本発明者らは、凹凸構造を有する光学基板において、凹凸構造の間隔の大きさの変更により半導体結晶内の転位を分散化し転位密度を低減して内部量子効率IQEを改善することと、光散乱により導波モードを解消して光取り出し効率LEEを改善することと、がトレードオフの関係にあることに着目した。また、吸収による発光光の減衰を考慮すると、オーミック抵抗を低下させオーミックコンタクトを向上させるためには、小さな間隔の微細な凹凸構造が必要であるが、間隔の小さな凹凸構造においては光取り出し効率LEEが低下することに注目した。そして、本発明者は、凹凸構造の凸部又は凹部の間隔を所定範囲内にすると共に、平均凸部高さより凸部高さが低い凸部又は平均凹部深さより凹部深さが浅い凹部が所定の確率で存在するように凹凸構造を設けることにより、半導体結晶内の転位の分散化と転位密度の低減による内部量子効率IQEの改善と光学的散乱性による導波モードの解消による光取り出し効率LEEの改善、又は、オーミックコンタクトの向上による電子注入効率EIEの改善と光散乱による導波モードの解消による光取り出し効率LEEの改善を共に実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明に係る光学基板について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の光学基板とは、半導体発光素子と隣接する基板であり、少なくとも1層以上のn型半導体層と少なくとも1層以上のp型半導体層と1層以上の発光層から構成される半導体発光素子の、n型半導体層、発光半導体層又はp型半導体層のいずれかに隣接する基板である。
例えば、図1は、本実施の形態に係る光学基板を適用した半導体発光素子の断面模式図である。
図1に示すように、半導体発光素子100においては、光学基板101の一主面上に設けられた凹凸構造102上にn型半導体層103、発光半導体層104及びp型半導体層105が順次積層されている。また、p型半導体層105上には透明導電膜106が形成されている。また、n型半導体層103表面にカソード電極107が、透明導電膜106表面にアノード電極108がそれぞれ形成されている。なお、光学基板101上に順次積層されたn型半導体層103、発光半導体層104及びp型半導体層105を、積層半導体層110と称する。
なお、図1においては、光学基板101の一主面上に設けられた凹凸構造102上に半導体層103、104、105を順次積層しているが、光学基板101の凹凸構造102が設けられた面と相対する他の一主面上に半導体層を順次積層してもよい。
図2は、本実施の形態に係る光学基板を適用した半導体発光素子の別の一例の断面模式図である。図2に示すように、半導体発光素子200において、基板201上には、n型半導体層202、発光半導体層203及びp型半導体層204が順次積層されている。また、p型半導体層204上には、p型半導体層204と接する一主面上に凹凸構造205を有する本実施の形態の光学基板である透明導電膜206が設けられている。また、n型半導体層202表面にカソード電極207が、透明導電膜206表面にアノード電極208がそれぞれ形成されている。
図2においては、透明導電膜206の凹凸構造205が設けられる主面は、p型半導体層204と隣接しているが、p型半導体層204と相対する主面に設けてもよい。
図3は、本実施の形態に係る光学基板を適用した半導体発光素子の別の一例の断面模式図である。図3に示すように、半導体発光素子300においては、基板301上にn型半導体層302、発光半導体層303、及び、発光半導体層303と相対する主面上に凹凸構造305が設けられた本発明の光学基板であるp型半導体層304が順次積層されている。基板301のn型半導体層302と接する主面とは反対側の主面にカソード電極306が、p型半導体層304表面にアノード電極307がそれぞれ形成されている。
図1から図3に示した半導体発光素子100、200、300は、本実施の形態の光学基板を、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に適用した例であるが、積層半導体層の積層構造はこれに限定されるものではない。また、光学基板101、201、301とn型半導体層302との間に、図示しないバッファー層を設けてもよい。
次に、本実施の形態に係る光学基板の構成について図面を参照し説明する。図4は、本実施の形態に係る光学基板の断面模式図であり、図4Aは光学基板400の一方の面が凹凸構造401を具備する場合を、図4Bは光学基板400の両面が凹凸構造401を具備する場合を示している。図4Bに示すように、凹凸構造401は光学基板400の両面に設けられてもよい。ここで、本発明の範囲を満たす凹凸構造401は少なくとも光学基板400の一方の面に形成されていればよい。
本実施の形態に係る光学基板を使用することで、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEが同時に向上する理由は以下の通りである。
内部量子効率IQEは、光学基板の格子定数と半導体結晶層の格子定数と、の不整合(格子不整合)により発生する転位により減少する。ここで、光学基板の表面に転位密度と同程度以上の密度を有す凹凸構造を設けた場合、半導体発光層の結晶成長モードを乱すことが可能となり、半導体結晶層内の転位を凹凸構造に応じて分散化することができる。即ち、微視的にも巨視的にも転位密度を低減することができる。この為、内部量子効率IQEを向上させることが可能となる。
電子注入効率EIEは、ショットキー障壁によるコンタクト抵抗の増大により低下する。光学基板が、少なくとも2層以上の半導体層と発光層とを積層して構成される積層半導体層を有する半導体発光素子の最表面に設けられることにより、その表面に構成される透明導電膜又は電極パッドとの接触面積が凹凸構造の比表面積に応じ増大し、コンタクト抵抗を低減することが可能である。この為、オーミックコンタクトが向上し、電子注入効率EIEを向上させることができる。
しかしながら、内部量子効率IQEを向上させるためにも、電子注入効率EIEを向上させるためにも、ナノスケールの微小な凹凸構造が必要となる。内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを向上させるために、凹凸構造の密度や比表面積を向上させる程、発光光の波長から見た凹凸構造の大きさは小さくなるため、光学的散乱効果が減少する。即ち、導波モードを乱す効果が弱まるため、光取り出し効率LEEの向上程度が小さくなる。
ここで、本発明者らは、基本となる凹凸構造に部分的な乱れを加えることで、本来の凹凸構造により発現される機能(微小な凹凸構造による内部量子効率IQEの向上、或いは電子注入効率EIEの向上)に、乱れに応じた新たな光学現象(光回折や光散乱)を付加できることを見出した。即ち、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを向上させ(本来の機能)、且つ凹凸構造の乱れ(第2の凸部又は、第2の凹部)に応じた新たな光学現象(光回折或いは光散乱)を適用することが可能となるため、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。以下、本原理について実際の検討を含め詳述する。
凹凸構造の大きさに対して光の波長が同程度以下の場合、光学現象としては光回折が生じる。一方、光の波長が十分に大きければ有効媒質近似的作用が働く。
前者の場合、凹凸構造1つ1つといった微視的スケールにおいては光回折が生じることとなるが、規則性の高い配列の場合、光回折のモード数が限定される。即ち、導波モードを乱す回折点数が限定されることとなる。一方、乱れを有す場合、乱れに応じて光回折のモードの数が増加すると考えられる。即ち、数十マイクロメートル以上といった巨視的スケールにて観察した場合、複数の光回折モードによる出光の平均的光が観察されるため、乱れを含む凹凸構造は光学的散乱性(光回折又は光散乱)を奏すこととなる。このような光学的散乱性(光回折又は光散乱)は導波モードを乱す効果が大きい、より具体的には導波モードを崩された発光光が再度導波モードを形成する確率を大きく低下させるため、光取り出し効率LEEを大きく向上させることができる。一方で、後者の場合、平均化された屈折率分布が、凹凸構造の乱れに応じた分布を形成すると考えることができる。この為、光は、恰も、該分布に応じた外形を有す有効媒質近似的屈折率を有す媒質が存在するかのように振る舞うため、該分布に応じた光学現象(光回折或いは光散乱)を新たに発現することが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。
例えば、波長が550nmの光からみて、平均間隔Paveが460nmの六方格子状に配列した複数の凸部と凹部から構成される凹凸構造は、平均間隔Paveに応じた光回折を生じることとなる。この為、目視観察を行った結果、回折光に応じたギラツキ(回折色)を観察することができた(以下、「本来の光学現象」ともいう)。次に、該凹凸構造に第2の凸部(又は、第2の凹部)を加えた。この場合、平均間隔Paveに応じた本来の光学現象(光回折現象)に加え、第2の凸部(又は、第2の凹部)に応じた散乱成分を更に含むことが確認できた。ここで、平均間隔Paveと同程度であり光回折を生じる波長(例えば、550nm)の光を用い光学測定した結果、第2の凸部(又は、第2の凹部)のない凹凸構造を対象とした場合に比べ、第2の凸部(又は、第2の凹部)のある凹凸構造を対象にした場合の散乱性がより強くなることが確認された。これは、波長550nmの光から見た場合、凹凸構造の凸部は回折点として機能するが、凹凸構造の凸部の配列規則性が高い場合、回折モード数は配列により限定される。一方、凹凸構造に第2の凸部(又は、第2の凹部)を含む場合、回折モード数は増大し、又分散を含むためと考えられる。例えば、平均間隔Pが300nmの複数の凸部が正六方格子状に配列したサファイア基板に対するヘーズは、平均間隔Pが300nmの複数の凸部が正六方格子状に配列し、且つ1%の割合で分散した高さが0nmの第2の凸部を含むサファイア基板のヘーズの0.5倍であった。目視観察を行ったところ、平均間隔Pに応じた薄紫色の回折色が確認されたが、第2の凸部を含む場合、薄紫色の回折色に濁りが加わっていた。以上から、第2の凸部(又は、第2の凹部)を含む凹凸構造を用いることで、光学的散乱性を発現できることがわかる。即ち、微小な凹凸構造を使用した場合であっても、散乱性により導波モードを乱すことが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。
また、例えば、波長が550nmの光からみて、平均間隔Paveが200nmの六方格子状に配列した複数の凸部及び凹部から構成される凹凸構造は、有効媒質近似的作用により平均化される。該凹凸構造を透明な基板上に設け、目視観察を行ったところ、反射光の極めて少ない透明な基板を観察することができた。これは一般的に無反射膜やモスアイ構造と呼ばれるものである。これは、光の波長より十分に小さい凹凸構造は、有効媒質近似作用により、光から見て平均化される為である。ここで、該凹凸構造が第2の凸部(又は、第2の凹部)を含む場合、平均間隔Paveに応じた本来の光学現象(反射防止効果)に加え、第2の凸部(又は、第2の凹部)に応じた散乱成分を更に含むことを確認した。即ち、平均間隔Paveよりも十分に大きな波長(例えば、550nm)の光を用い光学測定を行った結果、散乱成分が極めて小さくなることが確認された。これは、第2の凸部(又は、第2の凹部)のない凹凸構造を用いれば有効媒質近似作用が働き、面内において均等な有効媒質近似的屈折率Nemaを有す薄膜に対する光学測定と同等になるためと考えられる。一方、第2の凸部(又は、第2の凹部)を含む凹凸構造を測定対象にすることにより、散乱成分が増加することが確認された。これは、有効媒質近似的屈折率Nemaに分布が加わるため、第2の凸部(又は、第2の凹部)に応じた外形を有す有効媒質近似的屈折率Nemaの媒質を測定しているように、光学測定に使用する光は振る舞うためと考えられる。例えば、平均間隔Paveが200nmの正六方格子状に配列した凸部に対するヘーズは、平均間隔Paveが200nmであり第2の凸部を含む凹凸構造のヘーズに対して、0.65倍であった。目視観察を行った結果、第2の凸部を含まない凹凸構造は非常に透明であったが、第2の凸部を含むことで濁りが確認された。以上から、第2の凸部(又は、第2の凹部)を含む凹凸構造を用いることで、光学的散乱性を発現できることがわかる。即ち、光の波長より小さな凹凸構造であっても、散乱性により導波モードを乱すことが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。
以上説明したように、凹凸構造に第2の凸部(又は、第2の凹部)を加えることで、第2の凸部(又は、第2の凹部)に応じた散乱性を新たに付加できることが判明した。即ち、本来導波モードを十分に乱すことができないような高密度な凹凸構造であっても、第2の凸部(又は、第2の凹部)を含むことにより、第2の凸部(又は、第2の凹部)に応じた散乱性を発現することが可能となるため、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを維持した状態にて、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
以上説明したように、凹凸構造に第2の凸部を加えることで微小な凹凸構造により内部量子効率IQEを改善し、第2の凸部による新たな光学的散乱性(光回折又は光散乱)により光取り出し効率LEEを改善できる可能性が示唆された。次に、第2の凸部を含む光学基板に対して、半導体結晶層を成膜した際に観察された現象について説明する。
詳しくは後述するが、第2の凸部の存在確率Zが所定の値以下であることにより半導体発光素子のリーク電流がより改善されることを発見した。即ち、本発明の主題は、上記説明したIQEの改善、LEEの改善及びリーク電流の抑制である。
図5は、本実施の形態に係る光学基板を適用した半導体発光素子における第2の凸部の存在確率Zとリーク電流との関係を示すグラフである。第2の凸部の存在確率Zをパラメータとして、サファイア基板(光学基板)上にバッファー層、uGaN層、nGaN層、MQW層、及びpGaN層をMOCVD法により成膜した。続いて、ITOを成膜し、メサエッチングを行い、最後にCr/Ti/Auから成る金属パッドパタンを形成した。この状態でリーク電流を測定した。図5は、第2の凸部の存在確率Zの与えるリーク電流への影響を示す図であり、横軸が存在確率Zを、縦軸がリーク電流値を示している。図5より、存在確率Zが小さい場合、リーク電流がより改善され、良好なダイオード特性を示すことがわかる。また、存在確率Zが1/5付近を起点に、存在確率Zが大きくなると、リーク電流が急増することがわかる。例えば、存在確率Zが1/55の場合に比べ、存在確率Zが1/3.3の場合のリーク電流は1.7〜2.9倍であった。即ち、ダイオード特性が大きく低下することが確認された。ここで、存在確率Zをパラメータにし、半導体結晶層の成長性を確認したところ、存在確率Zが大きい程、第2の凸部近傍より半導体結晶層の特異成長が生じることが確認された。ここで特異成長とは、周囲よりも成長速度の速いことである。
図6は、本実施の形態に係る光学基板の効果を説明するために表面上に半導体結晶層を特異成長させた光学基板を撮影した電子顕微鏡写真に基づいて作成した線図である。図6A及び図6Bに示す光学基板600は、上述の存在確率Zが1/3.3である凹凸構造を有する。これは、図5に示すグラフにおいて存在確率Zが0.3である場合に相当する。図6Aより、特異成長により半導体結晶層602の、サファイア基板601とは最も遠い面に凸状の不陸603が発生していることがわかる。この不陸603は、大きな存在確率Zにより第2の凸部の集合が形成され、これにより急成長した半導体結晶層に起因する。一方、図6Bにより、特異成長した半導体結晶層602の、サファイア基板601とは最も遠い面に凹状の不陸604が発生していることがわかる。これは、大きな存在確率Zにより生じた第2の凸部の集合が隣接することにより、第2の凸部における特異成長した半導体結晶層同士が衝突したことに起因する。このような半導体結晶層の特異成長が生じた場合、半導体発光素子のダイオード特性が低下し、リーク電流が大きくなる。以上から、存在確率Zを所定の値以下とすることで、半導体結晶層のp−n接合界面のずれ、換言すればバンド図におけるバンドギャップのずれを抑制することが可能となり、これによりリーク電流をより良好に減少させることができることがわかる。
まず、図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の構成について説明する。図7Aは、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1を示す模式的な斜視図である。図7Aに示すように、光学基板(I)1は、概して平板形状を有している。光学基板(I)1は、基板本体11と、この基板本体11の一方の表面上に設けられた凹凸構造12と、を備えている。凹凸構造12は、互いに独立した複数の凸部13と、凸部13の間に設けられた連続した凹部14より構成される。複数の凸部13は、それぞれ所定の間隔をおいて配置されている。また、凹凸構造12は、基板本体11の厚み方向に配置される。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る光学基板(II)2の構成について説明する。図8Aは、本発明の第2の実施の形態に係る光学基板(II)2を示す模式的な斜視図である。図8Aに示すように、この光学基板(II)2は、基板本体21と、基板本体21の表面上に設けられた凹凸構造22と、を備えている。凹凸構造22は、互いに独立した複数の凹部23と、凹部23の間に設けられた連続した凸部24より構成される。凹凸構造22は、基板本体21の厚み方向に配置され、陥没する複数の凹部23を含む。複数の凹部23は、互いに独立し、それぞれ所定の間隔をおいて配置されている。
上記説明した光学基板(I)1、(II)2においては、基板本体11、21の表面を加工し凹凸構造12、22を設けても、基板本体11、21の表面上に別途凹凸構造12、22を設けてもよい。
例えば、サファイア基板を加工すれば、基板本体11、21及び凹凸構造12、22は共にサファイアとなる。また、例えば、サファイア基板/n型半導体層/発光層/p型半導体層/透明導電膜から構成される積層体の、透明導電膜を加工すれば、凹凸構造12、22は透明導電膜となる。これらは、図7A及び図8Aに例示した状態である。
例えば、サファイア基板/n型半導体層/発光層/p型半導体層/透明導電膜から構成される積層体の、透明導電膜に別途凹凸構造12、22を設けることもできる。これは、図7B及び図8Bに例示した状態である。この場合、透明導電膜と凹凸構造の材質は同一であっても異なっていてもよい。
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第1及び第2の実施の形態に係る光学基板(I)1、(II)2の凹凸構造12、22の構成について詳細に説明する。図9は、図7A及び図7B中の一点鎖線III−IIIに沿う垂直断面図であり、凹凸構造12の構成を模式的に示している。また、図10は、図8A及び図8Bの一点鎖線IV−IVに沿う垂直断面図であり、凹凸構造22の構成を模式的に示している。
●光学基板(I)1
まず、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1について説明する。図9に示すように、この断面において、複数の凸部131、132、133、134が互いに間隔をおいて並んでいる。各凸部131〜134の間は、凹部14により連続的につながっている。
以下、図9中に示す各種記号と用語の定義について説明する。
●Scv
図9に示す記号Scvとは、凸部平均位置を示している。凸部は、基板本体11の厚み方向に配置される。凸部平均位置Scvは、凹凸構造12の凸部131〜134の凸部頂点13aの面内平均位置を意味しており、基板本体11の面方向と平行な面である。
凸部平均位置Scvは、以下の定義に従って求める。まず、光学基板(I)1の凹凸構造12が形成された表面(以下、凹凸構造面という)上に、基板本体11の主面と平行な50μm×50μm角の領域をとる。次に、該50μm×50μm角の領域を、互いに重ならない10μm×10μm角の領域にて25分割する。次に、25個存在する10μm×10μmの領域から任意に5つの領域を選択する。ここでは、選択された10μm×10μm角の領域を領域A、領域B、領域C、領域D及び領域Eとする。その後、領域Aをより高倍率に観察し、少なくとも100個の凸部13が鮮明に観察されるまで拡大する。続いて、観察される凸部13から任意に10個の凸部13を選び出し、それぞれの凸部13の高さを求める。領域Aより測定された10個の凸部13の中で最大の高さをhaとする。領域B、領域C、領域D及び領域Eについても、領域Aと同様の操作を行い、hb、hc、hd及びheを求める。図9に示す凸部平均位置Scvは、以下に説明する凹部平均位置Sccよりも上方、換言すれば凹部平均位置Sccよりも凸部13の頂点13aのある方向に、(ha+hb+hc+hd+he)/5に相当する距離移動した位置である。なお、各凸部13の頂点13aは、光学基板(I)1の断面に対する走査型電子顕微鏡を用いた観察、光学基板(I)1の凹凸構造面に対する原子間力顕微鏡を用いた観察、或いは光学基板(I)1の表面に対する走査型電子顕微鏡観察においてTilt(傾斜)を利用した測定により決定することができる。
図9に示すように複数の凸部131〜134の高さは、主に同じ高さであるが均一ではなく、ところどころに高さが低い第2の凸部133が混在している。図9においては、凸部131〜134の凸部平均位置Scvは、第1の凸部131、132、134の凸部13の頂点13aよりも低い位置になっている。これは、上記定義から、第1の凸部131、132、134の高さに分布のある場合を示している。一方で、図示はしないが、第1の凸部131、132、134の高さに分布のある場合、凸部平均位置Scvは、第1の凸部131、132、134の頂点13aよりも僅かに上方に位置することもある。また、これも図示しないが、第1の凸部131、132、134の高さが略均又は均等である場合、凸部平均位置Scvは、凸部131、132、134の頂点13aと略一致又は完全に一致する。
●Scc
図9に示す記号Sccは、凹部平均位置を示している。凹部平均位置Sccは、凹凸構造12の凹部14の凹部頂点14aの面内平均位置を意味しており、光学基板(I)1の面方向と平行な面である。凹部14は互いに連続しており、凹部14により凸部131〜134は互いに隔てられている。凹部平均位置Sccは、10点の凹部頂点14aの平均により求めることが好ましい。なお、各凹部14の頂点14aは、光学基板(I)1の断面に対する走査型電子顕微鏡を用いた観察、或いは、光学基板(I)1の凹凸構造面に対する原子間力顕微鏡を用いた観察により決定することができる。また、本明細書における平均は、相加平均を意味する。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。また、観察測定された凹部平均位置Sccよりも凸部13の頂点13aに向かって、(ha+hb+hc+hd+he)/5に相当する距離移動した位置が、凸部平均位置Scvである。
●lcv
また、図9に示す記号lcvは、凸部平均位置Scvにより形成される平面上の線分を示している。従って、線分lcvは、基板本体11の面方向と平行な面である。
●Have
また、図9中に示す記号Haveは、平均凸部高さを示している。平均凸部高さHaveとは、凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの間の距離である。従って、平均凸部高さHaveは、凸部平均位置Scvを求める際に算出した(ha+hb+hc+hd+he)/5である。
●hn
図9中に示す記号hnは、各凸部131〜134の凸部高さを示す。凸部高さhnは、凹部平均位置Sccにおける各凸部131〜134の底部の中心13bと凸部13の頂点13aとの間の距離を意味する。即ち、凸部高さhnは、凹部平均位置Sccを基準とした各凸部131〜134の頂点13aの高さに相当する。なお、例えば、光学基板(I)1の厚み方向と、凸部13の底部の中心13bと凸部13の頂点13aと、を結ぶ線分が平行でない場合、各凸部13の高さhnを次のように定義する。凸部132において示すように、まず、光学基板(I)1の厚み方向に平行な線分と、凸部132の輪郭と、の交点をXとする。次に、交点Xを通る前記線分と凹部平均位置Sccと、の交点をYとする。該線分を凹部平均位置Scc内にて面方向に平行移動させた場合、交点Xと交点Yと、の距離は変化する。交点Xと交点Yと、の距離の最大値がhnである。
●φcv
図9中に示す記号φcvは、凹部平均位置Sccにおける第1の凸部131、132、134の底部の幅を示している。ここで、底部の幅φcvは次のように定義する。凸部134において示すように、まず、凸部134の底部の輪郭上の任意の点Eを設定する。次に、該輪郭上の点Eとは異なる任意の点Fを設定する。点Eを固定し、点Fを該輪郭上にて移動させた場合に、点Eと点Fとの距離が最大になる時の距離を底部の幅φcvとする。また、任意に10個の凸部13を選択し、各凸部13について底部の幅φcvを求め、それらの相加平均したものが、底部の幅の平均φcv−aveである。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
●tcv
図9中に示す記号tcvは、線分lcv上において第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132及び第1の凸部134間の輪郭同士の最短距離を示している。即ち、記号tcvは、第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132、134の、線分lcv上における距離を意味する。図9においては、(1)まず、凸部平均位置Scvで構成される平面内の線分lcvは、複数の第1の凸部131、132及び134を横切る。ここで、一つの第1の凸部132と線分lcvとの交点を、図9中A及びBで示す。(2)次に、この第1の凸部132と線分lcv上にて第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部134と、線分lcvとの交点を、図9中C及びDで示す。(3)線分lcvを一方向から見たときに、各交点はA、B、C、Dの順に配列しているが、これらのうち交点Bと交点Cとの距離をtcvと定義している。また、任意に5つの第2の凸部133に着目し、それぞれの第2の凸部133に対して任意に5点のtcvを測定し、これらの相加平均値、即ち25点の相加平均値をtcv−aveとして定義する。ここで、tcv−aveは第2の凸部の集合する大きさを表す尺度となり、特にtcv−aveは、光学基板の断面を走査型電子顕微鏡により観察した場合に測定が容易な距離である。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。なお、距離tcv及びその相加平均値tcv−aveは、凸部平均位置Scvが、第1の凸部131、132、134の頂点13aよりも僅かに上方に位置する場合は以下に説明する距離Tcv又はその相加平均値Tcv−aveとして定義される。
●Tcv
図9中に示す記号Tcvは、線分lcv上において第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132の頂点13aと第1の凸部134の頂点13aと、の最短距離を示している。即ち、記号Tcvは、第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132、134の、線分lcv上における間隔を意味する。なお、凸部平均位置Scvが、第1の凸部131、132、134の頂点13aよりも僅かに上方に位置する場合は、記号Tcvは、第1の凸部132の頂点13aを通り光学基板(I)1の厚み方向に平行な線分と線分lcvと、の交点(J)と、第2の凸部133を間において第1の凸部132に隣接する第1の凸部134の頂点13aを通り光学基板(I)1の厚み方向に平行な線分と線分lcvと、の交点(K)と、最短距離となる。即ち、記号Tcvは、第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132、134の頂点13a間の、基板本体11の面方向に平行な面内における間隔を意味する。また、任意に5つの第2の凸部133に着目し、各第2の凸部133に対して任意に5点のTcvを測定し、これらの相加平均値、即ち25点の相加平均値をTcv−aveとして定義する。ここで、Tcv−aveは第2の凸部の集合する大きさを表す尺度となり、特にTcv−aveは、光学基板(I)1の表面を走査型電子顕微鏡或いは原子間力顕微鏡により観察した場合に測定が容易な距離である。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
●P
図9中に示すPは、複数の第1の凸部131、132、134のうち、第2の凸部133を介することなく、互いに隣接する2つの第1の凸部131、132の最短の間隔である。平均間隔Paveについては後で詳述する。
●第1の凸部と第2の凸部の区別
第1の凸部131、132、134と、これらよりも高さの低い第2の凸部133との区別について説明する。本実施の形態に係る凹凸構造12においては、図9に示すように、複数の凸部131〜134の凸部高さhnが均一ではなく、図9中に示す第2の凸部133のように、ほぼ同一の凸部高さを有する凸部131、132、134よりも凸部高さhnが低い、言い換えれば、平均凸部高さHaveに比べて凸部高さhnが低い凸部(以下、極小凸部という)が所定の確率で存在する。ここで、極小凸部を第2の凸部、極小凸部に相当しない凸部を第1の凸部として定義する。凸部高さhnが、凹凸構造12の凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの距離に相当する平均凸部高さHaveに対して下記式(2)を満たす凸部を極小凸部として定義する。なお、下記式(2)を満たすか否かは、光学基板の断面に対する走査型電子顕微鏡観察或いは、光学基板(I)1の凹凸構造12に対する原子間力顕微鏡観察により判断することができる。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
式(2)
0.6Have≧hn≧0
上記定義より、第2の凸部とは、その高さhnが平均凸部高さHaveよりも低い凸部のことである。即ち、第2の凸部は、一定の凸部高さであっても、複数の第2の凸部の高さが分布を有していてもよい。同様に、第1の凸部高さも、一定であっても、複数の第1の凸部の高さが分布を有していてもよい。
●光学基板(II)
次に、図8に示す本発明の第2の実施の形態に係る光学基板(II)2について図10を参照して説明する。図10に示すように、光学基板(II)2の断面では、複数の凹部231〜234が互いに独立して並んでいる。各凹部231〜234の間には凸部24が存在し、各凹部231〜234を互いに分離している。
以下、図10中に示す各種記号と用語の定義について説明する。
●Scv
図10中の記号Scvは、凸部24の凸部平均位置を示している。凸部平均位置Scvは、凹凸構造22の凸部24の凸部24の頂点24aの面内平均位置を意味しており、基板本体21の面方向に平行な面である。凸部平均位置Scvは、10点の頂点24aの平均により求めることが好ましい。凸部平均位置Scvは、第1の実施の形態と同様に定義される。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
●Scc
図10中に示す記号Sccは、複数の凹部231〜234の凹部平均位置を示している。凹部平均位置Sccは、凹凸構造22の凹部231〜234の頂点23aの面内平均位置を意味しており、基板本体21の面方向と平行な面である。凹部平均位置Sccは、以下の定義に従って求める。まず、光学基板(II)2の凹凸構造22が形成された表面上に、基板本体21の主面と平行な50μm×50μm角の領域をとる。次に、該50μm×50μm角の領域を、互いに重ならない10μm×10μm角の領域にて25分割する。次に、25個存在する10μm×10μmの領域から任意に5つの領域を選択する。ここでは、選択された10μm×10μm角の領域を領域A、領域B、領域C、領域D及び領域Eとする。その後、領域Aをより高倍率に観察し、少なくとも100個の凹部23が鮮明に観察されるまで拡大する。続いて、観察される凹部23から任意に10個の凹部を選び出し、それぞれの凹部23の深さを求める。領域Aより測定された10個の凹部23の中で最大の深さをdaとする。領域B、領域C、領域D及び領域Eについても、領域Aと同様の操作を行い、db、dc、dd及びdeを求める。凹部平均位置Sccは、既に説明した凸部平均位置Scvよりも下方、換言すれば凸部平均位置Scvよりも凹部23の底部に向かって(da+db+dc+dd+de)/5に相当する距離移動した位置である。
図10に示すように、複数の凹部231〜234の深さは主に同じであるが均一ではなく、ところどころに深さが浅い第2の凹部233が混在している。この為、凹部231〜234の凹部平均位置Sccは、第1の凹部231、232、234の頂点23aよりも浅い位置になっている。これは、上記定義から、第1の凹部の高さに分布のある場合を示している。一方で、図示はしないが、第1の凹部の高さに分布のある場合、凹部平均位置Sccは、第1の凹部231、232、234の頂点23aよりも僅かに下方に位置することもある。また、これも図示しないが、第1の凹部の深さが略均又は均等である場合、凹部平均位置Sccは、第1の凹部231、232、234の頂点23aと略一致又は完全に一致する。
●lcc
図10中に示す記号lccは、凹部平均位置Sccにより形成される平面上の線分を示す。従って、線分lccは、基板本体21の面方向に平行である。
●Dave
図10中に示す記号Daveは、凹部231〜234の平均凹部深さを示す。平均凹部深さDaveは、凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの間の距離である。即ち、凹部平均位置Sccを求める際に算出した(da+db+dc+dd+de)/5である。
●dn
図10中に示す記号dnは、複数の凹部231〜234の凹部深さを示す。凹部深さdnは、凸部平均位置Scvにおける各凹部231〜234の開口部の中心23bと凹部231〜234の頂点23aとの間の距離を意味する。即ち、凹部深さdnは、凸部平均位置Scvを基準とした場合の各凹部231〜234の深さである。なお、光学基板(II)2の厚み方向と、凹部231〜234の開口部の中心23bと頂点23aと、を結ぶ線分が平行でない場合、各凹部231〜234の深さdnを次のように定義する。凹部232において示すように、まず、光学基板(II)2の厚み方向に平行な線分と、ある凹部232の輪郭と、の交点をYとする。次に、交点Yを通る前記線分と凸部平均位置Scvと、の交点をXとする。該線分を凸部平均位置Scv内にて面方向に平行移動させた場合、交点Xと交点Yと、の距離は変化する。交点Xと交点Yと、の距離の最大値がdnである。
●φcc
図10中に示す記号φccは、凸部平均位置Scvにおける第1の凹部231、232、234の開口部の幅を示している。ここで、開口部の幅φccは次のように定義する。凹部234において示すように、まず、凹部234の開口部の輪郭上の任意の点Eを設定する。次に、該輪郭上の点Eとは異なる任意の点Fを設定する。点Eを固定し、点Fを該輪郭上にて移動させた場合に、点Eと点Fとの距離が最大になる時の距離を開口部の幅φccとする。また、任意に10個の凹部23を選択し、各凹部23について開口部の幅φccを求め、それらの相加平均したものが、開口部の幅の平均φcc−aveである。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
●tcc
図10中に示す記号tccは、線分lcc上における隣接する第1の凹部232及び234間の輪郭同士の最短距離を示している。即ち、記号tccは、第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部の、線分lcc上における距離を意味する。図10において、(1)まず、凹部平均位置Sccで構成される平面内の線分lccは、複数の第1の凹部231、232及び234を横切る。ここで、一つの第1の凹部232と線分lccとの交点を、図10中A及びBで示す。(2)次に、この第1の凹部232と線分lcc上にて第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部234と、線分lccとの交点を、図10中C及びDで示す。(3)線分lccを一方向から見たときに、各交点はA、B、C、Dの順に配列しているが、これらのうち交点Bと交点Cとの距離をtccと定義している。また、任意に5点の第2の凹部233に着目し、それぞれの第2の凹部233に対して任意に5点のtccを測定し、これらの相加平均値、即ち25点の相加平均値をtcc−aveとして定義する。ここで、tcc−aveは第2の凹部233の集合する大きさを表す尺度となり、特にtcc−aveは、光学基板(II)2の断面を走査型電子顕微鏡により観察した場合に測定が容易な距離である。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。なお、距離tcc及びその相加平均値tcc−aveは、凹部平均位置Sccが、第1の凹部231、232、234の頂点23aよりも僅かに下方に位置する場合は以下に説明する距離Tcc又はその相加平均値Tcc−aveとして定義される。
●Tcc
図10中に示す記号Tccは、線分lcc上において第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部232の開口部中央部と第1の凹部234の開口部中央部と、の最短距離を示している。即ち、記号Tccは、第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部232、234の、線分lcv上における間隔を意味する。なお、凹部平均位置Sccが、第1の凹部231、232、234の頂点23aよりも僅かに下方に位置する場合は、記号Tccは、第1の凹部232の開口部中央部を通り光学基板(II)2の厚み方向に平行な線分と線分lccと、の交点(L)と、第2の凹部233を間において第1の凹部232に隣接する第1の凹部234の開口部中央部を通り光学基板(II)2の厚み方向に平行な線分と線分lccと、の交点(M)と、最短距離となる。即ち、記号Tccは、第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部232、234の開口部中央部間の、基板本体21の面方向に平行な面内における間隔を意味する。また、任意に5点の第2の凹部233に着目し、それぞれの第2の凹部233に対して任意に5点のTccを測定し、これらの相加平均値、即ち25点の相加平均値をTcc−aveとして定義する。ここで、Tcc−aveは第2の凹部233の集合する大きさを表す尺度となり、特にTcc−aveは、光学基板の表面を走査型電子顕微鏡或いは原子間力顕微鏡により観察した場合に測定が容易な距離である。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
●P
図10中に示すPは、複数の第1の凹部231、232、234のうち、互いに隣接する2つの間隔である。平均間隔Paveについては後で詳述する。
●第1の凹部と第2の凹部の区別
第1の凹部と第1の凹部よりも深さの浅い第2の凹部の区別について説明する。第2の実施の形態に係る凹凸構造22においては、図10に示すように、複数の凹部231〜234の凹部深さdnが均一ではなく、図10中に示す凹部233のように、ほぼ同一の深さを有する複数の凹部231、232、234よりも凹部深さdnが浅い、言い換えれば、平均凹部深さdに比べて凹部深さdnが浅い凹部(以下、極小凹部という)が所定の確率で存在する。ここで、極小凹部を第2の凹部、極小凹部に相当しない凹部を第1の凹部として定義する。凹部深さdnが、凹凸構造22の凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの距離に相当する凹部平均深さDaveに対して下記式(6)を満たす凹部を、極小凹部として定義する。なお、下記式(6)を満たすか否かは、光学基板(II)2の断面に対する走査型電子顕微鏡観察或いは、光学基板の凹凸構造22に対する原子間力顕微鏡観察により判断することができる。また、上記観察は、以下に説明する範囲内にて行うものと定義する。
式(6)
0.6Dave≧dn≧0
上記定義より、第2の凹部233とは、その深さdnが平均凹部深さDaveよりも浅い凹部23のことである。即ち、第2の凹部233は、一定の凹部深さであっても、複数の第2の凹部の深さが分布を有していてもよい。同様に、第1の凹部231、232、234の深さも、一定であっても、複数の第1の凹部の深さが分布を有していてもよい。
●平均間隔Pave
次に、上述の光学基板(I)1の第1の凸部131、132、134及び第2の光学基板(II)2における第1の凹部231、232、234の平均間隔Paveについて説明する。なお、以下の説明では、便宜上、光学基板(I)1の凸部13を例示して説明するが、光学基板(II)2の凹部23の間隔も同様である。
既に説明したように光学基板(I)1、(II)2においては、複数の第1の凸部131、132、134(凹部231、232、234)と、第1の凸部131、132、134(凹部231、232、234)よりも高さの高い(深さの浅い)第2の凸部133(凹部233)が混在している。第2の凸部(凹部)は、既に説明した極小凸部(凹部)である。凹凸構造(I)12、(II)22の平均間隔Paveは、第1の凸部13(凹部23)について定義される。
図11に示すように、凹凸構造12が、複数の凸部13が不均一に配置され、且つ、第2の凸部51が混在した構造である場合、ある第1の凸部A1の中心とこの第1の凸部A1から最も近くにある第1の凸部B1の中心との間の距離PA1B1を、間隔Pと定義する。しかし、この図11に示すように、複数の凸部13は不均一に配置され、選択する第1の凸部により間隔が異なる場合は、任意の複数の第1の凸部A1,A2…ANを選択し、選択されたそれぞれの第1の凸部A1,A2…ANに最近接する第1の凸部B1,B2…BNとの間の間隔PA1B1、PA2B2〜PANBNをそれぞれ測定し、それらの相加平均値を、凹凸構造12の平均間隔Paveとする。即ち、(PA1B1+PA2B2+…+PANBN)/N=Pと定義する。なお、図11においては複数の凸部13は不均一に配置されているが、三角格子状、四角格子状や六方格子状、これらの配列の格子状数が規則的に変動する配列の配列であってもよい。
また、図12に示すように、凹凸構造12がラインアンドスペース構造の場合、第2の凸部61の凸部の長さ(第2の凸部の長軸方向の長さ)は、第1の凸部の長さ以下となる。ここである第1の凸ラインの中に部分的に第2の凸ラインが含まれる場合であっても、間隔Pは、ある第1の凸ラインA1の中心線と、この第1の凸ラインB1から最も近くにある第1の凸ラインB1の中心線との間の最短距離PA1B1として定義する。しかし、この図12に示すように、選択する凸ラインにより間隔が異なる場合には、任意の複数の第1の凸ラインA1、A2…ANを選択し、選択されたそれぞれの第1の凸ラインA1、A2…ANに隣接する第1の凸ラインB1、B2…BNに対してそれぞれ間隔を測定し、それらの相加平均値を、凹凸構造12の平均間隔Paveとする。即ち、(PA1B1+PA2B2+…+PANBN)/N=Pと定義する。
なお、上述の相加平均値を求める際にサンプルとして選択する第1の凸部の数Nが10点であることが好ましい。
●存在確率Z
次に、第2の凸部又は第2の凹部の存在確率Zについて説明する。ここで、第2の凸部又は第2の凹部の存在確率を実際の観察より求める際に、上記説明した用語を使用する。即ち、以下に説明する第2の凸部又は第2の凹部の存在確率Zを算出する測定範囲内にて、上記説明した用語は定義される。
1.凹凸構造を走査型電子顕微鏡或いは原子間力顕微鏡により観察し、第1の凸部(又は第1の凹部、以下同様)と第2の凸部(又は第2の凹部、以下同様)と、を切り分ける。第1の凸部と第2の凸部と、の区別は既に説明した通りである。ここで、光学基板の凹凸構造面側を直接観察可能な場合、凹凸構造に対して走査型電子顕微鏡観察又は原子間力顕微鏡観察を行い、第2の凸部を判別する。一方で、光学基板の凹凸構造上に半導体結晶層が設けられている場合で半導体結晶層を除去できない場合は、光学基板の断面に対して走査型電子顕微鏡観察を行い、第2の凸部を判別する。
2.複数の第1の凸部から任意に10点の第1の凸部を選び出し、間隔Pを測定する。測定された10点の間隔Pの相加平均値が平均間隔Paveである。なお、間隔Pは、第1の凸部のうち、第2の凸部を間におくことなく、互いに隣接する2つの第1の凸部の最短の間隔である。
3.算出した平均間隔Paveの10倍角の領域、即ち、10Pave×10Pave分の領域に対する観察から、任意に5つの第2の凸部を選択する。ここで、10Pave×10Pave分の領域内に、平均間隔Paveを測定した領域が必ず含まれるものとする。また、選択する第2の凸部は、10Pave×10Pave内に、その輪郭が全て収まっているものに限る。また、平均間隔Paveが大きい場合であって、10Pave×10Paveの範囲を観察した場合に、各凸部が不明瞭となり第2の凸部の選択やTcv(又はtcv)の測定に支障をきたす場合、例えば5Pave×5Paveの領域を観察し4つを繋ぎあわせることで10Pave×10Paveの領域を観察することができる。選択された各第2の凸部に対して、Tcv(又はtcv)を任意に5点測定する。即ち、選択された第2の凸部それぞれに対して、Tcv(又はtcv)を任意に5点測定するため、Tcv(又はtcv)の測定データは、25点集計されることとなる。得られたTcv(又はtcv)の25点相加平均値がTcv−ave(又はtcv−ave)である。なお、10Pave×10Pave分の領域内に、第2の凸部がN個(<5)のみ存在する場合、選択されたN個の第2の凸部に対して、Tcv(又はtcv)を任意に5点測定する。即ち、選択された第2の凸部それぞれに対して、Tcv(又はtcv)を任意に5点測定するため、Tcv(又はtcv)の測定データは、5×N点集計されることとなる。得られたTcv(又はtcv)の相加平均値がTcv−ave(又はtcv−ave)である。なお、tcvは、線分lcv上において第2の凸部を間において隣接する第1の凸部間の輪郭同士の最短距離であり、特に、光学基板を断面より走査型電子顕微鏡を用い観察する場合、又は表面を原子間力顕微鏡を用い観察する際に有用である。一方で、Tcvは、第2の凸部133を間において隣接する第1の凸部132、134の頂点13a間の、基板本体11の面方向に平行な面内における最短距離であり、光学基板を表面より観察する際に使用する。
4.光学基板を表面より観察している場合、算出されたTcv−ave(又はtcv−ave)の10倍角分の領域、即ち10Tcv−ave×10Tcv−ave(又は、10tcv−ave×10tcv−ave)分の領域内に存在する第1の凸部の個数(N1)と第2の凸部の個数(N2)をカウントし、第2の凸部の存在確率Zを算出する。ここで、10Tcv−ave×10Tcv−aveの領域内には、必ずTcv−aveを算出するのに使用した領域が含まれる。また、10Tcv−ave×10Tcv−ave内にてカウントされる第1の凸部及び第2の凸部は、10Tcv−ave×10Tcv−ave内に完全にその輪郭が収まる凸部とする。存在確率Zは、N2/(N1+N2)として与えられる。なお、本明細書においては、(N2/N2)/[(N1+N2)/N2]=1/[1+(N1/N2)]であることから、存在確率Zの分子を1に統一して表記している。また、Tcv−aveが大きい場合であって、10Tcv−ave×10Tcv−aveの範囲を観察した場合に、各凸部が不明瞭となり第1の凸部及び第2の凸部の個数カウントに支障をきたす場合、例えば5Tcv−ave×5Tcv−aveの領域を観察し4つを繋ぎあわせることで10Tcv−ave×10Tcv−aveの領域を観察することができる。
上記説明した第2の凸部の存在確率Zの算出方法を図面を参照し説明する。なお、以下の説明においては、光学基板の凹凸構造が複数の凸部より構成される場合を代表して説明するが、凹凸構造が複数の凹部より構成される場合も同様である。図13〜15は、本実施の形態に係る光学基板を凹凸構造面側より観察した場合の模式図である。図13〜15は、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用い観察を行うことで得られる像の模擬図である。
1.まず、図13に示すように、第1の凸部71と第2の凸部72とを区別する。走査型電子顕微鏡を用いた観察においては、高さ方向(立体方向)の情報は得られないため、観察する際に傾斜(Tilt)をかけることで、第1の凸部71と第2の凸部72とを判別できる。一方で、原子間力顕微鏡を用い観察を行う場合は、探針(プローブ)が高さ方向(立体方向)の情報も検知するため、得られた像から第1の凸部71と第2の凸部72と、を区別することができる。図13においては、第2の凸部72が非規則的に配置されているが、第2の凸部72の配置はこれに限定されず規則的に配置することもできる。
2.次に、複数の第1の凸部71から任意に10点の第1の凸部(図13中、1〜10の番号のついた第1の凸部71)を選び出す。選び出した第1の凸部71(1〜10)のそれぞれに対し、間隔Pを測定する(図13中、P1〜P10)。測定された10点の間隔Pの相加平均値、即ち(P1+P2+…+P10)/10が平均間隔Paveである。
3.図14に示すように、算出した平均間隔Paveの10倍角の領域73、即ち、10Pave×10Pave分の領域73に対する観察から、任意に5つの第2の凸部72を選び出す。ここで、10Pave×10Pave分の領域73内に、平均間隔Paveを測定した領域が必ず含まれるものとする。また、選び出す第2の凸部72は、10Pave×10Pave分の領域73内に、その輪郭が全て収まっているものに限る。即ち、図14に示すように、平均間隔Paveを選び出すのに使用した領域が全て10Pave×10Pave内に観察され、且つ、10Pave×10Paveの範囲内に輪郭が完全におさまる第2の凸部から任意に5つの第2の凸部72(図14中、1〜5の番号のついた第2の凸部72)を選び出す。次に、選び出した第2の凸部72(1〜5)のそれぞれに対して、Tcv(又はtcv)を任意に5点測定する。例えば、原子間力顕微鏡観察により得られるデータから、Tcv(又はtcv)を測定することができる。また、走査型電子顕微鏡観察に傾斜(Tilt)を作用させ第1の凸部71と第2の凸部72とを区別することでTcvを測定できる。ここでは便宜上Tcvを測定したものとする。即ち、選び出された第2の凸部72(1〜5)それぞれに対して、Tcvを任意に5点測定する。図14においては、番号2のついた第2の凸部72と番号5のついた第2の凸部72に対して測定されたTcvを代表して図示している。図14に示すように、選び出した第2の凸部72を間において隣接する第1の凸部71のTcvを5つずつ測定する。例えば、番号2のついた第2の凸部72については、Tcv21〜Tcv25が測定され、番号5のついた第2の凸部72については、Tcv51〜Tcv55が測定されている。同様に、番号1、3、4のついた第2の凸部72についてもそれぞれTcvを5つずつ測定する。この為、Tcvの測定データは、25点集計されることとなる。得られたTcv25点の相加平均値がTcv−aveである。
4.図15に示すように、算出されたTcv−ave10倍角分の領域、即ち10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内に存在する第1の凸部の個数(N1)と第2の凸部の個数(N2)をカウントする。この時、図15に例示するように、10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内には、必ずTcv−aveを算出するのに使用した領域73が含まれる。また、10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内にてカウントされる第1の凸部71及び第2の凸部72は、10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内に完全にその輪郭が収まるものとする。図15においては、第1の凸部71の個数N1は433個であり、第2の凸部72の個数N2は52個である。よって、第2の凸部72の存在確率Zは、N2/(N1+N2)=52/(52+433)=1/9.3として与えられる。
図16及び図17は、本実施の形態に係る光学基板を凹凸構造面側より観察した場合の模式図である。図16及び図17は、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用い観察を行うことで得られる像の模擬図であり、図13〜図15に例示した凹凸構造に比べ、第2の凸部が多く、且つ集合している場合である。このような場合であっても、上記説明した定義に沿い、存在確率Zを求める。
1.まず、図16に示すように第1の凸部71と第2の凸部72とを区別する。走査型電子顕微鏡を用いた観察においては、高さ方向(立体方向)の情報は得られないため、観察する際に傾斜(Tilt)をかけることで、第1の凸部71と第2の凸部72と、を判別できる。一方で、原子間力顕微鏡を用い観察を行う場合は、探針(プローブ)が高さ方向(立体方向)の情報も検知するため、得られた像から第1の凸部71と第2の凸部72と、を区別することができる。図16においては、第2の凸部72が非規則的に配置されているが、第2の凸部72の配置はこれに限定されず規則的に配置することもできる。
2.次に、複数の第1の凸部71から任意に10点の第1の凸部(図16中、1〜10の番号のついた第1の凸部71)を選び出す。選び出した第1の凸部71のそれぞれに対し、間隔Pを測定する(図16中、P1〜P10)。測定された10点の間隔Pの相加平均値、即ち(P1+P2+…+P10)/10が平均間隔Paveである。
