JP4008537B2 - 加硫ゴムの製造方法、及びトレッドの製造方法 - Google Patents

加硫ゴムの製造方法、及びトレッドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用初期から優れた前記氷上性能を発揮し得るタイヤ、発泡率に富む表面層を有し、該タイヤのトレッド等に好適なトレッド及び加硫ゴムの効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)を向上させるため、特にタイヤのトレッドについての研究が盛んに行われてきている。
前記氷雪路面においては、該氷雪路面と前記タイヤとの摩擦熱等により水膜が発生し易く、該水膜が、タイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させる原因になっている。このため、前記タイヤのトレッドの水膜除去能やエッヂ効果が、前記氷上性能に大きく影響する。したがって、タイヤにおける前記氷上性能を向上させるためには、前記トレッドの水膜除去能やエッヂ効果を改良することが必要である。
【0003】
近時、前記トレッドの水膜除去能やエッヂ効果を改良する手段として、該トレッドに発泡ゴムを用いることが提案されている。例えば、特許第2568502号には、前記トレッドに発泡ゴムを用い、該発泡ゴム中の気泡による微細な凹凸により、前記水膜除去能やエッヂ効果を改良する技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、この場合、前記発泡ゴムの製造時においては該発泡ゴムの内部よりも表面の方が加硫進行が速いため、発泡により生じたガスは、相対的に粘度が低くなっている該発泡ゴムの内部側に多く移動する結果、該発泡ゴムの表面には、通常、未発泡の乃至は発泡率の極めて低いスキン層が形成されてしまう。このため、該発泡ゴムをトレッドに用いても、摩耗により前記スキン層が消失するまでは、該トレッドの前記水膜除去能やエッヂ効果は十分に発揮されないという問題がある。即ち、前記トレッドに発泡ゴムを単に用いても、該トレッドの使用初期における前記氷上性能が十分でないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、使用初期から、氷雪路面上に生じた水膜の除去能力に優れ、該氷雪路面との間の摩擦係数が大きく、氷上性能、特にブレーキ性能に優れるタイヤのトレッド等に好適なトレッド及び加硫ゴムを効率よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有するゴム組成物の表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機繊維を付着させた後、加硫することを特徴とする加硫ゴムの製造方法である。
<2> 有機繊維が結晶性高分子を含んでなり、その融点が加硫最高温度よりも低い前記<1>に記載の加硫ゴムの製造方法である。
<3> 有機繊維が短繊維である前記<1>又は<2>に記載の加硫ゴムの製造方法である。
<4> 有機繊維が長繊維である前記<1>又は<2>に記載の加硫ゴムの製造方法である。
【0008】
<5> ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有する未加硫のトレッドの表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機短繊維をタイヤの周方向に配向させた状態で付着させた後、モールド加硫することを特徴とするトレッドの製造方法である。
<6> ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有する未加硫のトレッドの表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機長繊維をタイヤの周方向に対して0〜30°の角度で巻き付けた後、モールド加硫することを特徴とするトレッドの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の加硫ゴムの製造方法、トレッドの製造方法について以下に詳細に説明する。
【0012】
(加硫ゴムの製造方法、及び、トレッドの製造方法)
本発明の加硫ゴムの製造方法においては、ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有するゴム組成物の表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機繊維を付着させた後、加硫を行う。
【0013】
本発明のトレッドの製造方法は、前記本発明の加硫ゴムの製造方法における、前記樹脂が有機短繊維であり、該有機短繊維をタイヤの周方向に配向させた状態で前記ゴム組成物の表面に付着させ、かつモールド加硫を行い、得られる加硫ゴムがトレッドである点で、又は、前記樹脂が有機長繊維であり、該有機長繊維をタイヤの周方向に対して0〜30°の角度で巻き付け、かつモールド加硫を行い、得られる加硫ゴムがトレッドである点で、前記本発明の加硫ゴムの製造方法と相違する。
【0014】
本発明のトレッドの製造方法は、上記相違点を除けば、前記本発明の加硫ゴムの製造方法と同様の内容、作用乃至効果を示すので、以下の説明において「ゴム組成物」を「未加硫のトレッド」と、「加硫ゴム」を「トレッド」とみなして把握することができ、更に前記本発明の加硫ゴムの製造方法との上記相違点については以下に説明を補充したので、該相違点を考慮して把握することができる。
