JP6439473B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
従来、車両の操舵機構に電動モータの動力を付与することにより運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)が知られている。たとえば、特許文献1のEPSは、操舵トルクおよび車速に基づきアシスト指令値を演算し、当該アシスト指令値に基づきモータの駆動を制御する制御装置を備えている。詳述すると、制御装置は操舵トルクおよび車速に基づきアシスト指令値の基礎成分である第1アシスト成分を演算する。また、制御装置は操舵トルクおよび第1アシスト成分に基づき転舵角指令値を演算し、当該転舵角指令値に実際の転舵角を一致させるフィードバック制御を通じて第2アシスト成分を演算する。制御装置は第1アシスト成分に第2アシスト成分を加算することによりアシスト指令値を演算する。
制御装置は、第1アシスト成分と操舵トルクとを加算して駆動トルクを求め、当該駆動トルクから理想モデルに基づいて転舵角指令値を演算する。理想モデルは、ステアリングシャフトやモータなど、EPSを構成する各要素の特性に依存するEPS側理想モデルと、EPSが搭載される車両の特性に依存する車両側理想モデルとを含んでいる。EPS側理想モデルは、転舵角の1階時間微分値に比例する粘性項、および転舵角の2階時間微分値に比例する慣性項により構成される。車両側理想モデルは、転舵角に比例するばね項により構成される。駆動トルクは、これらばね項、粘性項および慣性項の総和としてモデル化されている。
特開2014−040179
より適切な操舵感を得るためには、ばね項、粘性項および慣性項の値のバランスが必要とされる。しかし、各項の値は互いに独立して決まるため、各項の値のバランスによっては、つぎのようなことが懸念される。たとえば、ばね項に基づくばね反力が強く現れすぎて、その分、粘性項に基づく粘性反力(ダンピング)が弱く現れることが考えられる。このとき、運転者は操舵トルクの変化として粘性を感じにくい。逆に、粘性項に基づく粘性反力が強く現れすぎて、その分、ばね項に基づくばね反力が弱く現れることも考えられる。このとき、運転者は操舵トルクの変化として粘性をより強く感じる。
本発明の目的は、より適切な操舵感が得られる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成し得る電動パワーステアリング装置は、車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、前記目標回転角に対する前記第1の反力成分の変化の勾配に応じて前記第2の反力成分を補正する補正部と、を有している。
この構成によれば、目標回転角の変化に対する第1の反力成分の変化の勾配に応じて、第1の反力成分による反力がより強く現れるときと、より弱く現れるときとがある。たとえば第1の反力成分の変化の勾配が大きいほど、目標回転角の変化に対する第1の反力成分の増加量が大きくなる。このため、運転者は第1の反力成分に基づく反力を操舵トルクの変化として、より強く感じる。この場合、第2の反力成分の値によるものの、運転者は第2の反力成分に基づく反力を操舵トルクの変化として感じにくくなるおそれがある。この点、第1の反力成分の変化の勾配に応じて第2の反力成分を補正することにより、第1の反力成分による反力と第2の反力成分による反力とのバランスが、より好適なバランスに調整される。したがって、より好適な操舵感を得ることが可能となる。
上記目的を達成し得る電動パワーステアリング装置は、車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、前記第1の反力成分演算部に取り込まれる前記目標回転角に、前記第2の反力成分を加算することにより前記第1の反力成分を変更する変更部と、を有している。
この構成によれば、目標回転角の変化に対する第1の反力成分の変化割合の大きさによっては、第1の反力成分による反力がより強く現れるときと、より弱く現れるときとがある。たとえば目標回転角の変化に対する第1の反力成分の変化割合が大きいほど、運転者は第1の反力成分に基づく反力を操舵トルクの変化として、より強く感じる。この場合、第2の反力成分の値によるものの、運転者は第2の反力成分に基づく反力を操舵トルクの変化として感じにくくなるおそれがある。この点、第1の反力成分演算部に取り込まれる目標回転角に第2の反力成分を加算することによって、その分、目標回転角の変化に対する第1の反力成分のヒステリシス幅が拡がる。このため、運転者は第2の反力成分に基づく反力を操舵トルクの変化として、より感じやすくなる。したがって、より好適な操舵感を得ることが可能となる。
上記目的を達成し得る電動パワーステアリング装置は、車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、前記目標回転角に対する前記第1の反力成分の変化の勾配に応じて前記第2の反力成分を補正する補正部と、前記第1の反力成分演算部に取り込まれる前記目標回転角に、前記第2の反力成分を加算することにより前記第1の反力成分を変更する変更部と、を有する。
この構成によれば、補正部と変更部とを併せ持つことにより、より好適な操舵感を得ることが可能である。目標回転角の変化に対する第1の反力成分の変化割合(勾配)が大きいときほど、有効である。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記補正部は、前記第1の反力成分の変化の勾配に応じたゲインを演算する勾配ゲイン演算部と、前記ゲインを前記第2の反力成分に乗算する乗算器と、を有する構成を採用してもよい。この場合、前記勾配ゲイン演算部は、前記勾配が大きくなるときほど、より大きな値の前記ゲインを演算することが好ましい。
この構成によれば、第1の反力成分の変化の勾配が大きくなるときほど、より大きな値のゲインが第2の反力成分に乗算される。第2の反力成分の値が大きくなる分、第2の反力成分に基づく反力を、より感じやすくなる。結果的に、第1の反力成分に基づく反力と、第2の反力成分に基づく反力とのバランスをとることが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記第1の反力成分演算部は、前記第1の反力成分としてばね成分を演算するばね特性制御演算部を含んでいてもよい。また、前記第2の反力成分演算部は、前記第2の反力成分として操舵角速度に比例する粘性成分を演算する粘性制御演算部、および前記第2の反力成分として操舵角の変化に対してヒステリシス特性を有する摩擦成分であるヒステリシス制御量を演算するヒステリシス制御量演算部の少なくとも一を含んでいてもよい。
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、より適切な操舵感が得られる。
電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図。 ECUの制御ブロック図。 EPSの第1の形態における目標ピニオン角演算部の制御ブロック図。 操舵角とヒステリシス制御量との関係を示すグラフ。 ピニオン角速度の絶対値と粘性成分との関係を示すグラフ。 目標ピニオン角の絶対値とばね成分との関係を示すグラフ。 ばね成分にヒステリシス制御量を加えたときの概念を示すグラフ。 ばね成分の特性勾配とゲインとの関係を示すグラフ。 (a)は目標ピニオン角にばね成分を除く反力成分(粘性成分、慣性成分、ヒステリシス成分)が加算される前における当該反力成分の特性を示すグラフ、(b)は目標ピニオン角にばね成分を除く反力成分(粘性成分、慣性成分、ヒステリシス成分)が加算された後における当該反力成分の特性を示すグラフ。 EPSの第2の形態における目標ピニオン角演算部の制御ブロック図。 目標ピニオン角にばね成分を除く反力成分(粘性成分、慣性成分、ヒステリシス成分)が加算されるときの目標ピニオン角とばね成分との関係を示すグラフ。 (a)は目標ピニオン角とばね成分との関係を示すグラフ、(b)は目標ピニオン角とばね成分の特性勾配との関係を示すグラフ。
