JP2014027916A - 改良Fc結合性タンパク質およびその製造方法 - Google Patents

改良Fc結合性タンパク質およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 IgGおよびFc融合タンパク質に対して良好な結合性を有し、かつアルカリに対して高い安定性を有するFc結合性タンパク質、およびその製造方法を提供することこと。
【解決手段】 Fc結合性タンパク質を構成するアミノ酸のうち、特定の位置にあるアミノ酸を他の特定のアミノ酸に置換することにより、アルカリに対する安定性が向上したFc結合性タンパク質を得ることができた。
【選択図】 なし

Description

本発明は、免疫グロブリンG(IgG)やIgGの定常領域であるFc領域と他のタンパク質とを融合させた融合タンパク質(以下、Fc融合タンパク質という)に対し親和性を有する、Fc結合性タンパク質に関するものである。より詳しくは、遺伝子工学的手法を用いてアルカリ安定性を向上させたFc結合性タンパク質に関するものである。
ガンや感染症等の治療薬として免疫グロブリンG(IgG)を主成分とする抗体医薬が注目を浴びている。IgGは、例えば、遺伝子工学の手法を用いて当該IgGを発現可能なChinese Hamster Ovary(CHO)細胞を作製後、作製したCHO細胞を培養することにより細胞外にIgGを分泌発現させ、その後、遠心分離による細胞除去工程、精密ろ過あるいは限外ろ過膜による清澄化工程、クロマトグラフィーによる精製工程を経て、工業的に製造されている。
クロマトグラフィーによる精製工程は、大きく分けて、清澄化された培養液中のIgGを捕捉する捕捉段階と、捕捉したIgGを高度に精製する精製段階とに区分することができる。捕捉段階では、培養液中のIgGを高純度に精製するために、IgGのFc領域と特異的に結合するアフィニティークロマトグラフィーが利用されている。
IgGのFc領域と結合するタンパク質としてヒトFcγ受容体が知られている。ヒトFcγ受容体は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIbおよびFcγRIIIのサブクラスに分類することができ(非特許文献1)、中でもFcγRIは、抗原と結合していないIgGに対しても高度な親和性を有している。
ヒトFcγRIは、シグナルペプチド領域、細胞外領域、細胞膜貫通領域および細胞内領域に大別され、IgGとの結合は、IgGのFc領域とFcγRIの細胞外領域で起こる。その後両者の結合シグナルが細胞質へと伝達される。ヒトFcγRIの細胞外領域(以下、Fc結合性タンパク質という)のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は非特許文献2により明らかにされ、その後、遺伝子組換え技術により、動物細胞(非特許文献3)や大腸菌による発現例(特許文献1)が報告されている。
前述した通り、Fc結合性タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーゲルのリガンドとして機能する十分な特性を備えている。しかしながらFc結合性タンパク質は、ヒト生体内で機能するタンパク質であるため、細菌の細胞表層などの生体外に存在するタンパク質などに比べて、熱や極端なpH変化などによりタンパク質変性が起こる傾向が強い。例えば、Fc結合性タンパク質をリガンドとして固定化したクロマトグラフィーゲルをアルカリ洗浄または再生した場合、当該リガンドが洗浄または再生に用いる高いpHの溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)等にさらされることで、当該リガンドが有するIgG結合活性が失われることがある。そのため、Fc結合性タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーゲルのリガンドとして使用するためには、アルカリに対する高い安定性が求められる。アルカリに対する安定性を向上させたFc結合性タンパク質については特許文献2で開示しているが、安定性の面ではまだ十分とはいえなかった。
特表2002−531086号公報 特開2011−206046号公報
J.V.Ravetch等,Ann.Rev.Immunol.,9,457,1991 J.M.Allen等,Science,243,378,1989 A.Paetz等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1811、2005
本発明の目的は、特許文献2に開示のFc結合性タンパク質よりも、アルカリに対してさらに高い安定性を有した、IgGおよびFc融合タンパク質に対して良好な結合性を有するFc結合性タンパク質、およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、Fc結合性タンパク質を構成するアミノ酸のうち特定の位置にあるアミノ酸を他の特定のアミノ酸に置換することにより、Fc結合性タンパク質のアルカリに対する安定性がさらに向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の第一の態様は、
配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列において以下の(1)から(42)のうち少なくともいずれか1つのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質である。
(1)配列番号13の37番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(2)配列番号13の38番目のプロリンがセリンに置換
(3)配列番号13の53番目のロイシンがグルタミンに置換
(4)配列番号13の62番目のグルタミン酸がバリンに置換
(5)配列番号13の63番目のバリンがアラニンまたはグルタミン酸に置換
(6)配列番号13の66番目のロイシンがグルタミンまたはプロリンに置換
(7)配列番号13の67番目のセリンがプロリンに置換
(8)配列番号13の69番目のアラニンがバリンまたはスレオニンに置換
(9)配列番号13の71番目のセリンがスレオニンまたはロイシンに置換
(10)配列番号13の78番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換
(11)配列番号13の81番目のイソロイシンがバリンに置換
(12)配列番号13の84番目のセリンがスレオニンに置換
(13)配列番号13の88番目のフェニルアラニンがチロシンに置換
(14)配列番号13の95番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
(15)配列番号13の119番目のヒスチジンがグルタミンに置換
(16)配列番号13の127番目のバリンがアラニンに置換
(17)配列番号13の146番目のアルギニンがリジンに置換
(18)配列番号13の147番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換
(19)配列番号13の151番目のヒスチジンがチロシンに置換
(20)配列番号13の178番目のスレオニンがアラニンに置換
(21)配列番号13の191番目のアルギニンがリジンに置換
(22)配列番号13の199番目のスレオニンがアラニンに置換
(23)配列番号13の200番目のロイシンがメチオニンに置換
(24)配列番号13の213番目のスレオニンがアラニンに置換
(25)配列番号13の216番目のバリンがアラニンに置換
(26)配列番号13の221番目のロイシンがアルギニンに置換
(27)配列番号13の229番目のセリンがアスパラギンに置換
(28)配列番号13の236番目のイソロイシンがリジンに置換
(29)配列番号13の244番目のチロシンがヒスチジンに置換
(30)配列番号13の253番目のスレオニンがアラニンに置換
(31)配列番号13の290番目のアルギニンがグルタミンに置換
(32)配列番号13の293番目のリジンがアスパラギンに置換
(33)配列番号13の297番目のリジンがグルタミン酸に置換
(34)配列番号13の306番目のプロリンがスレオニンに置換
(35)配列番号13の34番目のグルタミンがアルギニンに置換
(36)配列番号13の45番目のグルタミンがリジンに置換
(37)配列番号13の82番目のグルタミンがプロリンに置換
(38)配列番号13の177番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(39)配列番号13の213番目のスレオニンがセリンに置換
(40)配列番号13の242番目のグルタミンがアルギニンに置換
(41)配列番号13の253番目のスレオニンがセリンに置換
(42)配列番号13の271番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
また本発明の第二の態様は、前記34番目から307番目までのアミノ酸配列において、少なくとも以下の(A)から(C)に記載のアミノ酸置換が生じている、前記第一の態様に記載のFc結合性タンパク質である。
(A)配列番号13の63番目のバリンがグルタミン酸に置換
(B)配列番号13の69番目のアラニンがバリンに置換
(C)配列番号13の95番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
また本発明の第三の態様は、配列番号18、配列番号22、配列番号30、配列番号32、配列番号38、配列番号45、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号64、配列番号68、配列番号72および配列番号74のうちいずれか1つに記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含む、前記第二の態様に記載のFc結合性タンパク質である。
また本発明の第四の態様は、配列番号18、配列番号22、配列番号30、配列番号32、配列番号38、配列番号45、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号64、配列番号68、配列番号72および配列番号74のうちいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなる、前記第三の態様に記載のFc結合性タンパク質である。
さらに本発明の第五の態様は、前記第一から第四の態様のいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
さらに本発明の第六の態様は、前記第五の態様に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。
さらに本発明の第七の態様は、前記第六の態様に記載の発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体である。
また本発明の第八の態様は、宿主が大腸菌である、前記第七の態様に記載の形質転換体である。
さらに本発明の第九の態様は、前記第七または第八の態様に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産させ、得られた培養物から生産されたFc結合性タンパク質を回収する、Fc結合性タンパク質の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
Fc結合性タンパク質を含むヒトFc受容体FcγRIは図1に示す構成であり、N末端側から15アミノ酸からなるシグナルペプチド領域(SS、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、1番目から15番目までの領域)、277アミノ酸からなる細胞外領域(EC、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目の領域)、21アミノ酸からなる細胞膜貫通領域(TM、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち293番目から313番目までの領域)、61アミノ酸からなる細胞内領域(C、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち314番目から374番目までの領域)から構成される。
本発明のFc結合性タンパク質における、アミノ酸置換の基準となるFc結合性タンパク質FcRm64(配列番号13)は、特開2011−206046号公報で開示のFc結合性タンパク質FcRm60c(配列番号2)のアミノ酸配列において、292番目のプロリンがリジンに、293番目のグルタミン酸がリジンに、297番目のグルタミンがリジンに、301番目のヒスチジンがリジンに、および304番目のプロリンがリジンにそれぞれアミノ酸置換したFc結合性タンパク質である。なおFc結合性タンパク質FcRm60c(配列番号2)は、配列番号1に記載のヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列のうち16番目から289番目までのアミノ酸配列(配列番号2においては34番目から307番目までのアミノ酸配列に相当)を含み、かつ、以下(1)から(60)に示すアミノ酸置換が生じたFc結合性タンパク質である。
(1)配列番号1の20番目のスレオニンがプロリンに置換
(2)配列番号1の25番目のスレオニンがリジンに置換
(3)配列番号1の35番目のグルタミンがロイシンに置換
(4)配列番号1の36番目のグルタミン酸がグリシンに置換
(5)配列番号1の38番目のスレオニンがセリンに置換
(6)配列番号1の41番目のロイシンがメチオニンに置換
(7)配列番号1の42番目のヒスチジンがロイシンに置換
(8)配列番号1の46番目のロイシンがプロリンに置換
(9)配列番号1の49番目のプロリンがセリンに置換
(10)配列番号1の51番目のセリンがアラニンに置換
(11)配列番号1の52番目のセリンがグリシンに置換
(12)配列番号1の58番目のロイシンがアルギニンに置換
(13)配列番号1の60番目のグリシンがアスパラギン酸に置換
(14)配列番号1の63番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(15)配列番号1の65番目のスレオニンがアラニンに置換
(16)配列番号1の69番目のセリンがスレオニンに置換
(17)配列番号1の70番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(18)配列番号1の71番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(19)配列番号1の73番目のスレオニンがアラニンに置換
(20)配列番号1の77番目のバリンがグルタミン酸に置換
(21)配列番号1の78番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(22)配列番号1の97番目のグルタミンがロイシンに置換
(23)配列番号1の100番目のイソロイシンがバリンに置換
(24)配列番号1の111番目のセリンがアラニンに置換
(25)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(26)配列番号1の115番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(27)配列番号1の121番目のアラニンがバリンに置換
(28)配列番号1の128番目のリジンがアルギニンに置換
(29)配列番号1の133番目のチロシンがヒスチジンに置換
(30)配列番号1の137番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(31)配列番号1の139番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(32)配列番号1の149番目のトリプトファンがアルギニンに置換
