JP7310142B2 - アルカリ耐性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、当該タンパク質を用いた抗体吸着剤および当該抗体吸着剤を用いて抗体を分離する方法 - Google Patents

アルカリ耐性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、当該タンパク質を用いた抗体吸着剤および当該抗体吸着剤を用いて抗体を分離する方法 Download PDF

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本発明は、免疫グロブリンに親和性を有するFc結合性タンパク質に関する。より詳しくは本発明は、アルカリに対する安定性(アルカリ耐性)が天然型より向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、当該タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる抗体吸着剤、および当該抗体吸着剤を用いて抗体を分離する方法に関する。
また本発明は、ヒトFcγRIIIaのうち、特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換することで、遺伝子組換体による生産性が向上したFc結合性タンパク質に関する。
Fcレセプターは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群の分子である。個々の分子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する認識ドメインによって、単一の、または同じグループの免疫グロブリンイソタイプをFcレセプター上の認識ドメインによって認識している。これによって、免疫応答においてどのアクセサリー細胞が動因されるかが決まってくる。Fcレセプターは、さらにいくつかのサブタイプに分類することができ、IgG(免疫グロブリンG)に対するレセプターであるFcγレセプター、IgEのFc領域に結合するFcεレセプター、IgAのFc領域に結合するFcαレセプター等がある。また各レセプターは更に細かく分類されており、Fcγレセプターは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb及びFcγRIIIa、FcγRIIIbの存在が報告されている(非特許文献1)。
Fcγレセプターの中でも、FcγRIIIaはナチュラルキラー細胞(NK細胞)やマクロファージなどの細胞表面に存在しており、ヒト免疫機構の中でも重要なADCC(抗体依存性細胞傷害)活性に関与している重要なレセプターである。このFcγRIIIaとヒトIgGとの親和性は結合の強さを示す結合定数(ka)が10-1以下であることが報告されている(非特許文献2)。また、抗体の糖鎖構造の違いにより、FcγRIIIaと抗体との結合性が異なることが知られている(非特許文献3)。天然型のヒトFcγRIIIaのアミノ酸配列(配列番号1)はUniProt(Accession number:P08637)などの公的データベースに公表されている。また、ヒトFcγRIIIaの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列、細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されている。図1にヒトFcγRIIIaの構造略図を示す。なお、図1中の番号はアミノ酸番号を示しており、その番号は配列番号1に記載のアミノ酸番号に対応する。すなわち、配列番号1中の1番目のメチオニン(Met)から16番目のアラニン(Ala)までがシグナル配列(S)、17番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までが細胞外領域(EC)、209番目のバリン(Val)から229番目のバリン(Val)までが細胞膜貫通領域(TM)および230番目のリジン(Lys)から254番目のリジン(Lys)までが細胞内領域(C)とされている。なおFcγRIIIaはIgG1からIgG4まであるヒトIgGサブクラスのうち、特にIgG1とIgG3に対し強く結合する一方、IgG2とIgG4に対する結合は弱いことが知られている。
抗体の糖鎖構造は、抗体医薬品における薬効や安定性に大きく関与するため、抗体医薬品を製造する際に糖鎖構造を制御することは極めて重要である。FcγRIIIaは抗体の糖鎖構造を認識することから、FcγRIIIaを不溶性担体に固定化して得られる吸着剤は、抗体をその糖鎖構造に基づく結合性の違いにより分離できる(特許文献2および3)。このため、前記吸着剤は抗体医薬品製造時の工程分析や分取に有用である。しかしながら、抗体医薬品の工業的製造を前記吸着剤を用いて行なおうとした場合、天然型のFcγRIIIaではアルカリ耐性がなく、アルカリ洗浄による前記吸着剤の再利用が困難なため、前記工業的製造用途には不向きであった。
特許文献1には、天然型のFcγRIIIaの細胞外領域のアミノ酸残基において、特定位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することで、アルカリ耐性が向上したFc結合性タンパク質を開示している。しかしながら特許文献1に開示のFc結合性タンパク質であってもアルカリ耐性は十分とはいえず、抗体医薬品の工業的製造用途に用いる場合、製造コスト面で課題があった。
なおヒトFcγRIIIaには、配列番号1における176番目のアミノ酸がフェニルアラニンであるタイプ(配列番号1の態様)とバリンであるタイプ(GenBank(AAH17865.1)において公表されている、配列番号19の態様)の遺伝子多型が存在し、バリンのタイプの方が抗体親和性は高く、フェニルアラニンのタイプの方が抗体親和性は低いことが知られている(非特許文献4および5)。
特開2017-118871号公報 特開2015-086216号公報 特開2016-169197号公報
Takai.T.,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318-326,2005 J.Galon等,Eur.J.Immunol.,27,1928-1932,1997 C.L.Chen等,ACS Chem. Biol.,12,1335-1345,2017 H.R.Koene等,Blood,90,1109-1114,1997 P.Bruhns等,Blood,16,3716-3725,2009
本発明の課題は、アルカリに対する安定性(アルカリ耐性)が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を用いた抗体吸着剤を提供することを含む。
また前述した通り、FcγRIIIaは抗体の糖鎖構造を認識することから、FcγRIIIaを不溶性担体に固定化して得られる吸着剤は抗体医薬品製造時の工程分析や分取に有用である。しかしながら、抗体医薬品の工業的製造を前記吸着剤を用いて行なおうとした場合、従来のFcγRIIIaでは遺伝子組換体による生産性が劣っており、コスト面で課題があった。そこで少なくとも1つの本発明の課題は、従来のFcγRIIIaと比較し、遺伝子組換体による生産性が向上した、FcγRIIIaアミノ酸置換体を提供することを場合により含む。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒトFcγRIIIaにおける安定性向上に関与したアミノ酸残基を特定し、当該アミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異体が、アルカリに対して優れた安定性を有することを見出した。また本発明者らは、配列番号1に示すヒトFcγRIIIaのアミノ酸配列のうち、176番目のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に網羅的に置換した結果、従来のFcγRIIIaよりも遺伝子組換体による生産性が向上したアミノ酸置換体を見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の[1]から[11]に記載の態様を包含する。
[1]
配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基において、少なくとも以下に示す35箇所のアミノ酸置換を有するアミノ酸残基を含み、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質;
(1)配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換
(2)配列番号4の39番目のロイシンのメチオニンへの置換
(3)配列番号4の43番目のバリンのグルタミン酸への置換
(4)配列番号4の45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換
(5)配列番号4の49番目のグルタミンのプロリンへの置換
(6)配列番号4の51番目のチロシンのアスパラギンへの置換
(7)配列番号4の56番目のリジンのグルタミンへの置換
(8)配列番号4の64番目のグルタミンのアルギニンへの置換
(9)配列番号4の67番目のチロシンのヒスチジンへの置換
(10)配列番号4の70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換
(11)配列番号4の72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換
(12)配列番号4の81番目のセリンのアルギニンへの置換
(13)配列番号4の84番目のセリンのプロリンへの置換
(14)配列番号4の90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換
(15)配列番号4の91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換
(16)配列番号4の94番目のアラニンのセリンへの置換
(17)配列番号4の96番目のスレオニンのセリンへの置換
(18)配列番号4の108番目のアスパラギンのセリンへの置換
(19)配列番号4の133番目のバリンのグルタミン酸への置換
(20)配列番号4の135番目のリジンのバリンへの置換
(21)配列番号4の137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換
(22)配列番号4の138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換
(23)配列番号4の148番目のリジンのアルギニンへの置換
(24)配列番号4の156番目のスレオニンのメチオニンへの置換
(25)配列番号4の157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換
(26)配列番号4の163番目のグリシンのバリンへの置換
(27)配列番号4の174番目のチロシンのバリンへの置換
(28)配列番号4の181番目のリジンのグルタミン酸への置換
(29)配列番号4の187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換
(30)配列番号4の194番目のセリンのアルギニンへの置換
(31)配列番号4の196番目のアスパラギンのリジンへの置換
(32)配列番号4の200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換
(33)配列番号4の201番目のスレオニンのアラニンへの置換
(34)配列番号4の203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換
(35)配列番号4の206番目のイソロイシンのバリンへの置換
[2]
以下の(a)、(b)または(c)である、[1]に記載のFc結合性タンパク質:
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基において、
(i)前記(1)~(35)のアミノ酸置換、および
(ii)(i)以外の1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加の1以上を有するアミノ酸残基を含む、Fc結合性タンパク質;
(b)前記(1)~(35)のアミノ酸置換を含むFc結合性タンパク質であって、配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する、Fc結合性タンパク質;
(c)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸配列に対して70%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列において、前記(1)~(35)のアミノ酸置換がなされたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質。
[3]
さらに以下に示すアミノ酸置換のいずれかを少なくとも有する、[1]または[2]に記載のFc結合性タンパク質。
(36)配列番号4の192番目のバリンのイソロイシンへの置換
(37)配列番号4の192番目のバリンのアラニンへの置換
(38)配列番号4の192番目のバリンのチロシンへの置換
[4]
配列番号7、9または11に記載のアミノ酸配列のうち、33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、[1]~[3]の何れかに記載のFc結合性タンパク質。
[5]
[1]~[4]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[6]
[5]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[7]
[6]に記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる、Fc結合性タンパク質を生産可能な形質転換体。
[8]
宿主が大腸菌である、[7]に記載の形質転換体。
[9]
[7]または[8]に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産する工程と、得られた培養物から生産された前記Fc結合性タンパク質を回収する工程とを含む、Fc結合性タンパク質の製造方法。
[10]
[1]から[4]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる、抗体の吸着剤。
[11]
[10]に記載の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加して当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、抗体の分離方法。
