JP2023103953A - 免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質 - Google Patents

免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の免疫グロブリン吸着剤よりも温和な条件で抗体溶出が可能な、免疫グロブリン吸着剤のリガンドタンパク質を提供すること。【解決手段】 Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において抗体溶出特性に関与する特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換することで、前記課題を解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は、免疫グロブリン吸着剤のリガンドタンパク質として利用可能な、免疫グロブ
リン結合活性を有するタンパク質に関する。より詳しくは、本発明は、従来の免疫グロブ
リン吸着剤よりも温和なpH条件で抗体の溶出が可能な免疫グロブリン吸着剤のリガンド
タンパク質として利用可能な、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質に関する。
抗体医薬は生体内の免疫機能を担う分子である抗体(免疫グロブリン)を利用した医薬
である。抗体医薬は抗体が有する可変領域の多様性により標的分子に対し高い特異性と親
和性をもって結合する。そのため抗体医薬は副作用が少なく、また、近年では適応疾患が
広がってきていることもあり市場が急速に拡大している。
抗体医薬の製造は培養工程と精製工程を含み、培養工程では生産性を向上させるために
抗体産生細胞の改質や培養条件の最適化が図られている。また、精製工程では粗精製とし
てアフィニティークロマトグラフィーが採用され、その後の中間精製、最終精製、および
ウイルス除去を経て製剤化される。
粗精製として実施するアフィニティークロマトグラフィーでは抗体分子を特異的に認識
するアフィニティー担体が用いられる。前記担体で用いられるリガンドタンパク質として
、抗体(免疫グロブリン)に結合する性質を有した、ブドウ球菌(Staphyloco
ccus)属細菌由来Protein Aが多く用いられている。しかしながら、Pro
tein Aは抗体のFc領域に特異的に結合するタンパク質であるため、シングルチェ
ーンFv(scFv)、Fab、F(ab’)、IgAおよび二重特異性T細胞誘導(
BiTE)抗体といったFc領域を有しない抗体の精製には適用できなかった。一方、F
inegoldia属細菌由来Protein Lは、免疫グロブリンのκ軽鎖に結合す
るタンパク質であるため、Protein Lをリガンドタンパク質とすることで、前述
したProtein Aでは精製できない、Fc領域を有しない抗体の精製も可能となる
抗体医薬の精製工程では、中性pH条件下で抗体分子をアフィニティー担体に吸着させ
た後、酸性pH条件下で抗体分子を前記担体から溶出させる工程を含むが、当該酸性pH
条件は抗体分子にダメージを与え、凝集の原因となるため、溶出時のpHは高い(つまり
中性に近い)ほうが好ましい。
抗体溶出pHを高める方法として、フレキシブルなアミノ酸残基を有したオリゴペプチ
ドを免疫グロブリン結合性タンパク質に挿入する方法(非特許文献1)や、免疫グロブリ
ン結合性タンパク質中の特定アミノ酸残基をヒスチジン残基に置換する方法(特許文献1
)が知られている。しかしながら、これらの文献に記載の方法では免疫グロブリン結合性
タンパク質の化学的安定性が低下することが報告されている。そのため、化学的安定性を
低下させることなく、抗体溶出pHが高い(すなわち温和なpH条件での抗体溶出が可能
な)免疫グロブリン結合性タンパク質が求められている。
WO2019/059400号
Susanne Gulich他,Journal of Biotechnology,2000,76,233-244
本発明の課題は、従来の免疫グロブリン吸着剤よりも温和なpH条件で抗体溶出が可能
な免疫グロブリン吸着剤のリガンドタンパク質として利用可能な、免疫グロブリン結合活
性を有するタンパク質を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、Finegoldia属細
菌由来Protein L(FpL)の免疫グロブリン結合ドメインにおける抗体溶出特
性に関与したアミノ酸残基を特定し、当該アミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換
することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する:
[1]
Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインの
アミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも以下の(1)から(
11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
するタンパク質;
(1)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミンに置換
(2)配列番号1の13番目のリジンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(3)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がバリンまたはイソロイシ
ンに置換
(4)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(5)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(6)配列番号1の15番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(7)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
またはロイシンに置換
(8)配列番号1の34番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸、
フェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれかに置換
(9)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(10)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置

(11)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換。
[2]
以下の(a)から(c)のいずれかに記載のタンパク質である、[1]に記載のタンパ
ク質:
(a)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列におい
て、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、
かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質;
(b)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列におい
て、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、
さらに前記(1)から(11)以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ
酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性を
有するタンパク質;
(c)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相同
性を有するアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも前記(1
)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合
活性を有するタンパク質。
[3]
さらに、少なくとも以下の(i)から(liii)より選択される1つ以上のアミノ酸
置換を有する、[1]または[2]に記載のタンパク質:
(i)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
(ii)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバ
リンに置換
(iii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(iv)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリ
シンに置換
(v)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(vi)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(vii)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
(viii)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(ix)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニ
ンに置換
(x)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(xi)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
アルギニンに置換
(xii)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(xiii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置

(xiv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xv)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(xvi)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたは
グリシンに置換
(xvii)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニン
またはイソロイシンに置換
(xviii)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、
リジンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(xix)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(xx)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(xxi)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
に置換
(xxii)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
またはメチオニンに置換
(xxiii)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジ
ン、アルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
(xxiv)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに
置換
(xxv)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(xxvi)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプ
ロリンに置換
(xxvii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置

(xxviii)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンま
たはアルギニンに置換
(xxix)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リ
ジンおよびイソロイシンのいずれかに置換
(xxx)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシン
に置換
(xxxi)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xxxii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイ
シンに置換、
(xxxiii)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニン
またはアルギニンに置換
(xxxiv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
ギンに置換
(xxxv)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xxxvi)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギ
ン酸に置換
(xxxvii)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまた
はスレオニンに置換
(xxxviii)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置

(xxxix)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xl)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
はバリンに置換
(xli)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
置換
(xlii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに
置換
(xliii)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
ギン酸、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
(xliv)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

(xlv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(xlvi)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

(xlvii)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
またはチロシンに置換
(xlviii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチ
ジンまたはアルギニンに置換
(xlviv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシン
またはチロシンに置換
(l)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(li)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(lii)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(liii)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
バリンに置換。
[4]
さらに、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジン残基
がリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸残基に置換した、[
1]から[3]のいずれかに記載のタンパク質:
(I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
(II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
(III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
(IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
(V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
(VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
(VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基。
[5]
さらに、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン
酸への置換、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、
配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配列
番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号
1の23番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、および
配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の
タンパク質。
[6]
少なくとも以下の(X)または(Y)のアミノ酸置換を有する、[1]から[5]のい
ずれかに記載のタンパク質:
(X)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1の
7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、2
2番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換
、配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、
配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配列番
号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号1の
44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の4
9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番号1の
50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配
列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換なら
びに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換;
(Y)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1の
7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、2
2番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号
1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1
の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配列番号1の38
番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号1の44番目の
アスパラギンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の48番目のリ
ジンに相当するアミノ酸残基のヒスチジンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン
酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62
番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の53番目
のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換、配列番号1の64番目
のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のロイシンへの置換ならびに配列番号1の69番
目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換。
[7]
配列番号207または212に記載のアミノ酸配列を含む、[1]から[6]のいずれ
かに記載のタンパク質。
[8]
[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[9]
[8]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[10]
以下の(A)または(B)を含む、遺伝子組換え宿主:
(A)[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(B)[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを
含む発現ベクター。
[11]
宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、[10]に
記載の遺伝子組換え宿主。
[12]
[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む
遺伝子組換え宿主または該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む遺伝子組換え宿主
を培養し該タンパク質を発現させる工程と、発現した前記タンパク質を回収する工程とを
含む、免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法。
[13]
宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、[12]に
記載の製造方法。
[14]
不溶性担体と、当該不溶性担体に固定化した[1]から[7]のいずれかに記載のタン
パク質とを含む、免疫グロブリン吸着剤。
[15]
[14]に記載の吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加し当該免
疫グロブリンを前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを
pH変化で溶出させる工程とを含む、前記溶液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法。
[16]
前記pH変化が、pHの低下である、[15]に記載の方法。
本発明のタンパク質は、Finegoldia属由来のプロテインLの免疫グロブリン
結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、抗体溶出特性が
向上したアミノ酸置換を少なくとも一つ有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有すること
を特徴としている。不溶性担体と当該不溶性担体に固定化した本発明のタンパク質とを含
む本発明の免疫グロブリン吸着剤によれば、従来の免疫グロブリン吸着剤と比較し、温和
なpH条件で免疫グロブリン(抗体)を溶出できることから、高品質の免疫グロブリンが
得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のタンパク質は、特定の免疫グロブリン結合性タンパク質である。本明細書にお
いて「免疫グロブリン結合性タンパク質」とは、免疫グロブリンに対する結合性を有する
タンパク質を意味する。すなわち、本発明のタンパク質は、特定の免疫グロブリンに対す
る結合性を有する。本発明のタンパク質は、具体的には、免疫グロブリンのκ軽鎖に対す
る結合性を有するものであってもよい。本明細書では、免疫グロブリンに対する結合性を
、「免疫グロブリン結合活性」または「抗体結合活性」ともいう。免疫グロブリン結合活
性は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent
Assay)法で測定できる。ELISA法は、例えば、実施例に記載の条件で実施で
きる。
本発明のタンパク質は、Finegoldia属細菌由来Protein L(「Fp
L」ともいう)の免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ
酸配列において、特定位置におけるアミノ酸置換を有したタンパク質である。以降、本明
細書において、FpLの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列であって、特定位置
におけるアミノ酸置換を有さないものを「非改変型アミノ酸配列」ともいい、FpLの免
疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列であって、特定位置におけるアミノ酸置換を有
するものを「改変型アミノ酸配列」ともいう。すなわち、改変型アミノ酸配列は、特定位
置におけるアミノ酸置換を有すること以外は非改変型アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列
であってよい。また、本発明のタンパク質は、例えば、特定位置におけるアミノ酸置換を
有すること以外は非改変型アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であって
よい。また、本発明のタンパク質は、例えば、改変型アミノ酸配列を含むタンパク質であ
ってよい。非改変型アミノ酸配列は、天然に見出されるアミノ酸配列であってもよく、そ
うでなくてもよい。非改変型アミノ酸配列は、例えば、所望の性質を有するように改変さ
れていてもよい。非改変型アミノ酸配列は、例えば、特定位置におけるアミノ酸置換以外
のアミノ酸置換を有していてもよい。
FpLの由来であるFinegoldia属細菌としては、Finegoldia m
agnaが挙げられる。Finegoldia magna由来Protein Lの免
疫グロブリン結合ドメインとしては、
ドメインB1(配列番号38(GenBank No.AAA25612)の104番目
から173番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB2(配列番号38の176番目から245番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB3(配列番号38の248番目から317番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB4(配列番号38の320番目から389番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB5(配列番号38の393番目から462番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC1(配列番号39(GenBank No.AAA67503)の249番目
から317番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC2(配列番号39の320番目から389番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC3(配列番号39の394番目から463番目までのアミノ酸残基:配列番号
1)、および
ドメインC4(配列番号39の468番目から537番目までのアミノ酸残基:配列番号
5)が挙げられる。
本明細書において非改変型アミノ酸配列とは、
(A)前述したFpLの免疫グロブリン結合ドメインの全アミノ酸配列であってもよく、
(B)免疫グロブリンへの結合活性を有している限り、前記ドメインの部分アミノ酸配列
であってもよい。
なお、前記(B)に関して、FpLの免疫グロブリン結合ドメインは四つのβシートと
一つのαヘリックス、それらをつなぐループ部分とN末端ループ領域で構成されているが
、N末端ループ領域など、免疫グロブリンへの結合とは無関係の領域のアミノ酸残基は欠
損してもよい。具体例として、FpLのドメインC3(配列番号1)のN末端ループ領域
に相当する、1番目のグルタミン酸から9番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠損
させても免疫グロブリン結合能を有していることが知られている(Housden N.
G.et.al.Biochemical Society Transaction,
2003,31,716-718)。すなわち、前記(B)における部分アミノ酸配列は
、少なくとも免疫グロブリンへの結合部位のアミノ酸配列を含んでいればよいといえる。
すなわち、前記(B)における部分アミノ酸配列としては、免疫グロブリンへの結合部位
のアミノ酸配列を含む部分配列が挙げられる。
本明細書における改変型アミノ酸配列として、具体的には、配列番号1に記載のアミノ
酸配列など、前述した免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列において特定位置にお
けるアミノ酸置換を有するアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタンパク質と
して、具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列など、前述した免疫グロブリン結合
ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、特定位置におけるア
ミノ酸置換を有するタンパク質が挙げられる。言い換えると、本発明のタンパク質は、例
えば、特定位置におけるアミノ酸置換を有すること以外は配列番号1に記載のアミノ酸配
列など、前述した免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含
むタンパク質であってよい。
本明細書において、タンパク質がアミノ酸配列を含むことを、「タンパク質がアミノ酸
配列からなるアミノ酸残基を含む」ともいい、タンパク質またはアミノ酸配列がアミノ酸
置換を有することを、「タンパク質またはアミノ酸配列においてアミノ酸置換が生じる」
ともいう。またタンパク質またはアミノ酸配列を構成するアミノ酸を、「アミノ酸残基」
ともいう。
本発明のタンパク質は、温和なpH条件で抗体溶出が可能な免疫グロブリン結合性タン
パク質であってよい。本発明のタンパク質は、具体的には、改変型アミノ酸配列を有しな
い(例えば非改変型アミノ酸配列からなる)免疫グロブリン結合性タンパク質と比較して
温和なpH条件で抗体溶出が可能な免疫グロブリン結合性タンパク質であってよい。本発
明のタンパク質は、具体的には、特定位置におけるアミノ酸置換を有しない免疫グロブリ
ン結合性タンパク質と比較して温和なpH条件で抗体溶出が可能な免疫グロブリン結合性
タンパク質であってよい。言い換えると、本発明のタンパク質は、特定位置におけるアミ
ノ酸置換を有することにより温和なpH条件で抗体溶出が可能となった免疫グロブリン結
合性タンパク質であってよい。また、言い換えると、特定位置におけるアミノ酸置換は、
温和なpH条件で免疫グロブリン結合性タンパク質からの抗体溶出を可能とするものであ
ってよい。
「温和なpH条件」とは、中性に近いpH条件を意味してよい。すなわち、「温和な条
件で抗体溶出が可能」とは、中性に近いpH条件で抗体溶出が可能であることを意味して
よい。また、典型的な抗体の溶出pHは酸性であり得るため、「温和な条件で抗体溶出が
可能」とは、抗体の溶出pHが増大していることを意味してもよい。抗体の溶出pHは、
例えば、実施例に記載の条件で測定できる。
前記特定位置におけるアミノ酸置換は、具体的には、Lys7Gln(この表記は、配
列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミンに置換されていることを
表す;以下、他のアミノ酸置換についても同様に解釈するものとする)、Lys13Va
l、Lys29Val、Lys29Ile、Pro6Ala、Glu8Arg、Asn1
5Val、Ile23Phe、Ile23Leu、Glu34Asp、Glu34Phe
、Glu34Leu、Glu34Val、Lys38Leu、Asn50MetおよびT
yr53Serから選ばれる少なくとも1つ以上のアミノ酸置換を含む。
言い換えると、前記特定位置におけるアミノ酸置換は、少なくとも、
(1)Lys7Gln
(2)Lys13Val
(3)Lys29ValまたはLys29Ile
(4)Pro6Ala
(5)Glu8Arg
(6)Asn15Val
(7)Ile23PheまたはIle23Leu
(8)Glu34Asp、Glu34Phe、Glu34LeuおよびGlu34Val
のいずれか
(9)Lys38Leu
(10)Asn50Met
(11)Tyr53Ser
より選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。本発明のタンパク質は、例えば、前記(
1)から(11)より選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまた
は9つのアミノ酸置換を有してよいし、10個以上のアミノ酸置換を有してもよい。
なお、本発明のタンパク質が2つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する場合、それら
アミノ酸置換の組み合わせは、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以
上のアミノ酸置換を含む限り、特に制限されない。
アミノ酸置換の組み合わせの一態様として、
Pro6AlaおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Glu8ArgおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Ile23PheおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Ile23LeuおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびLys38Leuのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびAsn50Metのアミノ酸置換;
Lys59IleおよびTyr53Serのアミノ酸置換;
Asn15ValおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびGlu34Aspのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびGlu34Pheのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびGlu34Leuのアミノ酸置換;
Lys29IleおよびGlu34Valのアミノ酸置換;
があげられる。
また前記特定位置におけるアミノ酸置換は、さらに、以下の(i)から(liii)よ
り選択される1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてよい。すなわち、本発明のタンパク質
が有するアミノ酸置換の組み合わせの別態様として、少なくとも前記(1)から(11)
より選択される1つ以上のアミノ酸置換と、少なくとも以下の(i)から(liii)よ
り選択される1つ以上のアミノ酸置換との組み合わせもあげられる。
(i)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換(
ii)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバリ
ンに置換
(iii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(iv)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリ
シンに置換
(v)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(vi)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(vii)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
(viii)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(ix)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニ
ンに置換
(x)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(xi)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
アルギニンに置換
(xii)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(xiii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置