【0015】
−−有機繊維−−
前記有機繊維としては、前記ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有していること、換言すれば、ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に前記有機繊維の粘度が該ゴム組成物の粘度(ただし、該ゴム組成物中に前記有機繊維を添加する場には、該有機繊維を除く成分からなるゴムマトリックスの粘度)よりも低くなる熱特性を有していることが特に好ましい。
【0016】
前記加硫最高温度とは、前記ゴム組成物の加硫時における該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、該ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。前記加硫最高温度は、例えば、前記ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。
【0017】
なお、前記ゴム組成物の粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定することができる。前記有機繊維の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定することができる。
【0018】
前記有機繊維の素材としては、前記熱特性を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記熱特性を有する有機繊維としては、例えば、その融点が前記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子からなる繊維などが好適に挙げられる。
【0019】
該結晶性高分子からなる有機繊維を例に説明すると、該有機繊維の融点と、前記ゴム組成物の前記加硫最高温度との差が大きくなる程、該ゴム組成物の加硫中に速やかに該有機繊維が溶融するため、該有機繊維の粘度が前記ゴム組成物の粘度よりも低くなる時期が早くなる。このため、該有機繊維が溶融すると、該ゴム組成物中に含まれる発泡剤から発生したガスは、前記ゴム組成物よりも低粘度である該有機繊維の内部に移動し、滞留する。
【0020】
その結果、前記ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムの表面には、該有機繊維の素材により被覆されたカプセル状の長尺状気泡が、潰れのない状態でかつ高い割合で存在する発泡層が形成され、未発泡の乃至は発泡率の極めて低いスキン層は存在していない。前記発泡層におけるカプセル状の長尺状気泡は、前記ミクロな排水溝として機能し得るため、該加硫ゴムは、使用初期における前記氷上性能に優れる。
【0021】
一方、前記有機繊維の融点が、前記ゴム組成物の前記加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速やかに該有機繊維が溶融せず、加硫終期に該有機繊維が溶融する。加硫終期では、該ゴム組成物に含まれる前記発泡剤から発生したガスの一部が加硫ゴム中に取り込まれており、溶融した該有機繊維の内部に移動・滞留しない。その結果、該加硫ゴムの表面の気泡体積を大きくすることができず、該加硫ゴムの表面の発泡率を上げられないことがある。
【0022】
前記有機繊維の融点の上限としては、特に制限はないものの、以上の点を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、前記ゴム組成物の前記加硫最高温度よりも、10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃に設定されている場合には、前記有機繊維の融点としては、通常190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0023】
なお、前記有機繊維の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を前記融点とすることができる。
【0024】
前記有機繊維は、結晶性高分子から形成されていてもよいし、非結晶性高分子から形成されていてもよいし、結晶性高分子と非結晶性高分子とから形成されていてもよいが、本発明においては、相転移があるために粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御が容易な点で結晶性高分子を含む有機素材から形成されているのが好ましく、結晶性高分子のみから形成されるのがより好ましい。
前記好ましい場合乃至より好ましい場合、前記加硫ゴムの表面の発泡率を容易に高めることができる点で有利である。
【0025】
前記結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらに添加剤を加えたものも使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
【0026】
前記非結晶性高分子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記有機繊維には、本発明の目的を害しない範囲において、必要に応じて公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0028】