(33)配列番号1の151番目のセリンがスレオニンに置換
(34)配列番号1の152番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(35)配列番号1の156番目のロイシンがプロリンに置換
(36)配列番号1の157番目のリジンがアルギニンに置換
(37)配列番号1の160番目のイソロイシンがスレオニンに置換
(38)配列番号1の163番目のアスパラギンがセリンに置換
(39)配列番号1の165番目のスレオニンがメチオニンに置換
(40)配列番号1の173番目のリジンがアルギニンに置換
(41)配列番号1の181番目のイソロイシンがスレオニンに置換
(42)配列番号1の182番目のセリンがロイシンに置換
(43)配列番号1の184番目のスレオニンがセリンに置換
(44)配列番号1の195番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(45)配列番号1の199番目のスレオニンがアラニンに置換
(46)配列番号1の206番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(47)配列番号1の207番目のロイシンがプロリンに置換
(48)配列番号1の213番目のグルタミン酸がバリンに置換
(49)配列番号1の217番目のロイシンがグルタミンに置換
(50)配列番号1の218番目のロイシンがイソロイシンに置換
(51)配列番号1の230番目のチロシンがフェニルアラニンに置換
(52)配列番号1の231番目のメチオニンがリジンに置換
(53)配列番号1の233番目のセリンがグリシンに置換
(54)配列番号1の234番目のリジンがグルタミン酸に置換
(55)配列番号1の240番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(56)配列番号1の249番目のスレオニンがアラニンに置換
(57)配列番号1の270番目のロイシンがバリンに置換
(58)配列番号1の283番目のロイシンがヒスチジンに置換
(59)配列番号1の285番目のロイシンがグルタミンに置換
(60)配列番号1の289番目のバリンがアスパラギン酸に置換
本発明のFc結合性タンパク質は、前述した配列番号13に記載のFc結合性タンパク質FcRm64のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列において少なくとも特定位置におけるアミノ酸置換が1つ以上生じている、Fc結合性タンパク質である。なお本発明のFc結合性タンパク質は、配列番号13に記載のFc結合性タンパク質FcRm64の34番目から307番目まで(配列番号1においては16番目から289番目まで)のアミノ酸配列に相当する領域を少なくとも含んでいればよく、細胞外領域(EC)のN末端側にあるシグナルペプチド領域(SS)のすべてまたは一部を含んでもよいし、細胞外領域のC末端側にある細胞膜貫通領域(TM)または細胞内領域(C)を含んでもよい。
前記特定位置におけるアミノ酸置換は、具体的には、配列番号13に記載のアミノ酸配列において、Thr37Ile(この表記は配列番号13の37番目のスレオニンがイソロイシンに置換されていることを示す、以下同様)、Pro38Ser、Leu53Gln、Glu62Val、Val63Ala、Val63Glu、Leu66Pro、Leu66Gln、Ser67Pro、Ala69Val、Ala69Thr、Ser71Thr、Ser71Leu、Asp78Glu、Ile81Val、Ser84Thr、Phe88Tyr、Glu95Asp、His119Gln、Val127Ala、Arg146Lys、Asp147Asn、His151Tyr、Thr178Ala、Arg191Lys、Thr199Ala、Leu200Met、Thr213Ala、Val216Ala、Leu221Arg、Ser229Asn、Ile236Lys、Tyr244His、Thr253Ala、Arg290Gln、Lys293Asn、Lys297Glu、Pro306Thr、Gln34Arg、Gln45Lys、Gln82Pro、Asn177Asp、Thr213Ser、Gln242Arg、Thr253SerおよびGlu271Aspである。なお前述した特定位置におけるアミノ酸置換のうち、Thr37Ile、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、His119GlnおよびThr199Alaのうちいずれか1つ以上のアミノ酸置換が生じると好ましい。また前述した特定位置におけるアミノ酸置換のうち、少なくともVal63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspのアミノ酸置換が生じるとより好ましい。
本発明のFc結合性タンパク質の一例として、
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてVal63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号18に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてVal63Glu、Ala69Val、Ser71LeuおよびGlu95Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号22に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(c)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser84Thr、Glu95AspおよびThr199Alaのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号30に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(d)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95AspおよびThr199Alaのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号32に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(e)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、His119GlnおよびThr199Alaのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号38に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(f)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号45に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、(g)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号49に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(h)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号53に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(i)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Gln45Lys、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号57に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(j)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてGln34Arg、Thr37Ile、Gln45Lys、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242Argおよび Glu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号61に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(k)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号64に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(l)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Gln82Pro、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242Argおよび Glu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号68に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(m)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242Arg、Thr253Serおよび Glu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号72に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
(n)配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列においてThr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Gln82Pro、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242Arg、Thr253SerおよびGlu271Aspのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質(配列番号74に記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含むFc結合性タンパク質)、
があげられる。
なお本発明のFc結合性タンパク質を作製する際、特定のアミノ酸についてはIgG結合活性を有する限り、前述した特定位置におけるアミノ酸置換以外のアミノ酸置換を行なってもよい。一例として、アミノ酸間の物理的性質と化学的性質またはそのどちらかが類似したアミノ酸間で置換する保守的置換があげられ、保守的置換はFc結合性タンパク質に限らず、一般にタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン、アスパラギン酸とグルタミン酸、セリンとプロリンの対をそれぞれあげることができる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サイエンス・インターナショナル社,9,2005)。
本発明のFc結合性タンパク質は、そのN末端側またはC末端側に、夾雑物質存在下の溶液から分離する際に有用なオリゴペプチドをさらに付加してもよい。前記オリゴペプチドとしては、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等があげられる。また本発明のFc結合性タンパク質をクロマトグラフィー用の支持体等の固相に固定化する際に有用な、システインを含むオリゴペプチド(例えば配列番号41に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドやCys−Glyからなるジペプチド)を、本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側にさらに付加してもよい。Fc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加するオリゴペプチドの長さは、本発明のFc結合性タンパク質のIgG結合性やアルカリに対する安定性を損なわない限り制限はなく、1から100アミノ酸、好ましくは2から50アミノ酸、さらに好ましくは3から10アミノ酸である。前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質に付加させる際は、前記オリゴペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製後、当業者に周知の方法を用いて遺伝子工学的にFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加させてもよいし、化学的に合成した前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に化学的に結合させて付加させてもよい。さらに本発明のFc結合性タンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよい。宿主が大腸菌の場合における前記シグナルペプチドの例としては、PelB(配列番号40)、DsbA、MalE、TorTなどといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示することができる(特開2011−097898号公報)。
以下、本発明のFc結合性タンパク質の製造方法について、本発明のFc結合性タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドとする)の作製、本発明のポリヌクレオチドを用いての宿主への形質転換、本発明のFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体を用いた前記タンパク質の調製、の順に説明する。
本発明のポリヌクレオチドの作製方法の一例として、
(I)本発明のFc結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(II)ヒトFcγRIの全体または部分配列を含むポリヌクレオチドを直接人工的に、またはヒトFcγRIのcDNA等からPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した当該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、が例示できる。
前記(I)の方法において、アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主が大腸菌(Escherichia coli)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。
本発明のポリヌクレオチドへ変異を導入する場合、エラープローンPCR法を用いることができる。エラープローンPCR法における反応条件は、ヒトFcγRI(またはFc結合性タンパク質)をコードするポリヌクレオチドに所望の変異を導入できる条件であれば特に限定はなく、例えば、基質である4種類のデオキシヌクレオチド(dATP/dTTP/dCTP/dGTP)の濃度を不均一にし、MnClを0.01から10mM(好ましくは0.1から1mM)の濃度でPCR反応液に添加してPCRを行なうことで、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。またエラープローンPCR法以外の変異導入方法としては、ヒトFcγRIの全体または部分配列を含むポリヌクレオチドに、変異原となる薬剤を接触・作用させたり、紫外線を照射したりして、ポリヌクレオチドに変異を導入して作製する方法があげられる。当該方法において変異原として使用する薬剤としては、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン等、当業者が通常用いる変異原性薬剤を用いればよい。
