JP6146204B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
従来、車両の操舵機構に電動モータの動力を付与することにより運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)が知られている。たとえば特許文献1のEPSのコントローラは、各種のセンサを通じて取得される操舵トルク、操舵角、および車輪舵角に基づき電動モータを制御する。
コントローラは、第1および第2の規範モデル(制御目的を定式化したモデル)を有している。第1の規範モデルは操舵角と目標操舵トルクとの関係を、第2の規範モデルは操舵トルクと目標転舵角との関係をそれぞれ規定する。コントローラは、第1および第2の規範モデルによって定められる目標操舵トルクおよび目標転舵角に基づき、フィードバック制御の一種であるPID(比例、積分、微分)制御を行う。
コントローラは、第1の規範モデルによって定められた目標操舵トルクに対する実際の操舵トルクの偏差、および第2の規範モデルによって定められた目標転舵角に対する実際の転舵角の偏差をそれぞれ求め、これら偏差をなくすように電動モータを制御する。コントローラは、当該制御を通じて、実際の操舵トルクを目標操舵トルクに、実際の転舵角を目標転舵角にそれぞれ追従させる。
特許第4453012号明細書
前述した第2の規範モデルは、操舵トルクに応じた理想的な転舵角である目標転舵角を規定するものである。第2の規範モデルに基づく転舵角のフィードバック制御によれば、確かにステアリングの剛性感は得られるものの、運転状況によっては車両との一体感が不足することが懸念される。たとえばステアリングが大きく操作されたとき、運転者はステアリングの操作量に応じた横加速度を感じるところ、ステアリングを通じて感じる手応え(操舵反力)は変わらない。これは、操舵反力は、第2の規範モデルにより規定される目標転舵角に応じたものにしかならないからである。このため、実際に体感される横加速度の大きさとステアリングの手応えとのバランスがとれないことに起因して、運転者は違和感を覚えるおそれがある。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、横加速度に応じた車両との一体感が得られやすい電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記課題を解決する電動パワーステアリング装置は、車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両のステアリング操作に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えた電動パワーステアリング装置を前提としている。前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の実際の回転角を、少なくとも操舵トルクに応じて算出される目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第2の演算部と、を備えている。前記第2の演算部は、車両に働く横加速度の増大に応じて操舵反力を増大させるべく、目標回転角の算出に使用する少なくとも操舵トルクの大きさを減少させたうえで前記補正制御成分を演算する。
この構成によれば、補正制御成分による基礎制御成分の補正を通じて、車両に働く横加速度の増大に応じてステアリングの操舵反力が増大される。当該補正制御成分は、目標回転角の演算に用いる少なくとも操舵トルクの大きさが増加するのを抑制したうえで、当該抑制された少なくとも操舵トルクに応じて算出される目標回転角と実際の回転角とのフィードバック制御により得られる。当該操舵トルクの大きさが抑制される分だけ、第2の演算部により演算される目標回転角の大きさ、ひいては基礎制御成分に対する補正制御成分が減少する。補正制御成分が減少する分、操舵機構に付与される操舵補助力も減少する。その結果、操舵補助力の減少に応じてステアリングの操舵反力は増大する。このため、横加速度の大きさに応じて好適な操舵反力が得られる。したがって、運転者が身体に受ける横加速度と、ステアリングを通じて手に感じる操舵反力、すなわち手応えとを調和させることが可能である。
また、上記電動パワーステアリング装置において、前記第2の演算部は、横加速度の増大に応じて操舵反力に含まれる弾性成分を増大させるべく補助弾性成分を演算し、当該補助弾性成分に応じて目標回転角の算出に使用する少なくとも操舵トルクの大きさを減少させることが好ましい。
この構成によれば、横加速度の増大に応じて操舵反力に含まれる弾性成分が増大することにより、運転者が身体に受ける横加速度と、ステアリングを通じて手に感じる操舵反力、すなわち手応えとを調和させることが可能である。
また、上記電動パワーステアリング装置において、前記第2の演算部は、操舵周波数の変化に対する前記補助弾性成分の大きさを一定にすべく追加弾性成分を演算することが好ましい。
横加速度に応じて算出される補助弾性成分は、操舵周波数に応じて変化する。たとえば操舵周波数が高くなるほど、車両には横加速度が働きにくくなるので、必要とされる補助弾性成分が算出されないおそれがある。補助弾性成分が不足する場合、ステアリングの操舵反力が十分に得られないので、運転者はいわゆる舵抜け感を覚えるおそれがある。そこで、補助弾性成分の不足分を追加弾性成分によって補うことによって、操舵周波数にかかわらず一定の補助弾性成分を得ることが可能である。その結果、横加速度の大きさに応じた操舵反力が安定して得られる。いわゆる舵抜け感の発生も抑制される。
また、上記電動パワーステアリング装置はつぎのように構成してもよい。すなわち、前記第2の演算部は、目標回転角に基づく前記補助弾性成分の基礎成分と、横加速度に基づく前記基礎成分に対する補助成分と、を演算する。そして第2の演算部は、横加速度の大きさに応じて前記基礎成分と前記補助成分との使用比率を設定するとともに、当該設定に際して横加速度が大きくなるほど前記補助成分の使用比率を増大させる。
目標回転角に基づく補助弾性生成分の基礎成分は、いわゆる剛性感(しっかり感)に寄与する。また、横加速度に基づく前記基礎成分に対する補助成分は車両との一体感に寄与する。このため、横加速度に応じて基礎成分と補助成分との使用比率を調節することにより、剛性感と一体感とが好適に得られる。たとえば横加速度が大きいほど車両との一体感が不足することが考えられるので、補助成分の使用比率を増大させる。これにより、横加速度の大きさに応じて車両との一体感が好適に得られる。
上記電動パワーステアリング装置において、前記第2の演算部は、目標とする前記補助弾性成分を得るべく、操舵周波数の変化に対する大きさが一定である前記補助弾性成分に対する追加弾性成分をさらに演算するようにしてもよい。
この構成によれば、追加弾性成分の設定如何によって、所望の補助弾性成分を得ることができる。
本発明によれば、横加速度に応じた車両との一体感が得られやすくなる。
一実施の形態における電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図。 同じくモータ制御装置の制御ブロック図。 同じく目標ピニオン角演算部の制御ブロック図。 同じく理想車両モデルの制御ブロック図。 同じく第1の車両反力モデルにおいて生成される第1の補正ばね反力トルクと操舵周波数との関係を示すグラフ。 同じく第1の車両反力モデルにおいて生成される第1の補正ばね反力トルクに対する補正成分である第2の補正ばね反力トルクと操舵周波数との関係を示すグラフ。 第2の車両反力モデルにおいて生成される第3の補正ばね反力トルクと操舵周波数との関係を示すグラフ。 補正演算部による補正後の第3の補正ばね反力トルクと操舵周波数との関係を示すグラフ。 分配ゲイン演算部に持たせられているゲインマップを示すグラフ。 最終的に要求される基本駆動トルクのばね成分と操舵周波数との関係を示すグラフ。 他の実施の形態における理想車両モデルの制御ブロック図。
以下、車両の電動パワーステアリング装置の一実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
<電動パワーステアリング装置の概要>
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)10は、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構20、および運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30、および操舵補助機構30の作動を制御するECU(電子制御装置)40を備えている。
