本発明に係る光学基板の特徴は、該光学基板を適用し製造された半導体発光素子に注目した際に、該半導体発光素子の界面位置に、実体として存在する凹凸構造に加え、該半導体発光素子の発光光が認識可能な、該凹凸構造よりも大きなパタン(模様)のあることである。これにより、半導体発光素子を製造する際及び、製造された半導体発光素子を使用する際に効果を発揮する。まず、半導体発光素子を製造する際には、半導体結晶層の転位の低減に伴い内部量子効率IQEは改善され、又は、p型半導体層とn型導電層との接触面積が増大し電子注入効率EIEが改善される。そして、半導体発光素子を使用する際には、内部量子効率IQE又は電子注入効率EIEを改善した状態を維持すると共に、半導体発光素子の発光光に対する光学的散乱性を強めることが出来るため、光取り出し効率LEEが同時に向上する。即ち、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEE、又は電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善した半導体発光素子を実現することが出来る。更には、内部量子効率IQE,電子注入効率EIE、及び光取り出し効率LEEを同時に改善した半導体発光素子を提供できる。
上記思想、即ち、実体として存在する凹凸構造と、半導体発光素子の発光光が認識可能な、該凹凸構造よりも大きなパタン(模様)により、内部量子効率IQE又は電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEと、を同時に向上させるために、本明細書においては、3つの光学基板を提案する。これらの光学基板を、以下光学基板PP、光学基板D、及び、光学基板PCと記載し、それぞれ個別に説明する。また、光学基板PP、光学基板Dそして光学基板PCに設けられる凹凸構造をそれぞれ、凹凸構造PP、凹凸構造D、そして凹凸構造PCと記載する。また、以下の説明においては、光学基板PPから説明を開始し、光学基板PPの内容と、光学基板D或いは光学基板PCと、の内容に重複箇所のある場合は、光学基板D或いは光学基板PCの説明に際し、光学基板PPの内容を引用する。
<<光学基板PP>>
まず、本発明の光学基板PPの概要について説明する。一般的に、半導体発光素子の外部量子効率EQEは、内部量子効率IQE、光取り出し効率LEEそして電子注入効率EIEにより決定される。特に、内部量子効率IQEは半導体発光素子の発光する効率そのものへと影響を与えるため、改善による効果が非常に大きい。更に、内部量子効率IQEを改善したとしても、光取り出し効率LEEが低い場合、発光した光が半導体層内部にて吸収され熱へと変換される。このため、互いにトレードオフの関係にある内部量子効率IQEの向上と光取り出し効率LEEの改善を同時に実現することが、高い外部量子効率EQEを実現するための、効果的な方法である。そこで、互いにトレードオフの関係にある内部量子効率IQEの向上と光取り出し効率LEEの改善を原理の違いに着目した。
半導体発光素子においては、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQEを向上させることが可能であり、一方で体積変化の大きな強い光学的散乱性を奏す凹凸構造により光取り出し効率LEEを向上させることができる。即ち、内部量子効率IQEを向上させようと高密度な凹凸構造を設けた場合、凹凸構造の体積の変化は小さくなり、光学的散乱性が低下するため光取り出し効率LEEの向上程度が限定される。これは、半導体発光素子の発光光が認識可能な光学現象により説明することができる。内部量子効率IQEを向上させるに十分な密度を有す凹凸構造においては、該凹凸構造のピッチは発光光の波長と同程度以下のオーダとなるが、発光光の波長が凹凸構造のピッチに対して大きくなればなるほど、光学現象として有効媒質近似が作用し、光学的散乱性が低下するためである。一方で、凹凸構造の体積変化を大きくし光取り出し効率LEEを向上させた場合、実体として存在する凹凸構造の密度が低下するため、転位の分散効果が弱まり、内部量子効率IQE改善の程度が限定される。
ここで、光学的散乱性を増加させる目的で実体として存在する凹凸構造の体積変化を大きくした場合、上述したように内部量子効率IQEが低下するが、更に、実体として存在する凹凸構造の体積変化率が大きくなるため、半導体結晶層に対するクラック、半導体結晶層の使用量或いは半導体結晶層の成膜時間等に対する問題、換言すれば半導体発光素子の製造と環境適合性に対する課題もある。
以上から、半導体発光素子の製造に支障をきたさず、且つ環境適合性をはかりながら、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善するためには、内部量子効率IQEを改善できる凹凸構造により光学的散乱性を発現させることが重要であると考え、本発明を完成させるに至った。
即ち、高密度な凹凸構造であるにもかかわらず光学的散乱性を強くすることが可能な凹凸構造を実現することで、互いにトレードオフの関係にある内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させることが可能と考えられる。
さらに、半導体発光素子においては、n型半導体層、発光半導体層、p型半導体層、そしてn型導電層は大きな吸収を有す。即ち、効果的に半導体発光素子の外部へと発光光を取り出す観点から、これらの層は必然的にナノオーダに薄くする必要がある。即ち、半導体発光素子の各界面のいずれかに凹凸構造を設け、光取り出し効率LEEを向上させようとした場合、該凹凸構造は必然的にナノオーダの凹凸構造となる。既に説明したように、高密度な凹凸構造の光学的散乱性は小さい。即ち、光取り出し効率LEEの向上程度は限定される。
この観点から考えると、高密度な凹凸構造であるにもかかわらず光学的散乱性を強くすることが可能な凹凸構造を実現することで、半導体発光素子の光取り出し効率LEEをより向上させることが可能と考えることが出来る。
例えば、p型半導体層とn型導電層と、の間に単に比表面積の大きな凹凸構造を設けた場合、界面接触面積の増大に伴いオーミックコンタクトを向上させることが出来るため、電子注入効率EIEが向上する。しかしながら、既に説明したように、これらの凹凸構造は高密度な凹凸構造であり、光学的散乱性は小さいため、光取り出し効率LEEの向上程度は限定される。
また、例えば、n型導電層の表面に凹凸構造を設けて光取り出し効率LEEをより向上させようとした場合、n型導電層自体の厚みがナノオーダに制限されるため、該凹凸構造もナノオーダの高密度な凹凸構造となり、光学的散乱性は大きくならない。即ち、光取り出し効率LEEの向上程度は限定される。
即ち、本発明の骨子は、高密度な凹凸構造であるにもかかわらず光学的散乱性の大きな凹凸構造を提供することにある。これにより、内部量子効率IQE又は電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEと、を同時に改善できる。更には、半導体発光素子を構成するナノオーダの薄い各層に対して凹凸構造を設けた場合であっても、これらの層の物性を損なうことなく、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
なお、以下の説明においては、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させることを中心に据えて説明するが、その本質は、高密度な凹凸構造であるにもかかわらず、光学的散乱性を強く発現させることにあることから、電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させるという効果に置き換えることが出来る。即ち、内部量子効率IQEは、高密度な凹凸構造により分散化及び低減される転位により向上し、電子注入効率EIEは、高密度な凹凸構造により改善されるオーミックコンタクト性により改良される。この時に、高密度な凹凸構造は光学的散乱性を発現することから、同時に、光取り出し効率LEEも改善される。同様の思想から、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、の同時向上を効果の代表として説明するが、半導体発光素子を構成するナノオーダの薄い各層に対して凹凸構造を設けた場合での効果、即ち、これらの層の物性を損なうことなく光取り出し効率LEEを向上させること、へと置き換えることが出来る。例えば、半導体発光素子の透明導電層の膜厚は数百ナノメートルである。この透明導電層の表面、即ち半導体発光素子における透明導電層と封止材、透明導電層と電極パッド、或いは透明導電層とp型半導体層と、の界面に凹凸構造を設けた場合であっても、透明導電層の電気的物性は維持し、且つ、光取り出し効率LEEをより向上させることが出来る。
即ち、本実施の形態に係る光学基板PPは、基板本体と、基板本体の主面上に設けられた複数の凸部又は凹部で構成される凹凸構造PPと、を具備する光学基板PPであって、主面上に光学顕微鏡によって10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率で観察可能な模様が描かれていること、模様の間隔は、凹凸構造のピッチよりも大きいこと、及び、模様の光学顕微鏡像において、前記模様は、明暗の差によって第1の領域及び第2の領域に識別でき、前記第1の領域は複数であり、且つ、互いに間隔を隔てて配置され、前記第2の領域は前記第1の領域の間をつないでいることを特徴とする。
本実施の形態に係る光学基板PPにおいて、凹凸構造PPの平均ピッチは、10nm以上1500nm以下であることが好ましい。
この構成により、まず、複数の凸部又は凹部で構成された凹凸構造PPによって、即ち、実体として存在する凹凸構造により半導体結晶層の成長モードが乱されるため、半導体結晶層内部の転位が微視的に分散されると共に、転位が低減され、内部量子効率IQEが改善される。
一方、凹凸構造PPのピッチは、模様の間隔に比べ小さい。換言すれば、複数の凸部又は凹部の集合からなる凹凸構造群が主面上に複数配置されている。すなわち、凹凸構造PPを構成する複数の凸部又は凹部は、それらを構成する要素(例えば、密度、高さ又は形状)の相違によって、主面上に光学顕微鏡によって10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率で観察可能な模様が描かれると推定される。模様が描かれるのは、要素の相違によって凹凸構造PPに対する有効屈折率Nema(Refractive Index under Effective Medium Approximation)の変化が生じることによると推定される。即ち、実体として存在する複数の凸部又は凹部に加えて、光が認識可能な光学的模様が存在する。換言すれば、光を凹凸構造PPに入射させて初めて、凹凸構造PPの光学模様が現れる。この模様は、光学顕微鏡像において明暗の差によって第1の領域及び第2の領域に識別でき、第1の領域は複数であり、且つ、互いに間隔を隔てて配置され、第2の領域は第1の領域の間をつないでいる。即ち、第1の領域と第2の領域とから成る模様が光学的に観察され、この模様は、凹凸構造PPの複数の凸部又は凹部の集合により表現されている。換言すれば、光学基板PPの主面内において、複数の第1の領域の密度は、模様を構成する凹凸構造PPの密度よりも小さい。このような構成により、以下の3つの効果を奏す。第1に、凹凸構造PPによる転位の分散性が巨視的にも保たれる。即ち、光学基板PPの上に設けられる半導体結晶層の転位密度を面内において低くすることができる。第2に、半導体結晶層の成長時に発生するクラックを抑制できると共に、半導体結晶層の使用量を低減させ、且つ半導体結晶層の成膜時間を短縮することができる。最後に、半導体結晶層内部にて導波する発光光は、その進行方向を乱されるため、導波モードが乱される。以上から、半導体発光素子の製造に支障をきたさず、且つ環境適合性をはかりながら内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善することが可能となる。
更に、本発明に係る光学基板PPにおいては、前記凹凸構造PPの平均ピッチが10nm以上900nm以下であると共に、前記凹凸構造PPの高さは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。
この構成により、凹凸構造PPの密度が増加することに伴い、転位の分散及び低減の効果がより大きくなる。更に、高さが所定の範囲内であることから、半導体結晶層を成膜する際の、クラックの発生をより良好に抑制することが可能となり、これに伴い、半導体発光素子の欠損率を低減できる。更には、半導体結晶層の使用量の低減及び成膜時間の短縮の効果がより顕著になる。その他にも、高さが所定の範囲をみたすことにより、凹凸構造PPを付与する層の厚みがナノオーダであり、極めて薄い場合であっても、該層の物性を良好に保つことが出来る。このことから、半導体発光素子の界面位置に凹凸構造PPを設けて、光取り出し効率LEEを向上させる際の、光取り出し効率LEE以外の因子の低下を抑制できる。例えば、p型半導体層とn型導電層(例えば、透明導電層。以下、同様。)と、の界面に凹凸構造PPを設ける場合であれば、p型半導体層の半導体特性及びn型導電層の電気特性を維持した状態にて、オーミックコンタクト性を改善し、電子注入効率EIEを向上させると共に、光取り出し効率LEEを改善できる。また、例えば、n型導電層の表面或いはn型導電層と封止材と、の界面に凹凸構造PPを設ける場合であれば、該n型導電層の電気的特性を維持しつつ、光取り出し効率LEEを向上させることも出来る。
また、本発明の光学基板PPは、前記光学基板PPの前記凹凸構造PPのある第1の面側から、前記光学基板PPの主面に対して垂直に、波長が640nm〜660nm、525nm〜535nm、又は、460nm〜480nmの3種類のレーザ光線をそれぞれ照射した場合に、少なくとも1以上のレーザ光線に対して、前記第1の面とは反対側の第2の面から出光するレーザ光線が、2以上にスプリットすることが好ましい。
この構成によれば、光学模様の、半導体発光素子から見た強度を向上させることが出来る。即ち、光取り出し効率LEEをより向上させることが可能となる。
また、本発明の光学基板PPにおいては、前記凹凸構造PPの平均ピッチは、50nm以上1500nm以下であると共に、前記凹凸構造PPは乱れを含み、当該乱れの要因となっている前記凹凸構造の要素の標準偏差及び相加平均は、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
0.025≦(標準偏差/相加平均)≦0.5 (1)
この構成によれば、前記効果のうち、特に以下2つの効果がより顕著となる。まず、光取り出し効率LEEがより向上する。これは、上記式(1)を満たすことで、有効屈折率Nemaの分布が、半導体発光素子の発光光から見て適度となり、光学的散乱性がより強くなるためである。次に、半導体結晶層に発生するクラックを抑制する効果が大きくなる。これは、凹凸構造PPを微視的に観察した場合の、該凹凸構造PPの乱れが所定の範囲内に収まることから、凹凸構造PPより半導体結晶層に加えられる応力の集中を抑制することができるためである。
また、本発明の光学基板PPにおいては、前記光学基板PPは、少なくともn型半導体層、発光半導体層及びp型半導体層で構成される半導体発光素子に適用され、前記凹凸構造PPは、前記複数の凸部又は凹部から構成されるドットを含み、前記凹凸構造PPは、少なくとも前記ドット間のピッチ、ドット径又はドット高さのいずれかにより制御された2次元フォトニック結晶を構成し、前記2次元フォトニック結晶の周期が、前記半導体発光素子の発光中心波長の2倍以上であることが好ましい。
この構成によれば、光学基板PPに観察される光学模様の明暗の差がより強くなる。即ち、高密度な凹凸構造を設けることによる効果を担保しつつ、光学的散乱性をより強く発現することが可能となる。特に、凹凸構造PPの所定の要素による形成される2次元フォトニック結晶の周期が、半導体発光素子の発光中心波長の2倍以上であることから、発光光と光学模様と、の相互作用は強まり、これに伴い光学的散乱性がより強くなる。よって、光取り出し効率LEEがより向上する。
また、本発明には、上記の本発明の光学基板PPの主面上に、少なくとも第1半導体層、発光半導体層及び第2半導体層が積層されたことを特徴とする半導体発光素子が包含される。
また、本発明には、上記の本発明の光学基板PPを使用した半導体発光素子の製造方法が包含される。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書における実体として存在する凹凸構造とは、文言通りの意味であり、凹凸構造が基板の表面に、物理的な構造体として存在することを意味する。特に、本明細書においては、走査型電子顕微鏡を使用した観察により観察される凹凸構造を、実体として存在する凹凸構造と呼ぶ。一方で、光が認識可能は模様とは、光から見た場合にどのような凹凸構造があるか、を表す文言である。一般的に、分解能の差こそあれ、光学的に検知した場合であっても、電子線により検知した場合であっても、観察される凹凸構造のオーダは等しくなる。しかしながら、本明細書により見出された知見によれば、実体として存在する、即ち物理的に存在する凹凸構造を光から見た場合に、実体として存在する凹凸構造のオーダとは異なるオーダの模様が観察される場合がある。即ち、光学的手法によって実体として存在する凹凸構造を観察した際に得られる、該凹凸構造の光学的に実効的な像のオーダと、該実体として存在する凹凸構造のオーダと、が異なる場合がある。このような光学現象を通して実体として存在する凹凸構造を考えた時に、実体として存在する凹凸構造とは異なるオーダの模様があることを表現するために、光が認識可能な、という文言を使用している。このような観点から、光が認識可能な模様は、光が検知できる模様、光が感じ取ることが出来る模様、或いは光学的に描かれる模様へ、と言い換えることが出来る。また、光学的に恰もそこに実体とは異なるパタンが存在するかのように光が振る舞う状態、又は、光から見た場合に恰も屈折率分布に応じた媒質があるように見える状態、と言い換えることも出来る。なお、本明細書においては、このような模様を光学顕微鏡観察により定義づける。光学顕微鏡観察により実体とは異なるオーダの模様が観察されることは、光学的に恰もそこに実体とは異なるパタンが存在するかのように光が振る舞う状態と同義であるためである。即ち、光学顕微鏡観察より得ることが出来る情報を、半導体発光素子に対する光学的散乱性へと結びつけることが可能である。
まず、本実施の形態にかかる光学基板PPを使用する効果について概説する。半導体発光素子を製造する際には、実体として存在する高密度な凹凸構造PPにより、内部量子効率IQEの改善、半導体結晶層へのクラック発生の低減、及び半導体結晶層使用量の低減といった効果を発現する。そして、半導体発光素子を使用する際には、発光光が認識可能な光学的模様により、光取り出し効率LEEが改善される。繰り返しになるが、光学模様を描かない、即ち単に高密度な凹凸構造を使用した場合、前述の半導体発光素子を製造する際の効果は発現されるが、使用する際の効果の発現程度は限られる。逆に、光学的散乱性の大きな体積変化の大きな凹凸構造を使用した場合は、前述の半導体発光素子を使用する際の効果は発現されるが、製造する際の効果の程度は限定される。同様に、光学模様のオーダが凹凸構造PPのオーダ以下の場合、前述の半導体発光素子を使用する際の効果は発現されるが、製造する際の効果の程度は限定される。換言すれば、本実施の形態に係る光学基板PPは、半導体発光素子の製造時に発現する機能と、半導体発光素子を使用する際に発現する機能と、を実体としての凹凸構造と、発光光が認識可能な模様により、機能分離している。これにより、従来実現することが困難であった、高密度な凹凸構造による強い光学的散乱性を発現させ、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善できる。
まず、光学基板PPの基板本体について説明する。本実施の形態に係る光学基板PPの基板本体は、少なくとも半導体発光素子を構成する1層以上のn型半導体層、1層以上の発光半導体層、1層以上のp型半導体層、又は1層以上のn型導電層のいずれかに接する半導体発光素子用基板である。即ち、1種の材料のみから構成される単層基板であっても、複数の材料から構成される多層基板であってもよい。例えば、サファイア/n−GaN/MQW/p−GaN/ITOからなる積層構造を含む半導体発光素子に対しては、サファイア、サファイア/n−GaN/MQW/p−GaNから構成される積層体、或いはサファイア/n−GaN/MQW/p−GaN/ITOから構成される積層体等を基板本体として捉えることが出来る。換言すれば、半導体発光素子の表面或いは界面に対して凹凸構造PPを設けるように、適宜基板本体の構成を変更できる。
以下、図面を参照し半導体発光素子について説明する。図1は、本実施の形態に係る光学基板PPの主面上に描かれた模様を示す説明図である。光学基板PP10の主面10aには複数の凸部及び凹部で構成される凹凸構造PP(図示せず)が設けられている。つまり、光学基板PP10の主面10aは複数の凸部又は凹部(図示せず)で覆われている。主面10aを光学顕微鏡によって観察した場合、凹凸構造PPを構成する凸部又は凹部によって模様Xが描かれており、明暗の差によって、第1の領域Xaと、第2の領域Xbとに識別することができる。第1の領域Xaは複数あり、互いに間隔を隔てて配置されている。これらの第1の領域Xaの間を第2の領域Xbがつないでいる。
模様Xは、凹凸構造PPを構成する凸部又は凹部のピッチ、高さ、又は径に依存するが、光学顕微鏡を用い、10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率で観察可能である。なお、肉眼により模様を観察することはできないが、模様により生じる光学現象である光回折や光散乱を観察することはできる。
ここで、10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率にて観察可能とは、光学基板PP10の主面を光学顕微鏡にて徐々に観察倍率を大きくし観察した際に、倍率A(10≦A≦5000)にて初めて模様Xが識別可能となり、倍率Aより高倍率の倍率Bへと更に拡大した場合、観察像が大きすぎて、或いは領域Xaと領域Xbとの界面の鮮明度が極度に低下し、模様Xを認識できない状態があることを意味する。即ち、光学顕微鏡を用いた観察においては、10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率にて模様Xが観察されればよい。なお、模様Xは、光学顕微鏡の倍率により観察される像が異なってもよい。即ち、例えば、倍率H(10≦H≦5000)にて観察した際には、不規則な間隔を有す互いに略平行なライン状の光学模様が観察され、更に倍率を拡大して倍率I(10≦H<I≦5000)にした際には、該ライン状の模様の中に円形状の光学模様が観察され、更に倍率を拡大して倍率J(10≦H<I<J≦5000)にした際には、該円形状の模様のみが観察されてもよい。この様な、低倍率にておいても、高倍率においても光学模様が観察され、且つ、それらの光学模様が異なることで、以下に説明する光学的散乱性の効果はより強くなり、光取り出し効率LEEの改善程度が向上する。このように10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率において模様Xが観察されることにより、以下に説明する光学的散乱性を発現することが可能となり、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて光取り出し効率LEEを改善できる。
模様Xは、凹凸構造PPを構成する複数の凸部又は凹部を構成する要素の相違によって、凹凸構造PPに対する有効屈折率Nemaの変化が生じることによって描かれると推定される。即ち、凹凸構造PPの要素の相違により、有効屈折率Nemaが分布を有すと推定される。この有効屈折率Nemaの分布に応じて、光の反射、回折、又は散乱等が生じ、光学模様Xが描かれると考えられる。そして、模様Xは光の進行方向を変化させることが出来るために、半導体発光素子に関しては、光取り出し効率LEEが改善される。複数の凸部又は凹部を構成する要素とは、凹凸構造PPに対する有効屈折率Nemaの変化を生じさせるものであれば良く、例えば、凸部又は凹部の高さ、ピッチ、凸部底部の径、又は凹部の開口径である。この要素については後述する。なお、有効屈折率Nemaは、実測される値ではなく、光学現象を前提とし、計算により求められる値である。ここで、光学現象としての前提とは、有効媒質近似である。この有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができる。即ち、凹凸構造PPの要素の差異を、誘電率の分布の体積分率として計算し、これを屈折率へと変換することで計算される。なお、誘電率は、屈折率の2乗である。
図2は、本実施の形態に係る光学基板PPを適用した半導体発光素子の一例を示す断面概略図である。図2に示すように、半導体発光素子100において、光学基板PP10は、その表面に凹凸構造20を具備している。図2〜図23において、この凹凸構造20は、模様Xを作る凹凸構造PPである。凹凸構造20は、複数の凸部20aと、これらの間をつなぐ凹部20bにより構成されており、前述したように凹凸構造20の集合により模様X(不図示)が光学的に表現されている。光学基板PP10の凹凸構造20を含む表面、即ち主面上に第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50が順次積層されている。ここで、発光半導体層40にて発生した発光光(以下、単に発光光ともいう)は、第2半導体層50側又は光学基板PP10側から取り出される。更に、第1半導体層30と第2半導体層50と、は互いに異なる半導体層である。ここで、第1半導体層30は、凹凸構造20を平坦化すると好ましい。これは、第1半導体層30の半導体としての性能を、発光半導体層40及び第2半導体層50へ、と反映させることができ、内部量子効率IQEが向上するためである。なお、半導体発光素子100については、光学基板PPを、後述する光学基板D或いは光学基板PCに置き換えることが出来る。
また、第1半導体層30は、図3に示すように、非ドープ第1半導体層31とドープ第1半導体層32とから構成されてもよい。図3〜図6は、本実施の形態に係る光学基板PPを適用した半導体発光素子の他の例を示す断面概略図である。なお、半導体発光素子200、300、400、及び500については、光学基板PPを、後述する光学基板D或いは光学基板PCに置き換えることが出来る。この場合、図3に示すように、半導体発光素子200において、光学基板PP10、非ドープ第1半導体層31及びドープ第1半導体層32の順に積層されると、内部量子効率IQEの改善に加え、反りの低減及び、半導体発光素子200の製造時間短縮が可能となる。ここで、非ドープ第1半導体層31が凹凸構造20を平坦化するように設けられることにより、非ドープ第1半導体層31の半導体としての性能を、ドープ第1半導体層32、発光半導体層40及び第2半導体層50へ、と反映させることができるため、内部量子効率IQEが向上する。
更に、非ドープ第1半導体層31は、図4に示すように、バッファー層33を含むと好ましい。図4に示すように、半導体発光素子300においては、凹凸構造20上にバッファー層33を設け、続いて、非ドープ第1半導体層31及びドープ第1半導体層32を順次積層することにより、第1半導体層30の結晶成長の初期条件である核生成及び核成長が良好となり、第1半導体層30の半導体としての性能が向上するため、内部量子効率IQE改善程度が向上する。ここでバッファー層33は、凹凸構造20を平坦化するように配置されてもよいが、バッファー層33の成長速度は遅いため、半導体発光素子300の製造時間を短縮する観点から、バッファー層33上に設けられる非ドープ第1半導体層31により凹凸構造20を平坦化することが好ましい。非ドープ第1半導体層31が凹凸構造20を平坦化するように設けられることにより、非ドープ第1半導体層31の半導体としての性能を、ドープ第1半導体層32、発光半導体層40及び第2半導体層50へ、と反映させることができるため、内部量子効率IQEが向上する。なお、図4において、バッファー層33は凹凸構造20の表面を覆うように配置されているが、凹凸構造20の表面に部分的に設けることもできる。特に、凹凸構造20の凹部底部又は凹凸構造20の凸部20aの側面部に優先的にバッファー層33を設けることができる。
図2〜図4に示した半導体発光素子100、200、及び300は、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に適用した例であるが、第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50の積層構造はこれに限定されるものではない。
図5に示すように、半導体発光素子400において、第2半導体層50上に透明導電層60を、透明導電層60の表面にアノード電極70を、そして第1半導体層30の表面にカソード電極80を、それぞれ設けることができる。透明導電層60、アノード電極70及びカソード電極80の配置は、半導体発光素子により適宜最適化できるため限定されないが、一般的に、図5に例示するように設けられる。
図2〜図5に示した半導体発光素子100、200、300、及び400で用いられる光学基板PP10は、凸部20a及び凹部20bで構成された凹凸構造20を具備し、凹凸構造20を構成する凸部20a及び凹部20bは、図1を参照して説明したように模様Xを描いている。
光学基板PP10を使用して半導体発光素子を製造することで、以下に示す3つの効果が得られる。
(1)内部量子効率IQEの向上
凹凸構造20により、第1半導体層30の成長モードを乱すことが可能となる。これにより、第1半導体層30と光学基板PP10と、の格子不整合により発生する転位を、実体として存在する凹凸構造20近傍において消失させることが可能となる。特に、模様Xは、凹凸構造20の集合により描かれるものであり、実体として存在するわけではないので、光学基板PP10の面内において、転位を分散化し転位密度を減少させることができる。更に、模様Xは、実体として存在するわけではないので、第1半導体層30の成長に伴うクラックの発生を抑制することができる。以上から、内部量子効率IQEが向上すると考えられる。
(2)光取り出し効率LEEの向上
模様Xが光学的に観察可能であることは、模様Xが実体として存在しなくとも、発光光は、恰も模様Xに応じたパタンが存在するかのように振る舞うことを意味する。このため、発光光は光学的散乱性(光回折或いは光散乱)を奏す。半導体発光素子、特にLED素子においては、光取り出し効率LEEを向上させる目的で、既にマイクロオーダの凹凸構造を具備したサファイア基板(PSS:Patterned Sapphire Substrate)が使用されているが、マイクロオーダの凹凸構造に対し、第1半導体層30を成膜させた場合、凹凸構造の凸部頂部近傍において第1半導体層30にクラックが生じやすい、という課題がある。本実施の形態においては、模様Xにより光取り出し効率LEEを改善する。ここで、模様Xは凹凸構造20の集合により描かれるものであり、実体はない。即ち、観察される模様Xを構成する第1の領域Xaの大きさや間隔がマイクロオーダであっても、立体方向にマイクロオーダの構造があるわけではない。このため、第1半導体層30内に発生するクラックを抑制できる。即ち、第1半導体層30に生じるクラックを抑制しつつ、半導体結晶層(第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50)内部に作られる発光光の導波モードを模様Xにより打破することができる。これは、導波モードにより所定の進行方向にしか進行できない発光光の進行方向を変化させることを意味する。即ち、発光光は、模様Xにより、半導体発光素子外部へと取り出される。
以上、(1)及び(2)の効果を同時に満たす。即ち、発光する効率そのものを向上させ、且つ、発光光を効果的に半導体発光素子外部へと取り出すことが可能となる。このため、本実施の形態に係る光学基板PP10を使用して製造された半導体発光素子100、200、300、及び400は、発熱量が小さくなる。発熱量が小さくなることは、半導体発光素子の長期安定性を向上させるばかりでなく、放熱対策に係る負荷(例えば、放熱部材を過大に設けること)を低減できることを意味する。
(3)光学基板PP製造時間の短縮と、半導体結晶量の低減
更に、光取り出し効率LEEを向上させるメカニズムが、凹凸構造20の集合により描かれる模様Xによる光学的散乱性(光回折或いは光散乱)であることは、光学基板PP10を製造する時間(コスト)を低減できることを意味する。半導体発光素子、特にLED素子においては、光取り出し効率LEEを向上させる目的で、既にPSSが使用されているが、マイクロオーダの凹凸構造を製造するためには非常に長い時間がかかることが問題となっている。本発明の光学基板PP10は、凹凸構造20の集合により模様Xが描かれ観察されるものである。即ち、模様Xがマイクロオーダの間隔や大きさを有す場合であっても、立体方向には同様のオーダの大きさ(構造)は存在しない。このため、光学基板PP10を製造するのにかかるコストを低減することが可能となる。また、成膜される半導体結晶量を低減できることも意味する。LED製造においては、半導体結晶層成膜工程である(MO)CVD工程が律速であり、スループットを低下させ、且つ材料コストを押し上げている。半導体結晶量を低減できることは、(MO)CVD工程のスループット性を向上させると共に、使用材料を低減させることを意味するため、製造上重要な要件となる。
なお、上記図2〜図5を用いた説明においては、光学基板PPを基板本体として説明したが、既に説明したように、第1半導体層30と発光半導体層40、発光半導体層40と第2半導体層50、第2半導体層50と透明導電層60、透明導電層60とアノード電極70、或いは、第1半導体層30とカソード電極80と、の間(界面)に凹凸構造20を設けるように基板本体を適宜選択できる。また、上記図2〜図5に例示したもの以外にも、以下の<<光学基板D>>、<<光学基板PC>>、又は<<半導体発光素子>>に記載したものを採用できる。
即ち、本実施の形態に係る光学基板PP10の基板本体は、上記説明したように半導体発光素子の界面位置に凹凸構造20を適用できるため、半導体発光素子用基板として使用できるものであれば特に制限はない。例えば、サファイア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、銅タングステン合金(W−Cu)、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン、リン化ガリウム、ガリウム砒素等の基板を用いることができる。なかでも半導体結晶層との格子マッチングの観点から、サファイア、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ガリウムヒ素、炭化ケイ素基板、スピネル基板等を適用することが好ましい。更に、単体で用いてもよく、これらを用いた基板本体上に別の基板を設けたヘテロ構造の基板としてもよい。
第1半導体層30又はn型半導体層としては、LEDに適したn型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体等に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。また、n型半導体層、p型半導体層には、適宜、図示しないn型クラッド層、p型クラッド層を設けることができる。
発光半導体層40としては、LEDとして発光特性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、発光半導体層40として、AsP、GaP、AlGaAs、AlGaAsInGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlHaInP、ZnO等の半導体層を適用できる。また、発光半導体層40には、適宜、特性に応じて種々の元素をドープしてもよい。
また、第2の半導体層50又はp型半導体層の材質は、LEDに適したp型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、及び、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。
これらの積層半導体層(n型半導体層、発光半導体層40、及びp型半導体層)は、公知の技術により製膜できる。例えば、製膜方法としては、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等が適用できる。
透明導電層の材質は、LEDに適した透明導電層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、Ni/Au電極等の金属薄膜や、ITO、ZnO、In2O3、SnO2、IZO、IGZO等の導電性酸化物膜等を適用できる。特に、透明性、導電性の観点からITOが好ましい。
更に、図5に示す半導体発光素子400においては、光学基板PP10と第1半導体層30との間に凹凸構造20が設けられているが、図6に示すように、別の凹凸構造を更に設けることができる。図6に示すように、別に設けられる凹凸構造としては、以下のものが挙げられる。
・光学基板PP10の発光半導体層40とは反対側の面上に設けられる凹凸構造501
・第2半導体層50と透明導電層60との間に設けられる凹凸構造502
・透明導電層60表面に設けられる凹凸構造503
・透明導電層60とアノード電極70との間に設けられる凹凸構造504
・第1半導体層30とカソード電極80と、の間に設けられる凹凸構造505
・アノード電極70の表面に設けられる凹凸構造506
・カソード電極80の表面に設けられる凹凸構造507
・第1半導体層30、発光半導体層40、第2半導体層50及び光学基板PP10の側面に設けられる凹凸構造508
光学基板PP10の凹凸構造20の他に、更に凹凸構造501〜508の少なくともいずれか1つの凹凸構造を設けることにより、以下に説明する各凹凸構造501〜508に応じた効果を発現することができる。
凹凸構造501を設けることにより、光学基板PP10の裏面(凹凸構造20とは反対側の面)における全反射を抑制することができるため、光取り出し効率LEEがより向上する。即ち、光学基板PP10の凹凸構造20により内部量子効率IQEを向上させ効果的に発光した発光光を、半導体発光素子500の外部へとより効果的に取り出すことが可能となる。更に、半導体発光素子500の反りを低減することもできる。よって、本実施の形態に係る光学基板PP10を使用した半導体発光素子500においては、更に凹凸構造501を設けることが好ましい。凹凸構造501の複数の凸部の間隔は、1μm以上500μm以下であることが好ましい。これにより、光取り出し効率LEEと反りの低減の効果が発現される。同様の効果から、特に、5μm以上100μm以下であることがより好ましく、5μm以上50μm以下であることが最も好ましい。
凹凸構造502を設けることにより、オーミックコンタクト性を向上させると共に、光取り出し効率LEEを向上させることができるため、外部量子効率EQEが大きく改善する。更に、透明導電層60における電子の拡散性が向上するため、半導体発光素子チップの大きさを大きくすることができる。この凹凸構造502は、必然的にナノオーダの高密度な凹凸構造となる。この観点から、光取り出し効率LEEをより向上させるために、凹凸構造502は、凹凸構造PP、以下に説明する凹凸構造D、又は凹凸構造PCのいずれかであることが好ましい。
凹凸構造503を設けることにより、透明導電層60における全反射を抑制することができるため、光取り出し効率LEEがより向上する。特に、透明導電層60とその外部(主に封止材)と、の屈折率は異なる傾向が強いため、凹凸構造503により導波モードを乱すことで、外部量子効率EQEが効果的に改善される。よって、本実施の形態に係る光学基板PP10を使用した半導体発光素子500においては、更に凹凸構造503を設けることが好ましい。この凹凸構造503は、必然的にナノオーダの高密度な凹凸構造となる。この観点から、光取り出し効率LEEをより向上させるために、凹凸構造503は、凹凸構造PP、以下に説明する凹凸構造D、又は凹凸構造PCのいずれかであることが好ましい。
凹凸構造504を設けることにより、オーミック抵抗を減少させ、オーミックコンタクト性を向上させることができるため、電子注入効率EIEを改善することができ、外部量子効率EQEを向上させることができる。外部量子効率EQEは、電子注入効率EIE、内部量子効率IQE、及び光取り出し効率LEEの積によって決定づけられる。本発明の光学基板PP10を使用することにより、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEの双方が向上する。よって、本実施の形態に係る光学基板PP10を使用した半導体発光素子500においては、更に凹凸構造504を設けることが好ましい。この凹凸構造504は、必然的にナノオーダの高密度な凹凸構造となる。この観点から、光取り出し効率LEEをより向上させるために、凹凸構造504は、凹凸構造PP、以下に説明する凹凸構造D、又は凹凸構造PCのいずれかであることが好ましい。
凹凸構造505を設けることにより、第1半導体層30とカソード電極80と、の接触面積が大きくなるため、カソード電極80の剥離を抑制することができる。
凹凸構造506を設けることにより、アノード電極70に接続される配線の固定強度が向上するため剥離を抑制できる。
凹凸構造507を設けることにより、カソード電極80の表面に設けられる配線の固定強度が向上するため剥離を抑制できる。
凹凸構造508を設けることにより、第1半導体層30、発光半導体層40、第2半導体層50及び光学基板PP10の側面より出光する発光光量を増加させることができるため、導波モードにて減衰消失する発光光割合を低減できる。このため、光取り出し効率LEEが向上し、外部量子効率EQEを大きくすることができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る光学基板PP10を使用することで、半導体発光素子500の内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを向上させることができる。更に、上記説明した凹凸構造501〜508の少なくとも1つの凹凸構造を更に設けることで、凹凸構造501〜508による効果を発現させることができる。特に、光取り出し効率LEEをよりいっそう向上させる観点から、凹凸構造501、凹凸構造503、又は凹凸構造504のいずれかを少なくとも設けると好ましい。また、電子注入効率EIEをも向上させる観点から、凹凸構造504を設けることが好ましい。最も好ましくは、凹凸構造503及び凹凸構造504を設けた半導体発光素子500であり、凹凸構造503及び凹凸構造504が、凹凸構造PP、以下に説明する凹凸構造D、又は以下に説明する凹凸構造PCのいずれかである場合である。これにより、透明導電層60の膜厚を薄く、且つ、その電気特性を良好に保った状態にて、光取り出し効率LEEをより向上させることができるため、高い外部量子効率EQEを実現することが出来る。また、半導体発光素子のより好ましい状態を、以下の<<半導体発光素子>>に記載した。
また、上記図2〜図4に例示される半導体発光素子100、200、300の、第2半導体層50の露出する表面上に電極を形成し、該電極の露出する表面上に支持基材を配置した中間体から、光学基板PP10を除去してもよい。光学基板PP10の除去は、レーザリフトオフや、光学基板PP10の全溶解或いは部分溶解に代表されるケミカルリフトオフにより達成できる。特に、光学基板PP10としてシリコン(Si)基板を採用する場合、溶解による除去が凹凸構造20の精度及び第1半導体層30の性能劣化の観点から好ましい。一方で、レーザリフトオフの場合、光学基板PP10に凹凸構造のある場合、光学基板PP10を除去する際の、剥離性が低下するという問題がある。この剥離性の低下により、第1半導体層30の露出する表面に設けられるべき凹凸構造20の精度が低下し、大きな分布が生じるという課題がある。しかしながら、光学基板PP10を使用する場合、実体としての凹凸構造20は高密度な凹凸構造であることから、レーザリフトオフの剥離性が向上する。このように光学基板PP10を除去することにより、内部量子効率IQEの改善を維持した状態で、光取り出し効率LEEをより一層向上させることができる。これは、光学基板PP10と第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50と、の屈折率の差が大きいことによる。光学基板PP10を除去することにより、第1半導体層30を出光面とした発光半導体素子をくみ上げることができる。この場合、本発明の凹凸構造20及び模様Xを介し発光光が出光することとなる。特に、模様Xが凹凸構造20により描かれる構成であることから、第1半導体層30と周囲環境(例えば、封止材)と、の間の屈折率の傾斜がなだらかになると共に、模様Xによる光学的散乱性を発現できるため、光取り出し効率LEEをより向上させることができる。
本実施の形態に係る光学基板PP10の模様Xと凹凸構造20について図面を参照して説明する。図7は、本実施の形態に係る光学基板PPの断面模式図であり、図7Aは光学基板PP10の一方の面が凹凸構造20を具備する場合を、図7Bは光学基板PP10の両面が凹凸構造20を具備する場合を示している。即ち、図7Aに示すように、凹凸構造20は光学基板PP10の少なくとも一方に設けられていれば良く、この凹凸構造20により模様Xが描かれ、観察される。また、図7Bに示すように、凹凸構造20は光学基板PP10の両面に設けられても良い。この場合、少なくとも一方の凹凸構造20により模様Xが描かれ、観察されればよい。
<模様X>
模様Xは、凹凸構造20を構成する要素の相違により描かれると推定される。ここで要素とは、凹凸構造20を作る凸部20a又は凹部20bの高さ、間隔、凸部底部の径、又は凹部開口部の径等であり、詳しくは後述する。凹凸構造20は、上述したように第1半導体層30内の転位を低減する効果を奏すことから、ナノオーダの高密度な構造である。光が凹凸構造に入射した場合、光の波長が凹凸構造に比べて大きくなる程、光から見た凹凸構造は平均化される。なお、ナノオーダとは凹凸構造20の平均ピッチが10nm以上1500nm以下のモノをいう。ここで、光に対する媒質は、物質の屈折率により定義される。即ち、光からみて凹凸構造が平均化されるとは、凹凸構造を構成する物質の屈折率と凹凸構造の周囲を取り囲む環境(例えば、第1半導体層30や空気)の屈折率と、の有効屈折率Nemaが形成されることを意味する。ここで、凹凸構造20の凸部20a又は凹部20bを構成する要素に相違がなく均等である場合、光学基板PP10の主面に平行な面内において均等な有効屈折率Nemaを形成する。換言すれば、有効屈折率Nemaの光学基板PP10の面内における分布はないため、光は、恰も有効屈折率Nemaを有す単層膜があるかのように振る舞う。即ち、模様Xは描かれず、言い換えれば光学基板PP10の主面は単色に観察される。一方、凹凸構造20の凸部20a又は凹部20bを構成する要素に相違がある場合、前述した有効屈折率Nemaは、光学基板PP10の主面に平行な面内において有効屈折率Nemaの分布を形成する。換言すれば、有効屈折率Nemaの光学基板PP10の面内における分布があるため、光は、恰も有効屈折率Nemaの分布に応じたパタン(模様)があるかのように振る舞うため、光学的散乱性(光回折又は光散乱)を奏す。即ち、模様Xが描かれることとなる。
模様Xは、光学顕微鏡を使用し観察した際に、10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率にて観察可能な模様であり、特に明暗の差として識別できる。光学基板PP10の主面を光学顕微鏡を使用し、観察倍率を徐々に大きくしていった場合に、倍率A(10≦A≦5000)にて初めて模様Xが識別可能となり、倍率Aより高倍率の倍率Bへと更に拡大した場合、観察像が大きすぎて、又は領域Xaと領域Xbとの界面の鮮明度が極端に低下して模様Xを認識できない状態があるため、光学顕微鏡を用いた観察においては、10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率にて模様Xが観察されればよい。このように10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率において模様Xが観察されることにより、上記説明した光学的散乱性を発現することが可能となり、内部量子効率IQEの向上を維持した状態にて光取り出し効率LEEを改善できる。
なお、模様Xは、光学顕微鏡の倍率により観察される像が異なってもよい。即ち、例えば、倍率H(10≦H≦5000)にて観察した際には、不規則な間隔を有し互いに略平行なライン状の光学模様が観察され、更に倍率を拡大して倍率I(10≦H<I≦5000)にした際には、該ライン状の模様の中に円形状の光学模様が観察され、更に倍率を拡大して倍率J(10≦H<I<J≦5000)にした際には、該円形状の模様のみが観察されてもよい。この様な、低倍率にておいても、高倍率においても模様Xが観察され、且つ、それらの模様Xが異なることで、光学的散乱性の効果はより強くなり、より具体的には、光学的散乱に対するモード数が増加するため、光取り出し効率LEEの改善程度が向上する。