本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換するには、本発明のポリヌクレオチドそのものを用いて形質転換してもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミド)中の適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入し、それを用いて形質転換したほうが、安定した形質転換が実施できる点で好ましい。なお、使用する発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はない。大腸菌を宿主とする場合の発現ベクターとしては、pET系発現ベクター、pUC発現ベクター、pTrc発現ベクター、pCDF発現ベクター、pBBR発現ベクターが例示できる。なお前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、および伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で発現ベクターに挿入すると好ましい。当該プロモータの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータがあげられる。
前記方法により作製した、本発明のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクター(以下、本発明の発現ベクターとする)を用いて宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。例えば、宿主としてEscherichia属に属する微生物(大腸菌JM109株、大腸菌BL21(DE3)株、大腸菌W3110株等)を選択する場合には、公知の文献(例えば、Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,256,1992)に記載の方法等により形質転換すればよい。前述した方法で形質転換して得られた形質転換体は、適切な方法でスクリーニングすることにより、本発明のFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体(以下、本発明の形質転換体とする)を取得することができる。
本発明の形質転換体から本発明の発現ベクターを調製するには、アルカリ抽出法またはQIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)等の市販の抽出キットを用いて調製すればよい。本発明の形質転換体をスクリーニングするには、例えば得られた形質転換体によって発現されるFc結合性タンパク質に対するIgGの結合活性を測定する方法があげられる。測定方法としては、例えばIgGに対する結合活性をEnzyme−Linked ImmunoSorbent Assay(以下、ELISAと表記)法や表面プラズモン共鳴法などを用いて測定すればよい。結合活性の測定に使用するIgGは、ヒトIgGが好ましく、ヒトIgG1やヒトIgG3が特に好ましい。
本発明の形質転換体を用いて本発明のFc結合性タンパク質を調製するには、本発明の形質転換体を培養することでFc結合性タンパク質を生産させ、得られた培養混合物から本発明のFc結合性タンパク質を回収すればよい。なお本明細書において、培養混合物とは、培養された形質転換体の細胞自体や細胞分泌物のほか、培養に用いた培地等も含まれる。
本発明の形質転換体を培養する際は、当該形質転換体を宿主の培養に適した培地で培養すればよい。例えば宿主が大腸菌の場合は、必要な栄養源を補ったLB(Luria−Bertani)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。なお培地に本発明の発現ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養すると、本発明の発現ベクターの導入の有無による形質転換体の選択的増殖が可能となるため好ましい。例えば、当該発現ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加すればよい。また培地には、炭素、窒素および無機塩供給源の他に、適当な栄養源を添加しても良く、所望により、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレートおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでもよい。さらに前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促すためにグリシンなどの試薬を培地に添加してもよい。グリシンを添加する場合、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加すればよい。培養温度は、当該技術分野において一般的な培養温度であればよい。例えば、宿主が大腸菌の場合、一般に10℃から40℃、好ましくは25℃から35℃、より好ましくは30℃前後であり、発現させる本発明のFc結合性タンパク質の特性により適宜選択すればよい。培地のpHは、当該技術分野において一般的な範囲の中から宿主の種類など諸条件に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌の場合、pH6.8からpH7.4の範囲が好ましく、pH7.0前後がさらに好ましい。なお本発明の発現ベクターに誘導性のプロモータを含んでいる場合は、本発明のFc結合性タンパク質を含むポリペプチドが良好に発現できるような条件下で誘導剤を添加しタンパク質発現を誘導すればよい。好ましい誘導剤としてはisopropyl−β−D−thiogalactopyranoside(IPTG)を例示できる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mMの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mMの範囲が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。具体例として、宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)が約0.5から1.0のときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、本発明のFc結合性タンパク質の発現を誘導することができる。
本発明の形質転換体を培養して得られた培養混合物から本発明のFc結合性タンパク質を回収するには、当業者が通常用いる方法の中から適宜選択して用いればよい。まず前記培養混合物からの本発明のFc結合性タンパク質の抽出は、発現の形態に応じて実施すればよい。培養上清に発現する場合は、菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清からFc結合性タンパク質を抽出すればよい。細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合は、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加することにより菌体を破砕し、菌体破砕液からFc結合性タンパク質を抽出すればよい。前述した方法で得られた抽出物の中からFc結合性タンパク質を分離精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、その一例として、液体クロマトグラフィーを用いた分離精製があげられる。液体クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等があり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製を行なうことで、本発明のFc結合性タンパク質を高純度に調製することができる。
本発明のFc結合性タンパク質は、野生型のヒトFcγRIや既知のFc結合性タンパク質と比較し、アルカリに対する安定性が向上している。そのため、本発明のFc結合性タンパク質はヒトIgGといった抗体やFc融合タンパク質を精製するためのアフィニティークロマトグラフィー用のリガンドとして好ましく用いることができる。
ヒトFc受容体FcγRIの構成概略を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて詳細に説明するが、本実施例は本発明の一形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1 発現ベクターpETFcRm64の作製
(1)以下に示す方法で、PelBシグナルペプチド(アミノ酸配列:MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA、配列番号40)をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターpTrc99a(GEヘルスケア社製)に挿入することで、発現ベクターpTrcpelを作製した。
(1−1)配列番号3(5’―CATGAAATACCTGCTGCCGACCGCTGCTGCTGGTCTGCTGCTCCTCGCTGCCCAGCCGGCGATGGC―3’)および配列番号4(5’―CATGGCCATCGCCGGCTGGGCAGCGAGGAGCAGCAGACCAGCAGCAGCGGTCGGCAGCAGGTATTT―3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを等量混合し、95℃で5分間加熱後、15℃になるまで1分間で1℃毎に温度を下げることで、二本鎖オリゴヌクレオチドPelBp1を調製した。なお、PelBp1は使用時まで15℃で保持した。
(1−2)(1−1)で調製したPelBp1を、あらかじめ制限酵素NcoIで消化した発現ベクターpTrc99aに、DNA Ligation kit(タカラバイオ社製)を用いてライゲーションし、これを用いて大腸菌JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。
(1−3)得られた形質転換体を100μg/mLのカルベニシリン(タカラバイオ社製)を含むLB培地にて培養後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて、発現ベクターpTrcpelを抽出した。
(2)以下に示す方法で、特開2011−206046号公報で開示されているFc結合性タンパク質であるFcRm60c(配列番号2)に対して、292番目のプロリンをリジンに、293番目のグルタミン酸をリジンに、297番目のグルタミンをリジンに、301番目のヒスチジンをリジンに、304番目のプロリンをリジンに、それぞれアミノ酸置換し、かつそのC末端に配列番号41に記載のアミノ酸配列(GSGGCG、以下これをシステインタグとする)を導入したFc結合性タンパク質(FcRm64)をコードするポリヌクレオチドを調製した。
(2−1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm60c(特開2011−206046号公報)を鋳型とし、配列番号5(5’−AACATGCCATGGATATCGGAATTAATTCGGATCCCACCAAGGCTGTGATTAAGCTGCAA−3’)および配列番号6(5’−GTCCGGGGTCTTCTGTTGTTTACCCAGTACTTTCAACTCAAGTTTTTTGCTCCGTTTAACCACATTG−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表1に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃に10秒間の第1ステップ、60℃に5秒間の第2ステップ、および72℃に1分間の第3ステップからなるサイクルを30回繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm60cpK5p1と命名した。
Figure 2014027916
(2−2)PCR産物m60cpK5p1を鋳型とし、配列番号5および配列番号7(5’−TTCCCAAGCTTATTAGCCGCAGCCACCCGAGCCACCGTCCGGGGTCTTCTGTTG−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表2に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、60℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップからなるサイクルを30回繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をPCR産物m60cpK5p2と命名した。
Figure 2014027916
(2−3)PCR産物m60cpK5p2をアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いてゲルより抽出することで精製した。
(2−4)精製したPCR産物m60cpK5p2を制限酵素NcoIおよびHindIIIで消化した後、あらかじめ制限酵素NcoIおよびHindIIIで消化した(1)で調製した発現ベクターpTrcpelにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(2−5)得られた形質転換体を100μg/mLのカルベニシリン(タカラバイオ社製)を含むLB培地にて培養後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて、発現べクターを抽出した。得られた発現べクターに挿入されているFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質(FcRm60c)のうち、40番目のアラニンから307番目のアスパラギン酸までの領域からなるFc結合性タンパク質であって、292番目のプロリンがリジンに、293番目のグルタミン酸がリジンに、297番目のグルタミンがリジンに、301番目のヒスチジンがリジンに、304番目のプロリンがリジンにそれぞれアミノ酸置換がなされ、さらにC末端にシステインタグを挿入したFc結合性タンパク質FcRm60cpK5CGをコードするポリヌクレオチドである。ここで得られた発現ベクターをpTrcFcRm60cpK5CGと命名した。
(2−6)発現ベクターpETFcRm60c(特開2011−206046号公報)を鋳型とし、配列番号8(5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’)および配列番号9(5’−AGCAATGGTACATCCCGCTGTGGGA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm64p1と命名した。
Figure 2014027916
(2−7)(2−5)で得られた発現ベクターpTrcFcRm60cpK5CGを鋳型とし、配列番号10(5’−TCCCACAGCGGGATGTACCATTGCT−3’)および配列番号11(5’−ACAGCCAAGCTTATTAGCCGCAGCCACCCGAGCCACCGT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm64p2と命名した。
(2−8)PCR産物m64p1およびm64p2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(2−9)精製したPCR産物m64p1およびm64p2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm64p3と命名した。
