JP5812627B2 - 改良Fc受容体およびその製造方法 - Google Patents

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    • C07K2319/21Fusion polypeptide containing a tag with affinity for a non-protein ligand containing a His-tag

Description

本発明は、免疫グロブリンに親和性のあるFc結合性タンパク質に関するものであり、より詳しくは、アフィニティークロマトグラフィー用の免疫グロブリン親和性リガンドとして用いるために熱安定性などの特性が改良されたFc結合性タンパク質、該タンパク質の製造方法、および該タンパク質を構成要素として用いた免疫グロブリンを吸着する吸着材に関する。
免疫グロブリンG(以下、IgGという)による免疫信号は、抗原捕捉後のIgGが免疫細胞表面に存在するFc受容体との結合によって伝達される。Fc受容体はIgGのFc領域に結合する一群のタンパク質分子であり、個々の分子種は免疫グロブリン・スーパーファミリーに属するFc認識ドメインを有し、単一種の、または同じサブタイプに属する免疫グロブリンを認識する。これによって個々の免疫応答においてどのアクセサリー細胞が動員されるかが決定される(非特許文献1)。Fc受容体は、さらにサブタイプに分類することができ、IgGに対する受容体としてはFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIの存在が報告されている(非特許文献1)。なかでも、FcγRIとIgGの結合親和性は高く、その平衡解離定数(K)は10−8M以下である(非特許文献2)。
FcγRIは、シグナルペプチド領域、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞質内領域に大別され、IgGとの結合は、IgGのFc領域とFcγRIの細胞外領域で起こり、その後、両者の結合のシグナルが細胞質内へと伝達される。FcγRIはIgGとの結合に直接関わるα鎖と、γ鎖の2種類のサブユニットによって構成されており、γ鎖は細胞膜貫通領域と細胞外領域の境界にあるシステインを介した共有結合によりホモダイマーを形成している(非特許文献1)。FcγRIのα鎖のアミノ酸配列および遺伝子塩基配列は非特許文献3により明らかにされ、その後、遺伝子組換え技術により大腸菌(特許文献1)または動物細胞を宿主細胞とした発現例が報告されている(非特許文献4)。
前述した通りFcγRIの細胞外領域を構成するタンパク質(以下、Fc結合性タンパク質という)は、高度な親和性のもと、ヒト抗体に対する優れた識別機能を有している。この高度な親和性に基づいて、Fc結合性タンパク質は、診断試薬、抗体医薬品の研究用ツールまたはIgGなどの抗体医薬品の製造工程で利用されるアフィニティークロマトグラフィーのリガンドとして活用する方法が報告されている(特許文献1)。
Fc結合性タンパク質は、ヒト生体内で機能するタンパク質を起源とするタンパク質であり、細菌の細胞表層などの生体外に存在するタンパク質に比べて、熱や極端なpH変化などによりタンパク質変性が起こる傾向が強い。そのため、Fc結合性タンパク質をIgG製造のためのアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして使用する場合、該リガンドを固定化したゲルを用いてクロマト操作により吸着したIgGを溶出させる際に、該リガンドがクエン酸緩衝液などの低いpHの溶液に晒されることがあるため、該Fc結合性タンパク質には酸に対する安定性が求められる。また、該ゲルを洗浄または再生する場合に該リガンドが水酸化ナトリウム溶液などの高いpHの溶液に晒されることがあるため、該Fc結合性タンパク質にはアルカリに対する安定性が求められる。さらに、該ゲルの長期間の保存を考慮すると、該Fc結合性タンパク質には熱に対する安定性も求められる。
タンパク質のような生体物質を工業的に利用するためには、該生体物質が有する天然の構造を改良することで、所定の条件下で安定な物質を改めて作製することが求められる場合もある。酵素タンパク質などでは、それをコードするポリヌクレオチドに人工的に変異を導入し、スクリーニング後、求める形質を獲得した変異体を取得した例が数多く報告されている。しかしながら、受容体タンパク質であるFc結合性タンパク質に関しては、熱、酸またはアルカリに対して安定性が向上した改良体の報告例はなく、これまで工業的に利用された例はない。
特表2002−531086号公報
J.V.Ravetch等,Annu.Rev.Immunol.,9,457,1991 Toshiyuki Takai,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318,2005 J.M.Allen等,Science,243,378,1989 A.Paetz等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1811,2005 タンパク質の構造と機能,メディカル・サイエンス・インターナショナル社,9,2005 Molecular Cloning,Cold Spring Horbor Laboratory,256,1992
本発明は、IgGに対して高度な親和性を有するFc結合性タンパク質を改良することで、熱、酸および/またはアルカリに対する安定性が向上したFc結合性タンパク質およびその製造方法を提供することにある。また本発明は、該タンパク質をアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして用い、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を特異的に分離する方法も提供する。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、Fc結合性タンパク質における構造安定性に関与したアミノ酸残基を特定し、該アミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異体が熱、酸および/またはアルカリに対する優れた安定性を有し、かつアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願は以下の(A)から(K)に記載の態様を包含する:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、16番目から289番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質であって、以下の(1)から(168)のいずれかに記載のアミノ酸置換を1つ以上含む、該Fc結合性タンパク質。
(1)配列番号1の20番目のスレオニンがプロリンに置換
(2)配列番号1の25番目のスレオニンがリジンに置換
(3)配列番号1の38番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(4)配列番号1の46番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(5)配列番号1の62番目のアラニンがバリンに置換
(6)配列番号1の63番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(7)配列番号1の69番目のセリンがフェニルアラニンまたはスレオニンに置換
(8)配列番号1の71番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(9)配列番号1の77番目のバリンがアラニンまたはグルタミン酸に置換
(10)配列番号1の78番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(11)配列番号1の94番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換
(12)配列番号1の100番目のイソロイシンがバリンに置換
(13)配列番号1の110番目のセリンがアスパラギンに置換
(14)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(15)配列番号1の125番目のヒスチジンがアルギニンに置換
(16)配列番号1の131番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(17)配列番号1の149番目のトリプトファンがロイシンに置換
(18)配列番号1の156番目のロイシンがプロリンに置換
(19)配列番号1の160番目のイソロイシンがメチオニンに置換
(20)配列番号1の163番目のアスパラギンがセリンに置換
(21)配列番号1の195番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(22)配列番号1の199番目のスレオニンがセリンに置換
(23)配列番号1の206番目のアスパラギンがリジン、セリンまたはスレオニンに置換
(24)配列番号1の207番目のロイシンがプロリンに置換
(25)配列番号1の218番目のロイシンがバリンに置換
(26)配列番号1の240番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(27)配列番号1の248番目のロイシンがセリンに置換
(28)配列番号1の283番目のロイシンがヒスチジンに置換
(29)配列番号1の285番目のロイシンがグルタミンに置換
(30)配列番号1の17番目のバリンがグリシンまたはグルタミン酸に置換
(31)配列番号1の19番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(32)配列番号1の20番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(33)配列番号1の25番目のスレオニンがメチオニンまたはアルギニンに置換
(34)配列番号1の27番目のグルタミンがプロリンまたはリジンに置換
(35)配列番号1の35番目のグルタミンがロイシン、メチオニンまたはアルギニンに置換
(36)配列番号1の36番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(37)配列番号1の41番目のロイシンがメチオニンに置換
(38)配列番号1の42番目のヒスチジンがロイシンに置換
(39)配列番号1の44番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(40)配列番号1の45番目のバリンがアラニンに置換
(41)配列番号1の46番目のロイシンがアラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリンまたはトリプトファンに置換
(42)配列番号1の47番目のヒスチジンがグルタミン、ロイシンまたはアスパラギンに置換
(43)配列番号1の49番目のプロリンがセリンまたはアラニンに置換
(44)配列番号1の50番目のグリシンがアルギニンまたはグルタミン酸に置換
(45)配列番号1の51番目のセリンがアラニン、スレオニン、ロイシン、プロリンまたはバリンに置換
(46)配列番号1の52番目のセリンがグリシンに置換
(47)配列番号1の53番目のセリンがロイシン、スレオニンまたはプロリンに置換
(48)配列番号1の55番目のグルタミンがアルギニンに置換
(49)配列番号1の57番目のフェニルアラニンがチロシンに置換
(50)配列番号1の58番目のロイシンがアルギニンに置換
(51)配列番号1の60番目のグリシンがアスパラギン酸に置換
(52)配列番号1の61番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(53)配列番号1の62番目のアラニンがグルタミン酸に置換
(54)配列番号1の63番目のスレオニンがロイシン、フェニルアラニンに置換
(55)配列番号1の64番目のグルタミンがプロリン、ヒスチジン、ロイシン、リジンに置換
(56)配列番号1の65番目のスレオニンがアラニンまたはバリンに置換
(57)配列番号1の66番目のセリンがスレオニンに置換
(58)配列番号1の67番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(59)配列番号1の69番目のセリンがアラニンに置換
(60)配列番号1の70番目のチロシンがヒスチジンまたはフェニルアラニンに置換
(61)配列番号1の71番目のアルギニンがチロシンに置換
(62)配列番号1の73番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(63)配列番号1の74番目のセリンがフェニルアラニンに置換
(64)配列番号1の76番目のセリンがアスパラギンに置換
(65)配列番号1の77番目のバリンがアスパラギン酸またはリジンに置換
(66)配列番号1の78番目のアスパラギンがセリンまたはグリシンに置換
(67)配列番号1の80番目のセリンがアラニンに置換
(68)配列番号1の84番目のアルギニンがセリンに置換
(69)配列番号1の88番目のグリシンがセリンに置換
(70)配列番号1の89番目のロイシンがグルタミンまたはプロリンに置換
(71)配列番号1の90番目のセリンがグリシンに置換
(72)配列番号1の92番目のアルギニンがシステインまたはロイシンに置換
(73)配列番号1の96番目のイソロイシンがバリンまたはリジンに置換
(74)配列番号1の97番目のグルタミンがロイシンまたはリジンに置換
(75)配列番号1の101番目のヒスチジンがロイシンに置換
(76)配列番号1の102番目のアルギニンがセリンまたはロイシンに置換
(77)配列番号1の103番目のグリシンがアスパラギン酸またはセリンに置換
(78)配列番号1の111番目のセリンがアラニンに置換
(79)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがアラニン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、スレオニンまたはバリンに置換
(80)配列番号1の115番目のスレオニンがイソロイシンまたはフェニルアラニンに置換
(81)配列番号1の118番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(82)配列番号1の121番目のアラニンがスレオニンまたはバリンに置換
(83)配列番号1の128番目のリジンがアルギニンまたはグリシンに置換
(84)配列番号1の129番目のアスパラギン酸がグリシンに置換
(85)配列番号1の131番目のロイシンがグルタミンに置換
(86)配列番号1の133番目のチロシンがヒスチジンまたはアルギニンに置換
(87)配列番号1の134番目のアスパラギンがセリンに置換
(88)配列番号1の137番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(89)配列番号1の138番目のチロシンがヒスチジンに置換
(90)配列番号1の139番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(91)配列番号1の140番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(92)配列番号1の141番目のグリシンがアスパラギン酸またはバリンに置換
(93)配列番号1の142番目のリジンがグルタミン酸またはアルギニンに置換
(94)配列番号1の144番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換
(95)配列番号1の147番目のフェニルアラニンがセリンに置換
(96)配列番号1の148番目のヒスチジンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(97)配列番号1の149番目のトリプトファンがアルギニンに置換
(98)配列番号1の151番目のセリンがスレオニンに置換
(99)配列番号1の152番目のアスパラギンがスレオニン、イソロイシンまたはプロリンに置換
(100)配列番号1の154番目のスレオニンがセリンに置換
(101)配列番号1の156番目のロイシンがヒスチジンに置換
(102)配列番号1の157番目のリジンがアルギニンに置換
(103)配列番号1の159番目のアスパラギンがスレオニンまたはアスパラギン酸に置換
(104)配列番号1の160番目のイソロイシンがスレオニン、バリンまたはロイシンに置換
(105)配列番号1の161番目のセリンがスレオニンに置換
(106)配列番号1の165番目のスレオニンがメチオニンに置換
(107)配列番号1の171番目のメチオニンがスレオニンに置換
(108)配列番号1の173番目のリジンがアルギニンに置換
(109)配列番号1の174番目のヒスチジンがグルタミンに置換
(110)配列番号1の177番目のスレオニンがセリンに置換
(111)配列番号1の181番目のイソロイシンがスレオニンに置換
(112)配列番号1の182番目のセリンがスレオニン、ロイシン、バリンまたはグルタミン酸に置換
(113)配列番号1の184番目のスレオニンがセリンに置換
(114)配列番号1の190番目のプロリンがセリンに置換
(115)配列番号1の193番目のバリンがロイシンに置換
(116)配列番号1の195番目のアスパラギンがアラニンに置換
(117)配列番号1の196番目のアラニンがセリンに置換
(118)配列番号1の198番目のバリンがグリシンまたはメチオニンに置換
(119)配列番号1の199番目のスレオニンがアラニンに置換
(120)配列番号1の200番目のセリンがグリシンまたはアルギニンに置換
(121)配列番号1の202番目のロイシンがメチオニンに置換
(122)配列番号1の203番目のロイシンがヒスチジン、グルタミン、チロシン、アルギニン、プロリンに置換
(123)配列番号1の204番目のグルタミン酸がバリンに置換
(124)配列番号1の207番目のロイシンがグルタミン、ヒスチジンまたはアルギニンに置換
(125)配列番号1の209番目のスレオニンがアラニンに置換
(126)配列番号1の211番目のセリンがアルギニンまたはグリシンに置換
(127)配列番号1の213番目のグルタミン酸がバリンまたはイソロイシンに置換
(128)配列番号1の215番目のリジンがアルギニンまたはグルタミン酸に置換
(129)配列番号1の217番目のロイシンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(130)配列番号1の218番目のロイシンがイソロイシン、メチオニンまたはリジンに置換
(131)配列番号1の219番目のグルタミンがプロリンまたはアルギニンに置換
(132)配列番号1の223番目のロイシンがアルギニン、グルタミンまたはメチオニンに置換
(133)配列番号1の224番目のグルタミンがアルギニンに置換
(134)配列番号1の225番目のロイシンがグルタミンに置換
(135)配列番号1の227番目のフェニルアラニンがイソロイシンに置換
(136)配列番号1の230番目のチロシンがヒスチジンまたはフェニルアラニンに置換
(137)配列番号1の231番目のメチオニンがリジンまたはアルギニンに置換
(138)配列番号1の233番目のセリンがグリシンまたはアスパラギンに置換
(139)配列番号1の234番目のリジンがグルタミン酸に置換
(140)配列番号1の240番目のアスパラギンがグリシンに置換
(141)配列番号1の244番目のグルタミン酸がバリンに置換
(142)配列番号1の245番目のチロシンがヒスチジンまたはグルタミン酸に置換
(143)配列番号1の246番目のグルタミンがアルギニンまたはリジンに置換
(144)配列番号1の248番目のロイシンがイソロイシンに置換
(145)配列番号1の249番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(146)配列番号1の250番目のアラニンがバリンに置換
(147)配列番号1の251番目のアルギニンがセリンに置換
(148)配列番号1の252番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(149)配列番号1の253番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(150)配列番号1の257番目のロイシンがアルギニンまたはグルタミンに置換
(151)配列番号1の261番目のグルタミン酸がバリンまたはアラニンに置換
(152)配列番号1の262番目のアラニンがバリンに置換
(153)配列番号1の263番目のアラニンがセリンに置換
(154)配列番号1の264番目のスレオニンがセリンに置換
(155)配列番号1の265番目のグルタミン酸がアラニンまたはグリシンに置換
(156)配列番号1の268番目のアスパラギンがセリン、イソロイシンまたはスレオニンに置換
(157)配列番号1の270番目のロイシンがヒスチジン、アルギニンまたはバリンに置換
(158)配列番号1の271番目のリジンがアルギニンに置換
(159)配列番号1の272番目のアルギニンがグルタミンに置換
(160)配列番号1の277番目のグルタミン酸がバリンに置換
(161)配列番号1の279番目のグルタミンがアルギニンまたはヒスチジンに置換
(162)配列番号1の282番目のグリシンがアスパラギン酸に置換
(163)配列番号1の283番目のロイシンがプロリンに置換
(164)配列番号1の285番目のロイシンがアルギニンまたはヒスチジンに置換
(165)配列番号1の286番目のプロリンがグルタミン、アルギニン、セリンまたはグルタミン酸に置換
(166)配列番号1の287番目のスレオニンがイソロイシン、プロリン、アラニン、バリンまたはセリンに置換
(167)配列番号1の288番目のプロリンがアラニン、セリンまたはスレオニンに置換
(168)配列番号1の289番目のバリンがアラニン、アスパラギン酸、グリシン、ロイシンまたはイソロイシンに置換
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、16番目から289番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質であって、少なくとも以下の(4)、(14)、(41)および(79)のいずれかに記載のアミノ酸置換を含む、(A)に記載のFc結合性タンパク質。
(4)配列番号1の46番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(14)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(41)配列番号1の46番目のロイシンがアラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、セリンまたはトリプトファンに置換
(79)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがアラニン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、スレオニンまたはバリンに置換
(C)配列番号2、3、4、5、114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、34番目から307番目までのアミノ酸を含む、(B)に記載のFc結合性タンパク質。
(D)配列番号2、3、4、5、114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、(B)に記載のFc結合性タンパク質。
(E)(A)から(D)のいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(F)(E)に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(G)(F)に記載の発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体。
(H)宿主が大腸菌である、(G)に記載の形質転換体。
(I)(G)または(H)に記載の形質転換体を用いた、Fc結合性タンパク質の製造方法。
(J)(A)から(D)のいずれかに記載のFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られる、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材。
(K)(1)配列番号114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られる、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材に、抗体を含む溶液を添加して該吸着材に該抗体を吸着させる工程と、(2)該吸着材に吸着した該抗体をpH3.0から4.5の緩衝液を用いて溶出させる工程と、を含む抗体精製法。
以下、本発明について詳細に説明する。
ヒトFc受容体FcγRIのα鎖は図1に示す構造をとり、N末端側から15アミノ酸からなるシグナルペプチド領域(SS、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1番目から15番目までの領域)、277アミノ酸からなる細胞外領域(EC、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目までの領域)、21アミノ酸からなる細胞膜貫通領域(TM、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち293番目から313番目までの領域)、61アミノ酸からなる細胞内領域(C、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち314番目から374番目までの領域)から構成される。
本発明のFc結合性タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから292番目のヒスチジンまでの細胞外領域(図1のEC領域)中の少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域を含んでいればよく、EC領域のN末端側にあるシグナルペプチド領域(図1のSS領域)の全てまたは一部が含まれていてもよいし、EC領域のC末端側にある膜貫通領域(図1のTM領域)または細胞内領域(図1のC領域)を含んでいてもよい。さらに、ポリヒスチジンタグといった精製などを行なうためのタグペプチドがN末端側またはC末端側に付加されていても本発明のFc結合性タンパク質に含まれる。
本発明のFc結合性タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列中の細胞外領域(図1のEC領域)の一部である16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域にあるアミノ酸残基のうち、少なくとも1つが他のアミノ酸残基に置換されたポリペプチドであり、該置換により、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる野生型のヒトFcγRIと比較し、熱安定性、酸安定性および/またはアルカリ安定性が著しく向上し、かつアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして有用なことを見出している。具体的には本発明のFc結合性タンパク質は、実施例で開示されているように、43℃で10分間加熱処理を行なったり、70℃で20分間加熱処理を行なったり、pH3.0の酸条件下で24時間処理を行なったり、pH10のアルカリ条件下で53℃で20分間処理を行なったりしても、アミノ酸置換を施していない野生型のヒトFcγRI以上の抗体結合活性を保持している。
具体的には、本発明のFc結合性タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域のアミノ酸を含んでおり、かつ、Thr20Pro(この表記は、配列番号1の20番目のスレオニンがプロリンに置換されていることを表す、以下同様)、Thr25Lys、Thr38Ala、Thr38Ser、Leu46Arg、Leu46Pro、Ala62Val、Thr63Ile、Ser69Phe、Ser69Thr、Arg71His、Val77Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Asp94Glu、Ile100Val、Ser110Asn、Phe114Leu、His125Arg、Leu131Arg、Leu131Pro、Trp149Leu、Leu156Pro、Ile160Met、Asn163Ser、Asn195Thr、Thr199Ser、Asn206Lys、Asn206Ser、Asn206Thr、Leu207Pro、Leu218Val、Asn240Asp、Leu248Ser、Leu283His、Leu285Gln、
Val17Gly、Val17Glu、Thr19Ile、Thr20Ile、Thr25Met、Thr25Arg、Gln27Pro、Gln27Lys、Glu35Leu、Glu35Met、Glu35Arg、Glu36Gly、Leu41Met、His42Leu、Glu44Asp、Val45Ala、Leu46Ala、Leu46Asn、Leu46Asp、Leu46Gln、Leu46Gly、Leu46His、Leu46Lys、Leu46Ser、Leu46Trp、His47Gln、His47Leu、His47Asn、Pro49Ser、Pro49Ala、Gly50Arg、Gly50Glu、Ser51Ala、Ser51Thr、Ser51Leu、Ser51Pro、Ser51Val、Ser52Gly、Ser53Leu、Ser53Thr、Ser53Pro、Gln55Arg、Phe57Tyr、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr61Ala、Thr61Ser、Ala62Glu、Thr63Leu、Thr63Phe、Gln64Pro、Gln64His、Gln64Leu、Gln64Lys、Thr65Ala、Thr65Val、Ser66Thr、Thr67Ala、Thr67Ser、Ser69Ala、Tyr70His、Tyr70Phe、Arg71Tyr、Thr73Ala、Thr73Ser、Ser74Phe、Ser76Asn、Val77Asp、Val77Lys、Asn78Ser、Asn78Gly、Ser80Ala、Arg84Ser、Gly88Ser、Leu89Gln、Leu89Pro、Ser90Gly、Arg92Cys、Arg92Leu、Ile96Val、Ile96Lys、Gln97Leu、Gln97Lys、His101Leu、Arg102Ser、Arg102Leu、Gly103Asp、Gly103Ser、Ser111Ala、Phe114Ala、Phe114Ile、Phe114Met、Phe114Pro、Phe114Thr、Phe114Val、Thr115Ile、Thr115Phe、Glu118Asp、Ala121Thr、Ala121Val、Lys128Arg、Lys128Gly、Asp129Gly、Leu131Gln、Tyr133His、Tyr133Arg、Asn134Ser、Tyr137Phe、Tyr138His、Arg139His、Asn140Asp、Gly141Asp、Gly141Val、Lys142Glu、Lys142Arg、Phe144Ile、Phe147Ser、His148Arg、His148Gln、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Asn152Ile、Asn152Pro、Thr154Ser、Leu156His、Lys157Arg、Asn159Thr、Asn159Asp、Ile160Thr、Ile160Val、Ile160Leu、Ser161Thr、Thr165Met、Met171Thr、Lys173Arg、His174Gln、Thr177Ser、Ile181Thr、Ser182Thr、Ser182Leu、Ser182Val、Ser182Glu、Thr184Ser、Pro190Ser、Val193Leu、Asn195Ala、Ala196Ser、Val198Gly、Val198Met、Thr199Ala、Ser200Gly、Ser200Arg、Leu202Met、Leu203His、Leu203Gln、Leu203Tyr、Leu203Arg、Leu203Pro、Glu204Val、Leu207Gln、Leu207His、Leu207Arg、Thr209Ala、Ser211Arg、Ser211Gly、Glu213Val、Glu213Ile、Lys215Arg、Lys215Glu、Leu217Arg、Leu217Gln、Leu218Ile、Leu218Met、Leu218Lys、Gln219Pro、Gln219Arg、Leu223Arg、Leu223Gln、Leu223Met、Gln224Arg、Leu225Gln、Phe227Ile、Tyr230His、Tyr230Phe、Met231Lys、Met231Arg、Ser233Gly、Ser233Asn、Lys234Glu、Asn240Gly、Glu244Val、Tyr245His、Tyr245Glu、Gln246Arg、Gln246Lys、Leu248Ile、Thr249Ala、Thr249Ser、Ala250Val、Arg251Ser、Arg252His、Glu253Gly、Leu257Arg、Leu257Gln、Glu261Val、Glu261Ala、Ala262Val、Ala263Ser、Thr264Ser、Glu265Ala、Glu265Gly、Asn268Ser、Asn268Ile、Asn268Thr、Leu270His、Leu270Arg、Leu270Val、Lys271Arg、Arg272Gln、Glu277Val、Gln279Arg、Gln279His、Gly282Asp、Leu283Pro、Leu285Arg、Leu285His、Pro286Gln、Pro286Arg、Pro286Ser、Pro286Glu、Thr287Ile、Thr287Pro、Thr287Ala、Thr287Val、Thr287Ser、Pro288Ala、Pro288Ser、Pro288Thr、Val289Ala、Val289Asp、Val289Gly、Val289LeuおよびVal289Ileのいずれかの置換を1つ以上含むポリペプチドである。また前記置換の中でも、Thr20Pro、Thr25Lys、Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Ile160Met、Asn163Ser、Asn195Thr、Asn206Thr、Leu207Pro、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnのいずれかの置換を1つ以上含んでいると、さらに熱安定性が向上するため好ましい。また前記置換の中でも、Leu46Arg、Leu46Pro、Leu46Ala、Leu46Asn、Leu46Asp、Leu46Gln、Leu46Gly、Leu46His、Leu46Lys、Leu46Ser、Leu46Trp、Phe114Leu、Phe114Ala、Phe114Ile、Phe114Met、Phe114Pro、Phe114ThrおよびPhe114Valのいずれかの置換を1つ以上含んでいると、Fc結合性タンパク質の熱、酸およびアルカリに対する安定性がさらに向上するため好ましい。