<第1の実施の形態>
以下、電動パワーステアリング装置の第1の実施の形態を説明する。
<電動パワーステアリング装置の概要>
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)10は、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構20、および運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30、および操舵補助機構30の作動を制御するECU(電子制御装置)40を備えている。
操舵機構20は、運転者により操作されるステアリングホイール21、およびステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21の中心に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b、およびインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cからなる。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラック軸23(正確には、ラック歯が形成された部分23a)に噛合されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ピニオンシャフト22cおよびラック軸23からなるラックアンドピニオン機構24によりラック軸23の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラック軸23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26,26にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪26,26の転舵角θtaが変更される。転舵輪26,26の転舵角θtaが変更されることにより車両の進行方向が変更される。
操舵補助機構30は、操舵補助力(アシスト力)の発生源であるモータ31を備えている。モータ31としては、ブラシレスモータなどの三相交流モータが採用される。モータ31は、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータトルクが操舵補助力として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求あるいは走行状態を示す情報として取得し、これら取得される各種の情報に応じて、モータ31を制御する。各種のセンサとしては、たとえば車速センサ410、トルクセンサ420および回転角センサ430がある。車速センサ410は、車速(車両の走行速度)Vを検出する。トルクセンサ420は、コラムシャフト22aに設けられて、ステアリングホイール21を介してステアリングシャフト22に印加される操舵トルクTを検出する。回転角センサ430は、モータ31に設けられて、モータ31の回転角θを検出する。ECU40は、これらセンサを通じて取得される車速V、操舵トルクTおよび回転角θに基づき、モータ31を制御する。
<ECUの概略構成>
つぎに、ECUのハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、ECU40は、インバータ回路41およびマイクロコンピュータ42を備えている。
インバータ回路41は、マイクロコンピュータ42により生成されるモータ駆動信号に基づいて、バッテリなどの直流電源から供給される直流電流を三相交流電流に変換する。当該変換された三相交流電流は、各相の給電経路44を介してモータ31に供給される。各相の給電経路44には電流センサ45が設けられている。これら電流センサ45は、各相の給電経路44に生ずる実際の電流値Iを検出する。なお、図2では、説明の便宜上、各相の給電経路44および各相の電流センサ45をそれぞれ1つにまとめて図示する。
マイクロコンピュータ42は、車速センサ410、トルクセンサ420、回転角センサ430および電流センサ45の検出結果をそれぞれ定められたサンプリング周期で取り込む。マイクロコンピュータ42は、これら取り込まれる検出結果、すなわち車速V、操舵トルクT、回転角θおよび電流値Iに基づきモータ駆動信号(PWM駆動信号)を生成する。
正確には、マイクロコンピュータ42は、インバータ回路41のPWM駆動を通じて、モータ電流のベクトル制御を行う。ベクトル制御とは、モータ電流を磁界と平行なd軸成分(界磁電流成分)と、これに直交するq軸成分(トルク電流成分)とに分離し、これら分離した電流をそれぞれ独立に目標制御するものである。ベクトル制御により、モータ31を直流モータと類似の取り扱いとすることができる。
<マイクロコンピュータ>
つぎに、マイクロコンピュータの機能的な構成を説明する。
マイクロコンピュータ42は、図示しない記憶装置に格納された制御プログラムを実行することによって実現される各種の演算処理部を有している。図2に示すように、マイクロコンピュータ42は、これら演算処理部として、アシスト指令値演算部51、電流指令値演算部52、モータ駆動信号生成部53およびピニオン角演算部54を備えている。
アシスト指令値演算部51は、車速V、操舵トルクT、モータ31の回転角θ、およびピニオン角演算部54により算出されるピニオン角θをそれぞれ取り込み、これら取り込まれる各種の情報に基づいてアシスト指令値T を演算する。アシスト指令値T は、モータ31に発生させるべき回転力(アシストトルク)を示す指令値である。
電流指令値演算部52は、アシスト指令値演算部51により算出されるアシスト指令値T に基づき電流指令値Iを演算する。電流指令値Iは、モータ31に供給するべき電流を示す指令値である。正確には、電流指令値Iは、d/q座標系におけるq軸電流指令値およびd軸電流指令値を含む。d/q座標系は、モータ31の回転角θに従う回転座標である。
モータ駆動信号生成部53は、電流指令値I、実際の電流値I、およびモータ31の回転角θをそれぞれ取り込み、これら取り込まれる情報に基づき実際の電流値Iが電流指令値Iに追従するように電流のフィードバック制御を行う。モータ駆動信号生成部53は、電流指令値Iと実際の電流値Iとの偏差を求め、当該偏差を無くすようにモータ駆動信号を生成する。
正確には、モータ駆動信号生成部53は、回転角θを使用してモータ31の三相の電流値を二相のベクトル成分、すなわちd/q座標系におけるd軸電流値およびq軸電流値に変換する。そして、モータ駆動信号生成部53は、d軸電流値とd軸電流指令値との偏差、およびq軸電流値とq軸電流指令値との偏差をそれぞれ求め、これら偏差を解消するPWMデューティを算出する。モータ駆動信号生成部53により生成されるモータ駆動信号には、当該PWMデューティが含まれる。インバータ回路41を通じて当該モータ駆動信号に応じた電圧がモータ31に供給されることにより、モータ31はアシスト指令値T に応じた回転力を発生する。
ピニオン角演算部54は、モータ31の回転角θを取り込み、この取り込んだ回転角θに基づきピニオンシャフト22cの回転角であるピニオン角θを演算する。前述したように、モータ31は減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。このため、モータ31の回転角θとピニオン角θとの間には相関関係がある。この相関関係を利用してモータ31の回転角θからピニオン角θを求めることができる。さらに、これも前述したように、ピニオンシャフト22cは、ラック軸23に噛合されている。このため、ピニオン角θとラック軸23の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θは、転舵輪26の転舵角θtaを反映する値である。
<アシスト指令値演算部>
つぎに、アシスト指令値演算部51について詳細に説明する。