前記有機繊維の素材の分子量としては、該素材の化学組成、分子鎖の分岐の状態等によって異なり一概に規定することはできないが、一般に、該有機繊維は、同じ素材で形成されていてもその分子量が高い程、ある一定の温度における粘度(溶融粘度)は高くなる。本発明においては、前記有機繊維における素材の分子量は、前記ゴム組成物の加硫最高温度における粘度(流動粘度)よりも該有機繊維の粘度(溶融粘度)が高くならないような範囲で選択するのが好ましい。
【0029】
なお、一試験例では、前記有機繊維が、1〜2×105 程度の重量平均分子量のポリエチレンの場合の方が、7×105 以上の重量平均分子量のポリエチレンの場合よりも、前記ゴム組成物の加硫後において、該ゴム組成物中に含まれる発泡剤から発生したガスが、該有機繊維の内部に多量に取り込まれていた。この相違は、該有機繊維の素材であるポリエチレンの分子量の違いに起因する粘度(溶融粘度)の差に基づくものと推測される。
【0030】
前記有機繊維の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タイヤのトレッドを製造する場合には短繊維及び長繊維の少なくともいずれかを用いるのが特に好ましい。前記短繊維及び長繊維は、いずれかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
【0031】
前記有機繊維のデニールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加硫ゴム乃至トレッドの前記氷上性能を向上させる観点からは、0.1〜1000デニールが好ましく、2〜800がより好ましい。
前記デニールが、0.1未満であると、形成される長尺状気泡の径が小さくなり、前記氷上性能が十分に向上しないことがあり、、1000を越えると、形成される気泡が大きくなり過ぎ、該長尺状気泡の平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が小さくなり、前記氷上性能が十分に向上しないことがある。
【0032】
前記有機繊維が短繊維の場合、該短繊維の平均長さ(L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加硫ゴム乃至トレッドの前記氷上性能を向上させる観点からは、1〜20mmが好ましく、2〜15mmがより好ましい。
また、本発明においては、前記平均長さ(L)として、前記数値範囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例で採用した前記平均長さ(L)の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例で採用した前記平均長さ(L)の値を上限とする数値範囲も好ましい。
前記平均長さ(L)が1mm未満であると、前記氷上性能が十分に向上しないことがあり、20mmを越えると、該短繊維の配向を揃えるのが困難になることがある。
【0033】
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を付着乃至巻き付ける場合、該有機繊維の付着量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該加硫ゴムの表面部と内部とにおける発泡率が同程度以上となるような量が好ましい。
【0034】
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を付着させる場合、該有機繊維の配向としては、特に制限はないが、例えばタイヤのトレッドを製造する場合には、該有機繊維を該トレッドにおける接触面と平行な方向、特にタイヤの周方向に配向させるのが好ましい。このように前記有機繊維を配向させておくと、該タイヤの使用初期における前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0035】
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を巻き付ける場合、該有機繊維の巻き付け角度としては、特に制限はないが、例えばタイヤのトレッドを製造する場合、該タイヤの走行方向の排水性、前記氷上性能の向上等の観点からは、タイヤの周方向に対して0〜30°の角度が好ましく、0.5〜25°の角度がより好ましく、1〜20°の角度が特に好ましい。
また、本発明においては、前記巻き付け角度として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該巻き付け角度を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該巻き付け角度の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0036】
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を付着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴムを溶解させた溶液中に前記有機繊維を分散させてなるゴム成分溶解液を、カーテン塗布、刷毛等を用いた塗布等の公知の塗布方法に従って前記ゴム組成物の表面に塗布し乾燥する方法、該ゴム成分溶解液中に前記ゴム組成物を浸漬乃至通過させ、これを真上に引き上げて重力により該ゴム成分溶解液が下方に流れることを利用し、前記有機繊維を配向させた後で一定時間乾燥させる方法、などが挙げられる。これらの中でも後者の場合は、前記有機繊維の配向の制御が容易な点で有利である。これらの方法は単独で採用してもよいし、2以上を併用してもよい。
