JP2017049525A - 定着装置、及びその定着装置を有する画像形成装置 - Google Patents

定着装置、及びその定着装置を有する画像形成装置 Download PDF

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弘樹 江口
Hiroki Eguchi
弘樹 江口
依田 寧雄
Yasuo Yoda
寧雄 依田
西沢 祐樹
Yuki Nishizawa
祐樹 西沢
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Abstract

【課題】導電層を有する筒状の回転体の記録材が通過しない非通過領域の発熱分布を制御可能な定着装置を提供すること。【解決手段】導電層1aを有する筒状の回転体1の母線方向に関し記録材Rp上の画像Tの最大通過領域の一端から他端までの区間において、コア2の磁気抵抗は、前記回転体1の導電層1aの磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、前記画像が形成された記録材Rpをニップ部Nで搬送しながら加熱し前記画像を記録材に定着する定着装置において、前記回転体の内周面側に、前記コアを取り囲むように閉ループを形成した形状の導電性の電流周回部材30a,30bが配置されていることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載する電磁誘導加熱方式の定着装置、及びその定着装置を有する画像形成装置に関する。
電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置として、加圧ローラと共にニップ部を形成する筒状の加熱回転体の導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が知られている。未定着トナー画像を担持する記録材はニップ部で搬送されつつ加熱され、これによってトナー画像は記録材上に定着される。このタイプの定着装置はウォーミングアップ時間が短く、消費電力も低いという利点を持つ。
特許文献1には、交番磁束が通る磁気回路内に導電体にて形成した筒体を備え、筒体に誘起された起電流と筒体の電気抵抗とにより筒体が電磁誘導発熱する定着装置が開示されている。このタイプの定着装置は、筒体そのものがヒータとして作用するため、簡単な構成で熱効率が高い等のメリットがある。
ところで、複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置は、加熱回転体の母線方向について、プリント可能な最大サイズの記録材幅に対応した加熱領域をニップ部に有する。このため、その加熱領域より小さいサイズの記録材を連続プリントすると、加熱回転体の記録材が通過しない領域(非通過領域)が過度に昇温(非通過部昇温)することが知られている。加熱回転体の非通過領域が過昇温すると、加熱回転体、加熱回転体を保持するホルダ、加圧ローラ等の部材が熱により損傷する可能性がある。
特許文献2には、加熱回転体と励磁コイルとの間に配置した磁気遮蔽板を加熱回転体の母線方向へ移動させることにより、加熱回転体の厚み方向へ貫く磁束を磁気遮蔽板で遮蔽して加熱回転体の非通過領域の昇温を抑制する方法が提案されている。
特開昭51−120451号公報 特開平10−74009号公報
しかしながら、特許文献1の方式の定着装置においては、特許文献2に記載の磁気遮蔽板を励磁コイルと筒体との間に配置しても、筒体の母線方向に沿って流れる磁気回路内の磁束を遮蔽することができない。そのため、筒体の非通過領域の発熱分布を制御できないという課題がある。
本発明の目的は、導電層を有する筒状の回転体の記録材が通過しない非通過領域の発熱分布を制御可能な定着装置、及びその定着装置を有する画像形成装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、前記画像が形成された記録材を前記ニップ部で搬送しながら加熱し前記画像を記録材に定着する定着装置において、
前記回転体の内周面側、又は、外周面側に、前記コアを取り囲むように閉ループを形成した形状の導電性の電流周回部材が配置されていることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、
記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材上のトナー画像を記録材に定着する画像定着部と、を有する画像形成装置において、
前記画像定着部が上記の定着装置であることを特徴とする。
本発明によれば、導電層を有する筒状の回転体の記録材が通過しない非通過領域の発熱分布を制御可能な定着装置、及びその定着装置を有する画像形成装置の提供を実現できる。
画像形成装置の概略構成を示す断面図 定着装置の概略構成を示す断面図 図2に示す定着装置を記録材の搬送方向の上流側から見たときの正面図 磁性コアと励磁コイルによる定着スリーブの電磁誘導加熱を説明するための図 電流周回部材駆動部を説明するための図 定着装置の他の概略構成を示す断面図 図6に示す定着装置を記録材の搬送方向の上流側から見たときの正面図 開磁路、閉磁路における磁界の模式図 有限長ソレノイドを配置した構造体の模式図 単位長さ当たりの磁性コア・励磁コイル・導電層を含む空間の磁気等価回路図 磁性コアとギャップの模式図 電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を示す図 導電層の外側を通過する磁束の比率と変換効率の関係を示す図 母線方向で不均一な断面構成を有する定着スリーブの概略構成を示す図 図14に示す定着スリーブの領域1と3、及び領域2の断面構造を示す断面図 電流周回部材の通常配置における等価回路を示す図 電流周回部材の昇温抑制配置における等価回路を示す図 定着スリーブ内周面側における電流周回部材の有無と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 定着スリーブ外周面側における電流周回部材の有無と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 定着スリーブ内周面側における電流周回部材の形状と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 定着スリーブ外周面側における電流周回部材の形状と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 閉ループの絶縁又は通電を切り替える電流周回部材の構成と動作を説明するための図 電流周回部材のスリーブ母線方向の位置と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 電流周回部材の単位長さ当たりの周回抵抗と定着スリーブの昇温抑制率の関係を示す図 電流周回部材の周回抵抗と定着スリーブの昇温抑制率の関係を示す図 電流周回部材の侵入量と定着スリーブの表面温度の関係を示す図 プリント枚数と定着スリーブの非通過領域温度の関係を示す図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の好適な実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は以下の実施例により限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において他の構成に置き換えることは可能である。
[実施例1]
(1)画像形成装置100
図1を参照して、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置を説明する。図1は電子写真記録技術を用いた画像形成装置(本実施例ではモノクロプリンタ)100の一例の概略構成を示す断面図である。
画像形成装置100において、記録材Rpにトナー画像を形成する画像形成部IFは、像担持体としての感光ドラム101と、帯電部材102と、レーザスキャナ103と、を有する。更に画像形成部IFは、現像器104と、感光ドラム101の外周面(表面)をクリーニングするクリーナ110と、転写部材108と、を有する。以上の画像形成部IFの動作は周知であるので詳細な説明は割愛する。
画像形成装置本体100A内のカセット105に収納された記録材Rpは、ローラ106の回転によって1枚ずつ繰り出された後に、ローラ107の回転によって感光ドラム101と転写部材108とで形成された転写部に搬送される。転写部でトナー画像が転写された記録材Rpは画像定着部としての定着装置Fに送られ、トナー画像は定着装置Fで記録材に加熱定着される。定着装置Fを出た記録材Rpはローラ111の回転によってトレイ112に排出される。
(2)定着装置F
本実施例に示す定着装置Fは電磁誘導加熱方式の装置である。図2は定着スリーブ1の内周面側に電流周回部材30a,30bを配置した定着装置Fの概略構成を示す断面図である。図3は図2に示す定着装置Fを記録材Rpの搬送方向aの上流側から見たときの正面図である。図4は磁性コア2と励磁コイル3による定着スリーブ1の電磁誘導加熱を説明するための図である。
加圧部材としての加圧ローラ8は、芯金8aと、芯金8aの外周面上にローラ状に設けられた耐熱性の弾性層8bと、弾性層8bの外周面上に設けられた離型層8cと、を有する。弾性層8bの材質は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等で耐熱性がよいものが好ましい。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向(図3参照)について、加圧ローラ8の芯金8aの両端部は定着装置Fの左右のフレーム(不図示)に軸受けを介して回転自由に保持されている。また、ステイ5の両端部と、左右のフレーム側のバネ受け部材18a,18bとの間に、それぞれ、加圧バネ17a,17bを縮設することでステイ5に押し下げ力を作用させている。本実施例の定着装置Fでは、図2に示すように、耐熱性樹脂PPS等で構成されたニップ形成部材6の加圧ローラ8とは反対側の座面6aに保持させたステイ5に総圧約100N〜250N(約10kgf〜約25kgf)の押圧力を与えている。