(xiv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xv)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(xvi)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたは
グリシンに置換
(xvii)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニン
またはイソロイシンに置換
(xviii)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、
リジンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(xix)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(xx)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(xxi)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
に置換
(xxii)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
またはメチオニンに置換
(xxiii)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジ
ン、アルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
(xxiv)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに
置換
(xxv)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(xxvi)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプ
ロリンに置換
(xxvii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置

(xxviii)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンま
たはアルギニンに置換
(xxix)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リ
ジンおよびイソロイシンのいずれかに置換
(xxx)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシン
に置換
(xxxi)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xxxii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイ
シンに置換、
(xxxiii)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニン
またはアルギニンに置換
(xxxiv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
ギンに置換
(xxxv)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xxxvi)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギ
ン酸に置換
(xxxvii)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまた
はスレオニンに置換
(xxxviii)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置

(xxxix)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(xl)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
はバリンに置換
(xli)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
置換
(xlii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに
置換
(xliii)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
ギン酸、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
(xliv)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

(xlv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(xlvi)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

(xlvii)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
またはチロシンに置換
(xlviii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチ
ジンまたはアルギニンに置換
(xlviv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシン
またはチロシンに置換
(l)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(li)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(lii)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(liii)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
バリンに置換。
なお、前記(i)から(liii)のアミノ酸置換の内、同位置のアミノ酸置換は同時
には選択されない。例えば、前記(iii)のアミノ酸置換と前記(xxvii)のアミ
ノ酸置換は同時には選択されない。
一態様において、前記特定位置におけるアミノ酸置換は、前記(i)から(liii)
より選択される1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてよい。
前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換と前記(i)から(l
iii)より選択される1つ以上のアミノ酸置換との組み合わせを有した、本発明のタン
パク質は、アルカリ安定性も向上し得る点で好ましい。特に、前記(1)から(11)よ
り選択される1つ以上のアミノ酸置換と少なくとも前記(i)のアミノ酸置換との組み合
わせを有した、本発明のタンパク質は、温和なpH条件での抗体溶出が可能で、かつアル
カリ安定性も向上しているため、より好ましい。
「アルカリ安定性」とは、アルカリ条件における失活に対する耐性を意味してよい。ア
ルカリ安定性の向上は、例えば、アルカリ処理後の残存活性の向上として測定できる。こ
こでいう「活性」とは、免疫グロブリン結合活性を意味する。アルカリ処理は、例えば、
実施例に記載の条件で実施できる。
本発明のタンパク質は、例えば、前記(i)から(liii)に記載のアミノ酸置換か
ら選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは9つのアミノ酸置
換を有してよいし、10個以上のアミノ酸置換を有してもよい。本発明のタンパク質は、
例えば、少なくとも、前記(i)のアミノ酸置換を有してよい。ただし、
(1)Lys7Glnのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(vi)および前記(xx
xviii)のアミノ酸置換は選択できず、
(3)Lys29ValまたはLys29Ileのアミノ酸置換を選択した場合は、前記
(xii)および前記(xli)のアミノ酸置換は選択できず、
(4)Pro6Alaのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(xxxvii)のアミノ
酸置換は選択できず、
(5)Glu8Argのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(vii)のアミノ酸置換
は選択できず、
(7)Ile23PheまたはIle23Leuのアミノ酸置換を選択した場合は、前記
(xl)のアミノ酸置換は選択できず、
(9)Lys38Leuのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(i)および前記(xx
xi)のアミノ酸置換は選択できず、
(10)Asp50Metのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(xviii)のアミ
ノ酸置換は選択できず、
(11)Tyr53Serのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(xxi)のアミノ酸
置換は選択できない。
アミノ酸置換の組み合わせの別態様の具体例として、
Lys7AlaおよびLys29Ileのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ
酸置換;
Lys7Ala、Glu9Val、Lys29Ile、Asn50TyrおよびGlu5
2Glyのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr
53Pheのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびThr
54Metのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAla
69Thrのアミノ酸置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52G
lyおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52G
lyおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr53Pheのアミ
ノ酸置換;
Lys7Ala、Gly21Arg、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52
GlyおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52AspおよびTyr
53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52A
sp、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Lys29Ile、Glu33Va
l、Asn50Tyr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Lys29Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Ala41Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Ala41Tyr、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52L
euおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52V
alおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ala、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Ty
r、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Lys29Ile、Asn50Ty
r、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Arg、Lys29Ile、Asn50Ty
r、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Gly21Arg、Lys29Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Phe、Lys29Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Leu、Lys29Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Glu33Val、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Lys38Leu、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44His、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44Arg、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Lys48His、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Met、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52T
yrおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Serのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52V
al、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52L
eu、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Val14Ala、Lys29Ile、Asn50T
yr、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Gly21Arg、Lys29Ile、Asn50T
yr、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44Arg、Asn50T
yr、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44His、Asn50T
yr、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Glu52T
yr、Tyr53PheおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Tyr53P
he、Gly60ArgおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn50Tyr、Tyr53P
he、Ile64LeuおよびAla67Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Lys29Ile、Asn44A
rg、Asn50Tyr、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Lys29Ile、Asn44H
is、Asn50Tyr、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Lys29Ile、Asn50T
yr、Tyr53Phe、Ile64LeuおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44Arg、Asn50T
yr、Tyr53Phe、Ile64LeuおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44His、Asn50T
yr、Tyr53Phe、Ile64LeuおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Lys29Ile、Asn44A
rg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ile64LeuおよびAla69Val
のアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Asn44His、Asn50T
yr、Tyr53Phe、Ile64LeuおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn15Val、Lys29Ile、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Glu34Asp、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Glu34Phe、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Glu34Leu、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Ile、Glu34Val、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
があげられる。
また、前記特定位置におけるアミノ酸置換は、さらに、以下の(I)から(VII)よ
り選択される1つ以上のリジン(Lys)残基のリジン以外の塩基性アミノ酸(アルギニ
ン(Arg)もしくはヒスチジン(His))またはヒドロキシ基を有するアミノ酸(セ
リン(Ser)、スレオニン(Thr)もしくはチロシン(Tyr))への置換を含んで
いてよい。すなわち、本発明のタンパク質が有するアミノ酸置換の組み合わせのさらに別
の態様として、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置
換と、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジン(Lys
)残基のリジン以外の塩基性アミノ酸(アルギニン(Arg)もしくはヒスチジン(Hi
s))またはヒドロキシ基を有するアミノ酸(セリン(Ser)、スレオニン(Thr)
もしくはチロシン(Tyr))への置換との組み合わせも挙げられる。
(I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
(II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
(III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
(IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
(V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
(VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
(VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基
本発明のタンパク質は、前記(I)から(VII)より選択される1つ、2つ、3つ、
4つ、5つまたは6つのリジン残基の置換を有してよく、さらに前記(i)から(lii
i)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有してもよい。ただし、
(1)Lys7Glnのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(I)のリジン残基の置換
は選択できず、
(2)Lys13Valのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(II)のリジン残基の
置換は選択できず、
(3)Lys29ValまたはLys29Ileのアミノ酸置換を選択した場合は、前記
(IV)のリジン残基の置換は選択できず、
(9)Lys38Leuのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(V)のリジン残基の置
換は選択できない。
なお、塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸に置換されたリジン残基以
外のリジン残基(すなわち、前記(I)~(VII)のリジン残基の内の選択されなかっ
たもの)については、未置換(リジン残基)のままでもよいし、塩基性アミノ酸およびヒ
ドロキシ基を有するアミノ酸以外のアミノ酸に置換されてもよい。後者の例としては、リ
ジン残基のグルタミンまたはイソロイシンへの置換や、前述したLys13Val、Ly
s29ValおよびLys38Leuのアミノ酸置換が挙げられる。
アミノ酸置換の組み合わせのさらに別の態様の具体例として、
Lys7Gln、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Arg、Lys48
ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Arg、Lys13Val、Lys22Arg、Lys29Arg、Lys48
ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Arg、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Val、Lys48
ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Arg、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys48
ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
があげられる。
また、前記特定位置におけるアミノ酸置換は、前記(i)から(liii)より選択さ
れる1つ以上のアミノ酸置換と前記(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジ
ン(Lys)残基のリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸へ
の置換との組み合わせを含んでいてもよい。すなわち、本発明のタンパク質が有するアミ
ノ酸置換の組み合わせのさらにまた別の態様として、少なくとも前記(1)から(11)
より選択される1つ以上のアミノ酸置換と、少なくとも前記(i)から(liii)より
選択される1つ以上のアミノ酸置換と、少なくとも前記(I)から(VII)より選択さ
れる1つ以上のリジン(Lys)残基のリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基
を有するアミノ酸への置換との組み合わせも挙げられる。
アミノ酸置換の組み合わせのさらにまた別の態様の具体例として
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48
ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48
Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Glu9Val、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48A
rg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48
Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53PheおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48
rg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Thr54MetおよびLys67Arg
のアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48
rg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Lys67ArgおよびAla69Thr
のアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ser、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22Arg、Lys29
Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、
Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Glu33Val、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala41Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala41Tyr、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Leu、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ala、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Ty
r53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Ty
r53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Arg、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Ty
r53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23P
he、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23L
eu、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu33Val、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Leu、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Met、Glu52Asp、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Tyr、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Serおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Leu、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Lys67Argおよ
びAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Val14Ala、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Gly60Arg、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ile64Leu、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Asn44Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、T
yr53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、T
yr53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、I
le64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、I
le64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、I
Ile64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Asn44Arg、Lys48His、Asn50Tyr、T
yr53Phe、Ile64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ
酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48His、Asn50Tyr、Tyr53Phe、I
le64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Asn15Val、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu34Asp、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu3Phe、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Ty
r53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu34Leu、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu34Val、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
があげられる。
なお、本発明のタンパク質は、少なくとも1つの他のアミノ酸置換をさらに有してもよ
い。他のアミノ酸置換としては、Glu49Asp、Pro6Ser、Asn44Asp
、Glu49Val、Asn62Tyr、Ile23Thr、Ala41Argが挙げら
れる。他のアミノ酸置換は、例えば、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性
を向上させるものであってよい。例えば、Asn44Asp、Glu49Val、Asn
62Tyr、Ile23Thr、およびAla41Argのアミノ酸置換は、いずれも、
免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性を向上させるものであり得る。本発明
のタンパク質は、例えば、前記他のアミノ酸置換を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、また
は6つ有してよい。すなわち、改変型アミノ酸配列としては、上記例示した非改変型アミ
ノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)において前記特定位置におけるアミ
ノ酸置換およびGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換を有するアミノ
酸配列も挙げられる。すなわち、本発明のタンパク質としては、上記例示した非改変型ア
ミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)を含み、ただし当該アミノ酸配列
において、前記特定位置におけるアミノ酸置換およびGlu49AspやPro6Ser
など他のアミノ酸置換を有するタンパク質も挙げられる。言い換えると、本発明のタンパ
ク質は、例えば、前記特定位置におけるアミノ酸置換およびGlu49AspやPro6
Serなど他のアミノ酸置換を有すること以外は上記例示した非改変型アミノ酸配列(例
えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であって
もよい。なお、前記他のアミノ酸置換として例示したGlu49AspやPro6Ser
は、subgroupに関係なく免疫グロブリンのκ軽鎖に結合可能な、アミノ酸置換で
ある。
前記他のアミノ酸置換を含むアミノ酸置換の組み合わせとしては、上記例示したアミノ
酸置換の組み合わせにおいてさらに前記他のアミノ酸置換を1つ、2つ、3つ、4つ、5
つ、または6つ含む組み合わせが挙げられる。前記他のアミノ酸置換を含むアミノ酸置換
の組み合わせとしては、特に、上記例示したアミノ酸置換の組み合わせにおいてさらに少
なくともAsn62Tyrのアミノ酸置換を含む組み合わせが挙げられる。
前記他のアミノ酸置換をさらに有した、本発明のタンパク質の一例として、以下のタン
パク質があげられる。前記タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる本発明の免疫グ
ロブリン吸着剤は、従来の免疫グロブリン吸着剤と比較し、κ軽鎖を有する免疫グロブリ
ン(抗体)を、subgroupに関係なく、温和なpH条件で溶出できる点で好ましい