操舵機構20は、運転者により操作されるステアリングホイール21、およびステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21の中心に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b、およびインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cからなる。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラック軸23(正確には、ラック歯が形成された部分23a)に噛合されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ピニオンシャフト22cおよびラック軸23からなるラックアンドピニオン機構24によりラック軸23の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラック軸23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26,26にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪26,26の転舵角θtaが変更される。転舵輪26,26の転舵角θtaが変更されることにより車両の進行方向が変更される。
操舵補助機構30は、操舵補助力の発生源であるモータ31を備えている。モータ31としては、ブラシレスモータなどの三相交流モータが採用される。モータ31は、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータトルクが操舵補助力(アシスト力)として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求あるいは走行状態を示す情報として取得し、これら取得される各種の情報に応じて、モータ31を制御する。各種のセンサとしては、たとえば車速センサ410、トルクセンサ420、回転角センサ430および横加速度センサ440がある。車速センサ410は、車速(車両の走行速度)Vを検出する。トルクセンサ420は、コラムシャフト22aに設けられて、ステアリングホイール21を介してステアリングシャフト22に印加される操舵トルクTを検出する。回転角センサ430は、モータ31に設けられて、モータ31の回転角θを検出する。横加速度センサ440は、車両に働く横加速度LAを検出する。横加速度LAとは、車両を上からみたとき、車両の進行方向に対して直交する左右方向に働く加速度をいう。ECU40は、これらセンサを通じて取得される車速V、操舵トルクT、回転角θおよび横加速度LAに基づき、モータ31を制御する。
<ECUの概略構成>
つぎに、ECUのハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、ECU40は、インバータ回路41およびマイクロコンピュータ42を備えている。
インバータ回路41は、マイクロコンピュータ42により生成される後述のモータ駆動信号に基づいて、バッテリなどの直流電源から供給される直流電流を三相交流電流に変換する。当該変換された三相交流電流は、各相の給電経路44を介してモータ31に供給される。各相の給電経路44には電流センサ45が設けられている。これら電流センサ45は、各相の給電経路44に生ずる実際の電流値Iを検出する。なお、図2では、説明の便宜上、各相の給電経路44および各相の電流センサ45をそれぞれ1つにまとめて図示する。
マイクロコンピュータ42は、車速センサ410、トルクセンサ420、回転角センサ430および電流センサ45の検出結果をそれぞれ定められたサンプリング周期で取り込む。マイクロコンピュータ42は、これら取り込まれる検出結果、すなわち車速V、操舵トルクT、回転角θおよび電流値Iに基づきモータ駆動信号(PWM駆動信号)を生成する。
正確には、マイクロコンピュータ42は、インバータ回路41のPWM駆動を通じて、モータ電流のベクトル制御を行う。ベクトル制御とは、モータ電流を磁界と平行なd軸成分(界磁電流成分)と、これに直交するq軸成分(トルク電流成分)とに分離し、これら分離した電流をそれぞれ独立に目標制御するものである。ベクトル制御により、モータ31を直流モータと類似の取り扱いとすることができる。
<マイクロコンピュータ>
つぎに、マイクロコンピュータの機能的な構成を説明する。
マイクロコンピュータ42は、図示しない記憶装置に格納された制御プログラムを実行することによって実現される各種の演算処理部を有している。図2に示すように、マイクロコンピュータ42は、これら演算処理部として、アシスト指令値演算部51、電流指令値演算部52、モータ駆動信号生成部53およびピニオン角演算部54を備えている。
アシスト指令値演算部51は、車速V、操舵トルクT、モータ31の回転角θ、およびピニオン角演算部54により算出される後述のピニオン角θをそれぞれ取り込み、これら取り込まれる各種の情報に基づいてアシスト指令値T を演算する。アシスト指令値T は、モータ31に発生させるべき回転力(アシストトルク)を示す指令値である。なお、アシスト指令値演算部51については、後に詳述する。
電流指令値演算部52は、アシスト指令値演算部51により算出されるアシスト指令値T に基づき電流指令値Iを演算する。電流指令値Iは、モータ31に供給するべき電流を示す指令値である。正確には、電流指令値Iは、d/q座標系におけるq軸電流指令値およびd軸電流指令値を含む。d/q座標系は、モータ31の回転角θに従う回転座標である。
モータ駆動信号生成部53は、電流指令値I、実際の電流値I、およびモータ31の回転角θをそれぞれ取り込み、これら取り込まれる情報に基づき実際の電流値Iが電流指令値Iに追従するように電流のフィードバック制御を行う。モータ駆動信号生成部53は、電流指令値Iと実際の電流値Iとの偏差を求め、当該偏差を無くすようにモータ駆動信号を生成する。
正確には、モータ駆動信号生成部53は、回転角θを使用してモータ31の三相の電流値を二相のベクトル成分、すなわちd/q座標系におけるd軸電流値およびq軸電流値に変換する。そして、モータ駆動信号生成部53は、d軸電流値とd軸電流指令値との偏差、およびq軸電流値とq軸電流指令値との偏差をそれぞれ求め、これら偏差を解消するPWMデューティを算出する。モータ駆動信号生成部53により生成されるモータ駆動信号には、当該PWMデューティが含まれる。インバータ回路41を通じて当該モータ駆動信号に応じた電流がモータ31に供給されることにより、モータ31はアシスト指令値T に応じた回転力を発生する。
ピニオン角演算部54は、モータ31の回転角θを取り込み、この取り込んだ回転角θに基づきピニオンシャフト22cの回転角であるピニオン角θを演算する。前述したように、モータ31は減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。このため、モータ31の回転角θとピニオン角θとの間には相関関係がある。この相関関係を利用してモータ31の回転角θからピニオン角θを求めることができる。さらに、これも前述したように、ピニオンシャフト22cは、ラック軸23に噛合されている。このため、ピニオン角θとラック軸23の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θは、転舵輪26の転舵角θtaを反映する値である。ピニオン角θは、後述する目標ピニオン角θ に基づきフィードバック制御される。
<アシストトルク演算部>
つぎに、アシスト指令値演算部51について詳細に説明する。
図2に示すように、アシスト指令値演算部51は、基本アシスト成分演算部61、目標ピニオン角演算部62、およびピニオン角フィードバック制御部(ピニオン角F/B制御部)63を有している。
基本アシスト成分演算部61は、車速Vおよび操舵トルクTに基づいて基本アシスト成分Ta1 を演算する。基本アシスト成分Ta1 はアシスト指令値T の基礎制御成分である。基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTと基本アシスト成分Ta1 との関係を車速Vに応じて規定する三次元マップを使用して、基本アシスト成分Ta1 を演算する。基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTの絶対値が大きくなるほど、また車速Vが遅くなるほど、基本アシスト成分Ta1 の絶対値をより大きな値に設定する。
