JP6114739B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
例えば、特開2003−104008号公報および特開平03−143701号公報には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
また、熱可塑性の高分子材料を用いてタイヤを製造する場合、製造効率を高め低コストを実現しつつ従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能を実現することが求められる。
ここで、本発明において、「樹脂を含む材料」は、樹脂を少なくとも含み、さらに樹脂以外の成分を含んでいてもよい物質をいい、樹脂を含む材料が樹脂以外の成分を含有しない場合、樹脂を含む材料は樹脂のみで構成される。以下、「樹脂を含む材料」を樹脂材料ともいう。
また、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、いわゆるエンジニアリングプラスチックを含む概念であるが、天然ゴムは含まない。さらに、熱可塑性樹脂には、熱可塑性エラストマーが含まれる。
ここで、「エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメント若しくは高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる樹脂を意味する。
これは、樹脂材料が単に柔らかい材料のみで形成されている場合に比べ、材料中により弾性率の高い材料が存在することにより、樹脂材料の強度が高まる。また、弾性率の高い樹脂材料は、一般に、融点も高い傾向にあり、樹脂材料が高温下に曝されても、軟化し難くい。このように、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料が、第1の樹脂材料で構成される海相と、前記海相よりも硬く、第2の樹脂材料で構成される島相を含むことで、樹脂材料の強度が高まり、高温下でも軟化しにくいため、本発明のタイヤは耐熱性に優れると考えられる。
また、上記弾性率は、JIS K7113:1995に規定される引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)を意味する。
以下、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
前記タイヤ骨格体を構成する樹脂材料には、第1の樹脂材料で構成される海相と、前記海相よりも硬く、第2の樹脂材料で構成される島相を含む海島構造が含まれる。
従って、第1の樹脂材料と、第2の樹脂材料とは、それぞれ、海相(連続相)と、島相(非連続相)とに相分離している必要があり、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料は、マトリックス相としての海相(第1の樹脂材料)に、島相(第2の樹脂材料)が分散している構造を有している。
例えば、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料である熱可塑性エラストマーを海相となる第1の樹脂材料として用い、当該熱可塑性エラストマーのハードセグメントを構成するポリマーである熱可塑性樹脂を島相となる第2の樹脂材料として用いることが挙げられる。また、熱硬化性樹脂に対して可塑剤を適用した樹脂材料を海相となる第1の樹脂材料として用い、可塑剤を適用していない熱硬化性樹脂を島相となる第2の樹脂材料として用いることが挙げられる。
既述のように、タイヤ骨格体を樹脂材料で構成することで、射出成形、プレス成型等の簡易な方法でタイヤを形成することができる。ここで、一般に、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化するものであるため、加熱により可塑化する熱可塑性樹脂に比べ、弾性率は高い傾向にある。しかし、熱硬化性樹脂であっても、樹脂材料が熱硬化性樹脂と可塑剤とを含有することで、第2の樹脂材料を柔らかくすることができる。
従って、島相よりも柔らかい海相を構成する第1の樹脂材料には、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)のほかに、熱硬化性樹脂および可塑剤を併用した材料、ならびに、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)と、熱硬化性樹脂および可塑剤との組み合わせを用いることができる。
海相よりも硬い島相を構成する第2の樹脂材料は、特に制限されず、熱硬化性樹脂も、可塑剤により可塑化しなくてもよい。もっとも、熱硬化性樹脂に対する可塑剤の種類ないし量を適宜調整することにより、第1の樹脂材料が、第2の樹脂材料よりも柔らかくなるように調製すれば、第2の樹脂材料を、熱硬化性樹脂および可塑剤を含む樹脂材料としてもよい。
島相よりも柔らかい海相を構成する第1の樹脂材料は、熱可塑性樹脂の中でも弾力性に優れた熱可塑性エラストマーを含有していることが好ましく、中でも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及び、動的架橋型熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
特に、第1の樹脂材料がポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、第2の熱可塑性樹脂がポリエチレン樹脂またはポリフェニレンエーテルである組み合わせが好ましく、ポリエチレン樹脂は、さらに高密度ポリエチレン樹脂であることが好ましい。この場合、第1の熱可塑性樹脂と第2の樹脂材料との量比は、質量基準で、第1の熱可塑性樹脂:第2の樹脂材料=60:40〜90:10であることが好ましく、70:20〜90:10であることがより好ましい。
また、タイヤの耐熱性をより向上する観点から、第1の樹脂材料がポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、第2の樹脂材料が引張弾性率1000MPa以上の樹脂材料である組み合わせも好ましい。
0.25≦〔(γ1×W1)/(γ2×W2)〕≦2 式(1)
(γ1×W1)/(γ2×W2)で表される係数を、弾性率係数とも称する。弾性率係数が0.25〜2の範囲なるように第1の樹脂材料および第2の樹脂材料を選択して用いることで、より耐熱性に優れるタイヤとすることができる。
なお、第1の樹脂材料の引張弾性率γ1および前記第2の樹脂材料の引張弾性率γ2の単位は〔MPa〕であり、前記材料中の前記第1の樹脂材料の含有量W1および前記材料中の前記第2の樹脂材料の含有量W2の単位は〔質量%〕である。
以下、第1の樹脂材料ないし第2の樹脂材料として用い得る樹脂、及び樹脂以外の成分について説明する。
樹脂としては、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)、熱硬化性樹脂、及びその他の汎用樹脂のほか、エンジニアリングプラスチック(スーパーエンジニアリングプラスチックを含む)等が挙げられる。これらについて、順次説明する。