配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile
23Arg、Lys29Ile、Lys38Glu、Asn44Arg、Lys48Ar
g、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Ly
s67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タン
パク質(配列番号207に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)

配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile
23Arg、Lys29Ile、Lys38Glu、Asn44Arg、Lys48Hi
s、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Il
e64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換を有する免疫グ
ロブリン結合性タンパク質(配列番号212に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン
結合性タンパク質)。
言い換えると、本発明のタンパク質が有するアミノ酸置換の一例として、以下のものが
挙げられる:
Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Ile23Arg、Lys29Ile、Lys38Glu、Asn44Arg、Ly
s48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Asn62T
yr、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Ile23Arg、Lys29Ile、Lys38Glu、Asn44Arg、Ly
s48His、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Asn62T
yr、Ile64Leu、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換。
本明細書では、配列番号1に記載のアミノ酸配列において上記例示したアミノ酸置換(
すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6S
erなど他のアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を、「配列番号1由来置換アミノ酸配
列」ともいう。配列番号1由来置換アミノ酸配列は、言い換えると、上記例示したアミノ
酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやP
ro6Serなど他のアミノ酸置換)が生じた配列番号1に記載のアミノ酸配列である。
また、配列番号1由来置換アミノ酸配列は、言い換えると、上記例示したアミノ酸置換(
すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6S
erなど他のアミノ酸置換)を有すること以外は配列番号1に記載のアミノ酸配列と同一
のアミノ酸配列である。配列番号1由来置換アミノ酸配列は、本明細書における改変型ア
ミノ酸配列の一例である。
本明細書における改変型アミノ酸配列としては、上記例示した改変型アミノ酸配列(例
えば配列番号1由来置換アミノ酸配列)のバリアント(variant)配列も挙げられ
る。すなわち、本発明のタンパク質としては、上記例示した改変型アミノ酸配列(例えば
配列番号1由来置換アミノ酸配列)のバリアント配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合
活性を有するタンパク質も挙げられる。以下、配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリア
ント配列の場合を例示して説明するが、当該説明は任意の改変型アミノ酸配列のバリアン
ト配列にも準用できる。
配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列は、前記特定位置におけるアミノ酸
置換が残存するように(すなわち、本発明のタンパク質が前記特定位置におけるアミノ酸
置換を有するように)設定されるものとする。また、配列番号1由来置換アミノ酸配列の
バリアント配列は、Glu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換が残存する
ように(すなわち、本発明のタンパク質がGlu49AspやPro6Serなど他のア
ミノ酸置換を有するように)設定されてもよい。また、配列番号1由来置換アミノ酸配列
のバリアント配列は、例えば、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけ
るアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)
から選択される、配列番号1由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を
追加的に有していてもよい。例えば、配列番号1由来置換アミノ酸配列がGlu49As
pやPro6Serなど他のアミノ酸置換を有さない場合に、配列番号1由来置換アミノ
酸配列のバリアント配列が前記他のアミノ酸置換を有していてもよい。
配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1由来置換アミ
ノ酸配列において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質は、免疫グロブリン結合活性を有する限り、上記例示したアミノ酸置換(すなわ
ち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6Serな
ど他のアミノ酸置換)に加えて、さらに、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1
もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/ま
たは付加を含んでいてもよい。すなわち、本発明のタンパク質としては、配列番号1に記
載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、上記例示したアミノ酸置換
(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6
Serなど他のアミノ酸置換)を有し、さらに1もしくは数個の位置での1もしくは数個
のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ、免疫グロブリン
結合活性を有するタンパク質も挙げられる。言い換えると、本発明のタンパク質は、例え
ば、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意
のGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)を有し、さらに1もしくは
数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加
を含むこと以外は配列番号1と同一のアミノ酸配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合活
性を有するタンパク質であってもよい。なお、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、
および/または付加は、前記特定位置におけるアミノ酸置換が残存するように選択される
ものとする。すなわち、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は
、例えば、前記特定位置以外の位置に生じてよい。また、上記のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加は、前記他のアミノ酸置換が残存するように選択されても
よい。すなわち、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は、例え
ば、前記他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。また、上記のアミノ酸残基の置換
、欠失、挿入、および/または付加は、例えば、上記例示したアミノ酸置換から選択され
る、配列番号1由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を含んでいても
よい。前記「1もしくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置
やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1から20個、1から
10個、1から9個、1から8個、1から7個、1から6個、1から5個、1から4個、
1から3個、1から2個、1個のいずれかを意味する。上記のアミノ酸残基の置換の一例
としては、物理的性質および/または化学的性質が類似したアミノ酸間で置換が生じる保
守的置換が挙げられる。保守的置換の場合、一般に、置換が生じているものと置換が生じ
ていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている
。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、セリンとプロリン間、またはグル
タミン酸とアラニン間での置換が挙げられる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サ
イエンス・インターナショナル社,9,2005)。また、上記のアミノ酸残基の置換、
欠失、挿入、および/または付加には、例えば、タンパク質またはそれをコードする遺伝
子が由来する微生物の個体差や種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(ミュータ
ント(mutant)またはバリアント)によって生じるものも含まれる。
また、配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1由来置
換アミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発
明のタンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列において上記例示したアミノ
酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやP
ro6Serなど他のアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列に対して高い相同性を有する
アミノ酸配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。
なお、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、前記特定位置におけるアミ
ノ酸置換が残存するように選択されるものとする。すなわち、上記のような相同性の範囲
でのアミノ酸配列の変化は、例えば、前記特定位置以外の位置に生じてよい。また、上記
のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、他のアミノ酸置換が残存するように選
択されてもよい。すなわち、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、例え
ば、他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。また、上記のような相同性の範囲での
アミノ酸配列の変化は、例えば、上記例示したアミノ酸置換から選択される、配列番号1
由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。前記「相
同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味
してよく、特に同一性を意味してもよい。「アミノ酸配列に対する相同性」とは、アミノ
酸配列全体に対する相同性を意味する。前記「高い相同性」とは、70%以上、80%以
上、90%以上、または95%以上の相同性を意味してよい。アミノ酸配列間の「同一性
」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率を意味する(
実験医学 2013年2月号 Vol.31 No.3、羊土社)。アミノ酸配列間の「
類似性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率と側鎖
の性質が類似したアミノ酸残基の比率の合計を意味する(実験医学 2013年2月号
Vol.31 No.3、羊土社)。側鎖の性質が類似したアミノ酸残基については上述
の通りである。アミノ酸配列の相同性は、BLAST(Basic Local Ali
gnment Search Tool)やFASTA等のアラインメントプログラム(
alignment program)を利用して決定できる。
また、改変型アミノ酸配列としては、上記例示したバリアント配列において、さらに、
上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でG
lu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)から選択される1つ以上のアミ
ノ酸置換を有するアミノ酸配列も挙げられる。例えば、改変型アミノ酸配列は、少なくと
も前記特定位置におけるアミノ酸置換を有するバリアント配列において、さらに他のアミ
ノ酸置換を有するアミノ酸配列であってよい。
また、非改変型アミノ酸配列としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配
列番号1に記載のアミノ酸配列)のバリアント配列も挙げられる。すなわち、改変型アミ
ノ酸配列としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列)のバリアント配列において、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位
置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ
酸置換)を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発明のタンパク質としては、
上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)のバリア
ント配列を含み、ただし当該バリアント配列において、上記例示したアミノ酸置換(すな
わち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Ser
など他のアミノ酸置換)を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げ
られる。言い換えると本発明のタンパク質は、例えば、上記例示したアミノ酸置換を有す
ること以外は上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配
列)のバリアント配列と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。なお、上
記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)のバリアン
ト配列は、Finegoldia属細菌において実際に存在していてもよく、いなくても
よい。すなわち、「Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリ
ン結合ドメインのアミノ酸配列(FpLの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列)
」とは、Finegoldia属細菌に実際に存在するProtein Lの免疫グロブ
リン結合ドメインのアミノ酸配列に限られず、同アミノ酸配列のバリアント配列であって
Finegoldia属細菌に実際に存在しない(すなわち仮想の)アミノ酸配列も包含
する。以下、配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列の場合を例示して説明す
るが、当該説明は任意の非改変型アミノ酸配列のバリアント配列にも準用できる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列に
おいて、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、
および/または付加を含み、さらに上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置に
おけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置
換)を有し、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。上記のア
ミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は、例えば、前記特定位置以外の位
置に生じてよい。また、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は
、例えば、他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。
配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ
酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列(配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して高い
相同性を有するアミノ酸配列)において、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定
位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなどの他のア
ミノ酸置換)を有し、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。
上記のような相同性の範囲でのアミノ酸残基の変化は、例えば、前記特定位置以外の位置
に生じてよい。また、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸残基の変化は、例えば、他
のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。
その他、配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列については、配列番号1由
来置換アミノ酸配列のバリアント配列についての記載を準用できる。
本明細書において「配列番号1に記載のアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸」とは
、配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端から数えてX位の位置に存在するアミノ酸を
意味する。特定のアミノ酸配列における「配列番号1に記載のアミノ酸配列におけるX番
目のアミノ酸に相当するアミノ酸残基」とは、当該特定のアミノ酸配列におけるアミノ酸
残基であって、当該特定のアミノ酸配列と配列番号1のアミノ酸配列とのアライメント(
alignment)において配列番号1に示すアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸
と同一の位置に配列されるアミノ酸残基を意味する。例えば、Lys7Glnのアミノ酸
置換の場合、特定のアミノ酸配列における「配列番号1の7番目のリジンに相当するアミ
ノ酸残基」とは、当該特定のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基であって、当該特定のア
ミノ酸配列と配列番号1のアミノ酸配列とのアラインメントにおいて配列番号1に示すア
ミノ酸配列における7番目のリジンと同一の位置に配列されるアミノ酸残基を意味する。
なお、配列番号1に記載のアミノ酸配列における「配列番号1に記載のアミノ酸配列にお
けるX番目のアミノ酸に相当するアミノ酸残基」とは、配列番号1に記載のアミノ酸配列
におけるX番目のアミノ酸そのものを意味する。すなわち、上記例示したアミノ酸置換(
すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意で他のアミノ酸置換)の位置は、
必ずしも本発明のタンパク質における絶対的な位置を示すものではなく、配列番号1に記
載のアミノ酸配列に基づく相対的な位置を示すものである。すなわち、例えば、本発明の
タンパク質が、上記例示したアミノ酸置換の位置よりもN末端側にアミノ酸残基の挿入、
欠失、または付加を含む場合、それに応じて当該アミノ酸置換の絶対的な位置は変動し得
る。本発明のタンパク質における上記例示したアミノ酸置換の位置は、例えば、前記ドメ
インのアミノ酸配列と配列番号1に記載のアミノ酸配列とのアラインメントで特定できる
。アラインメントは、例えば、BLASTやFASTA等のアラインメントプログラムを
利用して実施できる。配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列等の任意のアミ
ノ酸配列における上記例示したアミノ酸置換の位置についても同様である。また、上記例
示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu4
9AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)の置換前のアミノ酸残基は、配列番号
1に記載のアミノ酸配列における置換前のアミノ酸残基の種類を示すものであって、配列
番号1に記載のアミノ酸配列以外の非改変型アミノ酸配列においては保存されていてもよ
く、保存されていなくてもよい。
本発明のタンパク質は、改変型アミノ酸配列を1個のみ含んでいてもよく、改変型アミ
ノ酸配列を複数個含んでいてもよい。本発明のタンパク質は、例えば、改変型アミノ酸配
列を2個以上、3個以上、4個以上、または5個以上含んでいてもよく、10個以下、7
個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下含んでいてもよく、それらの矛
盾しない組み合わせの個数含んでいてもよい。本発明のタンパク質が複数個の改変型アミ
ノ酸配列を含む場合、それら複数個の改変型アミノ酸配列のアミノ酸配列は同一であって
もよく、そうでなくてもよい。それら複数個の改変型アミノ酸配列は、直接連結(直結)
させた態様であってもよいし、適切なリンカー(例えば、5以上25以下のアミノ酸残基
からなるオリゴペプチド)を介して連結させた態様であってもよい。
本発明のタンパク質は、改変型アミノ酸配列からなるものであってもよく、他のアミノ
酸配列をさらに含んでいてもよい。すなわち、本発明のタンパク質は、例えば、そのN末
端側またはC末端側に他のアミノ酸配列をさらに含んでいてもよい。言い換えると、本発
明のタンパク質においては、例えば、改変型アミノ酸配列のN末端側またはC末端側に、
他のアミノ酸配列が付加されていてもよい。他のアミノ酸配列としては、オリゴペプチド
があげられる。他のアミノ酸配列として用いられるオリゴペプチドとしては、前記リンカ
ー以外のオリゴペプチドがあげられる。他のアミノ酸配列は、本発明のタンパク質の免疫
グロブリン結合活性や安定性を損なわない限り、特に制限されない。例えば、他のアミノ
酸配列の種類や長さは、本発明のタンパク質の免疫グロブリン結合性や安定性を損なわな
い限り、特に制限されない。
本発明のタンパク質は、例えば、選択した免疫グロブリン結合ドメインに加えて、他の
免疫グロブリン結合ドメインの一部を含んでいてもよい。例えば、本発明のタンパク質が
FpLのドメインC3の改変型アミノ酸配列を含む場合、本発明のタンパク質は、さらに
、FpLのドメインC3のN末端側領域(ドメインC1、ドメインC2)の一部を含んで
いてもよく、FpLのドメインC3のC末端側領域(ドメインC4)の一部を含んでいて
もよい。
本発明のタンパク質は、例えば、そのN末端側またはC末端側に、目的物を特異的に検
出または分離する目的で有用なオリゴペプチドを含んでいてもよい。そのようなオリゴペ
プチドとしては、ポリヒスチジンやポリアルギニンが挙げられる。また本発明のタンパク
質は、例えば、そのN末端側またはC末端側に、本発明のタンパク質をクロマトグラフィ
ー用の支持体等の固相に固定化する際に有用なオリゴペプチドを含んでいてもよい。その
ようなオリゴペプチドとしては、リジンやシステインを含むオリゴペプチドが挙げられる
本発明のタンパク質が上記のような他のアミノ酸配列を含む場合、本発明のタンパク質
は、例えば、あらかじめ他のアミノ酸配列を含む形態で製造されてもよいし、別途製造さ
れた上記のような他のアミノ酸配列が付加されてもよい。本発明のタンパク質が上記のよ
うな他のアミノ酸配列を含む場合、典型的には、本発明のタンパク質は、上記のような他
のアミノ酸配列を含む本発明のタンパク質の全長アミノ酸配列をコードするポリヌクレオ
チドから発現させることで製造できる。すなわち、例えば、他のアミノ酸配列をコードす
るポリヌクレオチドと本発明のタンパク質(例えば他のアミノ酸配列を含まないもの)を
コードするポリヌクレオチドとを、他のアミノ酸配列が本発明のタンパク質のN末端側ま
たはC末端側に付加されるように連結し、本発明のタンパク質を発現させてもよい。また
例えば、化学的に合成した他のアミノ酸配列を本発明のタンパク質(例えば他のアミノ酸
配列を含まないもの)のN末端側またはC末端側に化学的に結合させてもよい。
本発明のタンパク質は、例えば、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドか
ら発現させることで製造できる。本明細書では、本発明のタンパク質をコードするポリヌ
クレオチドを、「本発明のポリヌクレオチド」ともいう。本発明のポリヌクレオチドは、
具体的には、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
であってよい。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、化学合成法やPCR法等によるDNA増幅法で
取得できる。DNA増幅法は、例えば、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配
列といった、増幅すべきヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを鋳型とし実施できる
。鋳型とするポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質を発現する生物のゲノムDNA、
本発明のタンパク質のcDNA、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが例示できる
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、例えば、本発明のタンパク質のアミ
ノ酸配列からの変換で設計できる。アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際には
、標準のコドンテーブルを使用できるが、本発明のポリヌクレオチドで形質転換する宿主
におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主がEsc
herichia coli(大腸菌)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/A
GG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)で
はCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それ
ぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避ける
ように変換してよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDN
A研究所のウェブサイトにあるCodon Usage Databaseなど)を利用
することでも可能である。
本発明のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの全長を一括取得してもよく、当
該ポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドを取得後連結することで取得し
てもよい。上記のような本発明のポリヌクレオチドを取得する手法についての説明は、そ
の全長配列を一括して取得する場合に限られず、その部分配列を取得する場合にも準用で
きる。
なお、本発明のポリヌクレオチドは、任意のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする
ポリヌクレオチドと連結し、融合型アミノ酸配列をコードするように設計してもよい。
本発明のタンパク質は、例えば、本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え宿主(
以下、単に「本発明遺伝子組換え宿主」ともいう)を培養し前記タンパク質を発現させた
後、発現した前記タンパク質を回収することで製造できる。本発明の遺伝子組換え宿主は
、例えば、本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換することで得られる。宿主
は、本発明のポリヌクレオチドで形質転換されることで本発明のタンパク質を発現可能な
ものであれば特に制限されない。宿主の例として、動物細胞、昆虫細胞、微生物が挙げら
れる。このうち動物細胞としては、COS細胞、CHO(Chinese Hamste
r Ovary)細胞、Hela細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞が、昆虫細
胞としては、Sf9細胞、BTI-TN-5B1-4細胞が、微生物としては、酵母や細
菌が、それぞれ例示できる。さらに酵母としては、Saccharomyces cer
evisiae等のSaccharomyces属酵母、Pichia Pastori
s等のPichia属酵母、Schizosaccharomyces pombe等の
Schizosaccharomyces属酵母が、細菌としては、大腸菌(Esche
richia coli)等のEscherichia属細菌が挙げられる。大腸菌とし
ては、JM109株、BL21(DE3)株が挙げられる。なお、酵母や大腸菌を宿主と
して用いると生産性の面で好ましく、大腸菌を宿主として用いるとさらに好ましい。
本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、発現可能に保持さ
れていればよい。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、前記宿主で機能するプロモ
ーターの制御下で発現するように保持されていればよい。前記宿主が大腸菌の場合、宿主
で機能するプロモーターの一例として、trpプロモーター、tacプロモーター、tr
cプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、lp
pプロモーターが挙げられる。
また本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNA
外で自律複製するベクター上に存在していてよい。すなわち、本発明のポリヌクレオチド
を含む発現ベクター(以下、単に「本発明の発現ベクター」ともいう)で宿主を形質転換
して本発明の遺伝子組換え宿主を作製してもよい。本発明の発現ベクターは、例えば、発
現ベクターの適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入して得られる。なお、発現ベ
クターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限されない
。前記宿主が大腸菌の場合、発現ベクターとしては、pETプラスミドベクター、pUC
プラスミドベクター、pTrcプラスミドベクターが例示できる。なお、本発明の発現ベ
クターは、抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーを備えていてよい。また、前記適切な位
置とは、発現ベクターの複製機能、選択マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置
を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要
なプロモーター等の機能性ポリヌクレオチドに連結された状態で挿入すると好ましい。
また本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNA
上に導入されてもよい。ゲノムDNAへの本発明のポリヌクレオチドの導入は、例えば、
相同組み換えによる遺伝子導入法を利用して実施できる。相同組み換えによる遺伝子導入
法としては、Red-driven integration法(Datsenko,K
.A,and Wanner,B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A.,97:6640-6645(2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感
受性複製起点を含むベクターを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないベクタ
ーを用いる方法、ファージを用いたtransduction法が例示できる。
本発明の発現ベクター等のポリヌクレオチドを用いた宿主の形質転換は、例えば、当業
者が通常用いる方法で実施できる。例えば、宿主として大腸菌を選択した場合は、コンピ
テントセル法、ヒートショック法、エレクトロポレーション法等で形質転換すればよい。
形質転換後に適切な方法で本発明のポリヌクレオチドを含む宿主をスクリーニングするこ
とで、本発明の遺伝子組換え宿主を取得できる。
なお、各種微生物において利用可能な発現ベクターやプロモーター等の遺伝子工学的手
法に関する情報は、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」
などの公知文献を利用し、取得すればよい。
本発明の遺伝子組換え宿主が本発明の発現ベクターを含む場合、本発明の遺伝子組換え
宿主から本発明の発現ベクターを調製できる。例えば、本発明の遺伝子組換え宿主を培養
して得られる培養物からアルカリ抽出法またはQIAprep Spin Minipr
ep kit(QIAGEN社製)等の市販の抽出キットを用いて本発明の発現ベクター
を調製できる。
本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで、本発明のタンパク質を発現できる。また
、本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで、本発明のタンパク質を発現させ、発現し
た前記タンパク質を回収することで、本発明のタンパク質を製造できる。すなわち、本明
細書は、本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで本発明のタンパク質を発現させる工
程と、発現された前記タンパク質を回収する工程とを含む、本発明のタンパク質の製造方
法を開示する。培地組成や培養条件は、宿主の種類や本発明のタンパク質の特性等の諸条
件に応じて適宜設定すればよい。培地組成や培養条件は、例えば、宿主が増殖でき、かつ
、本発明のタンパク質を発現可能な条件に設定すればよい。培地は、例えば、炭素源、窒
素源、無機塩、その他の各種有機成分や無機成分を適宜含む培地を使用できる。具体的に
は、宿主が大腸菌の場合、必要な栄養源を補ったLB(Luria-Bertani)培
地(トリプトン1%(w/v)、酵母エキス0.5%(w/v)、1%(w/v)NaC
l)が好ましい培地の一例として挙げられる。なお、本発明の発現ベクターの導入の有無
により、本発明の遺伝子組換え宿主を選択的に増殖させるために、培地に当該発現ベクタ
ーに含まれる抗生物質耐性遺伝子に対応した抗生物質を添加して培養すると好ましい。例
えば、当該発現ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は培地にカナマイシ
ンを添加すればよい。本発明のポリヌクレオチドがゲノムDNA上に導入されている場合
も同様である。また、培地は、グルタチオン、システイン、シスタチン、チオグリコレー
トおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでいて
もよい。また培地は、グリシン等の前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す
試薬を含んでいてもよい。例えば、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(
w/v)以下で添加すると好ましい。培養温度は、例えば、宿主が大腸菌の場合、一般に
10℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上37℃以下、より好ましくは25℃前後で
ある。培地のpHは、例えば、宿主が大腸菌の場合、pH6.8以上pH7.4以下、好
ましくはpH7.0前後である。また、本発明のタンパク質を誘導性のプロモーターの制
御下で発現する場合は、本発明のタンパク質が良好に発現できるように誘導をかけると好
ましい。発現誘導には、例えば、プロモーターの種類に応じた誘導剤を用いることができ
る。誘導剤としては、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalacto
pyranoside)を例示できる。宿主が大腸菌の場合、例えば、培養液の濁度(6
00nmにおける吸光度)が約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加
し、引き続き培養することで、本発明のタンパク質の発現を誘導できる。IPTGの添加
濃度は、例えば、0.005mM以上1.0mM以下、好ましくは0.01mM以上0.
5mM以下である。IPTG誘導等の発現誘導は、例えば、当該技術分野において周知の
条件で行なえる。
本発明のタンパク質は、その発現形態に適した方法で培養物から分離し回収すればよい
。なお、本明細書において「培養物」とは、培養で得られた培養液の全体またはその一部
を意味する。当該一部は、本発明のタンパク質を含む部分であれば特に制限されない。当
該一部としては、培養された本発明の形質転換体の細胞や培養後の培地(すなわち培養上
清)などが挙げられる。例えば、本発明のタンパク質が培養上清に蓄積する場合、細胞を
遠心分離操作で分離し、得られる培養上清から本発明のタンパク質を回収すればよい。ま
た、本発明のタンパク質が細胞内(ペリプラズムを含む)に蓄積する場合、細胞を遠心分
離操作で回収後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加して細胞を破砕し、当該破砕物から本
発明のタンパク質を回収すればよい。前述した培養上清や細胞破砕物からの、本発明のタ
ンパク質の回収は、例えば、タンパク質の分離精製に用いられる公知の方法で実施できる
。前記回収方法の一例として、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点
沈殿が挙げられる。
本発明のタンパク質は、例えば、免疫グロブリン(抗体)の分離または分析に使用でき
る。前記目的で使用する際は、例えば、不溶性担体と当該不溶性担体に固定化した本発明
のタンパク質とを含む免疫グロブリン吸着剤(以下、単に「本発明の免疫グロブリン吸着
剤」ともいう)の態様で使用できる。なお、本明細書において、「免疫グロブリンの分離
」とは、夾雑物質共存下の溶液からの免疫グロブリンの分離に限らず、構造、性質、また
は活性等に基づく免疫グロブリン間の分離も含む。不溶性担体は、水溶液に対して不溶性
の担体であれば特に制限されない。不溶性担体としては、アガロース、アルギネート(ア
ルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプ
ン等の多糖質を原料とした担体や、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2
-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン等の合成高分子を原料とした担体や
、シリカ等のセラミックスを原料とした担体が例示できる。中でも、多糖質を原料とした
担体や合成高分子を原料とした担体が不溶性担体として好ましい。前記好ましい担体の一
例として、トヨパール(東ソー社製)等のヒドロキシ基を導入したポリメタクリレートゲ
ル、Sepharose(Cytiva社製)等のアガロースゲル、セルファイン(JN
C社製)等のセルロースゲルが挙げられる。不溶性担体の形状は特に制限されない。不溶
性担体は、例えば、カラムに充填できる形状であってよい。不溶性担体は、例えば、粒状
物または非粒状物であってよい。また、不溶性担体は、例えば、多孔性または非多孔性で
あってもよい。
本発明における分離または分析対象の免疫グロブリン(抗体)は、本発明のタンパク質
が結合性を有するものであれば、特に制限されない。免疫グロブリンは、具体的には、κ
軽鎖を有するものであってよい。免疫グロブリンは、κ軽鎖に加えて、Fc領域等の他の
領域を含んでいてもよく、いなくてもよい。免疫グロブリンは、例えば、シングルチェー
ンFv(scFv)、Fab、F(ab’)、IgA、二重特異性T細胞誘導(BiT
E)抗体等の、Fc領域を有しないものであってもよい。免疫グロブリンは、モノクロー
ナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。免疫グロブリンは、例え
ば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれであってもよい。IgGは
、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のいずれであってもよい。免
疫グロブリンの由来は、特に制限されない。免疫グロブリンは、単一の生物に由来するも
のであってもよく、2種またはそれ以上の生物の組み合わせに由来するものであってもよ
い。免疫グロブリンとしては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、それらのバリアント
(例えばアミノ酸置換体)があげられる。また、免疫グロブリンとしては、二重特異性抗
体(バイスペシフィック抗体)、κ軽鎖と他のタンパク質との融合抗体、κ軽鎖と薬物と
の複合体(ADC)等の人工的に構造改変した抗体もあげられる。なお、「免疫グロブリ
ン」には、抗体医薬も包含される。
本発明のタンパク質は、例えば、共有結合により不溶性担体に固定化してもよい。具体
例として、不溶性担体が有する活性基を介して、本発明のタンパク質と不溶性担体とを共
有結合させることで、不溶性担体に前記タンパク質を固定化できる。すなわち、前記不溶
性担体は、その表面などに活性基を有していてよい。前記活性基の一例として、N-ヒド
ロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基、エポキシ基、カルボキシ基、マレイ
ミド基、ハロアセチル基、トレシル基、ホルミル基、ハロアセトアミドが挙げられる。活
性基を有する不溶性担体としては、例えば、活性基を有する市販の不溶性担体をそのまま
用いてもよいし、不溶性担体に活性基を導入して用いてもよい。活性基を有する市販の担
体としては、TOYOPEARL AF-Epoxy-650M、TOYOPEARL
AF-Tresyl-650M(いずれも東ソー社製)、HiTrap NHS-act
ivated HP Columns、NHS-activated Sepharos
e 4 Fast Flow、Epoxy-activated Sepharose
6B(いずれもCytiva社製)、SulfoLink Coupling Resi
n(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)が例示できる。
担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するヒドロキシ基、エポキ
シ基、カルボキシ基、アミノ基等に対して2個以上の活性部位を有する化合物の一方を反
応させる方法が例示できる。
担体表面に存在するヒドロキシ基やアミノ基にエポキシ基を導入する化合物としては、
エピクロロヒドリン、エタンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジ
ルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを例示できる。
また、担体表面に存在するエポキシ基にカルボキシ基を導入する化合物としては、2-
メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸、6-メルカプト酪
酸、グリシン、3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸を例示
できる。
また、担体表面に存在するヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基にマレ
イミド基を導入する化合物としては、N-(ε-マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N
-(ε-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、4-(4-N-マレイミドフェニル)酢
酸ヒドラジド、2-アミノマレイミド、3-アミノマレイミド、4-アミノマレイミド、
6-アミノマレイミド、1-(4-アミノフェニル)マレイミド、1-(3-アミノフェ
ニル)マレイミド、4-(マレイミド)フェニルイソシアナート、2-マレイミド酢酸、
3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-(
α-マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N
-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シ
クロヘキサン-1-カルボニル-(6-アミノヘキサン酸)、スクシンイミジル-4-(
マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、(p-マレイミドベンゾイル)N
-ヒドロキシスクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシス
クシンイミドエステルを例示できる。
また、担体表面に存在するヒドロキシ基やアミノ基にハロアセチル基を導入する化合物
としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロ
リド、ブロモ酢酸ブロミド、クロロ酢酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、
2-(ヨードアセトアミド)酢酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、3-(ブロ
モアセトアミド)プロピオン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(ヨード
アセチル)アミノ安息香酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。
また、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するヒドロキシ基や
アミノ基にω-アルケニルアルカングリシジルエーテルを反応させた後、ハロゲン化剤で
ω-アルケニル部位をハロゲン化することで活性化する方法も例示できる。ω-アルケニ
ルアルカングリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、3-ブテニルグリ
シジルエーテル、4-ペンテニルグリシジルエーテルを例示できる。ハロゲン化剤として
は、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド
を例示できる。
また、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するカルボキシ基に
対して縮合剤と添加剤を用いて活性基を導入する方法も例示できる。縮合剤としては、1
-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘ
キシルカルボジアミド、カルボニルジイミダゾールを例示できる。添加剤としては、N-
ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、4-ニトロフェノール、1-ヒドロキシベンズト
リアゾールを例示できる。
本発明のタンパク質の不溶性担体への固定化は、例えば、緩衝液中で実施できる。緩衝
液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、MES(2-Morpholinoethan
esulfonic acid)緩衝液、HEPES(4-(2-Hydroxyeth
yl)-1-piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、
トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液を例示できる。固定化させるときの反応温度は、例えば、活
性基の反応性や本発明のタンパク質の安定性等の諸条件に応じて適宜設定できる。固定化
させるときの反応温度は、例えば、5℃以上50℃以下であってよく、好ましくは10℃
以上35℃以下である。
本発明の免疫グロブリン吸着剤は、例えば、前記吸着剤を充填したカラムの態様にする
ことで、免疫グロブリン(抗体)の分離に使用できる。例えば、本発明の免疫グロブリン
吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加して当該免疫グロブリンを前
記吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させることで、免疫グ
ロブリンを分離できる。すなわち、本明細書は、本発明の免疫グロブリン吸着剤を充填し
たカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加して当該免疫グロブリンを前記吸着剤に吸着
させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させる工程とを含む、前記溶
液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法を開示する。免疫グロブリンを含む溶液は、例
えば、ポンプ等の送液手段を用いてカラムに添加できる。なお、免疫グロブリンを含む溶
液は、カラムに添加する前に予め適切な緩衝液を用いて溶媒置換してよい。また、免疫グ
ロブリンを含む溶液をカラムに添加する前に、適切な緩衝液を用いてカラムを平衡化して
よい。カラムの平衡化により、例えば、免疫グロブリンをより高純度に分離できると期待
される。溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、MES
緩衝液が例示できる。そのような緩衝液には、例えば、さらに、1mM以上1000mM
以下の塩化ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。溶媒置換に用いる緩衝液と平衡化に
用いる緩衝液は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。また、免疫グロブリンを含
む溶液のカラムへの通液後に夾雑物質等の免疫グロブリン以外の成分がカラムに残存して
いる場合、免疫グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出する前に、そのような
成分をカラムから除去してよい。免疫グロブリン以外の成分は、例えば、適切な緩衝液を
用いてカラムから除去できる。免疫グロブリン以外の成分の除去に用いる緩衝液について
は、例えば、溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液についての記載を準用できる。
免疫グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンは、例えば、免疫グロブリンとリガン
ド(本発明のタンパク質)との相互作用を弱めることで溶出できる。免疫グロブリンとリ
ガンド(本発明のタンパク質)との相互作用を弱める手段としては、pH変化、カウンタ
ーペプチドの添加、温度上昇、塩濃度変化が例示できる。免疫グロブリンとリガンド(本
発明のタンパク質)との相互作用を弱める手段としては、特に、pH変化が例示できる。
すなわち、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させる工程としては、特に、前記
吸着剤に吸着した免疫グロブリンをpH変化で溶出させる工程が例示できる。pH変化と
しては、pHの低下が例示できる。pHの低下としては、緩衝液によるpHの低下が例示
できる。免疫グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンは、具体的には、例えば、適切
な溶出液を用いて溶出できる。溶出液としては、溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液よりも
酸性側の緩衝液が挙げられる。前記酸性側の緩衝液としては、クエン酸緩衝液、グリシン
塩酸緩衝液、酢酸緩衝液を例示できる。すなわち、前記酸性側の緩衝液を利用することで
、pHを低下させることができる。溶出液のpHは、例えば、免疫グロブリンの機能(抗
原への結合性等)を損なわない範囲で設定できる。なお、免疫グロブリン吸着剤に吸着し
た免疫グロブリンの溶出を緩衝液によるpHの低下で行なう場合、リガンドとして本発明
のタンパク質を用いると、天然型FpLの免疫グロブリン結合ドメインなど非改変型アミ
ノ酸配列からなる免疫グロブリン結合性タンパク質をリガンドとして用いた場合と比較し
、よりpHの高い(中性に近い)条件で免疫グロブリンを溶出できる。すなわち、本発明
の免疫グロブリン吸着剤によれば、非改変型アミノ酸配列からなる免疫グロブリン結合性
タンパク質をリガンドとした免疫グロブリン吸着剤と比較し、より温和なpH条件(すな
わち中性に近い条件)で免疫グロブリン(抗体)を溶出できる。溶出液のpHは、例えば
、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、2.95以上、3以
上、3.05以上、3.1以上、3.15以上、または3.2以上であってもよく、4以
下、3.5以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、または3以下であってもよく、
それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。溶出液のpHは、具体的には、例えば、
2.5以上4以下、2.8以上4以下、2.95以上4以下、3以上4以下、または3.
05以上4以下であってもよい。
前述した方法で免疫グロブリン(抗体)を分離することで、分離された免疫グロブリン
が得られる。すなわち、免疫グロブリンの分離方法は、その一態様において、免疫グロブ
リンの製造方法であってよく、具体的には、分離された免疫グロブリンの製造方法であっ
てよい。免疫グロブリンは、例えば、免疫グロブリンを含有する溶出画分として得られる
。すなわち、溶出された免疫グロブリンを含む画分を分取できる。画分の分取は、例えば
、常法により行なえばよい。画分を分取する方法としては、一定の時間ごとや、一定の容
量ごとに回収容器を交換する方法や、溶出液のクロマトグラムの形状に合わせて回収容器
