JP6171331B2 - Fc結合性タンパク質の精製方法および定量方法 - Google Patents

Fc結合性タンパク質の精製方法および定量方法 Download PDF

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本発明は、Fc結合性タンパク質の精製方法および定量方法に関する。特に本発明は、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたFc結合性タンパク質の精製方法、および試料中に含まれるFc結合性タンパク質の定量方法に関する。
Fcレセプターは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群の分子である。Fcレセプターはその結合する免疫グロブリンの種類によって分類されており、IgGのFc領域に結合するFcγレセプター、IgEのFc領域に結合するFcεレセプター、IgAのFc領域に結合するFcαレセプター等がある(非特許文献1)。また、各レセプターは、その構造の違いによりさらに細かく分類され、Fcγレセプターの場合、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの存在が報告されている(非特許文献1)。
Fcγレセプターの一つであるFcγRIは単球とマクロファージ中で発現しており、好中球ではγインターフェロンにより誘導的に発現される(非特許文献1)。また、FcγRIはIgGに対する結合親和性が高く、その平衡解離定数(Kd)は10−8mol/L以下である(非特許文献2)。FcγRIは、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞質内領域に区分され、IgGとの結合は、IgGのFc領域とFcγRIの細胞外領域で起こり、その後細胞質へとシグナルが伝達される。FcγRIはIgGとの結合に直接関わる分子量約42000のα鎖と、γ鎖の2種類のサブユニットによって構成されており、γ鎖は細胞膜と細胞外領域との境界で共有結合することでホモダイマーを形成している(非特許文献3)。
ヒト型FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)、および遺伝子配列はExPASy(Primary accession number:P12314)などの公的データベースに公表されている。また、FcγRIの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列、細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されている。
ヒトFc受容体FcγRIのα鎖は図1に示す構造をとり、N末端側から15アミノ酸からなるシグナルペプチド領域(SS:配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち1番目から15番目までの領域)、277アミノ酸からなる細胞外領域(EC:配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目までの領域)、21アミノ酸からなる細胞膜貫通領域(TM:配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち293番目から313番目までの領域)、61アミノ酸からなる細胞内領域(C:配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち314番目から374番目までの領域)から構成される。
前述した通りFcγRIの細胞外領域を構成するタンパク質(以下、Fc結合性タンパク質という)は、高度な親和性のもと、ヒト抗体に対する優れた識別機能を有している。この高度な親和性に基づいて、Fc結合性タンパク質は、診断試薬、抗体医薬品の研究用ツールまたはIgGなどの抗体医薬品の製造工程で利用されるアフィニティークロマトグラフィーのリガンドとして活用する方法が報告されている(特許文献1)。また、近年になり見出されたFc結合性タンパク質の予想外の免疫抑制的な生物学的特性により、自己免疫疾患または自己免疫症候群、移植物の拒絶および悪性リンパ増殖の領域において医薬として注目を浴びつつある(非特許文献2)。
Fc結合性タンパク質α鎖のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列(非特許文献4)はAllen等により明らかにされ、その後、遺伝子組換え技術により、大腸菌(特許文献1)または動物細胞を(非特許文献3)利用した発現が報告されている。さらにはバチルス属細菌(特許文献2)、酵母(特許文献3)、麹菌(特許文献4)など、多様な遺伝子発現系でのFc結合性タンパク質の発現が報告されている。特に大腸菌を用いる系では高密度培養生産法が開発され(特許文献5)、疎水クロマトグラフィー(特許文献6)や陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製する方法が開発されるに至り、さらには、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することにより、Fc結合性タンパク質の安定化、生産性の向上が報告される(特許文献7)など、Fc結合性タンパク質の産業利用への関心が高まっている。
一方でFc結合性タンパク質は精製時のロスによる低回収率が問題となっており、産業利用において重大な欠点となっていた。前述した疎水クロマトグラフィーによる方法や陽イオン交換クロマトグラフィーによる方法では一回のクロマトグラフィーでは大腸菌細胞由来の不純物が残存し、これらを組合わせて複数回のカラム精製を行なう必要があった。そこで、大腸菌等から抽出したFc結合性タンパク質の純度を効率的に向上させ、精製工程を円滑に進めるための精製法の確立が求められていた。
