JP5614592B2 - 二次電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池用電極の製造方法に関する。詳細には、導電材を含む電極活物質層形成用組成物の調製に関する。
近年、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、車両搭載用高出力電源として重要性が高まっている。
この種の二次電池の一つの典型的な構成では、電荷担体となるリチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る電極活物質を含む電極材料(電極活物質層)が導電性部材(電極集電体)に保持された電極を備えている。そしてこの電極は、代表的には、まず、電極活物質と、高導電性の導電材と、バインダ(結着剤)等の固形分材料を適切な溶媒に分散させてペースト状(スラリー状、インク状を包含する。以下同じ。)の電極活物質層形成用組成物を調製し、この組成物を電極集電体の表面に層状に塗布する。次いでこの塗布した組成物を乾燥させて溶媒を除去し、電極集電体上に電極活物質および導電材を含む電極活物質層を形成する手法(塗布法)により、製造するようにしている。
このような二次電池用電極の製造において、上記の導電材としては、その導電特性および取扱い性の良さから、カーボンブラックが多用されている。かかるカーボンブラックは、粒状のカーボン材料がバインダおよび分散剤とともに溶媒中に分散されたペースト状カーボン組成物(いわゆるカーボンペースト)として取り扱われることがある。このペースト状カーボン組成物は、元来は、塗料・インキ等の分野で広く使用されていたが、近年では、電池用途に調製しなおして提供されてもいる。
ところで、電極活物質および導電材等の電極材料の管理手法については、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、一次アルカリ電池の製造に際し、導電材としての耐酸化性グラファイトを、総灰分、BET比表面積、レーザ回折による平均粒子サイズおよび結晶構造で管理することが開示されている。
また、特許文献2には、電極活物質としてのリチウムとニッケルを含む遷移金属複合酸化物の組成のばらつきを、リチウムおよびニッケルの各元素に起因する発光電圧の三乗根の比を指標とした標準偏差σを用いて管理することが開示されている。
特許文献3には、負極活物質としての複合炭素質物の結晶構造の管理において、X線回折図における半値幅が、その核に用いる黒鉛性炭素質物のX線回折図における半値幅の±3σ(σは標準偏差)内とすることが開示されている。
特許文献4には、負極活物質としての黒鉛粒子の結晶構造を、X線広角回折における結晶の厚み方向の層間距離および厚み方向の結晶子の大きさで管理することが開示されている。
そして、特許文献5には、負極活物質としての炭素微小球粉末を、電子顕微鏡により測定した算術平均一次粒子径dn、ディスクセントリフュージ装置(DCF)により測定したストークスモード径Dstに対するその半値幅ΔDstの比、X線回折法により測定した結晶子格子面間隔d(002)等により管理することが開示されている。
特表2008−502121号公報 特開2008−243447号公報 特許第3712288号公報 特願平11−011919号公報 特開2009−176603号公報
上記の電極材料の管理手法は、いずれも電極性能を向上させる目的で実施するものであり、電極の製造を効率化するという観点で管理するものではない。
かかる電極の製造に関しては、用いる電極材料の製品としてのばらつきにより製造方法が煩雑になる場合があった。具体的には、例えば、上記の電極活物質層形成用組成物の調製において、それぞれ同一の電極材料を用い、同一の配合で調製しても、得られる組成物の粘度が大きくばらつくことがあった。そのため、電極活物質層形成用組成物の調製の過程では、電極材料を溶媒に分散して混練しながら、この混練物の粘度を測定し、目的とする粘度範囲に収まるよう粘度を調整する作業を伴うことが多かった。また、この組成物の粘度は塗工性を直接左右するため、組成物のわずかな粘度の違いにより塗工性(典型的には、塗工幅安定性)へ影響が出ることも考えられる。
本発明は、かかる従来の状況を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、導電材を含む電極活物質層形成用組成物を、簡便に品質を安定させて調製することができる二次電池用電極の製造方法を提供することである。
本発明者らは、電極活物質層形成用組成物の粘度のばらつきの原因について鋭意研究を重ねた結果、これが導電材として用いるペースト状カーボン組成物の品質のばらつきに因るものであることを見出した。例えば、図12に、同一規格の電極材料を用いて同一の配合で調製した電極活物質層形成用組成物の粘度を1バッチ(1回の調製)ごとに示した。図12中の縦の点線は、材料として用いたペースト状カーボン組成物(製品)の製造ロットが切り替わったタイミングを示している。図12に示したように、電極活物質層形成用組成物の粘度は、各バッチごとに多少のばらつきはあるものの、ペースト状カーボン組成物の製造ロットごとの品質のばらつきに大きく依存することが明確である。
そこで、本発明者らは、電極活物質層形成用組成物の粘度に影響を及ぼすペースト状カーボン組成物の品質のばらつきが、このペースト状カーボン組成物のどの因子によるものかを調べた。例えば、製品としてのペースト状カーボン組成物は、従来の塗料用途としての管理手法に基づいて管理されている。この管理項目は、粘度および水分である。そこで、ペースト状カーボン組成物の物性と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物の粘度との関係を、ペースト状カーボン組成物の粘度および水分に着目して整理した。図13に、ペースト状カーボン組成物の粘度と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度の関係を示した。また、図14に、ペースト状カーボン組成物の水分量と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度の関係を示した。図13および図14から、ペースト状カーボン組成物の粘性あるいは水分量と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物の粘度のばらつきとの間には、何ら相関は見られない。
そして更なる研究を行った結果、本発明者らは、電極活物質層形成用組成物の粘度に影響を及ぼすペースト状カーボン組成物の品質のばらつきが、このペースト状カーボン組成物中のカーボン粒子の分散状態のばらつきに由来するとの結論を得るに至った。本発明は、これらの知見をもとにペースト状カーボン組成物を的確に管理することで、電極活物質層形成用組成物の粘度を安定化させ、高品質な二次電池用電極を簡便に製造する方法を実現するものである。
すなわち、本発明は、電極集電体上に電極活物質を主成分とする電極活物質層が形成されてなる二次電池用電極を製造する方法であって、
(A)導電材である粒状カーボン材料と、バインダと、溶媒とを含むペースト状カーボン組成物を用意する工程、
(B)上記ペースト状カーボン組成物と、電極活物質と、バインダと、溶媒とを含むペースト状の電極活物質層形成用組成物を調製する工程、および、
(C)上記電極活物質層形成用組成物を電極集電体上に供給し、該集電体上に電極活物質層を形成する工程、
を包含する。
ここで上記(B)工程において上記電極活物質層形成用組成物を調製するために使用される上記ペースト状カーボン組成物は、上記(A)工程において用意された該組成物の粒度分布をレーザ回折法に基づいて測定し、該測定した結果に基づいて行われる以下の判定処理(1)〜(2)を何れも具備するものであることを特徴としている。
(1)上記粒度分布は、該粒度分布において相対的に粒径の小さい第1のピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を示し、且つ、上記第1のピークにおける体積基準の存在比率H1(%)および上記第2のピークにおける体積基準の存在比率H2(%)の比が(H1/H2)>1を満足する。
(2)上記測定した粒度分布における標準偏差σに基づき、製造ロットの異なる複数の上記ペースト状カーボン組成物について測定した粒度分布における標準偏差と、該ペースト状カーボン組成物を各々用いて予め作製した同種の電極活物質層形成用組成物について測定した粘度との相関式から、上記判定処理対象のペースト状カーボン組成物の標準偏差σに対応する電極活物質層形成用組成物の粘度を算出し、該算出した粘度が予め決定されている合格粘度範囲に包含される。