ステイ5を保持したニップ形成部材6の外周には、導電層を有する筒状の回転体としての定着スリーブ(以下、スリーブと称する)1がルーズに外嵌させてある。ステイ5に押圧力を与えると、ニップ形成部材6の加圧ローラ8側の平坦面6bがスリーブ1の外周面を加圧ローラ8の外周面に圧接する。これにより、スリーブ1を介してニップ形成部材6の平坦面6bと加圧ローラ8の外周面とで所定幅のニップ部N(図2参照)が形成される。
加圧ローラ8はモータ(不図示)により矢印方向に回転駆動し、この加圧ローラ8の回転に追従してスリーブ1はスリーブ1の内周面がニップ形成部材6の平坦面6bに摺動しながら矢印方向に回転する。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、ステイ5の両端部にはフランジ部材12a,12bが外嵌されている。フランジ部材12a,12bは、それぞれ、規制部材13a,13bによりフレームに固定されている。各フランジ部材12a,12bは、スリーブ1の回転時にスリーブ1の端部を受けて、スリーブの母線方向に沿う寄り移動を規制する役目をする。フランジ部材12a,12bの材質としては、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂等の耐熱性の良いものが好ましい。
電流周回部材30a,30bは、スリーブ1の左右両端部近傍におけるスリーブ1とはオーバーラップしない位置(図3参照)に、不図示の支持部材によって配置されている。この配置を電流周回部材30a,30bの通常配置とする。また、電流周回部材30a,30bは、図5に示す電流周回部材駆動部48によって、図3の矢印で示す方向に移動される。この移動により、電流周回部材30aおよび30bは通常配置からスリーブ1と磁性コア2との間の空間領域に配置される(図3参照)。この配置を電流周回部材30a,30bの昇温抑制配置とする。
以下の説明において、特に説明が無い限りは、電流周回部材30a,30bは通常配置に配置されているものとする。
電流周回部材30a,30bの位置をスリーブ1の母線方向で変化させる手段としての電流周回部材駆動部48の構成について説明する。図5は電流周回部材駆動部48の概略構成と動作を説明するための図である。図5では、電流周回部材30a,30bを通常配置から昇温抑制配置の方向へ移動させる場合を考える。
不図示のモータによってモータギア31を反時計回方向に回転させると、モータギア31と接合している第1のストレートギア32は左方向に移動する。第1のストレートギア32と電流周回部材32bは支持部材33bで固定されているため、電流周回部材32bは第1のストレートギア32bと同じ方向に移動することができる。
一方、第1のストレートギア32より短い第2のストレートギア35はアイドルギア34を介して第1のストレートギア32と接合されているため、第2のストレートギア35は第1のストレートギア32とは逆の右方向に移動する。第2のストレートギア35と電流周回部材32aは支持部材33aで固定されているため、電流周回部材32aは第1のストレートギア35と同じ右方向に移動することができる。
以上の構成により、電流周回部材30a,30bを通常配置から昇温抑制配置の方向へ移動させることができる。
昇温抑制配置から通常配置の方向へ電流周回部材30a,30bを移動させる場合は、モータギア31の回転方向を時計回り方向にすればよい。
スリーブ1は、直径10〜50mmの基層となる導電性部材でできた筒状の導電層1aと、その導電層1aの外周面に積層した弾性層1bと、その弾性層1bの外周面に積層した離型層1cと、からなる複合構造の可撓性を有する筒形回転体である。導電層1aとして、膜厚10〜50μmの金属フィルムを用いている。弾性層1bとして、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.3mm〜0.1mmの厚さに成形したものを用いている。そして、弾性層1bの外周面上に離型層(表層)1cとして、50μm〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、導電層1aの長さは240mmである。この導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させて発熱する。この熱が弾性層1b、離型層1cに伝達されて、スリーブ1全体が加熱され、ニップ部Nに導入される記録材Rpを加熱して画像としての未定着トナー画像Tの定着がなされる。
導電層1aに対し、交番磁束を作用させ、誘導電流を発生させる原理と構成について詳述する。図4は磁性コア2と励磁コイル3によるスリーブ1の電磁誘導加熱を説明するための図である。
磁性芯材としての磁性コア2は、不図示の固定手段でスリーブ1の中空部を貫通して配置させ、磁極NP,SPを持つ直線状の開磁路を形成している。つまり、磁性コア2は、後述する励磁コイル3の螺旋形状部3cの中にスリーブ1の母線方向に沿って配置されている。磁性コア3の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)や、パーマロイ等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が好ましい。
本実施例では、磁性コア2として比透磁率1800の焼成フェライトを用いる。形状は直径5〜30mmの円柱形状をしている。記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向について、磁性コア2の長さは240mmである。
磁界発生手段としての励磁コイル3は、通常の単一導線をスリーブ1の中空部において、磁性コア2に螺旋状に巻き回してスリーブ1の母線方向と平行な螺旋形状部3cを形成している。その際、記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に関し、磁性コア2の左右両側の開磁路端部(以下、端部と称する)において巻間隔が密になるように巻き、これらの端部間の中央部において巻間隔が疎となるように巻く。本実施例においては、長さ240mmの磁性コア2に対し、励磁コイル3は18回巻きつけてある。その巻間隔は端部において10mm、中央部において20mm、その端部と中央部の中間において15mmとなっている。
このように磁性コア2に対しスリーブ1の回転軸線Xaと交差する方向に単一導線を巻き回して励磁コイル3を形成している。この励磁コイル3に給電接点部3a,3bを介して高周波コンバータ16から高周波交流電流を供給し、磁性コア2の記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に交番磁束(交番磁界)を発生させる。この交番磁束により導電層1aの周回方向に誘導電流が流れ、導電層1a自身の電気抵抗によってジュール熱を発生させることで、導電層1aを発熱させる。このとき導電層1aは導電層1aの外周全域で発熱する。
つまり、励磁コイル3は、スリーブ1の内部に配置され、螺旋軸3cxがスリーブ1の母線方向と略平行である螺旋形状部3cを有し、スリーブ1の導電層1cを電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための部材である。そして、磁性コア2は、励磁コイル3の螺旋形状部3cの中に配置され、上記交番磁界の磁力線を誘導するための部材である。ここで、螺旋軸3cxは螺旋形状部3cの中心線である。
電流周回部材30a,30bを用いることで、スリーブ1の導電層1aの非通過領域(図3参照)における昇温が抑制される理由について述べる。電流周回部材30a,30bは、直径10〜130mm、厚み10μm〜10mmの閉ループを有する金属である。ここで閉ループとは、中空部分を有する円筒形状や多角形形状のことである。記録材Rpの搬送方向aに直交する方向について、電流周回部材30a,30bの長さは30mmである。電流周回部材30a,30bは不図示のポリイミドテープ等の絶縁部材により、スリーブ1、励磁コイル3等の他の部材と電気的に絶縁されている。
電流周回部材30a,30bを通常配置から昇温抑制配置へ移動させると、交番磁界より導電層1aと電流周回部材30a,30bの両者に誘導電流が発生し、両者とも発熱する。発熱による消費電力の総和が通常配置と昇温抑制配置で同じ場合、電流周回部材30a,30bが発熱する消費電力の割合分、導電層1aの非通過領域における昇温を抑制することができる。
電流周回部材30a,30bはスリーブ1の内周面側に配置されているが、図6、図7に示すように電流周回部材36a,36bをスリーブ1の外周面側に配置してもよい。図6は、スリーブ1の外周面側に電流周回部材36a,36bを配置した定着装置Fの概略構成を示す断面図である。図7は、図6に示す定着装置Fを記録材Rpの搬送方向aの上流側から見たときの正面図である。
スリーブ1の外周面側に電流周回部材36a,36bを配置する場合においても、スリーブ1の内周面側に電流周回部材30a,30bを配置した場合と同様、導電層1aの昇温抑制効果を得ることができる。この電流周回部材36a,36bは、図5に示す電流周回部材駆動部48によって通常配置から昇温抑制配置の方向へ移動される。つまり、スリーブ1の内周面側、又は外周面側に、磁性コア2を取り囲むように閉ループを形成した形状の導電性の電流周回部材が配置される。
(3)プリンタ制御
図2、図3に示すように、非接触型サーミスタによって構成される検温素子としての温度検知素子9,10,11は、記録材Rpの搬送方向aに関し、ニップ部Nの上流側でスリーブ1に対向させて配設してある。
記録材Rpの搬送方向aに直交するX軸方向に関し、スリーブ1の中央に配設された温度検知素子9は、大サイズ記録材と小サイズ記録材が必ず通過するスリーブ中央部(通過領域)の温度を検知する。この温度検知素子9の検出温度に基づきスリーブ1は表面の温度が所定の定着温度(目標温度)に維持・調整される。スリーブ1の両端部に配設された温度検知素子10,11では、大サイズ記録材が通過し小サイズ記録材が通過しないスリーブ端部(非通過領域)の昇温具合を検知することができる。
図4に、プリンタ制御部40のブロック図を示す。プリンタ制御部40において、プリンタコントローラ41は後述するホストコンピュータ42との間で通信と画像データの受信、及び受け取った画像データをプリンタが印字可能な情報に展開する。更にプリンタコントローラ41はエンジン制御部43との間で信号のやり取り及びシリアル通信を行う。エンジン制御部43はプリンタコントローラ41との間で信号のやり取りを行い、更にシリアル通信を介して定着温度制御部44、周波数制御部45、電力制御部46の制御を行う。