を換える方法や、オートサンプラー等の自動フラクションコレクター等で画分を分取する
方法が挙げられる。さらに、免疫グロブリンを含む画分から免疫グロブリンを回収するこ
ともできる。免疫グロブリンを含む画分からの免疫グロブリンの回収は、例えば、タンパ
ク質の分離精製に用いられる公知の方法により行なえばよい。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれ
ら例に限定されるものではない。なお、参考例は本発明を構成しない。
比較例1 天然型Protein L免疫グロブリン結合性ドメインC3(FpL_C
3)の調製
(1)FpL_C3発現ベクターの作製
(1-1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるFinegoldia属菌(Fi
negoldia magna)由来のProtein L(以下、FpL)の免疫グロ
ブリン結合ドメインC3(GenBank No.AAA67503(配列番号39)の
394番目から463番目までのアミノ酸残基、以下「FpL_C3」とも表記)のアミ
ノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)を合成した。なお、合成する際、
5’末端側には制限酵素NcoIの認識配列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端
側にはヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(5’-CATCACCACCA
TCACCAC-3’;配列番号40)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認
識配列(5’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(1-2)合成により得た配列番号2を含むポリヌクレオチドを制限酵素NcoIおよ
びHindIIIで処理後、アガロースゲル電気泳動により目的物のサイズのバンドを確
認した。目的バンドを切り出したのち、QIAquick Gel Extractio
n kit(QIAGEN社製)によりポリヌクレオチドを精製した。
(1-3)(1-2)で得たポリヌクレオチドと、予め制限酵素NcoIとHindI
IIで消化したプラスミドpET-26bをDNA Ligation Kit(タカラ
バイオ社製)を用いてライゲーションを行なった。当該ライゲーション産物を用いて大腸
菌BL21(DE3)株を形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB(Lu
ria-Bertani)プレート培地で培養(37℃、16時間)した。
(1-4)(1-3)で取得した形質転換体(遺伝子組換え大腸菌)を選択し、50μ
g/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養後、QIAprep Spin Min
iprep kit(QIAGEN社製)による精製で、配列番号1に記載のFpL_C
3を発現可能なベクター(pET-FpL_C3と命名)を取得した。
(1-5)(1-4)で取得した発現ベクターpET-FpL_C3のうち、FpL_
C3をコードするポリヌクレオチドおよびその周辺領域について、チェーンターミネータ
法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing
ready Reaction kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック社
製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI P
rism 3700 DNA analyzer(サーモフィッシャーサイエンティフィ
ック社製)にてヌクレオチド配列を解析した。なお、当該解析の際、配列番号3(5’-
TAATACGACTCACTATAGGG-3’)または配列番号4(5’-TATG
CTAGTTATTGCTCAG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをシ
ークエンス用プライマーとして使用した。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3に、FpL_C3(配列番号1)
をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)が挿入されていることを確認した。
(2)FpL_C3の調製
(2-1)50μg/mLのカナマイシンを含む2×YT液体培地(トリプトン 1.
6%(w/v)、酵母エキス 1%(w/v)、塩化ナトリウム 0.5%(w/v))
2mLに、(1)で作製したpET-FpL_C3を含む遺伝子組換え大腸菌を接種し、
前培養した(30℃、16時間)。
(2-2)前培養後の培養液200μLを、50μg/mLのカナマイシンを含む2×
YT液体培地20mLに接種し、37℃で1.5時間から2時間培養後、0.05MのI
PTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)
を4μL加えて、さらに20℃で終夜振とう培養した。
(2-3)培養終了後、遠心分離により培養菌体を回収し、BugBuster Pr
otein Extraction Reagent(メルクミリポア社製)を用いてタ
ンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し
、清澄化した。
(2-4)あらかじめ0.5MのNaClと0.02Mイミダゾールとを含む0.05
Mトリス緩衝液(pH7.5)(以下、洗浄緩衝液と表記)で平衡化したNi-NTA
Sepharose 6 Fast Flow(Cytiva社製)を充填したカラムに
、(2-3)で清澄化した上清を添加し、前記カラムに充填した担体の10倍量の洗浄緩
衝液で洗浄後、0.5MのNaClと0.5Mイミダゾールとを含む0.05Mトリス緩
衝液(pH7.5)を通液することで、FpL_C3に相当する画分を回収した。
(2-5)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれるFpL_
C3を定量した。またSDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミド電気泳動)も実施
し、FpL_C3が純度よく精製されていることを確認した。
実施例1 Protein L免疫グロブリン結合性ドメインC4(FpL_C4)ア
ミノ酸置換体の作製
(1)FpL_C4リジン置換体の調製
(1-1)配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるFpLの免疫グロブリン結合ドメ
インC4(GenBank No.AAA67503(配列番号39)の468番目から
537番目までのアミノ酸残基、以下「FpL_C4」とも表記)が有する全てのリジン
残基(具体的には配列番号5の7番目、13番目、22番目、29番目、48番目および
67番目のリジン残基)をアルギニン残基に置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(
配列番号6、以下「FpL_C4KR」とも表記)をコードするポリヌクレオチド(配列
番号7)を合成した。なお、合成する際、5’末端側に制限酵素NcoIの認識配列(5
’-CCATGG-3’)を、3’末端側にヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド
配列(配列番号40)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-A
AGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(1-2)比較例1(1-2)と同様の方法で、(1-1)で合成したポリヌクレオチ
ドを精製した。
(1-3)比較例1(1-3)と同様の方法で、(1-2)で得たポリヌクレオチドと
予め制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲ
ーション後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し
、培養した。
(1-4)(1-3)で取得した形質転換体を、比較例1(1-4)と同様の方法で培
養およびプラスミド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C4KRと命名)を
取得後、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を、比較例1(1-5)と同様の方
法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C4KRに、FpL_C4KR(配列
番号6)をコードするポリヌクレオチド(配列番号7)が挿入されていることを確認した
(1-5)pET-FpL_C4KRを含む形質転換体から、比較例1(2)と同様の
方法で、精製されたFpL_C4KRを調製した。
(2)FpL_C4KRへの変異導入およびライブラリ作製
(2-1)(1)で取得したpET-FpL_C4KRを鋳型として、7番目、13番
目、22番目および29番目のアミノ酸残基に対する飽和置換体ライブラリを作製した。
プライマーは、22c-Trick法(Sabrina Kille他,ACS Syn
thetic Biology,2013,2,83-92)に倣い、変異導入箇所に適
切な混合塩基を配置し、変異導入箇所を中心としたインバースPCRができるように設計
した(配列番号8から31)。これらのプライマーを一箇所の置換につき6本一組として
、表1および表2の組成で混合し、PCR Primer混合液(Forward/Re
verse primer mix)を調製した。
Figure 2023103953000001
Figure 2023103953000002
(2-2)実施例1で作製したpET-FpL_C4KRを鋳型としてインバースPC
Rによる部位特異的変異導入を行なった。インバースPCRは表3に示す組成の反応液を
調製後、当該反応液を98℃で2分間熱処理し、95℃で10秒間の第1ステップ、50
℃で5秒間の第2ステップ、72℃で6分の第3ステップを1サイクルとする反応を30
サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
Figure 2023103953000003
(2-3)得られたPCR産物を精製後、当該精製物を用いて大腸菌BL21(DE3
)株を形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37
℃、16時間)後、プレート上に形成したコロニーを飽和置換体ライブラリとした。
実施例2 FpL_C4KRアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例1(1)で作製したFpL_C4KRを発現可能な形質転換体、および実
施例1(2)で作製した飽和置換体ライブラリー(形質転換体)を、50μg/mLのカ
ナマイシンを含む2×YT液体培地250μLに接種し、96ディープウェルプレートを
用いて37℃で終夜振とう培養した。
(2)培養後、50μg/mLのカナマイシン、0.3%(w/v)のグリシン、0.
01mMのIPTGを含む2×YT液体培地500μLに5μLの培養液を植え継ぎ、9
6ディープウェルプレートを用いてさらに20℃で終夜振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作によって得られた培養上清と1.0M NaOHとを等量混合
し、38℃で15分間アルカリ処理を行なった。
(4)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
下記に示すELISA法にて測定し、(3)のアルカリ処理を行なった時の免疫グロブリ
ン結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行わなかった時の免疫グ
ロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(4-1)Tris-Buffered Saline(TBS)を用いて10μg/
mLに調製したヒト抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)を96ウェ
ルマイクロプレートの各ウェルに分注し固定化した(4℃、16時間)。固定化後、TB
Sを用いて2%(w/v)に調製したスキムミルク(ベクトン・ディッキンソン社製)を
用いてブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.15M NaCl、0.05%(w/v) Tween
20(商品名)を含む0.05M Tris緩衝液(pH7.5))で96ウェルマイク
ロプレートの各ウェルを洗浄後、抗体結合活性を評価する免疫グロブリン結合性タンパク
質を含む溶液を添加し、免疫グロブリン結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを
反応させた(30℃、1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnt
i-6-His Antibody(BETHYL LABORATORIES社製)を
100μL/well添加し反応させた(30℃、1時間)。
(4-4)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase S
ubstrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。次に1M リン酸を
50μL/well添加することで反応を停止し、マイクロプレートリーダー(テカン社
製)にて450nmの吸光度を測定した。
(5)約500株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C4KR(配列番号6)
と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転
換体を選択した。
(6)(5)で選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Minip
rep kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(7)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(8)(5)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、比
較例1(2-1)から(2-2)と同様の方法で培養し、比較例1(2-3)と同様の方
法でタンパク質抽出液を調製し、清澄化した。
(9)(8)で清澄化したタンパク質抽出液を、比較例1(2-4)に記載の方法で精
製し、免疫グロブリン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(10)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブ
リン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブ
リン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
実施例3 本発明のタンパク質の免疫グロブリン溶出pH評価
比較例1で作製したFpL_C3(配列番号1)、実施例1で作製したFpL_C4K
R(配列番号6)または実施例2で取得したFpL_C4KRアミノ酸置換体に結合した
免疫グロブリンを溶出可能なpH(以下、単に「溶出pH」とも表記)を以下の方法で測
定した。
(1)免疫グロブリンを固定化した不溶性担体であるIgG Sepharose 6
Fast Flow(Cytiva社製)の50%(w/v)水スラリーを調製し、当
該スラリー0.5mLをTricorn 5/50カラム(内径5mm×長さ50mm:
Cytiva社製)に入れた後、ポンプで純水を送液することで、IgG Sephar
ose充填カラムを作製した。
(2)(1)で作製したIgG Sepharose充填カラムをAKTA AVAN
T 25(Cytiva社製)に設置した。前記カラムを0.1Mクエン酸緩衝液(pH
6.5)(以下A液)で平衡化し、0.1Mクエン酸緩衝液(pH2.2)(以下B液)
で洗浄後、A液で再度平衡化した。
(3)A液で1g/Lに調製したFpL_C3溶液100μLを、IgG Sepha
rose充填カラムにアプライし、A液を5カラム体積分送液後、10分間でB液が0%
から100%となるリニアグラジエント溶出でFpL_C3を溶出させた。得られたクロ
マトグラムを解析し、最も吸光度が高くなる溶出位置でのpHを溶出pHとした。
結果を表4に示す。配列番号6に記載のアミノ酸配列において、少なくともLys(A
rg)7Gln(この表記は配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基(配列
番号5では7番目のリジン)が一旦アルギニンに置換後、さらにグルタミンに置換されて
いることを表す;以下、他のアミノ酸置換についても同様に解釈するものとする)、Ly
s(Arg)13Val、Lys(Arg)22Thr、Lys(Arg)29Pro、
Lys(Arg)29ValおよびLys(Arg)29Ileより選択される1つ以上
のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型FpL_C3(配列
番号1)やFpL_C4KR(配列番号6)と比較し溶出pHが増大している、すなわち
免疫グロブリン結合性タンパク質に結合した免疫グロブリン(抗体)をより温和なpH条
件(すなわち中性に近い条件)で溶出できる、といえる。
Figure 2023103953000004
参考例1
比較例1で作製した発現ベクターpET-FpL_C3のうち、免疫グロブリン結合性
タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号2)にエラープローンPCRに
よりランダムに変異を導入した。
(1)比較例1で作製したpET-FpL_C3を鋳型DNAとして用い、エラープロ
ーンPCRを行なった。エラープローンPCRは表5に示す組成の反応液を調製後、当該
反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、50℃で30秒間
の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイク
ル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。前記エラープローンPCR
によりFpL_C3をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)に良好に変異が導入さ
れ、その平均変異導入率は1.6%であった。
Figure 2023103953000005
(2)得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あ
らかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpET-26bにラ
イゲーションした。
(3)ライゲーション反応終了後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質
転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16時
間)した後、プレート上に形成したコロニーをランダム変異体ライブラリとした。
参考例2
(1)参考例1で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)または比較例1で
作製したFpL_C3(配列番号1)を発現する形質転換体を、実施例2(1)から(2
)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例2(3)に
記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約1600株の形質転換体を評価し、その中から天然型(アミノ酸置換がない)
FpL_C3(配列番号1)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性
タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を、比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド
配列を解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(6)(5)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、そ
れぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む2mLの2×YT液体培地に接種し、37℃
で終夜、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(7)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2×YT液体培地に前培養
液を200μL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(8)培養開始から2時間後、培養温度を20℃に変更し、終濃度0.01mMとなる
ようIPTGを添加し、20℃で終夜、好気的に振とう培養した。
(9)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein E
xtraction Reagent(メルク社製)を用いてタンパク質抽出液を調製し
た。
(10)(9)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗
体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(11)各タンパク質の濃度が等しくなるよう、TBSを用いて希釈した。希釈液を二
等分し、一方には0.2M NaOH(アルカリ処理)を、もう一方にはTBS(アルカ
リ未処理)を、それぞれ等量添加し混合後、25℃で5時間静置した。
(12)1Mトリス緩衝液(pH7.0)を4倍量加えた後、アルカリ処理(終濃度0
.1M NaOHで25℃、5時間処理)およびアルカリ未処理のタンパク質溶液の抗体
結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。アルカリ処理した
免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ未処理の免疫グロブリン結
合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価
した。
結果を表6に示す。配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともPro3S
er(この表記は配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
されていることを表す、以下同様)、Glu5Val、Glu8Gly、Ile17Ph
e、Glu27Gly、Ala41Thr、Asn44Ser、Glu49Val、As
n50Ser、Asn50Tyr、Asn50Lys、Asn50Asp、Glu52V
al、Glu52Gly、Thr54Ile、Asn62TyrおよびAsn65Tyr
より選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然
型FpL_C3(配列番号1)と比較しアルカリ安定性が向上しているといえる。
中でもAsn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸置換を有した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(配列番号47、FpL_C3 2aと命名)は、顕著なアルカリ安
定性向上を確認した(天然型FpL_C3:40%、FpL_C3 2a:94%)。G
lu52Gly単独のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号
52)でのアルカリ安定性向上が顕著ではないことから(天然型FpL_C3:40%、
配列番号51:48%)、顕著なアルカリ安定性の向上をもたらすアミノ酸置換はAsn
50Tyrのほうであることが推測される。
Figure 2023103953000006
参考例3
(1)実施例1で取得した、pET-FpL_C4KRを鋳型として、7番目および2
9番目のアミノ酸残基に対する飽和置換体ライブラリを作製した。プライマーは、実施例
1(2)と同様、22c-Trick法に倣い、変異導入箇所に適切な混合塩基を配置し
、変異導入箇所を中心としたインバースPCRができるように設計した(配列番号55か
ら66)。これらのプライマーを一箇所の置換につき6本一組として、表1および表7の
組成で混合し、PCR Primer混合液(Forward/Reverse pri
mer mix)を調製した。
Figure 2023103953000007
(2)鋳型DNAとしてpET-FpL_C3を用いた他は、実施例1(2-2)と同
様な方法でインバースPCRを行なった。
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
参考例4
(1)実施例1で作製したFpL_C4KR(配列番号6)を発現する形質転換体およ
び参考例3で作製した部位特異的アミノ酸置換体ライブラリ(形質転換体)を実施例2(
1)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施
例2(3)に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約200株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C4KR(配列番号6)
と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転
換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
参考例1で作製したFpL_C4KR(配列番号6)を発現する形質転換体を、参考例2
(6)から(8)と同様な方法で培養し、参考例2(9)と同様な方法でタンパク質抽出
液を調製した。
(7)(6)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(8)参考例2(11)に記載の方法でアルカリ処理後、参考例2(12)と同様な方
法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
(3)で選択した形質転換体が発現する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号6
)に対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理したときの残存活性[%]をまとめた結
果を表8に示す。配列番号6に記載のアミノ酸配列において、少なくともLys(Arg
)7Ala(この表記は配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基(配列番号
5では7番目のリジン)が一旦アルギニンに置換後、さらにアラニンに置換されているこ
とを表す、以下同様)および/またはLys(Arg)29Proのアミノ酸置換を有し
た免疫グロブリン結合性タンパク質は、FpL_C4KR(配列番号6)と比較しアルカ
リ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023103953000008
実施例4 FpL_C3アミノ酸置換体の作製
FpL_C3(配列番号1)が有するリジン残基(具体的には配列番号1の7番目、1
3番目、22番目、29番目、38番目、48番目および67番目のリジン残基)のうち