これにより、合格粘度範囲の粘度を有する電極活物質層形成用組成物を確実に調製することが可能となる。その結果、電極活物質層形成用組成物の調製および管理が容易となり、歩留まり良く品質の揃った電極を製造することができる。
ここに開示される二次電池用電極の製造方法の好ましい一態様では、上記ペースト状カーボン組成物に含まれる上記粒状カーボン材料は、その二次粒子の平均粒径が200nm〜10μmの範囲内にあることを特徴とする。これにより、ペースト状カーボン組成物の品質がより安定し、より簡便に電極を製造することが可能となる。
ここに開示される二次電池用電極の製造方法の好ましい一態様では、上記(B)工程において上記電極活物質層形成用組成物を調製するために使用される上記ペースト状カーボン組成物は、上記粒度分布における上記第1のピーク(P1)が粒径1μm未満のところにあり、上記第2のピーク(P2)が粒径1μm以上のところにあることを特徴とする。第1のピーク(P1)を形成する粒子群の粒径と、第2のピーク(P2)を形成する粒子群の粒径をこのような組み合わせとすることで、より電極活物質層形成用組成物の品質が安定するとともに、得られる電極の抵抗も小さくすることができる。
ここに開示される二次電池用電極の製造方法の好ましい一態様では、上記粒状カーボン材料は一次粒子のレーザ回折法に基づく平均粒径が100nm以下のカーボンブラックであることを特徴とする。これによっても電極活物質層形成用組成物の品質が安定され、的確にペースト状カーボン組成物の管理を行うことができる。
ここに開示される二次電池用電極の製造方法は、上記電極活物質としてリチウムイオン二次電池の正極活物質を構成する材料を使用し、リチウムイオン二次電池の正極を製造するために実施されるのが好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極をより簡便かつ安定した品質で製造することが可能となる。
ここに開示された二次電池用電極の製造方法では、上記のとおり、電極活物質層形成用組成物の品質が安定した状態で調製されるため、自ずと得られる電極の品質も安定したものとなり得る。従って、この電極を備える二次電池も高品質で安定した電池特性を備えたものとなり得る。
ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒径分布の一例を示す粒径分布図である。 ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒径分布の他の一例を示す粒径分布図である。 カーボン材料の粒度分布に関する標準偏差とこのカーボン材料を用いて調製した電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度との関係の一例を示す図である。 一実施形態に係る電極の製造工程の一部を示すフロー図である。 一実施形態に係る電極の製造工程の他の一部を示すフロー図である。 一実施形態に係る電極を備えたリチウム二次電池を示す斜視図である。 図6中のVII−VII線に沿う縦断面図である。 一実施形態に係る電極を備えた車両を模式的に示す側面図である。 異なる製造バッチのペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒径分布を示す粒径分布図である。 異なる製造バッチのペースト状カーボン組成物を用いた正極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度を示す図である。 カーボン材料の粒径分布に関する標準偏差と、正極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度との関係を示す図である。 一バッチごとの電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度を示した図である。 ペースト状カーボン組成物(カーボンペースト)の粘度と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度の関係を示す図である。 ペースト状カーボン組成物(カーボンペースト)の水分量と、これを使用して得られた電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度の関係を示す図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において「二次電池」とは、リチウム二次電池、ニッケル水素電池等の繰り返し充電可能な蓄電デバイス一般をいう。また、本明細書において「リチウム二次電池」とは、リチウムイオンを電荷担体とし繰り返し充電可能な電池一般をいい、典型的にはリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、リチウムキャパシター等を包含する。
さらに、本明細書において「活物質」は、二次電池において電荷担体となる化学種(例えば、リチウムイオン電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な物質をいう。
ここで開示される二次電池用電極の製造方法は、電極集電体上に電極活物質を主成分とする電極活物質層が形成されてなる二次電池用電極を製造する方法であって、以下の(A)〜(C)の工程を包含する。
(A)導電材である粒状カーボン材料と、バインダと、溶媒とを含むペースト状カーボン組成物を用意する工程。
(B)上記ペースト状カーボン組成物と、電極活物質と、バインダと、溶媒とを含むペースト状の電極活物質層形成用組成物を調製する工程。
(C)上記電極活物質層形成用組成物を電極集電体上に供給し、該集電体上に電極活物質層を形成する工程。
上記の(A)工程で用意するペースト状カーボン組成物は、粒状カーボン材料とバインダとを溶媒に分散させることで調製してもよいし、予め調製されているペースト状カーボン組成物(いわゆるカーボンペースト)として一般に提供(販売)されているものを用いるようにしてもよい。そしてこのペースト状カーボン組成物を用い、(B)工程において、ペースト状の電極活物質層形成用組成物を調製し、(C)工程において、集電体上に電極活物質層を形成する。
≪ペースト状カーボン組成物の判定≫
かかる製造方法では、(A)工程で用意したペースト状カーボン組成物が、(B)工程において電極活物質層形成用組成物を調製するために使用するに適するかどうかを判定するようにしている。この判定は、(A)工程で用意したペースト状カーボン組成物の粒度分布をレーザ回折法に基づいて測定し、その結果に基づいて、以下の判定処理(1)〜(2)を何れも具備する場合に、該ペースト状カーボン組成物は電極活物質層形成用組成物の調製に使用するに適するとの判定を行う。判定処理(1)〜(2)の何れか一方でも満足しない場合には、該ペースト状カーボン組成物は電極活物質層形成用組成物の調製に用いるには適さないとの判定を行う。
判定処理(1):粒度分布は、該粒度分布において相対的に粒径の小さい第1のピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を示し、且つ、上記第1のピークにおける体積基準の存在比率H1(%)および上記第2のピークにおける体積基準の存在比率H2(%)の比が(H1/H2)>1を満足する。
判定処理(2):上記測定した粒度分布における標準偏差σに基づき、製造ロットの異なる複数のペースト状カーボン組成物について測定した粒度分布における標準偏差と、該ペースト状カーボン組成物を各々用いて予め作製した同種の電極活物質層形成用組成物について測定した粘度との相関式から、上記判定処理対象のペースト状カーボン組成物の標準偏差σに対応する電極活物質層形成用組成物の粘度を算出し、該算出した粘度が予め決定されている合格粘度範囲に包含される。
粒度分布は、レーザ回折法の原理に基づく各種の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。なお粒度分布における粒径およびは存在比率(%)(もしくは頻度)は、体積基準に基づいて算出される値を採用するものとする。
≪判定処理(1)≫
かかる判定処理(1)は、判定処理対象のペースト状カーボン組成物の粒度分布(すなわち、ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布)に着目している。すなわち、測定した粒度分布は、相対的に粒径の小さい第1のピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を呈するものとする。これは、典型的には、カーボン材料が相対的に粒径の小さい第1カーボン粒子(粒子群)と、相対的に粒径の大きい第2カーボン粒子(粒子群)とを混合したものであると理解できる。