【0037】
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を巻き付ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、機械による巻き付け、専用治具等を用いた手作業による巻き付け、などが挙げられる。
前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を巻き付ける場合、該有機繊維同士が互いに重ならず等間隔に巻き付けられるのが好ましい。この場合、安定した前記氷上性能を発揮し得る点で有利である。
【0038】
前記有機繊維は、その1本を螺旋状に前記ゴム組成物の表面に巻き付けてもよいし、その複数本を予め引き揃えた状態で前記ゴム組成物の表面に巻き付けてもよい。後者の場合は、生産性の点で有利である。なお、後者の例として、例えばタイヤ乃至トレッドを製造する場合においては、該タイヤの幅の分だけ前記有機繊維を予め引き揃えておき、これを該タイヤの表面に少なくとも1周巻き付ける場合などが挙げられる。
【0039】
なお、前記付着や前記巻き付けは、通常、前記ゴム組成物を成形した未加硫品に対して行われ、前記タイヤのトレッドを製造する場合には、未加硫のトレッドに対して行われる。
【0040】
−−ゴム組成物−−
前記ゴム組成物は、少なくとも加硫後に発泡ゴムを得ることができる組成を有していればよく、具体的には、ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有し、更に発泡助剤等のその他の成分を含有する。本発明においては、前記その他の成分として前記有機繊維を含有するのも好ましい。
【0041】
−ゴム成分−
前記ゴム成分は、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなる。
【0042】
前記ジエン系合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)などが挙げられる。これらのジエン系合成ゴムの中でも、ガラス転移温度が低く、氷上性能の効果が大きい点で、シス−1,4−ポリブタジエンが好ましく、シス含有率が90%以上のものが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
なお、本発明の加硫ゴムをトレッド等に用いる場合、前記ゴム成分としては、−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
【0044】
−発泡剤−
前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルフォニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0045】
これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発泡剤の作用により、得られた前記加硫ゴムは発泡率に富む発泡ゴムとなる。
【0046】
前記発泡剤の前記ゴム組成物における含有量としては、加硫ゴム乃至トレッド等に含まれる各成分の種類や量、また所望する発泡率等により異なり、一概に規定することはできず、目的に応じて適宜決定すればよいが、一般には前記ゴム成分100重量部に対して1〜10重量部程度が好ましい。
【0047】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない範囲で用いることができ、例えば、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、加硫助剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の老化防止剤、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、カーボンブラックやシリカ等の無機充填材等の他、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などを目的に応じて適宜選択して使用することができる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0048】
本発明においては、効率的な発泡を行う観点から、前記その他の成分として発泡助剤を用い、前記発泡剤と併用するのが好ましい。
前記発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に用る助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、本発明においては、前記加硫ゴム乃至トレッドの摩耗後における氷上での排水性を向上させる観点から、前記その他の成分として上述の有機繊維(好ましくは短繊維)を用いるのが好ましい。この場合、該加硫ゴム乃至トレッドの表面から内部に至るまで連続的に長尺状気泡を形成することができ、該加硫ゴム乃至トレッドの使用初期から継続して良好な前記氷上性能を維持できる点で好ましい。
【0050】