目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分演算部61により生成される基本アシスト成分Ta1 、および操舵トルクTをそれぞれ取り込む。目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和を基本駆動トルク(入力トルク)とするとき、基本駆動トルクに基づいて理想的なピニオン角を定める理想モデルを有している。理想モデルは、基本駆動トルクに応じた理想的な転舵角に対応するピニオン角を予め実験などによりモデル化したものである。目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分Ta1 と操舵トルクTとを加算して基本駆動トルクを求め、この求められる基本駆動トルクから理想モデルに基づいて目標ピニオン角θ を演算する。なお、目標ピニオン角演算部62は、車速VおよびヨーレートYRをそれぞれ取り込み、目標ピニオン角θ を演算するに際してはこれら車速VおよびヨーレートYRをそれぞれ加味する。目標ピニオン角演算部62については、後に詳述する。
ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により算出される目標ピニオン角θ およびピニオン角演算部54により算出される実際のピニオン角θをそれぞれ取り込む。ピニオン角フィードバック制御部63は、実際のピニオン角θが目標ピニオン角θ に追従するように、ピニオン角のフィードバック制御としてPID(比例、積分、微分)制御を行う。すなわち、ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角θ と実際のピニオン角θとの偏差を求め、当該偏差を無くすように基本アシスト成分Ta1 の補正成分Ta2 (補正制御成分)を求める。
アシスト指令値演算部51は、基本アシスト成分Ta1 に補正成分Ta2 を加算することによりアシスト指令値T を演算する。
<目標ピニオン角演算部>
つぎに、目標ピニオン角演算部62について詳細に説明する。
前述したように、目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和である基本駆動トルクから理想モデルに基づいて目標ピニオン角θ を演算する。当該理想モデルは、ステアリングシャフト22に印加されるトルク、すなわち前述した基本駆動トルクT が、次式(A)で表されることを利用したモデルである。
=Jθ *′′+Cθ *′+Kθ …(A)
ただし、Jはステアリングホイール21およびステアリングシャフト22の慣性モーメント、Cはラック軸23のハウジングに対する摩擦などに対応する粘性係数(摩擦係数)、Kはステアリングホイール21およびステアリングシャフト22をそれぞればねとみなしたときのばね係数である。
式(A)から分かるように、基本駆動トルクT は、目標ピニオン角θ の二階時間微分値θ *′′に慣性モーメントJを乗じた値、目標ピニオン角θ の一階時間微分値θ ′に粘性係数Cを乗じた値、および目標ピニオン角θ にばね係数Kを乗じた値を加算することによって得られる。
目標ピニオン角演算部62は、式(A)に基づく理想モデルに従って目標ピニオン角θ を演算する。
図3に示すように、式(A)に基づく理想モデルは、理想EPSモデル71、および理想車両モデル72に分けられる。
理想EPSモデル71は、ステアリングシャフト22およびモータ31など、電動パワーステアリング装置10の各構成要素の特性に応じてチューニングされる。理想EPSモデル71は、加算器73、減算器74、慣性モデル75、第1の積分器76、第2の積分器77および粘性モデル78を有している。
加算器73は、基本アシスト成分Ta1 と操舵トルクTとを加算することにより基本駆動トルクT を演算する。
減算器74は、加算器73により算出される基本駆動トルクT から後述する粘性成分Tvi およびばね成分Tsp をそれぞれ減算する。ここでは、粘性成分Tvi およびばね成分Tsp が減算された基本駆動トルクT の値を減算値T **とする。
慣性モデル75は、式(A)の慣性項に対応する慣性制御演算部として機能する。慣性モデル75は、減算器74により算出される減算値T **に慣性モーメントJの逆数を乗ずることにより、ピニオン角加速度α を演算する。
第1の積分器76は、慣性モデル75により算出されるピニオン角加速度α を積分することにより、ピニオン角速度ω を演算する。
第2の積分器77は、第1の積分器76により算出されるピニオン角速度ω をさらに積分することにより、目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角θ は、理想EPSモデル71に基づくピニオンシャフト22cの理想的な回転角である。
粘性モデル78は、式(A)の粘性項に対応する粘性制御演算部として機能する。粘性モデル78は、第1の積分器76により算出されるピニオン角速度ω に粘性係数Cを乗ずることにより、基本駆動トルクT の粘性成分Tvi を演算する。
理想車両モデル72は、電動パワーステアリング装置10が搭載される車両の特性に応じてチューニングされる。操舵特性に影響を与える車両側の特性は、たとえばサスペンションおよびホイールアライメントの仕様、および転舵輪26,26のグリップ力(摩擦力)などにより決まる。理想車両モデル72は、式(A)のばね項に対応するばね特性制御演算部として機能する。理想車両モデル72は、第2の積分器77により算出される目標ピニオン角θ にばね係数Kを乗ずることにより、基本駆動トルクT のばね成分Tsp を演算する。なお、理想車両モデル72は、ばね成分Tsp を演算するに際して、車速VおよびヨーレートYRをそれぞれ加味する。
このように構成した目標ピニオン角演算部62によれば、理想EPSモデル71の慣性モーメントJおよび粘性係数C、ならびに理想車両モデル72のばね係数Kをそれぞれ調整することによって、基本駆動トルクT と目標ピニオン角θ との関係を直接的にチューニングすること、ひいては所望の操舵特性を実現することができる。
本例では、基本駆動トルクT から理想EPSモデル71および理想車両モデル72に基づいて目標ピニオン角θ が設定され、実際のピニオン角θが目標ピニオン角θ に一致するようにフィードバック制御される。前述したように、ピニオン角θと転舵輪26,26の転舵角θtaとの間には相関関係がある。このため、基本駆動トルクT に応じた転舵輪26,26の転舵動作も理想EPSモデル71および理想車両モデル72により定まる。すなわち、車両の操舵感が理想EPSモデル71および理想車両モデル72により決まる。したがって、理想EPSモデル71および理想車両モデル72の調整により所望の操舵感を実現することが可能となる。
また、実際の転舵角θtaが、目標ピニオン角θ に応じた転舵角θtaに維持される。このため、路面状態あるいはブレーキングなどの外乱に起因して発生する逆入力振動の抑制効果も得られる。すなわち、転舵輪26,26を介して操舵機構20に振動が伝達される場合であれ、ピニオン角θが目標ピニオン角θ となるように補正成分Ta2 が調節される。このため、実際の転舵角θtaは、理想モデルにより規定される目標ピニオン角θ に応じた転舵角θtaに維持される。結果的にみれば、逆入力振動を打ち消す方向へ操舵補助が行われることにより、逆入力振動がステアリングホイール21に伝わることが抑制される。
ここで、前述したようにピニオン角フィードバック制御部63は、実際のピニオン角θが目標ピニオン角θ に追従するように、ピニオン角θのフィードバック制御を行う。当該フィードバック制御を通じて、ステアリングの剛性感(いわゆるしっかり感)は得られるものの、運転状況によっては車両との一体感が不足することが懸念される。
たとえば、ステアリングの操作に伴い車両に働く横加速度が増大する場合、運転者はステアリングの操作量に応じた横加速度LAを身体に感じるものの、ステアリングを通じて感じる手応え(操舵反力)は変わらない。これは、ステアリングの操作反力は、車両に働く横加速度LAに関わらず、目標ピニオン角演算部62により求められる目標ピニオン角θ に応じたものにしかならないからである。
身体が受ける横加速度LAと手に感じるステアリングの操作反力とのバランスが実際に運転しているときの車両との一体感につながる。すなわち、身体が受ける横加速度LAと手に感じるステアリングの操作反力とが同期して同じように感じられるとき、運転者は車両との一体感を覚えやすい。具体的には、横加速度が増大するとき、これに合わせてステアリングの操作反力(手応え)が増大すると、運転者は車両との一体感を覚えやすい。
この点、身体に感じる横加速度が増大してきているにも関わらず、ステアリングの操作反力がそのまま変わらない場合、運転者はステアリングを通じて感じる手応えの物足りなさなどに起因して、車両との一体感を覚えにくい。車両との一体感は運転のしやすさにも影響する。そこで、車両との一体感を向上させるために、本例の目標ピニオン角演算部62は、車両に働く横加速度LAを考慮して目標ピニオン角θ を演算する。具体的には、理想車両モデル72において基本駆動トルクT のばね成分Tsp を算出する際、横加速度LAを加味する。