図2に示すように、アシスト指令値演算部51は、基本アシスト成分演算部61、目標ピニオン角演算部62、ピニオン角フィードバック制御部(ピニオン角F/B制御部)63、および加算器64を有している。
基本アシスト成分演算部61は、車速Vおよび操舵トルクTに基づいて基本アシスト成分Ta1 を演算する。基本アシスト成分Ta1 はアシスト指令値T の基礎制御成分である。基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTと基本アシスト成分Ta1 との関係を車速Vに応じて規定する三次元マップを使用して、基本アシスト成分Ta1 を演算する。基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTの絶対値が大きくなるほど、また車速Vが遅くなるほど、基本アシスト成分Ta1 の絶対値をより大きな値に設定する。
目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分演算部61により生成される基本アシスト成分Ta1 、および操舵トルクTをそれぞれ取り込む。目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和を基本駆動トルク(入力トルク)とするとき、基本駆動トルクに基づいて理想的なピニオン角を定める理想モデルを有している。理想モデルは、基本駆動トルクに応じた理想的な転舵角に対応するピニオン角を予め実験などによりモデル化したものである。目標ピニオン角演算部62は、基本アシスト成分Ta1 と操舵トルクTとを加算して基本駆動トルクを求め、この求められる基本駆動トルクから理想モデルに基づいて目標ピニオン角θ を演算する。
なお、目標ピニオン角演算部62は、車速Vを取り込み、当該取り込まれる車速Vを加味して目標ピニオン角θ を演算してもよい。
ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により算出される目標ピニオン角θ およびピニオン角演算部54により算出される実際のピニオン角θをそれぞれ取り込む。ピニオン角フィードバック制御部63は、実際のピニオン角θが目標ピニオン角θ に追従するように、ピニオン角のフィードバック制御としてPID(比例、積分、微分)制御を行う。すなわち、ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角θ と実際のピニオン角θとの偏差を求め、当該偏差を無くすように基本アシスト成分Ta1 に対する補正成分Ta2 (補正制御成分)を求める。
加算器64は、基本アシスト成分Ta1 に補正成分Ta2 を加算することによりアシスト指令値T を演算する。
ここで、目標操舵特性あるいは操舵感のチューニング幅を拡げるため、または操舵時のヒステリシス特性を最適化するための構成が設けられることがある。当該構成として、アシスト指令値演算部51には、操舵角演算部65、ヒステリシス制御量演算部66および減算器67がそれぞれ設けられる。
操舵角演算部65は、モータ31の回転角θに基づいてステアリングホイール21の実際の操舵角θsを演算する。操舵角演算部65は、モータ31の回転角θとステアリングシャフト22の回転角との相関関係を利用して操舵角θsを演算する。なお、ステアリングホイール21が中立位置に位置しているとき、操舵角θsの値は「0」となる。また操舵角θsは、ステアリングホイール21が中立位置を基準とする右方向へ操作されたときには正の値、同じく左方向へ操作されたときには負の値となる。
ヒステリシス制御量演算部66は、操舵角演算部65により演算される操舵角θsおよび車速センサ410を通じて検出される車速Vをそれぞれ取り込む。ヒステリシス制御量演算部66は、操舵角θsに基づき基本的なヒステリシス制御量Thy を演算し、当該基本的なヒステリシス制御量Thy に対して車速Vに応じたゲインを乗算することにより、最終的なヒステリシス制御量Thy を演算する。ヒステリシス制御量Thy は、操舵角θsの変化に対してヒステリシス特性を有する補正成分である。
図4のグラフに示すように、ヒステリシス制御量Thy は、ステアリングホイール21の中立位置(θs=0)を基準とする切り込み操舵時には操舵角θsと同方向へ向けて増加する一方、切り戻し操舵時には操舵角θsと反対方向へ向けて増加する。ヒステリシス制御量Thy は、運転者に滑らかな操舵感を与えるために、運転者の操舵に適したヒステリシスを有する操舵反力を与える観点に基づき算出される。
図2に戻って、減算器67は、基本アシスト成分Ta1 からヒステリシス制御量Thy を減算することにより最終的な基本アシスト成分Ta1 を生成する。この場合、目標ピニオン角演算部62は、当該最終的な基本アシスト成分Ta1 を使用して目標ピニオン角θ を演算する。また、加算器64は、当該最終的な基本アシスト成分Ta1 に補正成分Ta2 を加算することによりアシスト指令値T を演算する。
基本アシスト成分Ta1 から減算されるヒステリシス制御量Thy の分だけ、アシスト指令値T 、ひいては電流指令値Iが減少する。すなわち、ヒステリシス制御量Thy の減算分だけ、ステアリングシャフト22に付与される操舵補助力(アシスト力)が減少する。ステアリングホイール21の操作に必要とされる操舵トルクTがヒステリシス制御量Thy の減算分だけ増加するため、ヒステリシス制御量Thy に応じた操舵感を運転者に与えることが可能となる。
<目標ピニオン角演算部>
つぎに、目標ピニオン角演算部62について詳細に説明する。
前述したように、目標ピニオン角演算部62は、最終的な基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和である基本駆動トルクから理想モデルに基づいて目標ピニオン角θ を演算する。当該理想モデルは、ステアリングシャフト22に印加されるトルク、すなわち前述した基本駆動トルクT が、次式(1)で表されることを利用したモデルである。
=Jθ ’’{Cθ ’+Kθ …(1)
ただし、「J」はステアリングホイール21およびステアリングシャフト22の慣性モーメント、「C」はラック軸23のハウジングに対する摩擦などに対応する粘性係数(摩擦係数)、「K」はステアリングホイール21およびステアリングシャフト22をそれぞればねとみなしたときのばね係数である。
式(1)から分かるように、基本駆動トルクT は、目標ピニオン角θ の二階時間微分値θ ’’に慣性モーメントJを乗じた値、目標ピニオン角θ の一階時間微分値θ ’に粘性係数Cを乗じた値、および目標ピニオン角θ にばね係数Kを乗じた値を加算することによって得られる。
目標ピニオン角演算部62は、式(1)に基づく理想モデルに従って目標ピニオン角θ を演算する。
図3に示すように、式(1)に基づく理想モデルは、理想EPSモデル71、および理想車両モデル72を含んでいる。
理想EPSモデル71は、ステアリングシャフト22およびモータ31など、電動パワーステアリング装置10の各構成要素の特性に応じてチューニングされる。理想EPSモデル71は、加算器73、減算器74、慣性モデル75、第1の積分器76、第2の積分器77および粘性モデル78を有している。
加算器73は、最終的な基本アシスト成分Ta1 と操舵トルクTとを足し算することにより基本駆動トルクT を演算する。
減算器74は、加算器73により算出される基本駆動トルクT から後述する粘性成分Tvi およびばね成分Tsp をそれぞれ減算する。ここでは、粘性成分Tvi およびばね成分Tsp が減算された基本駆動トルクT の値を減算値T **とする。
慣性モデル75は、式(1)の慣性項に対応する慣性制御演算部として機能する。慣性モデル75は、減算器74により算出される減算値T **に慣性モーメントJの逆数を乗ずることにより、ピニオン角加速度α を演算する。
第1の積分器76は、慣性モデル75により算出されるピニオン角加速度α を積分することにより、ピニオン角速度ω を演算する。
第2の積分器77は、第1の積分器76により算出されるピニオン角速度ω をさらに積分することにより、目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角θ は、理想EPSモデル71に基づくピニオンシャフト22cの理想的な回転角である。