なお、アミノ酸置換により本発明のFc結合性タンパク質を作製する際、特定のアミノ酸位置については、抗体結合活性を有する限り前述した置換以外のアミノ酸に置換してもよい。一例として、両アミノ酸の物理的性質と化学的性質またはそのどちらかが類似したアミノ酸間で置換する保守的置換があり、保守的置換はFc結合性タンパク質に限らず一般にタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、アスパラギン酸とグルタミン酸間、セリンとプロリン間、グルタミン酸とアラニン間があげられる(非特許文献5)。
本発明のFc結合性タンパク質において、置換するアミノ酸の数に特に制限はなく、一例として、
(a)Leu46Pro、Thr63Ile、Phe114LeuおよびAsn240Aspからなる4重置換体(配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(b)Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ile100Val、Phe114LeuおよびAsn240Aspからなる6重置換体(配列番号3に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(c)Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ile100Val、Phe114Leu、Ile160Met、Asn163SerおよびAsn240Aspからなる8重置換体(配列番号4に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(d)Thr20Pro、Thr25Lys、Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Ile160Met、Asn163Ser、Asn195Thr、Asn206Thr、Leu207Pro、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる19重置換体(配列番号5に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(e)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu36Gly、Thr38Ser、Val45Ala、Leu46Pro、Pro49Ser、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Tyr133His、Arg139His、Trp149Arg、Leu156Pro、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Asn195Thr、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Met231Lys、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる32重置換体(配列番号114に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(f)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、Val45Ala、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser52Gly、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Tyr133His、Arg139His、Trp149Arg、Asn152Thr、Leu156Pro、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Asn195Thr、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Met231Lys、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる36重置換体(配列番号118に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(g)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、Val45Ala、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser52Gly、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Phe114Leu、Lys128Arg、Tyr133His、Arg139His、Trp149Arg、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Asn195Thr、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Glu213Val、Leu218Ile、Met231Lys、Asn240Asp、Thr249Ala、Glu261Val、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる44重置換体(配列番号130に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(h)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、Val45Ala、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Thr、Ser52Gly、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Phe114Leu、Lys128Arg、Leu131Gln、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Glu213Val、Leu218Ile、Met231Lys、Asn240Asp、Thr249Ala、Glu261Val、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる48重置換体(配列番号134に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(i)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Phe114Leu、Ala121Val、Lys128Arg、Leu131Gln、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Glu213Val、Leu218Ile、Met231Lys、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Glu261Val、Leu270Val、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる54重置換体(配列番号148に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(j)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Ala121Val、Lys128Arg、Leu131Gln、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Leu203His、Asn206Thr、Leu207Gln、Glu213Val、Leu218Ile、Met231Lys、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる56重置換体(配列番号154に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(k)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Tyr70Phe、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Ala121Val、Lys128Arg、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Asn206Thr、Leu207Pro、Glu213Val、Leu218Ile、Tyr230Phe、Met231Lys、Ser233Gly、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283HisおよびLeu285Glnからなる57重置換体(配列番号164に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(l)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Tyr70Phe、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Ala121Val、Lys128Arg、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Thr165Met、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Asn206Thr、Leu207Pro、Glu213Val、Leu217Gln、Leu218Ile、Tyr230Phe、Met231Lys、Ser233Gly、Lys234Glu、Asn240Asp、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283His、Leu285GlnおよびVal289Aspからなる60重置換体(配列番号174に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(m)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Tyr70Phe、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Glu118Asp、Ala121Val、Lys128Arg、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Thr165Met、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Asn206Thr、Leu207Pro、Glu213Val、Leu218Ile、Tyr230Phe、Met231Lys、Ser233Gly、Lys234Glu、Asn240Asp、Gln246Lys、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283His、Leu285GlnおよびVal289Aspからなる61重置換体(配列番号170に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、
(n)Thr20Pro、Thr25Lys、Glu35Leu、Glu36Gly、Thr38Ser、Leu41Met、His42Leu、Leu46Pro、Pro49Ser、Ser51Ala、Ser52Gly、Leu58Arg、Gly60Asp、Thr63Ile、Thr65Ala、Ser69Thr、Tyr70Phe、Arg71His、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Gln97Leu、Ile100Val、Ser111Ala、Phe114Leu、Thr115Ile、Glu118Asp、Ala121Val、Lys128Arg、Tyr133His、Tyr137Phe、Arg139His、Trp149Arg、Ser151Thr、Asn152Thr、Leu156Pro、Lys157Arg、Ile160Thr、Asn163Ser、Thr165Met、Lys173Arg、Ile181Thr、Ser182Leu、Thr184Ser、Asn195Thr、Thr199Ala、Asn206Thr、Leu207Pro、Glu213Val、Leu217Gln、Leu218Ile、Tyr230Phe、Met231Lys、Ser233Gly、Lys234Glu、Asn240Asp、Gln246Lys、Thr249Ala、Leu270Val、Leu283His、Leu285GlnおよびVal289Aspからなる62重置換体(配列番号176に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質)、があげられる。特に前記(c)から(n)に示す置換体が熱、酸およびアルカリに対する安定性がさらに向上する点で好ましい。
本発明のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単に本発明のポリヌクレオチドとする)の作製方法としては、
(I)本発明のFc結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(II)ヒトFcγRIの全体または部分配列を含むポリヌクレオチドを直接人工的に、またはヒトFcγRIのcDNAなどからPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、が例示できる。
なお、アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する場合は、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主が大腸菌(Escherichia coli)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。
前記(II)の方法で作製する場合、DNA増幅法として、いわゆるエラープローンPCR法を用いることもできる。エラープローンPCR法における反応条件はヒトFcγRIをコードするポリヌクレオチドに所望の変異を導入できる条件であれば特に限定されないが、例えば、基質である4種類のデオキシヌクレオチド(dATP/dTTP/dCTP/dGTP)の濃度を不均一にし、MnClを0.01から10mM(好ましくは0.1から1mM)の濃度でPCR反応液に添加してPCRを行なうことで、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
さらに本発明のポリヌクレオチドの作製方法として、
(III)ヒトFcγRIの全体または部分配列を含むポリヌクレオチドに、変異原となる薬剤を接触・作用させたり、紫外線を照射して、ポリヌクレオチドに変異を導入して作製する方法、
もあげられる。該薬剤としては、ヒドロキシルアミン、N−メチル―N’―ニトロ―N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジンなど当業者が通常用いる変異原薬剤を用いればよい。
なお、前記(I)から(III)の方法で作製した本発明のポリヌクレオチドの5’末端側にシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを付加してもよく、宿主が大腸菌の場合は、前記シグナルペプチドとしてpelB、DsbA、MalE(配列番号182)、TorTといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドをあげることができる(特願2009−256180号)。
本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換する場合、本発明のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミドなど)の適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入したものを用いると、より好ましい。なお、該発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合は、pETプラスミドベクター、pUCプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pBBRプラスミドベクターなどが例示できる。また、前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。該プロモータの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータなどが例示できる。
前記方法により作製した本発明のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクターで宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。例えば、宿主としてEscherichia属に属する微生物(大腸菌JM109株やBL21(DE3)株など)を選択する場合には、非特許文献6に記載の方法などにより形質転換すればよい。そのような方法で形質転換して得られた形質転換体から適切な方法でスクリーニングすることにより、熱、酸、アルカリに対する安定性が向上した本発明のFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を取得することができる。この形質転換体から、本発明のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクターを調製するには、アルカリ抽出法やQIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)などの市販の抽出キットを用いて調製すればよい。本発明のFc結合性タンパク質を発現する形質転換体をスクリーニングするには、例えば発現するFc結合性タンパク質に対する抗体の結合活性を測定することで行なうことができる。抗体の結合活性は、例えばIgGに対する結合活性をELISA法や表面プラズモン共鳴法などを用いて測定することができる。このような測定に使用するIgGは、ヒトIgGが好ましく、ヒトIgG1が特に好ましい。
本発明のFc結合性タンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された宿主(形質転換体)を培養することで製造できる。該形質転換体の培養方法は、具体的には、該形質転換体を培養し、その培養物から本発明のFc結合性タンパク質を抽出することを含む。本発明のFc結合性タンパク質の製造方法で用いる形質転換体は、対象宿主の培養に適した培地で培養すればよく、宿主が大腸菌の場合は、必要な栄養源を補ったLB(Luria−Bertani)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。なお、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの導入の有無によって形質転換体の増殖を選択的に可能とするために、培地に該発現ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養すると好ましい。例えば、該発現ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加すればよい。また培地には、炭素、窒素および無機塩供給源の他に、適当な栄養源を添加してもよく、所望により、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレートおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでもよい。さらに、グリシンといった前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す試薬を添加してもよく、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加すると好ましい。
培養温度は宿主が大腸菌の場合、一般に10℃から40℃、好ましくは25℃から35℃、より好ましくは30℃前後であるが、発現させるFc結合性タンパク質の特性により選択すればよい。培地のpHは宿主が大腸菌の場合、pH6.8からpH7.4、好ましくはpH7.0前後である。
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターに誘導性のプロモータを含んでいる場合は、本発明のFc結合性タンパク質を含むポリペプチドが良好に発現できるような条件下で誘導すればよい。誘導剤としてはIPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside)を例示することができる。宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)を測定し、約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、本発明のFc結合性タンパク質の発現を誘導することができる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mMの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mMの範囲が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。
本発明の形質転換体の培養液からFc結合性タンパク質を抽出するには、発現の形態によって適宜抽出方法を選択すればよい。培養上清に発現する場合は菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清からFc結合性タンパク質を抽出すればよい。一方、細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤などを添加することにより菌体を破砕して、Fc結合性タンパク質を抽出すればよい。抽出タンパク質の中からFc結合性タンパク質を分離精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよい。一例として、液体クロマトグラフィーを用いた分離精製があげられる。液体クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどがあげられる。これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことによって、本発明のFc結合性タンパク質を高純度に調製することができる。
本発明のFc結合性タンパク質は、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を分離精製するためのアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして有用である。本発明のFc結合性タンパク質を前記クロマトグラフィーに適用させるには、本発明のFc結合性タンパク質を固相に固定化させたFc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材(以下、単に本発明の吸着材という)の形態で用いるとよい。
本発明のFc結合性タンパク質を固定化させるための固相としては、親水性ビニルポリマー、シリカ、ガラス、セファロース(商品名)、アガロース、セルロース、ハイドロキシアパタイト、ポリスチレンを含む物質などを例示することができる。なお固相の形態を、空孔が制御された形態、またはメンブランの形態とすると分離能がよくなる点で好ましい。本発明のFc結合性タンパク質を固相に固定化させるには、例えば、固相表面にエポキシ基、ホルミル基、アミノ基、カルボキシル基などの活性基を導入後、本発明のFc結合性タンパク質表面に存在するアミノ酸残基と共有結合させればよい。
本発明の吸着材を用いて分離精製するFc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質(以下、目的タンパク質という)の一例として、IgGの定常領域を含むタンパク質があげられ、その具体例としては、IgGや、IgGのFc結合性タンパク質結合部位と他のタンパク質との融合タンパク質があげられる。なお、ここでいうIgGの定常領域は、例えばパパイン等のプロテアーゼ処理によりIgGから生じるヒンジやCH2およびCH3ドメインを含んでいてもよい。本発明の吸着材を用いて分離精製する目的タンパク質の例として、ヒトIgG、ヒト化IgG、マウスIgG、ラットIgG、ウサギIgG、ラクダIgGなどがあげられ、特にヒトIgGまたはヒト化IgGが好ましい。本発明の吸着材を用いて分離精製するヒトIgGには、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3およびヒトIgG4があげられる。本発明の吸着材を用いて分離精製する目的タンパク質の別の例としては、モノクローナルIgG抗体、ポリクローナルIgG抗体、IgG断片などがあげられる。
本発明の吸着材を用いて目的タンパク質を分離精製するには、
(1)本発明のFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られるFc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材に目的タンパク質を含む溶液を添加して、該吸着材に該目的タンパク質を吸着させる工程と、
(2)該吸着材に吸着した該目的タンパク質を適切な溶出液を用いて溶出させる工程、
を含む工程で行なえばよい。
本発明の吸着材を用いて分離精製する目的タンパク質は、例えば、遺伝子組換え技術を用いて、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)といった動物細胞、昆虫細胞、大腸菌やバチルス属細菌といった細菌、パン酵母やポンベ酵母といった酵母、または麹菌といった糸状菌などで発現させることにより生産できる。なお目的タンパク質を、その表面に糖鎖を必要とする形態で生産させたい場合は、真核細胞である動物細胞、昆虫細胞、酵母または糸状菌を選択すればよく、CHO細胞を用いるとより好ましい。本発明の吸着材を用いて分離精製する目的タンパク質を含む溶液の一例としては、目的タンパク質を発現可能な宿主(動物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、糸状菌など)の培養液、目的タンパク質を発現可能な植物の破砕液、ウシ等動物のミルクがあげられる。なお、これらの例のうち、培養液については、目的タンパク質を発現可能な宿主を含んでいてもよく、適切な前処理により該宿主を除いてもよい。ここでいう適切な前処理とは、遠心分離操作、精密ろ過膜や限外ろ過膜を例示することができ、当業者によって周知の方法を採用すればよい。
本発明の吸着材に目的タンパク質を吸着させる工程の一例として、本発明の吸着材を適切な容量の空カラムに充填することで分離精製用カラムを作製後、該カラムに適切な送液システム(例えば、液体クロマトグラフィーで用いられる高圧ポンプやペリスタリックポンプ)を用いて、目的タンパク質を含む溶液を、直接またはpH調整した状態で添加して目的タンパク質を吸着させる工程があげられる。目的タンパク質を含む溶液をpH調整する場合、目的タンパク質が変性しない条件であれば、調整するpHに特に限定はなく、中性でも酸性でもアルカリ性でもよい。ただし、通常の目的タンパク質の場合、pHを3から10の範囲で調整すると好ましく、pH4からpH8の範囲に調整すると特に好ましい。
本発明の吸着材に吸着した目的タンパク質を溶出させる際に、前記吸着工程後、直ちに目的タンパク質を溶出させてもよいが、好ましくは溶出工程前に適切な洗浄液を用いて夾雑タンパク質を除去する洗浄工程を経てから溶出させるとよい。該洗浄液としては目的タンパク質が溶出しない条件のpHに調整した緩衝液であればよい。洗浄液として用いる緩衝液の構成要素の一例として、酢酸、クエン酸、ヒスチジン、リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウムやコハク酸アンモニウム)、MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid monohydrate)、MOPS(3−Morpholinopropanesulfonic acid)、HEPES(2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid)、Tris(Tris(hydroxymethyl)aminomethane)およびこれらの組み合わせがあげられる。洗浄液として用いる緩衝液のpHは目的タンパク質により異なるが、一般的にはpHが3から10の範囲が好ましく、特にpH4からpH8の範囲が好ましい。なお、洗浄液として用いる緩衝液には、必要に応じて、添加剤を存在させてもよく、例えば、緩衝液イオン強度を調整するための、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなどの塩や、グリシン、ヒスチジン、アルギニンなどのアミノ酸、尿素などのカオトロピック試薬、エタノール、マンニトール、グリセロール、ベンジルアルコールなどのアルコール、スクロース、マルトース、トレハロース、フルクトースなどの糖などがあげられる。
本発明の吸着材に吸着した目的タンパク質を溶出させる工程では、適切な溶出液を用いて目的タンパク質を該吸着材から解離させ、適切な容器に回収する。該溶出液としては目的タンパク質が溶出し、かつ目的タンパク質が変性しない条件のpHに調整した緩衝液であればよい。溶出液として用いる緩衝液のpHは目的タンパク質により異なるが、一般的にはpHが2から11の範囲が好ましく、特にpH2.5からpH6の範囲が好ましい。なお本発明の吸着材が、配列番号114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質を固相に固定化させて得られた吸着材である場合、溶出液として用いる緩衝液のpHは3.0から4.5の範囲である。また、溶出液として用いる緩衝液には、必要に応じて、添加剤を存在させてもよく、例えば、目的タンパク質を安定化させるための界面活性剤や塩、糖などがあげられる。