<理想車両モデル>
つぎに、理想車両モデル72について詳細に説明する。
図4に示すように、理想車両モデル72は、第1の車両反力モデル81、第2の車両反力モデル82、分配ゲイン演算部83、補正演算部84、補間演算部85、および加算器86を有している。
<第1の車両反力モデル>
第1の車両反力モデル81は、基礎ばね反力トルクTsp0 を演算する。すなわち、第1の車両反力モデル81は、第2の積分器77により算出される目標ピニオン角θ を取り込み、この取り込まれる目標ピニオン角θ にばね係数Kを乗ずることにより、目標ピニオン角θ に応じた基礎ばね反力トルクTsp0 を演算する。基礎ばね反力トルクTsp0 は、前述したばね成分Tsp の基礎成分である。
また、第1の車両反力モデル81は、第1の補正ばね反力トルクTsp1 を演算する。第1の補正ばね反力トルクTsp1 は、理想車両モデル72の最終的な出力である基本駆動トルクT のばね成分Tsp を、目標の操舵特性(最終的なねらいの特性)に補正するための弾性成分である。第1の車両反力モデル81は、操舵周波数frevと第1の補正ばね反力トルクTsp1 との関係を規定する制御マップ91に基づき、操舵周波数frevに応じた第1の補正ばね反力トルクTsp1 を算出する。制御マップ91は、要求される操舵特性などに応じて予め実験などにより設定される。ちなみに、操舵周波数frevとは、目標ピニオン角θ の入力周波数をいう。
図5のグラフに示すように、横軸に操舵周波数frevを、縦軸に第1の補正ばね反力トルクTsp1 をそれぞれプロットしたとき、制御マップ91の特性は、つぎの通りである。すなわち、操舵周波数frevが増大するにつれて、第1の補正ばね反力トルクTsp1 の絶対値をより大きな値に設定する。ただし、操舵周波数frevが所定値に達した以降は、操舵周波数frevに関わらず、第1の補正ばね反力トルクTsp1 の絶対値は一定値に維持される。
また、第1の車両反力モデル81は、第2の補正ばね反力トルクTsp2 を演算する。第2の補正ばね反力トルクTsp2 は、後述する第2の車両反力モデル82により算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 の絶対値を操舵周波数frevに関わらず一定にするための弾性成分である。第1の車両反力モデル81は、操舵周波数frevと第2の補正ばね反力トルクTsp2 との関係を所定の車速域ごとに規定する制御マップ92に基づき、操舵周波数frevに応じた第2の補正ばね反力トルクTsp2 を算出する。制御マップ92は、要求される操舵特性などに応じて予め実験などにより求められる。
図6のグラフに示すように、横軸に操舵周波数frevを、縦軸に第3の補正ばね反力トルクTsp3 をそれぞれプロットしたとき、制御マップ92は、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵周波数frevが増大するにつれて第2の補正ばね反力トルクTsp2 の絶対値は徐々に大きな値となる。さらに操舵周波数frevが増大すると今度は操舵周波数frevが増大するにつれて第2の補正ばね反力トルクTsp2 の絶対値は徐々に小さくなる。
<第2の車両反力モデル>
第2の車両反力モデル82は、第3の補正ばね反力トルクTsp3 を演算する。第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、車両に働く横加速度LAに応じた操舵反力成分(ステアリングに作用させるべき反力成分)であって、実際の車両に生じる反力に近い特性を有するものである。
第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、理論的には次式(B)により求められる。
sp3 =(ζ/l)・(I/l)・(l・m・LA+I・γ′) …(B)
ただし、「ζ」はトレール量、「l」はナックルアーム長、「I」は車両に働くヨー慣性モーメント、「l」はホイールベース、「l」は車両を横からみたときの前輪軸と車両重心との間の距離、「m」は車両の重量、「LA」は車両に作用する横加速度、「γ′」はヨー角加速度である。
ここで、式(B)に基づき第3の補正ばね反力トルクTsp3 を求めることができるものの、本例では式(B)における「I・γ′」を割愛した次式(C)により第3の補正ばね反力トルクTsp3 を求める。これは、式(B)における「I・γ′」の値はノイズの影響が懸念されるからである。
sp3 =(ζ/l)・(I/l)・(l・m・LA) …(C)
したがって、第2の車両反力モデル82は、横加速度センサ440を通じて取得される横加速度LAを式(C)に適用することにより、第3の補正ばね反力トルクTsp3 を算出することが可能である。
式(C)により求められる第3の補正ばね反力トルクTsp3 と操舵周波数frevとの関係は、たとえばつぎのような特性を有する。
図7のグラフに示すように、横軸に操舵周波数frevを、縦軸に第3の補正ばね反力トルクTsp3 をそれぞれプロットしたとき、操舵周波数frevが増大するにつれて第3の補正ばね反力トルクTsp3 の絶対値は徐々に小さな値となる。さらに操舵周波数frevが増大すると今度は操舵周波数frevが増大するにつれて第3の補正ばね反力トルクTsp3 の絶対値は徐々に大きくなる。すなわち、横加速度LAに基づき第3の補正ばね反力トルクTsp3 を求める場合、操舵周波数frevの増大に伴い、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の落ち込みが発生する。その理由は、つぎの通りである。
すなわち、ステアリングをゆっくりかつ大きく操舵するとき(操舵周波数frevが低いとき)、車両は少しずつ旋回する。このため、車両には横加速度LAが発生しやすいと考えられる。これに対して、ステアリングを素早く操舵するとき(操舵周波数frevが高いとき)、車両は大きく旋回しない。このため、車両には横加速度LAが発生しにくいと考えられる。このように、操舵周波数frevが低いときには横加速度LAの値は大きく、逆に操舵周波数frevが高いときには横加速度LAの値は小さくなる。第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値は、式(B)からも分かるように、横加速度LAの値に比例する。このため、操舵周波数frevが低い領域では横加速度LAの値が大きくなるので第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値は大きくなりやすい。また、操舵周波数frevが高い領域では横加速度LAの値が小さくなるので第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値は小さくなりやすい。
第1の車両反力モデル81は、先の図7のグラフに示される操舵周波数frevに対する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の落ち込みを解消する補正を行うための弾性成分として第2の補正ばね反力トルクTsp2 を、先の図6に示される制御マップ92に基づき演算する。本例では、第3の補正ばね反力トルクTsp3に第2の補正ばね反力トルクTsp2 を加算して得られる値は、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の絶対値の中で一番大きな値で常に一定となる。これは、そのような第2の補正ばね反力トルクTsp2 が算出されるように制御マップ92が設定されているからである。
<分配ゲイン演算部>
図4に示すように、分配ゲイン演算部83は、自身が持つゲインマップ93を使用して分配ゲインGを演算する。ゲインマップ93は、横加速度LAと分配ゲインGとの関係を車速V(あるいは車速域)ごとに規定する三次元マップである。分配ゲインGは、基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 との使用比率を決定するために使用される。
図9のグラフに示すように、横軸に横加速度LAを、縦軸に分配ゲインGをそれぞれプロットしたとき、ゲインマップ93はつぎのような特性を有する。すなわち、横加速度LAが大きくなるほど、また車速Vが速くなるほど分配ゲインGはより大きな値に設定される。逆に、横加速度LAが小さくなるほど、また車速Vが遅くなるほど分配ゲインGはより小さな値に設定される。
<補正演算部>
