JP2023064059A - 免疫グロブリン結合性タンパク質 - Google Patents

免疫グロブリン結合性タンパク質 Download PDF

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崇俊 長谷見
Takatoshi Hasemi
瑛大 岩瀬
Akihiro Iwase
諭 遠藤
Satoshi Endo
亨 田中
Toru Tanaka
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Abstract

【課題】 化学的安定性、特にアルカリに対する安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質、および当該タンパク質を固定化した吸着剤を提供すること。【解決手段】 Finegoldia菌属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において当該ドメインにおいて特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換し、アルカリに対する安定性を向上させることで、前記課題を解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は免疫グロブリンに特異的に結合するタンパク質に関する。より詳しくは、本発
明はアルカリに対する安定性に優れた免疫グロブリン結合性タンパク質に関する。
抗体医薬は生体内の免疫機能を担う分子である抗体(免疫グロブリン)を利用した医薬
である。抗体医薬は抗体が有する可変領域の多様性により標的分子に対し高い特異性と親
和性をもって結合する。そのため抗体医薬は副作用が少なく、また、近年では適応疾患が
広がってきていることもあり市場が急速に拡大している。
抗体医薬の製造は培養工程と精製工程を含み、培養工程では生産性を向上させるために
抗体産生細胞の改質や培養条件の最適化が図られている。また、精製工程では粗精製とし
てアフィニティークロマトグラフィーが採用され、その後の中間精製、最終精製、および
ウイルス除去を経て製剤化される。
精製工程では抗体分子を特異的に認識するアフィニティー担体が用いられる。前記担体
で用いられるリガンドタンパク質として、抗体(免疫グロブリン)に結合する性質を有し
た、ブドウ球菌(Staphylococcus)属細菌由来Protein Aが多く
用いられている。しかしながら、Protein Aは抗体のFc領域に特異的に結合す
るタンパク質であるため、シングルチェーンFv(scFv)、Fab、F(ab’)
、IgAおよび二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体といったFc領域を有しない抗体
の精製には適用できなかった。一方、Finegoldia属細菌由来Protein
Lは、免疫グロブリンのκ軽鎖に結合するタンパク質であるため、Protein Lを
リガンドタンパク質とすることで、前述したProtein Aでは精製できない、Fc
領域を有しない抗体の精製も可能となる。
抗体医薬を製造する際、その生産コストを低く保つため、アフィニティー担体は複数回
使用され、使用後は当該担体に残存した不純物を除去する工程を行なう。前記不純物を除
去する工程では、通常、水酸化ナトリウムを用いた定置洗浄を行ない、アフィニティー担
体を再生させる。従って前記リガンドタンパク質は、前記再生工程を行なっても、抗体へ
の結合性が維持されるだけの化学的安定性(特にアルカリ安定性)を有する必要がある。
アルカリ安定性が向上したProtein Lの例として、
特許文献1に記載の特定位置のアスパラギンをグルタミンに置換したProtein L

特許文献2に記載のプロリンを含むN末端側アミノ酸残基の一部欠失や、アルカリにより
加水分解を受けやすい、アスパラギンとグリシンの連続部位に対する他のアミノ酸への置
換を含むProtein L、
特許文献3に記載のリジンをリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するア
ミノ酸に置換したProtein L、
特許文献4に記載のアスパラギンとグリシンの連続部位を含まないドメインを利用したP
rotein L、
があげられる。しかしながら、これら文献で開示したProtein Lをリガンドタン
パク質として利用したとき、アルカリ洗浄を20mMから50mMの水酸化ナトリウム水
溶液で行なう必要があり(非特許文献1)、プロセススケールでの精製に用いるにはアル
カリ安定性が不十分であった。
WO2016/096643号 WO2017/191748号 WO2017/069158号 特開2016-079149号公報
Rodrigo G.et.al.,Antibodies,2015,4,259-277
本発明の課題は、化学的安定性、特にアルカリに対する安定性が向上した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質、および当該タンパク質を固定化した吸着剤を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、Finegoldia属細
菌由来Protein L(FpL)の免疫グロブリン結合ドメインにおける安定性向上
に関与したアミノ酸残基を特定し、当該アミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換す
ることで、アルカリに対して優れた安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至
った。
すなわち、本発明は以下の態様を包括する。
[1]
Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインの
アミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも以下の(1)から(
53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
するタンパク質:
(1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
(2)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバリ
ンに置換
(3)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(4)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリシ
ンに置換
(5)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(6)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(7)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
(8)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(9)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
に置換
(10)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(11)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
アルギニンに置換
(12)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(13)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(14)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(15)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(16)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはグ
リシンに置換
(17)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニンまた
はイソロイシンに置換
(18)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、リジン
およびアスパラギン酸のいずれかに置換
(19)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(20)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(21)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
置換
(22)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまた
はメチオニンに置換
(23)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジン、ア
ルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
(24)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
(25)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(26)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプロリ
ンに置換
(27)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(28)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはアル
ギニンに置換
(29)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リジン
およびイソロイシンのいずれかに置換
(30)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに
置換
(31)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(32)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンに
置換、
(33)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンまたはア
ルギニンに置換
(34)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギンに
置換
(35)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(36)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸に
置換
(37)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはスレオ
ニンに置換
(38)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(39)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(40)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
はバリンに置換
(41)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置

(42)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置換
(43)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸
、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
(44)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(45)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(46)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(47)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまたは
チロシンに置換
(48)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジンまた
はアルギニンに置換
(49)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
チロシンに置換
(50)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(51)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(52)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(53)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはバリ
ンに置換
[2]
以下の(a)から(c)のいずれかに記載のタンパク質である、[1]に記載のタンパ
ク質:
(a)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
いて、少なくとも以下の(1)から(53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有
し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質:
(1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
(2)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバリ
ンに置換
(3)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(4)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリシ
ンに置換
(5)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(6)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(7)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
(8)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(9)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
に置換
(10)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(11)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
アルギニンに置換
(12)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(13)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(14)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(15)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(16)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはグ
リシンに置換
(17)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニンまた
はイソロイシンに置換
(18)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、リジン
およびアスパラギン酸のいずれかに置換
(19)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(20)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
(21)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
置換
(22)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまた
はメチオニンに置換
(23)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジン、ア
ルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
(24)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
(25)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(26)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプロリ
ンに置換
(27)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(28)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはアル
ギニンに置換
(29)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リジン
およびイソロイシンのいずれかに置換
(30)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに
置換
(31)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(32)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンに
置換、
(33)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンまたはア
ルギニンに置換
(34)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギンに
置換
(35)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(36)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸に
置換
(37)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはスレオ
ニンに置換
(38)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
(39)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
(40)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
はバリンに置換
(41)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置

(42)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置換
(43)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸
、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
(44)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(45)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
(46)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
(47)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまたは
チロシンに置換
(48)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジンまた
はアルギニンに置換
(49)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
チロシンに置換
(50)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
(51)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
(52)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
(53)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはバリ
ンに置換;
(b)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
いて、少なくとも前記(1)から(53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し
、さらに前記(1)から(53)以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミ
ノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性
を有するタンパク質;
(c)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相
同性を有するアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも前記(
1)から(53)より選択される1以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合
活性を有するタンパク質。
[3]
以下の(d)から(f)のいずれかに記載のタンパク質である、[1]または[2]に
記載のタンパク質:
(d)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
いて、少なくとも以下の(1)のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
するタンパク質
(1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換;
(e)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
いて、少なくとも前記(1)のアミノ酸置換を有し、さらに前記アミノ酸置換以外の1も
しくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/また
は付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質;
(f)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相
同性を有するアミノ酸配列を含み、ただし少なくとも前記(1)のアミノ酸置換を有し、
かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質。
[4]
さらに、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジン残基
がリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸残基に置換した、[
1]から[3]のいずれかに記載のタンパク質:
(I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
(II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
(III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
(IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
(V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
(VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
(VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基。
[5]
さらに、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン
酸への置換、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、
配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配列
番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号
1の23番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、および
配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の
タンパク質。
[6]
少なくとも以下の(W)、(X)、(Y)、(Z)、(AA)、(AB)および(AC
)のいずれかのアミノ酸置換を有する、[1]から[5]のいずれかに記載のタンパク質