定着温度制御部44は温度検知素子9,10,11によって検出された温度を基に定着装置Fの温度制御を行うと共に、定着装置Fの異常温度の検出等を行う。駆動周波数設定手段としての周波数制御部45は高周波コンバータ16の駆動周波数の制御を行い、電力制御手段としての電力制御部46は励磁コイル3に印加する電圧を調整して高周波コンバータ16の電力の制御を行う。電流周回部材30a,30bの配置設定手段としての電流周回部材制御部47は、電流周回部材駆動部48を介して電流周回部材30a,30b、及び36a,36bの配置の制御を行う。
このようなプリンタ制御部40を有するプリンタシステムにおいて、ホストコンピュータ42はプリンタコントローラ41に画像データを転送したり、ユーザからの要求に応じてプリンタコントローラ41に記録材サイズ等、様々なプリント条件を設定する。
(4)電流周回部材30a,30bの通常配置における発熱原理
本実施例の発熱原理について、電流周回部材30a,30bが通常配置に配置されており、スリーブ1の発熱分布に影響しない場合を例に説明する。
4−1)磁力線の形状と誘導起電力
図8(a)を用いて本実施例の定着装置Fの発熱メカニズムについて説明する。励磁コイル3に交流電流を流して生じた磁力線は、筒状の導電層1aの内側の磁性コア2の内部を導電層1aの母線方向(SからNに向かう方向)に通過し、磁性コア2の一端Nから導電層の外側に出て磁性コア2の他端Sに戻る(閉磁路)。つまり、磁性コア2は、励磁コイル3の螺旋形状部3cの中に配置され、導電層1aを電磁誘導発熱させる交番磁束の磁力線を導電層1aの母線方向に誘導するための部材である。
その結果、導電層1aの内側を導電層1aの母線方向に貫く磁束の増減を妨げる方向の磁力線を発生させる誘導起電力が導電層1aに生じて導電層1aの周方向に電流が誘導される。この誘導電流によるジュール熱で導電層1aが発熱する。
この導電層1aに生じる誘導起電力Vの大きさは、下記の式(1)から導電層1aの内部を通過する単位時間当たりの磁束の変化量(Δφ/Δt)及びコイルの巻き数Nに比例する。
4−2)導電層1aの外側を通る磁束の割合と電力の変換効率との関係
ところで、図8(a)に示す磁性コア2はループを形成しておらず端部を有する形状である。図8(b)のような磁性コア2が導電層1aの外でループを形成している定着装置における磁力線は、磁性コア2に誘導されて導電層1aの内側から外側に出て内側に戻る(開磁路)。
しかしながら、本実施例のように磁性コア2が端部を有する構成の場合、磁性コア2の端部から出た磁力線を誘導するものはない。そのため、磁性コア2の一端を出た磁力線が磁性コア2の他端に戻る経路(NからS)は、導電層1aの外側を通る外側ルートと、導電層1aの内側を通る内側ルートと、のいずれも通る可能性がある。以後、導電層1aの外側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを外側ルート、導電層1aの内側を通って磁性コア2のNからSに向かうルートを内側ルートと呼ぶ。
この磁性コア2の一端から出た磁力線のうち外側ルートを通る磁力線の割合は、励磁コイル3に投入した電力のうち導電層1aの発熱で消費される電力(電力の変換効率)と相関があり、重要なパラメータである。外側ルートを通る磁力線の割合が増加する程、励磁コイル3に投入した電力のうち導電層1aの発熱で消費される電力の割合(電力の変換効率)は高くなる。この理由は、トランスにおいて漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと原理は同じである。つまり、本実施例においては、磁性コア2の内部を通過する磁束と、外側ルートに通過する磁束の数が近い程、電力の変換効率は高くなり、励磁コイル3に流した高周波交流電流を導電層1aの周回電流として効率よく電磁誘導できることになる。
これは、図8(a)における磁性コア2の内部をSからNに向かう磁力線と、内側ルートを通る磁力線は向きが反対であるから、磁性コア2を含めた導電層1aの内側全体で見ると、これらの磁力線は打ち消しあうことになる。その結果、導電層1aの内側全体をSからNに向かって通過する磁力線の数(磁束)が減り単位時間当たりの磁束の変化量が小さくなる。単位時間当たりの磁束の変化量が減少すると、導電層1aに生じる誘導起電力が小さくなり、導電層1aの発熱量が小さくなる。
以上述べたことから、本実施例の定着装置Fは必要な電力の変換効率を得るために外側ルートを通る磁力線の割合を管理することが重要になる。
4−3)導電層1aの外側を通る磁束の割合を示す指標
そこで、定着装置Fにおける外側ルートを通る磁力線の割合を磁力線の通り易さをパーミアンスという指標を用いて表す。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁力線が通る磁路の回路を電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができる。磁気回路は、電気回路に関するオームの法則が適用可能である。電気回路の電流に対応する磁束をΦ、起電力に対応する起磁力をV、電気抵抗に対応する磁気抵抗をRとすると、次の式(2)を満たす。
Φ=V/R・・・(2)
しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。パーミアンスPを用いると、上式(2)は次の式(3)ように表せる。
Φ=V×P・・・(3)
更に、このパーミアンスPは、磁路の長さをB、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとすると、下記の式(4)のように表せる。
P=μ×S/B・・・(4)
で表される。
パーミアンスPは、断面積S及び透磁率μに比例し、磁路の長さBに反比例する。
図9(a)は、導電層1aの内側に、半径a1[m]、長さB[m]、比透磁率μ1の磁性コア2に、励磁コイル3を螺旋軸が導電層1aの母線方向と略平行になるようにN[回]巻いたものを表した図である。ここで、導電層1aは、長さB[m]、内径a2[m]、外径a3[m]、比透磁率μ2の導体である。導電層1aの内側及び外側の真空の透磁率をμ[H/m]とする。励磁コイル3に電流I[A]を流したときに、磁性コア2の単位長さ当たりに発生する磁束8をφc(x)とする。
図9(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な方向の断面図である。ここで、磁性コア2に関し長手方向とはスリーブ1の母線方向と平行な方向をいう。図中の矢印は、励磁コイル3に電流Iを流したときに、磁性コア2の内部、導電層1aの内側、導電層1aの外側を通る磁性コア2の長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア2の内部を通る磁束をφc(=φc(x))、導電層1aの内側(導電層1aと磁性コア2の間の領域)を通る磁束をφa_in、導電層1aそのものを通る磁束をφs、導電層1aの外側を通る磁束をφa_outとする。
図10(a)に、図8(a)に示した単位長さ当たりの磁性コア2、励磁コイル3、導電層1aを含む空間の磁気等価回路を示す。磁性コア2を通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コア2のパーミアンスをPc、導電層1aの内側のパーミアンスをPa_in、スリーブ1の導電層1aそのものの内部のパーミアンスをPs、導電層1aの外側のパーミアンスをPa_outとする。
ここで、PcがPa_in及びPsに比べて十分に大きい時、磁性コア2の内部を通過して磁性コア2の一端から出た磁束は、φa_in、φs、φa_outの何れかを通過して磁性コア2の他端に戻ると考えられる。よって、以下の関係式(5)が成り立つ。
φc=φa_in+φs+φa_out・・・(5)
また、φc、φa_in、φs、φa_outはそれぞれ以下の式(6)〜(9)で表される。
φc=Pc×Vm ・・・(6)
φs=Ps×Vm ・・・(7)
φa_in=Pa_in×Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、式(5)に(6)〜(9)を代入すると、Pa_outは次の式(10)示すように表される。
Pc×Vm=Pa_in×Vm+Ps×Vm+Pa_out×Vm
=(Pa_in+Ps+Pa_out)×Vm
∴Pa_out=Pc−Pa_in−Ps ・・・(10)
磁性コア2の断面積をSc、導電層1aの内側の断面積をSa_in、導電層1a自身の断面積をSsとすると、パーミアンスPは以下のように表すことができる。単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1) ・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)−(a1)) ・・・(12)
Ps=μ2・Ss=μ2・π・((a3)−(a2)) ・・・(13)
これらの(11)〜(13)を式(10)に代入すると、Pa_outは
式(14)で表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Ps
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Ss
=π・μ1・(a1)
−π・μ0・((a2)−(a1)
−π・μ2・((a3)−(a2)) ・・・(14)
上記の式(14)を使用することによって導電層1aの外側を通る磁力線の割合であるPa_out/Pcを計算することができる。
尚、パーミアンスPの代わりに磁気抵抗Rを用いても良い。磁気抵抗Rを用いて議論する場合、磁気抵抗Rは単純にパーミアンスPの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができて、単位は「1/(H・m)」である。
以下、実施例の装置のパラメータを使用して具体的な計算した結果を表1に示す。
磁性コア2は、フェライト(比透磁率1800)で形成され、直径14[mm]であって、断面積は1.5×10−4[m]である。ニップ形成部材6は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)(比透磁率1.0)で形成され、断面積は1.0×10−4[m]である。導電層1aは、アルミニウム(比透磁率1.0)で形成され、直径24[mm]、厚み20[μm]で断面積1.5×10−6[m]である。