図1に、二峰性の粒度分布の一例を示す。例えば、理解が容易なため、第1カーボン粒子の平均粒径を第1の粒径値D1とし、第2カーボン粒子の平均粒径を第2の粒径値D2とする。第1カーボン粒子および第2カーボン粒子は、それぞれの粒径値がほぼ同一(すなわちほぼ単分散)のものであってもよいが、通常はある程度の分布幅を有する粒子群として存在する。そのため、このようなカーボン材料の粒度分布は、典型的には二峰性の粒度分布となる。すなわち、例えば、第1の粒径値D1にてピークP1を有する第1カーボン粒子がなす粒度分布と、第2の粒径値D2にてピークP2を有する第2カーボン粒子がなす粒度分布とが確認される。粒度分布のピークP1における頻度(存在比率)はH1であり、ピークP2における頻度(存在比率)はH2である。なお、第1の粒径値D1および第2の粒径値D2の値や粒度分布P1およびP2の形態によっては、例えば図2に示すように、第1カーボン粒子に係る粒度分布と第2カーボン粒子に係る粒度分布とが一部重なる場合もあり得る。
そしてこの様な二峰性粒度分布において、第1カーボン粒子の粒度分布に係る存在比率H1(%)と第2カーボン粒子に係る存在比率H2(%)を比較し、両者の比(H1/H2)が1より大きいか否かを確認する。すなわち、相対的に粒径の小さい第1カーボン粒子のピークP1における頻度H1が、相対的に粒径の大きい第2カーボン粒子のピークP2における頻度H2よりも高いかどうかを確認する。
<判定>
上記比が(H1/H2)>1となる場合に、判定処理(1)を満足すると判断する。すなわち、ピークP1における第1カーボン粒子の体積が、ピークP2における第2カーボン粒子の体積よりも多い場合に判定処理(1)が満足される。
存在比率H1が存在比率H2よりも高いと、相対的に粒径の小さい第1カーボン粒子が多くなるため、相対的に粒径の大きな第2カーボン粒子の間隙を埋めて好適に導電経路(導電パス)を確保でき、電極の抵抗を小さく抑えることができるため好ましい。一方で、存在比率H1が存在比率H2と同じかそれ以下であると、相対的に粒径の大きい第2カーボン粒子が多くなるため、十分な導電経路(導電パス)を確保することが困難となり、電極の導電性が低下する傾向があるために好ましくない。また、相対的に粒径の小さい第1カーボン粒子と、相対的に粒径の大きい第2カーボン粒子とが混合することによる効果が十分に発揮され難くなる。したがって、粒度分布のピークP1における存在比率H1とピークP2における存在比率H2との比が(H1/H2)>1となるように規定する。
なお、判定処理対象のペースト状カーボン組成物の粒度分布が二峰性分布でない場合、すなわち単峰性分布あるいは3峰以上の多峰性分布を示す場合は、判定処理(1)を満足しないと判断する。
≪判定処理(2)≫
判定処理(2)においては、先ず、判定対象であるペースト状カーボン組成物の粒度分布から標準偏差σを算出する。次いで、この標準偏差σから、該ペースト状カーボン組成物を用いて調製される電極活物質層形成用組成物の粘度ηを算出して予想し、この算出した粘度ηが予め決定されている合格粘度範囲に包含されるかどうかの判定を行う。
粒度分布における標準偏差σとしては、下式で定義される統計学的な標準偏差を用いることができる。ただし、ここに開示される製造方法では、標準偏差はこの統計学的な標準偏差に限定されることなく、ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料を構成する粒子(二次粒子)の粒径のばらつき具合を的確に表現し得るものであれば、別途定義された標準偏差を適宜に用いるようにしても良い。
Figure 0005614592
なお、別途定義された標準偏差とは、例えば、粒度分布の測定に用いる粒度分布測定装置の測定原理(処理内容)等に応じて適宜に定義された標準偏差などであり得る。すなわち、広義での標準偏差ということができる。具体的には、例えば、下記の式で表わされる標準偏差等が例示される。
Figure 0005614592
Figure 0005614592
粘度ηの算出には、予め求めておいた、ペースト状カーボン組成物の粒度分布における標準偏差(a)と、このペースト状カーボン組成物を用いて調製した同種の電極活物質層形成用組成物について測定した粘度(b)、との相関式を用いる。すなわち、予め両者の相関関係を求めておく。
<標準偏差(a)>
標準偏差(a)は、予め、判定対象となるペースト状カーボン組成物と同種のペースト状カーボン組成物の粒度分布(すなわち、該ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布)を測定し、この粒度分布から計算により求めることができる。ペースト状カーボン組成物としては、製造ロット(製造の一単位)の異なる複数のものを用意する。なぜならば、ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布の標準偏差は、同一製造ロットの中でのばらつきはさほど大きくないものの、異なる製造ロット間ではばらつきが大きくなることが考えられるためである。なお、「複数」とは、2以上を意味するが、判断処理の精度を上げるために、4以上とするのが好ましい。さらに好ましくは5以上である。なお、一製造ロットで製造されるペースト状カーボン組成物の製品数が多量(例えば1000個以上)の場合には、統計学的な手法を用いるなどして同一ロットから2以上のペースト状カーボン組成物を抽出するようにしても良い。この場合も、異なる複数の製造ロットからペースト状カーボン組成物を用意する。標準偏差の算出については、上記標準偏差σの算出と同様に行うことができる。標準偏差(a)は、標準偏差σと同一定義式に基づく値とする。
<粘度(b)>
電極活物質層形成用組成物の粘度(b)は、上記標準偏差(a)を算出した複数のペースト状カーボン組成物を用いて調製した電極活物質層形成用組成物のそれぞれを対象に測定を行う。まず、粒度分布の測定に供したペースト状カーボン組成物を用い、所定の配合で調製した電極活物質層形成用組成物について、粘度を測定をする。粘度の測定は、公知の各種の粘度計を用いて計測することができる。粘度計としては、所望の電極活物質層形成用組成物の粘度およびその近傍の粘度範囲を正しく計測できるものであれば、その測定原理および測定器具等に特に制限はない。例えば、汎用の粘弾性測定装置(レオメータ)を用いて、25℃、せん断速度40s−1における粘度を測定すること等が例示される。なお、この粘度は、例えば、アントンパール社製の回転型レオメータ(MCR301等)等を用いることで精度よく測定することができる。
<相関式の決定>
次いで、上記で求めた標準偏差(a)と粘度(b)との相関関係を求める。ここで、それぞれ同種の電極活物質、粒状カーボン材料およびバインダ等の電極材料と、溶媒とを用いて、所定の配合で電極活物質層形成用組成物を調製したのであれば、通常、標準偏差(a)と粘度(b)には線形の相関関係がみられる。図3に、ペースト状カーボン組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布に関する標準偏差(a)と、電極活物質層形成用組成物(正極ペースト)の粘度(b)の関係の一例を示した。この図3に示した例では、高い寄与率で、両者には一次式で表わされる明らかな線形関係が存在することがわかる。従って、この相関式を用いることで、電極活物質層形成用組成物の調製に用いるために用意したペースト状カーボン組成物の粒度分布に関する標準偏差の値から、これを用いて調製した電極活物質層形成用組成物の粘度を予測することができる。
なお、例えば、ペースト状カーボンの規格(使用材料の物性等)が異なるものを用いる場合や、電極活物質層形成用組成物の配合を変更した場合等、諸条件が変化する場合には、標準偏差(a)と粘度(b)との相関関係(相関式)を別途求めることができる。
<判定>
判定処理(2)では、先ず、上記相関式を用いて、判定処理対象のペースト状カーボン組成物の粒度分布における標準偏差σから、調製される電極活物質層形成用組成物の粘度ηを算出する。そしてこの算出した粘度ηが予め決定されている合格粘度範囲に包含される場合に、判定処理(2)を満たすと判断する。なお、合格粘度範囲は、目的とする電極の性能等に応じて、適宜に決定することができる。通常の電極の製造工程においては、ある程度の範囲であれば、電極活物質層形成用組成物の粘度にズレが生じていても許容される。このズレの許容範囲をも含めて、電極活物質層形成用組成物の合格粘度範囲を決定することができる。