ここで、光学顕微鏡を使用する際の観察倍率について考える。光学顕微鏡による観察倍率を規定することは、観察可能な模様Xの大きさを制限することを意味する。ここで、模様Xは、実体として存在する凹凸構造よりも大きなオーダを有す、光により認識されるパタンである。即ち、光に対する作用、具体的には、光学的散乱性(光回折又は光散乱)の程度を決定づける一つの因子が、模様Xの大きさである。よって、光学顕微鏡の観察倍率には好適な範囲のあると推定される。
まず、光学計算により光学顕微鏡の倍率の好適な範囲を考えた。即ち、半導体発光素子より発光する発光光に対して、効果的に光学的散乱性を発現するための模様Xの大きさを計算し、この時の模様Xの大きさを観察可能な光学顕微鏡の倍率を計算した。なお、計算は、有効屈折率Nemaを使用し、所定の平面内に屈折率の分布のある状態を模擬的に作製することで行った。この結果、倍率の範囲が10倍〜1500倍であることで、観察可能な光学模様の大きさは所定範囲内に制限され、効果的に光学的散乱性を奏すことがわかった。以上から、10倍〜1500倍のいずれかの倍率にて、模様Xが観察されることが好ましい。
光学顕微鏡により観察される模様Xにより発現される光学的散乱性に対してより詳細に検討を行った。検討としては、光学顕微鏡の倍率を10倍から徐々に大きくしていき、模様Xが観察された時の倍率を記録した。一方で、光学的散乱性をヘーズにより測定した。その結果、初めて模様Xが観察される倍率が10倍を境にして、模様Xのある場合とない場合と、のヘーズ値の差が観察され、上記計算結果と概ね一致することが確認された。更に500倍を境にして、ヘーズ値が顕著に大きくなることが分かった。これは、光から見た時の模様Xによる光学的散乱性(光回折又は光散乱)が大きくなっていることを意味している。このことから、光学顕微鏡を使用した観察においては、500倍〜1500倍のいずれかの倍率にて、模様Xが観察されることがより好ましい。
一方で、上限値の検討も行った。上限値の検討は、下限値の検討とは逆に、光学顕微鏡の観察倍率を徐々に上げていき、模様Xが拡大されすぎて、或いは領域Xaと領域Xbとの界面の鮮明度が極度に低下して模様Xとして認識できなくなる時の倍率を記録した。また、下限値と同様にヘーズとの対応をとった。この結果、最高倍率5000倍を境にして、ヘーズの減少が見られた。これは、模様Xの大きさが大きすぎることを意味している。より具体的には、光から見た模様Xが大きすぎる場合、光は、その波長よりも十分に大きく、平面として認識できるような模様Xを感じとることになる。即ち、模様Xのパタンによる光学的散乱性は低下し、各模様(Xa,Xb)における反射が生じることとなる。以上から、500倍〜5000倍のいずれかの倍率にて、模様Xが観察されることが最も好ましい。
なお、観察倍率のより好ましい範囲内においては、上記説明したように、倍率により異なる模様Xが観察されることがより好ましい。
模様Xは、光学顕微鏡像における明暗の差として観察され、明暗の差がある一方の(例えば、明るい)箇所を第1の領域Xaと、他方の(例えば、暗い)箇所を第2の領域Xbと識別することができる。なお、以下の説明では、凹凸構造20は複数の凸部20aと、その間をつなぐ凹部20bとで構成されている場合を例に挙げて説明する。
ここで、「明暗の差」とは、注目対象とそれ以外のものとが区別できるような視覚的な特徴の差であり、特に画像においては、最も暗い部分と、最も明るい部分の輝度の差をいう。実世界の視覚においては、同じ視野内で色又は輝度の差のことをいう。例えば、明るい第1の領域Xaは水色に観察され、暗い第2の領域Xbは濃青色に観察されたり、明るい第1の領域Xaは薄桃色に観察され、暗い第2の領域Xbは濃桃色に観察されたりする。
図8〜図10は、本実施の態に係る光学基板PPを凹凸構造面側から観察した場合の模様を示す説明図である。図8A〜図8Dは、本実施の形態に係る光学基板PPを凹凸構造面側より、光学顕微鏡を用いて観察した場合の模様Xを示す説明図である。図8A〜図8Dに示すように、光学基板PP10を凹凸構造20面側より光学顕微鏡を用いて観察した際に模様Xが観察される。模様Xは、図8A及び図8Bに示すように、略同一平面形状の第1の領域Xaが周期的に配置されるように観察されても、図8Cに示すように略同一平面形状の第1の領域Xaが規則性低く配置されるように観察されても、図8Dに示すように平面形状の大きく異なる第1の領域Xaが配置されるように観察されてもよい。
光学基板PP10の主面10a上には、走査型電子顕微鏡を使用し観察した際に、複数の凸部20a又は凹部20bが全面にわたって形成され、従って、第1の領域Xaから第2の領域Xbとの間には複数の凸部20a又は凹部20bが連続的に形成されていることが好ましい。図9及び図10は、本実施の形態に係る光学基板PPを凹凸構造面側から光学顕微鏡を使用し観察した場合の模様と、走査型電子顕微鏡を使用し観察した場合の凹凸構造と、の関係を示す説明図である。図9に示すように、模様Xにおいて、第1の領域Xaの領域内においても、第2の領域Xbの領域内においても複数の凸部20aが形成されている。更に、図10に示すように、第1の領域Xaと第2の領域Xbとの間には実際には界面は存在せず、凹凸構造20を構成する凸部20aが並んでいる。
なお、上記説明においては、模様Xが明暗の差で観察され、明るい箇所である第1の領域Xaと、暗い箇所である第2の領域Xbと、で表現したが、模様Xは、3以上の明るさ、すなわち色又は輝度の異なる箇所により作られる模様として観察されてもよい。
また、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面が、色又は輝度の変化として鮮明に観察されても、色又は輝度が連続的に変化してもよい。特に、第1半導体層30内に発生するクラックを抑制すると共に、内部量子効率IQEをより向上させる観点から、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面は、色又は輝度が連続的に変化し観察されると好ましい。
図11は、本実施の形態に係る光学基板PPを示す断面模式図である。次に、図11A〜図11Cを参照して、模様Xと凹凸構造20との関係をより詳細に説明する。図11A〜図11Cは、本実施の形態に係る光学基板PPを、走査型電子顕微鏡を使用し断面より観察した際の断面模式図である。なお、模様Xは、光学基板PP10の凹凸構造面側より観察されるものであり、光学基板PP10の断面に対して光学顕微鏡観察をした場合は、明確な模様Xは観察されなくてもよい。図11Aは、凹凸構造20を構成する複数の凸部20aの、互いに隣接する距離P’(以下、ピッチP’という)が、徐々に変化している状態を示している。この場合、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側から観察した場合、ピッチP’の変化の周期に応じて模様Xを観察することができる。
図11Bは、凹凸構造20を構成する複数の凸部20aの高さHが徐々に変化している状態を示している。この場合、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側から観察した場合、高さHの変化の周期に応じて模様Xを観察することができる。
図11Cは、凹凸構造20を構成する複数の凸部20aのピッチP’及び高さHが徐々に変化している状態を示している。この場合、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側から観察した場合、ピッチP’及び高さHの変化の周期に応じて模様Xを観察することができる。
以上説明したように、模様Xは、実体として存在する構造ではなく、ピッチP’や高さHのような凹凸構造20における凸部20a又は凹部20bの要素の相違により、凹凸構造20の有効屈折率Nemaに変化が生じ、光学基板PP10の主面10aに描かれると推定される。つまり、第1の領域Xaでは、凸部20a又は凹部20bを構成する要素は同一又は近似しており、また、当該要素が第2の領域Xbを構成する要素と異なるものが群をなしている。この群を「凹凸構造群」又は「凹凸構造の集合」と呼ぶ。この凹凸構造群(凹凸構造の集合)が平面的に、模様Xとして観察される。
なお、凹凸構造群(凹凸構造の集合)は、凹部20bにより離間される凸部20aが2以上ある場合である。また、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、は隣接する一方の第1の領域Xaの中心部の凸部20aと他方の第1の領域Xaの中心部の凸部20aと、の間に、凹凸構造20の凸部20aが1以上あれば描画可能である。換言すれば、凸部20aが3以上あると共に、少なくとも1つの凸部20aを構成する要素が、他の凸部20aの要素と相違する場合、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、を描くことができる。以上のように、模様Xは、凹凸構造20の有効屈折率Nemaに変化に応じ、光学顕微鏡観察時に観察される模様であることから、模様Xの第1の領域Xaの間隔は、凹凸構造20のピッチP’よりも大きくなる。
更に、第1の領域Xa、第2の領域Xb、第1の領域Xaへと、凸部20aを構成する要素が連続的に変化してもよく、第1の領域Xaを作る凸部20aの同一又は近似している要素と、第2の領域Xbを作る凸部20aの同一又は近似している要素と、が離散的に相違していてもよい。凸部20aを構成する要素の連続的な変化又は離散的な変化のいずれを採用するかは、半導体発光素子に要求される性能から適宜判断できる。例えば、内部量子効率IQEの向上に特に重きを置き、光取り出し効率LEEを外部量子効率EQE向上の補完要素として加える場合は、凸部20aを構成する要素は連続的に変化することが好ましい。これは、半導体発光素子の半導体結晶層の成長に対して過剰な応力の加わることを抑制するためである。一方で、光取り出し効率LEEの向上に特に重きを置き、内部量子効率IQEを外部量子効率EQE向上の補完要素として加える場合は、凸部20aを構成する要素は離散的に変化することが好ましい。これは、発光光の認識出来る模様Xの界面、即ち、領域Xaと領域Xbとの界面の鮮明度を向上させ、光学的散乱性を強く出来るためである。
上記説明したように、模様Xは凹凸構造20を構成する要素の相違により描かれると推定され、光学基板PP10を凹凸構造面側より観察した際に観察される。このような光学基板PP10を使用することで、半導体発光素子の内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEが共に向上する理由は以下の通りである。まず、凹凸構造20が複数の凸部20aによって構成されていることにより、半導体結晶層の成長モードを乱すことが可能となる。これにより、第1半導体層30内部の転位が微視的に(凹凸構造20を構成する凸部20a1つ1つといった微小オーダにて)分散化される。更に、模様Xは実体として存在する構造でないため、言い換えれば、観察される模様Xを構成する第1の領域Xaの大きさや間隔が、光学基板PP10の立体方向(厚み方向)には反映されていないため、3つの効果を奏す。
(1)凹凸構造20による第1半導体層30内の転位の分散性が巨視的にも保たれる。即ち、光学基板PP10の上に設けられる第1半導体層30の転位密度を面内において低くすることができる。このため、第1半導体層30上に設けられる発光半導体層40における発光特性が向上し、内部量子効率IQEが向上する。これは、模様Xが実体として存在する構造ではなく、上述の凹凸構造20の集合によって、光から見た場合に恰も存在するかのように観察されるものであるためである。より具体的には、模様Xの大きさや間隔が、光学基板PP10の膜厚方向にも存在する場合、即ち、模様Xが実体として存在する場合、第1半導体層30の成長は、模様Xにおいて第1の領域Xa或いは第2の領域Xbから優先して生じることとなる。この場合、第1半導体層30内部に発生する転位密度に比べ、光学基板PP10の主面内における模様Xの密度が小さくなる。即ち、光学基板PP10の面内における、第1半導体層30の転位分散性の効果が低下する。換言すれば、光学基板PP10の面内に注目した場合に、半導体結晶層の転位密度が大きい領域と小さい領域と、が混在することとなる。一方、本発明においては、模様Xは実体として存在するのではなく、上述の凹凸構造20の集合により光学的観察される2次元的な平面像である。この場合、第1半導体層30の成長は、模様X内にて概ね均等に生じることとなる。よって、第1半導体層30は、実体として存在する凹凸構造20の密度を感じ成長することが可能となるため、光学基板PP10の面内における、第1半導体層30の転位分散性が向上する。換言すれば、光学基板PP10の面内に注目した場合に、半導体結晶層の転位密度が略均等に小さくなる。即ち、内部量子効率IQEを効果的に改善することができる。
(2)模様Xは、凹凸構造20の集合により光学的に観察される2次元的な平面像であることから、第1半導体層30の成長時に発生するクラックを抑制できると共に、第1半導体層の使用量を低減させ、且つ第1半導体層30の成膜時間を短縮することができる。より具体的には、観察される模様Xを構成する第1の領域Xaの大きさや間隔が、光学基板PP10の膜厚方向にも存在する3次元的な構造体の場合、即ち、模様Xが実体として存在する場合、第1半導体層30により、模様Xを平坦化する必要がある。ここで、第1半導体層30により模様Xを平坦化する際に、模様Xの頂部付近においては、第1半導体層30の結晶成長方向が急激に変化する。このため、模様Xの頂部付近における第1半導体層30に応力集中が生じることとなるためである。即ち、凹凸構造20が実体として存在する構造であり、且つ、模様Xが、光が認識可能な模様である平面的なパタンであることで、第1半導体層30内のクラックといったマクロな欠陥を抑制し、凹凸構造20による転位分散化による内部量子効率IQEの効果を得ることができる。
(3)最後に、模様Xは光学的に観察される模様である、言い換えれば、半導体発光素子の発光光は、模様Xに応じたパタンが恰もあるかのように振る舞うこととなる。よって、第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50内部にて導波する発光光は、その進行方向を乱されるため、導波モードが乱され、光取り出し効率LEEが向上する。より具体的には、観察される模様Xの、第1の領域Xaと第2の領域Xbとでは、半導体発光素子の発光光からみた屈折率が異なることとなる。そして、第1の領域Xaは、第2の領域Xbにより隔たれ配置されている。即ち、模様Xは実体として存在する構造でなくとも、半導体発光素子の発光光からみた場合、屈折率の異なる模様Xを認識することができるため、導波モードを乱すことが可能となる。以上から、半導体発光素子の製造に支障をきたさず、且つ環境適合性をはかりながら内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に改善することが可能となる。
即ち、半導体発光素子を製造する際には、実体として存在する高密度な凹凸構造20により、内部量子効率IQEの改善、半導体結晶層へのクラック発生の低減、及び半導体結晶層使用量の低減といった効果を発現する。そして、半導体発光素子を使用する際には、発光光から見た、即ち、実体としては存在し得ない模様Xにより、光取り出し効率LEEが改善される。繰り返しになるが、模様Xを描かない高密度な凹凸構造を使用した場合、前述の半導体発光素子を製造する際の効果は発現されるが、使用する際の効果の発現程度は限られる。逆に、光学的散乱性の大きな体積変化の大きな凹凸構造を使用した場合は、前述の半導体発光素子を使用する際の効果は発現されるが、製造する際の効果の程度は限定される。換言すれば、本実施の形態に係る光学基板PP10は、半導体発光素子の製造時に発現する機能と、半導体発光素子をする際に発現する機能を、実体としての凹凸構造と、光により認識される実体としての凹凸構造よりも大きなオーダの模様Xにより、機能分離している。これにより、従来同時実現することが困難であった、高密度な凹凸構造による強い光学的散乱性を実現し、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善できる。
上記説明したように光学顕微鏡により観察される模様Xは、走査型電子顕微鏡により観察される複数の凹凸構造20の集合により、言い換えれば、複数の凸部20aを構成する要素の相違により、光学基板PP10を凹凸構造面側より観察した際に、観察される。ここで、上記説明した原理により、内部量子効率IQEを向上させ、且つ光取り出し効率LEEを向上させる観点から、模様Xは、可視光を利用した光学観察により観察可能であることが好ましい。光学的に模様Xを観察可能であることは、模様Xが実体としての構造でない場合であっても、光からみると異なる媒質が存在することを意味するためである。これは、光にとっての物質は屈折率により定義されるためであり、特に屈折率の平均化作用(有効媒質近似作用)により説明されるものである。光学的観察は、光学顕微鏡により行うことができる。例えば、本発明の光学基板PP10に対する光学的観察は、以下の装置及び条件により可能である。
(光学的観察)
装置A:株式会社キーエンス社製 超深度カラー3D形状測定顕微鏡 VK−9500
顕微鏡レンズ: 株式会社ニコン社製
条件:
10×/0.30(WD.16.5)
20×/0.46(WD.3.1)
50×/0.95(WD.0.35)
150×/0.95(WD.0.2)
装置B:株式会社ハイロックス社製 KH−3000VD
対物レンズ: OL−700
観察倍率: 〜5000倍
なお、光学的観察は、装置Bを使用することがより好ましい。これは、凹凸構造20により生じる光回折や光散乱によるノイズにより、観察される模様Xの鮮明度が低下することを抑制する効果が大きい為である。即ち、装置Aを使用し観察される像に比べ、装置Bを使用し観察される像は、鮮明度が高いことがある。
次に、光学的観察により、光学基板PP10を凹凸構造面側から観察した際に観察される模様Xの面内における配置(模様)、鮮明さ、輪郭の形状、大きさ、及び間隔について説明する。
・配置(模様)
光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し、凹凸構造面側より見た場合に観察される模様Xの配置(模様)は、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、光学的散乱性を発現する配置であれば限定されない。このため、第1の領域Xaは、第2の領域Xbにより隔たれ配置されていると共に、模様Xの間隔は、凹凸構造20のピッチP’よりも大きい。即ち、第1の領域Xaが第2の領域Xbにより凹凸構造20のピッチP’よりも大きな間隔をあけて隔たれることで、発光光から見た場合、屈折率の異なる媒質が離散し配置されているのと同義となる。ここで、光における屈折率は、その進行方向を変化させうる物質と同義である。よって、光学的に観察される模様Xにおいて、第1の領域Xaが第2の領域Xbにより隔たれ配置されることで、光学的散乱性が発現する。ここで、光学的散乱性とは、光回折或いは光散乱である。より具体的な、第1の領域(又は、第2の領域)の配列としては、例えば、複数のライン状模様が並んだ配列、即ちラインアンドスペース配列、六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、又はこれらの配列を組み合わせた配列、或いは規則性の低い配列等を採用することができる。なお、準六方配列とは、六方配列の格子間隔(互いに隣接する第1の領域Xaの距離)の歪量が30%以下のものと、準四方配列とは、四方配列の格子間隔(第1の領域Xaの距離)の歪量が30%以下のものと定義する。また、例えば六方配列と四方配列と、を含む場合とは、四方配列にて観察される部分と六方配列にて観察される部分と、が散在している状態や、四方配列と六方配列と、を含み、四方配列から六方配列へと徐々に変化し、六方配列から四方配列へと徐々に戻る配列等があげられる。
上述のラインアンドスペース配列とは、例えば、複数のライン状模様が、互いに平行に並んだ配列、複数のライン状模様が、互いに略平行に(平行度≦10%)並んだ配列、複数のライン状模様が互いに平行に並ぶと共に、各ライン状模様同士の距離が一定である配列、複数のライン状模様が互いに平行に並ぶと共に、各ライン状模様同士の距離が不規則である配列、複数のライン状模様が互いに略平行(平行度≦10%)に並ぶと共に、各ライン状模様同士の距離が一定である配列、複数のライン状模様が互いに略平行(平行度≦10%)に並ぶと共に、各ライン状模様同士の距離が不規則である配列を含む。
ここで、既に説明したように、光学顕微鏡を使用した観察において、観察倍率によって、観察される模様Xが異なることで、光学的散乱性はより強くなり、光取り出し効率LEEがより向上する。例えば、倍率により2種類の模様Xが観察される場合、(低倍率により観察される模様X/高倍率により観察される模様X)と記載した場合に、その組み合わせとしては、(ラインアンドスペース配列/六方配列)、(ラインアンドスペース配列/四方配列)、(六方配列/四方配列)、(四方配列/六方配列)、(ランダムなまだら模様/六方配列)、(ランダムなまだら模様/四方配列)、或いは(ランダムなまだら模様/ラインアンドスペース配列)等が挙げられる。中でも、(ラインアンドスペース配列、又は、ランダムなまだら模様/六方配列、又は、四方配列)の組み合わせであると、高倍率に観察される模様Xを作る凹凸構造20による内部量子効率IQE向上の効果が高まると共に、低倍率にて観察される模様Xによる光取り出し効率LEE向上の効果がより高まるため好ましい。特に、低倍率により観察される模様Xの規則性は低く、ランダムであるほど、光学的散乱性が増加するため好ましい。また、高倍率にて観察される模様Xの規則性は高い程、凹凸構造20の要素の相違の規則性が向上し、内部量子効率IQEが向上するため好ましい。なお、低倍率と高倍率と、の間の倍率においては、低倍率にて観察されある模様Xと高倍率にて観察される模様Xと、が同時に観察されることが最も好ましい。なお、上記例では、低倍率と高倍率と、で異なる像が観察される場合、即ち、2種類の像が観察される場合について例示したが、倍率毎に異なる像が3種類以上観察されてもよい。また、倍率により観察される模様Xが異なることで、発光角度依存性を小さくすることが出来る。この為、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
例えば、図8A〜図8Dに示すような配列が挙げられる。図8A〜図8Cにおいては、模式的に、光学顕微鏡により観察される模様Xにおいて明るい箇所である第1の領域Xaの輪郭形状を円形にそして鮮明に描いているが、第1の領域Xaの輪郭形状や界面の鮮明性はこれに限定されるものではなく、以下に説明する輪郭形状や界面の鮮明性を含むものとする。更に、図8A〜8Cにおいては、第1の領域Xaを単一の輪郭形状として表現しているが、図8Dに示すように複数の輪郭形状の第1の領域Xaを含むこともできる。また、図8A〜図8Dにおいは、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面鮮明性も単一に描いているが、これも複数の鮮明性を含むことができる。
図8Aは、第1の領域Xaが六方配列の模様として観察される状態を、図8Bは第1の領域Xaが四方配列の模様として観察される場合を、図8Cは第1の領域Xaが規則性低い模様として観察される場合を示している。また、図8Dは、第1の領域Xaが複数の輪郭形状を有する模様が規則性低く配列しているように観察される場合を示している。なお、図8A〜図8Dにおいては、第1の領域Xa以外の部分の暗い箇所を第2の領域Xbと表記しているが、これとは反対に、明るい箇所を第2の領域Xbと、暗い箇所を第1の領域Xaとすることもできる。これらの第1の領域Xa及び第2の領域Xbは、それぞれ凹凸構造20の集合により構成されている。
中でも、光学的散乱性を強くし、光取り出し効率LEEをより向上させる観点から、模様Xは、光学基板PP10の面内方向において、六方配列、四方配列、ラインアンドスペース配列、又は格子配列として観察されることが好ましい。なお、ラインアンドスペース配列とは、明るい箇所である第1の領域Xaと暗い箇所である第2の領域Xbと、が互い平行に交互に配列した状態である。なお、ラインアンドスペース配列における平行は、平行度が0%以上10%以下の範囲を指す。なお、本明細書における平行度は、0%の場合が幾何学的に完全に平行な場合として定義する。
・鮮明さ
図12〜図16を参照して、本実施の形態に係る光学基板PPにおいて観察される模様Xの輪郭の鮮明さを説明する。図12は、本実施の形態に係る光学基板PPを、光学顕微鏡を用い凹凸構造面側より見た場合の模様Xを示す平面模式図である。図12中の線分YY’と第1の領域Xaとの交点をa,b,c,d,e,fとする。図13〜図16は、横軸に線分YY’を、縦軸に図12に示す光学基板PPを、光学顕微鏡を用い凹凸構造面側より観察した場合の模様Xの明暗をとったグラフである。
図13に示すように、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側より見た場合に、観察される模様Xを構成する第1の領域Xa及び第2の領域Xbが略一定の色味であり、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面において、急峻な明暗の変化により模様Xが観察されてもよい。即ち、観察される模様を構成する第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面が鮮明に観察されてもよい。この場合、第1の領域Xaを作る凸部20aの同一又は近似している要素と、第2の領域Xbを作る凸部20aの同一又は近似している要素と、は離散的に相違する。この場合、発光光から見た第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面が鮮明になることから、光学的散乱性の強度が向上し、光取り出し効率LEEが特に向上する。
図14に示すように、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側より見た場合に、観察される模様Xを構成する第2の領域Xbが略一定の色味であり、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと徐々に明暗が変化するように観察されてもよい。この場合、第2の領域Xbを作る凸部20aの要素は同一又は近似している。一方で、第1の領域Xaを作る凸部20aの要素は連続的に変化している。この場合、発光光から見た第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面の鮮明度を向上させつつ、第1の領域Xaから第2の領域Xbに向けて模様Xの色味を連続的に変化させることが出来る。これにより、光学的散乱性のモード数が向上し、光取り出し効率LEEが特に向上する。更に、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面から第2の領域Xbにかけて、半導体結晶層の成長速度が特異的に大きく或は小さくなることを抑制し、半導体結晶層へのクラックの生成を抑制できる。更に、模様Xが、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと徐々に明暗が変化するように観察されることで、発光角度依存性を小さくすることが出来る。この為、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
図15に示すように、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側より見た場合に、観察される模様Xを構成する第2の領域Xb及び第1の領域Xaとが共にグラデーションがかっており、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと徐々に色味が変化するように観察されてもよい。この場合、第1の領域Xa内及び第2の領域Xb内において、それぞれの領域を構成する凸部20aの要素は連続的に変化すると共に、第1の領域Xaから第2の領域Xbへと、また、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと、模様Xを構成する凸部20aの要素は連続的に変化する。この場合、発光光は、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の色味の差に応じた光学的散乱強度により、その進行方向を変化できるため、光取り出し効率LEEが向上する。更に、光学基板PP10の面内に渡り、半導体結晶層の成長速度が特異的に大きく又は小さくなることを抑制し、半導体結晶層へのクラックの生成を抑制できる。この為、内部量子効率IQEが特に向上する。更に、模様Xが、第1の領域Xaから第2の領域Xbへと、また、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと、と徐々に明暗が変化するように観察されることで、発光角度依存性をより小さくすることが出来る。この為、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
更に、図16に示すように、光学基板PP10を、光学顕微鏡を用い凹凸構造面側より見た場合に観察される模様Xを構成する第1の領域Xaにおいて、ある第1の領域Xaと別の第1の領域Xaと、が異なる明るさであってもよい。同様に、ある第2の領域Xbと別の第2の領域Xbと、が異なる明るさであってもよい。この場合、ある第1の領域Xaを構成する凸部20aの要素と、別の第1の領域Xaを構成する凸部20aの要素と、は相違している。また、ある第2の領域Xbを構成する凸部20aの要素と、別の第2の領域Xbを構成する凸部20aの要素と、は相違している。更に、第1の領域Xa内及び第2の領域Xb内において、それぞれの領域を構成する凸部20aの要素は連続的に変化すると共に、互いに隣接する第1の領域Xaから第2の領域Xbへと、また、互いに隣接する第2の領域Xbから第1の領域Xaへと、模様Xを構成する凸部20aの要素は連続的に変化する。この場合、発光光は、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の色味の差に分布が生じることから、光学的散乱性のモード数増加し、光取り出し効率LEEが向上する。更に、光学基板PP10の面内に渡り、半導体結晶層の成長速度が特異的に大きく又は小さくなることを抑制し、半導体結晶層へのクラックの生成を抑制できる。この為、内部量子効率IQEが特に向上する。更には、発光角度依存性をより小さくすることが出来る。この為、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
なお、図13〜図16を参照し説明した模様Xの明暗の変化は、図13、図14、図15又は図16に例示した明暗の変化を組み合わせることもできる。
なお、図13〜図16においては、明るい箇所を第1の領域Xa、それ以外の暗い箇所を第2の領域Xbと表記しているが、明るい箇所を第2の領域Xb、暗い箇所を第1の領域Xaとすることもできる。
以上説明したように、模様Xは、光学顕微鏡を用い、光学基板PP10の凹凸構造面側から見た場合に観察される模様であり、模様Xを定義づける明暗は連続的に変化しても急峻に変化してもよい。ここで、内部量子効率IQEをより大きく向上させる観点からは、明暗は連続的に変化すると好ましく、光取り出し効率LEEをより大きく向上させる観点からは、明暗は急峻に変化すると好ましい。どのような明暗の変化を採用するかは、半導体発光素子製造時の条件(例えば、光学基板PP10の種類、第1半導体層30の成膜条件、第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50の層構成等)又は、製造される半導体発光素子の特性により適宜選定することができる。特に、第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50を成膜する(MO)CVD装置の成膜条件は非常に厳密である一方、第1半導体層30、発光半導体層40及び第2半導体層50の膜厚制御は比較的容易である。このことから、光学基板PP10の発揮する性能である内部量子効率IQEの向上と光取り出し効率LEEの向上においては、内部量子効率IQEの向上に重きを置くことが好ましいと考えられる。よって、光学基板PP10の主面側に観察される模様Xの明暗は連続的に変化することがより好ましい。
・輪郭の形状
上記説明したように、模様Xは、光学基板PP10を、光学顕微鏡を用い、凹凸構造面側から見た場合に観察される模様であり、模様を定義づける明暗は、連続的に変化しても急峻に変化してもよい。ここで、明暗が連続的に変化する場合、第1の領域Xaの輪郭、即ち第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面は不鮮明となるため、第1の領域Xaの輪郭形状を明確に定義することは困難であるが、概ね、円形、同心円形、n(≧3)角形、角の丸まったn(≧3)角形、ライン形状、変曲点を1以上含む形状等が挙げられる。特に、半導体結晶層を成膜する際のクラックを抑制する観点、内部量子効率IQEを光学基板PP10の面内に渡り向上させる観点、そして光取り出し効率LEEを光学基板PP10の面内に渡り向上させる観点から、第1の領域Xaの輪郭形状は、概ね、円形或はライン形状であることがより好ましい。
光学基板PP10凹凸構造面側から見た場合に観察される模様Xにおいては、明暗が連続的に変化するに従い、第1の領域Xaの輪郭の形状はぼやける。つまり、第1の領域Xaと第2の領域Xbとの間で明暗の差が少なくなり、第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の界面が不鮮明になる。
第1の領域Xaの輪郭形状がぼやけることは、第1の領域Xaを構成する凸部20aの要素が、第1の領域Xaから第2の領域Xbへと、また、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと、連続的に変化することを意味する。光学基板PP10の主面上に第1半導体層30を設ける場合、第1半導体層30の光学基板PP10の主面内における成長速度分布を小さくする必要がある。これは、第1半導体層30の成長速度が光学基板PP10の主面内において分布を有す場合、成長速度の速い箇所と遅い箇所と、の界面部に、成長速度差に起因した隆起や陥没が生成するためであり、このような隆起や陥没が存在する場合、半導体発光素子の発光効率が大きく低下し、半導体発光素子の欠損率が増加するためである。第1の領域Xaの輪郭形状がぼやけることにより、光学基板PP10の主面内における第1半導体層30の成長速度分布を連続的に変化させることが可能となり、前述した隆起や陥没を抑制することができる。即ち、第1の領域Xaの輪郭形状がぼやける、換言すれば、第1の領域Xaから第2の領域Xbへと、明暗が連続的に変化することで、光学的に描かれる模様Xにより光取り出し効率LEEの改善を担保した状態で、半導体結晶層を成膜する際の半導体結晶層へのクラックの発生を抑制すると共に、半導体結晶層の特異成長を抑制できるため、内部量子効率IQEの向上程度が大きくなる。
・大きさ
光学基板PP10を凹凸構造面側より見た場合に観察される模様Xの大きさは、第1の領域Xaの大きさとして定義されるが、特に限定されない。これは、上記説明したように、模様Xは、光学顕微鏡を使用した特定の倍率範囲内にて観察することができる模様であることから、光に対して模様Xに応じた光学的散乱性(光回折又は光散乱)を発現可能であるためである。また、第1の領域Xaの輪郭は不鮮明であることが多く、即ち、第1の領域Xaの形状を明確に把握することが困難な場合が多いためである。よって、模様Xの大きさ、即ち第1の領域Xaの大きさは、以下に説明する間隔によって定義されるものとする。
・間隔
上記説明してきたように、光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し、凹凸構造面側より見た場合に観察される模様Xは、明暗により定義される。模様Xの間隔は、周囲よりも明るい(或いは暗い)第1の領域Xaと、この第1の領域Xaに隣接する周囲よりも明るい(或いは暗い)別の第1の領域Xaとの距離Dとして定義される。図17は、本実施の形態に係る光学基板PPを、光学顕微鏡を使用し凹凸構造面側よりみた場合に観察される模様Xの平面模式図であり、模様Xの間隔を説明する図である。図17に示すように、複数の第1の領域Xaが描かれている場合、ある第1の領域A1の中心とこの部分A1に隣接する第1の領域B1−1〜第1の領域B1−6の中心との間の距離DA1B1−1〜距離DA1B1−6を、間隔Dと定義する。しかし、この図17に示すように、隣接する第1の領域Xaにより間隔Dが異なる場合は次の手順に従い、平均間隔Daveを決定する。(1)任意の複数の第1の領域A1、A2…ANを選択する。(2)第1の領域AMと該第1の領域AM(1≦M≦N)に隣接する第1の領域(BM−1〜BM−k)と、の間隔DAMBM−1〜DAMBM−kを測定する。(3)第1の領域A1〜第1の領域ANについても、(2)と同様に間隔Dを測定する。(4)間隔DA1B1−1〜DANBN−kの相加平均値を平均間隔Daveとして定義する。但し、Nは5以上10以下、kは4以上6以下とする。なお、第1の領域の中心とは、例えば、図16の場合を例にとれば、図16中の矢印にて指示している部分であり、隣接する矢印間の距離が上記間隔(図16中のD1及びD2で示す)である。
光学基板PP10を、光学顕微鏡を使用し、凹凸構造面側よりみた場合に観察される模様Xの平均間隔Daveは、凹凸構造20の平均ピッチP’aveよりも大きな範囲内において、光取り出し効率LEEを向上させる観点から800nm以上であると好ましい。特に、光学的散乱性(光回折或いは光散乱)を強くし、導波モードを効果的に乱す観点から、1000nm以上であることが好ましく、1100nm以上であることがより好ましく、1200nm以上であることが最も好ましい。一方、上限値は光学的散乱点数を増加させる観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。特に、5μm以下であることにより、光回折性が強く発現されるため、凹凸構造20を構成する複数の凸部20aの集合により描かれ、光学顕微鏡によってはじめて観察される、実体としては存在しない模様Xによる導波モードを乱す効果がより大きくなるため好ましい。
以上説明したように、模様Xは、凹凸構造20により描かれるものであり、光学顕微鏡により観察される模様Xの明暗の差により定義づけられる。また、模様Xは、鮮明さ、配置、輪郭形状、大きさ、或いは、間隔等により特徴づけることができる。これらの因子の組み合わせにより、模様Xとしての機能である、新たな光学的散乱性の付与程度が変化する。ここで、模様Xにより光取り出し効率LEEが向上する理由は、模様Xにより発現される光学的散乱性である。即ち、模様Xを所定の模様(配置や輪郭形状、鮮明さ等)にすることで、光取り出し効率LEEの向上程度が変化すると考えられる。また、模様Xは光により認識される平面的パタンであり、実体としては存在しない。しかしながら、模様Xは凹凸構造20を作る要素の変化により描かれるものと推定されるのだから、半導体発光素子を製造する際の半導体結晶層は、この凹凸構造20の要素の変化を感じ取ることとなる。即ち、半導体発光素子を製造する観点から、凹凸構造20の要素の変化のさせ方に対しても、より好適な範囲があると考えられる。
光から見た模様Xと、模様Xにより発現される光学的散乱性による光取り出し効率LEEについて、光学シミュレーション(FDTD法、及びRCWA法)を適用させて計算したところ、有効屈折率Nemaの分布という視点に立てば、規則性が高く、一般的回折格子に近い形状の模様Xを含むことで、発光光がより、半導体発光素子の外部へと取り出されることがわかった。一方で、半導体結晶層の成膜(成長)に関し、ランダムウォークを仮定して、半導体結晶層の核を計算により降り積もらせたところ、規則性の高い凹凸構造20の要素の変化により、半導体結晶層の成膜性が安定することがわかった。
以上から、光学顕微鏡により観察される模様Xとしては、規則性の高いものを含むことがより好ましいことがわかった。ここで、光から見た規則性に注目すると、所定の光に対する回折格子としての機能が重要であると考えることが出来る。即ち、所定の波長を有すレーザ光線を、光学基板PP10に対して照射した際に、光学基板PP10を透過して出光するレーザ光線が、スプリットすることが好ましい。この点について、より詳細に説明する。
まず、系としては以下の条件を採用する。
・レーザ光線
波長640nm〜660nm、525nm〜535nm、又は、460nm〜480nmの3種類のレーザ光線をそれぞれ使用する。ここで、波長がλ1〜λ2のように範囲を有しているのは、このような波長分布を有すレーザ光を使用することを意図するのではなく、中心波長をλcとした場合にλ1〜λc〜λ2の関係を満たすレーザ光線を使用することを意味する。例えば、波長が650nm、532nm、そして473nmのレーザ光線をそれぞれ採用すればよい。なお、簡易的には、赤色、緑色、及び青色のレーザポインタをレーザ光線として使用できる。
・レーザ光線の照射方法
光学基板PP10の凹凸構造20のある面に対して垂直に入射させる。ここで、入光面とレーザ光線の出射部と、の距離は、50mmとする。
・出光するレーザ光線
光学基板PP10の、レーザ光線の入光面とは反対側の面より出光するレーザ光線が、出光するレーザ光線(以下、出光光とも呼ぶ)である。ここで、光学基板PP10の出光面に平行で、且つ、出光面から150mm離れた位置にスクリーンを設ける。このスクリーンに映し出された出光光のパタンを観察する。なお、観察を容易にするために、上記観察は暗室にて行う。
上記条件にてスクリーンに映し出される出光光を観察した際に、出光するレーザ光線が少なくとも2以上にスプリットすることが好ましい。出光光がスプリットしない場合とは、スクリーン上には、1つの光点のみが映し出される状態である。一方で、出光光がX個にスプリットするとは、スクリーン上に映し出された光点の数がX個(X≧2)であることを意味する。即ち、入射するレーザ光線の軸上に存在する出光光の光点も含むものとする。また、X個にスプリットされる場合とは、以下の1〜3のいずれかのケースである。
1.スクリーン上のある直線A上にX個の光点が並ぶ状態
2.スクリーン上のある直線Aと、該直線Aに垂直なスクリーン上の直線B上に、それぞれ光点が並ぶ状態
3.スクリーン上のある直線Aと、該直線Aを60度右に回転させたスクリーン上の直線Bと、該直線Bを更に60度右に回転させたスクリーン上の直線C上に、それぞれ光点が並ぶ状態
ここで、2以上にスプリットする状態は、レーザ光が、光学基板PP10の模様Xにより、回折していることを意味する。即ち、光の進行方向を変化させる能力が大きい、換言すれば、光取り出し効率LEEを向上させる能力が大きいことを意味する。同様の観点から、少なくとも3以上にスプリットすることが好ましく、5以上にスプリットすることがより好ましく、9以上にスプリットすることが最も好ましい。
なお、上記観察は、波長640nm〜660nm、525nm〜535nm、又は、460nm〜480nmの3種類のレーザ光線にて試験した際に、少なくとも1以上のレーザ光線に対して観察されればよい。これは、半導体発光素子の屈折率と発光主波長は、半導体発光素子により異なるためである。
次に、凹凸構造20と模様Xの関係について説明する。模様Xは光学顕微鏡により観察され、凹凸構造20は走査型電子顕微鏡により観察される。模様Xは凹凸構造20の集合により描かれるため、模様Xの観察される像を順次拡大していくと、やがて凹凸構造20を観察することができる。例えば、光学顕微鏡により模様Xを観察し、観察された模様Xに相当する位置を、走査型電子顕微鏡を用いより高倍率にて観察することで、凹凸構造20を観察することができる。凹凸構造20を構成する複数の凸部20aが上述の凹凸構造群を形成すること、即ち凹凸構造20が集合化することで、光学基板PP10を凹凸構造面側より光学顕微鏡を使用し観察した場合に、模様Xが観察されれば、内部量子効率IQEを向上し、且つ光取り出し効率LEEを改善できるため、凹凸構造20を構成する凸部20aの形状や配列は特に限定されない。なお、凹凸構造20のより好ましい形態については、追って説明する。
走査型電子顕微鏡を使用し観察される凹凸構造群により、光学顕微鏡を使用し模様Xを観察可能とするためには、模様Xにおける明暗の異なる部分の凹凸構造20が互いに異なる必要がある。ここで、凹凸構造20が互いに異なるとは、以下に説明する凹凸構造20を構成する凸部20aの要素(例えば、ピッチ、高さ、凸部底部幅等)が異なることを意味する。例えば、図15を例に説明する。図15においては、光学基板PP10を凹凸構造面側より光学顕微鏡を用い見た場合に観察される模様Xを構成する第2の領域Xb及び第1の領域Xaと、が共にグラデーションがかっており、第2の領域Xbから第1の領域Xaへと徐々に明暗が変化する場合である。ここで、図15中の矢印A、矢印B及び矢印Cにて指示した部分は、光学基板PP10を凹凸構造面側よりみた場合に観察される模様Xの明暗の異なる部分である。このような明暗の差は、走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造20を構成する要素の差によって実現できる。例えば、図15中の矢印Aにて示される部分の凹凸構造20のピッチをP’a、矢印Bにて示される部分の凹凸構造20のピッチをP’b、矢印Cにて示される部分の凹凸構造20のピッチをP’c、と表記した場合、表1に示すように、P’a>P’b>P’cや、P’a<P’b<P’cといった凹凸構造20の違いにより模様Xを作ることができる。即ち、走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造20の要素の違いにより、光学基板PP10を光学顕微鏡により凹凸構造面側から見た場合に模様Xが観察される。なお、ピッチP’が異なる場合は、凹凸構造20の配列が異なる場合を含む。同様に、図15の矢印A、矢印B、及び矢印Cにて示される部分の凹凸構造20の高さ(深さ、以下同様)を、それぞれHa、Hb、及びHcと表記した場合、表1に示すように、Ha>Hb>HcやHa<Hb<Hcといった凹凸構造20の違いにより模様Xを作ることができる。また、図15の矢印A、矢印B、及び矢印Cにて示される部分の凹凸構造20の凸部底部外接円径を、それぞれφout_a、φout_b、及びφout_cと表記した場合、表1に示すように、φout_a>φout_b>φout_cやφout_a<φout_b<φout_cといった凹凸構造20の違いにより模様Xを作ることができる。なお、上記説明においては、凹凸構造20を構成する要素が単独で変化することにより模様Xを観察可能にした場合を説明したが、凹凸構造20を構成する要素が複数同時に変化してもよい。複数同時に変化する場合、凹凸構造20の体積変化が大きくなるため、模様Xの鮮明さ及び第1の領域Xaと第2の領域Xbと、の色味の差が増加し、光取り出し効率LEEをより改善することができる。例えば、凹凸構造20のピッチP’と高さ(深さ)H、凹凸構造20のピッチP’と凸部底部外接円径φout、凹凸構造20のピッチP’、高さH及び凸部底部外接円径φout、等が挙げられる。また、複数の要素が同時に変化する場合、それらの要素の変化に対する相関係数は正であっても負であってもよい。例えば、ピッチP’と高さHと、が同時に変化する場合、ピッチP’の増加に伴い高さHが減少しても、逆に高さHが増加してもよい。
ここで、凹凸構造20の要素の相違について検討した結果を記載する。凹凸構造20の要素の代表例として、ピッチP'、高さH、及び凸部底部外接円径φoutの三種類を選定した。これら3つの要素のそれぞれに対して、走査型電子顕微鏡観察から要素の相違を定量化し、光学顕微鏡観察から模様Xを観察して、その明暗を観察した。結果、いずれの要素を選定した場合であっても、差異が5nm以上あれば、模様Xが観察されることがわかった。より具体的には、光学顕微鏡により観察される模様Xにおける第1の領域Xaを作る、走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造20のピッチをP’(Xa)、高さをH(Xa)、そして凸部底部外接円径をφout(Xa)とし、第2の領域Xbを作る走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造20のピッチをP’(Xb)、高さをH(Xb)、そして凸部底部外接円径をφout(Xb)とすれば、|P’(Xa) ― P’(Xa)|≧5nm、|H(Xa) ― H(Xb)|≧5nm、又は|φout(Xa) ― φout(Xb)|≧5nmを満たすことで、模様Xが観察可能であり、光学的散乱性の効果を発現することが確認された。特に、1つの要素のみが変動する場合は、要素の差異は10nm以上あることが好ましい。一方で、2以上の要素が同時に変動する場合、例えば、ピッチP’と高さH、高さHと凸部底部外接円径φout、ピッチP’と高さHと凸部底部外接円径φoutは、それぞれの要素の相違が5nm以上あれば、模様Xは鮮明に観察可能であり、且つ、光学的散乱性の効果が発現された。この結果は、以下に説明する他の要素についても同様と考えらえる。