3.図17に示すように、算出した平均間隔Paveの10倍角の領域73、即ち、10Pave×10Pave分の領域73に対する観察から、任意に5つの第2の凸部を選び出す。ここで、10Pave×10Pave分の領域73内に、平均間隔Paveを測定した領域が必ず含まれるものとする。また、選び出す第2の凸部72は、10Pave×10Pave内に、その輪郭が全て収まっているものに限る。即ち、図17に示すように、平均間隔Paveを選び出すのに使用した領域が全て10Pave×10Pave内に観察され、且つ、10Pave×10Paveの範囲内に輪郭が完全におさまる第2の凸部72から任意に5つの第2の凸部72(図17中、番号1〜5のついた第2の凸部72)を選び出す。次に、選び出した第2の凸部のぞれぞれに対して、Tcv又はtcvを任意に5点測定する。例えば、原子間力顕微鏡観察により得られるデータから、Tcv又はtcvを測定することができる。また、走査型電子顕微鏡観察に傾斜(Tilt)を作用させ第1の凸部71と第2の凸部72とを区別することでTcvを測定できる。ここでは便宜上Tcvを測定したものとする。即ち、選択された第2の凸部72のそれぞれに対して、Tcvを任意に5点測定する。図17においては、番号3のついた第2の凸部72に対して測定されたTcvを代表して図示している。図17に示すように、選択した第2の凸部72を間において隣接する第1の凸部71のTcvを5つずつ測定する。例えば、番号3のついた第2の凸部72については、Tcv31〜Tcv35が測定されている。同様に、番号1、2、4、5のついた第2の凸部72についてもそれぞれTcvを5つずつ測定する。この為、Tcvの測定データは、25点集計されることとなる。得られたTcv25点の相加平均値がTcv−aveである。
4.図18は、本実施の形態に係る光学基板を微細凹凸面側から観察して凸部の個数をカウントするときに使用する領域を示す模式図である。図18に示すように、算出されたTcv−ave10倍角分の領域74、即ち10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内に存在する第1の凸部の個数(N1)と第2の凸部の個数(N2)をカウントする。このとき、図18に例示するように、10Tcv−ave×10Tcv−aveの領域74内には、必ずTcv−aveを算出するのに使用した領域73が含まれる。また、10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内にてカウントされる第1の凸部及び第2の凸部は、10Tcv−ave×10Tcv−ave分の領域74内に完全にその輪郭が収まるものとする。図18においては、第1の凸部の個数N1は2944個であり、第2の凸部の個数N2は498個である。よって、第2の凸部の存在確率Zは、N2/(N1+N2)=498/(498+2944)=1/6.9として与えられる。特に、図18のように、Tcv−aveが大きく、10Tcv−ave×10Tcv−aveの範囲を観察した場合に、各凸部が不明瞭となり第1の凸部及び第2の凸部の個数カウントに支障をきたす場合、例えば、図18に示すように5Tcv−ave×5Tcv−aveの領域76を観察し、4つを繋ぎあわせることで10Tcv−ave×10Tcv−aveの領域74を観察することできる。
●第1の実施の形態に係る光学基板(I)
以下、上述の記号及び用語の定義を用いて、図7Aに示す本発明の第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の凹凸構造12の特徴について説明する。まず、凹凸構造12において、平均間隔Paveは、下記式(1)を満たす。
式(1)
50nm≦Pave≦1500nm
平均間隔Paveが、50nm以上であることにより、光学的散乱性(光回折又は光散乱)が高まり光取り出し効率LEEが向上し、1500nm以下であることにより、半導体発光素子の内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEが向上するからである。また、平均間隔Paveが1500nm以下であることにより、第2の凸部の存在確率Zが大きな場合であっても、第2の凸部の集合する大きさ、また、第2の凸部の集合同士の間隔を大きく保つことが可能であるため、半導体結晶層の特異成長を抑制することができ、この為、リーク電流を良好に保つことができる。
平均間隔Paveが50nm以上であることにより、第1の凸部の第2の凸部を間においた隣接距離(Tcv、又はtcv)が光学的に大きくなる。平均間隔Paveが50nmといった波長よりも十分に小さな場合、光からみて凹凸構造12は平均化されるため、凹凸構造12は平均の屈折率(平均化された屈折率)を有す薄膜として機能することとなる。即ち、半導体発光素子の発光光からみた場合、平均間隔Paveが50nm程度と小さい領域においては、凹凸構造12は平均化された屈折率を有す薄膜(平坦膜)として振る舞うため、光学的散乱性(光回折又は光散乱)は非常に小さくなり、この為、導波モードを乱す効果が小さくなる。即ち、光取り出し効率LEEを向上程度は小さくなる。しかしながら、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1においては、第1の凸部131、132、134と第2の凸部133とが混在する(図9参照)。このような場合、平均化された屈折率は、第1の凸部131、132、134中に分散する第2の凸部133に応じた乱れを形成すると考えられる。即ち、半導体発光素子の発光光は、恰も平均化された屈折率の分布に応じた物質が、恰も存在するかのように振る舞う。平均間隔Paveが50nm以上であることにより、上述の隣接距離(Tcv、又はtcv)が半導体発光素子の発光波長からみて適度な大きさとなる。即ち、上述した平均化された屈折率の分布が、半導体発光素子の発光波長からみて適度なスケールを有す分布(平均間隔Paveよりも大きな分布)となるため、該発光光は、平均化された屈折率の分布に応じた光学的散乱性(光散乱、又は光回折)を奏すこととなり、導波モードを乱すためのモード数が増加し、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。この効果をより発揮し、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、平均間隔Paveは、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、250nm以上が最も好ましい。
平均間隔Paveが1500nm以下であることにより、凹凸構造12の密度及び比表面積が向上する。これに伴い、半導体結晶層内部の転位を分散化することが可能となり、局所的及び巨視的な転位密度を低減することができるため、内部量子効率IQEを大きくすることができる。前記効果をより発揮する観点から、平均間隔Paveは、1000nm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることが最も好ましい。特に、550nm以下であることにより、第2の凸部の集合する大きさを小さくすることが可能となるため好ましく、400nm以下であることが最も好ましい。また、大きな比表面積により接触面積が大きくなるため、コンタクト抵抗を減少させ、電子注入効率EIEを向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、平均間隔Paveは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、550nm以下であることが最も好ましい。
即ち、上記範囲を満たすことにより、半導体結晶層中の転位を分散化すると共に転位密度を減少し内部量子効率IQEが向上し、同時に光学的散乱性(光回折又は光散乱)により導波モードを乱し光取り出し効率LEEを向上させることが可能となり、結果、半導体発光素子の外部量子効率EQEを向上させることができる。又は、上記範囲を満たすことにより、オーミックコンタクトの向上に伴い電子注入効率EIEが向上し、同時に光学的散乱性(光回折又は光散乱)により導波モードを乱し光取り出し効率LEEを向上させることが可能となり、結果、半導体発光素子の外部量子効率EQEを向上させることができる。
また、第1の実施の形態に係る凹凸構造12においては、図9に示すように、複数の凸部131〜134の凸部高さhnが均一ではなく、図9中に示す第2の凸部(極小凸部)133のように、ほぼ同一の凸部高さを有する第1の凸部131、132、134よりも凸部高さhnが低い、言い換えれば、平均凸部高さHaveに比べて凸部高さhnが低い極小凸部133が所定の存在確率Zで存在する。つまり、第1の実施の形態に係る凹凸構造12において、極小凸部133の凸部高さhnは、凹凸構造12の凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの距離に相当する平均凸部高さHaveに対して下記式(2)を満し、且つ、極小凸部133が存在する存在確率Zが、下記式(3)を満たすことを特徴とする。
式(2)
0.6Have≧hn≧0
式(3)
1/10000≦Z≦1/5
凸部高さhnが式(2)を満たす極小凸部133の存在により、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を担保した状態で、光学的散乱性(光回折又は光散乱)を付与することが可能となる。既に説明したように、内部量子効率IQEを向上させるためには、半導体結晶層内部の転位を分散化し、且つ転位密度を低減する必要があるが、そのためには、微小な平均間隔Paveが必要となる。一方で、半導体発光素子の光吸収によるロスを抑制し電子注入効率EIEを向上させるためには、微小な凹凸構造により比表面積を大きくし、オーミックコンタクトを向上させる必要がある。しかしながら、微小な平均間隔Paveを有す凹凸構造は、半導体発光素子の発光光にとっては、平均化された屈折率を有す薄膜として近似化される。この為、平均化された屈折率と半導体結晶層の屈折率差に応じた臨界角が決定され、導波モードが形成されることとなる。しかしながら、極小凸部133の存在により、平均化された屈折率は分布を有す。この場合、半導体発光素子の発光光は、平均化された屈折率の分布に応じた物質が恰もそこに存在するように振る舞うことができる。即ち、微小な平均間隔Paveの場合であっても、微小な平均間隔Paveよりも大きな構造が恰も存在するように振る舞うことが可能となる。また、半導体発光素子の発光波長の波長同程度以上且つナノスケールの微小な凹凸構造の場合、導波モードは光回折により乱されることとなる。しかしながら、極小凸部133を含むことにより、光回折のモード数を増加させると共に、モードに分散性を含めることができると考えられる。この為、導波モードは局所的には光回折により乱され、巨視的には光散乱により取り出されることとなるため、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。以上から、極小凸部133が存在することにより、半導体結晶層内部の転位を分散化すると共に転位密度を減少させ、内部量子効率IQEを向上させると共に、同時に、光学的散乱性により導波モードを見出し光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。また、極小凸部133が存在することにより、比表面積を増大させオーミック抵抗を低減し、電子注入効率EIEを向上させると共に、同時に、散乱性により導波モードを乱し光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
極小凸部133の凸部高さhnとしては、上記原理による光学的散乱性(光回折又は光散乱)をより発揮する観点から0.4Have≧hnを満たすことが好ましく、0.3Have≧hnを満たすことがより好ましく、0.1Have≧hnを満たすことが最も好ましい。なお、最も好ましい状態は、hnが0の場合である。なお、極小凸部133の高さhnが0の場合、極小凸部133と第1の凸部131、132、134と、を判別することは困難である。この場合、第1の凸部131、132、134の平均間隔Paveを使用し、3Pave×3Pave角の範囲をつくり、この範囲を移動させた時に観察される第1の凸部131、132、134の個数が減少した際の差分値分を極小凸部133として計上する。まず、3Pave×3Pave内が全て第1の凸部131、132、134により埋められる時の第1の凸部131、132、134の個数をカウントする。ここでは、Nmax個とする。次に、3Pave×3Paveの範囲を移動させ、第1の凸部131、132、134の数をカウントしていく。ここで、3Pave×3Pave内に第1の凸部131、132、134がNdec個カウントされたとする。また、同範囲にhn>0の極小凸部133がN2個カウントされたとする。ここで、Ndec+N2<Nmaxであれば、カウントできていない第2の凸部が存在することを意味する。即ち、Nmax−(Ndec+N2)がhn=0の第2の凸部である。
特に、式(2)を満たす極小凸部133の存在確率Zが、式(3)を満たすことにより、平均化された屈折率に薄膜内に存在する乱れ(散乱点数)或いは、光回折のモード数と分散性が増加すると考えられ、散乱性付与に基づく光取り出し効率LEE向上を実現できる。存在確率Zは、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与の観点から、1/3000≦Z≦1/10を満たすことが好ましく、1/1000≦Z≦1/10を満たすことがより好ましく、1/500≦Z≦1/10を満たすことが最も好ましい。特に、極小凸部133の存在確率Zが1/100以下であることで、導波モードを乱すモードの数が大きくなり、この為導波モードを乱す効果がより大きくなるため好ましい。最も好ましくは、1/60以下である。また、存在確率Zが1/5.5以上であれば、半導体結晶層の特性成長を抑制する効果が強まるため、リーク電流をより良好に保つことが可能となる。この観点から、存在確率Zは、1/10以上であることがより好ましい。
また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1においては、上述の距離tcv−aveが、第1の凸部の平均間隔Paveに対して、1.0Pave<tcv−ave≦9.5Paveを満たすことが好ましい。
図9に示すように、距離tcv−aveは、線分lcv上において極小凸部133を間において隣接する第1の凸部132及び凸部134間の輪郭同士の最短距離を示しているので、両者の間に存在する極小凸部133の大きさが、最大値9.5Pを超えないように制限されていることを示している。
距離tcv−aveが上記範囲を満たすことにより、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与に基づく光取り出し効率LEEの改善を維持した状態で、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを同時に改善することができる。距離tcv−aveが1.0Paveより大きいことで、第1の凸部131、132、134と極小凸部133との体積差が大きくなる。この為、平均化された屈折率の乱れ或いは光回折モードの分散性は顕著となり、半導体発光素子の発光光は、該乱れに応じた光学的散乱性を発現することとなり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。一方、距離tcv−aveが9.5Pave以下であることにより、半導体結晶層内部に発生する転位の、局所的密度を低下させることができるため、内部量子効率IQEを向上させることができる。また、距離tcv−aveが9.5Pave以下であることにより、比表面積を効果的に大きくできるため、オーミック抵抗が減少しオーミックコンタクトが良好となるため、電子注入効率EIEが向上する。距離tcv−aveとしては、この効果を一層発揮する観点から、1.0Pave≦tcv−ave≦7.5Paveを満たすことが好ましい。更に、距離tcv−aveは極小凸部133の集合する大きさを表す尺度である。ここで、極小凸部133が集合し、そのサイズが所定の値を超えた場合、半導体結晶層の特異成長に基づくp−n接合界面のずれが生じることがある。この場合、リーク電流特性が低下する。この観点も踏まえると、距離tcv−aveは、1.0Pave<tcv−ave≦4.5Paveを満たすことが好ましく、1.0Pave<tcv−ave≦3.0Paveを満たすことがより好ましく、1.0Pave<tcv−ave≦1.5Paveを満たすことが最も好ましい。
また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1において、極小凸部133の凸部高さhnが0.4Have≧hn≧0を満たし、存在確率Zが1/3000≦Z≦1/10を満たし、且つ、距離tcv−aveが1.0Pave<tcv−ave≦4.5Paveを満たすことが好ましい。この場合には、極小凸部133第1の凸部と極小凸部133との体積差が大きくなり、平均化された屈折率の局所的乱れ及び、極小凸部133における光学的散乱性(光回折又は光散乱)が大きくなり、ナノスケールにて強い散乱性を付与することが可能となる。同時に存在確率Zが上記範囲を満たすため、平均化された屈折率の薄膜に存在する散乱点数或いは光回折のモード数を増加させることが可能となり、総合的な散乱性の程度が向上するため、光取り出し効率LEEが大きくなる。さらに、距離tcv−aveが上記範囲を満たすことから、半導体結晶層内部の転位を分散化すると共に、局所的転位密度を低減することが可能となり、ナノ構造付与による内部量子効率IQE改善の効果を発揮することができる。また、距離tcv−aveが上記範囲を満たすために、ナノスケールの凹凸構造においても効果的に比表面積が大きくなるため、オーミックコンタクトが良好となり、電子注入効率EIEが向上する。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEを同時に向上させることが可能となり、LEDの外部量子効率EQEを向上できる。
さらに、この場合において、極小凸部133の高さhnが0.1Have≧hn≧0を満たすことが、ナノスケールでの光学的散乱性(光回折又は光散乱)の付与の観点から好ましい。この場合においても、存在確率及び距離tcv−aveの範囲を満たすため、ナノスケールにおいて強められた散乱性により、総合的な光学的散乱性(光回折又は光散乱)による光取り出し効率LEEを向上させると共に、高い内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを実現することができる。
第1の実施の形態に係る光学基板(I)1においては、上述の距離Tcv−aveが、第1の凸部131、132、134の平均間隔Paveに対して、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4)
1.0Pave<Tcv−ave≦11Pave
ここで、距離Tcv−aveは、図9に示すように、線分lcv上において極小凸部133を間において隣接する第1の凸部132及び凸部134の頂点間同士の最短距離を示しているので、両者の間に存在する極小凸部133の大きさが、最大値11Paveを超えないように制限されていることを示している。
また、距離Tcv−aveは、複数の凸部の側面部の勾配によらない値である。ここで、距離tcv−aveより距離Tcv−aveは大きな値となる。また、複数の凸部の、詳細は以下に説明するアスペクトを考慮すると、距離tcv−aveを約1.15倍した値が距離Tcv−aveとなる。この為、既に説明したように、距離tcv−aveが9.5Pave以下であることにより奏される効果は、距離Tcv−aveが11Pave以下の範囲にて同様に発現されることとなる。
距離Tcv−aveが式(4)を満たすことにより、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与に基づく光取り出し効率LEEの改善を維持した状態で、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを同時に改善することができる。距離Tcv−aveが1.0Paveより大きいことで、第1の凸部と極小凸部133との体積差が大きくなる。この為、平均化された屈折率の乱れ或いは光回折モードの分散性は顕著となり、半導体発光素子の発光光は、該乱れに応じた散乱性を発現することとなり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。一方、距離Tcv−aveが11Pave以下であることにより、半導体結晶層内部に発生する転位の、局所的密度を低下させることができるため、内部量子効率IQEを向上させることができる。また、距離Tcv−aveが11Pave以下であることにより、極小凸部133の集合する大きさを制限することができるため、半導体結晶層の特異成長を抑制することができる。この為、p−n接合界面、より詳細にはバンド図におけるバンドのズレを抑制することができるために、リーク電流を良好に保つことが可能となり、ダイオード特性を向上させることができる。また、距離Tcv−aveが11Pave以下であることにより、比表面積を効果的に大きくできるため、オーミック抵抗が減少しオーミックコンタクトが良好となるため、電子注入効率EIEが向上する。距離Tcv−aveとしては、この効果を一層発揮する観点から、1.0Pave≦Tcv−ave≦9.5Paveを満たすことが好ましい。更に、距離Tcv−aveは極小凸部133の集合する大きさを表す尺度である。ここで、極小凸部133が集合した場合、凸部高さの低い集合が形成される。この場合、光学的散乱性は減少する。これは、例えば光学的散乱性が光回折の場合、光回折強度は凸部高さが高くなるにつれ増加する為である。この観点も踏まえると、距離Tcv−aveは、1.0Pave<Tcv−ave≦7.5Paveを満たすことが好ましく、1.0Pave<Tcv−ave≦5.5Paveを満たすことがより好ましく、1.0Pave<Tcv−ave≦3.5Paveを満たすことが最も好ましい。
また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1において、極小凸部133の凸部高さhnが下記式(9)を満たし、存在確率Zが下記式(10)を満たし、且つ、距離Tcv−aveが下記式(11)を満たすことが好ましい。この場合には、極小凸部133の凸部高さhnが式(9)を満たすことで第1の凸部131、132、134と極小凸部133との体積差が大きくなり、平均化された屈折率の局所的乱れ及び、極小凸部133における光学的散乱性(光回折又は光散乱)が大きくなり、ナノスケールにて強い散乱性を付与することが可能となる。同時に存在確率Zが式(10)を満たすことで平均化された屈折率の薄膜に存在する散乱点数或いは光回折のモード数を増加させることが可能となり、総合的な散乱性の程度が向上するため、光取り出し効率LEEが大きくなる。さらに、距離Tcv−aveが式(11)を満たすことで、半導体結晶層内部の転位を分散化すると共に、局所的転位密度を低減することが可能となり、ナノ構造付与による内部量子効率IQE改善の効果を発揮することができる。また、距離Tcv−aveが式(11)を満たすことで、ナノスケールの凹凸構造においても効果的に比表面積が大きくなるため、オーミックコンタクトが良好となり、電子注入効率EIEが向上する。即ち、式(9)〜式(11)を同時に満たすことにより、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEを同時に向上させることが可能となり、LEDの外部量子効率EQEを向上できる。また、式(9)〜式(11)を同時に満たす場合、極小凸部133の集合する大きさ及び、集合した極小凸部133の分散性を高めることができることから、特異成長した半導体結晶層同士の接合を抑制することができるため、半導体結晶層に生じるクレバス状の欠陥を抑制できる。これにより、p−n接合性が向上することから、リーク電流をより抑制することができる。
式(9)
0.4Have≧hn≧0
式(10)
1/3000≦Z≦1/7.5
式(11)
1.0Pave<Tcv−ave≦7.5Pave
さらに、この場合において、極小凸部133の高さhnが下記式(12)を満たすことが、ナノスケールでの光学的散乱性(光回折又は光散乱)の付与の観点から好ましい。この場合においても、式(10)に示す存在確率Z及び式(11)に示す距離Tcv−aveの範囲を満たすため、ナノスケールにおいて強められた散乱性により、総合的な光学的散乱性(光回折又は光散乱)による光取り出し効率LEEを向上させると共に、高い内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを実現することができる。
式(12)
0.2Have≧hn≧0
さらに、アスペクト比Have/φcv−aveは、凹凸構造12の第1の凸部131、132、134の底部の幅の平均値φcv−aveと凸部高さの平均値Haveとの比率である。アスペクト比Have/φcv−aveは、第1の凸部と極小凸部133と、の体積差を大きくし、平均化された屈折率の乱れ又は極小凸部133における光学的散乱性(光回折又は光散乱)を顕著にし、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを担保した状態で散乱性を付与し外部量子効率EQEを向上させる観点から、0.1以上3.0以下の範囲が好ましい。特にこの効果をより一層発揮する観点から、アスペクト比Have/φcv−aveは、0.5以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.5以上1.2以下であることが最も好ましい。
なお、上記原理より内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善するため、凹凸構造12の凸部13の形状は限定されず、円錐、円錐の側面部が段階的傾斜を有す錐状体、円錐の側面部が上に凸に膨らんだ錐状体、円錐の底面が歪んだ錐状体、円錐の底面の外形が3以上の変曲点を有す錐状体、円柱、多角柱、多角錐等を採用できる。特に、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、凸部13の頂点13aは連続的に滑らかにつながっている、即ち、凸部13の頂部は曲率半径が0超の角部であることが好ましい。
また、凸部側面は滑らかであっても、凸部側面上にさらに別の凹凸が設けられていてもよい。
また、内部量子効率IQEを向上させる観点から、凹凸構造12の凹部14の底部は平坦面を有すこと好ましい。この場合、半導体結晶層の成長初期状態を良好に保つことが可能となることから、凹凸構造による転位分散性の効果をより発揮することが可能となる。特に、互いに最近接する凸部において、それぞれの凸部の底部外縁部間の最短距離が30nm以上であることにより、半導体結晶層の初期成長性、特に核生成を良好に保つことができるため、内部量子効率IQE改善の効果が大きくなる。該距離が60nm以上であることがより、核生成と続く各成長が良好になるため好ましく、80nm以上であることが最も好ましい。
凹凸構造(I)12の凹部14の底部の有す平坦面(以下、「平坦面B」と呼ぶ)と、凹凸構造(I)12上に設けられる第1半導体層の安定成長面に対してほぼ平行な面(以下、「平行安定成長面」と呼ぶ)と、が実質的に平行である場合、凹凸構造(I)12の凹部14の近傍における第1半導体層の成長モードの乱れが大きくなり、第1半導体層内の転位を効果的に低減することができるため、内部量子効率IQEが向上する。安定成長面とは、成長させる材料において成長速度の最も遅い面のことをさす。一般的には、安定成長面は成長の途中にファセット面として現れることが知られている。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、M面に代表されるA軸に平行な平面が安定成長面となる。GaN系半導体層の安定成長面は、六方晶結晶のM面(1−100)、(01−10)、(−1010)であり、A軸に平行な平面の一つである。なお、成長条件によっては、GaN系半導体のM面以外の平面であるA軸を含む他の平面が安定成長面になる場合もある。
極小凸部133は、非周期的に配置されても、周期的に配置されてもよい。非周期的に配置される場合、平均化された屈折率に非周期的な乱れが生じることとなり、導波モードは光散乱として乱されることとなる。また、極小凸部133において生じる光回折が相互に強めあうことが少なくなり、光学的散乱性(光回折又は光散乱)が強くなる。一方、周期的(例えば、四方格子状や六方格子状)に配列される場合、平均化された屈折率の乱れが周期性を帯びることとなるため、該周期性に応じた光回折として、導波モードは乱されることとなる。いずれの場合においても、上記説明した、極小凸部133の高さhn、距離Tcv−ave(又は距離tcv−ave)及び存在確率Zを満たすことで、光取り出し効率LEEを向上させることができる。用途にもよるが、半導体発光素子の発光光の出光角を制御したい場合等は、周期的に極小凸部133を配置すると好ましく、光学的散乱性(光回折又は光散乱)により導波モードを効果的に見出し、光取り出し効率LEEを向上させるためには、非周期的に配置されると好ましい。
●第2の実施の形態に係る光学基板(II)
次に、図8に示す第2の実施の形態に係る光学基板(II)2の凹凸構造(II)22の特徴について説明する。まず、凹部23の平均間隔Paveは、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の効果から、下記式(5)を満たす。
式(5)
50nm≦Pave≦1500nm
また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から内部量子効率IQEをより向上でき、且つリーク電流を良好に保つため、平均間隔Paveは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であると好ましく、550nm以下であるとより好ましく、400nm以下であると最も好ましい。また、光学基板(I)1と同様の理由から、電子注入効率EIEを向上させるために、平均間隔Paveは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、550nm以下であることが最も好ましい。同様に、光取り出し効率LEEをより向上できるため、間隔Pは、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、250nm以上が最も好ましい。
また、第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22においては、図10に示すように、複数の凹部231〜234の凹部深さdnが均一ではなく、図10中に示す第2の凹部233(極小凹部)のように、ほぼ同一の深さを有する第1の凹部231、232、234よりも凹部深さdnが浅い、言い換えれば、平均凹部深さDaveに比べて凹部深さdnが浅い極小凹部233が所定の確率で存在する。つまり、第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22において、極小凹部233の凹部深さdnは、凹凸構造(II)22の凸部平均位置Scvと凹部平均位置Sccとの距離に相当する凹部平均深さDaveに対して下記式(6)を満し、且つ、極小凹部233が存在する存在確率Zが、下記式(7)を満たすことを特徴とする。
式(6)
0.6Dave≧dn≧0
式(7)
1/10000≦Z≦1/5
凹部深さdnが式(6)を満たす極小凹部233の存在により、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIE向上を担保した状態で、光学的散乱性(光回折又は光散乱)を付与することが可能となる。ここで、凹部深さdnは、光学的散乱性(光回折又は光散乱)をより発揮する観点から0.4Dave≧dn≧0を満たすことが好ましく、0.3Dave≧dn≧0を満たすことがより好ましく、0.1Dave≧dn≧0を満たすことが最も好ましい。
特に、式(6)を満たす極小凹部233の存在確率Zが式(7)を満たすことにより、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から、光学的散乱性付与に基づく光取り出し効率LEE向上を実現できる。ここで、存在確率Zとしては、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与の観点から1/3000≦Z≦1/10を満たすことが好ましく、1/1000≦Z≦1/10を満たすことがより好ましく、1/500≦Z≦1/10を満たすことが最も好ましい。特に、極小凹部233の存在確率Zが1/100以下であることで、導波モードを乱すモードの数が大きくなり、この為導波モードを乱す効果がより大きくなるため好ましい。最も好ましくは、1/60以下である。また、存在確率Zが1/5.5以上であれば、半導体結晶層の特性成長を抑制する効果が強まるため、リーク電流をより良好に保つことが可能となる。この観点から、確率Zは、1/10以上であることがより好ましい。
また、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においては、上述の距離tcc−aveが、第1の凹部23の平均間隔Paveに対して、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から、1.0Pave<tcc−ave≦9.5Paveを満たすことが好ましい。
図10に示すように、距離tcc−aveは、線分lcc上における隣接する第1の凹部232及び凹部234間の輪郭同士の最短距離を示しているので、両者の間に存在する極小凹部233の数が最大値9.5Pを超えないように制限されていることを示している。
距離tccが1.0Pave<tcc−ave≦9.5Paveを満たすことにより、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与に基づく光取り出し効率LEEの改善を維持した状態で、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを同時に改善することができる。距離tcc−aveとしては、この効果を一層発揮する観点から、1.0Pave≦tcc−ave≦7.5Paveを満たすことが好ましい。更に、距離tcc−aveは極小凹部233の集合する大きさを表す尺度である。ここで、極小凹部233が集合し、そのサイズが所定の値を超えた場合、半導体結晶層の特異成長に基づくp−n接合界面のずれが生じることがある。この場合、リーク電流特性が低下する。この観点も踏まえると、距離tcc−aveは、1.0Pave<tcc−ave≦4.5Paveを満たすことが好ましく、1.0Pave<tcc−ave≦3.0Paveを満たすことがより好ましく、1.0Pave<tcc−ave≦1.5Paveを満たすことが最も好ましい。
また、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においては、極小凹部233の凹部深さdnが0.4Dave≧dn≧0を満たし、存在確率Zが1/3000≦Z≦1/10を満たし、且つ、距離tcc−aveが1.0Pave<tcc−ave≦4.5Paveを満たすことが好ましい。この場合には、極小凹部233の凹部深さが所定範囲を満たすために、第1の凹部231、232、234と極小凹部233との体積差が大きくなり、これに伴い平均化された屈折率の乱れ又は、極小凹部233における光学的散乱性(光回折又は光散乱)が顕著となる。この為、ナノスケールにて強い散乱性を付与することが可能となる。同時に、存在確率Zが上記範囲満たすことで平均化された屈折率の薄膜内に存在する散乱点数又は、光回折のモード数を大きくすることができ、総合的な散乱性の程度が向上するため、光取り出し効率LEEが大きくなる。さらに、距離tcc−aveが所定範囲を満たすことで、半導体結晶層内部の転位を分散化すると共に、局所的転位密度を低減することが可能となり、ナノ構造付与による内部量子効率IQE改善の効果を発揮することができる。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEを同時に向上させることが可能となり、LEDの外部量子効率EQEを向上できる。
さらに、この場合において、極小凹部233の凹部深さdnが0.1Dave≧dn≧0を満たすことが、ナノスケールでの光学的散乱性(光回折又は光散乱)の付与の観点から好ましい。この場合においても、存在確率Z及び距離tccの範囲を満たすため、ナノスケールにおいて強められた散乱性により、総合的な光学的散乱性(光回折又は光散乱)による光取り出し効率LEEを向上させると共に、高い内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを実現することができる。
第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においては、上述の距離Tcc−aveが、第1の凹部の平均間隔Paveに対して、下記式(8)を満たすことが好ましい。
式(8)
1.0Pave<Tcc−ave≦11Pave
ここで、距離Tcc−aveは、図10に示すように、線分lcc上において第2の凹部233を間において隣接する第1の凹部232及び凹部234の頂点部間同士の最短距離を示しているので、両者の間に存在する極小凹部233の大きさが、最大値11Paveを超えないように制限されていることを示している。また、距離Tcc−aveは、複数の凹部の側面部の勾配によらない値である。ここで、距離tcc−aveより距離Tcc−aveは大きな値となる。また、複数の凹部の、詳細は以下に説明するアスペクトを考慮すると、距離tcc−aveを約1.15倍した値が距離Tcc−aveとなる。この為、既に説明したように、距離tcc−aveが9.5Pave以下であることにより奏される効果は、距離Tcc−aveが11Pave以下の範囲にて同様に発現されることとなる。
距離Tcc−aveが式(8)を満たすことにより、光学的散乱性(光回折又は光散乱)付与に基づく光取り出し効率LEEの改善を維持した状態で、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを同時に改善することができる。距離Tcc−aveが1.0Paveより大きいことで、第1の凹部231、232、234と極小凹部233との体積差が大きくなる。この為、平均化された屈折率の乱れ或いは光回折モードの分散性は顕著となり、半導体発光素子の発光光は、該乱れに応じた光学的散乱性を発現することとなり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。一方、距離Tcc−aveが11Pave以下であることにより、半導体結晶層内部に発生する転位の、局所的密度を低下させることができるため、内部量子効率IQEを向上させることができる。また、距離Tcc−aveが11Pave以下であることにより、極小凹部233の集合する大きさを制限することができるため、半導体結晶層の特異成長を抑制することができる。この為、p−n接合界面、より詳細にはバンド図におけるバンドのズレを抑制することができるために、リーク電流を良好に保つことが可能となり、ダイオード特性を向上させることができる。また、距離Tcc−aveが11Pave以下であることにより、比表面積を効果的に大きくできるため、オーミック抵抗が減少しオーミックコンタクトが良好となるため、電子注入効率EIEが向上する。距離Tcc−aveとしては、この効果を一層発揮する観点から、1.0Pave≦Tcc−ave≦9.5Paveを満たすことが好ましい。更に、距離Tcc−aveは極小凹部233の集合する大きさを表す尺度である。ここで、極小凹部233が集合した場合、凹部深さの低い集合が形成される。この場合、光学的散乱性は減少する。これは、例えば光学的散乱性が光回折の場合、光回折強度は凹部深さが深くなるにつれ増加する為である。この観点も踏まえると、距離Tcc−aveは、1.0Pave<Tcc−ave≦7.5Paveを満たすことが好ましく、1.0Pave<Tcc−ave≦5.5Paveを満たすことがより好ましく、1.0Pave<Tcc−ave≦3.5Paveを満たすことが最も好ましい。
また、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2において、極小凹部233の凹部深さdnが下記式(13)を満たし、存在確率Zが下記式(14)を満たし、且つ、距離Tcc−aveが下記式(15)を満たすことが好ましい。この場合には、極小凹部233の凹部高さdnが式(13)を満たすことで第1の凹部231、232、234と極小凹部233との体積差が大きくなり、平均化された屈折率の局所的乱れ及び、極小凹部233における光学的散乱性(光回折又は光散乱)が大きくなり、ナノスケールにて強い散乱性を付与することが可能となる。同時に存在確率Zが式(14)を満たすことで平均化された屈折率の薄膜に存在する散乱点数或いは光回折のモード数を増加させることが可能となり、総合的な散乱性の程度が向上するため、光取り出し効率LEEが大きくなる。さらに、距離Tcc−aveが式(15)を満たすことで、半導体結晶層内部の転位を分散化すると共に、局所的転位密度を低減することが可能となり、ナノ構造付与による内部量子効率IQE改善の効果を発揮することができる。また、距離Tcc−aveが式(15)を満たすことで、ナノスケールの凹凸構造においても効果的に比表面積が大きくなるため、オーミックコンタクトが良好となり、電子注入効率EIEが向上する。即ち、式(13)〜(15)を同時に満たすことにより、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEを同時に向上させることが可能となり、LEDの外部量子効率EQEを向上できる。また、式(13)〜式(15)を同時に満たす場合、極小凹部233の集合する大きさ及び、集合した極小凹部233の分散性を高めることができることから、特異成長した半導体結晶層同士の接合を抑制することができるため、半導体結晶層に生じるクレバス状の欠陥を抑制できる。これにより、p−n接合性が向上することから、リーク電流をより抑制することができる。
式(13)
0.4Dave≧dn≧0
式(14)
1/3000≦Z≦1/7.5
式(15)
1.0Pave<Tcc−ave≦7.5Pave
さらに、この場合において、極小凹部233の深さdnが下記式(16)を満たすことが、ナノスケールでの光学的散乱性(光回折又は光散乱)の付与の観点から好ましい。この場合においても、式(14)に示す存在確率Z及び式(15)に示す距離Tcc−aveの範囲を満たすため、ナノスケールにおいて強められた散乱性により、総合的な光学的散乱性(光回折又は光散乱)による光取り出し効率LEEを向上させると共に、高い内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを実現することができる。
式(16)
0.2Dave≧dn≧0
さらに、第1の凹部231、232、234のアスペクト比Dave/φcc−aveは、凹凸構造(II)22の第1の凹部231、232、234の開口部の平均幅φcc−aveと凹部平均深さDaveとの比率である。アスペクト比Dave/φcc−aveは、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1と同様の理由から、0.1以上3.0以下の範囲が好ましい。特に、この効果をより一層発揮する観点から、アスペクト比Dave/φcc−aveは、0.5以上2.5以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.5以上1.2以下であることが最も好ましい
なお、上記原理より内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善するため、凹凸構造(II)22の凹部23の形状は限定されず、円錐、円錐の側面部が段階的傾斜を有す錐状体、円錐の側面部が上に凸に膨らんだ錐状体、円錐の底面が歪んだ錐状体、円錐の底面の外形が3以上の変曲点を有す錐状体、円柱、多角柱、多角錐等を採用できる。特に、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、凸部24の頂部に平坦面を有し、且つ凹部23の頂点の曲率半径が0超である凹凸構造(II)22、凸部24の頂点24aが連続的に滑らかにつながると共に、凹部23の底部に平坦面のある凹凸構造(II)22のいずれかであることが好ましい。
また、凹部側面は滑らかであっても、凹部側面上にさらに別の凹凸が設けられていてもよい。また、凹部23の底部は平坦面を有すことが好ましい。特に、凹部23の底部の平坦面の面積は、面積を円の面積に変換した際に、その円の直径が30nm以上であることにより、半導体結晶層の初期成長性を良好に保つことができるため、内部量子効率IQE改善の効果が大きくなる。同様の観点から、該直径は60nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることが最も好ましい。
凹凸構造(II)22の凹部23の底部の有す平坦面、又は凸部24の頂部の有す平坦面(以下、「平坦面B」と呼ぶ)と、凹凸構造(II)22上に設けられる第1半導体層の安定成長面に対してほぼ平行な面(以下、「平行安定成長面」と呼ぶ)と、が平行である場合、凹凸構造(II)22の凹部23の近傍における第1半導体層の成長モードの乱れが大きくなり、第1半導体層内の転位を効果的に低減することができるため、内部量子効率IQEが向上する。安定成長面とは、成長させる材料において成長速度の最も遅い面のことをさす。一般的には、安定成長面は成長の途中にファセット面として現れることが知られている。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、M面に代表されるA軸に平行な平面が安定成長面となる。GaN系半導体層の安定成長面は、六方晶結晶のM面(1−100)、(01−10)、(−1010)であり、A軸に平行な平面の一つである。なお、成長条件によっては、GaN系半導体のM面以外の平面であるA軸を含む他の平面が安定成長面になる場合もある。
極小凹部233は、光学基板(I)1と同様の理由から、非周期的に配置されても、周期的に配置されてもよい。
以上説明した第1の実施の形態に係る光学基板(I)1及び第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においては、光学基板(I)1、(II)2の表面の一部又は全面に上記説明した凹凸構造(I)12、(II)22が配置される。ここで、一部又は全面とは以下の通りである。
上記実施の形態に係る光学基板(I)1、(II)2は、上記説明した本実施の形態に係る凹凸構造を、光学基板の表面の一部又は全面に具備する。即ち、光学基板の表面全面が上記説明した凹凸構造により覆われても、光学基板の表面の一部に上記説明した凹凸構造が設けられてもよい。以下の説明においては、上記説明した凹凸構造を凹凸構造Gと記載し、上記説明した凹凸構造に該当しない凹凸構造を凹凸構造Bと記載する。
光学基板(I)1、(II)2は、少なくとも一部に凹凸構造Gを有す。即ち、光学基板の表面は凹凸構造Gにより全面が覆われても、一部が覆われても良い。ここで、凹凸構造Gにより覆われていない領域を「非G領域」と呼ぶ。ここで、非G領域は、凹凸構造B及び/又は平坦部より構成される。光学基板の表面の一部に非G領域が設けられる場合であっても、凹凸構造Gで覆われた領域において、既に説明した効果を発現できるため、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善すると共に、リーク電流を抑制することができる。
(α)光学基板の表面に設けられる凹凸構造Gは、平均間隔Paveを用いた時に、10Pave×10Paveの面積を有す領域内に少なくとも設けられると、上記説明した効果を奏すため好ましい。即ち、例えば、走査型電子顕微鏡を用い光学基板の表面を観察した場合に、10Pave×10Paveの面積を有す領域内が凹凸構造Gにより構成されていればよい。特に、10Pave×10Paveの面積を有す領域内を満たす凹凸構造Gの総和により、以下に説明する凹凸構造Gの割合、又は大きさを満足することが好ましい。即ち、10Pave×10Paveの面積を有す範囲内が凹凸構造Gにより構成され、このような範囲を複数個設けることができる。特に、20Pave×20Pave以上、より好ましくは25Pave×25Pave以上を満たすことにより、凹凸構造Gによる半導体結晶層の成長モードを乱す効果及び光学的散乱性を強める効果がより顕著になるため好ましい。この場合も、凹凸構造Gの総和により、以下に説明する凹凸構造Gの割合、又は大きさを満たすことが好ましい。さらに、50Pave×50Pave以上、より好ましくは、75Pave×7PaveP以上の面積を有す領域が凹凸構造Gにより構成されることで、凹凸構造Gで覆われた領域に隣接する非G領域における内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEも改善するため好ましい。本効果は、100Pave×100Pave以上、150Pave×150Pave以上、そして450Pave×450Pave以上になるにつれ、より発揮される。これらの場合も、凹凸構造Gの総和により、以下に説明する凹凸構造Gの割合、又は大きさを満たすことが好ましい。
(β)凹凸構造Gで覆われた領域の中に、非G領域を設ける場合、非G領域の割合は、凹凸構造Gに対して、1/5以下であることが好ましい。これにより、凹凸構造Gの効果を発揮できる。同様の効果をより発揮する観点から、1/10以下であることがより好ましく、1/25以下であることがより好ましく、1/50以下であることが最も好ましい。なお、1/100以下を満たすことにより、内部量子効率IQEの改善効果をより向上させることができる。特に、1/500以下、より好ましくは1/1000以下を満たすことにより、半導体発光素子内部から出光する発光光の均等性が向上するため好ましい。同様の観点から、1/10000以下であることが好ましく、1/100000以下であることが好ましく、1/1000000以下であることが好ましい。なお、下限値は特に限定されず、小さい程、換言すれば0に漸近する程、凹凸構造Gの効果がより顕著になるため好ましい。
(γ)光学基板の表面に対する凹凸構造Gの割合は、半導体発光素子の外形及びその大きさにもよるが、0.002%以上であると、凹凸構造Gにおいて既に説明した効果を奏すことが可能となるため好ましい。特に、0.02%以上、より好ましくは0.2%以上の凹凸構造Gを光学基板が具備することにより、半導体結晶層内の転位の分散性が向上することから、内部量子効率IQEの均等性が向上する。更に、光学的散乱点が分散化することから、光取り出し効率LEEの均等性が向上する。これに伴い、非G領域の内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEが高まるため好ましい。さらに、2.3%以上、より好ましくは10%以上の凹凸構造Gを光学基板が含むことで、前記効果をいっそう発揮できる。また、20%以上の場合、光学基板上に成膜される半導体結晶層の面内均等性が向上することから、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、が同時に向上した半導体発光素子を得る収率が向上する。本効果をより発揮する観点から、凹凸構造Gは、30%以上含まれることが好ましく、40%以上含まれることがより好ましく、50%以上含まれることが最も好ましい。また、凹凸構造Gを60%以上含む場合、非G領域に対する凹凸構造Gの効果の伝搬性が向上する。即ち、凹凸構造Gにより転位の低減された半導体結晶層が非G領域へ、と伝搬することから、非G領域の内部量子効率IQEの向上程度も大きくなる。一方で、凹凸構造Gと非G領域と、の界面の分散度が高くなることから、該界面における光学的散乱性が強まる。よって、非G領域の光取り出し効率LEEも向上する。前記効果をより発揮する観点から、凹凸構造Gは、70%以上含まれることが好ましく、80%以上含まれることがより好ましく、90%以上含まれることが最も好ましい。なお、凹凸構造Gが100%含まれる場合、換言すれば光学基板の表面が凹凸構造Gにより埋め尽くされる場合は、半導体結晶層の成長性が光学基板の面内において均等になることから、内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEの向上程度の均等化が促進される。即ち、半導体発光素子の性能分布曲線がよりシャープになる。
(δ)光学基板を、LED用基板として使用する場合について説明する。ここで、光学基板の表面に含まれる凹凸構造Gは、0.0025×10−6m2以上であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、LEDチップとしてみた場合の、発光出力が大きくなる。これは、LEDチップの大きさと外形にもよるが、LEDチップ内を導波する発光光と凹凸構造Gと、の衝突確率から判断できる。また、この範囲を満たす場合、凹凸構造G上に成膜される半導体結晶層の初期成長性が良好となる。即ち、半導体結晶層の核生成と各成長の速度を凹凸構造Gにより低下させることができることから、転位が低減し、内部量子効率IQEが向上する。前記効果をより発揮する観点から、光学基板の表面に含まれる凹凸構造Gは、0.01×10−6m2以上であることが好ましく、0.04×10−6m2以上であることがより好ましく、0.09×10−6m2以上であることが最も好ましい。さらに、0.9×10−6m2以上であることにより、光学基板上に成膜される半導体結晶層の面内均等性が向上することから、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、が同時に向上した半導体発光素子を得る収率が向上する。前記効果をより発揮する観点から、9×10−6m2以上であることがより好ましく、90×10−6m2以上であることが最も好ましい。なお、900×10−6m2以上、より好ましくは、1.8×10−3m2以上であることで、非G領域に対する凹凸構造Gの効果の伝搬性が向上する。即ち、凹凸構造Gにより転位の低減された半導体結晶層が非G領域へ、と伝搬することから、非G領域の内部量子効率IQEの向上程度も大きくなる。一方で、凹凸構造Gと非G領域と、の界面の分散度が高くなることから、該界面における光学的散乱性が強まる。よって、非G領域の光取り出し効率LEEも向上する。特に、3.6×10−3m2以上、より好ましくは、7.5×10−3m2以上であることで、LED用基板の外縁部を使用した場合であっても、良好なLEDを得ることができる。以上説明した凹凸構造Gの大きさを満たす凹凸構造Gが、光学基板の表面上に1以上設けられることで、高効率なLEDを製造することが可能なLED用基板を得ることができる。なお、上記説明した凹凸構造Gの大きさを満たす凹凸構造Gを複数個設けることもできる。この場合、少なくとも1つの凹凸構造Gが、上記大きさを満たす。特に、凹凸構造Gの個数に対して50%以上が上記大きさの範囲をみたすことが好ましく、100%が上記大きさの範囲をみたすことが最も好ましい。