また、抽出液中または精製途中のFc結合性タンパク質は、従来より酵素結合免疫吸着法(ELISA法)で定量しているが、ELISA法は操作が煩雑なことに加え、製造工程管理で要求される感度より過剰に高感度であるため、高倍率に希釈して測定しなければならず、測定誤差が大きいという問題があった。かかる問題の解決として液体クロマトグラフィー(HPLC)による方法が考えられるが、Fc結合性タンパク質は通常の方法でHPLCを行なうと溶液中の夾雑物の影響によりHPLCカラムへの吸着阻害やFcRの溶出位置付近に不純物が溶出されるなどの問題があり、これらの解決も求められていた。
特開2008−245580号公報 特開2009−201403号公報 特開2011−072246号公報 特開2011−200203号公報 特開2012−034591号公報 特開2011−126827号公報 特開2011−206046号公報
J.V.Ravetch等,Annu.Rev.Immunol.,9,457,1991 Toshiyuki Takai,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318,2005 A.Paetz等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1811,2005 J.M.Allen等,Science,243,378,1989
本発明の目的は、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いてFc結合性タンパク質を高純度に精製する方法、および試料中に含まれるFc結合性タンパク質を簡便かつ高精度に定量する方法を提供することにある。
本願発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくとも陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFc結合性タンパク質を含むアプライ液、またはFc結合性タンパク質を定量する試料に一定濃度のアルギニンを含ませることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の(A)から(G)に記載の態様を包含する。
(A)あらかじめ平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFc結合性タンパク質を含むアプライ液を添加してFc結合性タンパク質を前記担体に吸着させる工程と前記担体に吸着したFc結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程とを含むFc結合性タンパク質の精製方法であって、少なくとも前記アプライ液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでいる、前記精製方法。
(B) 前記平衡化液、前記アプライ液および前記溶出液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでいる、(A)に記載の精製方法。
(C) Fc結合性タンパク質を含むアプライ液が、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換して得られた形質転換体の抽出物を含む、(A)または(B)に記載の精製方法。
(D)宿主が大腸菌である、(C)に記載の精製方法。
(E)Fc結合性タンパク質が、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、
(A)から(D)のいずれかに記載の精製方法。
(F)高速液体クロマトグラフィーにより得られる溶出ピーク面積から試料中に含まれるFc結合性タンパク質を定量する方法であって、前記試料が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでいる、前記方法。
(G)あらかじめ0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含む平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用カラムに0.12mol/Lから0.18mol/LのアルギニンとFc結合性タンパク質を含む試料を添加してFc結合性タンパク質を前記担体に吸着させ、前記カラムに吸着したFc結合性タンパク質を0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンと水溶性の塩を含む溶出液を用いて前記タンパク質を溶出させ、前記溶出液により溶出した液に含まれるFc結合性タンパク質を検出器で検出することで得られたクロマトグラムから前記タンパク質の溶出ピーク面積を算出し、前記算出した溶出ピーク面積から試料中に含まれるFc結合性タンパク質を定量する方法。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明においてFc結合性タンパク質とは、ヒトFcγRIの細胞外領域(具体的には天然型ヒトFcγRIの場合、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目までの領域(図1ではEC領域))を構成するタンパク質のことをいう。ただし必ずしもFc結合性タンパク質(すなわち、FcγRIの細胞外領域)の全領域でなくてもよく、Fc結合性タンパク質を構成するポリペプチドのうち、少なくとも抗体(IgG)のFc領域に結合する本来の機能を発現し得る領域のポリペプチドを含んでいればよい。Fc結合性タンパク質の一例として、
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質や、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質、