尚、導電層1aと磁性コア2の間の領域の断面積は、直径24[mm]の導電層1aの内側の中空部の断面積から磁性コア2の断面積とニップ形成部材6の断面積を差し引いて計算している。弾性層1b及び離型層1cは、導電層1aより外側に設けられており、発熱に寄与しない。従って、パーミアンスを計算する磁気回路モデルにおいては導電層1aの外側の空気層であるとみなすことができるので計算に入れる必要はない。
表1からPc、Pa_in、Psは、次のような値になる。
Pc=3.5×10−7[H・m]
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
Ps=1.9×10−12[H・m]
これらの値を用いて、次の式(15)からPa_out/Pc計算することができる。
Pa_out/Pc=(Pc−Pa_in−Ps)/Pc=0.999(99.9%)
・・・(15)
尚、磁性コア2を長手方向で複数に分割し、分割した各磁性コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。この場合、この空隙が空気又は比透磁率が1.0とみなせるものや磁性コア2の比透磁率よりもずっと小さいもので満たされている場合、磁性コア2全体の磁気抵抗Rは大きくなり磁力線を誘導する機能が劣化することになる。
このような分割された磁性コア2のパーミアンスの計算方法は複雑になる。以下に、磁性コア2を複数分割し、空隙またはシート状非磁性体を挟んで等間隔に並べた場合の磁性コア全体のパーミアンスの計算方法について説明する。この場合、磁性コア2の長手方向全体の磁気抵抗を導出し、それを全体長さで割って単位長さ当たりの磁気抵抗を求め、その逆数を取って単位長さ当たりのパーミアンスを求める必要がある。
まず、磁性コア2の長手方向の構成図を図11に示す。磁性コアc1〜c10は、断面積Sc、透磁率μc、分割された磁性コア1個当たりの幅Lcとし、ギャップg1〜g9は、断面積Sg、透磁率μg、1ギャップ当たりの幅Lgとする。この磁性コア2の長手方向における全体の磁気抵抗Rm_allは、以下の式(16)で与えられる。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・・・+Rm_c10)+
(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9)・・・(16)
本構成の場合は、磁性コア2の形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次の式(17)〜(19)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)・・・(17)
Rm_c=Lc/(μc・Sc)・・・(18)
Rm_g=Lg/(μg・Sg)・・・(19)
式(17)に式(18)及び式(19)を代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは次の式(20)のように表せる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lc/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9・・・(20)
ここで、単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると次の式(21)となる。
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9)・・・(21)
以上から、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下の式(22)ように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all
=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]
・・・(22)
ギャップLgを大きくすることは、磁性コア2の磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。
本実施例の定着装置Fを構成する上で、発熱原理上、磁性コア2の磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、磁性コア2の破損防止のために磁性コア2を複数に分割してギャップを設ける場合がある。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁力線の割合をパーミアンスもしくは磁気抵抗を使って表すことができることを示した。
4−4)定着装置Fに必要な電力の変換効率
次に、本実施例の定着装置Fで必要な電力の変換効率について述べる。例えば、電力の変換効率が80%である場合、残り20%の電力は導電層1a以外の励磁コイル3や磁性コア2等で熱エネルギーに変換されて消費される。電力の変換効率が低い場合は、磁性コア2や励磁コイル3等の発熱すべきでないものが発熱し、それらを冷却するための対策を講じる必要性がある場合がある。
そこで、導電層1aの外側ルートを通る磁束の割合を振って電力の変換効率を評価する。図12は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置を表した図である。金属シート1Sは、幅230mm、長さ600mm、厚み20μmのアルミニウム製のシートである。この金属シート1Sを磁性コア2と励磁コイル3とを囲むように円筒状に丸めて、太線1ST部分において導通することによって導電層とする。磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm、長さ230mmの円柱形状をしている。磁性コア2を不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置する。磁性コア2には励磁コイル3が巻数25回で螺旋状に巻かれている。金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、導電層の直径1SDを18〜191mmの範囲で調整することができる。
図13は、導電層の外側ルートを通過する磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったグラフである。
図13のグラフ中のプロットP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超えており、矢印で示す領域R1では電力の変換効率が70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、領域R2において80%以上となっている。P4以降の領域R3においては電力の変換効率が94%以上と高い値で安定している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは導電層に効率的に周回電流が流れ始めたためである。
下記の表2は、図13のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
定着装置P1の構成は、磁性コア2の断面積が26.5mm(5.75mm×4.5mm)で、導電層1aの直径が143.2mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は64%である。この定着装置P1のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置P1に投入した電力のうち、導電層1aの発熱に寄与した分を示すパラメータである。それ以外は損失となり、その損失は励磁コイル3及び磁性コア2の発熱となる。
本構成の場合、定着装置P1の立ち上げ時、数秒間、導電層1aに900Wを投入しただけでも励磁コイル3の温度は200℃を超える場合がある。励磁コイル3の絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コア2のキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル3等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コア2の温度がキュリー点を超えると励磁コイル3のインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置P1に供給した電力の約45%が導電層1aの発熱に使用されないので、導電層1aに900Wの電力を供給するためには約1636Wの電力を供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流をオーバーする可能性がある。よって、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
定着装置P2の構成は、磁性コア2の断面積は定着装置P1と同じで、導電層1aの直径が127.3mmであり、外側ルートを通る磁束の割合は71.2%である。この定着装置P2のインピーダンスアナライザによって求めた電力の変換効率は70.8%である。定着装置P2のスペックによっては、励磁コイル3及び磁性コア2の昇温が課題になる場合がある。
本構成の定着装置P2を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置に搭載して使用すると、導電層1aの回転速度は330mm/secとなり、導電層1aの温度を180℃に維持する必要がある。導電層1aの温度を180℃に維持しようとすると、磁性コア2の温度は20秒間で240℃を超える場合がある。
磁性コア2として用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であるから、フェライトがキュリー温度を超えて磁性コア2の透磁率は急激に減少し、磁性コア2で磁力線を適切に誘導することができなくなる場合がある。その結果、導電層1aに周回電流を誘導して導電層1aを発熱させることが難しくなる場合がある。
従って、外側ルートを通過する磁束の割合が71.2%以上である本構成の定着装置P2を前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用すると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成の定着装置P2を前述した高スペックの画像形成装置に搭載しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
