の定着装置P4を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置に搭載して使用すると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。従って、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースにおいて、励磁コイル2は180℃以上に上昇することはなかった。これは、励磁コイル2がほとんど発熱しないことを示す。
円筒体の外側を通る外部磁束の比率94.7%以上、電力の変換効率94.7%以上である本構成の定着装置P4は、電力の変換効率が十分高いため、更なる高スペックの画像形成装置に搭載し使用しても、冷却手段は必要ない。
また、電力の変換効率が高い値で安定している本構成の定着装置P4は、円筒体と磁性コア2の位置関係が変動しても、電力の変換効率が変動しない。電力の変換効率が変動しない場合、円筒体から常に安定した熱量を発生させることができる。よって、可撓性を有するフィルム1のように円筒体と磁性コア2との距離が変動しやすい定着装置において、この電力の変換効率が高い値で安定している本構成の定着装置P4を用いることは大きなメリットがある。
以上、円筒形回転体1aの母線方向に磁界を発生させ、その円筒形回転体1aを電磁誘導発熱させる定着装置において、円筒形回転体1aの外側を通る外部磁束の比率に求められる設計条件は、図15中矢印R1、R2、R3に領域分けすることが出来る。
R1:円筒体外部磁束の比率70%以上90%未満
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
磁性コア2の長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体1aの外部を通って磁性コア2の他端に戻る割合が70%以上であることは、下記のパーミアンスの和が磁性コア2のパーミアンスの30%以下であることと等価である。ここで、パーミアンスの和とは、円筒形回転体1aのパーミアンスと円筒形回転体1a内部(円筒形回転体1aと磁性コア2の間の領域)のパーミアンスとの和である。従って、磁性コア2のパーミアンスをPc、円筒形回転体1a内部のパーミアンスをPa、円筒形回転体1aのパーミアンスPsとした時に、0.30×Pc≧Ps+Paの関係を満足する構成である。
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
磁性コア2の長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体1aの外部を通って磁性コア2の他端に戻る割合が70%以上であることは、下記のパーミアンスの和が磁性コア2のパーミアンスの30%以下であることと等価である。ここで、パーミアンスの和とは、円筒形回転体1aのパーミアンスと円筒形回転体1a内部(円筒形回転体1aと磁性コア2の間の領域)のパーミアンスとの和である。従って、磁性コア2のパーミアンスをPc、円筒形回転体1a内部のパーミアンスをPa、円筒形回転体1aのパーミアンスPsとした時に、0.30×Pc≧Ps+Paの関係を満足する構成である。
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記のようなる。
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように計算する。
Rc:磁性コア2の磁気抵抗
Rs:導電層1aの磁気抵抗
Ra:導電層1aと磁性コア2との間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置における記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向(記録材の搬送方向)の断面において満足するのが望ましい。
同様に、R2の定着装置は、以下の式を満たす。
Rs:導電層1aの磁気抵抗
Ra:導電層1aと磁性コア2との間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置における記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向(記録材の搬送方向)の断面において満足するのが望ましい。
同様に、R2の定着装置は、以下の式を満たす。
R3の定着装置は、以下の式を満たす。