凹凸構造Gと非G領域との配置関係は上記内容を満たせば特に限定されないが、例えば、以下の関係が挙げられる。凹凸構造Gと非G領域との配置関係は、凹凸構造Gと非G領域を考えた場合、以下に説明する配置を挙げることができる。なお、凹凸構造Gは、上記説明したα、β、γ、δの1以上を満たす凹凸構造Gによる集合、即ち、凹凸構造G領域である。また、図19に示すように、凹凸構造G領域501内に非G領域502が設けられる場合、非G領域502は、上記βにて説明した割合を満たせば、その形状、規則性や非規則性は限定されない。図19は、本実施の形態に係る光学基板における凹凸構造Gと非G領域との関係を示す説明図である。図19A及び図19Bにおいては、凹凸構造G領域501の中に、輪郭が不定形の非G領域502が複数配置されている。図19Cにおいては、凹凸構造G領域501の中に、格子状の非G領域502が設けられている。また、図19Dにおいては、凹凸構造G領域501の中に、略円形状の非G領域502が複数形成されている。
凹凸構造G領域501により作られる輪郭形状は特に限定されない。即ち、凹凸構造G領域501と非G領域502との界面形状は限定されない。この為、例えば、凹凸構造G領域501と非G領域502との界面形状は、n角形(n≧3)、非n角形(n≧3)や、格子状、ライン状等が挙げられる。n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。
図20は、本実施の形態に係る光学基板における凹凸構造G領域により作られる輪郭形状を示す模式図である。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、また、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。さらに、n角形(n≧3)において、nが4以上の場合は、図20Aから図20Dに示すような形状を含む。図20Aは4角形であり、図20Bは6角形であり、図20Cは8角形であり、図20Dは12角形である。非n角形は、曲率半径が0超の角部を含む構造、例えば、円、楕円、上記説明した上記n角形の角が丸みを帯びた形状(上記n角形の角の曲率半径が0超の形状)、又は丸みを帯びた角(曲率半径が0超の部位)を含む上記説明したn角形(n≧3)である。この為、例えば、図20Eから図20Hに例示する形状を含む。なお、非G領域の輪郭形状は、上記説明した凹凸構造Gの集合の輪郭形状に挙げた形状を採用できる。
まず、凹凸構造G領域501が非G領域502により、囲まれる、又は挟まれる状態が挙げられる。図21は、本実施の形態に係る光学基板を表面より観察した状態を示す平面模式図である。図21A〜図21Fでは、凹凸構造G領域501が非G領域502により囲まれている状態を示している。図21Aに示すように、光学基板500の表面に凹凸構造G領域501が設けられ、その外側が非G領域502により構成されてもよい。この凹凸構造G領域501は、上記説明した比率を満たすことが好ましい。また、この凹凸構造G領域501は、既に説明した大きさを満たすことが好ましい。図21B又は図21Cのように、光学基板の表面に凹凸構造G領域501が互いに離間して複数個配置され、且つ、凹凸構造G領域501同士の間及び凹凸構造G領域501の外側が非G領域502により満たされていてもよい。この場合、凹凸構造Gの合計面積に対して、上記説明した比率を満たすことが好ましい。また、少なくとも1つの凹凸構造Gが既に説明した大きさを満たすことが好ましく、全ての凹凸構造Gが既に説明した大きさを満たすことがより好ましい。また、凹凸構造Gが複数個設けられる場合、凹凸構造G領域501は図21Cに示すように規則的に配置されても、図21Dに示すように非規則的に配置されてもよい。規則的な配置としては、四方配列、六方配列、これらの配列が一軸方向に延伸された配列、又は、これらの配列が二軸方向に延伸された配列等が挙げられる。さらに、凹凸構造G領域501の輪郭形状は、図21Aから図21Dにおいては、円状に記載したが、図21Eに示すように不定形の形状を採用することもできる。例えば、凹凸構造G領域501の外形として、n角形(n≧3)、角の丸まったn角形(n≧3)、円、楕円、線状、星状、格子状等の形状を挙げることができる。また、図21Fに示しように、凹凸構造G領域501が非G領域502により囲まれ、その外周を凹凸構造G領域501が囲み、さらにその外周を非G領域502が囲むこともできる。なお、図21Aから図21Dにおいては、凹凸構造G領域501を円状に記載したが、凹凸構造G領域501により作られる輪郭形状は、図20を参照し説明した形状を採用できる。
図22は、本実施の形態に係る光学基板を表面より観察した状態を示す平面模式図である。図22は、凹凸構造G領域501が非G領域502により挟まれている場合を示している。図22A及び図22Bに示すように、光学基板500の表面に凹凸構造G領域501が設けられ、その外側が非G領域502により構成されてもよい。この凹凸構造Gは、上記説明した比率を満たすことが好ましい。また、既に説明した大きさを満たすことが好ましい。図22Cのように、光学基板500の表面に凹凸構造G領域501が互いに離間して複数個配置され、且つ、凹凸構造G領域501同士の間及び凹凸構造G領域501の外側が非G領域502により満たされていてもよい。この場合、凹凸構造Gの合計面積に対して、上記説明した比率を満たすことが好ましい。また、少なくとも1つの凹凸構造Gが既に説明した大きさを満たすことが好ましく、全ての凹凸構造Gが既に説明した大きさを満たすことがより好ましい。また、図22Dのように、凹凸構造G領域501が非G領域502を内包するように且つ連続的に設けられるような配置もできる。この場合、凹凸構造Gの面積に対して、上記説明した比率を満たすことが好ましい。また、凹凸構造Gが既に説明した大きさを満たすことが好ましい。また、凹凸構造G領域501と非G領域502との界面形状は直線状であっても、図22Eに示すように撓んでいてもよい。凹凸構造G領域501の形状としては、線状、格子状、網目状等が挙げられる。また、図22Fに示しように、凹凸構造G領域501が非G領域502により挟まれ、その外周を凹凸構造G領域501が挟み、さらにその外周を非G領域502が挟むこともできる。なお、図22においては、凹凸構造G領域501により作られる輪郭線を線状或いは略線状にて記載したが、図20を参照し説明した形状を採用できる。
上記説明した凹凸構造G領域501が複数個設けられる場合においては、各凹凸構造G領域501と非G領域502との界面形状は、単一であっても、凹凸構造G領域501ごとに異なっていてもよい。
また、上記説明した凹凸構造G領域501及び非G領域502との配置関係においては、凹凸構造G領域501が非G領域502に囲まれる場合と、凹凸構造G領域501が非G領域502に挟まれる場合と、を混在し得る。
また、図21F及び図22Fに示すように、第1の凹凸構造G領域501(G1)の外側に非G領域502が設けられ、さらにその外側に第2の凹凸構造G領域501(G2)が設けられ、さらにその外側に非G領域502が設けられる場合、第2の凹凸構造G領域501(G2)は不連続であってもよい。
非G領域は、凹凸構造Bにより構成されても、平坦部により構成されても、凹凸構造B及び平坦部により構成されてもよい。
また、凹凸構造Gが第1の実施の形態に係る凹凸構造(I)12と第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22であってもよい。また、凹凸構造Bは、以下に説明する第3の実施の形態に係る凹凸構造(III)又は/及び第4の実施の形態に係る凹凸構造(IV)であってもよい。
また、上記説明においては、光学基板500の外形を全て長方形として描いているが、光学基板500の外形はこれに限定されず円形、円の曲率を有す弧と直線を含む形状、n角形(n≧3)、非n角形(n≧3)や、格子状、ライン状等を採用できる。n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、また、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。さらに、n角形(n≧3)において、nが4以上の場合は、図20Aから図20Dに示すような、形状を含む。図20Aは4角形であり、図20Bは6角形であり、図20Cは8角形であり、図20Dは12角形である。非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、上記説明した上記n角形の角が丸みを帯びた形状(n角形の角の曲率半径が0超の形状)、又は丸みを帯びた角(曲率半径が0超の角部)を含む上記説明したn角形(n≧3)である。この為、例えば、図20Fから図20Hに例示する形状を含む。中でも、線対称の形状を採用することが好ましい。
以下、図7Aに示す第1の実施の形態に係る光学基板(I)1における基板本体11及び凹凸構造(I)12の材質及び加工方法、並びに、これを用いた半導体素子について説明する。特に説明する以外は、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2についても同様である。
まず、光学基板(I)1においては、基板本体11及び凹凸構造(I)12は、同一材料で構成してもよく、異なる材料で構成してもよい。また、基板本体11を直接加工して凹凸構造(I)12を設けてもよく、基板本体11上に凹凸構造(I)12の層を別途設けてもよい。基板本体11上に凹凸構造(I)12の層を別途設ける場合は、基板本体11上に所定の層を成膜し、成膜された層を直接加工する方法、又は、基板本体11上に凹凸構造(I)12を形成するように別途層を成長させる方法、基板本体11上に凹凸構造(I)12を形成するように転写により凹凸構造(I)12を付与する方法を採用することができる。
加工により凹凸構造(I)12を設ける方法としては、電子線描画法(EB法)、感光性レジストを使用するフォトリソグラフィ法、感熱性レジストを使用する熱リソグラフィ法、干渉露光法、ナノインプリントリソグラフィ法や、自己組織化により作製したマスクを介し加工する方法、ナノ微粒子をマスクとして加工する方法、凹凸構造の凹部内部にマスク層を内包した凹凸構造を表面に具備するモールドを利用した、残膜処理のいらないナノインプリントリソグラフィ等が挙げられる。
図7Bに示すように基板本体11上に別途凹凸構造(I)12を設ける方法としては、例えば、ナノインプリント法、マクロ層分離法、ミクロ層分離法、交互積層法、微粒子や微粒子と有機物との混合物を塗布(スピンコート法、ディップコート法等)する方法が挙げられる。また、真空成膜法(蒸着法やスパッタ法、MOCVD法等)やウェット法(キャスト法やスピンコート法等)により金属、金属酸化物、AlN、スピンオンカーボン、スピンオングラス、SiC等を成膜し、成膜された層に対し電子線描画法(EB法)、感光性レジストを使用するフォトリソグラフィ法、感熱性レジストを使用する熱リソグラフィ法、ナノインプリントリソグラフィ法や、凹凸構造の凹部内部にマスク層を内包した凹凸構造を表面に具備するモールドを利用した、残膜処理のいらないナノインプリントリソグラフィ法等を適用する方法を用いてもよい。また、基板本体11上に予め樹脂等の凹凸構造を形成し残膜を処理した後に、真空成膜法(蒸着法やスパッタ法、MOCVD法等)やウェット法(キャスト法やスピンコート法等)により金属、金属酸化物、AlN、スピンオンカーボン、スピンオングラス、SiC等を凹部に埋め込み、その後樹脂層をリフトオフする方法等を用いても良い。
本実施の形態に係る光学基板(I)1、(II)2においては、基板本体の材質は、半導体発光素子用基材として使用できるものであれば特に制限はない。例えば、サファイア、SiC、SiN、GaN、W−Cu、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン、GaP、GaAs等の基材を用いることができる。中でも半導体層との格子マッチングの観点から、サファイア、GaN、GaP、GaAs、SiC基材等を適用することが好ましい。さらに、単体で用いてもよく、これらを用いた基板本体11、21上に別の基材を設けたヘテロ構造の基板としてもよい。また、基板本体11の結晶面は半導体発光素子に好適な結晶面を適宜選択することができる。例えば、サファイア基板であれば、c面、m面又は、a面に代表される結晶面及びこれらの面にオフ角をつけたものを採用できる。
また、本実施の形態に係る光学基板(I)1、(II)2を用いた半導体発光素子においては、p型半導体層の材質は、LEDに適したp型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、及び、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。
本実施の形態に係る光学基板(I)1、(II)2を用いた半導体発光素子においては、透明導電膜の材質は、LEDに適した透明導電膜として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、Ni/Au電極等の金属薄膜や、ITO、ZnO、In2O3、SnO2、IZO、IGZO等の導電性酸化物膜等を適用できる。特に、透明性、導電性の観点からITOが好ましい。
光学基板(I)1、(II)2において、凹凸構造(I)12凹凸構造(I)12、(II)22の層を別途形成する場合の凹凸構造(I)12凹凸構造(I)12、(II)22の材質は、半導体発光素子として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、無機微粒子(金属微粒子、金属酸化物微粒子)、無機フィラー、金属アルコキシドや、シランカップリング材に代表される金属アルコキシド、AlN、SiC、スピンオングラス、スピンオンカーボン、GaN、窒化物半導体、AlN、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP等を用いることができる。
中でも半導体発光素子としてより好適な状態は、基板本体11、21と凹凸構造(I)12、(II)22が同一の材料であり、基板本体11、21がサファイア、SiC或いは窒化物半導体である場合、又は、基板本体11、21がサファイア、SiC或いは窒化物半導体であり、凹凸構造(I)12、(II)22が窒化物半導体である場合である。
次に、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1を用いた半導体発光素子について説明する。
本実施の形態に係る半導体発光素子においては、上述の本実施の形態に係る光学基板(I)1、光学基板(II)2を少なくとも一つ以上を構成に含む。本実施の形態に係る光学基板を構成に入れることで、内部量子効率IQEの向上、電子注入効率EIEの向上、光取り出し効率LEEの向上を図ることができる。更には、リーク電流を抑制することができる。
本実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、基板主面上に、少なくとも2層以上の半導体層と発光層とを積層して構成される積層半導体層を有する。そして、積層半導体層が最表面半導体層主面から面外方向に延在する複数の凸部又は凹部から構成されるドットを含む凹凸構造層を備え、この凹凸構造層が、上述の実施の形態に係る光学基板(I)1、光学基板(II)1の凹凸構造に相当する。積層半導体層については、図1〜図3を用い説明した通りである。
本実施の形態に係る半導体発光素子において、n型半導体層としては、LEDに適したn型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体等に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。また、n型半導体層、p型半導体層には、適宜、図示しないn型クラッド層、p型クラッド層を設けることができる。
発光半導体層としては、LEDとして発光特性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、発光半導体層として、AsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO等の半導体層を適用できる。また、発光半導体層には、適宜、特性に応じて種々の元素をドープしてもよい。
また、光学基板の凹凸構造面上にn型半導体層、発光半導体層及びp型半導体層を順次設けるに当たり、光学基板の凹凸構造面上に低温成長バッファー層(例えば、AlxGa1−xN,0≦x≦1)を設けてもよい。また、低温成長バッファー層上にアンドープの半導体層(例えば、アンドープGaN)を設けてもよい。即ち、上記説明に使用したn型半導体層は、低温成長バッファー層及びアンドープ半導体層も含むものとする。
これらの積層半導体層(n型半導体層、発光半導体層、及びp型半導体層)は、光学基板表面に公知の技術により製膜できる。例えば、製膜方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等が適用できる。
また、本発明に係る半導体発光素子は、図1〜図3を用い説明した構造を基本構造とし、更に、全反射を抑制する界面に別途凹凸構造を設けることができる。別途設けられる凹凸構造は、半導体発光素子の内部量子効率IQE、光取り出し効率LEE、電子注入効率EIEに負の影響を与えなければ限定されない。例えば、散乱性を強め、更に光取り出し効率LEEを向上させる観点から、別途設ける凹凸構造の平均間隔は、半導体発光素子の発光波長の50倍以上であると好ましい。この場合、光学現象として光散乱性を利用することが可能となる。また、特定の出光方向への出光と光取り出し効率LEEの向上を同時に実現したい場合は、別途設ける凹凸構造の平均間隔は、半導体発光素子の発光波長の0.8倍以上50倍未満であると好ましい。この場合、光学現象として光回折を利用することができる。また、光取り出し効率を向上させると共に、別途設ける凹凸構造の作製時間を短縮する観点から、別途設ける凹凸構造の平均間隔は、半導体発光素子の発光波長の0.8倍以下であると好ましい。この場合、より光取り出し効率を向上させるために、本発明にかかる凹凸構造を満たすと好ましい。
次に、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の製造方法について説明する。なお、以下に示す製造方法は一例であって、光学基板(I)1の製造方法はこれに限定されるものではない。
図23は、光学基板(I)1の製造方法の一例を示す模式図である。まず、表面に熱反応性レジスト(レジスト層)を均一に成膜した円筒型モールド31を作製する。次に、この円筒型モールド31を回転させた状態で、円筒型モールド31表面にレーザ照射部32からパルスレーザを照射しながら、円筒型モールド31の筒軸方向に向けて走査する。円筒型モールド31の回転数及びパルスレーザのパルス周波数から、回転方向における円筒型モールド31の外周面のレジスト層に任意の間隔でパタン33が記録される。ここで、パルスをx個照射した後にy個分のパルスを照射しない操作を1周期として設定すること、又は、x個のパルスをパワーqにて照射した後にy個のパルスをパワーrで照射する操作を1周期として設定すること、又は、あるパルス周波数にて照射されるレーザ光に対し、ランダムにパルスが発生しない、若しくはパルスのエネルギーが変化する操作を行うことで、光学基板(I)1、光学基板(II)2の距離Tcv−ave又はtcv−ave又は距離Tcc−ave又はtcc−ave及び凸部高さhn又は凹部深さdn、そして図9及び図10に示す極小凸部133又は極小凹部233の存在確率Zを任意に設定することができる。パルスレーザは円筒型モールド31の筒軸方向に走査しているため、任意の位置から円筒型モールド31が1周すると、レーザ照射部32が筒軸方向にずれることになる。
上記のように得られたパタン33を、基板本体11に転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナノインプリントリソグラフィ法を用いることができる。このナノインプリントリソグラフィ法を行う場合には、凹凸構造の凹部内部にマスク層を内包した凹凸構造を表面に具備するモールドを利用することにより、残膜処理を不要にすることもできる。
ナノインプリントリソグラフィ法を用いる場合、上記のように得られたパタン33を具備する円筒型モールド31から、パタン33(凹凸構造)をフィルムに転写し樹脂モールドを製造する。そして、得られた樹脂モールドを鋳型として使用し、ナノインプリントリソグラフィ法によって基板本体11を加工することにより、光学基板(I)1を製造できる。この方法によれば、モールドの利用効率を高めて、基板本体11の平坦性を吸収できる。
円筒型モールド31から樹脂モールドにパタン33を転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が適用できる。直接ナノインプリント法としては、熱ナノインプリント法や、光ナノインプリント法等が挙げられる。
熱ナノインプリント法では、所定温度で加熱しながら円筒型モールド31内部に熱硬化性樹脂を充填し、円筒型モールド31を冷却してから、硬化した熱硬化性樹脂を離型することにより、フィルム状又はリール状の樹脂モールドを得ることができる。また、光ナノインプリント法では、円筒型モールド31内部に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、円筒型モールド31から硬化した光硬化性樹脂を離型することにより、フィルム状又はリール状の樹脂モールドを得ることができる。
また、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パタン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パタン転写物を複数製造すること、又は、(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得て、A/B/A/B/・・・/(Aは凸凹パタン形状、Bは凹凸パタン形状をそれぞれ示す)を繰り返しパタン反転転写することのいずれか一方、又は両方を意味する。
さらに、上記得られた樹脂モールドに対し、Niに代表される電鋳により平板状電鋳モールドを作成し、この平板状電鋳モールドによりナノインプリントリソグラフィ法によりパタンを形成する方法も挙げられる。電鋳モールドを形成した場合は、元型となる円筒型モールド31の寿命を延ばす点で好ましい。さらに、得られた電鋳モールドを円筒状に加工し、円筒状電鋳モールドに対し、上記説明した樹脂モールドを得る操作を行うことで、樹脂モールドを製造することもできる。
上記得られた樹脂モールドを使用し、基板本体11をナノインプリントリソグラフィ法にて加工する方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。
まず、基板本体11上にレジスト層を形成する。次に、樹脂モールドの凹凸構造面側をレジスト層に押圧する。或いは、樹脂モールドの凹凸構造面上にレジスト層を成膜し、成膜されたレジスト層を基板本体11上に貼りつけ、押圧する。押圧した状態にてレジスト層にUV光に代表されるエネルギー線を照射し、レジスト層を硬化させる。次に、基板本体11から樹脂モールドを剥離し、凹凸構造が転写されたレジスト層/基板本体11の積層体を得る。次に、レジスト層面側から積層体のレジスト層の残膜を除去する。例えば、酸素ガスを使用したエッチング法により残膜を除去することができる。酸素ガスを使用したエッチングとしては、酸素プラズマを使用したエッチングが挙げられ、酸素アッシングやICP−RIE(Inductively coupled plasma reactive ion etching)により行うことができる。その後、基板本体11上に形成されたレジストパタンをマスクとしてエッチング法により基板本体11を加工する。
エッチング方法は、レジスト層をマスクとして基板本体11に凹凸を形成できれば、特に限定されるものではなく、ウェットエッチング、ドライエッチング等が適用できる。特に、基板本体11の凹凸を深く形成できるためドライエッチング法が好ましい。ドライエッチング法の中でも異方性ドライエッチングが好ましく、ICP−RIE又はECM−RIEが好ましい。ドライエッチングに使用する反応ガスとしては、基板本体と反応すれば、特に限定されるものではないが、例えば、BCl3、Cl2、CHF3、又はこれらの混合ガスが好ましく、適宜、Ar、O2等を混合できる。一方でウェットエッチングを適用することにより、基板本体11へのダメージを軽減することができる。ウェットエッチングの方法については後述する。
上記樹脂モールドを使用し、基板本体11をナノインプリントリソグラフィ法にて加工する他の方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。
まず、レジスト層(1)を基板本体11上に形成する。次に、レジスト層(1)上にレジスト層(2)を形成する。次に、樹脂モールドの凹凸構造面側をレジスト層(2)に押圧する。次に、レジスト層(1)或いはレジスト層(2)の少なくとも一方が光重合性レジストである場合は、押圧した状態でレジスト層(1)及びレジスト層(2)にUV光に代表されるエネルギー線を照射する。次に、基板本体11から樹脂モールドを剥離し、凹凸構造の転写されたレジスト層(2)/レジスト層(1)/基板本体11の積層体を得る。なお、レジスト層(2)がスピンオングラス(SOG)、水素シルセスキオキサン(HSQ)、有機基を有するシルセスキオキサン(O−HSQ)や金属アルコキシドに代表されるゾルゲル材料の場合は、室温付近にて押圧し、その後モールドを剥離することもできる。レジスト層(2)面側から、レジスト層(2)の残膜を除去する。例えば、酸素ガスを使用したエッチング法により残膜を除去することができる。酸素ガスを使用したエッチングとしては、酸素プラズマを使用したエッチングが挙げられ、酸素アッシングやICP−RIE(Inductively coupled plasma reactive ion etching)により行うことができる。その後、レジスト層(1)上に形成されたレジストパタンをマスクとしてドライエッチング法によりレジスト層(1)を加工する。例えば、酸素ガスを使用したエッチング法によりレジスト層(1)をエッチングすることができる。酸素ガスを使用したエッチングとしては、酸素プラズマを使用したエッチングが挙げられ、酸素アッシングやICP−RIEにより行うことができる。加工されたレジスト層(1)及びレジスト層(2)から構成される構造をマスクとして見立て、エッチング法を適用することで基板本体11を加工することができる。
エッチング方法としては、レジスト層(1)及びレジスト層(2)から構成される構造をマスクとして基板本体11に凹凸を形成できるものであれば、上述したエッチング方法と同様のものを用いることができる。
ナノインプリントリソグラフィ法としては、以下の条件により、凹凸構造の凹部内部にマスク層を内包した凹凸構造を表面に具備するモールドを利用でき、残膜処理を不要にすることができる。
上述した方法でナノインプリントリソグラフィ法にて説明した樹脂モールドを製造する。次に、樹脂モールドの凹凸構造面上に、希釈したマスク層(レジスト層(2))材料を塗工し、溶剤を除去する。本操作により、樹脂モールドの凹部内部にマスク層(レジスト層(2))を配置できる。樹脂モールドの凹部内部にマスク層(レジスト層(2))を内包したモールドを、レジスト層(1)を成膜した基板本体11に貼合及び押圧する。或いは、樹脂モールドの凹部内部にマスク層(レジスト層(2))を内包したモールドの凹凸構造面上に希釈したレジスト層(1)を成膜し、溶剤を除去する。続いて、レジスト層(1)を基板本体11に貼り合わせる。次に、UV光に代表されるエネルギー線をマスク層(レジスト層(2))及びレジスト層(1)に照射し、樹脂モールドを剥離する。得られたマスク層(レジスト層(2)/レジスト層(1))/基板本体11に対し、マスク層(レジスト層(2))面側からドライエッチングを行うことにより、マスク層(レジスト層(2)/レジスト層(1))から構成されるパタンを基板本体11上に得ることができる。即ち、本操作ではマスク層(レジスト層(2))の残膜処理は行っていない。続いて、マスク層(レジスト層(2)/レジスト層(1))から構成されるパタンをマスクとして見立て、エッチング法を適用することで、基板本体11を加工することができる。基板本体11に対するエッチング法としては、上述したナノインプリントリソグラフィ法と同様のもの及び、酸素ガスを使用したエッチングを用いることができる。酸素ガスを使用したエッチングとしては、酸素プラズマを使用したエッチングが挙げられ、酸素アッシングやICP−RIEにより行うことができる。
また、ナノインプリントリソグラフィ法を適用することで、非周期的に極小凸部133を容易に形成することができる。ナノインプリントリソグラフィ法においては、モールドの凹凸構造(I)12と基板本体11とを、レジストを介し貼合する操作を必ず経る。貼合操作時の押圧力を調整することで、恣意的にモールドの凹凸構造内部に気泡を混入することができる。また、レジスト内部に気泡を予め混入することでもモールドの内部に気泡を巻き込むことができる。ここで、レジストとして光硬化性樹脂を使用することで、該気泡部のレジストは硬化が阻害される。即ち、光照射後にモールドを剥離することで、モールドの凹凸構造の気泡混入部位に応じた箇所のレジストは転写不良を引き起こす。よって、光学基板上に非周期的な極小凸部133を有すレジストパタンを得ることができる。なお、上記メカニズムによる極小凸部133又は極小凹部233の発生は、貼合操作条件により適宜制御できるが、特に、光硬化性樹脂のモールド表面に対する接触角が60度以上であると制御が容易になるため好ましい。特に、モールドの凹部への光硬化性樹脂の流動性を乱し、効果的に極小凸部133又は極小凹部233を発生させる観点から、該接触角は80度以上であることが好ましく、85度以上であることがより好ましい。なお、接触角が90度以上であれば、貼合時の圧力をパラメータとして、極小凸部133又は極小凹部233の制御性が向上するため好ましい。同様の観点から、92度以上であることが最も好ましい。一方上限値は、極小凸部133又は極小凹部233の集合の大きさより決定される。上記説明した集合の大きさを満たす観点から、120度以下であることが好ましく、112度以下であることがより好ましく、102度以下であることが最も好ましい。該パタンをマスクとして基板本体11を加工することにより、基板本体11上に極小凸部133を有す凹凸構造を直接形成することができる。なお、円筒状マスタースタンパから光ナノインプリント法により樹脂モールドを作製する際に、上記説明した方法を採用することで、極小凸部133を有す樹脂モールドを製造できる。極小凸部133を有す樹脂モールドをテンプレートとして、ナノインプリントリソグラフィ法により基板本体11を加工することで、極小凸部133を有す凹凸構造を直接基板本体11上に形成することができる。
次に、上述した基板本体のエッチングに関し、ウェットエッチングの方法及びウェットエッチングに好適なマスクについて説明する。
上述した手法により基板本体11上にマスクパタンを作製し、ウェットエッチングにより基板本体11をエッチングする場合、ドライエッチング法に比べてマスクパタンに忠実にエッチングが進行するために、マスク直下の基板本体11はエッチングされず、切頂型の凸部を有す凹凸構造が形成される場合がある。切頂型の凸部を有す凹凸構造に比べ、テント型の凸部を有す凹凸構造は、上記説明した内部量子効率IQE向上の効果とリーク電流抑制の効果をより効果的に発現させることができる。
ここで、以下に説明する積層体マスクを使用することで、ウェットエッチングを使用した場合であってもテント型の凸部を有す凹凸構造を製造することができる。テント型の凸部を有す凹凸構造であることにより、既に説明した原理から、内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを同時に向上させると共に、半導体結晶層の特異成長の抑制又は、特異成長した半導体結晶層同士の衝突を効果的に抑制することができる。
積層体マスクは、基板本体をウェットエッチングする際に使用する積層体マスクであって、前記基板本体上に設けられた第1のマスク層と、前記第1のマスク層上に設けられた第2のマスク層とを有し、前記第1のマスク層は、前記ウェットエッチングに用いるエッチング液に対して、前記基板本体よりエッチング耐性が高く、且つ、前記第2のマスク層よりエッチング耐性が低い材料で形成される。なお、以下の説明においてはウェットエッチングの原理を明確にするため、光学基板本体としてサファイア基板を代表して説明する。
この積層体マスクによれば、サファイア基板において、ウェットエッチングの開始時には積層体マスクが存在するためウェットエッチングがなされなかった領域が、ウェットエッチングに用いるエッチング液に耐性がない材料で構成される第1のマスク層の体積の減少に伴ってウェットエッチングされることとなる。このとき、第1のマスク層の体積が減少することにより、サファイア基板に形成された平面状の上面部(テーブルトップ部)がエッチングされて減少し、テント型の凸部を有す凹凸構造を得ることができる。この為、内部量子効率IQE改善の効果及びリーク電流抑制の効果を効果的に発現する第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の凹凸構造12(以下、凹凸構造(I)ともいう)、或いは、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2の凹凸構造)22(以下、凹凸構造(II)ともいう)を得ることができる。
まず、エッチングに用いられるマスクについて説明する。一般的に、エッチング用のマスクとしては、エッチング耐性のある材料が用いられる。即ち、マスクパタンの間隔や形状などを制御して、そのマスクパタンに応じた形状を転写する形でエッチングするために、マスクにはエッチング耐性が必要不可欠である。これにより、サファイア基板のウェットエッチング用のマスクも、ウェットエッチング条件に耐性のある材料が検討されている。ウェットエッチング条件に耐性のある材料を用いたマスクとしては、例えば、被エッチング材料とマスクとのエッチング選択比が10以上のものを使用でき、好ましくは、20以上である。
サファイア基板のウェットエッチングには、一般的に、リン酸や硫酸を単独又は混合した溶液を加熱したエッチング液が用いられる。そのため、このエッチング液に耐性のある酸化シリコン、窒化シリコン、芳香族ポリイミドなどがマスク材料として用いられる。
図24は、本発明の参考例に係るウェットエッチング耐性のあるマスクをサファイア基板のウェットエッチングに使用した場合の説明図である。図24Aは、ウェットエッチング開始前の状態を示す。図24Aに示すように、サファイア基板511上には、マスクパタンに応じた形状を有するマスク512が設けられている。なお、マスク512は、ウェットエッチング耐性のあるマスクで、サファイア基板511とマスク512とのエッチング選択比が10以上である。
図24Bは、ウェットエッチング終了時の状態を示す。図24Aに示す状態からサファイア基板511をウェットエッチングした場合、エッチングは、マスク512のマスクパタンに忠実に進行する。この結果、マスク512直下のサファイア基板511はエッチングされず、図24Bに示すように、エッチング後のサファイア基板511には、平面状の上面部(テーブルトップ部)を有する切頂型の凸部を有す凹凸構造が形成される。このような切頂型の凸部に比べ、テーブルトップの小さな或いは実質的にテーブルトップのないテント型の凸部を有す凹凸構造を使用することで、サファイア基板511上にエピタキシャル成長された膜を用いて発光素子を作製した場合に、発光素子の発光効率がより向上する。これは、半導体結晶層の成長モードを乱す効果が大きくなることと、凹凸構造の凸部頂部から急激に成長する半導体結晶層を抑制できるためである。また、テント型の凸部を有す場合、上記説明した図9に示す極小凸部133の頂部の平坦面を小さくできる。一方、上記説明した第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においては、テント型の凸部を有す場合、凸部頂部の平坦面積を小さくできる。このような場合、半導体結晶層の特異成長を抑制することが容易となり、半導体発光素子のダイオード特性が向上する。
そこで、以下に説明するウェットエッチング法を用いることで、サファイア基板にテント型の凸部を有す凹凸構造を形成することができる。これにより、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善すると共に、リーク電流の小さい半導体発光素子を得ることができる。
図25及び図26は、本実施の形態に係る積層体マスクをサファイア基板のウェットエッチングに使用した場合の説明図である。図25Aは、ウェットエッチング開始前の状態を示す図である。図25Aに示すように、サファイア基板511上には、第1のマスク層513a及び第2のマスク層513bが積層された積層体マスク513と、マスクパタンに応じた形状を有するマスク514とが設けられている。
マスク514は、積層体マスク513における第2のマスク層513bにパタン転写を行うために設けられている。このマスク514のパタンは、UVレジスト材料や熱反応型レジスト材料を用いて露光によりパタンを形成する方法や、別途モールドを用いてUVレジスト材料にパタンを転写する方法などを用いて形成されている。
続いて、マスク514を用いて積層体マスク513における第2のマスク層513bへパタン転写を行う(図25B参照)。この図25Bに示された積層体マスク513が、本実施の形態に係る積層体マスクである。第2のマスク層513bへのパタン転写は、ドライエッチングによって忠実且つ容易に行うことができる。したがって、第2のマスク層513bを構成する材料は、ドライエッチングで容易にエッチングされる材料が適している。さらに、後のサファイア基板511へのウェットエッチングにおいてエッチングに影響を与えない材料が好ましい。例えば、このような第2のマスク層513bを構成する材料は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン及び芳香族ポリイミドからなる群から選択される少なくとも1種である。
続いて、パタン転写された第2のマスク層513bをマスクとして、第1のマスク層513a及びサファイア基板511をウェットエッチングする(図25C、図26A及び図26B参照)。第1のマスク層513aは、サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して、サファイア基板511よりエッチング耐性が高く、且つ、第2のマスク層513bよりエッチング耐性が低い材料で形成される。例えば、第1のマスク層513aとサファイア基板511との選択比は10以上であり、好ましくは20以上であり、第2のマスク層513bとサファイア基板511との選択比は10未満であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。選択比を上記範囲にすることで、テント型の凹凸を制御しやすくなる。なお、選択比は、用いるマスクの体積やエッチング時間などに応じて形成されるサファイア基板511の形状(例えば間隔や深さ)によって選択することができる。
第1のマスク層513aは、サファイア基板511のウェットエッチングに伴って徐々に体積が減少するよう構成されている。例えば、このような第1のマスク層513aを構成する材料は、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン及びタングステンならびにそれらの酸化物からなる群から選択された少なくとも1種である。中でも、第1のマスク層514aを構成する材料は、エッチング選択比の観点からクロム、モリブデン及びタングステンならびにそれらの酸化物から選択された少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、クロム及びタングステンならびにそれらの酸化物のいずれかであり、最も好ましくはクロム又はクロム酸化物である。
また、本発明において、エッチング耐性がない材料と、エッチング耐性がある材料と、を混合して所望の耐性を達成し、第1のマスク層513aを得ることも可能である。この場合には、混合物の比率を制御することで、マスクのエッチングによる体積減少率を制御でき、テント型の凸部を有す凹凸構造を形成することが可能となる。この場合のマスクを構成する材料としては、例えば、酸化タングステンと酸化シリコンの混合物及び酸化クロムと酸化シリコンとの混合物が好適である。例えば、酸化タングステンと酸化シリコンの組み合わせにおいては、酸化タングステン中のタングステンと酸化シリコン中のシリコンをモル比率(%)で表した場合、タングステンは50mol%以上95mol%以下が好ましく、より好ましくは65mol%以上95mol%以下、さらに好ましくは80mol%以上95mol%以下、最も好ましくは95mol%以上100mol%以下である。
積層体マスク513における最も好ましい組み合わせは、第1のマスク層513aを構成する材料がクロム又はクロム酸化物であり、第2のマスク層513bを構成する材料が酸化シリコンである。
図25Cは、ウェットエッチング途中の状態を示す図である。図25Cに示す状態からサファイア基板511をウェットエッチングした場合、積層体マスク513における第1のマスク層513aはこのウェットエッチングに伴って体積が徐々に減少する。ウェットエッチングは、第1のマスク層513aのマスクパタンに忠実に進行するため、第1のマスク層513aの減少に伴って、第1のマスク層513aが減少した部分のサファイア基板511もエッチングされる。
図26Aは、ウェットエッチング途中の状態を示す図である。第2のマスク層513bは、第1のマスク層513aの体積が減少すると、第1のマスク層513a上にとどまることができなくなり、エッチング液中に飛び出していく。しかしながら、第2のマスク層513bは、エッチング液に影響を与えない材料で構成されているため、サファイア基板511のウェットエッチングに影響はない。
図26Bは、ウェットエッチング終了後の状態を示す図である。図26Aに示す状態からさらにウェットエッチングを進行した結果、ウェットエッチングに伴って減少する第1のマスク層513aは、すべてエッチングされて消滅している。図26Bに示すように、サファイア基板511は、積層体マスク513の減少及び消滅に伴ってエッチングされ、エッチング後のサファイア基板511には、頂点を有するテント型の凸部を有す凹凸構造が形成される。このような頂点を有するテント型の凸部を有す凹凸構造が形成されたサファイア基板511上にエピタキシャル成長された膜を用いて発光素子を作製すると、発光素子の発光効率を向上させることができる。なお、ここでの頂点は曲率半径が0超の角部を含む。
ウェットエッチング後のサファイア基板511に形成されるテント型の凸部を有す凹凸構造における平面状の上面部(テーブルトップ部)の面積は、積層体マスク513の減少割合によって制御することができる。ここで、テント型の凸部を有す凹凸構造とは、凹凸構造を構成する凸部が、例えば、円錐形状、角錐形状、円錐台形状などで構成されるものを指す。なお、これらの角錐形状の頂部は、曲率半径が0である角部であっても、曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であってもよい。特に、曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であることにより、半導体結晶層内に発生するクラックを抑制する効果が高まることから、半導体発光素子の長期信頼性を向上させることができる。
さらには、テント型の凸部を有す凹凸構造において、凹凸構造における底面と上面(テーブルトップ部)の面積比(テーブルトップ部の面積を凹凸構造の底面積で除した値)は0.3以下が好ましく、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下である。凹凸構造における底面と上面の面積比を小さくすることで、切頂型の凸部を有す凹凸構造が形成され、発光素子の発光効率を向上させる効果が高くなる。
積層体マスク513の膜厚は、目標とするテント型の構造、積層体マスク513のエッチングの速度、パタンの間隔などに応じて適宜選択することができる。
サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、200℃以上300℃以下のリン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液が好ましい。通常、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液は、室温で使用してもサファイア基板511をエッチングできない。一方、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液を200℃以上に加熱すると、オキソ酸(ピロリン酸、ピロ硫酸)が生成され、これらがサファイア基板511に作用することによりサファイア基板511のエッチングが可能となる。しかしながら、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液を300℃以上に加熱すると、メタ酸が生成されて溶解物にAlPO4などが析出し、サファイア基板511のエッチング効率が大幅に低下するかあるいはエッチングが停止してしまう。以上のことから、サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液は、200℃以上300℃以下のリン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液が好ましい。
上記説明したように、ウェットエッチング用のマスク積層体を使用することで、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を改善すると共に、リーク電流値の低い光学基板を提供できる。更に、以下に説明するウェットエッチング方法を適用した場合も、同様に、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を改善すると共に、リーク電流値の低い光学基板を提供することができる。
図27は、本実施の形態に係るサファイア基板のウェットエッチングに伴って体積が減少するマスクを使用した場合の説明図である。図27Aは、ウェットエッチング開始前の状態を示す図である。図27Aに示すように、サファイア基板511上には、マスクに応じた形状を有するマスク516が設けられている。なお、マスク516は、エッチングに伴って体積が減少するマスクである。
図27Bは、ウェットエッチング途中の状態を示す図である。図27Aに示す状態からサファイア基板511をウェットエッチングした場合、マスク516はエッチングに伴って体積が徐々に減少する。ウェットエッチングは、マスク516のマスクに忠実に進行するため、図27Bに示すように、マスク516の減少に伴って、マスク516が減少した部分のサファイア基板511もエッチングされる。
図27Cは、マスク516がすべてエッチングされた状態を示す図である。図27Bに示す状態からさらにウェットエッチングを進行した結果、エッチングに伴って減少するマスク516は、すべてエッチングされて消滅している。図27Cに示すように、サファイア基板511は、マスク516の減少及び消滅に伴ってエッチングされ、エッチング後のサファイア基板511には、頂点を有する完全なテント型の凸部を有す凹凸構造が形成される。このような頂点を有するテント型の凸部を有す凹凸構造が形成されたサファイア基板511上にエピタキシャル成長された膜を用いて発光素子を作製すると、発光素子の発光効率を向上させることができる。
マスク516としては、例えば、サファイア基板511のウェットエッチング開始時から徐々にマスク516の体積が減少するものを用いる。また、マスク516の体積が、5割以上減少したときをウェットエッチングの終了時とする。このようなマスク516とサファイア基板511との選択比は、10未満である。このようなマスク516を使用することにより、サファイア基板511において、当初マスク516が存在するためウェットエッチングがなされなかった領域が、マスク516の体積の減少に伴ってウェットエッチングされることとなる。このとき、マスク516の体積が5割以上減少することにより、サファイア基板511に形成されたテーブルトップ部がエッチングされて減少し、テント型の凸部を有す凹凸構造を得ることができる。
ウェットエッチング後のサファイア基板511に形成されるテント型の凸部を有す凹凸構造における平面状の上面部(テーブルトップ部)の面積は、マスク516の減少割合によって制御することができる。ここで、テント型の凸部を有す凹凸構造とは、凹凸構造を構成する凸部が、例えば、円錐形状、角錐形状、円錐台形状などで構成されるものを指す。
さらには、テント型の凸部を有す凹凸構造において、凹凸構造における底面と上面(テーブルトップ部)の面積比(テーブルトップ部の面積を凹凸構造の底面積で除した値)は0.3以下が好ましく、より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下である。凹凸構造における底面と上面の面積比を小さくすることで、切頂型の凸部を有す凹凸構造が形成され、発光素子の発光効率を向上させる効果が高くなる。
エッチングに伴って体積が減少するマスク516としては、サファイア基板511のウェットエッチング開始時に比べ、終了時にその体積が8割以上減少するマスクがより好ましく、体積が10割減少するマスクが最も好ましい。体積が10割減少するマスクとは、即ち、サファイア基板511のウェットエッチング終了時に、マスク516が消滅する状態を指す。マスク516がウェットエッチング終了時に消滅するように制御することで、サファイア基板511に完全なテント型の凸部を有す凹凸構造を形成することができる。
マスク516の膜厚は、目標とするテント型の構造、マスク516のエッチングの速度、の間隔などに応じて適宜選択することができる。
サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、200℃以上300℃以下のリン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液が好ましい。通常、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液は、室温で使用してもサファイア基板511をエッチングできない。一方、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液を200℃以上に加熱すると、オキソ酸(ピロリン酸、ピロ硫酸)が生成され、これらがサファイア基板511に作用することによりサファイア基板511のエッチングが可能となる。しかしながら、リン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液を300℃以上に加熱すると、メタ酸が生成されて溶解物にAlPO4などが析出し、サファイア基板511のエッチング効率が大幅に低下するかあるいはエッチングが停止してしまう。以上のことから、サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液は、200℃以上300℃以下のリン酸又は硫酸もしくはこれらの混合液が好ましい。
以下、マスクの体積を減少させながら、基板のエッチングを行う方法が異なる、光学基板の製造方法A及びBについて説明する。
(製造方法A)
製造方法Aでは、マスクの体積を減少させながら、基板のエッチングを行う方法として、マスクを、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がある材料で構成し、サファイア基板のウェットエッチングと、マスクのエッチングとを交互に実施している。
ここで、「耐性がある」とは、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液について、マスクとサファイア基板との選択比が10以上であることを言う。選択比が10以上であることで、テント型の凹凸を制御しやすく、さらに好ましくは20以上である。なお、選択比は、用いるマスクの体積やエッチング時間などに応じて形成されるサファイア基板の形状(例えば間隔や深さ)によって選択することができる。
図28は、本実施の形態に係る光学基板の製造方法の一例の各工程を示す説明図である。図28A及び図28Bにおいては、マスク517を用いて、サファイア基板511をウェットエッチングする場合を示している。マスク517は、サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がある材料で構成されている。図28Aは、ウェットエッチング開始前の状態を示す図である。図28Aに示すように、サファイア上には、マスクに応じた形状を有するマスク517が設けられている。
まず、図28Bに示すように、サファイア基板511に対して1回目のウェットエッチングを実施する。ここでは、マスク517は、エッチング液に耐性があるためエッチングされていない。続いて、図28Cに示すように、マスク517をエッチングして、マスク517の体積を減少させる。続いて、図28Dに示すように、マスク517の体積が減少した状態で、サファイア基板511に対して2回目のウェットエッチングを実施する。ここでは、マスク517の体積の減少により、サファイア基板511の一部が露出して、ウェットエッチングされる。続いて、図28Eに示すようには、マスク517が除去されるまで完全にエッチングする。この状態で、サファイア基板511に対するウェットエッチングを実施すると、サファイア基板511には、図28Fに示すような頂点を有する完全なテント型の凸部を有す凹凸構造が形成される。
なお、図28Aから図28Eに至るまでのステップ回数を多くとることで、テント型の凸部を有す凹凸構造の制御が可能である。
なお、サファイア基板511は種々のエッチング条件に対して高い耐性を有するため、マスク517のエッチング条件は広範囲に選択できる。
このような、サファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性があるマスク517を構成する材料は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、芳香族ポリイミドのいずれかから選択できる。
そして、このようなマスク517をエッチングする方法としては、ドライエッチング又はウェットエッチングを適用できる。マスク517のエッチング方法は、マスク517を構成する材料に応じて選択すればよい。
例えば、マスク517が、酸化シリコンで構成される場合について説明する。マスク517をドライエッチングする場合、フッ素系のエッチングガスを使用すると、サファイア基板511はエッチングされず、マスク517のみをエッチングすることができる。また、マスク517をウェットエッチングする場合、フッ酸溶液を使用すると、サファイア基板511はエッチングされず、マスク517のみをエッチングすることができる。