粘性モデル78は、式(1)の粘性項に対応する粘性制御演算部として機能する。粘性モデル78は、第1の積分器76により算出されるピニオン角速度ω に粘性係数Cを乗ずることにより、基本駆動トルクT の粘性成分Tvi を演算する。粘性成分Tvi は、ピニオン角速度ω に応じた操舵反力成分(ステアリングに作用させるべき反力成分)の一である。
ちなみに、粘性モデル78は、ピニオン角速度ω の絶対値と粘性成分Tvi との関係を規定する制御マップに基づき、ピニオン角速度ω の絶対値に応じた粘性成分Tvi を算出してもよい。当該制御マップは、要求される操舵特性などに応じて予め実験などにより求められる。
図5のグラフに示すように、横軸にピニオン角速度ω の絶対値を、縦軸に粘性成分Tvi をそれぞれプロットしたとき、制御マップMviは、つぎのような特性を有する。すなわち、ピニオン角速度ω の絶対値が「0」から一定値ωp1 に達する前までの間、ピニオン角速度ω の絶対値が増加するにつれて粘性成分Tvi の値は急激に増加する。ピニオン角速度ω の絶対値が一定値ωp1 に達した以降、ピニオン角速度ω の絶対値が増加するにつれて粘性成分Tvi の値は緩やかに増加する。なお、ピニオン角速度ω の絶対値が大きくなるほど、ピニオン角速度ω の絶対値に対する粘性成分Tvi の値の変化率(図5に示す特性線の接線の傾き)が小さくなる。
図3に戻って、理想車両モデル72は、電動パワーステアリング装置10が搭載される車両の特性に応じてチューニングされる。操舵特性に影響を与える車両側の特性は、たとえばサスペンションおよびホイールアライメントの仕様、および転舵輪26,26のグリップ力(摩擦力)などにより決まる。理想車両モデル72は、式(1)のばね項に対応するばね特性制御演算部として機能する。理想車両モデル72は、第2の積分器77により算出される目標ピニオン角θ にばね係数Kを乗ずることにより、基本駆動トルクT のばね成分Tsp を演算する。ばね成分Tsp は、目標ピニオン角θ に応じた操舵反力成分の一である。なお、理想車両モデル72は、ばね成分Tsp を演算するに際して車速Vを加味してもよい。
ちなみに、理想車両モデル72は、目標ピニオン角θ の絶対値とばね成分Tsp との関係を規定する制御マップに基づき、目標ピニオン角θ の絶対値に応じたばね成分Tsp を算出してもよい。当該制御マップは、要求される操舵特性などに応じて予め実験などにより求められる。
図6のグラフに示すように、横軸に目標ピニオン角θ の絶対値を、縦軸にばね成分Tsp をそれぞれプロットしたとき、制御マップMspは、つぎのような特性を有する。すなわち、目標ピニオン角θ の絶対値が「0」から一定値θp1 に達する前までの間、目標ピニオン角θ の絶対値が増加するにつれてばね成分Tsp の値は急激に増加する。目標ピニオン角θ の絶対値が一定値θp1 に達した以降、目標ピニオン角θ の絶対値が増加するにつれてばね成分Tsp の値は緩やかに増加する。なお、目標ピニオン角θ の絶対値が大きくなるほど目標ピニオン角θ の絶対値に対するばね成分Tsp の値の変化率(図6に示す特性線Lspの接線の傾き)が小さくなる。ちなみに、理想車両モデル72は、ばね成分Tsp を演算する際に接線勾配αも演算する。
このように構成した目標ピニオン角演算部62によれば、理想EPSモデル71の慣性モーメントJおよび粘性係数C、ならびに理想車両モデル72のばね係数Kをそれぞれ調整することによって、基本駆動トルクT と目標ピニオン角θ との関係を直接的にチューニングすること、ひいては所望の操舵特性を実現することができる。
本例では、基本駆動トルクT から理想EPSモデル71および理想車両モデル72に基づいて目標ピニオン角θ が設定され、実際のピニオン角θが目標ピニオン角θ に一致するようにフィードバック制御される。前述したように、ピニオン角θと転舵輪26,26の転舵角θtaとの間には相関関係がある。このため、基本駆動トルクT に応じた転舵輪26,26の転舵動作も理想EPSモデル71および理想車両モデル72により定まる。すなわち、車両の操舵感が理想EPSモデル71および理想車両モデル72により決まる。したがって、理想EPSモデル71および理想車両モデル72の調整により所望の操舵感を実現することが可能となる。
また、実際の転舵角θtaが、目標ピニオン角θ に応じた転舵角θtaに維持される。このため、路面状態あるいはブレーキングなどの外乱に起因して発生する逆入力振動の抑制効果も得られる。すなわち、転舵輪26,26を介して操舵機構20に振動が伝達される場合であれ、ピニオン角θが目標ピニオン角θ となるように補正成分Ta2 (図2参照)が調節される。このため、実際の転舵角θtaは、理想モデルにより規定される目標ピニオン角θ に応じた転舵角θtaに維持される。結果的にみれば、逆入力振動を打ち消す方向へ操舵補助が行われることにより、逆入力振動がステアリングホイール21に伝わることが抑制される。
ここで、式(1)におけるばね項および粘性項、すなわち前述したばね成分Tsp および粘性成分Tvi は互いに独立して決まる。このため、つぎの問題が懸念される。
すなわち、目標ピニオン角θ が小さい領域の値(たとえば図6のグラフにおける一定値θp1 未満)であるとき、ばね成分Tsp に基づくばね反力が強く現れる一方、その分、粘性成分Tvi に基づく粘性反力(ダンピング)が弱く現れるおそれがある。逆に、目標ピニオン角θ が大きい領域の値(たとえば図6のグラフにおける一定値θp1 以上)であるとき、ばね成分Tsp に基づくばね反力は弱く現れる一方、その分、粘性成分Tvi に基づく粘性反力は強く現れる。
運転者の操舵感の維持向上という観点から、ばね成分Tsp (ばね反力)と粘性成分Tvi (粘性反力)とのバランスが必要とされる。たとえば、ばね反力がほとんど発生していない状態で強い粘性反力が発生するとき、運転者は操舵トルクの変化として粘性をより強く感じる。逆に、ばね反力が非常に強いとき、運転者は操舵トルクの変化として粘性を感じにくい。このように、ばね反力が強く現れるときと弱く現れるときとで、たとえばばね反力に応じて粘性反力を調整することができれば、より適した操舵感(手応え感)が得られる。先の図6のグラフに示される、目標ピニオン角θ の絶対値の変化に対するばね成分Tsp の変化を示す特性線Lspの接線勾配(傾き)に応じて適切な粘性成分Tvi が存在する。
また、ヒステリシス制御量Thy についても同様である。すなわち、ばね成分Tsp に基づくばね反力が強いほど、運転者はヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を摩擦として感じにくい。逆に、ばね成分Tsp に基づくばね反力が弱いほど、運転者はヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を摩擦として感じやすい。このように、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力に応じた摩擦感も、ばね項に基づく操舵反力(ばね反力)の大きさとの間のバランスで決まる。
図7のグラフに示すように、目標ピニオン角θ の絶対値に関わらず絶対値が等しい正負のヒステリシス制御量+Thy ,−Thy を特性線Lspで示されるばね成分Tsp に対して一律に付加する場合を検討する。この場合、目標ピニオン角θ の絶対値が小さいときほど、より小さな値のヒステリシス制御量+Thy ,−Thy が付加されているように見える。逆に、目標ピニオン角θ の絶対値が大きいときほど、より大きな値のヒステリシス制御量+Thy ,−Thy が付加されているように見える。