補正演算部84は、第2の車両反力モデル82により算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 を、第1の車両反力モデル81により算出される第2の補正ばね反力トルクTsp2 を使用して補正する。この補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、車両に働く横加速度LAに応じた最終的な操舵反力成分(ステアリングに作用させるべき反力成分)となる。
ここで、たとえば第2の車両反力モデル82により算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 が先の図7のグラフに示される特性を有するとき、第1の車両反力モデル81(正確には、制御マップ92)により算出される第2の補正ばね反力トルクTsp2 は先の図6のグラフに示される特性を有する。これは、つぎの理由になる。
すなわち、第2の車両反力モデル82により算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 は横加速度LAに応じて一義的に決まるものである。このため、横加速度LAに応じた第3の補正ばね反力トルクTsp3 の操舵周波数frevに対する変化を一定にするために必要とされる第2の補正ばね反力トルクTsp2 をシミュレーションにより得ることが可能である。また、その時々の目標ピニオン角θ と、車両に働いている横加速度LAとの相関関係についてもシミュレーションを通じて得ることが可能である。したがって、その時々の目標ピニオン角θ の値(あるいは値の範囲)に関連付けて、前述の必要とされる第2の補正ばね反力トルクTsp2 を補正演算部84に持たせておくことも可能となる。これにより、補正演算部84は、目標ピニオン角θ に基づきその時々の第3の補正ばね反力トルクTsp3 の操舵周波数frevに対する変化を一定にするために最適な第2の補正ばね反力トルクTsp2 を、その時々の目標ピニオン角θ に基づき一義的に算出することが可能となる。
補正演算部84は、たとえば先の図7に示される第3の補正ばね反力トルクTsp3 に対して、先の図6のグラフに示される特性を有する第2の補正ばね反力トルクTsp2 を加算する。その結果得られる補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 の特性はつぎの通りである。
すなわち、図8のグラフに示すように、操舵周波数frevに対する補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 の絶対値の変化は一定(理論的には、操舵周波数frevに対する傾きは零)となる。すなわち、補正演算部84により実行される補正処理を通じて、前述した操舵周波数frevの増大に起因する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の落ち込みが解消される。
<補間演算部>
補間演算部85は、分配ゲイン演算部83により算出される分配ゲインGを使用して、補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 と基礎ばね反力トルクTsp0 との使用比率を決定する。
前述したように、分配ゲインGは、たとえば「0」から「1」までの値に設定される。補間演算部85は、分配ゲインGが「0」であるとき、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率を100%に設定する。分配ゲインGが「1」であるとき、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を100%に設定する。分配ゲインGの値に応じて基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 との使用比率が調節される。
先の図9のグラフに示されるように、横加速度LAが大きくなるほど、また車速Vが速くなるほど分配ゲインGはより大きな値に設定される。このため、車両に働く横加速度LAが大きくなるほど、また車速Vが速いほど、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率は大きく、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率は小さくなる。逆に、横加速度LAが小さくなるほど、また車速Vが遅くなるほど分配ゲインGはより小さな値に設定される。このため、車両に働く横加速度LAが小さくなるほど、また車速Vが遅くなるほど、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率は小さく、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率は大きくなる。
また、補間演算部85は、使用比率がそれぞれ調節された基礎ばね反力トルクTsp0 と、補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 とを足し合わせることにより、第4の補正ばね反力トルクTsp4 を算出する。ここで、基礎ばね反力トルクTsp0 は、先の図8に示される補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 と同様の特性を有する。すなわち、操舵周波数frevに対する基礎ばね反力トルクTsp0 の絶対値の変化は一定(理論的には、操舵周波数frevに対する傾きは零)となる。このため、基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 とを足し合わせることにより得られる第4の補正ばね反力トルクTsp4 の絶対値についても、操舵周波数frevの変化に対して一定の値となる。
たとえば、分配ゲインGが「1」であるとき、補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率は100%、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率は0%となる。このため、補間演算部85では、先の図8のグラフに示される特性を有する補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 に対して、実質的には何も足し合わせられない。したがって、補間演算部85では、実質的に先の図8のグラフに示される補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 と同様の特性を有する第4の補正ばね反力トルクTsp4 が算出される。
<加算器>
図1に示すように、加算器86は、補間演算部85により算出される第4の補正ばね反力トルクTsp4 と、第1の車両反力モデル81(正確には、制御マップ91)により算出される第1の補正ばね反力トルクTsp1 とを足し合わせる。これにより、最終的な基本駆動トルクT のばね成分Tsp が算出される。
ここでは、分配ゲインGが「1」であるときについて説明する。前述したように、分配ゲインGが「1」であるとき、第4の補正ばね反力トルクTsp4 は、先の図8のグラフに示される補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 と同様の特性を有する。このため、加算器86により算出される最終的なばね成分Tsp の特性は、先の図8のグラフに示される補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 の特性と、先の図5のグラフに示される第1の補正ばね反力トルクTsp1 の特性とを足し合わせることにより得られる特性と同様の特性になる。
図10のグラフに示すように、横軸に操舵周波数frevを、縦軸に基本駆動トルクT のばね成分Tsp をそれぞれプロットしたとき、ばね成分Tsp の特性はつぎの通りである。すなわち、操舵周波数frevが増大するにつれて、ばね成分Tsp は徐々に増大する。操舵周波数frevが所定値に達した以降、ばね成分Tsp は一定値に維持される。
分配ゲインGが「1」以外の他の値であるときについても、前述と同様にして、最終的な目標のばね成分Tsp が得られる。
なお、分配ゲインGが「1」と「0」との間の値であるときには、基礎ばね反力トルクTsp0 と、補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 とは、それぞれ所定の使用比率で足し合わされる。この点、操舵周波数frevに対する基礎ばね反力トルクTsp0 の絶対値の変化も一定(理論的には、操舵周波数frevに対する傾きは零)となる。このため、操舵周波数frevに対する変化がそれぞれ一定である基礎ばね反力トルクTsp0 と補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 とを足し合わせて得られる第4の補正ばね反力トルクTsp4 の操舵周波数frevに対する変化も一定となる。そして前述と同様に、第4の補正ばね反力トルクTsp4 に対して、第1の補正ばね反力トルクTsp1 が加算されることにより、先の図10のグラフに示される特性と同様の傾向を有する特性が得られる。