定着装置P3の構成は、磁性コア2の断面積は定着装置P1と同じであり、導電層1aの直径が63.7mmの場合である。この定着装置P3のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%である。磁性コア2及び励磁コイル3等に定常的に熱量が発生するものの、冷却手段が必要なレベルではない。
本構成の定着装置P3を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置に搭載して使用すると、導電層1aの回転速度は330mm/secとなり、導電層1aの表面温度を180℃に維持する場合がある。しかしながら、磁性コア(フェライト)2の温度は220℃以上に上昇することはない。従って、本構成の定着装置P3を前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用する場合は、磁性コア2の材料としてキュリー温度が220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。
以上述べたことから、外側ルートを通る磁束の割合が91.7%以上である本構成の定着装置P3は、前述した高スペックの画像形成装置に搭載して使用する場合は、フェライトコア等の耐熱設計を最適化することが望ましい。一方、本構成の定着装置P3を前述した高スペックの画像形成装置に搭載しない場合は、このような耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
定着装置P4の構成は、磁性コア2の断面積が定着装置P1と同じであり、導電層1aの直径が47.7mmの場合である。この定着装置P4のインピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%である。
本構成の定着装置P4を60枚/分の印字動作ができる高スペックな画像形成装置(導電層1aの回転速度は330mm/sec)に搭載し導電層の表面温度を180℃に維持する場合であっても、励磁コイル3や磁性コア2等は180℃以上に達することはない。従って、磁性コア2や励磁コイル3等を冷却する冷却手段及び特別な耐熱設計は不要である。
以上述べたことから、外側ルートを通過する磁束の割合が94.7%以上である本構成の定着装置P4は、電力の変換効率が94.7%以上となり電力の変換効率が十分高い。よって、更なる高スペックの画像形成装置に搭載し使用しても、冷却手段は不要である。
また、電力の変換効率が高い値で安定している本構成の定着装置P4においては、導電層1aと磁性コア2の位置関係の変動によって導電層1aの内側を通過する単位時間当たりの磁束の量が若干変動してもその変動量は小さく、導電層1aの発熱量が安定する。可撓性を有するスリーブ1のように導電層1aと磁性コア2との距離が変動しやすい定着装置において、この電力の変換効率が高い値で安定している本構成の定着装置P4を用いることは大きなメリットがある。
以上述べたことから、本構成の定着装置P4は少なくとも必要な電力の変換効率を満たすために外側ルートを通過する磁束の割合が70%以上である必要があることがわかる。
4−5)定着装置Fが満たすべきパーミアンス又は磁気抵抗の関係式
導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が70%以上であることは、導電層1aのパーミアンスと導電層1aの内側(導電層1aと磁性コア2の間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コア2のパーミアンスの30%以下であることと等価である。つまり、磁性コア2の磁気抵抗は、スリーブ1の母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、導電層1aの磁気抵抗と、導電層1aと磁性コア2との間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
従って、本実施例の定着装置Fの特徴的な構成の一つは、磁性コア2のパーミアンスをPc、導電層1aの内側のパーミアンスをPa、導電層1aのパーミアンスをPsとしたときに、次の式(23)を満足することである。
0.30×Pc≧Ps+Pa・・・(23)
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記の式(24)になる。
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(25)ように計算する。
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記のパーミアンスもしくは磁気抵抗の関係式を、定着装置Fの記録材Rpの最大搬送領域全域で、スリーブ1の母線方向に直交する方向の断面において満足することが望ましい。
同様に、本実施例の領域R2の定着装置P3は導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が90%以上であるから、パーミアンスの関係式は以下の式(26)になる。
0.10×Pc≧Ps+Pa ・・・(26)
上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(27)ようになる。
更に、本実施例の領域R3の定着装置P4は導電層1aの外側ルートを通過する磁束の割合が94%以上であるから、パーミアンスの関係式は以下の(28)ようになる。
0.06×Pc≧Ps+Pa・・・(28)
上記のパーミアンスの関係式(28)を磁気抵抗の関係式に変換すると以下の式(29)になる。
以上、定着装置の最大の画像領域内の磁性コア2等の部材がスリーブ1の母線方向で均一な断面構成を有している定着装置についてパーミアンス及び磁気抵抗の関係式を示した。
次に、スリーブ1の母線方向で定着装置を構成する部材が不均一な断面構成を有する定着装置について説明する。図14は、母線方向で不均一な断面構成を有するスリーブ1の概略構成を示す図である。スリーブ1の導電層1aの内側(磁性コア2と導電層1aの間の領域)に温度検知部材240を有している。その他の構成はこれまでの説明と同様で、定着装置は導電層1aを有するスリーブ1と、磁性コア2と、ニップ形成部材6と、を備える。
磁性コア2の長手方向をX軸方向とすると、最大画像形成領域はX軸上の0〜Lpの範囲である。例えば、記録材Rpの最大搬送領域をLTRサイズ215.9mmとする画像形成装置の場合、Lp=215.9mmとすれば良い。温度検知部材240は、比透磁率1の非磁性体によって構成されており、X軸に垂直方向の断面積は5mm×5mmであり、X軸に平行な方向の長さは10mmである。この温度検知部材240は、X軸上のL1(102.95mm)からL2(112.95mm)の位置に配置されている。ここで、X座標上0〜L1を領域1、温度検知部材240が存在するL1〜L2を領域2、L2〜LPを領域3と、呼ぶ。
領域1における断面構造を図15(A)に示し、領域2における断面構造を図15(B)に示す。図15(B)に示すように、温度検知部材240はスリーブ1に内包されているため、磁気抵抗計算の対象となる。厳密に磁気抵抗計算を行うためには、領域1と、領域2と、領域3と、に対し、別々に「単位長さ当たりの磁気抵抗」を求め、各領域の長さに応じて積分計算を行い、それらを足し合わせて合成磁気抵抗を求める。まず、領域1または3における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を下記の表3に示す。
領域1における磁性コア2の単位長さ当たりの磁気抵抗r1は下記のようになる。
1=2.9×10[1/(H・m)]
ここで、導電層1aと磁性コア2との間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗rは、ニップ形成部材6の単位長さ当たりの磁気抵抗rと、導電層1aの内側の磁気抵抗rairの単位長さ当たりの磁気抵抗と、の合成磁気抵抗である。従って、下記の式(30)を用いて計算できる。
計算の結果、領域1における磁気抵抗r1、及び、領域1における磁気抵抗r1は下記のようになる。
1=2.7×10[1/(H・m)]
1=5.3×1011[1/(H・m)]
また、領域3は領域1と同じであるから下記のようになる。
3=2.9×10[1/(H・m)]
3=2.7×10[1/(H・m)]
3=5.3×1011[1/(H・m)]
次に、領域2における各部品の単位長さ当たりの磁気抵抗を下記の表4に示す。
領域2の磁性コア2の単位長さ当たりの磁気抵抗r2は下記のようになる。
2=2.9×10[1/(H・m)]
導電層1aと磁性コア2の間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗rは、下記の各部材の合成磁気抵抗である。つまり、ニップ形成部材6の単位長さ当たりの磁気抵抗rと、温度検知素子(サーミスタ)240の単位長さ当たりの磁気抵抗rと、導電層1aの内側の空気の単位長さ当たりの磁気抵抗rairと、の合成磁気抵抗である。従って下記の式(31)で計算できる。
計算の結果、領域2のおける単位長さ当たりの磁気抵抗r2及び単位長さ当たりの磁気抵抗r2は下記のようになる。
2=2.7×10[1/(H・m)]
2=5.3×1011[1/(H・m)]
領域3の計算方法は領域1と同じであるので省略する。
尚、導電層1aと磁性コア2の間の領域の単位長さ当たりの磁気抵抗rにおいて、r1=r2=r3となっている理由について説明する。領域2における磁気抵抗計算は、温度検知素子(サーミスタ)240の断面積が増加し、導電層1aの内側の空気の断面積が減少している。しかし両方とも比透磁率は1であるため、結局、温度検知素子240の有無によらず磁気抵抗は同一となる。すなわち、導電層1aと磁性コア2の間の領域に非磁性体のみが配置されている場合には、磁気抵抗の計算は空気と同じ扱いをしても、計算上の精度としては十分である。なぜなら、非磁性体の場合、比透磁率は殆ど1に近い値になるからである。これとは逆に、磁性体(ニッケル、鉄、珪素鋼等)の場合は、磁性体のある領域をその他の領域と分けて計算した方が良い。
導電層1aの母線方向の合成磁気抵抗としての磁気抵抗R[A/Wb(1/H)]の積分は、各領域の磁気抵抗r1,r2,r3[1/(H・m)]に対して下記の式(32)ように計算できる。