以上のように「周回電流」を利用して円筒形回転体を発熱させる構成としては、フィルム1の母線方向に関し記録材Rp上の画像Tの最大通過領域の一端から他端までの区間において、磁気コア2の磁気抵抗が下記の条件を満たすことが望ましい。つまり、磁気コア2の磁気抵抗が、導電層1aの磁気抵抗と、導電層1aと磁気コア2との間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であることを満たすことが望ましい。
本実施例では、導電層1aの周回電流による発熱効率を高くする為に、上記の条件を満たす系で行っている。導電層1aは、比透磁率1.0のSUS304を用い、外径24mmである。本実施例の定着装置Fの各構成部材のパーミアンスと磁気抵抗を下記の表4に示す。
本構成においては、円筒体外部磁束の比率:99.9%であり、「R3:円筒体外部磁束の比率94%以上」の条件を満たしている。
(5)導電層1aの厚みムラ
続いて、フィルム1の導電層1aの厚みについて説明する。導電層1aは、薄膜化する為に絞りしごき加工を行っている。絞りしごき加工では、一方から金属を引き延ばしていくため、引き延ばし開始側と終了側で金属の厚みに差が生じる場合がある。この厚みの差(厚み差)は、導電層1aを作製した際に、導電層1aの母線方向の左右で厚みムラとなる。
続いて、フィルム1の導電層1aの厚みについて説明する。導電層1aは、薄膜化する為に絞りしごき加工を行っている。絞りしごき加工では、一方から金属を引き延ばしていくため、引き延ばし開始側と終了側で金属の厚みに差が生じる場合がある。この厚みの差(厚み差)は、導電層1aを作製した際に、導電層1aの母線方向の左右で厚みムラとなる。
図16に、導電層1aの厚みムラの一例を示す。厚み35μmとなるように導電層1aを作製しているが、導電層1aの母線方向の左右で一方が厚く他方が薄いといった厚みムラが生じている。図16に示す導電層1aは、一方の端部が厚み40μm、他方の端部が厚み30μmであり、厚みムラは10μmである。
導電層1aの厚み測定について説明する。導電層1aの内面を支持する棒を導電層1aの中空部に挿入し、導電層1aの内面が支持されている状態で導電層1aの表面側からダイヤルゲージを当て、ダイヤルゲージを移動することで導電層1aの母線方向の厚さプロファイルを測定している。本測定は導電層1aに弾性層1bを設ける前の状態にて予め行っている。
導電層1aの厚みが厚い方が、周回電流による発熱は多くなる。これは、厚いと抵抗が低く、周回電流が流れやすくなる為、発熱しやすいことに起因する。反対に、導電層1aの厚みが薄い方は、周回電流による発熱は少なくなる。これは、薄いと抵抗が高く、周回電流が流れにくくなる為、発熱しにくいことに起因する。
よって、磁束密度が同じであれば、導電層1aが厚い側が薄い側よりも発熱量が大きくなる。
(6)発熱ムラ補正
本実施例の定着装置Fの特徴について説明する。図17(a)は、本実施例の定着装置Fの導電層1aと磁性コア2の位置関係を示した断面の模式図である。
本実施例の定着装置Fの特徴について説明する。図17(a)は、本実施例の定着装置Fの導電層1aと磁性コア2の位置関係を示した断面の模式図である。
図17(a)では、導電層1aの母線方向について、導電層1aは左右で厚みムラを有しており、左側が薄く右側が厚い例を模式的にあらわしている。磁性コア2は実線であらわしている。導電層1aの厚みの薄い側の磁性コア2の導電層1aからのはみ出し量をa1とし、導電層1aの厚みの厚い側の磁性コア2の導電層1aからのはみ出し量をb1としたとき、a1−b1>0の関係を満たしている。即ち、導電層1aの厚みの厚い側の磁性コア2のはみ出し量b1を、導電層1aの厚みの薄い側の磁性コア2のはみ出し量a1よりも小さくする。
ここで、はみ出し量a1は、フランジ12aの規制面12a1と磁性コア2の端面2aの位置で規定されている。はみ出し量b1は、フランジ12bの規制面12b1と磁性コア2の端面2bの位置で規定されている。
図17(b)は、比較例1の定着装置の導電層1aと磁性コア2の位置関係を示した断面の模式図である。
図17(b)では、導電層1aの母線方向について、導電層1aは左右で厚みムラを有しており、左側が薄く右側が厚い例を模式的にあらわしている。磁性コア2は破線であらわしている。導電層1aの厚みの薄い側の磁性コア2の導電層1aからのはみ出し量をa2とし、導電層1aの厚みの厚い側の磁性コア2の導電層1aからのはみ出し量をb2としたとき、a2=b2の関係を満たしている。