例えば、マスク517が、貴金属で構成される場合には、王水などでマスク517のみをウェットエッチングすることができる。また、マスク517が、その他の金属で構成される場合には、一般的な酸、アルカリ溶液でマスク517のみをウェットエッチングすることができる。また、マスク517が、芳香族ポリイミドで構成される場合には、O2ガスでマスク517のみをドライエッチングすることができる。
マスク517をエッチングする方法としてドライエッチングを用いる場合には、マスク517を構成する材料は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン又は芳香族ポリイミドが好ましく、安定性、成膜の容易さの観点から酸化シリコンが最も好ましい。
マスク517をエッチングする方法としてウェットエッチングを用いる場合には、マスク517を構成する材料は、金、銀、白金、パラジウム又はルテニウムが好ましく、安定性、成膜の容易さの観点から、金、銀、白金が最も好ましい。
このように、マスク517のエッチング条件を適宜選択して、サファイア基板511のウェットエッチングとマスク517のエッチングを交互に実施することができる。
(製造方法B)
製造方法Bでは、マスクの体積を減少させながら、基板のエッチングを行う方法として、マスクを、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がない材料で構成し、サファイア基板のウェットエッチングと、マスクのウェットエッチングとを同時に実施している。
ここで、「耐性がない」とは、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液について、マスクとサファイア基板との選択比が10未満であることを言う。選択比が10未満であることで、テント型の凹凸を制御しやすい。なお、選択比は、用いるマスクの体積やエッチング時間などに応じて形成されるサファイア基板の形状(例えば間隔や深さ)によって選択することができる。
サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がない材料からなるマスクを使用した場合、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液によって、サファイア基板のウェットエッチングと同時にマスクの体積が徐々に減少して、サファイア基板に形成されるテーブルトップ部の形状を制御できる。製造方法Aに係るマスク517を用いる場合に比べて、工程数を減らすことができるため製造効率を高くできる。
このような、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がないマスクを構成する材料は、例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン及びタングステンならびにこれらの酸化物からなる群から選択される少なくとも1種で構成することができる。
マスクを構成する材料は、現像性の観点から、クロム、モリブデン、タングステン又はこれらの酸化物が好ましく、さらに好ましくはクロム、タングステン又はこれらの酸化物で、最も好ましくは、クロム又は酸化クロムである。
また、本発明において、エッチング液に対して耐性がないマスク材料と、エッチング液に対して耐性があるマスク材料と、を混合して所望の耐性を達成することも可能である。
また、これらの材料と、製造方法Aに係るサファイア基板511のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性があるマスク517を構成する材料との混合物を選択することもできる。この場合には、混合物の比率を制御することで、マスクのエッチングによる体積減少率を制御でき、テント型の凸部を有す凹凸構造を形成することが可能となる。この場合のマスクを構成する材料としては、例えば、酸化タングステンと酸化シリコンとの混合物及び酸化クロムと酸化シリコンとの混合物が好適である。例えば、酸化タングステンと酸化シリコンの組み合わせにおいては、酸化タングステン中のタングステンと酸化シリコン中のシリコンをモル比率(%)で表した場合、タングステンは50mol%以上95mol%以下が好ましく、より好ましくは65mol%以上95mol%以下、さらに好ましくは80mol%以上95mol%以下、最も好ましくは95mol%以上100mol%以下である。
上記説明した方法を採用することにより、容易に本発明に係る半導体発光素子用基板を製造することが可能であり、製造された半導体発光素子用基板に少なくとも半導体層と発光層を積層することにより、半導体発光素子を製造することができる。ここで、半導体発光素子を製造するにあたり、半導体発光素子用基板を準備した後に、半導体発光素子用基板を光学検査する工程を経てから、半導体発光素子を製造することが好ましい。
既に説明したように、本発明にかかる凹凸構造は極小凸部133(又は、極小凹部233)を含むため、微小な凹凸構造にも関わらず光学的散乱性を発現することが可能である。この為、光学基板を準備した後に光学測定を行うことにより、凹凸構造の精度を事前に把握することが可能となる。例えば、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に向上させるために、サファイア基板に凹凸構造を付与した場合、該サファイア基板に対して光学測定を行い、光学測定の散乱成分を評価することで、凹凸構造の精度を把握することができる。この為、事前に、作製されるLED素子の性能ランクの目途をつけることが可能となる。また、使用できない光学基板の篩い分けもできるため、歩留りが向上する。ここで光学測定は、透過測定及び反射測定のいずれを用いても測定することができる。透過測定の場合、透過光の散乱成分を検知すればよい。この為、散乱成分を直接評価しても、ヘーズ(Haze)を利用してもよい。特に、ヘーズの場合、公知市販の装置を転用できるため好ましい。ヘーズは、光源により照射され試料中を透過した光の全透過率T及び試料中及び試料表面で拡散され散乱した光の透過率Dより求められ、ヘーズ値H=D/T×100として定義される。これらはJIS K 7105により規定されており、市販の濁度計(例えば、日本電色工業社製、NDH−10.025DP等)により容易に測定可能である。ヘーズの本質は、透過光の散乱成分であるため、光学基板に対し光を入射した際に、透過した光の散乱成分を検知するものであれば、上記説明した極小凸部133(又は、極小凹部233)の存在を定量化することが可能である。特に、より細かい分布を測定する場合、入射光は垂直入射ではなく、所定の角度により入射させると好ましい。一方、反射測定の場合、正反射成分及び拡散反射成分のいずれを用いてもよい。正反射成分を利用することにより、凹凸構造の輪郭形状の精度を評価することが可能となり、拡散反射成分を利用することにより、凹凸構造の体積分布精度を評価することが可能となる。いずれを採用するかは、使用する凹凸構造と目的により適宜選択することができる。また、拡散反射成分と正反射成分と、の比率や、(拡散反射成分―正反射成分)、(拡散反射成分―正反射成分)/正反射成分、(拡散反射成分―正反射成分)/拡散反射成分などを使用することもできる。上記光学測定においては、光源の波長を、凹凸構造の平均間隔Paveより大きくすることで、極小凸部133(又は、極小凹部233)の効果を抽出することができる。これは、極小凸部133(又は、極小凹部233)の効果を純粋に評価することを意味するため、より高い精度の管理が可能なことを意味する。また、反射測定においても、出力を大きくするために、斜入射にて測定すると好ましい。
以上説明したように、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1によれば、凹凸構造(I)12の凸部13の平均間隔Paveを、上記式(1)に示す範囲とすることにより、光学基板(I)1の表面に半導体層を設ける際に、半導体層のCVD成長モードが乱され、相成長に伴う転位欠陥が衝突して消滅し、転位欠陥の低減効果を生じさせることができる。半導体結晶内の転位欠陥が低減することにより、半導体発光素子の内部量子効率IQEを高めることが可能となる。ここで、半導体結晶層の特異成長を抑制或いは、特異成長する半導体結晶層同士の衝突を抑制することができるため、リーク電流をも抑制できる。また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1によれば、凹凸構造(I)12の凸部13の平均間隔Paveを、上記式(1)に示す範囲とすることにより、光学基板(I)1と電極と、の接触面積が増大し、オーミック抵抗が減少する。これに伴い、オーミックコンタクトが良好になるため電子注入効率EIEを向上させることが可能となる。
第2の実施の形態に係る光学基板(II)21についても、同様に、凹凸構造(II)22の凹部23の平均間隔Paveを、上記式(5)に示す範囲とすることにより、同様の効果を得ることができる。
また、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1において、凸部高さhnが上記式(2)を満たす極小凸部133が、上記式(3)を満たす確率Zで存在することにより、屈折率が急激に変化するポイントが局所的に存在確率Zにて配置される。これにより、発光層からの発光光に対して光散乱性が発現され、この光散乱性によって導波モードを解消し光取り出し効率LEEを高めることが可能となる。このように、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEが向上し、且つ、光取り出し効率LEEも同時に向上するため、外部量子効率EQEが向上し、高性能な発光デバイスを製造できる。
第2の実施の形態に係る光学基板(II)2においても、凹部深さdnが上記式(6)を満たす極小凹部233が、上記式(7)を満たす存在確率Zで存在することにより、同様の効果を奏する。
●第3の実施の形態に係る光学基板(III)
次に、第3の実施の形態に係る光学基板(III)について説明する。第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用することにより、光取り出し効率LEEと内部量子効率IQEと、を同時に改善することができる。また、第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用することで、半導体発光素子の生産性を向上させることできる。更に、第3の実施の形態に係る光学基板(III)の凹凸構造が、第1の実施の形態にて説明した極小凸部を含むことで、光取り出し効率LEEをより向上させると共に、リーク電流をより良好に保つことができる。
半導体発光素子においては、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQEを向上させることが可能であり、一方で体積変化の大きな凹凸構造による光散乱を利用し光取り出し効率LEEを向上させることができる。即ち、内部量子効率IQEを向上させようと高密度な凹凸構造を設けた場合、凹凸構造の体積の変化は小さくなり、光学的散乱性(光回折又は光散乱)が低下するため光取り出し効率LEEの向上程度が限定される。これは、半導体発光素子の発光光から見た光学現象により説明することができる。内部量子効率IQEを向上させるに十分な密度を有す凹凸構造は、発光光の波長と同程度以下のスケールとなるが、発光光の波長が凹凸構造の大きさに対して大きくなればなるほど、光学現象として有効媒質近似的作用が機能するため、光学的散乱性が低下するためである。一方で、凹凸構造の体積変化を大きくし光取り出し効率LEEを向上させた場合、凹凸構造の密度が低下するため、転位の分散効果が弱まり、内部量子効率IQE改善の程度が限定される。
以上から、半導体発光素子の外部量子効率EQEを向上させるために、光取り出し効率LEEの改善効果の大きい凹凸構造に、内部量子効率IQEをも改善可能な部位を付与することが重要なことを発見し、本発明を完成させるに至った。
第3の実施の形態においては、光取り出し効率LEEと内部量子効率IQEを改善するために、第3の実施の形態に係る光学基板(III)が有する複数の凸部群の中に特異凸部を含ませることとした。即ち、第3の実施の形態に係る光学基板は、基板本体と、前記基板本体の表面の一部又は全面に形成された凹凸構造とを具備する光学基板であって、前記凹凸構造は、互いに離間して配置された複数の凸部群を有すると共に、前記複数の凸部群は、以下に説明する特異凸部を含み、且つ、前記凹凸構造の平均間隔Paveは、1.5μm以上10μm以下であることを特徴とする。特異凸部とは、前記凸部の表面に、少なくとも1以上の凸状体或いは凹状体を具備する前記凸部である。
この構成によれば、まず凹凸構造の平均間隔Paveが1.5μm以上10μm以下であることから、半導体発光素子の発光光から見て凹凸構造を構成する凸部の大きさが大きくなる。即ち、光散乱性或いは光線追跡性が大きく発現するため、光取り出し効率LEEが向上する。次に、凹凸構造が複数の凸部により構成されることから、凹凸構造の凹部底部より半導体結晶層を成長させることが可能となり、半導体結晶層の成長性を安定化できる。ここで、凹凸構造を構成する複数の凸部群の中に、特異凸部が含まれる。ここで、特異凸部とは、前記凸部の表面に、少なくとも1以上の凸状体或いは凹状体を具備する凸部である。このように、複数の凸部群の中に特異凸部が含まれることにより、内部量子効率IQEが向上する。これは、特異凸部の表面の凸状体或いは凹状体により、半導体結晶層の成長モードが乱され、これにより半導体結晶層中の転位が低減するためと考えられる。以上から、上記要件を同時に満たすことにより、光取り出し効率LEEと内部量子効率IQEと、を同時に向上させることができる。さらに、第3の実施の形態に係る光学基板(III)の凹凸構造(以下、凹凸構造(III)ともいう)が特異凸部を含むことで、特異凸部を含まない場合に比べ、光散乱性が増加する。これは、1つの特異凸部といった微視的スケールにて光学挙動を考えた場合、特異凸部の表面に設けられている凸状体或いは凹状体により、光の進行方向が大きく変化するためである。この為、半導体発光素子を製造する前の段階において、光学基板(III)を光学検査、例えば、反射率の変化やヘーズの変化を測定することにより、光学基板(III)の凹凸構造(III)の精度を予め予測することができる。即ち、半導体発光素子を作らずとも、半導体発光素子の性能をランク分けすることが可能となることから、半導体発光素子の生産性を向上させることができる。
また、第3の実施の形態に係る光学基板(III)においては、前記特異凸部は、凸部の表面に、少なくとも1以上の凸状体或いは凹状体を有すと共に、前記凸状体或いは凹状体の前記凸部の表面に対する被覆率が0%超100%未満であることが好ましい。
この構成によれば、特異凸部による内部量子効率IQE改善の効果をより大きくすることができる。まず、特異凸部における凸状体或いは凹状体の前記凸部の表面に対する被覆率が0%の場合、光学基板(III)の複数の凸部群は特異凸部を含まないため、内部量子効率IQE改善の効果が発現されない。この観点から、被覆率は0%超となる。次に、特異凸部における凸状体或いは凹状体の前記凸部の表面に対する被覆率が100%の場合、特異凸部の表面は凸状体或いは凹状体により隙間なく埋め尽くされることとなる。この場合、特異凸部表面のラフネスが急激に悪化することから、凹凸構造(III)により、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光は、あらゆる方向へとランダムに方向転換される。この為、再度導波モードを形成する発光光の割合が大きくなるためである。より具体的には、半導体発光素子の上方或いは下方へ、と向かう光の量が低減し、半導体発光素子の側面へと向かう光が増加すると考えらえる。
更に、光学基板(III)においては、前記特異凸部は、前記凹凸構造の前記凸部に対して0%超100%以下含まれることが好ましい。
この構成によれば、特異凸部による内部量子効率IQE改善の効果をより大きくすることができる。まず、特異凸部の複数の凸部に対する存在割合が0%の場合、光学基板(III)の複数の凸部群は特異凸部を含まないため、内部量子効率IQE向上の効果が発現されない。この観点から、存在割合は0%超となる。次に、特異凸部の複数の凸部に対する存在割合が100%の場合、凹凸構造は特異凸部によってのみ構成されることとなる。この場合、凹凸構造(III)の複数の凸部表面に平均的屈折率の乱れが、各凸部毎に形成される。これにより、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光の進行方向を乱し、半導体発光素子外部へと発光光を取り出す効率が低減する。より具体的には、半導体発光素子の上方或いは下方へ、と向かう光の量が低減し、半導体発光素子の側面へと向かう光が増加すると考えられる。
光学基板(III)の凹凸構造(III)は複数の互いに離間した凸部群により構成される。ここで、光学基板(III)の凹凸構造(III)を構成する凸部群は、少なくとも100個の凸部である。即ち、光学基板(III)の表面に少なくとも100個の凸部を含むと共に、これらの凸部が以下に説明する平均間隔Paveを満たし、且つ、以下に説明する特異凸部を含むことで、光学基板(III)となる。100個以上の凸部により凹凸構造(III)が作られることで、上記説明した光取り出し効率LEEの向上と内部量子効率IQEの向上と、を両立できる。更には、上記説明した半導体発光素子の生産性向上を達成できる。これは、半導体発光素子内にて導波モードを形成する発光光が、凹凸構造(III)に衝突する確率から判断することができた。特に、導波モードをより効果的に乱し、内部量子効率IQEを向上させる観点から、凹凸構造(III)は、1000個以上の凸部より構成されることが好ましく、4000個以上の凸部より構成されることがより好ましく、6000個以上の凸部より構成されることが最も好ましい。即ち、光学基板(III)は、光学基板(III)その表面が全て凹凸構造(III)により覆われていても、部分的に凹凸構造(III)が設けられていても、凹凸構造(III)が上記説明した凸部の数を満たす凸部群により構成されていればよい。
ここで、凸部の形状は、円錐、円錐の側面部が段階的傾斜を有す錐状体、円錐の側面部が上に凸に膨らんだ錐状体、円錐の底面が歪んだ錐状体、n角錐、n角錐の底面の角部の曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であるn角錐、円錐の底面の外形が3以上の変曲点を有す円錐、前記錐状体において記載した底面形状を有す円錐台、前記錐状体において記載した底面形状を有す円柱又は多角柱等を採用できる。なお、これらの錐状体は錐台状であってもよい。また、これら錐状体においては、その頂部の曲率半径が0である角部を有すものであっても、その頂部の曲率半径が0超の丸みを帯びた角部を有すものであってもよい。特に、頂部の曲率半径が0超の丸みを帯びた角部を有すことで、半導体発光素子の半導体結晶層からみた凹凸構造(III)の体積変化が大きくなるため、導波モードを乱す効果が増大するため好ましい。また、特に、光取り出し効率LEEを向上させると共に、半導体結晶層の成長により発生するクラックを抑制する観点から、円錐、円錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、円錐台、三角錐、三角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、六角錐、六角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、凸部の底面の多角形状に対して、その辺の数より多い構成辺の多角形状である凸部上面である凸部であることが好ましい。なお、三角錐、三角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、六角錐、六角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体において、凸部底面の多角形状は、曲率が0超の角部により構成されていることがより好ましい。更に、円錐、円錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、三角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体、又は、凸部底面が略三角形状であり且つ凸部上面が略円形状である凸部であることが好ましい。なお、三角錐の頂点が0超の曲率を有す錐状体においては、凸部底面の三角形状は、曲率が0超の角部により構成されていることがより好ましい。また、略三角形とは、三角形の角部の曲率が0超であることを意味する。このような凸部により凹凸構造(III)が構成されることにより、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光に対して、光学基板(III)の凹凸構造(III)の凹部底面とそこから突き出す凸部の側面と、の傾斜面により、光学的散乱性又は光線追跡性を起こすことができる。これにより、半導体発光層内部にて閉じ込められていた導波モードの発光光を、特に、半導体発光素子の厚み方向へ、と出光させることができるため、光取り出し効率LEEが向上する。
このような観点から、凹凸構造(III)を構成する複数の凸部の平均間隔Paveは、1.5μm以上10μm以下である。1.5μm以上であることにより、上記説明した光学的散乱性或いは光線追跡性を効果的に発現することができるため、光取り出し効率LEEの向上程度が増加する。同様の観点から、2.0μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましく、2.8μm以上であることが最も好ましい。一方で、上限値は内部量子効率IQEと、半導体発光素子の製造に係る効果により決定される。平均間隔Paveが10μm以下であることにより、半導体結晶層の成長時に発生するクラックが抑制されるため、内部量子効率IQEを向上できる。特に、本効果を発揮すると共に、半導体結晶層の成膜時間を短縮する観点から、平均間隔Paveは8μm以下であることがより好ましく、5.5μm以下であることが最も好ましい。
ここで、平均間隔Paveとは、間隔Pの相加平均値である。間隔Pとは、複数の凸部群の中から選択した凸部(凸部A)を中心にみた場合に、凸部Aに最近接する凸部Bまでの距離である。ここで、凸部間の距離とは、凸部頂部中央部同士の距離である。凸部に頂点のある場合は、頂点間距離であり、凸部頂部に平坦面のある場合は、該平坦面中央同士の距離である。平均間隔Paveは、間隔Pの相加平均値である。平均間隔Paveは、以下の定義に従い算出される。まず、光学基板(III)の凹凸構造面を観察する。ここで、観察には走査型電子顕微鏡、レーザ顕微鏡或いはデジタルマイクロスコープを使用することができる。凹凸構造面を観察し、少なくとも100個の凸部を鮮明に観察可能になるまで倍率を拡大する。その後、観察像内から100個の凸部を選び出す。次に、選択した100個の凸部から10個の凸部を任意に選択し、各凸部に対し、上記説明した間隔Pを算出する。平均間隔Paveは、算出された10個の間隔P(P1,P2、…P10)の相加平均値、即ち(P1+P2+…+P10)/10として与えられる。なお、以下に説明する凹凸構造(III)に含まれる特異凸部は、平均間隔Paveを算出するのに使用した100個の凸部から判断される。即ち、選択した100個の凸部をより詳細に解析することで、特異凸部の判断を判断し、特異凸部の割合(100の凸部に含まれる特異凸部の割合)を求める。また、同様に該100個の凸部をより詳細に解析することで、特異凸部表面状態の把握をする。
次に、凸部の高さについて説明する。凸部の高さは、平均凸部高さとして定義される。ここで、平均凸部高さは、平均間隔Paveを求めるのに使用した100個の凸部を使用し定義される。平均の定義は以下の通りである。まず、該100個の凸部から任意に10個の凸部を選択する。次に、各凸部に対し、高さを測定する。ここで高さとは、凹凸構造の凹部底部の作る面Bと凸部頂部を通過し面Bに平行な面Tと、の最短距離である。平均凸部高さは、算出された10個の高さH(H1、H2、…H10)の相加平均値、即ち(H1+H2+…+H10)/10として与えられる。
平均凸部高さは、平均間隔Paveの0.1倍以上1.5倍以下であることが好ましい。0.1倍以上であることにより光学的散乱強度又は光線追跡性が増加するため、光取り出し効率LEEの改善が大きくなる。一方で、1.5倍以下であることにより、半導体結晶層の成長性が安定化することから、半導体結晶層内に発生するクラックの抑制効果が大きくなり、内部量子効率IQEの改善効果が大きくなる。同様の効果から、0.3倍以上1.3倍以下であることがより好ましく、0.45倍以上1.0倍以下であることが最も好ましい。
次に、凸部底部の径について説明する。凸部底部の径は、平均径として定義される。ここで、平均径は、平均間隔Paveを求めるのに使用した100個の凸部を使用し定義される。平均の定義は以下の通りである。まず、該100個の凸部から任意に10個の凸部を選択する。次に、各凸部に対し、凸部底部の径を測定する。ここで凸部底部の径とは、凹凸構造の凸部の底部の径である。凸部の底部の輪郭のある一点から、他の一点までの距離が最大となる時の該距離が凸部の底部の径である。平均径は、算出された10個の凸部底部の径φ(φ1,φ2、…φ10)の相加平均値、即ち(φ1+φ2+…+φ10)/10として与えられる。
凹凸構造(III)の凸部底部の平均径は、平均間隔Paveの0.1倍以上0.9倍以下であることが好ましい。0.1倍以上であることにより、光学的散乱強度又は光線追跡性が増加することから光取り出し効率LEEが向上する。一方で、0.9倍以下であることにより、半導体結晶層の成長性が良好となる。同様の効果から、凸部底部の平均径は、平均間隔Paveの0.3倍以上0.8倍以下であることがより好ましく、0.5倍以上0.8倍以下であることが最も好ましい。
次に、凹凸構造(III)に含まれる特異凸部について説明する。ここで、凹凸構造(III)に特異凸部を含む、とは、例えば凹凸構造(III)がZ個の凸部より構成される場合、Z個の凸部の中にY個の特異凸部が含まれることを意味する。なお、以下に説明するようにZ=100である。即ち、非特異凸部を正常凸部と記載すれば、正常凸部と特異凸部によって凹凸構造(III)が構成され、正常凸部と特異凸部と、の合計凸部数が凹凸構造(III)を構成する凸部の数である。
特異凸部を含む凸部群により凹凸構造(III)が構成されることで、上述した光取り出し効率LEEの向上に加え、内部量子効率IQEを向上させることができる。これは、特異凸部の表面の凸状体或いは凹状体により、半導体結晶層の成長モードが乱され、これにより半導体結晶層中の転位が低減するためと考えられる。さらに、特異凸部を含むことで、特異凸部を含まない場合に比べ、光散乱性が増加する。この為、第3の実施の形態に係る光学基板(III)に対する光学検査、例えば、反射率を用いた検査やヘーズを用いた検査を行うことで、光学基板(III)の精度を予め把握できる。よって、半導体発光素子を製造する前段階において、光学基板(III)の凹凸構造(III)を篩い分けることが可能となることから、半導体発光素子の生産性を向上させることができる。
特異凸部は、平均間隔Paveを求める際に使用した100個の凸部から判断され、特徴付けられる。まず、該100個の凸部をより詳細に観察する。ここでは、走査型電子顕微鏡、レーザ顕微鏡、又はデジタルマイクロスコープを用いる。該100個の凸部を全て観察し、以下に説明する定義を満たす凸部を特異凸部として認定する。また、以下に説明する特異凸部における凸状体及び凹状体の被覆率は、該100個の凸部の中に含まれていた特異凸部それぞれに対する被覆率の相加平均値として定義される。また、以下に説明する特異凸部の存在確率は、該100個の凸部の中に含まれる特異凸部の存在割合である。即ち、特異凸部がY個(≧1)含まれる場合、存在確率はY/100*100=Y%となる。なお、該100個の凸部を観察した際に特異凸部が確認されなかった場合、該100個の凸部を含むK個(K>100)の凸部を観察し、特異凸部を探す。Kは、順次300、500、1000、2000、5000、そして10000まで増加させる。10000個まで観察し、特異凸部を観察できなかった場合、特異凸部の存在確率を0%とする。即ち、K=300にて特異凸部が確認されれば、その特異凸部の個数をY個とすると存在確率はY/300×100=Y/3%となる。ここで、該300個の凸部にも特異凸部の無かった場合、K=500として存在確率Y/5%を求める。同様に、K=500においても特異凸部の無かった場合、K=1000として存在確率Y/10%を求める。以下同様に特異凸部がなかった場合に上記Kの値を増加させる。
特異凸部の効果をより一層発揮する観点から、特異凸部の表面に設けられる凸状体或いは凹状体の被覆率は、0%超100%未満であることが好ましい。ここで、被覆率とは、凸部の表面に対する凸状体及び凹状体の平面占有率である。即ち、ある特異凸部を凸部上面側より観察した場合の平面積をSとした場合、該観察像内における特異凸部の表面に配置される凸状体及び凹状体の合計平面積をSiとすれば、被覆率は(Si/S)×100となる。
図29は、第3の実施の形態に係る光学基板における特異凸部を示す模式図である。図29では、特異凸部520を1つを抜き出して示している。図29A及び図29Bは、特異凸部520を側面側より観察した場合を、図29C及び図29Dは、特異凸部520をその頂部側より観察した場合を示している。また、図29Aの特異凸部520を頂部側より観察した像が図29Cであり、図29Bの特異凸部520を頂部側より観察した像が図29Dである。
図29Aには、特異凸部520の側面部に2か所の凸状体(又は凹状体、以下同様)521、522が存在する。この特異凸部520を頂部側より観察した像が図29Cであり、この例においては、特異凸部520の底部の輪郭形状は円形である。特異凸部520の頂部側より観察した平面像における特異凸部520の輪郭により囲まれる面積をS、凸状体又は凹状体の面積をSi1、Si2とすれば、被覆率は(Si1+Si2)/S×100として与えられる。
同様に、図29Bには、特異凸部520の側面部に3か所の凸状体523、524、525が存在する。この特異凸部520を頂部側より観察した像が図29Dであり、この例においては、特異凸部520の底部の輪郭形状は三角形である。特異凸部520の頂部側より観察した平面像における特異凸部520の輪郭により囲まれる面積をS、凸状体523、524、525の面積をSi1、Si2、Si3とすれば、被覆率は(Si1+Si2+Si3)/S×100として与えられる。
特異凸部における凸状体及び凹状体の特異凸部の表面に対する被覆率が0%超であることにより、光学基板(III)の複数の凸部群が特異凸部を含むため、上記説明した原理から内部量子効率IQE向上の効果が発現される。一方で、特異凸部における凸状体及び凹状体の特異凸部の表面に対する被覆率が100%未満であることにより、凸状体又は凹状体により被覆されていない凸部表面があることから、該凸部表面のラフネスの増大を抑制できる。これに伴い、第3の実施の形態に係る光学基板(III)の凹凸構造(III)による、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光の進行方向を乱し、半導体発光素子外部へと発光光を出光させる効率が向上する。同様の観点から、被覆率は90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、50%以下であることが最も好ましい。また、同様の観点から、被覆率は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.15%以上であることが最も好ましい。なお、半導体発光素子において、特に内部量子効率をより向上させたい場合は、被覆率は上記最も広い範囲の中において、50%以上90%以下であることが好ましく、60%以上86%以下であることがより好ましく、70%以上84%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たす場合、特異凸部の凸状体又は凹状体により、半導体結晶層の成長モードを乱す効果が高まり、特異凸部近傍において転位を衝突させ減少させることができる。一方で、光取り出し効率を特に向上させたい場合は、上記最も広い範囲の中において、0.1%以上30%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以下以上10%以下の範囲であることがより好ましく、0.1%以上5%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たすことで、導波モードを乱された発光光が再度導波モードを形成することを抑制できることから、光取り出し効率がより向上する。
また、第3の実施の形態において、凹凸構造(III)を構成する複数の凸部に対する特異凸部の存在割合は、0%超100%以下未満であることが好ましい。特異凸部の複数の凸部に対する存在割合が0%超であることにより、上記説明した特異凸部の効果を発現することができる。一方で、100%未満であることにより、凹凸構造(III)の凸部表面に作られる平均的屈折率の乱れを小さくすることができることから、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光の進行方向を乱し、半導体発光素子の上方或いは下方へ、と向かう光の量を増加させることができる。同様の観点から、存在確率は90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、50%以下であることが最も好ましい。また、同様の観点から、存在確率は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.15%以上であることが最も好ましい。なお、半導体発光素子において、特に内部量子効率をより向上させたい場合は、存在確率は上記最も広い範囲の中において、50%以上95%以下であることが好ましく、60%以上90%以下であることがより好ましく、70%以上80%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たす場合、特異凸部の凸状体又は凹状体により、半導体結晶層の成長モードを乱す効果が高まり、特異凸部近傍において転位を衝突させ減少させることができる。一方で、光取り出し効率を特に向上させたい場合は、上記最も広い範囲の中において、0.025%以上30%以下の範囲であることが好ましく、0.05%以上10%以下の範囲であることがより好ましく、0.1%以上5%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たすことで、導波モードを乱された発光光が再度導波モードを形成することを抑制できることから、光取り出し効率がより向上する。
特異凸部とは、第3の実施の形態に係る凹凸構造(III)を構成する複数の凸部のうち、凸部の表面に、少なくとも1以上の凸状体或いは凹状体を具備する凸部である。図30は、第3の実施の形態に係る光学基板(III)における特異凸部を示す模式図である。図30では、1つの特異凸部520の表面を表し、特異凸部520を側面より観察している。図30中の破線にて図示した部分が、特異凸部520の特徴となる凸部表面の凸状体527或いは凹状体526である。図30Aは、凹状体526が線状の場合である。ここでは、2つの破線の間が凹状体526である。図30Bは、凸状体527が、円状又は楕円状である場合である。図30C及び図30Dは、図30Bに示した特異凸部520の観察方向を変えた場合の模式図である。図30Cは、凹状体526を、図30Dは凸状体527を示している。
特異凸部が有する凸状体又は凹状体の輪郭形状は、特に限定されず、n角形(n≧3)、曲率半径0超の角部を含むn角度形(n≧3)、直線状、曲線状、曲線に部分的にエッジを含む曲線状であってもよい。図31は、第3の実施の形態に係る光学基板における特異凸部を示す模式図である。ここで、エッジとは、角部のことである。即ち、曲線に部分的にエッジを含む曲線状とは、図31に示すように、滑らかな曲線部528aと角部528bと、が混在した状態である。なお、角部528bは曲率半径0超の丸みを帯びたものでもよい。また、図31においては、該角部528を1つのみ示しているが、これが複数設けられてもよい。
また、特異凸部520に2以上の凹状体又は凸状体が含まれる場合、それらの形状は同一であっても異なっていてもよい。また、凸状体のみであっても、凹状体のみであっても、凸状体と凹状体が混在していてもよい。
また、凹凸構造(III)に含まれる特異凸部520が2以上の場合、それらの特異凸部520の凸状体又は凹状体は、互いにその形状が異なっていても同一であってもよい。
特異凸部520の凸状体又は凹状体の高さ又は深さは、0より大きく、平均凸部高さHよりも小さい範囲であることが好ましい。ここで、凸状体の高さとは、特異凸部520の非凸状体部の表面を基準とした際の、凸状体の最も該基準面より遠い位置までの距離である。一方で、凹状体の深さとは、特異凸部520の非凹状体部の表面を基準とした際の、凹状体の最も該基準面より遠い位置までの距離である。特異凸部520の凸状体又は凹状体の高さ又は深さが0超であることにより、上記説明した特異凸部520の効果を発揮することができる。一方で、平均凸部高さHよりも小さいことで、光学的散乱性の均等性が向上するため、光取り出し効率LEEの改善が大きくなる。更に、半導体結晶層の特異成長を抑制できることから、p−n接合界面の安定性が向上し、ダイオード特性が向上する。即ち、リーク電流を抑制できる。同様の観点から、凸状体又は凹状体の高さ又は深さは、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが最も好ましい。また、同様の効果から、平均凸部高さHの1/2以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましく、1/10以下であることが最も好ましい。
特異凸部520の配置は特に限定されず、第3の実施の形態に係る光学基板の凹凸構造を構成する複数の凸部に対して、規則的に配置されても非規則的に配置されてもよい。また、特異凸部が互いに隣接するように、換言すれば2以上の集合を形成しても、或いは離散的に分散し配置されてもよい。
特異凸部520の凸状体又は凹状体は、少なくとも特異凸部の凸部上方に設けられることが好ましい。特異凸部520の高さをhnとする。特異凸部520の凸部底部の面を、hn/3だけ凸部頂部側に移動させた面を基準面とする。この基準面よりも凸部頂部側に含まれる部位が、凸部上方である。特異凸部の凸部上方に少なくとも凸状体又は凹状体が設けられることで、既に説明した光取り出し効率LEEの改善効果が大きくなる。これは、凸部上方に凸状体又は凹状体が設けられることで、半導体結晶層の屈折率の乱れが大きくなるためである。特に、前記hn/3が、hn/2、より好ましくはhn/1.5であれば、導波モードを作る発光光の進行方向を乱す効果がより高まるため好ましい。なお、前記効果をいっそう発揮する観点から、特異凸部の凸状体又は凹状体のうち30%以上が凸部上方のみに設けられることが好ましく、60%以上が凸部上方のみに設けられることがより好ましく、85%以上が凸部上方にのみ設けられることが最も好ましい。
次に、第3の実施の形態における凸部の配列について説明する。凸部の配列は、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、の関係から決定される。光取り出し効率LEEを向上させる観点から、凸部の配列は、少なくともある1軸に対して線対称又は略線対称な配列であることが好ましい。特に、互いに直行する2つの軸に対して線対称又は略線対称であることがより好ましく、60度×n(n≧1)の回転角により互いに重なる3つの軸に対して線対称又は略線対称であることが最も好ましい。このような配列を満たす凸部により凹凸構造(III)が作られることで、導波モードを形成する発光光に対して光学的反射或いは光学的散乱を強く作用させることができる。即ち、導波モードを乱された発光光が再度導波モードを作ることを抑制できるため、光取り出し効率LEEがより向上する。更に、互いに離間する凸部間の距離の均等性を向上させることができることから、半導体結晶層の特異成長を抑制することができるため、リーク電流抑制の効果が大きくなる。なかでも、60度×n(n≧1)の回転角により互いに重なる3つの軸に対して線対称又は略線対称な配列である場合、上記効果がより一層発揮されるため好ましい。なお、このような配列としては例えば、正六方格子状の配列、準六方格子状の配列、正六方格子においてある配列軸Aと該配列軸Aに対して90度回転した軸Bをとった時に、軸A及び軸B方向に周期的な間隔の変調が加わった配列等が挙げられる。
光学基板(III)の凹凸構造(III)に、第1の実施の形態にて説明した極小凸部133(図9参照)と同様の思想の凸部を含ませることで、光取り出し効率LEEをより向上させると共に、その存在確率を第1の実施の形態にて説明した範囲とすることで、リーク電流を抑制できる。特に、特異凸部である極小凸部を含むことで、これらの効果がいっそう発揮される。ここで、第3の実施の形態における極小凸部とは、上記平均凸部高さHに比べて凸部高さ低い凸部であり、特に0.6H以下の高さを有す凸部のことである。なお、極小凸部の判断は、光学基板の凹凸構造に対する原子間力顕微鏡観察により判断できる。また、極小凸部の存在確率を求める際の、極小凸部のカウント方法は、上記特異凸部の存在確率と同様である。
光学基板(III)の材質は、第1の実施の形態の光学基板(I)1と同様である。
光学基板(III)を使用した半導体発光素子は、第1の実施の形態における光学基板(I)及び凹凸構造(I)を、第3の実施の形態に係る光学基板(III)及び凹凸構造(III)と読み替えればよい。
光学基板(III)の凹凸構造(III)の製造方法について説明する。特異凸部を含む凹凸構造(III)を製造する方法は2つに分類できる。第1に、特異凸部のない凹凸構造を作製した後に、正常凸部の一部を特異凸部へと加工する方法である。第2に、特異凸部を含む凹凸構造を製造する方法である。いずれの方法であっても、第1の実施の形態にて既に説明した方法により製造することができる。特に、フォトリソグラフィ法を採用することが好ましい。フォトリソグラフィ法は公知一般手法を適用できる。中でも、フォトレジスト中に微粒子や不純物を分散させることで、効率的に特異凸部を製造できる。また、特異凸部のない、或いは略ない凹凸構造を作製し、該凹凸構造に対して微細パタンを押し当てる或いはこすり付けることでも特異凸部を形成できる。なお、凹凸構造(III)の平均間隔よりも微細パタンの平均間隔は小さいと、効果的に特異凸部を生成できる。特に、凹凸構造(III)の平均間隔に比べ微細パタンの平均間隔が0.8倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることがより好ましく、0.3倍以下であることが最も好ましい。なお、微細パタンとして、第1の実施の形態にて説明したモールドを使用できる。上述した微細パタンを押し付ける或いは擦ることで、正常凸部の一部が特異凸部へ、と加工される。中でも、微細パタンを構成する材料の硬度が光学基板の硬度よりも大きいことが好ましい。
●第4の実施の形態に係る光学基板(IV)
次に、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)について説明する。光学基板(IV)を使用することにより、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善することができる。また、半導体結晶層に生成するクラックを抑制できるため、半導体発光素子の長期信頼性を向上させることができる。更に、光学基板(IV)の凹凸構造が、上記説明した第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の凹凸構造(I)12或いは第2の実施の形態に係る光学基板(II)2の凹凸構造(II)22を含むことにより、光取り出し効率LEEをより向上させると共に、リーク電流をより良好に保つことができる。
半導体発光素子においては、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQEを向上させることが可能であり、一方で体積変化の大きな凹凸構造による光散乱を利用し光取り出し効率LEEを向上させることができる。即ち、内部量子効率IQEを向上させようと高密度な凹凸構造を設けた場合、凹凸構造の体積の変化は小さくなり、光学的散乱性(光回折又は光散乱)が低下するため光取り出し効率LEEの向上程度が限定される。これは、半導体発光素子の発光光から見た光学現象により説明することができる。内部量子効率IQEを向上させるに十分な密度を有す凹凸構造は、発光光の波長と同程度以下のスケールとなるが、発光光の波長が凹凸構造の大きさに対して大きくなればなるほど、光学現象として有効媒質近似的作用が機能するため、光学的散乱性が低下するためである。一方で、凹凸構造の体積変化を大きくし光取り出し効率LEEを向上させた場合、凹凸構造の密度が低下するため、転位の分散効果が弱まり、内部量子効率IQE改善の程度が限定される。
以上から、半導体発光素子の外部量子効率EQEを向上させるために、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善するためには、内部量子効率IQEを改善できる凹凸構造と、光取り出し効率LEEを改善できる凹凸構造と、をそれぞれ設けること、及び、互いの凹凸構造がそれぞれの機能に支障をきたさないように配置されることが重要なことを発見し、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)を完成させるに至った。
第4の実施の形態に係る光学基板(IV)においては、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを改善するため、光学基板が有する複数の凹凸構造の平均間隔Paveの違いを利用した。即ち、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)は、平均間隔PLを有する凹凸構造(L)と、平均間隔PSを有する凹凸構造(S)を具備し、平均間隔PLと平均間隔PSとは所定の比率範囲内にて異なることを特徴とする。
ここで、平均間隔Paveのより大きな、一方の凹凸構造(L)が光取り出し効率LEE向上の機能を発現し、平均間隔Paveのより小さな、他方の凹凸構造(S)が内部量子効率IQE改善の機能を発現する。更に、それぞれの凹凸構造(L,S)の機能を相乗させ互いに補完させるために、換言すれば内部量子効率IQEを改善する、一方の凹凸構造(S)により光取り出し効率LEEが低下することなく、光取り出し効率LEEを向上する他方の凹凸構造(L)により内部量子効率IQEが低下することのないために、一方の凹凸構造(L又はS)の表面の少なくとも一部に他方の凹凸構造(S又はL)が設けられることを特徴とする。
図32A及び図32Bは、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)の一例を示す断面概略図である。図32A及び図32Bに示す光学基板710は、基板本体702の主面上に凹凸構造面720が設けられており、凹凸構造面720は、第1の凹凸構造(以下、凹凸構造(L)と記す)と、第2の凹凸構造(以下、凹凸構造(S)と記す)とで構成されている。凹凸構造(L)は、互いに離間して設けられた凸部703(又は凹部704)と、隣接する凸部703(又は凹部704)の間を繋ぐ凹部704(又は凸部703)とで構成されている。複数の凸部703(又は凹部704)は平均間隔PLを有する。
一方、凹凸構造(S)は、凹凸構造(L)を構成する凸部703及び凹部704の表面に設けられた複数の凸部705(又は凹部706)と、複数の凸部705(又は凹部706)の間を繋ぐ凹部706(又は凸部705)とで構成されている。複数の凸部705(又は凹部706)は平均間隔PSを有する。図32Aにおいては、複数の凸部703の頂部表面及び凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられている。一方、図32Bにおいては、複数の独立した凹部704を繋ぐ凸部703の頂部上に凹凸構造(S)が設けられている。なお、凹凸構造(S)は、図32A、図32Bの例に限定されず、凸部703或いは凹部704の少なくともいずれか一方の表面上に設けられていればよい。
なお、凹凸構造(S)は、凸部703と凹部704の底部とを繋ぐ凸部703の側面に設けることもできる。凸部703の側面に凹凸構造(S)が設けられる場合、導波モードを乱す効果がいっそう強まると共に、乱された発光光の進行方向をより半導体発光素子の厚み方向に変化させることが可能と考えられる。この為、半導体発光素子をパッケージ化する際の封止材の選定が容易となる。
特に、第1の凹凸構造(L)は、互いに離間した複数の凸部703から構成されると共に、少なくとも第1の凹凸構造(L)の凹部704の底部に第2の凹凸構造(S)を構成する凸部705又は凹部706が設けられることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凹部704の底部を起点として半導体結晶層の成長を開始させることができる。特に、凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられることで、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となることから、凹凸構造(S)の近傍において半導体結晶層の転位を低減できる。また、凹凸構造(L)が、複数の凸部703より構成されることから、凹部704の底部より成長する半導体結晶層の凸部703近傍におけるクラックを抑制することができる。即ち、内部量子効率IQEを向上すると共に、半導体発光素子の信頼性を向上できる。また、以下に説明するように凹凸構造(L)と凹凸構造(S)と、は所定の平均間隔の関係を満たすことから、光学的散乱性が大きくなる。特に、少なくとも凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられる構成であることから、導波モードを光散乱或いは光学的反射により乱すことが可能となり、導波モードが再度導波することを抑制できるため、光取り出し効率LEEが同時に向上する。
又は、第1の凹凸構造(L)は、互いに離間した複数の凹部704から構成されると共に、少なくとも第1の凹凸構造(L)の凸部703の頂部に第2の凹凸構造(S)を構成する凸部705又は凹部706が設けられることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凸部703の頂部を起点として半導体結晶層の成長を開始させることができる。特に、凸部703の頂部に凹凸構造(S)が設けられることで、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となることから、凹凸構造(S)の近傍において半導体結晶層の転位を低減できる。この時、凸部703の頂部より成長する半導体結晶層は、凹部704の底部より成長する半導体結晶に比べ、成長性が良好となる。よって、内部量子効率IQEが効果的に向上する。半導体結晶層の成長条件によっては、凹部704の底部より成長する半導体結晶層と凸部703の頂部より成長する半導体結晶層と、を効果的に連結することができる。この場合、凸部703近傍における半導体結晶層のクラックをより効果的に抑制できる。また、半導体結晶層の成長条件によっては、凹部704内に空隙を生成することも容易となる。この場合、光学基板(IV)710を、例えばレーザーリフトオフにより除去する際の、除去精度が向上する。また、以下に説明するように凹凸構造(L)と凹凸構造(S)と、は所定の平均間隔の関係を満たすことから、光学的散乱性が大きくなる。特に、凹凸構造(L)が複数の凹部704より構成されることから、体積変化がより大きくなるため、導波モードを乱す効果が大きくなり、光取り出し効率LEEが向上する。
上記説明した第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710においては、凹凸構造(S)の、凹凸構造(L)に対する被覆率が0%超100%未満であることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凸部703或いは凹部704に必ず凹凸構造(S)が設けられることから、上記説明した原理より、内部量子効率IQEが効果的に向上すると共に、半導体結晶層内部のクラックを抑制できる。一方で、凹凸構造(L)の凸部703及び凹部704が全て凹凸構造(S)により埋められることがない。これにより、凹凸構造(L)による光取り出し効率LEEの向上効果を、凹凸構造(S)により低下させることを抑制できる。即ち、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させる効果がいっそう高まる。
なかでも、光学基板(IV)710においては、第2の凹凸構造(S)を構成する凸部705の径は、底部から頂点へ向かって小さくなることが好ましい。
この構成によれば、凹凸構造(S)の凹部706より成長する半導体結晶層の転位を低減すると共に、該半導体結晶層が凹凸構造(S)の凸部705近傍においてクラックを発生することを抑制できる。この為、半導体発光素子の長期信頼性を向上させることができる。
また、凹凸構造(S)と凹凸構造(L)の少なくとも一方が、上記説明した第1の実施の形態に係る凹凸構造(I)12或いは第2実施の形態に係る凹凸構造(II)22であると、光取り出し効率LEEがより向上すると共に、半導体結晶層の特異成長を抑制することができるため、リーク電流をより良好に抑制することができる。特に、少なくとも凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12を満たす場合に、前記効果がより一層発揮される。
図32Cは、光学基板(IV)の他の例を示す断面概略図である。光学基板710は、基板本体702の主面上に凹凸構造面720が設けられており、凹凸構造面720は、第1の凹凸構造(以下、凹凸構造(S)と記す)と、第2の凹凸構造(以下、凹凸構造(L)と記す)とで構成されている。凹凸構造(S)は、互いに離間して設けられた凸部705と、隣接する凸部705の間を繋ぐ凹部706とで構成されている。複数の凸部705は平均間隔PSを有する。
一方、凹凸構造(L)は、凹凸構造(S)の表面上に凹凸構造(S)が一部露出するように互いに離間して設けられ、凹凸構造(S)を構成する凸部705及び凹部706の表面に設けられた複数の凸部703にて構成されている。複数の凸部703は平均間隔PLを有する。
また、凹凸構造(S)と凹凸構造(L)の少なくとも一方が、上記説明した第1の実施の形態に係る光学基板(I)1の凹凸構造(I)12或いは第2の実施の形態に係る光学基板(II)の凹凸構造(II)22であると、光取り出し効率LEEがより向上すると共に、半導体結晶層の特異成長を抑制することができるため、リーク電流をより良好に抑制することができる。特に、少なくとも凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12を満たす場合に、前記効果がよりいっそう発揮される。