従って、記録材Rpの最大搬送領域の一端から他端までの区間における磁性コア2の磁気抵抗Rc[H]は下記の式(33)ように計算できる。
また、記録材Rpの最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層1aと磁性コア2との間の領域の合成磁気抵抗Ra[H]は、下記の式(34)ように計算できる。
記録材Rpの最大搬送領域の一端から他端までの区間における導電層1aの合成磁気抵抗Rs[H]は次の式(35)のようになる。
上記の計算を、それぞれの領域において行ったものを下記の表5に示す。
上記表5から、Rc、Ra,Rsは下記のようになる。
Rc=6.2×10[1/H]
Ra=5.8×1011[1/H]
Rs=1.1×1014[1/H]
RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下の式(36)で計算できる。
以上の計算から、Rsa=5.8×1011[1/H]となるので、下記の式(37)を満たしている。
このように、導電層1aの母線方向で不均一な横断面形状を有している定着装置の場合は、導電層1aの母線方向で複数の領域に分けて、その領域毎に磁気抵抗を計算し、最後にそれらを合成したパーミアンス又は磁気抵抗を計算すればよい。ただし、対象となる部材が非磁性体である場合は、透磁率がほぼ空気の透磁率と等しいため、空気とみなして計算して良い。
次に、上記計算に計上すべき部材について説明する。導電層1aと磁性コア2との間の領域にあり、少なくとも一部が記録材Rpの最大搬送領域(0〜Lp)に入っている部材に関しては、パーミアンス又は磁気抵抗を計算することが望ましい。逆に、導電層1aの外側に配置された部材は、パーミアンス又は磁気抵抗を計算する必要はない。なぜなら、前述したようにファラデーの法則において誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例するものであり、導電層1aの外側の磁束とは無関係だからである。また、導電層1aの母線方向における記録材Rpの最大搬送領域外に配置した部材は、導電層1aの発熱には影響しないため、計算する必要はない。
(5)昇温抑制配置における発熱原理
本実施例の定着装置Fの発熱原理について、電流周回部材30a,30bが昇温抑制配置に配置されており、スリーブ1の発熱が抑制される場合を説明する。
5−1)スリーブ1の昇温が抑制されるメカニズム
図3を用いて、本実施例の定着装置Fの昇温抑制メカニズムについて説明する。まず、電流周回部材30a,30bが通常配置に配置されている場合を考える。スリーブ1の導電層1aを発熱させる際は、励磁コイル3に高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界はスリーブ1の導電層1aに電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、投入電力に対する導電層1aで熱として消費される電力を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることが出来る。その交番磁界によって励磁コイル3と導電層1aが磁気結合して、励磁コイル3に投入した電力が導電層1aに伝達される。励磁コイル3に投入して導電層1a以外で消費される電力は、励磁コイル3の抵抗による損失、磁性コア2材料の磁気特性による損失などがある。故に、通常配置における導電層1aの消費電力は以下の式で表すことができる。
2a=P−P・・・(38)
2aは通常配置時の導電層1aの消費電力、Pは励磁コイル3に投入した電力、Pは励磁コイル3および磁性コア2の損失電力である。
図16(a)は、電流周回部材30a,30bが通常配置に配置されている場合における等価回路である。Rは励磁コイル3および磁性コア2の損失抵抗、Lは磁性コア2に周回した励磁コイル3のインダクタンス、Mは励磁コイル3の巻き線と導電層1aとの相互インダクタンス、Lは導電層1aのインダクタンス、Rは導電層1aの抵抗である。図16(a)に示す回路は図16(b)に等価変換することが出来る。より単純化したモデルを考えるために、励磁コイル3および磁性コア2による損失が無く(R≒0)、相互インダクタンスMが十分大きい(L≒L≒M)とする。その場合(L−M)と(L−M)は十分小さくなるため、回路は図16(b)から図16(c)のように近似することが出来る。図16(c)の場合、式(38)は
2a≒P・・・(39)
と表され、投入電力のほぼ100%がスリーブ1の導電層1aの発熱に変換される。
次に、電流周回部材30aが昇温抑制配置に配置されている場合を考える。通常配置の場合の等価回路を図16(c)として考えると、昇温抑制配置における等価回路は図17(a)と示される。Rは電流周回部材30aの抵抗、Lは電流周回部材30aのインダクタンス、Mは励磁コイル3の巻き線と電流周回部材30aの相互インダクタンスである。図17(a)に示す回路は図17(b)に等価変換することが出来る。今回もより単純化したモデルを考えるために、相互インダクタンスMが十分大きい(L≒L≒M)とする。その場合(L−M)と(L−M)は十分小さくなるため、回路は図17(b)から図17(c)のように近似することが出来る。図17(c)から、昇温抑制配置におけるスリーブ1の導電層1aの消費電力は以下の式で表すことができる。
2b=P−P・・・(40)
2bは昇温抑制配置における導電層1aの消費電力、Pは電流周回部材30aの消費電力である。励磁コイル3に投入する電力を通常配置と一定とする場合、式(40)に式(39)を代入すると、
2a−P2b=P・・・(41)
が成り立つ。したがって式(41)から、電流周回部材30aが昇温抑制配置に配置される場合、導電層1aの発熱は電流周回部材30aの消費電力分抑制されることが分かる。もう片方の電流周回部材30b、図7に示すスリーブ1の外周面側に配置する電流周回部材36a,36bを用いた場合に関しても、同じ昇温抑制メカニズムが働く。
(効果の実証)
本実施例に示す定着装置Fの効果を実証するため、電流周回部材30a,30bが通常配置または昇温抑制配置に配置されている場合のスリーブ1の表面温度を測定した。図18は、図2乃至図4で示したスリーブ1の内周面側に配置された電流周回部材30a,30bが移動する定着装置Fについて、スリーブ1の表面温度を測定した結果である。
測定に用いたスリーブ1の導電層1aは、直径30mm、厚み35μm、長さ240mmのSUS304である。磁性コア2の直径は14mmである。電流周回部材30a,30bは、直径24mm、厚み0.7mm、長さ30mmのアルミ製の円筒形部材である。電流周回部材30a,30bの内周面、及び外周面にはポリイミドテープを貼っている。これにより電流周回部材30a,30bを他の部材と電気的に絶縁している。上記以外の構成は前述の説明の通りである。
スリーブ1の表面温度の測定は、スリーブ1の母線方向全域を日本アビオニクス(株)製の赤外線サーモグラフィーR300SRを用いて撮影した。励磁コイル3への投入電力は100Wで、電力投入から30秒後の温度分布を測定した。
また、電流周回部材30aとスリーブ1がオーバーラップする領域を電流周回部材30aの侵入量Dとして定義している。同様に、電流周回部材30bとスリーブ1がオーバーラップする領域を電流周回部材30bの侵入量Dとして定義している。
図18に示しているとおり、電流周回部材30aの侵入量Dは、スリーブ1の左側の端部1Leから電流周回部材30aの侵入側端部30aeまでの距離のことである。電流周回部材30bの侵入量Dは、スリーブ1の右側の端部1Reから電流周回部材30bの侵入側端部30beまでの距離のことである。図18に示される電流周回部材30a,30bの昇温抑制配置では、侵入量Dを20mmに設定した。本実施例の定着装置Fでは、スリーブ1の左右の端部で侵入量Dを同じ量になるように設定しているが、左右の端部で異なる量に設定してもよい。
図18の測定結果を見ると、電流周回部材30a,30bの通常配置におけるスリーブ1の表面温度はスリーブ1の母線方向に対して均一に発熱している。これに対して、電流周回部材30a,30bの昇温抑制配置におけるスリーブ1の表面温度は電流周回部材30a,30bが配置されている領域で急激な温度の低下が確認できる。ここで、昇温抑制率を
昇温抑制率=(通常配置の昇温温度−昇温抑制配置の昇温温度)/通常配置の昇温温度
・・・(42)
と定義する。この定着装置Fの昇温抑制率の最大値は95.8%であった。
図19は、図6、及び図7で示したスリーブ1の外周面側に電流周回部材36a,36bが移動する定着装置Fについて、スリーブ1の表面温度を測定した結果である。
測定に用いた電流周回部材36a,36bは、直径66mm、厚み0.1mm、長さ30mmのアルミ製の円筒形部材である。電流周回部材36a,36b以外の装置構成と撮影機材、測定条件は図18の実験と同じである。
スリーブ1に関し、電流周回部材36a,36bに覆われている部分の表面温度は、斜めの角度から撮影した測定結果を用いている。また、左側の電流周回部材36aとスリーブ1がオーバーラップする領域を電流周回部材36aの侵入量Dとして定義している。同様に、右側の電流周回部材36bとスリーブ1がオーバーラップする領域を電流周回部材36bの侵入量Dとして定義している。
図19に示しているとおり、電流周回部材36aの侵入量Dは、スリーブ1の左側の端部1Leから電流周回部材36aの侵入側端部36aeまでの距離のことである。電流周回部材36bの侵入量Dは、スリーブ1の右側の端部1Reから電流周回部材36bの侵入側端部36beまでの距離のことである。
図19の測定結果を見ると、通常配置におけるスリーブ1の表面温度は母線方向に対して均一に発熱しているのに対して、昇温抑制配置(D=20mm)では電流周回部材36a,36bが配置されている領域で急激な温度の低下が確認できる。この定着装置Fの昇温抑制率の最大値は96.6%であった。
なお、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bに周回電流を流すためには、スリーブ1の導電層1aを電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bと置き換えた場合における式(37)が成り立つことが望ましい。