ここで、はみ出し量a2は、フランジ12aの規制面12a1と磁性コア2の端面2aの位置で規定されている。はみ出し量b2は、フランジ12bの規制面12b1と磁性コア2の端面2bの位置で規定されている。
図17(c)に、本実施例、及び比較例1の定着装置のソレノイド中心軸Xsにおける磁束密度の分布を示す。画像加熱領域ZLを位置X4から位置X5の範囲とし、本実施例の磁束密度の分布を実線で示し、比較例1の磁束密度の分布を破線で示している。
本実施例の定着装置Fにおける磁性コア2のはみ出し量はa1−b1>0である。その為、導電層1aの厚みの薄い端部側(位置X4)の磁束密度は厚い端部側(位置X5)の磁束密度よりも大きい。一方、比較例1の定着装置における磁性コア2のはみ出し量はa2=b2である。その為、導電層1aの厚みの薄い端部側(位置X4)の磁束密度と厚い端部側(位置X5)の磁束密度は画像加熱領域ZLの中心Oに対して左右対称となっている。
図18に、本実施例の定着装置F、及び比較例1の定着装置の発熱分布を示す。本実施例の定着装置F、及び比較例1の定着装置について、導電層1aの厚みムラは10μmである。本実施例の定着装置Fは導電層1aに対する磁性コア2のはみ出し量をa1−b1=3mm(図19参照)としている。比較例1の定着装置Fは導電層1aに対する磁性コア2のはみ出し量をa2=b2としている。
図18は、本実施例のはみ出し量であるa1−b1>0、及び比較例1のはみ出し量であるa2=b2において、発熱ムラが抑制された励磁コア2の最適移動位置での導電層1a母線方向の発熱分布を示している。実線が本実施例であり、破線が比較例1である。
本実施例の定着装置Fは、導電層1aに対する励磁コア2のはみ出し量をa1−b1>0にすることで、フィルム1の導電層1aの厚みムラに起因する端部においてもフィルム温度は所定の定着温度(目標温度)の90%を維持している。このため、トナー画像Tに定着不良が発生することはない。また、導電層1a母線方向の左右の端部に温度差もない。
これに対して、比較例1の定着装置は、特にフィルム1の導電層1aの左側端部においてフィルム温度が所定の定着温度(目標温度)の90%を下回っている。このため、トナー画像Tに定着不良が発生する。また、導電層1a母線方向の左右の端部に温度差が発生している。
本実施例の定着装置Fでは、導電層1aの厚みの薄い端部側の磁束密度を大きくして誘導起電力を多くすることで当該端部側を発熱させる。また、導電層1aの厚みの厚い端部側の磁束密度を小さくして誘導起電力を少なくすることで当該端部側の発熱を抑える効果がある。このように導電層1aと磁束密度の位置関係とを変えることを利用して、導電層1a母線方向の温度分布の温度差、及び、導電層1aの厚みの薄い端部側と厚い端部側との温度差といった発熱ムラを補正している。
比較例1の定着装置では、導電層1aの厚みが母線方向で均一な場合は、左右対称な発熱分布を示す。しかし、導電層1aに厚みムラがある場合、左右の対称位置では誘導起電力が同じになる為、厚みムラに応じて発熱量が変わる。即ち、導電層1a母線方向の左右の端部について、導電層1aの厚みが薄く抵抗の高い端部側は厚みが厚く抵抗の低い端部側よりも発熱しないといった発熱ムラが発生する。
本実施例の定着装置Fでは、上記の発熱ムラ補正を定着装置Fの組立て時に行う。図5を用いて説明した通り、磁性コア2はコイルホルダ4内をX軸方向に移動可能である。そのため、フィルム1の導電層1a位置に対して所望の位置に磁性コア2を移動させることが可能である。
定着装置Fの組立て時に行う磁性コア2の位置補正方法について説明する。図19は、導電層1aの厚みと磁性コア2の最適移動量a1−b1の関係を表わした補正式を説明するための図である。ここで、導電層1aの厚みムラは、導電層1a母線方向の左右の端部の厚みの差分と定義している。
導電層1aの左右の端部の厚み測定は、導電層1aに弾性層1bを設ける前の状態でダイヤルゲージで測定した測定値を使用する。若しくは、マイクロゲージで導電層1aの左右の端部の厚みを測定してもよい。或いは、フィルム1の母線方向の左右の端部断面を画像観察し、導電層1aの厚みを算出してもよい。
図19に示す磁性コア2の移動量はa1−b1=0mmのときを基準としている。この移動量は導電層1aに対し磁性コア2を導電層1aの厚みの薄い端部側に移動させる量である。導電層1aに厚みムラが無い場合は磁性コア2を移動させる必要がない。導電層1aの厚みムラが大きい程、磁性コア2の移動量を大きくすることで、導電層1aの発熱ムラを補正することができる。