本発明の吸着材を用いて分離精製された目的タンパク質は、カラムクロマトグラフィーに供することで、さらに高純度に精製することもできる。用いることができるクロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが例示できる。
本発明のFc結合性タンパク質は、野生型のヒトFc受容体FcγRIのうち、細胞外領域にある1つ以上の特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したタンパク質であり、該タンパク質は野生型のヒトFcγRIと比較し、熱、酸および/またはアルカリに対する安定性が向上している。そのため、本発明のFc結合性タンパク質をアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして用いることで、ヒトIgGといった抗体を安定的に精製することができる。
また、Fc結合性タンパク質をコードしたポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換して得られた形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を製造する方法において、Fc結合性タンパク質として本発明のFc結合性タンパク質を用いると、タンパク質生産性が向上する。そのため、本発明はFc結合性タンパク質の工業的な製造においても有用である。
なお、本発明のFc結合性タンパク質は野生型のヒトFcγRIと比較し、熱、酸および/またはアルカリに対する安定性が向上している。そのため、本発明のFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られるFc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材は、例えば、アルカリ処理(例えば、100mM水酸化ナトリウム水溶液)による再生処理を行なっても、吸着性能はほとんど劣化しない。したがって本発明の吸着材は、ヒトIgGといった抗体の大量精製用途に特に好ましいといえる。
ヒトFc受容体FcγRIの構造の概略を示す図である。 ヒトFcγRIをコードするポリヌクレオチドを挿入したプラスミドpUCFcRの構造概略図である。 Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入したプラスミドpETFcR作製の概略図である。 プラスミドpETMalEの構造概略図である。 プラスミドpETFcRの構造概略図である。 プラスミドpETFcR形質転換体で発現したFc結合性タンパク質の抗体結合活性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm4、FcRm6、FcRm8、FcRm19)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm32)のアルカリ安定性を評価した図である Fc結合性タンパク質(FcRm36b)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm44)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm44)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm48)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm48)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm60c、FcRm61、FcRm62)の生産性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm60c、FcRm61、FcRm62)のアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質の酸安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm32)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲルの抗体溶出性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b、FcRm56b)固定化ゲルのアルカリ安定性を評価した図である。 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルの繰り返し安定性を評価した図である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 ヒトFc受容体FcγRIをコードするポリヌクレオチドのクローニング
(1)配列番号1に記載のヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列を基に、細胞外領域、細胞膜貫通領域および細胞内領域(16番目から374番目までの領域)について大腸菌型のコドンを用いてヌクレオチド配列への変換を行なった。
(2)前記ヌクレオチド配列を基にして、ヒトFcγRIをコードするポリヌクレオチドを作製するための52種類のオリゴヌクレオチドを合成した。合成したオリゴヌクレオチドを配列番号10から61に示す。
(3)(2)で合成したオリゴヌクレオチドから、ヒトFcγRIをコードするポリヌクレオチドの全長を作製するために、下記に示す2段階のPCRを行なった。
(3−1)1段階目のPCR反応を、表1に示す反応液を用い、94℃で5分間熱処理後、94℃で30秒間の第1ステップ、62℃で30秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を25サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
Figure 0005812627
なお、表1に記載のDNAミックスは、前記52種類の50pmoL/μLの各合成オリゴヌクレオチドを同量ずつ採取し混合した溶液を指す。
(3−2)2段階目のPCR反応を、表2に示す反応液を用い、94℃で5分間熱処理後、94℃で30秒間の第1ステップ、65℃で30秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を25サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
Figure 0005812627
なお、表2に示す組成のうち、鋳型は1段階目のPCRの反応液を用い、PCRプライマーは配列番号10(5’−ATGTGGTTTCTGACCACGCTGTTGCTGTGGGTGCCGGT−3’)および配列番号61(5’−GGTCGCGCCCTGCGGCTCCTTACGATGCAC−3’)からなるオリゴヌクレオチドを用いた。反応終了後、0.9%のアガロース電気泳動で確認したところ、設計通りのサイズ(約1.1kbp)のDNAバンドを確認することができた。
(4)前記DNAバンドを抽出(QIAquick Gel extraction kit:キアゲン社製)し、抽出DNAの5’末端をリン酸化(TaKaRa BKL Kit:タカラバイオ社製)後、制限酵素SmaIで消化したpUC19プラスミドベクターに挿入した。
(5)(4)で調製したプラスミドベクターと50μg/mLのカルベニシリンを含むLB培地にて、大腸菌E.coli JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。
(6)定法に従い形質転換体からプラスミドを抽出し(QIAprep Spin Miniprep Kit:キアゲン社製)、これをpUCFcRとした。構造の概略を図2に示す。
実施例2 Fc結合性タンパク質の発現ベクター作製
Fc結合性タンパク質を大腸菌で発現させるために、MalEシグナルペプチド(アミノ酸配列;MKIKTGARILALSALTTMMFSASALA、配列番号182)を利用した系を構築した。作製工程の概略を図3に示す。
(1)MalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製するために、配列番号62(5’−TATA[CATATG]AAAATAAAAACAGGTGCACGCATCC−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NdeIサイト)と、配列番号63(5’−GCATTAACGACGATGATGTTTTCCGCCTCGGCTCTCGCC−3’)、配列番号64(5’−ATCGTCGTTAATGCGGATAATGCGAGGATGCGTGCACCTG−3’)、配列番号65(5’−TTGTC[CCATGG]CTTCTTCGATTTTGGCGAGAGCCG−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NcoIサイト)からなる各オリゴヌクレオチドをPCR法を用いて連結した。PCR反応は表3に示す反応液を用い、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なった。
Figure 0005812627
(2)前記PCR産物を鋳型とし、PCRプライマーとして配列番号62と配列番号65からなる各オリゴヌクレオチドを用いて、表4に示す反応液を用い、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なうPCR反応をすることで、MalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。
Figure 0005812627
(3)(2)で作製したMalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとNcoIで消化した。これを制限酵素NdeIとNcoIで消化したpET26b(+)プラスミドベクター(Novagen社製)にライゲーションし、大腸菌E.coli BL21(DE3)株をヒートショック法により形質転換した。
(4)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し、形質転換体よりプラスミドDNAを抽出することで、プラスミドpETMalEを調製した。構造の概略を図4に示す。
(5)実施例1で作製したpUCFcR(図2)を鋳型とし、配列番号66(5’−TCAG[CCATGG]GACAAGTAGATACCACCAAAGCTGTGATTA−3’;角かっこ内は制限酵素NcoIサイト)と配列番号67(5’−CC[AAGCTT]AATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCAGTTGAAGACCCAG−3’;角かっこ内は制限酵素HindIIIサイト)からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして用い、表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なうPCR反応により、Fc結合性タンパク質を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(6)(5)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション後、大腸菌E.coli BL21(DE3)株をヒートショック法により形質転換した。
(7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し、菌体よりプラスミドDNAを抽出することで、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入したプラスミドpETFcRを調製した。その構造概略を図5に示す。
実施例3 塩基配列の解析
実施例1で作製したpUCFcR(図2)および実施例2で作製したpETFcR(図5)中に挿入されたポリヌクレオチドの塩基配列をチェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)にて解析した。なお、配列番号68(5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’)と配列番号69(5’−TATGCTAGTTATTGCTCAG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドをシークエンス用プライマーとして使用した。
解析の結果、pUCFcRおよびpETFcRに挿入されたポリヌクレオチドの配列は設計通りであることを確認した。pUCFcRに挿入されたポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号70に、前記ポリヌクレオチドから翻訳したFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号71に示した。また、pETFcRに挿入されたポリヌクレオチドの配列を配列番号72に、前記ポリヌクレオチドから翻訳したFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号73に示した。
実施例4 Fc結合性タンパク質の調製および抗体結合活性の測定
(1)pETFcR(図5)により形質転換された大腸菌E.coli BL21(DE3)株を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し(37℃で18時間)、さらに培養液を、再調製した50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地に接種した。
(2)培養液の濁度(600nmにおける吸光度)の値が0.5になったところで、培養温度を20℃に切り替えて30分培養後、IPTGを0.01mMとなるように培養液に添加し培養した(20℃で18時間)。
(3)培養終了後、遠心分離操作により菌体を集菌し、BugBuster Protein extraction kit(タカラバイオ社製)を用いて菌体からタンパク質を調製した。
(4)得られた調製タンパク質の抗体結合活性を、以下の方法でELISA法により評価した。
(4−1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellの濃度で固定し(4℃で18時間)、固定化終了後、StartingBlock Blocking Buffers(PIERCE社製)によりブロッキングした。
(4−2)洗浄緩衝液(0.2%(w/v)のTween 20と150mMのNaClを含む10mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0))で洗浄後、調製したタンパク質抽出液を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で適宜希釈し、固定化ガンマグロブリンと反応させた(30℃で2時間)。
(4−3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で再度洗浄し、Horse radish Peroxidase(HRP)標識の抗His−Tag抗体試薬(BETHYL社製)を添加した。
(4−4)30℃で2時間反応後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し450nmの吸光度を測定した。
測定結果を図6に示す。図中、X軸(横軸)はサンプルの希釈倍率を示し、Y軸(縦軸)は、450nmの吸光度(単位は任意)であり抗体結合活性を示す。図6に示すように、形質転換体から得られた可溶性タンパク質抽出液は、その濃度が高くなるほど(希釈倍率が小さいほど)吸光度の値が高くなった。すなわち、組み換えプラスミドであるpETFcR(図5)により大腸菌を形質転換した形質転換体が、Fc結合性タンパク質を発現することを確認できた。
実施例5 Fc結合性タンパク質への変異導入およびライブラリーの作製
(1)Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分に、エラープローンPCRによりランダムに変異導入を施した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表5に示す。
Figure 0005812627
PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。前記エラープローンPCRによりFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドに良好に変異が導入され、その平均変異導入率は0.14%であった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、同制限酵素で消化した実施例2で作製したpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、反応液をエレクトロポレーション法により大腸菌E.coli JM109株に導入し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養した(37℃で18時間)。
培養後プレート上には約50000個のコロニーが形成された。これらのコロニーを混合した混合コロニーから、プラスミドDNAを抽出しプラスミドライブラリーとした。
実施例6 安定性が向上したFc結合性タンパク質のスクリーニング
(1)実施例5で作製したプラスミドライブラリーを用いて、大腸菌E.coli BL21(DE3)株を形質転換した。
(2)前記形質転換体を、50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地(16g/LのTryptone、10g/LのYeast extract、5g/LのNaCl)200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、30℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、50μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(4)培養後、遠心操作により得られる培養上清を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で5倍希釈し、実施例4(4)に記載のELISA法を用いて抗体結合活性を測定した。また、前記培養上清を43℃で10分間熱処理後、同様にELISA法を用いて抗体結合活性を測定した。約2500株の形質転換体を評価し、前記形質転換体からpETFcRで発現されるFc結合性タンパク質と比較して熱安定性が向上した、Fc結合性タンパク質を発現する形質転換体を得ることができた。
(5)熱安定性または発現量が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr20Pro、Thr25Lys、Thr38Ala、Thr38Ser、Leu46Arg、Leu46Pro、Ala62Val、Thr63Ile、Ser69Phe、Ser69Thr、Arg71His、Val77Ala、Val77Glu、Asn78Asp、Asp94Glu、Ile100Val、Ser110Asn、Phe114Leu、His125Arg、Leu131Arg、Leu131Pro、Trp149Leu、Leu156Pro、Ile160Met、Asn163Ser、Asn195Thr、Thr199Ser、Asn206Lys、Asn206Ser、Asn206Thr、Leu207Pro、Leu218Val、Asn240Asp、Leu248Ser、Leu283His、またはLeu285Gln置換であった。熱処理後の抗体結合活性の残存率(残存活性)、アミノ酸置換の解析結果を表6に示す。表6に示すように、Fc結合性タンパク質に対しアミノ酸置換(変異)処理することで、Fc結合性タンパク質の熱安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例7 アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質の作製
実施例6で明らかになったFc結合性タンパク質の構造安定性向上に関与するアミノ酸置換を集積して、さらなる安定性向上を図った。置換アミノ酸の集積は、PCR法を主体に行ない、以下の4種類のFc結合性タンパク質を作製した。
(a)4箇所アミノ酸置換処理したFcRm4
(b)FcRm4に2箇所のアミノ酸置換を追加し、合計6箇所アミノ酸置換処理したFcRm6
(c)FcRm6に2箇所のアミノ酸置換を追加し、合計8箇所アミノ酸置換処理したFcRm8
(d)FcRm8に11箇所のアミノ酸置換を追加し、合計19箇所アミノ酸置換処理したFcRm19
以下、各のFc結合性タンパク質の作製方法を詳細に説明する。
(a)FcRm4
実施例6で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Leu46Pro、Thr63Ile、Phe114LeuおよびAsn240Aspを選択し、それらの置換を野生型のFc結合性タンパク質(アミノ酸置換していないFc結合性タンパク質)に集積したFcRm4を作製した。Leu46Pro、Thr63Ile、Phe114LeuおよびAsn240Aspからなるアミノ酸置換の集積には、スクリーニングで取得した、各アミノ酸が置換されたFc結合性タンパク質を発現する形質転換体中のpETFcRに挿入された、前記Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて行なった。
(a−1)スクリーニングで取得した、Leu46Pro置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むpETFcRプラスミドを鋳型とし、配列番号68および配列番号74(5’−AGGAACCATTGGGTTGAACTTGACCCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクルすることで行なった。
(a−2)スクリーニングで取得した、Thr63Ile置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むpETFcRプラスミドを鋳型とし、配列番号75(5’−TGGGTCAAGTTCAACCCAATGGTTCCT−3’)および配列番号76(5’−AGCAGCCAGCCACGATGAATTTCAAGTTGTATCGGATCGC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a−1)と同様にPCR反応を行なった。
(a−3)スクリーニングで取得した、Phe114Leu置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むpETFcRプラスミドを鋳型とし、配列番号77(5’−GTGGCCTGAGCGGCCGTAGCGATCCGATACAACTTGAAAT−3’)および配列番号78(5’−CCGCGCAGGGTTTTGCTGCCCATATAGAACGAGAAATACA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a−1)と同様にPCR反応を行なった。
(a−4)スクリーニングで取得した、Asn240Asp置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むpETFcRプラスミドを鋳型とし、配列番号79(5’−CGTCCCGGCCTGCAGCTGTATTTCTCGTTCTATATGGGCA−3’)および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a−1)と同様にPCR反応を行なった。
(a−5)(a−1)から(a−4)までの4種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
Figure 0005812627
(a−6)(a−5)で得られたPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を行なった。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。これにより4箇所アミノ酸置換処理したFcRm4をコードするポリヌクレオチドを作製した。
(a−7)(a−6)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株を形質転換した。
(a−8)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して4箇所アミノ酸置換処理したポリペプチドであるFcRm4をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm4を得た。
(a−9)pETFcRm4のヌクレオチド配列の解析を、実施例3と同様の方法で行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm4のアミノ酸配列を配列番号2に、前記FcRm4をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号6に示す。なお、配列番号2において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm4のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また配列番号2において、Leu46Proのプロリンは64番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目の位置にそれぞれある。
(b)FcRm6
実施例6で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ile100Val、Phe114LeuおよびAsn240Aspを選択し、それらの置換を野生型のFc結合性タンパク質に集積したFcRm6を作製した。前記作製したプラスミドpETFcRm4を基に、配列番号80(5’−TGCAACGTCACGGATTCTTCCTGGAA−3’)および配列番号81(5’−TTCCAGGAAGAATCCGTGACGTTGCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてThr38Serのアミノ酸置換を、配列番号82(5’−CAGCCAGCCACGATGAACTTCAAGTT−3’)および配列番号83(5’−AACTTGAAGTTCATCGTGGCTGGCTG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてIle100Valのアミノ酸置換を行ない、それをpETFcRm4に集積した。
(b−1)プラスミドpETFcRm4を鋳型とし、配列番号68および配列番号80からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。
(b−2)プラスミドpETFcRm4を鋳型とし、配列番号81および配列番号82からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(b−1)と同様にPCR反応を実施した。
(b−3)プラスミドpETFcRm4を鋳型とし、配列番号83および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(b−1)と同様にPCR反応を実施した。
(b−4)(b−1)から(b−3)の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
(b−5)(b−4)で得られたPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。これにより6箇所アミノ酸置換処理したFcRm6をコードするポリヌクレオチドを作製した。
(b−6)(b−5)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b−7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して6箇所アミノ酸置換処理したポリペプチドであるFcRm6をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm6を得た。
(b−8)pETFcRm6の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm6のアミノ酸配列を配列番号3に、前記FcRm6をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号7に示す。なお、配列番号3において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm6のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また配列番号3において、Thr38Serのセリンは56番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目の位置にそれぞれある。
(c)FcRm8
実施例6で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ile100Val、Phe114Leu、Ile160Met、Asn163SerおよびAsn240Aspを選択し、それらの置換を野生型のFc結合性タンパク質に集積したFcRm8を作製した。前記作製したプラスミドpETFcRm6を基に、配列番号84(5’−TACGTCCCGCTGTGGGACATGTTCGTCTTCAGA−3’)および配列番号85(5’−TCTGAAGACGAACATGTCCCACAGCGGGACGTA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてIle160MetとAsn163Serの2つのアミノ酸置換を行ない、それをpETFcRm6に集積した。
(c−1)プラスミドpETFcRm6を鋳型とし、配列番号68および配列番号84からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。
(c−2)プラスミドpETFcRm6を鋳型とし、配列番号85および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(c−1)と同様にPCR反応を行なった。
(c−3)(c−1)および(c−2)の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
(c−4)(c−3)で得られたPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。これにより8箇所アミノ酸置換処理したFcRm8をコードするポリヌクレオチドを作製した。
(c−5)(c−4)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c−6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して8箇所アミノ酸置換処理したポリペプチドであるFcRm8をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm8を得た。
(c−7)pETFcRm8の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm8のアミノ酸配列を配列番号4に、コードするポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号8に示す。なお、配列番号4において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm8のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また配列番号4において、Thr38Serのセリンは56番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Ile160Metのメチオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目の位置にそれぞれある。
(d)FcRm19