この判定処理(2)は、例えば、粒度分布測定装置と接続した解析手段において予めプログラミングしておくことができる。すなわち、具体的には、例えば、予め、粒度分布測定装置で複数のペースト状カーボン組成物の粒度分布測定を行い、その結果を解析手段に送って、標準偏差(a)データを算出して蓄積する。そしてこの標準偏差(a)データに対応する電極活物質層形成用組成物の粘度(b)データを解析装置に入力することで、標準偏差(a)のデータと粘度(b)のデータから両者の相関関係(相関式)を決定することができる。次に、判定処理対象のペースト状カーボン組成物の粒度分布を粒度分布測定装置で測定してその測定データを解析装置に送り、解析装置にて判定処理対象のペースト状カーボン組成物の粒度分布における標準偏差σを算出するとともに、該標準偏差σおよび上記相関式から自動的に計算処理を行って調製される電極活物質層形成用組成物の粘度ηを算出する。この粘度ηが予め決定されている合格粘度範囲に包含されていれば、判定処理(2)を満たす旨の結果を表示するようにする。
また、所望の粘度ηを有する電極活物質層形成用組成物を調製し得る、ペースト状カーボン組成物の粒度分布の標準偏差σの値を決定することもできる。そしてまた、この目標粘度を達成し得る標準偏差σの範囲として、合格標準偏差範囲を決定するようにしてもよい。
以上の判定処理(1)および判定処理(2)を満たしたペースト状カーボンを用いることにより、かかる製造方法では、調製後の電極活物質層形成用組成物の粘度ηが所望の合格粘度範囲内となるように制御するようにしている。したがって、(B)工程における電極活物質層形成用組成物の調製が容易となり、粘度調整の作業が不要、もしくは粘度調整の作業を簡略化することができる。また、電極活物質層形成用組成物の粘度のばらつきによる塗工性(典型的には、塗工幅安定性)への悪影響を抑制することができる。
なお、このような判定処理(1)および判定処理(2)に基づくペースト状カーボンの選定は、通常の電極の製造に際しては、必ずしも(A)工程で用意される全てのペースト状カーボン組成物の一つ一つについて行う必要はない。例えば、(A)工程で用意されるペースト状カーボン組成物が製品の場合には、一製造ロットあたり1つまたは2つ以上のサンプルを抽出して評価すればよい。また、(A)工程でペースト状カーボン組成物を調製して用意する場合には、一製造バッチあたり1つまたは2つ以上のサンプルを抽出して評価すればよい。なお、抽出するサンプルの数は、例えば、サンプル抽出法等により統計学的に決定することができる。
従って、(A)工程において、ペースト状カーボン組成物を調製する場合には、上記判定処理(1)〜(2)を満たすような粒度分布を有する粒状カーボン材料を用い、この分散状態を保つように粒状カーボン材料とバインダとを溶媒に分散させるようにすることが重要である。また、製品として提供されている電極用途のペースト状カーボン組成物を用いる場合には、カーボン材料の粒度分布が上記判定処理(1)〜(2)を満たすかどうかを確認すればよいといえる。
以下に、二次電池用電極の製造方法の一実施形態として、リチウム二次電池用の正極の製造を例にして本発明についての説明を行う。以下に、正極の代表的な構成等について説明したのち、製造方法について詳しく説明する。
≪正極の構成≫
ここでは、ここに開示する製造方法で製造される二次電池用電極の一実施形態として、リチウム二次電池用の正極を例にして説明を行う。かかる正極は、通常、正極活物質を主体とする正極活物質層が電極集電体上に形成された構成である。以下に、正極の製造に用いる材料等について説明する。
<正極集電体>
正極集電体は、従来の非水電解液二次電池(典型的にはリチウム二次電池)の正極に用いられる電極集電体と同様、導電性の良好な金属からなる導電性部材を用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、鉄等を主成分とする金属またはその合金等を用いることができる。より好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。正極集電体の形状については特に制限はなく、所望の二次電池の形状等に応じて様々なものを考慮することができる。例えば、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態のものであり得る。典型的には、シート状のアルミニウム製の正極集電体が用いられる。
<正極活物質層>
正極活物質層は、上記正極集電体の表面に形成される。正極活物質層は、通常は、粒状の正極活物質を主体とし、これとともに導電性を高めるための粒状のカーボン材料を含み、これらがバインダによって固められて正極集電体上に固着されている。
<正極活物質>
正極活物質としては、リチウムを吸蔵および放出可能な材料が用いられ、従来からリチウム二次電池に用いられている各種の物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。このような正極活物質としては、リチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)が好適に用いられ、典型的には、層状構造の酸化物あるいはスピネル構造の酸化物を適宜選択して使用することができる。例えば、リチウムニッケル系酸化物(代表的には、LiNiO)、リチウムコバルト系酸化物(代表的には、LiCoO)およびリチウムマンガン系酸化物(代表的には、LiMn)から選択される一種または二種以上のリチウム遷移金属酸化物の使用が好ましい。
ここで「リチウムニッケル系酸化物」とは、LiとNiとを構成金属元素とする酸化物の他、LiおよびNi以外に他の一種または二種以上の金属元素(すなわち、LiおよびNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)をNiと同程度またはNiよりも少ない割合(原子数換算。LiおよびNi以外の金属元素を二種以上含む場合にはそれらのいずれについてもNiよりも少ない割合)で含む複合酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,銅,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の元素であり得る。
また、その他、一般式:
Li(LiMnCoNi)O
(前式中のa、x、y、zはa+x+y+z=1を満足する実数)
で表わされるような、遷移金属元素を3種含むいわゆる三元系リチウム過剰遷移金属酸化物や、一般式:
xLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−x)LiMeO
(前式中、Meは1種または2種以上の遷移金属であり、xは0<x≦1を満たす)
で表わされるような、いわゆる固溶型のリチウム過剰遷移金属酸化物等であってもよい。
さらに、上記正極活物質として一般式がLiMAO(ここでMは、Fe,Co,NiおよびMnから成る群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、Aは、P,Si,SおよびVから成る群から選択される元素である。)で表記されるポリアニオン型化合物も挙げられる。
このような正極活物質を構成する化合物は、例えば、公知の方法で調製して用意することができる。例えば、目的の正極活物質の組成に応じて適宜選択されるいくつかの原料化合物を所定の割合で混合し、その混合物を適切な手段によって焼成する。これにより、正極活物質を構成する化合物としての酸化物を調製することができる。なお、正極活物質(典型的には、リチウム遷移金属酸化物)の調製方法は、それ自体は何ら本発明を特徴づけるものではない。
また、正極活物質の形状等について厳密な制限はないものの、上記のとおり調製された正極活物質は、適切な手段で粉砕、造粒および分級することができる。例えば、平均粒径がおよそ1μm〜25μm(典型的にはおよそ2μm〜15μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を、ここに開示される技術における正極活物質として好ましく採用することができる。これにより、所望する平均粒径および/または粒度分布を有する二次粒子によって実質的に構成される粒状の正極活物質粉末を得ることができる。
<カーボン材料>
ここで開示される製造方法においては、導電助剤として、カーボン材料を用いることができる。カーボン材料は、(A)工程において、粒状カーボン材料、バインダおよび溶媒を含むペースト状カーボン組成物の形態で用意する。ここで、ペースト状カーボン組成物は、上記のとおりの判定処理(1)および判定処理(2)満たすと予想され得るペースト状カーボン組成物を用意することが好ましい。例えば、カーボン材料の粒度分布において相対的に粒径の小さい第1のピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を示し、且つ、上記第1のピークにおける体積基準の存在比率H1(%)および上記第2のピークにおける体積基準の存在比率H2(%)の比が(H1/H2)>1を満足する物を含むものを用意することができる。