があげられる。前記(ii)の具体例としては、特開2011−206046号公報に開示のヒトFc結合性タンパク質があげられる。
本発明の精製方法で、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加する、Fc結合性タンパク質を含むアプライ液を調製するには、ヒト細胞から直接抽出してもよいし、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主に導入して得られた形質転換体の抽出物を用いてもよいが、前記タンパク質を安定的にかつ大量に得られる点で後者が好ましい。
Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、直接ヒト細胞から抽出して得てもよいが、前記ヒト細胞からの抽出物を核酸増幅することで得たり、既知のヌクレオチド配列を基に人工的に直接合成して得たほうが好ましい。前記ポリヌクレオチドを人工的に合成するには、前記ポリヌクレオチドの全長をDNA自動合成機などで直接合成してもよいが、化学合成した数十塩基からなるオリゴヌクレオチド群をPCR法によりアッセンブリーさせることによって完全長の遺伝子を作製する、DNAWorks法(Nucleic Acid Res.,30,e43,2002)やSynthetic Gene Designer法(Protein Expr Purif.、47、441−445、2006)を用いると、より効率的な合成が可能である。
Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を、Fc結合性タンパク質のアミノ酸配列情報から変換して得る場合、アミノ酸配列として変化しない範囲であれば任意のヌクレオチド配列が選択できるが、好ましくは発現させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮の上変換するのが好ましい。コドンの使用頻度は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Database)を用いることで解析することができる。
本発明においてFc結合性タンパク質は、抗体結合活性を損なわない範囲で任意のオリゴペプチドを付加してもよい。前記任意のオリゴペプチドの例として、6残基程度のヒスチジンからなるHisタグ配列やc−myc抗原配列といった分析や精製を容易にするためのタグ配列、微生物での分泌発現を促すためのシグナルペプチドなどがあげられる。Fc結合性タンパク質に前記タグ配列を付加する場合は、N末端側またはC末端側に付加してもよいし、抗体結合活性を失わない範囲であればタンパク質内に挿入してもよい。Fc結合性タンパク質に前記シグナルペプチドを付加する場合は、N末端側に付加すればよく、公知のシグナルペプチドの中から発現に用いる宿主に応じて適宜選択して用いればよい。なおFc結合性タンパク質を発現させる宿主として大腸菌を用いる場合は、前記シグナルペプチドとしてpelB、DsbA、MalE、TorTといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドをあげることができる(特開2011−097898号)。また宿主として枯草菌や麹菌を用いる場合は、プロテアーゼやアミラーゼのシグナルペプチドがあげられる。
本発明においてFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単にFc結合性タンパク質のポリヌクレオチドとする)を用いて宿主を形質転換する際、Fc結合性タンパク質のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミドなど)の適切な位置にポリヌクレオチドを挿入したものを用いると、より好ましい。なお、前記発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合は、pETプラスミドベクター、pUCプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pBBRプラスミドベクターが例示できる。また前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターにポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモーターといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。宿主が大腸菌である場合の前記プロモーターの例として、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、lppプロモーター、さらにはλファージのλPLプロモーター、λPRプロモーターがあげられる。
前記方法により作製したFc結合性タンパク質のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクターで宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。例えば、宿主とし大腸菌を選択する場合には、コンピテントセル法、ヒートショック法、エレクトロポレーション法などにより形質転換すればよい。