実施例6で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr20Pro、Thr25Lys、Thr38Ser、Leu46Pro、Thr63Ile、Ser69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Asp、Ile100Val、Phe114Leu、Ile160Met、Asn163Ser、Asn195Thr、Asn206Thr、Leu207Pro、Asn240Asp、Leu283HisおよびLeu285Glnを選択し、それらの置換を野生型のFc結合性タンパク質に集積したFcRm19を作製した。前記作製したプラスミドpETFcRm8を基に、配列番号86(5’−TGCAGCTTAATCACAGCTTTGGGGGTAT−3’)および配列番号87(5’−ATACCCCCAAAGCTGTGATTAAGCTGCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてThr20ProとThr25Lysの2つのアミノ酸置換を、配列番号88(5’−CGCTCGCGGAGGTAATGTGGTAAGTCGGGGT−3’)および配列番号89(5’−ATTACCTCCGCGAGCGAAGACGATTCG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてSer69Thr、Arg71His、Val77Glu、Asn78Aspの4つのアミノ酸置換を、配列番号90(5’−TCAAGCAGCGGGCTTGTCACACTCGCAGTCAGCA−3’)および配列番号91(5’−ACAAGCCCGCTGCTTGAAGGCACTCCGGTGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてAsn195Thr、Asn206Thr、Leu207Proの3つのアミノ酸置換を、配列番号92(5’−TCGGCTGTTGATGACCCAGCACTTGCAA−3’)および配列番号93(5’−TTGCAAGTGCTGGGTCATCAACAGCCGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いてLeu283HisとLeu285Glnの2つのアミノ酸置換を行ない、それをpETFcRm8に集積した。
(d−1)プラスミドpETFcRm8を鋳型として、配列番号68および配列番号86からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。
(d−2)プラスミドpETFcRm8を鋳型として、配列番号87および配列番号88からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(d−1)と同様にPCR反応を行なった。
(d−3)プラスミドpETFcRm8を鋳型として、配列番号89および配列番号90からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(d−1)と同様にPCR反応を行なった。
(d−4)プラスミドpETFcRm8を鋳型として、配列番号91および配列番号92からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(d−1)と同様にPCR反応を行なった。
(d−5)プラスミドpETFcRm8を鋳型として、配列番号93および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして(d−1)と同様にPCR反応を行なった。
(d−6)(d−1)から(d−5)の5種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
(d−7)(d−6)で得られたPCR産物を鋳型として、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。これにより19箇所アミノ酸置換処理したFcRm19をコードするポリヌクレオチドを作製した。
(d−8)(d−7)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドDNAであるpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(d−9)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して19箇所アミノ酸処理したポリペプチドであるFcRm19をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm19を得た。
(d−10)pETFcRm19の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm19のアミノ酸配列を配列番号5に、コードするポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号9に示す。なお、配列番号5において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm19のアミノ酸配列、308番目から313番目までのヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また配列番号5において、Thr20Proのプロリンは38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Ile160Metのメチオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Proのプロリンは225番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例8 アミノ酸置換を集積させたFc結合性タンパク質の生産性評価
(1)実施例2および実施例7で作製した形質転換体をそれぞれ50μg/mLのカナマイシンを添加した2YT液体培地に接種し、37℃で一晩振とう培養することで前培養を行なった。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加した2YT液体培地に接種し、37℃で振とう培養した。培養開始1.5時間後に培養温度を20℃に変更して、30分間振とう培養後、終濃度0.01mMとなるようIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後の菌体から可溶性タンパク質を抽出し、実施例4に記載のELISA法にて既知濃度のヒトFcγRIを対照に、抽出したFc結合性タンパク質のタンパク濃度を測定した。
実施例2および実施例7で作製した形質転換体により発現した、Fc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した結果を図7に示す。なお、図7中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させたアミノ酸置換していない(野生型の)Fc結合性タンパク質を示したものである。このFc結合性タンパク質に比べ、実施例7で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm4、FcRm6、FcRm8、FcRm19は、いずれも高い生産性が認められた。図7の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例9 Fc結合性タンパク質の調製
(1)実施例2と実施例7で作製した形質転換体を実施例8と同様な方法で前培養した。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加した2YT液体培地に接種し、37℃で振とう培養した。
(3)培養液濁度(OD600)が1.5から2.0になったところで、15℃に冷却し、0.1mMのIPTGを添加後、15℃で一晩振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離操作により得られた各菌体を、150mMのNaClと0.1mMのPMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride)を含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)にそれぞれ懸濁し、6℃に冷却しながら超音波破砕した後、遠心分離操作を行ない、上清を回収した。
(5)回収した上清から下記に示す方法でFc結合性タンパク質を精製した。
(5−1)回収した上清に終濃度で10mMとなるようイミダゾールを加え、あらかじめ150mMのNaClを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したニッケルキレートカラム(His・Bind Resin:Novagen社製)にアプライ後、150mMのNaClを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で洗浄し、500mMのイミダゾールを含むPBS(137mMのNaCl、8.10mMのリン酸水素二ナトリウム、2.68mMの塩化カリウム、1.47mMのリン酸水素カリウム)(pH7.0)を用いて溶出した。
(5−2)前記溶出液をあらかじめPBS(pH7.0)で平衡化したIgG Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア社製)にアプライし、PBS(pH7.0)で洗浄後、150mMのNaClと10%のグリセリンを含む20mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出した。なお溶出の際は、あらかじめ溶出量の1/4量の濃度1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)が入っている容器に溶出させた。
実施例10 Fc結合性タンパク質の熱安定性評価
各Fc結合性タンパク質の精製溶液をPBS(pH7.0)で4℃にて透析し、DSC(Differential Scanning Calorimetry)(示差走査熱量計)(VP Capillary DSC Platform、日本シイベルへグナー社製)を用いて、昇温速度60℃/時間の条件で変性中点温度(Tm)の測定を行なった。その結果を表8に示す。
Figure 0005812627
表8においてFcRは、実施例2で作製した形質転換体により発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。このFc結合性タンパク質に比べ、実施例7で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm4、FcRm6、FcRm8、FcRm19は、いずれもTmが上昇しており、熱安定性が向上していることを確認した。また、安定性向上に関与するアミノ酸置換を集積することにより、Fc結合性タンパク質の熱安定性を向上させることができた。
実施例11 Fc結合性タンパク質(FcRm8)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例7(c)で作製したFcRm8をコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例7(c)に記載のプラスミドpETFcRm8を、PCRプライマーとして配列番号66および配列番号67からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。
Figure 0005812627
PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli JM109株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養した(37℃で18時間)。培養後プレート上には約4000個のコロニーが形成された。これらのコロニーを混合した混合コロニーから、プラスミドDNAを抽出しFcRm8のランダム変異プラスミドライブラリーとした。
(4)(3)で作製したプラスミドライブラリーを用いて、大腸菌E.coli BL21(DE3)株を形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させた。これによりFcRm8のランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例12 Fc結合性タンパク質(FcRm8)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例11で作製したFcRm8のランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水にて10倍希釈後、0.1Mのグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)と等量混合し、53℃で20分間熱処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で中和した。
(4)約3000株の形質転換体より得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、以下の方法でELISA法により抗体結合活性を測定した。
(4−1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellの濃度で固定し(4℃で18時間)、固定化終了後、2%(w/v)のスキムミルクを含んだ50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)によりブロッキングした。
(4−2)洗浄緩衝液(0.2%(w/v)のTween 20と150mMのNaClを含む10mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0))で洗浄後、調製したタンパク質抽出液を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で適宜希釈し、固定化ガンマグロブリンと反応させた(30℃で1時間)。
(4−3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で再度洗浄し、Horse radish Peroxidase(HRP)標識の抗His−Tag抗体試薬(BETHYL社製)を添加した。
(4−4)30℃で1時間反応後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し450nmの吸光度を測定した。
(5)熱処理(53℃で20分間)したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、熱処理しないときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(6)FcRm8と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm8と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm8に存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr20Ile、Glu36Gly、Glu44Asp、Val45Ala、Pro49Ser、Gly60Asp、Thr63Leu、Thr65Ala、Ser66Thr、Ser69Thr、Thr73Ala、Val77Glu、Asn78Ser、Arg102Ser、His125Arg、Leu131Pro、Tyr133His、Arg139His、Lys142Glu、Phe147Ser、His148Arg、His148Gln、Trp149Arg、Asn152Ile、Asn152Thr、Leu156His、Leu156Pro、Ile160Thr、Ile160Val、Ile160Leu、Met171Thr、Lys173Arg、Ile181Thr、Leu203His、Asn206Ser、Leu207Gln、Gln219Pro、Leu225Gln、Met231Lys、Arg251Ser、Leu257Arg、Leu257Gln、Gly282Asp、Leu285Gln、Leu285Arg、またはVal298Asp置換であった。熱処理後の抗体結合活性の残存率(残存活性)、アミノ酸置換の解析結果を表10に示す。表10に示すように、FcRm8に対しさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例13 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の作製
実施例12で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Glu36Gly、Val45Ala、Pro49Ser、Gly60Asp、Thr65Ala、Tyr133His、Arg139His、Trp149Arg、Leu156Pro、Ile160Thr、Lys173Arg、Ile181Thr、Leu203His、Leu207GlnおよびMet231Lysを選択し、それらの置換を実施例7(d)に記載のFcRm19に対してさらに集積することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して32箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm32を作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、
(i)Glu36Glyのアミノ酸置換のために配列番号94(5’−ACGTCACGGATTCTCCCTGGAACACGCTCA−3’)および配列番号95(5’−TGAGCGTGTTCCAGGGAGAATCCGTGACGT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Val45Alaのアミノ酸置換のために配列番号96(5’−AGACAGATGCGGTGCTTCGCAGTGCAA−3’)および配列番号97(5’−TTGCACTGCGAAGCACCGCATCTGTCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iii)Pro49Serのアミノ酸置換のために配列番号98(5’−AACTTGACCCAGACAGATGCGGTACTT−3’)および配列番号99(5’−AAGTACCGCATCTGTCTGGGTCAAGTT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iv)Gly60AspおよびThr65Alaのアミノ酸置換のために配列番号100(5’−GGGTGGAGGCCTGGATCGCGGTGTCATTCAGGA−3’)および配列番号101(5’−TCCTGAATGACACCGCGATCCAGGCCTCCACCC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(v)Tyr133HisおよびArg139Hisのアミノ酸置換のために配列番号102(5’−TTGTGGTAGTAAAGCACGTTGTGCACCAGCTT−3’)および配列番号103(5’−TGCACAACGTGCTTTACTACCACAACGGCAA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(vi)Trp149Argのアミノ酸置換のために配列番号104(5’−AGGTTGGAGTTCCGGTGGAAGAACTTAA−3’)および配列番号105(5’−TTAAGTTCTTCCACCGGAACTCCAACCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(viii)Leu156ProおよびIle160Thrのアミノ酸置換のために配列番号106(5’−TGTGGGACGTGTTCGTCTTCGGAATGGTCA−3’)および配列番号107(5’−TGACCATTCCGAAGACGAACACGTCCCACA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ix)Lys173Argのアミノ酸置換のために配列番号108(5’−TCCCGCCGACGTATAACGATGTCTGCCCAT−3’)からなるオリゴヌクレオチドを、
(x)Ile181Thrのアミノ酸置換のために配列番号109(5’−ACATCGTTATACGTCGGCGGGAACCTCGGTCA−3’)からなるオリゴヌクレオチドを、
(xi)Leu203HisおよびLeu207Glnのアミノ酸置換のために配列番号110(5’−AGGGTCACCTGAGTGCCTTCATGCAGCGG−3’)および配列番号111(5’−CCGCTGCATGAAGGCACTCAGGTGACCCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(xii)Met231Lysのアミノ酸置換のために配列番号112(5’−CGCAGGGTTTTGCTGCCCTTATAGAACGA−3’)および配列番号113(5’−TCGTTCTATAAGGGCAGCAAAACCCTGCG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例7(d)に記載のプラスミドpETFcRm19を鋳型とし、配列番号68と配列番号94からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p1とした。
(2)実施例7(d)に記載のプラスミドpETFcRm19を鋳型とし、配列番号95と配列番号106からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p2とした。
(3)実施例7(d)に記載のプラスミドpETFcRm19を鋳型とし、配列番号107と配列番号110からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p3とした。
(4)実施例7(d)に記載のプラスミドpETFcRm19を鋳型とし、配列番号111と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p4とした。
(5)前記のm32p1、m32p2、m32p3およびm32p4の4種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
(6)(5)のPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p5とした。
(7)前記のm32p5を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号98からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p6とした。
(8)前記のm32p5を精製し、それを鋳型として、配列番号99と配列番号104からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p7とした。
(9)前記のm32p5を精製し、それを鋳型として、配列番号105と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p8とした。
(10)前記のm32p6、m32p7およびm32p8の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p9とした。
(11)前記のm32p9を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号100からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p10とした。
(12)前記のm32p9を精製し、それを鋳型として、配列番号101と配列番号108からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p11とした。
(13)前記のm32p9を精製し、それを鋳型として、配列番号109と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p12とした。
(14)前記のm32p10、m32p11およびm32p12の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p13とした。
(15)前記のm32p13を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号96からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p14とした。
(16)前記のm32p13を精製し、それを鋳型として、配列番号97と配列番号102からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p15とした。
(17)前記のm32p13を精製し、それを鋳型として、配列番号103と配列番号112からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p16とした。
(18)前記のm32p13を精製し、それを鋳型として、配列番号113と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm32p17とした。
(19)前記のm32p14、m32p15、m32p16およびm32p17の4種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。
(20)(19)のPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。(21)(20)で得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して32箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm32をコードするポリヌクレオチドを得た。
(22)前記のFcRm32をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(23)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm32をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm32を得た。
(24)pETFcRm32の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm32のアミノ酸配列を配列番号114に、前記FcRm32をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号115に示す。なお、配列番号114において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm32のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号114において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Val45Alaのアラニンは63番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Met231Lysのリジンは249番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例14 Fc結合性タンパク質(FcRm32)の生産性評価
(1)実施例13で作製した形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB液体培地に接種し、37℃で一晩振とう培養することで前培養を行なった。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB液体培地に接種し、37℃で振とう培養した。培養開始1.5時間後に培養温度を20℃に変更して、30分間振とう培養後、終濃度0.01mMとなるようIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養終了後、遠心分離操作により菌体を集菌し、BugBuster Protein extraction kit(タカラバイオ社製)を用いて菌体からタンパク質を調製した。
(4)得られた調製タンパク質の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法により評価することでFc結合性タンパク質の生産性を測定した。Fc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した結果を図8に示す。なお、図8中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。またFcRm19は、実施例7(d)の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例13で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm32は、いずれも高い生産性が認められた。図8の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例15 Fc結合性タンパク質(FcRm32)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm19、FcRm32)および、野生型Fc結合性タンパク質を調製し実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)濃度測定を行なったタンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で5分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、実施例12(4)に記載のELISA法でアルカリ処理、未処理サンプルの抗体結合活性を測定した。
(4)測定されたアルカリ処理後の抗体結合活性を、アルカリ未処理時の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図9に示した。図9中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。またFcRm19は、実施例7(d)の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例13で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm32は、FcRやFcRm19に比べアルカリに対する安定性が高いことが認められた。図9の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例16 Fc結合性タンパク質(FcRm32)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例13で作製したFcRm32をコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例13に記載のプラスミドpETFcRm32を、PCRプライマーとして配列番号66および配列番号67からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli JM109株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養した(37℃で18時間)。培養後プレート上には約19000個のコロニーが形成された。これらのコロニーを混合した混合コロニーから、プラスミドDNAを抽出しFcRm32のランダム変異プラスミドライブラリーとした。