ペースト状カーボン組成物に含まれる粒状カーボン材料としては、導電材として機能し得る導電性を示すものであればその材質等は特に制限されない。例えば、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末等のカーボン粉末を用いることができる。これらは、一種又は二種以上を併用してもよい。
カーボン材料の粒子(二次粒子)の平均粒径は、電極活物質の平均粒径の1/500〜1/20程度を目安とすることができる。さらに、ここに開示された製造方法では、カーボン材料は、二次粒子の平均粒径は20μm以下であることが好ましく、さらには、200nm〜10μmの範囲内にあることがより好適である。二次粒子の平均粒径が20μmより大きいと、正極活物質の間隙に好適に収まり難く、負極活物質層における正極活物質の密度を低下させる可能性が生じるため好ましくない。二次粒子の平均粒径の下限については、細かすぎる粒子は正極活物質層の形成において上層部分に偏る傾向があるために好ましくない。またハンドリングの容易さ等から、例えば、平均粒径が50nm以上であるのが好ましく、さらには100nm以上、より限定的には200nm以上であってよい。例えば、このように二次粒子の平均粒径が200nm〜10μmの範囲内にあると、ペースト状カーボン組成物の品質がここに開示される製造方法に対してより安定したものとなり、例えば、より簡便に正極活物質層形成用組成物の粘度を制御することができる。
またここに開示される製造方法では、カーボン材料の粒度分布は上記のとおり二峰性分布をなすものであって、より粒径の小さい側の峰の頂点における径が1μm未満であって、より粒径の大きい側の峰の頂点における径が1μm以上であることが好ましい。また、カーボン材料は、一次粒子のレーザ回折法に基づく平均粒径が100nm以下のカーボンブラックであることが好ましい。このような粒度特性を持つカーボン材料を含むペースト状カーボン組成物を用いることで、品質の高い正極活物質層形成用組成物を安定して調製することが可能となる。
<バインダ>
バインダは、正極活物質層に含まれる上記正極活物質とカーボン材料の各粒子を結着させたり、これらの粒子と正極集電体とを結着させたりする働きを有する。かかるバインダとしては、正極活物質層を形成する際に使用する溶媒に溶解または分散可能なポリマーを用いることができる。
例えば、この溶媒として水性溶媒を用いる場合には、水に溶解する(水溶性の)ポリマー材料として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);等が例示される。また、水に分散する(水分散性の)ポリマー材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のビニル系重合体;ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル共重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類等が例示される。
また、溶媒として非水溶媒を用いる場合には、ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリルニトリル(PAN)など)を好ましく採用することができる。
なお、バインダとして例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極活物質層を形成するために調製する正極活物質層形成用ペースト(以下、単にペーストという場合もある)の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
<溶媒>
溶媒としては、水性溶媒および非水溶媒の何れも使用可能である。水性溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒(水系溶媒)を用いた組成物が例示される。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。非水溶媒の好適な例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
≪二次電池用電極の製造≫
図4は、一実施形態としての二次電池用電極の製造方法の工程の一部を示すフローチャートである。なお、スペースの関係により、図4ならびに後述する図5中において、「ペースト状カーボン組成物」を「ペースト状カーボン」と略称する。この図4に示した工程は、上記のペースト状カーボン組成物の判定処理(2)において必要となる相関関係を求める工程の一例を示すものであり、実際の電極の製造に先立って、予め実施することが好ましい。
<予め実施する工程>
まず、ステップS100において、例えば、製品として納品されたペースト状カーボン組成物から、製造ロットの異なる複数のペースト状カーボン組成物をサンプル(検体)として抽出する。例えば、4ロット以上からサンプルを抽出することができる。なお、一ロットあたりに製造される製品が大量な場合には、例えば統計学的手法に基づき、一ロットで製造される製品数に応じて、同一ロットから複数のペースト状カーボン組成物を抽出しても良い。
次いで、ステップS111において、抽出したペースト状カーボン組成物の適量を取り分け、これを試料として組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布を、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて測定する。そしてこの測定結果から、ステップS113において、カーボン材料の粒度分布に関する標準偏差(a)を算出する。使用する粒度分布測定装置によっては、測定した粒度分布データを解析する解析手段が備えられているものもあり、これらの解析手段を使って標準偏差(a)を求めても良い。
一方、粒度分布に供した残りのペースト状カーボン組成物を用い、ステップS121において、正極活物質層形成用組成物を調製する。ここでペースト状カーボン組成物以外の材料および配合は、規定のもの(すなわち標準配合)とする。なお、この正極活物質層形成用組成物の調製は公知の手法に従って行うことができる。正極活物質層形成用組成物の調製の工程については後で説明を行う。そしてステップS123において、調製された正極活物質層形成用組成物の粘度(b)を測定する。測定機器や厳密な測定条件は、適宜決定することができる。例えば、レオメータを用いて、25℃、600mPa・s等の一定の条件の下にて測定した粘度を採用することができる。
次のステップ130においては、ステップS113で求めた標準偏差(a)と、ステップS123で求めた粘度(b)との相関式を求める。通常、これら標準偏差(a)と粘度(b)は線形関係を有する。決定係数Rが低い場合は、検体数を増やすなどしても良い。また、所望の電極の特性等に応じて正極活物質層形成用組成物の合格粘度範囲を決定しておく。なお、上記相関関係から、この合格粘度範囲を達成する合格標準偏差範囲をは決定するようにしてもよい。
なお、本発明の方法は、必ずしも図4のフローチャートに示した順で各工程を行う必要はない。例えば、図4の例では、ステップS100のサンプルの抽出の後に、ステップS111の粒度分布測定を行うようにしているが、ステップS111の前にステップS121の活物質形成用組成物の調製を行ってもよいし、これらの工程を同時に進行させても良い。
≪ペースト状カーボン組成物を用意する(A)工程≫
そして、ここに開示される製造方法では、(A)工程において、導電材である粒状カーボン材料と、バインダと、溶媒とを含むペースト状カーボン組成物を用意する。ペースト状カーボン組成物は、製造に際して各材料を使用して調製して用意してもよいし、製品として提供されているものを用意してもよい。
<ペースト状カーボン組成物の判定>
次いで、上記(A)工程で用意したペースト状カーボン組成物が、判定処理(1)〜(2)を具備するかどうかを判定する。図5は、この判定処理(1)〜(2)を行う方法を示すフローチャートの一例である。
先ず、判定処理(1)〜(2)に際して、ステップS200に示したように、使用しようとしているペースト状カーボンが新たなロットの製品に切り替わったかどうかを確認する。ロットが切り替わらない場合は、ステップS300に示したように、そのままそのペースト状カーボンを用いて電極の製造を行うことができる。一方で、ロットが切り替わる場合は、そのロットのペースト状カーボンが判定処理(1)〜(2)を満たすかどうかの判定に進む。
