JP5825670B2 - フェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤 - Google Patents

フェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤 Download PDF

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Description

本発明はフェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤等に関するものである。
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンタ、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとを現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像ローラに現像剤を供給し、現像ローラ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上に残留し、現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、磁気ブラシを形成する磁気特性と、所望の電荷をトナーに付与する帯電特性および繰り返し使用における耐久性が要求される。
そこで、マグネタイトや各種フェライト等の磁性粒子の表面を樹脂で被覆したキャリアが一般に用いられているが、これまで使用されてきたキャリアは見掛け密度(比重)が高かったため、現像剤の撹拌に要する動力が大きく、また、トナーの割れやトナー外添剤のトナー粒子内への埋没などのトナー劣化も生じやすかった。そこで、近年の画像形成装置の高速化とも相俟ってキャリアの低比重化が強く望まれていた。
例えば特許文献1では、粒子内に所定の大きさの空孔を形成してキャリアコア粒子の低比重化する技術が提案されている。
特開2008-310104号公報
しかしながら、前記提案のキャリアコア粒子では、粒子内に形成される空孔が大きく、画像形成速度の速い装置に用いた場合、キャリアコア粒子が割れや欠けが発生するおそれがある。また、空孔の体積が大きいため相対的に磁性相の体積が減少し、磁気ブラシの拘束力が低下することによりキャリア飛散などの画質異常が生じやすくなる。更に、粒子内の空孔が外部と繋がっている場合には、キャリアコア粒子を樹脂で被覆する際、被覆樹脂が粒子内に浸み込む量が多くなり経済性が悪くなる。また、キャリアコア粒子の製造工程において高抵抗化を目的として表面酸化処理をする場合、粒子内部まで酸化されてしまい磁気特性が低下する。
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子写真方式画像形成装置のキャリアとして用いた場合に、画像形成速度が速くなっても割れや欠けが生じることがなく、また回転トルクが大きくならず、さらに高抵抗・高磁力を有するフェライト粒子及びその製造方法を提供することにある。
前記目的を達成する本発明に係るフェライト粒子は、組成式MFe3−X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X≦1)で表され、内部に空孔を有するフェライト粒子であって、粒子断面積における空孔総面積率が5%以上20%未満で、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合が50%以上であり、粒径から算出される比表面積値に対する、実測したBET比表面積値の割合が7倍以下であることを特徴とする。
ここで、フェライト粒子の見掛け密度は2.0g/cm以下であるのが好ましい。
MがMnである場合、79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000は65(Am/kg)以上であるのが好ましい。
また、MがMg又はMnとMgである場合、79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000は53(Am/kg)以上であるのが好ましい。
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
さらに本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
そしてまた、本発明によれば、MFe3−X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素,0<X≦1)で表される組成のフェライト粒子が生成するようにFe成分原料とM成分原料とを成分調整すると共に、M成分原料の少なくとも1つとして平均粒径が5.0μm〜15μmの炭酸塩を用い、媒体液と混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物を得る工程とを有することを特徴とするフェライト粒子の製造方法が提供される。
ここで、炭酸塩の出発原料に対する添加量は1〜40wt%の範囲が好ましい。
また、フェライト粒子の電気抵抗を高める場合には、前記焼成物を酸化性雰囲気下で加熱して粒子表面に酸化被膜を形成する工程をさらに設けてもよい。
本発明に係るフェライト粒子は、組成式MFe3−X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X≦1)で表され、内部に空孔を有するので低比重化が図れ、撹拌する際の回転トルクを小さく抑えることができる。また、粒子断面積における空孔総面積率を5%以上で20%未満とし、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合を50%以上とした。これは、粒子内部に大きな空孔が1〜3個程度と比較的少ない個数で存在することを意味する。このような形態とすることにより、現像器内での攪拌中のストレスによりフェライト粒子内の空孔同士が連なってクラックが発生することを抑制できる。結果として撹拌速度等が速くなっても粒子の割れが効果的に抑制される。さらに、粒径から算出される比表面積値に対する、実測したBET比表面積値の割合を7倍以下とした。すなわち、粒子内の空孔の外気との繋がりを遮断したので、フェライト粒子を表面酸化処理した場合に粒子表面のみが酸化される。これによりフェライト粒子の磁力低下を抑制しながら電気抵抗を高めることができる。