また、複数の要素が同時に変化する場合の、それらの要素の相関係数についても確認した結果、相関係数が負である関係を満たす要素を含むことで、半導体結晶層を成膜する際の、クラックを抑制する効果が特に高くなることがわかった。より具体的には、ピッチP’と高さH(又は、凸部底部外接円径φout)が同時に変化する場合、ピッチP’の増加に伴い高さH(又は、凸部底部外接円径φout)が減少することが、クラックの観点からより好ましく、ピッチP’、高さH、及び凸部底部外接円径φoutが同時に変化する場合は、ピッチP’が増加することに伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutが減少することが、クラックの観点からより好ましいことがわかった。
一方で、光取り出し効率LEEを向上させる観点からは、少なくとも、ピッチP’と高さH、又は、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の関係は、正の相関であることが好ましい。これは、このような関係を満たすことで、凹凸構造20の要素の体積変化程度が大きくなり、これに伴い有効屈折率Nemaの分布における屈折率差が大きくなり、光学的散乱性の強度が強まるためである。特に、ピッチP’が増加することに伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutが増加することが最も好ましい。
以上から、凹凸構造20の要素の相違により模様Xを描き、これにより光学的散乱性の効果を発現させるためには、凹凸構造20の要素の差異は5nm以上あることが好ましい。また、要素が1つのみの場合は、その差異は10nm以上であることが好ましい。なお、最も好ましくは、要素が2以上であると共に、これらの要素の差異が共に10nm以上の場合である。
凹凸構造20の要素の相違は、以下に説明する凹凸構造20の要素の名称を使用すれば、特に、ピッチP’、高さH、又は、凸部底部外接円径φoutの変化を含むことが好ましい。これは、これらの要素の相違は、体積換算した際にその値が大きくなり、光学的散乱性への寄与が大きい為である。また、少なくともピッチP’の変化を含むことで、光学顕微鏡により観察される模様Xの明暗の差を大きくすると共に、半導体結晶層の成長時に生じるクラック抑制の効果が大きくなるため好ましい。また、ピッチP’と、高さH又は凸部底部外接円径φoutの変化を少なくとも含むことで、半導体結晶層に対する転位密度低減効果とクラック抑制効果、そして光取り出し効率LEEの向上がより大きくなるため、好ましい。なお、最も好ましくは、ピッチP’、高さH,及び凸部底部外接円径φoutの変化を含む場合である。この場合、転位の分散化と転位密度の低減効果、クラック抑制効果、強い光学的散乱性の効果と、が同時により改善される。なお、この場合、ピッチP’と高さH、及び、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の相関係数が負であることで、クラック抑制効果が高まる。一方で、ピッチP’と高さH、及び、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の相関係数が正であることで、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなる。これにより、内部量子効率IQEの改善を維持した状態にて、光取り出し効率LEEをより向上させることが出来る。
更に、凹凸構造20により内部量子効率IQEを改善し、且つ模様Xにより、改善された内部量子効率IQEを維持し光取り出し効率LEEを向上させる観点から、凹凸構造20の平均ピッチP’aveと模様Xの平均間隔Daveと、は平均間隔Dave>平均ピッチP’aveを満たす。即ち、走査型電子顕微鏡により観察される実体として存在する物理的な構造のオーダに比べて、光学顕微鏡を使用し観察される模様のオーダは、大きい。特に、内部量子効率IQEの改善度合いを向上させた場合であっても、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、平均間隔Dave≧2P’aveを満たすことが好ましく、平均間隔Dave≧3P’aveを満たすことがより好ましく、平均間隔Dave≧4P’aveを満たすことが最も好ましい。なお、上限値は光取り出し効率LEEの向上程度と、内部量子効率IQEの改善度維持具合により決定され、平均間隔Dave≦500P’aveを満たすことが好ましい。中でも、光学的散乱点の密度を向上させる観点から、平均間隔Dave≦100P’aveを満たすことが好ましく、平均間隔Dave≦50P’aveを満たすことがより好ましく、平均間隔Dave≦20P’aveを満たすことが最も好ましい。
なお、凹凸構造20のピッチP’及び平均ピッチP’aveは次のように定義されたものとする。図18は、本実施の形態に係る光学基板PPを、走査型電子顕微鏡を使用し、凹凸構造面側よりみた場合の凹凸構造を示す平面模式図である。図18に示すように、凹凸構造20が、複数の凸部20aが配置されたドット構造である場合、ある凸部A1の中心とこの凸部A1に隣接する凸部B1−1〜凸部B1−6の中心との間の距離P’A1B1−1〜距離P’A1B1−6を、ピッチP’と定義する。しかし、この図18に示すように、隣接する凸部によりピッチP’が異なる場合は次の手順に従い、平均ピッチP’aveを決定する。(1)任意の複数の凸部A1,A2…ANを選択する。(2)凸部AMと凸部AM(1≦M≦N)に隣接する凸部(BM−1〜BM−k)と、のピッチP’AMBM−1〜P’AMBM−kを測定する。(3)凸部A1〜凸部ANについても、(2)と同様にピッチP’を測定する。(4)ピッチP’A1B1−1〜P’ANBN−kの相加平均値を平均ピッチP’aveとして定義する。但し、Nは5以上10以下、kは4以上6以下とする。なお、ホール構造の場合、上記ドット構造にて説明した凸部を凹部開口部と読み替えることで、平均ピッチP’aveを定義することができる。
平均ピッチP’aveは、上記平均ピッチP’aveと平均間隔Daveと、の関係性を満たす範囲において、10nm以上1500nm以下であると、内部量子効率IQE及び、光取り出し効率LEEを共に大きくできる。特に、平均ピッチP’aveが10nm以上であることにより、光学基板PP10を凹凸構造面側より見た場合に観察される模様Xの明暗の変化が大きくなり、このため、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。前記効果をより発揮する観点から、平均ピッチP’aveは150nm以上であると好ましく、200nm以上であるとより好ましく、250nm以上であると最も好ましい。一方、平均ピッチP’aveが1500nm以下であることにより、凹凸構造20の密度が向上する。これに伴い、第1半導体層30内部の転位を分散化することが可能となり、局所的及び巨視的な転位密度を低減することができるため、内部量子効率IQEを大きくすることができる。前記効果をより発揮する観点から、平均ピッチP’aveは、1000nm以下であることが好ましい。特に、平均ピッチP’aveが900nm以下であることで、凹凸構造20の密度が、半導体結晶層の転位密度に対して効果的に大きくなり、転位の分散化と転位密度低減の効果がより顕著になるため好ましい。最も好ましくは、同様の効果から、800nm以下である。特に、以下に説明する高さHの好適な範囲と既に説明した平均ピッチP’aveの好適な範囲と、を同時に満たす場合、半導体結晶層に対するクラック抑制効果、半導体結晶層の使用量低減効果、そして内部量子効率IQEの改善効果が全て良好となるため、好ましい。
(凹凸構造)
次に、凹凸構造20のより好ましい態様について説明する。凹凸構造20は、凸部及び凹部を有していればよい。特に、以下の<<光学基板D>>にて説明する凹凸構造D、或いは以下の<<光学基板PC>>にて説明する凹凸構造PCであることが好ましい。これにより、光学的散乱性が強くなるので、模様Xの明暗の差が大きくなり、光取り出し効率LEEの向上が大きくなる。
凹凸構造20としては、例えば、複数の柵状体が配列したラインアンドスペース構造、複数の柵状体が交差した格子構造、複数のドット(凸部、突起)状構造が配列したドット構造、複数のホール(凹部)状構造が配列したホール構造等を採用できる。ドット構造やホール構造は、例えば、円錐、円柱、四角錐、四角柱、六角錐、六角柱、多角錐、多角柱、二重リング状、多重リング状等の構造が挙げられる。なお、これらの形状は底面の外径が歪んだ形状や、側面が湾曲した形状を含む。
なお、ドット構造とは、複数の凸部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凸部は連続した凹部により隔てられる。なお、各凸部は連続した凹部により滑らかに接続されてもよい。一方、ホール構造とは、複数の凹部が互いに独立して配置された構造である。即ち、各凹部は連続した凸部により隔てられる。なお、各凹部は連続した凸部により滑らかに接続されてもよい。中でも内部量子効率IQEをより高くする観点から、凹凸構造20はドット構造であると好ましい。これは、凹凸構造20により内部量子効率IQEを向上させるためには、凹凸構造20の密度による転位分散化を促進する必要があるためである。
凹凸構造20上に設けられる第1半導体層30にクラックが発生することを抑制するために、凹凸構造20の凸部は、凸部頂部の大きさが凸部底部の大きさよりも小さい構造であると好ましい。
特に、内部量子効率IQEを向上させるために、凹凸構造20は、ドット構造の中でも、凸部頂部に平坦面を有さない構造であると好ましい。更に、内部量子効率IQEをより向上させるために、凹凸構造20の凹部底部は平坦面を有すことがより好ましい。なお、凸部頂部に平坦面を有さない構造とは、走査型電子顕微鏡により凸部20aを観察した際に、該凸部20aの頂部の平坦面の径が10nm以下のものとして定義する。
更に、半導体結晶層へのクラックの生成と、内部量子効率IQEの改善の効果をより発現する観点から、凸部頂部から凸部底部へと、傾斜角度が2段階以上の変化をする構造がより好ましい。なお、凸部側面部の傾斜角度の変化は、凸部底部から凸部頂部へと緩やかになる変化であると最も好ましい。
凹凸構造20の凹部底部の有す平坦面と、凹凸構造20上に設けられる第1半導体層30の安定成長面に対してほぼ平行な面(以下、「平行安定成長面」と呼ぶ)と、が平行である場合、凹凸構造20の凹部近傍における第1半導体層30の成長モードの乱れが大きくなり、第1半導体層30内の転位を効果的に凹凸構造20により低減することができるため、内部量子効率IQEが向上する。安定成長面とは、成長させる材料において成長速度の最も遅い面のことをさす。一般的には、安定成長面は成長の途中にファセット面として現れることが知られている。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、M面に代表されるA軸に平行な平面が安定成長面となる。GaN系半導体層の安定成長面は、六方晶結晶のM面(1−100)、(01−10)、(−1010)であり、A軸に平行な平面の一つである。なお、成長条件によっては、GaN系半導体のM面以外の平面であるA軸を含む他の平面が安定成長面になる場合もある。
次に、凹凸構造20を構成する要素と、それらの要素のより好ましい範囲について説明する。凹凸構造20の要素として、例えば、ピッチP’,デューティ、アスペクト比、凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、凸部側面の傾斜角度、凸部側面の傾斜角度の切り替わり数、凸部底部内接円径φin、凸部底部外接円径φout、凸部高さH、凸部頂部の面積、凸部表面の微小突起数(密度)や、これらの比率、又凹凸構造の配列より類推できる情報(例えば、凹部の形状等)が挙げられる。
<高さH>
凹凸構造20の高さは、凹凸構造20の凹部底部の平均位置と凹凸構造20の凸部頂点の位置と、の最短距離として定義する。平均位置を算出する際のサンプル点数は10点以上であることが好ましい。
凹凸構造20の高さHは、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。高さHが10nm以上であることにより、第1半導体層30の成長モードを乱すことが可能となるため、転位密度が減少し、内部量子効率IQEを向上させることができる。特に、模様Xの明暗の差を大きくし、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、高さHは30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが最も好ましい。一方、1000nm以下であることにより、第1半導体層30の成膜量を減少させ、成膜時間を短縮できる。特に、500nm以下であることにより、第1半導体層30の成長に伴うクラックの発生を抑制できるため好ましい。同様の効果から、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが最も好ましい。
<凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccb>
図19は、本実施の形態に係る光学基板PPの凹凸構造面を構成する凹凸構造PPがドット構造の場合の上面図である。図19は、凹凸構造20がドット構造の場合の上面図を示している。図19中に示す破線で示す線分は、ある凸部20aの中心と該凸部20aに最近接する凸部の中心との距離であり、上記説明したピッチP’を意味する。図19中に示したピッチP’に相当する線分位置における凹凸構造PPの断面模式図を示したのが図20A及び図20Bである。
図20Aに示すように、凸部頂部幅lcvtは凸部20aの頂面の幅として定義され、凹部開口幅lcctは、ピッチP’と凸部頂部幅lcvtと、の差分値(P’―lcvt)として定義される。図20Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部20aの底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、ピッチP’と凸部底部幅lcvbと、の差分値(P’−lcvb)として定義される。
図21は、本実施の形態に係る光学基板PPの凹凸構造面を構成する凹凸構造PPがホール構造の場合の上面図である。図21中に破線で示す線分は、ある凹部20bの中心と該凹部20bに最近接する凹部の中心との距離であり、上記説明したピッチP’を意味する。図21中に示したピッチP’に相当する線分位置における凹凸構造20の断面模式図を示したのが図22A及び図22Bである。
図22は、図21中に示したピッチP’に相当する線分位置における凹凸構造PPの断面模式図である。図22Aに示すように、凹部開口幅lcctは凹部20bの開口径として定義され、凸部頂部幅lcvtは、ピッチP’と凹部開口幅lcctと、の差分値(P’−lcct)として定義される。図22Bに示すように、凸部底部幅lcvbは凸部20aの底部の幅として定義され、凹部底部幅lccbは、ピッチP’と凸部底部幅lcvbと、の差分値(P’−lcvb)として定義される。
凹凸構造20の凸部頂部幅lcvtと凹部開口幅lcctと、の比率(lcvt/lcct)は、小さい程好ましく、実質的に0であると最も好ましい。なお、lcvt/lcct=0とは、lcvt=0nmであることを意味する。しかしながら、例えば、走査型電子顕微鏡によりlcvtを測定した場合であっても、0nmは正確には計測できない。よって、ここでのlcvtは測定分解能以下の場合全てを含むものとする。比率(lcvt/lcct)が3以下であると、内部量子効率IQEを効果的に向上させることができる。これは、凸部頂部上から発生する転位が抑制され、転位の分散性が向上し、微視的及び巨視的な転位密度が低下するためである。更に、(lcvt/lcct)が1以下であることにより、光取り出し効率LEEを向上させることができる。これは光学基板PP10と第1半導体層30により作られる屈折率分布が、発光光からみて適切になるためである。上記説明した内部量子効率IQE及び光取り出し効率LEEを共に大きく向上させる観点から、(lcvt/lcct)は、0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がなお好ましい。
また、凹凸構造20の凹部20bの底部が平坦面を有すると、内部量子効率IQEを向上させると共に、半導体結晶成膜装置間の差を小さくできるため好ましい。半導体発光素子において内部量子効率IQEを向上させるためには、半導体結晶層内部の転位を分散化し、局所的及び巨視的な転位密度を減少させる必要がある。ここで、これらの物理現象の初期条件は、半導体結晶層を化学蒸着(CVD)により成膜する際の核生成及び核成長である。凹凸構造20の凹部20bの底部に平坦面を有すことで、核生成を好適に生じさせることが可能となるため、凹凸構造20の密度による半導体結晶層内の転位低減効果をより発現させることが可能となる。結果、内部量子効率IQEをより大きくすることができる。以上の観点から、凹凸構造20の凸部底部幅lcvbと凹部底部幅lccbと、の比率(lcvb/lccb)は、5以下であると好ましい。特に、凹凸構造20の凹部底部を基準面とした半導体結晶層の成長をより促進する観点から、(lcvb/lccb)は2以下がより好ましく、1以下が最も好ましい。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、上記説明した比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)を同時に満たすことが容易となり、このため、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQEと、光取り出し効率LEEを同時に大きくすることができる。
また、凹凸構造20は、ドット構造であると凸部頂部幅lcvt及び凸部底部幅lcvbの制御が容易となり、比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)同時に満たすことが容易となり、このため、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQEと、光取り出し効率LEEを同時に大きくすることができる。
<デューティ>
デューティは、凸部底部幅lcvbとピッチP’と、の比率(lcvb/P’)で表される。光取り出し効率LEEの観点からは、デューティは大きい程、即ち1に漸近する程好ましく、内部量子効率IQEの観点から、デューティは所定の値以下であることが好ましい。ここで、デューティは、0.95以下であることが好ましい。この0.95以下を満たすことにより、半導体結晶層の核の生成及び成長性が保たれるためである。更に、半導体結晶層成膜時の核の生成を良好にし、内部量子効率IQEを向上させる観点から、0.03以上0.83以下であると好ましい。0.03以上であることにより、半導体結晶層の結晶モードを乱す効果が大きくなり、内部量子効率IQEを改善できると共に、凸部の体積が大きくなることから導波モードを乱す効果が大きくなり光取り出し効率LEEを向上させることができる。同様の効果から、比率(lcvb/P’)は0.17以上であることがより好ましく、0.33以上であることが最も好ましい。一方、0.83以下であることにより、半導体結晶層の化学蒸着における核生成及び核成長を良好に行うことが可能となり、内部量子効率IQEを高めることができる。同様の効果から、比率(lcvb/P’)は0.73以下がより好ましく、0.6以下であることが最も好ましい。
<アスペクト比>
凹凸構造20がドット構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcvbを用いて、凹凸構造20の高さH/lcvbとして定義される。一方、凹凸構造20がホール構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcctを用いて、凹凸構造20の深さH/lcctとして定義される。平均アスペクト比は、アスペクト比を10点以上平均(相加平均)した値として定義する。平均アスペクト比は、0.1以上3以下であることが好ましい。平均アスペクト比が0.1以上であることにより、第1半導体層30の成長モードを乱すことが可能となるため、転位密度が減少し、内部量子効率IQEを向上させることができる。特に、模様Xの明暗の差を大きくし、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、平均アスペクト比は0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることが最も好ましい。一方、3以下であることにより、第1半導体層30の成膜量を減少させ、成膜時間を短縮できる。特に、2以下であることにより、第1半導体層30の成長に伴うクラックの発生を抑制できるため好ましい。同様の効果から、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが最も好ましい。
<凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φin>
図23は、本実施の形態に係る光学基板PPを、走査型電子顕微鏡を使用し、凹凸構造面側より観察した場合の上面像を示す説明図である。図23A〜図23Eに光学基板PP10を、走査型電子顕微鏡を使用して、凹凸構造面側より観察した場合の、凹凸構造20の上面像を示した。本実施の形態に係る光学基板PP10の凹凸構造20の凸部は撓んだ形状であってもよい。凹凸構造20を凹凸構造面側より観察した場合の凹凸構造20の輪郭(以下、凸部底部輪郭という)を、図23Aから図23Eに「A」で示す。ここで、凸部底部輪郭Aが真円ではない場合、凸部底部輪郭Aに対する内接円と外接円と、は一致しない。図23Aから図23Eにおいて、内接円を「B」で示し、外接円を「C」で示す。凸部底部輪郭Aに対する内接円Bの直径を凸部底部内接円径φinと定義する。なお、φinは、内接円Bの大きさが最大になるときの内接円Bの直径とする。なお、内接円Bは凸部底部輪郭Aより内側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより外側にはみ出すことのない円である。一方、凸部底部輪郭Aに対する外接円Cの直径を凸部底部外接円径φoutと定義する。φoutは、外接円Cの大きさが最小となる時の外接円Cの直径とする。なお、外接円Cは、凸部底部輪郭Aより外側に配置される円であり、凸部底部輪郭Aの一部に接し、且つ、凸部底部輪郭Aより内側に侵入することのない円である。
凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinとの比率(φout/φin)は、凸部底部輪郭Aの歪を表す尺度である。該比率(φout/φin)が、1以上3以下であると内部量子効率IQEの向上と、光取り出し効率LEEの向上を同時に実現できるため好ましい。比率(φout/φin)が1の場合、凸部底部輪郭Aは真円となる。この場合、凹凸構造20の設計に際し、光学シミュレーションを好適に作用させることが可能となるため、半導体発光素子の設計が容易になる。更には、半導体結晶層の成長速度の均等性が向上するため、内部量子効率IQEがより向上すると共に、半導体発光素子の欠損率が低下する。光取り出し効率LEEを向上させる観点からは、比率(φout/φin)は1超であると好ましい。一方、比率(φout/φin)が3以下であることにより、内部量子効率IQEを向上させることができる。比率(φout/φin)が大きいことは、凸部底部の径が真円から大きく撓んでいることを意味する。即ち、上記説明した、凸部底部幅lcvb及び凹部底部幅lccbが測定する方向により変化することを意味する。特に凹部底部幅lccbは、半導体結晶層の成長の基準面として重要であるため、上記説明した範囲を満たす必要がある。この観点から、比率(φout/φin)は3以下であると好ましく、2以下であるとより好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。
<凸部側面傾斜角Θ>
凸部側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造20の形状パラメータより決定される。特に、凸部頂部から凸部底部に向けて多段階に傾斜角度が変化すると好ましい。例えば、凸部側面が上に膨らんだ変曲点が1つの曲線を描く場合、傾斜角度は2つとなる。このような多段階の傾斜角度を有すことで、第1半導体層30内に発生するクラックを抑制できる。また、光学基板PP10と半導体結晶層の材質により、凸部側面の傾斜角度を、凸部側面に出る結晶面より選定することもできる。この場合、半導体結晶層の成長性が良好になるため、より内部量子効率IQEを高くできると考えられる。
なお、凹凸構造20が複数の凹部20bから構成される場合、上記「凸部底部」という文言を「凹部開口部」と読み替えることができる。
以上説明したように、光学顕微鏡により観察される模様Xは、凹凸構造20の要素の相違により形成される有効屈折率Nemaの分布により描かれると推定され、凹凸構造20の要素をパラメータにとり変化させることで、実際に模様Xを描くことが実証できた。ここで、有効屈折率Nemaの変化を生じることが模様Xを描く本質と考えることができることから、模様Xを描く方法は、実体として存在する凹凸構造20の形状や配列の相違の他に、凹凸構造20を構成する材料の種類によっても実現できると考えることが出来る。即ち、上記説明した凹凸構造20の相違を、凹凸構造20を作る物質、特に、凹凸構造20を作る物質の屈折率或いは消衰係数の相違として捉えることでも、模様Xを描くことが可能であると考えられる。特に、光学基板PP10を半導体発光素子に適用することを考えると、凹凸構造20を作る物質の屈折率の相違により模様Xを描くことが、光取り出し効率LEEを向上させる観点から好ましいと考えられる。また、物質の屈折率による相違によって、模様Xを描くことは、屈折率による光の挙動の程度の差が重要であることは想像に難くない。この観点から計算すると、凹凸構造20を作る物質の屈折率の相違により、模様Xを描くためには、屈折率の相違は0.07以上あることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。これにより、光の反射率を増加させることができるためである。特に、反射率をより大きくして、模様Xの明暗の差を強くする観点から、該屈折率の相違は0.5以上あることがより好ましいと推定される。なお、該屈折率の相違は、大きい程好ましく、1.0以上であることが最も好ましい。
次に、本実施の形態に係る光学基板PP10の製造方法について説明する。本実施の形態に係る光学基板PP10は、上記説明した条件を満たした凹凸構造20を具備すれば、その製造方法は限定されず、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等により製造することができる。特に、光学基板PP10の凹凸構造20の加工精度や加工速度の観点から、転写法を採用すると好ましい。
ここで転写法とは、表面に微細構造の観察されるモールドの、微細構造を被処理体(凹凸構造20を作製する前の光学基板PP10)に転写する工程を含む方法として定義する。ここで、モールドの微細構造の配列は、上記説明した凹凸構造20及び模様Xの配列と同様である。また、モールドは、例えば、以下に説明する<<光学基板PC>>に記載した手法により、円筒状マスターモールドを製造し、該円筒状マスターモールドのパタンを転写することでも製造出来る。即ち、モールドの微細構造と被処理体と、を転写材を介して貼合する工程と、モールドを剥離する工程と、を少なくとも含む方法である。より具体的に、転写法は2つに分類することができる。
第1に、被処理体に転写付与された転写材を永久剤として使用する場合である。例えば、主面が、サファイア、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、又は透明導電膜(ITO等)のいずれかである基板本体の主面上に、SiO2、ITO、ZnO、TiO2、又はSnO等を主成分とする永久材を付与することが出来る。この場合、光学基板PP10の本体と凹凸構造20を構成する材料は異なることとなる。また、凹凸構造20は永久剤として残り、半導体発光素子として使用されることを特徴とする。半導体発光素子は、数万時間と長期に渡り使用することから、転写材を永久剤として使用する場合、転写材を構成する材料は、金属元素を含むと好ましい。特に、加水分解及び重縮合反応を生じる金属アルコキシドや、金属アルコキシドの縮合体を原料に含むことにより、永久剤としての性能が向上するため好ましい。なお、転写材に2以上の材料を混合したものを使用し、それらの材料の屈折率差を設計すると共に、相分離を利用することで、上記説明した凹凸構造20を作る物質の屈折率の相違による模様Xの描画が可能と考えられる。
第2に、ナノインプリントリソグラフィ法が挙げられる。ナノインプリントリソグラフィ法は、モールドの微細構造の配列を被処理体上に転写する工程と、エッチングにより被処理体を加工するためのマスクを設ける工程と、被処理体をエッチングする工程と、を含む方法である。例えば、転写材を1種類用いる場合、まず被処理体とモールドと、を転写材を介して貼合する。続いて、熱や光(UV)により転写材を硬化させ、モールドを剥離する。転写材から構成される凹凸構造に対して酸素アッシングに代表されるエッチングを行い、被処理体を部分的に露出させる。その後、転写材をマスクとして、エッチングにより被処理体を加工する。この際の加工方法としては、ドライエッチングとウェットエッチングを採用できる。凹凸構造20の高さを高くしたい場合はドライエッチングが有用である。また、例えば転写材を2種類用いる場合、まず被処理体上に第1転写材層を成膜する。続いて、第1転写材層とモールドと、を第2転写材を介し貼合する。その後、熱や光(UV)により転写材を硬化させ、モールドを剥離する。第2転写材から構成される凹凸構造に対して酸素アッシングに代表されるエッチングを行い、第1転写材を部分的に露出させる。続いて、第2転写材層をマスクとして、第1転写材層をドライエッチングによりエッチングする。その後、転写材をマスクとして、エッチングにより被処理体を加工する。この際の加工方法としては、ドライエッチングとウェットエッチングを採用できる。凹凸構造20の高さを高くしたい場合はドライエッチングが有用である。
また、転写法としてマスク層とレジスト層と、を予め具備したナノ加工用部材であるナノ加工用シートを製造し、該シートを使用する方法を採用できる。ここで、ナノ加工用シートとは、モールドの微細構造の凹部内部にマスク層を充填配置し、マスク層の充填されたモールドの微細構造面上に、微細構造を平坦化するようにレジスト層を成膜したシートである。ナノ加工用シートを被処理体に貼合する工程と、モールドを剥離する工程と、を少なくともこの順に含むことで、被処理体/レジスト層/マスク層から構成される積層体を得ることができる。得られた積層体のマスク層面側から第1ドライエッチング処理を行い、部分的に被処理体を露出させる。ここで、第1ドライエッチング処理として、酸素を使用した酸素アッシングを採用できる。次に、ドライエッチング或いはウェットエッチングにより被処理体をナノ加工することができる。特に、ドライエッチングを採用することで、被処理体上にアスペクト比の高いナノ構造を付与することができる。例えば、被処理体がサファイア基板の場合、ドライエッチングに使用するガスとして、Cl2ガス、BCl3ガス、或いはCl2ガスとBCl3ガスの混合ガスを使用できる。また、これらのガスにArを添加してもよい。この様なナノ加工用シートを使用することで、被処理体の面内加工均等性が向上する。ナノ加工用シートを構成するマスク層としては、Ti、Si,Zr等の金属元素を含むことでき、金属アルコキシドやシランカップリング材を選定できる。また、レジスト層としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を採用できる。
以上説明したように、転写法を採用することで、モールドの微細構造配列を被処理体に反映させることができるため、良好な光学基板PP10を得ることができる。
即ち、本実施の形態に係るインプリントモールドは、モールド本体と、前記モールド本体の主面に設けられた微細構造と、を具備する、表面に前記微細構造の配列が転写された光学基板PP10を作製するために使用するモールドであって、前記主面上に光学顕微鏡によって10倍〜5000倍の範囲内のいずれかの倍率で観察可能な模様が描かれていること、前記模様の間隔は、前記凹凸構造のピッチよりも大きいこと、及び、前記模様の光学顕微鏡像において、前記模様は、明暗の差によって第1の領域及び第2の領域に識別でき、前記第1の領域は複数であり、且つ、互いに間隔を隔てて配置され、前記第2の領域は前記第1の領域の間をつないでいることを特徴とする。
ここで、微細構造の配列は、上記凹凸構造20を微細構造で読み替えたものを採用できる。特に、上記凹凸構造20におけるホール状構造が好ましい。また、モールドに観察される模様の定義は、上記説明した内容において、凹凸構造20を微細構造と、光学基板PP10をモールドと、読み替えることで定義できる。また、光学基板PP10と同様にレーザ光線を使用した観察を行った際に、レーザ光線が2以上にスプリットすることが好ましい。
インプリントモールドの材質は特に限定されず、ガラス、石英、サファイア、ニッケル、ダイヤモンドや、フレキシブルな樹脂を使用することができる。中でも、フレキシブルなモールドを使用することで、モールドの微細構造の転写精度が向上し、光学基板PP10の凹凸構造精度が向上するため好ましい。特に、転写精度をより向上させる観点から、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素を含有する樹脂、メチル基を含む樹脂のいずれかから構成されることが最も好ましい。
半導体発光素子を製造する場合、本実施の形態に係る光学基板PP10を準備する工程と、光学基板PP10に対し光学検査を行う工程と、光学基板PP10を使用し半導体発光素子を製造する工程と、をこの順に含むと好ましい。
既に説明したように、本実施の形態に係る光学基板PP10は、凹凸構造20により作られる模様Xを観察することができる。このため、光学基板PP10を準備した後に光学検査を行うことにより、凹凸構造20及び模様Xの精度を事前に把握することが可能となる。裏を返せば、電子線を使用するような高度な解析を行わずとも、一般的な光学顕微鏡観察にて、凹凸構造20の精度を判断することが出来る。例えば、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に向上させるために、サファイア基板に凹凸構造20(模様X)を付与した場合、該サファイア基板に対して光学検査を行い、光学検査の散乱成分を評価することで、凹凸構造20(模様X)の精度を把握することができる。このため、事前に、作製されるLED素子の性能ランクの目途をつけることが可能となる。また、使用できない光学基板の篩い分けもできるため、歩留りが向上する。
ここで光学検査は、光学基板PP10の模様Xの定義に使用する光学顕微鏡観察の他に、透過測定及び反射測定のいずれを用いても測定することができる。透過測定の場合、透過光の散乱成分を検知すればよい。このため、散乱成分を直接評価しても、ヘーズ(Haze)を利用してもよい。特に、ヘーズの場合、公知市販の装置を転用できるため好ましい。ヘーズは、光源により照射され試料中を透過した光の全透過率T及び試料中及び試料表面で拡散され散乱した光の透過率Dより求められ、ヘーズ値H=D/T×100として定義される。これらはJIS K 7105により規定されており、市販の濁度計(例えば、日本電色工業社製、NDH−10.025DP等)により容易に測定可能である。ヘーズの本質は、透過光の散乱成分であるため、光学基板PP10に対し光を入射した際に、透過した光の散乱成分を検知するものであれば、凹凸構造20と模様Xと、の関係を光学検査として定量化することが可能である。特に、入射光は垂直入射ではなく、所定の角度により入射させると好ましい。
一方、反射測定の場合、正反射成分及び拡散反射成分のいずれを用いてもよい。正反射成分を利用することにより、凹凸構造20の輪郭形状の精度を評価することが可能となり、拡散反射成分を利用することにより、凹凸構造20の体積分布精度を評価することが可能となる。いずれを採用するかは、使用する凹凸構造20と目的により適宜選択することができる。また、拡散反射成分と正反射成分との比率や、(拡散反射成分―正反射成分)、(拡散反射成分―正反射成分)/正反射成分、(拡散反射成分―正反射成分)/拡散反射成分等を使用することもできる。
上記光学検査においては、光源の波長を、凹凸構造20の平均ピッチP’aveより大きくすることで、模様Xの効果を抽出することができる。これは、模様Xの効果を純粋に評価することを意味するため、より高い精度の管理が可能なことを意味する。また、反射測定においても、出力を大きくするために、斜入射にて測定すると好ましい。
<<光学基板D>>
本実施の形態である光学基板Dの概要について説明する。既に説明したように内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEの向上、及び電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEの向上は、互いにトレードオフの関係にある。ここで、これらのトレードオフの関係は、いずれも「ナノオーダの構造」と「マイクロオーダの構造」といったオーダの違いに起因することに着目した。
半導体発光素子においては、ナノオーダの構造により内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを向上させることが可能であり、一方でマイクロオーダの構造による光学的散乱性(光散乱或いは光回折)を利用し光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。ここで、光の波長よりも十分に小さな凹凸構造は、光からみて平均化(有効媒質近似)され、有効屈折率Nemaを有す薄膜として機能する。この為、ナノオーダの凹凸構造を設けても、光学的散乱性は非常に小さくなり、光取り出し効率LEEの向上程度は限定される。
ここで、所定のサイズ及び配列を有する凹凸構造が乱れを含む場合、光源の波長が凹凸構造の大きさよりも十分に大きな有効媒質近似下における光学検査を行った場合であっても、光学的散乱性が検知されることを発見し、着目した。これは、有効屈折率Nemaを有す薄膜が、凹凸構造の乱れに応じて屈折率の分布を有すため、光から見た場合、恰も該屈折率分布に応じた媒質があるように見えるためと考えられる。既に説明した用語を用いれば、実体として存在する凹凸構造に対して乱れを加えることで、光が認識可能な、実体として存在する凹凸構造よりも大きなオーダの光学的なパタンが生成するため、ナノオーダの凹凸構造であっても、光学的散乱性を発現する。
又、光の波長が凹凸構造の大きさと同程度以下といった有効媒質近似下にない凹凸構造の場合、凹凸構造に乱れを加えることで、凹凸構造1つ1つといった微視的オーダにおいて生じる光回折に複数のモードを加えることが可能になると考えられる。このため、数十マイクロメートル以上といった巨視的オーダにおいては、複数のモードによる光回折の平均的光学挙動が観察されるため、光散乱性を奏すことを見出した。即ち、凹凸構造に乱れを加えることで、導波モードを乱す効果の大きい光散乱性を利用することが出来るため、光取り出し効率LEEをより向上させることが可能となる。
即ち、光からみて凹凸構造が十分に小さい場合であっても、同程度〜数十倍程度の凹凸構造であっても、乱れを含むことで光散乱性を奏すことが可能となる。この為、乱れの小さい凹凸構造に応じた機能(凹凸構造による内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上)と、乱れにより新たに加わる機能(乱れによる光学的散乱性を利用した光取り出し効率LEEの向上)を、同時に発現することが可能となる。特に、凹凸構造による内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを向上させるためには、光学検査における有効屈折率Nemaとしての分布を所定の範囲とすることが重要であると考えられ、その為には、凹凸構造に乱れを加えることが効果的であることを見出し、本実施の形態である光学基板Dを完成するに至った。
本実施の形態において、「凹凸構造が乱れを含む」には、2つの態様が考えられる。
一つめの態様は、凹凸構造の要素の少なくとも1つが規則性又は均質性を有すると共に、他の凹凸構造の要素の少なくとも1つに不規則性又は不均質性がある場合である。
二つめの態様は、凹凸構造が、凹凸構造の要素の少なくとも1つが規則性又は均質性を有する主たる部位の他に、凹凸構造の要素が主たる部位と異なっている部位(以下、特異部位)を含むことをいう。
言い換えれば、本発明において「凹凸構造が乱れを含む」とは、本来の凹凸構造に応じた機能、或いは光学現象を発揮する凸部又は凹部の構造或いは配列(以下、基本構造と呼ぶ)を有すると共に、当該基本構造からずれた凸部又は凹部の構造或いは配列であって基本構造とは異なる光学現象を発揮するもの(以下、特異構造と呼ぶ)を有することをいう。
上述の一つめの態様においては、規則性又は均質性を有する凹凸構造の要素が基本構造に相当し、不規則性を有する凹凸構造の要素が特異構造に相当する。
また、上述の二つめの態様においては、主たる部位が基本構造に相当し、特異部位が特異構造に相当する。
ここで凹凸構造の要素とは、凹凸構造の凸部又は凹部の構造(寸法、形状等)、又は、凸部又は凹部の配列等を決定する条件である。
凹凸構造の要素は、例えば、以下に列挙するものあることが好ましく、1つであっても2つ以上であっても良い。なお、以下の用語は、<光学基板PP>にて既に説明した定義に従うものである。
凹凸構造の凸部の高さH、
凹凸構造の凸部底部の外径、
凹凸構造のアスペクト比、
凹凸構造の凸部底部外接円径φout、
凹凸構造の凸部底部内接円径φin、
凹凸構造の凸部底部外接円φoutと凹凸構造の凸部底部内接円径φinと、の比率、
凹凸構造のピッチP’、
凹凸構造のデューティ、
凹凸構造の凸部の側面の傾斜角度、及び、
凹凸構図の凸部の頂部の平坦面の面積
凹凸構造を作る物質の屈折率
即ち、本発明の光学基板Dは、表面に凹凸構造Dを具備する光学基板であって、凹凸構造Dの平均ピッチは50nm以上1500nm以下であると共に、凹凸構造Dが乱れを含み、乱れの要因となっている凹凸構造Dの要素の分布の標準偏差及び相加平均は、下記式(1)の関係を満たす。
0.025≦(標準偏差/相加平均)≦0.5 (1)
即ち、光学基板Dの凹凸構造Dは、上記例示した凹凸構造Dの要素の群から選ばれる少なくとも1以上の要素が、上記式(1)を満たす乱れを有すと共に、凹凸構造Dの平均ピッチが所定の範囲内にあることを特徴とする。
これにより、まず凹凸構造Dの平均ピッチが所定の範囲内にあることから、凹凸構造の密度を高くすることが出来る。よって、<<光学基板PP>>にて説明したのと同様の原理から、内部量子効率IQEが向上する。或いは、半導体発光素子の界面位置に凹凸構造Dを設けた場合であっても、凹凸構造Dは高密度であることから、半導体発光素子の各層の物性を損なうことなく、界面の接触面積を増大させることが出来る。これにより、例えば、オーミックコンタクト性が良好となり、電子注入効率EIEが向上する。ここで、上記式(1)に示される乱れを含むことから、高密度な凹凸構造であるにもかかわらず、半導体発光素子の発光光に対して光学的散乱性を奏すことが可能となる。よって、内部量子効率IQE又は電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEと、を同時に改善することが出来る。
まず、本実施の形態にかかる光学基板Dを使用する効果について概説する。半導体発光素子を製造する際には、高密度な基本構造である凹凸構造Dにより、内部量子効率IQEの改善、半導体結晶層へのクラック発生の低減、及び半導体結晶層使用量の低減といった効果を発現する。そして、半導体発光素子を使用する際には、特異構造により、発光光が認識可能な有効屈折率Nemaの分布を形成し、光学的散乱性を発現させて、光取り出し効率LEEが改善される。繰り返しになるが、乱れを含まない、即ち特異構造を含まない高密度な凹凸構造を使用した場合、前述の半導体発光素子を製造する際の効果は発現されるが、使用する際の効果の発現程度は限られる。逆に、光学的散乱性の大きな体積変化の大きな凹凸構造を使用した場合は、前述の半導体発光素子を使用する際の効果は発現されるが、製造する際の効果の程度は限定される。換言すれば、本実施の形態に係る光学基板Dは、半導体発光素子の製造時に発現する機能と、半導体発光素子を使用する際に発現する機能を、基本構造と特異構造により、機能分離している。これにより、従来同時実現することが困難であった、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善できる。
本発明の光学基板Dを半導体発光素子に使用することで、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEが同時に向上する。その理由は以下の通りである。
内部量子効率IQEは、光学基板Dの格子定数と半導体結晶層の格子定数と、の不整合(格子不整合)により発生する転位により減少する。ここで、光学基板Dの表面に転位密度と同程度以上の密度を有す高密度な凹凸構造を設けた場合、半導体結晶層の結晶成長モードを乱すことが可能となり、半導体結晶層内の転位を凹凸構造Dに応じて分散化することが出来る。即ち、微視的にも巨視的にも転位密度を低減することができる。この為、内部量子効率IQEを向上させることが可能となる。
電子注入効率EIEは、ショットキー障壁によるコンタクト抵抗の増大により低下する。光学基板Dが、少なくとも2層以上の半導体結晶層と発光半導体層とを積層して構成される積層半導体層を有する半導体発光素子の最表面に設けられることにより、その表面に構成される透明導電膜又は電極パッドとの接触面積が凹凸構造Dの比表面積に応じ増大し、コンタクト抵抗を低減することが可能である。このため、オーミックコンタクトが向上し、電子注入効率EIEを向上させることが出来る。
しかしながら、内部量子効率IQEを向上させるためにも、電子注入効率EIEを向上させるためにも、ナノオーダの微小な凹凸構造が必要となる。凹凸構造の密度や比表面積を向上させる程、発光光の波長から見た凹凸構造の大きさは小さくなるため、光学的散乱効果が減少する。即ち、導波モードを乱す効果が弱まる為、光取り出し効率LEEの向上程度が小さくなる。
ここで、本発明者らは、基本となる凹凸構造に乱れを加えることで、即ち、基本構造と特異構造と、を同時に含む凹凸構造Dを使用することで、本来の凹凸構造、即ち基本構造により発現される機能(高密度な凹凸構造による内部量子効率IQEの向上、或いは電子注入効率EIEの向上)に、凹凸構造の乱れ、即ち特異構造に応じた新たな光学現象(光回折や光散乱)を付加できることを見出した。即ち、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを向上させ(本来の機能)、且つ、凹凸構造の乱れに応じた新たな光学現象(光回折或いは光散乱)を適用することが可能となるため、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。以下、本原理について実際の検討を含め詳述する。
凹凸構造の大きさに対して光の波長が同程度以下の場合、光学現象としては光回折が生じる。一方、光の波長が十分に大きければ有効媒質近似的作用が働く。
前者の場合、凹凸構造1つ1つといった微視的オーダにおいては光回折が生じることとなり、乱れが実質的にない凹凸構造、即ち基本構造のみの場合、光回折のモード数が限定される。即ち、導波モードを乱す回折点数が限定されることとなる。一方、凹凸構造が乱れを有する場合、即ち、基本構造に対して特異構造を含めた場合、乱れに応じて光回折のモードの数が増加すると考えられる。即ち、数十マイクロメートル以上といった巨視的オーダにて観察した場合、複数の光回折モードによる出光の平均的光が観察されるため、乱れを含む凹凸構造は光散乱性を奏すこととなる。このような光散乱性は導波モードを乱す効果が大きい為、光取り出し効率LEEを大きく向上させることが出来る。
例えば、波長が550nmの光からみて、平均ピッチP’aveが460nmの六方格子状に配列した複数の凸部と凹部から構成される凹凸構造は、平均ピッチP’aveに応じた光回折を生じることとなる。この為、目視観察を行った結果、基本となる凹凸構造による回折光に応じた虹色のギラツキを観察することが出来た(以下、「本来の光学現象」ともいう)。次に、該凹凸構造に所定の乱れを加えた。この場合、基本となる凹凸構造による本来の光学現象(光回折現象)に加え、凹凸構造の乱れ、即ち特異構造に応じた散乱成分(以下、「新たな光学現象」ともいう)を更に含むことが確認できた。ここで、平均ピッチP’aveと同程度であり光回折を生じる波長(例えば、550nm)の光を用い光学検査した結果、特異構造を実質的に含まない凹凸構造を対象とした場合に比べ、特異構造を含む凹凸構造を対象にした場合の散乱性(ヘーズ及び拡散反射強度)がより強くなることが確認された。これは、波長550nmの光から見た場合、凹凸構造の凸部は回折点として機能するが、基本構造は、凸部の配列規則性又は凸部の輪郭形状の均等性が高いため、回折モード数は配列により限定される。一方、凹凸構造に乱れを含む場合、特異構造に応じ回折モード数は増大し、又分散を含むためと考えられる。例えば、平均ピッチP’aveが300nmの複数の凸部が正六方格子状に配列したサファイア基板(基本構造)に対するヘーズは、平均ピッチP’aveが300nmの複数の凸部が正六方格子状に配列し、且つ1%の割合で分散した高さが0nmの凸部(特異部位)を含むサファイア基板のヘーズの0.5倍であった。