<理想車両モデルの作用>
つぎに、前述のように構成した理想車両モデル72の作用について説明する。前述したように、本例では、ばね成分Tsp を求めるに際して、目標ピニオン角θ のみならず、横加速度LAについても加味する。なお、最終的なばね成分Tsp を算出する過程において、各種の補正処理が実行されるところ、まずは本例の基本的な考え方(動作)について説明する。すなわち、各種の補正処理としては、以下に示す(a),(b),(c)の3つの処理が存在するところ、当面、これら補正処理についての説明を割愛する。
(a)補正演算部84における第2の補正ばね反力トルクTsp2 を使用した補正処理。
(b)補間演算部85における分配ゲインGを使用した補正処理。
(c)加算器86における第1の補正ばね反力トルクTsp1 を使用した補正処理。
さて、理想車両モデル72は、基本的には目標ピニオン角θ に基づく基礎ばね反力トルクTsp0 に対して、横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 を加算した結果に基づき、ばね成分Tsp を算出する。その結果、ばね成分Tsp は、横加速度LAを加味した値となる。すなわち、目標ピニオン角θ のみに基づきばね成分Tsp を算出する場合に比べて、ばね成分Tsp の値は補正後の第3の補正ばね反力トルクTsp3 が足し合わせられる分だけ大きな値となる。
このため、理想EPSモデル71における減算器74においては、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の分だけ大きな値のばね成分Tsp が基本駆動トルクT から減算される。すなわち、減算器74により算出される減算値T **は、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の分だけ小さな値となる。
なお、前述の式(C)に示されるように、第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、横加速度LAの値に応じた値となる。式(C)からも分かるように、第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、横加速度LAの定数倍とみることができるので、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値は、横加速度LAが増大するほど大きな値となる。第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値が増大するほど、減算値T **、ひいては当該減算値T **に基づき、慣性モデル75、第1の積分器76および第2の積分器77を通じて算出される目標ピニオン角θ の値が減少する。
ピニオン角フィードバック制御部63により算出される補正成分Ta2 についても、目標ピニオン角θ の減少分に応じて小さくなる。基本アシスト成分Ta1 に加算される補正成分Ta2 の値が小さくなる分、アシスト指令値T の大きさ、ひいては電流指令値I*の値が小さくなる。そして、電流指令値I*の値が小さくなる分だけモータ31のモータトルク、ひいてはステアリングに印加される操舵補助力が減少する。すなわち、運転者がステアリングを通じて感じる操舵反力が増大する。横加速度LAの大きさに応じて操舵反力が増すことにより、運転者が身体に感じる横加速度LAと、ステアリングを通じて手に感じる手応えとが調和しやすくなる。したがって、車両に大きな横加速度LAが働いている場合であれ、運転者は車両との一体感を覚えやすくなる。
<舵抜け感の抑制処理>
ここで、先の図7のグラフにも示されるように、横加速度LAに基づき算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、操舵周波数frevの増大に伴い、いわゆる落ち込みが発生することが考えられる。これは、前述したように、操舵周波数frevが低いときには横加速度LAの値は大きく、逆に操舵周波数frevが高いときには横加速度LAの値は小さくなることに起因する。すなわち、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値は、式(B)からも分かるように、横加速度LAの値に比例する。このため、操舵周波数frevが低い領域では横加速度LAの値が大きくなりやすいので、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値も大きくなりやすい。また、操舵周波数frevが高い領域では横加速度LAの値が小さくなりやすいので、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の値も小さくなりやすい。そして、第3の補正ばね反力トルクTsp3 が不足する場合、横加速度LAに応じたステアリングの操舵反力が十分に得られないので、運転者はいわゆる舵抜け感を覚えるおそれがある。
そこで、本例では、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の不足分を、追加の弾性成分である第2の補正ばね反力トルクTsp2 によって補う。たとえば先の図7のグラフに示される第3の補正ばね反力トルクTsp3 には、先の図6に示される第2の補正ばね反力トルクTsp2 が足し合わせられる。当該足し合わせにより、操舵周波数frevにかかわらず一定の第3の補正ばね反力トルクTsp3 を得ることが可能である。このため、いわゆる舵抜け感の発生が抑制される。また、横加速度LAの大きさに応じた操舵反力が安定して得られる。
<補正ばね反力トルクの分配処理>
また前述したように、車両の走行状況によって、車両との一体感の向上が要求されるときと、それほど要求されないときとがある。たとえば、横加速度LAが大きくなるほど、車両との一体感の向上が要求される。逆に横加速度LAが小さくなるほど、車両との一体感はそれほど問題にならない。このような状況に対応するべく本例では、車両の状況に応じて第3の補正ばね反力トルクTsp3 と基礎ばね反力トルクTsp0 との使用比率を調節する。当該使用比率の調節は、分配ゲイン演算部83により算出される分配ゲインGに基づき行われる。
たとえば横加速度LAが大きくなるほど、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を増大させるとともに、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率を減少させる。逆に、横加速度LAが小さくなるほど、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を減少させるとともに、基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率を増大させる。
ここで、目標ピニオン角θ に基づく基礎ばね反力トルクTsp0 は、いわゆるステアリングの剛性感(しっかり感)に寄与する。また、横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、車両との一体感に寄与する。このため、横加速度LAに応じて第3の補正ばね反力トルクTsp3 と基礎ばね反力トルクTsp0 との使用比率を調節することにより、その時々の車両の走行状態に応じてステアリングの剛性感と車両との一体感とがそれぞれ好適に得られる。ステアリングの剛性感と車両との一体感との調和が図られるので、運転しやすくなる。
<目標ばね成分>
また、前述したように、使用比率がそれぞれ調節された基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 とを足し合わせることにより得られる第4の補正ばね反力トルクTsp4 は、操舵周波数frevの変化に対して一定の値となる。第4の補正ばね反力トルクTsp4 を最終的な基本駆動トルクT のばね成分Tsp としてもよいところ、最終的に要求される操舵反力の特性は車種などに応じて様々である。このため、本例では、第4の補正ばね反力トルクTsp4 に第1の補正ばね反力トルクTsp1 を足し合わせることにより、最終的なばね成分Tsp を得ている。操舵周波数frevの変化に対して一定の値となる第4の補正ばね反力トルクTsp4 に対して追加される第1の補正ばね反力トルクTsp1 の設定如何によって、所望のばね成分Tsp 、ひいては最終的に要求される操舵反力の特性を自由に得ることができる。