7番目のリジン残基をアラニン残基に、
13番目、38番目、48番目および67番目のリジン残基をアルギニン残基に、
22番目のリジン残基をグルタミン残基に、
29番目のリジン残基をイソロイシン残基に、
それぞれ置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号69、以下「FpL_C3
KX」とも表記)に対し、参考例2で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質
のアルカリ安定性向上に関与するアミノ酸置換を集積した。具体的には、以下に示す免疫
グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
FpL_C3KXに対し、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62Tyr
のアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3KX 3aと命名)
(1)pET26bおよびFpL_C3KX 3a(配列番号70)をコードするポリ
ヌクレオチド(配列番号71)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KX 3aのヌ
クレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KX 3aの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号71の1番目から60
番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KX 3aの53番目から70番目までの
アミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号71の157番目から210番目
までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号
40)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGCTT-
3’)
第二領域:FpL_C3KX 3aの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号72[forward]および73[reverse]
に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KX 3aの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号74[forward]および75[reverse]
に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(2)インバースPCRにより、前記第一領域のポリヌクレオチドを調製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてFpL_C4KR K7A(FpL_C4KRにLys
(Arg)7Alaのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番
号67)をコードするポリヌクレオチド(配列番号76)を含む発現ベクターpET-F
pL_C4KR K7Aを、PCR Forward Primerとして配列番号77
に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerと
して配列番号78に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドとして、表9に示す組成の反
応液を調製後、当該反応液を98℃で2分間熱処理し、95℃で10秒間の第1ステップ
、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で6分の第3ステップを1サイクルとする反応
を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
Figure 2023103953000009
(3)(2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(1)で設計した
前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製)をNEBu
ilder(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)を用いて連結した。なお、前記三
領域(ポリヌクレオチドとしては5種類)のポリヌクレオチドはそれぞれ、反応液中に0
.05pmolずつ混合した。
(4)(2)で得られたポリヌクレオチドを比較例1(1-2)と同様な方法で精製し
、比較例1(1-3)と同様な方法で形質転換後、比較例1(1-4)と同様な方法で培
養および発現ベクターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を比
較例1(1-5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 3aにFpL_C3KX
3a(配列番号70)をコードするポリヌクレオチド(配列番号71)が挿入されている
ことを確認した。
実施例5 FpL_C3KX 3aのアルカリ安定性評価
(1)比較例1で作製した天然型FpL_C3(配列番号1)、ならびに実施例4で作
製した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3KX(配列番号69)および
FpL_C3KX 3a(配列番号70)のいずれかを発現する形質転換体を、比較例1
(2-1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)に記載の方法でタ
ンパク質抽出液を調製した。
(2)(1)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(3)処理に用いたNaOHの濃度を0.4M(終濃度0.2M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表10に示す。Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62Tyrの
アミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 3a)は、
FpL_C3KXと比較し、アルカリ安定性が向上しているといえる(FpL_C3KX
:10%、FpL_C3KX 3a:69%)。
Figure 2023103953000010
実施例6 FpL_C3KX 3aアミノ酸置換体への変異導入およびライブラリ作製
FpL_C3KX 3aに対し、Vκ3との結合力を付与するアミノ酸置換であるGl
u49Aspのアミノ酸置換を導入した、変異型免疫グロブリン結合性タンパク質FpL
_C3KX 4h(配列番号79)を発現するベクターpET-FpL_C3KX 4h
のうち、免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号
80)に、参考例1と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し
、ライブラリを作製した。平均変異導入率は1.7%であった。
実施例7 FpL_C3KX 4hアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例6で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例2(1
)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M N
aOHと等量混合し、42℃で30分間、アルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約900株の形質転換体を評価し、その中からアルカリ安定性向上免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(FpL_C3KX 4h)と比較してアルカリ安定性が向上した免
疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)FpL_C3KX 4h(配列番号79)または(5)で選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、比較例1(2-1)から(2-2)と同様
な方法で培養し、比較例1(2-3)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記
抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(7)あらかじめ0.5MのNaClと0.02Mイミダゾールとを含む0.05Mト
リス緩衝液(pH7.5)(以下、洗浄緩衝液と表記)で平衡化したNi-NTA Se
pharose 6 Fast Flow(Cytiva社製)を充填したカラムに、(
6)で清澄化した上清を添加し、前記カラムに充填した担体の10倍量の洗浄緩衝液で洗
浄後、0.5MのNaClと0.5Mイミダゾールとを含む0.05Mトリス緩衝液(p
H7.5)を通液することで、免疫グロブリン結合性タンパク質に相当する画分を回収し
た。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表11に示す。配列番号79に記載のアミノ酸配列において、少なくともGlu
9Val、Tyr53Phe、Thr54MetおよびAla69Thrより選択される
1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C
3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 4h(配列番号79
)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
なお、20mL培地で培養したときの精製収量を比較したところ、Lys(Gln)2
2Argのアミノ酸置換を導入することで、タンパク質精製収量が顕著に向上することを
確認した。以降、FpL_C3KX 4hにLys(Gln)22Argのアミノ酸置換
を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質をFpL_C3KX 4i(配列番号82)
と命名する。
Figure 2023103953000011
実施例8 FpL_C3KX 4iアミノ酸置換集積体の作製
(1)FpL_C3KX 4iアミノ酸置換集積体の設計
実施例7で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上に
関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX 4i(配列番号82)に対し集積することで
、更なる安定性の向上を図った。具体的には、以下に示す免疫グロブリン結合性タンパク
質を設計し、作製した。
FpL_C3KX 4iに対し、Tyr53Pheのアミノ酸置換を導入したタンパク質
(配列番号86、FpL_C3KX 5eと命名)
(1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 5e(配列番号
86)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。鋳型DNAと
してインバースPCRはFpL_C3KX 4i(配列番号82)をコードするポリヌク
レオチド(配列番号87)を含む発現ベクター(以下、「pET-FpL_C3KX 4
i」とも表記)を、PCR Forward Primerとして配列番号88に記載の
オリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号89に記
載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例4(2)と同様な方法で行なった
(2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、制限酵素より
産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を参考例2(4)と同様な方法で培養および発現ベクター(
pET-FpL_C3KX 5eと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオ
チド配列の解析を比較例1(1-5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 5eにFpL_C3KX
5e(配列番号86)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
実施例9 FpL_C3KX 4hアミノ酸置換体のアルカリ安定性評価
(1)FpL_C3KX 4h(配列番号79)、実施例7で作製したFpL_C3K
X 4i(配列番号82)ならびに実施例8で作製したFpL_C3KX 5e(配列番
号89)のいずれかを発現する形質転換体を、比較例1(2-1)から(2-2)と同様
な方法で培養し、比較例1(2-3)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記
抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理温度を55
℃、処理時間を15分に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ
処理後、参考例2(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した
結果を表12に示す。実施例8で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号86)は
天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX
4h(配列番号79)およびFpL_C3KX 4i(配列番号82)と比較しても、ア
ルカリ安定性が向上しているといえる(FpL_C3KX 4h:34%、FpL_C3
KX 4i:48%、FpL_C3KX 5e:73%)。
Figure 2023103953000012
実施例10 FpL_C3KX 5eへの変異導入およびライブラリ作製
実施例8で作製した発現ベクターpET-FpL_C3KX 5eのうち、免疫グロブ
リン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号90)に、参考例1
と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを作製
した。平均変異導入率は1.9%であった。
実施例11 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例10で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を実施例2(1
)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清を、実施例7(
1)に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約900株の形質転換体を評価し、その中からアルカリ安定性向上免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(FpL_C3KX 5e)と比較してアルカリ安定性が向上した免
疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例24で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号86)を発現する形質転換体を
、比較例1(2-1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)と同様
な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィル
ターに通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を2.0M(終濃度1.0M)に、処理時間を17
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表13に示す。配列番号86に記載のアミノ酸配列において、少なくともGlu
1Val、Glu4Gly、Gly21ArgおよびGlu(Gly)52Aspより選
択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のF
pL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 5e(配列
番号86)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023103953000013
実施例12 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体作製(その2)
実施例10で明らかとなった免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上に
関与するアミノ酸置換ならびにVκ3との結合力を付与するアミノ酸置換であるPro6
SerおよびLys(Arg)38GluをFpL_C3KX 5eに対し集積した。具
体的には、以下に示す免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作成した。
FpL_C3KX 5eに対し、Glu4Gly、Pro6Ser、Lys(Arg)3
8Glu、Glu(Gly)52Aspのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号
96、FpL_C3KX 7dと命名)
(1)FpL_C3KX 7d(配列番号96)をコードするポリヌクレオチド(配列
番号97)を合成した。なお、合成する際、5’末端側には制限酵素NcoIの認識配列
(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にはヒスチジン6残基をコードするヌクレ
オチド配列(配列番号40)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5
’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(2)比較例1(1-2)と同様の方法で、(1)で合成したポリヌクレオチドを精製
した。
(3)比較例1(1-3)と同様な方法で、(2)で得たポリヌクレオチドと予め制限
酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲーション
後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、培養し
た。
(4)得られた形質転換体を、比較例1(1-4)と同様な方法で培養およびプラスミ
ド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C3KX8aと命名)を取得後、当該
発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を、比較例1(1-5)と同様の方法で行なった
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 7dにFpL_C3KX
7d(配列番号96)をコードするポリヌクレオチド(配列番号97)が挿入されている
ことを確認した。
実施例13 FpL_C3KX 7dのアルカリ安定性評価
(1)実施例10で取得したFpL_C3KX 5e(配列番号86)および実施例1
2で取得したFpL_C3KX 7d(配列番号96)、のいずれかを発現する形質転換
体を、比較例1(2-1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)に
記載の方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフ
ィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を17
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表14に示す。本実施例で評価したFpL_C3KX8a(配列番号96)は、
FpL_C3KX 5e(配列番号86)と比較し、残存活性が高くなっており、これら
変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上していることが確認され
た。
Figure 2023103953000014
実施例14 FpL_C3KX 7dへの変異導入およびライブラリ作製(その1)
実施例12で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号96)を発現するベクターp
ET-FpL_C3KX 7dのうち、免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポ
リヌクレオチド部分(配列番号97)に、参考例1と同様の方法でエラープローンPCR
によりランダムに変異を導入し、ライブラリを作製した。平均変異導入率は1.9%であ
った。
実施例15 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換体のスクリーニング(その1)
(1)実施例12で作製したpET-FpL_C3KX 7d(形質転換体)と実施例
13で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例2(1)から(2)
と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M NaOHと等量混合し
30分、58℃でアルカリ処理を行なった。
(3)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(4)約1000株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7d(配列
番号96)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現
する形質転換体を選択した。
(5)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(7)(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例12で作製したpET-FpL_C3KX 7d(配列番号96)を発現する形質
転換体を、比較例1(1-1)から(1-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3
)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清
をフィルターに通し、清澄化した。
(8)(7)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(9)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(10)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を1
5時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例
2(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表15に示す。配列番号96に記載のアミノ酸配列において、少なくともGlu
8Val、Glu33ValおよびAla69Valより選択される1以上のアミノ酸置
換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C3(配列番号1)よ
りアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 7d(配列番号96)と比較しても、ア
ルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023103953000015
実施例16 FpL_C3KX 7dへの変異導入およびライブラリ作製(その2)
(1)実施例12で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号96)を発現するベクタ
ーpET-FpL_C3KX 7dを鋳型として、23番目、41番目および52番目の
アミノ酸残基に対する飽和置換体ライブラリを作製した。プライマーは、実施例1(2)
と同様、22c-Trick法に倣い、変異導入箇所に適切な混合塩基を配置し、変異導
入箇所を中心としたインバースPCRができるように設計した(配列番号100から10
5、107から112、ならびに115から120)。これらのプライマーを一箇所の置
換につき6本一組として、表1および表16の組成で混合し、PCR Primer混合
液(Forward/Reverse primer mix)を調製した。
Figure 2023103953000016
(2)pET-FpL_C3KX 7dを鋳型DNAとした他は、実施例2(2-2)
と同様な方法でインバースPCRによる部位特異的変異導入を行った。
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
実施例17 FpL_C3KX8aアミノ酸置換体のスクリーニング(その2)
(1)実施例12で作製したpET-FpL_C3KX 7d(形質転換体)および実
施例16で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)で作製した部位特異的アミ
ノ酸置換体ライブラリ(形質転換体)を、実施例2(1)から(2)と同様な方法で培養
後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例15(2)に記載のアルカリ処理
を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約300株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7d(配列番
号96)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現す
る形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例12で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号96)を発現する形質転換体を
、比較例1(2-1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)と同様
な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィル
ターに通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表17に示す。配列番号96に記載のアミノ酸配列において、少なくともIle
23Arg、Ala41Ile、Ala41Tyr、Glu(Gly,Asp)52Le
u(この表記は配列番号1の7番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基が一旦グリシ
ンに置換し、さらにアスパラギン酸に置換後、ロイシンに置換されたことを表す、以下同
様)およびGlu(Gly,Asp)52Valのアミノ酸置換を有した免疫グロブリン
結合性タンパク質は、天然型のFpL_C3よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3
KX 7d(配列番号96)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023103953000017
実施例18 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換体の設計と作製
側鎖の性質が異なるアミノ酸残基への置換、またはドメイン間でアミノ酸配列が異なる
位置における他のドメインのアミノ酸残基への置換を導入する方法で取得した、酸溶出性
が向上したアミノ酸置換である、Pro(Ser)6Ala、Glu8Gly、Glu8