なお、この場合、前記有機繊維の配向を、該加硫ゴムの接触面に平行な方向、特にトレッドを製造する場合にはタイヤの周方向に配向させるのが好ましい。このように前記有機繊維を配向させておくと、該加硫ゴム乃至トレッドの前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0051】
この場合、前記表面に付着させる有機繊維以外のゴム配合有機繊維の前記ゴム組成物における含有量としては、該有機繊維の種類にもよるが、ゴム成分100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。
前記含有量が、0.5重量部未満であると、前記有機繊維中に取り込まれるガスの量が少なく、前記氷上性能の向上が十分でないことがあり、30重量部を越えると、前記有機繊維の前記ゴム組成物中での分散性が悪化する、前記ゴム組成物の押出時の作業性が悪化する、得られる加硫ゴム乃至トレッドにクラック等が発生する、等の不都合が生ずることがある。
【0052】
−ゴム組成物の調製−
前記ゴム組成物は、以上の各成分を適宜選択した条件、手法にて混練り、熱入れ、押出等することにより調製される。
【0053】
前記混練りは、混練り装置への投入体積、ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時間、混練り装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記混練り装置としては、市販品を好適に使用することができる。
【0054】
前記熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用することができる。
ただし、熱入れ又は押出温度は、前記発泡剤が発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。なお、前記押出温度は、一般的には90〜110℃程度である。
【0055】
前記ゴム組成物中に前記有機繊維を配合した場合、前記押出等により該有機繊維は押出方向に配向するが、この配向を効果的に行うには、限られた温度範囲の中で前記ゴム組成物の流動性を制御すればよく、具体的には、前記ゴム組成物中に、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を適宜添加して該ゴム組成物の粘度を低下させ、その流動性を高めることが好ましい。
この場合、前記押出を良好に行うことができ、かつ理想的に前記有機繊維を押出方向に配向させることができる。
【0056】
前記有機繊維を押出方向に配向させた状態で含む未加硫のトレッドを加硫してトレッドを製造する場合、該有機繊維を、該トレッドにおける接地面に平行な方向に配向させるのが好ましく、タイヤの周方向に配向させるのがより好ましい。これらの場合、該タイヤの走行方向の排水性を高めることができ、前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0057】
前記有機繊維の配向を揃える方法としては、例えば、図1に示すように、有機繊維15を含むゴム組成物16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出すことにより、該有機繊維15を一定の方向に配向させればよい。
なお、この場合、押し出される前のゴム組成物16中の有機繊維15は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印A方向)に沿って除々に揃うようになり、口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印A方向)にほぼ完全に配向させることができる。この場合における有機繊維15のゴム組成物16中での配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴム組成物16の粘度等によって変化する。
【0058】
−ゴム組成物の加硫−
本発明においては、前記ゴム組成物の表面に前記有機繊維を付着乃至巻き付けた後、これを加硫する。
【0059】
前記加硫の条件乃至方法等については、特に制限はなく、前記ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができるが、前記トレッドを製造する場合にはモールド加硫が特に好ましい。
前記加硫の温度としては、一般に前記加硫中の前記ゴム組成物の加硫最高温度が前記有機繊維の融点以上になるように選択される。前記加硫最高温度が前記有機繊維の融点未満であると、前記有機繊維が溶融せず、発泡により生じたガスを該有機繊維中に保持させることができず、加硫ゴムの表面に長尺状気泡を効率良く形成することができない。
なお、前記加硫を行う装置としては、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。
【0060】
前記加硫の前の前記ゴム組成物においては、該ゴム組成物よりも前記有機繊維の方が粘度が高い。該ゴム組成物の加硫開始後であって該ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に、該ゴム組成物は加硫によりその粘度が上昇していき、前記有機繊維は溶融して粘度が大幅に低下していく。そして、加硫途中において、前記ゴム組成物よりも該有機繊維の方が粘度が低くなる。即ち、加硫前の前記ゴム組成物と該有機繊維との間における粘度の関係が、加硫途中の段階で逆転する現象が生ずる。
【0061】