又、460nmの平均ピッチP’aveに対して、±10%の変調を周期4600nmにて加えた場合、即ち、ピッチP’が414nm〜506nmの間で段階的に変化し、その周期が4600nmの特異構造を含む場合、新たな光学現象である散乱成分が回折格子に寄ることが確認された。即ち、目視観察を行えば、平均ピッチP’aveに応じた本来の光学現象(回折点による光回折)による虹色のギラツキに加え、ピッチP’の分布により作られる回折格子に寄る新たな光学現象(回折格子による光回折)を更に観察することが出来た。この為、白色の蛍光灯を透かして観察した場合、平均ピッチP’aveに応じたギラツキの中に、回折格子による光のスプリット現象を新たに観察することが出来た。また、上記<光学基板PP>にて説明したレーザ光線のスプリット現象も観察することが出来た。特に、上記ピッチP’の変調を1次元方向にのみ生じさせた場合には、出光するレーザ光線のスプリットは、ある一つの軸上に配列し、2次元方向に生じさせた場合は、60度の回転角をなす3つの軸上に配列することが確認された。
又、平均ピッチP’aveが460nmの六方配列状パタン(基本構造)に対して1%の割合で凹凸構造の凸部が欠落した凹凸構造(特異部位)を作製したところ、該凸部(特異部位)が散乱点として機能すると考えられ、新たな光学現象として散乱性が確認された。即ち、目視観察を行えば、平均ピッチP’aveに応じた本来の光学現象(光回折)によるギラツキに加え、散乱点に応じた新たな光学現象(光散乱)を観察することが出来た。この為、本来の光学現象である光回折によるギラツキは、新たな光学現象である散乱により和らげられ、濁りを伴っていた。
乱れが実質的にない凹凸構造、即ち基本構造のみの場合、均等な有効屈折率Nemaが形成されることから、光学的散乱性は限りなく小さくなる。一方で、凹凸構造が乱れを有す場合、即ち、基本構造に対して特異構造を含めた場合、有効屈折率Nema内に凹凸構造の乱れに応じた分布を加えることが可能と考えられる。この為、光は、恰も、該分布に応じた外形を有す有効屈折率Nemaを有す媒質が存在するかのように振る舞うため、該分布に応じた光学現象(光回折或いは光散乱)を新たに発現することが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることができる。裏をかえせば、凹凸構造の乱れは、光学的散乱成分として現れることを意味している。
例えば、波長が550nmの光からみて、平均ピッチP’aveが200nmの六方格子状に配列した複数の凸部及び凹部から構成される基本構造は、有効媒質近似的作用により平均化される。該凹凸構造を透明な基板上に設け、目視観察を行ったところ、反射光の極めて少ない透明な基板を観察することが出来た。これは一般的に無反射膜やモスアイ構造と呼ばれるものである。これは、光の波長より十分に小さい凹凸構造は、有効媒質近似作用により、光から見て平均化される為である。ここで、該凹凸構造が乱れを含む場合、光学現象(反射防止効果)に加え、新たな光学現象として散乱成分を更に含むことを確認した。即ち、特異構造を実質的に含まない凹凸構造に対し、平均ピッチP’aveよりも十分に大きな波長(例えば、550nm)の光を用い光学検査を行った結果、散乱成分が極めて小さくなることが確認された。これは、有効媒質近似作用が働き、有効屈折率Nemaを有する薄膜に対する光学検査と同等になるためと考えられる。一方、特異構造を含む凹凸構造を測定対象にすることにより、散乱成分が増加することが確認された。これは、有効屈折率Nemaに特異構造に応じた分布が加わるため、凹凸構造の乱れに応じた外形を有する有効屈折率Nemaの媒質を測定しているように、光学検査に使用する光は振る舞うためと考えられる。例えば、平均ピッチP’aveが200nmの正六方格子状に配列した凸部(基本構造)に対するヘーズは、平均ピッチP’aveが200nmであり六方格子と四方格子の間の配列をランダムに含む凸部(特異構造を含む凹凸構造)に対するヘーズに対して、0.89倍であった。
又、波長750nmの測定光に対する正反射強度は、平均ピッチP’aveが200nmの正六方格子状に配列した凸部(基本構造)に対する場合は、平均ピッチP’aveが200nmであり六方格子と四方格子をランダムに含む凸部(特異構造を含む凹凸構造)に対する場合の0.31倍であった。
又、200nmの平均ピッチP’aveに対して±10%の変調を周期1600nmにて加えた場合、即ち、ピッチが180nm〜220nmの間で段階的に変化し、その周期が1600nmの特異構造を含む凹凸構造の場合、新たな光学現象である散乱成分が回折格子に寄ることが確認された。即ち、目視観察を行ったところ、平均ピッチP’aveに応じた本来の光学現象(反射防止)による透明な基板の中に、有効屈折率Nemaにより作られると考えられる回折格子に寄る新たな光学現象(回折格子による光回折)を更に観察することが出来た。この為、平均ピッチP’aveに応じた透明体の中に、有効屈折率Nemaにより作られる回折格子による光のスプリット現象を観察することが出来た。また、上記<光学基板PP>にて説明したレーザ光線のスプリット現象も観察することが出来た。特に、上記ピッチP’の変調を1次元方向にのみ生じさせた場合には、出光するレーザ光線のスプリットは、ある一つの軸上に配列し、2次元方向に生じさせた場合は、60度の回転角をなす3つの軸上に配列することが確認された。
又、平均ピッチP’aveが200nmの基本となる凹凸構造に対して、凸部径が100nm〜125nmの範囲で不規則な分布を有する特異構造を含む凹凸構造を作製したところ、新たな光学現象による散乱成分が散乱点として観察された。即ち、目視観察を行ったところ、平均ピッチP’aveに応じた本来の光学現象(反射防止)による透明な基板の中に、有効屈折率Nemaにより作られると推定される散乱点に応じた新たな光学現象(光散乱)を観察することが出来た。この為、本来の光学現象である反射防止による透明体の中に、新たな光学現象である散乱による濁りを観察することが出来た。
上述のように、凹凸構造の形状や配列に乱れを加える、即ち凹凸構造に特異構造を含めることにより、凹凸構造の乱れに応じた新たな光学現象を付加できることが判明した。即ち、本来導波モードを十分に乱すことが出来ないような高密度な凹凸構造であっても、乱れを含むことにより、乱れに応じた新たな光学現象(光回折や光散乱)を発現することが可能となるため、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを維持した状態にて、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。換言すれば、本来であれば導波モードを十分に乱すことが出来ない様な高密度な凹凸構造であっても、乱れにより強い光学低散乱性を発現することから、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを改善し、同時に、新たに付加した強い光学的散乱性により光取り出し効率LEEを改善することが出来る。
以上説明したように、半導体発光素子において、高密度な凹凸構造により内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEを向上させ、且つ、光取り出し効率LEEを同時に向上させるためには、規則性又は均質性が高い凹凸構造の基本構造に対し、光学的散乱成分を新たに付加することが本質である。即ち、凹凸構造を具備する光学基板に対する光学検査を行い、ヘーズや拡散反射強度といった散乱成分を検知することで、半導体発光素子の光取り出し効率LEEの向上に適した凹凸構造の乱れを決定することが出来る。ここで、半導体発光素子に適用する凹凸構造の平均ピッチP’aveを固定した場合、凹凸構造の乱れの効果は光学的透過測定或いは光学的反射測定により判断することが出来る。特に、光学的透過測定においては透過光の散乱成分や、ヘーズ(Haze)値を好適に用いることが可能であり、光学的反射測定においては、正反射成分、拡散反射成分、及びそれらの差分値や比率を好適に用いることが出来る。なお、凹凸構造の乱れによる効果のみを抽出する場合、凹凸構造を有効媒質近似化し光学検査を行う必要がある。即ち、光学測定波長λを、凹凸構造の平均ピッチよりも大きな値とし決定する必要がある。このように、有効媒質近似化した状態にて光学検査を行うことで、凹凸構造の乱れに起因する散乱成分を定量化することが出来る。
本発明者らは、上記説明した視点より検討を行い、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態における光取り出し効率LEEの向上程度を測定及びFDTD法によるシミュレーションした結果、凹凸構造の乱れの種類は特に限定されず、凹凸構造の乱れに応じた光学的散乱成分の大きさが重要であることを見出した。即ち、本実施の形態に係る光学基板Dの凹凸構造Dは、凹凸構造に対する光学的散乱成分により、特に、凹凸構造を有効媒質近似化可能な光学測定波長λを使用し光学検査を行った際の散乱成分により決定することが可能である。即ち、乱れを発現させるための凹凸構造の要素が重要なのではなく、乱れの程度を示す散乱成分の強さが重要であることを見出した。更に、この散乱成分の強さは、凹凸構造の要素に対する変動係数に正の相関を示すことを発見した。更には、凹凸構造の所定の要素に対する乱れを利用することにより、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEを同時に向上させることに対し、より顕著な効果があることを見出した。
まず、光学基板Dの基板本体について説明する。本実施の形態に係る光学基板Dの基板本体は、<<光学基板PP>>にて説明した光学基板の本体を使用することが出来る。このため、半導体発光素子の表面或いは界面に対して、凹凸構造Dを設けるように、適宜基板本体の構成を変更できる。
本実施の形態に係る光学基板Dを使用した半導体発光素子の構成としては、<<光学基板PP>>にて説明したものを採用できる。<<光学基板PP>>にて説明した半導体発光素子に関し、より具体的に説明する。図24は、本実施の形態に係る光学基板Dを適用した半導体発光素子の断面模式図である。図24に示すように、半導体発光素子600においては、光学基板D601の一主面上に設けられた凹凸構造層602上にn型半導体層603、発光半導体層604及びp型半導体層605が順次積層されている。又、p型半導体層605上には透明導電膜606が形成されている。又、n型半導体層603表面にカソード電極607が、透明導電膜606表面にアノード電極608がそれぞれ形成されている。なお、光学基板D601上に順次積層されたn型半導体層603、発光半導体層604及びp型半導体層605を、積層半導体層610と称する。
図24においては、光学基板D601が、例えば、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)、又は窒化ガリウム(GaN)等である場合を想定して図を描いているが、<<光学基板PP>>にて説明したように、例えば、透明導電膜606の表面、透明導電膜606とp型半導体層605と、の界面等にも凹凸構造Dを設けることが出来る。その効果については、<<光学基板PP>>にて図6を参照し説明した通りである。
なお、図24においては、光学基板D601の一主面上に設けられた凹凸構造層602上に半導体層603、604、605を順次積層しているが、光学基板D601の凹凸構造層602が設けられた面と相対する他の一主面上に半導体層を順次積層してもよい。
図25及び図26は、本実施の形態に係る光学基板Dを適用した半導体発光素子の別の一例の断面模式図である。図25に示すように、半導体発光素子700において、基板701上には、n型半導体層702、発光半導体層703及びp型半導体層704が順次積層されている。又、p型半導体層704上には、p型半導体層704と接する一主面上に凹凸構造層705を有する。又、n型半導体層702表面にカソード電極707が、透明導電膜706表面にアノード電極708がそれぞれ形成されている。なお、半導体発光素子700においては、透明導電膜706或いは、基板701/n型半導体層702/発光半導体層703/p型半導体層704から成る積層体を、本実施の形態に係る光学基板Dとして設定できる。
図25においては、透明導電膜706の凹凸構造層705が設けられる主面は、p型半導体層704と隣接しているが、p型半導体層704と相対する主面に設けてもよい。
図26に示すように、半導体発光素子800においては、基板801上にn型半導体層802、発光半導体層803、及び、発光半導体層803と相対する主面上に凹凸構造層805が設けられたp型半導体層804が順次積層されている。基板801のn型半導体層802と接する主面とは反対側の主面にカソード電極806が、p型半導体層804表面にアノード電極807がそれぞれ形成されている。なお、半導体発光素子800においては、例えば、p型半導体層804、又は、基板801/n型半導体層802/発光半導体層803/p型半導体層804から成る積層体を、本実施の形態に係る光学基板Dとして設定できる。
図24〜図26に示した半導体発光素子600、700、800は、本実施の形態に係る光学基板Dを、ダブルヘテロ構造の半導体発光素子に適用した例であるが、積層半導体層の積層構造はこれに限定されるものではない。又、基板601、701、801とn型半導体層603、702、802との間に、図示しないバッファー層を設けてもよい。
本実施の形態に係る光学基板Dの構成は、<<光学基板PP>>において図7を参照し説明した通りである。即ち、図7Aに示すように、凹凸構造20(D)は光学基板10(D)の少なくとも一方に設けられていれば良く、この凹凸構造20(D)の平均ピッチが上記説明した範囲内であると共に、上記説明したように凹凸構造20(D)が乱れを含んでいれば良い。
次に、本実施の形態に係る光学基板Dの凹凸構造Dの乱れについて説明する。
凹凸構造Dの乱れの要因となっている要素の分布は、既に説明したように、上記式(1)に示す(標準偏差/相加平均)を有する。式(1)において、凹凸構造Dの(標準偏差/相加平均)、即ち変動係数は、凹凸構造Dを構成する要素に対する値である。例えば、凹凸構造Dが要素A、B、Cの三つから構成される場合、要素Aに対する標準偏差を要素Aに対する相加平均にて除した変動係数といったように、同一の要素に対する標準偏差及び相加平均に対する比率として定義する。各要素については後述する。また、以下の説明においては、標準偏差を相加平均にて除した値を変動係数とも呼ぶ。
(相加平均)
ある要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、相加平均値は、次式にて定義される。
(標準偏差)
要素(変量)の分布のN個の測定値をx1、x2…、xnとした場合に、上記定義された相加平均値を使用し、次式にて定義される。
相加平均を算出する際のサンプル点数Nは、10以上として定義する。又、標準偏差算出時のサンプル点数は、相加平均算出時のサンプル点数Nと同様とする。
又、変動係数は、光学基板Dの面内における値ではなく、光学基板Dの局所的な部位に対する値として定義する。即ち、光学基板Dの面内に渡りN点の計測を行い、変動係数を算出するのではなく、光学基板Dの局所的観察を行い、該観察範囲内における変動係数を算出する。ここで、観察に使用する局所的範囲とは、凹凸構造Dの平均ピッチP’aveの5倍〜50倍程度の範囲として定義する。例えば、平均ピッチP’aveが300nmであれば、1500nm〜15000nmの観察範囲の中で観察を行う。その為、例えば2500nmの視野像を撮像し、該撮像を使用して標準偏差と相加平均を求め、変動係数を算出する。
既に説明したように、凹凸構造に乱れを加えることで、新たな光学現象を呼び起こすことが可能となり、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。上記式(1)は、凹凸構造Dのある要素に対する規格化されたバラつきを示している。即ち、上記説明した光学検査により得られる散乱成分が適切な値になる乱れを表現している。この為、上記式(1)の範囲を満たすことにより、乱れに応じた新たな光学現象(光回折或いは光散乱)により導波モードを乱すことが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。
変動係数は、凹凸構造Dを構成する要素毎に最適値が存在するが、凹凸構造Dの乱れの要因となる要素によらず式(1)を満たすことで、光取り出し効率LEEを向上させることができる。ここで、下限値は光取り出し効率LEE向上程度により、上限値は内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上維持程度により決定した。半導体発光素子の製造条件や光学基板Dの種類に対する影響をより小さくし、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上と、光取り出し効率LEEの双方を高くする観点から、下限値は0.03以上であることがより好ましい。一方上限値は、0.35以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが最も好ましい。
なお、以下に説明するピッチP’、凸部底部外接円径φout、凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φin、及び、高さHの群から選ばれる1以上の要素が上記式(1)を満たすことで、凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることが出来るため好ましい。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることが出来る。これは、凹凸構造Dの乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造Dの体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造Dの体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、ピッチP’及び高さHについては、規則的な乱れを加えることも容易である。この場合、規則性のある乱れにより、新たな光学現象として光回折を利用することが可能となる。
凹凸構造Dに対する乱れは、特に、ピッチP’、高さH、又は、凸部底部外接円径φoutの乱れを含むことが好ましい。これは、これらの要素の乱れは、体積換算した際にその値が大きくなり、光学的散乱性への寄与が大きい為である。また、少なくともピッチP’の変化を含むことで、半導体結晶層の成長時に生じるクラック抑制の効果が大きくなると共に、光学的散乱強度が強くなるため好ましい。また、ピッチP’と、高さH又は凸部底部外接円径φoutの変化を少なくとも含むことで、半導体結晶層に対する転位密度低減効果とクラック抑制効果、そして光取り出し効率LEEの向上がより大きくなるため、好ましい。なお、最も好ましくは、ピッチP’、高さH,及び凸部底部外接円径φoutの乱れを含む場合である。この場合、転位の分散化と転位密度の低減効果、クラック抑制効果、強い光学的散乱性の効果と、が同時により改善される。
なお、この場合、ピッチP’と高さH、及び、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の相関係数が負であることで、クラック抑制効果が高まる。一方で、ピッチP’と高さH、及び、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の相関係数が正であることで、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなる。これにより、内部量子効率IQEの改善を維持した状態にて、光取り出し効率LEEをより向上させることが出来る。
光取り出し効率LEEを向上させる観点からは、少なくとも、ピッチP’と高さH、又は、ピッチP’と凸部底部外接円径φoutと、の関係は、正の相関であることが好ましい。これは、このような関係を満たすことで、凹凸構造Dの要素の体積変化程度が大きくなり、これに伴い有効屈折率Nemaの分布における屈折率差が大きくなり、光学的散乱性の強度が強まるためである。特に、ピッチP’が増加することに伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutが増加することが最も好ましい。
なお、上記式(1)を満たす範囲のいずれの数値を採用するかは、光学基板Dの表面状態、目的により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に向上させる選択において、転位欠陥が比較的生じにくい光学基板D、CVD装置又はCVD条件を適用できる場合には、光散乱効果を高めるため、上記式(1)を満たす範囲で大きな変動係数を採用すればよい。又、転位欠陥が比較的多く生じやすい光学基板D、CVD装置又はCVD装置条件の場合には、転位欠陥を低減し内部量子効率IQEをより高めるために、上記式(1)を満たす範囲で小さな変動係数を採用すればよい。
又、電子注入効率EIEと光取り出し効率LEEを同時に向上させる選択においては、透明導電膜又は電極パッドと最表層半導体層の生成条件や種類により種々選択し、最適な構造を選択することができる。例えば、比較的オーミック特性のよいp型半導体層と透明導電膜との組み合わせの場合には、光散乱効果を高め光取り出し効率LEEを向上させるため、上記式(1)を満たす範囲で大きな変動係数を採用すればよい。逆に、オーミック特性がよくない場合には、接触面積増大によるコンタクト抵抗の低減による電子注入効率EIEの向上を実現するために、上記式(1)を満たす範囲で小さな変動係数を採用すればよい。
次に、本実施の形態に係る光学基板Dの凹凸構造Dについて説明する。凹凸構造Dは、凸部及び凹部を有していれば、その形状や配列は限定されず、<<光学基板PP>>にて説明した形状や配列を採用できる。これは、上記式(1)を満たすことで、光取り出し効率LEEを、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で大きくすることが出来るためである。
なお、ドット構造における各凸部は連続した凹部により滑らかに接続されてもよい。一方、ホール構造における各凹部は連続した凸部により滑らかに接続されてもよい。中でも内部量子効率IQE或いは電流注入効率EIEをより高くする観点からドット構造であると好ましい。これは、内部量子効率IQEを向上させるためには、凹凸構造Dの密度による転位分散化を促進する必要があるためである。一方、電流注入効率EIEを向上させるためには、凹凸構造Dの比表面積を増大させると共に、増加した比表面積を利用し接触面積を大きくし、コンタクト抵抗を低減する必要があるためである。特に、内部量子効率IQEを向上させるためには、転位の分散化を促進させるために、ドット構造の中でも、凸部頂部に平坦面を有さない構造が最も好ましい。更に、凹凸構造Dの凹部底部は平坦面を有するのが好ましい。これは、半導体結晶層の核生成及び核成長を促進し、内部量子効率IQEを向上できるためである。
次に、凹凸構造Dの説明に使用する用語について定義する。
<平均ピッチP’ave>
平均ピッチP’aveの定義については、図18を参照し<<凹凸構造PP>>にて説明した通りである。なお、凹凸構造20(D)がラインアンドスペース構造の場合、ピッチP’は、互いに近接する凸状体の中心線間隔として定義する。
平均ピッチP’aveは、50nm以上1500nm以下であると、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIE及び、光取り出し効率LEEを共に大きくできる。特に、平均ピッチP’aveが50nm以上であることにより、上述の凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折或いは光散乱)の発現強度を強くすることが可能となり、導波モードを乱す効果が強まる。この為、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。前記効果をより発揮する観点から、平均ピッチP’aveは150nm以上であると好ましく、200nm以上であるとより好ましく、250nm以上であると最も好ましい。一方、平均ピッチP’aveが1500nm以下であることにより、凹凸構造Dの密度及び比表面積が向上する。これに伴い、半導体結晶層内部の転位を分散化することが可能となり、局所的及び巨視的な転位密度を低減することが出来るため、内部量子効率IQEを大きくすることが出来る。前記効果をより発揮する観点から、平均ピッチP’aveは、1000nm以下であることが好ましく、900nm以下であることがより好ましい。特に、900nm以下である場合、凹凸構造の密度が転位密度に対して適度に大きくなるため、転位低減及び分散化の効果が高まる。中でも、550nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることが最も好ましい。又、大きな比表面積により接触面積が大きくなるため、コンタクト抵抗を減少させ、電子注入効率EIEを向上させることができる。前記効果をより発揮する観点から、平均ピッチP’aveは、1000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましく、550nm以下であることが最も好ましい。
又、凹凸構造Dの乱れとしてピッチの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Dの要素であるピッチP’に対する変動係数は、上記最も広い範囲(0.025以上0.5以下)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.4以下であることにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.035以上が好ましく、0.04以上がより好ましい。又、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
ピッチP’が、上記範囲を満たす場合、凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることが出来るため好ましい。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることが出来る。これは、凹凸構造Dの乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造Dの体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造Dの体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、ピッチP’及び、高さH或いは凸部底部外接円径φoutが上記式(1)の範囲を満たすことで、上記説明した体積変化の効果が大きくなるため、光学的散乱性が強くなる。即ち、凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折及び光散乱)強度が向上するため、光取り出し効率LEEが向上する。更に、ピッチP’、高さH、及び凸部底部外接円径φoutが上記式(1)の範囲を満たすことで、前記効果がより大きくなるため好ましい。
なお、凹凸構造DのピッチP’の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、正六方配列、六方配列、準六方配列、準四方配列、四方配列、及び正四方配列を非規則的に含む特異構造を含む凹凸構造Dの場合、凹凸構造DのピッチP’の乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、正六方配列においては、ピッチP’の増減が周期的に生じるような特異構造を含む凹凸構造Dの場合、ピッチP’の乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。また、例えば、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置される場合、該特異構造が非規則的に散在すれば、凹凸構造DのピッチP’の乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、基本構造である正六方配列の中に局所的に特異構造である非正六方配列(例えば、四方配列)部位が配置され、該特異構造が規則的に設けられる場合、ピッチP’の乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。
<凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、凹部底部幅lccb>
凸部頂部幅lcvt、凹部開口幅lcct、凸部底部幅lcvb、及び、凹部底部幅lccbの定義に関しては、図19〜図22を参照し<<光学基板PP>>にて説明した通りである。
比率(lcvt/lcct)は、<<光学基板PP>>にて説明した好適な範囲と同様の範囲を満たすことが好ましい。これにより、上記式(1)による乱れの効果である光学的散乱性を発現すると共に、微視的及び巨視的な転位密度の低減による内部量子効率IQEの向上を実現できるためである。
又、凹凸構造20(D)の凹部20bの底部は、<<光学基板PP>>にて説明したのと同様の効果から、平坦面を有すると好ましい。更に、<<光学基板PP>>にて説明したのと同様の原理から、比率(lcvb/lccb)も<<光学基板PP>>に記載した好適な範囲を満たすことが好ましい。このような範囲を満たすことにより、凹凸構造Dの凹部底部を基準面とした半導体結晶層の成長をより促進し、内部量子効率IQEを良好に改善できると共に、半導体結晶成膜装置間の差を小さくすることが出来る。
一方、電子注入効率EIEの向上と光取り出し効率LEEの向上を同時に満たすために、凹凸構造20(D)の凹部底部の平坦面は実質的にないことが最も好ましい。即ち、比率(lcvb/lccb)は、大きい程好ましく、無限大に漸近することが最も好ましい。半導体発光素子において電子注入効率EIEを向上させるためには、薄いp型半導体層の比表面積を効果的に増大させ、コンタクト抵抗を減少させる必要がある。また、例えば、透明導電膜の表面に凹凸構造Dを設ける場合は、凹凸構造の体積を大きくすることが、光学的散乱性を大きくすることにつながる。一方で、光取り出し効率LEEを向上させるためには、上述のような凹凸構造Dの乱れにより光散乱性を発現させ、導波モードを効果的に乱す必要がある。以上の観点から、凹凸構造20(D)の凸部底部幅lcvbと凹部底部幅lccbと、の比率(lcvb/lccb)は、0.33以上であると好ましい。特に、比表面積を増大させると共に、光学的散乱性を向上させる観点から、(lcvb/lccb)は0.6以上がより好ましく、3以上が最も好ましい。
更に、凸部頂部幅lcvtは凸部底部幅lcvbよりも小さい形状であると、上記説明した比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)を同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEを同時に大きくすることが出来る。
又、凹凸構造20(D)は、ドット構造であると凸部頂部幅lcvt及び凸部底部幅lcvbの制御が容易となり、比率(lcvt/lcct)及び比率(lcvb/lccb)同時に満たすことが容易となり、この為、既に説明したメカニズムにより、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEを同時に大きくすることが出来る。
<デューティ>
デューティの定義は、<<光学基板PP>>に記載した通りである。また、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に向上させる観点に立った場合の好適な範囲は、同様の理由から<<光学基板PP>>に記載した通りである。
一方、電子注入効率EIEを向上させる観点から、デューティは、0.25以上1以下であると好ましい。0.25以上であることにより、比表面積を効果的に大きくすることが可能となり、電子注入効率EIEを改善できると共に、凸部の体積が大きくなることから導波モードを乱す効果が大きくなり光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。同様の効果から、比率(lcvb/P)は0.38以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.75以上であることが最も好ましい。
なお、以下に説明する凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすことで、光学的散乱性を効果的に発現することが可能であるため、好ましい。凸部底部外接円径φoutが乱れを有すことは、デューティが乱れを有すことを意味する。
<アスペクト比>
凹凸構造Dがドット構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcvbを用いて、凹凸構造Dの高さH/lcvbとして定義される。一方、凹凸構造Dがホール構造の場合、アスペクト比は、上記説明したlcctを用いて、凹凸構造Dの深さ/lcctとして定義される。
アスペクト比が0.1以上であることにより、凹凸構造Dの乱れによる散乱性によって、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。特に、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が最も好ましい。一方、アスペクト比は5以下であることにより、転位密度を低減できる他に、凹凸構造Dを作製する時間を短くでき、且つ、半導体結晶量を低減することが出来るため好ましい。又、アスペクト比が5以下であることにより、接触不良を抑制することが可能となり、コンタクト抵抗低減による電子注入効率EIEの向上効果を良好に発現することが出来る。同様の効果から、2以下がより好ましく、1.5以下が最も好ましい。
なお、以下に説明する高さHが上記式(1)を満たす乱れを有す場合、光学的散乱性が効果的に高まるため好ましい。この場合、同時にアスペクト比も乱れを有すこととなる。なお、凹凸構造Dの高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。即ち、アスペクト比の乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Dがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Dの場合、凹凸構造Dの高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造Dの場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Dの高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。
<凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φin>
凸部底部外接円径φout及び凸部底部内接円径φinの定義は、図23を参照し、<<光学基板PP>>に記載した通りである。また、それらの好ましい範囲についても、同様の理由から<<光学基板PP>>に記載した範囲を満たすことが好ましい。
又、凸部底部外接円径φoutの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Dの凸部底部外接円径φoutに対する(標準偏差/相加平均)は、上記最も広い範囲(0.025〜0.5)の中において、0.03以上0.4以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.4以下であることにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。又、0.35以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.15以下が最も好ましい。
又、比率(φout/φin)の乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Dの比率(φout/φin)に対する変動係数は、上記最も広い範囲(0.025〜0.5)の中において、0.03以上0.35以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.35以下であることにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上が最も好ましい。又、0.25以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下が最も好ましい。
上記凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることが出来るため好ましい。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることが出来る。これは、凹凸構造Dの乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造Dの体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造Dの体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。
また、凸部底部外接円径φoutと以下に説明する高さHと、が上記式(1)の範囲を満たすことで、上記説明した凹凸構造Dの体積変化が大きくなり、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなるため好ましい。同様の効果から、凸部底部外接円径φout、高さH及びピッチP’が上記式(1)を満たすと好ましく、凸部底部外接円径φout、高さH、ピッチP’及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。なお、凸部底部外接円径φoutと高さHと、の相関においては、正の相関係数を有すことが好ましい。
<高さH>
凹凸構造の高さHの定義については、<<光学基板PP>>にて説明した通りである。高さHは、平均ピッチP’aveの2倍以下であると光取り出し効率LEE、内部量子効率IQE、凹凸構造Dの作製にかかる時間、使用する半導体結晶量の観点から好ましい。又、平均ピッチP’aveの2倍以下であると、光取り出し効率LEEを向上できると共に、接触不良の抑制により良好に電子注入効率EIEを向上できるため好ましい。特に、平均ピッチP’ave以下の場合、凹凸構造Dの屈折率分布が、発光光からみて適切になる為、光取り出し効率LEEをより向上させることが出来る。この観点から、凹凸構造Dの高さHは、平均ピッチP’aveの0.8倍以下がより好ましく、0.6倍以下が最も好ましい。
又、高さHの乱れを、上記メカニズムにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEの向上へと適用する観点から、乱れの要因となっている凹凸構造Dの高さHに対する変動係数は、上記最も広い範囲(0.025〜0.5)の中において、0.03以上0.40以下であると好ましい。特に、0.03以上であることにより、光取り出し効率LEEへの寄与が良好となり、0.40以下であることにより内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上維持への寄与が良好となる。同様の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.12以上が最も好ましい。又、0.35以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下が最も好ましい。
上記高さHが、上記範囲を満たす場合、凹凸構造Dの乱れに基づく新たな光学現象(光回折或いは光散乱)の発現強度を大きくすることが出来るため好ましい。即ち、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態にて、光取り出し効率LEEを大きくすることが出来る。これは、凹凸構造Dの乱れによる光学的散乱性を強くするためには、凹凸構造Dの体積変化が重要であるためである。上記説明した要素が乱れを有すことで凹凸構造Dの体積の変化を大きくすることが可能となり、光回折モード数の増加或いは有効屈折率Nemaの乱れに対応した部位におけるコントラストを大きくすることができる。即ち、光学的散乱性は大きくなり、光取り出し効率LEEを向上させることが可能となる。特に、高さHとピッチP’と、が上記式(1)を満たすことで、光学的散乱性の効果が大きくなり、光取り出し効率LEEがより向上するため好ましい。なお、高さHとピッチP’と、の相関においては、クラック抑制の観点からは、負の相関係数を有すことが好ましい。一方で、光取り出し効率LEEの観点からは、正の相関係数を有すことが好ましい。同様の原理から、高さH、ピッチP’及び凸部底部外接円径φoutが上記式(1)を満たすとより好ましく、高さH、ピッチP’、凸部底部外接円径φout、及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinが上記式(1)を満たすとより好ましい。
なお、高さHの乱れは、高い規則性を有しても規則性が低くてもよい。例えば、中心高さH0、最小高さH1、最大高さH2の凹凸構造Dがあり、高さHが前記範囲内で規則性低く乱れを有す特異構造を含む凹凸構造Dの場合、凹凸構造Dの高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、高さHの増減が周期的に生じる特異構造を含む凹凸構造Dの場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。また、例えば、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置される場合、該特異部位が非規則的に散在すれば、凹凸構造Dの高さHの乱れの規則性は低下し、新たな光学現象として光散乱を発現できる。一方、高さH1の集合である基本構造の中に局所的に高さH2の特異部位が配置され、該特異部位が規則的に設けられる場合、高さHの乱れは高い規則性を有すこととなり、新たな光学現象として光回折を発現することができる。
<凸部側面傾斜角Θ>
凸部側面の傾斜角度Θは、上記説明した凹凸構造Dの形状パラメータより決定される。特に、凸部頂部から凸部底部に向けて多段階に傾斜角度が変化すると好ましい。例えば、凸部側面が上に膨らんだ変曲点が1つの曲線を描く場合、傾斜角度は2つとなる。このような多段階の傾斜角度を有すことで、凹凸構造Dの乱れによる光散乱性の効果をより強くすることが可能となり、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。又、光学基板と半導体結晶層の材質により、凸部側面の傾斜角度を、凸部側面に出る結晶面より選定することも出来る。この場合、半導体結晶層の成長性が良好になるため、より内部量子効率IQEを高くできると考えられる。
続いて、上記式(1)を満たす凹凸構造Dの乱れについて具体例を用いて説明する。上記式(1)を満たす凹凸構造Dの要素は特に限定されないが、凹凸構造Dの乱れの要因となる要素として、例えば、ピッチP’,デューティ、アスペクト比、凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、凸部側面の傾斜角度、凸部側面の傾斜角度の切り替わり数、凸部底部内接円径φin、凸部底部外接円径φout、凸部高さ、凸部頂部の面積、凸部表面の微小突起数(密度)や、これらの比率、又凹凸構造Dの配列より類推できる情報(例えば、凹部の形状等)が挙げられる。
これらのような要素の中で、ピッチP’は凹凸構造Dの配列の乱れを意味し、ピッチP’以外の要素は凹凸構造Dの形状の乱れを意味する。これらの乱れは上記要素1種のみの乱れでも、複合された乱れでもよい。これは上記式(1)が、上記光学検査の散乱成分により凹凸構造Dの乱れを評価できることから見出されたことによる。特に、散乱性をより強く発揮し、導波モードを効果的に打破し、光取り出し効率LEEを向上させる観点から、複数の要素が上記式(1)に示される乱れを同時に満たすと好ましい。なかでも、ピッチP’、デューティ、高さH、アスペクト、凸部底部外接円径φout或いは比率(φout/φin)が分布を有す場合、回折モード数の増加による散乱性或いは、有効屈折率Nemaの分布による散乱性が大きくなると考えられ、導波モードを乱す効果が大きいため、好ましい。これらのうち、2以上の分布を同時に含むことで、光取り出し効率LEEの向上をより顕著にすることが出来る。中でも、ピッチP’、高さH、凸部底部外接円径φout及び凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinのいずれかが上記式(1)を満たす乱れを有すと、光学的散乱性効果が顕著になるため好ましく、これらの複合的乱れであるとより好ましい。
凹凸構造D12の乱れにより上記式(1)を満たし散乱性を奏す状態は、有効媒質近似領域下の光学検査において、有効屈折率Nemaに局所的な屈折率の分布を含む場合(図27参照)と、有効屈折率Nemaに各凹凸構造D12よりも大きなオーダの屈折率の分布を含む場合(図28参照)、及び、有効媒質近似領域に達し得ない部分が存在する場合(図29参照)とに分類できると考えられる。既に説明したように、有効媒質近似下における光学検査により凹凸構造D12の乱れに起因する散乱成分を抽出することが可能である。この乱れは新たに発現する光学現象(光回折或いは光散乱)である。この為、半導体発光素子の発光光は、発光光からみて凹凸構造D12が小さい場合であっても、同程度以上の大きさの場合であっても、凹凸構造D12の乱れに応じた散乱性を発現することが可能となり、光取り出し効率LEEが向上する。なお、本明細書における有効屈折率Nemaは、実測される値ではなく、光学現象を前提とし、計算により求められる値である。ここで、光学現象としての前提とは、有効媒質近似である。この有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができる。即ち、凹凸構造Dの要素の差異を、誘電率の分布の体積分率として計算し、これを屈折率へと変換することで計算される。なお、誘電率は、屈折率の2乗である。
図27〜図29は、本実施の形態に係る光学基板Dの一例を示す断面模式図と有効屈折率Nemaの分布を示すグラフとの関係を示す模式図である。図27は、有効媒質近似領域下において、有効屈折率Nemaが局所的な屈折率の分布を含む場合であって、光学基板D11の断面模式図と有効屈折率Nemaの分布を示すグラフとの関係を示した概念図である。図27において、矢印にて指示した部分は、上記説明した凹凸構造D12の乱れの要因となっている、凹凸構造D12の主たる部位の凸部13とは異なる形状又は寸法を有する凸部13からなる特異部位に相当する。なお、矢印にて指示した部分が、図27の凸部13の大半を占めた場合、凹凸構造D12は隣接する凸部13が互いに異なる状態、即ち特異構造を含む凹凸構造D12となる。
図27におけるグラフは、横軸が位置であり各凹凸構造D12の位置と対応している。縦軸は、凹凸構造D12のある断面位置(図27中A−Aにて示される位置)における有効屈折率Nemaを示している。又、図27における、上段のグラフは、凹凸構造D12の乱れが実質的にない場合を、下段のグラフは、凹凸構造D12に乱れ(矢印にて指示している部分)がある場合を示している。有効媒質的近似領域においては、凹凸構造D12は平均の屈折率、即ち有効屈折率Nemaを有す媒質として振る舞う。この為、乱れが実質的にない場合、有効屈折率Nemaは凹凸構造D12の位置(平面方向)によらず略一定の値をとる。即ち、有効媒質近似下の光学検査における散乱成分は極めて小さくなる。一方、凹凸構造D12に乱れのある場合、凹凸構造D12の特異部位において、有効屈折率Nemaも変化する。一方で、矢印にて指示した部分が、図27の凸部13の大半を占める場合は、有効屈折率Nemaは連続的に変化する屈折率を内包する。即ち、凹凸構造D12が特異構造を含むことにより、有効屈折率Nemaは分布を有し、光は、恰も有効屈折率Nemaの分布に応じた媒質が存在すると感じると推定される。この為、有効屈折率Nemaの分布に応じた散乱性を奏すこととなり、有効媒質近似下の光学検査における散乱成分は増加する。この為、例えば反射測定における拡散反射強度や透過測定におけるヘーズ値が大きくなる。よって、図27中矢印にて示した特異部位が、周期的に配置される場合は、有効屈折率Nemaの分布も周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光回折として観察されることとなる。一方、図27中矢印にて示した特異部位が、非周期的に配置される場合は、有効屈折率Nemaの分布も非周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光散乱として観察されることとなる。また、矢印にて指示した部分が、図27の凸部13の大半を占める場合であって、凸部13が周期的な分布を有す場合は、有効屈折率Nemaの分布も周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光回折として観察されることとなる。一方、矢印にて指示した部分が、図27の凸部13の大半を占める場合であって、凸部13が非周期的な分布を有す場合は、有効屈折率Nemaの分布も非周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光散乱として観察されることとなる。
