JP2018011515A - 大腸菌を用いた遺伝子組換えタンパク質の製造方法 - Google Patents

大腸菌を用いた遺伝子組換えタンパク質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換して得られた大腸菌を培養して前記タンパク質を製造する方法において、前記タンパク質を効率的に製造するのに最適な発現誘導の時期を提供することにある。【解決の手段】 Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換して得られた大腸菌を培養し、細胞密度(濁度、OD600nm)が120から160の状態で誘導することで前記課題を解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は組換えタンパク質を発現可能な形質転換体から、前記タンパク質、特にFc結合性タンパク質を効率的に製造する方法に関する。特に本発明は、前記タンパク質を発現可能な形質転換体を効率よく培養することで、前記タンパク質、特にFc結合性タンパク質を効率的に製造する方法に関する。
有用タンパク質を産業レベルで利用しようとすると、大量に調製して準備する必要があり、そのためには遺伝子組換え技術を用いて大量に生産させる手法が用いられる。遺伝子組換えによる組換えタンパク質生産は目的とするタンパク質遺伝子を宿主細胞に組み込み、発現させる手段となるが、目的とするタンパク質に応じて発現系や製造における各種工程を検討する必要がある。遺伝子組換えの宿主としては大腸菌や酵母、動物細胞などが挙げられ、生産系および工業生産プロセスの構築に至るまでのコストや開発期間を考慮して選択される。
組換えタンパク質の生産プロセスにおいて、微生物あるいは細胞そのものの増殖と目的物である組換えタンパク質の生産を制御することは大変重要であり、微生物や酵母を用いた生産系では誘導発現が可能な生産系が用いられることが多い。このような生産系では培養の前半では菌体を増殖させ、後半において発現誘導を行うことにより目的タンパク質を大量に生産させることが可能である。一方で増殖から生産への切り替えのタイミングや生産期における基質供給など難しい培養制御が必要となる。
産業規模での培養方法として通気撹拌型の培養槽を用いた培養があるが、この方法には最初に入れた培地をそのまま用いて培養する回分培養、途中で培地を継ぎ足していく半回分培養、さらには連続的に培地を供給して培地を抜き出す連続培養がある。培養中に必要な栄養源を追加しながら培養する半回分培養は目的物や微生物菌体が高収率で得られることが知られている。ここで培養中に培地成分を追加することを流加と呼ぶ。流加培養は供給する栄養源の濃度を任意に、多くの場合は低濃度に制御できる利点がある。グルコースのような炭素源を高濃度とした場合に異化物抑制と呼ばれる目的物の生産が抑制されることが知られている。そのため、高濃度基質により菌体の増殖や目的物の生産が阻害される場合や、アルコールや有機酸などの副生成物が生産される場合に特に効果的である。流加培養においては、グルコースのような炭素源以外にも酵母エキスのような窒素源を炭素源と同時に流加すると、目的タンパク質や微生物菌体がより高収率で得られることが知られている(特許文献1)。
Fc結合性タンパク質(Fcレセプター)は免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群の分子である。Fcレセプターはその結合する免疫グロブリンの種類によって分類されており、IgGのFc領域に結合するFcγレセプター、IgEのFc領域に結合するFcεレセプター、IgAのFc領域に結合するFcαレセプター等がある(非特許文献1)。また、各レセプターは、その構造の違いによりさらに細かく分類され、Fcγレセプターの場合、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの存在が報告されている(非特許文献1)。
Fcγレセプターの一つであるFcγRIIIaはナチュラルキラー細胞(NK細胞)やマクロファージなどの細胞表面に存在しており、ヒト免疫機構の中でも重要なADCC(抗体依存性細胞傷害)活性に関与している重要なレセプターである。このFcγRIIIaとヒトIgGとの親和性は結合の強さを示す結合定数(K)が10−1以下であることが報告されている(非特許文献2)。 ヒトFcγRIIIaのアミノ酸配列(配列番号1)はUniProt(Accession number:P08637)などの公的データベースに公表されている。また、FcγRIIIaの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列および細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されている。図1にヒトFcγRIIIaの構造略図を示す。