JP6136785B2 - 導電ペーストの評価方法、及び、正極板の製造方法 - Google Patents
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この電池に用いられる正極板の製造方法として、例えば、特許文献1には、溶剤に導電材粒子、分散剤及び結着材を混合した導電ペーストを作製した後、この導電ペーストと正極活物質粒子とを混合して正極ペーストを作製する正極板の製造方法が開示されている。
しかしながら、この導電ペーストの分散状態を容易に評価できない。
これは、高分散状態の導電ペーストを塗布して形成した塗膜の表面は、凹凸形状が少なく乱反射も少なくなるので光沢度が高くなる。これに対し、低分散状態の導電ペーストを用いた塗膜の表面は、凹凸形状が多く乱反射も多くなるので光沢度が低くなるためと考えられる。
また、溶剤中に導電材粒子、分散剤及び結着材を混合する手法としては、例えば、ホモジナイザなどメディアレス分散機を用いた手法が挙げられる。
具体的には、まず塗膜の光沢度Gs(60°)が0.15〜0.80%の範囲内の導電ペーストを作製する。さらにこの導電ペーストに中空形状の二次粒子からなる正極活物質粒子を加えて混合した正極ペーストを作製する。そして、この正極ペーストを塗布し形成した正極板を備える電池を作製する。するとこの電池の出力は、光沢度Gs(60°)が上述の範囲外の導電ペーストを用いた場合の電池の出力よりも高くなることが判ってきた。
なお、電池の出力の高低は、例えば、25℃の環境下、充電状態(SOC)をSOC56%とした電池を定電流放電したときの、放電開始から5秒目の端子間電圧値と電流値との積を指標とすることができる。
この導電ペーストの評価方法では、光沢度Gs(60°)が0.20〜0.50%の範囲内である場合に導電ペーストを良好と判定するので、正極ペースト、正極板ひいては電池の作製にさらに適した導電ペーストを確実に判別することができる。
上記正極活物質層を形成する正極活物質層形成工程と、を備える正極板の製造方法である。
しかも、予め、正極ペーストの作製に適すると判定した導電ペーストを用いて、正極ペーストを、さらには正極板を作製する。このため、出力の大きな電池の作製に適する特性の正極板を製造できるので、正極板の製造後に、この正極板が電池の作製に不適とされて、正極板や正極ペーストの廃棄による生産効率の低下を防ぐことができる。
次に、本発明の実施の形態のうち、実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施例1にかかる製造方法で製造された正極板20を備える電池1について、図1を参照しつつ説明する。
この電池1は、いずれも帯状の正極板20、負極板30及びセパレータ40を備え、これらを捲回した扁平捲回型の電極体10と、この電極体10を内部に収容する電池ケース80とを備えるリチウムイオン二次電池である(図1参照)。
この電極体10をなす負極板30は、帯状で銅製の銅箔(図示しない)と、この銅箔の両主面上に、それぞれ帯状に形成された2つの負極活物質層(図示しない)とを有している。
このうち正極活物質層21は、Li1.14Ni0.34Co0.33Mn0.33O2からなる一次粒子を複数連ねた二次粒子の正極活物質粒子22、アセチレンブラック(AB)からなる導電材粒子23、PVDFからなる結着材24、及び、ポリビニルピロリドン(PVP)からなる分散剤25を含む。このうち正極活物質粒子22は、中空形状の二次粒子である。具体的には、上述の組成の正極活物質の複数の一次粒子(粒径が1μm以下)が連なって、内部に1または複数の空間を有する殻状をなす。なお、本実施形態では、粒径が3〜8μmで、比表面積が0.5〜1.9m2/gで、吸油量が30ml/100gの正極活物質粒子22を用いた。なお、吸油量とは、JIS K 5101-13-1の「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に規定された条件の下、正極活物質粒子によって吸収される精製あまに油の量をいう。吸油量が大きい正極活物質粒子ほど、中空形状の粒子全体に占める、前述した空間の割合が高く、ペースト作製時には溶剤を、また、電池においては電解液をそれぞれ保持しやすいと考えられる。
まず、ステップS1では、メディアレス分散機(本実施形態では、ホモジナイザ)を用いて、導電ペーストPBを作製する(導電ペースト作製工程)。
この導電ペースト評価工程S2は、図4に示すように、導電ペーストPBを平板状の樹脂フィルム(図示しない)上に塗布し乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程S11と、塗膜の光沢度Gs(60°)を測定する光沢度測定工程S12とを含む。さらに、塗膜の光沢度Gs(60°)が0.15〜0.80%の範囲内である場合に、塗膜の形成に用いた導電ペーストPBを良好と判定する判定工程S13〜S15を含む。
続いて、ステップS12の光沢度測定工程では、光沢度計を用いて、樹脂フィルム上に形成した塗膜の光沢度Gs(60°)を測定した。なお、本実施例1にかかる導電ペーストPBを用いて形成した塗膜の光沢度Gs(60°)は、0.20%であった。
なお、本実施例1では、塗膜の光沢度Gs(60°)が0.20%であった。このため、ステップS14で本実施例1の導電ペーストPBは正極ペースト、正極板ひいては電池の作製に適すると判定されて、ステップS3の正極ペースト作製工程に進む。
かくして、光沢度測定工程S12で測定した光沢度Gs(60°)から、塗膜の形成に用いた導電ペーストPBの分散状態の適否を容易に評価することができる。