Figure 2014027916
(2−10)PCR産物m64p3を鋳型とし、配列番号8および配列番号11に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm64をコードするポリヌクレオチドを得た。
(3)得られたFcRm64をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(4)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養後、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて、FcRm64をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm64を抽出した。
(5)発現ベクターpETFcRm64のうち、FcRm64をコードするポリヌクレオチドおよびその周辺の領域について、チェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)にてヌクレオチド配列を解析した。なお当該解析の際、配列番号8または配列番号12(5’−TATGCTAGTTATTGCTCAG−3’)に記載からなるオリゴヌクレオチドのいずれかをシークエンス用プライマーとして使用した。
発現ベクターpETFcRm64により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号13に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号14に、それぞれ示す。なお配列番号13において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm64のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号13において、FcRm64のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。
実施例2 FcRm64のランダム変異体ライブラリー作製
(1)エラープローンPCRを用いて、実施例1で作製したFc結合性タンパク質であるFcRm64をコードするポリヌクレオチドへランダムに変異を導入した。鋳型DNAとして実施例1に記載の発現ベクターpETFcRm64を、PCRプライマーとして配列番号15(5’−TCAGCCATGGGACAAGTAGATACCCCCAAAGCTGTGATTA−3’)および配列番号11に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれ用いた。エラープローンPCRは、表5に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返し、最後に72℃で7分間熱処理することで実施した。
Figure 2014027916
(2)得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いてエレクトロポレーション法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、Fc結合性タンパク質FcRm64のランダム変異体ライブラリーを作製した。
実施例3 アルカリ安定性が向上したFc結合性タンパク質のスクリーニング(その1)
(1)実施例2で作製したFcRm64のランダム変異体ライブラリーを、50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地(16g/LのTryptone、10g/LのYeast extract、5g/LのNaCl)200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、37℃で好気的に一晩振とう培養した。
(2)培養後、50μLの培養液を500μLの2YT液体培地(0.05mMのIPTG、0.3%のグリシン、および50μg/mLのカナマイシンを含む)に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で好気的に一晩振とう培養した。
(3)培養後、遠心操作により得られる培養上清(当該上清には発現したFc結合性タンパク質が含まれる)を400mMの水酸化ナトリウム水溶液と等量混合し、37℃で180分間放置するアルカリ処理を行ない、処理後は1.25Mの塩化ナトリウムを含んだ1MのTris−HCl緩衝液(pH7.4)をアルカリ処理液に対し4倍量添加することでpHを中性領域に戻した。なお対照(アルカリ処理を行なわない系)として、400mMの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのMES緩衝液(pH6.0)を用いて、前記アルカリ処理と同様の処理を行なった。
(4)アルカリ処理を行なったとき、およびアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を下記に示すELISA法を用いてそれぞれ測定し、アルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性をアルカリ処理を行わなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
(4−1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellの濃度で固定化し(4℃で18時間)、固定化終了後、2%(w/v)のSKIM MILK(BD社製)を含んだ20mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)によりブロッキングした。
(4−2)洗浄緩衝液(0.05%(w/v)のTween 20と150mMのNaClを含む20mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4))で洗浄後、調製したFc結合性タンパク質を含む溶液を固定化ガンマグロブリンと反応させた(30℃で1時間)。
(4−3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、50ng/mLに希釈したAnti−FcγRI抗体(R&D Systems社製)を100μL/wellで添加した。
(4−4)30℃で1時間反応後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、50ng/mLに希釈したHorse radish Peroxidase(HRP)標識のAnti−mouse−IgG抗体(BETHYL社製)を100μL/wellで添加した。
(4−5)30℃で1時間反応後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し450nmの吸光度を測定した。
(5)(4)の測定を実施した約2700株の形質転換体の中から、Fc結合性タンパク質FcRm64と比較しアルカリ安定性または発現量が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。前記選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いて発現ベクターを得た。
(6)得られた発現ベクターのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、配列番号8または配列番号12に記載の配列からなるシーケンスプライマーを用いて、実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を解析した。
(5)で選択した形質転換体が発現するFc結合性タンパク質の、Fc結合性タンパク質FcRm64に対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理後の残存活性(%)をまとめたものを表6に示す。配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域(FcRm64の領域)を含み、かつ当該34番目から307番目までの領域において、Thr37Ile(この表記は、配列番号13の37番目のスレオニンがイソロイシンに置換されていることを表す、以下同様)、Pro38Ser、Leu53Gln、Glu62Val、Val63Ala、Val63Glu、Leu66Pro、Leu66Gln、Ser67Pro、Ala69Val、Ala69Thr、Ser71Thr、Ser71Leu、Asp78Glu、Ile81Val、Ser84Thr、Phe88Tyr、Glu95Asp、His119Gln、Val127Ala、Arg146Lys、Asp147Asn、His151Tyr、Thr178Ala、Arg191Lys、Thr199Ala、Leu200Met、Thr213Ala、Val216Ala、Leu221Arg、Ser229Asn、Ile236Lys、Tyr244His、Thr253Ala、Arg290Gln、Lys293Asn、Lys297GluまたはPro306Thrのいずれかのアミノ酸置換が少なくとも1つ生じているFc結合性タンパク質は、FcRm64に対しアルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2014027916
実施例4 Fc結合性タンパク質FcRm65の作製
実施例3で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Val63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm64に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm65を作製した。
(1)実施例3で得られたアルカリ安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体のうち、FcRm64に対してさらにVal63GluとGlu95Aspのアミノ酸置換が生じたFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体を培養し、発現ベクターを調製した。
(2)以下に示すPCRを実施し、Ala69Valのアミノ酸置換をさらに導入した。
(2−1)鋳型として(1)で調製した発現ベクターを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号16(5’−ATTGGGTTGATCCTACCCCAGACAGGT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm65p1と命名した。
(2−2)鋳型として(1)で調製した発現ベクターを、PCRプライマーとして配列番号17(5’−ACCTGTCTGGGGTAGGATCAACCCAAT−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm65p2と命名した。
(2−3)PCR産物m65p1およびm65p2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(2−4)精製したPCR産物m65p1およびm65p2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm65p3と命名した。
(2−5)PCR産物m65p3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm65をコードするポリヌクレオチドを得た。
(3)FcRm65をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(4)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm65をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm65を得た。
(5)発現ベクターpETFcRm65のうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm65により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号18に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号19に、それぞれ示す。なお配列番号18において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm65のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号18において、FcRm65のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm65のアミノ酸配列(配列番号18)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Val63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例5 Fc結合性タンパク質FcRm66の作製
実施例3で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Val63Glu、Ala69Val、Ser71LeuおよびGlu95Aspを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm64に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm66を作製した。
(1)実施例4(1)で調製した発現ベクターを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Ala69ValおよびSer71Leuのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型として実施例4(1)で調製した発現ベクターを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号20(5’−AACCATTGGGTTAATCCTACCCCAGACAGGT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm66p1と命名した。
(1−2)鋳型として実施例4(1)で調製した発現ベクターを、PCRプライマーとして配列番号21(5’−ACCTGTCTGGGGTAGGATTAACCCAATGGTT−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm66p2と命名した。
(1−3)PCR産物m66p1およびm66p2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m66p1およびm66p2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm66p3と命名した。
(1−5)PCR産物m66p3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm66をコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm66をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm66をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm66を得た。