(W)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番
号1の13番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基の
アルギニンへの置換、配列番号1の22番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミ
ンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの
置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸へ
の置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基の
チロシンへの置換、ならびに配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残
基のグリシンへの置換;
(X)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番
号1の13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミ
ノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基
のイソロイシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基
のアスパラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当
するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当する
アミノ酸残基のグリシンへの置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当する
アミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
(Y)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の
13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残
基のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソ
ロイシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアス
パラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するア
ミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ
酸残基のアスパラギン酸への置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当する
アミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
(Z)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の
13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残
基のアルギニンへの置換、配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基
のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロ
イシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパ
ラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミ
ノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸
残基のアスパラギン酸への置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当するア
ミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
(AA)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への
置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラ
ニンへの置換;
(AB)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配
列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換なら
びに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換;
(AC)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
換、配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置
換ならびに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換。
[7]
配列番号179、186、199、224、240、271および275のいずれかに
記載のアミノ酸配列を含む、[1]から[6]のいずれかに記載のタンパク質。
[8]
[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[9]
[8]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[10]
以下の(A)または(B)を含む、遺伝子組換え宿主:
(A)[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(B)[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを
含む発現ベクター。
[11]
宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、[10]に
記載の遺伝子組換え宿主。
[12]
[1]から[7]のいずれかに記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む
遺伝子組換え宿主または該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む遺伝子組換え宿主
を培養し該タンパク質を発現させる工程と、発現した前記タンパク質を回収する工程とを
含む、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質の製造方法。
[13]
宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、[12]に
記載の製造方法。
[14]
不溶性担体と、当該不溶性担体に固定化した[1]から[7]のいずれかに記載のタン
パク質とを含む、免疫グロブリン吸着剤。
[15]
[13]に記載の吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加し当該免
疫グロブリンを前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを
溶出させる工程とを含む、前記溶液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法。
本発明のタンパク質は、Finegoldia属由来のプロテインLの免疫グロブリン
結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、アルカリ安定性
が向上したアミノ酸置換を少なくとも一つ有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するこ
とを特徴としている。不溶性担体と当該不溶性担体に固定化した本発明のタンパク質とを
含む本発明の免疫グロブリン吸着剤は、従来の免疫グロブリン吸着剤と比較し、高いアル
カリ安定性により、繰返し利用回数が増加するため、同免疫グロブリン吸着剤を利用すれ
ば従来と比べ低コストで免疫グロブリンを生産できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のタンパク質は、特定の免疫グロブリン結合性タンパク質である。本明細書にお
いて「免疫グロブリン結合性タンパク質」とは、免疫グロブリンに対する結合性を有する
タンパク質を意味する。すなわち、本発明のタンパク質は、特定の免疫グロブリンに対す
る結合性を有する。本発明のタンパク質は、具体的には、免疫グロブリンのκ軽鎖に対す
る結合性を有するものであってもよい。本明細書では、免疫グロブリンに対する結合性を
、「免疫グロブリン結合活性」または「抗体結合活性」ともいう。免疫グロブリン結合活
性は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent
Assay)法で測定できる。ELISA法は、例えば、実施例に記載の条件で実施で
きる。
本発明のタンパク質は、Finegoldia属細菌由来Protein L(「Fp
L」ともいう)の免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ
酸配列において、特定位置におけるアミノ酸置換を有したタンパク質である。以降、本明
細書において、FpLの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列であって、特定位置
におけるアミノ酸置換を有さないものを「非改変型アミノ酸配列」ともいい、FpLの免
疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列であって、特定位置におけるアミノ酸置換を有
するものを「改変型アミノ酸配列」ともいう。すなわち、改変型アミノ酸配列は、特定位
置におけるアミノ酸置換を有すること以外は非改変型アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列
であってよい。また、本発明のタンパク質は、例えば、特定位置におけるアミノ酸置換を
有すること以外は非改変型アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であって
よい。また、本発明のタンパク質は、例えば、改変型アミノ酸配列を含むタンパク質であ
ってよい。非改変型アミノ酸配列は、天然に見出されるアミノ酸配列であってもよく、そ
うでなくてもよい。非改変型アミノ酸配列は、例えば、所望の性質を有するように改変さ
れていてもよい。非改変型アミノ酸配列は、例えば、特定位置におけるアミノ酸置換以外
のアミノ酸置換を有していてもよい。
FpLの由来であるFinegoldia属細菌としては、Finegoldia m
agnaが挙げられる。Finegoldia magna由来Protein Lの免
疫グロブリン結合ドメインとしては、
ドメインB1(配列番号209(GenBank No.AAA25612)の104番
目から173番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB2(配列番号209の176番目から245番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB3(配列番号209の248番目から317番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB4(配列番号209の320番目から389番目までのアミノ酸残基)、
ドメインB5(配列番号209の393番目から462番目までのアミノ酸残基)、
ドメインC1(配列番号210(GenBank No.AAA67503)の249番
目から317番目までのアミノ酸残基:配列番号112)、
ドメインC2(配列番号210の320番目から389番目までのアミノ酸残基:配列番
号113)、
ドメインC3(配列番号210の394番目から463番目までのアミノ酸残基:配列番
号1)、および
ドメインC4(配列番号210の468番目から537番目までのアミノ酸残基:配列番
号18)があげられる。
本明細書において非改変型アミノ酸配列とは、
(i)前述したFpLの免疫グロブリン結合ドメインの全アミノ酸配列であってもよく、
(ii)免疫グロブリンへの結合活性を有している限り、前記ドメインの部分アミノ酸配
列であってもよい。
なお、前記(ii)に関して、FpLの免疫グロブリン結合ドメインは四つのβシート
と一つのαヘリックス、それらをつなぐループ部分とN末端ループ領域で構成されている
が、N末端ループ領域など、免疫グロブリンへの結合とは無関係の領域のアミノ酸残基は
欠損してもよい。具体例として、FpLのドメインC3(配列番号1)のN末端ループ領
域に相当する、1番目のグルタミン酸から9番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠
損させても免疫グロブリン結合能を有していることが知られている(Housden N
.G.et.al.Biochemical Society Transaction
,2003,31,716-718)。すなわち、前記(ii)における部分アミノ酸配
列は、少なくとも免疫グロブリンへの結合部位のアミノ酸配列を含んでいればよいといえ
る。すなわち、前記(ii)における部分アミノ酸配列としては、免疫グロブリンへの結
合部位のアミノ酸配列を含む部分配列があげられる。
本明細書における改変型アミノ酸配列として、具体的には、配列番号1に記載のアミノ
酸配列など、前述した免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列において特定位置にお
けるアミノ酸置換を有するアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタンパク質と
して、具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列など、前述した免疫グロブリン結合
ドメインのアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、特定位置におけるア
ミノ酸置換を有するタンパク質が挙げられる。言い換えると、本発明のタンパク質は、例
えば、特定位置におけるアミノ酸置換を有すること以外は配列番号1に記載のアミノ酸配
列など、前述した免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含
むタンパク質であってよい。
本明細書において、タンパク質がアミノ酸配列を含むことを、「タンパク質がアミノ酸
配列からなるアミノ酸残基を含む」ともいい、タンパク質またはアミノ酸配列がアミノ酸
置換を有することを、「タンパク質またはアミノ酸配列においてアミノ酸置換が生じる」
ともいう。またタンパク質またはアミノ酸配列を構成するアミノ酸を、「アミノ酸残基」
ともいう。
本発明のタンパク質は、アルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質で
あってよい。本発明のタンパク質は、具体的には、改変型アミノ酸配列を有しない(例え
ば非改変型アミノ酸配列からなる)免疫グロブリン結合性タンパク質と比較してアルカリ
安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質であってよい。本発明のタンパク質は
、具体的には、特定位置におけるアミノ酸置換を有しない免疫グロブリン結合性タンパク
質と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質であってよい。
言い換えると、本発明のタンパク質は、特定位置におけるアミノ酸置換を有することによ
りアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質であってよい。また、言い
換えると、特定位置におけるアミノ酸置換は、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカ
リ安定性を向上させるものであってよい。
「アルカリ安定性」とは、アルカリ条件における失活に対する耐性を意味してよい。ア
ルカリ安定性の向上は、例えば、アルカリ処理後の残存活性の向上として測定できる。こ
こでいう「活性」とは、免疫グロブリン結合活性を意味する。アルカリ処理は、例えば、
実施例に記載の条件で実施できる。
前記特定位置におけるアミノ酸置換は、具体的には、Asn50Tyr(この表記は、
配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換されてい
ることを表す;以下、他のアミノ酸置換についても同様に解釈するものとする)、Glu
1Gly、Glu1Val、Pro3Ser、Glu4Lys、Glu4Gly、Glu
5Val、Lys7Ala、Glu8Gly、Glu9Val、Ile17Phe、Gl
y21Arg、Glu27Gly、Glu27Arg、Lys29Pro、Thr31L
eu、Thr36Ala、Ala41Thr、Asn44Ser、Asn44Gly、G
lu49Thr、Glu49Ile、Asn50Ser、Asn50Lys、Asn50
Asp、Gly51Val、Glu52Val、Glu52Gly、Glu52Asp、
Tyr53Phe、Thr54Ile、Thr54Met、Asn62His、Asn6
2Arg、Asn62Leu、Asn62Met、Asn62Trp、Asn65Tyr
、Ala69Thr、Thr2Ser、Thr2Pro、Pro3Arg、Glu5Ly
s、Glu5Arg、Glu27Val、Glu27Lys、Glu27Ile、Phe
32Leu、Lys38Ala、Asn44Ile、Ala47Thr、Ala47Ar
g、Glu52Asn、Thr2Ala、Glu5Asp、Pro6Leu、Pro6T
hr、Lys7Pro、Val14Ala、Ile23Arg、Ile23Val、Ly
s29Phe、Thr31Met、Glu33Asp、Glu33Gly、Glu33V
al、Ala35Thr、Thr36Ser、Ala37Thr、Ala41Ile、A
la41Tyr、Asn44His、Asn44Arg、Glu52Leu、Glu52
Tyr、Gly60Arg、Ile64Leu、Ile66Val、Ala69Leu、
Ala69Valから選ばれる少なくとも1以上のアミノ酸置換である。
言い換えると前記特定位置におけるアミノ酸置換は、少なくとも、
(1)Asn50Tyr
(2)Glu1GlyまたはGlu1Val
(3)Pro3Ser
(4)Glu4LysまたはGlu4Gly
(5)Glu5Val
(6)Lys7Ala
(7)Glu8Gly
(8)Glu9Val
(9)Ile17Phe
(10)Gly21Arg
(11)Glu27GlyまたはGlu27Arg
(12)Lys29Pro
(13)Thr31Leu
(14)Thr36Ala
(15)Ala41Thr
(16)Asn44SerまたはAsn44Gly
(17)Glu49ThrまたはGlu49Ile
(18)Asn50Ser、Asn50LysおよびAsn50Aspのいずれか
(19)Gly51Val
(20)Glu52Val、Glu52GlyおよびGlu52Aspのいずれか
(21)Tyr53Phe
(22)Thr54IleまたはThr54Met
(23)Asn62His、Asn62Arg、Asn62Leu、Asn62Metお
よびAsn62Trpのいずれか
(24)Asn65Tyr
(25)Ala69Thr
(26)Thr2SerまたはThr2Pro
(27)Pro3Arg
(28)Glu5LysまたはGlu5Arg
(29)Glu27Val、Glu27LysおよびGlu27Ileのいずれか
(30)Phe32Leu
(31)Lys38Ala
(32)Asn44Ile
(33)Ala47ThrおよびAla47Arg
(34)Glu52Asn
(35)Thr2Ala
(36)Glu5Asp
(37)Pro6LeuまたはPro6Thr
(38)Lys7Pro
(39)Val14Ala
(40)Ile23ArgまたはIle23Val
(41)Lys29Phe
(42)Thr31Met
(43)Glu33Asp、Glu33GlyおよびGlu33Valのいずれか
(44)Ala35Thr
(45)Thr36Ser
(46)Ala37Thr
(47)Ala41IleまたはAla41Tyr
(48)Asn44HisまたはAsn44Arg
(49)Glu52LeuまたはGlu52Tyr
(50)Gly60Arg
(51)Ile64Leu
(52)Ile66Val
(53)Ala69LeuまたはAla69Val
より選択される1つ以上のアミノ酸置換である。本発明のタンパク質は、例えば、これら
のアミノ酸置換から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたは
9つのアミノ酸置換を有してよいし、10個以上のアミノ酸置換を有してもよい。中でも
(1)Asn50Tyrは、アルカリに対する安定性が特に向上したアミノ酸置換である
。そのため、Asn50Tyrのアミノ酸置換を少なくとも有する免疫グロブリン結合性
タンパク質は、本発明のタンパク質の好ましい例である。すなわち、本発明のタンパク質
は、例えば、少なくとも(1)のアミノ酸置換(Asn50Tyr)を有していてよい。
本発明のタンパク質は、具体的には、例えば、(1)~(53)のアミノ酸置換の内、(
1)のアミノ酸置換(Asn50Tyr)のみを有していていてもよく、(1)のアミノ
酸置換(Asn50Tyr)と(2)~(53)のアミノ酸置換から選択される1つ以上
のアミノ酸置換との組み合わせを有していてもよい。
なお、(1)~(53)のアミノ酸置換の内、同位置のアミノ酸置換は同時には選択さ
れない。例えば、(3)のアミノ酸置換と(27)のアミノ酸置換は同時には選択されな
い。
一態様において、前記特定位置におけるアミノ酸置換は、前記(1)~(53)より選
択される1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてよい。
本発明のタンパク質が2つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する場合、それらアミノ
酸置換の組み合わせは特に制限されない。
アミノ酸置換の組み合わせの一態様として、
Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸置換;
Ile17PheおよびAsn50Serのアミノ酸置換;
Glu8GlyおよびGlu52Valのアミノ酸置換;
Glu27Gly、Ala41Thr、Asn50LysおよびAsn65Tyrのアミ
ノ酸置換;
Pro3Ser、Asn50AspおよびThr54Ileのアミノ酸置換;
Asn44Ser、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸置換;
Asn44SerおよびAsn50Tyrのアミノ酸置換;
Asn50TyrおよびGlu52Valのアミノ酸置換;
Asn44Gly、Asn50TyrおよびGlu52Valのアミノ酸置換;
Asn44Gly、Asn50SerおよびGlu52Valのアミノ酸置換;
Lys7AlaおよびGly21Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Gly21Arg、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ
酸置換;
Glu1Gly、Lys7Ala、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸
置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸
置換;
Glu4Lys、Lys7Ala、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸
置換;
Lys7Ala、Glu27Arg、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ
酸置換;
Lys7Ala、Thr36Ala、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ
酸置換;
Lys7Ala、Glu9Val、Asn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸
置換;
Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr53Pheのアミノ
酸置換;
Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびThr54Metのアミノ
酸置換;
Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAla69Thrのアミノ
酸置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr5
3Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr5
3Pheのアミノ酸置換;
Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Gly21Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr
53Pheのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ
酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52AspおよびTyr5
3Pheのアミノ酸置換;
Asn50Tyr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびTyr53Pheのアミノ
酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys38Ala、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Phe32Leu、Ala47Thr、Asn50T
yr、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Thr2Ser、Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52As
pおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu27Lys、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Thr2Pro、Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Glu9Val、
Asn50Tyr、Glu52AsnおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu27Ile、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn44Ile、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Lys、Lys7Ala、Asn44Ile、Asn50Ty
r、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52As
pおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Lys、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52As
pおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu27Val、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Arg、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52As
pおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu27Arg、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ala47Arg、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys29Phe、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Glu33Val、Asn50Ty
r、Glu52AspおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Arg、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ala41Ile、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ala41Tyr、Asn50Tyr、Glu52A
spおよびTyr53Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52LeuおよびTyr5
3Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52ValおよびTyr5
3Pheのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52Leu、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53PheおよびAla6
9Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Ph
eおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Ph
e、Ile66ValおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Thr31Met、Asn50Ty
r、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Leu、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Ph
eおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ala35Thr、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu33Gly、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Asp、Pro6Leu、Lys7Ala、Asn50Tyr
、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53PheおよびAla6
9Leuのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ala37Thr、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu33Asp、Asn50Tyr、Glu52G
ly、Tyr53PheおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Thr2Ala、Glu4Gly、Lys7Pro、Asn50Tyr、Tyr53Ph
eおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Ile23Val、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Thr、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Ph
eおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Thr36Ser、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Val14Ala、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Gly21Arg、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn44Arg、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn44His、Asn50Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Glu52Tyr、Tyr53P
heおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Gly60A
rgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ile64L
euおよびAla69Valのアミノ酸置換;
があげられる。
またアミノ酸置換の組み合わせの別態様として、少なくとも前記(1)から(53)よ
り選択される1以上のアミノ酸置換と、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択
される1つ以上のリジン(Lys)残基のリジン以外の塩基性アミノ酸(アルギニン(A
rg)もしくはヒスチジン(His))またはヒドロキシ基を有するアミノ酸(セリン(
Ser)、スレオニン(Thr)もしくはチロシン(Tyr))への置換との組み合わせ
があげられる。
(I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
(II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
(III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
(IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
(V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
(VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
(VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基
本発明のタンパク質は、前記リジン残基の置換を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ
または7つ有してよい。ただし、
前記(I)のアミノ酸置換を選択した場合は(6)Lys7Alaおよび(38)Lys
7Proのアミノ酸置換が前記(I)のリジン残基の置換で、
前記(IV)のアミノ酸置換を選択した場合は(12)Lys29Proおよび(41)
Lys29Pheのアミノ酸置換が前記(IV)のリジン残基の置換で、
前記(V)のアミノ酸置換を選択した場合は(31)Lys38Alaのアミノ酸置換が
前記(V)のリジン残基の置換で、
それぞれ上書きされる。
あるいは、前記(I)から(VII)のアミノ酸置換の内、前記(1)から(53)よ
り選択される1以上のアミノ酸置換と同位置のアミノ酸置換は選択されなくてもよい。す
なわち、例えば、前記(1)から(53)のアミノ酸置換から少なくとも(6)Lys7
Alaまたは(38)Lys7Proのアミノ酸置換を選択した場合は、前記(I)のア
ミノ酸置換は選択されなくてもよい。また、アミノ酸置換の組み合わせは、少なくとも前
記(1)から(53)より選択される1以上のアミノ酸置換が残存するように選択される
。すなわち、例えば、前記(1)から(53)のアミノ酸置換から(6)Lys7Ala
または(38)Lys7Proのアミノ酸置換を単独で選択した場合は、前記(I)のア
ミノ酸置換は選択できない。
なお、塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸に置換されたリジン残基以
外のリジン残基(すなわち、前記(I)~(VII)のリジン残基の内の選択されなかっ
たもの)については、未置換(リジン残基)のままでもよいし、塩基性アミノ酸およびヒ
ドロキシ基を有するアミノ酸以外のアミノ酸に置換されてもよい。後者の例としては、リ
ジン残基のグルタミンまたはイソロイシンへの置換や、前述した(6)Lys7Ala、
(12)Lys29Pro、(31)Lys38Ala、(38)Lys7Proおよび
(41)Lys29Pheのアミノ酸置換があげられる。
アミノ酸置換の組み合わせの別態様の具体例として、
Lys7Arg、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22Arg、Lys29
Arg、Lys38Arg、Lys48ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Arg、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Arg、Lys38
Arg、Lys48Arg、Gly51ValおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Arg、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Arg、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22Gln、Lys29
Ile、Lys38Arg、Lys48ArgおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22Gln、Lys29
Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu1Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Glu4Lys、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Thr、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Glu27Arg、Lys29
Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Thr36
Ala、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Glu9Val、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Glyおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Thr54Metお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Lys67Argお
よびAla69Thrのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Thr54Metお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu1Val、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ser、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22Arg、Lys29
Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、
Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ser、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ser、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Ala、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Phe32Leu、Lys38Arg、Ala47Thr、Lys48Arg、A
sn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ
酸置換;
Thr2Ser、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27L
ys、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Thr2Pro、Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Glu9Val、
Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys4
8Arg、Asn50Tyr、Glu52Asn、Tyr53PheおよびLys67A
rgのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27I
le、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Asn44Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Lys、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Asn44Ile、Lys48Arg、As
n50Tyr、Glu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸
置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Lys、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27V
al、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Arg、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27A
rg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Ala47Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29P
he、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Glu8Gly、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Glu33Val、Lys48Arg、Asn50Tyr、Gl
u52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala41Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala41Tyr、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Leu、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Leu、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Lys67Argおよ
びAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ly
s67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Ty
r53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Il
r66Val、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Pro3Arg、Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Thr31Met、Lys48Arg、Asn50Tyr、Ty
r53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Leu、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ly
s67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala35Thr、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu33Gly、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Glu5Asp、Pro6Leu、Lys7Ala、Lys13Arg
、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr
53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Lys67Argおよ
びAla69Leuのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Ala37Thr、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Glu33Asp、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、T
yr53Phe、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Thr2Ala、Glu4Gly、Lys7Pro、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ly
s67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Ile23V
al、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Thr、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ly
s67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Thr36Ser、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Val14Ala、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Gly21Arg、Lys22A
rg、Lys29Ile、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Asn44His、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Tyr、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Gly60Arg、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Ile64Leu、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
があげられる。
アミノ酸置換の組み合わせの別態様の具体例として、特に
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびLys67Ar
gのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53Pheお
よびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、T
yr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27A
rg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53PheおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Pheおよ
びLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Glu52Val、Tyr53Phe、L
ys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys48Arg、Asn50Tyr、Tyr53Phe、Lys67Argおよ
びAla69Valのアミノ酸置換;
があげられる。
なお、本発明のタンパク質は、少なくとも1つのその他のアミノ酸置換をさらに有して
もよい。他のアミノ酸置換としては、Glu49Asp、Pro6Ser、Asn44A
sp、Glu49Val、Asn62Tyr、Ile23Thr、Ala41Argがあ
げられる。他のアミノ酸置換は、例えば、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安
定性を向上させるものであってよい。例えば、Asn44Asp、Glu49Val、A
sn62Tyr、Ile23Thr、およびAla41Argのアミノ酸置換は、いずれ
も、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性を向上させるものであり得る。本
発明のタンパク質は、例えば、前記他のアミノ酸置換を1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、
または6つ有してよい。ただし、Glu49Aspのアミノ酸置換を選択した場合は(1
7)のアミノ酸置換(Glu49ThrまたはGlu49Ile)がGlu49Aspの
アミノ酸置換で、Pro6Serのアミノ酸置換を選択した場合は(37)のアミノ酸置
換(Pro6LeuおよびPro6Thrのいずれか)がPro6Serのアミノ酸置換
で、Asn44Aspのアミノ酸置換を選択した場合は(16)のアミノ酸置換(Asn
44SerまたはAsn44Gly)、(32)のアミノ酸置換(Asn44Ile)お
よび(48)のアミノ酸置換(Asn44HisまたはAsn44Arg)がAsn44
Aspのアミノ酸置換で、Glu49Valのアミノ酸置換を選択した場合は(17)の
アミノ酸置換(Glu49ThrまたはGlu49Ile)がGlu49Valのアミノ
酸置換で、Asn62Tyrのアミノ酸置換を選択した場合は(23)のアミノ酸置換(
Asn62His、Asn62Arg、Asn62Leu、Asn62MetおよびAs
n62Trpのいずれか)がAsn62Tyrのアミノ酸置換で、Ile23Thrのア
ミノ酸置換を選択した場合は(40)のアミノ酸置換(Ile23ArgまたはIle2
3Val)がIle23Thrのアミノ酸置換で、Ala41Argのアミノ酸置換を選
択した場合は(15)のアミノ酸置換(Ala41Thr)および(47)のアミノ酸置
換(Ala41IleまたはAla41Tyr)がAla41Argのアミノ酸置換で、
それぞれ上書きされる。あるいは、他のアミノ酸置換の内、前記(1)から(53)より
選択される1以上のアミノ酸置換と同位置のアミノ酸置換は選択されなくてもよい。すな
わち、例えば、前記(1)から(53)のアミノ酸置換から少なくとも(17)のアミノ
酸置換(Glu49ThrまたはGlu49Ile)を選択した場合は、Glu49As
pおよびGlu49Valのアミノ酸置換は選択されなくてもよい。また、アミノ酸置換
の組み合わせは、少なくとも前記(1)から(53)より選択される1以上のアミノ酸置
換が残存するように選択される。すなわち、例えば、前記(1)から(53)のアミノ酸
置換から(17)のアミノ酸置換(Glu49ThrまたはGlu49Ile)を単独で
選択した場合は、Glu49AspおよびGlu49Valのアミノ酸置換は選択できな
い。すなわち、改変型アミノ酸配列としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例え
ば配列番号1に記載のアミノ酸配列)において前記特定位置におけるアミノ酸置換および
Glu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列も挙げら
れる。すなわち、本発明のタンパク質としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例
えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)を含み、ただし当該アミノ酸配列において、前記
特定位置におけるアミノ酸置換およびGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ
酸置換を有するタンパク質も挙げられる。言い換えると、本発明のタンパク質は、例えば
、前記特定位置におけるアミノ酸置換およびGlu49AspやPro6Serなど他の
アミノ酸置換を有すること以外は上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1
に記載のアミノ酸配列)と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。
前記他のアミノ酸置換を含むアミノ酸置換の組み合わせとしては、上記例示したアミノ
酸置換の組み合わせにおいてさらに前記他のアミノ酸置換を1つ、2つ、3つ、4つ、5
つ、または6つ含む組み合わせが挙げられる。前記他のアミノ酸置換を含むアミノ酸置換
の組み合わせとしては、特に、上記例示したアミノ酸置換の組み合わせにおいてさらに少
なくともAsn62Tyrのアミノ酸置換を含む組み合わせが挙げられる。
前記他のアミノ酸置換をさらに有した、本発明のタンパク質の一例として、以下のタン
パク質が挙げられる。これらのタンパク質はアルカリ安定性が向上し、かつsubgro
upに関係なく免疫グロブリンのκ軽鎖に結合できる点で好ましい。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Lys7A
la、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38Arg、L
ys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Glu52Gly、Asn62
TyrおよびLys67Argのアミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タンパク質
(配列番号179に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Lys7A
la、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38Arg、L
ys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Glu52Gly、Tyr53
Phe、Asn62TyrおよびLys67Argのアミノ酸置換を有する免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(配列番号186に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン結合性
タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Ly
s38Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Glu52A
sp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys67Argのアミノ酸置換を有
する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号199に記載のアミノ酸配列を含む免疫
グロブリン結合性タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27Arg、Ly
s29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50T
yr、Glu52Asp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys67Arg
のアミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号224に記載のアミ
ノ酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys
29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Ty
r、Glu52Asp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys67Argの
アミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号240に記載のアミノ
酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys
29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Ty
r、Glu52Val、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Lys67Argおよび
Ala69Valのアミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号2
71に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)。
配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、Glu4G
ly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys
29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Ty
r、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Lys67ArgおよびAla69Valの
アミノ酸置換を有する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号275に記載のアミノ
酸配列を含む免疫グロブリン結合性タンパク質)。
言い換えると、本発明のタンパク質が有するアミノ酸置換の一例として、以下のものが
挙げられる:
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Gln、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Glu52Gly、
Asn62TyrおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys38
Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Glu52Gly、
Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29I
le、Lys38Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、G
lu52Asp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys67Argのアミノ
酸置換;
Glu4Gly、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Arg、Glu27A
rg、Lys29Ile、Lys38Arg、Lys48Arg、Glu49Asp、A
sn50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys
67Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、As
n50Tyr、Glu52Asp、Tyr53Phe、Asn62TyrおよびLys6
7Argのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、As
n50Tyr、Glu52Val、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Lys67A
rgおよびAla69Valのアミノ酸置換;
Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、Lys13Arg、Lys22Ar
g、Lys29Ile、Lys38Glu、Lys48Arg、Glu49Asp、As
n50Tyr、Tyr53Phe、Asn62Tyr、Lys67ArgおよびAla6
9Valのアミノ酸置換。
本明細書では、配列番号1に記載のアミノ酸配列において上記例示したアミノ酸置換(
すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6S
erなど他のアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列を、「配列番号1由来置換アミノ酸配
列」ともいう。配列番号1由来置換アミノ酸配列は、言い換えると、上記例示したアミノ
酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやP
ro6Serなど他のアミノ酸置換)が生じた配列番号1に記載のアミノ酸配列である。
また、配列番号1由来置換アミノ酸配列は、言い換えると、上記例示したアミノ酸置換(
すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6S
erなど他のアミノ酸置換)を有すること以外は配列番号1に記載のアミノ酸配列と同一
のアミノ酸配列である。配列番号1由来置換アミノ酸配列は、本明細書における改変型ア
ミノ酸配列の一例である。
本明細書における改変型アミノ酸配列としては、上記例示した改変型アミノ酸配列(例
えば配列番号1由来置換アミノ酸配列)のバリアント(variant)配列も挙げられ
る。すなわち、本発明のタンパク質としては、上記例示した改変型アミノ酸配列(例えば
配列番号1由来置換アミノ酸配列)のバリアント配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合
活性を有するタンパク質も挙げられる。以下、配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリア
ント配列の場合を例示して説明するが、当該説明は任意の改変型アミノ酸配列のバリアン
ト配列にも準用できる。
配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列は、前記特定位置におけるアミノ酸
置換が残存するように(すなわち、本発明のタンパク質が前記特定位置におけるアミノ酸
置換を有するように)設定されるものとする。また、配列番号1由来置換アミノ酸配列の
バリアント配列は、Glu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換が残存する
ように(すなわち、本発明のタンパク質がGlu49AspやPro6Serなど他のア
ミノ酸置換を有するように)設定されてもよい。また、配列番号1由来置換アミノ酸配列
のバリアント配列は、例えば、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけ
るアミノ酸置換および任意のGlu49Aspなど他のアミノ酸置換)から選択される、
配列番号1由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を追加的に有してい
てもよい。例えば、配列番号1由来置換アミノ酸配列がGlu49AspやPro6Se
rなど他のアミノ酸置換を有さない場合に、配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアン
ト配列が前記他のアミノ酸置換を有していてもよい。
配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1由来置換アミ
ノ酸配列において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質は、免疫グロブリン結合活性を有する限り、上記例示したアミノ酸置換(すなわ
ち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6Serな
ど他のアミノ酸置換)に加えて、さらに、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1
もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/ま
たは付加を含んでいてもよい。すなわち、本発明のタンパク質としては、配列番号1に記
載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、上記例示したアミノ酸置換
(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意のGlu49AspやPro6