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)とは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物をいう。
本明細書では、このうち、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物を熱可塑性エラストマーとし、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有しない高分子化合物をエラストマーでない熱可塑性樹脂として、区別する。
「ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー」とは、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、前記ポリオレフィンないし他のポリオレフィン)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを、単に「TPO」(ThermoPlastic Olefin elastomer)と称することもある。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよい。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
「酸変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー」は、未変性のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させて酸変性させたポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを意味する。酸変性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物の不飽和結合部位をポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに結合(例えば、グラフト重合)させることで得ることができる。
更に、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のプライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F-3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)がガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、加硫されたSBR樹脂等の合成ゴムを用いてもよい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを「TPS」(ThermoPlastic Styrene elastomer)と称することもある。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられ、SEBSが特に好ましい。
「酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー」は、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させて酸変性させたポリスチレン系熱可塑性エラストマーを意味する。酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物の不飽和結合部位をポリスチレン系熱可塑性エラストマーに結合(例えば、グラフト重合)させることで得ることができる。
本発明において、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーを、単に「TPA」(ThermoPlastic Amid elastomer)と称することもある。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーを、単に「TPU」(ThermoPlastic Urethan elastomer)と称することもある。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。更に、前記Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、前記P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、および2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントの組合せが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーを「TPC」(ThermoPlastic polyester elastomer)と称することもある。
前記ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、プリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエステルのなかでも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
エラストマーでないポリオレフィン系樹脂は、既述のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーよりも弾性率の高いポリオレフィン系樹脂である。
エラストマーでないポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、プロピレン、エチレン等のα−オレフィン、シクロオレフィン等の環状オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロックコポリマー等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂などが挙げられ、特に、耐熱性、加工性の点から、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
エラストマーでないポリスチレン系熱可塑性樹脂は、既述のポリスチレン系熱可塑性エラストマーよりも弾性率の高いポリスチレン系熱可塑性樹脂である。
前記エラストマーでないポリスチレン系熱可塑性樹脂としては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えばアニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、前記ポリスチレン系熱可塑性樹脂としては、スチレン分子骨格を含む重合体や、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体等を挙げることができる。