上記図32A、図32B及び図32Cを参照し説明した光学基板(IV)710の凹凸構造(L)の平均間隔PLと凹凸構造(S)の平均間隔PSと、の比率は1超2000以下である。1超2000以下であることにより、内部量子効率IQEを向上させ、且つ光取り出し効率LEEを向上させることができる。特に、平均間隔PLと平均間隔PSと、の差を大きくし、凹凸構造(S)による光取り出し効率LEEへの支障及び凹凸構造(L)による内部量子効率IQEへの支障を抑制する観点から、比率(PL/PS)は、1.1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.5以上であることがなお好ましい。更に、凹凸構造(S)の加工精度を向上させ、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、比率(PL/PS)は、5.5以上であることが好ましく、7.0以上であることがより好ましく、10以上であることが最も好ましい。一方、凹凸構造(S)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)を向上させ、凹凸構造(S)による内部量子効率IQEの改善と、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)による光取り出し効率LEEの改善を実現する観点から、比率(PL/PS)は700以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、100以下であることがなお好ましい。更に、凹凸構造(L)の体積変化を大きくし、且つ凹凸構造(S)の密度を向上させると共に、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)の加工精度を向上させる観点から、比率(PL/PS)は50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが最も好ましい。なお、上記凹凸構造(S)の平均間隔PSと凹凸構造(L)の平均間隔PLと、の比率(PL/PS)の範囲を満たす場合、半導体結晶層の成長に関し、半導体結晶層の凸部703頂部近傍にける成長速度バランスが良好になると考えられる。即ち、半導体結晶層への応力が低減することから、半導体結晶層へのクラックを抑制することができる。
次に、図面を参照して第4の実施の形態に係る半導体発光素子について説明する。図33は、第4の実施の形態に係る半導体発光素子を示す断面概略図である。光学基板(IV)710の表面に設けられる凹凸構造面720は、便宜上、凹凸構造(L)の外形だけを図示しているが、図32A〜図32Cで説明したように、凹凸構造面720は、凹凸構造(L)と凹凸構造(S)により構成されるものとする。また、凹凸構造面720を既に説明した第1の実施の形態に係る凹凸構造(I)12、第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22又は第3の実施の形態に係る凹凸構造(III)と読み替えた半導体発光素子も第4の実施の形態に係る半導体発光素子である。
図33に示すように、半導体発光素子700において、光学基板(IV)710は、その表面に凹凸構造面720を具備している。光学基板(IV)710の凹凸構造面720を含む表面上に第1半導体層730、発光半導体層740及び第2半導体層750が順次積層されている。ここで、発光半導体層740にて発生した発光光は、第2半導体層750側又は光学基板(IV)710から取り出される。更に、第1半導体層730と第2半導体層750と、は互いに異なる半導体層である。ここで、第1半導体層730は、凹凸構造面720を平坦化すると好ましい。第1半導体層730が凹凸構造面720を平坦化するように設けられることにより、第1半導体層730の半導体としての性能を、発光半導体層740及び第2半導体層750へ、と反映させることができるため、内部量子効率IQEが向上する。
また、第1半導体層730は、図34に示すように、非ドープ第1半導体層731とドープ第1半導体層732とから構成されてもよい。図34は、第4の態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面概略図である。この場合、図34に示すように、半導体発光素子800において、光学基板(IV)710、非ドープ第1半導体層731及びドープ第1半導体層732の順に積層されると、内部量子効率IQEの改善と反りの低減の効果に加え、半導体発光素子800の製造時間短縮が可能となる。ここで、非ドープ第1半導体層731が凹凸構造面720を平坦化するように設けられることにより、非ドープ第1半導体層731の半導体としての性能を、ドープ第1半導体層732、発光半導体層740及び第2半導体層750へ、と反映させることができるため、内部量子効率IQEが向上する。
更に、非ドープ第1半導体層731は、図35に示すように、バッファー層733を含むと好ましい。図35は、第4の実施の形態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面概略図である。図35に示すように、半導体発光素子810においては、凹凸構造面720上にバッファー層733を設け、続いて、非ドープ第1半導体層731及びドープ第1半導体層732を順次積層することにより、第1半導体層730の結晶成長の初期条件である核生成及び核成長が良好となり、第1半導体層730の半導体としての性能が向上するため、内部量子効率IQE改善程度が向上する。ここでバッファー層733は、凹凸構造面720を平坦化するように配置されてもよいが、バッファー層733の成長速度は遅いため、半導体発光素子810の製造時間を短縮する観点から、バッファー層733上に設けられる非ドープ第1半導体層731により凹凸構造面720を平坦化することが好ましい。非ドープ第1半導体層731が凹凸構造面720を平坦化するように設けられることにより、非ドープ第1半導体層731の半導体としての性能を、ドープ第1半導体層732、発光半導体層740及び第2半導体層750へ、と反映させることができるため、内部量子効率IQEが向上する。なお、図35において、バッファー層733は凹凸構造面720の表面を覆うように配置されているが、凹凸構造面720の表面に部分的に設けることもできる。特に、凹凸構造面720の凹部底部に優先的にバッファー層733を設けることができる。
図33から図35に示した半導体発光素子700、800、810は、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に適用した例であるが、第1半導体層730、発光半導体層740及び第2半導体層750の積層構造はこれに限定されるものではない。
図36は、第4の実施の形態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面概略図である。図36に示すように、半導体発光素子820において、第2半導体層750上に透明導電膜760を、透明導電膜760の表面にアノード電極770を、そして第1半導体層730表面にカソード電極780を、それぞれ設けることができる。透明導電膜760、アノード電極770及びカソード電極780の配置は、半導体発光素子により適宜最適化できるため限定されないが、一般的に、図36に例示するように設けられる。
更に、図36に示す半導体発光素子820においては、光学基板(IV)710と第1半導体層30との間に凹凸構造面720が設けられているが、図37に示すように、別の凹凸構造面を更に設けることができる。図37は、第4の実施の形態に係る半導体発光素子の他の例を示す断面概略図である。図37に示すように、半導体発光素子830において、別に設けられる凹凸構造としては、以下のものが挙げられる。
・光学基板(IV)710の発光半導体層740とは反対側の面上に設けられる凹凸構造801
・第2半導体層750と透明導電膜760との間に設けられる凹凸構造802
・透明導電膜760表面に設けられる凹凸構造803
・透明導電膜760とアノード電極770との間に設けられる凹凸構造804
・第1半導体層730とカソード電極780と、の間に設けられる凹凸構造805
・アノード電極770の表面に設けられる凹凸構造806
・カソード電極780の表面に設けられる凹凸構造807
・第1半導体層730、発光半導体層740、第2半導体層750及び光学基板(IV)710の側面に設けられる凹凸構造808
凹凸構造面720の他に、更に凹凸構造801〜808の少なくともいずれか1つを設けることにより、以下に説明する各凹凸構造801〜808に応じた効果を発現することができる。
凹凸構造801を設けることにより、光取り出し効率LEEが向上するため、内部量子効率IQEを向上させ効果的に発光した発光光を半導体発光素子830の外部へと取り出すことが可能となる。即ち、凹凸構造面720により内部量子効率IQEを向上させ効果的に発光した発光光を、半導体発光素子830の外部へとより効果的に取り出すことが可能となる。更に、半導体発光素子830の反りを低減することもできる。よって、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を使用した半導体発光素子830においては、更に凹凸構造801を設けることが好ましい。
凹凸構造802を設けることにより、光取り出し効率LEEを向上させることができるため、外部量子効率EQEが大きく改善する。更に、透明導電膜60における電子の拡散性が向上するため、半導体発光素子チップの大きさを大きくすることができる。
凹凸構造503を設けることにより、光取り出し効率LEEを向上させることができる。よって、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を使用した半導体発光素子においては、更に凹凸構造803を設けることが好ましい。また、凹凸構造803が既に説明した第1の実施の形態に係る凹凸構造(I)12或いは第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22より構成されることで、透明導電膜760が薄い場合であっても光学的散乱性を良好に発現できるため、光取り出し効率LEEを向上させることができる。
凹凸構造804を設けることにより、透明導電膜760とアノード電極770と、の接触面積を大きくすることができるため、アノード電極770の剥離を抑制できる。更に、オーミック抵抗を減少させ、オーミックコンタクトを向上させることができるため、電子注入効率EIEを改善することができ、外部量子効率EQEを向上させることができる。よって、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を使用した半導体発光素子700、800、810、820、830においては、更に凹凸構造804を設けることが好ましい。また、凹凸構造804は既に説明したように、凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22であってもよい。この場合も、電子注入効率EIEが向上すると共に、光学的散乱性を発現し、光取り出し効率LEEを向上させることができる。
凹凸構造805を設けることにより、第1半導体層730とカソード電極780と、の接触面積が大きくなるため、カソード電極780の剥離を抑制することができる。
凹凸構造806を設けることにより、アノード電極770に接続される配線の固定強度が向上するため剥離を抑制できる。
凹凸構造807を設けることにより、カソード電極780の表面に設けられる配線の固定強度が向上するため剥離を抑制できる。
凹凸構造808を設けることにより、第1半導体層730、発光半導体層740、第2半導体層750及び光学基板(IV)710の側面より出光する発光光量を増加させることができるため、導波モードにて減衰消失する発光光割合を低減できる。この為、光取り出し効率LEEが向上し、外部量子効率EQEを大きくすることができる。
以上説明したように、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を使用することで、半導体発光素子700、800、810、820、830の内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを向上させることができる。更に、上記説明した凹凸構造801〜808の少なくとも1つの凹凸構造を更に設けることで、凹凸構造801〜808による効果を発現させることができる。特に、光取り出し効率LEEをよりいっそう向上させる観点から、凹凸構造801或いは凹凸構造803のいずれか一方を少なくとも設けると好ましい。また、電子注入効率EIEをも向上させる観点から、凹凸構造804を設けることが好ましい。また、上記説明した凹凸構造の少なくともいずれか一つは、上記説明した第1の実施の形態に係る凹凸構造(I)12、第2の実施の形態に係る凹凸構造(II)22又は第3の実施の形態に係る凹凸構造(III)であることが好ましい。
また、上記図33〜図36に例示される半導体発光素子700、800、810の、第2半導体層750の露出する表面上に電極を形成し、該電極の露出する表面上に支持基材を配置した積層体から、光学基板(IV)710を除去してもよい。光学基板(IV)710の除去は、レーザー光を利用したリフトオフや、光学基板(IV)710の全溶解或いは部分溶解により達成できる。ここで、光学基板(IV)710を採用することにより、凹部704の内部に空洞を形成することができる。この場合、レーザーリフトオフの精度が向上する。特に、光学基板(IV)710としてSi基板を採用する場合、溶解に寄る除去が凹凸構造面720の精度の観点から好ましい。このように光学基板(IV)710を除去することにより、内部量子効率IQEの改善を維持した状態で、光取り出し効率LEEをより一層向上させることができる。これは、光学基板(IV)710と第1半導体層730、発光半導体層740及び第2半導体層750と、の屈折率の差が大きいことによる。光学基板(IV)710を除去することにより、第1半導体層730を出光面とした発光半導体素子をくみ上げることができる。この場合、本発明の凹凸構造面720を介し発光光が出光することとなる。特に、密度の大きい凹凸構造(S)により、第1半導体層730と周囲環境(例えば、封止材)と、の間の屈折率の傾斜がなだらかになると共に、体積変化の大きな凹凸構造(L)による光学的散乱性を発現できるため、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。
続いて、半導体発光素子700、800、810、820、830を構成する要素の説明に用いる語句について説明する。
次に、第4の実施の形態の光学基板(IV)の構成について説明する。第4の実施の形態に係る光学基板(IV)は、第1の実施の形態の光学基板(I)1、第2の実施の形態の光学基板(II)2及び第3の実施の形態に係る光学基板(III)と同様に、図4A及び図4Bに示すように、凹凸構造面720(図4A中の符号401)は、光学基板(IV)710(図4A中の符号400)の少なくとも一方に設けられていれば良く、この凹凸構造面720が、図32A〜図32Cに示すように、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)により構成されていれば良い。
また、図4Bに示すように、凹凸構造面720(図4B中の符号401)は、光学基板(IV)710(図4B中の符号400)の両面に設けられても良い。この場合、少なくとも一方の凹凸構造面720が、図32A〜図32Cに示すように、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)により構成されていれば良い。
第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を半導体発光素子700、800、810、820、830に使用することで、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEが同時に向上する。その理由は以下の通りである。
内部量子効率IQEは、光学基板の格子定数と半導体結晶層の格子定数と、の不整合(格子不整合)により発生する転位により減少する。ここで、光学基板の表面に転位密度と同程度以上の密度を有する凹凸構造を設けた場合、半導体発光層の結晶成長モードを乱すことが可能となり、半導体結晶層内の転位を凹凸構造に応じて分散化することができる。即ち、微視的にも巨視的にも転位密度を低減することができる。この為、内部量子効率IQEを向上させることが可能となる。
しかしながら、内部量子効率IQEを向上させるためには、高い密度の微小な凹凸構造が必要となる。内部量子効率IQEを向上させるために、凹凸構造の密度を向上させる程、発光光の波長から見た凹凸構造の体積は小さくなるため、光学的散乱効果が減少する。即ち、導波モードを乱す効果が弱まる為、光取り出し効率LEEの向上程度が小さくなる。
同様に、光取り出し効率LEEを向上させるためには、光学的散乱性により導波モードを乱す必要があるが、光学的散乱性を向上させるためには、凹凸構造の体積変化を大きくする必要があり、凹凸構造の密度は低下するため、内部量子効率IQE向上程度が小さくなる。
ここで、本発明者らは、一つの凹凸構造面内において、内部量子効率IQEを改善する凹凸構造と光取り出し効率LEEを改善する凹凸構造とを、所定の配置関係にて組み合わせることで、双方の機能を同時に発現可能なことを見出した。即ち、高密度な凹凸構造(凹凸構造(S))と体積変化の大きな凹凸構造(凹凸構造(L))を所定の位置関係に設けることで、高密度な凹凸構造(凹凸構造(S))により内部量子効率IQEを改善し、同時に体積変化の大きな凹凸構造(凹凸構造(L))により光取り出し効率LEEを向上することができる。更に、極小凸部又は極小凹部を含むことで光学的散乱性(光回折又は光散乱)を発現することが可能となる。即ち、凹凸構造(S)が上述の凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22により構成されることにより、内部量子効率IQEをの向上効果は維持しつつ、且つ光取り出し効率LEEをより向上させることができる。
一方で、凹凸構造(L)が凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22を満たすことで、凹凸構造(L)の平均間隔にもよるが、例えば光回折のモード数を増加させることができる。この場合、半導体結晶層内部にて導波する導波モードの光の進行方向を変化させる効果が大きくなるため、光散乱性が増加し、光取り出し効率LEEが向上すると考えられる。
以上から、凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12又は凹凸構造(II)22により構成されることで、内部量子効率改善の効果に光取り出し効率向上の効果が加わり、凹凸構造(L)が凹凸構造(I)12又は凹凸構造(II)22により構成されることで、光取り出し効率LEEの改善がより顕著になる。ここで、以下に説明するように凹凸構造(L)は凹凸構造(S)に比べ大きい構造体である。即ち、凹凸構造(L)としては、光学的に光回折、光散乱、そして光線追跡のいずれかにより光取り出し効率LEEを向上させることができる。このような場合、凹凸構造(L)による光取り出し効率LEE改善効果が大きい為、凹凸構造(L)を凹凸構造(I)12又は凹凸構造(II)22により構成した場合の光取り出し効率の更なる向上程度は、見かけ上小さくなる。よって、少なくとも、凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22により構成されることが好ましい。
また、凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12により構成される場合、凹凸構造(S)が凹凸構造(II)22により構成される場合に比べ、内部量子効率IQE改善の効果がより大きくなる。これは、凹凸構造(S)が凹凸構造(I)12により構成されることで、凹凸構造(S)の凹部底部から半導体結晶層を成長させることができるため、転位の分散化がより促進されるためである。
さらに、凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22により凹凸構造(S)或いは凹凸構造(L)が作られる場合、既に説明したメカニズムから、リーク電流を抑制することができる。これは、凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22の条件を満たすことにより、半導体結晶層の特異成長を抑制する、或いは特異成長した半導体結晶層同士が出あうことを抑制できるためである。即ち、p−n接合界面の乱れを抑制することができるため、ダイオード特性が向上する。
次に、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710の凹凸構造面720について説明する。
凹凸構造面720は、平均間隔Paveの異なる2つの凹凸構造により構成される。ここで2つの凹凸構造をそれぞれ、凹凸構造(L)、凹凸構造(S)と呼ぶ。凹凸構造(L)の平均間隔はPLであり、凹凸構造(S)の平均間隔はPSである。平均間隔PSと平均間隔PLと、は互いに異なり、比率(PL/PS)は所定の範囲を満たす。更に、凹凸構造(S)と凹凸構造(L)と、の配置関係は以下のいずれかのケースを満たす。
1.凹凸構造(S)は、凹凸構造(L)を構成する複数の凸部(図32中、符号703)又は凹部(図32中704)の少なくとも一方の表面に配置される。
2.凹凸構造(L)は、凹凸構造(S)の表面上に凹凸構造(S)が一部露出するように互いに離間して設けられる(図32C)。
第4の実施の形態においては、凹凸構造(L)の平均間隔PLは、凹凸構造(S)の平均間隔PSよりも有意に大きい。具体的には、凹凸構造(L)の平均間隔PLと、凹凸構造(S)の平均間隔PSとの比率(PL/PS)は1超2000以下である。1超2000以下であることにより、一方の凹凸構造により他方の凹凸構造の効果を阻害することなく発現可能となるため、凹凸構造(S)による内部量子効率IQEの改善と凹凸構造(L)による光取り出し効率LEEの改善と、を同時に向上させることができる。更に、平均間隔PLと平均間隔PSと、の差を大きくし、凹凸構造(S)による光取り出し効率LEEへの支障及び凹凸構造(L)による内部量子効率IQEへの支障を抑制する観点から、比率(PL/PS)は、1.1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.5以上であることがなお好ましい。更に、凹凸構造(S)の加工精度を向上させ、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、比率(PL/PS)は、5.5以上であることが好ましく、7.0以上であることがより好ましく、10以上であることが最も好ましい。一方、凹凸構造(S)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)を向上させ、凹凸構造(S)による内部量子効率IQEの改善と、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)による光取り出し効率LEEの改善を実現する観点から、比率(PL/PS)は700以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、100以下であることがなお好ましい。更に、凹凸構造(L)の体積変化を大きくし、且つ凹凸構造(S)の密度を向上させると共に、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)の加工精度を向上させる観点から、比率(PL/PS)は50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが最も好ましい。
<凹凸構造の特徴>
次に、第4の形態に係る光学基板(IV)710の凹凸構造面720を構成する凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)に共通する凹凸構造の特徴について説明する。以下の説明では、特に明記する場合を除き、凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)の双方を単に「凹凸構造」と呼ぶ。
凹凸構造面720を構成する凹凸構造は、凸部及び凹部を有していれば、その形状や配列は限定されず、上記説明したように凹凸構造(S)と凹凸構造(L)と、の配置関係及び、比率(PL/PS)が所定の範囲を満たせば、光取り出し効率LEEを、内部量子効率IQEの向上を維持した状態で大きくすることができる。この為、例えば、複数の柵状体が配列したラインアンドスペース構造、複数の柵状体が交差した格子構造、複数のドット(凸部、突起)状構造が配列したドット構造、複数のホール(凹部)状構造が配列したホール構造等を採用できる。ドット構造やホール構造は、例えば、円錐、円柱、四角錐、四角柱、六角錐、六角柱、n角錐(n≧3)、n角柱(n≧3)、二重リング状、多重リング状等の構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状、n角形の底面の角部が0超の曲率半径を有し丸みを帯びた形状や、側面が湾曲した形状、頂部が0超の曲率半径を有す丸みを帯びた形状を含む。更に、凹凸構造(S)或いは凹凸構造(L)の少なくとも一方が、上記説明した凹凸構造(I)12或いは凹凸構造(II)22により構成されることにより、光取り出し効率LEEがより向上する。
なお、ドット構造とは、複数の凸部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凸部は連続した凹部により隔てられる。なお、各凸部は連続した凹部により滑らかに接続されてもよい。一方、ホール構造とは、複数の凹部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凹部は連続した凸部により隔てられる。なお、各凹部は連続した凸部により滑らかに接続されてもよい。
ドット構造を選定するか、或いはホール構造を選定するかは、半導体発光素子の製造に使用する装置や、半導体発光素子の用途により適宜選択できる。特に内部量子効率IQEを改善したい場合は、凹凸構造はドット状構造であると好ましい。これは、平均間隔PSの凹凸構造(S)により内部量子効率IQEを向上させるためには、凹凸構造(S)の密度による転位分散化を促進する必要があるためである。更に、平均間隔PLの大きな凹凸構造(L)によっても、半導体結晶層の横方向成長(Epitaxial Lateral Overgrowth)を誘発させる共に凸部頂部におけるクラックを抑制し、内部量子効率IQEを向上させることができるためである。一方で、光取り出し効率LEEを特に大きくしたい場合には、凹凸構造はホール構造であることが好ましい。これは、ホール構造の場合、半導体結晶層から見た屈折率の変化が光学的散乱性に対して適度となる為である。また、凹凸構造(S)と凹凸構造(L)と、の組み合わせ(凹凸構造(L)、凹凸構造(S))は(ドット構造、ドット構造)、(ホール構造、ホール構造)、(ドット構造、ホール構造)、(ホール構造、ドット構造)のいずれであってもよい。
特に、内部量子効率IQEを向上させるために、凹凸構造(S)は、ドット状構造の中でも、凸部頂部に平坦面を有さない構造であると好ましい。ここで、凸部頂部に平坦面を有さない構造は、凸部の頂部が曲率半径0の角部である場合と、曲率半径0超の角部である場合の双方を含む。特に、凸部頂部の角部の曲率半径が0超であることにより、凹凸構造(S)の凸部705近傍において、半導体結晶層の転位を衝突させる効果が強まるため好ましい。更に、内部量子効率IQEをより向上させるために、凹凸構造(S)の凹部底部は平坦面を有すことがより好ましい。この平坦面の大きさは30nm以上であることが好ましい。ここで平坦面の大きさとは、互いに最近接する凸部において、それぞれの凸部の底部外縁部間の最短距離として定義する。30nm以上であることにより、半導体結晶層の初期成長性を良好に保つことができるため、内部量子効率IQE改善の効果が大きくなる。同様の観点から、平坦面の大きさは60nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることが最も好ましい。
また、凹凸構造上に設けられる第1半導体層にクラックが発生することを抑制するために、凹凸構造面720を構成する凹凸構造の凸部の径は、底部から頂点へ向かって小さくなる構造であると好ましく、凸部底部から凸部頂点へと、傾斜角度が2段階以上の変化をする構造がより好ましい。なお、凸部側面部の傾斜角度の変化は、凸部底部から凸部頂部へと緩やかになる変化であると最も好ましい。
凹凸構造の凹部底部の有す平坦面(以下、「平坦面B」と呼ぶ)と、凹凸構造上に設けられる第1半導体層の安定成長面に対してほぼ平行な面(以下、「平行安定成長面」と呼ぶ)と、が平行である場合、凹凸構造の凹部近傍における第1半導体層の成長モードの乱れが大きくなり、第1半導体層内の転位を効果的に凹凸構造(S)により低減することができるため、内部量子効率IQEが向上する。安定成長面とは、成長させる材料において成長速度の最も遅い面のことをさす。一般的には、安定成長面は成長の途中にファセット面として現れることが知られている。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、M面に代表されるA軸に平行な平面が安定成長面となる。GaN系半導体層の安定成長面は、六方晶結晶のM面(1−100)、(01−10)、(−1010)であり、A軸に平行な平面の一つである。なお、成長条件によっては、GaN系半導体のM面以外の平面であるA軸を含む他の平面が安定成長面になる場合もある。
<平均間隔Pave>
図38及び図39は、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710の一例を凹凸構造面側から見た上面図である。図38に示すように、凹凸構造面720を構成する凹凸構造が、複数の凸部720aが配置されたドット構造で構成されている場合、ある凸部A1の中心とこの凸部A1に隣接する凸部B1−1〜凸部B1−6の中心との間の距離PA1B1−1〜距離PA1B1−6を、間隔Pと定義する。間隔Pの相加平均値が平均間隔Paveである。まず、光学基板(IV)710の凹凸構造面720上に、光学基板(IV)710の主面と平行な50μm×50μm角の領域をとる。次に、該50μm×50μm角の領域を、互いに重ならない10μm×10μm角の領域にて25分割する。次に、25個存在する10μm×10μmの領域から任意に5つの領域を選択する。ここでは、選択された10μm×10μm角の領域を領域A、領域B、領域C、領域D及び領域Eとする。その後,領域Aをより高倍率に観察し、少なくとも100個の凸部が鮮明に観察されるまで拡大する。続いて、観察される凸部から任意に3個の凸部を選び出す(A1、A2、A3)。(2)凸部AMと凸部AM(1≦M≦10)に隣接する凸部(BM−1〜BM−k)と、の間隔PAMBM−1〜PAMBM−kを測定する。(3)凸部A1〜凸部A3についても、(2)と同様に間隔Pを測定する。(4)間隔PA1B1−1〜PA3B3−kの相加平均値を領域Aの平均間隔PAとする。領域Bから領域Eについても同様の操作を行い、平均間隔PA〜PEを求める。平均間隔Paveは、(PA+PB+PC+PD+PE)/5である。但し、kは4以上6以下とする。なお、ホール構造の場合、上記ドット構造にて説明した凸部を凹部開口部と読み替えることで、平均間隔Paveを定義することができる。
また、図39に示すように、凹凸構造面720を構成する凹凸構造がラインアンドスペース構造の場合、間隔Pは、ある凸ラインA1の中心線と、この凸ラインA1に隣接する凸ラインB1−1及び凸ラインB1−2の中心線との間の最短距離PA1B1−1及び最短距離PA1B1−2を、間隔Pと定義する。間隔Pの相加平均値が平均間隔Paveである。まず、光学基板(IV)710の凹凸構造面上に、光学基板(IV)710の主面と平行な50μm×50μm角の領域をとる。次に、該50μm×50μm角の領域を、互いに重ならない10μm×10μm角の領域にて25分割する。次に、25個存在する10μm×10μmの領域から任意に5つの領域を選択する。ここでは、選択された10μm×10μm角の領域を領域A、領域B、領域C、領域D及び領域Eとする。その後,領域Aをより高倍率に観察し、少なくとも10個の凸ラインが鮮明に観察されるまで拡大する。続いて、観察される凸ラインから任意に3個の凸ラインを選び出す(A1、A2、A3)。(2)凸ラインAMと凸ラインAM(1≦M≦3)に隣接する凸ライン(BM−1〜BM−2)と、の間隔PAMBM−1〜PAMBM−2を測定する。(3)凸ラインA1〜凸ラインA3についても、(2)と同様に間隔Pを測定する。(4)間隔PA1B1−1〜PA3B3−2の相加平均値を領域Aの平均間隔PAとする。領域Bから領域Eについても同様の操作を行い、平均間隔PA〜PEを求める。平均間隔Paveは、(PA+PB+PC+PD+PE)/5である。
なお、凹凸構造(S)の平均間隔PSは、凹凸構造(S)に対し測定された間隔Pから算出されるものとし、凹凸構造(L)の平均間隔PLは凹凸構造(L)に対して測定された間隔Pから算出されるものとする。
<高さH>
凹凸構造の高さは、凹凸構造の凹部底部の平均位置と凹凸構造の凸部頂点の平均位置と、の最短距離として定義する。平均位置を算出する際のサンプル点数は10点以上であることが好ましい。また、凹凸構造(S)の高さは、凹凸構造(S)に対し、凹凸構造(S)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定され、凹凸構造(L)の高さは凹凸構造(L)に対し、凹凸構造(L)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用して測定されるものとする。
<凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lcc>
図40は、凹凸構造面720を構成する凹凸構造がドット構造の場合の上面図を示している。図40中に示す破線で示す線分は、ある凸部720aの中心と該凸部720aに最近接する凸部720aの中心との距離であり、上記説明した間隔Pを意味する。図40中に示した間隔Pに相当する線分位置における凹凸構造の断面模式図を示したのが図41A及び図41Bである。
図41Aに示すように、凸部頂部幅lcvtは凸部頂面の幅として定義され、凹部開口幅lcctは、間隔Pと凸部頂部幅lcvtと、の差分値(P―lcvt)として定義される。
図41Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、間隔Pと凸部底部幅lcvbと、の差分値(P−lcvb)として定義される。
図42は、凹凸構造面720がホール構造の場合の上面図を示している。図42中に破線で示す線分は、ある凹部720bの中心と該凹部720bに最近接する凹部720bの中心との距離であり、上記説明した間隔Pを意味する。図42中に示した間隔Pに相当する線分位置における凹凸構造面720の断面模式図を示したのが図43A及び図43Bである。
図43Aに示すように、凹部開口幅lcctは凹部720bの開口径として定義され、凸部頂部幅lcvtは、間隔Pと凹部開口幅lcctと、の差分値(P−lcct)として定義される。
図43Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、間隔Pと凸部底部幅lcvbと、の差分値(P−lcvb)として定義される。
また、凹凸構造(S)の凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccは、凹凸構造(S)に対し、凹凸構造(S)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定され、凹凸構造(L)の凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccは凹凸構造(L)に対し、凹凸構造(L)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用して測定されるものとする。
<デューティ>
凸部底部幅lcvbと間隔Pと、の比率(lcvb/P)で表される。また、凹凸構造(S)のデューティは、凹凸構造(S)に対し、凹凸構造(S)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定され、凹凸構造(L)のデューティは凹凸構造(L)に対して、凹凸構造(L)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定されるものとする。
<アスペクト比>
凹凸構造面720を構成する凹凸構造がドット構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcvbを用いて、凹凸構造の高さH/lcvbとして定義される。一方、凹凸構造がホール構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcctを用いて、凹凸構造の深さ/lcctとして定義される。また、凹凸構造(S)のアスペクト比は、凹凸構造(S)に対し測定され、凹凸構造(L)のアスペクト比は凹凸構造(L)に対して測定されるものとする。
<凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φin>
図44A〜図44Eに光学基板(IV)710を凹凸構造面側より観察した場合の上面像を示した。凹凸構造面720を構成する凹凸構造の凸部は撓んだ形状であってもよい。凹凸構造を凹凸構造面側より観察した場合の輪郭(以下、凸部底部輪郭という)を、図44A〜図44Eに「A」で示す。ここで、凸部底部輪郭Aが真円ではない場合、凸部底部輪郭Aに対する内接円と外接円と、は一致しない。図44A〜図44Eにおいて、内接円を「B」で示し、外接円を「C」で示す。
凸部底部輪郭Aに対する内接円Bの直径を凸部底部内接円径φinと定義する。なお、φinは、内接円Bの大きさが最大になるときの内接円Bの直径とする。なお、内接円Bは凸部底部輪郭Aより内側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより外側にはみ出すことのない円である。
一方、凸部底部輪郭Aに対する外接円Cの直径を凸部底部外接円径φoutと定義する。Φoutは、外接円Cの大きさが最小となる時の外接円Cの直径とする。なお、外接円Cは、凸部底部輪郭Aより外側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより内側に侵入することのない円である。
また、凹凸構造(S)の凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φinは、凹凸構造(S)に対し、凹凸構造(S)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定され、凹凸構造(L)の凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φinは凹凸構造(L)に対し、凹凸構造(L)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用して測定されるものとする。
なお、凹凸構造が複数の凹部から構成される場合、上記「凸部底部」という文言を「凹部開口部」と読み替えることができる。
<凸部側面傾斜角Θ>
凸部側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造の形状パラメータより決定される。凹部側面傾斜角Θも同様に決定される。また、凹凸構造(S)の凸部側面傾斜角Θは、凹凸構造(S)に対し、凹凸構造(S)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定され、凹凸構造(L)の凸部側面傾斜角Θは凹凸構造(L)に対して、凹凸構造(L)の平均間隔Paveを求めるのに使用した試料片を使用し測定されるものとする。
<凹凸構造の乱れ>
凹凸構造面720を構成する凹凸構造は以下に説明する乱れを含むことができる。乱れを含むことにより、光学的散乱性(光散乱又は光回折)が強くなるため導波モードを乱す効果が強まり、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。乱れは、凹凸構造(S)或いは凹凸構造(L)のいずれか一方に含まれても、双方に含まれてもよいが、内部量子効率IQEの改善を維持し、且つ光取り出し効率LEEをより高める観点から、少なくとも凹凸構造(S)に乱れを含むことが好ましい。
凹凸構造(L)が乱れを有すことで、光回折のモード数、特に導波モードを形成する発光光に対するモード数が増加すると推定される。導波モードを乱し、光取り出し効率LEEを向上させるためには、導波モードを乱された発光光が再び導波モードを形成し、第1半導体層、発光半導体層及び第2半導体層により吸収されるのを抑制する必要がある。即ち、導波モードを乱され半導体発光素子外部へと取り出される発光光において、半導体発光素子外部へと取り出されるまでに導波モードにより反射する回数を小さくする必要がある。凹凸構造(L)が乱れを有すことで、光回折のモード数が増加するため、該反射回数が減少するため、光取り出し効率LEEがより向上すると推定される。
凹凸構造(S)が乱れを有すことで、凹凸構造(S)の乱れに応じた光学的散乱性(光回折又は光散乱)を新たに付与することが可能となるため、内部量子効率IQEの向上を維持し、且つ光取り出し効率LEEをより向上させることが可能と考えられる。凹凸構造(S)に対する発光光の光学現象が光回折による場合は、上記凹凸構造(L)に対して説明した原理により、光取り出し効率LEEが向上する。一方、有効媒質近似が作用する場合、有効媒質近似的屈折率の薄膜内部に、屈折率の乱れを導入することが可能と考えられる。即ち、屈折率の乱れが散乱点として機能するため、光学的散乱性を発現し、光取り出し効率LEEが向上する。
なお、凹凸構造の乱れが周期性を帯びる場合、新たに発現される光学的散乱性は光回折に寄り、凹凸構造の乱れの規則性が低い場合は、新たに発現される光学的散乱性は光散乱に寄る。
乱れを有す凹凸構造の要素は特に限定されないが、凹凸構造の乱れの要因となる要素として、例えば、間隔P、デューティ、アスペクト比、凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、凸部側面の傾斜角度、凸部側面の傾斜角度の切り替わり数、凸部底部内接円径φin、凸部底部外接円径φout、凸部高さ、凸部頂部の面積、凸部表面の微小突起数(密度)や、これらの比率、又凹凸構造の配列より類推できる情報(例えば、凹部の形状等)が挙げられる。
これらのような要素の中で、間隔Pは凹凸構造の配列の乱れを意味し、間隔P以外の要素は凹凸構造の形状の乱れを意味する。これらの乱れは上記要素1種のみの乱れでも、複合された乱れでもよい。特に、光学的散乱性をより強く発揮し、導波モードを効果的に打破し、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、複数の要素が以下に説明する式(A)に示される乱れを同時に満たすことが好ましい。なかでも、間隔P、デューティ、高さH、アスペクト、凸部底部外接円径φout或いは比率(φout/φin)が乱れを有す場合、回折モード数の増加による光学的散乱性或いは、有効媒質近似的屈折率Nemaの分布による光学的散乱性が大きくなると考えられ、導波モードを乱す効果が大きいため、好ましい。これらのうち、2以上の乱れを同時に含むことで、光取り出し効率LEEの向上をより顕著にすることができる。中でも、間隔P、高さH、凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinのいずれかが以下に説明する式(A)を満たす乱れを有すと、光学的散乱性効果が顕著になるため好ましく、これらの複合的乱れであるとより好ましい。
凹凸構造の乱れの要因となっている要素の乱れは、下記式(A)に示す(標準偏差/相加平均)を有する。式(A)において、凹凸構造の(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造を構成する要素に対する値である。例えば、凹凸構造が要素A、B、Cの三つから構成される場合、要素Aに対する標準偏差/要素Aに対する相加平均といったように、同一の要素に対する標準偏差及び相加平均に対する比率として定義する。
0.025≦(標準偏差/相加平均)≦0.8 (A)
(相加平均)
ある要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、相加平均値は、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
相加平均を算出する際のサンプル点数Nは、10として定義する。また、標準偏差算出時のサンプル点数は、相加平均算出時のサンプル点数Nと同様とする。
また、(標準偏差/相加平均)、即ち変動係数は、光学基板の面内における値ではなく、光学基板の局所的な部位に対する値として定義する。即ち、光学基板の面内に渡りN点の計測を行い(標準偏差/相加平均)を算出するのではなく、光学基板の局所的観察を行い、該観察範囲内における(標準偏差/相加平均)を算出する。ここで、観察に使用する局所的範囲とは、凹凸構造の平均間隔Pの5倍〜50倍程度の範囲として定義する。例えば、平均間隔Pが300nmであれば、1500nm〜15000nmの観察範囲の中で観察を行う。その為、例えば2500nmの視野像を撮像し、該撮像を使用して標準偏差と相加平均を求め、(標準偏差/相加平均)を算出する。特に、平均間隔Paveを算出するのに使用した領域から、乱れを計測するものとする。なお、凹凸構造(S)の乱れに対しては、平均間隔PSを使用し、凹凸構造(L)の乱れに対しては、平均間隔PLを使用する。
凹凸構造に乱れを加えることで、乱れに応じた光学的散乱性(光散乱又は光回折)を加えることができる。乱れに規則性がある場合、新たな光学的散乱性は光回折に起因し、乱れが不規則な場合は光散乱に寄る。上記式(A)は、凹凸構造のある要素に対する規格化されたバラつきを示している。これは、光学的散乱成分に直結する。即ち、上記式(A)の範囲を満たすことにより、乱れに応じた光学的散乱性により導波モードを乱すことが可能となり、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。
(標準偏差/相加平均)は、凹凸構造を構成する要素毎に最適値が存在するが、凹凸構造の乱れの要因となる要素によらず式(A)を満たすことで、光取り出し効率LEEを向上させることができる。ここで、下限値は光取り出し効率LEE向上程度により、上限値は内部量子効率IQEの向上維持程度により決定した。LED素子の製造条件や光学基板の種類に対する影響をより小さくし、内部量子効率IQEと、光取り出し効率LEEの双方を高くする観点から、下限値は0.03以上であることがより好ましい。一方上限値は、0.5以下であることが好ましく、0.35以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。
なお、上記説明した間隔P、凸部底部外接円径φout、凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φin、及び、高さHの群から選ばれる1以上の要素が上記式(A)を満たすことで、凹凸構造の乱れに基づく新たな光学的散乱性の発現強度を大きくすることができるため好ましい。即ち、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることができる。これは、凹凸構造の乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造の体積屈折率変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造の体積屈折率の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効媒質近似的屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、間隔P及び高さHについては、規則的な乱れを加えることも容易である。この場合、規則性のある乱れにより、新たな光学的散乱性として光回折を利用することが可能となる。なお、上記要素の乱れは、凹凸構造(L)と凹凸構造(S)の少なくともいずれか一方に設けられれば、光学的散乱性を強くすることが可能となる。特に、凹凸構造(S)により内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを向上させ、且つ凹凸構造(L)により光取り出し効率LEEを更に向上させる観点から、少なくとも凹凸構造(S)が上記要素の乱れを含むことが好ましい。
なお、上記式(A)を満たす範囲のいずれの数値を採用するかは、光学基板の表面状態、目的により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に向上させる選択において、転位欠陥が比較的生じにくい光学基板、CVD装置又はCVD条件を適用できる場合には、光散乱効果を高めるため、上記式(A)を満たす範囲で大きな(標準偏差/相加平均)を採用すればよい。また、転位欠陥が比較的多く生じやすい光学基板、CVD装置又はCVD装置条件の場合には、転位欠陥を低減し内部量子効率IQEをより高めるために、上記式(A)を満たす範囲で小さな(標準偏差/相加平均)を採用すればよい。
なお、上記式(A)を満たす乱れを有す凹凸構造は、少なくとも平均間隔Pの小さな凹凸構造に含まれると、内部量子効率IQEの向上を維持し、同時に光取り出し効率LEEをより向上できるため好ましい。
続いて、凹凸構造面720を構成する凹凸構造(S)及び凹凸構造(L)について説明する。
図45は、第4の実施の形態に係る光学基板の一例を示す断面模式図である。図45A〜図45Cに示すように、光学基板(IV)710の表面に体積変化の大きな凹凸構造(L)が設けられ、凹凸構造(L)を構成する凸部703及び凹部704の少なくとも一方の表面に構造密度の大きな凹凸構造(S)が設けられる。このような構成をとることにより、凹凸構造(S)により内部量子効率IQEを向上させることが可能となり、凹凸構造(L)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)により光取り出し効率LEEを向上させることができる。図45A〜図45Cは、凹凸構造(S)の凹凸構造(L)に対する配置例を示している。
特に、第1の凹凸構造(L)は、互いに離間した複数の凸部703から構成されると共に、少なくとも第1の凹凸構造(L)の凹部704の底部に第2の凹凸構造(S)を構成する凸部705又は凹部706が設けられることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凹部704の底部を起点として半導体結晶層の成長を開始させることができる。特に、凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられることで、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となることから、凹凸構造(S)の近傍において半導体結晶層の転位を低減できる。また、凹凸構造(L)が、複数の凸部703より構成されることから、凹部704の底部より成長する半導体結晶層の凸部703近傍におけるクラックを抑制することができる。即ち、内部量子効率IQEを向上すると共に、半導体発光素子の信頼性を向上できる。また、凹凸構造(L)と凹凸構造(S)と、は所定の平均間隔の関係を満たすことから、光学的散乱性が大きくなる。特に、少なくとも凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられる構成であることから、導波モードを光散乱或いは光学的反射により乱すことが可能となり、導波モードが再度導波することを抑制できるため、光取り出し効率LEEが同時に向上する。
或いは、第1の凹凸構造(L)は、互いに離間した複数の凹部704から構成されると共に、少なくとも第1の凹凸構造(L)の凸部703の頂部に第2の凹凸構造(S)を構成する凸部705又は凹部706が設けられることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凸部703の頂部を起点として半導体結晶層の成長を開始させることができる。特に、凸部703の頂部に凹凸構造(S)が設けられることで、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となることから、凹凸構造(S)の近傍において半導体結晶層の転位を低減できる。この時、凸部703の頂部より成長する半導体結晶層は、凹部704の底部より成長する半導体結晶に比べ、成長性が良好となる。よって、内部量子効率IQEが効果的に向上する。更に、凹部704内に空隙を生成することも容易となる。この場合、光学基板(IV)710を、例えばレーザーリフトオフにより除去する際の、除去精度が向上する。また、凹凸構造(L)と凹凸構造(S)と、は所定の平均間隔の関係を満たすことから、光学的散乱性が大きくなる。特に、凹凸構造(L)が複数の凹部704より構成されることから、体積変化がより大きくなるため、導波モードを乱す効果が大きくなり、光取り出し効率LEEが向上する。
上記説明した光学基板(IV)710においては、凹凸構造(S)の、凹凸構造(L)に対する被覆率が0%超100%未満であることが好ましい。
この場合、凹凸構造(L)の凸部703或いは凹部704に必ず凹凸構造(S)が設けられることから、上記説明した原理より、内部量子効率IQEが効果的に向上する。一方で、凹凸構造(L)の凸部703及び凹部704が全て凹凸構造(S)により埋められることがない。これにより、凹凸構造(L)による光取り出し効率LEEの向上効果を、凹凸構造(S)により低下させることを抑制できる。即ち、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させる効果がいっそう高まる。