これは、目標ピニオン角θ の絶対値が小さいときほど、当該絶対値における特性線Lspの接線勾配が大きくなることに起因する。すなわち、特性線Lspの接線勾配が大きいときほど、目標ピニオン角θ の絶対値の変化に対するばね成分Tsp の増加量が多くなる。このため、運転者は操舵トルクの変化として、ばね成分Tsp に基づくばね反力をより強く感じる。したがって、運転者は、特性線Lspの接線勾配が大きいときほどヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を摩擦として感じにくく、特性線Lspの接線勾配が小さいときほどヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を摩擦として感じやすい。
したがって、ばね反力の強弱に応じて、すなわち特性線Lspの接線勾配に応じてヒステリシス制御量Thy を調整することができれば、運転者に対して、より適した操舵感(摩擦感)を付与することが可能となる。図7のグラフに示される特性線Lspの接線勾配に応じた、より適切なヒステリシス制御量Thy が存在する。なお、特性線Lspで示されるばね成分Tsp に対して、正負の粘性成分+Tvi ,−Tvi を一律に付加する場合についても同様である。
そこで本例では、目標ピニオン角θ の絶対値の変化に対するばね成分Tsp の変化を示す特性線Lspの接線勾配(傾き)に応じて、ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi の値をそれぞれ変更する。当該変更を通じて、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力とばね反力との間のバランス、および粘性反力とばね反力との間のバランスを、それぞれより適したバランスに調整することにより、運転者に対してより適切な操舵感を付与することが可能となる。具体的には、目標ピニオン角演算部62に、つぎの構成を設けている。
図3に示すように、目標ピニオン角演算部62は、2つの勾配ゲイン演算部81,82および乗算器83を有している。また、アシスト指令値演算部51は、乗算器84を有している。
勾配ゲイン演算部81は、理想車両モデル72から所定のサンプリング周期で特性線Lspの接線勾配(傾き)αを取り込み、当該取り込まれる接線勾配αに応じたゲインGviを演算する。このゲインGviは粘性成分Tvi を調整するためのものである。
勾配ゲイン演算部82は、理想車両モデル72から所定のサンプリング周期で特性線Lspの接線勾配(傾き)αを取り込み、当該取り込まれる接線勾配αに応じたゲインGhyを演算する。このゲインGhyはヒステリシス制御量Thy を調整するためのものである。
乗算器83は、勾配ゲイン演算部81により演算されるゲインGviを、粘性モデル78により演算される粘性成分Tvi に乗算する。
乗算器84は、勾配ゲイン演算部82により演算されるゲインGhyを、ヒステリシス制御量演算部66により演算されるヒステリシス制御量Thy に乗算する。
勾配ゲイン演算部81は、接線勾配αとゲインGviとの関係を規定するゲインマップMGviに基づき、ゲインGviを演算する。ゲインマップMGviは、要求される操舵特性などに応じて予め実験あるいはシミュレーションなどにより求められる。
図8のグラフに示すように、横軸に接線勾配αを、縦軸にゲインGviをそれぞれプロットしたとき、ゲインマップMGviは、つぎのような特性を有する。すなわち、接線勾配αの値が「0」を起点として増加するにつれて、ゲインGviの値は初期値G0を起点として曲線的に増加する。なお、接線勾配αの値が大きくなるほどゲインGviの値の変化率(図8に実線で示される特性線LGの接線の傾き)が小さくなる。また、初期値G0(絶対値)は、適宜の値に設定されるところ、たとえば「0」より大きく「1」より小さな値であってもよい。この場合、接線勾配αが勾配しきい値α1を超えるとき、ゲインGviが「1」を超えるようにゲインマップMGviを設定してもよい。
ちなみに、初期値G0(絶対値)を「1」以上の値に設定することも可能である。また、接線勾配αの値の増加に伴い、ゲインGviの値が初期値G0を起点として直線的に増加するように、ゲインマップMGviを設定してもよい。
勾配ゲイン演算部82は、接線勾配αとゲインGhyとの関係を規定するゲインマップMGhyに基づき、ゲインGhyを演算する。このゲインマップMGhyは、ゲインマップMGviと同様の特性を有する。このため、ゲインマップMGhyについては、先の図8のグラフの横軸および縦軸にそれぞれ括弧付きの符号を付し、その詳細な説明を割愛する。
<勾配ゲイン演算部の作用>
つぎに、2つの勾配ゲイン演算部81,82の作用を説明する。なお、ここではゲインGvi,Ghyの初期値G0(絶対値)は「0」より大きく「1」より小さな値である。また、接線勾配αの値が勾配しきい値α1を超えるとき、ゲインGvi,Ghyの値は「1」よりも大きな値となる。
先の図8のグラフに示されるように、接線勾配αの値が大きくなるほど2つのゲインGvi,Ghyは、より大きな値となる。これらゲインGvi,Ghyは、それぞれ粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy に乗算される。このため、粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy は、それぞれ接線勾配αの値が小さくなるほどより小さな値に、接線勾配αの値が大きくなるほどより大きな値となる。
たとえば、先の図7のグラフに一点鎖線で示されるように、運転者がヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力、および粘性反力を感じにくい接線勾配αの値が大きな領域A1では、ばね成分Tsp に対して、より大きな粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy が付加される。逆に、運転者がヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力、および粘性反力を感じやすい接線勾配αの値が小さな領域A2では、ばね成分Tsp に対して、より小さな値の粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy が付加される。
これにより、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力とばね反力とのバランス、およびばね反力と粘性反力とのバランスが、それぞれより適したバランスに調整される。このため、運転者に対してより適切な操舵感を付与することが可能となる。また、接線勾配αの値が大きいときであれ、粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy が増加する分、運転者はヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力に応じた摩擦感、および粘性反力に応じた粘性を、それぞれ操舵トルクの変化として感じやすくなる。
一例として、ヒステリシス制御量Thy にゲインGhyを乗算することによって、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力の特性は、図9(a)のグラフに示される状態から図9(b)のグラフに示される状態へ変化する。図9(a),(b)のグラフは、目標ピニオン角θ と操舵反力(ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力)との関係を示す。横軸は目標ピニオン角θ 、縦軸は操舵反力である。
なお、粘性成分Tvi にゲインGviを乗算したときの操舵反力の特性も、ヒステリシス制御量Thy にゲインGhyを乗算したときの操舵反力の特性と同様に、図9(a)のグラフに示される状態から図9(b)のグラフに示される状態へ変化する。このため、ここではヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力の特性を例に挙げて説明する。