この中でもアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体およびその水素添加物;アクリロニトリル/スチレン共重合体とポリブタジエンとのブレンド体またはその水素添加物が好ましい。前記ポリスチレン系熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリスチレン(所謂PS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(所謂AS樹脂)、アクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂(所謂ASA樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(所謂ABS樹脂(ブレンド系及び共重合系を含む)、ABS樹脂の水素添加物(所謂AES樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(所謂ACS樹脂)等が挙げられる。
エラストマーでないポリアミド系樹脂は、既述のポリアミド系熱可塑性エラストマーよりも弾性率の高いポリアミド系樹脂である。
エラストマーでないポリアミド系熱可塑性樹脂としては、既述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを構成するポリアミドを挙げることができる。前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合ポリアミド(アミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
前記アミド11は、例えば、{CO−(CH2)10−NH}n(nは繰り返し単位数を表す)で表すことができる。
前記アミド12は、例えば、{CO−(CH2)11−NH}n(nは繰り返し単位数を表す)で表すことができる。
前記アミド66は、例えば、{CO(CH2)4CONH(CH2)6NH}n(nは繰り返し単位数を表す)で表すことができる。
前記アミド6としては、例えば、市販品の宇部興産社製「UBEナイロン」1022B、1011FB等を用いることができる。
前記アミド12としては、宇部興産社製「UBEナイロン」、例えば、3024U等を用いることができる。前記アミド66としては、「UBEナイロン」例えば、2020B等を用いることができる。また、前記アミドMXとしては、例えば、市販品の三菱ガス化学社製のMXナイロン(S6001、S6021,S6011)等を用いることができる。
エラストマーでないポリエステル系樹脂は、既述のポリエステル系熱可塑性エラストマーよりも弾性率が高く、主鎖にエステル結合を有する樹脂である。
エラストマーでないポリエステル系熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、既述のポリエステル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントが含むポリエステル系熱可塑性樹脂と同種の樹脂であることが好ましい。また、エラストマーでないポリエステル系樹脂は、結晶性でも非晶性でもよく、脂肪族系ポリエステル、芳香族ポリエステル等が挙げられる。脂肪族系ポリエステルは、飽和脂肪族系ポリエステルであっても、不飽和脂肪族系ポリエステルであってもよい。
芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、樹脂材料として、動的架橋型熱可塑性エラストマーを用いてもよい。
動的架橋型熱可塑性エラストマーとは、溶融状態にある熱可塑性樹脂にゴムを混入し、架橋剤を加えて混練り条件下、ゴム成分の架橋反応を行い作製した熱可塑性エラストマーである。
以下、動的架橋型熱可塑性エラストマーを、単に「TPV」(ThermoPlastic Vulcanizates elastomer)と称することもある。
TPVの製造に用い得るゴム成分としては、ジエン系ゴムおよびその水添物(例えば、NR,IR、エポキシ化天然ゴム、SBR,BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR)、オレフィン系ゴム(例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM,EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、IIR、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー)、含ハロゲンゴム(例えば、Br−IIR,Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)、シリコーンゴム(例えば、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、含イオウゴム(例えば、ポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)等が用いられ、特に、変性ポリイソブチレン系ゴムとしての、ハロゲン基を導入したイソブチレン−イソプレン共重合ゴム、および/またはハロゲン基を導入したイソブチレン−パラメチルスチレン共重合ゴムのようなイソモノオレフィンとp−アルキルスチレンのハロゲン含有共重合ゴムが有効に用いられる。後者には、エクソン社製の“Exxpro”が好適に用いられる。
次に、熱硬化性樹脂について説明する。
熱硬化性樹脂とは、温度上昇と共に3次元的網目構造を形成し、硬化する高分子化合物をいう。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
具体的には、次のものが挙げられる。
フェノール樹脂としては、レゾルシン、ビスフェノールなど、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノールなどの水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZなどのビスフェノール類、ビフェノール類などの、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどとを、酸またはアルカリ触媒下で反応させた、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類、トリメチロールフェノール類などのモノマ、及びそれらの混合物、またはそれらがオリゴマ化されたもの、及びモノマとオリゴマの混合物であることが好ましい。また、アミン等の硬化剤を含んでもよい。
エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマ、オリゴマ、ポリマ全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格などを有する)などが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。これらの中でも、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂が特に好ましい。また、アミン等硬化剤を含んでもよい。