特に、凹凸構造(L)の表面のラフネスの増大を抑制し、凹凸構造(L)による、半導体結晶層内部にて導波モードを形成する発光光の進行方向を乱す効果を向上させる観点から、被覆率は90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、50%以下であることが最も好ましい。また、凹凸構造(S)による内部量子効率IQEの向上効果を発揮させると共に、半導体結晶層の使用量を低下させ、半導体発光素子の生産性を向上させる観点から、被覆率は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.15%以上であることが最も好ましい。なお、半導体発光素子において、特に内部量子効率をより向上させたい場合は、被覆率は上記最も広い範囲の中において、50%以上90%以下であることが好ましく、60%以上86%以下であることがより好ましく、70%以上84%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たす場合、凹凸構造(S)により、半導体結晶層の成長モードを乱す効果が高まり、凹凸構造(S)近傍において転位を衝突させ減少させることができる。更に、乱れによる光学的散乱性付与の効果、また、半導体結晶層の特異成長抑制の効果が強まる。一方で、光取り出し効率を特に向上させたい場合は、上記最も広い範囲の中において、0.1%以上30%以下の範囲であることが好ましく、0.1%以下以上10%以下の範囲であることがより好ましく、0.1%以上5%以下であることが最も好ましい。これらの範囲を満たすことで、導波モードを乱された発光光が再度導波モードを形成することを抑制できることから、光取り出し効率がより向上する。
ここで、被覆率とは、凹凸構造(L)の凸部703及び凹部704の表面に対する凹凸構造(S)の凸部705又は凹部706の平面占有率である。即ち、ある凸部703を上面側より観察した場合の、凸部703と凸部703の輪郭の周囲を囲む凹部704と、の平面積をSとした場合、該観察像内における凹凸構造(S)の凸部705又は凹部706の合計平面積をSiとすれば、被覆率は(Si/S)×100となる。
図46は、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710における凹凸構造を示す模式図である。図46Aは、凹凸構造(L)が複数の独立した凸部703より構成される場合、特に凹部704の底面に凹凸構造(S)が設けられる場合を示す。この例においては、凸部703の底部の輪郭形状及び凸部705の底部の輪郭形状は円形である。凸部703の頂部側より観察した平面像における凸部703と、凸部703の輪郭の周囲を囲む凹部704の面積をSとする。ここで、面積Sは、ある凸部703に隣接する他の凸部703の頂部中央部同士を結び作られる多角形841の面積である。面積S内に含まれる凹凸構造(S)の凸部705の底部の輪郭により作られる面積の合計面積、又は、凹部706の開口部の合計面積を、Siとすれば、被覆率はSi/S×100として与えられる。なお、図46Aにおいては、凹凸構造(L)の凹部底部にのみ凹凸構造(S)が配置される場合を例示したが、既に説明したように凹凸構造(S)の配置はこれに限定されない。同様に、図46Bは、凹凸構造(L)が複数の独立した凹部704より構成される場合、特に凸部703の上面に凹凸構造(S)が設けられる場合を示す。この例においては、凹部704の開口形状及び凸部703の底部の輪郭形状は円形である。凸部703の頂部側より観察した平面像における凹部704と、凹部704の輪郭の周囲を囲む凸部703の面積をSとする。ここで、面積Sは、ある凹部704に隣接する他の凹部704の開口部中央部同士を結び作られる多角形841の面積である。面積S内に含まれる凹凸構造(S)の凸部705の底部の輪郭により作られる面積の合計面積、又は、凹部706の開口部の合計面積をSiとすれば、被覆率はSi/S×100として与えられる。なお、図46Bにおいては、凹凸構造(L)の凸部703の頂部にのみ凹凸構造(S)が配置される場合を例示したが、既に説明したように凹凸構造(S)の配置はこれに限定されない。
なお、図46Bに示すように凹凸構造(L)の凸部703の頂部上面にのみ凹凸構造(S)が設けられる場合、凸部703の頂部側より観察した際の、凸部703の頂部上面の面積をS、面積Sを有す凸部703の頂部上面内に含まれる凹凸構造(S)の平面積の合計をSiとして、被覆率(Si/S×100)を求めることができる。なお、この被覆率を凸部703の頂部上面に対する被覆率Tと呼ぶ。同様に、図46Aに示すように凹凸構造(L)の凹部704の底面にのみ凹凸構造(S)が設けられる場合、凸部705の頂部側より観察した際の、凹部704の底面の面積をS、面積Sを有す凹部704の底面内に含まれる凹凸構造(S)の平面積の合計をSiとして、被覆率(Si/S×100)を求めることができる。なお、この被覆率を凹部704の底面に対する被覆率Bと呼ぶ。凸部703の頂部上面に対する被覆率T及び凹部704の底面に対する被覆率Bは、1%以上90%以下であることが好ましい。特に、内部量子効率IQEを良好に高め、半導体発光素子の発光出力を向上させる観点から、凸部703の頂部上面に対する被覆率T及び凹部704の底面に対する被覆率Bは、3%以上60%以下であることが好ましく、5%以上55%以下であることがより好ましく、10%以上40%以下であることが最も好ましい。また、凹凸構造(L)の凸部703の頂部、凸部703の側面及び凹部704の底部に凹凸構造(S)が設けられる場合であっても、凹凸構造(L)の凸部703の頂部上面に対する凹凸構造(S)の被覆率或いは、凹凸構造(L)の凹部704の底面に対する凹凸構造(S)の被覆率は、上記凸部703の頂部上面に対する被覆率T或いは凹部704の底面に対する被覆率Bを満たすことが好ましい。
なお、凹凸構造(L)において、基板本体702上に複数の凸部703を別途設けた場合、凹凸構造(L)は、基板本体702の主面と複数の凸部703により構成される。この場合、複数の凸部703が凹凸構造(L)の凸部に相当し、凸部703の間であって基板本体702の主面の露出する部分が凹凸構造(L)の凹部704に相当する。
一方、基板本体702が直接加工されることで凹凸構造(L)が設けられた場合、凹凸構造(L)と基板本体702との材質は同一となる。
図45Aは、凹凸構造(L)が独立した複数の凸部703より構成されると共に、凹凸構造(L)の凹部704の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。図45Bは、凹凸構造(L)が独立した複数の凸部703より構成されると共に、凹凸構造(L)の凸部703の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。図45Cは、凹凸構造(L)が独立した複数の凸部703より構成されると共に、凹凸構造(L)の凸部703及び凹部704の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。
図45Aに示すように、凹凸構造(L)の凹部704に凹凸構造(S)が設けられることで内部量子効率IQEを良好に向上させることができる。更に、凹凸構造(L)が独立した複数の凸部703より構成されることから、半導体結晶層へのクラックを抑制できる。これは、凹凸構造(L)の凹部704より半導体結晶層の成長が開始するためである。即ち、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となるため、凹凸構造(L)の凹部704において、転位を分散化することが可能となる。なお、図45Aにおいては、凸部703の側面部に凹凸構造(S)を描いていないが、凸部703の側面に凹凸構造(S)を設けることもできる。この場合、導波モードを乱す効果が一層強まると共に、乱された発光光の進行方向をより半導体発光素子の厚み方向に変化させることが可能と考えられる。この為、半導体発光素子をパッケージ化する際の封止材の選定が容易となる。
凹凸構造(L)が基板本体702と同じ材質から構成される場合、凹凸構造(L)の凸部703の頂部より発生する転位を抑制するために、凹凸構造(L)の凸部703の径は、底部から頂点へと向かって小さくなる構造であると好ましい。特に、凹凸構造(L)の凸部703の頂部が凹凸構造(L)の凸部703の側面部と連続してつながる構造、換言すれば凸部頂部幅lcvtが0に漸近する構造であると好ましい。凹凸構造(L)は、円盤状、円錐状、n角柱(n≧3)状、n角錐状といった形状をとることができるが、中でも、第1半導体層730の成長の均等性を向上させ、第1半導体層730の内部に発生するクラックや転位を低減する観点から、円錐状、円盤状、3角柱状、3角錐状、6角柱状及び6角錐状のいずれかであることが好ましい。なお、前記角錐の頂部は、曲率半径が0である角部であっても、曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であってもよい。特に、角錐形状の場合、曲率半径が0超である角部を有すことで、半導体結晶層の成長時に発生するクラックを抑制できることから、半導体発光素子の長期信頼性が向上する。特に、これらの形状において、凸部703の側面部の傾斜角度が1以上5以下の切り替わり点を有すことが好ましい。なお、1以上3以下であるとより好ましい。また、凸部703の側面部は直線状でなく、膨らみを有した形状であってもよい。
一方、凹凸構造(L)と基板本体702とが異なる材料から構成される場合、凹凸構造(L)の凸部703は、円錐状やn角錐状(n≧3)といった形状の他、円盤状やn角柱(n≧3)状といった、凸部頂部幅lcvtと凸部底部幅lcvbと、が実施的に同様の構造であってもよい。特に、第1半導体層730の成長の均等性を向上させ、第1半導体層730の内部に発生するクラックや転位を低減する観点から、円錐状、円盤状、3角柱状、3角錐状、6角柱状及び6角錐状のいずれかであることが好ましい。また、第1半導体層内に発生するクラックを抑制する観点から、凹凸構造(L)の凸部703の径は、底部から頂点へと向かって小さくなる構造であると好ましい。特に、これらの形状において、凸部703の側面部の傾斜角度が1以上5以下の切り替わり点を有すことが好ましい。なお、1以上3以下であるとより好ましい。また、凸部7303の側面部は直線状でなく、膨らみを有した形状であってもよい。なお、凹凸構造(L)と基板本体702とが異なる材料から構成される場合においては、凹凸構造(L)の屈折率nLと基板本体の屈折率nsと、の差分の絶対値|nL−ns|は0.1以上であることが好ましい。このような範囲を満たすことにより、半導体結晶層から見た凹凸構造(L)の光学的存在感を増加させることができる。即ち、光学的散乱性が増加する為に、導波モードを乱す効果が大きくなる。更には、半導体発光素子の側面方向からの光取り出しや、或いは上面方向からの光取り出しの設計が容易となる。
また、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、凹凸構造(L)の凹部704の底部に設けられる凹凸構造(S)は、複数の凸部705より構成されるドット構造であり、且つ、凹凸構造(S)の凹部706の底部は平坦面を有すことが好ましい。更に、凹凸構造(S)の凸部705の径は、凸部705の底部から頂点へ向かって小さくなる構造であると、転位分散化がより促進されるため好ましい。最も好ましくは、凸部頂部幅lcvtが0に漸近する状態であり、凸部705の頂部と側面部とが連続する構造である。なお、凹凸構造(L)の凸部705の頂部から底部方向に凹凸構造(L)の凸部側面の傾斜が急になる変化を、凸部705の側面が含むことで、第1半導体層730内に発生するクラックを抑制することができる。
図45Bに示すように、凹凸構造(L)の凸部703に凹凸構造(S)が設けられることで、凹凸構造(L)の凸部703の頂部に平坦面が存在する場合であっても、内部量子効率IQEを良好に向上させることができる。これは、凹凸構造(L)の平坦面より半導体結晶層の成長が開始するためである。即ち、凹凸構造(L)の凸部703の頂部の平坦面上における半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となるため、凹凸構造(L)の凸部703において、転位を分散化することが可能となる。また、凹凸構造(L)の凹部704の底部より成長する半導体結晶層については、半導体結晶層の横方向成長により転位を低減することが可能である。よって、半導体結晶層の転位密度は低下し、内部量子効率IQEを向上させることができる。この場合、半導体結晶層の成長を促進させるために、凹凸構造(L)の凹部704の底部は平坦面を有すことが好ましい。更に、凹凸構造(L)の凸部703の頂部は底部よりも小さい構造であると好ましい。また、凹凸構造(S)により内部量子効率IQEを良好に保つ観点から、凹凸構造(S)は複数の凸部705より構成されるドット構造であり、且つ、凹凸構造(S)の凹部706の底部は平坦面を有すことが好ましい。更に、凹凸構造(S)の凸部703の径が底部から頂点へ向かって小さくなる構造であると、転位分散化がより促進されるため好ましい。最も好ましくは、凸部頂部幅lcvtが0に漸近する状態であり、凸部703の頂部と側面部と、が連続する構造である。凹凸構造(L)は、円盤状、円錐状、n角柱(n≧3)状、n角錐状といった形状をとることができるが、中でも、第1半導体層730の成長の均等性を向上させ、第1半導体層730内部に発生するクラックや転位を低減する観点から、円錐状、円盤状、3角柱状、3角錐状、6角柱状及び6角錐状のいずれかであることが好ましい。なお、前記角錐の頂部は、曲率半径が0である角部であっても、曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であってもよい。特に、角錐形状の場合、曲率半径が0超である角部を有すことで、半導体結晶層の成長時に発生するクラックを抑制できることから、半導体発光素子の長期信頼性が向上する。特に、これらの形状において、凸部703の側面部の傾斜角度が1以上5以下の切り替わり点を有すことが好ましい。なお、1以上3以下であるとより好ましい。また、凸部703の側面部は直線状でなく、膨らみを有した形状であってもよい。また、凹凸構造(L)の凸部703頂部に凹凸構造(S)が設けられる場合、光学基板(IV)710を例えばレーザーリフトオフにより除去することが容易となることから、半導体発光素子の投入電力あたりの発光強度を増加させることができる。
図45Cに示す構造により、上記説明した図45A及び図45Bの構造により発現される効果を組み合わせることが可能となる。
図45においては、凹凸構造(L)が複数の独立した凸部703より構成される場合を例示したが、凹凸構造(L)は複数の独立した凹部704より構成されていても良い。
図47は、第4の実施の形態に係る光学基板の一例を示す断面模式図である。図47Aは、凹凸構造(L)が独立した複数の凹部704より構成されると共に、凹凸構造(L)の凸部703の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。図47Bは、凹凸構造(L)が独立した複数の凹部704より構成されると共に、凹凸構造(L)の凹部704の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。図47Cは、凹凸構造(L)が独立した複数の凹部704より構成されると共に、凹凸構造(L)の凸部703及び凹部704の表面に凹凸構造(S)が設けられる場合である。
図47Aに示すように、凹凸構造(L)の凸部703に凹凸構造(S)が設けられることで内部量子効率IQEを良好に向上させることができる。更に、凹凸構造(L)が独立した複数の凹部704より構成されることから、凹凸構造(L)の凹部704の内部に空洞を形成することが容易となる。この場合、レーザーリフトオフによる光学基板の除去精度が向上する。更に、空洞を形成する場合、半導体結晶層と空洞と、の屈折率の差が非常に大きくなることから、光取り出し効率LEEの増加程度が急増する。これは、図47B又は図47Cに示す凹凸構造についても同様である。
以上説明したように、凹凸構造(S)の主たる機能は内部量子効率IQEの改善である。この為、凹凸構造(S)の材質は、光学基板(IV)710の基板本体702を構成する材質と同一であると好ましい。一方、凹凸構造(L)の主たる機能は光取り出し効率LEEの改善である。この為、凹凸構造(L)の材質は、光学基板(IV)710の基板本体702と同一であっても異なっていてもよい。例えば、凹凸構造(S)及び凹凸構造(L)のいずれもサファイア、SiC(炭化ケイ素)、窒化物半導体、Si(シリコン)又はスピネルから構成される場合や、凹凸構造(S)がサファイア、SiC、窒化物半導体、Si又はスピネルから構成され、凹凸構造(L)がSiOから構成される場合が挙げられる。
以上説明した内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを共に向上させるための凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)の配列は、以下の配列や形状を満たすことが特に好ましい。
<凹凸構造(S)>
凹凸構造(S)の主たる機能は内部量子効率IQEの向上である。その為、以下に説明する凹凸構造(S)の密度(平均間隔PS)を満たせば、その配列は限定されず、六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、又はこれらの配列を組み合わせた配列、或いは規則性の低い配列等を採用することができる。特に、凹凸構造(S)の配列規則性が低下する程、凹凸構造(S)による光学的散乱性の効果も合わせて発現することが可能となるため、好ましい。
凹凸構造(S)の平均間隔PSは凹凸構造(S)の密度を示す指標となる。凹凸構造(S)を設けることにより、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となり、凹凸構造(S)に応じ転位を分散化することができるため、微視的にも巨視的にも転位を低減することが可能となり、内部量子効率IQEを向上させることができる。
平均間隔PSは、50nm以上1500nm以下であると好ましい。特に、平均間隔PSが1500nm以下であることにより、凹凸構造(S)の密度が向上する。これに伴い、半導体結晶層内部の転位を分散化することが可能となり、局所的及び巨視的な転位密度を低減することができるため、内部量子効率IQEを大きくすることができる。前記効果をより発揮する観点から、平均間隔PSは、1200nm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましく、750nm以下であることが最も好ましい。一方で凹凸構造(S)の平均間隔PSが50nm以上であることにより、凹凸構造(S)としての光学的散乱性(光回折又は光散乱)を強めることができる。即ち、凹凸構造(L)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)又は反射に凹凸構造(S)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)を加えることができるため、光取り出し効率LEEがより向上する。前記効果をより発揮する観点から、平均間隔PSは200nm以上であると好ましく、300nm以上であることがより好ましく、350nm以上であることが最も好ましい。
また、凹凸構造(S)の間隔Pに、上記説明した乱れを加えることで、凹凸構造(S)による内部量子効率IQE向上を維持した状態における、凹凸構造(S)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)をより向上させることができる。即ち、凹凸構造(S)による内部量子効率IQE向上の改善と光取り出し効率LEE改善の効果が強まるため、光学基板の凹凸構造面720としての内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEの向上程度が共に増大する。凹凸構造(S)の間隔Pに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025以上0.8以下)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.4以下であることにより内部量子効率IQEへの寄与が良好となる。同様の観点から、0.035以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
なお、凹凸構造(S)の間隔Pの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、六方配列、準六方配列、準四方配列、及び四方配列を非規則的に含む特異構造を含む凹凸構造の場合、凹凸構造の間隔Pの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、正六方配列において、間隔Pの増減が周期的に生じるような特異構造を含む凹凸構造の場合、間隔Pの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。また、例えば、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置される場合、該特異構造が非規則的に散在すれば、凹凸構造の間隔Pの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置され、該特異構造が規則的に設けられる場合、凹凸構造(S)の間隔Pの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。
凹凸構造(S)の凸部頂部幅lcvtと凹部開口幅lcctと、の比率(lcvt/lcct)は、小さい程好ましく、実質的に0であると最も好ましい。なお、lcvt/lcct=0とは、lcvt=0nmであることを意味する。しかしながら、例えば、走査型電子顕微鏡によりlcvtを測定した場合であっても、0nmは正確には計測できない。よって、ここでのlcvtは測定分解能以下の場合全てを含むものとする。比率(lcvt/lcct)が3以下であると、内部量子効率IQEを効果的に向上させることができる。これは、凹凸構造(S)の凸部705の頂部上から発生する転位が抑制され、転位の分散性が向上し、微視的及び巨視的な転位密度が低下する為である。更に、(lcvt/lcct)が1以下であることにより、光取り出し効率LEEを向上させることができる。これは光学基板(IV)710と半導体結晶層により作られる凹凸構造(S)の屈折率分布が、発光光からみて適切になる為である。上記説明した内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを共に大きく向上させる観点から、(lcvt/lcct)は、0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がなお好ましい。
また、凹凸構造(S)の凹部706の底部が平坦面を有すると、内部量子効率IQEを向上させると共に、半導体結晶成膜装置間の差を小さくできるため好ましい。LED素子において内部量子効率IQEを向上させるためには、半導体結晶層内部の転位を分散化し、局所的及び巨視的な転位密度を減少させる必要がある。ここで、これらの物理現象の初期条件は、半導体結晶層を化学蒸着(CVD)により成膜する際の核生成及び各成長である。凹凸構造(S)の凹部706の底部に平坦面を有すことで、核生成を好適に生じさせることが可能となるため、凹凸構造(S)の密度による半導体結晶層内の転位低減効果をより発現させることが可能となる。結果、内部量子効率IQEをより大きくすることができる。以上の観点から、凹凸構造(S)の凸部底部幅lcvbと凹部底部幅lccbと、の比率(lcvb/lccb)は、5以下であると好ましい。特に、凹凸構造(S)の凹部706の底部を基準面とした半導体結晶層の成長をより促進する観点から、(lcvb/lccb)は2以下がより好ましく、1以下が最も好ましい。この平坦面の大きさは30nm以上であることが好ましい。ここで平坦面の大きさとは、互いに最近接する凸部705において、それぞれの凸部705の底部外縁部間の最短距離として定義する。30nm以上であることにより、半導体結晶層の初期成長性を良好に保つことができるため、内部量子効率IQE改善の効果が大きくなる。同様の観点から、平坦面の大きさは60nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることが最も好ましい。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、上記説明した比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)を同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQEを大きくすることができる。
また、凹凸構造(S)は、ドット構造であると凸部頂部幅lcvt及び凸部底部幅lcvbの制御が容易となり、比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQEを大きくすることができる。
凸部底部幅lcvbと間隔Pと、の比率(lcvb/P)で表されるデューティは、内部量子効率IQEを向上させる観点から、0.03以上0.83以下であると好ましい。0.03以上であることにより、半導体結晶層の結晶モードを乱す効果が大きくなり、内部量子効率IQEを改善できる。同様の効果から、比率(lcvb/P)は0.17以上であることがより好ましく、0.33以上であることが最も好ましい。一方、0.83以下であることにより、半導体結晶層の化学蒸着における核生成及び核成長を良好に行うことが可能となり、内部量子効率IQEを高めることができる。同様の効果から、比率(lcvb/P)は0.73以下がより好ましく、0.6以下であることが最も好ましい。
なお、凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすことで、光学的散乱性を効果的に発現することが可能であるため、好ましい。凸部底部外接円径φoutが乱れを有すことは、デューティが乱れを有すことを意味する。
アスペクト比が0.1以上であることにより、凹凸構造(S)による光学的散乱性による光取り出し効率LEEを向上させることができる。特に、凹凸構造(S)の高さHの乱れ、及び上記説明した凹凸構造(S)の間隔Pの乱れによる新たな光学的散乱性により光取り出し効率LEEをより向上させる観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が最も好ましい。一方、アスペクト比は5以下であることにより、転位密度を低減できる他に、凹凸構造(S)を作製する時間を短くでき、且つ、半導体結晶量を低減することができるため好ましい。同様の効果から、2以下がより好ましく、1.5以下が最も好ましい。
なお、高さHが上記式(A)を満たす乱れを有す場合、光学的散乱性が効果的に高まるため好ましい。この場合、同時にアスペクト比も乱れを有すこととなる。なお、凹凸構造(S)の高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。即ち、アスペクト比の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造(S)があり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造(S)の場合、凹凸構造(S)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造(S)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。
凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinとの比率(φout/φin)は、凸部底部輪郭Aの歪を表す尺度である。該比率(φout/φin)は、1以上3以下であることが好ましい。比率(φout/φin)が1の場合、凸部底部輪郭Aは真円となる。この場合、凹凸構造(S)の設計に際し、光学シミュレーションを好適に作用させることが可能となるため、LED素子の設計が容易になる。光取り出し効率LEEを向上させる観点からは、比率(φout/φin)は1超であると好ましい。一方、比率(φout/φin)が3以下であることにより、内部量子効率IQEを向上させることができる。比率(φout/φin)が大きいことは、凸部底部の径が真円から大きく撓んでいることを意味する。即ち、上記説明した、凸部底部幅lcvb及び凹部底部幅lccが測定する方向により変化することを意味する。特に凹部底部幅lccは、半導体結晶層の成長の基準面として重要であるため、上記説明した範囲を満たす必要がある。この観点から、比率(φout/φin)は3以下であると好ましく、2以下であるとより好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
また、凸部底部外接円径φoutの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEを維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造(S)の凸部底部外接円径φoutに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.4以下であることにより内部量子効率IQEの向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
また、比率(φout/φin)の乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEを維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造の比率(φout/φin)に対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.35以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.35以下であることにより内部量子効率IQE向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。また、0.25以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下が最も好ましい。
上記凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造(S)の乱れに基づく新たな光学的散乱性(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることができるため好ましい。即ち、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることができる。これは、凹凸構造(S)の乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造(S)の体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造(S)の体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効媒質近似的屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
また、凸部底部外接円径φoutと上記説明した高さHと、が上記式(A)の範囲を満たすことで、上記説明した凹凸構造(S)の体積変化が大きくなり、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなるため好ましい。同様の効果から、凸部底部外接円径φout、高さH及び間隔Pが上記式(A)を満たすと好ましく、凸部底部外接円径φout、高さH、間隔P及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすとより好ましい。
凹凸構造(S)の凸部の高さHは、平均間隔Pの2倍以下であると内部量子効率IQE、凹凸構造(S)の作製にかかる時間、使用する半導体結晶量の観点から好ましい。特に、高さHが平均間隔PS以下の場合、凹凸構造(S)の屈折率分布が、発光光からみて適切になる為、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。この観点から、凹凸構造(S)の高さHは、平均間隔PSの0.8倍以下がより好ましく、0.6倍以下が最も好ましい。
また、高さHの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造(S)の高さHに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.8)の中において、0.03以上0.40以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.40以下であることにより内部量子効率IQE向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.12以上が最も好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下が最も好ましい。
上記高さHが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造(S)の乱れに基づく新たな光学的散乱性(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることができるため好ましい。即ち、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることができる。これは、凹凸構造(S)の乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造(S)の体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造(S)の体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効媒質近似的屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、高さHと間隔Pと、が上記式(A)を満たすことで、光学的散乱性の効果が大きくなり、光取り出し効率LEEがより向上するため好ましい。同様の原理から、高さH、間隔P及び凸部底部外接円径φoutが上記式(A)を満たすとより好ましく、高さH、間隔P、凸部底部外接円径φout、及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすとより好ましい。
なお、高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造(S)があり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造(S)の場合、凹凸構造(S)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造(S)の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造(S)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。
凸部705の側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造(S)の形状パラメータより決定される。特に、凸部705の頂部から底部に向けて多段階に傾斜角度が変化すると好ましい。例えば、凸部705の側面が上に膨らんだ変曲点が1つの曲線を描く場合、傾斜角度は2つとなる。このような多段階の傾斜角度を有すことで、凹凸構造の乱れによる光学的散乱性(光回折又は光散乱)の効果をより強くすることが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。また、光学基板(IV)710と半導体結晶層の材質により、凸部705の側面の傾斜角度を、当該側面に出る結晶面より選定することもできる。この場合、半導体結晶層の成長性が良好になるため、より内部量子効率IQEを高くできると考えられる。
<凹凸構造(L)>
凹凸構造(L)の主たる機能は光取り出し効率LEEの向上である。その為、半導体発光素子の発光光に対して、効果的に光学的散乱性(光散乱或いは光回折)現象又は反射現象を生じる構造であることが好ましく、以下に説明する凹凸構造(L)を採用することができる。
凹凸構造(L)の平均間隔PLは、光学的散乱性(光回折又は光散乱)又は反射を効果的に発現させる観点から、1000nm以上100μm以下であることが好ましい。特に、光回折性をより強く発現し、効果的に導波モードを乱し光取り出し効率LEEを向上させる観点から、平均間隔PLは1200nm以上であることが好ましく、1500nm以上であることがより好ましく、2000nm以上であることが最も好ましい。一方、上限値は凹凸構造(L)の製造時間、半導体結晶層の使用量の観点から50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
また、凹凸構造(L)の間隔Pに、上記説明した乱れを加えることで、凹凸構造(L)による光取り出し効率LEEの向上原理が光学的散乱性(光回折又は光散乱)による場合、光取り出し効率LEEの向上程度がより増加すると考えられる。これは、凹凸構造(L)による光取り出し効率LEEは、導波モードにより多重反射する発光光の進行方向を変化させることが本質であることに起因する。即ち、効果的に光取り出し効率LEEを向上させるためには、凹凸構造(L)に到達した発光光を、再度導波モードを形成することなく半導体発光素子の外部へと取り出す必要がある。また、導波モードを乱された発光光が半導体発光素子より外部へ、と出光するまでの反射する回数を減少させる必要がある。凹凸構造(L)が乱れを有すことで、凹凸構造(L)による光回折モードの数が増加するため、発光光の進行方向の多様性が増加すると考えらえる。これは、凹凸構造(L)に到達した発光光が再び導波モードを形成する確率が低減することを意味するため、第1半導体層730、発光半導体層740及び第2半導体層750における発光光の吸収による減衰を抑制できると考えられる。以上の観点から、凹凸構造(L)の間隔Pに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025以上0.8以下)の中において、0.03以上0.5以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.4以下であることにより内部量子効率IQEの向上を維持する効果が大きくなる。同様の観点から、0.035以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。また、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
なお、凹凸構造(L)の間隔Pの乱れは、上記説明した凹凸構造(S)の間隔Pの乱れと同様に高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。
凹凸構造(L)の配列は、光取り出し効率LEEを向上させる観点からは六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、又はこれらの組み合わされた配列、或いは規則性の低い配列を採用できる。特に、凹凸構造(L)によっても内部量子効率IQEを向上させる観点から、六方配列であると好ましい。六方配列により設けられる複数の凸部より、部分的に凸部を間引いた配列も採用できる。このような配列を採用することにより、半導体発光素子の順電位の増加を抑制することができる。例えば、六方格子の格子点上に凸部が設けられる状態において、六方格子の中心点に凸部のない単位を最密充填した配列が挙げられる。
凹凸構造(L)の凸部頂部幅lcvtは、凹凸構造(L)の材質によらず、凹凸構造(L)の凸部703に凹凸構造(S)が設けられる場合であれば、特に限定されない。これは、凹凸構造(L)と基板本体702との材質が異なる場合、基板本体702の露出する面より第1半導体層730が成長する為である。一方、凹凸構造(L)と基板本体702との材質が同じ場合、凹凸構造(L)の凸部703の頂部より発生する転位を、凹凸構造(S)により低減することが可能なためである。凹凸構造(L)と基板本体702との材質が同じ場合、凹凸構造(S)の凹凸構造(L)に対する配置によらず、内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを向上させる観点から、凹凸構造(L)の凸部頂部幅lcvtと凹部開口幅lcctと、の比率(lcvt/lcct)は、小さい程好ましく、実質的に0であると最も好ましい。なお、lcvt/lcct=0とは、lcvt=0nmであることを意味する。しかしながら、例えば、走査型電子顕微鏡によりlcvtを測定した場合であっても、0nmは正確には計測できない。よって、ここでのlcvtは測定分解能以下の場合全てを含むものとする。比率(lcvt/lcct)が3以下であると、半導体結晶層の成膜性を良好に保つことができる。これは、凹凸構造(L)の凸部703の頂部より成長する半導体結晶量を低減できることによる。更に、(lcvt/lcct)が1以下であることにより、光取り出し効率LEEを向上させることができる。これは光学基板(IV)710と半導体結晶層により作られる凹凸構造(L)の屈折率分布が、発光光からみて適切になる為である。上記説明した内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを共に大きく向上させる観点から、(lcvt/lcct)は、0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がなお好ましい。
また、凹凸構造(L)と基板本体702との材質が同じ場合、凹凸構造(L)の凹部704の底部が平坦面を有すると、内部量子効率IQEを向上させると共に、半導体結晶成膜装置間の差を小さくできるため好ましい。LED素子において内部量子効率IQEを向上させるためには、半導体結晶層内部の転位を分散化し、局所的及び巨視的な転位密度を減少させる必要がある。ここで、これらの物理現象の初期条件は、半導体結晶層を化学蒸着(CVD)により成膜する際の核生成及び核成長である。凹凸構造(L)の凹部704の底部に平坦面を有すことで、核生成を好適に生じさせることが可能となるため、半導体結晶層の成長が安定化する。結果、内部量子効率IQEをより大きくすることができる。以上の観点から、凹凸構造(S)の凸部底部幅lcvbと凹部底部幅lccbと、の比率(lcvb/lccb)は、5以下であると好ましい。特に、凹凸構造(S)の凹部704の底部を基準面とした半導体結晶層の成長をより促進する観点から、(lcvb/lccb)は2以下がより好ましく、1以下が最も好ましい。
一方、凹凸構造(L)と基板本体702との材質が異なる場合、凹凸構造(L)は基板本体702上に部分的に設けられる、即ち基板本体702に露出する面があることで、第1半導体層730の成長が実現する。よって、凹凸構造(L)と基板本体702との材質が異なる場合の凹凸構造(L)は、基板本体702上に設けられた複数の凸部と凸部の設けられない露出した基板本体702より構成される。例えば、サファイア、SiC、窒化物半導体、Si又はスピネルを基板本体702とした時に、SiO2から構成される凸部703を設けることができる。即ち、基板本体702とSiO2により凹凸構造(L)を構成する。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、上記説明した比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)を同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQEを大きくすることができる。また、凸部頂部幅lcvtが凸部底部幅lcvbよりも小さい構造である場合、半導体結晶層の横方向成長を効果的に発現させることができるため、転位密度の低減効果が一層高まり、なり部量子効率IQEの向上程度が大きくなる。
また、凹凸構造(L)は、ドット構造であると凸部頂部幅lcvt及び凸部底部幅lcvbの制御が容易となり、比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)を同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを大きくすることができる。
凸部底部幅lcvbと間隔Pとの比率(lcvb/P)で表されるデューティは、内部量子効率IQEを向上させる観点から、0.03以上0.83以下であると好ましい。0.03以上であることにより、半導体結晶層の成長安定性が大きくなり、半導体結晶層の横方向成長の効果が大きくなる。同様の効果から、比率(lcvb/P)は0.17以上であることがより好ましく、0.33以上であることが最も好ましい。一方、0.83以下であることにより、半導体結晶層の化学蒸着における核生成及び核成長を良好に行うことが可能となり、内部量子効率IQEを高めることができる。同様の効果から、比率(lcvb/P)は0.73以下がより好ましく、0.6以下であることが最も好ましい。
なお、凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすことで、光学的散乱性を効果的に発現することが可能であるため、光取り出し効率LEEを効果的に大きくすることができる。凸部底部外接円径φoutが乱れを有すことは、デューティが乱れを有すことを意味する。
アスペクト比が0.1以上であることにより、凹凸構造(L)による光学的散乱性による光取り出し効率LEEを向上させることができる。特に、凹凸構造(L)の高さHの乱れ、及び上記説明した凹凸構造(L)の間隔PLの乱れによる新たな光学的散乱性により光取り出し効率LEEをより向上させる観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が最も好ましい。一方、アスペクト比は5以下であることにより、凹凸構造(L)を作製する時間を短くでき、且つ、半導体結晶量を低減することができるため好ましい。同様の効果から、2以下がより好ましく、1.5以下が最も好ましい。
なお、高さHが上記式(A)を満たす乱れを有す場合、上記凹凸構造(S)において説明したのと同様に光学的散乱性が効果的に高まるため好ましい。この場合、同時にアスペクト比も乱れを有すこととなる。なお、凹凸構造(L)の高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。即ち、アスペクト比の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造(L)があり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造(L)の場合、凹凸構造(L)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造(L)の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造(L)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。
凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinとの比率(φout/φin)は、凸部底部輪郭Aの歪を表す尺度である。該比率(φout/φin)は、1以上10以下であることが好ましい。比率(φout/φin)が1の場合、凸部底部輪郭Aは真円となる。この場合、凹凸構造(L)の設計に際し、光学シミュレーションを好適に作用させることが可能となるため、LED素子の設計が容易になる。光取り出し効率LEEを向上させる観点からは、比率(φout/φin)は1超であると好ましい。一方、比率(φout/φin)が10以下であることにより、内部量子効率IQEを向上させることができる。比率(φout/φin)が大きいことは、凸部703の底部の径が真円から大きく撓んでいることを意味する。即ち、上記説明した、凸部底部幅lcvb及び凹部底部幅lccが測定する方向により変化することを意味する。特に凹部底部幅lccは、半導体結晶層の成長の基準面として重要であるため、上記説明した範囲を満たす必要がある。この観点から、比率(φout/φin)は5以下であると好ましく、3以下であるとより好ましく、2以下であることが最も好ましい。
また、凸部底部外接円径φoutの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEを維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造(L)の凸部底部外接円径φoutに対する(標準偏差/相加平均)は、上記凹凸構造(S)にて説明した範囲を満たすことができる。
また、比率(φout/φin)の乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEを維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造(L)の比率(φout/φin)に対する(標準偏差/相加平均)は、上記凹凸構造(S)にて説明した範囲を満たすことができる。
上記凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造(L)の乱れに基づく新たな光学的散乱性(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることができるため好ましい。これは、凹凸構造(L)の乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造(L)の体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造(L)の体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加を大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
また、凸部底部外接円径φoutと上記説明した高さHと、が上記式(A)の範囲を満たすことで、上記説明した凹凸構造(L)の体積変化が大きくなり、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなるため好ましい。同様の効果から、凸部底部外接円径φout、高さH及び間隔Pが上記式(A)を満たすと好ましく、凸部底部外接円径φout、高さH、間隔P及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすとより好ましい。
凹凸構造(L)の凸部703の高さHは、平均間隔Pの2倍以下であると、凹凸構造(L)の作製にかかる時間、使用する半導体結晶量の観点から好ましい。特に、平均間隔PL以下の場合、凹凸構造(L)の屈折率分布が、発光光からみて適切になる為、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。この観点から、凹凸構造(L)の高さHは、平均間隔Pの0.8倍以下がより好ましく、0.6倍以下が最も好ましい。
また、高さHの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造(L)の高さHに対する(標準偏差/相加平均)は、上記凹凸構造(S)にて説明した範囲を満たすことができる。
上記高さHが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造(L)の乱れに基づく新たな光学的散乱性(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることができるため好ましい。これは、凹凸構造(L)の乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造(L)の体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造(L)の体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数を大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、高さHと間隔Pと、が上記式(A)を満たすことで、光学的散乱性の効果が大きくなり、光取り出し効率LEEがより向上するため好ましい。同様の原理から、高さH、間隔P及び凸部底部外接円径φoutが上記式(A)を満たすとより好ましく、高さH、間隔P、凸部底部外接円径φout、及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(A)を満たすとより好ましい。
なお、高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造(L)があり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造(L)の場合、凹凸構造(L)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造(L)の場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造(L)の高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学的散乱性として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学的散乱性として光回折を発現することができる。
凸部703の側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造(L)の形状パラメータより決定される。特に、凸部703の頂部から底部に向けて多段階に傾斜角度が変化すると好ましい。例えば、凸部703の側面が上に膨らんだ変曲点が1つの曲線を描く場合、傾斜角度は2つとなる。このような多段階の傾斜角度を有すことで、凹凸構造(L)の乱れによる光学的散乱性(光回折又は光散乱)の効果をより強くすることが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。また、光学基板(IV)710と半導体結晶層の材質により、凸部703の側面の傾斜角度を、当該側面に出る結晶面より選定することもできる。この場合、半導体結晶層の成長性が良好になるため、より内部量子効率IQEを高くできると考えられる。
図32Cは、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)の他の例を示す断面模式図である。図32Cに示すように、光学基板(IV)710の表面に構造密度の高い凹凸構造(S)が設けられ、凹凸構造(S)の表面の少なくとも一部の上に体積変化の大きな凹凸構造(L)が設けられる。より具体的には、光学基板(IV)710の基板本体702の主面に、複数の凸部705及び凹部706で構成された凹凸構造(S)が形成され、さらに凹凸構造(S)の表面が一部露出するように互いに離間して複数の凸部703が形成され、凹凸構造(L)を構成している。