凹凸構造D12の乱れについては詳しくは後述するが、例えば、上記説明したピッチP’以外の凹凸構造の要素による場合が、本ケースに当たる。
例えば、凹凸構造D12の平均ピッチP’aveが300nm、凸部底部幅lcvbが150nm、アスペクト比が1の凸部頂部に平坦面を有さない基本形状、即ち主たる部位に対して、アスペクト比が0〜0.3程度の凸部13が混在している場合、該低いアスペクト比の部分が特異部位に相当し、該特異部位においては有効屈折率Nemaが分布を有すると考えられる。この有効屈折率Nemaの分布に応じ、換言すれば低いアスペクト比を有す凸部13の分布に応じ、新たな光学現象である散乱性が発現されることとなる。また、例えば、凹凸構造D12の平均ピッチP’aveが300nmであって、アスペクト比の平均値が1、アスペクト比が0.8〜1.2の範囲で分布を規則性低く分布を有す特異構造を含む凹凸構造Dの場合、アスペクト比の分布により上記式(1)は達成され、該分布に応じ有効屈折率Nemaが分布を有すると考えられる。この有効屈折率Nemaの分布に応じ、換言すれば凸部13のアスペクト比の分布に応じ、新たな光学現象である散乱性が発現されることとなる。このような有効屈折率Nemaの分布に応じた散乱性は、上記式(1)に示される凹凸構造D12の乱れとして表現可能である。この為、上記式(1)を満たす乱れの凹凸構造D12を有する光学基板D11を半導体発光素子に適用することで、半導体発光素子の発光光は凹凸構造D12の乱れに応じた新たな光学現象を発現することが可能となり、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。
図28は、有効媒質近似領域下において各凹凸構造D12よりも大きなオーダの有効屈折率Nemaの乱れを含む場合であって、光学基板D11の断面模式図と有効屈折率Nemaの分布を示すグラフとの関係を示した概念図である。図28におけるグラフは、横軸が光学基板D11の平面方向位置である。縦軸は、凹凸構造D12のある所定高さ位置における有効屈折率Nemaを示している。又、図28における、上段のグラフは、凹凸構造D12の乱れが実質的にない場合を、下段のグラフは、凹凸構造D12に乱れがある場合を示している。有効媒質的近似領域においては、凹凸構造D12は平均の屈折率Nemaを有す媒体として振る舞う。図28中に示した特異部位が、周期的に配置される場合は、有効屈折率Nemaの分布も大きな周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光回折として観察されることとなる。一方、図28中に示した特異部位が、非周期的に配置される場合は、有効屈折率Nemaの分布も非周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光散乱として観察されることとなる。凹凸構造D12の乱れについては詳しくは後述するが、例えば、平均ピッチP’aveが250nmのドメインAと平均ピッチP’aveが300nmのドメインBが混在している場合が挙げられる。ドメインAとドメインBが間隔1500μmにて混在している場合、有効屈折率Nemaも間隔1500μmにて分布を有すと推定される。即ち、有効屈折率Nemaの分布(間隔1500μm)に応じた散乱性が新たな光学現象として発現することとなる。又、例えば、正六方配列の基本構造の中に、部分的に四方配列の特異部位が設けられる場合が本ケースに相当する。より具体的には、平均ピッチP’aveが300nmの正六方配列の基本構造の中に、平均ピッチP’aveが300nm、集合の大きさが900nm〜1500nmの特異構造が分布している場合が挙げられる。この場合、特異構造が規則的に配置されれば、有効屈折率Nemaも規則的な特異構造に応じた分布を有す為、新たな光学現象として光回折が生じることとなり、特異構造が非規則的に配置されれば、有効屈折率Nemaの分布も非規則性を帯びるため、新たな光学現象として光散乱が発現することとなる。又、例えば、六方配列、準六方配列、準四方配列、及び四方配列が非規則的に含まれる特異構造により凹凸構造Dが構成される場合も本ケースに相当する。この場合、有効屈折率Nemaの分布は局所的のも巨視的にも非規則性を帯びることとなるため、新たな光学現象として光散乱が発現する。このような有効屈折率Nemaの分布に応じた新たな光学現象(散乱性や回折性)は、上記式(1)に示される凹凸構造D12の乱れとして表現可能である。この為、上記式(1)を満たす乱れの凹凸構造D12を有する光学基板D11を半導体発光素子に適用することで、半導体発光素子の発光光は凹凸構造D12の乱れに応じた新たな光学現象を発現することが可能となり、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。
図29は、部分的に有効媒質近似領域下に含まれない凹凸構造D12を含む場合であって、光学基板D11の断面模式図と有効屈折率Nemaの分布を示すグラフとの関係を示した概念図である。図29において、矢印にて指示した部分は凹凸構造D12の乱れを示し、当該箇所が有効媒質近似領域下に含まれない部分である。例えば、凹凸構造D12の平均ピッチP’aveが250nmであることから、有効媒質近似を適用するために、波長550nmの光学測定波長を使用した場合、該波長(550nm)と同程度以上の大きさを有す凸部(例えば、500nmの大きさの凸部)が配置される場合である。図29におけるグラフは、横軸が位置であり各凹凸構造D12の位置と対応している。縦軸は、凹凸構造D12のある断面位置(図29中A−Aにて示される位置)における有効屈折率Nemaを示している。又、図29における、上段のグラフは、凹凸構造の乱れが実質的にない場合を、下段のグラフは、凹凸構造D12に乱れ(矢印にて指示している部分)がある場合を示している。有効媒質的近似領域においては、凹凸構造D12は平均の屈折率、即ち有効屈折率Nemaを有す媒質として振る舞う。凹凸構造D12を構成する材質の屈折率をNactと表記すると、有効屈折Nemaの中において、特異部位に相当する位置の屈折率はNactとなる。即ち、有効屈折率Nemaとして振る舞う媒質の中に、有効屈折率Nemaとは異なる屈折率Nactを有す媒質が、乱れの分布に応じ配置された状態として機能する。即ち、光は、恰も、屈折率Nactを有す媒質が分散した有効屈折率Nemaを有す媒質からなる薄膜として感じる為、屈折率Nactの分布に従って、散乱性を奏すこととなる。図29中に示した特異部位が、周期的に配置される場合は、屈折率Nactの分布も大きな周期性を帯びると推定される。この為、新たな光学現象として発現する散乱性は、光回折として観察されることとなる。一方、図29中に示した凹凸構造D12の特異部位が、非周期的に配置される場合は、屈折率Nactの分布も非周期性を帯びると考えられ、新たな光学現象として発現する散乱性は、光散乱として観察されることとなる。凹凸構造D12の乱れについては詳しくは後述するが、例えば、平均ピッチP’aveが200nmとして、光学測定波長λを800nmに設定したとする。この時、部分的に、凸部径(lcvtやlcvb)が1200μmの凸部が含まれているとする。この場合、大きな凸部径を有す凸部13が特異部位に相当し、該特異部位が屈折率Nactの散乱点に相当することとなり、該凹凸構造D12は散乱性を奏すこととなる。また例えば、平均ピッチP’aveが300nmとして、光学測定波長λを800nmに設定したとする。この時、部分的に、凹部径(凹部開口幅lcctや凹部底部幅lccb)が600nm〜1500nmの凹部が含まれているとする。この場合、大きな凹部径を有す凹部が特異部位に相当し、該特異部位が散乱点に相当することとなり、該凹凸構造D12は散乱性を奏すこととなる。なお、大きな凹部径を有す凹部が特異部位として機能する場合の屈折率は、凹凸構造D12の周囲を囲む媒質の屈折率(例えば、半導体の屈折率)となる。このような有効屈折率Nemaの分布に応じた散乱性は、上記式(1)に示される凹凸構造D12の乱れとして表現可能である。この為、上記式(1)を満たす乱れの凹凸構造D12を有する光学基板D11を半導体発光素子に適用することで、半導体発光素子の発光光は凹凸構造D12の乱れに応じた新たな光学現象を発現することが可能となり、内部量子効率IQE或いは電子注入効率EIEの向上を維持した状態で、光取り出し効率LEEを向上させることが出来る。
上記図27〜図29を用いて説明した凹凸構造D12の乱れは複合化されると、有効屈折率Nemaの分布がより大きくなり、散乱点が増加すると共に、散乱強度が強くなる。即ち、上記説明した凹凸構造D12の乱れを複数含むことで、凹凸構造D12の乱れの要因となっている要素の分布の(標準偏差/相加平均)も大きくなり、導波モードを乱す効果が大きくなる。この為、光取り出し効率LEE向上の程度が大きくなる。
次に、凹凸構造D12の乱れについて、より詳細に説明する。凹凸構造D12の乱れは、上述したように凹凸構造D12の形状に起因する乱れと、配列に起因する乱れと、に分けることが出来る。まず、凹凸構造D12の形状の乱れについて説明する。
<形状に起因する乱れ>
既に説明したように、凹凸構造D12の乱れの要因となる要素の分布は、上記説明した用語であるピッチP’,アスペクト比、デューティ、凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、凸部側面の傾斜角度、凸部側面の傾斜角度の切り替わり数、凸部底部内接円径φin、凸部底部外接円径φout、凸部高さ、凸部頂部の面積、凸部表面の微小突起数(密度)や、これらの比率を含み、これら以外にもこれらから派生する分布を含む。
図30A〜図30E、図31A〜図31Dに凹凸構造D12の形状の乱れの例を記載した。図30A〜図30E、図31A〜図31Dは、本実施の形態に係る光学基板Dを示す断面模式図であり、図30A〜図30E、図31A〜図31D中の矢印にて指示している部分が、凹凸構造D12の形状のばらつきの要因となっている特異部位を示している。なお、図30及び図31においては、凹凸構造D12の特異部位を明確にするため、凹凸構造D12を構成する凸部13のうち、所定の凸部13の形状や寸法が他の部位の凸部13と極端に異なっている場合を図示している。即ち、隣接する凸部Nと凸部N+1を考えたときに、凸部Nと凸部N+1は形状がわずかに異なり、凸部N+1と凸部N+2も形状がわずかに異なり、凸部N+Mと凸部N+M+1の形状もわずかに異なる状態を含むものとする。この場合、k<Mと設定した時に、凸部N+kと同形状を有す凸部を凸部N〜凸部N+M内に含むことも出来る。即ち、凹凸構造D12の主たる部位とは別に設けられていた特異部位が、主たる部位よりもその割合が十分に大きくなった状態であり、特異構造を含む凹凸構造である。例えば、<<光学基板PP>>にて使用した図11のような状態である。上記式(1)の本質は、凹凸構造D12の平均的な乱れであるため、凹凸構造D12を構成する複数の凸部13が平均値からそれぞれわずかに異なっている状態も含むものとする。
図30A及び図30Bは、凹凸構造D12において少なくとも高さHに起因する乱れを含む例である。高さHに起因する凹凸構造D12の乱れに伴い、凹凸構造D12の凸部13のアスペクト比及び凸部側面の傾斜角度Θに起因する凹凸構造D12の乱れも含まれている。図30Aは、凹凸構造D12が、主たる部位の凸部13よりも高さHの高い凸部13からなる特異部位を含む場合であり、図30Bは、主たる部位の凸部13よりも高さHの低い凸部13からなる特異部位を有する場合である。例えば、平均高さが150nmの凹凸構造D12に対して、局所的に180nmの凸部13が存在する場合(図30A)や、局所的に120nmの凸部13が存在する場合(図30B)が本ケースに該当する。また、平均高さが150nmであり、高さHが130nm〜180nmの範囲にて分布を有す特異構造を含む凹凸構造も本ケースに該当する。又、同様の思想から、アスペクト比の相加平均が0.67であり、これらが0.6〜0.1の範囲で分布を有す場合等が本ケースに相当する。
図30C及び図30Dは、凹凸構造D12の凸部径(凸部頂部幅lcvt、凸部底部幅lcvb、凸部底部外接円径φout、凸部底部内接円径φin)に起因する乱れを含む場合であり、凹部開口幅lcct、凹部底部幅lccb、アスペクト比、デューティ、凸部側面の傾斜角度Θが異なる特異部位を含む場合である。図30Cは、主たる部位の凸部13よりも凸部径が大きな凸部13からなる特異部位を含む場合であり、図30Dは、主たる部位の凸部13よりも凸部径が小さな凸部13からなる特異部位を含む場合である。例えば、凸部底部幅lcvbの平均値が150nmであり、部分的に250nm以上の凸部底部幅lcvbを有する凸部13が混在する場合が図15Cに当たる。一方、凸部底部幅lcvbの平均値が150nmであり、部分的に100nm以下の凸部底部幅lcvbを有する凸部13を含む場合が図15Dに相当する。同様の思想から、凸部頂部幅lcvtの相加平均が7.9nmであり、0nm〜20nmの範囲の分布を有する場合や、凹部底部幅lccbの相加平均が147nmであり、130nm〜165nmの範囲の分布を有する場合等が本ケースに相当する。
図30Eは、凸部頂部幅lcvtに起因する凹凸構造12の乱れを有している場合であり、これに伴い、凸部側面の傾斜角度Θが異なる特異部位を含んでいる。
図31Aは、凸部底部幅lcvbに起因する凹凸構造D12の乱れを有している場合であり、これに伴い凸部側面の傾斜角度Θが異なる特異部位を含んでいる。例えば、凹凸構造D12の高さ方向を法線とした時に、凸部13の側面が法線から平均で31度傾いた側面を有する凸部13に対し、27度傾いた側面を有する凸部13が混在している場合等が本ケースに当たる。
図31Bは、凸部底部幅lcvbに起因する凹部構造12の乱れを有している場合であり、特に隣接する凸部13同士が部分的に連結し、より大きな凸部13を形成した状態の特異部位を含んでいる。
図31Cは、凸部頂部の形状に起因する凹凸構造D12の乱れを有する場合であり、凸部頂部の曲率が異なる特異部位を示している。
図31Dは、凸部側面の形状に起因する凹凸構造D12の乱れを有する場合であり、凸部側面の曲率が異なる特異部位を含んでいる。
なお、図示していないが、図30A〜図30E、図31A〜図31Dに用いて説明した凹凸構造D12の形状に起因する乱れを2つ以上含んでも良い。
<配列に起因する乱れ>
続いて、凹凸構造D12の配列に起因する乱れについて説明する。配列に起因する乱れは、凹凸構造D12の周期性の乱れや、異なる凹凸構造種を有するドメインの配列等により達成できる。
図32は、本実施の形態に係る光学基板Dの一例を示す凹凸構造面側から見た上面図及び有効屈折率Nemaの分布を示すグラフである。例えば、図32Aに示すように、凹凸構造D12の集合であるドメインAとドメインBが配列している場合、ドメインAとドメインBの有効屈折率Nemaは、ドメインAとドメインBを構成する凹凸構造D12に従って異なる値をとる。ここで、ドメインAとドメインBを構成する凹凸構造D12が異なるとは、上記説明した凹凸構造D12の要素が、各ドメインを構成する凹凸構造D12にて異なることを意味する。より具体的には、例えば、ドメインAの平均ピッチP’aveが300nmでありドメインBの平均ピッチP’aveが250nmといった具合である。このようなドメインの配列は、有効屈折率Nemaのマクロ(凹凸構造D12の大きさよりも十分に大きいオーダ)な分布を形成する。従って、光は、図32Bに示したグラフに例示するような有効屈折率Nemaの外形を有す媒質が存在するように振る舞い散乱性を奏すこととなる。なお、図32Aに例示したドメインの配列は、ドメインAとドメインBの2種類の配列としているが、例えば、ドメインA、ドメインB及びドメインCを作製し、ドメインAとドメインBを1セットに考えて、ドメインAとドメインBのセットとドメインCを交互に配列させるといったことも出来る。より具体的には、前記例において、ドメインAの平均ピッチP’aveを300nm、ドメインBの平均ピッチP’aveを600nm、ドメインCの平均ピッチP’aveを1000nmとすることが挙げられる。
図33及び図34は、本実施の形態に係る光学基板Dの一例を示す断面模式図及び有効屈折率Nemaの分布を示すグラフである。又、例えば、図33に各凸部13間の距離であるピッチP’の乱れが存在する場合を示した。図33に示すように、凹凸構造D12の周期に乱れがある場合、有効屈折率Nemaは、凹凸構造D12の周期に対応した分布を作る。即ち、有効屈折率Nemaの乱れに相当する散乱性を奏すこととなる。ここで、ピッチP’の乱れが非周期的である場合、有効屈折率Nemaの分布も非周期的となる。即ち、新たに発現する光学現象である散乱性は、光散乱に強く依存することとなる。一方、ピッチP’の乱れが周期的な場合、有効屈折率Nemaの分布も周期的となる。即ち、新たに発現する光学現象である散乱性は、光回折に強く依存することとなる。特に、上記説明した周期の乱れに対応して、少なくとも高さH或いは凸部底部外接円径φoutが乱れを有すと、光散乱性が向上するため好ましく、高さH及び凸部底部外接円径φoutが同時に乱れを有すとより好ましい。更に、凸部体積変化が大きくなることから、凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinも同時に乱れを有すと更に好ましい。
又、例えば、図34に各凸部13の距離であるピッチP’が連続的に変化する場合を示した。図34に示すように、有効屈折率Nemaは、連続的なピッチP’の変化に対応した分布を形成することとなり、この有効屈折率Nemaの分布に対応した散乱性が発現されることとなる。ここで、連続的な変化に周期性がある場合、例えば、平均ピッチP’aveが300nmであり、±10%のピッチの変動が、周期1500μmで繰り返し配置される場合、有効屈折率Nemaは周期1500μmの分布を有すこととなり、該周期に応じた散乱性を発現することとなり、新たな光学現象による散乱性は、光回折に強く依存することとなる。特に、上記説明した周期の連続的な変化に対応して、少なくとも高さH或いは凸部底部外接円径φoutが乱れを有すと、光回折性が向上するため好ましく、高さH及び凸部底部外接円径φoutが同時に乱れを有すとより好ましい。更に、凸部体積変化が大きくなることから、凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinも同時に乱れを有すと更に好ましい。
本実施の形態に係る光学基板Dを、半導体発光素子に適用する場合の、半導体発光素子の層構成は、図24〜図26を参照し既に説明した通りである。また、半導体発光素子の各層に適用可能な材料は、<<光学基板PP>>にて説明したものを採用できる。
なお、上記説明した凹凸構造D12の乱れに関し、周期的又は規則性高く、といった表現を使用したものについては、上記<<光学基板PP>>にて説明したレーザ光線のスプリット現象が観察されることがある。特に、光学基板Dにおいても、該レーザ光線のスプリットが観察されることで、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなるため好ましい。即ち、上記平均ピッチP’aveの範囲、上記式(1)、及び該レーザ光線のスプリット現象を満たす場合が最も好ましい。
以上説明したように、凹凸構造D12の要素の乱れにより、有効屈折率Nemaが分布を形成し、これにより光学的散乱性が発現すると考えられ、凹凸構造D12の要素をパラメータにとり変化させることで、光学的散乱性が強くなることが実証できた。ここで、有効屈折率Nemaの変化を生じることが本質と考えることができることから、上記説明した式(1)を満たす凹凸構造D12の要素の相違の他にも、凹凸構造D12を構成する材料の種類によっても、光学的散乱性を強く発現可能であると推定できる。即ち、上記説明した凹凸構造D12の要素の乱れを、凹凸構造を作る物質、特に、凹凸構造を作る物質の屈折率或いは消衰係数の乱れとして捉えることでも、強い光学的散乱性を発現可能と考えられる。特に、光学基板Dを半導体発光素子に適用することを考えると、凹凸構造D12を作る物質の屈折率の相違を利用することが、光取り出し効率LEEを向上させる観点から好ましいと考えられる。また、物質の屈折率による相違によって、光学的散乱性を強めるためには、屈折率による光の挙動の程度の差が重要であることは想像に難くない。この観点から計算すると、凹凸構造D12を作る物質の屈折率の乱れにおいては、屈折率の相違は0.07以上あることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。これにより、光の反射率を増加させることができるためである。特に、反射率をより大きくして、光学的散乱性をより強くする観点から、該屈折率の相違は0.5以上あることがより好ましいと推定される。なお、該屈折率の相違は、大きい程好ましく、1.0以上であることが最も好ましい。
次に、本実施の形態に係る光学基板Dの製造方法について説明する。
本実施の形態に係る光学基板Dは、上記説明した条件を満たした凹凸構造Dを具備すれば、その製造方法は限定されず、<<光学基板PP>>にて説明した手法を採用でき、特に転写法を採用することが好ましい。これは、転写法を採用することで、凹凸構造Dの加工精度及び加工速度が向上するためである。
ここで転写法とは、<<光学基板PP>>にて記載したのと同様に定義される手法であり、被処理体に転写付与された転写材を永久剤として使用する場合、ナノインプリントリソグラフィ法、及びナノ加工用シート法を含む。
以上説明したように、転写法を採用することで、モールドの微細構造を被処理体に反映させることが出来るため、良好な光学基板Dを得ることが出来る。
即ち、本実施の形態に係るインプリントモールドは、表面に微細構造を具備したモールドであって、微細構造が上述した平均ピッチP’及び、上記式(1)を満たすことを特徴とする。なお、転写法に使用するモールドの微細構造と転写付与される凹凸構造とは反対の構造である。この為、本実施の形態に係るモールドの微細構造は、上記光学基板Dにて説明した凸と凹入れ替えた構造である。
インプリントモールドの材質は、<<光学基板PP>>に記載したのと同様のものを採用できる。
また、半導体発光素子を製造する場合、本実施の形態に係る光学基板Dを準備する工程と、光学基板Dに対し光学検査を行う工程と、光学基板Dを使用し半導体発光素子を製造する工程と、をこの順に含むと好ましい。
既に説明したように、本実施の形態に係る光学基板Dの凹凸構造Dは、光学的散乱成分により定義することが出来る。この為、光学基板Dを準備した後に光学検査を行うことにより、凹凸構造Dの精度を事前に把握することが可能となる。例えば、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEを同時に向上させるために、サファイア基板に凹凸構造Dを付与した場合、該サファイア基板(光学基板D)に対して光学検査を行い、光学測的散乱成分を評価することで、凹凸構造D12の精度を把握することが出来る。この為、事前に、作製される半導体発光素子の性能ランクの目途をつけることが可能となる。又、使用できない光学基板Dの篩い分けも出来るため、歩留りが向上する。ここで光学検査は、<<光学基板PP>>に記載した通りである。なお、光学検査においては、光源の波長を、凹凸構造D12の平均ピッチP’aveより大きくすることで、上記式(1)に示される凹凸構造Dの乱れの効果を抽出することが出来る。これは、乱れの効果を純粋に評価することを意味するため、より高い精度の管理が可能なことを意味する。又、反射測定においても、出力を大きくするために、斜入射にて測定すると好ましい。
<<光学基板PC>>
次に、本実施の形態である光学基板PCについて説明する。
用語は、特に断りのない限り<光学基板PP>にて既に説明した定義に従う。<<光学基板PP>>及び<<光学基板D>>にて説明してきたように、互いにトレードオフの関係にある内部量子効率IQE又は電子注入効率EIEと、光取り出し効率LEEと、を同時に改善するためには、実体として存在する凹凸構造の密度を大きくし、半導体発光素子の発光光により認識される光学的な有効屈折率Nemaの分布に基づく光学的散乱性を新たに加えることが本質であると考えられた。ここで、屈折率の周期構造をもつ多次元ナノ構造体は、フォトニック結晶という学問分野にカテゴライズされる。フォトニック結晶は、周期構造の方向により1次元フォトニック結晶、2次元フォトニック結晶及び3次元フォトニック結晶に分類される。電子顕微鏡等を使用し観察することで、ナノオーダの構造体で構成される周期構造を観察することができる。ここで重要なことは、光学的散乱性を大きくするために、光学基板の厚み方向に対して、マイクロオーダの大きな構造を設けた場合、内部量子効率IQEの向上程度が限定されることである。この観点にたつと、フォトニック結晶を利用することで、光学基板に対してナノオーダの凹凸構造を設けると共に、このナノオーダの凹凸構造により強い光学的散乱性を発現させることが可能となる。即ち、互いにトレードオフとされてきた内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善できる。
本実施の形態に係る光学基板PCとは、少なくとも1層以上のn型半導体層と、少なくとも1層以上のp型半導体層と1層以上の発光半導体層から構成される半導体発光素子に適用される半導体発光素子用基板である。光学基板PCの具体的な材質については、<<光学基板PP>>にて説明したものを採用することが出来る。
また、光学基板PCを使用した半導体発光素子は、図2〜図6を参照し<<光学基板PP>>にて説明した半導体発光素子に関し、凹凸構造PPをフォトニック結晶層PC(凹凸構造PC)にしたもの、又は、図24〜図26を参照し<<光学基板D>>にて説明した半導体発光素子に関し、凹凸構造Dをフォトニック結晶層PC(凹凸構造PC)にしたものを採用できる。
フォトニック結晶層は、屈折率(誘電率)が周期的に変化する多次元ナノ構造体である。本実施の形態に係るフォトニック結晶層は、半導体発光素子用基板の主面に面外方向に延出する複数の凸部又は凹部から構成されるドットを含む微細構造層により構成されている。半導体発光素子用基板は、<<光学基板PP>>に記載したものを使用できる。フォトニック結晶層は、屈折率(誘電率)の周期構造であるため、走査型電子顕微鏡により観察される微細構造層のオーダと、光学顕微鏡により観察される像のオーダと、は異なる。このため、走査型電子顕微鏡により観察すれば、微細構造層の凹凸が認識できるだけであるが、微細構造層の凹凸の周期よりも大きな周期構造としてフォトニック結晶層が存在する。
次に、図35を参照して、本実施の形態に係る光学基板PCの構成について詳細に説明する。図35は、本実施の形態に係る光学基板PCの一例を示す斜視模式図である。図35に示すように、光学基板PC1は、概して平板形状を有しており、基板本体21と、この基板本体21の一主面上に設けられた微細構造層22と、を備えている。微細構造層22は、基板本体21の主面から上方に突出する複数の凸部23(凸部列23−1〜23−N)を含む。凸部23は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
図36は、本実施の形態に係る光学基板PCの他の例を示す斜視模式図である。図36に示すように、光学基板PC1aは、概して平板形状を有しており、基板本体21aと、この基板本体21aの一主面上に設けられた微細構造層22aと、を備えている。微細構造層22aは、微細構造層22aの表面Sから基板本体21a主面側に向けて陥没した複数の凹部24(凹部列24−1〜24−N)を含む。凹部24は、それぞれ特定の間隔を持って配置されている。
微細構造層22、22aは、基板本体21、21aの主面上に別途形成してもよいし、基板本体21、21aを直接加工して形成してもよい。
以下、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおける微細構造層22、22aの微細構造を構成する凸部23又は凹部24を「ドット」と称する。本実施の形態においては、上記ドットはナノオーダである。
この構成によれば、ナノオーダの凹凸構造が光学基板PC1、1a表面に設けられることにより、光学基板PC1、1a表面に半導体結晶層を設ける際に半導体結晶層のCVD成長モードが乱され、層成長に伴う転位欠陥が衝突して消滅し、転位欠陥の低減効果を生じさせることができる。半導体結晶層内の転位欠陥が低減することにより、半導体発光素子の内部量子効率IQEを高めることが可能となる。
さらに本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、上述のドット間のピッチ、ドット径又はドット高さのいずれかにより制御された2次元フォトニック結晶が形成されている。本実施の形態において、フォトニック結晶とは、屈折率が周期的に変化する多次元ナノ構造体であり、屈折率が周期的に変化することで、結晶内部の伝播光に対する反射、透過、回折特性を制御することができる。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、上述のドットはナノオーダであり、伝播光の波長と概ね同程度である。そのため、本実施の形態においてフォトニック結晶の特性を決定するのは、構造に起因した屈折率を平均化した有効屈折率Nemaの周期的な変化である(有効媒質近似)。有効屈折率Nemaの分布が、光学基板PC1、1aの主面内で繰り返されているため、2次元フォトニック結晶が形成される。
さらに本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、上述の2次元フォトニック結晶の周期が、適用される半導体発光素子の発光光の波長の2倍以上である必要がある。2次元フォトニック結晶が発光波長の2倍以上の周期を有するために、光回折性よりも光散乱性が強まることになる。そのため、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、半導体結晶層中からの発光に対し、光散乱性を強く発現させることができ、この光散乱性によって導波モードを解消し、光取り出し効率LEEを高めることが可能となる。
さらに同時に、強い光散乱性により、その発光特性における角度依存性は弱まり、より工業用途に適用しやすいランバーシアン発光特性に近づくことになる。
ドット間のピッチ、ドット径又はドット高さで制御された2次元フォトニック結晶について、図面によりさらに、詳細に説明する。
図37は、本実施の形態に係る光学基板PCを示す平面模式図である。図37に示すように、ドット(凸部23又は凹部24)は、光学基板PC1、1aの基板本体21、21a主面内の第1方向D1において、複数のドットが不定間隔のピッチPyで配列された複数のドット列(図35及び図36に示す凸部列23−1〜23−N又は凹部列24−1〜24−N)を構成する。また、各ドット列は、基板本体21、21a主面内で第1方向D1に直交する第2方向D2において、不定間隔Pxで配置されている。
さらに、2次元フォトニック結晶は、第1方向D1におけるドット間の不定間隔のピッチPyが周期的に増減するか、又は第1方向D1に直交する第2方向D2における不定間隔のドット列の間隔であるピッチPxが周期的に増減するかの、いずれか一方又は両方により作られる。このように各ドットの間隔であるピッチPy、或いはドット列の間隔であるピッチPxを増減させることで、ドット間のピッチで制御された2次元フォトニック結晶を形成することができる。なんとなれば、個々のドットの大きさ及びピッチは、発光波長と同程度以下であるため、光学的には、個々のドットの存在は、有効媒質近似により有効屈折率Nemaで代替される。図37においては、第1方向D1において、ドット間の不定間隔のピッチPyが周期的に増減しているため、上述の有効媒質近似により、光としては、不定間隔のピッチPyの周期的増減の周期を感じることになり、恰も、より大きな凹凸構造が存在することと等価な挙動を示す。
つまり、図37においては、ナノオーダの凹凸によるナノ構造体で構成された2次元フォトニック結晶において、その凹凸構造体よりも大きな周期を有する2次元フォトニック結晶が構成されることになる。つまり、半導体結晶層を成膜する際は、ナノオーダの凹凸により転位を分散化し低減することで、内部量子効率を改善できる。そして、半導体発光素子を使用する際は、2次元フォトニック結晶に対して、半導体発光素子の発光光は光学挙動を示すことから、導波モードを効果的に打破し、光取り出し効率を向上させることが出来る。
さらに詳細に、互いに異なるピッチPxで不定間隔に配置された第2方向D2におけるドット列の配置例について説明する。なお、ピッチPxは、第1方向D1に配列するドット列の、第2方向D2における間隔、即ち、ドット列間の間隔である。図38は、本実施の形態に係る光学基板PCの第2方向D2におけるドット列の配置例を示す模式図である。図38に示すように、第2方向D2におけるドット列(図38中、DLで示す)は、8列ずつ特定の間隔(ピッチPx)で配置されており、且つ、8列のドット列が繰り返し配置されている。この複数(z)のドット列で構成された単位を、長周期単位Lxz(ただし、zは正の整数)と称する。本実施の形態においては、この長周期単位Lxzが、半導体発光素子の発光波長の2倍以上である必要がある。なお、互いに異なるピッチPyで不定間隔に配置された第1方向D1におけるドットについても、長周期単位Lyzを使用し、以下の説明と同様に配置できる。即ち、以下のピッチPxをピッチPyと置き換えることが出来る。
ピッチPxは、隣接するドット列間の距離である。ここで、長周期単位Lxzにおける少なくとも隣接する4個以上m個以下のドット列間のピッチPxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2a+1。ただし、m,aは正の整数であり、n=m−1である。)には、次の式(2)の関係が成り立つ。
Px1<Px2<Px3<…<Pxa>…>Pxn (2)
なお、各ドット径は、ピッチPxnより小さい。ピッチPx1からPxnまでの長さは、長周期単位Lxzを構成する。なお、ドット径は、凸部底部外接円径φoutである。
図38は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。この場合、n=7,a=3となるため、長周期Lx1において、ドット列間のピッチPxnには、次の式(3)の関係が成り立っている。
Px1<Px2<Px3>Px4>Px5>Px6>Px7 (3)
また、長周期単位LxzにおけるピッチPxは、ピッチPxの最大値(Px(max))と、最小値(Px(min))との差で表される最大位相ずれδが、(Px(min))×0.01<δ<(Px(min))×0.66、好ましくは、(Px(min))×0.02<δ<(Px(min))×0.5、より好ましくは、(Px(min))×0.1<δ<(Px(min))×0.4、を満たすよう設定されている。
例えば、図38に示す長周期Lx1においては、各ドット列間のピッチPxnは次のように表される。
Px1=Px(min)
Px2=Px(min)+δa
Px3=Px(min)+δb=Px(max)
Px4=Px(min)+δc
Px5=Px(min)+δd
Px6=Px(min)+δe
Px7=Px(min)+δf
ただし、δaからδfの値は、Px(min)×0.01<(δa〜δf)<Px(min)×0.5を満たす。隣接する長周期Lx2についても同様である。
また、長周期単位Lxz、あるいは長周期単位Lyzにおけるzの最大値は、4≦z≦1000、好ましくは、4≦z≦100、より好ましくは、4≦z≦20、を満たすよう設定されている。
なお、第1方向D1及び第2方向D2における長周期単位Lxz及びLyzは互いに同一である必要はない。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいて、第1方向D1においては、上記した長周期単位Lyzを有するドット群が少なくとも1個以上配列され、第2方向D2においては、上記した長周期単位Lxzを有するドット列群が少なくとも1個以上配列されることが好ましい。
ピッチPyの不定期間隔に配置された配置は、上記説明した互いに異なるピッチPxで不定間隔に配置された第2方向D2におけるドット列の配置例において、ドット列をドットと読み替えることで定義される。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、微細構造層22(22a)の微細構造を構成するドットは、第1方向D1、第2方向D2共に上記説明したような不定間隔のピッチPx、Pyで配置することもできるし(図37参照)、第1方向D1、又は第2方向D2のいずれか一方のみを上記説明したような不定間隔のピッチで配置し、他方を一定間隔のピッチで配置することもできる(図39参照)。図39は、本実施の形態に係る光学基板PCの別の例を示す平面模式図である。なお、図39においては、第1方向D1におけるドットが不定間隔で配置され、第2方向D2におけるドット列が一定間隔に配置されている。即ち、ピッチPyが不定間隔であり、ピッチPxが一定間隔の場合である。
図37及び図39において図示した2次元フォトニック結晶は、非周期のドットから形成された2次元フォトニック結晶であるが、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、2次元フォトニック結晶を構成するドットのパタン配列は、周期的であってもよい。個々のドットの周期性は、上述のように有効媒質近似によりキャンセルされるので、長周期単位Lxzが、本発明の効果を発現するために必要である。この為、個々のドットの周期/非周期よりも、長周期単位Lxzによる効果が大きくなる。
周期的なドットパタンの例として、図40〜図43を例として挙げる。図40〜図43は、本実施の形態に係る光学基板PCの別の例を示す平面模式図である。これらの配置例においては、隣接する第1ドット列及び第2ドット列、あるいは第1ドット列及び第3ドット列がそろった配置となっており、ドットパタンは周期的である。
さらに、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ドットパタンによる2次元フォトニック結晶は、少なくとも基板主面の一次方向に発光中心波長の2倍以上の周期を有することが好ましく、具体的には、図39、図41及び図43に示すような2次元フォトニック結晶である。
また、さらには、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ドットパタンによる2次元フォトニック結晶は、少なくとも独立する二軸方向に周期的であることが好ましく、具体的には、図37、図40及び図42に示すような2次元フォトニック結晶である。
図37、図40及び図42に示す配列は、独立する二軸方向は互いに直交している例であるが、必ずしも直交する必要はなく、任意の角度で配置させることができる。さらに、独立する3軸方向のパタン配列としてもよく、この場合は、ドットの粗密により形成される2次元フォトニック結晶は、三角格子配列とすることができる。
また、第1方向D1におけるドット間隔、あるいは第2方向D2におけるドット列間隔のいずれか一方が一定間隔で配置される場合には、一定間隔のピッチに対する不定間隔のピッチの比が、特定の範囲内にあることが好ましい。
ここで、第1方向D1におけるドットが一定間隔のピッチPycで配置され、第2方向D2におけるドット列が不定間隔のPxで配置される例について説明する。この場合には、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、85%〜100%の範囲内にあることが好ましい。一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が85%以上であれば、隣接するドット間の重なりが小さくなるため好ましい。また、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比が100%以下であれば、ドットを構成する凸部23の充填率が向上するため好ましい。なお、一定間隔のピッチPycに対する、不定間隔のピッチPxの比は、90%〜95%の範囲内にあることが、より好ましい。
また、1つの長周期単位LxzあるいはLyzは、5個以上のドットから構成されると、換言すれば、属するピッチPx又はPyが4以上であると、有効屈折率Nemaの長周期の変動がナノオーダから遠ざかり、光散乱が生じやすくなるため好ましい。一方、十分な光取り出し効率LEEを得るためには、長周期単位Lxz、あるいはLyzは、1001個以下のドットから構成される、換言すれば、属するピッチPx又はPyが1000以下であることが好ましい。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aは、以上のような微細構造層22、22aの微細構造の関係を満足する2次元フォトニック結晶が形成されることにより、光散乱効果が十分となり、且つ、ドット(凸部23又は凹部24)の間隔が小さくなるため転位欠陥の低減効果が生じることとなる。換言すれば半導体発光素子を製造する際には、実体として存在するナノオーダの高密度な凹凸構造により、内部量子効率IQEや電子注入効率EIEが改善される。更に、半導体発光素子を使用する際には、光に認識可能な2次元フォトニック結晶により強まる光学的散乱性が付与され、光取り出し効率LEEを改善できる。
さらに、フォトニック結晶であるにも関わらず、その光回折性が抑制され、より工業的用途に好適なランバーシアン発光に近づくことになる。
続いて、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aの微細構造層22、22aの2次元フォトニック結晶を構成するドット形状(凹凸構造)について説明する。凸部23及び凹部24の形状は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されず、用途に応じて適時変更可能である。凸部23及び凹部24の形状としては、<<光学基板PP>>或いは<<光学基板D>>にて説明したものを採用できる。また、<<光学基板PP>>或いは<<光学基板D>>の中で、内部量子効率IQEの改善効果が大きいと記載した形状を、同様の理由から採用することが好ましい。
以上説明したのは、本発明における2次元フォトニック結晶がドットの間隔により構成されている場合であるが、ドット径の大小により構成されてもよい。具体的には、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aの微細構造層22、22aの微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)においては、ドットの各々の径が、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減することが好ましい。なお、ピッチに対応して増減するドット径は、ピッチとドット径と、の相関を考えた際に、その相関係数が正であっても、又、負であってもよい。
以下、ピッチに対応して増減するドット径の例について、詳細に説明する。なお、ドット径とは、<<光学基板PP>>にて説明した凸部底部外接円径φoutである。本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dyn(3≦n≦2a又は3≦n≦2n+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(4)の関係を満たすと共に、第1方向D1において、ドット径Dy1〜Dynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、且つピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット径Dxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2n+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(5)の関係を満たすと共に、第2方向D2において、ドット径Dx1〜Dxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。本実施の形態においては、この長周期単位Lxz及びLyzが、半導体発光素子の発光中心波長の2倍以上である必要がある。
Dy1<Dy2<Dy3<…<Dya>…>Dyn (4)
Dx1<Dx2<Dx3<…<Dxa>…>Dxn (5)
図44は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。図44は、本実施の形態に係る光学基板PCの第2方向D2におけるドット列の配置例を示す模式図である。この場合、n=7、a=3となるため、長周期Lx1において、ドット列を構成する各ドットの径Dxnには、上記式(5)の関係が成り立っている。
図44においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット径が小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット径が大きくなっている。増減するドット径の増減範囲は、半導体結晶層の成長性の観点から上限値が、そして、光に対する散乱性の観点から下限値が決定される。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均径に対し、±20%以内であると、光取り出し効率が増加し好ましい。
上記構成により、ドットの体積が長周期単位Lxzで増減することになり、2次元フォトニック結晶を構成することになる。なんとなれば、有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができ、誘電率は、屈折率の2乗となるからである。つまり、媒質の体積が長周期単位Lxzで変化することで、有効屈折率Nemaが長周期単位Lxzで変化することになる。
発光中心波長の2倍以上の周期をもつ2次元フォトニック結晶が形成されるため、発光光に対する光散乱性が大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。
本発明の2次元フォトニック結晶の周期は、得られる半導体発光素子の発光中心波長の2倍以上の周期を有することが好ましく、5倍以上だと、発光光に対する光散乱性が大きくなり好ましく、10倍以上であると、発光角分布の角度依存性が減り、ランバーシアン型に近づくため、さらに好ましい。
次に、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいて、2次元フォトニック結晶がドット高さにより制御される例について説明する。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、上述の2次元パタンに同期して微細構造層22、22aの微細構造を構成するドット形状(凹凸構造)の、各ドットの各々の高さが、ピッチPy及び/又はピッチPxに対して増減することが好ましい。なお、ピッチに対応して増減するドットの高さは、ピッチとドット高さと、の相関を考えた際に、その相関係数が正であっても、又、負であってもよい。
以下、ピッチに対応して増減するドット高さの例について、詳細に説明する。なお、ドット高さとは、<<光学基板PP>>にて説明した高さHである。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ピッチPyが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット高さHyn(3≦n≦2a又は3≦n≦2n+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(6)の関係を満たすと共に、第1方向D1において、ドット高さHy1〜Hynで構成されるドット群が長周期単位Lyzで繰り返し配列され、ピッチPxが不定間隔である場合には、少なくとも隣接する4個以上m個以下のピッチを構成するドット高さHxn(3≦n≦2a又は3≦n≦2n+1。ただし、m、aは正の整数であり、n=m−1である。)は、下記式(7)の関係を満たすと共に、且つ、第2方向において、ドット高さHx1〜Hxnで構成されるドット群が長周期単位Lxzで繰り返し配列されることが好ましい。本実施の形態においては、この長周期単位Lxz及びLyzが、半導体発光素子の発光中心波長の2倍以上である必要がある。
Hy1<Hy2<Hy3<…<Hya>…>Hyn (6)
Hx1<Hx2<Hx3<…<Hxa>…>Hxn (7)
図45は、長周期単位Lxzが8列のドット列で構成される場合、すなわち、m=8の場合を示している。図45は、本実施の形態に係る光学基板PCの第2方向D2におけるドット列の配置例を示す模式図である。この場合、n=7、a=3となるため、長周期Lx1において、ドット列を構成する各ドットの高さHxnには、上記式(7)の関係が成り立っている。