[12]
Fc結合性タンパク質との結合性の違いに基づいて、異なる糖鎖構造を有する抗体が分離される、[11]に記載の分離方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のFc結合性タンパク質は、抗体のFc領域に結合性を持つタンパク質であり、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質のアミノ酸配列のうち、天然型ヒトFcγRIIIaの細胞外領域(図1のEC領域)に相当する33番目のグリシンから208番目のグルタミンまで(配列番号1では17番目のグリシンから192番目のグルタミンまで)のアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該33番目から208番目までのアミノ酸残基において、少なくとも特定位置におけるアミノ酸置換が生じたタンパク質である。したがって、本発明のFc結合性タンパク質は、細胞外領域のN末端側にあるシグナルペプチド領域(図1のS)の全てまたは一部を含んでもよいし、細胞外領域のC末端側にある細胞膜貫通領域(図1のTM)および細胞内領域(図1のC)の全てまたは一部を含んでもよい。前記特定位置におけるアミノ酸置換は具体的には、Glu37Gly(この表記は、配列番号4の37番目のグルタミン酸がグリシンに置換されていることを表す、以下同様)、Leu39Met、Val43Glu、Phe45Ile、Gln49Pro、Tyr51Asn、Lys56Gln、Gln64Arg、Tyr67His、Glu70Asp、Asn72Asp、Ser81Arg、Ser84Pro、Tyr90Phe、Phe91Ile、Ala94Ser、Thr96Ser、Asn108Ser、Val133Glu、Lys135Val、Glu137Gly、Asp138Glu、Lys148Arg、Thr156Met、Tyr157Phe、Gly163Val、Tyr174Val、Lys181Glu、Phe187Ser、Ser194Arg、Asn196Lys、Glu200Gly、Thr201Ala、Asn203AspおよびIle206Valである。
なお本発明のFc結合性タンパク質は、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を少なくとも有していればよく、抗体結合活性を有する限り、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上、さらに有してもよい。前記態様の具体例として、以下の(i)から(v)に示す、抗体結合活性を有したFc結合性タンパク質があげられる:
(i)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を含み、但し前述した特定位置におけるアミノ酸置換を有し、かつ少なくともVal192Ile、Val192AlaまたはVal192Tyrのアミノ酸置換をさらに有したFc結合性タンパク質;
(ii)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を含み、但し前述した特定位置におけるアミノ酸置換を有しており、かつ前述した特定位置におけるアミノ酸置換以外の1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有したFc結合性タンパク質;
(iii)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を含み、但し前述した特定位置におけるアミノ酸置換を有しており、かつ前述した特定位置におけるアミノ酸置換以外の1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつVal192Ile、Val192AlaまたはVal192Tyrのアミノ酸置換をさらに有したFc結合性タンパク質;
(iv)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質;
(v)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、前述した特定位置におけるアミノ酸置換およびVal192Ile、Val192AlaまたはVal192Tyrのアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質;
(vi)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質;
(vii)配列番号4に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、前述した特定位置におけるアミノ酸置換およびVal192Ile、Val192AlaまたはVal192Tyrのアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質。
前記(i)、(iii)、(v)および(vii)に記載のVal192Ile、Val192AlaまたはVal192Tyrのアミノ酸置換は、遺伝子組換体による生産性を向上させるアミノ酸置換である。したがって、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を少なくとも有した本発明のFc結合性タンパク質に、前記アミノ酸置換をさらに有することで、天然型FcγRIIIaよりもアルカリ耐性が向上し、かつ遺伝子組換体による生産性も向上したFc結合性タンパク質が得られる。
本明細書において、「1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加」、ならびに「アミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上」とは、タンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、例えば、1から50個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加であってよく、好ましくは1から40個、より好ましくは1から30個、更に好ましくは1から20個(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)、特に好ましくは1から10個(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個)のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加であってよい。また本明細書における「置換」、「欠失」、「挿入」および「付加」には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いなどに基づく、天然にも生じ得る変異(mutantまたはvariant)も含まれる。例えばヒトFcγRIIIaには、Leu82His、Leu82Arg、Gly163Asp、Tyr174Hisのうち、いずれか1つ以上のアミノ酸置換を有したアミノ酸置換体が知られているが、本発明のFc結合性タンパク質はこれらのアミノ酸置換をさらに含んでいてもよい。
前記(iv)および(v)におけるアミノ酸配列の相同性は70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上または80%以上であってよい。
前記(vi)および(vii)におけるアミノ酸配列の相同性は70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上または79%以上であってよく、好ましくは80%以上、81%以上、82%以上、83%以上または84%以上であってよく、より好ましくは85%以上、86%以上、87%以上、88%以上または89%以上であってよく、更に好ましくは90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってよい。
本明細書において、アミノ酸配列の「相同性」は、アミノ酸配列の「同一性」と同義である。ここで、アミノ酸配列の「同一性(相同性)」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を全アミノ酸残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化方法は、特に限定されないが、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知の配列比較プログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、配列同一性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数で、一致したアミノ酸残基数を除して算出される。
本発明のFc結合性タンパク質は、両アミノ酸の物理的性質と化学的性質またはそのどちらかが類似したアミノ酸間で置換する保守的置換をさらに有してもよい。保守的置換は、Fc結合性タンパク質に限らず一般に、置換が生じているものと置換が生じていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、アスパラギン酸とグルタミン酸間、セリンとプロリン間、またはグルタミン酸とアラニン間に生じる置換があげられる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サイエンス・インターナショナル社,9,2005)。
また本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に、夾雑物質存在下の溶液から目的の抗体を分離する際に有用なオリゴペプチドをさらに付加してもよい。前記オリゴペプチドとしては、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等があげられる。さらに本発明のFc結合性タンパク質をクロマトグラフィー用の支持体等の固相に固定化する際に有用な、システインを含むオリゴペプチドを、本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側にさらに付加してもよい。Fc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加するオリゴペプチドの長さは、特に制限はない。前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質に付加させる際は、前記オリゴペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製後、当業者に周知の方法を用いて遺伝子工学的にFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加させてもよいし、化学的に合成した前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に化学的に結合させて付加させてもよい。さらに本発明のFc結合性タンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよい。宿主が大腸菌の場合における前記シグナルペプチドの例としては、PelB、DsbA、MalE(UniProt No.P0AEX9に記載のアミノ酸配列のうち1番目から26番目までの領域)、TorTなどのペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示することができる(特開2011-097898号公報)。
本発明のFc結合性タンパク質の好ましい態様として、以下の(a)、(b)または(c)に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むFc結合性タンパク質があげられる。これらのFc結合性タンパク質はアルカリに対する安定性(アルカリ耐性)が向上する点で好ましい。
(a)FcR35d(配列番号7に記載のアミノ酸配列のうち、33番目から208番目までのアミノ酸残基)
配列番号4に記載のアミノ酸配列のうち、33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該33番目から208番目までのアミノ酸残基において、Glu37Gly、Leu39Met、Val43Glu、Phe45Ile、Gln49Pro、Tyr51Asn、Lys56Gln、Gln64Arg、Tyr67His、Glu70Asp、Asn72Asp、Ser81Arg、Ser84Pro、Tyr90Phe、Phe91Ile、Ala94Ser、Thr96Ser、Asn108Ser、Val133Glu、Lys135Val、Glu137Gly、Asp138Glu、Lys148Arg、Thr156Met、Tyr157Phe、Gly163Val、Tyr174Val、Lys181Glu、Phe187Ser、Ser194Arg、Asn196Lys、Glu200Gly、Thr201Ala、Asn203AspおよびIle206Valのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
(b)FcR36i(配列番号9に記載のアミノ酸配列のうち、33番目から208番目までのアミノ酸残基)
配列番号4に記載のアミノ酸配列のうち、33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該33番目から208番目までのアミノ酸残基において、Glu37Gly、Leu39Met、Val43Glu、Phe45Ile、Gln49Pro、Tyr51Asn、Lys56Gln、Gln64Arg、Tyr67His、Glu70Asp、Asn72Asp、Ser81Arg、Ser84Pro、Tyr90Phe、Phe91Ile、Ala94Ser、Thr96Ser、Asn108Ser、Val133Glu、Lys135Val、Glu137Gly、Asp138Glu、Lys148Arg、Thr156Met、Tyr157Phe、Gly163Val、Tyr174Val、Lys181Glu、Phe187Ser、Val192Ile、Ser194Arg、Asn196Lys、Glu200Gly、Thr201Ala、Asn203AspおよびIle206Valのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
(c)FcR36a(配列番号11に記載のアミノ酸配列のうち、33番目から208番目までのアミノ酸残基)