この間、前記ゴム組成物中の前記発泡剤が発泡反応を起こし、ガスを生ずる。このガスは、加硫反応が進行して粘度が高くなっていく前記ゴム組成物に比べ、溶融して相対的に粘度が低下した前記有機樹脂の内部に移動し、滞留する。その結果、該ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムの表面においては、前記有機繊維が存在していた場所に長尺状気泡が高い割合で存在し、発泡率に富む発泡層が形成されている。前記発泡層における長尺状気泡は、その周囲(壁)が前記有機繊維の素材によって被覆され、カプセル状になっている。
なお、前記有機繊維の素材をポリエチレン、ポリプロピレン等とした場合、前記加硫ゴムと該有機繊維の素材とは強固に接着しているが、該接着の力が十分でない場合には、該接着力を向上させる成分を添加させることができる。
【0062】
本発明の加硫ゴム乃至トレッドにおいては、長尺状気泡が多く存在し、発泡率に富む発泡層が表面に形成されており、未発泡の乃至は発泡率の極めて低いスキン層は表面に存在していない。
【0063】
本発明の加硫ゴム乃至トレッドにおいては、前記発泡層における長尺状気泡による凹部が、効率的な排水を行う排水路として機能する。なお、該凹部の表面は前記保護層で形成されているため、該凹部は、耐剥離性、水路形状保持性、水路エッジ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性等に優れる。このため、本発明の加硫ゴム乃至トレッドにおいては、使用初期から前記凹部による諸機能が発揮され、使用初期から前記氷上性能に優れる。
なお、前記保護層の厚みとしては、0.5〜50μmが好ましい。
【0064】
本発明の加硫ゴム乃至トレッドにおいては、平均発泡率Vsが、3〜40%であるのが好ましく、5〜35%であるのがより好ましい。
また、本発明においては、前記平均発泡率Vsとして、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を上限とする数値範囲も好ましい。
なお、前記平均発泡率Vsは、前記発泡剤の種類、量、併用する前記発泡助剤の種類、量、樹脂の配合量等により適宜変化させることができる。
【0065】
前記平均発泡率Vsは、前記加硫ゴムにおける全発泡率を意味し、次式により算出できる。
Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)
ここで、ρ1 は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm3 )を表す。ρ0 は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3 )を表す。
なお、前記加硫ゴム(発泡ゴム)の密度及び前記加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の重量と空気中の重量を測定し、これから算出した。
【0066】
前記平均発泡率Vsが、3%未満であると、前記加硫ゴムにおける前記凹部の体積が絶対的に不足し、前記氷上性能を十分に向上させることができないことがあり、一方、40%を越えると、前記加硫ゴムにおける前記氷上性能は十分であるものの、該加硫ゴムにおける気泡が多くなり過ぎて破壊限界が大幅に低下し、耐久性の点で好ましくない。
【0067】
本発明においては、前記長尺状気泡の平均径Dは、10〜500μm程度であるのが好ましい。
前記平均径Dが、10μm未満であると、該加硫ゴムの水排除性能が低下することがあり、500μmを越えると、該加硫ゴムの耐カット性、ブロック欠けが悪化し、また、乾燥路面での耐摩耗性が悪化することがある。
【0068】
また、本発明においては、前記長尺状気泡の1個当たりの平均長さLと、前記平均径Dとの比(L/D)としては、3以上が好ましい。
前記比(L/D)が3以上であると、加硫ゴムの表面に現れる溝としての長尺状気泡の長さを長くすることができ、また容積を大きくすることができるため、該加硫ゴムの水排除性能を向上させることができる。
【0069】
本発明の加硫ゴムは、各種分野において好適に使用することができるが、氷雪路面上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適に使用でき、タイヤのトレッドとして特に好適に使用することができる。
前記氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物としては、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ、氷雪路走行に用いるゴム製タイヤチェーンの接地部分、雪上車のクローラー、靴底等が挙げられる。
【0070】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、少なくともトレッドを有してなり、少なくとも該トレッドが前記本発明の加硫ゴム又はトレッドを含む限り、他の構成としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。即ち、前記本発明の加硫ゴム又はトレッドを、前記トレッドとして用いたタイヤが本発明のタイヤである。
【0071】
本発明のタイヤの一例を図面を用いて説明すると以下の通りである。図2に示すように、本発明のタイヤ4は、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
【0072】