Serなど他のアミノ酸置換)を有し、さらに1もしくは数個の位置での1もしくは数個
のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ、免疫グロブリン
結合活性を有するタンパク質も挙げられる。言い換えると、本発明のタンパク質は、例え
ば、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意
のGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)を有し、さらに1もしくは
数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加
を含むこと以外は配列番号1と同一のアミノ酸配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合活
性を有するタンパク質であってもよい。なお、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、
および/または付加は、前記特定位置におけるアミノ酸置換が残存するように選択される
ものとする。すなわち、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は
、例えば、前記特定位置以外の位置に生じてよい。また、上記のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加は、前記他のアミノ酸置換が残存するように選択されても
よい。すなわち、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は、例え
ば、前記他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。また、上記のアミノ酸残基の置換
、欠失、挿入、および/または付加は、例えば、上記例示したアミノ酸置換から選択され
る、配列番号1由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を含んでいても
よい。前記「1もしくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置
やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1から20個、1から
10個、1から9個、1から8個、1から7個、1から6個、1から5個、1から4個、
1から3個、1から2個、1個のいずれかを意味する。上記のアミノ酸残基の置換の一例
としては、物理的性質および/または化学的性質が類似したアミノ酸間で置換が生じる保
守的置換が挙げられる。保守的置換の場合、一般に、置換が生じているものと置換が生じ
ていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている
。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、セリンとプロリン間、またはグル
タミン酸とアラニン間での置換があげられる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サ
イエンス・インターナショナル社,9,2005)。また、上記のアミノ酸残基の置換、
欠失、挿入、および/または付加には、例えば、タンパク質またはそれをコードする遺伝
子が由来する微生物の個体差や種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(ミュータ
ント(mutant)またはバリアント)によって生じるものも含まれる。
また、配列番号1由来置換アミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1由来置
換アミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発
明のタンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列において上記例示したアミノ
酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやP
ro6Serなど他のアミノ酸置換)を有するアミノ酸配列に対して高い相同性を有する
アミノ酸配列を含み、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。
なお、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、前記特定位置におけるアミ
ノ酸置換が残存するように選択されるものとする。すなわち、上記のような相同性の範囲
でのアミノ酸配列の変化は、例えば、前記特定位置以外の位置に生じてよい。また、上記
のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、他のアミノ酸置換が残存するように選
択されてもよい。すなわち、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸配列の変化は、例え
ば、他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。また、上記のような相同性の範囲での
アミノ酸配列の変化は、例えば、上記例示したアミノ酸置換から選択される、配列番号1
由来置換アミノ酸配列が有さない1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。前記「相
同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味
してよく、特に同一性を意味してもよい。「アミノ酸配列に対する相同性」とは、アミノ
酸配列全体に対する相同性を意味する。前記「高い相同性」とは、70%以上、80%以
上、90%以上、または95%以上の相同性を意味してよい。アミノ酸配列間の「同一性
」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率を意味する(
実験医学 2013年2月号 Vol.31 No.3、羊土社)。アミノ酸配列間の「
類似性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率と側鎖
の性質が類似したアミノ酸残基の比率の合計を意味する(実験医学 2013年2月号
Vol.31 No.3、羊土社)。側鎖の性質が類似したアミノ酸残基については上述
の通りである。アミノ酸配列の相同性は、BLAST(Basic Local Ali
gnment Search Tool)やFASTA等のアラインメントプログラム(
alignment program)を利用して決定できる。
また改変型アミノ酸配列としては、上記例示したバリアント配列において、さらに、上
記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGl
u49Aspなど他のアミノ酸置換)から選択される1つ以上のアミノ酸置換を有するア
ミノ酸配列も挙げられる。例えば、改変型アミノ酸配列は、少なくとも前記特定位置にお
けるアミノ酸置換を有するバリアント配列において、さらに他のアミノ酸置換を有するア
ミノ酸配列であってよい。
また非改変型アミノ酸配列としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列
番号1に記載のアミノ酸配列)のバリアント配列も挙げられる。すなわち、改変型アミノ
酸配列としては、上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ
酸配列)のバリアント配列において、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置
におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸
置換)を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発明のタンパク質としては、上
記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)のバリアン
ト配列を含み、ただし当該バリアント配列において、上記例示したアミノ酸置換(すなわ
ち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serな
ど他のアミノ酸置換)を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げら
れる。言い換えると本発明のタンパク質は、例えば、上記例示したアミノ酸置換を有する
こと以外は上記例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列
)のバリアント配列と同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。なお、上記
例示した非改変型アミノ酸配列(例えば配列番号1に記載のアミノ酸配列)のバリアント
配列は、Finegoldia属細菌において実際に存在していてもよく、いなくてもよ
い。すなわち、「Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン
結合ドメインのアミノ酸配列(FpLの免疫グロブリン結合ドメインのアミノ酸配列)」
とは、Finegoldia属細菌に実際に存在するProtein Lの免疫グロブリ
ン結合ドメインのアミノ酸配列に限られず、同アミノ酸配列のバリアント配列であってF
inegoldia属細菌に実際に存在しない(すなわち仮想の)アミノ酸配列も包含す
る。以下、配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列の場合を例示して説明する
が、当該説明は任意の非改変型アミノ酸配列のバリアント配列にも準用できる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠
失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列に
おいて、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、
および/または付加を含み、さらに上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置に
おけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置
換)を有し、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。上記のア
ミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は、例えば、前記特定位置以外の位
置に生じてよい。また、上記のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加は
、例えば、他のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。
配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列としては、配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ酸配列も挙げられる。すなわち、本発明のタ
ンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して高い相同性を有するアミノ
酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列(配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して高い
相同性を有するアミノ酸配列)において、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定
位置におけるアミノ酸置換および任意でGlu49AspやPro6Serなどの他のア
ミノ酸置換)を有し、かつ、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質も挙げられる。
上記のような相同性の範囲でのアミノ酸残基の変化は、例えば、前記特定位置以外の位置
に生じてよい。また、上記のような相同性の範囲でのアミノ酸残基の変化は、例えば、他
のアミノ酸置換以外の位置に生じてもよい。
その他、配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアント配列については、配列番号1由
来置換アミノ酸配列のバリアント配列についての記載を準用できる。
本明細書において「配列番号1に記載のアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸」とは
、配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端から数えてX位の位置に存在するアミノ酸を
意味する。特定のアミノ酸配列における「配列番号1に記載のアミノ酸配列におけるX番
目のアミノ酸に相当するアミノ酸残基」とは、当該特定のアミノ酸配列におけるアミノ酸
残基であって、当該特定のアミノ酸配列と配列番号1のアミノ酸配列とのアライメント(
alignment)において配列番号1に示すアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸
と同一の位置に配列されるアミノ酸残基を意味する。例えば、Asn50Tyrのアミノ
酸置換の場合、特定のアミノ酸配列における「配列番号1の50番目のアスパラギンに相
当するアミノ酸残基」とは、当該特定のアミノ酸配列におけるアミノ酸残基であって、当
該特定のアミノ酸配列と配列番号1のアミノ酸配列とのアライメントにおいて配列番号1
に示すアミノ酸配列における50番目のアスパラギンと同一の位置に配列されるアミノ酸
残基を意味する。なお、配列番号1に記載のアミノ酸配列における「配列番号1に記載の
アミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸に相当するアミノ酸残基」とは、配列番号1に記
載のアミノ酸配列におけるX番目のアミノ酸そのものを意味する。すなわち、上記例示し
たアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換および任意で他のアミノ酸
置換)の位置は、必ずしも本発明のタンパク質における絶対的な位置を示すものではなく
、配列番号1に記載のアミノ酸配列に基づく相対的な位置を示すものである。すなわち、
例えば、本発明のタンパク質が、上記例示したアミノ酸置換の位置よりもN末端側にアミ
ノ酸残基の挿入、欠失、または付加を含む場合、それに応じて当該アミノ酸置換の絶対的
な位置は変動し得る。本発明のタンパク質における上記例示したアミノ酸置換の位置は、
例えば、本発明のタンパク質のアミノ酸配列と配列番号1に記載のアミノ酸配列とのアラ
イメントで特定できる。前記アライメントは、例えば、BLASTやFASTA等のアラ
イメントプログラムを利用して実施できる。配列番号1に記載のアミノ酸配列のバリアン
ト配列等の任意のアミノ酸配列における上記例示したアミノ酸置換の位置についても同様
である。また、上記例示したアミノ酸置換(すなわち前記特定位置におけるアミノ酸置換
および任意でGlu49AspやPro6Serなど他のアミノ酸置換)の置換前のアミ
ノ酸残基は、配列番号1に記載のアミノ酸配列における置換前のアミノ酸残基の種類を示
すものであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列以外の非改変型アミノ酸配列において
は保存されていてもよく、いなくてもよい。
本発明のタンパク質は、改変型アミノ酸配列を1個のみ含んでいてもよく、改変型アミ
ノ酸配列を複数個含んでいてもよい。本発明のタンパク質は、例えば、改変型アミノ酸配
列を2個以上、3個以上、4個以上、または5個以上含んでいてもよく、10個以下、7
個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下含んでいてもよく、それらの矛
盾しない組み合わせの個数含んでいてもよい。本発明のタンパク質が複数個の改変型アミ
ノ酸配列を含む場合、それら複数個の改変型アミノ酸配列のアミノ酸配列は同一であって
もよく、そうでなくてもよい。それら複数個の改変型アミノ酸配列は、直接連結(直結)
させた態様であってもよいし、適切なリンカー(例えば、5以上25以下のアミノ酸残基
からなるオリゴペプチド)を介して連結させた態様であってもよい。
本発明のタンパク質は、改変型アミノ酸配列からなるものであってもよく、他のアミノ
酸配列をさらに含んでいてもよい。すなわち、本発明のタンパク質は、例えば、そのN末
端側またはC末端側に他のアミノ酸配列をさらに含んでいてもよい。言い換えると、本発
明のタンパク質においては、例えば、改変型アミノ酸配列のN末端側またはC末端側に、
他のアミノ酸配列が付加されていてもよい。他のアミノ酸配列としては、オリゴペプチド
があげられる。他のアミノ酸配列として用いられるオリゴペプチドとしては、前記リンカ
ー以外のオリゴペプチドがあげられる。他のアミノ酸配列は、本発明のタンパク質の免疫
グロブリン結合活性や安定性を損なわない限り、特に制限されない。例えば、他のアミノ
酸配列の種類や長さは、本発明のタンパク質の免疫グロブリン結合性や安定性を損なわな
い限り、特に制限されない。
本発明のタンパク質は、例えば、選択した免疫グロブリン結合ドメインに加えて、他の
免疫グロブリン結合ドメインの一部を含んでいてもよい。例えば、本発明のタンパク質が
FpLのドメインC3の改変型アミノ酸配列を含む場合、本発明のタンパク質は、さらに
、FpLのドメインC3のN末端側領域(ドメインC1、ドメインC2)の一部を含んで
いてもよく、FpLのドメインC3のC末端側領域(ドメインC4)の一部を含んでいて
もよい。
本発明のタンパク質は、例えば、そのN末端側またはC末端側に、目的物を特異的に検
出または分離する目的で有用なオリゴペプチドを含んでいてもよい。そのようなオリゴペ
プチドとしては、ポリヒスチジンやポリアルギニンが挙げられる。また本発明のタンパク
質は、例えば、そのN末端側またはC末端側に、本発明のタンパク質をクロマトグラフィ
ー用の支持体等の固相に固定化する際に有用なオリゴペプチドを含んでいてもよい。その
ようなオリゴペプチドとしては、リジンやシステインを含むオリゴペプチドが挙げられる
本発明のタンパク質が上記のような他のアミノ酸配列を含む場合、本発明のタンパク質
は、例えば、あらかじめ他のアミノ酸配列を含む形態で製造されてもよいし、別途製造さ
れた上記のような他のアミノ酸配列が付加されてもよい。本発明のタンパク質が上記のよ
うな他のアミノ酸配列を含む場合、典型的には、本発明のタンパク質は、上記のような他
のアミノ酸配列を含む本発明のタンパク質の全長アミノ酸配列をコードするポリヌクレオ
チドから発現させることで製造できる。すなわち、例えば、他のアミノ酸配列をコードす
るポリヌクレオチドと本発明のタンパク質(例えば他のアミノ酸配列を含まないもの)を
コードするポリヌクレオチドとを、他のアミノ酸配列が本発明のタンパク質のN末端側ま
たはC末端側に付加されるように連結し、本発明のタンパク質を発現させてもよい。また
例えば、化学的に合成した他のアミノ酸配列を本発明のタンパク質(例えば他のアミノ酸
配列を含まないもの)のN末端側またはC末端側に化学的に結合させてもよい。
本発明のタンパク質は、例えば、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドか
ら発現させることで製造できる。本明細書では、本発明のタンパク質をコードするポリヌ
クレオチドを、「本発明のポリヌクレオチド」ともいう。本発明のポリヌクレオチドは、
具体的には、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
であってよい。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、化学合成法やPCR法等によるDNA増幅法で
取得できる。DNA増幅法は、例えば、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配
列といった、増幅すべきヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを鋳型とし実施できる
。鋳型とするポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質を発現する生物のゲノムDNA、
本発明のタンパク質のcDNA、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが例示できる
本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、例えば、本発明のタンパク質のアミ
ノ酸配列からの変換で設計できる。アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際には
、標準のコドンテーブルを使用できるが、本発明のポリヌクレオチドで形質転換する宿主
におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主がEsc
herichia coli(大腸菌)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/A
GG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)で
はCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それ
ぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避ける
ように変換してよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDN
A研究所のウェブサイトにあるCodon Usage Databaseなど)を利用
することでも可能である。
本発明のポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの全長を一括取得してもよく、当
該ポリヌクレオチドの部分配列からなるポリヌクレオチドを取得後連結することで取得し
てもよい。上記のような本発明のポリヌクレオチドを取得する手法についての説明は、そ
の全長配列を一括して取得する場合に限られず、その部分配列を取得する場合にも準用で
きる。
なお、本発明のポリヌクレオチドは、任意のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする
ポリヌクレオチドと連結し、融合型アミノ酸配列をコードするように設計してもよい。
本発明のタンパク質は、例えば、本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子組換え宿主(
以下、単に「本発明の遺伝子組換え宿主」ともいう)を培養し前記タンパク質を発現させ
た後、発現した前記タンパク質を回収することで製造できる。本発明の遺伝子組換え宿主
は、例えば、本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換することで得られる。宿
主は、本発明のポリヌクレオチドで形質転換されることで本発明のタンパク質を発現可能
なものであれば特に制限されない。宿主の例として、動物細胞、昆虫細胞、微生物が挙げ
られる。このうち動物細胞としては、COS細胞、CHO(Chinese Hamst
er Ovary)細胞、Hela細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞が、昆虫
細胞としては、Sf9細胞、BTI-TN-5B1-4細胞が、微生物としては、酵母や
細菌が、それぞれ例示できる。さらに酵母としては、Saccharomyces ce
revisiae等のSaccharomyces属酵母、Pichia Pastor
is等のPichia属酵母、Schizosaccharomyces pombe等
のSchizosaccharomyces属酵母が、細菌としては、大腸菌(Esch
erichia coli)等のEscherichia属細菌が挙げられる。大腸菌と
しては、JM109株、BL21(DE3)株が挙げられる。なお、酵母や大腸菌を宿主
として用いると生産性の面で好ましく、大腸菌を宿主として用いるとさらに好ましい。
本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、発現可能に保持さ
れていればよい。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、前記宿主で機能するプロモ
ーターの制御下で発現するように保持されていればよい。前記宿主が大腸菌の場合、宿主
で機能するプロモーターの一例として、trpプロモーター、tacプロモーター、tr
cプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、lp
pプロモーターが挙げられる。
また本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNA
外で自律複製するベクター上に存在していてよい。すなわち、本発明のポリヌクレオチド
を含む発現ベクター(以下、単に「本発明の発現ベクター」ともいう)で宿主を形質転換
して本発明の遺伝子組換え宿主を作製してもよい。本発明の発現ベクターは、例えば、発
現ベクターの適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入して得られる。なお、発現ベ
クターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限されない
。前記宿主が大腸菌の場合、発現ベクターとしては、pETプラスミドベクター、pUC
プラスミドベクター、pTrcプラスミドベクターが例示できる。なお、本発明の発現ベ
クターは、抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーを備えていてよい。また、前記適切な位
置とは、発現ベクターの複製機能、選択マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置
を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要
なプロモーター等の機能性ポリヌクレオチドに連結された状態で挿入すると好ましい。
また本発明の遺伝子組換え宿主において、本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNA
上に導入されてもよい。ゲノムDNAへの本発明のポリヌクレオチドの導入は、例えば、
相同組み換えによる遺伝子導入法を利用して実施できる。相同組み換えによる遺伝子導入
法としては、Red-driven integration法(Datsenko,K
.A,and Wanner,B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A.,97:6640-6645(2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感
受性複製起点を含むベクターを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないベクタ
ーを用いる方法、ファージを用いたtransduction法が例示できる。
本発明の発現ベクター等のポリヌクレオチドを用いた宿主の形質転換は、例えば、当業
者が通常用いる方法で実施できる。例えば、宿主として大腸菌を選択した場合は、コンピ
テントセル法、ヒートショック法、エレクトロポレーション法等で形質転換すればよい。
形質転換後に適切な方法で本発明のポリヌクレオチドを含む宿主をスクリーニングするこ
とで、本発明の遺伝子組換え宿主を取得できる。
なお、各種微生物において利用可能な発現ベクターやプロモーター等の遺伝子工学的手
法に関する情報は、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」
などの公知文献を利用し、取得すればよい。
本発明の遺伝子組換え宿主が本発明の発現ベクターを含む場合、本発明の遺伝子組換え
宿主から本発明の発現ベクターを調製できる。例えば、本発明の遺伝子組換え宿主を培養
して得られる培養物からアルカリ抽出法またはQIAprep Spin Minipr
ep kit(QIAGEN社製)等の市販の抽出キットを用いて本発明の発現ベクター
を調製できる。
本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで、本発明のタンパク質を発現できる。また
、本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで、本発明のタンパク質を発現させ、発現し
た前記タンパク質を回収することで、本発明のタンパク質を製造できる。すなわち、本明
細書は、本発明の遺伝子組換え宿主を培養することで本発明のタンパク質を発現させる工
程と、発現された前記タンパク質を回収する工程とを含む、本発明のタンパク質の製造方
法を開示する。培地組成や培養条件は、宿主の種類や本発明のタンパク質の特性等の諸条
件に応じて適宜設定すればよい。培地組成や培養条件は、例えば、宿主が増殖でき、かつ
、本発明のタンパク質を発現可能な条件に設定すればよい。培地は、例えば、炭素源、窒
素源、無機塩、その他の各種有機成分や無機成分を適宜含む培地を使用できる。具体的に
は、宿主が大腸菌の場合、必要な栄養源を補ったLB(Luria-Bertani)培
地(トリプトン1%(w/v)、酵母エキス0.5%(w/v)、1%(w/v)NaC
l)が好ましい培地の一例として挙げられる。なお、本発明の発現ベクターの導入の有無
により、本発明の遺伝子組換え宿主を選択的に増殖させるために、培地に当該発現ベクタ
ーに含まれる抗生物質耐性遺伝子に対応した抗生物質を添加して培養すると好ましい。例
えば、当該発現ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は培地にカナマイシ
ンを添加すればよい。本発明のポリヌクレオチドがゲノムDNA上に導入されている場合
も同様である。また、培地は、グルタチオン、システイン、シスタチン、チオグリコレー
トおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでいて
もよい。また培地は、グリシン等の前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す
試薬を含んでいてもよい。例えば、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(
w/v)以下で添加すると好ましい。培養温度は、例えば、宿主が大腸菌の場合、一般に
10℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上37℃以下、より好ましくは25℃前後で
ある。培地のpHは、例えば、宿主が大腸菌の場合、pH6.8以上pH7.4以下、好
ましくはpH7.0前後である。また、本発明のタンパク質を誘導性のプロモーターの制
御下で発現する場合は、本発明のタンパク質が良好に発現できるように誘導をかけると好
ましい。発現誘導には、例えば、プロモーターの種類に応じた誘導剤を用いることができ
る。誘導剤としては、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalacto
pyranoside)を例示できる。宿主が大腸菌の場合、例えば、培養液の濁度(6
00nmにおける吸光度)が約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加
し、引き続き培養することで、本発明のタンパク質の発現を誘導できる。IPTGの添加
濃度は、例えば、0.005mM以上1.0mM以下、好ましくは0.01mM以上0.
5mM以下である。IPTG誘導等の発現誘導は、例えば、当該技術分野において周知の
条件で行なえる。
本発明のタンパク質は、その発現形態に適した方法で培養物から分離し回収すればよい
。なお、本明細書において「培養物」とは、培養で得られた培養液の全体またはその一部
を意味する。当該一部は、本発明のタンパク質を含む部分であれば特に制限されない。当
該一部としては、培養された本発明の形質転換体の細胞や培養後の培地(すなわち培養上
清)などが挙げられる。例えば、本発明のタンパク質が培養上清に蓄積する場合、細胞を
遠心分離操作で分離し、得られる培養上清から本発明のタンパク質を回収すればよい。ま
た、本発明のタンパク質が細胞内(ペリプラズムを含む)に蓄積する場合、細胞を遠心分
離操作で回収後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加して細胞を破砕し、当該破砕物から本
発明のタンパク質を回収すればよい。前述した培養上清や細胞破砕物からの、本発明のタ
ンパク質の回収は、例えば、タンパク質の分離精製に用いられる公知の方法で実施できる
。前記回収方法の一例として、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点
沈殿が挙げられる。
本発明のタンパク質は、例えば、免疫グロブリン(抗体)の分離または分析に使用でき
る。前記目的で使用する際は、例えば、不溶性担体と当該不溶性担体に固定化した本発明
のタンパク質とを含む免疫グロブリン吸着剤(以下、単に「本発明の免疫グロブリン吸着
剤」ともいう)の態様で使用できる。なお、本明細書において、「免疫グロブリンの分離
」とは、夾雑物質共存下の溶液からの免疫グロブリンの分離に限らず、構造、性質、また
は活性等に基づく免疫グロブリン間の分離も含む。不溶性担体は、水溶液に対して不溶性
の担体であれば特に制限されない。不溶性担体としては、アガロース、アルギネート(ア
ルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプ
ン等の多糖質を原料とした担体や、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2
-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン等の合成高分子を原料とした担体や
、シリカ等のセラミックスを原料とした担体が例示できる。中でも、多糖質を原料とした
担体や合成高分子を原料とした担体が不溶性担体として好ましい。前記好ましい担体の一
例として、トヨパール(東ソー社製)等のヒドロキシ基を導入したポリメタクリレートゲ
ル、Sepharose(Cytiva社製)等のアガロースゲル、セルファイン(JN
C社製)等のセルロースゲルが挙げられる。不溶性担体の形状は特に制限されない。不溶
性担体は、例えば、カラムに充填できる形状であってよい。不溶性担体は、例えば、粒状
物または非粒状物であってよい。また、不溶性担体は、例えば、多孔性または非多孔性で
あってもよい。
本発明における分離または分析対象の免疫グロブリン(抗体)は、本発明のタンパク質
が結合性を有するものであれば、特に制限されない。免疫グロブリンは、具体的には、κ
軽鎖を有するものであってよい。免疫グロブリンは、κ軽鎖に加えて、Fc領域等の他の
領域を含んでいてもよく、いなくてもよい。免疫グロブリンは、例えば、シングルチェー
ンFv(scFv)、Fab、F(ab’)、IgA、二重特異性T細胞誘導(BiT
E)抗体等の、Fc領域を有しないものであってもよい。免疫グロブリンは、モノクロー
ナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。免疫グロブリンは、例え
ば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれであってもよい。IgGは
、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のいずれであってもよい。免
疫グロブリンの由来は、特に制限されない。免疫グロブリンは、単一の生物に由来するも
のであってもよく、2種またはそれ以上の生物の組み合わせに由来するものであってもよ
い。免疫グロブリンとしては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、それらのバリアント
(例えばアミノ酸置換体)があげられる。また、免疫グロブリンとしては、二重特異性抗
体(バイスペシフィック抗体)、κ軽鎖と他のタンパク質との融合抗体、κ軽鎖と薬物と
の複合体(ADC)等の人工的に構造改変した抗体もあげられる。なお、「免疫グロブリ
ン」には、抗体医薬も包含される。
本発明のタンパク質は、例えば、共有結合により不溶性担体に固定化してもよい。具体
例として、不溶性担体が有する活性基を介して、本発明のタンパク質と不溶性担体とを共
有結合させることで、不溶性担体に前記タンパク質を固定化できる。すなわち、前記不溶
性担体は、その表面などに活性基を有していてよい。前記活性基の一例として、N-ヒド
ロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基、エポキシ基、カルボキシ基、マレイ
ミド基、ハロアセチル基、トレシル基、ホルミル基、ハロアセトアミドが挙げられる。活
性基を有する不溶性担体としては、例えば、活性基を有する市販の不溶性担体をそのまま
用いてもよいし、不溶性担体に活性基を導入して用いてもよい。活性基を有する市販の担
体としては、TOYOPEARL AF-Epoxy-650M、TOYOPEARL
AF-Tresyl-650M(いずれも東ソー社製)、HiTrap NHS-act
ivated HP Columns、NHS-activated Sepharos
e 4 Fast Flow、Epoxy-activated Sepharose
6B(いずれもCytiva社製)、SulfoLink Coupling Resi
n(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)が例示できる。
担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するヒドロキシ基、エポキ
シ基、カルボキシ基、アミノ基等に対して2個以上の活性部位を有する化合物の一方を反
応させる方法が例示できる。
担体表面に存在するヒドロキシ基やアミノ基にエポキシ基を導入する化合物としては、
エピクロロヒドリン、エタンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジ
ルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを例示できる。
また、担体表面に存在するエポキシ基にカルボキシ基を導入する化合物としては、2-
メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸、6-メルカプト酪
酸、グリシン、3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸を例示
できる。
また、担体表面に存在するヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基にマレ
イミド基を導入する化合物としては、N-(ε-マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N
-(ε-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、4-(4-N-マレイミドフェニル)酢
酸ヒドラジド、2-アミノマレイミド、3-アミノマレイミド、4-アミノマレイミド、
6-アミノマレイミド、1-(4-アミノフェニル)マレイミド、1-(3-アミノフェ
ニル)マレイミド、4-(マレイミド)フェニルイソシアナート、2-マレイミド酢酸、
3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-(
α-マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N
-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シ
クロヘキサン-1-カルボニル-(6-アミノヘキサン酸)、スクシンイミジル-4-(
マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、(p-マレイミドベンゾイル)N
-ヒドロキシスクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシス
クシンイミドエステルを例示できる。
また、担体表面に存在するヒドロキシ基やアミノ基にハロアセチル基を導入する化合物
としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロ
リド、ブロモ酢酸ブロミド、クロロ酢酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、
2-(ヨードアセトアミド)酢酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、3-(ブロ
モアセトアミド)プロピオン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(ヨード
アセチル)アミノ安息香酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。
また、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するヒドロキシ基や
アミノ基にω-アルケニルアルカングリシジルエーテルを反応させた後、ハロゲン化剤で
ω-アルケニル部位をハロゲン化することで活性化する方法も例示できる。ω-アルケニ
ルアルカングリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、3-ブテニルグリ
シジルエーテル、4-ペンテニルグリシジルエーテルを例示できる。ハロゲン化剤として
は、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド
を例示できる。
また、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在するカルボキシ基に
対して縮合剤と添加剤を用いて活性基を導入する方法も例示できる。縮合剤としては、1
-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘ
キシルカルボジアミド、カルボニルジイミダゾールを例示できる。添加剤としては、N-
ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、4-ニトロフェノール、1-ヒドロキシベンズト
リアゾールを例示できる。
本発明のタンパク質の不溶性担体への固定化は、例えば、緩衝液中で実施できる。緩衝
液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、MES(2-Morpholinoethan
esulfonic acid)緩衝液、HEPES(4-(2-Hydroxyeth
yl)-1-piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、
トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液を例示できる。固定化させるときの反応温度は、例えば、活
性基の反応性や本発明のタンパク質の安定性等の諸条件に応じて適宜設定できる。固定化
させるときの反応温度は、例えば、5℃以上50℃以下であってよく、好ましくは10℃
以上35℃以下である。
本発明の免疫グロブリン吸着剤は、例えば、前記吸着剤を充填したカラムの態様にする
ことで、免疫グロブリン(抗体)の分離に使用できる。例えば、本発明の免疫グロブリン
吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加して当該免疫グロブリンを前
記吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させることで、免疫グ
ロブリンを分離できる。すなわち、本明細書は、本発明の免疫グロブリン吸着剤を充填し
たカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加して当該免疫グロブリンを前記吸着剤に吸着
させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させる工程とを含む、前記溶
液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法を開示する。免疫グロブリンを含む溶液は、例
えば、ポンプ等の送液手段を用いてカラムに添加できる。なお、免疫グロブリンを含む溶
液は、カラムに添加する前に予め適切な緩衝液を用いて溶媒置換してよい。また、免疫グ
ロブリンを含む溶液をカラムに添加する前に、適切な緩衝液を用いてカラムを平衡化して
よい。カラムの平衡化により、例えば、免疫グロブリンをより高純度に分離できると期待
される。溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、MES
緩衝液が例示できる。そのような緩衝液には、例えば、さらに、1mM以上1000mM
以下の塩化ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。溶媒置換に用いる緩衝液と平衡化に
用いる緩衝液は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。また、免疫グロブリンを含
む溶液のカラムへの通液後に夾雑物質等の免疫グロブリン以外の成分がカラムに残存して
いる場合、免疫グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出する前に、そのような
成分をカラムから除去してよい。免疫グロブリン以外の成分は、例えば、適切な緩衝液を
用いてカラムから除去できる。免疫グロブリン以外の成分の除去に用いる緩衝液について
は、例えば、溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液についての記載を準用できる。免疫グロブ
リン吸着剤に吸着した免疫グロブリンは、例えば、免疫グロブリンとリガンド(本発明の
タンパク質)との相互作用を弱めることで溶出できる。免疫グロブリンとリガンド(本発
明のタンパク質)との相互作用を弱める手段としては、pH変化、カウンターペプチドの
添加、温度上昇、塩濃度変化が例示できる。免疫グロブリンとリガンド(本発明のタンパ
ク質)との相互作用を弱める手段としては、特に、pH変化が例示できる。すなわち、前
記吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させる工程としては、特に、前記吸着剤に吸着
した免疫グロブリンをpH変化で溶出させる工程が例示できる。pH変化としては、pH
の低下が例示できる。pHの低下としては、緩衝液によるpHの低下が例示できる。免疫
グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンは、具体的には、例えば、適切な溶出液を用
いて溶出できる。溶出液としては、溶媒置換や平衡化に用いる緩衝液よりも酸性側の緩衝
液が挙げられる。前記酸性側の緩衝液としては、クエン酸緩衝液、グリシン塩酸緩衝液、
酢酸緩衝液を例示できる。すなわち、前記酸性側の緩衝液を利用することで、pHを低下
させることができる。溶出液のpHは、例えば、免疫グロブリンの機能(抗原への結合性
等)を損なわない範囲で設定できる。溶出液のpHは、例えば、2以上、2.1以上、2
.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上
、2.9以上、3以上、3.1以上、または3.2以上であってもよく、4以下、3.5
以下、3.2以下、3.1以下、3以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6
以下、または2.5以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい
。溶出液のpHは、具体的には、例えば、2以上4以下、2.2以上4以下、または2.
4以上4以下であってもよい。
なお、免疫グロブリン吸着剤に吸着した免疫グロブリンの溶出を緩衝液によるpHの低
下で行なう場合、本発明の免疫グロブリン吸着剤の構成要素である本発明のタンパク質が
、少なくともGly21Arg、Gly51Val、ならびにAsn62His、Asn
62ArgおよびAsn62Trpのいずれか、より選択される1以上のアミノ酸置換を
有していると、不溶性担体と当該不溶性担体に固定化した非改変型アミノ酸配列からなる
免疫グロブリン結合性タンパク質とを含む免疫グロブリン吸着剤よりも、溶出液のpHを
高くする(すなわち、よりpHの高い(中性に近い)条件で免疫グロブリンを溶出する)
ことができる。すなわち、免疫グロブリン吸着剤の構成要素である免疫グロブリン結合性
タンパク質として、少なくともGly21Arg、Gly51Val、ならびにAsn6
2His、Asn62ArgおよびAsn62Trpのいずれか、より選択される1以上
のアミノ酸置換を有した本発明のタンパク質を用いることで、非改変型アミノ酸配列から
なる免疫グロブリン結合性タンパク質を用いたときよりも、より温和なpH条件(すなわ
ち中性に近い条件)で免疫グロブリンを溶出できる。この場合の溶出液のpHは、例えば
、上記例示した溶出液のpHの範囲であってよい。また、溶出液のpHは、例えば、2.
5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、2.95以上、3以上、3
.05以上、3.1以上、3.15以上、または3.2以上であってもよく、4以下、3
.5以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、または3以下であってもよく、それら
の矛盾しない組み合わせであってもよい。溶出液のpHは、具体的には、例えば、2.5
以上4以下、2.8以上4以下、2.95以上4以下、3以上4以下、または3.05以
上4以下であってもよい。
前述した方法で免疫グロブリン(抗体)を分離することで、分離された免疫グロブリン
が得られる。すなわち、免疫グロブリンの分離方法は、その一態様において、免疫グロブ
リンの製造方法であってよく、具体的には、分離された免疫グロブリンの製造方法であっ
てよい。免疫グロブリンは、例えば、免疫グロブリンを含む溶出画分として得られる。す
なわち、溶出された免疫グロブリンを含む画分を分取できる。画分の分取は、例えば、常
法により行なえばよい。画分を分取する方法としては、一定の時間ごとや、一定の容量ご
とに回収容器を交換する方法や、溶出液のクロマトグラムの形状に合わせて回収容器を換
える方法や、オートサンプラー等の自動フラクションコレクター等で画分を分取する方法
が挙げられる。さらに、免疫グロブリンを含む画分から免疫グロブリンを回収することも
できる。免疫グロブリンを含む画分からの免疫グロブリンの回収は、例えば、タンパク質
の分離精製に用いられる公知の方法により行なえばよい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定され
るものではない。なお、参考例は本発明を構成しない。
実施例1 Protein L免疫グロブリン結合ドメインC3発現ベクターの作製
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるFinegoldia属菌(Fine
goldia magna)由来のProtein L(以下、FpL)の免疫グロブリ
ン結合ドメインC3(GenBank No.AAA67503(配列番号210)の3
94番目から463番目までのアミノ酸残基、以下「FpL_C3」とも表記)のアミノ
酸配列をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)を合成した。なお、合成する際、5
’末端側には制限酵素NcoIの認識配列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側
にはヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(5’-CATCACCACCAT
CACCAC-3’;配列番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認
識配列(5’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(2)合成により得た配列番号2を含むポリヌクレオチドを制限酵素NcoIおよびH
indIIIで処理後、アガロースゲル電気泳動により目的物のサイズのバンドを確認し
た。目的バンドを切り出したのち、QIAquick Gel Extraction
kit(QIAGEN社製)によりポリヌクレオチドを精製した。
(3)(2)で得たポリヌクレオチドと、予め制限酵素NcoIとHindIIIで消
化したプラスミドpET-26bをDNA Ligation Kit(タカラバイオ社
製)を用いてライゲーションを行なった。当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL2
1(DE3)株を形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB(Luria-
Bertani)プレート培地で培養(37℃、16時間)した。
(4)(3)で取得した形質転換体(遺伝子組換え大腸菌)を選択し、50μg/mL
のカナマイシンを含むLB培地にて培養後、QIAprep Spin Minipre
p kit(QIAGEN社製)による精製で、FpL_C3を発現可能なベクター(p
ET-FpL_C3と命名)を取得した。
(5)(4)で取得した発現ベクターpET-FpL_C3のうち、FpL_C3をコ
ードするポリヌクレオチドおよびその周辺領域について、チェーンターミネータ法に基づ
くBig Dye Terminator Cycle Sequencing rea
dy Reaction kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用
いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism
3700 DNA analyzer(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製
)にてヌクレオチド配列を解析した。なお、当該解析の際、配列番号3(5’-TAAT
ACGACTCACTATAGGG-3’)または配列番号4(5’-TATGCTAG
TTATTGCTCAG-3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをシークエン
ス用プライマーとして使用した。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3に、配列番号2に記載の配列から
なるポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
実施例2 FpL_C3への変異導入およびライブラリ作製(その1)
実施例1で作製した発現ベクターpET-FpL_C3のうち、免疫グロブリン結合性
タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号2)にエラープローンPCRに
よりランダムに変異を導入した。
(1)実施例1で作製したpET-FpL_C3を鋳型DNAとして用い、エラープロ
ーンPCRを行なった。エラープローンPCRは表1に示す組成の反応液を調製後、当該
反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、50℃で30秒間
の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイク
ル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。前記エラープローンPCR
によりFpL_C3をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)に良好に変異が導入さ
れ、その平均変異導入率は1.6%であった。
Figure 2023064059000001
(2)得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あ
らかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpET-26bにラ
イゲーションした。
(3)ライゲーション反応終了後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質
転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16時
間)した後、プレート上に形成したコロニーをランダム変異体ライブラリとした。
実施例3 FpL_C3アミノ酸置換体のスクリーニング(その1)
(1)実施例2で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)または実施例1で
作製したFpL_C3(配列番号1)を発現する形質転換体を50μg/mLのカナマイ
シンを含む2×YT液体培地(トリプトン 1.6%(w/v)、酵母エキス 1%(w
/v)、塩化ナトリウム 0.5%(w/v))250μLに接種し、96ディープウェ
ルプレートを用いて37℃で終夜振とう培養した。
(2)培養後、50μg/mLのカナマイシン、0.3%(w/v)のグリシン、およ
び0.01mMのIPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopy
ranoside)を含む2×YT液体培地500μLに(1)の培養液5μLを植え継
ぎ、96ディープウェルプレートを用いてさらに20℃で終夜振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作によって得られた培養上清と1.0M NaOHとを等量混合
し、38℃で15分間アルカリ処理を行なった。
(4)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
下記に示すELISA法にて測定し、(3)のアルカリ処理を行なった時の免疫グロブリ
ン結合性タンパク質の抗体結合活性を、(3)のアルカリ処理を行わなかった時の免疫グ
ロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(4-1)Tris-Buffered Saline(TBS)を用いて10μg/m
Lに調製したヒト抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)を96ウェル
マイクロプレートの各ウェルに分注し固定化した(4℃、16時間)。固定化後、TBS
を用いて2%(w/v)に調製したスキムミルク(ベクトン・ディッキンソン社製)を用
いてブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.15M NaClおよび0.05%(w/v)Tween
20(商品名)を含む0.05M Tris緩衝液(pH7.5))で96ウェルマイク
ロプレートの各ウェルを洗浄後、抗体結合活性を評価する免疫グロブリン結合性タンパク
質を含む溶液を添加し、免疫グロブリン結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを
反応させた(30℃、1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti
-6-His Antibody(BETHYL LABORATORIES社製)を1
00μL/well添加し反応させた(30℃、1時間)。
(4-4)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Su
bstrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。次に1Mリン酸を50
μL/well添加することで反応を停止し、マイクロプレートリーダー(テカン社製)
にて450nmの吸光度を測定した。
(5)約1600株の形質転換体を評価し、その中から天然型(アミノ酸置換がない)
FpL_C3(配列番号1)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性
タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(6)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(7)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を、実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列
を解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(8)(5)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、そ
れぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む2mLの2×YT液体培地に接種し、37℃
で終夜、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(9)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2×YT液体培地に前培養
液を200μL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(10)培養開始から2時間後、培養温度を20℃に変更し、終濃度0.01mMとな
るようIPTGを添加し、20℃で終夜、好気的に振とう培養した。
(11)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein
Extraction Reagent(メルク社製)を用いてタンパク質抽出液を調製
した。
(12)(11)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の
抗体結合活性を、(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(13)各タンパク質の濃度が等しくなるよう、TBSを用いて希釈した。希釈液を二
等分し、一方には0.2M NaOH(アルカリ処理)を、もう一方にはTBS(アルカ
リ未処理)を、それぞれ等量添加し混合後、25℃で5時間静置した。
(14)1Mトリス緩衝液(pH7.0)を4倍量加えた後、アルカリ処理(終濃度0
.1M NaOHで25℃、5時間処理)およびアルカリ未処理のタンパク質溶液の抗体
結合活性を、(4)に記載のELISA法によって測定した。アルカリ処理した免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ未処理の免疫グロブリン結合性タン
パク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表2に示す。配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともPro3S
er(この表記は配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
されていることを表す、以下同様)、Glu5Val、Glu8Gly、Ile17Ph
e、Glu27Gly、Ala41Thr、Asn44Ser、Glu49Val、As
n50Ser、Asn50Tyr、Asn50Lys、Asn50Asp、Glu52V
al、Glu52Gly、Thr54Ile、Asn62TyrおよびAsn65Tyr
より選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然
型FpL_C3(配列番号1)と比較しアルカリ安定性が向上しているといえる。
中でもAsn50TyrおよびGlu52Glyのアミノ酸置換を有した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(配列番号11、FpL_C3 2aと命名)は、顕著なアルカリ安
定性向上を確認した(天然型FpL_C3:40%、FpL_C3 2a:94%)。G
lu52Gly単独のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号
16)でのアルカリ安定性向上が顕著ではないことから(天然型FpL_C3:40%、
配列番号16:48%)、顕著なアルカリ安定性の向上をもたらすアミノ酸置換はAsn
50Tyrのほうであることが推測される。
Figure 2023064059000002
実施例4 FpL免疫グロブリン結合ドメインC4発現ベクターの作製
(1)配列番号18に記載のアミノ酸配列からなるFpLの免疫グロブリン結合ドメイ
ンC4(GenBank No.AAA67503(配列番号210)の468番目から
537番目までのアミノ酸残基、以下「FpL_C4」とも表記)のアミノ酸配列をコー