配列番号4に記載のアミノ酸配列のうち、33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該33番目から208番目までのアミノ酸残基において、Glu37Gly、Leu39Met、Val43Glu、Phe45Ile、Gln49Pro、Tyr51Asn、Lys56Gln、Gln64Arg、Tyr67His、Glu70Asp、Asn72Asp、Ser81Arg、Ser84Pro、Tyr90Phe、Phe91Ile、Ala94Ser、Thr96Ser、Asn108Ser、Val133Glu、Lys135Val、Glu137Gly、Asp138Glu、Lys148Arg、Thr156Met、Tyr157Phe、Gly163Val、Tyr174Val、Lys181Glu、Phe187Ser、Val192Ala、Ser194Arg、Asn196Lys、Glu200Gly、Thr201Ala、Asn203AspおよびIle206Valのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
なお、配列番号7、9および11に記載のFc結合タンパク質のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチドであり、27番目のリジンから32番目のメチオニンまでがリンカー配列であり、33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでが抗体のFc領域に結合可能なポリペプチド(FcR35d(配列番号7)、FcR36i(配列番号9)またはFcR36a(配列番号11))のアミノ酸配列であり、209番目から210番目までのグリシンがリンカー配列であり、211番目から216番目のヒスチジンがタグ配列である。
本発明のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単に本発明のポリヌクレオチドとも表記する)の作製方法の一例として、
(I)本発明のFc結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(II)Fc結合性タンパク質の全体または部分配列をコードするポリヌクレオチドを直接人工的に、またはFc結合性タンパク質のcDNA等からPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した当該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、
が例示できる。
前記(I)の方法において、アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主が大腸菌(Escherichia coli)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。
本発明のポリヌクレオチドへ変異を導入する場合、エラープローンPCR法を用いることができる。エラープローンPCR法における反応条件は、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドに所望の変異を導入できる条件であれば特に限定はなく、例えば、基質である4種類のデオキシヌクレオチド(dATP/dTTP/dCTP/dGTP)の濃度を不均一にし、MnClを0.01から10mM(好ましくは0.1から1mM)の濃度でPCR反応液に添加してPCRを行なうことで、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。またエラープローンPCR法以外の変異導入方法としては、Fc結合性タンパク質の全体または部分配列を含むポリヌクレオチドに、変異原となる薬剤を接触・作用させたり、紫外線を照射したりして、ポリヌクレオチドに変異を導入して作製する方法があげられる。当該方法において変異原として使用する薬剤としては、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン等、当業者が通常用いる変異原性薬剤を用いればよい。
本発明のFc結合性タンパク質を発現させる宿主には特に制限はなく、一例として、動物細胞(CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞、HEK細胞、Hela細胞、COS細胞等)、酵母(Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Schizosaccharomyces japonicus、Schizosaccharomyces octosporus、Schizosaccharomyces pombe等)、昆虫細胞(Sf9、Sf21等)、大腸菌(JM109株、BL21(DE3)株、W3110株等)や枯草菌があげられる。なお動物細胞や大腸菌を宿主として用いると生産性の面で好ましく、大腸菌を宿主として用いるとさらに好ましい。
本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換する場合、本発明のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミド等)の適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入したものを用いると、より好ましい。なお当該発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合は、pETプラスミドベクター、pUCプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pBBRプラスミドベクターを例示することができる。また前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモーターといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。当該プロモーターの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、lppプロモーター、さらにはλファージのλPLプロモーター、λPRプロモーターがあげられ、宿主が動物細胞の場合は、SV40プロモーター、CMVプロモーター、CAGプロモーターがあげられる。
前記方法により作製した、本発明のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクター(以下、本発明の発現ベクターとする)を用いて宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。例えば、宿主としてEscherichia属に属する微生物(大腸菌JM109株、大腸菌BL21(DE3)株、大腸菌W3110株等)を選択する場合には、公知の文献(例えば、Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,256,1992)に記載の方法等により形質転換すればよい。なお宿主が動物細胞である場合にはエレクトロポレーションやリポフェクションを用いればよい。前述した方法で形質転換して得られた形質転換体は、適切な方法でスクリーニングすることにより、本発明のFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体(以下、本発明の形質転換体とする)を取得することができる。
本発明の形質転換体から本発明の発現ベクターを調製するには、形質転換に用いた宿主に適した方法で、本発明の形質転換体から本発明の発現ベクターを抽出し調製すればよい。例えば、本発明の形質転換体の宿主が大腸菌の場合、形質転換体を培養して得られる培養物からアルカリ抽出法またはQIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン製)等の市販の抽出キットを用いて調製すればよい。
本発明の形質転換体を培養し、得られた培養物から本発明のFc結合性タンパク質を回収することで、本発明のFc結合性タンパク質を製造することができる。なお本明細書において培養物とは、培養された本発明の形質転換体の細胞そのもののほか、培養に用いた培地も含まれる。本発明のタンパク質製造方法で用いる形質転換体は、対象宿主の培養に適した培地で培養すればよく、宿主が大腸菌の場合は、必要な栄養源を補ったLB(Luria-Bertani)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。なお、本発明の発現ベクターの導入の有無により本発明の形質転換体を選択的に増殖させるために、培地に当該ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養すると好ましい。例えば、当該ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加すればよい。また培地には、炭素、窒素および無機塩供給源の他に、適当な栄養源を添加してもよく、所望により、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレートおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでもよい。
さらにグリシンといった前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す試薬を添加してもよく、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加すると好ましい。培養温度は宿主が大腸菌の場合、一般に10℃から40℃、好ましくは20℃から37℃、より好ましくは25℃前後であるが、発現させるタンパク質の特性により選択すればよい。培地のpHは宿主が大腸菌の場合、pH6.8からpH7.4、好ましくはpH7.0前後である。また本発明のベクターに誘導性のプロモーターが含まれている場合は、本発明のFc結合性タンパク質が良好に発現できるような条件下で誘導をかけると好ましい。誘導剤としてはIPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を例示することができる。宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)を測定し、約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、Fc結合性タンパク質の発現を誘導することができる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mMの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mMの範囲が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。
本発明の形質転換体を培養して得られた培養物から本発明のFc結合性タンパク質を回収するには、本発明の形質転換体における本発明のFc結合性タンパク質の発現形態に適した方法で、当該培養物から分離/精製して本発明のFc結合性タンパク質を回収すればよい。例えば、培養上清に発現する場合は菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のFc結合性タンパク質を精製すればよい。また、細胞内(ペリプラズムを含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加したり、超音波やフレンチプレス等を用いて菌体を破砕して本発明のFc結合性タンパク質を抽出した後、精製すればよい。本発明のFc結合性タンパク質を精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、一例として液体クロマトグラフィーを用いた分離/精製があげられる。液体クロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等があり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことにより、本発明のFc結合性タンパク質を高純度に調製することができる。
得られた本発明のFc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性を測定する方法としては、例えばIgGに対する結合活性をEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(以下、ELISAと表記)法や表面プラズモン共鳴法などを用いて測定すればよい。結合活性の測定に使用するIgGは、ヒトFc結合性タンパク質の改変型を用いる場合は、ヒトIgGが好ましく、ヒトIgG1やヒトIgG3が特に好ましい。
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に結合させることで、本発明の吸着剤を製造することができる。前記不溶性担体には特に限定はなく、アガロース、アルギネート(アルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプンといった多糖質を原料とした担体や、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタンといった合成高分子を原料とした担体や、シリカなどのセラミックスを原料とした担体が例示できる。中でも、多糖質を原料とした担体や合成高分子を原料とした担体が不溶性担体として好ましい。前記好ましい担体の一例として、トヨパール(東ソー製)等の水酸基を導入したポリメタクリレートゲル、Sepharose(GEヘルスケア製)等のアガロースゲル、セルファイン(JNC製)等のセルロースゲルがあげられる。不溶性担体の形状については特に限定はなく、粒状物または非粒状物、多孔性または非多孔性、いずれであってもよい。
Fc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化するには、不溶性担体にN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基、エポキシ基、カルボキシル基、マレイミド基、ハロアセチル基、トレシル基、ホルミル基、ハロアセトアミド等の活性基を付与し、当該活性基を介してヒトFc結合性タンパク質と不溶性担体とを共有結合させることで固定化すればよい。活性基を付与した担体は市販の担体をそのまま用いてもよいし、適切な反応条件で担体表面に活性基を導入して調製してもよい。活性基を付与した市販の担体としてはTOYOPEARL AF-Epoxy-650M、TOYOPEARL AF-Tresyl-650M(いずれも東ソー製)、HiTrap NHS-activated HP Columns、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flow、Epoxy-activated Sepharose 6B(いずれもGEヘルスケア製)、SulfoLink Coupling Resin(サーモサイエンティフィック製)が例示できる。