トレッド5には、図3に示すように、複数本の周方向溝8及びこの周方向溝8と交差する複数本の横溝9とによって複数のブロック10が形成されている。また、ブロック10には、氷上でのブレーキ性能及びトラクション性能を向上させるために、タイヤの幅方向(B方向)に沿って延びるサイプ11が形成されている。
【0073】
トレッド5は、図4に示すように、直接路面に接地する上層のキャップ部6と、このキャップ部6のタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース部7とから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造を有する。
【0074】
キャップ部6は、図5に示すように発泡ゴムであり(ただし、ここでは、未加硫のトレッドに前記有機繊維(短繊維)をタイヤの周方向に配向させた状態で添加しておいたため、加硫ゴム6A中に長尺状気泡12を無数に含んでいる)、また、図4に示すように、その表面には長尺状気泡が多く存在する、有機繊維を付着させた表面発泡層20が形成されている。一方、ベース部7には通常のゴム(未発泡)が使用されている。
【0075】
タイヤ4は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、まず、前述の手法にて前記有機繊維を表面に付着乃至巻き付けたゴム組成物を調製し、これを、生タイヤケースのクラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベース部の上に、該有機繊維が表面に露出するようにして貼り付ける。そして、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、前記ゴム組成物(未加硫のトレッド)が加硫されてなる本発明の加硫ゴム(トレッド)で形成された、キャップ・ベース構造のトレッド5を有するタイヤ4が得られる。
【0076】
なお、このとき、未加硫のキャップ部6がモールド内で加熱されると、該キャップ部6内で発泡剤による発泡が生じ、ガスが生ずる。一方、該キャップ部6の表面に付着乃至巻き付けられた有機繊維は溶融(又は軟化)し、その粘度(溶融粘度)が該キャップ部6の粘度(流動粘度)よりも低下することにより、前記ガスは、溶融して相対的に粘度が低下した該有機繊維の内部に移動し、滞留する。その結果、図4に示すように、冷却後のキャップ部6の表面には、実質的にタイヤの周方向に配向した長尺状気泡が多数存在する、有機繊維を付着させた表面発泡層20が存在し、極めて発泡率に富む状態になっている。
【0077】
このタイヤ4においては、表面に前記スキン層が存在せず、長尺状気泡が多数存在し、発泡率に富む、有機繊維を付着させた表面発泡層20が初めから接地面に露出しているため、使用初期における前記氷上性能に特に優れる。
更に、タイヤ4のキャップ部6を前記有機繊維を配合してゴム組成物を用いて形成した場合には、該キャップ部6が、図5に示すように長尺状気泡12及び球状の気泡18を有し、該キャップ部6の表面に、長尺状気泡12による凹部13及び球状の気泡18による凹部19が露出しているため、前記有機繊維を付着させた表面発泡層20が摩耗により消失しても、該凹部13及び凹部19により引き続き高い前記氷上性能を維持することができる。
【0078】
本発明のタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用できる。
【0079】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1〜2及び比較例1)
表1に示す組成のゴム組成物を調製した。
実施例1において前記ゴム組成物の表面に付着させた有機繊維(短繊維:平均長さ(L)=2mm、平均径(D)=23μm)、及び実施例2において前記ゴム組成物の表面に巻き付けた有機繊維(長繊維:平均径(D)=23μm)は、ポリエチレン(HDPE、重量平均分子量(Mw)1.8×105 、Dupont社製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)=135℃)を溶融紡糸法により紡糸して得たものである。
【0081】
表1に示す各ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度は、該ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定したところ175℃であった。
前記有機繊維の融点は、前記ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度よりも低いため、前記ゴム組成物の加硫時において、該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、前記有機繊維の粘度は、前記ゴム組成物の粘度よりも低くなった。
【0082】
なお、前記有機繊維の前記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)したところ、6であった。一方、前記ゴム組成物の前記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、11であった。
【0083】