形質転換体を培養する方法については特に限定はなく、通常の液体培地やそれを寒天で固めた固体培地を用いればよい。固体培地の形状にも限定はなく、斜面培地であってもよいし平板培地であってもよい。培地の組成としては、形質転換体が増殖し、かつFc結合性タンパク質を発現し得るものであればよい。炭素源としては、糖蜜、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロール、酢酸などが用いられる。窒素源としては、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ペプトン、コーンスティープリカー、酵母エキスなどが用いられる。無機塩としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウムなどのリン酸塩、塩化ナトリウムなどが用いられる。金属イオンとしては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム・二水和物、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが用いられる。ビタミン類としては、酵母エキス、ビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシンなどが用いられる。なお、固体培地を用いる場合には上記の組成の培地に寒天やジェランガムといった固形化剤を加熱溶解させた後に、培養に用いる試験管やシャーレに分注し、さらに目的の温度まで冷却して固形化することで得られる。
形質転換体の培養温度は10℃から40℃が好ましい。培養のpHは用いる宿主の性質に応じて設定され、大腸菌や枯草菌の場合にはpHは6から8が好ましく、酵母や麹菌ではより低いpH4から7が好ましく用いられる。また、培養時間は任意に設定できるが、Fc結合性タンパク質が十分に生産される時間であることが好ましく、通常は数時間から200時間の間に設定すればよい。なお宿主が麹菌の場合は、小麦麩麹等の固形培養法を行なうことも可能である。この場合は小麦麩等を湿潤状態で加熱滅菌したのち、Fc結合性タンパクを含むプラスミドにて形質転換した菌を植菌し、10℃から40℃で培養する。培養中は培養容器を静置しておけば良いが、より好ましくは1日に1回以上、任意のスピードで任意の時間、容器内の麹を撹拌する。これにより、完全に静置した場合より高い生産性が得られる。撹拌の方法は、雑菌の混入が防げる方法であれば特に限定はされない。
Fc結合性タンパク質のポリヌクレオチドを含むベクターに誘導性のプロモーターを含んでいる場合は、目的タンパク質が良好に発現できるような条件下で誘導すればよい。誘導剤としてはIPTG(Isopropyl β−D−1−thiogalactopyranoside)を例示することができる。宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)を測定し、約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、Fc結合性タンパク質の発現を誘導することができる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mmol/Lの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mmol/L程度が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。
得られた形質転換体培養液から抽出物を得るには、遠心分離操作により菌体を集めた後、一般的な細胞抽出方法により抽出物を得ればよい。抽出方法の例として、超音波破砕処理、フレンチプレス処理等の物理的破砕による方法や、リゾチーム等の酵素処理や、界面活性剤による処理方法があげられる。なお前述した破砕処理後、pH2.5からpH5.0の条件下で酸処理すると、破砕液に含まれる夾雑タンパク質が効率的に除去できるため、好ましい(特願2012−244435号)。
本発明の精製方法は、Fc結合性タンパク質を含む溶液(例えば、前述した方法で得られた形質転換体の抽出物)(アプライ液)に0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを添加して、陽イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行なうことを特徴としている。なおFc結合性タンパク質を含む溶液が形質転換体の抽出物の場合、アルギニンを添加する前に脱塩操作を行なうと好ましい。脱塩は透析や希釈等、当業者にとって一般的な方法で行なえばよい。脱塩の目安として前記抽出液の電気伝導度が50mS/cm以下、好ましくは20mS/cm以下となるまで行なえばよい。前記抽出液のpHに特に限定はないが、pH3.5から8の間が好ましく、さらに好ましくはpH5から7の間である。なお脱塩操作およびアルギニン添加操作において、Fc結合性タンパク質を含む溶液に沈殿物が生じた場合、そのままアプライ液として陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加してもよいが、遠心分離やろ過などの当業者が通常行なう方法により清澄化してから添加したほうが好ましい。
本発明の精製方法で用いる、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体は、タンパク質精製に用いる陽イオン交換能を有した担体であれば特に限定はなく、一例として、TOYOPEARL SP−650、TSKgel SP−5PW、TSKgel SP−STAT(いずれも東ソー製)といったスルホプロピル基を導入した担体、TOYOPEARL CM−650、TSKgel CM−5PW、TSKgel CM−STAT(いずれも東ソー製)といったカルボキシメチル基を導入した担体があげられる。なお前述した例のうち、TSKgel SP−5PW、TSKgel SP−STAT、TSKgel CM−5PW、TSKgel CM−STATは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラムとして販売されており、Fc結合性タンパク質の精製量が少量の場合や、HPLCによるFc結合性タンパク質の定量をする場合に特に有用である。