(4)(3)で作製したプラスミドライブラリーを用いて、大腸菌E.coli BL21(DE3)株を形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させた。これによりFcRm32のランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例17 安定性が向上したFc結合性タンパク質(FcRm32)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例16で作製したFcRm32のランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で10倍希釈し、0.1Mのグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)と等量混合し、70℃で20分間熱処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で中和した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、熱処理(70℃で20分間)した場合のFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、熱処理しないときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm32と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm32と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm32に存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Gln27Pro、Glu35Leu、Leu41Met、Ser51Thr、Ser51Pro、Ser52Gly、Ser53Leu、Gly60Gly、Thr63Leu、Gln64Pro、Thr73Ser、Val77Asp、Ser80Ala、Leu89Gln、Arg92Cys、Gln97Leu、Asp129Gly、Leu131Gln、Leu131Pro、Tyr133Arg、Asn134Ser、Tyr138His、Phe144Ile、His148Arg、Asn152Thr、Lys157Arg、Ser182Thr、Val193Leu、Val198Gly、Ser200Gly、Ser200Arg、Leu207Pro、Leu207His、Ser211Arg、Leu223Arg、Asn240Gly、Gln246Arg、Ala250Val、Thr264Ser、Asn268Ser、Glu277Val、またはThr287Ileの置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Gly60Gly)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している(以下、同様)。熱処理後の抗体結合活性の残存率(残存活性)、アミノ酸置換の解析結果を表11に示す。表11に示すように、FcRm32に対しさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例18 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)の作製
実施例17で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Glu35Leu、Leu41Met、Ser52GlyおよびAsn152Thrを選択し、それらの置換を実施例13に記載のFcRm32に対してさらに集積することで、野生型Fc結合性タンパク質に対して36箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm36bを作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、Glu35Leu、Leu41MetおよびSer52Glyのアミノ酸置換のために配列番号116(5’−ATGCGGTGCTTCGCAGTGCATCGTCACGGATTCTCCCAGGAACA−3’)および配列番号117(5’−GACGATGCACTGCGAAGCACCGCATCTGTCTGGGTCAGGTTCAA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例13に記載のプラスミドpETFcRm32を鋳型として、配列番号68と配列番号116からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm36bp1とした。
(2)実施例17のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm32にさらに、Asn152Thrが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号117と配列番号92からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm36bp2とした。
(3)実施例13に記載のプラスミドpETFcRm32を鋳型として、配列番号93と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm36bp3とした。
(4)前記のm36bp1、m36bp2およびm36bp3の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して36箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm36bをコードするポリヌクレオチドを得た。
(5)前記のFcRm36bをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm36bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm36bを得た。
(7)pETFcRm36bの塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm36bのアミノ酸配列を配列番号118に、前記FcRm36bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号119に示す。なお、配列番号118において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm36bのアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号118において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、Val45Alaのアラニンは63番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Met231Lysのリジンは249番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例19 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)の生産性評価
実施例18と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図10に示す。なお、図10中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現した、野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図10中のFcRm32は、実施例13の形質転換体を用いて発現した、Fc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例18で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm36bは、高い生産性が認められた。図10の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例20 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b)および野生型Fc結合性タンパク質を調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)濃度測定を行なったタンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で5分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定した、アルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図11に示す。図11中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図11中のFcRm32は、実施例13の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらFcRやFcRm32に比べ、実施例18で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm36bは、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図11の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例21 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例18で作製したFcRm36bをコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例18に記載のプラスミドpETFcRm36bを、PCRプライマーとして配列番号120(5’−TCAGCCATGGGACAAGTAGATACCCCCAAAGCTGTGATTA−3’)および配列番号121(5’−CCAAGCTTAATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCTGTTGATGACCCAG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm36bのランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例22 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例21で作製したFcRm36bのランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、400mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で60分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm36bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm36bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm36bに存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr25Met、Gln35Met、His42Leu、Ser53Thr、Gln64His、Thr67Ala、Thr67Ser、Val77Lys、Leu89Pro、Ser90Gly、Gln97Leu、Gln97Lys、Arg102Leu、Gly103Asp、Thr115Ile、Glu118Asp、Lys128Arg、Asp129Gly、Leu131Gln、Tyr133Tyr、Lys142Arg、Asn152Pro、Lys157Arg、Ser182Thr、Ser182Leu、Thr199Ala、Leu203Leu、Glu213Val、Lys215Arg、Lys215Glu、Leu218Ile、Gln224Arg、Tyr230His、Ser233Gly、Lys234Glu、Glu244Val、Thr249Ala、Thr249Ser、Glu253Gly、Glu261Val、Ala262Val、Ala263Ser、Glu265Ala、Glu265Gly、Leu270His、Lys271Arg、Gln279Arg、Gln279His、Leu283Pro、Pro286Gln、Thr287Ile、Thr287Pro、Val289Ala、Val289Asp、またはVal289Gly置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Tyr133Tyr)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表12に示す。表12に示すように、FcRm36bに対しさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例23 Fc結合性タンパク質(FcRm44)の作製
実施例22で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Gln97Leu、Lys128Arg、Lys157Arg、Ser182Leu、Glu213Val、Leu218Ile、Thr249AlaおよびGlu261Valを選択し、それらの置換を実施例18に記載のFcRm36bに対してさらに集積して、野生型Fc結合性タンパク質に対して44箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm44を作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、
(i)Lys128Argのアミノ酸置換のために配列番号122(5’−CAGCTTATCTCTCCATGCGTGGCAA−3’)および配列番号123(5’−TTGCCACGCATGGAGAGATAAGCTG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Lys157Argのアミノ酸置換のために配列番号124(5’−ACGTGTTCGTCCTCGGAATGGTCAGGGT−3’)および配列番号125(5’−ACCCTGACCATTCCGAGGACGAACACGT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iii)Glu213ValおよびLeu218Ileのアミノ酸置換のために配列番号126(5’−ACGCTGTATCAGCAGTTTGGTTACGCAGCTCA−3’)および配列番号127(5’−TGAGCTGCGTAACCAAACTGCTGATACAGCGT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iv)Thr249Alaのアミノ酸置換のために配列番号128(5’−ACGACGCGCGGCTAAAATCTGATACT−3’)および配列番号129(5’−AGTATCAGATTTTAGCCGCGCGTCGT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例22のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm36bにさらにGln97LeuおよびGlu261Val置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号122からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p1とした。
(2)実施例22のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm36bにさらにGln97LeuおよびGlu261Val置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号123と配列番号128からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p2とした。
(3)実施例22のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm36bにさらにGln97LeuおよびGlu261Val置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号129と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p3とした。
(4)前記のm44p1、m44p2およびm44p3の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p4とした。
(5)前記のm44p4を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号124からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p5とした。
(6)実施例22のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm36bにさらにSer182LeuおよびGlu213Val置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号125と配列番号126からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p6とした。
(7)前記のm44p4を精製し、それを鋳型として、配列番号127と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm44p7とした。
(8)前記のm44p5、m44p6およびm44p7の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して44箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm44をコードするポリヌクレオチドを得た。
(9)前記のFcRm44をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(10)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm44をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm44を得た。
(11)pETFcRm44の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm44のアミノ酸配列を配列番号130に、前記FcRm44をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号131に示す。なお、配列番号130において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm44のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号130において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、Val45Alaのアラニンは63番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Met231Lysのリジンは249番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Glu261Valのバリンは279番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例24 Fc結合性タンパク質(FcRm44)の生産性評価
実施例23と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図12に示す。なお、図12中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例23で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm44は、高い生産性が認められた。図12の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例25 Fc結合性タンパク質(FcRm44)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm36b、FcRm44)および野生型Fc結合性タンパク質を調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で10分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定した、アルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図13に示す。図13中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図13中のFcRm36bは、実施例18の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらFc結合性タンパク質に比べ、実施例23で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm44は、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図13の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例26 Fc結合性タンパク質(FcRm44)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例23で作製したFcRm44をコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例23に記載のプラスミドpETFcRm44を、PCRプライマーとして配列番号120および配列番号121の各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm44のランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例27 Fc結合性タンパク質(FcRm44)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例26で作製したFcRm44のランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、400mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で120分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm44と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm44と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm44に存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Val17Gly、Thr19Ile、Thr25Met、Thr25Arg、Gln35Met、Glu44Asp、Leu46Ser、His47Gln、His47Leu、Pro49Ala、Gly50Arg、Ser51Thr、Ser51Leu、Ser51Pro、Gln55Arg、Ala62Val、Gln64Leu、Ser69Ala、Thr73Ala、Asn78Gly、Ser80Ala、Gly88Ser、Ser90Gly、His101Leu、Gly103Ser、Ala121Thr、Ala121Val、Lys128Gly、Leu131Gln、Asn134Ser、Tyr137Phe、Ser151Thr、Asn159Thr、Thr165Met、Thr184Ser、Asn195Asn、Asn195Ala、Ala196Ser、Thr199Ser、Leu203Gln、Glu204Val、Ser211Gly、Gln219Arg、Gln224Arg、Phe227Ile、Ser233Asn、Lys234Glu、Gln246Arg、Leu248Ile、Arg252His、Leu257Gln、Asn268Ile、Gln279Arg、Gly282Asp、Pro286Arg、Thr287Pro、Thr287Ala、Thr287Val、Val289Ala、Val289Asp、またはVal289Leu置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Asn195Asn)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表13に示す。表13に示すように、FcRm44に対しさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例28 Fc結合性タンパク質(FcRm48)の作製
実施例27で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Ser51Thr、Leu131Gln、Tyr137PheおよびThr184Serを選択し、それらの置換を実施例23に記載のFcRm44に対してさらに集積して、野生型Fc結合性タンパク質に対して48箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm48を作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、Leu131Glnのアミノ酸置換のために配列番号132(5’−GTGCACCTGCTTATCTCTCCATGCGT−3’)および配列番号133(5’−ACGCATGGAGAGATAAGCAGGTGCAC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例27のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm44にさらにSer51Thr、Tyr137PheおよびThr184Ser置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号132からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm48p1とした。
(2)実施例27のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm44にさらにSer51Thr、Tyr137PheおよびThr184Ser置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号133と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm48p2とした。
(3)前記のm48p1およびm48p2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して48箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm48をコードするポリヌクレオチドを得た。
(4)前記のFcRm48をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(5)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm48をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm48を得た。
(6)pETFcRm48の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm48のアミノ酸配列を配列番号134に、前記FcRm48をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号135に示す。なお、配列番号134において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm48のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号134において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、Val45Alaのアラニンは63番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Thrのスレオニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Leu131Glnのグルタミンは149番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Met231Lysのリジンは249番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Glu261Valのバリンは279番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例29 Fc結合性タンパク質(FcRm48)の生産性評価
実施例28と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図14に示す。なお、図14中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例28で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm48は、高い生産性が認められた。図14の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例30 Fc結合性タンパク質(FcRm48)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm44、FcRm48)および野生型Fc結合性タンパク質を調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で50分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定した、アルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図15に示す。図15中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図15中のFcRm44は、実施例23の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例28で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm48は、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図15の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例31 Fc結合性タンパク質(FcRm48)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例28で作製したFcRm48をコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例28に記載のプラスミドpETFcRm48を、PCRプライマーとして配列番号120および配列番号121からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm48のランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例32 安定性が向上したFc結合性タンパク質(FcRm48)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例31で作製したFcRm48のランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、600mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で120分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm48と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm48と比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm48に存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr25Met、Gln35Arg、His42Leu、Val45Val、His47Asn、Ser51Ala、Ser53Pro、Gln64Lys、Arg71Tyr、Val77Val、Ile96Val、Ser151Thr、Asn159Asp、Thr199Ser、Thr199Ala、Leu207Arg、Thr209Ala、Glu213Ile、Lys215Glu、Leu223Arg、Leu223Gln、Lys234Glu、Asn240Gly、Glu261Ala、Asn268Thr、Leu270Arg、Leu270Val、Arg272Gln、Pro286Glu、Pro286Ser、Pro286Gln、Thr287Pro、Thr287Ser、Pro288Ala、Pro288Ser、Val289Ala、Val289Asp、またはVal289Glyの置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Val77Val)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表14に示す。表14に示すように、FcRm48に対しさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例33 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)の作製