また、本発明に係る電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤によれば、画像形成速度の高速化及び高画質化が図れる。
そしてまた、本発明に係る製造方法によれば、粒子内に所定の大きさの空孔を有する前記規定のフェライト粒子を効率的に製造できる。
実施例1のフェライト粒子の断面SEM写真である。 実施例2のフェライト粒子の断面SEM写真である。 実施例3のフェライト粒子の断面SEM写真である。 比較例1のフェライト粒子の断面SEM写真である。 実施例1〜5及び比較例1〜4のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフである。 実施例6〜10及び比較例5,6のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフである。
本発明に係るフェライト粒子の大きな特徴の一つは、フェライト粒子内部に形成された空孔の粒子断面積における総面積を5%以上20%未満とし、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合を50%以上としたことにある。フェライト粒子内に形成される空孔をこのような大きさとすることによって、粒子の見掛け密度を小さくしながら粒子強度の低下を抑えることができるようになる。また、最大空孔面積の空孔総面積に占める好ましい割合は60%以上である。
空孔の粒子断面積における総面積が5%未満であると、粒子強度は確保できるものの低比重化が図れない。一方、空孔の粒子断面積における総面積が20%以上であると、粒子強度が低下し粒子割れや欠けが生じる。同時に、粒子中の磁性相の体積が相対的に減少するため、一粒子あたりの磁化が減少し、キャリア付着・飛散などの画質異常を生じやすくなる。粒子断面積におけるより好ましい空孔総面積率は9%〜16%の範囲である。
粒子内の空孔を形成するには、後述するフェライト粒子の製造方法の焼成工程において、気体が発生する原料や発泡剤を用いればよい。そして、粒子断面積における空孔の総面積や最大空孔面積は、前記原料や発泡剤の配合量や粒径などを調整することにより制御すればよい。詳細は後述する。
また本発明に係るフェライト粒子のもう一つの大きな特徴は、粒径から算出される比表面積値Sに対する、実測したBET比表面積値Sの割合S/Sを7倍以下としたことにある。換言すると、フェライト粒子表面の細孔の開口部を封鎖し、粒子内部の空孔を外部から遮断したことにある。これにより、高抵抗化を目的としてフェライト粒子を表面酸化処理をした場合に、粒子内部は酸化されず磁力低下が抑制される。また、フェライト粒子を樹脂で被覆してキャリアとする際、被覆樹脂が粒子内に浸み込むのが抑えられ、被覆樹脂が必要以上に消費されるのが防止される。S/Sのより好ましい値は6倍以下である。
本発明のフェライト粒子をキャリアとして用いた場合に、より高画像濃度を得る観点からは、金属元素としてMnを使用するときには、79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000を65Am/kg以上とするのが好ましい。磁化σ1000が65Am/kg未満であると、例えば、キャリア飛散が頻繁に発生するおそれがある。また、金属元素としてMg、又はMnとMgを使用するときには、79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000を55Am/kg以上とするのが好ましい。磁化σ1000が55Am/kg未満であると、前記と同様に、キャリア飛散が頻繁に発生するおそれがある。
本発明のフェライト粒子の好ましい電気抵抗は、印加電圧1000Vにおいて1.0×10Ω・cm〜1.0×1010Ω・cmの範囲である。電気抵抗が1.0×10Ω・cm未満であると、電荷リークの発生するおそれがある一方、電気抵抗が1.0×1010Ω・cmを超えると、エッジ効果が大きくなり画像濃度の低下を招くおそれがある。フェライト粒子のより好ましい電気抵抗は、1.0×10Ω・cm〜1.0×10Ω・cmの範囲である。
本発明のフェライト粒子の見掛け密度(比重)としては、2.0g/cm以下であるのが好ましい。見掛け密度が2.0g/cmよりも高いと撹拌に要する動力を充分には軽減できない。より好ましい見掛け密度は1.8g/cm以下である。
本発明のフェライト粒子の粒径に特に限定はないが、平均粒径で数十μm〜数百μm程度が好ましい。また、本発明のフェライト粒子をキャリア芯材として用いる場合には、数十μm程度の粒径が好適であり、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
本発明のフェライト粒子は各種用途に用いることができ、例えば、電子写真現像用キャリアや電磁波吸収材、電磁波シールド材用材料粉末、ゴム、プラスチック用充填材・補強材、ペンキ、絵具・接着剤用艶消材、充填材、補強材等として用いることができる。これらの中でも特に電子写真現像用キャリアとして好適に用いられる。
本発明のフェライト粒子の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
まず、Fe成分原料とM成分原料、そして必要により添加剤とを秤量して分散媒中に投入し混合してスラリーを作製する。なお、MはMg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Ni等の2価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。Fe成分原料としては、Fe等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO、Mn等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)、MgCOが好適に使用できる。また、Ca成分原料としては、CaO、Ca(OH)、CaCO等から選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用される。
後述の焼成工程においてガスを発生させて粒子内に空孔を形成する場合には、M成分原料の少なくとも1つとして、MnCO、MgCO、CaCOなどの炭酸塩を用いればよい。この場合、使用する炭酸塩の混合量や粒径などを選択使用することにより、粒子内に形成される空孔の大きさ等を制御できる。本発明で規定する空孔を形成するには、粒径の大きい炭酸塩を用いるのが好ましく、その粒径としては5.0μm〜15μmの範囲が好適である。また、出発原料に対する炭酸塩の添加量は1〜40wt%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜20wt%の範囲である。