本発明の精製方法を実施する際、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体を充填したカラムは、緩衝液(平衡化液)で平衡化しておくが、前記カラムに対して添加するアプライ液の容量が少ない場合は、前記平衡化液にあらかじめ0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを添加するとよい。緩衝液の種類はpH3.5からpH8で緩衝能を有する緩衝液であれば特に限定はなく、好ましくはpH5からpH7で緩衝能を有する緩衝液である。一例として、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸(以下トリス塩酸)緩衝液があげられる。
本発明の精製方法では、あらかじめ前述した平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用担体を充填したカラムに、0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを添加したFc結合性タンパク質を含む溶液(アプライ液)を添加することで、Fc結合性タンパク質を前記担体に選択的に吸着させた後、平衡化液を添加して前記担体に吸着しない夾雑物を洗浄する。その後、塩化ナトリウム等の水溶性の塩を含む緩衝液(溶出液)を添加し、前記担体に吸着したFc結合性タンパク質を溶出させることで、Fc結合性タンパク質を高純度に精製することができる。なお平衡化液の場合と同様、前記カラムに対して添加するアプライ液の容量が少ない場合は、前記溶出液に0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを添加するとよい。溶出液の塩濃度は、溶出液(緩衝液)のpHおよび前記担体の性質により、適宜決定すればよい。またFc結合性タンパク質を溶出させる際、高濃度の塩を含む溶出液(緩衝液)で一段階に溶出してもよく、任意の段数で塩濃度を段階的に上昇させてもよく(ステップグラジエント)、直線的濃度勾配で塩濃度を上昇させてもよい(リニアグラジエント)が、リニアグラジエントで溶出させると好ましい。例えば、緩衝液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを添加した20mmol/L酢酸緩衝液(pH5.5)であり、水溶性の塩として塩化ナトリウムを用いる場合、塩化ナトリウム濃度0mol/Lから1mol/Lまでのリニアグラジエントで溶出させればよい。
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に0.12mol/Lから0.18mol/LのアルギニンとFc結合性タンパク質を含むアプライ液を添加してFc結合性タンパク質を前記担体に吸着させる工程と、前記担体に吸着したFc結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程により得られた、0.12mol/Lから0.18mol/LのアルギニンとFc結合性タンパク質を含む溶液は、HPLCにより得られる溶出ピーク面積から前記タンパク質を定量することができる。具体的には、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体を充填したカラムの出口側にオンライン検出器を設けて、溶出液を経時的にモニターやサンプリングをし、得られた溶出液のクロマトグラムのピーク面積から、溶出したFc結合性タンパク質を定量すればよい。前記検出器としてはFc結合性タンパク質を検出できるものであれば限定はなく、例えば示差屈折率計、電気伝導度計、蛍光検出器、紫外検出器、可視検出器があげられるが、タンパク質の紫外線吸収を利用して測定する紫外検出器を用いた検出が簡便であり好ましい。紫外検出器を用いて検出する場合、その波長はカルボニル基の吸収に基づく210から230nm、または芳香族アミノ酸の吸収に基づく260から290nmの波長が用いればよい。前者の波長域には高感度で分析できる利点があり、後者の波長域には夾雑物の影響を受けにくいという利点がある。またポストカラム反応でニンヒドリンやフェニルイソチオシアネート等でFc結合性タンパク質を修飾後、可視検出器、紫外検出器、蛍光検出器等を用いて検出してもよい。
Fc結合性タンパク質を定量する際は、あらかじめELISA法や紫外検出器を用いた方法等で定量した既知濃度のFc結合性タンパク質溶液を用いて検量線を作成し、未知濃度のFc結合性タンパク質を含む溶液を、前記作成した検量線に基づき定量すればよい。
本発明は、あらかじめ平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFc結合性タンパク質を含むアプライ液を添加してFc結合性タンパク質を前記担体に吸着させる工程と前記担体に吸着したFc結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程とを含むFc結合性タンパク質の精製方法において、少なくとも前記アプライ液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでいることを特徴としている。本発明により、Fc結合性タンパク質を高純度に精製することができる。また本発明の精製方法は一定濃度のアルギニンを添加するのみの簡便な方法であるため、Fc結合性タンパク質の工業的生産に有用である。
またFc結合性タンパク質を含む試料に、0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含ませることにより、高速液体クロマトグラフィーにより得られる溶出ピーク面積から前記試料に含まれるFc結合性タンパク質を定量することができる。前記定量方法は、ELISA法等従来のFc結合性タンパク質の定量法と比較し簡便であるため、Fc結合性タンパク質の工業的生産において、生産管理や品質管理が容易となる点で好ましい。