Arg、Gly21Arg、Ile23Phe、Ile23Leu、Glu33Val、
Lys(Arg,Glu)38His、Lys(Arg,Glu)38Leu、Asn4
4His、Asn44Arg、Lys(Arg)48His、Asn(Tyr)50Me
t、Glu(Gly,Asp)52Tyr、Tyr(Phe)53SerのいずれかをF
pL_C3KX 7dに対し集積した。
(1)鋳型DNAとしてFpL_C3KX 7d(配列番号96)をコードするポリヌ
クレオチド(配列番号97)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KX 7dを、P
CR Forward PrimerおよびPCR Reverse Primerの組
み合わせとして表18の配列番号に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせ
を、それぞれ用いた他は実施例4(2)と同様な方法でインバースPCRを行なった。
Figure 2023103953000018
(2)(1)で得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、制限
酵素より産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を比較例1(1-4)と同様な方法で培養および発現ベクタ
ーの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を比較例1(1-5)と
同様の方法で行なった。結果、いずれの発現ベクターも(1)で得られたポリヌクレオチ
ドが挿入されていることを確認した。
実施例19 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換体の酸溶出性評価
(1)FpL_C3KX 7dおよび実施例18で作製したFpL_C3KX 7dア
ミノ酸置換体(計15種類)のいずれかを発現する形質転換体を、比較例1(2-1)か
ら(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)に記載の方法でタンパク質抽出
液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)各タンパク質の濃度が等しくなるよう、TBSを用いて希釈した。希釈液を二等
分し、実施例2(4)に記載のELISA法(酸溶出性評価)によって、一方には0.0
5M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)(酸処理)を、もう一方にはTBS(酸
未処理)を添加した際の抗体結合活性を測定した。酸処理した免疫グロブリン結合性タン
パク質の抗体結合活性を、酸未処理の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性で
除することで残存活性を算出した。1より残存活性を減ずることで溶出率を算出し、酸溶
出性を評価した。
結果を表19に示す。本実施例で評価したFpL_C3KX 7eアミノ酸置換体はい
ずれも天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3
KX 7d(配列番号96)と比較し、溶出率が高くなっており、これら変異型免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の酸による溶出性が向上していることが確認された。
Figure 2023103953000019
実施例20 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の作製
(1)FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の設計
実施例15および17で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ
安定性向上に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX 7d(配列番号96)に対し集
積することで、更なるアルカリ安定性の向上を図った。具体的には、以下の<a>から<
b>に示す2種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
(ac)FpL_C3KX 7dに対し、Glu(Gly,Asp)52ValおよびA
la69Valのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号171、FpL_C3K
X 8aと命名)
(b)FpL_C3KX 7dに対し、Glu(Gly,Asp)52LeuおよびAl
a69Valのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号174、FpL_C3KX
8bと命名)
(2)FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の作製
以下、前記<a>から<b>に示す2種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方
法について説明する。
<a>FpL_C3KX 8a
<a-1>インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 8a(配列
番号271)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてFpL_C3KX 7d_A69V(FpL_C3KX
7dにAla69Valのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、
配列番号98)をコードするポリヌクレオチド(配列番号168)を含む発現ベクター(
以下、「pET-FpL_C3KX 7d_A69V」とも表記)を、PCR Forw
ard Primerとして配列番号169に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR R
everse Primerとして配列番号170に記載のオリゴヌクレオチドを、それ
ぞれ用いた他は実施例4(2)と同様な方法で行なった。
<a-2>得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、制限酵素
より産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
<a-3>得られた形質転換体を比較例1(1-3)から(1-4)と同様な方法で培
養および発現ベクター(pET-FpL_C3KX 8aと命名)の抽出を行ない、当該
発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を比較例1(1-5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 8aにFpL_C3KX
8a(配列番号171)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
<b>FpL_C3KX 8b
<b-1>インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 8b(配列
番号174)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。鋳型D
NAとしてインバースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KX 7d_A
69Vを、PCR Forward Primerとして配列番号172に記載のオリゴ
ヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号173記載のオ
リゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例4(2)と同様な方法で行なった。
<b-2>得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、制限酵素
より産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
<b-3>得られた形質転換体を比較例1(1-3)から(1-4)と同様な方法で培
養および発現ベクター(pET-FpL_C3KX 8bと命名)の抽出を行ない、当該
発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を比較例1(1-5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 8bにFpL_C3KX
8b(配列番号174)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
実施例21 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価
(1)実施例15で取得したFpL_C3KX 7d_A69V(配列番号98)、な
らびに実施例20で作製したFpL_C3KX 8a(配列番号171)およびFpL_
C3KX 8b(配列番号174)のいずれかを発現する形質転換体を、比較例1(2-
1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)に記載の方法でタンパク
質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄
化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表20に示す。FpL_C3KX 8a(配列番号171)およびFpL_C3
KX 8b(配列番号174)は、FpL_C3KX8a_A69V(配列番号98)と
比較し、残存活性が高くなっており、これら変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のア
ルカリ安定性が向上していることが確認された。
Figure 2023103953000020
実施例22 本発明の免疫グロブリン結合性タンパク質へのアミノ酸置換導入
側鎖の性質が異なるアミノ酸残基への置換、またはドメイン間でアミノ酸配列が異なる
位置における他のドメインのアミノ酸残基への置換を導入する方法で取得した、アルカリ
安定性が向上したアミノ酸置換である、Val14Ala、Gly21Arg、Ile2
3Thr、Ala41Arg、Asn44Asp、Asn44Arg、Asn44His
、Glu52Tyr、Gly60ArgおよびIle64LeuのいずれかをFpL_C
3KX 7e(配列番号175)に対し集積した。なおFpL_C3KX 7eは、天然
型FpL_C3(配列番号1)に対し、Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Al
a、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys29Glu、Ly
s48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Asn62T
yr、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質である。
(1)鋳型DNAとしてFpL_C3KX 7e(配列番号175)をコードするポリ
ヌクレオチド(配列番号176)を含む発現ベクター(以下、「pET-FpL_C3K
X 7e」とも表記)を、PCR Forward PrimerおよびPCR Rev
erse Primerの組み合わせとして表21の配列番号に記載の配列からなるオリ
ゴヌクレオチドの組み合わせを、それぞれ用いた他は実施例4(2)と同様な方法でイン
バースPCRを行なった。
Figure 2023103953000021
(2)(1)で得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該
制限酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を比較例1(1-4)と同様な方法で培養および発現ベクタ
ーの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を比較例1(1-5)と
同様の方法で行なった。結果、いずれの発現ベクターも(1)で得られたポリヌクレオチ
ドが挿入されていることを確認した。
実施例23 FpL_C3KX 7eアミノ酸置換体のアルカリ安定性評価
(1)FpL_C3KX 7eおよび実施例22で作製したFpL_C3KX 7eア
ミノ酸置換体(計10種類)のいずれかを発現する形質転換体を、比較例1(2-1)か
ら(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)に記載の方法でタンパク質抽出
液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、参考例2(11)と同様な方法でアルカリ処理後、参考例2
(12)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表22に示す。本実施例で評価したFpL_C3KX 7eアミノ酸置換体はい
ずれも天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3
KX 7e(配列番号175)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023103953000022
実施例24 本発明の免疫グロブリン結合性タンパク質へのアミノ酸置換の集積
(1)アミノ酸置換集積体の設計
実施例17および23で明らかになった免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安
定性向上に関与するアミノ酸置換、および/または実施例19で明らかになった免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の免疫グロブリン溶出性向上に関与するアミノ酸置換を、FpL
_C3KX 7e(配列番号175)に対し集積した。具体的には、以下の<c>から<
i>に示す7種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
<c>FpL_C3KX 7eに対し、Ile23ArgおよびAsn44Argのアミ
ノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号207、FpL_C3KX 9aと命名)
<d>FpL_C3KX 7eに対し、Ile23ArgおよびAsn44Hisのアミ
ノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号208、FpL_C3KX 9bと命名)
<e>FpL_C3KX 7eに対し、Ile23ArgおよびIle64Leuのアミ
ノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号209、FpL_C3KX 9cと命名)
<f>FpL_C3KX 7eに対し、Asn44ArgおよびIle64Leuのアミ
ノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号210、FpL_C3KX 9dと命名)
<g>FpL_C3KX 7eに対し、Asn44HisおよびIle64Leuのアミ
ノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号211、FpL_C3KX 9eと命名)
<h>FpL_C3KX 7eに対し、Ile23Arg、Asn44Arg、Lys(
Arg)48HisおよびIle64Leuのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列
番号212、FpL_C3KX 10aと命名)
<i>FpL_C3KX 7eに対し、Ile23Arg、Asn44His、Lys(
Arg)48HisおよびIle64Leuのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列
番号213、FpL_C3KX 10bと命名)
(2)FpL_C3KX 7eアミノ酸置換集積体の作製
以下、前記<c>から<i>に示す7種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方法
について説明する。
<c>FpL_C3KX 9a
<c-1>FpL_C3KX 9a(配列番号207)をコードするポリヌクレオチド
(配列番号214)を合成した。なお、合成する際、5’末端側には制限酵素NcoIの
認識配列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にはヒスチジン6残基をコードす
るヌクレオチド配列(配列番号40)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識
配列(5’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
<c-2>比較例1(1-2)と同様の方法で、<c-1>で合成したポリヌクレオチ
ドを精製した。
<c-3>比較例1(1-3)と同様な方法で、<c-2>で得たポリヌクレオチドと
予め制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲ
ーション後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し
、培養した。
<c-4>得られた形質転換体を、比較例1(1-4)と同様な方法で培養およびプラ
スミド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C3KX 9aと命名)を取得後
、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を、比較例1(1-5)と同様の方法で行
なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 9aにFpL_C3KX
9a(配列番号207)をコードするポリヌクレオチド(配列番号214)が挿入されて
いることを確認した。
<d>FpL_C3KX 9b
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 9b(配列番号208)をコードするポリヌクレオチド(配列番号215)を用い
た他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3K
X 9bと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 9bのヌクレオ
チド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX 9bにFpL_C3KX 9b(配列
番号208)をコードするポリヌクレオチド(配列番号215)が挿入されていることを
確認した。
<e>FpL_C3KX 9c
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 9c(配列番号209)をコードするポリヌクレオチド(配列番号216)を用い
た他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3K
X 9cと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 9cのヌクレオ
チド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX9eにFpL_C3KX 9c(配列番
号209)をコードするポリヌクレオチド(配列番号216)が挿入されていることを確
認した。
<f>FpL_C3KX 9d
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 9d(配列番号210)をコードするポリヌクレオチド(配列番号217)を用い
た他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3K
X 9dと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 9dのヌクレオ
チド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX 9dにFpL_C3KX 9d(配列
番号210)をコードするポリヌクレオチド(配列番号217)が挿入されていることを
確認した。
<g>FpL_C3KX 9e
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 9e(配列番号211)をコードするポリヌクレオチド(配列番号218)を用い
た他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3K
X 9eと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 9eのヌクレオ
チド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX 9eにFpL_C3KX 9e(配列
番号211)をコードするポリヌクレオチド(配列番号218)が挿入されていることを
確認した。
<h>FpL_C3KX 10a
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 10a(配列番号212)をコードするポリヌクレオチド(配列番号219)を用
いた他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3
KX 10aと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 10aのヌ
クレオチド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX 10aにFpL_C3KX 1
0a(配列番号212)をコードするポリヌクレオチド(配列番号219)が挿入されて
いることを確認した。
<i>FpL_C3KX 10b
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KX 10b(配列番号213)をコードするポリヌクレオチド(配列番号220)を用
いた他は、(a)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3
KX 10bと命名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KX 10bのヌ
クレオチド配列解析の結果、pET-FpL_C3KX 10bにFpL_C3KX 1
0b(配列番号213)をコードするポリヌクレオチド(配列番号220)が挿入されて
いることを確認した。
実施例25 FpL_C3KX 8bアミノ酸置換体の酸溶出性評価
(1)FpL_C3KX 7e(配列番号175)ならびに実施例24で作製したFp
L_C3KX 9a(配列番号207)、FpL_C3KX 9b(配列番号208)、
FpL_C3KX 9c(配列番号209)、FpL_C3KX 9c(配列番号210
)、FpL_C3KX 9d(配列番号211)、FpL_C3KX 10a(配列番号
212)およびFpL_C3KX 10b(配列番号213)のいずれかを発現する形質
転換体を、比較例1(1-1)から(1-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3
)に記載の方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清
をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)各タンパク質の濃度が等しくなるよう、TBSを用いて希釈した。希釈液を二等
分し、実施例2(4)に記載のELISA法(酸溶出性評価)によって、一方には0.0
5M クエン酸ナトリウム(NaOAc)緩衝液(pH3.2)で5分間酸処理し、もう
一方にはTBS(酸未処理)を添加した際の抗体結合活性を測定した。酸処理した免疫グ
ロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、酸未処理の免疫グロブリン結合性タンパク
質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。1より残存活性を減ずることで溶
出率を算出し、酸溶出性を評価した。
結果を表23に示す。FpL_C3KX 9a(配列番号207)、FpL_C3KX
9b(配列番号208)、FpL_C3KX 9c(配列番号209)、FpL_C3
KX 9d(配列番号210)、FpL_C3KX 9e(配列番号211)、FpL_
C3KX 10a(配列番号212)およびFpL_C3KX 10b(配列番号213
)は、FpL_C3KX 7e(配列番号175)と比較し、溶出率が高くなっており、
これら変異型免疫グロブリン結合性タンパク質の酸による溶出性が向上していることが確
認された。中でもFpL_C3KX 9a(配列番号207)およびFpL_C3KX
10a(配列番号212)は、酸に対する溶出性が特に向上していることがわかる。
Figure 2023103953000023
実施例26 FpL_C3KX 7eへの変異導入およびライブラリ作製(その3)
(1)FpL_C3KX 7e(配列番号175)を発現するベクターpET-FpL
_C3KX 7eを鋳型として、15番目および34番目のアミノ酸残基に対する飽和置
換体ライブラリを作製した。プライマーは、実施例1(2)と同様、22c-Trick
法に倣い、変異導入箇所に適切な混合塩基を配置し、変異導入箇所を中心としたインバー
スPCRができるように設計した(配列番号221から232)。これらのプライマーを
一箇所の置換につき6本一組として、表1および表24の組成で混合し、PCR Pri
mer混合液(Forward/Reverse primer mix)を調製した。
Figure 2023103953000024
(2)pET-FpL_C3KX 7eを鋳型DNAとした他は、実施例2(2-2)
と同様な方法でインバースPCRによる部位特異的変異導入を行った。
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
実施例27 FpL_C3KX 7eアミノ酸置換体のスクリーニング(その3)
(1)pET-FpL_C3KX 7e(形質転換体)および実施例26で作製したラ
ンダム変異体ライブラリ(形質転換体)で作製した部位特異的アミノ酸置換体ライブラリ
(形質転換体)を、実施例2(1)から(2)と同様な方法で培養後、実施例15(2)
に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例2(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約200株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7e(配列番
号175)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現
する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を比較例1(1-5)に記載の方法によりヌクレオチド配
列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
pET-FpL_C3KX 7e(配列番号175)を発現する形質転換体を、比較例1
(2-1)から(2-2)と同様な方法で培養し、比較例1(2-3)と同様な方法でタ
ンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し
、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、実施例7(7)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)実施例25(4)と同様な方法で酸溶出性を評価した。
結果を表25に示す。配列番号175記載のアミノ酸配列において、少なくともAsn
15Val、Glu34Asp、Glu34Phe、Glu34LeuおよびGlu34
Valより選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は
FpL_C3KX 7e(配列番号175)と比較し、溶出率が高くなっており、これら
変異型免疫グロブリン結合性タンパク質の酸による溶出性が向上していることが確認され
た。
Figure 2023103953000025