その後、両主面上に正極活物質層21をそれぞれ形成したアルミニウム箔28を帯状に裁断して、前述した正極板20を作製した(図2参照)。
この電池1の出力値について、表1に示す。
また、実施例1の電池1のほか、実施例2〜6及び比較例1〜10の各電池を用意した。
このうち、実施例2,3の各電池は、実施例1と同じく中空形状であるが、吸油量がそれぞれ37,44ml/100gの正極活物質粒子を用いている点で、実施例1の電池1と異なる。
また、実施例4〜6の各電池は、いずれも塗膜の光沢度Gs(60°)が0.50%となる導電ペーストを用いている点で、実施例1〜3の各電池(電池1)と異なる。
また、比較例7の電池は、中空形状の正極活物質粒子22に代えて、中実形状の二次粒子からなる正極活物質粒子を用いている点で、実施例1の電池1と異なる。また、比較例8〜10の各電池は、比較例7と同様、中空形状に代えて中実形状の正極活物質粒子を用い、さらに、塗膜の光沢度Gs(60°)が0.10,0.50,1.60%となる導電ペーストをそれぞれ用いている点で、実施例1の電池1と異なる。
また、図5には、横軸を光沢度Gs(60°)とし、縦軸を出力値としたグラフに、中空形状の正極活物質粒子を用いた実施例1〜6及び比較例1〜6の各電池の結果(グラフ中の○印)、及び、中実形状の正極活物質粒子を用いた比較例7〜10の各電池の結果(グラフ中の◇印)をそれぞれ示す。
次に、中空形状の正極活物質粒子を用いた各電池(実施例1〜6及び比較例1〜6)についてみると、実施例1〜6の各電池の出力値は、比較例1〜6の各電池の出力値よりも高いことが判る。このことから、塗膜の光沢度Gs(60°)が0.15〜0.80%の範囲内の導電ペーストを用いた電池では、光沢度Gs(60°)が上述の範囲外の導電ペーストを用いた電池よりもその出力を高くすることができる(具体的には、730W以上の出力にすることができる)。
しかも、予め正極ペースト21Pの作製に適すると判定した導電ペーストPBを用いて、正極ペースト21Pを、さらには正極板20を作製する。このため、出力の大きな電池の作製に適する特性の正極板20を製造できる。従って、正極板20の製造後に、この正極板20が電池1の作製に不適とされて、正極板20や正極ペースト21Pの廃棄による生産効率の低下を防ぐことができる。
次に、本発明の変形形態にかかる正極板の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
本変形形態では、導電ペーストを塗布して形成した塗膜の光沢度Gs(60°)が、0.20〜0.50%の範囲内である場合に、その導電ペーストを良好と判定する判定工程を備える点で、前述した実施形態と異なる。
そこで、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容の部材、部位には同番号を付して説明する。
一方、塗膜の光沢度Gs(60°)が0.20〜0.50%の範囲から外れている場合には、塗膜の形成に用いた導電ペーストPBを不良と判定し(ステップS15)、前述した実施形態と同様、この導電ペーストPBを廃棄する(ステップS16)。
例えば、実施形態及び変形形態では、正極活物質粒子をなす正極活物質として、Li1.14Ni0.34Co0.33Mn0.33O2を例示した。しかし、正極活物質としては、例えば、Li(1+x)NiyCozMn(1-y-z)MγO2(但し、0≦x≦0.2、0.1<y<0.9、0.1<z<0.4、M=Zr,Mg,Ca,Na,Fe,Cr,Zn,Si,Sn,Al,B,F)で表される層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。また、電解液のリチウム塩としてLiPF6を例示したが、リチウム塩として、LiPF6に代えて、ジフルオロリン酸塩(LiPO2F2)とリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)とを用いても良い。
21 正極活物質層
21P 正極ペースト
22 正極活物質粒子
23 導電材粒子
24 結着材
25 分散剤
26 溶剤
28 アルミニウム箔(正極集電板)
PB 導電ペースト
Claims (3)
- 溶剤中に導電材粒子、分散剤及び結着材を混合してなり、中空形状の二次粒子からなる正極活物質粒子と混合することにより正極ペーストとする導電ペーストの評価方法であって、
上記導電ペーストを平板状の樹脂フィルム上に塗布し乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程と、
上記塗膜の光沢度Gs(60°)を測定する光沢度測定工程と、を備える
導電ペーストの評価方法。 - 請求項1に記載の導電ペーストの評価方法であって、
前記塗膜の光沢度Gs(60°)が、0.15〜0.80%の範囲内である場合に、上記塗膜の形成に用いた前記導電ペーストを良好と判定する判定工程を備える
導電ペーストの評価方法。 - 導電性を有する正極集電板と、
上記正極集電板上に形成され、中空形状の二次粒子からなる正極活物質粒子、導電材粒子、分散剤及び結着材を含む正極活物質層と、を備える
正極板の製造方法であって、
請求項2に記載の導電ペーストの評価方法で良好と判定した前記導電ペーストを上記正極活物質粒子と混合して、正極ペーストを作製する正極ペースト作製工程と、
上記正極ペーストを上記正極集電板に塗布し乾燥させて、上記正極活物質層を形成する正極活物質層形成工程と、を備える
正極板の製造方法。
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