ヒトFcγRIの概略構造図。 実施例1で精製したFc結合性タンパク質の典型的なクロマトグラム。 実施例1で精製した精製Fc結合性タンパク質の検量線。縦軸は溶出ピーク面積であり、横軸はFc結合性タンパク質の濃度である。 実施例2で測定した試料のクロマトグラム。 比較例1および2で測定した試料のクロマトグラム。aは0.54mg/mL精製Fc結合性タンパク質溶液の、bは比較例1で測定した試料の、cは比較例2で測定した試料のクロマトグラムである。 実施例3で測定した試料のクロマトグラム。aは実施例2で測定した試料の、bはaの試料に精製Fc結合性タンパク質を0.034mg/mL添加した液の、cはaの試料に精製Fc結合性タンパク質を0.068mg/mL添加した液の、dはaの試料に精製Fc結合性タンパク質を0.135mg/mL添加した液の、eはaの試料に精製Fc結合性タンパク質を0.27mg/mL添加した液の、fはaの試料に精製Fc結合性タンパク質を0.53mg/mL添加した液、のクロマトグラムである。 添加回収試験の結果を示す図。黒丸はアルギニンを0.15mol/L添加したときの結果(実施例3)であり、白丸はアルギニンを0.1mol/L添加したときの結果(比較例3)である。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 標準Fc結合性タンパク質の調製
(1)以下の方法により、標準Fc結合性タンパク質を調製した。
(1−1)特許文献5(特開2012−034591号公報)に記載の方法によりFc結合性タンパク質を生産する組換え大腸菌(形質転換体)を約70時間培養後、当該培養液より大腸菌菌体を得た。
(1−2)(1−1)で得られた菌体を抽出液(650mmol/L NaCl、1mmol/L EDTA、6mmol/L MgSO、250U/L Benzonase(商品名)、0.05g/L Lysozyme、0.4% Triton X−100(商品名)、0.5% 臭化セチルトリメチルアンモニウム塩(CTAB)および50mmol/L CaClを含む50mmol/L Tris−HCl(pH8.0))に懸濁し、撹拌することで菌体内からタンパク質を抽出した。
(1−3)タンパク質抽出液のpHが3.5になるよう、撹拌しながら酢酸を滴下することで酸処理を行ない、生じた沈殿物を遠心分離で除去することで清澄な溶液を回収した。
(1−4)(1−3)で回収した溶液をミリポア社製限外ろ過膜(分画分子量5000)により約5倍濃縮し、さらに緩衝液A(1mol/L 尿素、1mmol/L EDTAおよび150mmol/L NaClを含む50mmol/L Tris−HCl(pH8.0))を添加しつつ限外ろ過を行なうこと(加水ろ過法)で緩衝液置換を行なった。
(1−5)緩衝液置換したFc結合性タンパク質を含む溶液を、あらかじめ緩衝液B(1mol/L 尿素と1mmol/L EDTAを含む20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0))で平衡化したTOYOPEARL CM−650M(東ソー社製)を充填したカラムに通過させ、緩衝液Bで非吸着物を洗浄した後、1mol/L NaClを含む緩衝液BでFc結合性タンパク質を溶出した。
(1−6)溶出したFc結合性タンパク質に硫酸アンモニウムを終濃度15%(w/v)となるよう添加後、予め緩衝液C(15%(w/v)硫安、1mmol/L EDTAを含む50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH8.0))で平衡化したTOYOPEARL Phenyl−650M(東ソー社製)に通過させ、緩衝液Cで非吸着物を洗浄後、緩衝液D(1mol/L 尿素、20%(w/v) グリセロール、1mmol/L EDTAを含む50mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.8))でFc結合性タンパク質を溶出した。
(1−7)(1−6)の溶出液に純水を添加して伝導度を20mS/cm以下とした後、あらかじめ緩衝液E(20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0))で平衡化したTOYOPEARL CM−650M(東ソー社製)を充填したカラムに通過させ、緩衝液Eで非吸着物を洗浄後、塩化ナトリウムの直線濃度勾配(0mol/Lから1mol/Lまで)で精製Fc結合性タンパク質を溶出した。
精製Fc結合性タンパク質は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で単一バンドを、ゲルろ過クロマトグラフィー(カラム;TSKgel G3000 SWXL(東ソー社製)、溶離液;0.2mol/L アルギニンおよび0.15mol/L NaClを含む20mmol/L リン酸カリウム緩衝液(pH6.0))で単一ピークを、それぞれ確認した。
(2)(1)で調製した標準Fc結合性タンパク質を下記に示すHPLCを用いた方法で測定し、標準Fc結合性タンパク質の検量線を作成した。
(2−1)HPLC用のポンプとしてCCPM−II(東ソー社製)を、UV検出器としてUV−9020(東ソー社製)を、カラムとして東ソー社製タンパク質分析用カラムTSKgel SP−STAT(3.5mm×3.0cm)を用いた。溶離液Aとして0.15mol/L L−アルギニン塩酸塩を含む20mmol/L 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を、溶離液Bとして溶離液Aに1.0mol/L NaClを添加したものを用いた。