すなわち、スリーブ1の母線方向に関し電流周回部材30a,30bが存在する区間において、磁性コア2の磁気抵抗は、下記の合成磁気抵抗の30%以下であることが、本実施例においてより好ましい構成となる。ここで、合成磁気抵抗とは、電流周回部材30a,30bの磁気抵抗と、電流周回部材30a,30bと磁性コア2との間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗のことである。
同様に、スリーブ1の母線方向に関し電流周回部材36a,36bが存在する区間において、磁性コア2の磁気抵抗は、下記の合成磁気抵抗の30%以下であることが、本実施例においてより好ましい構成となる。ここで、合成磁気抵抗とは、電流周回部材36a,36bの磁気抵抗と、電流周回部材36a,36bと磁性コア2との間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗のことである。
(比較例)
図17に示す等価回路が成り立つためには、電流周回部材30a,30bに周回電流が流れることが必要となる。電流周回部材30a,30bに周回電流を流すためには、電流周回部材30a,30bが磁性コア2を取り囲むように閉ループを形成した形状を有していれば良い。本実施例の定着装置Fの効果を実証するため、閉ループ形状の電流周回部材30a,30bと、比較例である開ループ形状の電流周回部材50a,50bの昇温抑制効果の比較を行った。
まず、スリーブ1の内周面側に電流周回部材30a,30bを配置した構成の定着装置の場合について述べる。図20(a)に、図18の実験で使用した閉ループ形状を有する電流周回部材30a,30bの斜視図を示す。この電流周回部材30a,30bの一部を母線方向に切り取り、図20(b)に示す開ループ形状の電流周回部材50a,50bを作製した。図20(c)は、開ループ形状の電流周回部材50a,50bをスリーブ1の内周面側に配置し(D=20mm)、スリーブ1の表面温度を測定した結果である。他の装置構成と撮影機材、測定条件は図18の実験と同じである。
図20(c)を見ると、開ループ形状の電流周回部材50a,50bの場合においても僅かに発熱は抑制されている。しかし、閉ループ形状の電流周回部材30a,30bの場合と比べると圧倒的に効果は少ないことが分かる。
僅かではあるが開ループ形状の電流周回部材50a,50bで発熱が抑制されている理由は、磁性コア2の端部で測定を行ったことが理由と考えられる。磁性コア2の端部では、スリーブ1に対して外部磁束が平行になっていないため、スリーブ1を厚み方向に貫く垂直方向の磁束も存在する。この場合、開ループ形状の電流周回部材50a,50bが前述の磁気遮蔽板と同様の効果を発現し、この垂直方向の磁束を遮蔽する可能性がある。この磁束の遮蔽効果により、開ループ形状の電流周回部材50a,50bにおいても僅かに発熱が抑制されたと考えられる。
しかしながら、閉ループ形状の電流周回部材30a,30bを用いた本実施例の定着装置Fと比べて昇温抑制効果が低いのは明らかである。
次に、スリーブ1の外周面側に電流周回部材36a,36bを配置した構成の定着装置の場合について述べる。図21(a)に、図19の実験で使用した閉ループ形状を有する電流周回部材36a,36bの斜視図を示す。この電流周回部材36a,36bの一部を母線方向に切り取り、図21(b)に示す開ループ形状の電流周回部材51a,51bを作製した。図21(c)は、開ループ形状の電流周回部材51a,51bをスリーブ1の外周面側に配置し(D=20mm)、スリーブ1の表面温度を測定した結果である。他の装置構成と撮影機材、測定条件は図19の実験と同じである。
図21(c)を見ると、スリーブ1の外周面側に開ループ形状の電流周回部材51a,51bを配置した場合のスリーブ1の温度分布は、通常配置の温度分布とほぼ一致している。したがって、開ループ形状の電流周回部材51a,51bは昇温抑制効果を有していないことが分かる。
上記の閉ループ形状の電流周回部材を有する本実施例の定着装置Fと、開ループ形状の電流周回部材を有する比較例の定着装置について、昇温抑制率の最大値を式(42)から求めた。その結果を下記の表6に示す。
表6から、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bが閉ループ形状を有していることが、昇温抑制率を飛躍的に向上させていることが分かる。
本比較例の結果から、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bの位置を所定のタイミングで電流周回部材駆動部48により昇温抑制配置に配置させることによってスリーブ1の昇温抑制効果が得られることが分かる。
電流周回部材の構成は、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bに限られない。図22に、電流周回部材の他の構成を示す。
図22に示す電流周回部材60は、磁性コア2を取り囲むように形成した閉ループの通電又は絶縁を切り替えるための切り替え部60aを周回方向の一端に有する。そして、この切り替え部60aが周回方向の他端60bに当接されることにより電流周回部材60は閉ループ形状となり、切り替え部60aが他端60bから離間されることにより電流周回部材60は開ループ形状となる。この電流周回部材60は、図3又は図7に示す昇温抑制配置に最初から配置されているものとする。
図22(a)に通常時の電流周回部材60の状態を示す。図22(a)の状態では電流周回部材60は開ループ形状を有しているため、電流周回部材60の周回方向は電気的に絶縁されている。本比較例の実験結果により、図22(a)の状態ではスリーブ1の昇温抑制にはほとんど寄与しない。
スリーブ1の昇温を抑制する場合はカム61を回転させ、図22(b)の状態にする。電流周回部材60の閉ループの通電又は絶縁を切り替える手段としてのカム61は不図示のモータに接続されており、回転を制御することができる。図22(b)の状態では電流周回部材60は閉ループ形状を有しているため、電流周回部材60の周回方向は通電されている。この場合はスリーブ1の昇温を抑制することができる。
このような電流周回部材60においても、所定のタイミングで閉ループの通電又は絶縁を切り替えることによってスリーブ1の昇温抑制効果が得られることが分かる。
5−2)昇温抑制率と周回抵抗の関係
式(41)より、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bを用いた場合のスリーブ1の導電層1aの昇温抑制割合は、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bの消費電力によって決まる。この電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bの消費電力は、スリーブ1の導電層1aの抵抗と、電流周回部材30a,30b、及び電流周回部材36a,36bの抵抗の大小関係によっておおよそ決まる。
図18の実験において、電流周回部材30a,30bの材料、厚み、幅を振ることによって、電流周回部材30a,30bの周回抵抗を変えたサンプルを複数個作製した。
ここで、スリーブ1の導電層1a、及び作製した複数個の電流周回部材について、これらの各部材の単位長さ当たりの周回抵抗tを
t[Ω・m]=(部材の体積電気抵抗率[Ω・m]×部材の周長[m])/部材の厚み[m]
・・・(43)
と定義する。
また、スリーブ1の導電層1a、及び作製した複数個の電流周回部材について、これらの各部材の周回抵抗Tを
T[Ω]=(部材の体積電気抵抗率[Ω・m]×部材の周長[m])/
(部材の厚み[m]×部材の幅[m])・・・(44)
と定義する。
スリーブ1の導電層1aの単位長さ当たりの周回抵抗taと周回抵抗Ta、及び電流周回部材30a,30bの単位長さ当たりの周回抵抗tbと周回抵抗Tbを、下記の表7にまとめた。表7において、番号の「0」番は導電層1aに対応し、「1」番〜「24」番は電流周回部材30a,30bの作製した複数個のサンプルに対応している。
表7の電流周回部材30a,30bを用いた図3の定着装置Fにおいて、電流周回部材30a,30bが昇温抑制配置に配置されている場合の、スリーブ1の温度分布を測定した。昇温抑制配置における電流周回部材30a,30bの侵入量Dは、各電流周回部材30a,30bの幅+5mmと設定した。つまり、幅が1mmの場合は侵入量D=6mm、幅が10mmの場合は侵入量D=15mm、幅が30mmの場合は侵入量D=35mmである。他の装置構成と撮影機材、測定条件は図18の実験と同じである。
図23は、表7の番号の「7」番と「19」番の電流周回部材30a,30bが昇温抑制位置に配置されている場合のスリーブ1の温度分布を比較した結果を示す図である。Alの体積電気抵抗率は3.96×10−8[Ω・m]であり、SUS304の体積電気抵抗率は7.19×10−7[Ω・m]である。電流周回部材30a,30bの形状は同じものを用いているため、体積電気抵抗率が低いAlの方が、周回電流がより多く流れる。これによって、スリーブ1の導電層1aの非通過領域の昇温がより効果的に抑制されている。
図24は、表7の部材を用いて、昇温抑制率の最大値と電流周回部材30a,30bの単位長さ当たりの周回抵抗tbをプロットした結果を示す図である。その周回抵抗tbが、破線で示されるスリーブ1の導電層1aの単位長さ当たりの周回抵抗taよりも小さくなる領域で、昇温抑制率が高くなっていることが分かる。
また、図25は、昇温抑制率の最大値と電流周回部材30a,30bの周回抵抗Tbをプロットした結果を示す図である。その周回抵抗Tbが、破線で示されるスリーブ1の導電層1aの周回抵抗Taよりも小さくなる領域で、90%以上の非常に効果的な昇温抑制率が達成されていることが分かる。
5−3)小サイズ記録材の通過時の非通過部昇温の抑制方法
本実施例の定着装置Fを用いた、小サイズ記録材の通過時の過昇温を抑制する方法について説明する。図26は、電流周回部材30a,30bの侵入量Dとスリーブ1の温度分布の関係を測定した結果を示す図である。侵入量D以外の装置構成と撮影機材、測定条件は図18の実験と同じである。
図26を見ると、侵入量Dの増加に伴い、スリーブ1の導電層1aの発熱領域が狭まっていることが分かる。この様に、本実施例の電流周回部材30a,30bはスリーブ1とオーバーラップしている領域が多いほど、導電層1aの発熱を抑制する領域が広がるという特徴がある。
本実施例では、この特徴を利用して、スリーブ1の母線方向に関し記録材Rpの幅が小さくなるにしたがって電流周回部材30a,30bの侵入量を増やすように制御し、スリーブ1の導電層1aの非通過部昇温を抑制している。図26の実験により得られた、サイズの異なる記録材の幅と電流周回部材30a,30bの侵入量Dの関係を下記の表8に示す。