一方、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基等に対して2個以上の活性部位を有する化合物の一方を反応させる方法が例示できる。当該化合物の一例のうち、担体表面の水酸基やアミノ基にエポキシ基を導入する化合物としては、エピクロロヒドリン、エタンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが例示できる。前記化合物により担体表面にエポキシ基を導入した後、担体表面にカルボキシル基を導入する化合物としては、2-メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸、6-メルカプト酪酸、グリシン、3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸を例示できる。
担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基にマレイミド基を導入する化合物としては、N-(ε-マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N-(ε-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、4-[4-N-マレイミドフェニル]酢酸ヒドラジド、2-アミノマレイミド、3-アミノマレイミド、4-アミノマレイミド、6-アミノマレイミド、1-(4-アミノフェニル)マレイミド、1-(3-アミノフェニル)マレイミド、4-(マレイミド)フェニルイソシアナート、2-マレイミド酢酸、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸、(N-[α―マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル)、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、(スクシンイミジル-4-[マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボニル-[6-アミノヘキサン酸])、(スクシンイミジル-4-[マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸)、(p-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。
担体表面に存在する水酸基やアミノ基にハロアセチル基を導入する化合物としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミド、クロロ酢酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、2-(ヨードアセトアミド)酢酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、3-(ブロモアセトアミド)プロピオン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(ヨードアセチル)アミノ安息香酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。なお担体表面に存在する水酸基やアミノ基にω-アルケニルアルカングリシジルエーテルを反応させた後、ハロゲン化剤でω-アルケニル部位をハロゲン化し活性化する方法も例示できる。ω-アルケニルアルカングリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、3-ブテニルグリシジルエーテル、4-ペンテニルグリシジルエーテルを例示でき、ハロゲン化剤としてはN-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミドを例示できる。
担体表面に活性基を導入する方法の別の例として、担体表面に存在するカルボキシル基に対して縮合剤と添加剤を用いて活性化基を導入する方法がある。縮合剤としては1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジアミド、カルボニルジイミダゾールを例示できる。また添加剤としてはN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、4-ニトロフェノール、1-ヒドロキシベンズトリアゾールを例示できる。
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化する際用いる緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、MES(2-MorpholinoEthaneSulfonic acid)緩衝液、HEPES(4-(2-HydroxyEthyl)-1-PiperazineEthaneSulfonic acid)緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液を例示できる。固定化させるときの反応温度は、5℃から50℃までの温度範囲の中から活性基の反応性や本発明のFc結合性タンパク質の安定性を考慮の上、適宜設定すればよく、好ましくは10℃から35℃の範囲である。
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる本発明の吸着剤を用いて、抗体を分離するには、例えば、本発明の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む緩衝液をポンプ等の送液手段を用いて添加することで、抗体を本発明の吸着剤に特異的に吸着させた後、適切な溶出液をカラムに添加することで、抗体を溶出すればよい。なお、抗体を含む緩衝液をカラムに添加する前に、適切な緩衝液を用いてカラムを平衡化すると、抗体をより高純度に分離できるため好ましい。緩衝液としてはリン酸緩衝液等、無機塩を成分とした緩衝液を例示することができる。なお緩衝液のpHは、pH3から10、好ましくはpH4から8である。本発明の吸着剤に吸着した、抗体を溶出させるには、抗体とリガンド(本発明のFc結合性タンパク質)との相互作用を弱めればよく、具体的には、緩衝液によるpH変化、カウンターペプチド、温度変化、塩濃度変化が例示できる。本発明の吸着剤に吸着した、抗体を溶出させるための溶出液の具体例として、本発明の吸着剤に抗体を吸着させる際に用いた溶液よりも酸性側の緩衝液があげられる。緩衝液の種類としては酸性側に緩衝能を有するクエン酸緩衝液、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液を例示できる。緩衝液のpHは、抗体が有する機能を損なわない範囲で設定すればよく、好ましくはpH2.5から6.0、より好ましくはpH3.0から5.0、さらに好ましくはpH3.0から4.0である。
塩濃度の変化で抗体を溶出させる場合、高濃度の塩を含む緩衝液(溶出液)で一段階に溶出してもよく、任意に塩濃度を段階的に上昇させてもよく(ステップグラジエント)、直線的濃度勾配で塩濃度を上昇させてもよい(リニアグラジエント)が、リニアグラジエントで溶出させると好ましい。例えば水溶性の塩として塩化ナトリウムを用いる場合、塩化ナトリウム濃度0Mから1Mまでのリニアグラジエントで溶出させればよい。また、pH変化で抗体を溶出させる場合、平衡化緩衝液よりpHが低下した酸性緩衝液(溶出液)で一段階に溶出してもよく、任意に緩衝液のpHを段階的に低下させてもよく(ステップグラジエント)、直線的濃度勾配で緩衝液のpHを低下させてもよい(リニアグラジエント)が、リニアグラジエントで溶出させると好ましい。例えば抗体が吸着する中性から弱酸性の緩衝液から抗体が溶離する酸性の緩衝液へと、リニアグラジエントで溶出させればよい。
前述した方法で溶出された、抗体が含まれる画分を分取することで当該抗体を得ることができる。分取は常法により行なってよい。具体的には、例えば、一定の時間ごとや、一定の容量ごとに回収容器を交換する方法や、溶出液のクロマトグラムの形状に合わせて回収容器を換える方法や、自動フラクションコレクター等により画分の分取をすることが挙げられる。
なお抗体を含む溶液から、本発明の吸着剤を用いて前記抗体を分離する際、本発明のFc結合性タンパク質は抗体に結合している糖鎖構造の違いを認識することから、前記抗体が有する糖鎖構造の違いにより、抗体を順次溶出させ、その結果、抗体の溶出位置(溶出フラクション)が異なる溶出離液を用いることが好ましい。従って、本発明の吸着剤を用いて抗体を分離することで、抗体が有する糖鎖構造の違いを識別することができる。識別可能な糖鎖の構造に特に限定はなく、一例として、CHO細胞といった動物由来の細胞や、ピキア酵母やサッカロミセス酵母といった酵母を宿主として抗体を発現させたときに付加される糖鎖や、ヒト抗体が有する糖鎖や、化学合成法で抗体に付加した糖鎖があげられる。また本発明の吸着剤は、抗体が有する糖鎖構造の違いに基づき抗体を分離できる。
本発明のFc結合性タンパク質は、天然型のFc結合性タンパク質と比べて、アルカリに対して優れた安定性(アルカリ耐性)を有する。本発明のFc結合性タンパク質を抗体の吸着剤におけるアフィニティリガンドとして用いることで、アルカリ洗浄に対する安定性(耐性)が高い吸着剤が得られる。したがって、抗体医薬品の工業的製造におけるコスト低減に寄与できる。
また、本発明のFc結合性タンパク質において、特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換することで、遺伝子組換体による生産性を向上させることができる。
ヒトFcγRIIIaの概略図である。図中の数字は配列番号1に記載のアミノ酸配列の番号を示している。図中のSはシグナル配列、ECは細胞外領域、TMは細胞膜貫通領域、Cは細胞内領域を示している。 FcR36i固定化ゲルにより、モノクローナル抗体(リツキサン)を分離した際のクロマトグラムである。20mM酢酸緩衝液(pH4.8)および10mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を用い、10mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)が0%から100%になるようにリニアグラジエント溶出することで、リツキサンを溶出した。 FcR36i固定化ゲルを用いて、リニアグラジエント溶出により分取したモノクローナル抗体(リツキサン)のADCC活性を測定した結果を示している。 FcR36i固定化ゲルを用いて、リニアグラジエント溶出により分取したモノクローナル抗体(リツキサン)の糖鎖構造を解析した結果を示している。 FcR36i固定化ゲルにより、モノクローナル抗体(リツキサン)を分離した際のクロマトグラムである。20mM酢酸緩衝液(pH5.2)、20mM酢酸緩衝液(pH4.8)および10mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)により、ステップグラジエント溶出することで、リツキサンを溶出した。 FcR36i固定化ゲルを用いて、ステップグラジエント溶出により分取したモノクローナル抗体(リツキサン)の糖鎖構造を解析した結果を示している。 FcR36i固定化ゲルにより、モノクローナル抗体(アバスチン)を分離した際のクロマトグラムである。20mM酢酸緩衝液(pH5.2)、20mM酢酸緩衝液(pH4.8)および10mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)により、ステップグラジエント溶出することで、アバスチンを溶出した。 FcR36i固定化ゲルを用いて、ステップグラジエント溶出により分取したモノクローナル抗体(アバスチン)の糖鎖構造を解析した結果を示している。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1 Fc結合性タンパク質への変異導入およびライブラリーの作製
特開2017-118871号公報に記載の方法で作製した、FcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)をコードするポリヌクレオチドに対し、エラープローンPCRによるランダム変異導入を施した。なおFcR35c(配列番号5に記載のアミノ酸配列のうち、33番目から208番目までのアミノ酸残基)は、天然型ヒトFcγRIIIaの細胞外領域(図1のEC領域)に相当する、配列番号4の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまで(配列番号1では17番目のグリシンから192番目のグルタミンまで)のアミノ酸残基であり、ただし当該33番目から208番目までのアミノ酸残基において、Glu37Gly(この表記は、配列番号4の37番目のグルタミン酸がグリシンに置換されていることを表す、以下同様)、Leu39Met、Val43Glu、Phe45Ile、Gln49Pro、Tyr51Asn、Lys56Gln、Gln64Arg、Tyr67His、Glu70Asp、Asn72Asp、Ser84Pro、Tyr90Phe、Phe91Ile、Ala94Ser、Thr96Ser、Asp98Glu、Asn108Ser、Asp114Glu、Gln117Leu、Val133Glu、Lys135Val、Glu137Gly、Asp138Glu、Lys148Arg、Thr156Met、Tyr157Phe、Gly163Val、Tyr174Val、Lys181Glu、Phe187Ser、Ser194Arg、Thr201Ala、Asn203Glu、Ile206ValおよびGln208Proのアミノ酸置換を有したポリペプチドである。
(1)鋳型として特開2017-118871号公報に記載の方法で作製した発現ベクターpET-FcR35c(当該発現ベクターのうち配列番号5に記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号6に示す)を用いてエラープローンPCRを行なった。エラープローンPCRは、表1に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を35サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。この反応によりFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドに良好に変異が導入された。
(2)(1)で得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ同制限酵素で消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションした。
(3)ライゲーション反応終了後、反応液をエレクトロポレーション法により大腸菌BL21(DE3)株に導入し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養後、プレート上に形成したコロニーをランダム変異ライブラリーとした。