図19に示す補正式を予め求めておき、定着装置Fの製造時に導電層1aの厚みムラを測定した後、その測定結果に応じて導電層1aの母線方向の温度分布が所定の温度分布になるように補正式から磁性コア2の位置(移動量)を決定する。決定した磁性コア2の位置に応じて、コアスペーサー19の厚みを選択することで、磁性コア2位置の設定を行う。
以上説明したように、本実施例の定着装置Fは、フィルム1の内部に挿通した磁性コア2は導電層1aの端部から一定量のはみ出し量a1,b1を有している。これらのはみ出し量a1,b1のうち、導電層1aの厚みの厚い端部側のはみ出し量b1が薄い端部側のはみ出し量a1よりも少なくなっている。これにより、導電層1a母線方向の温度分布の温度差、及び、導電層1aの厚みの薄い端部側と厚い端部側との温度差といった発熱ムラを補正することができるため、フィルム1の導電層1aの厚み差に起因する発熱ムラを抑制可能である。
[実施例2]
定着装置Fの他の実施例を説明する。本実施例では、本実施例の定着装置Fについて、実施例1の定着装置Fと異なる構成のみを説明する。
定着装置Fの他の実施例を説明する。本実施例では、本実施例の定着装置Fについて、実施例1の定着装置Fと異なる構成のみを説明する。
本実施例に示す定着装置Fは、フィルム1の導電層1aに対して磁性コア2、及び励磁コイル3の移動量を同じにしている点で、実施例1の定着装置Fと異なっている。本実施例の定着装置Fによれば、導電層1aに対して磁性コア2、及び励磁コイル3の移動量を同じにすることで、磁性コア2と、励磁コイル3と、コイルホルダ4と、コアホルダ14と、を一体にユニット化できるので位置調整がしやすくなるという利点がある。
図20は、本実施例の定着装置FにおけるユニットU2を説明するための断面図である。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、磁性コア2は筒状のコアホルダ14に収納されX軸方向に移動しないようにコアホルダ14に固定されている。このコアホルダ14の外周面には励磁コイル3が螺旋状に巻かれている。そしてこのコアホルダ14は筒状のコイルホルダ4に収納されている。つまり、磁性コア2、励磁コイル3、及びコアホルダ14のそれぞれをコイルホルダ4に保持させることで、磁性コア2、及び励磁コイル3は一体のユニットU2として構成されている。
ユニットU2は、ユニットU2のコイルホルダ4がステイ5(図2参照)の内側でニップ形成部材6の座面6bにX軸方向に移動可能に保持されている。つまり、ユニットU2はX軸方向に移動可能である。ここで、X軸方向について、磁性コア2、コアホルダ14、及びコイルホルダ4の長さは同じである。
図21は、本実施例の定着装置Fのフィルム1と、ユニットU2のコイルホルダ4と、フランジ12a,12bと、規制部材13a,13bと、ホルダスペーサー21と、位置決め部材20と、の位置関係を説明するための図である。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、位置決め部材20は左側の規制部材13bとの位置を規定するように当該規制部材13bに設けられた部材である。この位置決め部材20には位置調整手段としてのホルダスペーサー21が交換可能に装着されている。
X軸方向に移動可能なユニットU2の左側の端部を不図示のバネで加圧しユニットU2の右側の端部をホルダスペーサー21に当接させることによって、磁性コア2、及び励磁コイル3の位置がホルダスペーサー21で規定される。よって、厚さの異なるホルダスペーサー21を複数準備しておき、これらのホルダスペーサー21の交換を行うことで、フィルム1の導電層1aに対する磁性コア2、及び励磁コイル3の相対位置を調整することができる。
不図示のバネ、及びホルダスペーサー21の材質は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いている。
本実施例の定着装置Fは、実施例1と同様に、フィルム1の母線方向について、導電層1aは左右で厚みムラを有している。導電層1aの厚みの薄い側の磁性コア2、及び励磁コイル3の導電層1aからのはみ出し量をa3とし、導電層1aの厚みの厚い側の磁性コア2、及び励磁コイル3の導電層1aからのはみ出し量をb3とした時、a3−b3>0となる構成である。
ここで、はみ出し量a3は、フランジ12aの規制面12a1と磁性コア2の端面2aの位置で規定されている。はみ出し量b3は、フランジ12bの規制面12b1と磁性コア2の端面2bの位置で規定されている。