ドするポリヌクレオチド(配列番号19)を合成した。なお、合成する際、5’末端側に
は制限酵素NcoIの認識配列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にヒスチジ
ン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号232)、終止コドンおよび制限酵素
HindIIIの認識配列(5’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(2)実施例1(2)と同様の方法で、(1)で合成した配列番号19を含むポリヌク
レオチドを精製した。
(3)実施例1(3)と同様な方法で、(2)で得たポリヌクレオチドと予め制限酵素
NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲーション後、
当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、培養した。
(4)(3)で取得した形質転換体(遺伝子組換え大腸菌)を選択後、実施例1(4)
と同様な方法で培養およびプラスミド精製を行ない、FpL_C4を発現可能なベクター
(pET-FpL_C4と命名)を取得した。
(5)(4)で取得した発現ベクターpET-FpL_C4のうち、配列番号19に記
載のFpL_C4をコードするポリヌクレオチドおよびその周辺領域について、実施例1
(5)と同様な方法で配列解析を行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C4に、配列番号19に記載の配列か
らなるポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
実施例5 FpL_C4への変異導入およびライブラリ作製
実施例4で作製した発現ベクターpET-FpL_C4のうち、免疫グロブリン結合性
タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号19)に、実施例2と同様の方
法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを作製した。変異
導入率は、3.5%であった。
実施例6 FpL_C4アミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例5で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)または実施例4で
作製したFpL_C4(配列番号18)を発現する形質転換体を、実施例3(1)から(
2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M NaOHと等量混合し
42℃で15分間アルカリ処理を行なった。
(3)実施例3(4)に記載のELISA法を用いて残存活性を算出した。
(4)約600株の形質転換体を評価し、その中から天然型(アミノ酸置換がない)F
pL_C4(配列番号18)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性
タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(5)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(7)(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、実
施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)に記載の方法でタン
パク質抽出液を調製した。
(8)(7)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(9)処理時間を15時間にした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理
後、実施例3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表3に示す。配列番号18に記載のアミノ酸配列において、少なくともGlu1
GlyおよびAsn50Aspより選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブ
リン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C4(配列番号18)と比較しアルカリ安定
性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000003
実施例7 FpL_C3アミノ酸置換集積体の作製(その1)
(1)FpL_C3アミノ酸置換集積体の設計
実施例3で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上に
関与するアミノ酸置換をFpL_C3(配列番号1)に対し集積することで、更なるアル
カリ安定性の向上を図った。具体的には、以下の(a)から(l)に示す12種類の免疫
グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
(a)FpL_C3に対し、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62Ty
rのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号23、FpL_C3 3aと命名)
(b)FpL_C3に対し、Glu49Val、Asn50TyrおよびGlu52Gl
yのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号27、FpL_C3 3bと命名)
(c)FpL_C3に対し、Asn44Ser、Asn50TyrおよびGlu52Gl
yのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号30、FpL_C3 3cと命名)
(d)FpL_C3に対し、Asn44Asp、Asn50TyrおよびGlu52Gl
yのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号33、FpL_C3 3dと命名)
(e)FpL_C3に対し、Glu49Val、Asn50Tyr、Asn62Tyrの
アミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号36、FpL_C3 3eと命名)
(f)FpL_C3に対し、Asn44Ser、Glu49Val、Asn50Tyr、
Asn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号38、FpL_C3
4aと命名)
(g)FpL_C3に対し、Asn44Asp、Glu49Val、Asn50Tyr、
Asn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号40、FpL_C3
4bと命名)
(h)FpL_C3に対し、Glu49Val、Asn50Tyr、Glu52Glyお
よびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号42、FpL_C
3 4cと命名)
(i)FpL_C3に対し、Asn44Ser、Asn50Tyr、Glu52Glyお
よびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号44、FpL_C
3 4dと命名)
(j)FpL_C3に対し、Asn44Asp、Glu49Val、Asn50Tyrお
よびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号46、FpL4e
と命名)
(k)FpL_C3に対し、Asn44Ser、Glu49Val、Asn50Tyr、
Glu52GlyおよびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番
号48、FpL_C3 5aと命名)
(l)FpL_C3に対し、Asn44Asp、Glu49Val、Asn50Tyr、
Glu52GlyおよびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番
号50、FpL_C3 5bと命名)
(2)FpL_C3アミノ酸置換集積体の作製
以下、前記(a)から(l)に示す12種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製
方法について説明する。
(a)FpL_C3 3a
本タンパク質は、実施例3で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中から
Asn62Tyrを選択し、当該アミノ酸置換をFpL_C3 2a(配列番号11)に
導入することで作製した。
(a-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3 3a(配列番号
23)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースP
CRは、FpL_C3 2aをコードするポリヌクレオチド(配列番号24)を含む発現
ベクター(以下、「pET-FpL_C3 2a」とも表記する)を鋳型DNAとし、配
列番号25に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCR Forward Pri
merとし、配列番号26に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCR Reve
rse Primerとして、表4に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で
2分間熱処理し、95℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、7
2℃で6分の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃
で7分間熱処理することで行なった。
Figure 2023064059000004
(a-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該処理
産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(a-3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培
養後、QIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN社製)を用
いて発現ベクター(pET-FpL_C3 3aと命名)を抽出した。
(a-4)pET-FpL_C3 3aのヌクレオチド配列の解析を、実施例1(5)
と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3 3aにFpL_C3 3a(配
列番号23)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
(b)FpL_C3 3b
本タンパク質は、実施例3で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中から
Glu49Valを選択し、当該アミノ酸置換をFpL_C3 2a(配列番号11)に
導入することで作製した。
(b-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3 3b(配列番号
27)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースP
CRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3 2aを、PCR Forward P
rimerとして配列番号28に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PCR R
everse Primerとして配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチ
ドを、それぞれ用いた他は(a-1)と同様な方法で行なった。
(b-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該処理
産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b-3)得られた形質転換体を(a-3)と同様な方法で培養および発現ベクター(
pET-FpL_C3 3bと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド
配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3 3bにFpL_C3 3b(配
列番号27)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
(c)FpL_C3 3c
本タンパク質は、実施例3で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中から
Asn44Serを選択し、当該アミノ酸置換をFpL_C3 2a(配列番号11)に
導入することで作製した。
(c-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3 3c(配列番号
30)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースP
CRは、PCR Forward Primerとして配列番号31に記載の配列からな
るオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号32に
記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は(a-1)と同様な方法で行なった。
(c-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該処理
産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c-3)得られた形質転換体を(a-3)と同様な方法で培養および発現ベクター(
pET-FpL_C3 3cと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド
配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3 3cにFpL_C3 3c(配
列番号30)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
(d)FpL_C3 3d
本タンパク質は、実施例3で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中から
Asn44Aspを選択し、当該アミノ酸置換をFpL_C3 2a(配列番号11)に
導入することで作製した。
(d-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3 3d(配列番号
33)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースP
CRは、PCR Forward Primerとして配列番号34に記載の配列からな
るオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号35に
記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は(a-1)と同様な方法で行なった。
(d-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該処理
産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(d-3)得られた形質転換体を(a-3)と同様な方法で培養および発現ベクター(
pET-FpL_C3 3dと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド
配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3 3dにFpL_C3 3d(配
列番号33)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した。
(e)FpL_C3 3e
(e-1)FpL_C3 3e(配列番号36)をコードするポリヌクレオチド(配列
番号37)を合成した。なお、合成する際、5’末端側には制限酵素NcoIの認識配列
(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にはヒスチジン6残基をコードするヌクレ
オチド配列(5’-CATCACCACCATCACCAC-3’;配列番号232)、
終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-AAGCTT-3’)を、
それぞれ付加している。
(e-2)実施例1(2)と同様の方法で、(e-1)で合成したポリヌクレオチドを
精製した。
(e-3)実施例1(3)と同様な方法で、(e-2)で得たポリヌクレオチドと予め
制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲーシ
ョン後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、培
養した。
(e-4)得られた形質転換体を、実施例1(4)と同様な方法で培養およびプラスミ
ド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C3 3eと命名)を取得後、当該発
現ベクターのヌクレオチド配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3 3eにFpL_C3 3e(配
列番号36)をコードするポリヌクレオチド(配列番号37)が挿入されていることを確
認した。
(f)FpL_C3 4a
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
4a(配列番号38)をコードするポリヌクレオチド(配列番号39)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 4aと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 4aのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 4aにFpL_C3 4a(配列番号38)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号39)が挿入されていることを確認した。
(g)FpL_C3 4b
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
4b(配列番号40)をコードするポリヌクレオチド(配列番号41)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 4bと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 4bのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 4bにFpL_C3 4b(配列番号40)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号41)が挿入されていることを確認した。
(h)FpL_C3 4c
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
4c(配列番号42)をコードするポリヌクレオチド(配列番号43)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 4cと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 4cのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 4cにFpL_C3 4c(配列番号42)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号43)が挿入されていることを確認した。
(i)FpL_C3 4d
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
4d(配列番号44)をコードするポリヌクレオチド(配列番号45)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 4dと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 4dのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 4dにFpL_C3 4d(配列番号44)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号45)が挿入されていることを確認した。
(j)FpL_C3 4e
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
4e(配列番号46)をコードするポリヌクレオチド(配列番号47)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 4eと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 4eのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 4eにFpL_C3 4e(配列番号46)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号47)が挿入されていることを確認した。
(k)FpL_C3 5a
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
5a(配列番号48)をコードするポリヌクレオチド(配列番号49)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 5aと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 5aのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 5aにFpL_C3 5a(配列番号48)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号49)が挿入されていることを確認した。
(l)FpL_C3 5b
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
5b(配列番号50)をコードするポリヌクレオチド(配列番号51)を用いた他は、
(e)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3 5bと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3 5bのヌクレオチド配列解析の結
果、pET-FpL_C3 5bにFpL_C3 5b(配列番号50)をコードするポ
リヌクレオチド(配列番号51)が挿入されていることを確認した。
実施例8 FpL_C3アミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価
(1)実施例1で作製した天然型FpL_C3(配列番号1)、実施例3で取得した変
異型(アミノ酸置換した)免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3 2a(配列番
号11)、ならびに実施例7で作製した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_
C3 3a(配列番号23)、FpL_C3 3b(配列番号27)、FpL_C3 3
c(配列番号30)、FpL_C3 3d(配列番号33)、FpL_C3 3e(配列
番号36)、FpL_C3 4a(配列番号38)、FpL_C3 4b(配列番号40
)、FpL_C3 4c(配列番号42)、FpL_C3 4d(配列番号44)、Fp
L_C3 4e(配列番号46)、FpL_C3 5a(配列番号48)およびFpL_
C3 5b(配列番号50)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(
10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)に記載の方法でタンパク質抽出液を調製
した。
(2)(1)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(3)処理に用いたNaOHの濃度を0.4M(終濃度0.2M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表5に示す。本実施例で評価した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質はいず
れも、天然型FpL_C3(配列番号1)と比較し、残存活性が高くなっており、これら
変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性が向上していることが確認され
た。また、FpL_C3 3a(配列番号23)、FpL_C3 3b(配列番号27)
、FpL_C3 3c(配列番号30)、FpL_C3 3d(配列番号33)およびF
pL_C3 3e(配列番号36)の結果を比較したところ、Asn62Tyrのアミノ
酸置換を有した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3 3aおよびFp
L_C3 3e)で特にアルカリ安定性が向上していたことから、Asn62Tyrのア
ミノ酸置換が免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性の向上に大きく寄与する
ことがわかる。
Figure 2023064059000005
実施例9 FpL_C3への変異導入およびライブラリ作製(その2)
実施例3の結果を踏まえ、変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のうち、特定位置の
アミノ酸残基が複数の選択肢を持つように混合塩基を含んだオリゴヌクレオチドを設計し
、それらを連結することで変異体ライブラリを作製した。以下詳細を具体的に述べる。
(1)配列番号2に記載の配列からなる天然型FpL_C3をコードするポリヌクレオ
チドを5分割し、44番目のアミノ酸残基、49番目のアミノ酸残基、50番目のアミノ
酸残基、52番目のアミノ酸残基および62番目のアミノ酸残基が複数の選択肢を持つよ
う、オリゴヌクレオチドを設計した(配列番号52から61)。なお、設計したオリゴヌ
クレオチドの内容は以下の通りである。
[配列番号52]
1番目から24番目まで:pET26bとの連結部
28番目から80番目まで:配列番号2の1番目から53番目までに相当する領域
57番目から80番目まで:配列番号54との連結部
[配列番号53]配列番号52の相補配列
[配列番号54]
1番目から75番目まで:配列番号2の30番目から104番目までに相当する領域
1番目から24番目まで:配列番号52との連結部
51番目から75番目まで:配列番号56との連結部
[配列番号55]配列番号54の相補配列
[配列番号56]
1番目から75番目まで:配列番号2の80番目から156番目までに相当する領域
1番目から25番目まで:配列番号54との連結部
51番目から77番目まで:配列番号58との連結部
[配列番号57]配列番号56の相補配列
[配列番号58]
1番目から76番目まで:配列番号2の130番目から205番目までに相当する領域
1番目から27番目まで:配列番号56との連結部
47番目から76番目まで:配列番号60との連結部
[配列番号59]配列番号58の相補配列
[配列番号60]
1番目から35番目まで:配列番号2の176番目から210番目までに相当する領域
1番目から30番目まで:配列番号58との連結部
36番目から53番目まで:ヒスチジン6残基をコードする領域
54番目から56番目まで:終止コドンをコードする領域
57番目から80番目まで:pET26bとの連結部
[配列番号61]配列番号60の相補配列
なお、配列番号56の51番目から53番目は配列番号1の44番目に相当するアミノ
酸がAsn(アスパラギン)、Asp(アスパラギン酸)、Ser(セリン)またはGl
y(グリシン)になるように、66番目から68番目は配列番号1の49番目に相当する
アミノ酸がGlu(グルタミン酸)またはVal(バリン)になるように、69番目から
71番目は配列番号1の50番目に相当するアミノ酸がAsn、Asp、SerまたはC
ys(システイン)になるように、75番目から77番目は配列番号1の52番目に相当
するアミノ酸がGlyまたはValになるように、それぞれ混合塩基を導入している。
また、配列番号58の55番目から57番目は配列番号1の62番目に相当するアミノ
酸がAsnまたはTyr(チロシン)になるように混合塩基を導入している。
(2)合成したポリヌクレオチド(配列番号52から61)を0.05pmolに希釈
後、予め制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpET-26bにN
EBBuilder(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)を用いて連結した。
(3)反応終了後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、50μ
g/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16時間)後、プレー
ト上に形成したコロニーをランダム変異体ライブラリとした。
実施例10 FpL_C3アミノ酸置換体のスクリーニング(その2)
(1)実施例3で作製したFpL_C3 2aおよび実施例9で作製した変異体ライブ
ラリ(形質転換体)を、実施例3(1)から(2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M NaOHと等量混合し
43℃で15分間アルカリ処理を行なった。
(3)実施例3(4)に記載のELISA法を用いて残存活性を算出した。
(4)約540株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3 2a(配列番号1
1)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形
質転換体を選択した。
(5)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(7)(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体、実施
例1で作製したFpL_C3(配列番号1)を発現する形質転換体および実施例3で取得
したFpL_C3 2a(配列番号11)を発現する形質転換体のいずれかを、実施例3
(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質
抽出液を調製した。
(8)(7)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(9)処理時間を15時間にした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理
後、実施例3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
(4)で選択した形質転換体が発現する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号1
)に対するアミノ酸置換位置、アルカリ処理したときの残存活性[%]およびアルカリ未
処理のタンパク質溶液の抗体結合活性(吸光度)をまとめた結果を表6に示す。本スクリ
ーニングでは、
FpL_C3に対し、Asn44Asp、Asn50Tyr、Glu52ValおよびA
sn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3 4fと命名、配列
番号62)、
FpL_C3に対し、Asn44Gly、Glu49Val、Asn50Tyr、Glu
52ValおよびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3
5cと命名、配列番号63)、
FpL_C3に対し、Asn44Gly、Glu49Val、Asn50Ser、Glu
52ValおよびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3
5dと命名、配列番号64)、
の3つの変異型免疫グロブリン結合性タンパク質を取得した。
上記3つの変異型免疫グロブリン結合性タンパク質は、いずれもFpL_C3 2aに
対しアルカリ安定性が向上していた。このことから配列番号1に記載のアミノ酸配列にお
いて、少なくともAsn44Asp、Asn44Gly、Glu49Val、Asn50
Ser、Glu52ValおよびAsn62Tyrより選択される1以上のアミノ酸置換
を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、アルカリ安定性が向上しているといえる。
ただし、Asn50Serのアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質(F
pL_C3 5d)は、Asn50Tyrのアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性
タンパク質(FpL_C3 2a、FpL_C3 4fおよびFpL_C3 5c)と比
較し、アルカリ未処理のタンパク質溶液の抗体結合活性が大きく低下していた。
Figure 2023064059000006
実施例11 FpL_C3への変異導入およびライブラリ作製(その3)
(1)実施例1で作製したpET-FpL_C3を鋳型として、21番目、22番目、
31番目、49番目、51番目および62番目のアミノ酸残基に対する飽和置換体ライブ
ラリを作製した。プライマーは、22c-Trick法(Sabrina Kille
et.al.,ACS Synthetic Biology,2013,2,83-9
2)に倣い、変異導入箇所に適切な混合塩基を配置し、変異導入箇所を中心としたインバ
ースPCRができるように設計した(配列番号65から100)。これらのプライマーを
一箇所の置換につき6本一組として、表7および表8の組成で混合し、PCR Prim
er混合液(Forward/Reverse primer mix)を調製した。
Figure 2023064059000007
Figure 2023064059000008
(2)実施例1で作製したpET-FpL_C3を鋳型DNAとしてインバースPCR
による部位特異的変異導入を行なった。インバースPCRは表9に示す組成の反応液を調
製後、当該反応液を98℃で2分間熱処理し、95℃で10秒間の第1ステップ、50℃
で5秒間の第2ステップ、72℃で6分の第3ステップを1サイクルとする反応を30サ
イクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
Figure 2023064059000009
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
実施例12 FpL_C3アミノ酸置換体のスクリーニング(その3)
(1)実施例1で作製したFpL_C3を発現可能な形質転換体、および実施例11で
作製した部位特異的アミノ酸置換体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(1)から(
2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例3(3)と同様な方
法でアルカリ処理を行ない、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて残存活性を算
出した。
(3)約500株の形質転換体を評価し、その中から天然型FpL_C3(配列番号1
)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質
転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例1で作製したFpL_C3(配列番号1)を発現する形質転換体を、実施例3(8
)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質抽出
液を調製した。
(7)(6)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(8)実施例3(13)に記載の方法でアルカリ処理後、実施例3(14)と同様な方
法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
(3)で選択した形質転換体が発現する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号1
)に対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理したときの残存活性[%]をまとめた結
果を表10に示す。配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともGly21A
rg、Lys22Thr、Thr31Leu、Glu49Thr、Glu49Ile、G
ly51Val、Asn62His、Asn62Arg、Asn62Leu、Asn62
Met、Asn62TyrおよびAsn62Trpより選択される1以上のアミノ酸置換
を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C3(配列番号1)と比
較しアルカリ安定性が向上しているといえる。
表10より、配列番号1の62番目のアスパラギン(Asn62)を、ヒスチジン(H
is)、アルギニン(Arg)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、チロシン
(Tyr)およびトリプトファン(Trp)といった、比較的嵩高いアミノ酸に置換する
ことでアルカリ安定性が向上することがわかる。中でも、Asn62Tyrのアミノ酸置
換(配列番号5)が最もアルカリ安定性が向上(天然型FpL_C3:46%、Asn6
2Tyr:66%)していることがわかる。Asn62以外の箇所については、Gly2
1Arg、Glu49ThrおよびGly51Valのアミノ酸置換でアルカリ安定性が
特に向上していた。
Figure 2023064059000010
参考例1
(1)免疫グロブリン結合性タンパク質(リジン置換体)の設計
WO2017/069158号は、FpLの免疫グロブリン結合ドメインが有するリジ
ン残基を、リジン以外の他の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸に置換
することでアルカリ安定性が向上した、免疫グロブリン結合性タンパク質を開示している
。そこで、前記文献による効果を確認すべく、FpLの免疫グロブリン結合ドメインが有
するリジン残基をリジン以外の他の塩基性アミノ酸であるアルギニン残基に置換した、免
疫グロブリン結合性タンパク質を作製した。具体的には、以下の(α)から(δ)に示す
4種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計した。
(α)FpLの免疫グロブリン結合ドメインC1(GenBank No.AAA675
03の249番目から317番目までのアミノ酸残基、配列番号112、以下「FpL_
C1」とも表記)が有する全てのリジン残基(具体的には配列番号112の12番目、2
8番目、33番目、46番目、47番目、59番目および66番目のリジン残基)をアル
ギニン残基に置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号114、以下「FpL
_C1KR」とも表記)。
(β)FpLの免疫グロブリン結合ドメインC2(GenBank No.AAA675
03の320番目から389番目までのアミノ酸残基、配列番号113、以下「FpL_
C2」とも表記)が有する全てのリジン残基(具体的には配列番号113の2番目、7番
目、13番目、22番目、29番目、38番目、48番目および67番目のリジン残基)
をアルギニン残基に置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号115、以下「
FpL_C2KR」とも表記)。
(γ)FpL_C3(配列番号1)の全てのリジン残基(具体的には配列番号1の7番目
、13番目、22番目、29番目、38番目、48番目および67番目のリジン残基)を
アルギニン残基に置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号116、以下「F
pL_C3KR」とも表記)
(δ)FpL_C4(配列番号18)の全てのリジン残基(具体的には配列番号18の7
番目、13番目、22番目、29番目、48番目および67番目のリジン残基)をアルギ
ニン残基に置換した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号117、以下「FpL_
C4KR」とも表記)
(2)免疫グロブリン結合性タンパク質(リジン置換体)の作製
(α)FpL_C1KR
(α-1)FpL_C1KR(配列番号114)をコードするポリヌクレオチド(配列
番号120)を合成した。なお、合成する際、5’末端側には制限酵素NcoIの認識配
列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にはヒスチジン6残基をコードするヌク
レオチド配列(5’-CATCACCACCATCACCAC-3’;配列番号232)
、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGCTT-3’)
を、それぞれ付加している。
(α-2)実施例1(2)と同様の方法で、(α-1)で合成したポリヌクレオチドを
精製した。
(α-3)実施例1(3)と同様な方法で、(α-2)で得たポリヌクレオチドと予め
制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲーシ
ョン後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、培
養した。
(α-4)得られた形質転換体を、実施例1(4)と同様な方法で培養およびプラスミ
ド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C1KRと命名)を取得後、当該発現
ベクターのヌクレオチド配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法で行なった。配列解
析の結果、発現ベクターpET-FpL_C1KRに、FpL_C1KR(配列番号11
4)をコードするポリヌクレオチド(配列番号120)が挿入されていることを確認した
(β)FpL_C2KR
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C2
KR(配列番号115)をコードするポリヌクレオチド(配列番号121)を用いた他は
、(α)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C2KRと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C2KRのヌクレオチド配列解析の結果
、pET-FpL_C2KRにFpL_C2KR(配列番号115)をコードするポリヌ
クレオチド(配列番号121)が挿入されていることを確認した。
(γ)FpL_C3KR
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C3
KR(配列番号116)をコードするポリヌクレオチド(配列番号122)を用いた他は
、(α)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C3KRと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C3KRのヌクレオチド配列解析の結果
、pET-FpL_C3KRにFpL_C3KR(配列番号116)をコードするポリヌ
クレオチド(配列番号122)が挿入されていることを確認した。
(δ)FpL_C4KR
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C4
KR(配列番号117)をコードするポリヌクレオチド(配列番号123)を用いた他は
、(α)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C4KRと命
名)を取得した。発現ベクターpET-FpL_C4KRのヌクレオチド配列解析の結果
、pET-FpL_C4KRにFpL_C4KR(配列番号117)をコードするポリヌ
クレオチド(配列番号123)が挿入されていることを確認した。
(3)免疫グロブリン結合性タンパク質(天然型)の作製
(ε)FpL_C1
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C1
(配列番号112)をコードするポリヌクレオチド(配列番号118)を用いた他は、(
α)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C1と命名)を取
得した。発現ベクターpET-FpL_C1のヌクレオチド配列解析の結果、pET-F
pL_C1にFpL_C1(配列番号112)をコードするポリヌクレオチド(配列番号
118)が挿入されていることを確認した。
(ζ)FpL_C2
免疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、FpL_C2
(配列番号113)をコードするポリヌクレオチド(配列番号119)を用いた他は、(
α)と同様な方法で形質転換体および発現ベクター(pET-FpL_C2と命名)を取
得した。発現ベクターpET-FpL_C2のヌクレオチド配列解析の結果、pET-F
pL_C1にFpL_C1(配列番号113)をコードするポリヌクレオチド(配列番号
119)が挿入されていることを確認した。
参考例2
(1)実施例1で作製したFpL_C3(配列番号1)、実施例4で作製したFpL_
C4(配列番号18)、ならびに参考例1で作製したFpL_C1(配列番号112)、
FpL_C2(配列番号113)、FpL_C1KR(配列番号114)、FpL_C2
KR(配列番号115)、FpL_C3KR(配列番号116)およびFpL_C4KR
(配列番号117)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と
同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前
記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)あらかじめ0.5MのNaClと0.02Mイミダゾールとを含む0.05Mト
リス緩衝液(pH7.5)(以下、洗浄緩衝液と表記)で平衡化したNi-NTA Se
pharose 6 Fast Flow(Cytiva社製)を充填したカラムに、(
1)で清澄化した上清を添加し、前記カラムに充填した担体の10倍量の洗浄緩衝液で洗
浄後、0.5MのNaClと0.5Mイミダゾールとを含む0.05Mトリス緩衝液(p
H7.5)を通液することで、免疫グロブリン結合性タンパク質に相当する画分を回収し
た。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミド電
気泳動)も実施し、前記タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理温度を42
℃に、処理時間を15分に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカ
リ処理後、実施例3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価し
た。
結果を表11に示す。FpL_C2(配列番号113)、FpL_C3(配列番号1)
およびFpL_C4(配列番号18)はリジン残基の全てをアルギニン残基に置換(Fp
L_C2KR(配列番号115)、FpL_C3KR(配列番号116)およびFpL_
C4KR(配列番号117))することで、アルカリ安定性が向上した。
Figure 2023064059000011
実施例13 FpL_C4KRへの変異導入およびライブラリ作製
(1)参考例1(δ)で取得した、pET-FpL_C4KRを鋳型として、7番目お
よび29番目のアミノ酸残基に対する飽和置換体ライブラリを作製した。プライマーは、
実施例11(1)と同様、22c-Trick法に倣い、変異導入箇所に適切な混合塩基
を配置し、変異導入箇所を中心としたインバースPCRができるように設計した(配列番
号124から135)。これらのプライマーを一箇所の置換につき6本一組として、表7
および表12の組成で混合し、PCR Primer混合液(Forward/Reve
rse primer mix)を調製した。
Figure 2023064059000012
(2)pET-FpL_C4KRを鋳型DNAとした他は、実施例11(2)と同様な
方法でインバースPCRによる部位特異的変異導入を行なった。
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
実施例14 FpL_C4KRアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)参考例1(δ)で作製したFpL_C4KR(配列番号117)を発現する形質
転換体および実施例13で作製した部位特異的アミノ酸置換体ライブラリ(形質転換体)
を実施例3(1)から(2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例3(3)と同様な方
法でアルカリ処理を行ない、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて残存活性を算
出した。
(3)約200株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C4KR(配列番号11
7)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形
質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸置換箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
参考例1で作製したFpL_C4KR(配列番号117)を発現する形質転換体を、実施
例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパ
ク質抽出液を調製した。
(7)(6)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(8)実施例3(13)に記載の方法でアルカリ処理後、実施例3(14)と同様な方
法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
(3)で選択した形質転換体が発現する免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号1
17)に対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理したときの残存活性[%]をまとめ
た結果を表13に示す。配列番号117に記載のアミノ酸配列において、少なくともLy
s(Arg)7Ala(この表記は配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基
(配列番号18では7番目のリジン)が一旦アルギニンに置換後、さらにアラニンに置換
されていることを表す、以下同様)および/またはLys(Arg)29Proのアミノ
酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、FpL_C4KR(配列番号117
)と比較しアルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000013
実施例15 FpL_C3KRアミノ酸置換集積体の作製
(1)FpL_C3KRアミノ酸置換集積体の設計
実施例8および実施例12で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアル
カリ安定性向上に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KR(配列番号116)に対し集
積することで、更なる安定性の向上を図った。具体的には、以下の(m)から(p)に示
す4種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
(m)FpL_C3KRに対し、Gly21Argのアミノ酸置換を導入したタンパク質
(FpL_C3KR 1aと命名)
(n)FpL_C3KRに対し、Gly51Valのアミノ酸置換を導入したタンパク質
(FpL_C3KR 1bと命名)
(o)FpL_C3KRに対し、Asn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質
(FpL_C3KR 1cと命名)
(p)FpL_C3KRに対し、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62
Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3KR 3aと命名)
(2)FpL_C3KRアミノ酸置換集積体の作製
以下、前記(m)から(p)に示す4種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方
法について説明する。
(m)FpL_C3KR 1a
本タンパク質は、実施例12で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中か
らGly21Argを選択し、当該アミノ酸残基をFpL_C3KR(配列番号116)
に導入することで作製した。
(m-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KR 1a(配列
番号138)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KRを、PCR Forward
Primerとして配列番号146に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PC
R Reverse Primerとして配列番号147に記載の配列からなるオリゴヌ
クレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(m-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(m-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KR 1aと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KR 1aにFpL_C3KR
1a(配列番号138)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(n)FpL_C3KR 1b
本タンパク質は、実施例12で判明したアルカリ安定性が向上するアミノ酸置換の中か
らGly51Valを選択し、当該アミノ酸残基をFpL_C3KR(配列番号116)
に導入することで作製した。
(n-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KR 1b(配列
番号139)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KRを含んだポリヌクレオチドを
、PCR Forward Primerとして配列番号148に記載の配列からなるオ
リゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号149に記
載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様
な方法で行なった。
(n-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(n-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KR 1bと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KR 1bにFpL_C3KR
1b(配列番号139)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(o)FpL_C3KR 1c
(o-1)pET26bおよびFpL_C3KR 1c(配列番号140)をコードす
るポリヌクレオチド(配列番号150)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KR
1cのヌクレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KR 1cの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号150の1番目から6
0番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KR 1cの53番目から70番目まで
のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号150の157番目から210
番目までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列
番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGC
TT-3’)
第二領域:FpL_C3KR 1cの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号153[forward]および154[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KR1cの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコードす
るヌクレオチド配列(配列番号155[forward]および156[reverse
]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(o-2)インバースPCRにより、前記第一領域のポリヌクレオチドを調製した。イ
ンバースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C4KRを、PCR Forwa
rd Primerとして配列番号151に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、
PCR Reverse Primerとして配列番号152に記載の配列からなるオリ
ゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。イ
ンバースPCR後、前記第一領域を含むポリヌクレオチドを精製した。
(o-3)(o-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(o-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を、NEBuilder(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)を用いて連結した
。なお、前記三領域(ポリヌクレオチドとしては5種類)のポリヌクレオチドはそれぞれ
、反応液中に0.05pmol添加した。
(o-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(o-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と
同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KR 1cにFpL_C3KR
1c(配列番号140)をコードするポリヌクレオチド(配列番号150)が挿入されて
いることを確認した。
(p)FpL_C3KR 3a
(p-1)pET26bおよびFpL_C3KR 3a(配列番号141)をコードす
るポリヌクレオチド(配列番号157)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KR
3aのヌクレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KR 3aの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号141の1番目から6
0番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KR 3aの53番目から70番目まで
のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号141の157番目から210
番目までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列
番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGC
TT-3’)
第二領域:FpL_C3KR 3aの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号153[forward]および154[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KR 3aの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号158[forward]および159[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(p-2)(o-2)に記載のインバースPCRにより前記第一領域のポリヌクレオチ
ドを調製し、精製した。
(p-3)(p-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(p-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を(o-3)と同様な方法で連結した。
(p-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(p-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と
同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KR 3aにFpL_C3KR
3a(配列番号141)をコードするポリヌクレオチド(配列番号157)が挿入されて
いることを確認した。
実施例16 FpL_C3アミノ酸置換集積体の作製(その2)
(1)FpL_C3アミノ酸置換集積体の設計
FpL_C3KR(配列番号116)において、リジン残基から置換したアルギニン残
基の一部を他のアミノ酸残基に置換した(具体的には、Lys(Arg)7Ala、Ly
s(Arg)22GlnおよびLys(Arg)29Ileのアミノ酸置換を有した)免
疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3KX(配列番号142)を作製し、実施例8
および実施例12で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性
向上に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX(配列番号142)に対し集積した。具
体的には、以下の(q)から(s)に示す4種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設
計し、作製した。
(q)FpL_C3KXに対し、Gly21Argのアミノ酸置換を導入したタンパク質
(FpL_C3KX 1aと命名)
(r)FpL_C3KXに対し、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62
Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3KX 3aと命名)
(s)FpL_C3KXに対し、Gly21Arg、Asn50Tyr、Glu52Gl
yおよびAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入したタンパク質(FpL_C3KX 4
gと命名)
(2)FpL_C3 KXの作製
(2-1)pET26bおよびFpL_C3KX(配列番号142)をコードするポリ
ヌクレオチド(配列番号161)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KXのヌクレ
オチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KXの1番目から20番目ま
でのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号161の1番目から60番目
までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KXの53番目から70番目までのアミノ酸残
基をコードするヌクレオチド配列(配列番号161の157番目から210番目までのヌ
クレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号232)
、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGCTT-3’)
第二領域:FpL_C3KXの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコードするヌ
クレオチド配列(配列番号163[forward]および164[reverse]に
記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KXの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコードするヌ
クレオチド配列(配列番号155[forward]および156[reverse]に
記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(2-2)インバースPCRにより、前記第一領域を含むポリヌクレオチドを調製した
。インバースPCRは、鋳型DNAとしてFpL_C4KR K7A(FpL_C4KR
にLys(Arg)7Alaのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質
、配列番号136)をコードするポリヌクレオチド(配列番号160)を含む発現ベクタ
ーpET-FpL_C4KR K7Aを、PCR Forward Primerとして
配列番号162に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse
Primerとして配列番号152に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞ
れ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。インバースPCR後、前記第
一領域を含むポリヌクレオチドを精製した。
(2-3)(2-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(2-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を実施例15(o-3)と同様な方法で連結した。
(2-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(2-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と
同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KXにFpL_C3KX(配列番
号142)をコードするポリヌクレオチド(配列番号161)が挿入されていることを確
認した。
(3)FpL_C3KXアミノ酸置換集積体の作製
以下、前記(q)から(s)に示す3種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方
法について説明する。
(q)FpL_C3KX 1a
(q-1)pET26bおよびFpL_C3KX 1a(配列番号143)をコードす
るポリヌクレオチド(配列番号165)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KX
1aのヌクレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KX 1aの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号165の1番目から6
0番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KX 1aの53番目から70番目まで
のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号165の157番目から210
番目までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列
番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGC
TT-3’)
第二領域:FpL_C3KX 1aの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号166[forward]および167[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KX 1aの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号155[forward]および156[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(q-2)(2-2)に記載のインバースPCRにより前記第一領域のポリヌクレオチ
ドを調製し、精製した。
(q-3)(q-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(q-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を実施例15(o-3)と同様な方法で連結した。
(q-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(q-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 1aと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 1aにFpL_C3KX
1a(配列番号143)をコードするポリヌクレオチド(配列番号165)が挿入されて
いることを確認した。
(r)FpL_C3KX 3a
(r-1)pET26bおよびFpL_C3KX 3a(配列番号144)をコードす
るポリヌクレオチド(配列番号168)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KX
3aのヌクレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KX 3aの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号168の1番目から6
0番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KX 3aの53番目から70番目まで
のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号168の157番目から210
番目までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列
番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGC
TT-3’)
第二領域:FpL_C3KX 3aの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号169[forward]および170[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KX 3aの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号158[forward]および159[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(r-2)インバースPCRにより、前記第一領域のポリヌクレオチドを調製した。イ
ンバースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C4KR K7Aを、PCR F
orward Primerとして配列番号151に記載の配列からなるオリゴヌクレオ
チドを、PCR Reverse Primerとして配列番号152に記載の配列から
なるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行な
った。インバースPCR後、前記第一領域を含むポリヌクレオチドを精製した。
(r-3)(r-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(r-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を実施例15(o-3)と同様な方法で連結した。
(r-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(r-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と
同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 3aにFpL_C3KX
3a(配列番号144)をコードするポリヌクレオチド(配列番号168)が挿入されて
いることを確認した。
(s)FpL_C3KX 4g
(s-1)pET26bおよびFpL_C3KX 4g(配列番号145)をコードす
るポリヌクレオチド(配列番号171)を含む発現ベクターpET-FpL_C3KX
4gのヌクレオチド配列を設計し、以下の3領域に分割した。
第一領域:pET26bのヌクレオチド配列、FpL_C3KX 4gの1番目から20
番目までのアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号171の1番目から6
0番目までのヌクレオチド配列)、FpL_C3KX 4gの53番目から70番目まで
のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(配列番号171の157番目から210
番目までのヌクレオチド配列)、ヒスチジン6残基をコードするヌクレオチド配列(配列
番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの認識配列(5’-TAAGC
TT-3’)
第二領域:FpL_C3KX 4gの16番目から37番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号166[forward]および167[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
第三領域:FpL_C3KX 4gの33番目から57番目までのアミノ酸残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号158[forward]および159[revers
e]に記載の配列からなるポリヌクレオチド)
(s-2)(r-2)に記載のインバースPCRにより前記第一領域のポリヌクレオチ
ドを調製し、精製した。
(s-3)(s-2)で調製した前記第一領域のポリヌクレオチド、ならびに(s-1
)で設計した前記第二領域および前記第三領域のポリヌクレオチド(直接化学合成で作製
)を実施例15(o-5)と同様な方法で連結した。
(s-4)連結したポリヌクレオチドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換
した。
(s-5)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クターの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と
同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 4gにFpL_C3KX
4g(配列番号145)をコードするポリヌクレオチド(配列番号171)が挿入されて
いることを確認した。
実施例17 FpL_C3KXアミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価
(1)実施例1で作製した天然型FpL_C3(配列番号1)、参考例1で作製した変
異型(アミノ酸置換した)免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3KR(配列番号
116)、実施例15で作製した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3K
R 1a(配列番号138)、FpL_C3KR 1b(配列番号139)、FpL_C
3KR 1c(配列番号140)およびFpL_C3KR 3a(配列番号141)、な
らびに実施例16で作製した変異型免疫グロブリン結合性タンパク質FpL_C3KX(
配列番号142)、FpL_C3KX 1a(配列番号143)、FpL_C3KX 3
a(配列番号144)およびFpL_C3KX 4g(配列番号145)のいずれかを発
現する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(1
1)に記載の方法でタンパク質抽出液を調製した。
(2)(1)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(3)処理に用いたNaOHの濃度を0.4M(終濃度0.2M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表14に示す。少なくともGly21Arg、Asn50Tyr、Gly51V
al、Glu52GlyおよびAsn62Tyrより選択される1以上のアミノ酸置換を
有することで、これらアミノ酸置換を導入しない免疫グロブリン結合性タンパク質(Fp
L_C3KRおよびFpL_C3KX)と比較し、アルカリ安定性が向上しているといえ
る。特に、Asn50Tyr、Glu52GlyおよびAsn62Tyrの全てのアミノ
酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KR 3aおよびFpL
_C3KX 3a)は、特にアルカリ安定性が向上しているといえる(FpL_C3KR
:54%、FpL_C3KR 3a:86%)(FpL_C3KX:10%、FpL_C
3KX 3a:69%)。
Figure 2023064059000014
実施例18 FpL_C3KX 3aへの変異導入およびライブラリ作製
実施例16(r)で作製した発現ベクターpET-FpL_C3KX 3aのうち、免
疫グロブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号168)に
、実施例2と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブ
ラリを作製した。平均変異導入率は1.7%であった。
実施例19 FpL_C3KX 3aアミノ酸置換体のスクリーニング(その1)
(1)実施例16(r)で作製したpET-FpL_C3KX 3a(形質転換体)と
実施例18で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(1)から
(2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M NaOHと等量混合し
42℃で30分間アルカリ処理を行なった。
(3)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(4)約900株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 3a(配列番
号144)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現
する形質転換体を選択した。
(5)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(7)(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、実
施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタン
パク質抽出液を調製した。
(8)(7)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表15に示す。配列番号144に記載のアミノ酸配列において、少なくともGl
u1GlyまたはGlu1Valのアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク
質は、天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3
KX 3a(配列番号144)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000015
実施例20 FpL_C3KX 3aアミノ酸置換体のスクリーニング(その2)
(1)実施例18で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)の中から、実施
例19(1)から(3)に記載の方法で新たに約1400株の形質転換体を評価し、その
中からアルカリ安定性向上免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 3a)
と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転
換体を選択した。
(2)選択した形質転換体または実施例16(r)で作製したFpL_C3KX 3a
(配列番号144)を発現する形質転換体を培養し、QIAprep Spin Min
iprep kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(3)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(4)(1)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を、実
施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタン
パク質抽出液を調製した。
(5)(4)で調製したタンパク質抽出液中の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体
結合活性を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて測定した。
(6)処理に用いたNaOHの濃度を0.4M(終濃度0.2M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表16に示す。配列番号144に記載のアミノ酸配列において、少なくともGl
u4Lys、Glu27ArgおよびThr36Alaより選択される1以上のアミノ酸
置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C3(配列番号1)
よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 3a(配列番号144)と比較しても
、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000016
実施例21 免疫グロブリン結合性タンパク質の免疫グロブリンκ軽鎖結合性評価(そ
の1)
変異型免疫グロブリン結合性タンパク質の免疫グロブリンκ軽鎖結合活性を下記に示す
ELISA法にて測定し、アミノ酸置換によるヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性への影
響を評価した。
(1)参考例1で作製したFpL_C3KR(配列番号116)およびFpL_C4K
R(配列番号117)、実施例16で作製したFpL_C3KX 3a(配列番号144
)ならびに実施例20で取得したFpL_C3KX 3aにGlu49Aspのアミノ酸
置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質(配列番号179、以下「FpL_C3
KX 4h」とも表記)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(10
)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した
。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性を
下記に示すELISA法にて測定し、アミノ酸置換によるヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合
活性への影響を評価した。
(4-1)TBSを用いて10μg/mLに調製したポリクローナル抗体溶液を96ウェ
ルマイクロプレートのウェルに分注し固定化した(4℃、16時間)。使用したポリクロ
ーナル抗体は、
ヒトκ軽鎖subgroup 1(Vκ1)を含むハーセプチン(中外製薬社製)、
ヒトκ軽鎖subgroup 3(Vκ3)を含むHuman PDGF R alph
a抗体(R&D Systems社製)、
ヒトκ軽鎖subgroup 3(Vκ3)を含むHuman CTLA4抗体(R&D
Systems社製)および、
ヒトκ軽鎖subgroup 4(Vκ4)を含むHuman PCSK9抗体(R&D
Systems社製)、
のいずれかである。固定化後、TBSを用いて2%(w/v)に調製したスキムミルク(
ベクトン・ディッキンソン社製)を用いてブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.15M NaClおよび0.05%(w/v)Tween
20(商品名)を含む0.05M Tris緩衝液(pH7.5))で96ウェルマイク
ロプレートのウェルを洗浄後、50μg/mLに希釈した抗体結合活性を評価する免疫グ
ロブリン結合性タンパク質を含む溶液を添加し、免疫グロブリン結合性タンパク質と固定
化ポリクローナル抗体とを反応させた(30℃、1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti
-6-His Antibody(BETHYL LABORATORIES社製)を1
00μL/well添加し反応させた(30℃、1時間)。
(4-4)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Su
bstrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。次に1M リン酸を5
0μL/well添加することで反応を停止し、マイクロプレートリーダー(テカン社製
)にて450nmの吸光度を測定した。
(4-5)ポリクローナル抗体を固定化したウェルと固定化していないウェルとの吸光度
の差を計算し、当該計算した吸光度からポリクローナル抗体と変異型免疫グロブリン結合
性タンパク質との結合性を評価した。各ポリクローナル抗体間の吸光度の違いは異なるヒ
トκ軽鎖との結合性を示しており、この数値がポリクローナル抗体毎にバラツキが大きい
場合、特定のヒトκ軽鎖subgroupとの結合性が低下していることが示される。
結果を表17に示す。FpL_C4KR(配列番号117)およびFpL_C3KX_
4h(配列番号179)は各ポリクローナル抗体間のバラツキが少ないことから、ヒト免
疫グロブリンκ軽鎖とsubgroupに関係なく結合できるといえる。一方でFpL_
C3KR(配列番号116)およびFpL_C3KX3a(配列番号144)は、特にヒ
トVκ3との結合力が低下していた。以上の結果から、Glu49Aspのアミノ酸置換
を導入することで、Vκ3との結合力を付与できることがわかる。
Figure 2023064059000017
実施例22 FpL_C3KX 4hへの変異導入およびライブラリ作製
実施例20で作製したFpL_C3KX 4h(配列番号179)を発現するベクター
pET-FpL_C3KX 4hのうち、免疫グロブリン結合性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチド部分(配列番号180)に、実施例2と同様の方法でエラープローンP
CRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを作製した。平均変異導入率は1.7%
であった。
実施例23 FpL_C3KX 4hアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例22で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(
1)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施
例19(2)に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約900株の形質転換体を評価し、その中からアルカリ安定性向上免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(FpL_C3KX 4h)と比較してアルカリ安定性が向上した免
疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(5)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例20で作製したFpL_C3KX 4h(配列番号179)を発現する形質転換体
を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法
でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに
通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表18に示す。配列番号179に記載のアミノ酸配列において、少なくともGl
u9Val、Tyr53Phe、Thr54MetおよびAla69Thrより選択され
る1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のFpL_
C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 4h(配列番号1
79)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
なお、20mL培地で培養したときの精製収量を比較したところ、Lys(Gln)2
2Argのアミノ酸置換を導入することで、タンパク質精製収量が顕著に向上することを
確認した。以降、FpL_C3KX 4hにLys(Gln)22Argのアミノ酸置換
を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質をFpL_C3KX 4i(配列番号182
)と命名する。
Figure 2023064059000018
実施例24 FpL_C3KX 4iアミノ酸置換集積体の作製
(1)FpL_C3KX 4iアミノ酸置換集積体の設計
実施例23で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上
に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX 4i(配列番号182)に対し集積するこ
とで、更なる安定性の向上を図った。具体的には、以下の(t)および(u)に示す2種
類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
(t)FpL_C3KX 4iに対し、Tyr53Pheのアミノ酸置換を導入したタン
パク質(配列番号186、FpL_C3KX 5eと命名)
(u)FpL_C3KX 4iに対し、Thr54Metのアミノ酸置換を導入したタン
パク質(配列番号187、FpL_C3KX 5fと命名)
(2)FpL_C3KX 4iアミノ酸置換集積体の作製
以下、(t)および(u)に示す2種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方法
について説明する。
(t)FpL_C3KX 5e
(t-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 5e(配列
番号186)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。鋳型D
NAとしてインバースPCRはFpL_C3KX 4i(配列番号182)をコードする
ポリヌクレオチド(配列番号188)を含む発現ベクター(以下、「pET-FpL_C
3KX 4i」とも表記)を、PCR Forward Primerとして配列番号1
89に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列
番号190に記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同
様な方法で行なった。
(t-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(t-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 5eと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 5eにFpL_C3KX
5e(配列番号186)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(u)FpL_C3KX 5f
(u-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 5f(配列
番号187)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KX 4iを、PCR Forw
ard Primerとして配列番号191に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR R
everse Primerとして配列番号192に記載のオリゴヌクレオチドを、それ
ぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(u-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(u-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 5fと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 5fにFpL_C3KX
5f(配列番号187)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
実施例25 FpL_C3KX 4hアミノ酸置換体のアルカリ安定性評価
(1)実施例20で作製したFpL_C3KX 4h(配列番号179)、実施例23
で取得したFpL_C3KX 4i(配列番号182)ならびに実施例24で作製したF
pL_C3KX 5e(配列番号186)およびFpL_C3KX 5f(配列番号18
7)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培
養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心
分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理温度を55
℃、処理時間を15分に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ
処理後、実施例3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した
結果を表19に示す。実施例24で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号186
)およびFpL_C3KX 5f(配列番号187)は天然型のFpL_C3(配列番号
1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 4h(配列番号179)およびF
pL_C3KX 4i(配列番号182)と比較しても、アルカリ安定性が向上している
といえる。特に、FpL_C3KX 5eにおいて顕著なアルカリ安定性向上を確認した
(FpL_C3KX 4h:34%、FpL_C3KX 4i:48%、FpL_C3K
X 5e:73%)。
Figure 2023064059000019
実施例26 FpL_C3KX 5eへの変異導入およびライブラリ作製
実施例24で作製した発現ベクターpET-FpL_C3KX 5eのうち、免疫グロ
ブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号193)に、実施
例2と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを
作製した。平均変異導入率は1.9%であった。
実施例27 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例26で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を実施例3(1
)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例
19(2)に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約900株の形質転換体を評価し、その中からアルカリ安定性向上免疫グロブリ
ン結合性タンパク質(FpL_C3KX 5e)と比較してアルカリ安定性が向上した免
疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例24で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号186)を発現する形質転換体
を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法
でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに
通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を2.0M(終濃度1.0M)に、処理時間を17
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表20に示す。配列番号186に記載のアミノ酸配列において、少なくともGl
u1Val、Glu4Gly、Gly21ArgおよびGlu(Gly)52Aspより
選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型の
FpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 5e(配
列番号186)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000020
実施例28 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体作製(その1)
(1)FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体の設計
実施例27で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上
に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX 5eに対し集積することで、更なる安定性
の向上を図った。具体的には、以下の(v)から(x)に示す3種類の免疫グロブリン結
合性タンパク質を設計し、作製した。
(v)FpL_C3KX 5eに対し、Glu4GlyおよびGlu(Gly)52As
pのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号199、FpL_C3KX 6aと命
名)
(w)FpL_C3KX 5eに対し、Lys(Ala)7SerおよびGlu(Gly
)52Aspのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号200、FpL_C3KX
5gと命名)
(x)FpL_C3KX 5eに対し、Glu4GlyおよびLys(Ala)7Ser
のアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号201、FpL_C3KX 6bと命名
(2)FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体の作製
以下、(v)から(x)に示す3種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作製方法に
ついて説明する。
(v)FpL_C3KX 6a
(v-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 6aをコー
ドするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースPCRは、鋳型
DNAとしてFpL_C3KX 5e E52D(FpL_C3KX 5eにGlu(G
ly)52Aspのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番号
198)をコードするポリヌクレオチド(配列番号202)を含む発現ベクターpET-
FpL_C3KX 5e E52Dを、PCR Forward Primerとして配
列番号203に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse P
rimerとして配列番号204に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ
用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(v-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(v-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 6aと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 6aにFpL_C3KX
6a(配列番号199)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(w)FpL_C3KX 5g
(w-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 5gをコー
ドするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースPCRは、鋳型
DNAとしてpET-FpL_C3KX 5e E52Dを、PCR Forward
Primerとして配列番号205に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、PCR
Reverse Primerとして配列番号206に記載の配列からなるオリゴヌク
レオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(w-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(w-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 5gと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 5gにFpL_C3KX
5g(配列番号200)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(x)FpL_C3KX 6b
(x-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 6bをコー
ドするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースPCRは、鋳型
DNAとしてFpL_C3KX 5e E4G(FpL_C3KX 5eにGlu4Gl
yのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番号195)をコー
ドするポリヌクレオチド(配列番号207)を含む発現ベクターpET-FpL_C3K
X 5e E4Gを、PCR Forward Primerとして配列番号205に記
載のオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号20
8に記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法
で行なった。
(x-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(x-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 6bと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 6bにFpL_C3KX
6b(配列番号201)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
実施例29 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価(その
1)
(1)実施例24で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号186)ならびに実施
例28で作製したFpL_C3KX 6a(配列番号199)、FpL_C3KX 5g
(配列番号200)およびFpL_C3KX 6b(配列番号201)のいずれかを発現
する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11
)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清
をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を2.0M(終濃度1.0M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表21に示す。本実施例で作製したFpL_C3KX 6a(配列番号199)
、FpL_C3KX 5g(配列番号200)およびFpL_C3KX 6b(配列番号
201)は、いずれも天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上し
たFpL_C3KX 5e(配列番号186)と比較しても、アルカリ安定性が向上して
いるといえる。中でもFpL_C3KX 6aは最も優れたアルカリ安定性を示した(F
pL_C3KX 5e:55%、FpL_C3KX 6a:62%)。
Figure 2023064059000021
実施例30 本発明のタンパク質の免疫グロブリン溶出pH評価
実施例1で作製した天然型FpL_C3(配列番号1)、または実施例12で取得した
変異型(アミノ酸置換した)免疫グロブリンタンパク質FpL_C3 G21R(FpL
_C3にGly21Argのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、
配列番号101)、FpL_C3 G51V(FpL_C3にGly51Valのアミノ
酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番号106)、FpL_C3
N62H(FpL_C3にAsn62Hisのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結
合性タンパク質、配列番号107)、FpL_C3 N62R(FpL_C3にAsn6
2Argのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番号108)
、FpL_C3 N62Y(FpL_C3にAsn62Tyrのアミノ酸置換を導入した
免疫グロブリン結合性タンパク質、配列番号5)もしくはFpL_C3 N62W(Fp
L_C3にAsn62Trpのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質
、配列番号111)に結合した免疫グロブリンを溶出可能なpH(以下、単に「溶出pH
」とも表記)を以下の方法で測定した。
(1)免疫グロブリンを固定化した不溶性担体であるIgG Sepharose 6
Fast Flow(Cytiva社製)の50%(w/v)水スラリーを調製し、当
該スラリー0.5mLをTricorn 5/50カラム(内径5mm×長さ50mm:
Cytiva社製)に入れた後、ポンプで純水を送液することで、IgG Sephar
ose充填カラムを作製した。
(2)(1)で作製したIgG Sepharose充填カラムをAKTA AVAN
T 25(Cytiva社製)に設置した。前記カラムを0.1Mクエン酸緩衝液(pH
6.5)(以下A液)で平衡化し、0.1Mクエン酸緩衝液(pH2.2)(以下B液)
で洗浄後、A液で再度平衡化した。
(3)A液で1g/Lに調製した免疫グロブリン結合性タンパク質溶液100μLを、
IgG Sepharose充填カラムにアプライし、A液を5カラム体積分送液後、1
0分間でB液が0%から100%となるリニアグラジエント溶出で免疫グロブリン結合性
タンパク質を溶出させた。得られたクロマトグラムを解析し、最も吸光度が高くなる溶出
位置でのpHを溶出pHとした。
結果を表22に示す。配列番号1に記載のアミノ酸配列において、少なくともGly2
1Arg、Gly51Val、Asn62His、Asn62Arg、Asn62Tyr
およびAsn62Trpより選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結
合性タンパク質は、天然型FpL_C3と比較し溶出pHが向上している、すなわち免疫
グロブリン結合性タンパク質に結合した免疫グロブリン(抗体)をより温和な条件で溶出
できる、といえる。
Figure 2023064059000022
実施例31 FpL_C3KX 6aへの変異導入およびライブラリ作製
実施例28で作製した発現ベクターpET-FpL_C3KX 6aのうち、免疫グロ
ブリン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号211)に、実施
例2と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを
作製した。平均変異導入率は1.8%であった。
実施例32 FpL_C3KX 6aアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)実施例31で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を実施例3(1
)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M N
aOHと等量混合し62℃で30分間アルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約1800株の形質転換体を評価し、その中からアルカリ安定性向上免疫グロブ
リン結合性タンパク質(FpL_C3KX 6a)と比較してアルカリ安定性が向上した
免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体、実施
例1で作製したFpL_C3(配列番号1)を発現する形質転換体、参考例1で作製した
FpL_C4KR(配列番号117)を発現する形質転換体、および実施例28で作製し
たFpL_C3KX 6a(配列番号199)を発現する形質転換体のいずれかを、実施
例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパ
ク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清
澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を2.0M(終濃度1.0M)に、処理時間を17
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表23に示す。配列番号199に記載のアミノ酸配列において、少なくともTh
r2Pro、Thr2Ser、Pro3Arg、Glu5Lys、Glu9Val、Gl
u27Lys、Glu27Ile、Glu27Val、Phe32Leu、Lys(Ar
g)38Ala、Asn44Ile、Ala47ThrおよびGlu(Asp)52As
nより選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天
然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 6
a(配列番号199)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000023
実施例33 FpL_C3KX 6aアミノ酸置換体の溶出特性評価
(1)実施例1で作製したFpL_C3(配列番号1)または実施例32で取得したF
pL_C3KX 6a E27V(FpL_C3KX 6aにおいてGlu27Valの
アミノ酸置換を導入したタンパク質、配列番号222)を発現する形質転換体を、実施例
3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク
質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄
化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)変異型免疫グロブリン結合性タンパク質のヒト免疫グロブリンκ軽鎖からの酸溶
出特性を下記に示すELISA法にて測定し、アミノ酸置換による酸溶出特性への影響を
評価した。
(4-1)TBSを用いて10μg/mLに調製したハーセプチン(中外製薬社製)溶液
を96ウェルマイクロプレートのウェルに分注し固定化した(4℃、16時間)。固定化
後、TBSを用いて2%(w/v)に調製したスキムミルク(ベクトン・ディッキンソン
社製)を用いてブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.15M NaClおよび0.05%(w/v)Tween
20(商品名)を含む0.05M Tris緩衝液(pH7.5))で96ウェルマイク
ロプレートのウェルを洗浄後、2μg/mLに希釈した抗体結合活性を評価する免疫グロ
ブリン結合性タンパク質を含む溶液を添加し、免疫グロブリン結合性タンパク質と固定化
モノクローナル抗体とを反応させた(30℃、1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、一部のウェルに0.05Mクエン酸溶
液(pH2.7)を100μL/well添加し免疫グロブリン結合性タンパク質を解離
させた(25℃、2分)
(4-4)前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti-6-His
Antibody(BETHYL LABORATORIES社製)を100μL/w
ell添加し反応させた(30℃、1時間)。
(4-5)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Su
bstrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。次に1Mリン酸を50
μL/well添加することで反応を停止し、マイクロプレートリーダー(テカン社製)
にて450nmの吸光度を測定した。
(4-6)(4-3)でクエン酸溶液により免疫グロブリン結合性タンパク質を解離させ
たウェルとさせていないウェルとの吸光度の割合から、モノクローナル抗体に対する変異
型免疫グロブリン結合性タンパク質の酸における溶出率(数値が高いほど酸溶出特性に優
れる)を評価した。
結果を表24に示す。FpL_C3(配列番号1)と比較して、FpL_C3KX 6
a E27V(配列番号222)は、より酸溶出がしやすいといえる。
Figure 2023064059000024
実施例34 FpL_C3KX 6aアルギニン置換体の作製
以下の(y)から(aa)に示す3種類のFpL_C3KX 6aアルギニン置換体を
設計し、作製した。
(y)FpL_C3KX 6aに対し、Glu5Argのアミノ酸置換を導入したタンパ
ク質(配列番号223、FpL_C3KX 7aと命名)
(z)FpL_C3KX 6aに対し、Glu27Argのアミノ酸置換を導入したタン
パク質(配列番号224、FpL_C3KX 7bと命名)
(aa)FpL_C3KX 6aに対し、Ala47Argのアミノ酸置換を導入したタ
ンパク質(配列番号225、FpL_C3KX 7cと命名)
以下、(y)、(z)および(aa)に示す3種類の免疫グロブリン結合性タンパク質
の作製方法について説明する。
(y)FpL_C3KX 7a
(y-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 7a(配列
番号223)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。鋳型D
NAとしてインバースPCRはFpL_C3KX 6a(配列番号199)をコードする
ポリヌクレオチド(配列番号211)を含む発現ベクター(以下、「pET-FpL_C
3KX 6a」とも表記)を、PCR Forward Primerとして配列番号2
26に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列
番号227に記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同
様な方法で行なった。
(y-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(y-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 7aと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 7aにFpL_C3KX
7a(配列番号223)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(z)FpL_C3KX 7b
(z-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 7b(配列
番号224)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバ
ースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KX 6aを、PCR Forw
ard Primerとして配列番号228に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR R
everse Primerとして配列番号229に記載のオリゴヌクレオチドを、それ
ぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(z-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限
酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(z-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベ
クター(pET-FpL_C3KX 7bと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクターの
ヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 7bにFpL_C3KX
7b(配列番号224)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(aa)FpL_C3KX 7c
(aa-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 7c(配
列番号225)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。イン
バースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KX 6aを、PCR For
ward Primerとして配列番号230に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR
Reverse Primerとして配列番号231に記載のオリゴヌクレオチドを、そ
れぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(aa-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制
限酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(aa-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現
ベクター(pET-FpL_C3KX 7cと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクター
のヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 7cにFpL_C3KX
7c(配列番号225)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
実施例35 FpL_C3KX 6aアルギニン置換体のアルカリ安定性評価
(1)実施例28で作製したFpL_C3KX 6a(配列番号199)、ならびに実
施例34で作製したFpL_C3KX 7a(配列番号223)、FpL_C3KX 7
b(配列番号224)およびFpL_C3KX 7c(配列番号225)のいずれかを発
現する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(1
1)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上
清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理温度を25
℃、処理時間を14時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカ
リ処理後、実施例3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価し
た。
結果を表25に示す。FpL_C3KX 7a(配列番号223)、FpL_C3KX
7b(配列番号224)およびFpL_C3KX 7c(配列番号225)は天然型の
FpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 6a(配
列番号199)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。特に、FpL_
C3KX 7bにおいて顕著なアルカリ安定性向上を確認した(FpL_C3KX 6a
:52%、FpL_C3KX 7b:70%)。
Figure 2023064059000025
実施例36 FpL_C3KX 6aアルギニン置換体の溶出特性評価
(1)実施例28で作製したFpL_C3KX 6a(配列番号199)、実施例32
で取得したFpL_C3KX 6a E27V(配列番号222)、ならびに実施例34
で作製したFpL_C3KX 7b(配列番号224)およびFpL_C3KX 7c(
配列番号225)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同
様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記
抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)使用する0.05Mクエン酸溶液のpHが2.4とした他は、実施例33(4)
と同様の方法で、変異型免疫グロブリン結合性タンパク質の酸における溶出率を評価した
結果を表26に示す。FpL_C3KX 6aアルギニン置換体であるFpL_C3K
X 7b(配列番号224)およびFpL_C3KX 7c(配列番号225)は、天然
型FpL_C3(配列番号1)と比較して酸溶出特性が向上したFpL_KX6a E2
7V(配列番号222)と比較しても、酸溶出特性が向上していることがわかる。特に、
FpL_C3KX 7bにおいて顕著な酸溶出特性向上を確認した(FpL_C3KX
6a E27V:53%、FpL_C3KX 7b:61%)。
Figure 2023064059000026
実施例37 免疫グロブリン結合性タンパク質の免疫グロブリンκ軽鎖結合性評価(そ
の2)
Pro6Serのアミノ酸置換導入による、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性への影
響を評価した。具体的には、FpL_C3KX 5e(配列番号186)に対しPro6
Serのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質を作製し、評価した。
(1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 5e(配列番号
186)に対しPro6Serのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク
質(FpL_C3KX_5e_P6Sと命名、配列番号236)をコードするヌクレオチ
ド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースPCRは、鋳型DNAとしてpE
T-FpL_C3KX 5eを、PCR Forward Primerとして配列番号
234に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配
列番号235に記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と
同様な方法で行なった。
(2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限酵素
処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベクタ
ー(pET-FpL_C3KX_5e_P6Sと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクタ
ーのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。配列解析の結果
、発現ベクターpET-FpL_C3KX_5e_P6SにFpL_C3KX_5e_P
6S(配列番号236)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(4)(2)で得られたFpL_C3KX_5e_P6S(配列番号236)、および
実施例24で作製したFpL_C3KX_5e(配列番号186)のいずれかを発現する
形質転換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と
同様な方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフ
ィルターに通し、清澄化した。
(5)(4)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(6)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(7)免疫グロブリン結合性タンパク質のヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性を、実施
例21(4)と同様な方法で測定し、アミノ酸置換によるヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合
活性への影響を評価した。ただし、結合活性評価に用いたポリクローナル抗体は、
ヒトκ軽鎖subgroup 1(Vκ1)を含むハーセプチン(中外製薬社製)および