(4)発現ベクターpETFcRm66のうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm66により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号22に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号23に、それぞれ示す。なお配列番号22において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm66のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号22において、FcRm66のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm66のアミノ酸配列(配列番号22)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号18)と比較して、Val63Glu、Ala69Val、Ser71LeuおよびGlu95Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例6 Fc結合性タンパク質FcRm67の作製
実施例3で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr37Ile、Ser84ThrおよびThr199Alaを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm65(実施例4)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm67を作製した。
(1)実施例4(4)で調製した発現ベクターpETFcRm65を鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Thr37Ile、Ser84ThrおよびThr199Alaのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm65を、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号24(5’−ACAGCTTTGGGGATATCTACTTGTCCCA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm67p1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm65を、PCRプライマーとして配列番号25(5’−TGGGACAAGTAGATATCCCCAAAGCTGT−3’)および配列番号26(5’−TGGAAAGTCGGGGTGGTGGCCTGGAT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm67p2と命名した。
(1−3)鋳型としてpETFcRm65を、PCRプライマーとして配列番号27(5’−ATCCAGGCCACCACCCCGACTTTCCA−3’)および配列番号28(5’−TTTGACGGAGACCAAGGCTCCCGCCGA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm67p3と命名した。
(1−4)鋳型としてpETFcRm65を、PCRプライマーとして配列番号29(5’−TCGGCGGGAGCCTTGGTCTCCGTCAAA−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm67p4と命名した。
(1−5)PCR産物m67p1、m67p2、m67p3およびm67p4を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−6)精製したPCR産物m67p1、m67p2、m67p3およびm67p4を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm67p5と命名した。
(1−7)PCR産物m67p5を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm67をコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm67をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm67をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm67を得た。
(4)発現ベクターpETFcRm67のうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm66により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号30に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号31に、それぞれ示す。なお配列番号30において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm67のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号30において、FcRm67のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm67のアミノ酸配列(配列番号30)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser84Thr、Glu95AspおよびThr199Alaのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例7 Fc結合性タンパク質FcRm68の作製
実施例3で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr37Ile、Ser84ThrおよびThr199Alaを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm66(実施例5)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm68を作製した。
(1)実施例5(3)で調製した発現ベクターpETFcRm66を鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Thr37Ile、Ser84ThrおよびThr199Alaのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm66を用いた他は、実施例6(1−1)と同様のPCRを実施した。得られたPCR産物はm68p1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm66を用いた他は、実施例6(1−2)と同様のPCRを実施した。得られたPCR産物はm68p2と命名した。
(1−3)鋳型としてpETFcRm66を用いた他は、実施例6(1−3)と同様のPCRを実施した。得られたPCR産物はm68p3と命名した。
(1−4)鋳型としてpETFcRm66を用いた他は、実施例6(1−4)と同様のPCRを実施した。得られたPCR産物はm68p4と命名した。
(1−5)PCR産物m68p1、m68p2、m68p3およびm68p4を、実施例6(1−5)と同様な方法で精製した。
(1−6)精製したPCR産物m68p1、m68p2、m68p3およびm68p4を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm68p5と命名した。
(1−7)PCR産物m68p5を鋳型とした他は、実施例6(1−7)と同様のPCRを実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm68をコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm68をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm68をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm68を得た。
(4)発現ベクターpETFcRm68のうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm68により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号32に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号33に、それぞれ示す。なお配列番号32において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm68のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号32において、FcRm68のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm68のアミノ酸配列(配列番号32)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95AspおよびThr199Alaのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例8 Fc結合性タンパク質FcRm70の作製
実施例3で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Leu66ProおよびHis119Glnを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm68(実施例7)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm70を作製した。
(1)実施例7(3)で調製した発現ベクターpETFcRm68を鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Leu66ProおよびHis119Glnのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm68を、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号34(5’−CCCCAGACGGGTGCGGTTCTTCGCAGA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm70p1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm68を、PCRプライマーとして配列番号35(5’−TCTGCGAAGAACCGCACCCGTCTGGGG−3’)および配列番号36(5’−AGCCAGCCACGTTGAACTTCAAGTA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm70p2と命名した。
(1−3)鋳型としてpETFcRm68を、PCRプライマーとして配列番号37(5’−TACTTGAAGTTCAACGTGGCTGGCT−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm70p3と命名した。
(1−4)PCR産物m70p1、m70p2およびm70p3を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−6)精製したPCR産物m70p1、m70p2およびm70p3を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm70p4と命名した。
(1−7)PCR産物m70p4を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm70をコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm70をコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm70をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm70を得た。
(4)発現ベクターpETFcRm70のうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm70により発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号38に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号39に、それぞれ示す。なお配列番号38において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm70のアミノ酸配列、308番目のグリシンから314番目のグリシンまでがシステインタグである。なお配列番号38において、FcRm70のアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm70のアミノ酸配列(配列番号38)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、His119GlnおよびThr199Alaのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例9 Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性評価
(1)下記(I)から(IX)に記載のFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加した2YT液体培地に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
(I)FcRm60c(配列番号2)(特開2011−206046号公報)
(II)FcRm61(配列番号42)(特開2011−206046号公報)
(III)FcRm62(配列番号43)(特開2011−206046号公報)
(IV)FcRm64(配列番号13)(実施例1)
(V)FcRm65(配列番号18)(実施例4)
(VI)FcRm66(配列番号22)(実施例5)
(VII)FcRm67(配列番号30)(実施例6)
(VIII)FcRm68(配列番号32)(実施例7)
(IX)FcRm70(配列番号38)(実施例8)
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2YT液体培地に前培養液を200μL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養後、終濃度0.01mMとなるようIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養した。
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein extraction kit(タカラバイオ社製)を用いてタンパク質抽出液を調製した。
(5)(4)で調製したタンパク質抽出液中のFc結合性タンパク質の濃度を、実施例3(4)に記載のELISA法を用いて抗体結合活性を測定し、既知濃度のFc結合性タンパク質における値と比較して測定した。
(6)Fc結合性タンパク質としての濃度が0.5μg/mLとなるように、(4)で調製したタンパク質抽出液を純水で希釈した後、等量の400mMの水酸化ナトリウム水溶液を加え、30℃で180分間アルカリ処理を行なった。処理後は1.25Mの塩化ナトリウムを含んだ1MのTris−HCl緩衝液(pH7.4)をアルカリ処理液に対し4倍量添加することでpHを中性領域に戻した。なお対照(アルカリ処理を行なわない系)として、400mMの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのMES緩衝液(pH6.0)を用いて、前記アルカリ処理と同様の処理を行なった。