実施例2 アルカリ耐性を有したFc結合性タンパク質のスクリーニング
(1)実施例1で作製したランダム変異ライブラリー(形質転換体)を、50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、30℃で一晩振とう培養した。
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの0.05mMのIPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)、0.3%(w/v)のグリシンおよび50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作によって得られた、Fc結合性タンパク質を含む培養上清を純水にて25倍に希釈し、等量の500mMの水酸化ナトリウム溶液と混合した後、30℃で3時間静置することでアルカリ処理した。アルカリ処理後は、4倍量の1Mトリス緩衝液(pH7.0)でpHを中性付近に戻した。
(4)(3)に記載のアルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性と、(3)に記載のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、それぞれ下記に示すELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性を算出した。
(4-1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellで固定化し(4℃で18時間)、固定化終了後、2%(w/v)のSKIM MILK(BD製)および150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)によりブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.05%[w/v]のTween 20、150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で洗浄後、抗体結合活性を評価するFc結合性タンパク質を含む溶液を添加し、Fc結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを反応させた(30℃で1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti-6His抗体(Bethyl Laboratories製)を100μL/wellで添加した。
(4-4)30℃で1時間反応させ、前記洗浄緩衝液で洗浄した後、TMB Peroxidase Substrate(KPL製)を50μL/wellで添加した。1Mのリン酸を50μL/wellで添加することで発色を止め、マイクロプレートリーダー(テカン製)にて450nmの吸光度を測定した。
(5)(4)の方法で約2700株の形質転換体を評価し、その中からFcR35cと比較して安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。選択した形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地にて培養し、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列をチェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)にてヌクレオチド配列を解析した。なお当該解析の際、配列番号2(5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’)または配列番号3(5’-TATGCTAGTTATTGCTCAG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをシークエンス用プライマーとして使用した。
(4)の方法で形質転換体を評価し、FcR35cと比較した結果を表2に示す。FcR35cと比較してアルカリ安定性が向上したポリペプチドを、FcR35d、FcR36iおよびFcR36aと命名した。FcR35cと比較してアルカリ安定性が低下したポリペプチドを、それぞれA,B,CおよびDとして表2に記載した(配列未確認)。
FcR35dを含むFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号7に、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号8に示す。また、FcR36iを含むFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号9に、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号10に示す。さらに、FcR36aを含むFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号11に、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号12に示す。なお、配列番号7、9および11において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のリジン(Lys)から32番目のメチオニン(Met)までがリンカー配列であり、33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までがFcR35d(配列番号7)、FcR36i(配列番号9)またはFcR36a(配列番号11)のアミノ酸配列、209番目から210番目までのグリシン(Gly)がリンカー配列であり、211番目から216番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
(6)の方法でFcR35d、FcR36iおよびFcR36aをコードするポリヌクレオチドの配列を解析した結果、FcR35d(配列番号7)はFcR35cに対して、Ser81Arg、Asn196Lys、Glu200GlyおよびGlu203Aspという新たなアミノ酸置換が生じた一方、98番目、114番目、117番目および208番目のアミノ酸残基は天然型(配列番号4)のアミノ酸残基に戻っていた。またFcR36i(配列番号9)はFcR35cに対して、Ser81Arg、Val192Ile、Asn196Lys、Glu200GlyおよびGlu203Aspという新たなアミノ酸置換が生じた一方、98番目、114番目、117番目および208番目のアミノ酸残基はFcR35dと同様、天然型(配列番号4)のアミノ酸残基に戻っていた。FcR36a(配列番号11)はFcR35cに対して、Ser81Arg、Val192Ala、Asn196Lys、Glu200GlyおよびGlu203Aspという新たなアミノ酸置換が生じた一方、98番目、114番目、117番目および208番目のアミノ酸残基はFcR35dおよびFcR36iと同様、天然型(配列番号4)のアミノ酸残基に戻っていた。
実施例3 Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性評価
(1)FcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)、ならびに実施例2で取得した、FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)、FcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)およびFcR36aを含むFc結合性タンパク質(配列番号11)を発現する形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む100mLの2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した1000mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に前培養液を10mL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養した。その後、終濃度0.01mMとなるようにIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で懸濁し、超音波破砕した。その後、遠心分離により上清を回収した。
(5)回収した上清は、Ni Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア製)を充填したカラムに通液し、洗浄緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で十分量の洗浄を行なった後、溶出緩衝液(150mMのNaClと500mMのイミダゾールを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で溶出し、当該溶出画分を回収した。
(6)(5)で回収した溶出画分を、IgG Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア製)を充填したカラムに通液し、洗浄緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で十分量の洗浄を行なった後、溶出緩衝液(100mMグリシン緩衝液(pH3.0))で溶出し、当該溶出画分を回収後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を1/4倍量加えて中和することで、精製した各Fc結合性タンパク質を調製した。
(7)各Fc結合性タンパク質の濃度が10μg/mLになるよう純水で希釈後、前記希釈した溶液50μLと200mMの水酸化ナトリウム溶液50μLとを混合し、25℃で96時間静置することでアルカリ処理した。その後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を4倍量加えることで中和した。
(8)(7)に記載のアルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性と、(7)に記載のアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法にてそれぞれ測定した。その後、アルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性を算出した。
結果を表3に示す。FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)、FcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)およびFcR36aを含むFc結合性タンパク質(配列番号11)は、FcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)と比較し残存活性が高いことから、実施例2で取得したFcR35d、FcR36iおよびFcR36aは、FcR35cに比べてアルカリ安定性(アルカリ耐性)が向上していることが確認された。
実施例4 Fc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性測定
形質転換体として、FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)、FcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)、FcR36aを含むFc結合性タンパク質(配列番号11)またはFcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)を発現する形質転換体を用いて、下記の方法で測定した。
(1)前記FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)またはFcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)を発現する形質転換体をそれぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む2mLの2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に前培養液を0.2mL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養した。その後、終濃度0.01mMとなるようにIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)を添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein extraction kit(メルクミリポア製)を用いてタンパク質抽出液を調製した。
(5)Fc結合性タンパク質の抗体結合活性を、実施例2(4)に示すELISA法にて測定した。得られたFc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性よりFc結合性タンパク質の発現量を算出した。
結果を表4に示す。培養液1LあたりのFc結合性タンパク質FcR35dおよびFcR36iの発現量はそれぞれ443.5mgおよび495.6mgとなった。
(6)前記FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)、FcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)、FcR36aを含むFc結合性タンパク質(配列番号11)またはFcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)を発現する形質転換体をそれぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む2mLの2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(7)(2)と同様に振とう培養を行った。
(8)(3)に記載の方法のうち培養時間を12時間とした以外は同様の方法で振とう培養した。
(9)(4)と同様にタンパク質抽出液を調製した。
(10)(5)と同様に発現量を算出した。
結果を表5に示す。培養液1LあたりのFc結合性タンパク質FcR35d、FcR36i、FcR36aおよびFcR35cの発現量はそれぞれ226mg、248mg、307mgおよび211mgとなった。
実施例5 Fc結合性タンパク質とIgG1との結合親和性評価
