JP7293657B2 - 酸安定性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法および当該タンパク質を用いた抗体吸着剤 - Google Patents
酸安定性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法および当該タンパク質を用いた抗体吸着剤 Download PDFInfo
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Description
(I)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、以下の(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有する、Fc結合性タンパク質;
(1)配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換
(2)配列番号2の45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換
(3)配列番号2の69番目のグルタミンのロイシンへの置換
(4)配列番号2の83番目のプロリンのロイシンへの置換
(5)配列番号2の123番目のスレオニンのプロリンへの置換
(6)配列番号2の42番目のプロリンのグルタミンへの置換
(7)配列番号2の63番目のプロリンのロイシンへの置換
(8)配列番号2の75番目のアスパラギンのセリンへの置換
(9)配列番号2の163番目のロイシンのヒスチジンへの置換
(10)配列番号2の179番目のアスパラギン酸のバリンへの置換
(11)配列番号2の198番目のイソロイシンのバリンへの置換
(12)配列番号2の62番目のセリンの欠失
(II)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有し、さらに前記(1)から(12)に示すアミノ酸置換または欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質;
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有し、かつ抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質。
(IV)配列番号2に記載のアミノ酸配列の29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基において前記(1)から(12)に示すいずれか1以上のアミノ酸置換または欠失を有するアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記少なくとも1つのアミノ酸置換または欠失が残存したアミノ酸配列を含み、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質。
(1)配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換
[3]さらに以下に示す6箇所のアミノ酸置換を少なくとも有する、[1]または[2]に記載のFc結合性タンパク質。
配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換
配列番号2の80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換
配列番号2の84番目のセリンのスレオニンへの置換
配列番号2の90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換
配列番号2の91番目のアスパラギンのセリンへの置換
配列番号2の125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換
[4]以下の(iv)~(vi)から選択される、[1]または[2]に記載のFc結合性タンパク質:
(iv)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(v)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(vi)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
(vii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(viii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(ix)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
(x)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(xi)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(xii)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
(i)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失に、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換をさらに有したFc結合性タンパク質
(ii)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失に加え、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有したFc結合性タンパク質
(iii)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換に加え、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有したFc結合性タンパク質
(iv)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失を有したポリペプチドのアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、かつ前述した定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失が残存したFc結合性タンパク質
(v)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換を有したポリペプチドのアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、かつ前述した定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換が残存したFc結合性タンパク質
前記(i)、(iii)および(v)に記載のIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換は、熱安定性および遺伝子組換体による生産性を向上させるアミノ酸置換である(WO2018/056374号)。したがって、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を少なくとも1つ以上有した本発明のFc結合性タンパク質に、前記6箇所のアミノ酸置換(Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Arg)をさらに有することで、天然型FcγRIIaよりも酸に対する安定性が向上し、かつ熱安定性および遺伝子組換体による生産性も向上したFc結合性タンパク質が得られる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Leu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換、ならびにSer62の欠失を有する、ポリペプチド。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換、ならびにArg61からSer65の欠失を有する、ポリペプチド。
(1)本発明のFc結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(2)Fc結合性タンパク質の全体または部分配列を含むポリヌクレオチドを直接人工的に、またはFc結合性タンパク質のcDNA等からPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した当該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、が例示できる。
また前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。当該プロモータの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータ等があげられる。
せた後、適切な溶出液をカラムに添加することで抗体を溶出すればよい。なお本発明の吸着剤で精製可能な抗体は、Fc結合性タンパク質と親和性を有する抗体のFc領域を少なくとも含んだ抗体であればよい。一例として、抗体医薬に用いる抗体として一般的に用いられているキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体やそれらのアミノ酸置換体があげられる。また二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)、抗体のFc領域と他のタンパク質との融合抗体、抗体のFc領域と薬物との複合体(ADC)などの人工的に構造改変した抗体であっても、本発明の吸着剤で精製できる。また抗体を含む緩衝液をカラムに添加する前に、適切な緩衝液を用いてカラムを平衡化すると、抗体をより高純度に精製できるため好ましい。緩衝液としてはリン酸緩衝液等、無機塩を成分とした緩衝液を例示でき、緩衝液のpHは、pH3.0から10.0、好ましくはpH5.0から8.0である。
置におけるアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換または欠失させたタンパク質である。本発明のFc結合性タンパク質は天然型ヒトFcγRIIaと比較し、酸に対する安定性が向上している。そのため、本発明のFc結合性タンパク質は抗体(イムノグロブリン)を分離するための吸着剤のリガンドとして有用である。
配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質を発現する発現ベクターpET-Am6のうち、前記Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号4)に対し、エラープローンPCRによるランダム変異導入を施した。なお配列番号3に記載の配列からなるFc結合性タンパク質は、配列番号2に記載の配列からなる、天然型ヒトFcγRIIaの細胞外領域を含むFc結合性タンパク質に以下に示す6箇所のアミノ酸置換を導入したものである。
配列番号2の68番目(配列番号1では73番目)のイソロイシンのバリンへの置換
配列番号2の80番目(配列番号1では85番目)のヒスチジンのグルタミンへの置換
配列番号2の84番目(配列番号1では89番目)のセリンのスレオニンへの置換
配列番号2の90番目(配列番号1では95番目)のアスパラギンのスレオニンへの置換
配列番号2の91番目(配列番号1では96番目)のアスパラギンのセリンへの置換
配列番号2の125番目(配列番号1では130番目)のヒスチジンのアルギニンへの置換
(1)前述したpET-Am6を鋳型DNAとして用い、エラープローンPCRを行なった。エラープローンPCRは、配列番号8および9に記載のプライマーを用いて、表1に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を35サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
(1)実施例1で作製したランダム変異体ライブラリー(形質転換体)を、50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、30℃で一晩振とう培養した。
(4-1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellで固定化し(4℃で18時間)、固定化終了後、2%(w/v)のSKIM MILK(BD社製)および150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)によりブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.05%[w/v]のTween 20、150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で洗浄後、抗体結合活性を評価するFc結合性タンパク質を含む溶液を添加し、Fc結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを反応させた(30℃で1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti-6His抗体(Bethyl Laboratories社製)を100μL/wellで添加した。
(4-4)30℃で1時間反応させ、前記洗浄緩衝液で洗浄した後、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。1Mのリン酸を50μL/wellで添加することで発色を止め、マイクロプレートリーダー(テカン社製)にて450nmの吸光度を測定した。
ミノ酸置換を有する、ポリペプチドである。
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換を、FcγRIIa-m7にさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。アミノ酸置換の導入(集積)は主にPCRを用いて行ない、以下の(a)から(d)に示す4種類のポリペプチドを作製した。
(a)FcγRIIa-m7に対し、さらにIle45Thrのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Aと命名)
(b)FcγRIIa-m7に対し、さらにGln69Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Bと命名)
(c)FcγRIIa-m7に対し、さらにPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Cと命名)
(d)FcγRIIa-m7に対し、さらにThr123Proのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Dと命名)
以下、各Fc結合性タンパク質の作製方法を詳細に説明する。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からIle45Thrを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Aを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45Thrを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Aを作製した。
(a-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを行なった。PCRは表2に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分間熱処理し、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で5分間熱処理することで行なった。増幅したPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、そのゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン製)を用いて精製した。精製したPCR産物をm8A-Fと命名した。
(a-3)(a-1)および(a-2)で得られた2種類のPCR産物(m8A-F、m8A-S)を混合し、表3に示す組成の反応液を調製した。当該反応液を98℃で5分間熱処理後、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なうPCRを行ない、m8A-Fとm8A-Rを連結したPCR産物m8A-FLを得た。
(a-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Aをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-m8Aを得た。
(a-7)pET-m8のヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からGln69Leuを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Bを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Gln69Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Bを作製した。
(b-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8B-Fと命名した。
(b-2)(b-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8B-Sと命名した。
(b-3)(b-1)で得られたm8B-Fおよび(b-2)で得られたm8B-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8B-Fとm8B-Sを連結したPCR産物m8B-FLを得た。
(b-4)(b-3)で得られたPCR産物m8B-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Bをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(b-5)(b-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Bを得た。
(b-7)pET-FcγRIIa-m8Bのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Cを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Pro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Cを作製した。
(c-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8C-Fと命名した。
(c-2)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8C-Sと命名した。
(c-3)(c-1)で得られたm8C-Fおよび(c-2)で得られたm8C-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8C-Fとm8C-Sを連結したPCR産物m8C-FLを得た。
(c-4)(c-3)で得られたPCR産物m8C-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Cをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(c-5)(c-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Cをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Cを得た。
(c-7)pET-FcγRIIa-m8Cのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からThr123Proを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Dを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Thr123Proを生じさせる変異導入を行なうでFcγRIIa-m8Dを作製した。