実施例32で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、His42Leu、Ser51Ala、Ser151Thr、Thr199Ala、Lys234GluおよびLeu270Valを、実施例27で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Thr73Ala、Ala121Valを、それぞれ選択し、それらの置換を実施例28に記載のFcRm48に対してさらに集積し、さらにVal45Alaのアミノ酸置換をバリンに戻す置換を行なうことで、野生型Fc結合性タンパク質に対して54箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm54bを作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、
(i)His42Leuのアミノ酸置換のために配列番号136(5’−CTTCGCAGAGCATCGTCACGGATTCT−3’)および配列番号137(5’−AGAATCCGTGACGATGCTCTGCGAAG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Thr73Alaのアミノ酸置換のために配列番号138(5’−TCGCTCGCGGAGGCAATGTGGTAAGT−3’)および配列番号139(5’−ACTTACCACATTGCCTCCGCGAGCGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iii)Ala121Valのアミノ酸置換のために配列番号140(5’−TGGCAACGTAATACAAGCGGTTCGCCT−3’)および配列番号141(5’−AGGCGAACCGCTTGTATTACGTTGCCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iv)Ser151Thrのアミノ酸置換のために配列番号142(5’−TGGTCAGGGTTGTGTTCCGGTGGAAGAA−3’)および配列番号143(5’−TTCTTCCACCGGAACACAACCCTGACCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(v)Lys234Gluのアミノ酸置換のために配列番号144(5’−TCCGCGCAGGGTTTCGCTGCCCTTATA−3’)および配列番号145(5’−TATAAGGGCAGCGAAACCCTGCGCGGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(vi)Leu270Valのアミノ酸置換のために配列番号146(5’−TGGGCTCCGTTTAACCACATTGCCAT−3’)および配列番号147(5’−ATGGCAATGTGGTTAAACGGAGCCCA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例32のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm48にさらにSer51AlaおよびThr199Alaのアミノ酸置換があり、かつVal45Alaのアミノ酸置換がバリンに戻っているFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号138からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp1とした。
(2)実施例32のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm48にさらにSer51AlaおよびThr199Alaのアミノ酸置換があり、かつVal45Alaのアミノ酸がバリンに戻っているFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号139と配列番号140からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp2とした。
(3)実施例32のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm48にさらにSer51AlaおよびThr199Alaのアミノ酸置換があり、かつVal45Alaのアミノ酸置換がバリンに戻っているFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号141と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp3とした。
(4)前記のm54bp1、m54bp2およびm54bp3の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp4とした。
(5)前記のm54bp4を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号142からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp5とした。
(6)前記のm54bp4を精製し、それを鋳型として、配列番号143と配列番号146からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp6とした。
(7)前記のm54bp4を精製し、それを鋳型として、配列番号147と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp7とした。
(8)前記のm54bp5、m54bp6およびm54bp7の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp8とした。
(9)前記のm54bp8を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号136からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp9とした。
(10)前記のm54bp8を精製し、それを鋳型として、配列番号137と配列番号144からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp10とした。
(11)前記のm54bp8を精製し、それを鋳型として、配列番号145と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm54bp11とした。
(12)前記のm54bp9、m54bp10およびm54bp11の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して54箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm54bをコードするポリヌクレオチドを得た。
(13)前記のFcRm54bをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(14)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm54bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm54bを得た。
(15)pETFcRm54bの塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm54bのアミノ酸配列を配列番号148に、前記FcRm54bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号149に示す。なお、配列番号148において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm54bのアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号148において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Leu131Glnのグルタミンは149番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Met231Lysのリジンは249番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Glu261Valのバリンは279番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例34 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)の生産性評価
実施例33と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図16に示す。なお、図16中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例33で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm54bは、高い生産性が認められた。図16の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例35 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm48、FcRm54b)および野生型Fc結合性タンパク質を調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で120分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定したアルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図17に示す。図17中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図17中のFcRm48は、実施例28の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例33で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm54bは、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図17の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例36 Fc結合性タンパク質(FcRm54b)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例33で作製したFcRm54bをコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例33に記載のプラスミドpETFcRm54bを、PCRプライマーとして配列番号120および配列番号121からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm54bのランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例37 安定性が向上したFc結合性タンパク質(FcRm54b)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例36で作製したFcRm54bのランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、700mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で120分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm54bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm54bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm54bに存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr25Met、Gln35Gln、Leu41Leu、His47Gln、His47Asn、Ser53Pro、Phe57Tyr、Leu58Arg、Ala62Glu、Tyr70His、Arg92Leu、Ser111Ala、Thr115Ile、Glu118Asp、Tyr133Tyr、Gly141Asp、Gly141Val、Thr154Ser、Ser182Val、Thr184Thr、Pro190Ser、Leu202Met、Leu203Tyr、Leu207Pro、Glu213Glu、Leu217Arg、Leu218Met、Leu218Lys、Gln219Arg、Met231Arg、Glu244Val、Tyr245His、Leu248Ser、Glu261Glu、Ala263Ser、Pro286Gln、Thr287Ala、Pro288Thr、Val289Gly、Val289Asp、またはVal289Leu置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Gln35Gln)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表15に示す。表15に示すように、FcRm54bへさらにアミノ酸残基の置換(変異)が起こることで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例38 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)の作製
実施例37で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Leu58Arg、Ser111AlaおよびThr115Ileを選択し、それらの置換を実施例33に記載のFcRm54bに対してさらに集積し、さらにGlu261Valのアミノ酸置換をグルタミンに戻す置換を行なうことで、野生型Fc結合性タンパク質に対して56箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm56bを作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、
(i)Ser111Alaのアミノ酸置換のために配列番号150(5’−AAACGCGGGCGCTAACCTGTAAAAGCA−3’)および配列番号151(5’−TGCTTTTACAGGTTAGCGCCCGCGTTT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Glu261Valのアミノ酸置換を元のグルタミン(Glu)に戻すために配列番号152(5’−TCGGTCGCCGCTTCACACCAGTACA−3’)および配列番号153(5’−TGTACTGGTGTGAAGCGGCGACCGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例37のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm54bに、さらにLeu58ArgおよびThr115Ileが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号152からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm56bp1とした。
(2)実施例37のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm54bに、さらにLeu58ArgおよびThr115Ileが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号153と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm56bp2とした。
(3)前記のm56bp1およびm56bp2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm56bp3とした。
(4)前記のm56bp3を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号150からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm56bp4とした。
(5)前記のm56bp3を精製し、それを鋳型として、配列番号151と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm56bp5とした。
(6)前記のm56bp4およびm56bp5の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して56箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm56bをコードするポリヌクレオチドを得た。
(7)前記のFcRm56bをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(8)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm56bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm56bを得た。
(9)pETFcRm56bの塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm56bのアミノ酸配列を配列番号154に、前記FcRm56bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号155に示す。なお、配列番号154において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm56bのアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号154において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Leu58Argのアルギニンは76番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Ser111Alaのアラニンは129番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Thr115Ileのイソロイシンは133番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Leu131Glnのグルタミンは149番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Leu203Hisのヒスチジンは221番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Glnのグルタミンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Met231Lysのリジンは249番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例39 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)の生産性評価
実施例38と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図18に示す。なお、図18中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例38で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm56bは、高い生産性が認められた。図18の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例40 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm54b、FcRm56b)および野生型Fc結合性タンパク質を調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で180分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定したアルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図19に示した。図19中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図19中のFcRm54bは、実施例33の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例38で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm56bは、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図19の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例41 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例38で作製したFcRm56bをコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例38に記載のプラスミドpETFcRm56bを、PCRプライマーとして配列番号120および配列番号121からなる各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm56bのランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例42 安定性が向上したFc結合性タンパク質(FcRm56b)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例41で作製したFcRm56bのランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、800mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で180分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm56bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm56bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm56bに存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Thr19Ile、Thr25Thr、Thr25Met、Thr38Ala、Ser53Thr、Thr61Ala、Thr63Phe、Tyr70Phe、Asn78Gly、Leu131Leu、Asn140Asp、Thr154Ser、Ser161Thr、Thr177Ser、Leu203Arg、Leu207Pro、Lys215Arg、Tyr230Phe、Ser233Gly、Asn268Ser、Leu283Leu、Leu285His、Asn286Ser、Thr287Pro、Val289Ala、Val289Asp、Val289Leu、またはVal289Ile置換であった。なお前記置換のうち、表記したアミノ酸が変化していないもの(例えば、Thr25Thr)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表16に示す。表16に示すように、FcRm56bへさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例43 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)の作製
実施例42で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Tyr70Phe、Leu207Pro、Tyr230PheおよびSer233Glyを選択し、それらの置換を実施例38に記載のFcRm56bに対してさらに集積し、さらにLeu131GlnおよびLeu203Hisのアミノ酸置換をロイシンに戻す置換を行なうことで、野生型Fc結合性タンパク質に対して57箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm57bを作製した。なお、
(i)Tyr70Pheのアミノ酸置換のために配列番号156(5’−AGGCAATGTGGAAAGTCGGGGTGGA−3’)および配列番号157(5’−TCCACCCCGACTTTCCACATTGCCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Leu207Proのアミノ酸置換のために配列番号158(5’−AGCTCAGGGTCACCGGAGTGCCTTCA−3’)および配列番号159(5’−TGAAGGCACTCCGGTGACCCTGAGCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iii)Tyr230Pheのアミノ酸置換のために配列番号160(5’−GCCCTTAAAGAACGAGAAATACAGCT−3’)および配列番号161(5’−AGCTGTATTTCTCGTTCTTTAAGGGC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(iv)Ser233Glyのアミノ酸置換のために配列番号162(5’−TCCGCGCAGGGTTTCGCCGCCCTTA−3’)および配列番号163(5’−TAAGGGCGGCGAAACCCTGCGCGGA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例42のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm56bのうち、Leu131GlnおよびLeu203Hisのアミノ酸置換をそれぞれロイシンに戻したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号156からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp1とした。
(2)実施例42のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm56b内のLeu131GlnおよびLeu203Hisのアミノ酸置換をそれぞれロイシンに戻したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号157と配列番号162からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp2とした。
(3)実施例42のスクリーニングで取得したFc結合性タンパク質FcRm56b内のLeu131GlnおよびLeu203Hisのアミノ酸置換をそれぞれロイシンに戻したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号163と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp3とした。
(4)前記のm57bp1、m57bp2およびm57bp3の3種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp4とした。
(5)前記のm57bp4を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号158からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp5とした。
(6)前記のm57bp4を精製し、それを鋳型として、配列番号159と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp6とした。
(7)前記のm57bp5およびm57bp6の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp7とした。
(8)前記のm57bp7を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号160からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp8とした。
(9)前記のm57bp7を精製し、それを鋳型として、配列番号161と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm57bp9とした。
(10)前記のm57bp8およびm57bp9の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して57箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm57bをコードするポリヌクレオチドを得た。
(11)前記のFcRm57bをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(12)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm57bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm57bを得た。
(13)pETFcRm57bの塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm57bのアミノ酸配列を配列番号164に、前記FcRm57bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号165に示す。なお、配列番号164において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm57bのアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号154において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Leu58Argのアルギニンは76番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Tyr70Pheのフェニルアラニンは88番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Ser111Alaのアラニンは129番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Thr115Ileのイソロイシンは133番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Proのプロリンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Tyr230Pheのフェニルアラニンは248番目、Met231Lysのリジンは249番目、Ser233Glyのグリシンは251番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目の位置にそれぞれある。