メラミン樹脂としては、例えば、アルコキシメチルメラミン樹脂を用いることができる。具体的には、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等を用いたメチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
ユリア樹脂(尿素樹脂)としては、 モノメチロール尿素、ジメチロール尿素、トリメチロール尿素などのメチロール尿素が挙げられる。
樹脂材料には、既述の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂のほか、(メタ)アクリル系樹脂、EVA樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の汎用樹脂を用いてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂およびアクリル系樹脂を意味する。
また、メタクリル系樹脂には、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルを繰り返し単位として含むメタクリル酸エステル樹脂、及び、カルボキシ基がエステルとなっていないメタクリル酸樹脂が含まれる。同様に、アクリル系樹脂には、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステルを繰り返し単位として含むアクリル酸エステル樹脂、及び、カルボキシ基がエステルとなっていないアクリル酸樹脂が含まれる。
さらに、ジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジ2-アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートなどの(メタ)アクリル基を含むリン酸エステル、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、エステルなどを使用することも可能である。
メタクリル系樹脂は、上記のうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル系樹脂は、上記のうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
EVA樹脂は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体)であり、エチレンと酢酸ビニルとの含有比率を調整することで、柔軟性を容易に制御することができる。
EVA樹脂は、種々の製品が市販されており、例えば、住友化学社製のエバテート、日本ポリエチレン社製のノバテック、三井・デュポン ポリケミカル社製のエバフレックス等として入手できる。
塩化ビニル樹脂としては塩化ビニルモノマーに種々のモノマーと共重合したものが用いられる。
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリレート、メタクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、さらに官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p−スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
これらの樹脂は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。
フッ素系樹脂とは、分子中にフッ素原子を含有する樹脂であり、既述の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂が有する、例えば、水素原子をフッ素原始で置換した樹脂が挙げられる。
例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッソ樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。
シリコーン系樹脂は、主鎖又は側鎖にシロキサン結合を有する高分子化合物である。
例えば、メチルシリコーン、フェニルシリコーン、フェニルメチルシリコーン等が挙げられ、これらの中から1種を単独で又は2種以上を選択して使用することができる。
シリコーン系樹脂は市販製品を用いてもよく、例えば、富士ケミカル社製、グリンベル等を好適に用いることができる。
樹脂材料は、上記の樹脂のほか、いわゆるエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックを用いてもよい。
エンジニアリングプラスチックとは、耐熱限界温度(荷重たわみ温度)が100℃以上の樹脂をいう。従って、既述の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂のうち、耐熱限界温度が100℃以上となる樹脂は、エンジニアリングプラスチックとも称される。
エンジニアリングプラスチックのうち、さらに、強度が49.0MPaであり、曲げ弾性率が2.4GPa以上のプラスチックのうち、耐熱限界温度が150℃以上であるものを、通常、スーパーエンジニアリングプラスチックいう。
以下、既述の樹脂のほか、特にエンジニアリングプラスチックに分類される樹脂を説明する。
ポリカーボネートとは、脂肪族または芳香族のポリカーボネート樹脂であり、芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネートが挙げられ、示差熱量計で測定されるガラス転移温度が100〜155℃の範囲にあるものが好ましく用いられる。
液晶ポリマーとしては、例えば、エチレンテレフタレートとp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノールとフタル酸とp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とp−ヒドロキシ安息香酸との重縮合体が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルとは、下記繰り返し単位(PPE−1)または下記繰り返し単位(PPE−2)の単独重合体、下記繰り返し単位(PPE−1)および下記繰り返し単位(PPE−2)の少なくとも一方を含む共重合体をいう。
一般に、下記繰り返し単位(PPE−1)を含み、下記繰り返し単位(PPE−2)を含まないポリフェニレンエーテルを変性ポリフェニレンエーテルと称する。変性ポリフェニレンエーテルは、さらに、分子内にカルボキシ基等の酸基を有する酸変性体であってもよい。
繰り返し単位(PPE−1)および繰り返し単位(PPE−2)中、nは、繰り返し単位数である。
ポリフェニレンサルファイドとしては、p−フェニレンサルファイド基を主たる繰返し単位とするものであり、直鎖型、分岐型、架橋型、又はこれらの混合物であっても、m−フェニレンサルファイド基等の繰返し単位との共重合体であってもよい。