図45においては、隣接するドット間隔が広くなると、ドット高さが小さくなり、ドット間隔が狭くなるとドット高さが大きくなっている。増減するドット高さの増減範囲は、光取り出し効率LEEの斑の観点から上限値が決定され、ドット高さの増減に起因する光取り出し効率の向上程度の観点から下限値が決定される。同じ長周期単位Lxz内における、ドットの平均高さに対し、±20%以内であると、光取り出し効率がムラなく増加し好ましい。
上記構成により、ドットの体積が長周期単位Lxzで増減することになり、2次元フォトニック結晶を構成することになる。なんとなれば、有効媒質近似は、誘電率分布の体積分率で簡易的に表現することができ、誘電率は、屈折率の2乗となるからである。つまり、媒質の体積が長周期単位Lxzで変化することで、有効屈折率Nemaが長周期単位Lxzで変化することになる。
発光中心波長の2倍以上の周期をもつ2次元フォトニック結晶が形成されるため、発光光に対する光散乱性が大きくなり、半導体発光素子における光取り出し効率LEEが増加することとなる。
上記図44及び図45を使用し説明した例においては、ドット間隔とドット径、又はドット間隔とドット高さが同時に変化する場合を説明した。ここで、2次元フォトニック結晶を作るための本質は、有効屈折率Nemaの分布である。この観点から、2次元フォトニック結晶を作るための微細構造層22、22aの微細構造の要素は、<<光学基板PP>>又は<<光学基板D>>にて説明した凹凸構造板PP、又は凹凸構造Dの要素から任意に選択することができる。中でも、既に説明したドット間隔、ドット径、又はドット高さの相違により2次元フォトニック結晶が作られることで、ドットの体積変化が大きくなり、光学的散乱性が強まるため好ましい。特に、ドット間隔、ドット径及びドット高さが同時に変化することで、2次元フォトニック結晶を形成する場合、光学的散乱性の強度が最も高まる。
なお、上記説明した2次元フォトニック結晶を作る微細構造層22、22aの微細構造の要素の相違に関し、周期的といった表現を使用したものについては、上記<<光学基板PP>>にて説明したレーザ光線のスプリット現象が観察されることがある。特に、光学基板PCにおいても、該レーザ光線のスプリットが観察されることで、光取り出し効率LEEの向上程度がより大きくなるため好ましい。
以上説明したように、2次元フォトニック結晶を作る微細構造層22、22aの微細構造の要素の相違により、有効屈折率Nemaが分布を形成し、これにより2次元フォトニック結晶が形成され、光学的散乱性が発現すると考えられた。また、微細構造層22、22aの微細構造の要素を変化させて、2次元フォトニック結晶を作ることで、光学的散乱性が強くなることが実証できた。ここで、有効屈折率Nemaの変化を生じることが本質と考えることができることから、2次元フォトニック結晶を形成するためには、上記説明した微細構造層22、22aの微細構造の形状や間隔の他にも、微細構造を構成する材料の種類によっても、光学的散乱性を強く発現可能であると推定できる。即ち、上記説明したドット間隔、ドット径、又はドット高さを、微細構造を作る物質、特に、微細構造を作る物質の屈折率或いは消衰係数の乱れとして捉えることでも、2次元フォトニック結晶を効果的に形成可能と考えられる。特に、光学基板PCを半導体発光素子に適用することを考えると、微細構造を作る物質の屈折率の相違を利用することが、光取り出し効率LEEを向上させる観点から好ましいと考えられる。また、物質の屈折率による相違によって、光学的散乱性を強めるためには、屈折率による光の挙動の程度の差が重要であることは想像に難くない。この観点から計算すると、微細構造層22、22aの微細構造を作る物質の屈折率の相違においては、屈折率の相違は0.07以上あることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。これにより、光が認識可能な物質としての差異を大きくし、効果的に2次元フォトニック結晶を形成できるためである。特に、光学的散乱性をより強くする観点から、該屈折率の相違は0.5以上あることがより好ましいと推定される。なお、該屈折率の相違は、大きい程好ましく、1.0以上であることが最も好ましい。
また、上記した本実施の形態に係る光学基板1、1aにおいて、ピッチPx,ピッチPyは、それぞれ100nm以上1000nm以下であることが好ましい。ピッチPx,Pyがこの範囲内にあると、ナノオーダの凹凸が光学基板PC1、1aの表面に設けられることにより、光学基板PC1、1aの表面に半導体結晶層を設けた場合の半導体結晶層中の転位欠陥数を減らすことができる。ピッチPx,Pyは、100nm以上であることにより、半導体発光素子の光取り出し効率LEEが向上し、発光効率向上に寄与する転位欠陥の減少の効果が現れる。また、ピッチPx,Pyが1000nm以下であることにより、転位欠陥数の低減効果が維持される。
上記した図37〜図45で示した本実施の形態に係る2次元フォトニック結晶は、その表面構造を走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡等のナノオーダの解像度を有する分析機器で観察することで検証することができる。特に、走査型電子顕微鏡を使用することが、微細構造層22、22aの微細構造の変化を明確に観察する点から望ましい。走査型電子顕微鏡を使用した観察により、実体として存在するナノオーダのドットが長周期単位を有すこと、そして、その長周期と発光中心波長との関係を明らかにできる。
続いて、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにより、光取り出し効率LEEが向上する原理について説明する。
先述のとおり、光学基板PC1、1aに、ナノオーダのドットから構成される2次元フォトニック結晶層を設けることにより、光散乱により導波モードを解消することによる光取り出し効率LEEの改善の効果が得られる。
複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べることにより、長周期単位Lxzごとに屈折率が変化し、長周期単位Lxzを構成する複数のドットが1単位となって繰り返された場合と同じ効果を生じることとなる。換言すると、波長と同程度の複数のドットの場合、有効屈折率Nemaの分布で光の挙動を説明できるため、空間の有効屈折率Nemaの分布を計算すると、恰も、長周期単位Lxzの複数のドットが1単位として繰り返されたように光に作用する。このように長周期単位Lxzで並べられた複数のドットは、光散乱効果を奏する。
さらに、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ドットの各々の径が、ピッチに応じて増減する。空間の有効屈折率Nema分布は、構成単位の体積分率に依存し変化するため、長周期単位Lxzの複数のドットにおいて、各ドットの体積の変化に応じ有効屈折率Nema分布が変化する。即ち、各ドットの体積変化が大きい程、同じ長周期単位Lxzでも、より光散乱効果が高まることとなる。この効果は、ドット間隔が狭い場合、ドット径を小さく、ドット間隔が広い場合、ドット径を大きくすることでより顕著となる。なお、ドット間隔が狭い場合、ドット径を大きく、ドット間隔が広い場合、ドット径を小さくすることで、実体としての微細構造の体積変化程度が小さくなることから、半導体結晶層を成膜する際のクラック抑制効果が大きくなる。
さらに、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、ドットの高さもドット間隔に応じて増減する。この場合も上記した理由と同様、ドット間隔が狭い場合、ドット高さを小さくし、ドット間隔が広い場合、ドット高さを大きくすると、長周期単位Lxz内の有効屈折率Nemaの分布が大きくなり、光散乱効果を増加させることになる。なお、ドット間隔が狭い場合、ドット高さを大きく、ドット間隔が広い場合、ドット高さを小さくすることで、実体としての微細構造の体積変化程度が小さくなることから、半導体結晶層を成膜する際のクラック抑制効果が大きくなる。
さらに、複数のドットから構成される長周期単位Lxzを繰り返し並べた配列において、上記したドットの各々の径とドット高さの両方を、ピッチに応じて増減させると、有効媒質近似により記述される屈折率分布の差がさらに大きくなるため好ましい。この場合、ドット間隔が狭い場合、ドット径とドット高さを小さくし、ドット間隔が広い場合、ドット径とドット高さを大きくすると、空間の有効屈折率Nemaの分布において、構成単位の体積分率の差が大きくなり、より光散乱効果が高まり好ましい。なお、ドット間隔が狭い場合、ドット径とドット高さを大きくし、ドット間隔が広い場合、ドット径とドット高さを小さくすることで、実体としての微細構造の体積変化程度が小さくなることから、半導体結晶層を成膜する際のクラック抑制効果が大きくなる。
本実施の形態に係る光学基板PC1、1aにおいては、基板本体21、21aの材質は、<<光学基板PP>>にて説明したものを採用できる。
本実施の形態に係る半導体発光素子においては、図2〜図6及び図24〜図26を参照し<<光学基板PP>>及び<<光学基板D>>にて説明した半導体発光素子を採用できる。ここで、光学基板PP或いは光学基板Dを、光学基板PCと読み替えればよい。
次に、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、上述の本実施の形態に係る光学基板PC1、1a上に、半導体層を設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする。
上述のように、主面に2次元フォトニック結晶層を有する光学基板PC1、1aの、2次元フォトニック結晶層を有する主面側に、n型半導体層、発光半導体層及びp型半導体層を形成する。本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、本実施の形態に係る光学基板PC1、1a上に、半導体層を設ける工程が含まれていればよく、得られる半導体発光素子中に、本実施の形態に係る光学基板PC1、1aが含まれている必要はない。具体的には、光学基板PC1、1a上に半導体結晶層を設けた後、光学基板PC1、1aを除去する方法が挙げられる。
図46を参照して、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の各工程を説明する。なお、図46を参照し説明する半導体発光素子の製造方法は、上記説明した<<光学基板PP>>及び<<光学基板D>>にも適用される。即ち、以下の説明の光学基板PCを、光学基板PP或は光学基板Dへと読み替えることが出来る。図46は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の各工程を示す断面模式図である。
図46Aに示す中間体900は、本実施の形態に係る、表面に2次元フォトニック結晶層920を備えた光学基板PC901上に、n型半導体層930、発光半導体層940及びp型半導体層950が順次積層されている。さらに、p型半導体層950上に、p電極層960及び支持体970が順次積層されている。
支持体970としては、Si、Ge、GaAs、Fe、Ni、Co、Mo、Au、Cu、又はCu−W等からなる導電性基板を用いることができる。また、図46Aでは、中間体900は素子面に垂直な方向に導通を取る構成となっているが、平行電極型でもよい。この場合、支持体970は絶縁性基板でもよい。支持体970とp型半導体層950との接合には、低融点金属であるAu−Sn、Au−Si、Ag−Sn−Cu、Sn−Bi等の金属共晶、又は低融点金属ではないが、Au層、Sn層、Cu層等を用いることもできる。なお、p電極層960上に直接メッキ、スパッタ、蒸着等によって金属層を形成して支持体970としてもよい。さらに、支持体970のp電極層960と面していない面に、図示しない裏面電極を設けてもよい。
中間体900から、図46Bに示すように、光学基板PC901を剥離(リフトオフ)することにより、n型半導体層930の剥離面に、2次元フォトニック結晶層920が反転した2次元フォトニック結晶層980が形成された半導体発光素子1000が得られる。この場合、反転した2次元フォトニック結晶層980が、得られる半導体発光素子1000に適した構造となるように、反転元となる2次元フォトニック結晶層920の構造が適宜設計される。なお、反転元となる2次元フォトニック結晶層920の微細構造と、反転した2次元フォトニック結晶層980の微細構造と、は完全に一致しても一致しなくもてよい。特に、フォトニック結晶層980の設計自由度及び半導体発光素子1000の外部量子効率EQEの観点から、フォトニック結晶層920の微細構造に対するフォトニック結晶層980の微細構造の転写率は、0%以上30%以下であることが好ましい。なお、転写率は、フォトニック結晶層920の微細構造の高さをHm、そしてフォトニック結晶層980の微細構造の高さをHtと記載した場合に、(Hm―Ht)/Hm×100として定義する。
光学基板PC901の剥離には、例えばレーザリフトオフ、ケミカルリフトオフ等が採用される。レーザリフトオフの場合、照射されるレーザは、光学基板PC901を透過し、n型半導体層930を透過しない波長が用いられる。また、ケミカルリフトオフの場合は、2次元フォトニック結晶層920上に薄いエッチング層を積層し、ケミカルエッチングよって、光学基板PC901を剥離する方法が挙げられる。なお、光学基板PC901としてシリコンを採用した場合、該エッチング層の積層を行わなくとも、シリコンを容易に溶解し除去することが出来る。ここで、光学基板PC或いは、光学基板PP又は光学基板Dを使用することで、ナノオーダの高密度な凹凸構造PC或いは、凹凸構造PP又は凹凸構造Dにより光学的散乱性を発現出来る。裏を返せば、光学基板PC、光学基板PP又は光学基板Dに設けられる凹凸構造PC、凹凸構造PP又は凹凸構造Dは、一般的に使用されているマイクロオーダの凹凸構造に比べ十二分に微小である。この為、光学基板PC901或いは、光学基板PP又は光学基板Dを除去するリフトオフ時のn型半導体層930に対する物理的ダメージを抑制できる。更には、光学基板PC901或いは、光学基板PP又は光学基板Dを除去した後のn型半導体層930の表面に設けられる凹凸構造の精度、即ち、光学基板PC901或いは、光学基板PP又は光学基板Dの凹凸構造の転写精度が向上する。
続いて、半導体発光素子1000は、図46Cに示すように、2次元フォトニック結晶層980を含むn型半導体層930の表面上に、n電極層990を設ける。
本実施の形態に係る光学基板PC901上に半導体結晶層を順次積層する工程、或いは、上述のように得られた中間体900から、光学基板901をリフトオフする工程の後、にさらに、デバイスプロセスを行い、電極等を適宜形成し、半導体発光素子1000とする。
続いて、本実施の形態に係る光学基板PC901の製造方法について説明する。ただし、以下に示す製造方法は一例であって、光学基板PC901の製造方法はこれに限定されるものではない。
光学基板PCは、例えば転写法により製造される。ここで、転写法は<<光学基板PP>>に記載した転写法として定義する。この時、モールドとしては、以下に説明する円筒状マスターモールドをそのまま使用する他、円筒状マスターモールドを使用して作製した樹脂モールドや、樹脂モールドから作製したニッケル製モールド等を使用できる。
図47は、本実施の形態に係る光学基板PCの製造方法の一例を示す概略説明図である。図47に示すように、露光装置470は、レジスト層が被覆されたロール状部材471を図示しないロール把持部により把持しており、回転制御部472と、加工ヘッド部473と、移動機構部474と、露光制御部475と、を備えている。回転制御部472は、ロール状部材471の中心を軸として、ロール状部材471を回転させる。加工ヘッド部473は、レーザ光を照射して、ロール状部材471のレジスト層を露光する。移動機構部474は、加工ヘッド部473をロール状部材471の長軸方向に沿って、制御速度で移動させる。露光制御部475は、回転制御部472によるロール状部材471の回転と同期した基準信号に基づいて、加工ヘッド部473によるレーザ露光のパルス信号を制御する。
露光装置470によるロール状部材471の加工は、ロール状部材471を回転させた状態で、加工ヘッド部473からパルスレーザを照射することにより行う。加工ヘッド部473は、パルスレーザを照射しながら、移動機構部474によって、ロール状部材471の長軸方向に沿って移動する。ロール状部材471の回転数及びパルスレーザの周波数から、回転方向におけるロール状部材471の外周面のレジスト層に任意のピッチでパタン476が記録される。これが、円筒状マスターモールドにおける第1方向D1のピッチPyとなる。
さらに、ロール状部材471の長軸方向に沿って走査しているため、任意の位置からロール状部材471が1周すると、加工ヘッド部473が長軸方向にずれることになる。これが円筒状マスターモールドにおける第2方向D2のピッチPxとなる。ロール状部材471の周長に比較して、パタン476のピッチPy,Pxは、ナノメートルオーダと非常に小さいので、第1方向D1のピッチPyを維持しながら、長軸方向でみると第1方向D1のシフト量がずれた列状パタンを形成することができる。さらに、上述したように、パタン476のピッチPy,Pxは、ロール状部材401の周長に比較して非常に小さいので、第1方向D1と第2方向D2は実質的に直交する。
ロール状部材471は、円筒状に形成された部材に回転軸が備えられているものであり、材質としては、金属、カーボンコア、ガラス、石英等が適用できる。ロール状部材471は、高速回転が可能な加工精度が必要とされることから、材質は、金属、カーボンコア等が好ましい。さらに、レーザ露光される円筒表面部のみ、異なる材料で被覆することもできる。特に、熱反応型レジストを使用するときは、断熱効果を高めるために金属よりも熱伝導率が低い材料を適用することが好ましく、ガラス、石英、酸化物、窒化物等が挙げられる。円筒表面に被覆した層を、後述するレジスト層をマスクとしてエッチングするエッチング層として、使用することも可能である。
ロール状部材471を被覆するレジストは、レーザ光により露光されるものであれば、特に限定されるものではなく、光硬化型レジスト、光増幅型レジスト、熱反応型レジスト等が適用できる。特に、熱反応型レジストは、レーザ光の波長よりも小さい波長でパタン形成できるので好ましい。
熱反応型レジストは、有機レジスト又は無機レジストであることが好ましい。これらのレジストにより形成されたレジスト層は、単層構造であっても、複数のレジスト層を組み合わせた多層構造であってもよい。なお、どのようなレジストを選択するかは、工程や要求加工精度等によって適宜変更することができる。例えば、有機レジストは、ロール状部材471を被覆するレジスト層を形成する際に、ロールコーター等で塗布できるため工程が簡便となる。ただし、スリーブ上に塗布するためレジストの粘性に制限があり、塗布厚精度や制御あるいは多層にコーティングすることは難しい。
有機レジストとしては、(株)情報機構発刊 「最新レジスト材料ハンドブック」や(株)工業調査会 「フォトポリマーハンドブック」にあるように、ノボラック樹脂又はノボラック樹脂とジアゾナフトキンとの混合物、メタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。
一方、無機レジストは、ロール状部材471を被覆するレジスト層を、抵抗加熱蒸着法や電子ビームスパッタ法、CVD法等の気相法等によって設けることが好適である。これらの方法は、基本的に真空プロセスになるため、スリーブ上に形成するには工数が掛かるが、膜厚が精度良く制御でき、また、多層に積層することが容易である。
無機レジスト材料は、反応させる温度によって種々選択することができる。例えば、無機レジスト材料としては、Al、Si、P、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、Ag、Au及びこれらの合金が挙げられる。また、無機レジスト材料は、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Ba、Hf、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、La、Ce、Sm、Gd、Tb、Dyの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭化物、硫化物、硫酸化物、フッ化物、塩化物や、これらの混合物を適用してもよい。
ロール状部材471を被覆するレジストとして熱反応型レジスト材料を使用した場合、下記のパタンを形成する露光前に、レジストをパタン形成時よりも低い温度で処理する予備加熱を施してもよい。予備加熱を加えることで、パタン形成時の分解能を向上させることが可能となる。予備加熱により分解能が向上するメカニズムの詳細は不明だが、熱反応型レジスト材料の熱エネルギによるレジスト層を形成する材料の変化が複数の反応に基づく場合、予備加熱により、パタン形成時の反応以外を事前に終了させることで、パタン形成反応が単純となり、パタン分解能が向上すると推測される。
ロール状部材471を被覆するレジストを予備加熱する方法としては、特に制限されるものではなく、ロール状部材全体を加熱する方法や、ロール状部材471にレーザでパターニングするよりも低い出力でロール表面全体を走査し、レジストに熱エネルギを照射する方法等が挙げられる。
ロール状部材471を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用すると、後述する回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パタンを形成するドットの各々の径が、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストを使用した場合に、ピッチに対応してドット径が増減する明確なメカニズムは不明であるが、次のように推測される。なお、円筒状マスターモールドの説明においては、ドット径とは、ドットが凸状体の場合は凸部底部外接円径φoutであり、ドットが凹状体の場合には、該凹状体の開口径である。
熱反応型レジストの場合、照射部に照射されたレーザの熱エネルギによりレジスト層を形成する材料に変化が生じ、エッチング特性が変わることでパタンが形成される。この時、照射された熱はレジスト層の変化にすべて使われるのではなく、一部は蓄熱され隣接する領域に伝熱される。そのため、隣接する領域での熱エネルギは、照射エネルギに加え、隣接する領域からの伝熱エネルギが加わることになる。ナノオーダのパタン形成では、この伝熱エネルギの寄与は無視できず、伝熱の寄与は、パタンを形成するドット間隔に反比例するため、結果として、得られるパタン径は、隣接するドット間隔の影響を受ける。
ここで、ドット間隔が位相変調により変わると、上記した伝熱エネルギの寄与が、ドット毎に異なることになり、ドット間隔が広いと、伝熱エネルギの寄与が小さくなり、ドット径が小さくなり、ドット間隔が狭いと、伝熱エネルギの寄与が大きくなるため、ドット径が大きくなる。
また、ロール状部材471を被覆するレジストとして、熱反応型レジストを使用し、後述するエッチング層をもうけ、パタンの加工深さを制御すると、前記したのと同様、回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号で露光する場合、パタンを形成するドットの各々の高さが、ピッチPy及び/又はピッチPxに対応して増減するため好ましい。熱反応型レジストとエッチング層を併用した場合に、ピッチPxに対応してドット径が増減するメカニズムは不明であるが、上記した、ドット間隔に応じてドット径が増減することから説明が可能である。
すなわち、ナノオーダのパターニングにおいて、ドット径に応じて、エッチング深さは増減し、ドット径が広くなるとエッチング深さは深くなり、ドット径が狭くなるとエッチング深さが浅くなる傾向がある。特に、エッチング手法がドライエッチングにおいて顕著である。これは、エッチャントの交換、あるいは、エッチング生成物の離脱が迅速に行われないためであると考えられる。
上述のように、熱反応型レジストを使用すると、ドット間隔が広いとドット径が小さくなり、ドット間隔が狭いと、ドット径が大きくなる。ドット径に応じて、エッチング深さが増減する傾向があるため、結果として、ドット間隔が広いと、ドット深さは浅くなり、ドット間隔が狭いと、ドット深さが深くなる。
上述のドット間隔と、ドット径、ドット深さの増減の影響は、平均ピッチが小さくなると顕著である。これは、上述の伝熱エネルギの影響が大きくなるためと推定される。
本実施の形態においては、ロール状部材471を被覆するレジスト層を利用してそのまま円筒状マスターモールドとして適用してもよく、また、レジスト層をマスクとして、ロール状部材471の表面基材をエッチングすることによりパタン形成してもよい。
ロール状部材471にエッチング層を設けることで、パタンの加工深さを自由に制御でき、且つ、熱反応レジスト層の厚みを加工に最適な膜厚に選択することができる。すなわち、エッチング層の厚みを制御することで、加工深さを自由に制御できる。また、加工深さはエッチング層で制御できることから、熱反応型レジスト層は露光や現像が容易な膜厚を選択すればよい。
露光を行う加工ヘッド部473に用いるレーザは、波長150nm以上550nm以下が好ましい。また、波長の小型化及び入手の容易さから、半導体レーザを使用することが好ましい。半導体レーザの波長は、150nm以上550nm以下であることが好ましい。波長が150nmより短い場合には、レーザの出力が小さくなり、ロール状部材471を被覆するレジスト層を露光することが困難なためである。一方、波長が550nmより長い場合には、レーザのスポット径を500nm以下にすることができず、小さな露光部を形成することが困難なためである。
一方、スポットサイズが小さな露光部を形成するためには、加工ヘッド部473に用いるレーザとして、ガスレーザを使用することが好ましい。特に、XeF、XeCl、KrF、ArF、F2のガスレーザは、波長が351nm、308nm、248nm、193nm、157nmと短く、非常に小さなスポットサイズに集光することができるため好ましい。
また、加工ヘッド部473に用いるレーザとして、Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波を用いることができる。Nd:YAGレーザの2倍波、3倍波、4倍波の波長は、それぞれ532nm、355nm、266nmであり、小さなスポットサイズを得ることができる。
ロール状部材471の表面に設けられたレジスト層に微細パタンを露光により形成する場合、ロール状部材471の回転位置精度が非常に高く、初めに焦点深度内に部材表面があるようにレーザの光学系を調整しておけば製造は容易である。しかしながら、ナノインプリントに適合するほどのロール寸法精度、回転精度を保持することは非常に困難である。そのため、露光に用いるレーザは対物レンズにより収束されロール状部材471表面が焦点深度の中に絶えず、存在するようにオートフォーカスがかけられていることが好ましい。
回転制御部472は、ロール状部材471をロールの中心を軸に回転させる機能を有する装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、スピンドルモータ等が好適である。
加工ヘッド部473をロール状部材471の長軸方向に移動させる移動機構部474としては、制御された速度で加工ヘッド部473を移動できれば特に制限されるものではなく、リニアサーボモータ等が好適に挙げられる。
図47に示す露光装置470では、ロール状部材471の表面上に形成される露光パタンが回転制御部472の回転(例えば、スピンドルモータの回転)と同期した基準信号に基づいて、位相変調させたパルス信号により露光制御部475で露光部の位置を制御している。基準信号としては、スピンドルモータの回転に同期したエンコーダからの出力パルスを用いることができる。
上記説明した手法により、円筒状マスターモールドを製造できる。この円筒状マスターモールドの表面に作製されるパタンを制御することで、本実施の形態の光学基板PCを、転写法により製造するための、モールドを製造できる。また、上記手法を応用することで、<<光学基板PP>>及び<<光学基板D>>を転写法にて製造する際のモールドを製造するための、円筒状マスターモールドを容易に製造することも出来る。又、上記手法を、光学基板PCの基板本体に直接適用することで、光学基板PCを製造することも出来る。同様に、光学基板PP又は光学基板Dの基板本体に直接適用することで、光学基板PP或は光学基板Dを製造することも出来る。
上述したように、熱反応型レジストを使用することで、ピッチの変化に対して、負の相関係数を満たすドット径及びドット高さを具備する円筒状マスターモールドを作製できる。また、円筒状マスターモールドから樹脂モールドを転写形成した場合も、これらの関係は維持される。
ここで、作製した樹脂モールドを使用して<<光学基板PP>>に記載した被処理体に転写付与された転写材を永久剤として使用する方法、又は、ナノインプリントリソグラフィ法を適用して、基板本体を加工した場合、基板本体に設けられる凹凸構造PC、凹凸構造PP又は凹凸構造Dのピッチとドット径(凸部底部外接円径φout)、及びピッチと高さHと、の相関を負にすることが出来る。
一方で、作製した樹脂モールドを使用して<<光学基板PP>>に記載したナノ加工用シートを作製し、これを使用して基板本体を加工した場合、基板本体に設けられる凹凸構造PC、凹凸構造PP又は凹凸構造Dのピッチとドット径(凸部底部外接円径φout)、及びピッチと高さHと、の相関を正にすることが出来る。これは、ナノ加工用シートを作製する際の、マスク層成膜工程において、ピッチの大きくドット開口径の小さな部分にマスク層が自発的に集合するためである。
即ち、光学基板PC、光学基板PP又は光学基板Dの光学基板PC、光学基板PP又は光学基板Dにおいては、ピッチと凸部底部外接円径φout又は、ピッチと高さHと、の関係を正の相関にも、負の相関にも制御して作製することが出来る。いずれの相関を採用するかは、既に説明した通りである。
回転と同期した基準信号に基づいて位相変調させたパルス信号は、例えば、次のように制御することができる。
図48A〜48Cを用いて、スピンドルモータのZ相信号と、基準パルス信号、変調パルス信号との関係を説明する。図48は、本実施の形態に係る光学基板PCを形成する露光装置におけるスピンドルモータのZ相信号を基準信号として基準パルス信号、変調パルス信号を設定した一例を説明する説明図である。Z相信号を基準とし、そのm倍(m>2の整数)の周波数のパルス信号が基準パルス信号であり、n倍(m/n>k且つk>1の整数)の周波数のパルス信号が変調パルス信号となる。基準パルス信号、変調パルス信号のいずれも、Z相信号の周波数の整数倍であるために、ロール状部材401が中心軸周りに1回転する時間内に整数のパルス信号が存在することになる。
続いて、図49を用いて、基準パルス信号と変調パルス信号、位相変調パルス信号との関係を説明する。図49は、本実施の形態に係る光学基板PCを形成する露光装置における基準パルス信号と変調パルス信号から、位相変調パルス信号を設定した一例を説明する説明図である。
基準パルス信号の位相を変調パルス信号の波長で周期的に増減させると、位相変調パルス信号となる。例えば、基準パルス周波数fY0を次の式(8)で表わし、変調周波数fYLを次の式(9)で表すと、周波数変調させた変調パルス信号fYは次の式(10)で表せられる。
fY0=Asin(ω0t+φ0) (8)
fYL=Bsin(ω1t+φ1) (9)
fY=Asin(ω0t+φ0+Csin(ω1t)) (10)
また、次の式(11)で表すように、基準パルス周波数fY0に、変調パルス信号か得られるサイン波を加算することでも位相変調パルス信号fY´を得ることができる。
fY´=fY0+C´sin(t・fYL/fY0×2π) (11)
さらには、基準パルスのパルス波長LY0に、変調パルス信号の波長LYLから得られるサイン波を加算することで、位相変調パルス信号の波長LYを得ることができる。
図49に示すように、得られる位相変調パルス信号は、変調パルス信号の信号間隔に応じて、基準パルス信号のパルス間隔が周期的に増減した信号となる。
また、露光装置470においては、位相変調したパルス信号によらず、一定周波数の基準パルス信号を用いて加工ヘッド部473によるレーザ露光のパルス信号を制御し、移動機構部474による加工ヘッド部473の移動速度を周期的に増減させる構成としてもよい。この場合には、例えば、図50に示すように、加工ヘッド部473の移動速度を周期的に増減する。図50は、本実施の形態に係る光学基板PCを形成する露光装置におけるレーザ光を照射する加工ヘッド部の移動速度の一例を説明する説明図である。図50に図示した移動速度は、基準移動速度±σの移動速度の例である。この移動速度は、ロール状部材471の回転と同期させることが好ましく、例えば、Z相信号における速度が図50に示す速度となるように制御する。
以上は、パタン476が周期的な位相変調で制御された場合であるが、周期的でなくランダムな位相変調によってパタン476を形成することもできる。例えば第1方向D1においては、ピッチPyは、パルス周波数に反比例するので、パルス周波数に、最大位相ずれが1/10になるようにランダム周波数変調を行うと、ピッチPyは、ピッチPyの1/10の最大変動幅δ1を有し、ランダムにピッチPyが増減したパタンを得ることができる。
回転と同期した基準信号の制御頻度については、ロール1周毎等複数回以上の頻度による基準信号により、変調パルス信号を制御してもよく、露光初期に設定した初期の基準信号のみで制御してもよい。初期の基準信号のみで制御する場合、回転制御部472の回転数に変調が生じた場合、露光パルス信号に位相変調が生じることとなる。なんとなれば、ナノオーダの回転制御であるため、回転制御部472のわずかな電位変動でも、ナノオーダのピッチ変動が生じ、それが積算されるためである。仮に500nmピッチのパタンピッチの場合、ロール外周長が250mmであると、50万回のレーザ露光となり、1万回毎に1nmのずれでも、50nmのずれとなる。
同じピッチ、同じ長周期でも、基準信号の制御頻度の調整により、図37及び図40に示す配置の微細構造を作製することが可能となる。図37に示す配置の微細構造を形成する場合は、基準信号の制御頻度を下げており、図40に示す配置の微細構造を形成する場合は基準信号の制御頻度を上げている。そのため、図40に示す配置においては、該当するドットの第2方向の位相(位置)がそろっており、図37に示す配置においては、該当するドットの第2方向の位相(位置)にずれが生じる。図39及び図41に示す配置の関係も同様である。
露光装置470により、表面に設けられたレジスト層が露光されたロール状部材471を現像し、現像したレジスト層をマスクとして、ドライエッチングによりエッチング層をエッチングする。エッチング後、残渣のレジスト層を除去すると、円筒状マスターモールドを得ることができる。
上述のように得られたパタン476を、所定の基板に転写し、本実施の形態に係る光学基板を得る方法としては特に限定されるものではなく、<<光学基板PP>>にて説明した転写法を採用できる。円筒状マスターモールド、具体的には、円筒状マスターモールド(ロール状部材471)のパタン476を一度フィルムに転写し、樹脂モールドを形成してから、既に説明した転写法を行う。
円筒状マスターモールドから樹脂モールドにパタン476を転写する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が適用できる。直接ナノインプリント法としては、所定温度で加熱しながら円筒状マスターモールドのパタン476に熱硬化性樹脂を充填し、円筒状マスターモールドを冷却してから硬化した熱硬化性樹脂を離型して転写する熱ナノインプリント法や、円筒状マスターモールドのパタン476に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、円筒状マスターモールドから硬化した光硬化性樹脂を離型して転写する光ナノインプリント法が挙げられる。
円筒状マスターモールド(ロール状部材471)は、シームレスの円筒状モールドであるため、特に、ロールツーロールナノインプリントにより樹脂モールドを連続転写することに好適である。
また、パタン476を転写した樹脂モールドから電鋳により電鋳モールドを作製し、この電鋳モールドを使用して転写法を行うことも出来る。電鋳モールドを形成した場合は、元型となる円筒状マスターモールドの寿命を延ばす点で好ましく、電鋳モールドを一度形成する方式においても、基材の平坦性を吸収できるため、さらに樹脂モールドを形成する方法が好ましい。
さらに、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パタン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パタン転写物を複数製造すること、又は、(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得て、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパタン反転転写することのいずれか一方、あるいは両方を意味する。
なお、上述した転写法に使用するモールドは、<<光学基板PP>>及び<<光学基板D>>に対しても同様に適用される。
<<半導体発光素子>>
次に、上記説明した<<光学基板PP>>、<<光学基板D>>、及び<<光学基板PC>>にて、図2〜図6を参照し説明した半導体発光素子のより好ましい状態に関し、説明する。
以下の説明においては、凹凸構造PP、凹凸構造D、又は凹凸構造PC(以下、単に凹凸構造と記載する)の高さは、凹凸構造の平均高さとして定義する。即ち、凹凸構造PPで定義した高さHの相加平均値を採用し、平均高さhと記載する。また、凹凸構造の平均凹部底部位置及び凸部頂部位置は、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察像より決定される。又、凹凸構造の凹部底部にまでプローブを走査させることが可能な場合、凹凸構造に対する原子間力顕微鏡により決定することも出来る。
<距離Hbun>
本実施の形態に係る半導体発光素子は、図2〜図6を参照し<<光学基板PP>>にて説明した半導体発光素子に関し、光学基板PPを光学基板PP、光学基板D又は光学基板PCにしたもの、凹凸構造PPを凹凸構造PP、凹凸構造D又は凹凸構造PCにしたものを採用できる。光学基板PP10の発光半導体層40側の表面と第1半導体層30の発光半導体層40側の表面と、の距離を距離Hbunと定義する。ここで、光学基板PP10の発光半導体層40側の表面とは、凹凸構造20の平均凹部底部位置として定義する。又、第1半導体層30の発光半導体層40側の表面は、平均面として定義する。平均は相加平均であり、平均点数は10点以上とする。即ち、距離Hbunは、凹凸構造20の平均凹部底部位置を基準とした時の第1半導体層30の平均厚みである。
<距離Hbu>
光学基板PP10の発光半導体層40側の表面と非ドープ第1半導体層31の発光半導体層40側の表面と、の距離を距離Hbuと定義する。ここで、光学基板PP10の発光半導体層40側の表面とは、凹凸構造20の平均凹部底部位置として定義する。又、非ドープ第1半導体層31の発光半導体層40側の表面は、平均面として定義する。平均は相加平均であり、平均点数は10点以上とする。即ち、距離Hbuは、凹凸構造20の平均凹部底部位置を基準とした時の非ドープ第1半導体層31の平均厚みである。
続いて、半導体発光素子100(200、300、400、500を含む。以下同様)を構成する各要素について詳細に説明する。
・距離Hbunと平均高さhと、の比率(Hbun/h)
距離Hbunと平均高さhと、の比率(Hbun/h)は下記式(12)を満たす。
8≦Hbun/h≦300 (12)
比率(Hbun/h)は、凹凸構造20の平均高さ(h)と第1半導体層30の平均厚みHbunと、の比率を意味しており、比率(Hbun/h)が大きい程、第1半導体層30の平均厚みHbunが大きくなる。比率(Hbun/h)が8以上であることにより、第1半導体層30の発光半導体層40側表面の平坦性が良好になるため好ましい。特に、比率(Hbun/h)は、凹凸構造20の設計自由度を向上させる観点から10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。又、比率(Hbun/h)は、凹凸構造20の影響を抑制し、第1半導体層30の発光半導体層40側表面の平坦性をより良好にする観点から、14以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましい。更に、第1半導体層30の、凹凸構造20の平均凸部頂部位置と発光半導体層40と、の間において、転位の衝突確率を増加させ、内部量子効率IQEをより高める観点から20以上がより好ましく、25以上が最も好ましい。一方で、比率(Hbun/h)が300以下であることにより、半導体発光素子100の反りを抑制することが出来る。半導体発光素子100の製造に係る時間を短縮する観点から、比率(Hbun/h)は200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。更に、光学基板PP10と第1半導体層30と、の熱膨張差による歪を小さくし、光学基板PP10の大きさを大きくし大面積の半導体発光素子100を製造した場合であっても、反りを効果的に抑制する観点から、比率(Hbun/h)は100以下であることがより好ましく、50以下であることが最も好ましい。
・距離Hbuと平均高さhと、の比率(Hbu/h)
距離Hbuと平均高さhと、の比率(Hbu/h)は下記式(13)を満たす。
3.5≦Hbu/h≦200 (13)
比率(Hbu/h)は、凹凸構造20の平均高さ(h)と、非ドープ第1半導体層31の平均厚みHbuと、の比率を意味しており、比率(Hbun/h)が大きい程、非ドープ第1半導体層31の平均厚みHbuが大きくなる。比率(Hbun/h)が3.5以上であることにより、非ドープ第1半導体層31の発光半導体層40側表面の平坦性が良好になるため好ましい。特に、比率(Hbu/h)は、凹凸構造20の設計自由度を向上させると共に、非ドープ第1半導体層31の半導体としての性能をドープ第1半導体層32へと反映させ第1半導体層30の製造時間を短縮する観点から4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。又、比率(Hbu/h)は、凹凸構造20の影響を抑制し、非ドープ第1半導体層31の発光半導体層40側表面の平坦性をより良好にする観点から、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。更に、非ドープ第1半導体層31の、凹凸構造20の平均凸部頂部位置と発光半導体層40と、の間において、転位の衝突確率を増加させ、内部量子効率IQEをより高める観点から15以上であることが最も好ましい。一方で、比率(Hbu/h)が200以下であることにより、半導体発光素子100の反りを抑制することが出来る。半導体発光素子100の製造に係る時間を短縮する観点から、比率(Hbu/h)は100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。更に、光学基板PP10と第1半導体層30と、の熱膨張差による歪を小さくし、光学基板PP10の大きさを大きくし大面積の半導体発光素子100を製造した場合であっても、反りを効果的に抑制する観点から、比率(Hbu/h)は30以下であることが最も好ましい。
・第1半導体層
第1半導体層30の材質は、既に説明した通りである。第1半導体層30の膜厚(Hbun)は、凹凸構造20を平坦化すると共に、第1半導体層30内部の転位を低減し、発光半導体層40及び第2半導体層50へ、と半導体としての性能を反映させることで内部量子効率IQEを向上させる観点から、1000nm以上であると好ましい。特に、凹凸構造20による転位低減の効果をより発揮する観点から、1500nm以上であることが好ましく、2000nm以上であることがより好ましい。更に、発光半導体層40及び第2半導体層50へ、と半導体としての性能を反映させ内部量子効率IQEを効果的に大きくする観点から、2500nm以上であることが好ましく、3000nm以上であることがより好ましく、4000nm以上であることが最も好ましい。一方、上限値は基板の反りを減少させる観点から100000nm以下であると好ましく、7500nm以下であることがより好ましく、6500nm以下であることが最も好ましい。
なお、ドープ第1半導体層32は、半導体発光素子(例えば、LED)に適したn型半導体層として使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体等に適宜、種々の元素をドープしたものを適用できる。ドープ第1半導体層32の膜厚は、発光半導体層40への電子注入性の観点から、800nm以上であると好ましく、1500nm以上であることがより好ましく、2000nm以上であることが最も好ましい。一方、上限値は、反りを低減する観点から、5000nm以下であることが好ましい。ドープ第1半導体層32の使用量を低減すると共に、半導体発光素子100の製造時間を短縮する観点から、4300nm以下であることが好ましく、4000nm以下であることがより好ましく、3500nm以下であることが最も好ましい。
非ドープ第1半導体層31は、ドープ第1半導体層32のn型半導体層としての性能に支障をきたさない範囲で適宜選択できる。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、III−V族、II−VI族、VI−VI族等の化合物半導体等を適用できる。非ドープ第1半導体層31の膜厚(Hbu)は、凹凸構造20を平坦化する観点から、1000nm以上であることが好ましい。特に、非ドープ第1半導体層31の内部にて転位を効果的に低減する観点から1500nm以上であることが好ましく、2000nm以上であることがより好ましく、2500nm以上であることが最も好ましい。一方上限値は、半導体発光素子100の反りを低減する観点から6000nm以下であることが好ましい。特に、半導体発光素子100の製造時間を短縮する観点から、5000nm以下であることが好ましく、4000nm以下であることがより好ましく、3500nm以下であることが最も好ましい。
なお、光学基板PP10の凹凸構造20上に少なくとも非ドープ第1半導体層31及びドープ第1半導体層32が順次積層される場合、ドープ第1半導体層32上に更に他の非ドープ半導体層(2)を設け、その上に発光半導体層40を設けることも出来る。この場合、他の非ドープ半導体層(2)としては、上記非ドープ第1半導体層31にて説明した材料を使用することが出来る。他の非ドープ半導体層(2)の膜厚は、半導体発光素子100の発光性の観点から、10nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることが最も好ましい。一方上限値は、発光半導体層40内における正孔と電子の再結合の観点から、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。
・第1半導体層及び凹凸構造の関係
第1半導体層30と凹凸構造20と、は第1半導体層30内部の転位低減の観点から適宜組み合わせることが出来る。凹凸構造20の凹部底部の有す平坦面(以下、「平坦面B」と呼ぶ)と、第1半導体層30の安定成長面に対してほぼ平行な面(以下、「平行安定成長面」と呼ぶ)と、が平行である場合、凹凸構造20の凹部近傍における第1半導体層30の成長モードの乱れが大きくなり、第1半導体層30内の転位を効果的に凹凸構造20に応じ分散化することが出来るため、内部量子効率IQEが向上する。安定成長面とは、成長させる材料において成長速度の最も遅い面のことをさす。一般的には、安定成長面は成長の途中にファセット面として現れることが知られている。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、M面に代表されるA軸に平行な平面が安定成長面となる。GaN系半導体層の安定成長面は、六方晶結晶のM面(1−100)、(01−10)、(−1010)であり、A軸に平行な平面の一つである。尚、成長条件によっては、GaN系半導体のM面以外の平面であるA軸を含む他の平面が安定成長面になる場合もある。
上記要件を満たす半導体発光素子にすることで、光学基板PP、光学基板D、及び光学基板PCの効果を効果的に発現した半導体発光素子を、効率よく製造できる。より具体的には、光学基板は一般的にウェハ状である。この光学ウェハに対して半導体結晶層を成膜する際に、半導体結晶層へのクラックの生成及び反りの問題が生じる。上記範囲を満たすことで、半導体結晶層の膜厚が薄い場合であっても、効率よく発光する半導体発光素子を製造できる。この点から、クラックと反りは減少し、効率のよい半導体発光素子チップを、1枚の光学ウェハから多く製造することが可能となる。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
以下の説明において使用する記号は、以下の意味を示す。
・DACHP…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製))