図9(a)のグラフに示されるように、ヒステリシス制御量Thy にゲインGhyが乗算されない場合、目標ピニオン角θ の絶対値が小さい領域B1(当該グラフの中央部分)におけるヒステリシス幅は、目標ピニオン角θ の絶対値が大きい領域B2(当該グラフの両端部分)におけるヒステリシス幅よりも狭くなる。ヒステリシス幅は操舵反力の大きさを示す。このため、領域B1ではヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力に応じた摩擦感を感じにくく、領域B2では当該摩擦感を感じやすいといえる。なお、粘性成分Tvi にゲインGviが乗算されない場合についても同様に、領域B1では粘性成分Tvi に基づく操舵反力に応じた粘性感を感じにくく、領域B2では当該粘性感を感じやすい。
図9(b)のグラフに示されるように、ヒステリシス制御量Thy にゲインGhyが乗算される場合、当該乗算されるゲインGhyの値に応じて、目標ピニオン角θ の絶対値が小さい領域B1におけるヒステリシス幅が拡がる。逆に、目標ピニオン角θ の絶対値が大きい領域B2(当該グラフの両端部分)におけるヒステリシス幅は、当該乗算されるゲインGhyの値に応じて狭くなる。ヒステリシス制御量Thy にゲインGhyが乗算されない場合に比べて、領域B1ではヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を感じやすくなる一方、領域B2ではヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力を感じにくくなったといえる。なお、粘性成分Tvi にゲインGviが乗算される場合についても同様に、領域B1では粘性成分Tvi に基づく操舵反力に応じた粘性感を感じやすく、領域B2では当該粘性感を感じにくい。
このように、図9(b)のグラフにおける中央部分(特性線Lspの接線勾配が大きい領域)と端部(特性線Lspの接線勾配が小さい領域)とにおいて、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力とばね反力とのバランス、および粘性成分Tvi に基づく粘性反力とばね反力とのバランスが、それぞれより適したバランスに調整される。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)目標ピニオン角θ の絶対値の変化に対するばね成分Tsp の変化を示す特性線Lspの接線勾配α(傾き)に応じて、ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi の値をそれぞれ変更する。当該変更を通じて、ばね成分Tsp に基づくばね反力とヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力とのバランス、および当該ばね反力と粘性成分Tvi とのバランスが、それぞれより適したバランスに調整される。このため、運転者に対してより適切な操舵感を付与することが可能となる。
(2)ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi のいずれか一方のみを、ばね成分Tsp の変化を示す特性線Lspの接線勾配αに応じて補正する構成を採用することも可能である。この場合であれ、ヒステリシス制御量Thy に基づく摩擦感、または粘性成分Tvi に基づく粘性感が得られやすくなる。これは、ヒステリシス制御量Thy または粘性成分Tvi に応じて、目標ピニオン角θ が小さな領域B1(図9(a),(b)参照)におけるヒステリシス幅が拡がるからである。
(3)逆に、ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi に加え、慣性モデル75により演算されるピニオン角加速度α を接線勾配αに応じて補正する構成を採用することも可能である。この場合、慣性モデル用の勾配ゲイン演算部(図示略)を設け、当該勾配ゲイン演算部により演算されるゲインを慣性モデル75により演算されるピニオン角加速度α に乗算する。
<第2の実施の形態>
つぎに、電動パワーステアリング装置の第2の実施の形態を説明する。本例は、目標ピニオン角演算部62の構成の点で第1の実施の形態と異なる。本例は、単独で実施してもよいし、第1の実施の形態と組み合わせて実施してもよい。
図10に示すように、目標ピニオン角演算部62(正確には、理想EPSモデル71)は、先の粘性モデル78に加え、もう一つの粘性モデル91を有している。粘性モデル91は、先の粘性モデル78と同様に、第1の積分器76により算出されるピニオン角速度ω に粘性係数Cを乗ずることにより、基本駆動トルクT の粘性成分Tvi を演算する。
また、目標ピニオン角演算部62は、ヒステリシス制御量演算部92および加算器93を有している。
ヒステリシス制御量演算部92は、先のヒステリシス制御量演算部66と同様に、操舵角θsに基づき基本的なヒステリシス制御量Thy を演算し、当該基本的なヒステリシス制御量Thy に対して車速Vに応じたゲインを乗算することにより、最終的なヒステリシス制御量Thy を演算する。
加算器93は、第2の積分器77により演算される目標ピニオン角θ に、粘性モデル91により演算される粘性成分Tvi 、およびヒステリシス制御量演算部92により演算されるヒステリシス制御量Thy をそれぞれ加算する。
理想車両モデル72は、粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy がそれぞれ加算された目標ピニオン角θ を使用して、基本駆動トルクT のばね成分Tsp を演算する。
さてこのように、粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy が加算された目標ピニオン角θ を使用してばね成分Tsp を演算することにより、つぎの作用を奏する。
ばね成分Tsp は、目標ピニオン角θ に加算される粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy の合計値に応じて、たとえばつぎのような特性を呈する。
図11のグラフに二点鎖線で示されるように、目標ピニオン角θ とばね成分Tsp との関係を示す特性線Lspは、粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy の合計値に応じて、横軸に沿って移動するかたちで更新される。粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy の合計値が正の値であるとき、特性線Lspは横軸に沿って正方向へ移動するかたちで更新される。粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy の合計値が負の値であるとき、特性線Lspは横軸に沿って負方向へ移動するかたちで更新される。ただし、目標ピニオン角θ の変化に対するばね成分Tsp の正負の最大値+Tspmax ,−Tspmax は、目標ピニオン角θ に関わらず一定値に維持される。
したがって、ばね成分Tsp は、目標ピニオン角θ の変化に対して、横軸に沿った方向におけるヒステリシスを有することになる。ばね成分Tsp の正負の最大値+Tspmax ,−Tspmax は、目標ピニオン角θ によって変化しないため、制御マップMspの原点を含む中央部分、すなわち目標ピニオン角θ の値が小さく特性線Lspの接線勾配αが大きい部分ほど、横軸に沿った方向におけるヒステリシス幅は大きな値となる。
目標ピニオン角θ の変化に対するばね成分Tsp に、横軸に沿った方向のヒステリシスを持たせることにより、目標ピニオン角θ が小さな値である領域における特性線Lspの接線勾配αが緩やかになる。接線勾配αが緩やかになる分、運転者は粘性成分Tvi に基づく粘性感、およびヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力に応じた摩擦感を感じやすくなる。