このような構成により、凹凸構造(L)を構成する凸部703の間に露出する凹凸構造(S)により内部量子効率IQEを向上させることが可能となり、凹凸構造(L)による光学的散乱性(光回折又は光散乱)により光取り出し効率LEEを向上させることができる。
図32Cに示すように、凹凸構造(S)の表面の一部に凹凸構造(L)が設けられることで内部量子効率IQEを向上し、且つ、光取り出し効率LEEを向上させることができる。これは、凹凸構造(S)により半導体結晶層内部の転位を分散化し低減でき、且つ、凹凸構造(L)による光学的散乱性により導波モードを乱すことができる為である。
凹凸構造(L)の材質と基板本体702の材質とが異なる場合、凹凸構造(L)は、円盤状やn角柱(n≧3)状といった、凸部頂部幅lcvtと凸部底部幅lcvbと、が実質的に同様の構造であってもよい。特に、第1半導体層730内に発生するクラックを抑制する観点から、凹凸構造(L)の凸部頂部幅lcvtは凹凸構造(L)の凸部底部幅lcvbよりも小さい構造であると好ましい。
一方、凹凸構造(L)と基板本体702と、の材質が同じ場合、凹凸構造(L)の凸部703の頂部より発生する転位を抑制するために、凹凸構造(L)の凸部703の頂部はその底部よりも小さい構造であると好ましい。特に、凹凸構造(L)の凸部703の頂部がその側面部と連続してつながる構造、換言すれば凸部頂部幅lcvtが0に漸近する構造であると好ましい。
更に、凹凸構造(L)によっても内部量子効率IQEをより向上させる観点から、凹凸構造(L)は複数の凸部703より構成されるドット構造であると好ましい。これは、凸部703間に設けられる凹部704より成長する半導体結晶層内部の転位を、横方向成長により低減することができるためである。同様の効果から、凹凸構造(L)の凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さいと好ましい。
一方、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、凹凸構造(S)は、複数の凸部705より構成されるドット構造であり、且つ、凹凸構造(S)の凹部706の底部は平坦面を有すことが好ましい。更に、凹凸構造(S)の凸部頂部幅lcvtが凸部底部幅lcvbよりも小さい構造であると、転位分散化がより促進されるため好ましい。最も好ましくは、凸部頂部幅lcvtが0に漸近する状態であり、凸部705の頂部と側面部とが連続する構造である。この平坦面の大きさは30nm以上であることが好ましい。ここで平坦面の大きさとは、互いに最近接する凸部705において、それぞれの凸部705の底部外縁部間の最短距離として定義する。30nm以上であることにより、半導体結晶層の初期成長性を良好に保つことができるため、内部量子効率IQE改善の効果が大きくなる。同様の観点から、平坦面の大きさは60nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることが最も好ましい。
以上説明したように、凹凸構造(S)の主たる機能は内部量子効率IQEの改善である。この為、凹凸構造(S)の材質は、光学基板(IV)710を構成する材質であると好ましい。一方、凹凸構造(L)の主たる機能は光取り出し効率LEEの改善である。この為、凹凸構造(L)の材質は、光学基板(IV)710と同様であっても異なっていてもよい。
以上説明した図32Cに示す凹凸構造面720により内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを共に向上させるための凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)の配列は、以下の配列や形状を満たすことが特に好ましい。
<凹凸構造(S)>
凹凸構造(S)の主たる機能は内部量子効率IQEの向上である。その為、上記図45A〜図45Cを参照して説明した凹凸構造(S)の配列や形状を同様の効果から採用することができる。
<凹凸構造(L)>
凹凸構造(L)の主たる機能は光取り出し効率LEEの向上である。その為、上記図45A〜図45Cを参照して説明した凹凸構造(L)の配列や形状を同様の効果から採用することができる。
続いて、第4の実施の形態に係る光学基板を半導体発光素子(LED)に適用する場合について説明する。本実施の形態に係る光学基板は、凹凸構造面720が凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)より構成されることで、大きく2つの効果を発現する。
(1)内部量子効率IQEの向上
微小な凹凸構造(S)により、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となる。これにより、半導体結晶層と光学基板の格子不整合により発生する転位を、凹凸構造(S)の近傍において消失させることが可能となる。即ち、半導体結晶層内部の転位は凹凸構造(S)に応じて分散すると共に、転位密度が減少する。これにより、内部量子効率IQEが向上すると考えられる。
(2)光取り出し効率LEEの向上
体積変化の大きな凹凸構造(L)により、半導体結晶層内部に作られる発光光の導波モードを、光学的散乱性(光回折或いは光散乱)により打破することができる。これは、導波モードにより所定の進行方向にしか進行できない発光光の進行方向を変化させることを意味する。即ち、発光層より出光した光は、凹凸構造(L)に起因する光学的散乱性により、素子外部へと取り出される。
図32C及び図45A〜図45Cを参照して説明したように、凹凸構造面720が凹凸構造(L)及び凹凸構造(S)で構成されることで、以上(1)及び(2)の効果を同時に発現することができる。即ち、内部量子効率IQEの向上を実現し、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることができる。
即ち、発光する効率そのものを向上させ、且つ、発光した光を効果的にLED外部へと取り出すことが可能となる。この為、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710を使用して製造されたLED素子は、発熱量が小さくなる。発熱量が小さくなることは、LED素子の長期安定性を向上させるばかりでなく、放熱対策に係る負荷(例えば、放熱部材を過大に設けること)を低減できることを意味する。
第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710においては、基板本体702の材質は、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2、或いは第3の実施の形態に係る光学基板(III)と同様のものを採用できる。
光学基板(IV)710は、少なくとも第1半導体層730を積層した後の工程において除去してもよい。光学基板(IV)710を除去することにより、導波モードの乱し効果が大きくなるため、光取り出し効率LEEが大きく向上する。この場合、半導体発光素子の発光光の出光面は、発光半導体層740からみて第1半導体層730側であると好ましい。
基板本体702と凹凸構造との材質が異なる場合の凹凸構造を構成する材料としては、例えば、上記説明した基板本体702の材質や、SiO2等を使用することができる。
次に、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)を適用した半導体発光素子について説明する。
第4の実施の形態に係る半導体発光素子においては、上述の光学基板(IV)720を少なくとも一つ以上を構成に含む。光学基板(IV)720を構成に入れることで、内部量子効率IQEの向上及び光取り出し効率LEEの向上を図ることができる。
第4の実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、凹凸構造面720上に、少なくとも2層以上の半導体層と発光半導体層とを積層して構成される積層半導体層を有する。
第4の実施の形態に係る半導体発光素子において、n型半導体層としては、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2、或いは第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用した半導体発光素子のn型半導体層を採用できる。
発光半導体層740としては、LEDとして発光特性を有するものであれば、特に限定されず、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2、或いは第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用した半導体発光素子の発光半導体層を採用できる。
また、p型半導体層の材質は、LEDに適したp型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2、或いは第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用した半導体発光素子のp型半導体層を採用できる。
透明導電膜760の材質は、LEDに適した透明導電膜として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1、第2の実施の形態に係る光学基板(II)2、或いは第3の実施の形態に係る光学基板(III)を使用した半導体発光素子の透明導電膜を採用できる。
これらの積層半導体層(n型半導体層、発光半導体層、及びp型半導体層)は、光学基板(IV)720表面に公知の技術により製膜できる。例えば、製膜方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、及び、分子線エピタキシャル成長法(MBE)が適用できる。
上記説明した半導体発光素子830における凹凸構造801〜凹凸構造808について説明する。まず、凹凸構造801を構成する凹凸構造の外形及び配列は、上記説明した凹凸構造面720を構成する凹凸構造の外形及び配列を採用することができる。凹凸構造801により、光学基板(IV)710の発光半導体層740とは反対の面にて反射する発光光を取り出す場合、光学現象として、有効媒質近似、光回折、光散乱のいずれも採用することができる。発光光の波長をλとした時に凹凸構造801の平均間隔Pが、概ねP/λ≦0.5を満たす場合に有効媒質近似として扱うことができる。この場合、臨界角をなくすことができない。しかしながら、凹凸構造面720により出光特性を制御し垂直に近く発光光を立ち上げた場合、光取り出し効率LEEは大きく向上する。一方、光回折や光散乱を利用すると、導波モードを乱す効果が大きい為好ましい。特に、凹凸構造801としては、光学的散乱性(光回折又は光散乱)を利用するとより好ましい。以上から、凹凸構造801の平均間隔Paveは、200nm以上50μm以下であると好ましく、450nm以上10μm以下であるとより好ましく、800nm以上5μm以下であると最も好ましい。
凹凸構造802〜凹凸構造808としては、上記説明した凹凸構造面720を構成する凹凸構造の形状、配列、大きさ等を採用することができ、これにより凹凸構造に応じた効果(電子注入効率EIEの向上、光取り出し効率LEEの向上、半導体発光素子の大面積化、電極剥離の抑制、配線剥離の抑制)を発現することができる。
以上説明した第4の光学基板(IV)710においては、光学基板の表面の一部又は全面に上記説明した凹凸構造(凹凸構造(S)及び凹凸構造(L))が配置される。ここで、一部又は全面とは、第1の実施の形態に係る光学基板(I)1及び第2の実施の形態に係る光学基板(II)2にて説明した通りである。なお、説明関し使用した文言は、適宜第4の実施の形態に適するように変更すればよい。
次に、第4の実施の形態に係る光学基板(IV)710の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る光学基板(IV)710は、上記説明した条件を満たした凹凸構造を具備すれば、その製造方法は限定されない。
光学基板(IV)710の場合、凹凸構造(L)を作製し、続いて凹凸構造(S)を作製することで、凹凸構造面720を製造することができる。凹凸構造(L)の製造方法は2つに分類できる。
(1)基板本体を直接加工し凹凸構造(L)を設ける場合
基板本体702を直接加工し凹凸構造(L)を設ける方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等により製造することができる。特に、基板本体702の凹凸構造の加工精度や加工速度の観点から、フォトリソグラフィ法或は、転写法を採用すると好ましい。なお、エッチング方法はウェットエッチングでもドライエッチングでもよい。特に、凹凸構造(L)の凸部の側面の面方位を精密に制御する場合は、ウェットエッチングであると好ましい。転写法については後述する。
(2)凹凸構造(L)を基板本体上に別途設ける場合
凹凸構造(L)を基板本体702上に別途設ける方法としては、転写法、粒子を内包する薄膜を基板本体702上に成膜し、その後粒子間を満たすバインダーを除去する方法や、基板本体702上に成膜したレジストの一部を除去し、除去された部分に凹凸構造(L)を構成する材料を満たし(例えば、蒸着やスパッタ法、電鋳法等)、最後にレジストを除去する方法や、基板上に凹凸構造(L)の材料を成膜し、成膜された凹凸構造(L)の材料を直接加工する方法等が挙げられる。
上記説明した方法により凹凸構造(L)を作製し、続いて凹凸構造(S)を作製することで凹凸構造面720を製造できる。
凹凸構造(S)を凹凸構造(L)上に設ける方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等が挙げられる。特に、基板本体2の凹凸構造の加工精度や加工速度の観点から、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法又は、転写法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
また、凹凸構造(S)を作製し、続いて凹凸構造(L)を作製することでも、凹凸構造面720を製造することができる。
凹凸構造(S)を設ける方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等が挙げられる。特に、基板本体702の凹凸構造の加工精度や加工速度の観点から、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法又は、転写法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
凹凸構造(S)を具備した基板本体702に対し、凹凸構造(L)を作製することで凹凸構造面720を製造できる。
基板本体702の凹凸構造(S)を更に加工することで、凹凸構造面720を製造できる。凹凸構造(S)の更なる加工方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等により製造することができる。特に、光学基板(IV)710の凹凸構造の加工精度や加工速度の観点から、フォトリソグラフィ法或は、転写法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
次に、光学基板(VI)710が、図7Bを用いて説明したように、基板本体702に凹凸構造面720を有する凹凸構造層を別途設ける場合、凹凸構造(S)を作製し、続いて凹凸構造(L)を作製することで、凹凸構造面720を製造することができる。
凹凸構造(S)を設ける方法としては、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等が挙げられる。特に、基板本体702の凹凸構造の加工精度や加工速度の観点から、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法又は、転写法を採用すると好ましい。転写法については後述する。
凹凸構造(S)を具備した基板に対し、別途凹凸構造(L)を設けることで光学基板(IV)710を製造できる。
凹凸構造(L)を別途設ける方法としては、例えば、転写法、粒子を内包する薄膜を基板本体702上に成膜し、その後粒子間を満たすバインダーを除去する方法が挙げられる。また、基板本体702上に成膜下レジストの一部を除去し、除去された部分に凹凸構造(S)を構成する材料を満たし(例えば、蒸着やスパッタ法、電鋳法等)、最後にレジストを除去する方法が挙げられる。また、凹凸構造(L)の材料を成膜し、成膜された凹凸構造(L)の膜を直接加工する方法が挙げられる。
(転写法)
転写法とは、表面に微細パタンを具備したモールドの、微細パタンを被処理体(基板本体)に転写する工程を含む方法として定義する。即ち、モールドの微細パタンと被処理体とを転写材を介して貼合する工程と、モールドを剥離する工程と、を少なくとも含む方法である。より具体的に、転写法は2つに分類することができる。
第1に、被処理体に転写付与された転写材を永久剤として使用する場合である。この場合、基板本体と凹凸構造を構成する材料は異なることとなる。また、凹凸構造は永久剤として残り、半導体発光素子として使用されることを特徴とする。半導体発光素子は、数万時間と長期に渡り使用することから、転写材を永久剤として使用する場合、転写材を構成する材料は、金属元素を含むと好ましい。特に、加水分解・重縮合反応を生じる金属アルコキシドや、金属アルコキシドの縮合体を原料に含むことにより、永久剤としての性能が向上するため好ましい。
第2に、インプリントリソグラフィ法が挙げられる。インプリントリソグラフィ法は、モールドの微細パタンを被処理体上に転写する工程と、エッチングにより被処理体を加工するためのマスクを設ける工程と、被処理体をエッチングする工程と、を含む方法である。例えば、転写材を1種類用いる場合、まず被処理体とモールドとを転写材を介して貼合する。続いて、熱や光(UV)により転写材を硬化させ、モールドを剥離する。転写材から構成される凹凸構造に対して酸素アッシングに代表されるエッチングを行い、被処理体を部分的に露出させる。その後、転写材をマスクとして、エッチングにより被処理体を加工する。この際の加工方法としては、ドライエッチングとウェットエッチングを採用できる。凹凸構造の高さを高くしたい場合はドライエッチングが有用である。また、例えば転写材を2種類用いる場合、まず被処理体上に第1転写材層を成膜する。続いて、第1転写材層とモールドとを第2転写材を介し貼合する。その後、熱や光(UV)により転写材を硬化させ、モールドを剥離する。第2転写材から構成される凹凸構造に対して酸素アッシングに代表されるエッチングを行い、第1転写材を部分的に露出させる。続いて、第2転写材層をマスクとして、第1転写材層をドライエッチングによりエッチングする。その後、転写材をマスクとして、エッチングにより被処理体を加工する。この際の加工方法としては、ドライエッチングとウェットエッチングを採用できる。凹凸構造の高さを高くしたい場合はドライエッチングが有用である。また、転写法としてマスク層とレジスト層を予め具備したナノ加工シートを製造し、該シートを使用する方法を採用できる。ここで、ナノ加工用シートとは、モールドの微細パタンの凹部内部にマスク層を充填配置し、マスク層の充填されたモールドの微細パタン面上に、微細パタンを平坦化するようにレジスト層を成膜したシートである。ナノ加工用シートを被処理体に貼合する工程と、モールドを剥離する工程と、を少なくともこの順に含むことで、被処理体/レジスト層/マスク層から構成される積層体を得ることができる。得られた積層体のマスク層面側から第1ドライエッチング処理を行い部分的に非処理体を露出させる。ここで、第1ドライエッチング処理として、酸素を使用した酸素アッシングを採用できる。次に、ドライエッチング或いはウェットエッチングにより被処理体をナノ加工することができる。特に、ドライエッチングを採用することで、被処理体上にアスペクト比の高いナノ構造を付与することができる。例えば、被処理体がサファイア基板の場合、ドライエッチングに使用するガスとして、Cl2ガス、BCl3ガス、或いはCl2ガスとBCl3ガスの混合ガスを使用できる。また、これらのガスにArを添加してもよい。この様なナノ加工シートを使用することで、被処理体の面内加工均等性が向上する。ナノ加工シートを構成するマスク層としては、Ti、Si、Zrなどの金属元素を含むことでき、金属アルコキシドやシランカップリング材を選定できる。また、レジスト層としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を採用できる。
<円筒状マスタースタンパ(樹脂モールド作製用鋳型)の作製>
円筒状マスタースタンパの基材としては、直径80mm、長さ50mmの円筒型の石英ガラスロールを用いた。この石英ガラスロール表面に、以下のように半導体パルスレーザを用いた直接描画リソグラフィ法により凹凸構造を形成し、3種類の円筒状マスタースタンパ(円筒状マスタースタンパ1〜円筒状マスタースタンパ3)を作製した。
まず、3つの石英ガラスロール(1)〜(3)をそれぞれ洗浄し、クリーン化した石英ガラスロール(1)〜(3)の表面にスパッタリング法によりそれぞれレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲットとしてCuO(8atm%Si含有)を用い、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmとした。
次に、石英ガラスロール(1)〜(3)を線速度s=1.0m/secで回転させながら、波長405nmの露光用半導体レーザにてレジスト層を露光した。石英ガラスロール(1)については、周方向の間隔が200nm、筒軸方向の間隔が173nmとなるように露光した。石英ガラスロール(2)については、周方向の間隔が460nm、筒軸方向の間隔が398nmとなるようにして露光した。石英ガラスロール(3)については、周方向の間隔が700nm、筒軸方向の間隔が606nmとなるように露光した。さらに、周方向のパルスに対して、照射エネルギーを一定としてx個のパルスを照射し、続いてy個分のパルス分だけパルスを照射しない時間を設けた。これらx個のパルスとy個のパルス(仮想パルス)を1周期と設定して露光を行った。
露光後、石英ガラスロール(1)〜(3)のレジスト層をそれぞれ現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、処理時間240秒の条件で実施した。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングにより石英ガラスロール(1)〜(3)をエッチングした。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間3分〜10分の条件で実施した。次に、表面に凹凸構造が付与された石英ガラスロール(1)〜(3)をpH1の塩酸で6分間の処理することにより、残渣のレジスト層のみを石英ガラスロール(1)〜(3)から剥離して円筒状マスタースタンパ(転写用モールド)(1)〜(3)を作製した。
<樹脂モールドの作製>
得られた円筒状マスタースタンパ(1)〜(3)の表面に対し、フッ素系の表面離型処理材であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を施した。
次に、得られた円筒状マスタースタンパ(1)〜(3)を用いてリール状樹脂モールドを作製した。まず、フッ素系添加剤(ダイキン工業社製 オプツールDAC HP)、トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)を重量部で15:100:5.5:2.0の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
次に、円筒状マスタースタンパ(1)〜(3)に対し、それぞれ光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施した。その結果、表面に凹凸構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(1)〜(3)が得られた。リール状透明樹脂モールド(1)〜(3)は、長さ200m、幅300mmであった。なお、リール状透明樹脂モールド(1)〜(3)を、以下、単に樹脂モールド(1)〜(3)とも表記する。
リール状透明樹脂モールド(1)〜(3)を下記走査型電子顕微鏡で観察したところ、円筒状マスタースタンパ(1)を用いたリール状透明樹脂モールド(1)は、断面形状がφ180nm、平均凸部高さHaveが200nmの凸部が配列していた。円筒状マスタースタンパ(2)を用いたリール状透明樹脂モールド(2)は、断面形状がφ430nm、平均凸部高さHaveが460nmの凸部が配列していた。円筒状マスタースタンパ(3)を用いたリール状透明樹脂モールド(3)は、断面形状がφ650nm、平均凸部高さHaveが700nmの凸部が配列していた。作製したリール状樹脂モールドの一例としてリール状透明樹脂モールド(3)の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、上面観察した。この結果、平均間隔700nmの複数の凸部が配列すると共に、凸部の高さが極端に低いもの、即ち極小凸部が散在していることが分かった。この極小凸部は、半導体レーザパルスが照射されなかった部分に相当すると推定される。なお、この極小凸部は走査型電子顕微鏡観察において、傾斜(Tilt)を作用させると共に、別途原子間力顕微鏡監査を行うことで判断できた。
<走査型電子顕微鏡>
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
<反転樹脂モールドの作製>
次に、フッ素系添加剤(ダイキン工業社製 オプツールDAC HP)、トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)を重量部で17.5:100:5.5:2.0の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。
次に、上記リール状透明樹脂モールド(1)〜(3)に、それぞれ光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施した。その結果、表面に凹凸構造が反転転写された透明樹脂モールド(以下、「反転樹脂モールド」ともいう)(1)〜(3)が得られた。この反転樹脂モールド(1)〜(3)は、長さ200mm、幅300mmであった。
得られた反転樹脂モールド(1)〜(3)の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、反転樹脂モールド(1)は、凹部開口径がφ180nm、平均凹部深さDaveが200nmの凹部が配列していた。反転樹脂モールド(2)は、凹部開口径がφ430nm、平均凹部深さDaveが460nmの凹部が配列していた。反転樹脂モールド(3)は、凹部開口径がφ650nm、平均凹部深さDaveが700nmの凹部が配列していた。また、反転樹脂モールド(1)〜(3)は、リール状透明樹脂モールド(1)〜(3)で観察された複数の凸部を含む凹凸構造の転写像となっていることが観察された。なお、反転樹脂モールドにおける極小凹部は、走査型電子顕微鏡観察における傾斜(Tilt)をかけた測定と、原子間力顕微鏡観察の双方から、同様に判断することができた。
<実施例1>
φ2”厚さ0.33mmのc面サファイア基板上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布してレジスト層を形成した。マスク材料としては、感光性樹脂組成物の固形分が5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を用いた。
感光性樹脂組成物としては、3−エチル−3{[3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(OXT−221、東亜合成社製)20重量部、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業社製)80重量部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(アロニックス(登録商標)M−101A、東亜合成社製)50重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニックス(登録商標)M−211B、東亜合成社製)50重量部、DTS−102(みどり化学社製)8重量部、1,9−ジブトキシアントラセン(アントラキュア(登録商標)UVS−1331、川崎化成社製)1重量部、Irgacure(登録商標)184(Ciba社製)5重量部及びオプツール(登録商標) DAC HP(20%固形分、ダイキン工業社製)4重量部、を混合して使用した。
レジスト層を形成したサファイア基板上に、反転樹脂モールドを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、フィルム貼合装置(サンテック社製、TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sの条件で貼り合わせた。次に、貼合して一体化した反転樹脂モールド/レジスト層/サファイア基板を、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態で、ナノインプリント装置(エンジニアリングシステム社製、EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、反転樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm2で照射し、レジスト層を硬化させた。レジスト層の硬化後、透明シリコーン板及び反転樹脂モールドを剥離し、パタンが形成されたレジスト/サファイア積層体を得た。
次いで、得られたレジスト層パタンに対し、酸素エッチングを行い、残膜を除去した。その後、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ社製)により、サファイア基板をエッチングした。エッチングは、下記の条件で実施した。
エッチングガス:Cl2/(Cl2+BCl3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
エッチング後、サファイア基板(光学基板)の表面及び断面を走査型電子顕微鏡で観察した。反転樹脂モールド(1)を用いて作製したサファイア基板(A)は、平均凸部高さHaveが104nm、平均間隔Paveが200nmであった。また、凸部高さhnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、このhn=0nmに相当する極小凸部は、極小凸部の底面が観察されるものであった。この底面は、輪郭が略円形状であり、且つ底面表面に荒れが観察された。即ち、hn=0nmは、極小凸部に相当する部位に何も存在しないわけではない。換言すれば、この0nmは、hnが0nmに漸近している状態である。極小凸部の存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面観察とから判断した。Z=1/6.6であった。一方、距離(tcv)は、1.0P〜4Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
反転樹脂モールド(2)を用いて作製したサファイア基板(B)は、平均凸部高さHaveが300nm、平均間隔Paveが460mであった。また、凸部高さhnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、hn=0nmは、反転樹脂モールド(1)を使用した場合と同様である。hn=0nmの存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面像から判断した。Z=1/1000であった。一方、距離tcvは、1.0P〜3Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
反転樹脂モールド(3)を用いて作製したサファイア基板(C)は、平均凸部高さHaveが392nm、平均間隔Paveが700nmであった。また、凸部高さhnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、hn=0nmは、反転樹脂モールド(1)を使用した場合と同様である。hn=0nmの存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面像から判断した。Z=1/48.6であった。一方、距離tcvは、1.0P〜3Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
<実施例2>
実施例1に係る光学基板(A)〜(C)の作製において、反転樹脂モールド(1)〜(3)を樹脂モールド(1)〜(3)に変更した以外は、同様の操作によりサファイア基板を作製した。得られたサファイア基板の表面及び断面を走査型電子顕微鏡で観察した。
樹脂モールド(1)を用いて作製したサファイア基板(D)は、平均凸部深さDaveが105nm、平均間隔Paveが200nmであった。また、凹部深さdnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、このdn=0nmに相当する極小凹部は、極小凹部の底部が観察されるものであった。この底部に、荒れが観察されたため、極小凹部の輪郭が略円形状に観察できた。即ち、dn=0nmは、極小凹部に相当する部位に何も存在しないわけではない。換言すれば、この0nmは、dnが0nmに漸近している状態である。dn=0nmの存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面像から判断した。Z=1/6.4であった。一方、距離tccは、1.0P〜4Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
樹脂モールド(2)を用いて作製したサファイア基板(E)は、平均凹部深さDaveが299nm、平均間隔Paveが460nmであった。また、凹部深さdnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、dn=0nmの極小凹部は、は樹脂モールド(1)を使用した場合と同様である。dn=0nmの存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面像から判断した。Z=1/1000であった。一方、距離tccは、1.0P〜3Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
樹脂モールド(3)を用いて作製したサファイア基板(F)は、平均凹部深さDaveが392nm、平均間隔Paveが700nmであった。また、凹部深さdnの最小値は、パルスを照射していない部分にあたると推定され、0nmであった。なお、dn=0nmの極小凹部は、は樹脂モールド(1)を使用した場合と同様である。dn=0nmの存在確率Zは、走査型電子顕微鏡の表面像から判断した。Z=1/50であった。一方、距離tccは、1.0P〜3Pの間に含まれていた。結果を下記表1に示す。
表1に記載の用語の意味は以下の通りである。
・基板…作製した光学基板に対する管理記号
・Pave…凹凸構造の平均間隔
・Have…凹凸構造がドット状構造の場合の平均高さ
・Dave…凹凸構造がホール状構造の場合の平均深さ
・hn又はdn…観察された極小凸部の最小高さ又は、観察された極小凹部の最小深さ
・Z…極小凸部又は極小凹部の存在確率
・tcv…極小凸部を間においた正常凸部間の距離
・tcc…極小凹部を間においた正常凹部間の距離
・Tcv−ave…極小凸部を間においた正常凸部の頂点間の距離の平均値
・Tcc−ave…極小凹部を間においた正常凹部の底部中央部間の距離の平均値
<実施例3>(半導体発光素子の作製)
実施例1及び実施例2で得られたサファイア基板(光学基板(A)〜(F))上に、有機金属気相成長法(MOCVD)により、(1)AlGaN低温バッファー層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層して半導体発光素子(A)を作製した。サファイア基板上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時の成膜条件下で埋められて平坦化されていた。次に、半導体発光素子(A)をエッチング加工して電極パッドを取り付けた。この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流して半導体発光素子(A)の発光出力を測定した。実施例3に係る半導体発光素子の発光出力比を下記表3示す。
<比較例1>
平坦なサファイア基板上に発光半導体層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてサファイア基板(G)を作製した。評価結果を下記表2に示す。
<比較例2>
通常のフォトリソグラフィ法により、直径3μm、間隔(P)6μm、凸部高さ2μmの六方配置の凹凸構造をサファイア基板上に設けたこと以外は実施例1と同様にしてサファイア基板(H)を作製した。評価結果を下記表2に示す。
<比較例3>
直接描画リソグラフィのパルス照射毎のパワーを一定にしたこと以外は実施例1と同様にしてサファイア基板(I)(光学基板)を作製した。評価結果を下記表2に示す。
表2に記載の用語の意味は以下の通りである。
・基板…作製した光学基板に対する管理記号
・Pave…凹凸構造の平均間隔
・Have…凹凸構造がドット状構造の場合の平均高さ
・Dave…凹凸構造がホール状構造の場合の平均深さ
・hn又はdn…観察された極小凸部の最小高さ又は、観察された極小凹部の最小深さ
・Z…極小凸部又は極小凹部の存在確率
・tcv、tcc…極小凸部を間においた正常凸部間の距離、極小凹部を間においた正常凹部間の距離
<比較例4>
比較例1から比較例3により得られたサファイア基板を用いたこと以外は実施例3と同様にして半導体発光素子(G)〜(I)を作製し、発光出力を測定した。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3においては、比較例1の出力を1として、発光出力比として示している。また、半導体発光素子(A),(B),(C),(G),(H),(I)は、それぞれサファイア基板(A),(B),(C),(G),(H),(I)を用いて製造されたものである。
表3から分かるように、実施例1に係るサファイア基板(光学基板(A))によれば、従来の平坦なサファイア基板(比較例1)、μオーダーの凹凸を有するサファイア基板(比較例2)、ナノオーダーの均質な凹凸を有するサファイア基板(比較例3)に比べ、高い発光効率比が得られることが分かる。この結果は、凹凸構造の平均間隔Paveを所定範囲内とすることにより、サファイア基板上に成膜した半導体層中の転位欠陥数を減らすことができ、又平均凸部高さHaveより凸部高さhnが低い凸部、即ち極小凸部が所定の確率で存在するように凹凸構造を設けることにより、光散乱により導波モードを解消して光取り出し効率を上げることができるためと考えられる。なお、表3中には実施例1の結果のみを記載したが、他の実施例のサファイア基板を用いた場合も同様に、高い発光出力比を示すことが確認された。また、本検討より実施例1及び実施例2にて製造したサファイア基板を使用することで半導体発光素子を製造する際の他の利点を確認できた。まず、マイクロオーダーの凹凸を有するサファイア基板(比較例2)に比べ、半導体結晶層の使用量を低下させる共に、半導体発光素子の製造時間を向上させることができた。また、半導体結晶層内部に発生するクラックを良子に抑制できることも確認された。これは、サファイア基板と半導体結晶層と、の界面への応力を低減できる為と考えられる。
<実施例4>
上記実施例1〜3とは別の方法を用い、極小凸部を有すサファイア基板を作製した。
<円筒状マスタースタンパ(樹脂モールド作製用鋳型)の作製>
円筒状マスタースタンパの基材としては、実施例1及び実施例2と同様のものを使用した。実施例1及び実施例2と同様に、レジスト膜を成膜した。
次に、石英ガラスロールを線速度s=1.0m/secで回転させながら、波長405nmの露光用半導体レーザにてレジスト層を露光した。この時、周方向の間隔が300nmとし、軸方向の間隔は正六方配列となるように調整した。また、照射パルスのエネルギーは一定にした。
露光後、石英ガラスロールのレジスト層をそれぞれ現像した。現像及び続くドライエッチングの条件は実施例1及び実施例2と同様にした。
<樹脂モールドの作製>
得られた円筒状マスタースタンパの表面に対し、実施例1及び実施例2と同様に離型処理を施した。
次に、得られた円筒状マスタースタンパを用いてリール状樹脂モールドを作製した。樹脂モールドの製造条件は、下記2項目以外は、実施例1及び実施例2と同様にした。
1.紫外線を照射の積算光量を1200mJ/cm2にしたこと。
2.ニップロールの押圧力を0.01Mpaにしたこと。
以下、複数の凸部より構成される微細パタンを有す樹脂モールドをリール状樹脂モールドG1と称す。
リール状透明樹脂モールドG1を原子間力顕微鏡(AFM)に観察したところ、非周期的な極小凸部が散在していることが確認された。第1の凸部の平均間隔Paveは300nmであった。また、リール状透明樹脂モールドG1に対する極小凸部の存在確率Zは、1/11.1、Tcv−aveは2.5Paveであった。このように、円筒状マスタースタンパ表面に周期的で略一定な複数の凹部を設けた場合であっても、ナノインプリントの貼合時の押圧力を調整することで、容易に樹脂モールド上に非周期的な極小凸部を設けることができることがわかる。
<反転樹脂モールドの作製>
次に、リール状樹脂モールドG1を鋳型として、反転樹脂モールドを製造した。反転樹脂モールドの製造条件は、紫外線の積算光量を1300mJ/m2にしたこと以外、実施例1及び実施例2と同様にした。以下、得られた複数の凹部より構成される微細パタンを具備する反転樹脂モールドをリール状樹脂モールドG2と称す。
<ナノ加工用フィルムの作製>
リール状樹脂モールドG2のナノ構造面に対して、下記材料2の希釈液を塗工した。続いて、材料2をナノ構造内部に内包するリール状樹脂モールドのナノ構造面上に、下記材料3の希釈液を塗工し、ナノ加工用フィルムを得た。
材料2…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料3…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・I.184…1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・SR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR833(SARTOMER社製)
リール状樹脂モールドG1の作製と同様の装置を使用し、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)にて希釈した材料2を、リール状樹脂モールドG2のナノ構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した材料2)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりのナノ構造の体積よりも20%以上小さくなるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2をナノ構造内部に内包するリール状樹脂モールドを巻き取り回収した。
続いて、材料2をナノ構造内部に内包するリール状樹脂モールドを巻き出すと共に、リール状樹脂モールドG1の作製と同様の装置を使用し、PGME及びメチルエチルケトン(MEK)にて希釈した材料3を、ナノ構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、ナノ構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離が500nmになるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料3の表面にポリプロピレン製カバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。なお、カバーフィルムを合わせる際の温度は、30℃とした。
得られたナノ加工用フィルムに対し、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光法にて観察を行ったところ、材料2は、ナノ構造の凹部内部にのみ充填配置されていることが確認された。さらに、フィルム状樹脂モールドG2のナノ構造及び材料2を充填し平坦化するように材料3が成膜されていることが確認できた。
<光学基板の製造>
作製したナノ加工用フィルムを使用し、光学基板を作製した。光学基板としてはc面サファイア基板を使用した。
サファイア基板に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、ナノ加工用フィルムの材料3表面を、サファイア基板に対して貼合した。この時、サファイア基板を80℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、リール状樹脂モールドG2越しに光照射した。その後、リール状樹脂モールドG2を剥離し、材料2/材料3/サファイア基板からなる積層体を得た。
続いて、材料2面側より酸素ガスを使用したエッチングを行い、材料2をマスクとして見立て材料3をナノ加工し、サファイア基板表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。その後、材料2面側からBCl3ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。BCl3を使用したエッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液で洗浄し、続いて純水にて洗浄し、光学基板を得た。
作製した光学基板を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、サファイア基板表面に複数の凸部が設けられると共に、極小凸部が散在していることが観察された。凹凸構造の平均凸部高さHaveは150nmであった。極小凸部の高さhnは、0nm〜30nm(0.2Have)の範囲で観察された。極小凸部の7割程度が0nmの高さを有し、残りの3割程度が30nm程度の高さであった。また、極小凸部の存在確率は1/12.5、Tcv−aveは2.5Pave、であった。また、極小凸部を介し隣接する第1の凸部の距離(tcv)は、300nm(Pave)超900nm(3Pave)以下であった。上記結果は、走査型電子顕微鏡観察において傾斜(Tilt)を駆使することでも同様に観察できた。
走査型電子顕微鏡による表面観察により、複数の第1の凸部の中に、高さ0nmの極小凸部及び高さ30nmの極小凸部が観察された。なお、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察と原子間力顕微鏡観察を併用して極小凸部を判断した。第1の凸部は、形状が均等ではなく、乱れていることがわかった。この乱れは、各凸部の高さの分布、各凸部の凸部底部輪郭形状の分布、そして各凸部の頂点位置の分布として観察された。また、凸部底部の輪郭形状は複数の変曲点を有す不定形であった。これは、上記材料3とBCl3を使用したドライエッチング条件のバランスにより制御できるものである。このような第1の凸部の乱れは、平均化された屈折率の乱れへと繋がるため、光取り出し効率LEEがより向上すると推察される。
実施例3と同様に半導体発光素子を組み立て、発光効率を評価した。評価方法は実施例3と同様にした。比較例4の半導体発光素子(G)の出力を1とすると、実施例4の半導体発光素子の出力は1.8程度であることがわかった。実施例4の半導体発光素子の出力が、実施例3の半導体発光素子(A)の出力より大きいのは、平均間隔Paveが大きくなったことによると考えられる。即ち、平均間隔Paveが300nmと小さいため、半導体結晶層の転位分散化と局所的転位密度の低減による内部量子効率IQEの改善は維持するが、一方で、平均間隔Paveが200nmから300nmへと大きくなったことにより、極小凸部と第1の凸部の体積差が大きくなり、即ち平均化された屈折率の乱れが顕著となり、散乱性が大きく付与されたため、光取り出し効率LEEが大きく向上したものと推定される。実際、透過型電子顕微鏡により転位密度を測定したところ、半導体発光素子(A)と実施例4の半導体発光素子では、測定誤差範囲内にて同様であることが確認された。また、実施例4においても、実施例3と同様に、半導体結晶層の使用量低下と半導体発光素子の製造時間短縮ができることが確認された。
<実施例5>
実施例4と同様にリール状樹脂モールドG1を製造した。ここで、リール状樹脂モールドG1を得る際のニップの押圧力は0.01Mpaとし、光硬化性樹脂の塗布膜厚(固体分の膜厚)を、3000nmから300nmの範囲内で変更した。ここで、塗布膜厚が1500nm以下の場合は、光硬化性樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテル及びアセトンの混合溶剤にて希釈して、膜厚を調整した。リール状樹脂モールドG1を走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡により観察し、極小凸部の存在確率を求めた。極小凸部の存在確率は1/3.3〜1/50000の範囲で調整できることがわかった。
次に実施例4と同様にリール状樹脂モールドG2を製造した。次に、実施例4において、塗工装置を卓上バーコーターに変更し、リール状樹脂モールドG2をナノ加工用フィルムへと加工した。更に、実施例4と同様に、ナノ加工用フィルムを使用してサファイア基板を加工し、光学基板を得た。
得られた光学基板を、走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡により観察した。結果を表4に記載した。続いて、実施例4と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力比を確認した。また、内部量子効率IQEをPL強度より測定した。内部量子効率IQEは、(単位時間に発光半導体層より発せられるフォトンの数/単位時間に半導体発光素子に注入される電子の数)により定義される。本明細書においては、上記内部量子効率IQEを評価する指標として、(300Kにて測定したPL強度/10Kにて測定したPL強度)を採用した。なお、光取り出し効率LEEと内部量子効率IQEへの影響を判断する為に、発光出力比を内部量子効率IQEにて割り返すことで、光取り出し効率比を算出した。結果を表4に示す。表4中、Tcv−aveや極小凸部の存在確率Z等の情報は、明細書本文にて記載した定義に従い、算出している。
表4に記載の用語の意味は以下の通りである。
・No.…作製した光学基板に対する管理記号
・Z…極小凸部の存在確率
・Tcv−ave…極小凸部を間においた正常凸部の頂点間の距離の平均値
・IQE…内部量子効率
・LEE比…光取り出し効率比
表4から以下のことがわかる。まず、存在確率Zが小さくなる程、内部量子効率IQEが向上する。但し、存在確率Zが最大である1/3.3の場合であっても、実施例4の素子Gに比べれば、内部量子効率IQEは十分に大きい。これは、平均間隔Paveが300nmの微小な凹凸構造により、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となり、凹凸構造の凸部近傍において転位同士を衝突させ消失させることができたためである。これは実際に透過型電子顕微鏡観察より確認することができた。一方で、存在確率Zが大きくなることで、極小凸部の割合が増加する。この場合、半導体結晶層が第2の凸部を平坦化した後に、第1の凸部頂部を平坦化するように成膜される。即ち、第2の凸部近傍から第1の凸部近傍にかけて生じる内部応力の密度が増加すると考えられる。この為、半導体結晶層の結晶性が低下し、内部量子効率IQEが低下すると推定される。
次に、存在確率Zが大きくなる程光取り出し効率LEEは向上するが、存在確率Z=1/7.6を境に光取り出し効率LEEが減少する。また、存在確率Zによらず、実施例4の素子Gに比べれば光取り出し効率LEEは向上する。これは、平均間隔Paveが300nmの凹凸構造により、半導体結晶層内を導波する発光光が、光回折により進行方向を変化させられるためと考えることができる。一方で、存在確率Zが大きくなることで、極小凸部の割合が増加する。これにより、平均的屈折率に極小凸部の分布に準じた分布が加えられるため、導波モードを形成する光を光回折及び光散乱により取り出すことができると考えられる。ここで、存在確率Zが大きくなりすぎる場合、極小凸部の割合が多くなることから、凹凸構造の平均体積は減少する。即ち、光回折強度が低下することから、光取り出し効率LEEが低下すると考えることができる。
以上から、凹凸構造を設けることで内部量子効率IQEを向上させることができる。ここで、内部量子効率IQEを向上させるために極小凸部を設けた場合、その存在確率Zにより光取り出し効率LEEが最適になる範囲があることがわかる。更に、極小凸部の存在確率Zが大きすぎる場合、内部量子効率IQEも低下することがわかる。以上から、発光出光比は、存在確率Zに対して最適な範囲が存在する。本検討においては、確率Zが1/5.4〜1/5000の範囲で発光出光比が大きく向上することがわかる。特に、確率Zが1/7.6〜1/1000の間で発光出光比の向上がより顕著になることがわかる。これは上記説明した外部量子効率EQEは内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、の積により決まるためであり、このような存在確率Zによる最適値がある理由は、上記考察した通りである。