ヒトκ軽鎖subgroup 3(Vκ3)を含むHuman CTLA4抗体(R&D
Systems社製)、
のいずれかである。
参考例3
Lys38Gluのアミノ酸置換導入による、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性への
影響を評価した。具体的には、FpL_C3KR(配列番号116)に対しLys(Ar
g)38Gluのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質を作製し、評
価した。
(1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KR(配列番号116
)に対しLys(Arg)38Gluのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タ
ンパク質(FpL_C3KR_K38Eと命名、配列番号239)をコードするヌクレオ
チド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。インバースPCRは、鋳型DNAとしてp
ET-FpL_C3KRを、PCR Forward Primerとして配列番号23
7に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番
号238に記載のオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様
な方法で行なった。
(2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制限酵素
処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)(2)で得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発
現ベクター(pET-FpL_C3KX 5e_K38Eと命名)の抽出を行ない、当該
発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。配列
解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KR_K38EにFpL_C3KR_K
38E(配列番号239)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認し
た。
(4)(2)で得られたFpL_C3KR_K38E(配列番号239)、および参考
例1で作製したFpL_C3KR(配列番号116)のいずれかを発現する形質転換体を
、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法で
タンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通
し、清澄化した。
(5)(4)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(6)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、各変異型免疫
グロブリン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(7)免疫グロブリン結合性タンパク質のヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合活性を、実施
例37(7)と同様な方法で測定し、アミノ酸置換によるヒト免疫グロブリンκ軽鎖結合
活性への影響を評価した。
実施例37および比較例3の結果を合わせて表27に示す。Pro6Ser(実施例3
7)またはLys(Arg)38Glu(比較例3)のアミノ酸置換を導入することで、
Vκ3との結合力を付与できることがわかる。
Figure 2023064059000027
実施例38 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体作製(その2)
前述したVκ3との結合力を付与するアミノ酸置換および実施例27で明らかとなった
免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ安定性向上に関与するアミノ酸置換をFpL
_C3KX 5eに対し集積した。具体的には、以下の(ab)に示す免疫グロブリン結
合性タンパク質を設計し、作成した。
(ab)FpL_C3KX 5eに対し、Glu4Gly、Lys(Arg)38Gl
u、Glu(Gly)52Aspのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号240
、FpL_C3KX 7dと命名)
(ab-1)FpL_C3KX 7d(配列番号240)をコードするポリヌクレオチ
ド(配列番号241)を合成した。なお、合成する際、5’末端側には制限酵素NcoI
の認識配列(5’-CCATGG-3’)を、3’末端側にはヒスチジン6残基をコード
するヌクレオチド配列(配列番号232)、終止コドンおよび制限酵素HindIIIの
認識配列(5’-AAGCTT-3’)を、それぞれ付加している。
(ab-2)実施例1(2)と同様の方法で、(ab-1)で合成したポリヌクレオチ
ドを精製した。
(ab-3)実施例1(3)と同様な方法で、(ab-2)で得たポリヌクレオチドと
予め制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドpET-26bとをライゲ
ーション後、当該ライゲーション産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し
、培養した。
(ab-4)得られた形質転換体を、実施例1(4)と同様な方法で培養およびプラス
ミド精製を行ない、発現ベクター(pET-FpL_C3KX 7dと命名)を取得後、
当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法で行なった
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 7dにFpL_C3KX
7d(配列番号240)をコードするポリヌクレオチド(配列番号241)が挿入されて
いることを確認した。
実施例39 FpL_C3KX 5eアミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価(その
2)
(1)実施例24で作製したFpL_C3KX 5e(配列番号186)および実施例
38で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号240)のいずれかを発現する形質転
換体を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)に記載の
方法でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルタ
ーに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表28に示す。本実施例で評価したFpL_C3KX 7d(配列番号240)
は、天然型FpL_C3(配列番号1)よりもアルカリ安定性が向上したFpL_C3K
X 5e(配列番号186)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000028
実施例40 FpL_C3KX 7dへの変異導入およびライブラリ作製(その1)
実施例38で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号240)を発現するベクター
pET-FpL_C3KX 7dのうち、免疫グロブリン結合性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチド部分(配列番号241)に、実施例2と同様の方法でエラープローンP
CRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを作製した。平均変異導入率は1.9%
であった。
実施例41 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換体のスクリーニング(その1)
(1)実施例38で作製したpET-FpL_C3KX 7d(形質転換体)および実
施例40で作製したランダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(1)から(
2)と同様な方法で培養した。
(2)培養後、遠心操作によって得られた培養上清を1.0M NaOHと等量混合し
58℃で30分間アルカリ処理を行なった。
(3)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(4)約1000株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7d(配列
番号240)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発
現する形質転換体を選択した。
(5)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(6)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(7)(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例38で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号240)を発現する形質転換体
を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法
でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離後、得られた上清をフィルターに
通し、清澄化した。
(8)(7)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(9)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(10)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を1
5時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例
3(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表29に示す。配列番号240に記載のアミノ酸配列において、少なくともGl
u8Val、Lys(Ile)29Phe、Glu33ValおよびAla69Valよ
り選択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型
のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 7d(
配列番号240)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000029
実施例42 FpL_C3KX8aへの変異導入およびライブラリ作製(その2)
(1)実施例38で作製した発現ベクターpET-FpL_C3KX 7dを鋳型とし
て、23番目、41番目および52番目のアミノ酸残基に対する飽和置換体ライブラリを
作製した。プライマーは、実施例11(1)と同様、22c-Trick法に倣い、変異
導入箇所に適切な混合塩基を配置し、変異導入箇所を中心としたインバースPCRができ
るように設計した(配列番号245から250、252から257、ならびに260から
265)。これらのプライマーを一箇所の置換につき6本一組として、表7および表30
の組成で混合し、PCR Primer混合液(Forward/Reverse pr
imer mix)を調製した。
Figure 2023064059000030
(2)pET-FpL_C3KX 7dを鋳型DNAとした他は、実施例11(2)と
同様な方法でインバースPCRによる部位特異的変異導入を行なった。
(3)得られたPCR産物を精製後、反応液を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形
質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16
時間)した後、プレート上に形成したコロニーを部位特異的変異体ライブラリとした。
実施例43 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換体のスクリーニング(その2)
(1)実施例38で作製したpET-FpL_C3KX 7d(形質転換体)および実
施例42で作製した部位特異的アミノ酸置換体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(
1)から(2)と同様な方法で培養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施
例41(2)に記載のアルカリ処理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約300株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7d(配列番
号240)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現
する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)(3)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体または
実施例38で作製したFpL_C3KX 7d(配列番号240)を発現する形質転換体
を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法
でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに
通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表31に示す。配列番号240に記載のアミノ酸配列において、少なくともIl
e23Arg、Ala41Ile、Ala41Tyr、Glu(Gly,Asp)52L
eu(この表記は配列番号1の7番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基が一旦グリ
シンに置換し、さらにアスパラギン酸に置換後、ロイシンに置換されたことを表す、以下
同様)およびGlu(Gly,Asp)52Valのアミノ酸置換を有した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質は、天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上
したFpL_C3KX 7d(配列番号240)と比較しても、アルカリ安定性が向上し
ているといえる。
Figure 2023064059000031
実施例44 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の作製
(1)FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の設計
実施例41および43で明らかになった、免疫グロブリン結合性タンパク質のアルカリ
安定性向上に関与するアミノ酸置換をFpL_C3KX 7d(配列番号240)に対し
集積することで、更なるアルカリ安定性の向上を図った。具体的には、以下の(ac)か
ら(ad)に示す2種類の免疫グロブリン結合性タンパク質を設計し、作製した。
(ac)FpL_C3KX 7dに対し、Glu(Gly,Asp)52ValおよびA
la69Valのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号271、FpL_C3K
X 8aと命名)
(ad)FpL_C3KX 7dに対し、Glu(Gly,Asp)52LeuおよびA
la69Valのアミノ酸置換を導入したタンパク質(配列番号274、FpL_C3K
X 8bと命名)
(2)FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体の作製
以下、前記(ac)から(ad)に示す2種類の免疫グロブリン結合性タンパク質の作
製方法について説明する。
(ac)FpL_C3KX 8a
(ac-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 8a(配
列番号271)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。イン
バースPCRは、鋳型DNAとしてFpL_C3KX 7d_A69V(FpL_C3K
X 7dにAla69Valのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結合性タンパク質
、配列番号242)をコードするポリヌクレオチド(配列番号268)を含む発現ベクタ
ー(以下、「pET-FpL_C3KX 7d_A69V」とも表記)を、PCR Fo
rward Primerとして配列番号269に記載のオリゴヌクレオチドを、PCR
Reverse Primerとして配列番号270に記載のオリゴヌクレオチドを、
それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(ac-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制
限酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(ac-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現
ベクター(pET-FpL_C3KX 8aと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクター
のヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 8aにFpL_C3KX
8a(配列番号271)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
(ad)FpL_C3KX 8b
(ad-1)インバースPCRを用いた変異導入により、FpL_C3KX 8b(配
列番号274)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを作製した。鋳型
DNAとしてインバースPCRは、鋳型DNAとしてpET-FpL_C3KX8a_A
69Vを、PCR Forward Primerとして配列番号272に記載のオリゴ
ヌクレオチドを、PCR Reverse Primerとして配列番号273記載のオ
リゴヌクレオチドを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で行なった。
(ad-2)得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該制
限酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(ad-3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現
ベクター(pET-FpL_C3KX 8bと命名)の抽出を行ない、当該発現ベクター
のヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様の方法で行なった。
配列解析の結果、発現ベクターpET-FpL_C3KX 8bにFpL_C3KX
8b(配列番号274)をコードするポリヌクレオチドが挿入されていることを確認した
実施例45 FpL_C3KX 7dアミノ酸置換集積体のアルカリ安定性評価
(1)実施例42で取得したFpL_C3KX 7d_A69V(配列番号242)、
ならびに実施例44で作製したFpL_C3KX 8a(配列番号271)およびFpL
_C3KX9b(配列番号274)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)
から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)に記載の方法でタンパク質抽出液
を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表5に示す。FpL_C3KX 8a(配列番号271)およびFpL_C3K
X 8b(配列番号274)は、天然型FpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性
が向上したFpL_C3KX 7d_A69V(配列番号242)と比較しても、アルカ
リ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000032
実施例46 本発明の免疫グロブリン結合性タンパク質への変異導入およびライブラリ
作製
配列番号275に記載のアミノ酸配列からなる本発明の免疫グロブリン結合性タンパク
質FpL_C3KX 7eをコードするポリヌクレオチド(配列番号276)に、実施例
2と同様の方法でエラープローンPCRによりランダムに変異を導入し、ライブラリを作
製した。平均変異導入率は1.0%であった。なおFpL_C3KX 7eは、天然型F
pL_C3(配列番号1)に対し、Glu4Gly、Pro6Ser、Lys7Ala、
Lys13Arg、Lys22Arg、Lys29Ile、Lys29Glu、Lys4
8Arg、Glu49Asp、Asn50Tyr、Tyr52Phe、Asn62Tyr
、Lys67ArgおよびAla69Valのアミノ酸置換を導入した免疫グロブリン結
合性タンパク質である。
実施例47 FpL_C3KX8bアミノ酸置換体のスクリーニング
(1)FpL_C3KX 7eを発現可能な形質転換体および実施例46で作製したラ
ンダム変異体ライブラリ(形質転換体)を、実施例3(1)から(2)と同様な方法で培
養後、遠心操作によって得られた培養上清に対し、実施例41(2)に記載のアルカリ処
理を行なった。
(2)アルカリ処理を行なった時の免疫グロブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を
実施例3(4)に記載のELISA法にて測定し、アルカリ処理を行なった時の免疫グロ
ブリン結合性タンパク質の抗体結合活性を、アルカリ処理を行わなかった時の免疫グロブ
リン結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで残存活性を算出した。
(3)約1800株の形質転換体を評価し、その中からFpL_C3KX 7e(配列
番号275)と比較してアルカリ安定性が向上した免疫グロブリン結合性タンパク質を発
現する形質転換体を選択した。
(4)選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep
kit(QIAGEN社製)を用いて発現ベクターを調製した。
(5)得られた発現ベクターに挿入された免疫グロブリン結合性タンパク質をコードす
るポリヌクレオチド領域の配列を実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を
解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。
(6)実施例40で作製したFpL_C3KX 7e(配列番号275)を発現する形
質転換体または(4)で選択した免疫グロブリン結合性タンパク質を発現する形質転換体
を、実施例3(8)から(10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)と同様な方法
でタンパク質抽出液を調製した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに
通し、清澄化した。
(7)(6)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(8)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(9)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表33に示す。配列番号275に記載のアミノ酸配列において、少なくともTh
r2Ala、Pro3Arg、Glu5Asp、Pro(Ser)6Leu、Pro(S
er)6Thr、Lys(Ala)7Pro、Ile23Val、Thr31Met、G
lu33Asp、Glu33Gly、Ala35Thr、Thr36Ser、Ala37
Thr、Glu52Gly、Ile66ValおよびAla(Val)69Leuより選
択される1以上のアミノ酸置換を有した免疫グロブリン結合性タンパク質は、天然型のF
pL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3KX 7e(配列
番号275)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000033
実施例48 FpL_C3KX 7eアミノ酸置換体の作製
側鎖の性質が異なるアミノ酸残基への置換、またはドメイン間でアミノ酸配列が異なる
位置における他のドメインのアミノ酸残基への置換を導入する方法で取得した、アルカリ
安定性が向上したアミノ酸置換である、Val14Ala、Gly21Arg、Ile2
3Thr、Ala41Arg、Asn44Asp、Asn44Arg、Asn44His
、Glu52Tyr、Gly60ArgおよびIle64LeuのいずれかをFpL_C
3KX 7eに対し集積した。
(1)鋳型DNAとしてFpL_C3KX 7e(配列番号275)をコードするポリ
ヌクレオチド(配列番号276)を含む発現ベクター(以下、「pET-FpL_C3K
X 7e」とも表記)を、PCR Forward PrimerおよびPCR Rev
erse Primerの組み合わせとして表34の配列番号に記載の配列からなるオリ
ゴヌクレオチドの組み合わせを、それぞれ用いた他は実施例7(a-1)と同様な方法で
インバースPCRを行なった。
Figure 2023064059000034
(2)(1)で得られたポリヌクレオチドを精製し、制限酵素DpnIで処理後、当該
制限酵素処理産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を実施例7(a-3)と同様な方法で培養および発現ベクタ
ーの抽出を行ない、当該発現ベクターのヌクレオチド配列の解析を実施例1(5)と同様
の方法で行なった。結果、いずれの発現ベクターも(1)で得られたポリヌクレオチドが
挿入されていることを確認した。
実施例49 FpL_C3KX 7eアミノ酸置換体のアルカリ安定性評価
(1)FpL_C3KX 7eおよび実施例48で作製したFpL_C3KX 7eア
ミノ酸置換体(計10種類)のいずれかを発現する形質転換体を、実施例3(8)から(
10)と同様な方法で培養し、実施例3(11)に記載の方法でタンパク質抽出液を調製
した。前記抽出液は遠心分離し、得られた上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2)(1)で清澄化した上清を、参考例2(2)に記載の方法で精製し、免疫グロブ
リン結合性タンパク質に相当する画分を回収した。
(3)回収した画分の吸光度を分光光度計で測定し、当該画分に含まれる免疫グロブリ
ン結合性タンパク質を定量した。またSDS-PAGEも実施し、選択した免疫グロブリ
ン結合性タンパク質が純度よく精製されていることを確認した。
(4)処理に用いたNaOHの濃度を1.0M(終濃度0.5M)に、処理時間を15
時間に、それぞれした他は、実施例3(13)と同様な方法でアルカリ処理後、実施例3
(14)と同様な方法で残存活性を算出し、アルカリ安定性を評価した。
結果を表35に示す。本実施例で評価したFpL_C3KX 7eアミノ酸置換体はい
ずれも天然型のFpL_C3(配列番号1)よりアルカリ安定性が向上したFpL_C3
KX8b(配列番号275)と比較しても、アルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2023064059000035
実施例50 本発明のタンパク質の多量体化(その1)
本発明のタンパク質の一態様である、FpL_C3KX 7e(配列番号275)の多
量体を、以下に示す方法で作製した。
(1)FpL_C3KX 7e多量体発現ベクターの作製
(1-1)FpL_C3KX 7e多量体として配列番号326に記載のアミノ酸配列
からなるポリペプチド((FpL_C3KX7e)-IT-6H3Kと命名)を設計し
た。なお当該ポリペプチドはFpL_C3KX 7e(配列番号275)を4つ直結し、
かつそのC末端側に不溶性担体への固定化率を向上させるためのオリゴペプチド(WO2
017/069158号の配列番号36の297番目から319番目までのアミノ酸配列
からなるオリゴペプチド、IT、配列番号324)、精製用タグであるヒスチジンタグ(
6H、配列番号325)、および不溶性担体への固定化率を向上させるためのリジン3残
基(3K、以下「リジンタグ」とも表記)を付加したポリペプチドである。
(1-2)(1-1)で設計した(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3K(配
列番号326)をコードするポリヌクレオチド(配列番号327)を設計した。なお配列
番号327に記載の配列からなるポリヌクレオチドのうち、1番目から210番目まで、
211番目から420番目まで、421番目から630番目まで、および631番目から
840番目までが、FpL_C3KX 7e(配列番号275)をコードするポリヌクレ
オチドであり、841番目から909番目までは配列番号324に記載のアミノ酸配列か
らなるオリゴペプチド(IT)をコードするポリヌクレオチド(配列番号328)であり
、910番目から927番目まではヒスチジンタグ(6H、配列番号325)をコードす
るオリゴヌクレオチドであり、928番目から936番目まではリジンタグ(3K)をコ
ードするオリゴヌクレオチドであり、937番目から939番目は終止コドンである。ま
た配列番号327のうち、FpL_C3KX 7e(配列番号275)をコードするポリ
ヌクレオチドの配列は原則配列番号276を用いているが、配列番号327の187番目
から210番目まで、421番目から444番目まで、および607番目から630番目
までは、クローニングのしやすさから、配列番号276とは異なるコドンを用いて配列番
号275から変換している。
(1-3)(1-2)で設計した、配列番号327に記載の配列からなるポリヌクレオ
チドを合成するためのプライマー(オリゴヌクレオチド)を設計し、合成した。具体的に
は、
pET26bベクターのNcoIの制限酵素サイト(CCATGG)および配列番号32
7の1番目から231番目までの配列からなるポリヌクレオチド断片を作製するために配
列番号329および配列番号330に記載の配列からなるプライマーを、
配列番号327の187番目から444番目までの配列からなるポリヌクレオチド断片を
作製するために配列番号331および配列番号332に記載の配列からなるプライマーを