またこのように、理想車両モデル72により使用される目標ピニオン角θ にヒステリシス制御量Thy を加算することによっても、ヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力の特性を図9(a)のグラフに示される状態から図9(b)のグラフに示される状態へ変化させることが可能である。また、理想車両モデル72により使用される目標ピニオン角θ に粘性成分Tvi を加算する場合についても同様に、粘性成分Tvi に基づく操舵反力(粘性反力)の特性を図9(a)のグラフに示される状態から図9(b)のグラフに示される状態へ変化させることが可能である。
なお、本例はつぎのように変更して実施してもよい。
図10に二点鎖線で示されるように、目標ピニオン角演算部62(理想EPSモデル71)には、先の慣性モデル75に加え、もう一つの慣性モデル94が設けられている。慣性モデル94は、先の慣性モデル75と同様に、減算器74により算出される減算値T **に慣性モーメントJの逆数を乗ずることにより、ピニオン角加速度α を演算する。加算器93は、先の粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy に加え、慣性モデル94により演算されるピニオン角加速度α を、第2の積分器77により演算される目標ピニオン角θ に加算する。ピニオン角加速度α が加算される分、ばね成分Tsp のヒステリシス幅は、図11のグラフにおける横軸に沿った方向においてさらに拡がる。
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)理想車両モデル72により使用される目標ピニオン角θ に粘性成分Tvi およびヒステリシス制御量Thy をそれぞれ加算することによって、その分、目標ピニオン角θ が小さな領域におけるヒステリシス幅が拡がる。このため、目標ピニオン角θ が小さな領域において、粘性成分Tvi に基づく粘性反力に応じた粘性感、およびヒステリシス制御量Thy に基づく操舵反力に応じた摩擦感を、より感じやすくなる。ひいては、より滑らか、あるいはしっとりとした操舵感を運転者に与えることが可能となる。
(2)本例を単独で実施する場合、先の図3に示される2つの勾配ゲイン演算部81,82および2つの乗算器83,84を割愛することが可能である。粘性成分Tvi にゲインGviを乗算すること、およびヒステリシス制御量Thy にゲインGhyを乗算する必要がないからである。
(3)本例を第1の実施の形態と組み合わせて実施する場合、より適切な操舵感を運転者に付与することが可能となる。また、目標ピニオン角θ と、ばね成分Tsp との関係を規定する制御マップMspにおいて、ばね特性の接線勾配αが非常に大きく設定(チューニング)される場合などにおいて、本例は特に有効である。
(4)ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi のいずれか一方のみを、理想車両モデル72により使用される目標ピニオン角θ に加算する構成を採用した場合であれ、ヒステリシス制御量Thy に基づく摩擦感、または粘性成分Tvi に基づく粘性感が得られやすくなる。これは、ヒステリシス制御量Thy または粘性成分Tvi に応じて、目標ピニオン角θ が小さな領域におけるばね成分Tsp のヒステリシス幅が拡がるからである。
<第3の実施の形態>
つぎに、電動パワーステアリング装置の第3の実施の形態を説明する。本例は、第1の実施形態における接線勾配αの算出方法に関する。
先の図6に示される制御マップMspにおける特性線Lsp(ばね成分Tsp )の接線勾配αに応じて、ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi などの他の制御パラメータの必要量が変わってくる。このため、第1の実施の形態では、より適切な操舵感を得るために、接線勾配αに応じて、ヒステリシス制御量Thy および粘性成分Tvi などの他の制御パラメータを補正している。
接線勾配αは、ばね成分Tsp の微小な変化量ΔTsp を、目標ピニオン角θ の微小な変化量Δθ で除算することにより得られる。しかし、接線勾配αを演算する際、適宜の2点間を直線で補間する直線補間を使用して曲線を得る場合、当該得られる曲線が滑らかにつながらないおそれがある。たとえば、当該曲線に折れ曲がった部分、あるいは不連続となる部分が生じ得る。これは、「適宜の2点を通る」という「点」を決めているだけであって、勾配は考慮されないからである。
第1の実施の形態において、より適切なゲインGvi,Ghyを得るため、ひいてはより適切な操舵感を付与するためには、接線勾配αがより滑らかに変化する曲線(正確には、図6のグラフに示される特性線Lspに準じた曲線)を得ることが好ましい。
そこで、本例では三次式補間を使用する。三次式補間とは、補間する適宜の2点間を、三次式を利用して補間する方法をいう。三次式補間によれば、接線勾配と曲線が通る点とが指定されることによって、補間する適宜の2点間をより滑らかにつなぐ曲線を得ることが可能である。
三次式補間の一種として、たとえばエルミート補間がある。エルミート補間では、次式(2)で表される三次多項式を利用する。ただし、式(2)中の「・」は乗算を示す。
y=A・x+A・x+A・x+A …(2)
2点(x0,y0),(x1、y1)、およびこれら2点における勾配(x0,dy0),(x1、dy1)を指定するとき、三次多項式は一意に決定される。勾配を指定することによって、得られる曲線が不連続となることを抑制することが可能である。
すなわち、三次多項式の場合、未知数は「三次の係数A」、「二次の係数A」、「一次の係数A」、「定数(零次の係数)A」の4つである。式(2)に対して、曲線が通る2つの点(x0,y0),(x1、y1)および2つの勾配(x0,dy0),(x1、dy1)を当てはめることにより、4つの方程式が得られる。4つの未知数に対して4つの方程式が存在することにより、これらの連立方程式を解くことが可能である。当該連立方程式を解くことにより、2つの点(x0,y0),(x1、y1)を通り、且つ2つの勾配(x0,dy0),(x1,dy1)を通る滑らかな曲線を表す三次多項式が得られる。そして、この三次多項式を微分すれば、勾配を簡単に求めることができる。勾配は次式(3)で表される。
勾配=3A・x+2A・x+A …(3)
ちなみに、所望の特性(たとえば、ばね特性)が得られる三次多項式における三次の係数A、二次の係数A、一次の係数A、定数(零次の係数)Aを1組の係数セットとして、サンプリングされる2つの目標ピニオン角θ の区間毎に記憶するようにしてもよい。
たとえば、図12(a)に示すように、目標ピニオン角θ の絶対値が第1の区間(0〜x0)であれば第1の係数セットC1、目標ピニオン角θ が第2の区間(x0〜x1)であれば第2の係数セットC2、第3の区間(x1〜x2)であれば第3の係数セットC3、第4の区間(x2〜x3)であれば第4の係数セットC4というかたちで記憶する。そのうえで、目標ピニオン角θ の変化に応じて係数セットを切り替える。これにより、サンプリングされる2つの目標ピニオン角θ の区間に対応する適宜の2点間が、所望の特性に応じたより滑らかな曲線でつなげられる。
なお、図12(a)に示される特性線Lspにおいて、目標ピニオン角θ の絶対値と接線勾配αとの関係の一例はつぎの通りである。
図12(b)に示すように、横軸に目標ピニオン角θ の絶対値を、縦軸に接線勾配αをそれぞれプロットしたとき、目標ピニオン角θ の絶対値が「0」から増加するにつれて、接線勾配αの値は曲線状に減少する。ただし、目標ピニオン角θ の絶対値が大きくなるほど目標ピニオン角θ の絶対値に対する接線勾配αの値の変化率(図6に示す特性線Lαの接線の傾き)が小さくなる。一例として、目標ピニオン角θ が「x0」,「x1」,「x2」,「x3」(x0<x1<x2<x3)であるとき、それぞれ接線勾配αの値は「α0」,「α1」,「α2」,「α3」(α0>α1>α2>α3)となる。
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)三次式補間を利用することにより、補間する適宜の2点間をより滑らかにつなぐ曲線が得られる。すなわち、勾配がより滑らかに変化する曲線が得られる。このため、より適切な接線勾配α、ひいては、より適切なゲインGvi,Ghyが演算される。したがって、より適切な操舵感(粘性感、摩擦感)を得ることが可能である。