次に、前記ゴム組成物のみ(比較例1)、前記ゴム組成物を、前記有機繊維(短繊維)をトルエンに分散させたゴム溶解液中に浸漬し、これを上方へ引き上げ、重力により該ゴム溶解液が流れ落ちるのを利用して前記短繊維を前記ゴム組成物の表面に配向させたもの(実施例1)、前記ゴム組成物の表面に、前記有機繊維(長繊維)20本をタイヤの周方向に対して2°の角度で互いに重ならないようにかつ平行に、0.5mm間隔で螺旋状に巻き付けてたもの(実施例2)、をそれぞれ通常のタイヤ製造条件にてモールド加硫することによりタイヤを製造した。
【0084】
このタイヤは、乗用車用ラジアルタイヤであり、そのタイヤサイズは185/70R13であり、その構造は図2に示す通りである。即ち、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。
【0085】
このタイヤにおいて、カーカス2は、タイヤの周方向に対し90°の角度で配置され、コードの打ち込み数は、50本/5cmである。ベルト3は、1×5×0.23構造のスチールベルトコードにより構成されており、打ち込み角度は、タイヤの周方向に対し25°であり、打ち込み数は40本/5cmである。タイヤ4のトレッド5には、図3に示す通り、タイヤ幅方向に4個のブロック10が配列されている。ブロック10のサイズは、タイヤの周方向の寸法が35mmであり、タイヤの幅方向の寸法が30mmである。また、ブロック10に形成されているサイプ11は、幅が0.4mmであり、タイヤ周方向の間隔が約7mmになっている。
【0086】
得られた各タイヤについて以下の氷上性能を評価し、その結果を表1に示した。
<氷上性能>
各タイヤを国産1600CCクラスの乗用車に装着し、該乗用車を、一般アスファルト路上に50km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は、距離の逆数を比較例1のタイヤを100として指数表示した。なお、数値が大きいほど氷上性能が良いことを示す。
なお、トレッド5における発泡ゴムについての発泡率は、既述の計算式より算出(測定)した。
【0087】
【表1】
Figure 0004008537
【0088】
表1の結果から、以下のことが明らかである。即ち、ゴム組成物(未加硫のトレッド)の表面に有機繊維を付着乃至巻き付けてから、具体的には短繊維を付着(実施例1)あるいは長繊維を巻き付けて(実施例2)から、モールド加硫して得たトレッドを有するタイヤは、ゴム組成物(未加硫のトレッド)の表面に有機繊維を付着乃至巻き付けを行わずにモールド加硫して得たタイヤ(比較例1)に比べて、使用初期から氷上性能に優れることが明らかである。
換言すれば、本発明の加硫ゴムの製造方法又はトレッドの製造方法によると、得られる加硫ゴム又はトレッドの使用初期における氷上性能を顕著に向上させることができる。
【0089】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができる。
また、本発明によると、使用初期から、氷雪路面上に生じた水膜の除去能力に優れ、該氷雪路面との間の摩擦係数が大きく、氷上性能、特にブレーキ性能に優れるタイヤのトレッド等に好適なトレッド及び加硫ゴムを効率よく製造することができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、有機繊維の配向を揃える原理を説明する説明図である。
【図2】図2は、本発明のタイヤの一部断面概略説明図である。
【図3】図3は、本発明のタイヤの周面の一部概略説明図である。
【図4】図4は、本発明のタイヤのトレッドの一部断面概略説明図である。
【図5】図5は、図4におけるトレッドの断面概略説明図である。
【符号の説明】
1 一対のビード部
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
6A 加硫ゴム
7 ベース部
8 周方向溝
9 横溝
10 ブロック
11 サイプ
12 長尺状気泡
13 凹部
14 保護層
15 有機繊維
16 ゴム組成物
17 口金
18 球状の気泡
19 凹部
20 有機繊維を付着させた表面発泡層

Claims (6)

  1. ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有するゴム組成物の表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機繊維を付着させた後、加硫することを特徴とする加硫ゴムの製造方法。
  2. 有機繊維が結晶性高分子を含んでなり、その融点が加硫最高温度よりも低い請求項1に記載の加硫ゴムの製造方法。
  3. 有機繊維が短繊維である請求項1又は2に記載の加硫ゴムの製造方法。
  4. 有機繊維が長繊維である請求項1又は2に記載の加硫ゴムの製造方法。
  5. ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有する未加硫のトレッドの表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機短繊維をタイヤの周方向に配向させた状態で付着させた後、モールド加硫することを特徴とするトレッドの製造方法。
  6. ゴム成分と発泡剤とを少なくとも含有する未加硫のトレッドの表面に、該ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴム組成物よりも粘度が低くなる有機長繊維をタイヤの周方向に対して0〜30°の角度で巻き付けた後、モールド加硫することを特徴とするトレッドの製造方法。
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