配列番号327の421番目から630番目までの配列からなるポリヌクレオチド断片を
作製するために配列番号333および配列番号334に記載の配列からなるプライマーを

配列番号327の607番目から894番目までの配列からなるポリヌクレオチド断片を
作製するために配列番号335および配列番号336に記載の配列からなるプライマーを

配列番号327の871番目から936番目までの配列からなるポリヌクレオチド断片を
作製するために配列番号337および配列番号338に記載の配列からなるプライマーを

インバースPCR法により配列番号327の916番目から936番目およびpET26
bベクターのHindIIIの制限酵素サイト(AAGGTT)下流とpET26bのN
coIの制限酵素サイトおよびその上流を含むpET26bベクターを作製するために配
列番号339および配列番号340に記載の配列からなるプライマーを、
それぞれ設計し、合成した。
(1-4)表36に示す組成からなる反応液を調製後、当該反応液を98℃で10秒間
の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、68℃で40秒間の第3ステップを1
サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことでPCRを実施した。なお表36におけ
る、鋳型DNA/Forward primer/Reverse primerの組み
合わせは、表37の<1>から<5>に示す組み合わせのいずれかである。
Figure 2023064059000036
Figure 2023064059000037
(1-5)前記<1>から<5>の組み合わせを用い、それぞれ得られたPCR産物(
ポリヌクレオチド)計5種類を精製後、各ポリヌクレオチドを0.05pmolずつ含む
TE緩衝液(1mM EDTAを含む10mM Tris緩衝液)(pH8.0)を調製
した。さらに配列番号337および配列番号338に記載の配列からなるポリヌクレオチ
ドを0.05pmolずつ添加後、NEBuilder HiFi DNA Assem
bly Master Mix(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)を用いたギブ
ソンアッセンブリ(Gibson Assembly)反応により、これらポリヌクレオ
チドを連結させた。
(1-6)(1-5)の反応後の連結産物を用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質
転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃、16時
間)した。
(1-7)表38に示す組成からなる反応液を調製後、(1-6)で得られた形質転換
体を添加し、(1-4)と同条件でコロニーPCRを行なった。コロニーPCRの結果、
1000から1200塩基対程度のPCR産物の増幅が確認できた形質転換体(遺伝子組
換え大腸菌)を選択し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養後、QI
Aprep Spin Miniprep kit(QIAGEN社製)による精製によ
り、免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3K(
配列番号326)を発現可能なベクター(pET-(FpL_C3KX 7e)-IT
-6H3Kと命名)を取得した。
Figure 2023064059000038
(1-8)(1-7)で取得した発現ベクターpET-(FpL_C3KX 7e)
-IT-6H3Kについて実施例1(5)と同様な方法でヌクレオチド配列を解析した。
配列解析の結果、前記発現ベクターに、配列番号327に記載の配列からなるポリヌクレ
オチドが挿入されていることを確認した。
(2)(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3Kの調製
(2-1)50μg/mLのカナマイシンを含む2×YT液体培地(トリプトン1.6
%(w/v)、酵母エキス1%(w/v)、塩化ナトリウム0.5%(w/v))20m
Lに、(1)で作製したpET-(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3Kを含む
遺伝子組換え大腸菌を接種し、前培養した(30℃、16時間)。
(2-2)前培養後の培養液10mLを50μg/mLのカナマイシンを含む2×YT
液体培地1Lに接種し37℃で2時間から3時間培養後、0.5MのIPTGを200μ
L添加し、さらに20℃で終夜振とう培養した。
(2-3)培養後の培養液を遠心分離し、培養菌体を回収した(湿重量で8g)。当該
培養菌体のうち湿重量で2gをBugBuster Protein Extracti
on Reagent(メルクミリポア社製)を用いて溶菌し、遠心分離により取得した
上清をフィルターに通し、清澄化した。
(2-4)あらかじめ0.5Mの塩化ナトリウムおよび0.02Mのイミダゾールを含
む0.02M Tris緩衝液(pH7.5)(以下、単に「平衡化液」とも表記)で平
衡化したNi Sepharose 6 Fast Flow(Cytiva社製)を充
填したカラムに、(2-3)で清澄化した上清を添加し、前記カラムに充填した担体の1
0倍量の平衡化液で洗浄後、0.5Mの塩化ナトリウムおよび0.5Mのイミダゾールを
含む0.02M Tris緩衝液(pH7.5)を通液し、免疫グロブリン結合性タンパ
ク質に相当する画分を回収した。
(2-5)回収した画分の吸光度を分光光度計により測定し、当該画分に含まれるタン
パク質量を定量した。またSDS-PAGEも実施し、免疫グロブリン結合性タンパク質
が純度よく精製されていることを確認した。
実施例51 本発明のタンパク質の多量体化(その2)
本発明のタンパク質の別の態様である、FpL_C3KX 6c(配列番号341)の
多量体を、以下に示す方法で作製した。なおFpL_C3KX 6cのアミノ酸配列(配
列番号341)はFpL_C3KX 7eのアミノ酸配列(配列番号275)の50番目
にあるチロシン残基を天然型FpL_C3(配列番号1)のアミノ酸残基であるアスパラ
ギン残基に戻したアミノ酸配列である。
(1)FpL_C3KX 6c多量体として配列番号343に記載のアミノ酸配列から
なるポリペプチド((FpL_C3KX 6c)-IT-6H3Kと命名)を設計した
。なお当該ポリペプチドはFpL_C3KX 6c(配列番号341)を4つ直結し、か
つそのC末端側に不溶性担体への固定化率を向上させるためのオリゴペプチド(IT、配
列番号324)、精製用タグであるヒスチジンタグ(6H、配列番号325)、および不
溶性担体への固定化率を向上させるためのリジンタグ(3K)を付加したポリペプチドで
ある。
(2)実施例50(1-2)と同様な方法で、(1)で設計した配列番号343に記載
のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを設計した(配列番
号344)。なおFpL_C3KX 6c(配列番号341)をコードするポリヌクレオ
チドの配列は、原則配列番号342を用いている。
(3)鋳型DNA/Forward primer/Reverse primerの
組み合わせとして、表39の<5>から<9>に示す組み合わせのいずれかを用いた他は
、実施例50(1-4)と同様の方法でPCRを実施した。
Figure 2023064059000039
(5)前記<5>から<9>の組み合わせを用い、それぞれ得られたPCR産物(ポリ
ヌクレオチド)5種類を精製後、実施例50(1-5)と同様の方法でギブソンアッセン
ブリ反応を行ない、これらポリヌクレオチドの連結を行なった。
(6)(5)の反応後の連結産物を用いて実施例50(1-6)と同様な方法で大腸菌
を形質転換し培養した。
(7)実施例50(1-7)と同様な方法でコロニーPCR後、実施例50(1-8)
と同様な方法で形質転換体の選択、当該選択した形質転換体の培養およびプラスミド抽出
を行ない、免疫グロブリン結合性タンパク質(FpL_C3KX 6c)-IT-6H
3K(配列番号343)を発現可能なベクター(pET-(FpL_C3KX 6c)
-IT-6H3Kと命名)を取得した。
(8)(7)で取得した発現ベクターpET-(FpL_C3KX 6c)-IT-
6H3Kについて実施例1(5)と同様な方法でヌクレオチド配列を解析した。配列解析
の結果、前記発現ベクターに、配列番号344に記載の配列からなるポリヌクレオチドが
挿入されていることを確認した。
実施例52 免疫グロブリン吸着剤の作製
(1)実施例50で調製した(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3K(配列番
号326)(配列番号326)を含む画分または実施例51で調製した(FpL_C3K
X 6c)-IT-6H3K(配列番号343)を含む画分を、Amicon Ult
ra(メルクミリポア社製)により元の体積の10分の1量まで濃縮後、当該濃縮溶液の
10倍量のリン酸ナトリウム緩衝液を加えてAmicon Ultra(メルクミリポア
社製)により元の体積の10分の1量まで濃縮することで、前記タンパク質溶液の濃縮お
よび緩衝液置換を行なった。
(2)活性基としてホルミル基を有した不溶性担体である、TOYOPEARL AF
-Formyl-650(東ソー社製)を純水に置換後、50%(v/v)スラリーを調
製した。調製した50%(v/v)スラリーを、ミニバイオスピンカラム(BIORAD
社製)に100μL添加した。
(3)実施例50で調製した(FpL_C3KX 7e)-IT-6H3Kの濃縮液
または実施例51で調製した(FpL_C3KX 6c)-IT-6H3K(配列番号
343)の濃縮液を、終濃度が10g/Lとなるよう、不溶性担体を添加したミニバイオ
スピンカラム(BIORAD社製)に添加後、25℃で振とうすることで、当該カラム内
に入っている不溶性担体とタンパク質とをシッフ塩基(Schiff base)形成に
より結合した。
(4)1M水素化ホウ素ナトリウム水溶液を適量加え、室温で2時間振とうすることで
、残存シッフ塩基を還元し、免疫グロブリン吸着剤を作製した。作製した吸着剤は水洗後
、20%(v/v)エタノールに置換し保存した。
実施例53 免疫グロブリン吸着剤のアルカリ安定性評価
(1)実施例52で作製した、免疫グロブリン吸着剤を充填したカラムに、0.1Mグ
リシン塩酸溶液(pH2.0)(以下、酸性溶液とも表記)を通液後、0.15M塩化ナ
トリウムを含む0.02M Tris緩衝液(pH7.5)(以下、「洗浄緩衝液C」と
も表記)を通液することで、前記カラムを洗浄した。
(2)洗浄緩衝液Cで60mg/mLに希釈した免疫グロブリン溶液(日本血液製剤機
構社製)を洗浄後の前記カラムに添加後、恒温振とう培養機(TAITEC社製)を用い
て25℃、1000rpmで2時間振とうすることで、免疫グロブリンを不溶性担体に吸
着させた。
(3)洗浄緩衝液Cを通液することで未吸着の免疫グロブリンを洗浄後、酸性溶液を通
液し、吸着剤に吸着した免疫グロブリンを溶出させた。溶出液の吸光度(波長280nm
)を分光光度計で測定し、当該溶出液に含まれる免疫グロブリンの量から、吸着剤の静的
吸着量を算出した。
(4)洗浄緩衝液Cを通液し免疫グロブリン吸着剤を平衡化後、0.5Mの水酸化ナト
リウム溶液を通液し、25℃で17時間静置することでアルカリ処理を行なった。アルカ
リ処理後の免疫グロブリン吸着剤は洗浄緩衝液Cを通液し中和させた。
(5)(2)および(3)と同様の方法で吸着剤の静的吸着量を算出し、アルカリ処理
前後の吸着量の割合(残存活性)を算出しアルカリ安定性を評価した。
結果を表40に示す。多量体を構成する本発明のタンパク質をFpL_C3KX 7e
(配列番号275)からFpL_C3KX 6c(配列番号341)に替えるとアルカリ
安定性が大きく低下した((FpL_C3KX7e)-IT-6H3K(配列番号32
6):66%、(FpL_C3KX 6c)-IT-6H3K(配列番号343):1
5%)。FpL_C3KX 7eとFpL_C3KX 6cとのアミノ酸配列の違いは、
50番目の位置のみ(FpL_C3KX 7e:チロシン残基、FpL_C3KX 6c
:アスパラギン残基(天然型FpL_C3と同じ))であることから、Asn50Tyr
のアミノ酸置換がアルカリ安定性の向上に特に貢献していることがわかる。
Figure 2023064059000040