<他の実施の形態>
なお、前記各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・各実施の形態では、モータ31の回転角θに基づき操舵角θsを演算したが、ステアリングシャフト22にステアリングセンサ(回転センサ)を設け、当該ステアリングセンサにより操舵角θsを検出してもよい。
・各実施の形態では、トルクセンサ420はコラムシャフト22aに設けたが、インターミディエイトシャフト22bあるいはピニオンシャフト22cに設けてもよい。操舵トルクTが検出できるのであれば、操舵機構20の適宜の箇所に設けることが可能である。
・各実施の形態では、ピニオン角フィードバック制御部63において、実際のピニオン角θに対してPID制御を行うようにしたが、PI制御を行ってもよい。
・各実施の形態では、転舵輪26,26の転舵角θtaに対応するピニオン角θについてフィードバック制御を行うようにしたが、インターミディエイトシャフト22bの回転角についてフィードバック制御を行うようにしてもよい。また、モータ31の出力軸の回転角についてフィードバック制御を行ってもよい。インターミディエイトシャフト22bおよびモータ31の出力軸の回転角は、いずれも転舵角θtaを反映する値であるため、これら回転角のフィードバック制御を通じて、間接的に転舵角θtaのフィードバック制御を行うことができる。また、転舵輪26,26の転舵角θtaを検出し、この転舵角θtaに対して直接フィードバック制御を行うようにしてもよい。この場合、目標ピニオン角演算部62は目標転舵角演算部として機能し、ピニオン角フィードバック制御部63は転舵角フィードバック制御部として機能する。
・各実施の形態では、理想EPSモデル71は、基本アシスト成分Ta1 および操舵トルクTの総和に基づいて目標ピニオン角θ (理想的なピニオン角)を求めるようにしたが、操舵トルクTのみに基づいて目標ピニオン角θ を求めるようにしてもよい。
・各実施の形態では、基本アシスト成分演算部61は、操舵トルクTおよび車速Vに基づいて基本アシスト成分Ta1 を求めるようにしたが、操舵トルクTのみに基づいて基本アシスト成分Ta1 を求めるようにしてもよい。
・各実施の形態では、コラムシャフト22aに操舵補助力を付与する電動パワーステアリング装置10に具体化したが、たとえばピニオンシャフト22cあるいはラック軸23に操舵補助力を付与するタイプの電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
10…電動パワーステアリング装置、20…操舵機構、22c…ピニオンシャフト(回転軸)、26…転舵輪、31…モータ、42…マイクロコンピュータ(制御装置)、61…基本アシスト成分演算部(第1の演算部)、62…目標ピニオン角演算部(第2の演算部)、63…ピニオン角フィードバック制御部(第3の演算部)、66,92…ヒステリシス制御量演算部(第2の反力成分演算部)、72…理想車両モデル(第1の反力成分演算部)、75,94…慣性モデル(第2の反力成分演算部)、78,91…粘性モデル(第2の反力成分演算部、粘性制御演算部)、81,82…補正部を構成する勾配ゲイン演算部、83,84…補正部を構成する乗算器、93…加算器(変更部)、Gvi、Ghy…ゲイン、Lsp…特性線、Ta1 …基本アシスト成分(基礎制御成分)、Ta2 …補正制御成分、T…操舵トルク、Tsp …ばね成分(第1の反力成分)、Tvi …粘性成分(第2の反力成分)、Thy …ヒステリシス制御量(第2の反力成分)、α…接線勾配、θs…操舵角、θta…転舵角、θ …目標ピニオン角(目標回転角)。

Claims (5)

  1. 車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、
    転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、
    前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、
    少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、
    前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、
    前記目標回転角に対する前記第1の反力成分の変化の勾配に応じて前記第2の反力成分を補正する補正部と、を有する電動パワーステアリング装置。
  2. 車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、
    転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、
    前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、
    少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、
    前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、
    前記第1の反力成分演算部に取り込まれる前記目標回転角に、前記第2の反力成分を加算することにより前記第1の反力成分を変更する変更部と、を有する電動パワーステアリング装置。
  3. 車両の操舵機構に付与される操舵補助力の発生源であるモータと、車両の操舵状態に応じて前記モータを制御する制御装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、少なくとも操舵トルクに応じて操舵機構に付与すべき操舵補助力の基礎制御成分を演算する第1の演算部と、
    転舵輪の転舵角に応じて回転する回転軸の目標回転角を少なくとも操舵トルクに基づき演算する第2の演算部と、
    前記回転軸の実際の回転角を前記目標回転角に一致させるフィードバック制御を通じて前記基礎制御成分に対する補正制御成分を演算する第3の演算部と、
    少なくとも前記目標回転角に基づき前記操舵補助力における第1の反力成分を演算する第1の反力成分演算部と、
    前記操舵状態を示す複数種の状態量および前記目標回転角の少なくとも一に基づき前記操舵補助力における第2の反力成分を演算する第2の反力成分演算部と、
    前記目標回転角に対する前記第1の反力成分の変化の勾配に応じて前記第2の反力成分を補正する補正部と、
    前記第1の反力成分演算部に取り込まれる前記目標回転角に、前記第2の反力成分を加算することにより前記第1の反力成分を変更する変更部と、を有する電動パワーステアリング装置。
  4. 請求項1または請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記補正部は、前記第1の反力成分の変化の勾配に応じたゲインを演算する勾配ゲイン演算部と、
    前記ゲインを前記第2の反力成分に乗算する乗算器と、を有し、
    前記勾配ゲイン演算部は、前記勾配が大きくなるときほど、より大きな値の前記ゲインを演算する電動パワーステアリング装置。
  5. 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記第1の反力成分演算部は、前記第1の反力成分として前記目標回転角に比例するばね成分を演算するばね特性制御演算部を含み、
    前記第2の反力成分演算部は、前記第2の反力成分として操舵角速度に比例する粘性成分を演算する粘性制御演算部、および前記第2の反力成分として操舵角の変化に対してヒステリシス特性を有する摩擦成分であるヒステリシス制御量を演算するヒステリシス制御量演算部の少なくとも一を含む電動パワーステアリング装置。
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