まず、ステップS211において、使用しようとしているペースト状カーボンに含まれるカーボン材料について、粒度分布を測定する。そしてその測定結果から、ステップS213において、粒度分布に関する標準偏差σと、この標準偏差σに対応する正極活物質層形成用組成物の粘度ηとを算出する。標準偏差σの算出については、前記のステップS111およびステップS113と同様に行うことができる。また、粘度ηは、予めステップS130で求めておいた標準偏差(a)と粘度(b)の関係式から算出することができる。
次いでステップS220において、この粘度ηが、先に求めておいた合格粘度範囲に含まれるかどうかを判定する。粘度ηが合格粘度範囲に含まれる場合には、ステップS221において、判定処理(2)の条件を具備すると判定する。また、このペースト状カーボン組成物と同ロットで製造(納品)されたペースト状カーボン組成物についても、判定処理(2)を満足するものと判断することができる。一方で、粘度ηが合格粘度範囲に含まれない場合は判定処理(2)の条件を具備しないため、ステップS240において、このペースト状カーボン組成物は正極活物質層形成用組成物の調製には適さないとの判定をする。また、この処理対象のペースト状カーボン組成物と同ロットで製造(納品)されたペースト状カーボン組成物についても、適さないとの判定をする。この場合、次の製造ロットのペースト状カーボン組成物について、同様の判定を開始する。
判定処理(2)の条件を具備すると判定した場合は、ステップS230において、判定処理(1)に基づく判定を行う。すなわち、相対的に粒径の小さいピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を示す場合は、ピークP1における存在比率H1(%)とピークP2における存在比率H2の比が(H1/H2)>1となるどうかの判定を行う。(H1/H2)>1を満たす場合には、ステップS231に進み、判定処理(1)を満足するものと判断する。このペースト状カーボン組成物と同ロットで製造(納品)されたペースト状カーボン組成物についても、判定処理(1)を満足するものと判断することができる。一方、(H1/H2)>1を満たさない場合や、上記のステップS211で測定したカーボン材料の粒度分布が単峰性分布である場合、もしくは3峰以上の多峰性分布である場合には、判定処理(1)の条件を満たさないため、ステップS240において、このペースト状カーボン組成物は正極活物質層形成用組成物の調製には適さないとの判定をする。また、このペースト状カーボン組成物と同ロットで製造(納品)されたペースト状カーボン組成物についても、使用できないとの判定をする。この場合、次の製造ロットのペースト状カーボン組成物について、使用できるかどうかの判定を開始する。
判定処理(1)および判定処理(2)の条件を満たすと判断されたペースト状カーボンは、ステップS300において、二次電池用電極の製造に好適に使用し得ると判断される。なお、この製造方法においては、必ずしも図5のフローチャートに示した順で各工程を行う必要はない。例えば、図5の例では、判定処理(2)に関する判断の後に、判定処理(1)に関する判断を行うようにしているが、判定処理(1)に関する判断を判定処理(2)に関する判断に先行して行っても良いし、これらを同時に進行させても良い。
≪電極活物質層形成用組成物を調製する(B)工程≫
(B)工程では、判定処理(1)〜(2)を具備すると判定されたペースト状カーボン組成物を用いて、電極活物質層形成用組成物を調製する。電極活物質層形成用組成物の調製に際しては、カーボン材料として、上記のとおり判定処理(1)〜(2)を具備すると判定されたペースト状カーボンを採用する以外は、従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、その他の電極を構成する材料および部材やその製造の手順自体は、特に制限はない。すなわち、例えば上記の粒状の正極活物質と、上記で判定されたペースト状カーボンと、バインダと、溶媒とを含む電極活物質層形成用組成物を調製する。バインダは、ペースト状カーボンに配合されているため、更に必要である場合に配合することができる。正極活物質材料の溶媒への分散は、具体的には、例えば、上記の正極活物質、導電材、バインダ等の正極活物質材料と、必要に応じて分散剤、増粘剤等の各種の添加剤と、溶媒とをミキサーに投入し、混練する。
正極活物質層形成用組成物の固形分材料(すなわち溶媒以外の材料)に占める正極活物質の割合(典型的には、正極活物質組成物の固形分に占める正極活物質の割合と概ね一致する。)はおよそ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)であることが好ましく、およそ75〜90質量%であることがより好ましい。ペースト状カーボンについては、固形分材料に占めるカーボン材料の割合が、およそ3〜25質量%、より好ましくは、およそ3〜15質量%程度となるように設定するのが好適である。バインダの使用量は特に限定されるものではないが、例えば、正極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部とすることができる。
混練のためのミキサーとしては、活物質層形成用組成物の調製に用いられる一般的な混練機を用いることができる。例えば、ニーダー、撹拌機、分散機、混合機などと呼ばれる該組成物の調製が可能な装置等を使用できる。
≪電極活物質層を形成する(C)工程≫
(C)工程では、調製した電極活物質層形成用組成物を電極集電体上に塗布する等して供給し、溶媒を除去することで乾燥させ、集電体上に電極活物質層を形成する。
正極活物質層形成用組成物の塗布については、公知の各種の塗工装置を用いて行うことができる。例えば、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター等の適切な塗布装置を使用することで好適に行うことができる。活物質層形成用組成物の塗布量は特に限定されず、例えば、目的の電極を備える二次電池の用途に応じて任意に設定することができる。例えば、3〜50mg/cm程度の範囲内で適宜に設定することができる。
そして、塗布された正極活物質層形成用組成物を乾燥させることで、電極集電体上に正極活物質層を形成する。この乾燥についても、余分な揮発成分(すなわち溶媒)を除去できる手法であれば特に限定されず、必要に応じて適切な手段を採用することができる。このとき、必要に応じて適当な乾燥促進手段(ヒータ等)を用いてもよい。
なお、塗布後、または乾燥後の正極活物質層形成用組成物に対して、必要に応じて全体をプレスしたり、所望の大きさに裁断したりすることができ、これにより目的とする厚みおよびサイズの電極を得る。プレス(圧縮)方法としては、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等の圧縮方法を採用することができる。正極活物質層の厚さを調整するにあたり、膜厚測定器で厚みを測定し、プレス圧を調整して所望の厚さになるまで複数回圧縮してもよい。これにより、正極が完成される。
以下、ここに開示される二次電池用電極の製造方法で製造された正極(正極シート)を構成部材として備えるリチウム二次電池の製造方法の一形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。即ち、ここに開示される二次電池用電極の製造方法で製造された電極が採用される限りにおいて、使用される電極活物質の組成や形態、構築されるリチウム二次電池の形状(外形やサイズ)には特に制限されない。電池外装ケースは角型形状、円筒形状等の形状でもよく、あるいは小型のボタン形状であってもよい。また、外装がラミネートフィルム等で構成される薄型シートタイプであってもよい。以下の実施形態では角型形状の電池について説明する。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
図6は、本実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す斜視図である。図7は、図6中のVII−VII線に沿う縦断面図である。図6および図7に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池10は、上記の構成材料(正負極それぞれの活物質、正負極それぞれの電極集電体、セパレータ等)を具備する電極体50と、該電極体50および適当な非水系の電解質(典型的には電解液)を収容する角型形状(典型的には扁平な直方体形状)の電池ケース15とを備える。