はみ出し量a3,b3を規定する面はフランジ12aの規制面12a1,12b1、及び磁性コア2の端面2a,2bに限られない。図20に示すように、ユニットU2におけるコイルホルダ4の左側の端面4aと磁性コア2の左側の端面2aは同一位置にあり、コイルホルダ4の右側の端面4bと磁性コア2の右側の端面2bは同一位置にある。
その為、フィルム1の導電層1aの左側の端面(不図示)からコイルホルダ4の左側の端面4aまでの距離をa3とし、フィルム1の導電層1aの右側の端面(不図示)からコイルホルダ4の右側の端面4bまでの距離をb3としてもよい。或いは、フィルム1の導電層1aの左側の端面(不図示)から磁性コア2の左側の端面2aまでの距離をa3とし、フィルム1の導電層1aの右側の端面(不図示)からコイルホルダ4の右側の端面4bまでの距離をb3としてもよい。
図22は、比較例2の定着装置のフィルム1と、コイルホルダ4と、フランジ12a,12bと、規制部材13a,13bと、ホルダスペーサー21と、位置決め部材20と、の位置関係を説明するための図である。
比較例2の定着装置は、導電層1aの厚みの薄い側の磁性コア2の導電層1aからのはみ出し量をa4とし、導電層1aの厚みの厚い側の磁性コア2の導電層からのはみ出し量をb4とした時、a4−b4=0となる構成である。
図23に、本実施例の定着装置F、及び比較例2の定着装置の発熱分布を示す。本実施例の定着装置F、及び比較例2の定着装置について、導電層1aの厚みムラは10μmである。本実施例の定着装置Fは導電層1aに対する磁性コア2、及び励磁コイル3のはみ出し量をa3−b3=5mm(図24参照)としている。比較例2の定着装置Fは導電層1aに対する磁性コア2、及び励磁コイル3のはみ出し量をa4=b4としている。
図23は、本実施例のはみ出し量であるa3−b3>0、及び比較例2のはみ出し量であるa4=b4において、発熱ムラが抑制された励磁コア2の最適移動位置での導電層1a母線方向の発熱分布を示している。実線が本実施例であり、破線が比較例2である。
本実施例の定着装置Fは、導電層1aに対する磁性コア2、及び励磁コイル3のはみ出し量をa3−b3>0とすることで、フィルム1の導電層1aの厚みムラに起因する端部においてもフィルム温度は所定の定着温度(目標温度)の90%を維持している。このため、トナー画像Tに定着不良が発生することがない。また、導電層1a母線方向の左右の端部に温度差もない。
これに対して、比較例2の定着装置は、特にフィルム1の導電層1aの左側端部においてフィルム1温度が所定の定着温度(目標温度)の90%を下回っている。このため、トナー画像Tに定着不良が発生する。また、導電層1a母線方向の左右の端部に温度差が発生している。
本実施例の定着装置Fでは、導電層1aの厚みの薄い端部側の磁束密度を大きくして誘導起電力を多くすることで当該端部側を発熱させる。また、導電層1aの厚みの厚い端部側の磁束密度を小さくして誘導起電力を少なくすることで当該端部側の発熱を抑える効果がある。このように導電層1aと磁束密度の位置関係とを変えることを利用して、導電層1a母線方向の温度分布の温度差、及び、導電層1aの厚みの薄い端部側と厚い端部側との温度差といった発熱ムラを補正している。
比較例2の定着装置では、実施例1と同様、導電層1a母線方向の左右の端部について、導電層1aの厚みが薄く抵抗の高い端部側は厚みが厚く抵抗の低い端部側よりも発熱しないといった発熱ムラが発生する。
本実施例の定着装置Fも、上記の発熱ムラ補正を定着装置の組立て時に行う。図21を用いて説明した通り、ユニットU2はX軸方向に移動可能である。そのため、フィルム1の導電層1a位置に対して所望の位置にユニットU2を移動させることが可能である。つまり、導電層1a位置に対して所望の位置に磁性コア2、及び励磁コイル3を移動させることが可能である。
定着装置Fの組立て時に行う磁性コア2、及び励磁コイル3の位置補正方法について説明する。図24は、導電層1aの厚みと磁性コア2、及び励磁コイル3の最適移動量a3−b3の関係を表わした補正式を説明するための図である。ここで、導電層1aの厚みムラは、導電層1a母線方向の左右の端部の厚みの差分と定義している。
導電層1aの左右の端部の厚み測定は実施例1と同じであるので、その厚み測定の説明は割愛する。
図24に示す磁性コア2、及び励磁コイル3の移動量はa3−b3=0mmのときを基準としている。この移動量は導電層1aに対し磁性コア2、及び励磁コイル3を厚みの薄い端部側に移動させる量である。導電層1aに厚みムラが無い場合は磁性コア2、及び励磁コイル3を移動させる必要がない。導電層1aの厚みムラが大きい程、磁性コア2、及び励磁コイル3の移動量を大きくすることで、導電層1aの発熱ムラを補正することができる。