(d-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号33に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8D-Fと命名した。
(d-2)(d-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号32および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8D-Sと命名した。
(d-3)(d-1)で得られたm8C-Fおよび(d-2)で得られたm8C-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8D-Fとm8D-Sを連結したPCR産物m8D-FLを得た。
(d-4)(d-3)で得られたPCR産物m8D-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(d-5)(d-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(d-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Dを得た。
(d-7)pET-FcγRIIa-m8Dのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
(1)FcγRIIa-m6、ならびに実施例3で作製したFcγRIIa-m8A、FcγRIIa-m8B、FcγRIIa-m8CおよびFcγRIIa-m8Dを発現する形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む3mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換を、FcγRIIa-m8Dにさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。アミノ酸置換の導入(集積)は、主にPCRを用いて行ない、以下の(a)から(c)に示す3種類のポリペプチドを作製した。
(a)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにIle45ThrおよびGln69Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Aと命名)
(b)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにIle45ThrおよびPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Bと命名)
(c)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにGln69LeuおよびPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Cと命名)
以下、各Fc結合性タンパク質の作製方法を詳細に説明する。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45ThrおよびGln69Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Aを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45ThrおよびGln69Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Aを作製した。
(a-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Fと命名した。
(a-2)(a-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号26および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Sと命名した。
(a-3)(a-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Tと命名した。
(a-4)(a-1)で得られたm10A-F、(a-2)で得られたm10A-Sおよび(a-3)で得られたm10A-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10A-F、m10A-Sおよびm10A-Tを連結したPCR産物m10A-FLを得た。
(a-5)(a-4)で得られたPCR産物m10A-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(a-6)(a-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(a-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Aを得た。
(a-8)pET-FcγRIIa-m10Aのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45ThrおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Bを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45ThrおよびPro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Bを作製した。
(b-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Fと命名した。
(b-2)(b-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号26および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Sと命名した。
(b-3)(b-2)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Tと命名した。
(b-4)(b-1)で得られたm10B-F、(b-2)で得られたm10B-Sおよび(b-3)で得られたm10B-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10B-F、m10B-Sおよびm10B-Tを連結したPCR産物m10B-FLを得た。
(b-5)(b-4)で得られたPCR産物m10B-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Bをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(b-6)(b-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m
10Bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Bを得た。
(b-8)pET-FcγRIIa-m10Bのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln69LeuおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Cを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Gln69LeuおよびPro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Cを作製した。
(c-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Fと命名した。
(c-2)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Sと命名した。
(c-3)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Tと命名した。
(c-4)(c-1)で得られたm10C-F、(c-2)で得られたm10C-Sおよび(c-3)で得られたm10C-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10C-Fとm10C-S、およびm10C-Tを連結したPCR産物m10C-FLを得た。
(c-5)(c-4)で得られたPCR産物m10C-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Cをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(c-6)(c-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m10Cをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Cを得た。
(c-8)pET-FcγRIIa-m10Cのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45Thr、Gln69LeuおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dにさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。具体的には、実施例5(a)で得られたFcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドに対して、Pro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことで作製した(FcγRIIa-m11と命名)。以下、FcγRIIa-m11の作製方法を詳細に説明する。
(1)FcγRIIa-m6、実施例5で作製したFcγRIIa-m10A、FcγRIIa-m10BおよびFcγRIIa-m10C、ならびに実施例6で作製したFcγIIa-m11を発現する形質転換体を、実施例4(1)から(4)と同様な方法で培養し抽出することで、これらタンパク質を調製した。