実施例44 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)の生産性評価
実施例43と実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図20に示す。なお、図20中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例43で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm57bは、高い生産性が認められた。図20の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例45 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm56b、FcRm57b)および、野生型Fc結合性タンパク質を調製し実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で120分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定したアルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図21に示す。図21中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図21中のFcRm56bは、実施例38の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例43で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm57bは、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図21の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例46 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)への変異導入およびライブラリーの作製
(1)エラープローンPCRにより、実施例43で作製したFcRm57bをコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。エラープローンPCR反応における反応液組成を表9に示す。なお、鋳型DNAとして実施例43に記載のプラスミドpETFcRm57bを、PCRプライマーとして配列番号120および配列番号121の各オリゴヌクレオチドを使用した。PCR反応は、95℃で2分間熱処理後、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(2)前記PCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドpETMalE(図4)にライゲーション反応により挿入した。
(3)反応終了後、得られたライゲーション産物を用いて大腸菌E.coli BL21(DE3)株をエレクトロポレーション法により形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、FcRm57bのランダム変異形質転換体ライブラリーを作製した。
実施例47 安定性が向上したFc結合性タンパク質(FcRm57b)ライブラリーのスクリーニング
(1)実施例46で作製したFcRm57bのランダム変異形質転換体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を純水で5倍希釈し、1000mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、30℃で180分間アルカリ処理後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いてpHを中性領域に戻した。
(4)実施例12(4)に記載のELISA法を用いて約3000株の形質転換体から得られたFc結合性タンパク質の抗体結合活性を測定し、(3)のアルカリ処理したときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(5)FcRm57bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体よりプラスミドを調製し、前記プラスミドに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、実施例3に記載の方法にて解析し、FcRm57bと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質に存在したアミノ酸の変異箇所を特定した。
ヌクレオチド配列解析の結果、明らかとなったFc結合性タンパク質のアミノ酸の置換箇所(ただし、FcRm57bに存在するものは除く)をまとめると、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、Val17Glu、Gln27Lys、Leu41Leu、Gly50Glu、Ser51Val、Ser53Leu、Thr61Ser、Thr65Val、Ser74Phe、Ser76Asn、Arg84Ser、Gly88Ser、Leu89Pro、Ile96Lys、Thr115Phe、Glu118Asp、Asp129Gly、Gly141Asp、Asn159Asp、Thr165Met、Lys173Lys、His174Gln、Ser182Glu、Val198Met、Leu202Met、Leu203Pro、Glu213Ile、Leu217Gln、Leu223Met、Tyr245Glu、Gln246Lys、Leu248Ile、Gln279Arg、Pro286Gln、Thr287Pro、Thr287Ser、Val289Ala、Val289Asp、またはVal289Gly置換であった。なお前記置換のうち、アミノ酸が変化していないもの(例えば、Leu41Leu)は、一度置換(変異)したアミノ酸が野生型のアミノ酸に戻ったことを示している。アミノ酸置換の解析結果を表17に示す。表17に示すように、FcRm57bへさらにアミノ酸置換処理することで、Fc結合性タンパク質の安定性が向上することが明らかとなった。
Figure 0005812627
実施例48 Fc結合性タンパク質(FcRm61)の作製
実施例47で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Glu118Asp、Thr165Met、Gln246LysおよびVal289Aspを選択し、それらの置換を実施例43に記載のFcRm57bに対してさらに集積して、野生型Fc結合性タンパク質に対して61箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm61を作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、
(i)Glu118Aspのアミノ酸置換のために配列番号166(5’−TACAAGCGGGTCGCCTTCGATTAAA−3’)および配列番号167(5’−TTTAATCGAAGGCGACCCGCTTGTA−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、
(ii)Gln246Lysのアミノ酸置換のために配列番号168(5’−GGCTAAAATCTTATACTCACTCGAG−3’)および配列番号169(5’−CTCGAGTGAGTATAAGATTTTAGCC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた。
(1)実施例47のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm57bにさらにThr165Metが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号168からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm61p1とした。
(2)実施例47のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm57bにさらにLeu217GlnおよびVal289Aspが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号169と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm61p2とした。
(3)前記のm61p1およびm61p2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm61p3とした。
(4)前記のm61p3を精製し、それを鋳型として、配列番号68と配列番号166からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm61p4とした。
(5)前記のm61p3を精製し、それを鋳型として、配列番号167と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm61p5とした。
(6)前記のm61p4およびm61p5の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して61箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm61をコードするポリヌクレオチドを得た。
(7)前記のFcRm61をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(8)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm61をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm61を得た。
(9)pETFcRm61の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm61のアミノ酸配列を配列番号170に、前記FcRm61をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号171に示す。なお、配列番号170において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm61のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号170において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Leu58Argのアルギニンは76番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Tyr70Pheのフェニルアラニンは88番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Ser111Alaのアラニンは129番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Thr115Ileのイソロイシンは133番目、Glu118Aspのアスパラギン酸は136番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Thr165Metのメチオニンは183番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Proのプロリンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Tyr230Pheのフェニルアラニンは248番目、Met231Lysのリジンは249番目、Ser233Glyのグリシンは251番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Gln246Lysのリジンは264番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目、Val289Aspのアスパラギン酸は307番目の位置にそれぞれある。
実施例49 Fc結合性タンパク質(FcRm60c)の作製
実施例47で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Thr165Met、Leu217GlnおよびVal289Aspを選択し、それらの置換を実施例43に記載のFcRm57bに対してさらに集積して、野生型Fc結合性タンパク質に対して60箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm60cを作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、Thr165Metのアミノ酸置換のために配列番号172(5’−AGCAATGGTACATCCCGCTGTGGGA−3’)および配列番号173(5’−TCCCACAGCGGGATGTACCATTGCT−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例47のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm57bにさらにLeu217GlnおよびVal289Aspが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号68と配列番号172からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm60cp1とした。
(2)実施例47のスクリーニングで取得した、Fc結合性タンパク質FcRm57bにさらにLeu217GlnおよびVal289Aspが置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを鋳型として、配列番号173と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm60cp2とした。
(3)前記のm60cp1およびm60cp2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して60箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm60cをコードするポリヌクレオチドを得た。
(4)前記のFcRm60cをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(5)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm60cをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm60cを得た。
(6)pETFcRm60cの塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm60cのアミノ酸配列を配列番号174に、前記FcRm60cをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号175に示す。なお、配列番号174において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm60cのアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号174において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Leu58Argのアルギニンは76番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Tyr70Pheのフェニルアラニンは88番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Ser111Alaのアラニンは129番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Thr115Ileのイソロイシンは133番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Thr165Metのメチオニンは183番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Proのプロリンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu217Glnのグルタミンは235番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Tyr230Pheのフェニルアラニンは248番目、Met231Lysのリジンは249番目、Ser233Glyのグリシンは251番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目、Val289Aspのアスパラギン酸は307番目の位置にそれぞれある。
実施例50 Fc結合性タンパク質(FcRm62)の作製
実施例47で明らかになったFc結合性タンパク質の安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、安定性向上に関与するアミノ酸置換である、Glu118Asp、Thr165Met、Leu217Gln、Gln246LysおよびVal289Aspを選択し、それらの置換を実施例43に記載のFcRm57bに対してさらに集積して、野生型Fc結合性タンパク質に対して62箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm62を作製し、さらなる安定性向上を図った。なお、Glu118Aspのアミノ酸置換のために配列番号167からなるオリゴヌクレオチドを、Gln246Lysのアミノ酸置換のために配列番号168からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例49のプラスミドpETFcRm60cを鋳型として、配列番号167と配列番号168からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をm62p1とした。
(2)前記のm62p1のPCR産物を精製し、それを実施例48のm61p4および実施例48のm61p2の精製済みの各PCR産物とともに混合後、表7に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表4に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物を精製し、野生型Fc結合性タンパク質に対して62箇所アミノ酸置換処理したFc結合性タンパク質であるFcRm62をコードするポリヌクレオチドを得た。
(3)前記のFcRm62をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(4)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出することで、FcRm62をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRm62を得た。
(5)pETFcRm62の塩基配列の解析を実施例3と同様の方法により行なった。
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcRm62のアミノ酸配列を配列番号176に、前記FcRm62をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号177に示す。なお、配列番号176において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがFcRm62のアミノ酸配列、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグである。また、置換アミノ酸であるThr20Proのプロリンは配列番号176において38番目、Thr25Lysのリジンは43番目、Glu35Leuのロイシンは53番目、Glu36Glyのグリシンは54番目、Thr38Serのセリンは56番目、Leu41Metのメチオニンは59番目、His42Leuのロイシンは60番目、Leu46Proのプロリンは64番目、Pro49Serのセリンは67番目、Ser51Alaのアラニンは69番目、Ser52Glyのグリシンは70番目、Leu58Argのアルギニンは76番目、Gly60Aspのアスパラギン酸は78番目、Thr63Ileのイソロイシンは81番目、Thr65Alaのアラニンは83番目、Ser69Thrのスレオニンは87番目、Tyr70Pheのフェニルアラニンは88番目、Arg71Hisのヒスチジンは89番目、Thr73Alaのアラニンは91番目、Val77Gluのグルタミン酸は95番目、Asn78Aspのアスパラギン酸は96番目、Gln97Leuのロイシンは115番目、Ile100Valのバリンは118番目、Ser111Alaのアラニンは129番目、Phe114Leuのロイシンは132番目、Thr115Ileのイソロイシンは133番目、Glu118Aspのアスパラギン酸は136番目、Ala121Valのバリンは139番目、Lys128Argのアルギニンは146番目、Tyr133Hisのヒスチジンは151番目、Tyr137Pheのフェニルアラニンは155番目、Arg139Hisのヒスチジンは157番目、Trp149Argのアルギニンは167番目、Ser151Thrのスレオニンは169番目、Asn152Thrのスレオニンは170番目、Leu156Proのプロリンは174番目、Lys157Argのアルギニンは175番目、Ile160Thrのスレオニンは178番目、Asn163Serのセリンは181番目、Thr165Metのメチオニンは183番目、Lys173Argのアルギニンは191番目、Ile181Thrのスレオニンは199番目、Ser182Leuのロイシンは200番目、Thr184Serのセリンは202番目、Asn195Thrのスレオニンは213番目、Thr199Alaのアラニンは217番目、Asn206Thrのスレオニンは224番目、Leu207Proのプロリンは225番目、Glu213Valのバリンは231番目、Leu217Glnのグルタミンは235番目、Leu218Ileのイソロイシンは236番目、Tyr230Pheのフェニルアラニンは248番目、Met231Lysのリジンは249番目、Ser233Glyのグリシンは251番目、Lys234Gluのグルタミン酸は252番目、Asn240Aspのアスパラギン酸は258番目、Gln246Lysのリジンは264番目、Thr249Alaのアラニンは267番目、Leu270Valのバリンは288番目、Leu283Hisのヒスチジンは301番目、Leu285Glnのグルタミンは303番目、Val289Aspのアスパラギン酸は307番目の位置にそれぞれある。
実施例51 Fc結合性タンパク質(FcRm61、FcRm60c、FcRm62)の生産性評価
実施例48から50および実施例2で作製した形質転換体を実施例14と同様の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて測定したFc結合性タンパク質の生産性を、培養液濁度(Optical Density at 600nm、OD600)あたりの生産量(mg/L−培養液/OD600)として比較した。
結果を図22に示す。なお、図22中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例48から50で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm61、FcRm60cおよびFcRm62は高い生産性が認められた。図22の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質の生産性が向上したことが明らかとなった。
実施例52 Fc結合性タンパク質(FcRm61、FcRm60c、FcRm62)のアルカリ安定性評価
(1)実施例14に記載の方法でFc結合性タンパク質(FcRm60c、FcRm61、FcRm62)および、野生型Fc結合性タンパク質を調製し実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を5μg/mLとなるように希釈し、これに等量の600mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、25℃で180分間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)のアルカリ処理を行なった試料、および比較として(2)のアルカリ処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定したアルカリ処理後の試料の抗体結合活性を、アルカリ処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、アルカリ処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
アルカリに対する安定性を比較した結果を図23に示す。図23中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図23中のFcRm57bは、実施例43の形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であり、これらのFc結合性タンパク質に比べ、実施例48から50で作製した形質転換体を用いて発現させたFc結合性タンパク質であるFcRm61、FcRm60cおよびFcRm62は、アルカリに対する安定性が高いことが認められた。図23の結果より、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積することによりFc結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上したことが明らかとなった。
実施例53 Fc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b、FcRm44、FcRm48、FcRm54b、FcRm56b、FcRm57b)の熱安定性評価
実施例13、18、23、28、33、38および43で作製したFc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b、FcRm44、FcRm48、FcRm54b、FcRm56b、FcRm57b)を実施例9に記載の方法で調製した。調製したFc結合性タンパク質を実施例10と同様の方法にて変性中点温度(Tm)の測定を行なった。その結果を表18に示す。
Figure 0005812627
表18においてFcRは、実施例2で作製した形質転換体により発現させたアミノ酸置換をしていないFc結合性タンパク質(Fc受容体)を示したものである。この野生型Fc結合性タンパク質に比べ、実施例13、18、23、28、33、38および43で作製したFc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b、FcRm44、FcRm48、FcRm54b、FcRm56b、FcRm57b)はいずれもTmが上昇しており、熱安定性が向上していることを確認した。
実施例54 Fc結合性タンパク質(FcRm19、FcRm32、FcRm36b、FcRm44、FcRm48、FcRm54b、FcRm56b、FcRm57b、FcRm60c、FcRm61、FcRm62)の酸安定性評価
(1)実施例2、7(d)、13、18、23、28、33、38、43、48、49および50で作製した野生型Fc結合性タンパク質または、Fc結合性タンパク質を実施例14に記載の方法で調製し、実施例12(4)に記載のELISA法にて濃度測定を行なった。
(2)各Fc結合性タンパク質濃度を2μg/mLとなるように希釈し、これに等量の100mM クエン酸緩衝液(pH3.0)を加え、25℃で24時間放置した。
(3)放置後、1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)でpHを中性領域に戻してから、(2)の酸処理を行なった試料、および比較として(2)の酸処理を行なわなかった試料の抗体結合活性を、実施例12(4)に記載のELISA法で測定した。
(4)測定した酸処理後の試料の抗体結合活性を、酸処理しないときの試料の抗体結合活性で除することで、酸処理による各Fc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
酸に対する安定性を比較した結果を図24に示す。図24中のFcRは、実施例2の形質転換体を用いて発現させた野生型Fc結合性タンパク質を示したものである。また、図24中のFcRm19、FcRm32、FcRm36b、FcRm44、FcRm48、FcRm54b、FcRm56b、FcRm57b、FcRm60c、FcRm61およびFcRm62は、それぞれ実施例7(d)、13、18、23、28、33、38、43、49、48および50で作製した形質転換体を用いて発現したFc結合性タンパク質である。これらのFc結合性タンパク質はいずれも野生型Fc結合性タンパク質に比べ酸に対する安定性が高いことが認められた。
実施例55 Leu46アミノ酸置換Fc結合性タンパク質の作製
実施例5で明らかになったFc結合性タンパク質の熱安定性向上に関与するアミノ酸置換のうち、配列番号1に記載のアミノ酸配列における46番目のロイシン(Leu46)がプロリン(Pro)に置換することで熱安定性の向上が特に著しかった(表6)。そこで、46番目のロイシンを置換することの有用性を再評価するため、46番目のロイシンを他のアミノ酸で置換したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドと、その形質転換体を作製した。なお、46番目のロイシンを任意のアミノ酸に置換するために配列番号178(5’−ACGTTGCACTGCGAAGTANNKCATCTGCCTGGG−3’)および配列番号179(5’−ACTTGACCCAGGCAGATGMNNTACTTCGCAGTG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例2で作製した、野生型Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRを鋳型として、配列番号68と配列番号179からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をL46p1とした。
Figure 0005812627
(2)実施例2で作製した、野生型Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRを鋳型として、配列番号178と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をL46p2とした。
(3)前記のL46p1およびL46p2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表20に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。こうして野生型Fc結合性タンパク質の46番目のアミノ酸が任意のアミノ酸に置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得た。得られたPCR産物をL46p3とした。
Figure 0005812627
(4)前記のL46p3を精製し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalE(図4)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(5)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出し、実施例3に記載の方法にて配列解析を行ない、46番目のロイシン(Leu)がアラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、リジン(Lys)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)またはトリプトファン(Trp)に置換されたFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を得た。