非晶ポリアリレートとしては、ビスフェノールA/テレフタル酸、ビスフェノールA/イソフタル酸、ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタルなどが挙げられる。
ポリスルホンとしては、主鎖に、芳香環、スルフォニル基、および、エーテル基を繰り返し単位として含む樹脂であり、ポリエーテルスルホンとも称される。
ポリスルホンは、具体的には、例えば、下記繰り返し単位(S−1)または(S−2)を有する高分子化合物として表される。なお、繰り返し単位(S−1)及び(S−2)に示されるnは、繰り返し単位数であり、例えば50〜80の整数である。
ポリスルホンは上記繰り返し単位(S−1)および(S−2)の少なくとも一方のみからなる化合物であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない限度において、他のモノマーと共重合していてもよい。
ポリエーテルエーテルケトンとしては、例えば、下記繰り返し単位(EEK−1)を有する樹脂を挙げることができる。
上記繰り返し単位(EEK−1)で表される繰返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンとしては、例えば、ビクトレックス社製の商品名「Victrex PEEK」等を挙げることができる。
ポリエーテルイミドとしては、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596565号、特許第2596566号、特許第2598478号のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号に記載のポリマーである。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていてもよい。
例えば、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物であるポリエーテルイミドは、“Ultem”(登録商標)の商標名で、General Electric社より入手可能である。
ポリアミドイミドとしては、より具体的には、例えば、シロキサン成分を重合成分として含むポリアミドイミドや、環式炭化水素基(脂環式炭化水素基および/または芳香族炭化水素基)を有するジイソシアネート成分またはジアミン成分と、酸無水物、多価カルボン酸、酸クロリドなどの酸成分とを重合成分として含むポリアミドイミド、このポリアミドイミドにポリカプロラクトンなどのポリエステルなどが共重合されたものなどを例示することができる。
これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
ポリイミドは、主鎖にイミド結合を有する樹脂である。
例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンまたはトリアミン化合物と、が溶媒中で重合して得られるポリアミック酸を前駆体とし、そのポリアミック酸がイミド化して得られたものが挙げられる。
脂肪族環状構造をもつテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、等が挙げられる。
分子中に屈曲構造を有する芳香族テトラカルボン酸無水物としては、具体的には、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、等が挙げられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
芳香族系ジアミンまたはトリアミン化合物としては、具体的には、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3‘−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノフフェニルメタン、2,4,4’−ビフェニルトリアミン、ピリジン−2,3,6−トリアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が挙げられる。
上記ジアミンまたはトリアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
熱イミド化方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液を100℃から250℃に加熱する方法が挙げられる。
一方、化学イミド化方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液に3級アミンなどの触媒と、無水酢酸等の脱水剤を添加する方法が挙げられる。上記化学イミド化方法を用いる場合、反応は室温(例えば25℃)でも進行するが、化学反応促進のため、60℃から150℃で反応を行ってもよい。また反応後、触媒及び脱水剤を除去してもよいが、そのまま共存させたまま使用しても良い。触媒及び脱水剤を除去する方法としては、例えば、反応液を減圧・加熱して除去する方法や、反応液を貧溶媒中に加えてポリイミド樹脂を再沈殿させて除去する方法が挙げられる。
ポリアセタールは、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする樹脂である。
ポリアセタールとしては、例えば、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーが挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーであってもよい。ポリアセタールコポリマーは、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15質量%以下含有する。
また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわち、ブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーのいずれであってもよく、これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からはポリアセタールコポリマーであることが好ましい。
以上のほか、ジアリフタレート樹脂、メチルペルテン樹脂、生分解性プラスチック等を用いてもよい。
なお、生分解性プラスチックとは、燃焼エネルギーが低く、有毒ガスが発生しないという特徴があり、経時的に微生物により分解代謝され、最終的に水と二酸化炭素となって自然に戻る環境にやさしいプラスチックである。生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸、デンプンと変性ポリビニルアルコールの混合体、ポリブチレンサクシネート/アジペート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体等が代表的である。
タイヤ骨格体を構成する樹脂材料は、さらに、種々の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、熱硬化性樹脂やスーパーエンジニアリングプラスチックを可塑化する可塑剤や、老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及び、帯電防止剤等の機能性成分や、ゴム等が挙げられる。