(7)アルカリ処理を行なったとき、およびアルカリ処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を実施例3(4)に記載のELISA法を用いてそれぞれ測定し、アルカリ処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性をアルカリ処理を行わなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性割合を算出した。
各Fc結合性タンパク質のアルカリに対する安定性を比較した結果を表7に示す。今回作製したFc結合性タンパク質(FcRm64、FcRm65、FcRm66、FcRm67、FcRm68およびFcRm70)は、特開2011−206046号公報に開示のFc結合性タンパク質(FcRm60c、FcRm61およびFcRm62)と比較し、いずれもアルカリ安定性が向上していることがわかる。さらに今回作製したFc結合性タンパク質のうち、FcRm65、FcRm66、FcRm67、FcRm68およびFcRm70は、いずれもFcRm64と比較し、アルカリ安定性が向上していることがわかる。FcRm65、FcRm66、FcRm67、FcRm68およびFcRm70は、いずれもVal63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspのアミノ酸置換を有している。すなわち配列番号13に記載のアミノ酸配列(FcRm64)のうち、34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列において、少なくともVal63Glu、Ala69ValおよびGlu95Aspのアミノ酸置換が生じたFc結合性タンパク質は、特にアルカリに対する安定性に優れていることがわかる。なお今回作製したFc結合性タンパク質の中では、FcRm66とFcRm68が最も高いアルカリ安定性を有していた。
Figure 2014027916
実施例10 FcRm68のランダム変異体ライブラリー作製
(1)鋳型DNAとして実施例7(3)に記載の発現ベクターpETFcRm68を、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号44(5’−CCGGAAGCTTAGCCGCAGTCCGGGGTCTTCTGTTGTTTACCCAGTAC−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれ用いた。エラープローンPCRは、表5に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返し、最後に72℃で7分間熱処理することで実施した。
(2)得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いてエレクトロポレーション法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、Fc結合性タンパク質FcRm68のランダム変異体ライブラリーを作製した。
実施例11 アルカリ安定性が向上したFc結合性タンパク質のスクリーニング(その2)
(1)実施例10で作製したFcRm68のランダム変異体ライブラリーを、実施例3(1)から(2)に記載と同様な方法で培養を行なった。
(2)培養後、遠心操作により得られる培養上清(当該上清には発現したFc結合性タンパク質が含まれる)を純水で2倍希釈した後、実施例3(3)に記載の方法でアルカリ処理を行ない、実施例3(4)に記載の方法でFc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
(3)(2)の測定を実施した約2700株の形質転換体の中から、FcRm68と比較しアルカリ安定性または発現量が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。前記選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いて発現ベクターを得た。
(4)得られた発現ベクターのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、配列番号8または配列番号12に記載の配列からなるシーケンスプライマーを用いて、実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を解析した。
配列解析の結果、Fc結合性タンパク質FcRm68に対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理後の残存活性(%)をまとめたものを表8に示す。配列番号32に記載のアミノ酸配列のうち、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域(FcRm68の領域)を含み、かつ当該34番目から307番目までの領域において、Gln34Arg(この表記は、配列番号13の34番目のグルタミンがアルギニンに置換されていることを表す、以下同様)、Gln45Lys、Leu66Pro、Leu66Gln、Thr213Ser、Gln242ArgまたはGlu271Aspのいずれかの置換が少なくとも1つ生じているFc結合性タンパク質は、FcRm68に対しアルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2014027916
スクリーニングで得られたFcRm68変異体のうち、FcRm68のアミノ酸配列(配列番号32)と比較して、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じたFc結合性タンパク質をFcRm70bと命名し、当該Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターをpETFcRm70bと命名した。FcRm70bのアミノ酸配列を配列番号45に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号46に、それぞれ示す。なお配列番号45において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm70bのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでのジペプチドがダイレクトシステインタグである(以下、Cys−Glyのジペプチドタグをダイレクトシステインタグとする)。また配列番号45において、FcRm70bのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm70bのアミノ酸配列(配列番号45)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例12 Fc結合性タンパク質FcRm70cの作製
実施例11で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr213Serを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm70b(実施例11)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm70cを作製した。
(1)実施例11で調製した発現ベクターpETFcRm70bを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Thr213Serのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm70bを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号47(5’−TTGCCACACTCGCAGACAGCACGGGC−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm70cp1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm70bを、PCRプライマーとして配列番号48(5’−GCCCGTGCTGTCTGCGAGTGTGGCAA−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm70cp2と命名した。
(1−3)PCR産物m70cp1およびm70cp2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m70cp1およびm70cp2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm70cp3と命名した。
(1−5)PCR産物m70cp3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm70cをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm70cをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm70cをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm70cを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm70cのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm70cにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号49に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号50に、それぞれ示す。なお配列番号49において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm70cのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また配列番号49において、FcRm70cのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm70cのアミノ酸配列(配列番号49)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例13 Fc結合性タンパク質FcRm71aの作製
実施例11で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Leu66Proを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm70b(実施例11)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm71aを作製した。
(1)実施例11で調製した発現ベクターpETFcRm70bを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Leu66Proのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm70bを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号51(5’−TTAATCCTACCCCAGACGGGTGCGGTTCT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm71ap1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm70bを、PCRプライマーとして配列番号52(5’−AGAACCGCACCCGTCTGGGGTAGGATTAA−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm71ap2と命名した。
(1−3)PCR産物m71ap1およびm71ap2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m71ap1およびm71ap2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm71ap3と命名した。
(1−5)PCR産物m71ap3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm71aをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm71aをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm71aをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm71aを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm71aのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm71aにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号53に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号54に、それぞれ示す。なお配列番号53において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm71aのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号53において、FcRm71aのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm71aのアミノ酸配列(配列番号53)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例14 Fc結合性タンパク質FcRm72aの作製
実施例11で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln45Lysを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm71a(実施例13)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm72aを作製した。
(1)実施例13(3)で調製した発現ベクターpETFcRm71aを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Gln45Lysのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm71aを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号55(5’−ACCCACGGTGGTTTCAGCTTAATCACA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72ap1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm71aを、PCRプライマーとして配列番号56(5’−TGTGATTAAGCTGAAACCACCGTGGGT−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72ap2と命名した。
(1−3)PCR産物m72ap1およびm72ap2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m72ap1およびm72ap2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm72ap3と命名した。