(1)実施例3(1)から(6)と同様の方法で培養および精製を実施し、各Fc結合性タンパク質を調製した。
(2)(1)の溶出画分として回収したFc結合性タンパク質とIgG1との結合親和性評価を表面プラズモン共鳴法により行なった。表面プラズモン共鳴法を用いた結合親和性の測定において、測定装置としてはBiacore T100(GEヘルスケア製)を、センサーチップとしてはSensor Chip CM5(GEヘルスケア製)を、解析ソフトとしてはBiacore T100 Evaluation Software(GEヘルスケア製)を、それぞれ用いた。
(3)Amine Coupling Kit(GEヘルスケア製)を用いてFc結合性タンパク質を固定化したセンサーチップに対し、IgG1(SIGMA-ALDRICH製)をHBS-EP(GEヘルスケア製)で希釈した溶液を流すことでセンサーグラムを得た。当該センサーグラムを基にカーブフィッティングを行なうことで、IgG1に対する結合親和性を算出した。
IgG1に対する結合親和性を算出した結果を表6に示す。なお表5において、K値(解離定数)が低いほど、高いアフィニティ(結合親和性)を有している。FcR35dを含むFc結合性タンパク質(配列番号7)、FcR36iを含むFc結合性タンパク質(配列番号9)およびFcR36aを含むFc結合性タンパク質(配列番号11)のK値は、それぞれ3.9×10-8M、4.3×10-8Mおよび9.5×10-8Mとなり、FcR35cを含むFc結合性タンパク質(配列番号5)のK値(4.0×10-8M)と同等の結合親和性であった。
以上の結果から、実施例2で取得したFcR35d、FcR36iおよびFcR36aは、抗体のFc領域と結合可能な既知のポリペプチド(FcR35c、特開2017-11887号公報)と同等の抗体に対する結合親和性を有しながら、アルカリ耐性は向上していることがわかる。
実施例6 システインタグを付加したFcR36iの作製
(1)実施例2で作製したFcR36iをコードするポリヌクレオチド(配列番号10)を鋳型としてPCRを実施した。当該PCRにおけるプライマーは、配列番号13(5’-CATATGAAAATAAAAACAGGTGCACGCATCCTCGCATTATCCGCATTAACGAC-3’)および配列番号14(5’-CCCAAGCTTATCCGCAGGTATCGTTGCGGCACCCTTGGGTAACGGTAATGTCCACGGCCCCGCTG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。PCRは、表7に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分熱処理し、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。
(2)(1)で得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化したWO2015/199154号に記載の方法で作製の発現ベクターpTrc-PelBにライゲーションし、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌W3110株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を100μg/mLのカルベニシリンを含むLB培地にて培養後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン製)を用いて、発現ベクターpTrc-FcR36i_Cysを抽出した。
(4)pTrc-FcR36i_Cysのヌクレオチド配列の解析を、配列番号15(5’-TGTGGTATGGCTGTGCAGG-3’)または配列番号16(5’-TCGGCATGGGGTCAGGTG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて行なった。
発現ベクターpTrc-FcR36i_Cysで発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号17に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号18にそれぞれ示す。
なお配列番号17において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までが改良PelBシグナルペプチド(UniProt No.P0C1C1の1番目から22番目までのアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであって、ただし1つのアミノ酸置換を含むオリゴペプチド)であり、24番目のグリシン(Gly)から199番目のグルタミン(Gln)までがFc結合性タンパク質FcR36iのアミノ酸配列(配列番号9の33番目から208番目までの領域)、200番目のグリシン(Gly)から207番目のグリシン(Gly)までがシステインタグ配列である。
実施例7 FcR36i_Cysの調製
(1)実施例6で作製したFcR36i_Cysを発現する形質転換体を2Lのバッフルフラスコに入った100μg/mLのカルベニシリンを含む400mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(2)グルコース10g/L、酵母エキス20g/L、リン酸三ナトリウム十二水和物3g/L、リン酸水素二ナトリウム十二水和物9g/L、塩化アンモニウム1g/Lおよびカルベニシリン100mg/Lを含む液体培地1.8Lに、(1)の培養液180mLを接種し、3L発酵槽(バイオット製)を用いて本培養を行なった。温度30℃、pH6.9から7.1、通気量1VVM、溶存酸素濃度30%飽和濃度の条件に設定し、本培養を開始した。pHの制御には酸として50%リン酸、アルカリとして14%アンモニア水をそれぞれ使用し、溶存酸素の制御は撹拌速度を変化させることで制御し、撹拌回転数は下限500rpm、上限1000rpmに設定した。培養開始後、グルコース濃度が測定できなくなった時点で、流加培地(グルコース248.9g/L、酵母エキス83.3g/L、硫酸マグネシウム七水和物7.2g/L)を溶存酸素(DO)により制御しながら加えた。
(3)菌体量の目安として600nmの吸光度(OD600nm)が約150に達したところで培養温度を25℃に下げ、設定温度に到達したことを確認した後、終濃度が0.5mMになるようIPTG(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside)を添加し、引き続き25℃で培養を継続した。
(4)培養開始から約48時間後に培養を停止し、培養液を4℃で8000rpm、20分間の遠心分離により菌体を回収した。
(5)回収した菌体を20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に5mL/1g(菌体)となるように懸濁し、超音波発生装置(インソネーター201M(商品名)、久保田商事製)を用いて、4℃で約10分間、約150Wの出力で菌体を破砕した。菌体破砕液は4℃で20分間、8000rpmの遠心分離を2回行ない、上清を回収した。
(6)(5)で得られた上清を、あらかじめ20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化した140mLのTOYOPEARL CM-650M(東ソー製)を充填したVL32×250カラム(メルクミリポア製)に流速10mL/分でアプライした。平衡化に用いた緩衝液で洗浄後、0.8Mの塩化ナトリウムを含む20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で溶出した。
前記精製により、FcR36i_Cysを得た。
実施例8 FcR36i固定化ゲルの作製とリニアグラジエント溶出による抗体分離
(1)分離剤用親水性ビニルポリマー(東ソー製)の表面の水酸基をヨードアセチル基で活性化後、実施例7で調製したFcR36i_Cysを反応させることにより、FcR36i固定化ゲルを得た。
(2)(1)で調製したFcR36i固定化ゲル1.0mLをTricornカラム(GEヘルスケア製、内径5mm)に充填した。
(3)FcR36i固定化ゲルを充填したカラムをAKTA Avant(GEヘルスケア製)に接続し、pH4.8の20mMの酢酸緩衝液(緩衝液A)で平衡化した。
(4)pH4.8の20mMの酢酸緩衝液(緩衝液A)で10mg/mLのモノクローナル抗体(リツキサン、全薬工業製)を流速0.2mL/minにて0.5mLアプライした。
(5)流速0.2mL/minのまま平衡化緩衝液で66分洗浄後、pH3.0の10mMのグリシン塩酸緩衝液(緩衝液B)によるリニアグラジエント(75分でpH3.0の10mMのグリシン塩酸緩衝液(緩衝液B)が100%となるリニアグラジエント)で吸着したモノクローナル抗体を溶出した。
結果(溶出パターンのクロマトグラム)を図2に示す。モノクローナル抗体はFcR36iと相互作用することで、ゲルろ過クロマトグラフィーのような単一のピークではなく、2つのピークに分離された。つまり、FcR36iと弱い結合を示す抗体は溶出時間が早く、強い結合を示す抗体は溶出時間が遅くなることにより、2つのピークに分離した。
実施例9 FcR36i固定化ゲルを用いてリニアグラジエント溶出により分離した抗体のADCC(抗体依存性細胞傷害作用)活性測定
(1)実施例8に記載の溶出条件でモノクローナル抗体を分離し、図2に記載の溶出パターンのクロマトグラムにおけるフラクションA(FrA)およびフラクションB(FrB)の画分を分取した。
(2)FrAおよびFrBに含まれる抗体、ならびに分離前のモノクローナル抗体の濃度を280nmの吸光度で測定した。
(3)以下に示す方法で、FrAおよびFrBに含まれる抗体、ならびに分離前のモノクローナル抗体が有するADCC活性を測定した。
(3-1)1.4mLのLow IgG Serumと33.6mLのRPMI1640培地とを混合して調製したADCC Assay Bufferを用いて、FrAおよびFrBに含まれる抗体ならびに分離前のモノクローナル抗体を1ng/mLから1/3希釈で9段階の希釈系列を調製した。
(3-2)Raji細胞をADCC Assay Bufferにて約5×10cells/mLに調製し、96wellプレート(3917:コーニング社)に25μL/wellで加えた。
(3-3)Raji細胞を加えたwellに(3-1)で調製したFrA、FrB、分離前のモノクローナル抗体、ブランク(ADCC Assay Bufferのみ)を25μL/well加えた。
(3-4)Effector細胞(プロメガ製)をADCC Assay Bufferにて約3.0×10cells/mLに調製し、Raji細胞および抗体を加えたwellに25μL/wellで加えた。その後、COインキュベーター(5%CO、37℃)にて6時間静置した。
(3-5)96wellプレートを室温で5分から30分静置した後、Luciferase Assay Reagent(プロメガ製)を75μL/wellで加えた。室温で30分反応させたのち、GloMax Multi Detection System(プロメガ製)で発光を測定した。
実施例8に記載の溶出条件で分取したFrAおよびFrBにそれぞれ含まれる抗体ならびに分離前のモノクローナル抗体の発光強度を比較した結果を図3に示す。なお図3の結果は、測定した発光強度からブランクの発光強度を引いた値を示しており、発光強度が高いほど、ADCC活性が高いことを意味している。
FcR36i固定化ゲルで分取した溶出時間の早いFrAに含まれる抗体は、分離前のモノクローナル抗体とほぼ同程度の発光強度であることからADCC活性はほぼ同等といえる。一方、溶出時間の遅いFrBに含まれる抗体は、分離前のモノクローナル抗体と比べてADCC活性が約1.4倍、FrAに含まれる抗体と比べても約1.5倍に向上していた。つまり、FrBに含まれる抗体は分離前のモノクローナル抗体およびFrAに含まれる抗体と比べてADCC活性が高いことが分かる。
実施例10 FcR36i固定化ゲルを用いてリニアグラジエント溶出により分離した抗体の糖鎖構造解析
(1)実施例9(1)で分取したFrAおよびFrBにそれぞれ含まれる抗体を100℃、10分の熱処理により変性後、グリコアミダーゼA/ペプシンおよびプロナーゼで順次処理し、ゲルろ過法による精製操作を経て糖鎖画分を取得した。
(2)(1)で得られた糖鎖をエバポレーターにて濃縮・乾燥後、酢酸溶媒下、2-アミノピリジン、次いでジメチルアミンボランを順次作用させて蛍光ラベル化糖鎖とし、ゲルろ過法により精製した。
(3)(2)で得られた蛍光ラベル化糖鎖を陰イオン交換カラム(TSKgel DEAE-5PW、φ7.5mm×7.5cm:東ソー製)にて、中性糖鎖画分とモノシアリル化糖鎖画分に分離した。
(4)(3)で得られた中性糖鎖画分とモノシアリル化糖鎖画分をODSカラムを用いて、個々の糖鎖に単離した。MALDI-TOF-MS分析により単離した糖鎖の分子量情報を取得後、ODSカラムクロマトグラフのリテンションタイムと照らし合わせて糖鎖構造を帰属した。
帰属した糖鎖構造の結果を図4および表8、糖鎖構造の概略図を表9に示す。FrAに含まれる抗体と比較してFrBに含まれる抗体では末端にガラクトースを含む糖鎖構造(G1FaおよびG2F)を有した抗体の割合が高く、末端にガラクトースを含まない糖鎖構造(G0F)を有した抗体の割合が低かった。このことより、末端にガラクトースを含む糖鎖構造を有した抗体はFcR36iと強く結合し、Fc36i固定化ゲルで分離した際に遅い溶出時間で溶出され(すなわち、低いpHにて溶出される)、末端にガラクトースを含まない糖鎖構造を有した抗体はFcR36iとの結合が弱いこと、およびFc36i固定化ゲルで分離する際に早く溶出される(すなわち、高いpHにて溶出される)ことが分かる。
実施例11 FcR36i固定化ゲルの作製とステップグラジエント溶出による抗体分離
(1)実施例8(1)と同様の方法により、FcR36i固定化ゲルを得た。
(2)実施例8(2)と同様の方法により、FcR36i固定化ゲルをカラムに充填した。
(3)FcR36i固定化ゲルを充填したカラムをAKTA Avant(GEヘルスケア製)に接続し、20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で平衡化した。
(4)20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で10mg/mLのモノクローナル抗体(リツキサン、全薬工業製)を流速0.2mL/minにて1.5mLアプライした。
(5)流速0.2mL/minのまま20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)を120分間送液後、流速0.2mL/minで20mMの酢酸緩衝液(pH4.8)を100分間送液し、モノクローナル抗体を溶出した。