また、ポリエチレンやアクリル樹脂等の有機微粒子やシリコーンなどの無機微粒子を添加し、焼成時にガスを発生させて粒子内に空孔を形成してもよい。あるいはまた、アゾビスイソブチロニトリルなどの発泡剤を添加して粒子内に空孔を形成してもよい。
本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記Fe成分原料、M成分原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50〜90wt%の範囲が望ましい。また、Fe成分原料、M成分原料を分散媒に投入する前に、必要により、粉砕混合の処理をしておいてもよい。
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は50μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
次に、造粒物を800℃以上に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度が800℃以上であれば焼結は進み、生成したフェライト粒子の形状が維持される。焼成温度の好ましい上限値は1500℃である。焼成温度が1500℃以下であると、フェライト粒子同士の過剰焼結が起こらず、異形粒子の発生が抑制されるからである。したがって、焼成温度としては800〜1500℃の範囲が好ましい。
M成分原料の少なくとも1つとして炭酸塩を用いた場合、温度600℃付近で炭酸塩から炭酸ガスが発生し、粒子内部に空孔が形成される。このとき、粒子内部で発生した炭酸ガスが外部に抜け出るための細孔の開口が粒子表面に形成される。そして、温度がさらに上昇して焼成温度に達すると焼結反応が進み、結晶成長によって粒子表面の開口が封鎖され、粒子内部の空孔は外部と遮断される。
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。
その後、必要に応じて、分級後の粉末(焼成物)を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200〜800℃の範囲が好ましく、250〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間〜5時間の範囲が好ましい。
前述のように、このときフェライト粒子内部の空孔は外部から遮断されているので、粒子内部は酸化されず粒子表面のみが酸化される。これにより、粒子の電気抵抗が高められ且つ磁力低下が抑制される。
以上のようにして作製した本発明のフェライト粒子を、電子写真現像用キャリアとして用いる場合、フェライト粒子をそのまま電子写真現像用キャリアとして用いることもできるが、帯電性等の観点からは、フェライト粒子の表面を樹脂で被覆して用いるのが好ましい。
フェライト粒子の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
フェライト粒子の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をフェライト粒子に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001〜30wt%、特に0.001〜2wt%の範囲内にあるのがよい。
フェライト粒子への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で10〜200μmの範囲、特に10〜50μmの範囲が好ましい。
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1wt%〜15wt%の範囲が好ましい。トナー濃度が1wt%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15wt%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3〜10wt%の範囲である。
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm〜15μmの範囲が好ましく、7μm〜12μmの範囲がより好ましい。
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよ。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
Mnフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)7.0kgと、MnCO(平均粒径:5.0μm)0.4kgと、Mn(平均粒径:0.9μm)2.6kgとを純水3.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、粒径100μmを超える粗粒は篩網を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1100℃まで2時間かけて昇温し、その後1100℃で3時間保持し焼成を行った。このとき、電気炉内の酸素濃度は5000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを電気炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級した。そして、さらに大気雰囲気下において温度450℃で1時間高抵抗化処理を行い平均粒径34.7μmのフェライト粒子を得た。
得られたフェライト粒子の粒子断面における空孔の総面積率P、最大空孔の面積率P、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合P/P、粒径から算出される理論比表面積S、BET比表面積S、見掛け密度、磁気特性、電気抵抗を下記に示す方法でそれぞれ測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、図1に粒子断面のSEM写真を示す。
(粒子断面における空孔面積)
得られたフェライト粒子を熱硬化性樹脂中に分散させた後、加熱により樹脂を硬化させた。この硬化物の表面をクロスセクションポリッシャー(日本電子製)を用いて研磨した。研磨した粒子表面を走査電子顕微鏡(日本電子製)を用いて観察し、粒子の断面写真を撮影した。撮影した粒子断面写真を画像解析ソフト「Image-Pro」を使用して粒子部分と空隙部分に分離し、総面積に対する空隙部分の面積比を計測した。同様に、最も大きい空隙と総面積の比を計測した。