<走行状態の一例>
たとえば曲がり路にさしかかる際など、横加速度LAが小さい状況では、ステアリングの剛性感が車両との一体感よりも優先される。このため、車両との一体感に寄与する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率が低減されるとともに、ステアリングの剛性感に寄与する基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率が増大される。その結果、ステアリングの剛性感が手応えとして運転者の手に伝わりやすくなる。したがって、曲がり路に近づいていくときなど、運転者はステアリングを通じてめりはりの利いた手応えを感じることができる。また、ステアリングの操作に対して車両が直接的に反応しやすくなるので、しっかりとした運転(ステアリング操作)が可能である。
曲がり路への進入に伴いステアリングを操作すると、その操作量に応じて横加速度LAが増大する。横加速度LAの増大に伴い車両との一体感が要求される状況になったとき、車両との一体感に寄与する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率が増大されるとともに、ステアリングの剛性感に寄与する基礎ばね反力トルクTsp0 の使用比率が減少される。その結果、横加速度LAの増大に伴いステアリングの手応えが増えていく。そして、曲がり路を通過する際には、ステアリングの逆方向への操作に伴い横加速度LAは減少していく。その結果、車両との一体感に寄与する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率の減少に伴いステアリングの手応えも減っていく。このように、曲がり路などを走行する際、車両の動き(身体に感じる横加速度LA)とステアリングの手応えとが一致するので、運転者は運転しやすい。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両に働く横加速度LAの増大に応じて、補正成分Ta2 による基本アシスト成分Ta1 の補正が行われる。当該補正を通じて、ステアリングの操舵反力が増大される。このときの補正成分Ta2 は、目標ピニオン角θ の演算に用いる基本駆動トルクT (基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和)の大きさが増加するのを抑制し、当該抑制された基本駆動トルクT に応じて算出される目標ピニオン角θ と実際のピニオン角θとのフィードバック制御により得られる。基本駆動トルクT の大きさが抑制される分だけ、目標ピニオン角演算部62により演算される目標ピニオン角θ の大きさ、ひいては基本アシスト成分Ta1 に対する補正成分Ta2 が減少する。補正成分Ta2 が減少する分、操舵機構20に付与される操舵補助力も減少する。その結果、操舵補助力の減少に応じてステアリングの操舵反力は増大する。このため、横加速度LAの大きさに応じて好適な操舵反力が得られる。したがって、運転者が身体に受ける横加速度LAと、ステアリングを通じて手に感じる操舵反力、すなわち手応えとを調和させることができる。
(2)第2の車両反力モデル82は、横加速度LAの増大に応じて操舵反力に含まれる弾性成分を増大させるべく第3の補正ばね反力トルクTsp3 を演算する。目標ピニオン角演算部62は、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の分だけ大きさが抑制された基本駆動トルクT (減算値T **)に応じて目標ピニオン角θ を算出する。ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により算出される目標ピニオン角θ と実際のピニオン角θとのフィードバック制御を通じて補正成分Ta2 を算出する。当該補正成分Ta2 による基本アシスト成分Ta1 の補正を通じて、操舵反力に含まれる弾性成分が増大される。このように、横加速度LAの増大に応じて操舵反力に含まれる弾性成分が増大することにより、運転者が身体に受ける横加速度LAと、ステアリングを通じて手に感じる操舵反力、すなわち手応えとを調和させることが可能である。
(3)第1の車両反力モデル81は、操舵周波数frevの変化に対する第3の補正ばね反力トルクTsp3 の大きさを一定にすべく第2の補正ばね反力トルクTsp2 を演算する。その理由はつぎの通りである。すなわち、横加速度LAに応じて算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 は、操舵周波数frevに応じて変化する。たとえば操舵周波数frevが高くなるほど、車両には横加速度LAが働きにくくなるので、必要とされる第3の補正ばね反力トルクTsp3 が算出されないおそれがある。この場合、ステアリングの操舵反力が十分に得られないので、運転者はいわゆる舵抜け感を覚えるおそれがある。そこで、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の不足分を第2の補正ばね反力トルクTsp2 で補うことによって、操舵周波数frevにかかわらず一定の第3の補正ばね反力トルクTsp3 を得ることが可能である。その結果、横加速度LAの大きさに応じた操舵反力が安定して得られる。いわゆる舵抜け感の発生も抑制される。
(4)目標ピニオン角θ に基づく基礎ばね反力トルクTsp0 は、いわゆる剛性感(しっかり感)に寄与する。また、横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 は車両との一体感に寄与する。このため、横加速度LAに応じて基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 との使用比率を調節することにより、ステアリングの剛性感と車両との一体感とがそれぞれ好適に得られる。たとえば横加速度LAが大きいほど車両との一体感が不足することが考えられるので、第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を増大させる。これにより、横加速度LAの大きさに応じて車両との一体感が好適に得られる。
(5)第1の車両反力モデル81は、目標とするばね成分Tsp を得るべく、操舵周波数frevの変化に対する大きさが一定である第4の補正ばね反力トルクTsp4 に対する第1の補正ばね反力トルクTsp1 をさらに演算する。このため、第1の補正ばね反力トルクTsp1 の設定如何によって、所望の特性を有するばね成分Tsp を得ることができる。
<他の実施の形態>
なお、前記実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・図11に示すように、理想車両モデル72には第3の車両反力モデル101を設けてもよい。この場合、図1および図2にそれぞれ二点鎖線で示すように、電動パワーステアリング装置10には、ヨーレートセンサ450を設ける。また、図11に示すように、理想車両モデル72には、新たな補間演算部102を設ける。さらに、分配ゲイン演算部83には、新たなゲインマップ103を設ける。
第3の車両反力モデル101は、第5の補正ばね反力トルクTsp5 を演算する。第5の補正ばね反力トルクTsp5 は、車両に働くヨーレートYRに応じた操舵反力成分(ステアリングに作用させるべき反力成分)である。
第5の補正ばね反力トルクTsp5 は、理論的には次式(B)により求められる。
sp5 =(ζ/l)・(I/l)・(l・m・V・γ+I・γ′) …(D)
ただし、「ζ」はトレール量、「l」はナックルアーム長、「I」は車両に働くヨー慣性モーメント、「l」はホイールベース、「l」は車両を横からみたときの前輪軸と車両重心との間の距離、「m」は車両の重量、「V」は車速、「γ」はヨーレート、「γ′」はヨー角加速度である。
したがって、第3の車両反力モデル101は、ヨーレートセンサ450を通じて取得されるヨーレートを式(D)に適用することにより、第5の補正ばね反力トルクTsp5 を算出することが可能である。なお、式(D)における「I・γ′」を割愛した演算式により第5の補正ばね反力トルクTsp5 を求めてもよい。
分配ゲイン演算部83は、新たなゲインマップ103を使用して、第3の補正ばね反力トルクTsp3 と第5の補正ばね反力トルクTsp5 との使用比率を設定する。分配ゲイン演算部83は、横加速度LAが大きいときには、横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を増大させるとともに、ヨーレートYRに基づく第5の補正ばね反力トルクTsp5 の使用比率を減少させる。横加速度LAが小さいときには、横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 の使用比率を減少させるとともに、ヨーレートYRに基づく第5の補正ばね反力トルクTsp5 の使用比率を増大させる。