この表8に従って、スリーブ1が記録材の幅に対応した温度分布になるように、電流周回部材30a,30bの侵入量Dの配置制御を行っている。
スリーブ1の導電層1aの非通過部昇温を抑制する制御方法について、図4を用いて説明する。まず、ホストコンピュータ42を介して、ユーザが画像形成装置100の動作情報としての記録材Rpのサイズ情報を指定する。記録材Rpのサイズ情報は、プリンタコントローラ41からエンジン制御部43を介して、電流周回部材制御部47へ伝えられる。電流周回部材制御部47は表8に従って電流周回部材30a,30bの侵入量Dを決定し、電流周回部材駆動部48を駆動させる。電流周回部材駆動部48は所定の侵入量の位置まで電流周回部材30a,30bを移動させる。
本実施例では、ユーザがホストコンピュータ42を介して指定した記録材Rpのサイズ情報に基づいて電流周回部材30a,30bの侵入量Dを決定したがこれに限定するものではない。例えば、給紙カセット105、又は搬送経路内に記録材Rpのサイズ情報を検知する手段を設け、その手段からの検知結果に基づいて電流周回部材30a,30bの侵入量Dを決定してもよい。
また、画像形成装置100の動作情報としての記録材Rpの通過情報に応じて電流周回部材30a,30bの侵入のタイミングを決定してもよい。ここで、記録材Rpの通過情報とは、記録材Rpが定着装置Fのニップ部Nを通過した枚数である。本実施例では、図18の実験で用いた定着装置Fのニップ部NにA4サイズの記録材Rpを連続して通過させた場合を例に挙げる。
この定着装置Fは、60枚/分の印字動作を行う画像形成装置100に搭載されている。スリーブ1の回転速度は330mm/secである。温度検知素子9により測定されるスリーブ1の長手中央の表面温度は200℃になるように制御されている。この定着装置Fのニップ部NにA4サイズの記録材Rpを通過させる場合は、26枚目以降から電流周回部材30a,30bを通常配置から侵入量D=5mmの昇温抑制配置へと移動させる制御を行う。
上記定着装置Fの効果を確認するため、電流周回部材30a,30bを通常配置で固定した場合と、昇温抑制配置に移動させた場合において、それぞれ連続250枚のプリントを行い比較した。画像としてモノクロの文字画像を記録材Rpの左右の端部から3mm、記録材Rpの搬送方向aの先端および後端から5mmを余白として残し、それ以外の全面にプリントした。スリーブ1の温度を日本アビオニクス(株)製の赤外線サーモグラフィーR300SRを用いて撮影し、非通過領域の最高温度をモニタした。
図27に、プリント枚数とスリーブ1の導電層1aの非通過領域温度の関係の実験結果を示す。電流周回部材30a,30bを通常配置で固定した場合の比較例では、80枚で非通過領域の最高温度が、スリーブ1が損傷しうる230℃に達した。一方、電流周回部材30a,30bを昇温抑制配置に移動させた場合の実施例では、250枚以上プリントしても230℃に達することはなかった。
以上のように、記録材の通過枚数が増加するにしたがって、電流周回部材30a,30bの位置を制御することにより、スリーブ1の導電層1aの非通過部昇温を抑制することができる。
本実施例では、記録材Rpの通過枚数に応じて電流周回部材30a,30bの位置を変化させたがこれに限定するものではない。例えば、記録材Rpの通過情報として、記録材Rpがニップ部Nを通過した時間、或いは記録材Rpがニップ部Nを通過した距離、等を用いて電流周回部材30a,30bの位置を制御しても良い。
記録材Rpがニップ部Nを通過した時間の例として、ニップ部を記録材が通過した積算時間、記録材がニップ部を通過した積算時間から加圧ローラ8でスリーブ1を空回転させた時間を引いた時間、等を用いて電流周回部材30a,30bの位置を制御しても良い。
記録材Rpがニップ部Nを通過した距離の例として、ニップ部を記録材が通過した積算距離、記録材がニップ部を通過した積算距離から加圧ローラ8でスリーブ1を空回転させた距離を引いた距離、等を用いて電流周回部材30a,30bの位置を制御しても良い。
以上のように、上記の画像形成装置100の動作情報に応じて、図5に示した電流周回部材30a,30bをスリーブ1の母線方向に移動させることにより導電層1aの非通過部昇温を抑制することができる。
また、上記の画像形成装置100の動作情報に応じて、図22に示した電流周回部材60を周回方向において閉ループの通電又は絶縁を切り替えることにより導電層1aの非通過部昇温を抑制することができる。電流周回部材60を用いる場合、記録材Rpの幅毎に、スリーブ1の導電層1aの非通過部昇温を抑制するための電流周回部材60を用意する、或いは幅の狭いリング形状の電流周回部材60をスリーブ1の母線方向に沿って複数個並べる、などが挙げられる。
他にも、スリーブ1の非通過領域に配置した温度検知素子10,11の温度検知結果に基づいて、電流周回部材30a,30bの侵入量Dを変更することにより、記録材Rpの連続通過時におけるスリーブ1の導電層1aの非通過部昇温を抑制することも可能である。或いは、温度検知素子10,11の温度検知結果に基づいて、電流周回部材60を周回方向において閉ループの通電又は絶縁を切り替えることにより導電層1aの非通過部昇温を抑制することも可能である。
1 定着スリーブ、1a 導電層、3cx 螺旋軸、3c 螺旋形状部、
3 励磁コイル、2 磁性コア、8 加圧ローラ、10,11 温度検知素子、
30a,30b 電流周回部材、36a,36b 電流周回部材、
48 電流周回部材駆動部、60 電流周回部材、61 カム、F 定着装置、
IF 画像形成部、N ニップ部、Rp 記録材、T 未定着トナー画像

Claims (15)

  1. 導電層を有する筒状の回転体と、
    前記回転体と共にニップ部を形成する加圧部材と、
    前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
    前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、を備え、
    前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、前記画像が形成された記録材を前記ニップ部で搬送しながら加熱し前記画像を記録材に定着する定着装置において、
    前記回転体の内周面側、又は、外周面側に、前記コアを取り囲むように閉ループを形成した形状の導電性の電流周回部材が配置されていることを特徴とする定着装置。
  2. 前記導電層と前記電流周回部材について、各部材の単位長さ当たりの周回抵抗tが
    t[Ω・m]=(部材の体積電気抵抗率[Ω・m]×部材の周長[m])/部材の厚み[m]
    で表されるとき、
    前記電流周回部材の単位長さ当たりの周回抵抗tbは、前記回転体の導電層の単位長さ当たりの周回抵抗taよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記導電層と前記電流周回部材について、各部材の周回抵抗Tが
    T[Ω]=(部材の体積電気抵抗率[Ω・m]×部材の周長[m])/(部材の厚み[m]×部材の幅[m])
    で表されるとき、
    前記電流周回部材の周回抵抗Tbは、前記回転体の導電層の周回抵抗Taよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  4. 前記母線方向に関し前記電流周回部材が存在する区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記電流周回部材の磁気抵抗と、前記電流周回部材と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の定着装置。
  5. 前記電流周回部材の位置を前記母線方向で変化させる手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の定着装置。
  6. 前記電流周回部材の前記閉ループの通電又は絶縁を切り替える手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の定着装置。
  7. 記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材上のトナー画像を記録材に定着する画像定着部と、を有する画像形成装置において、
    前記画像定着部が請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
  8. 前記画像形成装置の動作情報に応じて、前記定着装置の前記電流周回部材の位置を変化させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
  9. 前記画像形成装置の動作情報に応じて、前記定着装置の前記電流周回部材の前記閉ループの通電又は絶縁を切り替えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
  10. 前記動作情報は、前記記録材のサイズ情報であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 前記動作情報は、前記ニップ部を通過した前記記録材の通過情報であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
  12. 前記記録材の通過情報は、前記記録材が前記ニップ部を通過した枚数であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  13. 前記記録材の通過情報は、前記記録材が前記ニップ部を通過した時間であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  14. 前記記録材の通過情報は、前記記録材が前記ニップを通過した距離であることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  15. 前記動作情報は、前記回転体の前記母線方向に関し大サイズ記録材が通過し小サイズ記録材が通過しない非通過領域に配置した検温素子による温度検知結果であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成装置。
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