(2−2)(1−7)で得られたFc結合性タンパク質を含む溶出液を溶離液Aで希釈することで、Fc結合性タンパク質濃度0.1から0.01mg/mLの溶液を調製した。なおタンパク質濃度の測定は溶液の280nmの吸光度から算出しており、Fc結合性タンパク質のアミノ酸組成より1mg/mL水溶液の280nmの吸光度を1.2として算出している。
(2−3)あらかじめ溶離液Aを1mL/minで通液することでカラムを平衡化後、(2−2)の溶液20μLを導入し、NaCl濃度が0mol/Lから1mol/Lまでの直線濃度勾配を10分間で実施し、Fc結合性タンパク質を溶出した。溶出物は220nmの吸光度で検出し、UV検出器にてピーク面積を求めた。
(2−4)導入したFc結合性タンパク質に対する溶出ピーク面積をプロットすることで検量線を作成した。
典型的な精製Fc結合性タンパク質のクロマトグラムを図2に、検量線を図3に、それぞれ示す。
実施例2
Fc結合性タンパク質を生産する大腸菌形質転換体の抽出物(タンパク質抽出液)に含まれるFc結合性タンパク質を、以下に示すHPLC法とELISA法で定量した。
(1)HPLC法による定量
実施例1(1−2)で得られたタンパク質抽出液(Fc結合性タンパク質を0.43mg/mL含む)100μLに、1mol/L アルギニン塩酸塩水溶液150μLを添加し、さらに20mmol/L 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を加えて1mLとしたものを測定試料とした(希釈倍率10倍、アルギニン濃度0.15mol/L)他は、(2−1)から(2−3)と同様の操作を行なった。
得られたFc結合性タンパク質の溶出ピークの面積、希釈倍率および(2−4)で作成した検量線より試料中のFc結合性タンパク質濃度を計算したところ、0.48mg/mLと計算された。試料のクロマトグラムを図4に示す。
(2)ELISA法による定量
(2−1)あらかじめヒトIgG溶液(化血研製)を固定化し、1%牛血清アルブミンでブロッキングした96穴プレート(Nunc社製)にTBS(Tris Buffered Saline)により適当な濃度に希釈した試料((1−2)で得られたタンパク質抽出液)100μLを添加後、30℃で1時間保温した。なお、未使用ウェルには、(1−6)で得られた、精製Fc結合性タンパク質の希釈系列(濃度:0.01から0.09mg/L)100μLを添加し、同様に保温した。
(2−2)TBST(0.05% Tween 20を含むTBS)でプレートを洗浄後、TBSで1万倍に希釈した抗CD64抗体(R&Dシステム製、MAB12571)を100μL添加し、30℃で1時間保温した。
(2−3)TBSTでプレートを洗浄後、TBSで1万倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼを結合した抗マウスIgG抗体(コスモバイオ社製)を100μL添加し、30℃で1時間保温した。
(2−4)TBSTでプレートを洗浄後、TMB 2−Component Microwell Peroxidase Substrate Kit(フナコシ社製)を50μl添加し、室温で4分間放置することで発色後、1mol/Lリン酸50μLを加えることで反応を停止した。
(2−5)タイタープレートリーダー(ThermoElectron社製、MULTISCAN ASCENT)にて450nmの吸光度を測定し、精製Fc結合性タンパク質の希釈系列を用いて作成した検量線より試料中のFc結合性タンパク質濃度を求めた。
結果、Fc結合性タンパク質濃度は0.43mg/mLと計算され、HPLC法で求めた濃度とほぼ同じ値となった。
比較例1
測定試料として、実施例1(1−2)で得られたタンパク質抽出液(Fc結合性タンパク質を0.43mg/mL含む)にアルギニンを添加せずに希釈した試料を用い、かつ溶離液Aおよび溶離液Bへのアルギニンの添加を実施しない他は、実施例2(1)と同様な方法でHPLC法による定量を試みた。しかしながらクロマトグラムを確認したところ、Fc結合性タンパク質が溶出されるべき、保持時間10分付近には、痕跡程度のピークしか検出されず(図5(b))、当該ピークから計算したFc結合タンパク質の濃度は0.01mg/mLとなり、ELISA法で測定(実施例2(2))した濃度より著しく低い値となった。この理由として、アルギニンを添加しなかったことにより、試料中の夾雑物によるFc結合性タンパク質のHPLCカラムへの結合阻害や、前記カラムからのFc結合性タンパク質の溶出阻害が推測される。
実施例3 添加回収試験
実施例1(1−2)で得られたタンパク質抽出液100μL(Fc結合性タンパク質濃度:0.43mg/mL)に、実施例1(1−7)で得られたFc結合性タンパク質0.03から0.5mg(濃度換算で0.034mg/mLから0.53mg/mL)と1mol/L アルギニン塩酸水溶液0.15mLとを混合し、さらに20mmol/L 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で1mLとした溶液(アルギニン濃度:0.15mol/L、Fc結合性タンパク質濃度:0.077から0.57mg/mL)を測定試料とした他は、実施例2(1)と同様な方法でHPLC法による定量を行なった。
本例で測定した各試料のクロマトグラムを図6に示す。また本例で測定した各試料中に添加したFc結合性タンパク質濃度に対する、Fc結合性タンパク質(溶出時間10分付近のピーク)の溶出ピーク面積をプロットしたところ、原点を通る傾き0.91の直線が得られた(図7の黒丸)。つまり本例で添加したFc結合性タンパク質のうち、91%が回収されることが判明した。
比較例2
測定試料として、実施例1(1−2)で得られたタンパク質抽出液(Fc結合性タンパク質を0.43mg/mL含む)に、実施例1(1−7)で得られたFc結合性タンパク質0.5mg(濃度換算で0.54mg/mL)を添加し、アルギニンを添加せずに希釈した試料を用い、かつ溶離液Aおよび溶離液Bへのアルギニンの添加を実施しない他は、実施例2(1)と同様な方法でHPLC法による定量を試みた。