Claims (15)

  1. Finegoldia属細菌由来Protein Lの免疫グロブリン結合ドメインの
    アミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも以下の(1)から(
    53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
    するタンパク質:
    (1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
    (2)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバリ
    ンに置換
    (3)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (4)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリシ
    ンに置換
    (5)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (6)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (7)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
    (8)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (9)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
    に置換
    (10)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (11)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
    アルギニンに置換
    (12)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
    (13)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (14)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (15)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (16)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはグ
    リシンに置換
    (17)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニンまた
    はイソロイシンに置換
    (18)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、リジン
    およびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (19)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (20)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
    ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (21)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
    置換
    (22)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまた
    はメチオニンに置換
    (23)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジン、ア
    ルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
    (24)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
    (25)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (26)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプロリ
    ンに置換
    (27)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (28)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはアル
    ギニンに置換
    (29)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リジン
    およびイソロイシンのいずれかに置換
    (30)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに
    置換
    (31)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (32)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンに
    置換、
    (33)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンまたはア
    ルギニンに置換
    (34)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギンに
    置換
    (35)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (36)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸に
    置換
    (37)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはスレオ
    ニンに置換
    (38)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
    (39)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (40)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
    はバリンに置換
    (41)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置

    (42)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置換
    (43)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸
    、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
    (44)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (45)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (46)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (47)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまたは
    チロシンに置換
    (48)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジンまた
    はアルギニンに置換
    (49)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
    チロシンに置換
    (50)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (51)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (52)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (53)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはバリ
    ンに置換。
  2. 以下の(a)から(c)のいずれかに記載のタンパク質である、請求項1に記載のタン
    パク質:
    (a)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
    いて、少なくとも以下の(1)から(53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有
    し、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質:
    (1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
    (2)配列番号1の1番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたはバリ
    ンに置換
    (3)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (4)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはグリシ
    ンに置換
    (5)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (6)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (7)配列番号1の8番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンに置換
    (8)配列番号1の9番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (9)配列番号1の17番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニン
    に置換
    (10)配列番号1の21番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (11)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がグリシンまたは
    アルギニンに置換
    (12)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
    (13)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (14)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (15)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (16)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはグ
    リシンに置換
    (17)配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がスレオニンまた
    はイソロイシンに置換
    (18)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がセリン、リジン
    およびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (19)配列番号1の51番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (20)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、グリシ
    ンおよびアスパラギン酸のいずれかに置換
    (21)配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに
    置換
    (22)配列番号1の54番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまた
    はメチオニンに置換
    (23)配列番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジン、ア
    ルギニン、ロイシン、メチオニンおよびトリプトファンのいずれかに置換
    (24)配列番号1の65番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換
    (25)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (26)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンまたはプロリ
    ンに置換
    (27)配列番号1の3番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (28)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がリジンまたはアル
    ギニンに置換
    (29)配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がバリン、リジン
    およびイソロイシンのいずれかに置換
    (30)配列番号1の32番目のフェニルアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンに
    置換
    (31)配列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (32)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンに
    置換、
    (33)配列番号1の47番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンまたはア
    ルギニンに置換
    (34)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギンに
    置換
    (35)配列番号1の2番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (36)配列番号1の5番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸に
    置換
    (37)配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはスレオ
    ニンに置換
    (38)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基がプロリンに置換
    (39)配列番号1の14番目のバリンに相当するアミノ酸残基がアラニンに置換
    (40)配列番号1の23番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンまた
    はバリンに置換
    (41)配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置

    (42)配列番号1の31番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がメチオニンに置換
    (43)配列番号1の33番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸
    、グリシンおよびバリンのいずれかに置換
    (44)配列番号1の35番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (45)配列番号1の36番目のスレオニンに相当するアミノ酸残基がセリンに置換
    (46)配列番号1の37番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がスレオニンに置換
    (47)配列番号1の41番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がイソロイシンまたは
    チロシンに置換
    (48)配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がヒスチジンまた
    はアルギニンに置換
    (49)配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基がロイシンまたは
    チロシンに置換
    (50)配列番号1の60番目のグリシンに相当するアミノ酸残基がアルギニンに置換
    (51)配列番号1の64番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がロイシンに置換
    (52)配列番号1の66番目のイソロイシンに相当するアミノ酸残基がバリンに置換
    (53)配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基がロイシンまたはバリ
    ンに置換;
    (b)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
    いて、少なくとも前記(1)から(53)より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有し
    、さらに前記(1)から(53)以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミ
    ノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性
    を有するタンパク質;
    (c)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相
    同性を有するアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列において、少なくとも前記(
    1)から(53)より選択される1以上のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合
    活性を有するタンパク質。
  3. 以下の(d)から(f)のいずれかに記載のタンパク質である、請求項2に記載のタン
    パク質:
    (d)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
    いて、少なくとも以下の(1)のアミノ酸置換を有し、かつ免疫グロブリン結合活性を有
    するタンパク質
    (1)配列番号1の50番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基がチロシンに置換;
    (e)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列を含み、ただし当該アミノ酸配列にお
    いて、少なくとも前記(1)のアミノ酸置換を有し、さらに前記アミノ酸置換以外の1も
    しくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/また
    は付加を含み、かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質;
    (f)配列番号1または18に記載のアミノ酸配列またはその部分配列と70%以上の相
    同性を有するアミノ酸配列を含み、ただし少なくとも前記(1)のアミノ酸置換を有し、
    かつ免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質。
  4. さらに、少なくとも以下の(I)から(VII)より選択される1つ以上のリジン残基
    がリジン以外の塩基性アミノ酸またはヒドロキシ基を有するアミノ酸残基に置換した、請
    求項1に記載のタンパク質:
    (I)配列番号1の7番目に相当するリジン残基
    (II)配列番号1の13番目に相当するリジン残基
    (III)配列番号1の22番目に相当するリジン残基
    (IV)配列番号1の29番目に相当するリジン残基
    (V)配列番号1の38番目に相当するリジン残基
    (VI)配列番号1の48番目に相当するリジン残基
    (VII)配列番号1の67番目に相当するリジン残基。
  5. さらに、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン
    酸への置換、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、
    配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
    、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配列
    番号1の62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号
    1の23番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、および
    配列番号1の44番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換
    より選択される1つ以上のアミノ酸置換を有する、請求項1に記載のタンパク質。
  6. 少なくとも以下の(W)、(X)、(Y)、(Z)、(AA)、(AB)および(AC
    )のいずれかのアミノ酸置換を有する、請求項3に記載のタンパク質:
    (W)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番
    号1の13番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基の
    アルギニンへの置換、配列番号1の22番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミ
    ンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの
    置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸へ
    の置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基の
    チロシンへの置換、ならびに配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残
    基のグリシンへの置換;
    (X)配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番
    号1の13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミ
    ノ酸残基のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基
    のイソロイシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基
    のアスパラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当
    するアミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当する
    アミノ酸残基のグリシンへの置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当する
    アミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
    (Y)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
    配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の
    13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残
    基のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソ
    ロイシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアス
    パラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するア
    ミノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ
    酸残基のアスパラギン酸への置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当する
    アミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
    (Z)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換、
    配列番号1の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の
    13番目、22番目、38番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残
    基のアルギニンへの置換、配列番号1の27番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基
    のアルギニンへの置換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロ
    イシンへの置換、配列番号1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパ
    ラギン酸への置換、配列番号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミ
    ノ酸残基のチロシンへの置換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸
    残基のアスパラギン酸への置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当するア
    ミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換;
    (AA)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
    、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
    の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
    22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
    換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
    列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
    1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
    号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
    換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への
    置換、ならびに配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラ
    ニンへの置換;
    (AB)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
    、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
    の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
    22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
    換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
    列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
    1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
    号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
    換、配列番号1の52番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のバリンへの置換、配
    列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置換なら
    びに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換;
    (AC)配列番号1の4番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のグリシンへの置換
    、配列番号1の6番目のプロリンに相当するアミノ酸残基のセリンへの置換、配列番号1
    の7番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアラニンへの置換、配列番号1の13番目、
    22番目、48番目および67番目のリジンに相当するアミノ酸残基のアルギニンへの置
    換、配列番号1の29番目のリジンに相当するアミノ酸残基のイソロイシンへの置換、配
    列番号1の38番目のリジンに相当するアミノ酸残基のグルタミン酸への置換、配列番号
    1の49番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸残基のアスパラギン酸への置換、配列番
    号1の50番目および62番目のアスパラギンに相当するアミノ酸残基のチロシンへの置
    換、配列番号1の53番目のチロシンに相当するアミノ酸残基のフェニルアラニンへの置
    換ならびに配列番号1の69番目のアラニンに相当するアミノ酸残基のバリンへの置換。
  7. 配列番号179、186、199、224、240、271および275のいずれかに
    記載のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のタンパク質。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  9. 請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  10. 以下の(A)または(B)を含む、遺伝子組換え宿主:
    (A)請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド

    (B)請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
    を含む発現ベクター。
  11. 宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項10
    に記載の遺伝子組換え宿主。
  12. 請求項1から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含
    む遺伝子組換え宿主または該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む遺伝子組換え宿
    主を培養し該タンパク質を発現させる工程と、発現した前記タンパク質を回収する工程と
    を含む、免疫グロブリン結合活性を有するタンパク質の製造方法。
  13. 宿主がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項12
    に記載の製造方法。
  14. 不溶性担体と、当該不溶性担体に固定化した請求項1から7のいずれか1項に記載のタ
    ンパク質とを含む、免疫グロブリン吸着剤。
  15. 請求項14に記載の吸着剤を充填したカラムに免疫グロブリンを含む溶液を添加し当該
    免疫グロブリンを前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した免疫グロブリン
    を溶出させる工程とを含む、前記溶液中に含まれる免疫グロブリンの分離方法。
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