上記の空隙率を100粒子分測定し、その平均値をそれぞれ空孔の総面積率(P)、最大空孔の面積率(P)とした。
(粒径から算出される比表面積)
フェライト粒子の比重ρを、「ULTRA PYCNOMETER 1000」(Quantachrome社製)を用いて測定した。さらにフェライト粒子の粒度分布を、マイクロトラック(日機装製:「MICROTRAC HRA Model:9320−X100」)にて測定し、50%体積粒径:D50を測定した。
上記の測定結果より、フェライト粒子の表面積を下記式から近似的に算出した。
=((D50)×π)/((4/3)×π×(D50/2)×ρ)
(BET比表面積)
フェライト粉末のBET比表面積(S)は、「Macsorb(Model:1208)」(マウンテック社製)を用い、BET法により求めた。吸着ガスは窒素、キャリアガスはヘリウムを用いた。
(見掛け密度)
フェライト粒子の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000(Am/kg)及び保磁力Hcをそれぞれ測定した。
(電気抵抗)
表面を電解研磨した厚さ2mmの電極としての真鍮板2枚を、距離2mm離して対向するように配置した。電極間にフェライト粒子200mgを装入した後、それぞれの電極の背後に断面積240cmの磁石(表面磁束密度が1500ガウスのフェライト磁石)を配置して、電極間にフェライト粒子のブリッジを形成させた。そして、1000Vの直流電圧を電極間に印加し、フェライト粒子に流れる電流値を測定し、フェライト粒子の電気抵抗を算出した。
実施例2〜10,比較例1〜6
表1に示す出発原料及び配合量、焼成温度で実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、図2及び図3に実施例2及び実施例3のフェライト粒子の断面SEM写真を示す。さらに、図4に比較例1のフェライト粒子の断面SEM写真を示す。また、図5に、実施例1〜5及び比較例1〜4のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフを、図6に、実施例6〜10及び比較例5,6のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフをそれぞれ示す。
実施例1〜10のフェライト粒子では、見掛け密度が2.0g/cm以下と低かった。また、高抵抗化処理によって電気抵抗は1.2×10Ω・cm以上に高められた一方、図5及び図6に示すように、磁化σ1000は、実施例1〜5のMnフェライト粒子では69.5Am/kg以上、実施例6〜8のMn・Mgフェライト粒子では53.2Am/kg以上、実施例9,10のMgフェライト粒子では58.9Am/kg以上と高く維持された。
これに対し、粒子内に小さな空孔が分散して形成され、内部空孔の多くが外部とが繋がっている比較例1〜6のフェライト粒子では、高抵抗化処理によって電気抵抗は高められたが、図5及び図6に示すように、磁化σ1000は、比較例1〜4のMnフェライト粒子では61.2Am/kg以下、比較例5のMn・Mgフェライト粒子では49.0Am/kg、比較例6のMgフェライト粒子では43.5Am/kgと大きく低下した。
比較例3の結果より、使用する炭酸塩原料のサイズは、ある程度の大きさを持つものが好ましく、5.0〜15μmの範囲が好ましいといえる。
本発明に係るフェライト粒子は粒子内部に空孔を有するので低比重化が図れ、撹拌する際の回転トルクを小さく抑えることができる。また、粒子断面積における空孔総面積率を5%以上で20%未満とし、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合を50%以上としたので、撹拌速度等が速くなっても粒子の割れや欠けが効果的に抑制される。さらに、粒子内部の空孔の外気との繋がりを遮断したので、フェライト粒子を表面酸化処理をした場合に粒子表面のみが酸化され、フェライト粒子の磁力低下を抑制しながら電気抵抗を高められる。

Claims (9)

  1. 組成式MFe3−X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0X≦1)で表され、内部に空孔を有するフェライト粒子であって、
    粒子断面積における空孔総面積率が5%以上で20%未満で、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合が50%以上であり、
    粒径から算出される比表面積値に対する、実測したBET比表面積値の割合が7倍以下であることを特徴とするフェライト粒子。
  2. 見掛け密度が2.0g/cm以下である請求項1記載のフェライト粒子。
  3. MがMnであり、79.58×10(A/m)の磁場における磁化σ1000が65(Am/kg)以上である請求項1又は2記載のフェライト粒子。
  4. MがMg又はMnとMgであり、79.58×10(A/m)の磁場における磁化σ1000が53(Am/kg)以上である請求項1又は2記載のフェライト粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
  6. 請求項5記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
  7. Fe3−X(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素,0X≦1)で表され、組成のフェライト粒子が生成するようにFe成分原料とM成分原料とを成分調整すると共に、M成分原料の少なくとも1つとして平均粒径が5.0μm〜15μmの炭酸塩を用い、媒体液と混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物を得る工程とを有することを特徴とするフェライト粒子の製造方法。
  8. 前記炭酸塩の出発原料に対する添加量が1〜40wt%の範囲である請求項7記載のフェライト粒子の製造方法。
  9. 前記焼成物を酸化性雰囲気下で加熱して粒子表面に酸化被膜を形成する工程をさらに有する請求項7又は8記載のフェライト粒子の製造方法。
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