ケース15は、上記扁平な直方体形状における幅狭面の一つが開口部20となっている箱型のケース本体30と、その開口部20に取り付けられて(例えば溶接されて)該開口部20を塞ぐ蓋体25とを備えている。ケース15を構成する材質としては、一般的なリチウム二次電池で使用されるものと同様のものを適宜使用することができ、特に制限はない。例えば、金属(例えばアルミニウム、スチール等)製の容器、合成樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂等、ポリアミド系樹脂等の高融点樹脂等)製の容器等を好ましく用いることができる。本実施形態に掛かるケース15は例えばアルミニウム製である。
蓋体25は、ケース本体30の開口部20の形状に適合する長方形状に形成されている。さらに、蓋体25には、外部接続用の正極端子60と負極端子70とがそれぞれ設けられており、これらの端子60,70の一部は蓋体25からケース15の外方に向けて突出するように形成されている。また、従来のリチウム二次電池のケースと同様に、蓋体25には、電池異常の際にケース15内部で発生したガスをケース15の外部に排出するための安全弁(図示せず)が設けられている。安全弁は、ケース15内部の圧力が所定レベルを超えて上昇したときに、開弁してケース15の外部にガスを排出する機構を備えていれば特に制限無く使用することができる。
本実施形態では、図7に示すように、リチウム二次電池10は、捲回電極体50を備えている。電極体50は、捲回軸が横倒しとなる姿勢(すなわち、上記開口部20が捲回軸に対して横方向に位置する向き)でケース本体30に収容されている。電極体50は、長尺シート状の正極集電体62の表面に正極活物質層64が形成された正極シート(正極)66と、長尺シート状の負極集電体(電極集電体)72の表面に負極活物質層(電極活物質層)74が形成された負極シート(負極)76とを2枚の長尺状のセパレータシート80とともに重ね合わせて捲回し、得られた電極体50を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に形成されている。
また、捲回される正極シート66において、その長手方向に沿う一方の端部には正極活物質層64が形成されずに正極集電体62が露出している、他方、捲回される負極シート76においても、その長手方向に沿う一方の端部は負極活物質層74が形成されずに負極集電体72が露出している。そして、正極集電体62の上記露出している端部に正極端子60が接合され、上記扁平形状に形成された捲回電極体50の正極シート66と電気的に接続されている。同様に、負極集電体72の上記露出している端部に負極端子70が接合され、負極シート76と電気的に接続されている。なお、正負極端子60,70と正負極集電体62,72とは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合され得る。
上記構成の捲回電極体50を構成する材料および部材自体は、正極または負極として、ここで開示される電極の製造方法に従って製造された電極(ここでは正極シート66)を採用すること以外は、従来のリチウム二次電池の電極体と同様でよく特に制限はない。
本実施形態では、上記作製した正極シート66および負極シート76を2枚のセパレータ(例えば多孔質ポリオレフィン樹脂)80とともに積み重ね合わせて捲回する。これにより、得られた捲回電極体50の捲回軸が横倒しとなるように、ケース本体30内に捲回電極体50を収容する。そして、適当な支持塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を適当量(例えば濃度1M)含むECとDMCとの混合溶媒(例えば質量比1:1)のような非水電解液を注入する。その後、ケース本体30の開口部20に蓋体25を装着し封止することによって本実施形態のリチウム二次電池10を構築することができる。ケース本体30の開口部20の封止は、例えば、ケース本体30に蓋体25を溶接するとよい。この場合、溶接は、例えばレーザ溶接で行なうとよい。
上述した実施形態では、正極シート66の製造に際してここに開示されたリチウム二次電池用電極の製造方法が適用されている。かかる形態は、正極に限定されず、例えば、リチウム二次電池の負極の製造に対しても適用することができる。また、上述した実施形態では、リチウム二次電池10を例示したが、本発明は、リチウム二次電池に限られず、ニッケル水素電池やリチウムキャパシター等の二次電池の電極(正極および負極)に対しても適用することができる。
このようなリチウム二次電池10は、各種用途向けの二次電池として利用可能である。例えば、図8に示すように、自動車等の車両1に搭載される車両駆動用モータ(電動機)の電源としてのリチウム二次電池の正極として好適に利用することができる。車両1の種類は特に限定されないが、典型的には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等である。かかるリチウム二次電池は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数接続されてなる組電池の形態で使用されてもよい。
以下に図面とともに実施例を示し、本発明についてさらに説明する。ただし、本発明がこれらの例に限定されることがないことは言うまでもない。
≪カーボンペースト中のカーボン粒子の粒度分布≫
下記の配合で調製される製品としてのペースト状カーボン組成物(以下、単にカーボンペーストという。)を、異なる4つの製品ロットから1つずつ抽出し、カーボンペーストA〜Dとした。
アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF):分散剤=8:2:0.2
これらカーボンペーストA〜Dに含まれるカーボン粒子(AB)の粒度分布を、レーザ回折散乱法による粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックMT3300)を用いて、下記の条件にて測定した。
測定時間:10sec
計算モード:MT3000II
粒子透過性:吸収
その結果を、図9に示した。図9から、同一規格のカーボンペーストであっても、そこに含まれるカーボン粒子の粒度分布の形態には大きな違いがあることが確認される。カーボンペーストA〜Dは、それぞれに含まれるカーボン粒子の最小粒子から最大粒子までの粒径の範囲を示す粒径幅については、ほぼ同じであると考えることができる。しかしながら、カーボンペーストAおよびBに関する粒度分布は明確な二峰性分布を呈しており、カーボンペーストCおよびDの粒度分布に比較して、第一峰のピークが低く全体といてブロードであることがわかる。一方、カーボンペーストCおよびDは、第2峰がごく小さい二峰性分布であることが解かる。そして第一峰のピークはカーボンペーストAおよびBに比べて急峻(シャープ)である。このように、図9から、これらのカーボンペーストA〜Dは、平均粒径の異なる2種類のカーボン粒子を配合して調製されており、より平均粒径の小さいカーボン粒子の分布のピークにおける頻度が、より平均粒径の大きいカーボン粒子の分布のピークにおける頻度がより高くなるよう管理されているものと推察される。したがって、カーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒度分布における第一峰のピーク径がカーボン粒子のモード径に相当することが確認できる。なお、カーボンペーストA〜Dのカーボン粒子のいずれも、平均粒径のより小さいカーボン粒子の分布のピークにおける粒径が役0.45μmで、より平均粒径の大きいカーボン粒子の分布のピークにおける粒径が約3.9μmでほぼ同じ(共通)であった。
≪正極ペーストの粘度≫
上記のカーボンペーストA〜Dに正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)を加えて混合、混練することで、下記に示す所定の配合の正極ペーストを調製した。調製した正極ペーストは、用いたカーボンペーストの種類に対応させて正極ペーストA〜Dとした。
正極活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVdF):分散剤=89.8:8:2:0.2
これら正極ペーストA〜Dの粘度を、B型粘度計を用いて、25℃、2S−1の条件で測定した。その結果を図10に示した。正極ペーストA〜Dは、同一規格のカーボンペーストを用い、同一の配合で調製しているにも関わらず、カーボンペーストの製品ロットが異なるだけで粘度が大きく異なることが確認された。大まかな傾向として、粒度分布において第一峰のピークが低いカーボンペーストを用いた正極ペーストほど粘度が高く、粒度分布において第一峰のピークが高く急峻なカーボンペーストを用いた正極ペーストほど粘度が低いことがわかる。
≪粒度分布の標準偏差と正極ペーストの粘度との関係≫
上記のカーボンペーストA〜Dの粒度分布の測定結果から各ペーストの粒度分布の標準偏差を求めた。そしてこの標準偏差と、正極ペーストA〜Dの粘度との相関関係を調べ、図11に示した。