(6)流速0.2mL/minのまま10mMのグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を50分間送液することで、吸着したモノクローナル抗体を溶出した。
結果(溶出パターンのクロマトグラム)を図5に示す。pHの異なる緩衝液をカラムに送液したことで、それぞれの緩衝液にて抗体が溶出され、モノクローナル抗体は3つのピークに分離された。モノクローナル抗体はFcR36iと相互作用することから、高いpHで早く溶出された抗体はFcR36iと弱い親和性を示す抗体であり、低いpHで遅く溶出された抗体はFcR36iと強い親和性を示す抗体であることがわかる。
実施例12 FcR36i固定化ゲルで分離した抗体の糖鎖解析
(1)実施例11に記載の溶出条件でモノクローナル抗体を分離し、図5に記載の溶出パターンのクロマトグラムにおけるフラクションC(FrC)、フラクションD(FrD)およびフラクションE(FrE)の画分を分取した。
(2)上記で分取したFrC、FrDおよびFrEにそれぞれ含まれる抗体を用いたこと以外は、実施例10と同様の方法で、糖鎖構造を帰属した。
帰属した糖鎖構造の結果を図6および表10、糖鎖構造の概略図を表9に示す。
FrC(20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で溶出)、FrD(20mMの酢酸緩衝液(pH4.8)で溶出)およびFrE(10mMのグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で溶出)に含まれるそれぞれの抗体の糖鎖構造を比較すると、高いpHで溶出されたフラクションに含まれる抗体では末端にガラクトースを含まない糖鎖構造(G0F)を有した抗体の割合が高く、低いpHで溶出されたフラクションに含まれる抗体では末端にガラクトースを含む糖鎖構造(G1FaおよびG2F)を有した抗体の割合が高かった。このことより、末端にガラクトースを含む糖鎖構造を有した抗体はFcR36iと強く結合し、Fc36i固定化ゲルで分離した際に低いpHで溶出され、末端にガラクトースを含まない糖鎖構造を有した抗体はFcR36iとの結合が弱いこと、およびFc36i固定化ゲルで分離した際に高いpHで溶出されることが分かる。
実施例13 FcR36i固定化ゲルを用いたステップグラジエント溶出による抗体分離(その2)
(1)実施例8(1)と同様の方法により、FcR36i固定化ゲルを得た。
(2)ゲル量を0.2mLとした以外は、実施例8(2)と同様の方法により、FcR36i固定化ゲルをカラムに充填した。
(3)FcR36i固定化ゲルを充填したカラムをAKTA Avant(GEヘルスケア製)に接続し、20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で平衡化した。
(4)20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で10mg/mLのモノクローナル抗体(アバスチン、Roche製)を流速0.04mL/minにて0.3mLアプライした。
(5)流速0.04mL/minのまま20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)を180分間送液後、流速0.04mL/minで20mMの酢酸緩衝液(pH4.8)を150分間送液し、モノクローナル抗体を溶出した。
(6)流速0.04mL/minのまま10mMのグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)を100分間送液することで、吸着したモノクローナル抗体を溶出した。
結果(溶出パターンのクロマトグラム)を図7に示す。モノクローナル抗体は3つのピークに分離されたが実施例11と異なる種類の抗体であることから、異なる溶出パターンが得られることが分かる。
実施例14 FcR36i固定化ゲルでステップグラジエント溶出より分離した抗体の糖鎖解析(その2)
(1)実施例13に記載の溶出条件でモノクローナル抗体を分離し、図7に記載の溶出パターンのクロマトグラムにおけるフラクションF(FrF)、フラクションG(FrG)およびフラクションH(FrH)の画分を分取した。

(2)上記(1)で分取したFrF、FrGおよびFrHにそれぞれ含まれる抗体を用いたこと以外は、実施例10と同様の方法で、糖鎖構造を解析した。

解析した糖鎖構造の結果を図8および表11、糖鎖構造の概略図を表9に示す。
FrF(20mMの酢酸緩衝液(pH5.2)で溶出)、FrG(20mMの酢酸緩衝液(pH4.8)で溶出)およびFrH(10mMのグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で溶出)に含まれるそれぞれの抗体の糖鎖構造を比較すると、高いpHで溶出されたフラクションに含まれる抗体(FrF)では末端にガラクトースを含まない糖鎖構造(G0F)を有した抗体の割合が高く、低いpHで溶出されたフラクション(FrH)に含まれる抗体では末端にガラクトースを含む糖鎖構造(G1FaおよびG2F)を有した抗体の割合が高かった。このことより、末端にガラクトースを含む糖鎖構造を有した抗体はFcR36iと強く結合し、Fc36i固定化ゲルで分離した際に低いpHで溶出されることが分かる。
参考例1 FcR9アミノ酸置換体の作製
特開2016-169197号公報(特許文献3)に記載の方法で作製したFc結合性タンパク質FcR9(配列番号20)に対し、192番目(配列番号1では176番目に相当)のアミノ酸残基を他のアミノ酸へ置換することの有用性を確認するため、以下に示すアミノ酸置換を行なった。具体的にはFcR9をコードするポリヌクレオチド(配列番号21)を含むプラスミドpET-FcR9(特開2016-169197号公報)に対し、PCRを用いてアミノ酸の置換を行ない、FcR9(配列番号20)のうち192番目のバリンを他のアミノ酸に置換したFc結合性タンパク質を作製した。なおFcR9(配列番号20)は、配列番号4に示すヒトFcγRIII細胞外領域を含むFc結合性タンパク質において、43番目(配列番号1では27番目に相当)のバリンをグルタミン酸に、45番目(配列番号1では29番目に相当)のフェニルアラニンをイソロイシンに、51番目(配列番号1では35番目に相当)のチロシンをアスパラギンに、64番目(配列番号1では48番目に相当)のグルタミンをアルギニンに、91番目(配列番号1では75番目に相当)のフェニルアラニンをロイシンに、108番目(配列番号1では92番目に相当)のアスパラギンをセリンに、133番目(配列番号1では117番目に相当)のバリンをグルタミン酸に、137番目(配列番号1では121番目に相当)のグルタミン酸をグリシンに、および187番目(配列番号1では171番目に相当)のフェニルアラニンをセリンに、それぞれアミノ酸置換されたFc結合性タンパク質である。
(1)鋳型DNAとして特開2016-169197号公報に記載の方法で作製したFcR9(配列番号20)をコードするポリヌクレオチド(配列番号21)を含むプラスミドpET-FcR9(特開2016-169197号公報)を、フォワードプライマーとして配列番号2(5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、リバースプライマーとして配列番号22(5’-CATTTTTGCTGCCMNNCAGCCCACGGCAGG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表12に示す組成からなる反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、50℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することでPCRを行なった。得られたPCR産物をV192p1とした。
(2)フォワードプライマーとして配列番号23(5’-CCTGCCGTGGGCTGNNKGGCAGCAAAAATG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、リバースプライマーとして配列番号3(5’-TATGCTAGTTATTGCTCAG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は(1)と同様な方法でPCRを行ない、得られたPCR産物をV192p2とした。
(3)PCR産物として(1)で得られたV192p1と(2)で得られたV192p2との混合物を用いて、表13に示す組成からなる反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分間熱処理後、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なうPCRを行ない、V192p1とV192p2を連結したPCR産物V192pを得た。
(4)PCR産物として(3)で得られたV192pを、フォワードプライマーとして配列番号2に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、リバースプライマーとして配列番号3に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表14に示す組成からなる反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分間熱処理し、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なうPCRを行ない、FcR9(配列番号20)の192番目のバリンを任意のアミノ酸に置換したFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得た。得られたポリヌクレオチドをV192p3とした。
(5)(4)で得られたV192p3を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出した。
(7)得られたプラスミドのうちFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびその周辺の領域について、チェーンターミネータ法に基づくBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ライフテクノロジーズ製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーApplied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(ライフテクノロジーズ製)にてヌクレオチド配列を解析した。なお当該解析の際、配列番号2または配列番号3に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをシークエンス用プライマーとして使用した。
配列解析の結果、Fc結合性タンパク質FcR9(配列番号20)の192番目のバリンがアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンのいずれかに置換されたFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を得た。
参考例2 Fc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性測定
(1)参考例1で得た形質転換体のうち、FcR9(配列番号20)の192番目(配列番号1では176番目)のアミノ酸残基をイソロイシン(以下、Val192Ileとも表記)、アラニン(以下、Val192Alaとも表記)またはチロシン(以下、Val192Tyrとも表記)に置換したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む2mLの2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に前培養液を0.2mL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養した。その後、終濃度0.01mMとなるようにIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)を添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein extraction kit(タカラバイオ製)を用いてタンパク質抽出液を調製した。
(5)Fc結合性タンパク質の抗体結合活性を、下記に示すELISA法にて測定した。
(5-1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellで添加して固定化(4℃で一晩)後、2%(w/v)のSKIM MILK(BD製)および150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)をウェルに添加することでブロッキングした。
(5-2)洗浄緩衝液(0.05%(w/v)のTween 20、150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で洗浄後、抗体結合活性を評価するFc結合性タンパク質を含む溶液を添加し、Fc結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを反応させた(30℃で1時間)。
(5-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti-6His抗体(Bethyl Laboratories製)を100μL/wellで添加した。
(5-4)30℃で1時間反応させ、前記洗浄緩衝液で洗浄した後、TMB Peroxidase Substrate(KPL製)を50μL/wellで添加した。1Mのリン酸を50μL/wellで添加することで発色を止め、マイクロプレートリーダー(テカン製)にて450nmの吸光度を測定した。
(6)(5)の方法で得られたFc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性よりFc結合性タンパク質の発現量を算出した。
結果を表15に示す。Val192Ileのアミノ酸置換を含むFc結合性タンパク質であるFcR9_I(配列番号24)、Val192Alaのアミノ酸置換を含むFc結合性タンパク質であるFcR9_A(配列番号26)、およびVal192Tyrのアミノ酸置換を含むFc結合性タンパク質であるFcR9_Y(配列番号28)を発現する形質転換体における培養液1LあたりのFc結合性タンパク質発現量はそれぞれ、130.6mg、21.7mgおよび14.6mgとなった。