(1−5)PCR産物m72ap3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm72aをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm72aをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm72aをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm72aを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm72aのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm72aにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号57に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号58に、それぞれ示す。なお配列番号57において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm72aのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号57において、FcRm72aのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm72aのアミノ酸配列(配列番号57)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Gln45Lys、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例15 Fc結合性タンパク質FcRm73aの作製
実施例11で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln34Argを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm72a(実施例14)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm73aを作製した。
(1)実施例14(3)で調製した発現ベクターpETFcRm72aを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Gln34Argのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm72aを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号59(5’−ATATCTACTCGTCCCATGGCGAGAGCCGA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm73ap1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm72aを、PCRプライマーとして配列番号60(5’−TCGGCTCTCGCCATGGGACGAGTAGATAT−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm73ap2と命名した。
(1−3)PCR産物m73ap1およびm73ap2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m73ap1およびm73ap2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm73ap3と命名した。
(1−5)PCR産物m73ap3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm73aをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm73aをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm73aをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm73aを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm73aのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm73aにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号61に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号62に、それぞれ示す。なお配列番号61において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm73aのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号61において、FcRm73aのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm73aのアミノ酸配列(配列番号61)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Gln34Arg、Thr37Ile、Gln45Lys、Val63Glu、Leu66Pro、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Thr199Ala、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例16 Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性評価
下記(I)、(VIII)および(X)から(XIV)に記載のFc結合性タンパク質をそれぞれ発現可能な形質転換体を用いて、実施例9に記載の方法と同様の方法で、Fc結合性タンパク質の調製、アルカリ処理および残存活性割合の算出を行なうことにより、各Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性の評価を行なった。
(I)FcRm64(配列番号13)(実施例1)
(VIII)FcRm68(配列番号32)(実施例7)
(X)FcRm70b(配列番号45)(実施例11)
(XI)FcRm70c(配列番号49)(実施例12)
(XII)FcRm71a(配列番号53)(実施例13)
(XIII)FcRm72a(配列番号57)(実施例14)
(XIV)FcRm73a(配列番号61)(実施例15)
各Fc結合性タンパク質のアルカリに対する安定性を比較した結果を表9に示す。実施例11から15で作製したFc結合性タンパク質(FcRm70b、FcRm70c、FcRm71a、FcRm72aおよびFcRm73a)は、Fc結合性タンパク質FcRm64(実施例1)と比較し、いずれもアルカリ安定性が向上していることがわかる。さらに実施例11から15で作製したFc結合性タンパク質は、Fc結合性タンパク質FcRm68(実施例7)と比較しても、いずれもアルカリ安定性が向上していることがわかる。
Figure 2014027916
実施例17 FcRm70cのランダム変異体ライブラリー作製
(1)鋳型DNAとして実施例12(3)に記載の発現ベクターpETFcRm70cを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号63(5’−CCAAGCTTAGCCGCAGTCCGGGGT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれ用いた。エラープローンPCRは、表5に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返し、最後に72℃で7分間熱処理することで実施した。
(2)得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いてエレクトロポレーション法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地でコロニー形成させることで、Fc結合性タンパク質FcRm70cのランダム変異体ライブラリーを作製した。
実施例18 アルカリ安定性が向上したFc結合性タンパク質のスクリーニング(その3)
(1)実施例17で作製したFcRm70cのランダム変異体ライブラリーを、実施例3(1)から(2)に記載と同様の方法で培養を行なった。
(2)培養後、遠心操作により得られる培養上清(当該上清には発現したFc結合性タンパク質が含まれる)を純水で4倍希釈した後、実施例3(3)に記載の方法でアルカリ処理を行ない、実施例3(4)に記載の方法でFc結合性タンパク質の残存活性割合を算出した。
(3)(2)の測定を実施した約2700株の形質転換体の中から、Fc結合性タンパク質FcRm70cと比較しアルカリ安定性または発現量が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。前記選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いて発現ベクターを得た。
(4)得られた発現ベクターのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列を、配列番号8または配列番号12に記載の配列からなるシーケンスプライマーを用いて、実施例1(5)に記載の方法によりヌクレオチド配列を解析した。
配列解析の結果、Fc結合性タンパク質FcRm70cに対するアミノ酸置換位置およびアルカリ処理後の残存活性(%)をまとめたものを表10に示す。配列番号49に記載のアミノ酸配列のうち、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域(FcRm70cの領域)を含み、かつ当該34番目から307番目までの領域において、Gln82Pro(この表記は、配列番号13の82番目のグルタミンがプロリンに置換されていることを表す、以下同様)、Asn177AspまたはThr253Serのいずれかの置換が少なくとも1つ生じているFc結合性タンパク質は、FcRm70cに対しアルカリ安定性が向上しているといえる。
Figure 2014027916
スクリーニングから得られた、FcRm70c変異体のうち、FcRm70cのアミノ酸配列(配列番号49)と比較して、Asn177Aspのアミノ酸置換が生じたFc結合性タンパク質をFcRm71cと命名し、当該Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターをpETFcRm71cと命名した。FcRm71cのアミノ酸配列を配列番号64に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号65に、それぞれ示す。なお配列番号64において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm71cのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また配列番号64において、FcRm71cのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm71cのアミノ酸配列(配列番号64)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例19 Fc結合性タンパク質FcRm72cの作製
実施例18で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln82Proを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm71c(実施例18)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm72cを作製した。
(1)実施例18で調製した発現ベクターpETFcRm71cを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Gln82Proのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm71cを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号66(5’−TCGGGGTGGTGGCCGGGATCGCGGTGTCATT−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72cp1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm71cを、PCRプライマーとして配列番号67(5’−AATGACACCGCGATCCCGGCCACCACCCCGA−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72cp2と命名した。
(1−3)PCR産物m72cp1およびm72cp2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m72cp1およびm72cp2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm72cp3と命名した。
(1−5)PCR産物m72cp3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm72cをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm72cをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm72cをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm72cを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm72cのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm72cにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号68に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号69に、それぞれ示す。なお配列番号68において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm72cのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号68において、FcRm72cのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm72cのアミノ酸配列(配列番号68)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Gln82Pro、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242ArgおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例20 Fc結合性タンパク質FcRm72dの作製
実施例18で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Thr253Serを選択し、そのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm71c(実施例18)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm72dを作製した。