・M350…トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(東亞合成社製 アロニックスM350)
・I.184…1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製 Irgacure(登録商標) 184)
・I.369…2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製 Irgacure(登録商標) 369)
・TTB…チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製)
・SH710…フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製)
・3APTMS…3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(信越シリコーン社製))
・DIBK…ジイソブチルケトン
・MEK…メチルエチルケトン
・MIBK…メチルイソブチルケトン
・DR833…トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833(SARTOMER社製))
・SR368…トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR833(SARTOMER社製)
(実施例1)
<光学基板PP>
表面に模様Xが描かれた光学基板PPを作製し、該基板PPを使用して半導体発光素子(LED)を作製し、LEDの効率を比較した。
以下の検討においては、まず(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)円筒状マスターモールドに対して光転写法を適用して、樹脂モールドを作製した。(3)その後、樹脂モールドをナノ加工用シートへと加工した。続いて、(4)ナノ加工用シートを使用し、光学基板上に加工マスクを形成し、得られた加工マスクを介してドライエッチングを行うことで、表面に凹凸構造PPを具備する光学基板PPを作製した。最後に、(5)得られた光学基板PPを使用し、半導体発光素子を作製し、性能を評価した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法により円筒状石英ガラスの表面に、微細構造を形成した。まず円筒状石英ガラス表面上に、スパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、円筒状石英ガラスを回転させながら、波長405nmn半導体レーザを用い、レジスト層全面を一度露光した。続いて、一度露光されたレジスト層に対して、同様の半導体レーザを使用し、パルス露光を行った。ここで、レーザパルスの露光パタンに対し所定の規則性を加え、微細構造の配列を制御した。例えば、ある円筒状マスターに対しては、円筒状石英ガラスの周方向の露光パルス幅を一定とし、軸方向のパルス間隔をサイン波に乗じ変動させた。また、別の円筒状マスターに対しては、円筒状石英ガラスの周方向の露光パルス間隔及び軸方向の露光パルス間隔のいずれも、サイン波に乗じ変動させた。また、別の円筒状マスターに対しては、円筒状石英ガラスの周方向の露光パルス間隔及び軸方向の露光パルス間隔のいずれも、サイン波に乗じ変動させると共に、円筒状マスターの回転速度に増減を加えた。次に、パルス露光後のレジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。最後に、表面に微細構造が付与された円筒状石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い剥離した。剥離時間は6分間とした。
得られた円筒状石英ガラスをエキシマ洗浄し、続いて、微細構造に対し、フッ素系離型剤であるデュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、円筒状マスターモールドを得た。
(2)樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的に樹脂モールドG1を作製した。続いて、樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的に樹脂モールドG2を得た。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2.5μmになるように以下に示す材料1を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロールで押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細構造が転写された樹脂モールドG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
材料1…DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
作製した樹脂モールドG1の微細構造面を、光学顕微鏡にて観察し模様を確認した。更に、模様を走査型電子顕微鏡により拡大することで、微細構造を確認した。結果を表2にまとめた。なお、光学顕微鏡による観察は、株式会社ニコン社製の光学レンズを使用した株式会社キーエンス社製の超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500)及び株式会社ハイロックス社製のKH−3000VD(対物レンズ:OL−700)を使用して行った。特に、VK−9500を使用した場合は、10倍〜1000倍の範囲を観察し、KH−3000VDを使用した場合は、700倍〜5000倍を観察した。いずれの光学顕微鏡を使用した場合であっても、同様の光学模様が観察されたが、後者のKH−3000VDを使用した場合の方が、観察された光学模様の鮮明度が高いことが確認された。なお、以下の実施例における光学顕微鏡観察には、上記2つの光学顕微鏡をそれぞれ使用した。また、いずれの実施例においても、KH−3000VDを使用した場合の観察像が鮮明であることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡を使用し、樹脂モールドG1の微細構造面を観察した。走査型電子顕微鏡としては、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用した。また、以下いずれの実施例においても、特に断り書きの無い限り、走査型電子顕微鏡としては上記SU8010を使用した。
なお、表2において、列Aは、光学顕微鏡像を観察した結果を示し、列Bは走査型電子顕微鏡像を観察した結果を示す。
No.2−1の樹脂モールドG1は、光学顕微鏡により、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。なお、四方配列している第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、模様Xaの輪郭は略円形でありグラデーションがかっており、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。微細構造の凸部の輪郭は略円形であり、平均ピッチP’aveは300nmであった。更に、微細構造のピッチP’は、300nmを中心に連続的に変化していること、及び、該変化の大きな周期の平均が1450nmであり、光学顕微鏡観察により確認された模様Xの平均間隔Daveと略一致することが確認された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは小さくなることが確認された。
No.2−2の樹脂モールドG1は、光学顕微鏡により、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。四方配列している第1の領域Xaは、平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、四方配列している円形状模様Xaは、一軸方向に群をなし、該軸と垂直方向により大きく配列していることが確認された。即ち、光学顕微鏡像において、微視的には四方配列している円形状模様Xaが観察され、巨視的には、該円形状模様Xaとは別に、規則性の低いライン状の模様が観察された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaは略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、四方配列している部分、六方配列している部分及び四方配列と六方配列の中間の配列をしている部分が規則性低く混同した配列であった。より詳細に解析したところ、微細構造は1600nm〜1700nm程度の大きさの群をなしていた。即ち、走査型電子顕微鏡にて観察される微細構造の群の大きさと、光学顕微鏡により観察された円形状模様Xaと、の大きさが略一致した。また、走査型電子顕微鏡像により四方配列している部分と、六方配列している部分と、の規則性の低い周期および幅を50点プロットし、一方で光学顕微鏡にて観察されたライン状模様の間隔及び幅を50点プロットし、その整合性を確認したところ、R2=0.86にて整合を確認できた。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。
No.2−3の樹脂モールドG1は、光学顕微鏡により、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaがラインアンドスペース状に配列したライン状模様Xaが観察された。第1の領域Xaの平均間隔Daveは5060nmであった。また、第1の領域Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、ライン状模様Xaの平均間隔Daveが5060nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に(但し、ラインアンドスペースに垂直な方向)、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び20000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。微細構造は、平均ピッチP’aveが460nmの六方配列として観察された。更に、微細構造のピッチP’は、460nmを中心に所定の方向に連続的に変化しており、該変化の大きな周期の平均が5060nmであり、光学顕微鏡観察により確認された模様の平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは小さくなることが確認された。
No.2−4の樹脂モールドG1は、光学顕微鏡により、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、四方配列として観察されていた円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均幅15μmの一軸方向のライン状模様Xa(1)内に、平均間隔Daveが1450nmの四方配列の円形状模様Xa(2)が確認された。なお、ライン状模様Xa(1)を観察可能な倍率においては、円径状模様はほぼ観察することができなかった。また、ある円形状模様Xa(2)と、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xaは観察された。また、略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、平均ピッチP’aveは300nmの六方配列であることが確認された。更に、微細構造のピッチP’は、300nmを中心に所定の方向に連続的に変化しており、該変化の大きな周期の平均が1450nmであり、光学顕微鏡観察により確認された模様Xの平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。また、光学顕微鏡の低倍率観察時に観察されたライン状模様Xa(1)の界面部を走査型電子顕微鏡により観察したところ、六方配列から四方配列へと変化するような像が観察された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは小さくなることが確認された。
No.2−5の樹脂モールドG1は、光学顕微鏡により、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、四方配列として観察されていた円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均間隔が15μmの一軸方向のライン状配列内に、平均間隔Daveが1650nmの四方配列の円形状模様Xaが確認された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xaは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、平均ピッチP’aveは330nmであった。配列は、六方配列と四方配列を規則性低く含み、これらの配列の間を行き来する配列であった。
次に、樹脂モールドG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、樹脂モールドG2を作製した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、材料1を塗布膜厚2μmになるように塗布した。次いで、樹脂モールドG1の微細構造面に対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cm2となるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細構造が転写された樹脂モールドG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料1…DACHP:M350:I.184:I.369=17.5g:100g:5.5g:2.0g
作製した樹脂モールドG2の微細構造面を、光学顕微鏡にて観察して模様を確認した。更に、模様を走査型電子顕微鏡により拡大することで、微細構造を確認した。結果を表3にまとめた。
なお、表3において、列Aは、光学顕微鏡像を観察した結果を示し、列Bは走査型電子顕微鏡像を観察した結果を示す。
No.3−1の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、模様Xaの輪郭は比較的鮮明であった。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xaは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図14にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗の変化が急激におこり、その後徐々に変化する模様の周期が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。微細構造の凹部の輪郭は略円形であり、平均ピッチP’aveは300nmであった。更に、微細構造のピッチP’は、300nmを中心に連続的に変化していること、及び該変化の大きな周期の平均が1450nmであり、光学顕微鏡により観察された模様Xの平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凹部開口部径lcctも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凹部開口部径lcctは小さくなることが確認された。
No.3−2の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭は比較的鮮明であった。更に、四方配列している円形状模様Xaは、一軸方向に群をなし、該軸と垂直方向により大きく配列していることが確認された。即ち、光学顕微鏡像において、微視的には四方配列している円形状模様Xaが観察され、巨視的には、該円形状模様Xaとは別に、規則性の低いライン状の模様が観察された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図14にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗の変化が急激におこり、その後徐々に変化する模様の周期が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造(複数の凹部が配列する構造)により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、四方配列している部分、六方配列している部分及び四方配列と六方配列の中間の配列をしている部分とが規則性低く混同した配列であった。より詳細に解析したところ、微細構造は1600nm〜1700nm程度の大きさの群をなしていた。即ち、走査型電子顕微鏡にて観察される微細構造の群の大きさと、光学顕微鏡により観察された円形状模様Xaと、の大きさがほぼ一致した。また、走査型電子顕微鏡像により四方配列している部分と、六方配列している部分と、の規則性の低い周期および幅を50点プロットし、一方で光学顕微鏡にて観察されたライン状模様の間隔及び幅を50点プロットし、その整合性を確認したところ、R2=0.89にて整合を確認できた。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。
No.3−3の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaがラインアンドスペース状に配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaの平均間隔Daveは5060nmであった。また、第1の領域Xaの輪郭は比較的鮮明であった。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaがライン状模様であること、そして平均間隔Daveが5060nmであることに変りはなかった。即ち、図14にて説明したように、ある軸をとった時に(但し、ラインアンドスペースに垂直な方向)、明暗が急峻な変化する規則模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び20000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。微細構造は、平均ピッチP’aveが460nmの複数の凹部の六方配列として観察された。更に、微細構造のピッチP’は、460nmを中心に所定の方向に連続的に変化しており、該変化の大きな周期の平均が5060nmであり、光学顕微鏡により観察された模様Xの平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凹部開口部径lcctも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凹部開口部径lcctは小さくなることが確認された。
No.3−4の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、四方配列として観察されていた円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均幅15μmの一軸方向のライン状配列内に、平均間隔Daveが1450nmの四方配列の模様Xが確認された。なお、ライン状模様を観察可能な倍率においては、円形状模様はほぼ観察することができなかった。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、複数の凹部より構成され、平均ピッチP’aveは300nmの六方配列であることが確認された。また、光学顕微鏡の低倍率観察時に観察されたライン状模様の界面部を走査型電子顕微鏡により観察したところ、六方配列から四方配列へと変化するような像が観察された。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様において、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。また、微細構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凹部開口部径lcctも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凹部開口部径lcctは小さくなることが確認された。
No.3−5の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均間隔が15μmの一軸方向のライン状配列内に、平均間隔Daveが1650nmの四方配列の円形状模様Xaが確認された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様Xが観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様は、より微細な微細構造により形成されていることが確認できた。特に、微細構造は、複数の凹部より構成され、平均ピッチP’aveは330nmであった。配列は、六方配列と四方配列を規則性低く含み、これらの配列の間を行き来する配列であった。
なお、上記説明したフィルム状樹脂モールドG2の製造に使用した5本の円筒状マスターモールドの微細構造面をそれぞれ光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用い観察したところ、製造されたNo.3−1〜No.3−5のフィルム状樹脂モールドG2の観察結果と概ね同様の模様及び微細構造が観察された。
(3)ナノ加工用シートの作製
樹脂モールドG2の微細構造面に対して、下記材料2の希釈液(マスク層の希釈液)を塗工した。続いて、材料2を凹凸構造内部に内包する樹脂モールドG2の凹凸構造面上に、下記材料3の希釈液(レジスト層の希釈液)を塗工し、ナノ加工用シートを得た。
材料2…TTB:3APTMS:SH710:I.184:I.369=65.2g:34.8g:5.0g:1.9g:0.7g
材料3…Bindingpolymer:SR833:SR368:I.184:I.369=77.1g:11.5g:11.5g:1.47g:0.53g
Bindingpolymer…ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体のメチルエチルケトン溶液(固形分50%、重量平均分子量56000、酸当量430、分散度2.7)
(2)樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料2を、樹脂モールドG2の微細構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した材料2)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの微細構造の体積よりも小さくなるように設定した。具体的には、樹脂モールドG2の凹部内部に80nmの材料2が充填されるようにした。塗工後、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2を微細構造内部に内包する樹脂モールドG2を巻き取り回収した。
続いて、材料2を微細構造内部に内包する樹脂モールドG2を巻き出すと共に、ダイコータを使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料3を、微細構造面上に直接塗工した。凹凸構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離が400nmになるように設定した。塗工後、95℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、巻き取り回収した。
(4)光学基板のナノ加工
作製したナノ加工用シートを使用し、光学基板の加工を行った。光学基板としてはc面サファイア基板を使用した。
4インチφのサファイア基板に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、ナノ加工用シートの材料3表面を、サファイア基板に対して貼合した。この時、サファイア基板を105℃に加温した状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、樹脂モールドG2越しに光照射した。その後、樹脂モールドG2を剥離した。
得られた積層体(材料2/材料3/基板からなる積層体)の材料2面側より酸素ガスを使用したエッチングを行い、材料2をマスクとして見立て材料3をナノ加工し、サファイア基板表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。続いて、材料2面側からBCl3及びアルゴンの混合ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。エッチングは、ICP:150W、BIAS:100W、圧力0.3Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造を表面に具備するサファイア基板を得た。
作製した光学基板PPの凹凸構造面側を、光学顕微鏡にて観察し模様を確認した。更に、模様を走査型電子顕微鏡により拡大することで、凹凸構造を確認した。結果を表4にまとめた。
なお、表4において、列Aは、光学顕微鏡像を観察した結果を示し、列Bは走査型電子顕微鏡像を観察した結果を示す。
さらに、光学基板PPに対しては、レーザ光を使用した観察も行った。レーザ光としては、波長532nmのグリーンレーザを使用した。光学基板PPの主面に対して垂直にレーザ光を入射させた。ここで、入光面とレーザ光線の出射部と、の距離は、50mmとした。一方で、光学基板PPの出光面に平行で、且つ、出光面から150mm離れた位置にスクリーンを設け、スクリーン上に映し出されるレーザ光のパタンを観察した。なお、観察は暗室にて行った。また、以下の実施例において、レーザ光のスプリット数を記述したものは、全てここの記載と同様の試験を行ったものとする。
No.4−1の光学基板は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭は徐々に変化していた。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。凹凸構造は複数の独立した凸部より作られ、凸部底部の輪郭は略円形であり、平均ピッチP’aveは300nm、高さHの相加平均値は160nm、平均凸部底部外接円径φoutは210nmであった。更に、凹凸構造のピッチP’は、300nmを中心に、高さHは160nmを中心に、凸部底部径は210nmを中心に連続的に変化していること、及び該変化の大きな周期の平均が1450nmであり、光学顕微鏡により観察された模様Xの平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。なお、高さHの最大値は310nm、最小値は200nmであった。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であった。更に、凹部底部には平坦面が形成されていた。また、凹凸構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは大きくなることが確認された。また、光学顕微鏡により観察された模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に5つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
No.4−2の光学基板は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭は徐々に変化していた。更に、四方配列している円形状模様Xaは、一軸方向に群をなし、該軸と垂直方向により大きく配列していることが確認された。即ち、光学顕微鏡像において、微視的には四方配列している円形状模様Xaが観察され、巨視的には、該円形状模様Xaとは別に、規則性の低いライン状の模様が観察された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造(複数の凸部が配列する構造)により形成されていることが確認できた。特に、凹凸構造は、四方配列と六方配列が規則性低く混同した配列であった。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であった。更に、凹部底部には平坦面が形成されていた。なお、高さHの最大値は340nm、最小値は230nmであった。より詳細に解析したところ、凹凸構造は1600nm〜1700nm程度の大きさの群をなしていた。即ち、走査型電子顕微鏡にて観察される微細構造の群の大きさと、光学顕微鏡により観察された円形状模様Xaと、の大きさがほぼ一致した。また、走査型電子顕微鏡像により四方配列している部分と、六方配列している部分と、の規則性の低い周期および幅を50点プロットし、一方で光学顕微鏡にて観察されたライン状模様の間隔及び幅を50点プロットし、その整合性を確認したところ、R2=0.81にて整合を確認できた。また、光学顕微鏡により観察された模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に5つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
No.4−3の光学基板は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaがラインアンドスペース状に配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaの平均間隔Daveは5060nmであった。また、第1の領域Xaの輪郭は比較的鮮明であった。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaがライン状模様であること、そして平均間隔Daveが5060nmであることに変りはなかった。即ち、図14にて説明したように、ある軸をとった時に(但し、ラインアンドスペースに垂直な方向)、明暗が急峻に変化する規則模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍及び20000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。凹凸構造は、平均ピッチP’aveが460nmの複数の凸部の六方配列として観察された。なお、凸部は互いに独立していた。更に、凹凸構造のピッチP’は、460nmを中心に、凹凸構造の高さは250nmを中心に、凹凸構造の凸部底部径は310nmを中心に、所定の方向に連続的に変化しており、該変化の大きな周期の平均が5060nmであり、光学顕微鏡により観察された模様Xの平均間隔Daveとほぼ一致することが確認された。なお、高さHの最大値は440nm、最小値は240nmであった。また、凹凸構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは大きくなることが確認された。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であった。更に、凹部底部には平坦面が形成されていた。また、光学顕微鏡により観察された模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に3つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
No.4−4の光学基板は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1450nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、四方配列として観察されていた円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均幅15μmの一軸方向のライン状配列内に、平均間隔Daveが1450nmの四方配列の円形状模様Xaが確認された。なお、ライン状模様を観察可能な倍率においては、円形状模様はほぼ観察することができなかった。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1450nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。特に、凹凸構造は、複数の凸部より構成され、平均ピッチP’aveは300nm、平均凸部底部外接円径φoutは240nm、高さHの相加平均値は200nmであり、六方配列であることが確認された。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であった。更に、凹部底部には平坦面が形成されていた。また、光学顕微鏡の低倍率観察時に観察されたライン状模様の界面部を走査型電子顕微鏡により観察したところ、六方配列から四方配列へと変化するような像が観察された。また、凹凸構造のピッチP’の変化に伴い、高さH及び凸部底部外接円径φoutも連続的に変化していることが観察できた。特に、ピッチP’が増加することで、高さH及び凸部底部外接円径φoutは大きくなることが確認された。また、光学顕微鏡により観察された模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に9つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
No.4−5の樹脂モールドG2は、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが観察された。第1の領域Xaは平均間隔Daveが1650nmの円形状模様Xaであり、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。更に、光学顕微鏡の倍率を50倍にしたところ、四方配列として観察されていた円形状模様Xaは、一軸方向にライン状に群をなしていることが観察された。即ち、平均間隔が15μmの一軸方向のライン状配列内に、平均間隔Daveが1650nmの四方配列の円形状模様Xaが確認された。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は異なっている箇所が確認された。また、更に観察倍率を上げ、1400倍、2800倍、及び4900倍にした場合も、模様Xは観察された。また、第1の領域Xaが略円形状模様であること、そして平均間隔Daveが1650nmであることに変りはなかった。即ち、図16にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。特に、凹凸構造は、複数の凸部より構成され、平均ピッチP’aveは330nm、平均凸部底部外接円径φoutは150nm、高さHの相加平均値は150nmであった。配列は、六方配列と四方配列を規則性低く含み、これらの配列の間を行き来する配列であった。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であった。更に、凹部底部には平坦面が形成されていた。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に5つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
(5)半導体発光素子の作製
得られたサファイア基板上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファー層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光半導体層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア基板上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。更に、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。
[比較例1〜3]
比較例として、3種類の光学基板を用意し、該光学基板を使用し、上記の通り、半導体発光素子を作製し、発光出光を評価した。比較例にて使用した光学基板を表5にまとめた。
なお、表5において、列Aは、光学顕微鏡像を観察した結果を示し、列Bは走査型電子顕微鏡像を観察した結果を示す。
比較例1は、表5のNo.5−1であり、平均ピッチP’aveが300nmの複数の凸部が六方配列したサファイア基板である。複数の凸部は互いに独立しており、サファイア面内を任意に10点選択し、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、いずれの部分も略正六方配列の凹凸構造の配列が確認された。また、光学顕微鏡により、50倍、500倍及び1000倍の倍率にて観察したところ、模様は観察されず、略同一色の映像が映し出された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光のスプリットは観察されず、スクリーン上には光点が1点のみ写しだされていた。
比較例2は、表5のNo.5−2であり、平均ピッチP’aveが1500nmの複数の凸部を設けたサファイア基板である。また、光学顕微鏡により500倍及び1000倍の倍率にて観察された平均間隔Daveも1500nmであった。即ち、光学顕微鏡により観察される模様を拡大しても、それ以上に微細な凹凸構造は観察されなかった。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、容易に9つにスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
比較例3は、凹凸構造も模様も具備しないサファイア基板であり、表5のNo.5−3である。上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光のスプリットは観察されず、スクリーン上には光点が1点のみ写しだされていた。
表6に、内部量子効率IQE及び発光出力比である強度比を記載した。なお、強度比は、比較例3(表5のNo.5−3)を1として規格化した。また、内部量子効率IQEはPL強度より決定した。内部量子効率IQEは、(単位時間に発光半導体層より発せられるフォトンの数/単位時間に半導体発光素子に注入される電子の数)により定義される。本明細書においては、上記内部量子効率IQEを評価する指標として、(300Kにて測定したPL強度/10Kにて測定したPL強度)を採用した。
表6より以下のことがわかる。まず、比較例2(表5のNo.5−2)より、ナノオーダの凹凸構造を設けることで内部量子効率IQEが向上する。これは、第1半導体層の成長が乱されると共に、転位を分散化できたためと推定され、実際に透過型電子顕微鏡により測定された転位密度は、比較例3(表5のNo.5−3)に対して1桁以上減少していた。次に、比較例1(表5のNo.5−1)より、ナノオーダの凹凸構造のみでは、発光出光比が大きく向上しないことがわかる。これは、ナノオーダの凹凸構造の場合、有効媒質近似的作用が強く働くため、光学的散乱性が弱められ、光取り出し効率LEEの向上が限定されるためと推定される。一方で、実施例の表4のNo.4−1〜4−5においては、内部量子効率IQEが向上し、且つ発光出光比も大きくなっていることがわかる。これは、ナノオーダの凹凸構造により内部量子効率IQEを向上させると共に、凹凸構造の集合により描かれる光学的模様である模様Xによって、光散乱性が向上し、これにより光取り出し効率LEEが改善したためと考えられる。また、実施例の表4のNo.4−1〜4−5においては、観察される模様Xのオーダが、光学基板の厚み方向への構造へと反映されず、模様Xは実体としては存在しない模様であるため、第1半導体層の成膜条件によらず、クラックを抑制すること、そして、第1半導体層の厚みを減少させることができた。一方、比較例2(表5のNo.5−2)においては、第1半導体層の成膜条件によってはクラックが発生し、良好なLEDを製造することが困難であった。実施例どうしを比較すると、模様Xが作るより大きな配列や模様がある場合に、発光出光比が大きくなっていることがわかる。これは、このような観察がされるということは、光学的散乱性が複数のモードによって生じていることを意味するためである。即ち、光学的散乱性が強まり、導波モードを乱す効果が大きくなったためと推定される。
上記実施例より、光学顕微鏡により光学模様が観察されると共に、該光学模様はより微細な凹凸構造により作られることで、内部量子効率IQEと光取り出し効率LEEと、を同時に改善すると共に、半導体結晶層へのクラックの生成を低減し、半導体結晶層の成膜量(時間)も減少できることが判明した。ここで、凹凸構造の平均ピッチP’ave及び高さHについて、更に調査した。
(平均ピッチP’aveの影響)
円筒状マスターモールドを製造する際の、レーザパルスパタンを変更し、凹凸構造の平均ピッチP’aveをパラメータに設定した。ここで、凹凸構造のピッチP’がサイン波に乗じ変化するようにし、該サイン波のピッチは、凹凸構造のピッチP’の14倍として固定した。
作製した円筒状マスターモールドから、上記実施例と同様に、ナノ加工用シートを製造し、光学基板を加工した。製造した光学基板PPに対して、光学顕微鏡観察及び走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、以下のような光学模様が、観察された。
光学顕微鏡の倍率は、凹凸構造の平均ピッチP’aveにより異なり、500倍から1500倍の範囲内にて、鮮明に観察される領域があった。観察された光学模様は、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様Xであった。第1の領域Xaの平均間隔Daveは、凹凸構造の平均ピッチP’aveの13.5〜14.5倍の大きさとして観察された。また、光学顕微鏡の倍率を、2800倍及び4200倍へと拡大した場合であっても、同様の模様Xが観察された。また、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は多少異なっていたが、略均質な円形状模様として観察された。即ち、図15にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。なお、凹凸構造の配列は、六方配列であることが確認された。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であり、凸部頂部に平坦面はなく、凹部底部には平坦面のある構造であった。また、光学顕微鏡により観察された明暗模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、光学基板の凹凸構造により異なったが、5〜13個にスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
上記実施例と同様に、LEDを組み立て、効率を比較した。結果を表7に記載した。
まず、内部量子効率IQEについては、凹凸構造の平均ピッチP’aveがナノオーダに小さくなると、増加することがわかる。これは、凹凸構造の密度が、平均ピッチP’aveが1500nm以下程度から、半導体結晶層の転位密度に漸近するためであり、これにより、転位を分散化すると共に、低減できたためと推定される。特に、平均ピッチP’aveが900nm以下の場合、半導体結晶層の転位密度数に対する凹凸構造密度がより高くなる傾向にあることから、この効果が促進したと考えられる。これは、透過型電子顕微鏡を用いた光学基板の断面観察からも判断がついた。より具体的には、透過型電子顕微鏡観察により、平均ピッチP’aveが1500nm以下の場合は、1つの凹部から1〜4本程度の転位が生成していたが、平均ピッチP’aveが900nm以下の場合は、1つの凹部から1〜2本程度の転位しか発生していなかった。次に、強度比に注目する。なお、強度比は最も効率の低かったNo.7−9を1として規格化している。平均ピッチP’aveが900nmを境に、強度比が大きく向上していることがわかる。これは、内部量子効率IQEの向上に加えて、凹凸構造そのものの光回折作用と、光学模様による光散乱作用が組み合わさって発現したためと推定される。以上から、光学基板の凹凸構造の平均ピッチP’aveは、900nm以下がより好ましいと判断できる。
(高さHの影響)
円筒状マスターモールドを製造する際の、レーザパルス強度を変更し、凹凸構造の深さ(高さ)をパラメータに設定した。ここで、凹凸構造のピッチP’がサイン波に乗じ変化するようにし、該サイン波のピッチは、3500nmとした。
作製した円筒状マスターモールドから、上記実施例と同様に、ナノ加工用シートを製造し、光学基板を加工した。製造した光学基板に対して、光学顕微鏡観察及び走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、以下のような光学模様が、観察された。
光学顕微鏡の倍率を500倍、1400倍、2800倍、4900倍の範囲にて変えたが、どの倍率においても、円形状模様Xaが観察された。円形状模様Xaの平均間隔Daveは、3500nmであった。観察された円形状模様Xaは、明暗の変化として周囲よりも明るい第1の領域Xaが四方配列した模様であった。また、円形状模様Xaの輪郭はグラデーションがかっていた。また、ある円形状模様Xaと、他の円形状模様Xaと、の明暗は多少異なっていたが、略均質な円形状模様として観察された。即ち、図15にて説明したように、ある軸をとった時に、明暗が連続的に変化する模様が観察された。更に、走査型電子顕微鏡にて5000倍、10000倍、及び50000倍の倍率にて観察したところ、光学顕微鏡にて観察された模様Xは、より微細な凹凸構造により形成されていることが確認できた。なお、凹凸構造の配列は、六方配列であることが確認された。また、凸部は、凸部底部から凸部頂部へ、と向かうに従い、径が細くなる形状であり、凸部頂部に平坦面はなく、凹部底部には平坦面のある構造であった。凸部の平均ピッチP’aveは700nmであった。また、光学顕微鏡により観察された模様Xにおいて、明部から暗部にかけて走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、明部、暗部、及びそれらの界面部には、全て微細構造が形成されていることが確認された。一方で、上記レーザ光線を用いた観察を行ったところ、レーザ光はスプリットされ、5個にスプリットしたレーザ出光パタンを確認することが出来た。
上記実施例と同様に、LEDを組み立て、効率を比較した。結果を表8に記載した。
まず、内部量子効率IQEについては、凹凸構造の高さHが低くなるほど、増加することがわかる。これは、凹凸構造の密度が高い領域内での比較においては、凹凸構造の高さHが小さい程、半導体結晶層の成膜性が安定するためと考えられる。特に、高さHが1000nmを境に、内部量子効率IQEが大きく向上している。半導体結晶層の成膜時間を固定し、第1半導体層を成膜した後の、表面粗さを原子間力顕微鏡にて評価したところ、高さHが1300nmの場合と1000nmの場合と、では、表面粗さが2倍も異なり、高さHが1000nmの方がより平滑であった。この良好な平坦性の起因して、発光半導体層及び第2半導体層の膜質も良好となり、内部量子効率IQEが改善したと推定される。以上から、高さHは1000nm以下がより好ましいと判断できる。次に、強度比に注目する。なお、強度比は最も効率の低かったNo.8−5を1として規格化している。内部量子効率IQEの場合と同様に高さが1000nmを境に、強度比が大きく向上していることがわかる。これは、主に内部量子効率IQEの向上に影響されている。一方で、高さが500nmの場合、更に強度比が向上することがわかる。これは、光回折が適度になると共に、凹凸構造により描かれる模様Xの明暗の差が大きくなり、導波モードを乱す程度が高まったためと推定される。以上から、高さHは500nm以下であると最も好ましいと判断できる。
次に、光学模様とレーザ光線のスプリット数と、の関係を簡便に調査した。レーザ光線のスプリットは、有効屈折率Nemaが、回折格子として機能する場合に発現する現象である。よって、円筒状マスターモールドを製造する際の、ピッチの変調に対する周期性を制御することで、レーザ光線のスプリットの有無をパラメータに設定した。上記説明してきた手法と同様にして、サファイア基板を加工した。加工されたサファイア基板は以下の3種類である。
光学基板1.走査型電子顕微鏡により観察された凹凸構造の平均ピッチP’aveが300nm。500倍及び1400倍の光学顕微鏡観察により、円形状模様Xaを確認した。円形状模様Xaの平均間隔Daveは、4200nmであった。模様Xにおける第1の領域Xaは、ほぼ円形状の外形であり四方配列していた。レーザ光線のスプリット数は、5であった。
光学基板2.走査型電子顕微鏡により観察された凹凸構造の平均ピッチP’aveが300nm。500倍及び1400倍の光学顕微鏡観察により、略円形状の様Xaを確認した。模様Xにおける、第1の領域Xaの配置に規則性は観察されず、ランダムであった。レーザ光線のスプリットは観察されなかった。