新たな補間演算部102は、使用比率がそれぞれ調節された第3の補正ばね反力トルクTsp3 と第5の補正ばね反力トルクTsp5 とを足し合わせることにより、第6の補正ばね反力トルクTsp6 を算出する。この第6の補正ばね反力トルクTsp6 には補正演算部84において第2の補正ばね反力トルクTsp2 が足し合わせられることにより補正される。なお、このときの第2の補正ばね反力トルクTsp2 は、操舵周波数frevに対する第6の補正ばね反力トルクTsp6 の値を一定にする観点に基づき、シミュレーションなどにより予め設定される。以降の処理は、本実施の形態と同様である。
ヨーレートYRに基づく第5の補正ばね反力トルクTsp5 は、ステアリング操作に対するいわゆるすっきり感に寄与する。このため、ヨーレートYRに基づく第5の補正ばね反力トルクTsp5 と横加速度LAに基づく第3の補正ばね反力トルクTsp3 との使用比率を調節することにより、ステアリング操作に対するいわゆるすっきり感と車両との一体感とがそれぞれ好適に得られる。なお、第5の補正ばね反力トルクTsp5 に基づく操舵反力は、車両に働くヨーレートYRに基づき算出される。このため、第5の補正ばね反力トルクTsp5 を加味することにより、車両に遠心力が働いているときの状況に近似した操舵フィーリングが得られやすくなる。
・本例では、トルクセンサ420はコラムシャフト22aに設けたが、インターミディエイトシャフト22bあるいはピニオンシャフト22cに設けてもよい。操舵トルクTが検出できるのであれば、操舵機構20の適宜の箇所に設けることが可能である。
・本例では、ピニオン角フィードバック制御部63において、ピニオン角θに対してPID制御を行うようにしたが、PI制御を行ってもよい。
・本例では、転舵輪26,26の転舵角θtaに対応するピニオン角θについてフィードバック制御を行うようにしたが、インターミディエイトシャフト22bの回転角についてフィードバック制御を行うようにしてもよい。また、モータ31の出力軸の回転角についてフィードバック制御を行ってもよい。インターミディエイトシャフト22bおよびモータ31の出力軸の回転角は、いずれも転舵角θtaを反映する値であるため、これら回転角のフィードバック制御を通じて、間接的に転舵角θtaのフィードバック制御を行うことができる。また、転舵輪26,26の転舵角θtaを検出し、この転舵角θtaに対して直接フィードバック制御を行うようにしてもよい。この場合、目標ピニオン角演算部62は目標転舵角演算部として機能し、ピニオン角フィードバック制御部63は転舵角フィードバック制御部として機能する。
・本例では、理想EPSモデル71は、基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和に基づいて目標ピニオン角θ (理想的なピニオン角)を求めるようにしたが、操舵トルクTのみに基づいて目標ピニオン角θ を求めるようにしてもよい。
・本例では、基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTおよび車速Vに基づいて基本アシスト成分Ta1 を求めるようにしたが、操舵トルクTのみに基づいて基本アシスト成分Ta1 を求めるようにしてもよい。また、基本アシスト成分演算部61は、位相補償制御およびトルク微分制御の少なくとも一方の制御を実行するようにしてもよい。位相補償制御は、アシスト勾配に基づいてトルクセンサ420により検出される操舵トルクTの位相を変化させてもよい。トルク微分制御は、基本アシスト成分Ta1 の微分値が大きいほど基本アシスト成分Ta1 の値を大きくすることが望ましい。
・本例では、横加速度LAに応じて基礎ばね反力トルクTsp0 と第3の補正ばね反力トルクTsp3 との使用比率を調節するようにしたが、当該調節は行わなくてもよい。このようにしても、本実施の形態の(1)〜(3),(5)と同様の効果が得られる。またこの場合、分配ゲイン演算部83を省略可能である。
・本例では、第1の車両反力モデル81は、制御マップ91に基づき算出される第1の補正ばね反力トルクTsp1 を使用して、補間演算部85により算出される第4の補正ばね反力トルクTsp4 を補正するようにしたが、当該補正処理は行わなくてもよい。このようにしても、本実施の形態の(1)〜(4)と同様の効果が得られる。またこの場合、制御マップ91を省略することも可能である。
・本例では、第1の車両反力モデル81は、制御マップ92に基づき算出される第2の補正ばね反力トルクTsp2 を使用して、第2の車両反力モデル82により算出される第3の補正ばね反力トルクTsp3 を補正するようにしたが、当該補正処理は行わなくてもよい。このようにしても、本実施の形態の(1),(2),(4)と同様の効果が得られる。またこの場合、制御マップ92を省略することも可能である。
・本例では、コラムシャフト22aに操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置10に具体化したが、たとえばピニオンシャフト22cあるいはラック軸23に操舵補助力を付与するタイプの電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
10…電動パワーステアリング装置、20…操舵機構、22c…ピニオンシャフト(回転軸)、26…転舵輪、31…モータ、42…マイクロコンピュータ(制御装置)、61…基本アシスト成分演算部(第1の演算部)、62…第2の演算部を構成する目標ピニオン角演算部、63…第2の演算部を構成するピニオン角フィードバック制御部、Ta1 …基本アシスト成分(基礎制御成分)、Ta2 …補正成分(補正制御成分)、Tsp …ばね成分(補助弾性成分)、Tsp1 …第1の補正ばね反力トルク(追加弾性成分)、Tsp2 …第2の補正ばね反力トルク(追加弾性成分)、Tsp3 …第3の補正ばね反力トルク(補助成分)、Tsp4 …第4の補正ばね反力トルク、Tsp0 …基礎ばね反力トルク(基礎成分)、θ …目標ピニオン角(目標回転角)。

Claims (5)

  1. 車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両のステアリング操作に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、
    転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の実際の回転角を、少なくとも操舵トルクに応じて算出される目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第2の演算部と、を備え、
    前記第2の演算部は、車両に働く横加速度の増大に応じて操舵反力を増大させるべく、目標回転角の算出に使用する少なくとも操舵トルクの大きさを減少させたうえで前記補正制御成分を演算する電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第2の演算部は、横加速度の増大に応じて操舵反力に含まれる弾性成分を増大させるべく補助弾性成分を演算し、当該補助弾性成分に応じて目標回転角の算出に使用する少なくとも操舵トルクの大きさを減少させる電動パワーステアリング装置。
  3. 請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第2の演算部は、操舵周波数の変化に対する前記補助弾性成分の大きさを一定にすべく追加弾性成分を演算する電動パワーステアリング装置。
  4. 請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第2の演算部は、目標回転角に基づく前記補助弾性成分の基礎成分と、横加速度に基づく前記基礎成分に対する補助成分と、を演算し、
    横加速度の大きさに応じて前記基礎成分と前記補助成分との使用比率を設定するとともに、当該設定に際して横加速度が大きくなるほど前記補助成分の使用比率を増大させる電動パワーステアリング装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第2の演算部は、目標とする前記補助弾性成分を得るべく、操舵周波数の変化に対する大きさが一定である前記補助弾性成分に対する追加弾性成分をさらに演算する電動パワーステアリング装置。
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