図24に示す補正式を予め求めておき、定着装置Fの製造時に導電層1aの厚みムラを測定した後、その測定結果に応じて導電層1aの母線方向の温度分布が所定の温度分布になるように補正式から磁性コア2、及び励磁コイル3の位置(移動量)を決定する。決定した磁性コア2、及び励磁コイル3の位置に応じて、ホルダスペーサー21の厚みを選択することで、磁性コア2、及び励磁コイル3位置の設定を行う。
以上説明したように、本実施例の定着装置Fは、フィルム1の内部に挿通した磁性コア2、及び励磁コイル3は導電層1aの端部から一定量のはみ出し量a3,b3を有している。これらのはみ出し量a3,b3のうち、導電層1aの厚みの厚い端部側のはみ出し量b3が薄い端部側のはみ出し量a3よりも少なくなっている。これにより、導電層1a母線方向の温度分布の温度差、及び、導電層1aの厚みの薄い端部側と厚い端部側との温度差といった発熱ムラを補正することができるため、フィルム1の導電層1aの厚み差に起因する発熱ムラを抑制可能である。
1 定着フィルム、1a 導電層、3 励磁コイル、3cx 螺旋軸、3c 螺旋形状部、2 磁性コア、2a,2b 端面、12a,12b フランジ、12a1,12b1 規制面、a1,b1 はみ出し量、a3,b3 はみ出し量、Rp 記録材、T 未定着トナー画像、U1,U2 ユニット
Claims (4)
- 導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コアは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする定着装置。 - 導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記導電層は、前記母線方向に一方の側が厚く他方の側が薄い厚み差を有し、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、画像が形成された記録材を加熱し画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体に挿通した前記コア、及び前記コイルは、前記導電層から一定量のはみ出し量を有しており、前記導電層の厚みの厚い側のはみ出し量が薄い側のはみ出し量よりも少ないことを特徴とする定着装置。 - 前記回転体の母線方向への寄り移動を規制するための規制面を備えるフランジを有し、前記はみ出し量は前記フランジの規制面と前記コアの端面の位置で規定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
- 前記コア、及び前記コイルは一体のユニットとなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の定着装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015200964A JP2017072779A (ja) | 2015-10-09 | 2015-10-09 | 定着装置 |
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JP2015200964A JP2017072779A (ja) | 2015-10-09 | 2015-10-09 | 定着装置 |
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JP2017072779A true JP2017072779A (ja) | 2017-04-13 |
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ID=58537678
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JP2015200964A Pending JP2017072779A (ja) | 2015-10-09 | 2015-10-09 | 定着装置 |
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-
2015
- 2015-10-09 JP JP2015200964A patent/JP2017072779A/ja active Pending
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