これらの添加剤は、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料が、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料のほかに、含有するものであってもよいし、第1の樹脂材料が含有するものであっても、第2の樹脂材料が含有するものであってもよい。
本発明のタイヤにおけるタイヤ骨格体を構成する樹脂材料は、既述の第1の樹脂材料および第2の樹脂材料のほかに、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及び、帯電防止剤から選択される少なくとも1つを含有することができる。樹脂材料がこれらの成分を含有することにより、タイヤに種々の機能性をもたせることができる。例えば、樹脂材料が老化防止剤を含有することで、酸化劣化等の老化が抑制される。また、樹脂材料が難燃剤を含有することで、急なブレーキ等によりタイヤに過度の摩擦が生じた場合にも、燃焼しにくいタイヤとすることができる。さらには、樹脂材料が帯電防止剤を含有することにより、静電気等がタイヤに帯電することを防止することができる。
樹脂材料は、タイヤ骨格体の弾性率を調整するために、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料のほかに、可塑剤を含有していてもよい。また、第1の樹脂材料が可塑剤を含有していてもよいし、第2の樹脂材料が可塑剤を含有していてもよい。
なお、第1の樹脂材料は、含有する樹脂の種類に関わらず、可塑剤を含有していてもよく、例えば、熱可塑性樹脂および可塑剤を含有する樹脂材料としてもよい。
樹脂材料は、タイヤ骨格体の弾性率を調整するために、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料のほかに、天然ゴム、合成ゴム等のゴムを含有していてもよい。また、第1の樹脂材料が天然ゴム、合成ゴム等のゴムを含有していてもよいし、第2の樹脂材料が天然ゴム、合成ゴム等のゴムを含有していてもよい。
本明細書では、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料である熱可塑性エラストマーと、ゴムとは区別される。
中でも、各脂材料の柔軟性を制御し易いとの観点から、BR、SBR、NBR、NIR、及びNBIRが好ましく、BR、SBR、IR及びNBRがより好ましい。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤などが用いられる。
加硫促進剤としては、公知の加硫促進剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが挙げられ、また、これらはステアリン酸亜鉛のように塩の状態で配合されてもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
また、金属酸化物としては、亜鉛華(ZnO)、酸化鉄、酸化マグネシウムなどが挙げられ、中でも亜鉛華が好ましい。
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい
老化防止剤としては、アミン−ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
樹脂材料は、タイヤに種々の機能性を付与するために、第1の樹脂材料および第2の樹脂材料のほかに、各種機能性成分を含有していてもよい。また、第1の樹脂材料が各種機能性成分を含有していてもよいし、第2の樹脂材料が各種機能性成分を含有していてもよい。
樹脂材料が老化防止剤を含有することで、酸化劣化等の老化が抑制される。
老化防止剤としては、既述のゴムの加硫に用い得る老化防止剤のほか、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、オクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPN)、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン誘導体、ジアリル−p−フェニレンジアミン混合物、アルキル化フェニレンジアミン、4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイロキシ−2−ヒドロプロピル)−p−フェニレンジアミン、ジアリルフェニレンジアミン混合物、ジアリル−p−フェニレンジアミン混合物、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン誘導体などのアミン系老化防止剤、2−メルカプトベンゾイミダゾール(MBI)などのイミダゾール系老化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピネート]などのフェノール系老化防止剤、ニッケルジエチル−ジチオカーバメイトなどのリン酸塩系老化防止剤、トリフェニルホスファイトなどの2次老化防止剤、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
樹脂材料が紫外線吸収剤を含有することで、タイヤが直射日光に曝される環境下においても、紫外線照射による劣化が抑制される。
紫外線吸収剤としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−2−シアノ−3,3‘−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、モノグリコールサリチレート、オキザリック酸アミド、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。また、光安定剤を用いてもよい。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
樹脂材料が難燃剤を含有することで、急なブレーキ等によりタイヤに過度の摩擦が生じ、発火した場合にも、燃焼しにくいタイヤとすることができる。
難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ポリフォスフェート、ホスフェート型ポリオール、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモン、リン酸アンモン、ポリリン酸アンモン、リン酸グアニジン、パークロロシクロデカン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩素化パラフィン、塩化ポリエチレン、パークロロシクロデカン、ホウ素系化合物、ジルコニウム系化合物などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂材料が帯電防止剤を含有することにより、静電気等がタイヤに帯電することを防止することができる。
帯電防止剤としては、例えば、無機系の帯電防止剤、有機系の帯電防止剤等が挙げられる。