Claims (16)

  1. Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインの
    アミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも以下の(1)から(
    11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
    するタンパク質;
    (1)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がグルタミンに置換
    (2)配列番号1の13番目のリジンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (3)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がバリンまたはイソロイシ
    ンに置換
    (4)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (5)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (6)配列番号1の15番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (7)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
    またはロイシンに置換
    (8)配列番号1の34番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸、
    フェニルアラニン、ロイシンおよびバリンのいずれかに置換
    (9)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (10)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置

    (11)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換。
  2. 以下の(a)から(c)のいずれかに記載のタンパク質である、請求項1に記載のタン
    パク質:
    (a)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列におい
    て、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、
    かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質;
    (b)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列におい
    て、少なくとも前記(1)から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、
    さらに前記(1)から(11)以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ
    酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性を
    有するタンパク質;
    (c)配列番号1または5に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相同
    性を有するアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも前記(1
    )から(11)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合
    活性を有するタンパク質。
  3. さらに、少なくとも以下の(i)から(liii)より選択される1つ以上のアミノ酸
    置換を有する、請求項1に記載のタンパク質:
    (i)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
    (ii)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバ
    リンに置換
    (iii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (iv)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリ
    シンに置換
    (v)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (vi)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (vii)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
    (viii)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (ix)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニ
    ンに置換
    (x)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (xi)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
    アルギニンに置換
    (xii)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
    (xiii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置

    (xiv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (xv)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (xvi)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたは
    グリシンに置換
    (xvii)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニン
    またはイソロイシンに置換
    (xviii)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、
    リジンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (xix)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (xx)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
    ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (xxi)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
    に置換
    (xxii)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
    またはメチオニンに置換
    (xxiii)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジ
    ン、アルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
    (xxiv)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに
    置換
    (xxv)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (xxvi)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプ
    ロリンに置換
    (xxvii)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置

    (xxviii)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンま
    たはアルギニンに置換
    (xxix)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リ
    ジンおよびイソロイシンのいずれかに置換
    (xxx)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシン
    に置換
    (xxxi)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (xxxii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイ
    シンに置換、
    (xxxiii)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニン
    またはアルギニンに置換
    (xxxiv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
    ギンに置換。
    (xxxv)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (xxxvi)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギ
    ン酸に置換
    (xxxvii)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまた
    はスレオニンに置換
    (xxxviii)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置

    (xxxix)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (xl)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
    はバリンに置換
    (xli)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
    置換
    (xlii)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに
    置換
    (xliii)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラ
    ギン酸、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
    (xliv)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

    (xlv)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (xlvi)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置

    (xlvii)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシン
    またはチロシンに置換
    (xlviii)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチ
    ジンまたはアルギニンに置換
    (xlviv)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシン
    またはチロシンに置換
    (l)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (li)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (lii)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (liii)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
    バリンに置換。
  4. さらに、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジン残基
    がリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸残基に置換した、請
    求項1に記載のタンパク質:
    (I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
    (II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
    (III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
    (IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
    (V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
    (VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
    (VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基。
  5. さらに、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン
    酸への置換、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、
    配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
    、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配列
    番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号
    1の23番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、および
    配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
    より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有する、請求項1に記載のタンパク質。
  6. 少なくとも以下の(X)または(Y)のアミノ酸置換を有する、請求項3に記載のタン
    パク質:
    (X)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
    配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1の
    7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、2
    2番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換
    、配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、
    配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配列番
    号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号1の
    44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の4
    9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番号1の
    50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配
    列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換なら
    びに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換;
    (Y)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
    配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1の
    7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、2
    2番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号
    1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1
    の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配列番号1の38
    番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号1の44番目の
    アスパラギンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の48番目のリ
    ジンに相当するアミノ酸残基のヒスチジンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン
    酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62
    番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の53番目
    のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換、配列番号1の64番目
    のイソロイシンに相当するアミノ酸残基のロイシンへの置換ならびに配列番号1の69番
    目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換。
  7. 配列番号207または212に記載のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のタンパク
    質。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  9. 請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  10. 以下の(A)または(B)を含む、遺伝子組換え宿主:
    (A)請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド

    (B)請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
    を含む発現ベクター。
  11. 宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項10
    に記載の遺伝子組換え宿主。
  12. 請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含
    む遺伝子組換え宿主または該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む遺伝子組換え宿
    主を培養し該タンパク質を発現させる工程と、発現した前記タンパク質を回収する工程と
    を含む、免疫グロブリン結合性タンパク質の製造方法。
  13. 宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項12
    に記載の製造方法。
  14. 不溶性担体と、当該不溶性担体に固定化した請求項1から7のいずれか1項に記載のタ
    ンパク質とを含む、免疫グロブリン吸着剤。
  15. 請求項14に記載の吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加し当該
    免疫グロブリンを前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリン
    をpH変化で溶出させる工程とを含む、前記溶液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法
  16. 前記pH変化が、pHの低下である、請求項15に記載の方法。
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