(1)実施例18で調製した発現ベクターpETFcRm71cを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Thr253Serのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm71cを、PCRプライマーとして配列番号8および配列番号70(5’−TCCGCGCAGGGATTCGCCGCCCTTAAA−3’)に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72dp1と命名した。
(1−2)鋳型としてpETFcRm71cを、PCRプライマーとして配列番号71(5’−TTTAAGGGCGGCGAATCCCTGCGCGGA−3’)および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm72dp2と命名した。
(1−3)PCR産物m72dp1およびm72dp2を、それぞれアガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−4)精製したPCR産物m72dp1およびm72dp2を混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm72dp3と命名した。
(1−5)PCR産物m72dp3を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm72dをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm72dをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm72dをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm72dを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm72dのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm72dにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号72に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号73に、それぞれ示す。なお配列番号72において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm72dのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号72において、FcRm72dのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm72dのアミノ酸配列(配列番号72)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242Arg、Thr253SerおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例21 Fc結合性タンパク質FcRm73bの作製
実施例18で判明した、アルカリ安定性の向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln82ProおよびThr253Serを選択し、それらのアミノ酸置換をFc結合性タンパク質FcRm71c(実施例18)に対して行なうことで、Fc結合性タンパク質FcRm73bを作製した。
(1)実施例18で調製した発現ベクターpETFcRm71cを鋳型として以下に示すPCRを実施することで、Gln82ProおよびThr253Serのアミノ酸置換をさらに導入した。
(1−1)鋳型としてpETFcRm71cを、PCRプライマーとして配列番号67および配列番号70に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いてPCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物をm73bp1と命名した。
(1−2)PCR産物m73bp1を、アガロースゲルを用いて電気泳動後、目的のPCR産物を含むゲル部分を切り出し、QIAquick Gel extraction kit(キアゲン社製)を用いて抽出することで精製した。
(1−3)精製したPCR産物m73bp1を、実施例19(1−1)で調製したPCR産物m72cp1および実施例20(1−2)で調製したPCR産物m72dp2とともに混合後、表4に示す組成の反応液を調製し、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル繰り返すことでPCRを実施した。得られたPCR産物をm73bp2と命名した。
(1−4)PCR産物m73bp2を鋳型とし、配列番号8および配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとして、PCRを実施した。PCRは、表3に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を、98℃で10秒間の第1ステップ、50℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル繰り返すことで実施した。得られたPCR産物を精製することで、Fc結合性タンパク質FcRm73bをコードするポリヌクレオチドを得た。
(2)FcRm73bをコードするポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011−206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養し、発現ベクターを抽出することで、Fc結合性タンパク質FcRm73bをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターpETFcRm73bを得た。
(4)発現ベクターpETFcRm73bのうち、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列の解析を、実施例1(5)と同様の方法により行なった。
発現ベクターpETFcRm73bにより発現されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号74に、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号75に、それぞれ示す。なお配列番号74において、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチド、27番目のリジンから33番目のグリシンまでがリンカーペプチド、34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までがFc結合性タンパク質FcRm73bのアミノ酸配列、308番目のシステインから309番目のグリシンまでがダイレクトシステインタグである。また、配列番号74において、FcRm73bのアミノ酸配列(34番目のグルタミンから307番目のアスパラギン酸までの領域)は、ヒトFc受容体FcγRIのアミノ酸配列(配列番号1)では16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域に相当する。Fc結合性タンパク質FcRm73bのアミノ酸配列(配列番号74)は、FcRm64のアミノ酸配列(配列番号13)と比較して、Thr37Ile、Val63Glu、Ala69Val、Ser71Leu、Gln82Pro、Ser84Thr、Glu95Asp、Asn177Asp、Thr199Ala、Thr213Ser、Gln242Arg、Thr253SerおよびGlu271Aspのアミノ酸置換がさらに生じている。
実施例22 Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性評価
下記(I)、(VIII)、(XI)および(XV)から(XVII)に記載のFc結合性タンパク質をそれぞれ発現可能な形質転換体を用いて、実施例9に記載の方法と同様の方法で、Fc結合性タンパク質の調製、アルカリ処理および残存活性割合の算出を行なうことにより、各Fc結合性タンパク質のアルカリ安定性の評価を行なった。
(I)FcRm64(配列番号13)(実施例1)
(VIII)FcRm68(配列番号32)(実施例7)
(XI)FcRm70c(配列番号49)(実施例12)
(XV)FcRm72c(配列番号68)(実施例19)
(XVI)FcRm72d(配列番号72)(実施例20)
(XVII)FcRm73b(配列番号74)(実施例21)
各Fc結合性タンパク質のアルカリに対する安定性を比較した結果を表11に示す。実施例19から21で作製したFc結合性タンパク質(FcRm72c、FcRm72dおよびFcRm73b)は、Fc結合性タンパク質FcRm64(実施例1)と比較し、いずれもアルカリ安定性が向上していることがわかる。さらに実施例19から21で作製したFc結合性タンパク質は、Fc結合性タンパク質FcRm68(実施例7)やFcRm70c(実施例12)と比較しても、いずれもアルカリ安定性が向上していることがわかる。
Figure 2014027916
本発明のFc結合性タンパク質はアルカリ安定性に優れており、IgGやFc融合タンパク質の精製のためのアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとして有用である。

Claims (9)

  1. 配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち34番目から307番目までのアミノ酸配列を含み、かつ当該34番目から307番目までのアミノ酸配列において以下の(1)から(42)のうち少なくともいずれか1つのアミノ酸置換が生じている、Fc結合性タンパク質。
    (1)配列番号13の37番目のスレオニンがイソロイシンに置換
    (2)配列番号13の38番目のプロリンがセリンに置換
    (3)配列番号13の53番目のロイシンがグルタミンに置換
    (4)配列番号13の62番目のグルタミン酸がバリンに置換
    (5)配列番号13の63番目のバリンがアラニンまたはグルタミン酸に置換
    (6)配列番号13の66番目のロイシンがグルタミンまたはプロリンに置換
    (7)配列番号13の67番目のセリンがプロリンに置換
    (8)配列番号13の69番目のアラニンがバリンまたはスレオニンに置換
    (9)配列番号13の71番目のセリンがスレオニンまたはロイシンに置換
    (10)配列番号13の78番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換
    (11)配列番号13の81番目のイソロイシンがバリンに置換
    (12)配列番号13の84番目のセリンがスレオニンに置換
    (13)配列番号13の88番目のフェニルアラニンがチロシンに置換
    (14)配列番号13の95番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
    (15)配列番号13の119番目のヒスチジンがグルタミンに置換
    (16)配列番号13の127番目のバリンがアラニンに置換
    (17)配列番号13の146番目のアルギニンがリジンに置換
    (18)配列番号13の147番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換
    (19)配列番号13の151番目のヒスチジンがチロシンに置換
    (20)配列番号13の178番目のスレオニンがアラニンに置換
    (21)配列番号13の191番目のアルギニンがリジンに置換
    (22)配列番号13の199番目のスレオニンがアラニンに置換
    (23)配列番号13の200番目のロイシンがメチオニンに置換
    (24)配列番号13の213番目のスレオニンがアラニンに置換
    (25)配列番号13の216番目のバリンがアラニンに置換
    (26)配列番号13の221番目のロイシンがアルギニンに置換
    (27)配列番号13の229番目のセリンがアスパラギンに置換
    (28)配列番号13の236番目のイソロイシンがリジンに置換
    (29)配列番号13の244番目のチロシンがヒスチジンに置換
    (30)配列番号13の253番目のスレオニンがアラニンに置換
    (31)配列番号13の290番目のアルギニンがグルタミンに置換
    (32)配列番号13の293番目のリジンがアスパラギンに置換
    (33)配列番号13の297番目のリジンがグルタミン酸に置換
    (34)配列番号13の306番目のプロリンがスレオニンに置換
    (35)配列番号13の34番目のグルタミンがアルギニンに置換
    (36)配列番号13の45番目のグルタミンがリジンに置換
    (37)配列番号13の82番目のグルタミンがプロリンに置換
    (38)配列番号13の177番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
    (39)配列番号13の213番目のスレオニンがセリンに置換
    (40)配列番号13の242番目のグルタミンがアルギニンに置換
    (41)配列番号13の253番目のスレオニンがセリンに置換
    (42)配列番号13の271番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
  2. 前記34番目から307番目までのアミノ酸配列において、少なくとも以下の(A)から(C)に記載のアミノ酸置換が生じている、請求項1に記載のFc結合性タンパク質。
    (A)配列番号13の63番目のバリンがグルタミン酸に置換
    (B)配列番号13の69番目のアラニンがバリンに置換
    (C)配列番号13の95番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換
  3. 配列番号18、配列番号22、配列番号30、配列番号32、配列番号38、配列番号45、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号64、配列番号68、配列番号72および配列番号74のうちいずれか1つに記載のアミノ酸配列における34番目から307番目までのアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のFc結合性タンパク質。
  4. 配列番号18、配列番号22、配列番号30、配列番号32、配列番号38、配列番号45、配列番号49、配列番号53、配列番号57、配列番号61、配列番号64、配列番号68、配列番号72および配列番号74のうちいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなる、請求項3に記載のFc結合性タンパク質。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  7. 請求項6に記載の発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体。
  8. 宿主が大腸菌である、請求項7に記載の形質転換体。
  9. 請求項7または8に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産させ、得られた培養物から生産されたFc結合性タンパク質を回収する、Fc結合性タンパク質の製造方法。
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