実施例56 Leu46アミノ酸置換Fc結合性タンパク質の活性評価
(1)前記形質転換体を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、50μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で5倍希釈し、実施例12(4)に記載のELISA法を用いて抗体結合活性を測定した。
結果を表21に示す。表21より配列番号1に記載のアミノ酸配列における46番目のロイシン(Leu)がAla、Arg、Asn、Asp、Gln、Gly、His、Lys、Pro、SerまたはTrpに置換されることで活性が向上していることが確認された。好ましくはAsp、Pro、Serへの置換であり、さらに好ましくはProへの置換である。
Figure 0005812627
実施例57 Phe114アミノ酸置換Fc結合性タンパク質の作製
実施例5で明らかになったFc結合性タンパク質の熱安定性向上に関与するアミノ酸置換のうち、配列番号1に記載のアミノ酸配列における114番目のフェニルアラニン(Phe114)がロイシン(Leu)に置換することで熱安定性の向上が特に著しかった(表6)。そこで、114番目のフェニルアラニンを置換することの有用性を再評価するため、114番目のフェニルアラニンを他のアミノ酸で置換した変異Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドと、その形質転換体を作製した。なお、114番目のフェニルアラニンを任意のアミノ酸に置換するために配列番号180(5’−CAGGTTAGCTCCCGCGTTNNKACCGAAGGCGA−3’)および配列番号181(5’−AAGCGGTTCGCCTTCGGTMNNAACGCGGGAGC−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例2で作製した、野生型Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRを鋳型として、配列番号68と配列番号181からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をF114p1とした。
(2)実施例2で作製した、野生型Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpETFcRを鋳型として、配列番号180と配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。得られたPCR産物をF114p2とした。
(3)前記のF114p1およびF114p2の2種類のPCR産物を精製し、それぞれを混合後、表20に示す反応液組成で、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとするPCR反応を5サイクル行なうことでPCR反応を行ない、PCR産物を連結した。このPCR産物を鋳型とし、配列番号68および配列番号69からなる各オリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCR反応を実施した。PCR反応は表19に示す反応液組成のもと、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。こうして野生型Fc結合性タンパク質の114番目のアミノ酸が任意のアミノ酸に置換されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得た。得られたPCR産物をF114p3とした。
(4)前記のF114p3を精製し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例2に記載の発現ベクターpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(5)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、菌体よりプラスミドを抽出し、実施例3に記載の方法にて配列解析を行ない。114番目のフェニルアラニン(Phe)がアラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)またはバリン(Val)に置換されたFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を得た。
実施例58 Phe114アミノ酸置換Fc結合性タンパク質の活性評価
(1)前記形質転換体を、50μg/mLのカナマイシンを含むLB液体培地200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、50μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で5倍希釈し、実施例12(4)に記載のELISA法を用いて抗体結合活性を測定した。
結果を表22に示す。表22より配列番号1に記載のアミノ酸配列における114番目のフェニルアラニン(Phe)がAla、Ile、Leu、Met、Pro、ThrまたはValに置き換わることで活性が向上していることが確認された。好ましくはIle、Leu、MetまたはValへの置換であり、さらに好ましくはIle、LeuまたはValへの置換である。
Figure 0005812627
実施例59 Fc結合性タンパク質(FcRm19)のゲルへの固定化
(1)実施例7(d)で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm19を調製した。
(2)得られた6.9mg/mLのFcRm19溶液0.4mLと0.1mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度0.6Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、20℃で14時間反応させた。
(3)反応後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFcRm19固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFc結合性タンパク質量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が83.3%、ゲル1mLあたりのFcRm19固定化量は23.0mgであることが確認された。
実施例60 Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例59で調製したFc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲル0.1mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製、以下IgGと表記)を0.5mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)振とう後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、0.2mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
280nmの吸光度測定(10mmセル、1%のIgG溶液の吸光度を14として計算)で溶出させたIgGを定量した結果、2.10mgであった。これにより、実施例59で調製したFcRm19固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は21.0mgであることが確認された。
実施例61 Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例59で調製したFc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲル0.1mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgGを添加してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、下記の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
IgG溶出割合(%)=
溶出液1のIgG量÷(溶出液1のIgG量+溶出液2のIgG量)×100
・・・・・・(式1)
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき99.1%、pH3.4のとき87.4%、pH3.8のとき51.3%、pH4.2のとき22.0%であった。各pHにおける抗体溶出割合をまとめたものを図25に示す。
実施例62 Fc結合性タンパク質(FcRm32)のゲルへの固定化
(1)実施例13で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm32を調製した。
(2)得られた8.1mg/mLのFc結合性タンパク質(FcRm32)溶液0.3mLと0.1mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度1.0Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、20℃で14時間反応させた。
(3)反応後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFcRm32固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFcRm32量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が79.3%、ゲル1mLあたりのFcRm32固定化量は19.3mgであることが確認された。
実施例63 Fc結合性タンパク質(FcRm32)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例62で調製したFc結合性タンパク質(FcRm32)固定化ゲル0.1mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgGを0.5mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)振とう後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、0.2mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
溶出させたIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行なった結果、1.98mgであった。これにより、実施例62で調製したFcRm32固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は19.8mgであることが確認された。
実施例64 Fc結合性タンパク質(FcRm32)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例62で調製したFc結合性タンパク質(FcRm32)固定化ゲル0.1mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を通液してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、実施例61に記載の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき98.7%、pH3.4のとき99.3%、pH3.8のとき97.9%、pH4.2のとき82.8%であった。実施例59で行なったFcRm19固定化ゲルの抗体溶出性評価と比較すると、よりpHの高い(より中性側の)緩衝液におけるIgG溶出性が大きく向上していることが確認された。FcRm19固定化ゲルと比較した、各pHにおけるFcRm32固定化ゲルの抗体溶出割合をまとめたものを図26に示す。
実施例65 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)のゲルへの固定化
(1)実施例18で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法にてFc結合性タンパク質FcRm36bを調製した。
(2)得られた15.5mg/mLのFcRm36b溶液0.1mLと0.05mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度0.8Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、35℃で5時間反応させた。
(3)反応後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFcRm36b固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFc結合性タンパク質量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が67.7%、ゲル1mLあたりのFcRm36b固定化量は21.0mgであることが確認された。
実施例66 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例65で調製したFc結合性タンパク質(FcRm36b)固定化ゲル0.05mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgGを0.5mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)振とう後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、0.2mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
溶出させたIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行なった結果、1.44mgであった。これにより、実施例65で調製したFcRm36b固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は28.8mgであることが確認された。
実施例67 Fc結合性タンパク質(FcRm36b)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例65で調製したFc結合性タンパク質(FcRm36b)固定化ゲル0.05mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を通液してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、実施例61に記載の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき99.5%、pH3.4のとき99.4%、pH3.8のとき92.2%、pH4.2のとき64.0%であった。この結果、実施例59で行なったFcRm19固定化ゲルの抗体溶出性評価と比較すると、よりpHの高い(より中性側の)緩衝液におけるIgG溶出性が大きく向上していることが確認された。FcRm19固定化ゲルと比較した、各pHにおけるFcRm36b固定化ゲルの抗体溶出割合をまとめたものを図27に示す。
実施例68 Fc結合性タンパク質(FcRm48)のゲルへの固定化
(1)実施例28で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm48を調製した。
(2)得られた8.8mg/mLのFcRm48溶液0.1mLと0.05mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度0.8Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、35℃で5時間反応させた。
(3)その後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFc結合性タンパク質量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が77.3%、ゲル1mLあたりのFcRm48固定化量は13.6mgであることが確認された。
実施例69 Fc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例68で調製したFc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲル0.05mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgGを0.5mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)その後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、0.2mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
溶出させたIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行なった結果、0.94mgであった。これにより、実施例68で調製したFcRm48固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は18.8mgであることが確認された。
実施例70 Fc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例68で調製したFc結合性タンパク質(FcRm48)固定化ゲル0.05mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を通液してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、実施例61に記載の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき99.2%、pH3.4のとき100.0%、pH3.8のとき98.2%、pH4.2のとき81.9%であった。この結果、実施例59で行なったFcRm19固定化ゲルの抗体溶出性評価と比較すると、よりpHの高い(より中性側の)緩衝液におけるIgG溶出性が大きく向上していることが確認された。FcRm19固定化ゲルと比較した、各pHにおけるFcRm48固定化ゲルの抗体溶出割合をまとめたものを図28に示す。
実施例71 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)のゲルへの固定化
(1)実施例38で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm56bを調製した。
(2)得られた13.2mg/mLのFcRm56b溶液1.0mLと0.5mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度0.8Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、35℃で5時間反応させた。
(3)反応後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFc結合性タンパク質量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が70.8%、ゲル1mLあたりのFcRm56b固定化量は18.7mgであることが確認された。
実施例72 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例71で調製したFc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲル0.5mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgGを3.0mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)振とう後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、1.0mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、1.0mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
溶出させたIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行なった結果、11.5mgであった。これにより、実施例71で調製したFcRm56b固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は23.0mgであることが確認された。
実施例73 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例71で調製したFc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲル0.1mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を通液してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、実施例61に記載の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき99.7%、pH3.4のとき99.5%、pH3.8のとき94.5%、pH4.2のとき73.0%であった。この結果、実施例59で行なったFcRm19固定化ゲルの抗体溶出性評価と比較すると、よりpHの高い(より中性側の)緩衝液におけるIgG溶出性が大きく向上していることが確認された。FcRm19固定化ゲルと比較した、各pHにおけるFcRm56b固定化ゲルの抗体溶出割合をまとめたものを図29に示す。
実施例74 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)のゲルへの固定化
(1)実施例43で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法でFc結合性タンパク質FcRm57bを調製した。
(2)得られた8.9mg/mLのFcRm57b溶液1.0mLと0.4mLのエポキシ基導入トヨパールゲル(東ソー社製)とを混合し、終濃度0.8Mとなるようにリン酸カリウム緩衝液を加え、35℃で5時間反応させた。
(3)反応後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルから反応残渣を除去し、20mMのPBS(pH7.0)にてゲルを洗浄してFc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲルを調製した。
(4)反応残渣のFc結合性タンパク質量をブラッドフォード法にて定量し、仕込みFc結合性タンパク質量にて除することにより固定化率を算出した。
結果、固定化率が64.0%、ゲル1mLあたりのFcRm57b固定化量は14.2mgであることが確認された。
実施例75 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲルの抗体吸着性評価
(1)実施例74で調製したFc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲル0.4mLに対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgGを3.0mL添加し、15℃で1時間振とうした。
(2)その後、フィルターろ過(ポアサイズ:10μm)にてゲルからIgG溶液を除去し、1.0mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(3)最後に、1.0mLの100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
溶出させたIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行なった結果、6.67mgであった。これにより、実施例74で調製したFcRm56b固定化ゲルのゲル1mLあたりのIgG吸着量は16.7mgであることが確認された。
実施例76 Fc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲルの抗体溶出性評価
(1)実施例74で調製したFc結合性タンパク質(FcRm57b)固定化ゲル0.1mLをカラムに充填し、2mLの20mMのPBS(pH7.0)に溶解した3mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を通液してIgGをゲルに吸着させた。
(2)カラムを20mMのPBS(pH7.0)にて充分洗浄した後、pH3.0からpH4.2の範囲にある任意のpHの100mMクエン酸緩衝液を2mL流し、IgGを溶出させた(これを溶出液1とする)。
(3)最後にpH3.0の100mMクエン酸緩衝液を2mL流してゲルに吸着したIgGを完全に溶出させた(これを溶出液2とする)。
(4)溶出液1および2におけるIgGの定量を実施例60に記載した280nmの吸光度測定にて行ない、実施例61に記載の式1にて各々のpHの溶出液におけるIgG溶出割合を求めた。
結果、抗体溶出割合はpH3.0のとき99.3%、pH3.4のとき99.6%、pH3.8のとき90.2%、pH4.2のとき66.2%であった。この結果、実施例59で行なったFcRm19固定化ゲルの抗体溶出性評価と比較すると、よりpHの高い(より中性側の)緩衝液におけるIgG溶出性が大きく向上していることが確認された。FcRm19固定化ゲルと比較した、各pHにおけるFcRm57b固定化ゲルの抗体溶出割合をまとめたものを図30に示す。
実施例77 Fc結合性タンパク質(FcRm32、FcRm36b、FcRm56b)固定化ゲルのアルカリ安定性評価
(1)実施例62、実施例65および実施例71で作製したFc結合性タンパク質固定化ゲルを、20mMのPBS(pH7.0)にてそれぞれ20%スラリーとし、フィルター付きスピンカラム(マイクロバイオスピンカラム、バイオラッド社製)4本に50μLずつ分注した。
(2)(1)で作製したカラムのうち3本について、フィルターろ過にてゲルスラリーからPBSを除き、0.15mLの0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液にてゲルを1回洗浄した後、再度0.15mLの水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
(3)前記3本のカラムを20℃でそれぞれ1時間、3時間、24時間放置した後、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて3回洗浄した。
(4)得られたカラム(アルカリ処理時間:0時間、1時間、3時間、24時間)に対し、20mMのPBS(pH7.0)に溶解した10mg/mLのIgG(化学及血清療法研究所製)を0.2mL添加後、15℃で1時間振とうした。
(5)振とう後、フィルターろ過にてゲルからIgG溶液を除去し、0.2mLの20mMのPBS(pH7.0)にて5回ゲルを洗浄した。
(6)最後に、0.1mLの100mMクエン酸緩衝液(pH3.0)を3回流してゲルに吸着したIgGを溶出させた。
(7)溶出させたIgGの定量を実施例60に記載の280nmの吸光度測定にて行ない、ゲルのIgG吸着量を算出した。
結果、アルカリ未処理のゲルのIgG結合量を100%活性とした場合、FcRm32固定化ゲル(実施例62)の場合は1時間処理で63.6%、3時間処理で41.8%、24時間処理で18.2%となった。FcRm36b固定化ゲル(実施例65)の場合は1時間処理で84.2%、3時間処理で60.4%、24時間処理で16.8%となった。FcRm56b固定化ゲル(実施例71)の場合は1時間処理で96.8%、3時間処理で92.1%、24時間処理で61.9%となった。このように、安定性向上に関与するアミノ酸置換(変異)を集積したFc結合性タンパク質によってアルカリ安定性が向上していることを確認した。各Fc結合性タンパク質固定化ゲルのアルカリ安定性をまとめたものを図31に示す。
実施例78 Fc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲルの繰り返し安定性評価
実施例71で作製したFc結合性タンパク質(FcRm56b)固定化ゲル0.2mLをカラムに充填し、表23に示すサイクルで緩衝液を繰り返し通液した。なお、1回目、30回目、50回目、70回目、90回目、110回目、130回目および150回目では、表24に示すサイクルで緩衝液およびIgG溶液を通液し、カラムのIgG吸着量を算出した。
Figure 0005812627
Figure 0005812627
1回目のIgG吸着量を100%として経時的にカラムのIgG吸着量を測定した結果、30回目で98.9%、50回目で94.7%、70回目で89.0%、90回目で84.9%、110回目で84.9%、130回目で80.2%、150回目で80.7%となった。
一方、比較例として、実施例2で作製した形質転換体を用いて実施例9に記載の方法にて野生型のFc結合性タンパク質(FcR)を調製し、実施例59と同様な方法で0.2mLのゲルにFcRを固定化後、カラムに充填した。前記カラムに対して、表24に示すサイクルで緩衝液およびIgGを繰り返し通液し、カラムのIgG吸着量変化を確認した。1回目のIgG吸着量を100%として経時的にカラムのIgG吸着量を測定した結果、2回目で60.0%、3回目で41.5%まで低下し、FcR固定化ゲルではアルカリ洗浄によるゲルの再生が事実上困難であることが示された。各Fc結合性タンパク質固定化ゲルのアルカリ洗浄に対する繰り返し安定性をまとめたものを図32に示す。

Claims (10)

  1. 配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、16番目から289番目までのアミノ酸を含むFc結合性タンパク質であって、以下記載のアミノ酸置換を少なくとも含む、該Fc結合性タンパク質。
    配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
  2. 配列番号2、3、4、5、114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、34番目から307番目までのアミノ酸を含む、請求項に記載のFc結合性タンパク質。
  3. 配列番号2、3、4、5、114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、請求項に記載のFc結合性タンパク質。
  4. 請求項1からのいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  5. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  6. 請求項に記載の発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体。
  7. 宿主が大腸菌である、請求項に記載の形質転換体。
  8. 請求項またはに記載の形質転換体を用いた、Fc結合性タンパク質の製造方法。
  9. 請求項1からのいずれかに記載のFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られる、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材。
  10. (1)配列番号114、118、130、134、148、154、164、170、174および176のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質を固相に固定化して得られる、Fc結合性タンパク質結合部位を含むタンパク質を吸着する吸着材に、抗体を含む溶液を添加して該吸着材に該抗体を吸着させる工程と、
    (2)該吸着材に吸着した該抗体をpH3.0から4.5の緩衝液を用いて溶出させる工程と、
    を含む抗体精製法。
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