具体的には、無機系の帯電防止剤として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
また、有機系の帯電防止剤の中でも、アニオン系帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、ポリアクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリマレイン酸塩等が挙げられる。
カチオン系帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの各種4級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性系帯電防止剤としては、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、タイヤ骨格を構成する樹脂材料(第1の樹脂材料で構成される海相と、前記海相よりも硬く、第2の樹脂材料で構成される島相を含む海島構造を有する樹脂材料)の好ましい物性について説明する。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体の融点(または軟化点)としては、通常100℃〜350℃、好ましくは100℃〜250℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から120℃℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜200℃が更に好ましい。
このように、融点が120℃〜250℃の樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、本発明のタイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する樹脂材料の融点(または軟化点)よりも10℃〜150℃高い温度が好ましく、10℃〜100℃高い温度が更に好ましい。
既述のように、通常、海相を構成する第1の樹脂材料の質量(M1)と、島相を構成する第2の樹脂材料の質量(M2)との比(M1/M2)が1を超えることで、第1の樹脂材料を海相とし、第2の樹脂材料を島相とする海島構造を形成する。従って、樹脂材料が海島構造を有するように、海相を構成する第1の樹脂材料の質量(M1)と、島相を構成する第2の樹脂材料の質量(M2)との比(M1/M2)が1を超えるように、第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とを混合することが好ましい。
溶融混合して得られた樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1Bは、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する樹脂材料の融点(または軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧して。タイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化した樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを海相、高密度ポリエチレン樹脂を島相として含む海島構造の樹脂材料によって形成されているため、弾性率が適度に高く、高温下でも軟化しにくい。このため、タイヤ10は、優れた耐熱性を有する。また、タイヤ10は従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ10は、耐摩擦性および耐久性が高い。
更に、補強コード26がスチールコードの場合に、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によって樹脂材料から容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は加硫ゴムに比して損失係数(tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂材料は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法およびタイヤの第2実施形態について説明する。本実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。図4Aは、第2実施形態のタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面図であり、図4Bは第2実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ幅方向に沿った断面の拡大図である。また、図5は、第2実施形態のタイヤの補強層の周囲を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
次に本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
まず、上述の第1実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂材料27(本実施形態ではタイヤケースと同じ樹脂材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。
次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤、ゴム系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。
本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを海相、高密度ポリエチレン樹脂を島相として含む海島構造の樹脂材料によって形成されているため、弾性率が適度に高い。このため、タイヤ200は、適切な乗り心地を有する。また、タイヤ200は従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ200は、耐摩擦性および耐久性が高い。