本参考例で検討したFc結合性タンパク質であるFcR9_Iのアミノ酸配列を配列番号24に、前記FcR9_Iをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号25にそれぞれ示す。なお配列番号24において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のリジン(Lys)から32番目のメチオニン(Met)までがリンカー配列であり、33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までがFcR9(配列番号20)の33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までのアミノ酸配列においてVal192Ileのアミノ酸置換が生じたポリペプチドであり、209番目から210番目までのグリシン(Gly)がリンカー配列であり、211番目から216番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。また、Val192Ileのイソロイシンは配列番号24では192番目の位置に存在する。
本参考例で検討したFc結合性タンパク質であるFcR9_Aのアミノ酸配列を配列番号26に、前記FcR9_Aをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号27に示す。なお配列番号26は、33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までがFcR9(配列番号20)の33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までのアミノ酸配列においてVal192Alaのアミノ酸置換が生じたポリペプチドである他は、配列番号24と同じ配列である。また、Val192Alaのアラニンは配列番号26では192番目の位置に存在する。
本参考例で検討したFc結合性タンパク質であるFcR9_Yのアミノ酸配列を配列番号28に、前記FcR9_Yをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号29に示す。なお配列番号28は、33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までがFcR9(配列番号20)の33番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までのアミノ酸配列においてVal192Tyrのアミノ酸置換が生じたポリペプチドである他は、配列番号24と同じ配列である。また、Val192Tyrのチロシンは配列番号28では192番目の位置に存在する。
参考例3
形質転換体として、特開2016-169197号公報(特許文献3)で開示のFc結合性タンパク質FcR9(配列番号20)を発現する形質転換体を用いたこと以外は参考例2と同様に行なった。
結果を表15に示す。培養液1LあたりのFc結合性タンパク質の発現量は1.4mgとなった。以上の結果から、FcR9にVal192Ile、Val192Ile、Val192Tyrのいずれかのアミノ酸置換を導入したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体は、FcR9を発現する形質転換体と比較し、発現量が大幅に向上していることがわかる。
参考例4
形質転換体として、FcR9(配列番号20)の192番目(配列番号1では176番目)のアミノ酸残基をフェニルアラニン(以下、Val192Pheとも表記)、アルギニン(以下、Val192Argとも表記)、ロイシン(以下、Val192Leuとも表記)、アスパラギン(以下、Val192Asnとも表記)、アスパラギン酸(以下、Val192Aspとも表記)、システイン(以下、Val192Cysとも表記)、グルタミン(以下、Val192Glnとも表記)、グルタミン酸(以下、Val192Gluとも表記)、グリシン(以下、Val192Glyとも表記)、ヒスチジン(以下、Val192Hisとも表記)、リジン(以下、Val192Lysとも表記)、メチオニン(以下、Val192Metとも表記)、プロリン(以下、Val192Proとも表記)、セリン(以下、Val192Serとも表記)、スレオニン(以下、Val192Thrとも表記)またはトリプトファン(以下、Val192Trpとも表記)に置換したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を用いたこと以外は参考例2と同様に行なった。
結果を表15に示す。いずれも培養液1LあたりのFc結合性タンパク質の発現量はゼロまたは1mg未満であった。
参考例5 Fc結合性タンパク質とIgG1との結合親和性評価
(1)参考例1で得た形質転換体のうち、FcR9_I(配列番号24)またはFcR_A(配列番号26)を発現する形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む100mLの2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した1000mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に前培養液を10mL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養した。その後、終濃度0.01mMとなるようにIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で懸濁し、超音波破砕した。その後、遠心分離により上清を回収した。
(5)回収した上清は、Ni Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア製)を充填したカラムに通液し、洗浄緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で十分量の洗浄を行なった後、溶出緩衝液(150mMのNaClと500mMのイミダゾールを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で溶出し、当該溶出画分を回収した。
(6)(5)で回収した溶出画分を、IgG Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア製)を充填したカラムに通液し、洗浄緩衝液(150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で十分量の洗浄を行なった後、溶出緩衝液(100mMグリシン緩衝液(pH3.0))で溶出し、当該溶出画分を回収した。
(7)(6)の溶出画分として回収したFc結合性タンパク質とIgG1との結合性評価を表面プラズモン共鳴法を用いて行なった。表面プラズモン共鳴法を用いた結合性の測定において、測定装置としてはBiacore T100(GEヘルスケア製)を、センサーチップとしてはSensor Chip CM5(GEヘルスケア製)を、解析ソフトとしてはBiacore T100 Evaluation Software(GEヘルスケア製)を、それぞれ用いた。
(8)Amine Coupling Kit(GEヘルスケア製)を用いてFc結合性タンパク質を固定化したセンサーチップに対し、IgG1(SIGMA-ALDRICH製)をHBS-EP(GEヘルスケア製)で希釈した溶液を流すことでセンサグラムを得た。当該センサグラムを基にカーブフィッティングを行なうことで、IgG1に対する結合性を算出した。
IgG1に対する親和性を算出した結果を表16に示す。なお表5において、K値(解離定数)が低いほど、高いアフィニティ(親和性)を有している。FcR9_I(配列番号24)およびFcR9_A(配列番号26)のK値は、それぞれ6.0×10-8Mおよび3.6×10-8Mとなった。
参考例6
形質転換体として、特開2016-169197号公報(特許文献3)で開示のFc結合性タンパク質FcR9(配列番号20)を発現する形質転換体を用いたこと以外は参考例5と同様に行なった。
IgG1に対する親和性を算出した結果を表16に示す。FcR9のK値は7.7×10-8Mであり、FcR9_I(配列番号24)およびFcR9_A(配列番号26)と同等の親和性であった。このことから本発明のFc結合性タンパク質の一態様である、FcR9_IおよびFcR9_Aは、FcR9と同様、不溶性担体に固定化することで抗体医薬品製造における工程分析および分取のための抗体吸着剤として使用可能であることが示唆される。
参考例7
形質転換体として、FcR9(配列番号20)の192番目(配列番号1では176番目)のバリンをフェニルアラニンに置換したFc結合性タンパク質(FcR_F)を発現する形質転換体を用いたこと以外は参考例5と同様に行なった。
IgG1に対する親和性を算出した結果を表16に示す。FcR9_FのK値は、3.3×10-6Mとなり、本発明のFc結合性タンパク質であるFcR9_I(配列番号24)およびFcR_A(配列番号26)ならびにFcR9(配列番号20)と比較し、親和性が低いことを確認した。

Claims (9)

  1. 以下の(a)、(b)または(c)である、Fc結合性タンパク質:
    (a)配列番号7、9、11に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
    (b)配列番号7、9、11に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換以外にから15個のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加の1以上を有するアミノ酸残基を含み、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは、配列番号7においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換、配列番号9においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、192番目のバリンのイソロイシンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換、配列番号11においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、192番目のバリンのアラニンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換である)
    )配列番号7、9、11に記載のアミノ酸配列の33番目のグリシンから208番目のグルタミンまでのアミノ酸配列に対して90%以上の配列相同性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは、配列番号7においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換、配列番号9においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、192番目のバリンのイソロイシンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換、配列番号11においては配列番号4の37番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、39番目のロイシンのメチオニンへの置換、43番目のバリンのグルタミン酸への置換、45番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、49番目のグルタミンのプロリンへの置換、51番目のチロシンのアスパラギンへの置換、56番目のリジンのグルタミンへの置換、64番目のグルタミンのアルギニンへの置換、67番目のチロシンのヒスチジンへの置換、70番目のグルタミン酸のアスパラギン酸への置換、72番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、81番目のセリンのアルギニンへの置換、84番目のセリンのプロリンへの置換、90番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、91番目のフェニルアラニンのイソロイシンへの置換、94番目のアラニンのセリンへの置換、96番目のスレオニンのセリンへの置換、108番目のアスパラギンのセリンへの置換、133番目のバリンのグルタミン酸への置換、135番目のリジンのバリンへの置換、137番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、138番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への置換、148番目のリジンのアルギニンへの置換、156番目のスレオニンのメチオニンへの置換、157番目のチロシンのフェニルアラニンへの置換、163番目のグリシンのバリンへの置換、174番目のチロシンのバリンへの置換、181番目のリジンのグルタミン酸への置換、187番目のフェニルアラニンのセリンへの置換、192番目のバリンのアラニンへの置換、194番目のセリンのアルギニンへの置換、196番目のアスパラギンのリジンへの置換、200番目のグルタミン酸のグリシンへの置換、201番目のスレオニンのアラニンへの置換、203番目のアスパラギンのアスパラギン酸への置換、206番目のイソロイシンのバリンへの置換である)
  2. 請求項に記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  3. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  4. 請求項に記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる、Fc結合性タンパク質を生産可能な形質転換体。
  5. 宿主が大腸菌である、請求項に記載の形質転換体。
  6. 請求項4または5に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産する工程と、得られた培養物から生産された前記Fc結合性タンパク質を回収する工程とを含む、Fc結合性タンパク質の製造方法。
  7. 請求項に記載のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる、抗体の吸着剤。
  8. 請求項に記載の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加して当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、抗体の分離方法。
  9. Fc結合性タンパク質との結合性の違いに基づいて、異なる糖鎖構造を有する抗体が分離される、請求項に記載の分離方法。
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