さらなる酸安定性向上のため、公知データベースに登録されているFcγRIIaの結晶構造データ(PDB ID:1FCG)の知見に基づき、FcγRIIaにおけるループ領域に位置しているアミノ酸残基を欠失させた。具体的には、下記(a)から(j)に示す、実施例6で得られたFcγRIIa-m11のうち、ループ領域(配列番号25の58番目のグルタミンから67番目のセリンまでの領域)の一部または全てのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質を下記の方法で作製した。
(a)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンを欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del1と命名)
(b)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンおよび64番目のグルタミン酸を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del2と命名)
(c)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンから64番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del3と命名)
(d)FcγRIIa-m11のうち、61番目のアルギニンから64番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del4と命名)
(e)FcγRIIa-m11のうち、61番目のアルギニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del5と命名)
(f)FcγRIIa-m11のうち、60番目のアラニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del6と命名)
(g)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del7と命名)
(h)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから66番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del8と命名)
(i)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから67番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del9と命名)
(j)FcγRIIa-m11のうち、58番目のグルタミンから67番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del10と命名)
(1)前記10種類のFc結合性タンパク質欠失体を含んだポリヌクレオチド((a)FcγRIIa-m11-Del1:配列番号34、(b)FcγRIIa-m11-Del2:配列番号36、(c)FcγRIIa-m11-Del3:配列番号38、(d)FcγRIIa-m11-Del4:配列番号40、(e)FcγRIIa-m11-Del5:配列番号42、(f)FcγRIIa-m11-Del6:配列番号44、(g)FcγRIIa-m11-Del7:配列番号46、(h)FcγRIIa-m11-Del8:配列番号48、(i)FcγRIIa-m11-Del9:配列番号50、(j)FcγRIIa-m11-Del10:配列番号52)を人工遺伝子合成により作製した(ファスマック社に依頼)。
(1)実施例6で作製したFcγRIIa-m11を発現する形質転換体を、実施例4(1)から(4)と同様な方法で培養し抽出することでタンパク質を調製した。
Claims (10)
- 以下の(iv)~(vi)から選択される、Fc結合性タンパク質:
(iv)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(v)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換以外に1から10個の位置での1から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号5においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換および190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号7においては配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号13においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号17においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および123番目のスレオニンのプロリンへの置換であり、配列番号19においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号23においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換であり、配列番号25においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である);
(vi)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号5においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換および190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号7においては配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号13においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号17においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および123番目のスレオニンのプロリンへの置換であり、配列番号19においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号23においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換であり、配列番号25においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である)。 - 以下の(vii)~(ix)から選択される、請求項1に記載のFc結合性タンパク質:
(vii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(viii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1から10個の位置での1から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失」とは配列番号35においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換、83番目のプロリンのロイシンへの置換および62番目のセリンの欠失である);
(ix)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。 - 以下の(x)~(xii)から選択される、請求項1または2に記載のFc結合性タンパク質:
(x)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(xi)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1から10個の位置での1から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失」とは配列番号43においては配列番号2の配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換、83番目のプロリンのロイシンへの置換および61番目のアルギニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基の欠失である);
(xii)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号43においては配列番号2の配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である)。 - 請求項1から3に記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
- 請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項5に記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる、Fc結合性タンパク質を生産可能な形質転換体。
- 宿主が大腸菌である、請求項6に記載の形質転換体。
- 請求項6または7に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産する工程と、得られた培養物から生産された前記Fc結合性タンパク質を回収する工程とを含む、Fc結合性タンパク質の製造方法。
- 請求項1から3に記載のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる、抗体吸着剤。
- 請求項9に記載の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加して当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、抗体の分離方法。
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