本例で測定した試料のクロマトグラムを図5(c)に示す。Fc結合性タンパク質が溶出されるべき、保持時間10分付近には、痕跡程度のピークしか検出されず、当該ピークから計算したFc結合タンパク質の濃度は0.01mg/mLであった。この理由として、アルギニンを添加しなかったことにより、試料中の夾雑物によるFc結合性タンパク質のHPLCカラムへの結合阻害や、前記カラムからのFc結合性タンパク質の溶出阻害が推測される。
比較例3
測定試料を調製する際添加する1mol/L アルギニン塩酸水溶液の量を0.1mL(アルギニン濃度:0.1mol/L)とし、溶離液Aおよび溶離液Bへのアルギニンの添加量を0.1mol/Lとした他は、実施例3と同様な試験を行なった。
本例で測定した各試料中に添加したFc結合性タンパク質濃度に対する、Fc結合性タンパク質(溶出時間10分付近のピーク)の溶出ピーク面積をプロットしたところ、原点を通る傾き0.55の直線が得られた(図7の白丸)。つまり本例で添加したFc結合性タンパク質の回収率は55%となり、アルギニンを0.15mol/L添加したとき(実施例3)と比較し回収率が低下した。
比較例4
測定試料を調製する際添加する1mol/L アルギニン塩酸水溶液の量を0.2mL(アルギニン濃度:0.2mol/L)とし、溶離液Aおよび溶離液Bへのアルギニンの添加量を0.2mol/Lとした他は、実施例3と同様な試験を行なった。しかしながらクロマトグラムを確認したところ、Fc結合性タンパク質が溶出されるべき、保持時間10分付近には、ピークが検出されなかった。
以上をまとめると、本発明におけるアルギニン添加量は、少なくとも0.1mol/Lより多く、かつ0.2mol/Lより少ない条件、つまり0.12mol/Lから0.18mol/Lの範囲がよいことがわかる。
実施例4
(1)特許文献5に記載の方法により、Fc結合性タンパク質を生産する大腸菌の形質転換体を約70時間培養し、当該培養液100μLから遠心分離により菌体を回収した。
(2)回収した菌体に1mLのBugBuster溶液を加えて室温で20分振とうすることでFc結合性タンパク質を抽出し、遠心分離により上清を回収した。なおBugBuster溶液は、市販抽出試薬(BugBuster、メルク社製)10倍濃度品をTBSで10倍に希釈後、さらにリゾチーム(鶏卵由来、太陽化学製)を終濃度0.3mg/mLに、ベンゾナーゼ(メルク社製)を終濃度250U/mLに、それぞれなるよう添加して調製した。
(3)回収した上清中のFc結合性タンパク質を実施例1(4)と同様にELISA法で定量した。Fc結合性タンパク質濃度は0.40mg/mLと求められた。
(4)一方、上清を溶離液Aで2倍に希釈した後、実施例2(1)と同様な方法でFc結合性タンパク質をHPLC法により定量した。Fc結合性タンパク質(溶出時間10分付近のピーク)の溶出ピーク面積から算出したFc結合性タンパク質濃度は0.41mg/mLとなった。すなわちアルギニンを0.15mol/L添加することで、市販抽出試薬を用いて抽出しても、HPLC法によるFc結合性タンパク質の定量が可能であることがわかる。

Claims (3)

  1. あらかじめ平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFc結合性タンパク質を含むアプライ液を添加して、Fc結合性タンパク質を前記担体に吸着させる工程と、
    前記担体に吸着したFc結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、
    Fc結合性タンパク質の精製方法であって、
    少なくとも前記アプライ液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでおり、
    前記アプライ液が、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換して得られた形質転換体の抽出物を含み、前記宿主が大腸菌であり、前記Fc結合性タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質である、前記精製方法。
  2. 前記平衡化液、前記アプライ液および前記溶出液が0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含んでいる、請求項1に記載の精製方法。
  3. あらかじめ0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンを含む平衡化液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用カラムに0.12mol/Lから0.18mol/LのアルギニンとFc結合性タンパク質を含む試料を添加して、Fc結合性タンパク質を前記担体に吸着させ、
    前記カラムに吸着したFc結合性タンパク質を0.12mol/Lから0.18mol/Lのアルギニンと水溶性の塩を含む溶出液を用いて前記タンパク質を溶出させ、
    前記溶出液により溶出した液に含まれるFc結合性タンパク質を検出器で検出することで得られたクロマトグラムから、前記タンパク質の溶出ピーク面積を算出し、
    前記算出した溶出ピーク面積から、試料中に含まれるFc結合性タンパク質を定量する方法であって、
    前記試料がFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換して得られた形質転換体の抽出物を含み、前記宿主が大腸菌であり、前記Fc結合性タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質である、前記方法。
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