光学基板3.走査型電子顕微鏡により観察された凹凸構造の平均ピッチP’aveが4200nm。500倍及び1400倍の光学顕微鏡観察により、略円形状の様Xaを確認した。模様Xにおける第1の領域Xaの大きさと、走査型電子顕微鏡により観察された凹凸構造の凸部の大きさと、は略同じであった。レーザ光線のスプリット数は、9つであった。
上記光学基板1.〜光学基板3.の光学基板を使用し半導体発光素子を製造して、その効率を比較した。まず、内部量子効率IQEについては、光学基板1.と光学基板2.とが略90%であり、同様であった。一方で、光学基板3.においては60%であり、非常に低いことが判明した。次に、光取り出し効率LEEを、発光出力と内部量子効率IQEより計算し比較したところ、光学基板3.、光学基板2.、光学基板1.の順に高いことがわかった。最後に、発光出力は、光学基板2.、光学基板1.、光学基板3.の順番に良好であった。即ち、光学顕微鏡により模様Xが観察されると共に、該模様Xは走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造の要素の差異により作られるものであり、且つ、レーザ光線のスプリットが観察される場合が、最も効率がよいことがわかった。この理由は以下のように考えることが出来る。まず、走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造は、実体として存在する物理的構造である。そして、光学顕微鏡により観察される模様Xのオーダが、走査型電子顕微鏡により観察される凹凸構造のオーダよりも大きいことは、実体として存在する凹凸構造の要素の差異により光学的な模様が描かれていることを意味する。即ち、光から見た場合に大きな模様Xが存在するのであって、実体としては、そのような大きな構造は存在しないことを意味する。この為、光学基板3.においては、大きな実体としての凹凸構造の影響で、半導体結晶層の成膜が良好に行われず、クラックが生成し、内部量子効率IQEが低下したと考えられる。一方で、光学基板1.においては、実体としての構造は、ナノオーダの構造であることから、半導体結晶層の転位低減効果が大きく、半導体結晶層へのクラックも抑制出来、内部量子効率IQEが向上したと考えられる。そして、レーザ光線のスプリットは、光と模様Xと、の相互作用の強さを表す尺度である。より具体的には、模様Xが、発光光に対して、ランダムな散乱成分として機能するか、或いは回折格子として機能するかを尺度である。特に、模様Xにより作られる回折格子は、実体としての回折格子にくらべ、格子界面が緩やかに変化することから、光回折と光散乱と、を混在させたような光学現象へと結びつく。よって、レーザ光線に対するスプリットのある方が、ない場合に比べ、光取り出し効率LEEが向上すると推定される。以上から、光学基板2.、光学基板1.、光学基板3.の順に半導体発光素子の性能が高くなったと考えられる。
(実施例2)
<光学基板D>
表面に凹凸構造Dを具備する光学基板Dを作製し、該光学基板Dを使用して半導体発光素子(LED)を作製し、LEDの効率を比較した。この時、凹凸構造の配列や形状を変化させ、(標準偏差/相加平均)を制御した。
実施例1と同様に、(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)樹脂モールドを作製した。(3)その後、樹脂モールドを用いて、ナノ加工用部材(ナノ加工用シート)を作製した。続いて、(4)ナノ加工用シートを使用し、光学基板の表面に凹凸構造を作製した。最後に、(5)得られた凹凸構造Dを具備した光学基板Dを使用し、半導体発光素子を作製し、性能を評価した。なお、凹凸構造Dの(標準偏差/相加平均)は、(1)にて作製する円筒状マスターモールドの凹凸構造、(3)にて行う光転写法、(4)にて作製するナノ加工用シート、及びドライエッチングにより制御した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
実施例1と同様にした。
(2)樹脂モールドの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的に樹脂モールドG1を作製した。続いて、樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的に樹脂モールドG2を得た。樹脂モールドG1は、材料1の塗布膜厚を5μmに変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。樹脂モールドG2は、材料1の塗布膜厚を3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして作製した。
(3)ナノ加工用シートの作製
樹脂モールドG2の凹凸構造面に対して、実施例1で説明した材料2の希釈液を塗工した。続いて、材料2を凹凸構造内部に内包する樹脂モールドG2の凹凸構造面上に、上記材料3の希釈液を塗工し、ナノ加工用シートを得た。
(2)樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGMEにて希釈した材料2を、樹脂モールドG2の凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、単位面積当たりの塗工原料(PGMEにて希釈した材料2)中に含まれる固形分量が、単位面積当たりの凹凸構造の体積よりも20%以上小さくなるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料2を凹凸構造内部に内包する樹脂モールドG2を巻き取り回収した。
続いて、材料2を凹凸構造内部に内包する樹脂モールドG2を巻き出すと共に、(2)樹脂モールドの作製と同様の装置を使用し、PGME及びMEKにて希釈した材料3を、凹凸構造面上に直接塗工した。ここで、希釈濃度は、凹凸構造内部に配置された材料2と塗工された材料3の界面と、材料3の表面と、の距離が400nm〜800nmになるように設定した。塗工後、80℃の送風乾燥炉内を5分間かけて通過させ、材料3の表面にポリプロピレンから成るカバーフィルムを合わせ、巻き取り回収した。
(4)光学基板のナノ加工
作製したナノ加工用シートを使用し、光学基板の加工を行った。光学基板としてはc面サファイア基板を使用した。
2インチφのサファイア基板に対しUV−O3処理を5分間行い、表面のパーティクルを除去すると共に、親水化した。続いて、ナノ加工用シートの材料3表面を、サファイア基板に対して貼合した。貼合圧は、0.3MPaとし、貼合速度は50mm/秒とした。この時、サファイア基板を80℃に加温し、貼合ローラ表面の温度を105℃にした状態で貼合した。続いて、高圧水銀灯光源を使用し、積算光量が1200mJ/cm2になるように、樹脂モールドG2越しに光照射した。その後、樹脂モールドG2を剥離した。
得られた積層体(材料2/材料3/基板からなる積層体)の材料2面側より酸素ガスを使用したエッチングを行い、材料2をマスクとして見立て材料3をナノ加工し、サファイア基板表面を部分的に露出させた。酸素エッチンングとしては、圧力1Pa,電力300Wの条件にて行った。続いて、材料2面側からBCl3ガスを使用した反応性イオンエッチングを行い、サファイアをナノ加工した。BCl3を使用したエッチングは、ICP:150W、BIAS:50W、圧力0.2Paにて実施し、反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を使用した。
最後に、硫酸及び過酸化水素水を2:1の重量比にて混合した溶液にて洗浄し、凹凸構造を表面に具備するサファイア基板を得た。なお、サファイア基板上に作製される凹凸構造の形状は、主に、ナノ加工用シートの材料2の充填率と材料3の膜厚により制御した。
サファイア基板の表面に作製された凹凸構造の形状は、円筒状マスターモールドに作製した凹凸構造の形状、樹脂モールドを製造する際のニップ圧条件、ドライエッチングの処理条件により適宜制御した。図51及び図52は、本発明の実施例で作製した光学基板Dの凹凸構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。図51は平均ピッチP’aveが200nmの場合であり、図51Aが表面像を、図51Bが断面像をそれぞれ示している。
図51より、サファイア基板上には複数の略円錐状凸部が互いに離間し配列していることがわかる。図51Aの表面像より、主な分布は、凸部底部外接円径φout、及び、凸部底部外接円径φoutと凸部底部内接円径φinと、の比率であることがわかる。特に、凸部底部外接円の形状は、略円形であり、以下の表9に示すように、凸部底部外接円径φout/凸部底部内接円径φinに対する変動係数は小さなものであった。また、図51Bの断面像より、凸部の高さH及び凸部側面の傾斜角度に分布のばらつきが生じていること、即ち他の部位とは異なる凸部の高さH及び凸部側面の傾斜角度を有する凸部からなる特異部位が含まれていることがわかる。特に、凸部の高さHが高い時には、凸部底部外接円径φoutが大きく、高さHが低い時には、凸部底部外接円径φoutが小さいことが確認された。各要素に対して変動係数を求めた結果、特に、凸部底部外接円径φoutの分布が大きなことがわかった。なお、凹部底部に平坦面が作製できていることも確認できた。
一方、図52は平均ピッチP’aveが300nmの場合であり、図52Aが表面像を、図52Bが断面像をそれぞれ示している。図52より、サファイア基板上には複数の略円錐状凸部が互いに離間して配置され、各凸部側面の傾斜角度は二段階に変化していることがわかる。図52Aの表面像より、凸部底部の輪郭形状は真円とは程遠く、輪郭において複数の変曲点を有することがわかる。又、凸部高さが部分的に低い、或いは凸部が部分的にない部位が生じていることもわかる。この部位は、樹脂モールドを製造する際に、ニップ圧を制御し、樹脂モールドの凹凸構造として作製した部分が転写形成された部分である。更に、図52Bの断面像より、凸部の頂部の位置に分布のあることも確認された。即ち、凸部底部外接円の輪郭に着目した際に、その中心に頂点がある場合もあれば、頂点の位置が、凸部底部外接円の輪郭の中心にない場合も混在されていた。これは、ドライエッチング工程に生じる熱を利用し、レジスト層が熱振動する現象を利用したものである。
以上のように、得られたサファイア基板を走査型電子顕微鏡により観察した結果を表9にまとめた。
(5)半導体発光素子の作製
実施例1と同様にした。発光出力は、表9のNo.9−7に記載の凹凸構造を具備しないサファイア基板を使用した場合の出力を1とし評価した。なお、表9において、No.9−6、9−7は、比較例である。
表9からわかるように、凹凸構造を具備しないサファイア基板を使用した場合(No.9−7)に比べ、凹凸構造を具備するサファイア基板を使用した場合(No.9−6、No.9−1〜9−5)の発光出力が向上していることがわかる。比較例であるNo.9−6は、平均ピッチP’aveが200nmであり、六方最密充填配列にて複数の凸部が配列したサファイア基板を示している。この場合、発光出力はほとんど増加していないことがわかる。これは、平均ピッチP’aveが200nmと微小であることから、転位密度は減少し内部量子効率IQEが向上するが、凹凸構造が微小すぎるため光取り出し効率LEEが殆ど向上しないためと考えられる。なお、転位密度は透過型電子顕微鏡観察より、1桁以上大きく減少していることが観察されている。続いて、No.9−1はNo.9−6と平均ピッチP’aveは同じであるが、凸部形状に起因する凹凸構造の乱れを大きくした場合である。No.9−1の場合、No.9−6に比べ発光出力が増加していることがわかる。これは、凸部形状に起因する凹凸構造の乱れに応じた散乱成分により、導波モードを乱す効果が加わった為と考えることが出来る。なお、No.9−1とNo.9−6の凹凸構造をフィルムに転写しヘーズを測定したところ、No.9−1の凹凸構造の方が、1.5倍程度ヘーズが大きいことが確認された。No.9−1とNo.9−6は共に平均ピッチP’aveが200nmであり、共に六方最密充填配列であることから、このヘーズの増加は乱れによる散乱の影響と考えることが出来る。No.9−1とNo.9−2は、平均ピッチP’aveは同様に200nmであるが、ピッチの分布が異なる。No.9−2においては、ピッチP’を180nm〜220nmの間でサイン波に乗じ変化させている。サイン波の波長は2800nmである。このピッチP’の変調がピッチの分布として現れている。No.9−1とNo.9−2は、平均ピッチP’aveが同じであるため、内部量子効率IQEに与える凹凸構造の影響はほぼ同様と考えることが出来る。よって、発光出力の増加は、ピッチの分布により生じる散乱の影響と考えられる。No.9−3は平均ピッチP’aveが300nmの場合であり、六方最密充填にて配列した場合である。No.9−3の凹凸構造は、φin/φoutが大きな値をもっている。これは、図52に例示したように、凸部底部の輪郭を大きく歪ませたことによる。No.9−3の発光出力がNo.9−1のそれより大きいのは、凸部形状に起因する凹凸構造の乱れが大きいことに起因した光散乱性の付与と、平均ピッチP’aveが大きくなったことによると考えられる。平均ピッチP’aveの与える内部量子効率への影響を調査したところ、平均ピッチP’aveが350nmを超えたあたりから、内部量子効率IQEの低下が顕著になることが確認できている。即ち、平均ピッチP’aveが200nmから300nmに増加することで低下する内部量子効率IQEの影響に比べ、平均ピッチP’aveが増加したことによる光取り出し効率LEEのへの影響が大きいと考えることが出来る。又、No.9−3がNo.9−2に比べ発光出力が小さいのは、凹凸構造の乱れがNo.9−2の方が大きい為に、導波モードを乱す効果が小さいためと推定される。No.9−4は、平均ピッチP’aveが300nmであり、No.9−3に比べて凸部の高さの分布のばらつきが大きい場合である。これは、部分的に凸部の欠落した構造を作製することで実現した。No.9−4の凹凸構造は高さに大きな乱れがあるため、乱れに応じた散乱成分が大きく、この為、導波モードを効果的に乱せていると考えられる。更に、No.9−5においては、No.9−4に対してピッチに分布を加えている。ピッチP’の分布は270nm〜330nmの間における分布とし、サイン波に乗じさせた。サイン波の波長は1200nmとした。No.9−4に比べピッチの分布の効果も加わるため、発光出力がより向上していることがわかる。なお、No.9−2及びNo.9−5については、実施例1と同様の光学顕微鏡観察により模様Xを観察することができた。また、実施例1と同様のレーザ光線を使用した観察を行ったところ、レーザ光が5つにスプリットすることが観察された。なお、上記2点以外の実施例及び比較例にて使用した光学基板に対しては、光学模様及びレーザ光のスプリットは観察されなかった。
(実施例3)
<光学基板PC>
(円筒状マスターモールドの作製)
円筒状マスターの基材としては、直径80mm、長さ50mmの円筒型石英ガラスロールを用いた。この円筒型石英ガラスロール表面に、次の方法により半導体パルスレーザを用いた直接描画リソグラフィ法により微細構造(微細凹凸構造)を形成した。
まず、この石英ガラス表面の微細構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、CuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。以上のように作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:398nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:80nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:460nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:100nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
Y軸方向ピッチPyは次のように決定される。
スピンドルモータのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、線速度sから周長Lが計算され、次の式(14)が得られる。
L=T×s (14)
目標ピッチをPyとして、L/Pyが整数になるように目標ピッチPyの0.1%以下の値を足して調整し、実効ピッチPy’を次の式(15)によって得る。
L/Py’=m (mは整数) (15)
目標ピッチPyと実効ピッチPy’とは、厳密にはPy≠Py’であるが、L/Py≒107であるので、Py/Py’≒107となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。同様に、長周期PyLも、L/PyLが整数になるように実効長周期PyL’を次の式(16)によって得る。
L/PyL’=n (nは整数) (16)
この場合も、厳密にはPyL≠PyL’であるが、L/PyL≒105
であるので、PyL/PyL’≒105 となり、実質的に等しいものとして扱うことができる。
次に実効ピッチPy’から、式(17)、(18)により、基準パルス周波数fy0、変調周波数fyLが算出される。
fy0=s/Py’ (17)
fyL=s/PyL’ (18)
最後に、式(17)、(18)から、スピンドルモータのZ相信号からの経過時間tにおけるパルス周波数fyが、式(19)のように決定される。
fy=fy0+δ1×sin(t×(fyL/fy0)×2π) (19)
X軸方向の軸送り速度は次のように決定される。
スピンドルモータのZ相信号を基準に、1周に要する時間Tが測定され、X軸方向ピッチPxから、軸方向の基準送り速度Vx0が次の式(20)のように決定される。
Vx0=Px/T (20)
X軸方向の長周期PxLから、時刻tにおける軸送り速度Vxを次の式(21)で決定し、スキャンする。
Vx=Vx0+Vδ2・sin(Px/PxL×t×2π) (21)
ここで、Vδ2は、x軸方向の長周期PxLにおける速度変動幅であり、長周期PxLのピッチ変動幅δ2,Px,Vx0により、次の式(22)で示される。
Vδ2=δ2×Vx0/Px (22)
次に、レジスト層を現像する。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、処理時間240秒の条件で実施した。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒状マスターから、残渣のレジスト層のみをpH1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒状マスターモールドを作製した。
(樹脂モールドの作製)
得られた円筒状の石英ガラスロール表面(転写用モールド)に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を施した。
次に、得られた円筒状マスターモールドから樹脂モールドを作製した。DACHP、M350及びI.184を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
次いで、円筒状マスターモールド)に対し、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
樹脂モールドを走査型電子顕微鏡で観察したところ、凸部底部外接円径φoutが400nm、高さHが800nmの凸部が次の長周期構造を有する周期構造で形成されていた。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
X軸方向ピッチPx:398nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:80nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :5μm
Y軸方向ピッチPy:460nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:100nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :5μm
(電子顕微鏡)
装置;HITACHI S−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
(反転樹脂モールドの作製)
次に、DACHP、M350、及びI.184を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚2μmになるように塗布した。
次いで、上記樹脂モールドに、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cm2となるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200mm、幅300mm)を得た。
(ナノインプリントリソグラフィ)
φ2”厚さ0.33mmのC面サファイア基板上に、マスク材料をスピンコーティング法(2000rpm、20秒)により塗布し、レジスト層を形成した。マスク材料は、感光性樹脂組成物の固形分を5重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した塗布溶液を作製した。
(感光性樹脂組成物)
感光性樹脂組成物としては、3−エチル−3{[3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(OXT−221、東亜合成社製)20重量部、3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬社製)80重量部、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(アロニックス(登商標)M−101A、東亜合成社製)50重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニックス(登録商標)M−211B、東亜合成社製)50重量部、DTS−102(みどり化学社製)8重量部、1,9−ジブトキシアントラセン(アントラキュア(登録商標)UVS−1331、川崎化成社製)1重量部、Irgacure(登録商標)184(Ciba社製)5重量部及びオプツール(登録商標) DACHP(20%固形分、ダイキン工業社製)4重量部、を混合して使用した。
レジスト層を形成したサファイア基板上に、透明樹脂モールドシートを70mm×70mm(□70mm)に切断し貼り合わせた。貼り合わせには、サンテック社製のフィルム貼合装置(TMS−S2)を使用し、貼合ニップ力90N、貼合速度1.5m/sで貼り合わせた。次に、貼合し一体化した透明樹脂モールド/レジスト層/サファイア基板とを、□70mm×t10mmの透明シリコーン板(硬度20)2枚で挟んだ。その状態でエンジニアリングシステム社製のナノインプリント装置(EUN−4200)を用いて、0.05MPaの圧力でプレスした。プレスした状態で、透明樹脂モールド側から紫外線を2500mJ/cm2で照射し、レジスト層を硬化させた。硬化後、透明シリコーン板と透明樹脂モールドを剥離し、C面状にパタンが形成されたレジスト/サファイア積層体を得た。
(エッチング)
反応性イオンエッチング装置(RIE−101iPH、サムコ株式会社製)を用い、下記エッチング条件でサファイアをエッチングした。
エッチングガス:Cl2/(Cl2+BCl3)=0.1
ガス流量:10sccm
エッチング圧力:0.1Pa
アンテナ:50w
バイアス:50w
エッチング後、サファイア基板の断面と表面構造を電子顕微鏡で観察したところ、凸部底部外接円径φoutが400nm、高さHが250nmの凸部が、ナノインプリントに使用したリール状透明樹脂モールドと同様の長周期構造を含む周期構造であり、ナノ構造体で構成された周期5μmを有する2次元フォトニック結晶が得られた。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
(半導体発光素子の形成)
得られたサファイア基板上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファー層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光半導体層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層、(7)ITO層を連続的に積層した。サファイア基板上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。さらに、エッチング加工し電極パッドを取り付けた。
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。得られた半導体発光素子の発光中心波長は450nmであった。比較例4との発光出力比を表10に示す。後述の比較例4と比較して、発光素子からの発光に、回折特有のギラツキは観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
(実施例4)
実施例3と同様に作製した円筒状マスターを線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:260nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:26nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :3.64μm
Y軸方向ピッチPy:300nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:30nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :4.2μm
次に実施例3と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
次に、作製したリール状透明樹脂モールドの表面を走査型電子顕微鏡により観察した。観察された微細構造においては、Y軸方向(上下方向)、X軸方向(左右方向)共に、ナノオーダの凸部が不定間隔で配列され、各ピッチは、上記したピッチが、長周期で繰り返し配列されていた。
さらに、実施例3と同様の方法で、サファイア基板の表面に、ナノオーダの凹凸構造を転写した。電子顕微鏡で断面、及び、表面構造を観察したところ、縦方向に長周期3.64μm、横方向に長周期4.2μmを有する2次元フォトニック結晶が得られた。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
以下、実施例3と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表10に示す。実施例3と同様、得られた半導体発光素子の発光中心波長は、450nmであり、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
(実施例5)
実施例3と同様に作製した円筒状マスターを線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:700nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:70nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :4.90μm
Y軸方向ピッチPy:606nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:61nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :4.8μm
次に実施例3と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
さらに、実施例3と同様の方法で、サファイア基板の表面に、ナノオーダの凹凸構造を転写した。電子顕微鏡で断面、及び、表面構造を観察したところ、縦方向に長周期4.90μm、横方向に長周期4.8μmを有する2次元フォトニック結晶が得られた。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
以下、実施例3と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表10に示す。実施例3と同様、得られた半導体発光素子の発光中心波長は、450nmであり、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
(実施例6)
実施例4と同様にして、表面に微細構造が反転転写された透明樹脂モールドシート(長さ200m、幅300mm)を得た。
(中間体の形成)
得られたサファイア基板上に、MOCVDにより、(1)AlGaN低温バッファー層、(2)n型GaN層、(3)n型AlGaNクラッド層、(4)InGaN発光半導体層(MQW)、(5)p型AlGaNクラッド層、(6)p型GaN層を連続的に積層した。サファイア基板上の凹凸は、(2)n型GaN層の積層時に埋められて、平坦化する製膜条件とした。
続けて、p電極層をスパッタによって作製した後、Siウェハー支持体とp電極層とをハンダを介して接合した。そして、サファイア基板裏側(n型GaN層に面している面と反対側)からレーザ光を照射して、レーザリフトオフにより、サファイア基板を分離除去し、サファイア基板の除去により露出したn型GaN層表面を塩酸によって洗浄した。得られたn型GaN層表面には、サファイア基板表面が反転された微細構造が形成された。
n型GaN層表面を電子顕微鏡で観察したところ、ナノオーダの凹凸構造が転写され、縦方向に長周期4.90μm、横方向に長周期4.8μmを有する2次元フォトニック結晶が得られた。さらに、n型GaN層表面にn電極を形成し、半導体発光素子とした。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。この実施例6と、後述の比較例Bとの発光出力比を表10に示す。実施例6の発光素子からの発光においては、得られた半導体発光素子の発光中心波長は、450nmであり、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
(実施例7)
実施例3と同様に作製した円筒状金型を線速度s=1.0m/secで回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザ波長:405nm
露光レーザパワー:3.5mW
X軸方向ピッチPx:260nm
X軸方向ピッチPxに対する変動幅δ2:26nm
変動幅δ2のX軸方向の長周期PxL :1.04μm
Y軸方向ピッチPy:300nm
Y軸方向ピッチPyに対する変動幅δ1:30nm
変動幅δ1のY軸方向の長周期PyL :1.2μm
次に実施例3と同様に、表面構造が反転転写されたリール状透明樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)が得られた。
さらに、実施例3と同様の方法で、サファイア基板の表面に、ナノオーダの凹凸構造を転写した。電子顕微鏡で断面、及び、表面構造を観察したところ、縦方向に長周期1.04μm、横方向に長周期1.2μmを有する2次元フォトニック結晶が得られた。また、ピッチの増加に伴い、凸部底部外接円径φout及び高さHが減少することが確認された。
以下、実施例3と同様に半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。発光出力比を表10に示す。実施例3と同様、得られた半導体発光素子の発光中心波長は、450nmであり、回折特有のギラツキがある発光は観察されず、発光角度依存性はほとんどなかった。
[比較例4]
実施例3と同様の条件で通常のフラットなサファイア基板上に発光半導体層を形成し、同様の方法で発光出力を測定した。
[比較例5]
実施例3と同様の方法で、半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノパタンの微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。X軸方向、Y軸方向のピッチは同じで、ピッチ変動がない六方配列とした。
X軸方向ピッチPx:398nm
Y軸方向ピッチPy:460nm
さらに、実施例3と同様の方法で、サファイア基板の表面に、ナノオーダの凹凸構造を転写した。電子顕微鏡で断面、及び、表面構造を観察したところ、460nmの周期を有する2次元フォトニック結晶が得られた。
その後、実施例3と同様の方法で、発光半導体層を形成し、発光出力を測定した。得られた半導体発光素子からの発光においては、得られた半導体発光素子の発光中心波長は450nmであり、回折構造特有の回折光が強く観察され、発光角度分布が大きかった。
[比較例6]
サファイア基板上に設けたパタンが比較例Bと同様である以外は、実施例6と同様の方法のリフトオフ工程を経て、半導体発光素子を作製し、発光出力を測定した。得られた半導体発光素子からの発光においては、得られた半導体発光素子の発光中心波長は、450nmであり、回折構造特有の回折光が強く観察され、発光角度分布は大きかった。
上記以外は、実施例3と同様にして発光出力を測定した。結果を表10に示す。
表10は、比較例Aの出力を1として、発光出力比として示している。表10から、本実施の形態に係る光学基板(実施例3〜実施例7)によれば、従来の平坦なサファイア基板(比較例4)、従来の波長の2倍以上の周期をもたない2次元フォトニック結晶を有するサファイア基板(比較例5、比較例6)に比べ、サファイア基板上に成膜した半導体層中の転位欠陥数を減らすことができ、また、周期性が乱れた凹凸パタンに起因する光散乱により導波モードを解消して光取り出し効率を上げることができるため、高い光効率を有する半導体発光素子を得られることがわかった。さらに、発光素子からの発光特性において、角度依存性がほとんどないことがわかり、工業実用上、好適な発光素子である。なお、上記実施例3〜7にて製造した光学基板に対し、実施例1と同様に光学顕微鏡を使用した観察を行ったところ、いずれの光学基板においても、長周期に対応した光学模様を明暗の差として観察することができた。また、実施例1と同様にレーザ光を用いた観察を行ったところ、レーザ光は5或いは9個にスプリットすることが観察された。なお、比較例4、5の場合は、光学顕微鏡による模様も、レーザ光のスプリットも観察されなかった。
(実施例8)
<半導体発光素子>
表面に凹凸構造を具備する光学基板を作製し、光学基板を使用して半導体発光素子(LED)を作製し、反りを評価した。続いて、チップ化を行い、LEDの効率を比較した。
以下の検討においては、実施例1と同様に、(1)円筒状マスターモールドを作製し、(2)樹脂モールドを作製した。(3)樹脂モールドを用いて、ナノ加工用部材(ナノ加工用シート)を作製した。続いて、(4)ナノ加工用シートを使用し、表面に凹凸構造を具備した基板を作製した。最後に、(5)得られた凹凸構造を具備した基板を使用し、半導体発光素子を作製し、性能を評価した。なお、凹凸構造は、(1)にて作製する円筒状マスターモールドの凹凸構造、(3)にて行う光転写法、(4)にて作製するナノ加工用シート、及びドライエッチングにより制御した。
(1)円筒状マスターモールドの作製
実施例1と同様にした。
(2)樹脂モールドの作製
実施例2と同様に、作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的に樹脂モールドG1を作製した。続いて、実施例2と同様に樹脂モールドG1をテンプレートとして、光ナノインプリント法により、連続的に樹脂モールドG2を得た。
(3)ナノ加工用シートの作製
実施例2と同様に、ナノ加工用シートを作製した。
(4)光学基板のナノ加工
作製したナノ加工用シートを使用し、光学基板の加工を試みた。光学基板としてはA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)サファイア基板を使用した。
実施例2と同様に、ナノ加工用シートを使用して、積層体(材料2/材料3/基板からなる積層体)を得た。続いて、実施例2と同様に、基板をエッチング加工した。
最後に、実施例2と同様に洗浄し、凹凸構造20を表面に具備する、複数のサファイア基板を得た。なお、サファイア基板上に作製される凹凸構造の形状は、主に、ナノ加工用シートの材料2の充填率と材料3の膜厚により制御した。
サファイア基板の表面に作製された凹凸構造の形状は、円筒状マスターモールドに作製した凹凸構造の形状、樹脂モールドを製造する際のニップ圧条件、ドライエッチングの処理条件により適宜制御した。図53〜図56は、本願の実施例で作製したサファイア基板の凹凸構造Dを示す走査型顕微鏡写真である。
図53は、凹凸構造を斜め上方より観察した結果であり、凹凸構造の平均ピッチ(P’ave)は460nmである。又、凹凸構造は複数の略円錐状の凸部より構成され、それぞれの凸部は正六方配列していることがわかる。この配列は、円筒状マスターモールドを製造する際の半導体レーザパルスパタンにより制御した。又、凸部頂部と凸部側面とは連続的に滑らかにつながっていると共に、凹部底部に平坦面が形成されていることがわかる。更に、凸部側面はわずかに上に凸のふくらみを有すことがわかる。このような凸部形状は、ナノ加工用シートの材料2の充填率、材料3の膜厚、及び材料2と材料3のエッチングレート比、そしてドライエッチング条件により制御した。
図54は、凹凸構造の平均ピッチ(P’ave)が700nmの場合であり、図54Aが上面を、図54Bが断面を示す。図54より、複数の略円錐状の凸部が正六方配列していることがわかる。この配列は、円筒状マスターモールドを製造する際の半導体レーザパルスパタンにより制御した。特に、隣接する凸部の底部輪郭同士の間隔(P’−lcvb)は非常に狭く、最も狭い箇所で50nmであった。なお、間隔(P−lcvb)の10点の相加平均値は、83nmであった。又、各凸部底部の外形はわずかに真円より撓んでいることがわかる。この真円からのずれは、ナノ加工用シートの材料1により制御した。又、凸部頂部の平坦面がなく、一方凹部底部に平坦面があることがわかる。これは、主にドライエッチング条件により制御した。
図55は、平均ピッチ(P’ave)が200nmの場合であり、図55Aが上面を、図55Bが断面を示す。図55Aより、SEM観察像内において、複数の凸部の配列は、六方配列〜四方配列までが不規則に含まれていることがわかる。即ち、ある凸部を任意に選択した場合に、選択する凸部により、選択した凸部を含む配列が六方配列の場合、四方配列の場合、又は、六方配列と四方配列の間の配列の場合がある状態であった。この配列規則性の乱れは、円筒状マスターモールドを製造する際の半導体パルスレーザの基準点をなくすことで制御した。又、各凸部頂部と凸部側面部と、は滑らかに連続すると共に、凹部底部に平坦面が存在することがわかる。更に、各凸部底部の外形は同一ではなく、僅かに凸部間により差があることがわかる。より具体的には、任意に凸部を選択した場合、該凸部の断面形状は、砲弾形状の場合もあれば円錐形状の場合もあった。このような凸部形状及びその分布は、ナノ加工用シートの材料2の充填率、材料3の膜厚、及び材料2と材料3のエッチングレート比、そしてドライエッチング条件により制御した。
図56は、平均ピッチ(P’ave)が300nmの場合であり、図56Aが上面を、図56Bが断面を示す。図56より、複数の凸部が正六方配列すると共に、部分的に凸部高さが0nm或いは低い部分が混在していることがわかる。即ち、正六方配列する凸部から、ランダムに凸部を間引いたような配列であった。この間引き率は約5.5%であった。これは、樹脂モールドG1を製造する際の、ニップ圧力により制御されたものである。より具体的には、円筒状マスターモールドの凹部内部に材料1を充填する際に必要な圧力とほぼ同等な圧力帯のニップを行うことにより、円筒状マスターモールドの凹凸構造のうち、一部の凹部に材料1が充填されない部分を形成することで行った。又、各凸部の頂部と側面部と、は滑らかに連続化していると共に、凹部底部には平坦面が形成されている。更に、凸部底部の外形は真円ではなく、複数の変曲点が存在することがわかる。このような構造は、主にナノ加工用シートの材料2により制御した。
以上例示したように、凹凸構造の異なるサファイア基板を製造した。
(5)半導体発光素子の作製
得られたサファイア基板上に、バッファー層としてAlxGa1−xN(0≦x≦1)の低温成長バッファー層を100Å成膜した。次に、非ドープ第1半導体層として、アンドープのGaNを成膜し、ドープ第1半導体層として、SiドープのGaNを成膜した。続いて、歪吸収層を設け、その後発光半導体層として、多重量子井戸の活性層(井戸層、障壁層=アンドープのInGaN、SiドープのGaN)をそれぞれの膜厚を(60Å、250Å)として井戸層が6層、障壁層が7層となるように交互に積層した。発光半導体層上に、第2半導体層として、エレクトロブロッキング層を含むようにMgドープのAlGaN、アンドープのGaN、MgドープのGaNを積層した。続いて、ITOを成膜し、エッチング加工した後に電極パッドを取り付けた。この状態で、プローバを用いてp電極パッドとn電極パッドの間に20mAの電流を流し発光出力を測定した。表12の比較例7に記載の凹凸構造を具備しないサファイアを使用した場合の出力を1とし評価した。
上記操作により半導体発光素子の評価を行った。上記(5)半導体発光素子の作製における、非ドープ第1半導体層の膜厚(Hbu)及びドープ第1半導体層の膜厚(Hbun)、そして凹凸構造の平均ピッチ(P’ave)と高さHをパラメータとして、内部量子効率IQE及び半導体発光素子の反りを評価した。
内部量子効率IQEはPL強度より決定した。内部量子効率IQEは、(単位時間に発光半導体層より発せられるフォトンの数/単位時間に半導体発光素子に注入される電子の数)により定義される。本実施例においては、上記内部量子効率IQEを評価する指標として、(300Kにて測定したPL強度/10Kにて測定したPL強度)を採用した。
検討結果を表11にまとめた。なお、表11に記載の用語の意味は以下の通りである。
・No.:サンプルの管理番号
・P’ave:凹凸構造の平均ピッチ(P’ave)であり、ディメンジョンは「nm」
・h:凹凸構造の平均高さ(h)であり、ディメンジョンは「nm」
・Hbun:第1半導体層の膜厚であり、ディメンジョンは「nm」
・Hbu:非ドープ第1半導体層の膜厚であり、ディメンジョンは「nm」
・Hbun/h:第1半導体層の膜厚と凹凸構造の平均高さ(h)と、の比率であり無次元値
・Hbu/h:非ドープ第1半導体層の膜厚と、凹凸構造の平均高さ(h)と、の比率であり無次元値
・IQE:内部量子効率(Internal Quantum Efficiency)であり、ディメンジョンは「%」
・反り:半導体発光素子100のチップ化に支障をきたした場合を「×」、問題のなかった場合を「〇」として評価
・総合: IQE及び反りを考慮した総合評価
なお、表11に記載の比較例7は、凹凸構造を具備しない平坦なサファイア基板を使用した場合である。
また、使用した基板と表11のNo.との関係は以下の通りである。
No.9及びNo.11…図53に示す基板
No.10…図54に示す基板
No.4,No.6及びNo.8…図55に示す基板
No.1,No.5,No.7及びNo.12…図56に示す基板
No.2及びNo.3においては、平均ピッチ(P’ave)が200nmであり複数の凸部が正六方格子配列した基板を使用した。凸部底部の平均径は100nm、凸部の平均高さは80nmであった。また、凸部頂部上に平坦面はなく、凸部頂部と凸部側面部と、は連続的につながっていた。
No.13においては、平均ピッチ(P’ave)が3000nmであり複数の凸部が正六方格子配列した基板を使用した。凸部底部の平均幅は1500nmであり、凸部の平均高さは1500nmであった。なお、No.13に記載の基板のみ以下の製法により作製した。サファイア基板のC面(0001)上に、エッチングマスクとなるSiO2膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によりパターニングした。続いて、SiO2から構成されるマスクを利用し、サファイア基板をエッチングすることで凹凸構造を作製した。なお、エッチングはウェットエッチングにより行い、エッチング液として、リン酸と硫酸の混酸を用いた。液温は概ね295℃であった。
表11より、以下のことがわかる。Hbun/hが18.0以上73.8以下の範囲において、内部量子効率IQEが凹凸構造を具備しない場合に比べ、1.46倍〜1.7倍へ、と大きくなっていると共に、半導体発光素子の反りも抑制されている。この時のHbu/hは、10.0以上43.8以下である。これは、Hbun/hが所定の値以上の範囲を満たすことから、凹凸構造により第1半導体層内の転位を分散化し低減できていること、及び、Hbun/hが所定の値以下の範囲を満たすことから、第1半導体層の膜厚を薄くすることが可能となり反りを低減できているためと考えられる。一方で、No.12においては、Hbun/hが6.7、Hbu/hが3.3と小さな値となっており、内部量子効率IQEは凹凸構造のない場合(比較例7のNo.0)と比べて向上していない。これは、第1半導体層内部における転位低減効果が低い為に、発光半導体層及び第2半導体層の半導体としての性能が低下しているためと考えることが出来る。又、No.1においては、Hbun/hが306.7、Hbu/hが213.3と大きな値であり、半導体発光素子の反りがチップ化に影響していることがわかる。以上より、Hbun/hが所定の範囲内にあることにより、内部量子効率IQEを改善し、且つ半導体発光素子100の反りを低減できることがわかる。
(実施例9)
平均ピッチ(P’ave)が300nmであり六方格子状に複数の凸部が配列した凹凸構造に対し、所定の乱れを加え、外部量子効率EQEをより向上させることが可能かを調査した。結果を表12にまとめた。なお、表12に記載の用語の意味は以下の通りである。
・No.:サンプルの管理番号
・P’ave:凹凸構造の平均ピッチ(P’ave)
・変動係数:凹凸構造を構成するある要素に対する標準偏差を、該要素に対する相加平均にて除した値。無次元値。
・発光出力比:比較例7を基準(1.00)とした場合の発光強度比
表12に挙げた、実施例9の半導体発光素子においては、内部量子効率IQEはいずれも80%超、且つ半導体発光素子の反りは抑制されていることが確認された。表12からわかるように、凹凸構造を具備しないサファイア基板を使用した場合(比較例7のNo.0)に比べ、凹凸構造を具備するサファイア基板を使用した場合(実施例9)の発光出力が向上していることがわかる。まず、No.14は複数の凸部が正六方配列をしており、それぞれの凸部の形状が略同じ場合である。このような配列及び形状規則性の高い凹凸構造を具備する基板を使用することで、発光出力は1.21倍に増加している。これは、平均ピッチ(P’ave)に応じた光回折を利用し、導波モードを乱すことで、光取り出し効率LEEが向上しているためと推定され、FDTDを使用したシミュレーション結果と概ね一致している。
No.15は、複数の凸部が正六方配列しているが、各凸部の形状に乱れを設けた場合である。より具体的には、凸部底部外接円径φoutに乱れがある。これは、凸部の底部の大きさに分布があることを意味し、配列が正六方配列であることから、凹凸構造の凹部底部の面積も同時に分布を有すことを意味する。更に、φout/φinに乱れがある。これは、凸部を上方より観察した場合に、その形状が真円ではないこと、更に、凸部底部外接円に対する凸部頂点位置が各凸部により異なることを意味する。又、各凸部の高さHも分布を有している。このような配列規則性が高く、形状乱れの大きな凹凸構造を使用することにより、発光強度は1.35倍にまで大きくなっていることがわかる。これは、凹凸構造の乱れにより、導波モードを乱す回折モード数が大きくなり、光取り出し効率LEEが向上したためと推定される。
No.16は、No.15に比べ凸部高さHの乱れが大きくなっている。これは、部分的に凸部のない凹凸構造である。この場合、発光出力は1.50倍にまで向上していることがわかる。これは、凸部が欠損し存在しないような凹凸構造は、凸部の大きな体積変化を内包することから、光学散乱性が大きくなり、導波モードを乱す効果が大きくなったためと推定される。
最後に、No.17は、No.16に対して配列の乱れを加えた場合である。配列の乱れは、ランダムではなく制御された乱れである。具体的には、ピッチP’がサイン波に乗じ変化するように設計した。この場合、発光出力は1.55倍にまで増加している。また、No.17に対して、実施例1と同様に光学顕微鏡観察を行ったところ、明暗の差として、略円形状模様が、4方配列していることが観察された。また、実施例1と同様にレーザ光を用いた観察を行ったところ、レーザ光が5つにスプリットすることが確認できた。なお、No.14〜No.16については、光学模様及びレーザ光のスプリットは観察されなかった。これは、配列の乱れにより導波モードを乱す回折モード数が増加し、光学的散乱性が増加したことによって、光取り出し効率LEEが向上したためと推定される。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。