更に、補強コード26Aがスチールコードの場合に、タイヤ処分時に被覆コード部材26Bからコード部材26Aを加熱によって容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ200のリサイクル性の点で有利である。また、樹脂材料は加硫ゴムに比して損失係数(tanδ)が低いため、補強コード層28が樹脂材料を多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、樹脂材料は加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融または軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融または軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融または軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を樹脂材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融または軟化状態としつつ、被覆用樹脂材料27を加熱し溶融または軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17および被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融または軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料、および被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27をともに樹脂材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。
また、さらに粗化処理を行ったタイヤケース17の外周面17Sにコロナ処理やプラズマ処理等を用い、外周面17Sの表面を活性化し、親水性を高めた後に接着剤を塗布してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
まず、上述の第1実施形態に従って、実施例および比較例のタイヤを成形した。この際、タイヤケースを形成する材料については下記表1に記載の材料を用いた。また、各実施例および比較例について、材料の物性評価およびタイヤ性能の評価を下記に従っておこなった。
下記表1に示す第1の樹脂材料および第2の樹脂材料を混合し、東洋精機製作所「LABOPLASTOMILL 50MR」2軸押出し機により樹脂材料を混練(混合温度180〜200℃)し、ペレットを得た。
なお、比較例1および2においては、混合せず、単一樹脂のペレットを用意した。
作製したペレットを用いて、住友重工社製、SE30Dを用い、射出成形を行い、成形温度200℃〜235℃、金型温度50℃〜70℃とし、30mm×127mm、厚さ2.0mmの金型を用いて、試験片を得た。
各試験片を打ち抜き、JISK6251:1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
結果を下記表1に示す。
作製したペレットを用いて、住友重工社製、SE30Dを用い、射出成形を行い、成形温度200℃〜235℃、金型温度50℃〜70℃とし、30mm×127mm、厚さ2.0mmの金型を用いて、試験片を得た。
得られた試験片について、G’(50℃)/G’(0℃)の指数を算出した。具体的には次のとおりである。
レオメトリックス(株)製の動的粘弾性測定機「ARESIII」を用いて、周波数:10HZ、動的歪:1%の条件の下、各試験片について、50℃における貯蔵剪断弾性率G’(50℃)および0℃における貯蔵剪断弾性率G’(0℃)を測定して、各ペレットにおけるG’(50℃)/G’(0℃)を算出した。
次いで、比較例1におけるG’(50℃)/G’(0℃)に対する各ペレットにおけるG’(50℃)/G’(0℃)の大きさを「G’(50℃)/G’(0℃)の指数」として表1に示した。「G’(50℃)/G’(0℃)の指数」が1よりも小さいことは、耐熱性に優れることを意味する。
表1に記載の樹脂材料を用いて、上述の第1の実施形態と同様にしてタイヤを形成した。リムに組み、タイヤに規定圧力の3倍の圧力を入れ、80℃にて1ヶ月保管し、寸法を計測した。2mm以上変形したものを変形ありとした。下記評価基準に基づき、耐熱性を評価した。
−評価基準−
A:リム組みができ、形状保持ができたもの
B:リム組みができるが、エアーシールができなかったものもしくは変形が生じたもの
C:リムに組むことができなかったもの
なお、第2の樹脂材料で構成される島相が第1の樹脂材料で構成される海相中に分散していること、または、第1の樹脂材料もしくは第2の樹脂材料の単一相となっていることは、SEM(走査型電子顕微鏡、scanning electron microscope)を用いた写真観察から確認した。
・第1の樹脂材料
ダイセル・エボニック社製、ベスタミド「E55−K1W2」
〔ポリアミド系熱可塑性エラストマー、引張弾性率201MPa〕
・第2の樹脂材料
東ソー社製、ニポロンハードZ
〔高密度ポリエチレン樹脂、引張弾性率1010MPa〕
旭化成ケミカルズ社製、ザイロン「200H」
〔ポリフェニレンエーテル、引張弾性率1000MPaを超える〕
このことは、実施例に示す試験片と同じ樹脂材料を用いて形成されたタイヤケースを用いて製造されたタイヤは、耐熱性に優れることを示す。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (6)
- 樹脂を含む材料で形成される環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、
前記樹脂材料が、第1の樹脂材料で構成される海相と、前記海相よりも硬く、第2の樹脂材料で構成される島相を含む海島構造を有し、
前記第1の樹脂材料の引張弾性率γ1(JIS K7113:1995に規定され、引張速度200mm/minの条件で測定される引張弾性率)および前記材料中の前記第1の樹脂材料の含有量W1、並びに、前記第2の樹脂材料の引張弾性率γ2(JIS K7113:1995に規定され、引張速度200mm/minの条件で測定される引張弾性率)および前記材料中の前記第2の樹脂材料の含有量W2、が下記式(1)を満たし、
前記第1の樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂を含み、前記第1の熱可塑性樹脂がポリアミド系熱可塑性エラストマーであり、前記第2の樹脂材料がポリエチレン樹脂またはポリフェニレンエーテルであるタイヤ。
0.25≦〔(γ1×W1)/(γ2×W2)〕≦2 式(1) - 前記第1の樹脂材料は、第1の熱硬化性樹脂および可塑剤を含む請求項1に記載のタイヤ。
- 前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の樹脂材料との量比が、質量基準で、前記第1の熱可塑性樹脂:前記第2の樹脂材料=60:40〜90:10である請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
- 前記樹脂材料が、老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及び、帯電防止剤から選択される少なくとも1つを含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記第2の樹脂材料の引張弾性率が1000MPa以上である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体の外周部に周方向へ巻回されてなる補強コードを有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
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