更に、半導体結晶層の成長を観察し分析したところ、存在確率Zを上記範囲に収めることで、半導体発光素子のリーク電流をより改善できることも確認された。サファイア基板(光学基板)上にバッファー層、uGaN層、nGaN層、MQW層、及びpGaN層をMOCVD法により成膜した後に、ITOを成膜し、メサエッチングを行い、最後にCr/Ti/Auから成る金属パッドパタンを形成した。この状態でリーク電流を測定した。図5に示すように、存在確率Zが小さい場合、リーク電流がより改善され、良好なダイオード特性を示すことがわかる。また、存在確率Zが1/5付近を起点に、存在確率Zが大きくなると、リーク電流が急増することがわかる。例えば、存在確率Zが1/55の場合に比べ、存在確率Zが1/3.3の場合のリーク電流は1.7〜2.9倍であった。即ち、ダイオード特性が大きく低下することが確認された。ここで、半導体結晶層の成長性を確認したところ、存在確率Zが大きい程、極小凸部部近傍より半導体結晶層の特異成長が生じることが確認された。ここで特異成長とは、周囲よりも成長速度の速いことである。図6A及び図6Bに、特異成長した半導体結晶層を断面走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す。図6Aは、存在確率Zが1/3.3(図5の確率Zが0.3、表4のNo.13に相当)の場合である。図6Aより、特異成長により半導体結晶層の光学基板(サファイア基板)と、は最も遠い面に凸状の不陸が発生していることがわかる。これは、大きな存在確率Zにより第2凸部の集合が形成され、これにより急成長した半導体結晶層である。一方、図6Cにより、特異成長した半導体結晶層の光学基板と、は最も遠い側の面に凹状の不陸が発生していることがわかる。これは、大きな存在確率Zにより生じた第2凸部の集合が隣接することにより、第2凸部における特異成長した半導体結晶層同士が衝突して発生するものである。以上から、存在確率Zを所定の値以下とすることで、半導体結晶層のp−n接合界面のずれ、換言すればバンド図におけるバンドギャップのずれを抑制することが可能となり、これによりリーク電流をより良好に減少させることができることがわかる。
<実施例6>
まず、c面片面鏡面サファイア(オフ角:0.2°)の鏡面に対してUV−O3処理を行い、表面を親水化すると共に、パーティクルを除去した。続いて、フォトレジスト用のノボラック樹脂に、ナノ粒子を分散させた。続いて、ナノ粒子の分散したノボラック樹脂をスピンコート法によりサファイア基板上に成膜し、120℃のホットプレート上でプリベークを行った。次にリソグラフィを行い、サファイア基板上に多数の平均間隔が3.2μmの正六方配列にて配列した円錐状のドットを作製した。走査型電子顕微鏡により観察したところ、正常凸部と特異凸部と、が確認された。正常凸部は、走査型電子顕微鏡観察より、平均的に以下のようなドット構造であった。
・ドットの頂点は、曲率半径が0超の丸みを帯びた角部であった。
・ドットの底部の輪郭形状は、略円形であった。
・ドットの側面は2段階の傾斜角度を有していた。この2段階の傾斜角度は、ドットの底部側の方が上部側よりも傾斜角度の小さな傾斜を有していた。
・ドットの底部の径は、1.7μmであった。
実施例6においては、ノボラック樹脂に分散させたナノ粒子の濃度と形状を変化させた。形状は、球状のものと、フィラー状のものとした。球状のものは、平均粒径が25nmのTiO2粒子とした。一方でフィラー状のものは、長軸方向の長さが100nmのZnOロッドとした。また、これらのナノ粒子の濃度を、0.01%〜3%の範囲にて変更した。これにより、特異凸部の存在割合と、特異凸部に設けられる凸状体又は/及び凹状体の被覆率を調整した。
製造した光学基板を走査型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡にて観察した結果を表5及び表6に記載した。表5は、特異凸部の存在割合がパラメータになるように、表6は特異凸部に対する凸状体及び凹状体の被覆率がパラメータになるように整理した。なお、表5及び表6には記載していないが、特異凸部表面に設けられた凸状体及び凹状体の高さ或いは深さは、走査型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡観察より、10nm〜400nmの範囲にて観察された。特に、10nm〜50nmの凸状体又は凹状体が最も多く含まれており、順次多い順に、50nm〜100nm、100nm〜150nm、150nm〜400nmであった。また、凸状体及び凹状体は、特異凸部の頂部付近に位置するものから、特異凸部の底部付近に位置するものまで混在していたが、割合としては、頂部付近に位置するものの方が多かった。
表5及び表6の用語の意味は以下の通りである。
・正常凸部…凹凸構造を構成する複数のドットの中で、特異凸部ではないもの。
・Pave…凹凸構造の平均間隔
・Have…凹凸構造の平均高さ
・φave…凹凸構造のドットの底部の径の平均値
・特異凸部…表面に凸状体又は/及び凹状体を有す凸部
・存在…特異凸部が存在するか否か。〇にて特異凸部が含まれ、×にて含まれないことを意味する。
・被覆率…特異凸部の表面に対する凸状体及び凹状体の平面占有率
・P/R…特異凸部の存在割合
・N…特異凸部の存在割合を求めるのにカウントした凸部の数
・比…特異凸部の存在割合
なお、表5及び表6における比較例5は、フォトレジスト用のノボラック樹脂にナノ粒子の添加を行わずに、リソグラフィを行い製造した光学基板であり、特異凸部の存在しないものである。
次に、実施例5と同様に、発光出力比、光取り出し効率比、及び内部量子効率を求めた。結果を表5及び表6に記載した。
表5及び表6より以下のことがわかる。特異凸部が含まれることで、発光出光比が増加する。表5より、凸状体及び凹状体の被覆率が大きくなると、内部量子効率IQEが増加することがわかる。これは、特異凸部の凸状部又は凹状体部において、半導体結晶層の成長モードが乱される為と考えることができる。しかしながら、表5のNo.6に示す被覆率が35.3%の場合、僅かに内部量子効率IQEが低下している。これは、一つの特異凸部に注目した際に、その表面のラフネスが大きくなり、これにより半導体結晶層の成長の乱れが大きくなり過ぎたためと考えられる。即ち、半導体結晶層に対して成長の乱れによる応力が強く働き、これにより結晶欠陥が生じたと推定される。表6より、特異凸部の割合が大きくなると発光出光比が増加することがわかる。これは、特異凸部による光散乱性が増加するためと考えられる。特に、特異凸部においては、その表面の凸状体又は凹状体により、導波モードを乱す際のランダム性が増加する。即ち、光回折よりも光散乱を優先させることができたためと考えられる。しかしながら、表6のNo.14に示す特異凸部の存在割合が9%を超えたあたりから、僅かに発光出光比が低下する。これは、LEE比からわかるように、光取り出し効率LEEが低下したためである。このような現象が生じる理由は、特異凸部が多すぎる場合、一度進行方向を乱された発光光が再び導波モードを形成する確率が増加すること、及び、半導体発光素子の側面部への出光が増加することから、吸収減衰が生じやすいことと、考えられる。
以上から、特に、特異凸部に対する凸状体及び凹状体の被覆率は、0.02%〜8.65%であることが適当であることがわかる。中でも、被覆率は、0.34%〜8.65%であるとより発光出光比が向上することがわかる。一方で、特異凸部の存在割合は、特に0.02%〜26%であると適当であり、中でも0.02%〜0.9%であると発光出光比がより向上することがわかる。
更に、半導体結晶層の成長をより詳細に確認したところ、特異凸部を含む光学基板を使用した場合、特異凸部を含まない光学基板を使用した場合に比べ、半導体結晶層の凹凸構造の凸部近傍におけるクラックを抑制できることがわかった。
<実施例7及び実施例8>
表面に凹凸構造面を具備する光学基板を作製し、該基板を使用して半導体発光素子(LED)を作製し、LEDの効率を比較した。
以下の検討においては、表面に凹凸構造面を具備する光学基板を作製する為に、凹凸構造Lを作製し、続いて凹凸構造Sを凹凸構造Lの表面上に作製した。
・凹凸構造Lの作製
サファイア基板のC面(0001)上に、エッチングマスクとなるSiO2膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によりパターニングした。続いて、SiO2から構成されるマスクを利用し、サファイア基板をエッチングすることで凹凸構造Lを作製した。なお、エッチングはウェットエッチングにより行い、エッチング液として、リン酸と硫酸の混酸を用いた。液温は概ね295℃であった。
作製した凹凸構造Lを走査型電子顕微鏡を用い観察した。結果を表7にまとめた。実施例7の凹凸構造Lは、間隔PLが3000nmの六方格子の格子点上に凸部が配置され、凸部の平均高さは1500μmであり、凸部底部幅lcvbは1500μmであった。また、凸部側面には2段階の傾斜角度を設けた。凸部頂部から凸部底部へと側面傾斜角度が一回切り替わる。この切り替わりにより、傾斜角は急になるように設定した。一方、実施例8においては、六方格子の格子中心部に凸部を設けない構造とした。即ち、六方格子の中心に凸部がなく、六方格子の輪郭を作る格子点に凸部のある単位が最密充填している構造を作製した。平均間隔や高さは表7に記載の通りであり、また、凸部側面の状態は実施例7と同様であった。
表7に記載の用語の意味は以下の通りである。
・配列…凹凸構造Lの凸部の配列
・PL…凹凸構造Lの平均間隔
・Have…凹凸構造Lの平均高さ
・lcvb…凹凸構造Lの凸部底部幅
・凹凸構造Sの作製
凹凸構造Lの表面上に凹凸構造Sを作製した。
(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、リール状樹脂モールドを作製した。(3)その後、リール状樹脂モールドを光学基板のナノ加工用フィルムへと加工した。続いて、(4)ナノ加工用フィルムを使用し、凹凸構造Lを具備する光学基板上にマスクを形成し、得られたマスクを介してドライエッチングを行うことで、表面に凹凸構造L及び凹凸構造Sで構成された凹凸構造面を具備した光学基板を作製した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
実施例1と同様の操作を行い、円筒状マスターモールドを得た。
(2)リール状樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール状樹脂モールドG1を作製した。続いて、リール状樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にリール状樹脂モールドG2を得た。
リール状樹脂モールドは、実施例4と同様に作製した。但し、光硬化性樹脂の塗布膜厚を5μmとし、紫外線の積算光量を1500mJ/cm2とした。続いて、リール状樹脂モールドG1を鋳型にして、リール状樹脂モールドG2を得た。リール状樹脂モールドも実施例4と同様に作製した但し、光硬化性樹脂の塗布膜厚を3μm、紫外線の積算光量を1200mJ/cm2とした。
(3)ナノ加工用フィルムの作製
リール状樹脂モールドG2をナノ加工用フィルムへと加工した。手順は実施例4と同様とした。但し、材料3を塗工する際に、ナノ構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離を1800nmとし、材料3を塗工した後に、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させた。
(4)凹凸構造Lを具備する光学基板のナノ加工
作製したナノ加工用フィルムを使用し、凹凸構造Lを具備する光学基板の加工を試みた。凹凸構造Lを具備する光学基板としては、表7に記載の基板を使用した。
凹凸構造Lを具備するサファイア基板に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、ナノ加工用フィルムの材料3表面を、凹凸構造Lを具備するサファイア基板に対して貼合した。この時、凹凸構造Lを具備するサファイア基板を115℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、リール状樹脂モールドG2越しに光照射した。その後、リール状樹脂モールドG2を剥離した。
得られた積層体(材料2/材料3/基板からなる積層体)の材料2面側より酸素ガスを使用したエッチングを行い、材料2をマスクとして見立て材料3をナノ加工し、凹凸構造Lの表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。続いて、材料2面側からBCl3ガス及びCl2ガスの混合ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、凹凸構造Lを具備するサファイア基板をナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造L及び凹凸構造Sで構成された凹凸構造面を具備するサファイア光学基板を得た。なお、サファイア基板上に作製される凹凸構造の形状は、主に、ナノ加工用フィルムの材料2の充填率と材料3の膜厚により制御した。
凹凸構造面を具備するサファイア光学基板を走査型電子顕微鏡により観察した。凹凸構造Sは凹凸構造Lの表面全体に形成されていた。また、凹凸構造Lの頂部付近の凹凸構造Sは、凹凸構造Lの凹部底部付近の凹凸構造Sにくらべ高さが高く均等性が高いことが確認された。凹凸構造Sは平均的に、凸部底部の輪郭に角のない構造であり、凸部底部の輪郭は円ではなく撓んだ形状であった。凹凸構造Sの凸部の高さ、凸部底部幅lcvb及び凹凸構造Sの凹凸構造Lに対する被覆率を表8に記載した。なお、表8においては、凹凸構造Sの凸部の高さ及び凸部底部幅lcvbは、凹凸構造Lの凹部底部に形成された凹凸構造Sの凸部に対する値を記載した。
表8に記載の用語の意味は以下の通りである。
・PS…凹凸構造Sの平均間隔
・Have…凹凸構造Sの平均凸部高さ
・lcvb…凹凸構造Sの凸部底部幅
・PL/PS…凹凸構造Lの平均間隔(PL)と凹凸構造Sの平均間隔(PS)と、の比率
・被覆…凹凸構造Sの凹凸構造Lの凸部及び凹部に対する被覆率
得られたサファイア光学基板の凹凸構造面上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファー層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア基板上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。結果を表9及び表10にまとめた。
なお、表9及び表10に記載の比較例6及び比較例7は、凹凸構造Lのみで構成された凹凸構造面を具備する光学基板を作製した場合である。実施例7の凹凸構造Lに対応する凹凸構造で構成された凹凸構造面を具備する光学基板を、比較例6にて使用した。また、実施例8の凹凸構造Lに対応する凹凸構造で構成された凹凸構造面を具備する光学基板を比較例7にて使用した。
表9は、比較例6の光学基板を使用したLEDの発光出力比を1とした時の、本発明に係る実施例7に記載の光学基板を使用したLEDの発光出力を示している。表10は、比較例7の光学基板を使用したLEDの発光出力比を1とした時の、本発明に係る実施例8に記載の光学基板を使用したLEDの発光出力を示している。
なお、内部量子効率IQEはPL強度より決定した。内部量子効率IQEは、(単位時間に発光半導体層より発せられるフォトンの数/単位時間に半導体発光素子に注入される電子の数)により定義される。本明細書においては、上記内部量子効率IQEを評価する指標として、(300Kにて測定したPL強度/10Kにて測定したPL強度)を採用した。
表9及び表10より、凹凸構造Lのみで構成された凹凸構造面を具備する、比較例6及び比較例7の光学基板に比べ、実施例7及び実施例8では、凹凸構造S及び凹凸構造Lで構成された凹凸構造面を具備する光学基板を使用することで、発光強度が向上していることがわかる。この一つの原因は、内部量子効率IQEの向上であることがわかる。内部量子効率IQEの改善は、凹凸構造Lの凹部より成長する半導体結晶層の転位低減効果が、凹凸構造Sにより促進されたためと推定される。更に、内部量子効率IQEの向上程度に比べ、発光強度の向上程度が大きいことがわかる。これは、凹凸構造Sが凹凸構造L上にて乱れを有すことから、光散乱性が加わり、光取り出し効率LEEがより向上したためと推定される。
<実施例9>
実施例9の凹凸構造(L)を、実施例7と同様に作製、凹凸構造(L)に対して凹凸構造(S)を更に作製した。ここで、凹凸構造(S)の製造方法は実施例7と同様にし、ナノ加工用フィルムのナノ構造を変化させた。ナノ加工用フィルムのナノ構造をパラメータに設定し、実施例7と同様にして光学基板を得、半導体発光素子を作製し、評価した。なお、凹凸構造(S)は、凹凸構造(L)の凸部頂部、凸部側面そして凹部底部に作製されていた。
製造した光学基板を走査型電子顕微鏡により観察した結果及び発光出力比を、を表11に示す。なお、凹凸構造(L)は、表7の実施例7に記載のものである。
表11に記載の用語の意味は以下の通りである。
・PS…凹凸構造Sの平均間隔
・Have…凹凸構造Sの平均凸部高さ
・lcvb…凹凸構造Sの凸部底部幅
・PL/PS…凹凸構造Lの平均間隔(PL)と凹凸構造Sの平均間隔(PS)と、の比率
・被覆…凹凸構造Sの凹凸構造Lの凸部及び凹部に対する被覆率
表11において、特にPL/PSが2.5(表11中のNo.6)を超えたあたりから、凹凸構造(S)の形状の歪が大きくなり、これに伴い凹凸構造(L)の形状も歪んでいった。この観点から見ると、複数の凸部からなる凹凸構造(L)の表面に凹凸構造(S)を配置する場合、PL/PSは2.5超であると好ましいことがわかった。特に、3.3以上であるとより凹凸構造(S)の形状精度が向上し、6.0以上にて、形状の安定性が飽和していた。
発光出力比は、表7の実施例7に記載のものを1として表示している。まず、いずれの光学基板においても発光出力が増加していることがわかる。また、PL/PSが小さい程発光出力は増加するが、PL/PS=6.0を境に僅かに減少することがわかる。まず、発光出力が増加することは、マイクロスケールの体積変化の大きな凹凸構造(L)による光学散乱性の為である。ここで、凹凸構造(L)の表面に凹凸構造(S)が設けられている。特に、凹凸構造(L)の凹部底面にも凹凸構造(S)が配置されていたことから、半導体結晶層の成長時に、凹凸構造(L)の凹部底部近傍にて、半導体結晶の成長モードを乱すことが可能となり、転位が効果的に消失したためと考えられる。また、PL/PSが大きくなる程、内部量子効率IQEが向上し、PL/PS=10にてほぼ飽和することが確認された。即ち、内部量子効率IQEは、PL/PSが大きくなると、ある時を境に飽和する。しかしながら、PL/PSが大きくなることは、半導体発光素子の発光光からみた体積の低下を意味するため、光学的散乱性が低下する。よって、発光出力に好適な範囲が現れると考えることができる。
<実施例10>
凹凸構造(L)の凸部頂部上面にのみ凹凸構造(S)を具備した光学基板を作製した。
まず、実施例4と同様にリール状樹脂モールドG2を作製した。但し、光硬化性樹脂の塗布膜厚を4μmとし、紫外線の積算光量を1800mJ/cm2とした。続いて、リール状樹脂モールドG1を鋳型にして、リール状樹脂モールドG2を得た。リール状樹脂モールドも実施例4と同様に作製した但し、光硬化性樹脂の塗布膜厚を2μm、紫外線の積算光量を1300mJ/cm2とした。
(3)ナノ加工用フィルムの作製
リール状樹脂モールドG2をナノ加工用フィルムへと加工した。手順は実施例4と同様とした。但し、材料3を塗工する際に、ナノ構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離を350nmとし、材料3を塗工した後に、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させた。
(4)光学基板のナノ加工
作製したナノ加工用フィルムを使用し、光学基板を加工し、凹凸構造(S)を作製した。
c面片面鏡面サファイア基板の鏡面に対し、UV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、ナノ加工用フィルムの材料3表面を、サファイア基板に対して貼合した。この時、サファイア基板を110℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1400mJ/cm2になるように、リール状樹脂モールドG2越しに光照射した。その後、リール状樹脂モールドG2を剥離した。
得られた積層体(材料2/材料3/基板からなる積層体)の材料2面側より酸素ガスを使用したエッチングを行い、材料2をマスクとして見立て材料3をナノ加工し、サファイア基板の表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。続いて、材料2面側からBCl3ガス及びCl2ガスの混合ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、凹凸構造Sを具備するサファイア基板をナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造Sで構成された凹凸構造面を具備するサファイア光学基板を得た。なお、サファイア基板上に作製される凹凸構造(S)の形状は、主に、ナノ加工用フィルムの材料2の充填率と材料3の膜厚により制御した。
次に、凹凸構造(S)上に、フォトレジスト用のノボラック樹脂をスピンコート法により成膜し、120℃のホットプレート上でプリベークを行った。次にリソグラフィを行い、凹凸構造(L)を作製した。ここで、フォトレジストをネガ現像し使用することで凹凸構造(L)をドット形状とし、フォトレジストをポジ現像することで凹凸構造(L)をホール構造とした。いずれの場合も、平均間隔が3.2μmの正六方配列とした。
得られた光学基板を走査型電子顕微鏡により観察した。ドット状の凹凸構造(L)は、以下のドット状体であった。
・平均間隔Paveが3.2μmであり、正六方配列している。
・ドットの底部径は、2.4μmであり、底部形状は略円形。
・ドット間の凹部底部は平坦であった。
・ドット頂部に平坦面のある円錐台形状。ドット頂部の平坦面は略円形であり、その直径は1.6μmであった。
・ドット頂部は略円形のテーブルトップであり、ドット頂部上にのみ凹凸構造(S)が配置されていた。
一方、ホール状の凹凸構造(L)は、以下のホール状体であった。
・平均間隔Paveが3.2μmであり、正六方配列している。
・ホールの開口部径は、1.5μmであり、開口形状は略円形。
・ホールの深さは、1.4μm。
・ホール間の凸部頂部は平坦であり、この平坦面上にのみ凹凸構造(S)が配置されていた。
・ホールの形状は底面が略円形の円錐であり、円錐の頂部は曲率半径が0超の角部であった。
凹凸構造(L)がドット状の場合の、凹凸構造(S)の結果は、発光出力比と共に表12に記載した。なお、発光出力比は、表7の実施例7に記載のものを1として表示している。
表12に記載の用語の意味は以下の通りである。
・PS…凹凸構造Sの平均間隔
・Have…凹凸構造Sの平均凸部高さ
・lcvb…凹凸構造Sの凸部底部幅
・PL/PS…凹凸構造Lの平均間隔(PL)と凹凸構造Sの平均間隔(PS)と、の比率
・被覆1…凹凸構造Sの凹凸構造Lの凸部及び凹部に対する被覆率
・被覆2…凹凸構造Lの凸部頂部上面に対する凹凸構造Sの被覆率T
表12より、被覆率が大きくなる程、発光出力が増大することがわかる。これは、凹凸構造(S)により、既に説明してきたように半導体結晶層の転位を低減できることによる。特に、凹凸構造(L)がドット状であると共に、このドット状の凹凸構造(L)の凸部に平坦面があり、該平坦面上に凹凸構造(S)が設けられていることから、凹凸構造(L)の凸部頂部上からの半導体結晶層の成長を良好にすることができる。これは、凹凸構造(S)の凹部底部における半導体結晶層の核のエネルギーの放出抑制効果が機能するためと推定される。この為、凹凸構造(L)の凸部頂部上からの半導体結晶層の成長速度を、凹凸構造(L)の凹部底部から成長する半導体結晶層の成長速度よりも僅かに遅くすることができる。これにより、凹凸構造(L)の凹部底部より成長した半導体結晶層と凹凸構造(L)の凸部頂部上より成長した高品位な半導体結晶層と、を良好に接続することができ、これにより転位が低減し、内部量子効率が向上すると考えられる。実際に、凹凸構造(S)の被覆率が大きくなるに従い、転位が低減することが、透過型電子顕微鏡観察より確認された。しかしながら、凸部頂部上面に対する被覆率Tが50.2%(表12のNo.14)を境に、発光出力強度が低下している。これは、凸部頂部上面に対する被覆率T、即ち、凹凸構造(S)の付与されている凹凸構造(L)表面内における凹凸構造(S)の平面占有率が大きすぎる場合、凹凸構造(S)の凹部底部における半導体結晶層のエネルギーの解放作用が著しく低下するためと考えることができる。即ち、半導体結晶層の核生成から成長へと、移行する段階において、凹凸構造(S)の凹部底部に付着した核のエネルギーの放出速度が低下していると推定される。また、凸部頂部上面に対する被覆率Tが7.1%(表12のNo.9)を境に、発光出力が低下している。これは、光学的散乱性の低下、即ち光取り出し効率が小さくなったためと考えられる。間接的な検討になるが、凹凸構造(S)のみに対するヘーズ測定から、散乱性が低下することが確認されている。
以上から、特に、凸部頂部上面に対する被覆率Tが12.6%〜50.2%の間において、発光出力が大きくなり、中でも凸部頂部上面に対する被覆率Tが19.6%〜34・9%の間において、より発光出力が増加することがわかる。
凹凸構造(L)がホール状の場合の、凹凸構造(S)の結果は、発光出力比と共に表13に記載した。なお、発光出力比は、表7の実施例7に記載のものを1として表示している。
表13に記載の用語の意味は以下の通りである。
・PS…凹凸構造Sの平均間隔
・Have…凹凸構造Sの平均凸部高さ
・lcvb…凹凸構造Sの凸部底部幅
・PL/PS…凹凸構造Lの平均間隔(PL)と凹凸構造Sの平均間隔(PS)と、の比率
・被覆1…凹凸構造Sの凹凸構造Lの凸部及び凹部に対する被覆率
・被覆2…凹凸構造Lの凸部頂部上面に対する凹凸構造Sの被覆率T
表13より、被覆率が大きくなる程、発光出力が増大することがわかる。これは、凹凸構造(S)により、既に説明してきたように半導体結晶層の転位を低減できることによる。実際に、凹凸構造(S)の被覆率が大きくなるに従い、転位が低減することが、透過型電子顕微鏡観察より確認された。しかしながら、凸部頂部上面に対する被覆率が50.2%(表13のNo.14)を境に、発光出力強度が低下している。これは、凸部頂部上面に対する被覆率Tが大きすぎる場合、凹凸構造(S)の凹部底部における半導体結晶層のエネルギーの解放作用が著しく低下するためと考えることができる。即ち、半導体結晶層の核生成から成長へと、移行する段階において、凹凸構造(S)の凹部底部に付着した核のエネルギーの放出速度が低下していると推定される。また、凸部頂部上面に対する被覆率Tが7.1%(表13のNo.9)を境に、発光出力が低下している。これは、光学的散乱性の低下、即ち光取り出し効率が小さくなったためと考えられる。間接的な検討になるが、凹凸構造(S)のみに対するヘーズ測定から、散乱性が低下することが確認されている。
以上から、特に、凸部頂部上面に対する被覆率Tが12.6%〜50.2%の間において、発光出力が大きくなり、中でも凸部頂部上面に対する被覆率Tが19.6%〜34・9%の間において、より発光出力が増加することがわかる。
また、半導体結晶層をより詳細に確認したところ、半導体結晶層を成膜した後の状態において、凹凸構造(L)の凹部内部に空隙を観察することができた。このことから、半導体結晶層と、の屈折率の差が大きくなり、光取り出し効率が向上しやすいと考えらえる。また、半導体結晶層を成膜した後に、半導体結晶層の表面に支持基材を取り付け、光学基板側からレーザー光を照射して、光学基板のレーザーリフトオフを行ったところ、光学基板を容易に剥離できることも確認できた。これは、既に説明した空隙があることから、光学基板と半導体結晶層と、の密着性を低減できたためと考えられる。
<実施例11>
積層体マスクを構成する材料として、第1のマスク層に酸化クロム、第2のマスク層に酸化シリコンを選択した。なお、後述の、第1のマスク層(酸化クロム層)及びサファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対する酸化クロムとサファイア基板とのエッチング選択比は3であり、酸化シリコンとサファイア基板とのエッチング選択比は20以上である。
まず、スパッタリング法により50nmの酸化クロムを成膜し、続いて、50nmの酸化シリコンを成膜したサファイア基板を2枚準備した。1枚にはUVレジスト(PAK−02;東洋合成製)をスピンコート法により成膜した。もう1枚には熱反応型レジストCuO−8%Siをスパッタリング法により成膜した。
UVレジストを成膜したサファイア基板は、ナノインプリントモールドを用いてUVレジストにパターンを転写した。UVレジストの残膜は、O2ガスを用いたドライエッチングにより除去した。その後、UVレジストパターンをマスクにして、フッ素系ガスによるドライエッチングで第2のマスク層(酸化シリコン層)へパターンを転写した。
一方、熱反応型レジストCuO−8%Siを成膜したサファイア基板は、露光装置によりパターンを描画した後、シュウ酸アンモニウムとグリシンの3wt%混合溶液で現像してパターンを形成した。その後、熱反応型レジストパターンをマスクにして、フッ素系ガスによるドライエッチングで第2のマスク層(酸化シリコン層)へパターンを転写した。
なお、今回のパターンの間隔は、200nm、460nm、700nm、2μm、5μmの5水準で実施したが、必要に応じてパターン間隔は変更することができ、本発明はパターン形状によって何ら制限を受けるものではない。
次に、第2のマスク層(酸化シリコン層)をマスクとして、第1のマスク層(酸化クロム層)及びサファイア基板のウェットエッチングを実施した。ウェットエッチング液は、リン酸と硫酸を1:3vol%で混合した溶液を230℃に加熱して用い、ウェットエッチングを4分間実施した。
この結果、全ての間隔において、サファイア基板は、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
<実施例12>
マスクを構成する材料として、第1のマスク層に酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物、第2のマスク層に酸化シリコンを選択した。該マスクの組成比はシリコンとタングステンとの比率が、9mol%:1mol%に設定した。なお、後述の、第1のマスク層(酸化シリコン)及びサファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対する、酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物とサファイア基板とのエッチング選択比は3であり、酸化シリコンとサファイア基板とのエッチング選択比は20以上である。
図48及び図49は、実施例12で実施した光学基板の製造方法の各工程を示す断面模式図である。
まず、図48Aに示すように、スパッタリング法により、まず、酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物で構成された第1のマスク層902aを50nmの膜厚で成膜し、続いて、膜厚50nmの酸化シリコンで構成された第2のマスク層902bを成膜したサファイア基板901を準備した。第1のマスク層902a及び第2のマスク層902bを合わせて積層体マスク902と呼ぶ。
続いて、図48Aに示すパターンを具備したシート906を用意した。シート906は、樹脂モールド905、マスク903及びマスク904から構成される。ここで、マスク904は、必要に応じて配置することができる。樹脂モールド905及びマスク903の材料としては、例えば、UV硬化樹脂が好適である。また、マスク904の材料としては、例えば、ゾルゲル材などから構成される無機材が好適である。マスク904は、後述の残膜除去時及び第2のマスク層902bへのパターン転写時に、マスク903のドライエッチング耐性を高くする目的で配することができる。本実施例においては、樹脂モールド905として後述の材料Aを、マスク904として後述の材料Bを、マスク903として後述の材料Cをそれぞれ使用した。なお、シート906のパターンは、間隔360nmを選択して作製した。なお、今回のパターンの間隔は360nmで実施したが、必要に応じてパターン間隔は変更することができ、本発明はパターン形状によって何ら制限を受けるものではない。
本実施例においては、以下の材料を用いた。
・DACHP…OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…Irgacure 184(BASFジャパン(株)製)
・I.369…Irgacure 369(BASFジャパン(株)製)
・TTB…チタンテトラブトキシド
・3APTMS…KBM5103(信越シリコーン社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・SR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368(SARTOMER社製)
上述のシート906を、第2のマスク層902bの上に、80℃にサファイア基板41を加熱すると共にUV照射(500mJ/cm2)で、貼合した。
続いて、図48Bに示すように、樹脂モールド905を剥離した後、マスク903の凹部の底の残膜をO2アッシングにより除去し、図48Cに示すように、第2のマスク層902bの表面を部分的に露出させた。なお、O2アッシング条件は、圧力1Pa、O2ガスで実施した。
次に、マスク903及びマスク904をマスクとしたSF6ガスによるドライエッチングにより、図48Dに示すように、第2のマスク層902bへパターンを転写した。なお、ドライエッチング条件は5Pa、2分で実施した。
続いて、図49A及び図49Bに示すように、第2のマスク層902bをマスクとして、第1のマスク層902a及びサファイア基板901のウェットエッチングを実施した。第1のマスク層902a及びサファイア基板901のウェットエッチング液には、リン酸と硫酸を1:1vol%で混合した溶液を230℃に加熱して使用した。また、ウェットエッチングは、3分間実施した。この時、第1のマスク層902aは完全に除去されていた。なお、第1のマスク層902a及び第2のマスク層902b(積層体マスク902)の上には、マスク903、904が残った状態でウェットエッチングを行った。しかし、マスク903、904を予め除去しても、同様の結果となる。
この結果、得られたサファイア基板901の表面は、間隔360nmで、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
なお、上記シート906は、枚葉で作製してもよく、リール状で作製してもよい。特にリール状の場合大量生産に向くため好ましい。以下、本実施例においてリール状のシート906を作製した工程について説明する。
(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、リール状の樹脂モールドを作製した。(3)その後、リール状の樹脂モールドを光学基板のナノ加工用部材(ナノ加工用フィルム)へと加工した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により、円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造を形成した。まず、円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用い露光を行った。次に、露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に凹凸構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の硫酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの凹凸構造に対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)リール状の樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール状の樹脂モールドG1を作製した。続いて、リール状の樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にリール状の樹脂モールドG2を得た。樹脂モールドG2を得ることで、円筒状マスターモールドと同一のパターン形状を得た。以下に樹脂モールドG1、G2の作製方法を詳説する。
PETフィルムA−3100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚5μmになるように以下に示す材料Aを塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料Aが塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、リール状の樹脂モールドG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、リール状の樹脂モールドG2を作製した。
PETフィルムA−3100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、下記材料Aを塗布膜厚3μmになるように塗布した。次いで、リール状の樹脂モールドG1の凹凸構造面に対し、材料Aが塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料A… DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
(3)ナノ加工用フィルムの作製
リール状の樹脂モールドG2の凹凸構造面に対して、下記材料Bの希釈液を塗工した。続いて、材料Bを凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2の凹凸構造面上に、下記材料Cの希釈液を塗工し、ナノ加工用フィルムを得た。
材料B…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料C…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量330、分散度2.7)
前述の(2)リール状の樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料Bを、リール状の樹脂モールドG2(樹脂モールド5)の凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した上記材料B)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも20%以上小さくなるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料Bを凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2を巻き取り回収した。
続いて、材料Bを凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2を巻き出すと共に、前述の(2)リール状の樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料Cを、凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、凹凸構造内部に配置された材料Bと塗工された材料Cの界面と、材料Cの表面と、の距離が400nm〜800nmになるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料Cの表面にポリプロピレンから成るカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。
なお、図48Aにおける、マスク903が材料C、マスク904が材料B、樹脂モールド905が材料Aに該当する。
<実施例13>
マスクを構成する材料として、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がある材料の酸化シリコンを選択した。なお、後述のサファイア基板のウェットエッチング液に対する酸化シリコンとサファイア基板とのエッチング選択比は20以上である。
まず、スパッタリング法により酸化シリコンを50nm成膜したサファイア基板を2枚準備した。1枚にはUVレジスト(PAK−02;東洋合成製)をスピンコート法により成膜した。もう1枚には熱反応型レジストCuO−8%Siをスパッタリング法により成膜した。
UVレジストを成膜したサファイア基板には、ナノインプリントモールドを用いてUVレジストにパターンを転写した。UVレジストの残膜は、O2ガスを用いたドライエッチングにより除去した。その後、UVレジストパターンをマスクにして、フッ素系ガスによるドライエッチングで酸化シリコンへパターンを転写した。
一方、熱反応型レジストCuO−8%Siを成膜したサファイア基板には、露光装置によりパターンを描画した後、シュウ酸アンモニウムとグリシンの3wt%混合溶液で現像してパターンを形成した。その後、熱反応型レジストパターンをマスクにして、フッ素系ガスによるドライエッチングで酸化シリコンへパターンを転写した。
なお、今回のパターンの間隔は、200nm、460nm、700nm、2μm、5μmの5水準で実施したが、必要に応じてパターン間隔は変更することができ、本発明はパターン形状によって何ら制限を受けるものではない。
次に、酸化シリコンをマスクとして、サファイア基板のウェットエッチングを実施した。サファイア基板のウェットエッチング液には、リン酸と硫酸を1:3vol%で混合した溶液を230℃に加熱して用い、マスクのエッチングはCF4ガスを用い20Paでドライエッチングを行った。始めにサファイア基板のエッチングを30秒実施し、その後マスクのエッチングを10秒実施した。以上の工程を6回繰り返して、酸化シリコンのマスクをちょうど除去した時点で、サファイア基板のエッチングを終了した。
この結果、全ての間隔において、サファイア基板の表面は、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
<実施例14>
マスクを構成する材料として、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がない材料の酸化クロムを選択した。なお、後述のサファイア基板のウェットエッチング液に対する酸化クロムとサファイア基板とのエッチング選択比は3である。
まず、スパッタリング法により酸化クロムを50nm成膜したサファイア基板を準備した。その上に熱反応型レジストCuO−8%Siをスパッタリング法により成膜した。熱反応型レジスト材料を用いたパターン形成は実施例1と同様に実施した。
次に、熱反応型レジストパターンをマスクにして、硝酸セリウム水溶液によるウェットエッチングで、酸化クロムへパターンを転写した。
その後、酸化クロムをマスクとして、サファイア基板のウェットエッチングを実施した。サファイア基板のウェットエッチングは、実施例1と同様の条件で3分間実施した。この時、酸化クロムは完全に除去され、オーバーエッチング状態であった。
この結果、全ての間隔において、サファイア基板の表面は、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
<実施例15>
マスクを構成する材料として、サファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がない材料の酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物を選択した。該マスクの組成比は、シリコンとタングステンとの比率が、9mol%:1mol%になるように設定した。なお、後述のサファイア基板のウェットエッチング液に対する酸化シリコンと酸化タングステンの混合物とサファイア基板とのエッチング選択比は3である。
まず、スパッタリング法により酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物を、50nm成膜したサファイア基板を準備した。その上に熱反応型レジストCuO−8%Siをスパッタリング法により成膜した。熱反応型レジスト材料を用いたパターン形成は実施例1のうち間隔460nmを選択して作製した。なお、今回のパターンの間隔は460nmで実施したが、必要に応じてパターン間隔は変更することができ、本発明はパターン形状によって何ら制限を受けるものではない。
次に、熱反応型レジストパターンをマスクとして、SF6ガスによるドライエッチングで、酸化シリコンと酸化タングステンの混合物へパターンを転写した。なお、ドライエッチング条件は5Pa、2分で実施した。
続いて、酸化シリコンと酸化タングステンの混合物をマスクとして、サファイア基板のウェットエッチングを実施した。サファイア基板のウェットエッチング液には、リン酸と硫酸を1:1vol%で混合した溶液を230℃に加熱して使用した。ウェットエッチングは3分間実施した。この時、酸化シリコンと酸化タングステンの混合物は完全に除去されていた。
この結果、得られたサファイア基板の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影して観察したところ、間隔460nmで、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
<実施例16>
マスクを構成する材料として、実施例3と同様のサファイア基板のウェットエッチングに用いるエッチング液に対して耐性がない材料の酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物を選択した。該マスクの組成比は、シリコンとタングステンとの比率が、9mol%:1mol%になるように設定した。なお、後述のサファイア基板のウェットエッチング液に対する酸化シリコンと酸化タングステンの混合物とサファイア基板とのエッチング選択比は3である。
図50は、実施例16に係る光学基板の製造方法の各工程を示す断面模式図である。まず、図50Aに示すように、スパッタリング法により酸化シリコンと酸化タングステンから成る混合物で構成されたマスク912を50nm成膜したサファイア基板911を準備した。
続いて、図50Aに示すパターンを具備したシート916を用意した。シート916は、樹脂モールド915、マスク913及びマスク914から構成される。ここで、マスク914は、必要に応じて配置することができる。樹脂モールド915及びマスク913の材料としては、例えば、UV硬化樹脂が好適である。また、マスク914の材料としては、例えば、ゾルゲル材などから構成される無機材が好適である。マスク914は、後述の残膜除去時及びマスク912へのパターン転写時にマスク913のドライエッチング耐性を高くする目的で配することができる。本実施例においては、樹脂モールド915として後述の材料Aを、マスク914として後述の材料Bを、マスク913として後述の材料Cをそれぞれ使用した。なお、シート916のパターンは、間隔460nmを選択して作製した。なお、今回のパターンの間隔は460nmで実施したが、必要に応じてパターン間隔は変更することができ、本発明はパターン形状によって何ら制限を受けるものではない。
本実施例においては、以下の材料を用いた。
・DACHP…OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・I.184…Irgacure 184(BASFジャパン(株)製)
・I.369…Irgacure 369(BASFジャパン(株)製)
・TTB…チタンテトラブトキシド
・3APTMS…KBM5103(信越シリコーン社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・SR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR368(SARTOMER社製)
上述のシート916を、マスク912の上に、80℃にサファイア基板911を加熱すると共にUV照射(500mJ/cm2)で、貼合した。
続いて、図50Bに示すように、樹脂モールド915を剥離した後、マスク913の凹部の底の残膜をO2アッシングにより除去し、図50Cに示すように、マスク912の表面を部分的に露出させた。なお、O2アッシング条件は、圧力1Pa、O2ガスで実施した。
次に、マスク913及びマスク914をマスクとしたSF6ガスによるドライエッチングにより、図50Dに示すように、マスク912へパターンを転写した。なお、ドライエッチング条件は5Pa、2分で実施した。
続いて、マスク912をマスクとして、サファイア基板911のウェットエッチングを実施した。サファイア基板911のウェットエッチング液には、リン酸と硫酸を1:1vol%で混合した溶液を230℃に加熱して使用した。また、ウェットエッチングは、3分間実施した。この時、マスク912は完全に除去されていた。なお、マスク912の上には、マスク913、914が残った状態でウェットエッチングを行った。しかし、マスク913、914を予め除去しても、同様の結果となる。
この結果、得られたサファイア基板911の表面は、間隔460nmで、ちょうど頂点が尖ったテント型の凹凸形状にエッチングされていた。
なお、上記シート916は、枚葉で作製してもよく、リール状で作製してもよい。特にリール状の場合大量生産に向くため好ましい。以下、本実施例においてリール状のシート916を作製した工程について説明する。
(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、リール状の樹脂モールドを作製した。(3)その後、リール状の樹脂モールドを光学基板のナノ加工用部材(ナノ加工用フィルム)へと加工した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により、円筒状石英ガラスの表面に、凹凸構造を形成した。まず、円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用い露光を行った。次に、露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に凹凸構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の硫酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスの凹凸構造に対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)リール状の樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にリール状の樹脂モールドG1を作製した。続いて、リール状の樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的にリール状の樹脂モールドG2を得た。樹脂モールドG2を得ることで、円筒状マスターモールドと同一のパターン形状を得た。以下に樹脂モールドG1、G2の作製方法を詳説する。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚5μmになるように以下に示す材料Aを塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料Aが塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、リール状の樹脂モールドG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、リール状の樹脂モールドG2を作製した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、下記材料Aを塗布膜厚3μmになるように塗布した。次いで、リール状の樹脂モールドG1の凹凸構造面に対し、材料Aが塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールドG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料A… DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
(3)ナノ加工用フィルムの作製
リール状の樹脂モールドG2の凹凸構造面に対して、下記材料Bの希釈液を塗工した。続いて、材料Bを凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2の凹凸構造面上に、下記材料Cの希釈液を塗工し、ナノ加工用フィルムを得た。
材料B…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料C…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)
前述の(2)リール状の樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料Bを、リール状の樹脂モールドG2(樹脂モールド5)の凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した上記材料B)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも20%以上小さくなるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2を凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2を巻き取り回収した。
続いて、材料Bを凹凸構造内部に内包するリール状の樹脂モールドG2を巻き出すと共に、前述の(2)リール状の樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料Cを、凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、凹凸構造内部に配置された材料Bと塗工された材料Cの界面と、材料Cの表面と、の距離が400nm〜800nmになるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料Cの表面にポリプロピレンから成るカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。
なお、図50Aにおける、マスク913が材料C、マスク914が材料B、樹脂モールド915が材料Aに該当する。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
例えば、上記実施の形態においてはサファイア基板をウェットエッチングする場合について説明したが、凹凸構造を形成する基板はこれに限られず適宜変更が可能である。例えば、半導体などで一般的に用いられるスピネル構造を有する基板、ペロブスカイト構造を有する基板(例えば、イットリウムアルミネート)、GaN基板、SiC基板などをウェットエッチングする場合にも、ウェットエッチングの進行に伴ってマスクの体積が徐々に減少する方法を利用することで、切頂型の凹凸構造が形成されることを回避し、テント型の凹凸構造を形成することが可能となる。