図11からわかるとおり、カーボンペーストA〜Dに含まれるカーボン粒子の粒度分布の標準偏差と、これらのカーボンペーストA〜Dを用いて調製した正極ペーストA〜Dの粘度とには、ほぼ線形の相関関係があることが解かる。例えば、図11に示した例では、カーボンペーストA〜Dの粒度分布の標準偏差をX軸にとり、正極ペーストの粘度をY軸にとると、決定係数R=0.8821と高い寄与率で、両者には下記に示す近似式(1)で表される線形関係が存在する。
y=6269.9x−3188.5…(1)
このことから、所定の組成で目的の粘度範囲内におさまる粘度を有する正極ペーストを調製できるかどうかは、正極ペーストの調製に用いるカーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒度分布の標準偏差に依存するといえる。
したがって、予め、正極ペーストの調製に用いるカーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒度分布からその標準偏差を調べ、そしてそのカーボンペーストを用いて所定の配合で調製した正極ペーストの粘度を測定する。このような標準偏差と粘度の関係を、製造ロットの異なる複数のカーボンペーストについて調べれば、両者の相関関係を示す線形式を求めることができる。すると、実際の電極の製造工程においては、求めた線形式を検量線として、使用するカーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒度分布からその標準偏差を調べるだけで、上記式(1)により正極ペーストの粘度が算出され、得られる正極ペーストの粘度が目的の合格粘度範囲にあるかどうかを判定することが可能となる。あるいは、上記式(1)により目的とする正極ペーストの合格粘度範囲を達成するカーボン粒子の粒度分布の標準偏差の範囲が求められるため、使用するカーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒度分布の標準偏差がその範囲内(合格許容標準偏差範囲)のものかどうかで判定することができる。
より具体的には、図11に示した例では、正極ペーストの合格粘度範囲を2000〜4500mPa・sに設定しており、この粘度範囲に収まる粘度を有する正極ペーストを調製することを目標としている。この場合、上記の近似式(1)から逆算して、そこに含まれるカーボン粒子の粒度分布の標準偏差が約0.83〜約1.22(μm)の範囲内であるカーボンペーストを用いて所定の配合で正極ペーストを調製すれば、粘度が2000〜4500mPa・sの範囲内の正極ペーストを得ることができることがわかる。
このようにカーボンペーストの品質を管理することで、製造工程において実際に正極ペーストを調製する前に、その粘度を予測することができる。したがって、電極の製造において品質の良いカーボンペーストのみを購入することができ、余分なコストを抑えることが可能となる。また、正極ペーストの調製の際(典型的には混練時)に、その場で粘度を調製する必要がなくなり、安定した正極ペーストの調製が可能とされる。なお、正極ペーストの粘度を予測できることから、カーボンペースト中のカーボン粒子の粒度分布の標準偏差に応じて、予め適宜正極ペーストの配合を調製することも考慮できる。
≪正極の製造≫
上記で求めた0.83〜1.22μmを合格標準偏差の範囲として、他の製造ロットのカーボンベースとを用い、ここに開示される製造方法したがって正極を作製した。まず、使用するカーボンベースト中のカーボン粒子の粒度分布を測定したところ、二峰性分布であり、より小さいピークにおける粒径がモード径となることが確認された。また、その粒径に関する標準偏差は1.15である、許容標準偏差内であることを確認した。次いで、所定の配合で正極活物質層形成用組成物を調製した。すると、得られた組成物の25℃、2S−1における粘度は、約4007mPa・sであり、粘度調整をすることなく、所望の粘度を有する組成物を得ることができた。この組成物を用いて正極を作製したところ、正極活物質層形成用組成の塗布、乾燥を好首尾に実施することができ、良好な塗膜性状の正極を得ることができた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
ここで開示される技術によると、ペースト状カーボン組成物の品質(代表的には、該組成物に含まれるカーボン材料の粒度分布特性)を的確に管理することにより、電極活物質層形成用組成物の調製を品質良く簡便に行うことができる二次電池用電極の製造方法が提供される。この製造方法によると、正極ペーストの調製の際(典型的には混練時)に、その場で粘度を調製する必要がなくなり、安定した正極ペーストの調製が可能とされる。従って、製造の手間が省け、製造時間およびコストの削減を図ることができる。
1 車両
10 リチウム二次電池
15 電池ケース
20 開口部
25 蓋体
30 ケース本体
50 捲回電極体
60 正極端子
62 正極集電体(電極集電体)
64 正極活物質層(電極活物質層)
66 正極シート(正極)
70 負極端子
72 負極集電体(電極集電体)
74 負極活物質層(電極活物質層)
76 負極シート(負極)
80 セパレータ

Claims (6)

  1. 電極集電体上に電極活物質を主成分とする電極活物質層が形成されてなる二次電池用電極を製造する方法であって、
    (A)導電材である粒状カーボン材料と、バインダと、溶媒とを含むペースト状カーボン組成物を用意する工程、
    (B)前記ペースト状カーボン組成物と、電極活物質と、バインダと、溶媒とを含むペースト状の電極活物質層形成用組成物を調製する工程、および、
    (C)前記電極活物質層形成用組成物を電極集電体上に供給し、該集電体上に電極活物質層を形成する工程、
    を包含し、
    ここで前記(B)工程において前記電極活物質層形成用組成物を調製するために使用される前記ペースト状カーボン組成物は、前記(A)工程において用意された該組成物の粒度分布をレーザ回折法に基づいて測定し、該測定した結果に基づいて行われる以下の判定処理(1)〜(2):
    (1)前記粒度分布は、該粒度分布において相対的に粒径の小さい第1のピーク(P1)と、相対的に粒径の大きい第2のピーク(P2)を有する二峰性分布を示し、且つ、前記第1のピークにおける体積基準の存在比率H1(%)および前記第2のピークにおける体積基準の存在比率H2(%)の比が(H1/H2)>1を満足する;
    (2)前記測定した粒度分布における標準偏差σに基づき、
    製造ロットの異なる複数の前記ペースト状カーボン組成物について測定した粒度分布における標準偏差と、前記製造ロットの異なる複数のペースト状カーボン組成物を各々用いて予め作製した同種の電極活物質層形成用組成物について測定した粘度との相関式から、
    前記判定処理対象のペースト状カーボン組成物の標準偏差σに対応する電極活物質層形成用組成物の粘度を算出し、該算出した粘度が予め決定されている合格粘度範囲に包含される;
    を何れも具備するものであることを特徴とする、二次電池用電極の製造方法。
  2. 前記ペースト状カーボン組成物に含まれる前記粒状カーボン材料は、その二次粒子の平均粒径が200nm〜10μmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1記載の二次電池用電極の製造方法。
  3. 前記(B)工程において前記電極活物質層形成用組成物を調製するために使用される前記ペースト状カーボン組成物は、前記粒度分布における前記第1のピーク(P1)が粒径1μm未満のところにあり、前記第2のピーク(P2)が粒径1μm以上のところにあることを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池用電極の製造方法。
  4. 前記粒状カーボン材料は一次粒子のレーザ回折法に基づく平均粒径が100nm以下のカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用電極の製造方法。
  5. 前記電極活物質としてリチウムイオン二次電池の正極活物質を構成する材料を使用し、リチウムイオン二次電池の正極を製造するために実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二次電池用電極の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造された電極を備える、二次電池。
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