尚、図1中の番号はアミノ酸番号を示しており、その番号は配列番号1に記載のアミノ酸番号に対応する。すなわち、配列番号1中の1番目のメチオニン(Met)から16番目のアラニン(Ala)までがシグナル配列(S)、17番目のグリシン(Gly)から208番目のグルタミン(Gln)までが細胞外領域(EC)、209番目のバリン(Val)から229番目のバリン(Val)までが細胞膜貫通領域(TM)および230番目のリジン(Lys)から254番目のリジン(Lys)までが細胞内領域(C)とされている。尚、FcγRIIIaはIgG1からIgG4まであるヒトIgGサブクラスのうち、特にIgG1とIgG3に対し強く結合する一方、IgG2とIgG4に対する結合は弱いことが知られている。
近年になり見出されたFc結合性タンパク質の予想外の免疫抑制的な生物学的特性により、自己免疫疾患または自己免疫症候群、移植物の拒絶および悪性リンパ増殖の領域において医薬として注目を浴びつつある(非特許文献3)。このようなFc結合性タンパク質の産業利用への関心が高まっている中、Fc結合性タンパク質が有する抗体の吸着能は各種抗体精製用クロマトグラフィーゲルの捕捉機能を担うタンパク質としても利用することができる。そのため、Fc結合性タンパク質を発現可能な遺伝子組換え体を利用した製造方法についてこれまで検討されており、例えば、組換え大腸菌を用いたFcγRIの製造方法が報告されている(特許文献2)。しかしながら、これまで大腸菌を用いた発現系において、Fc結合性タンパク質の菌体増殖から生産への移行に関して適切な時期が不明瞭であり、そのため目的生産物の発現量が不安定であるという課題があった。
特表2000−501936号公報 特開2008−245580号公報
J.V.Ravetch等,Annu.Rev.Immunol.,9,457,1991 J.Galon等,Eur.J.Immunol.,27,1928−1932,1997 Toshiyuki Takai,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318,2005
これまでFc結合性タンパク質を高生産させることを目的に、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで大腸菌を形質転換して得られる形質転換体の培養時における最適な基質の供給方法について検討してきた。しかしながら、前記方法でFc結合性タンパク質を製造する際の最適な発現誘導のタイミング、すなわち菌体の増殖から前記タンパク質生産に移行する時期についてはこれまで十分な検討が行われておらず、また明確な指標がないため得られる目的産物の量にばらつきが見られた。
そこで、本発明の目的は遺伝子組換えタンパク質を発現可能な大腸菌を培養することで、特にFc結合性タンパク質を製造する方法において、前記タンパク質を効率的に製造する上で最適な発現誘導の時期を提供することにある。
本願発明者らは、前記課題に対し組換えタンパク質を発現可能な大腸菌培養における誘導時期を鋭意検討した結果、発現誘導時の菌体量を指標とすることで安定的に前記タンパク質を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1)Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換して得られた大腸菌を使用してFc結合性タンパク質を生産する方法であって、細胞密度(濁度、OD600nm、600nmにおける吸光度)が120から160の状態で誘導することによりFc結合性タンパク質の生産を開始する製造方法。
(2)Fc結合性タンパク質が、
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、
(1)に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてヒトFc結合性タンパク質とは、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域(具体的には天然型ヒトFcγRIIIaの場合、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目から208番目までの領域)を構成するタンパク質のことをいう。ただし必ずしもヒトFcγRIIIaの細胞外領域の全領域でなくてもよく、ヒトFcγRIIIa細胞外領域を構成するポリペプチドのうち、少なくとも抗体(IgG)のFc領域に結合する本来の機能を発現し得る領域のポリペプチドを含んでいればよい。Fc結合性タンパク質の一例として、
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸を含むタンパク質や、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸において特定位置におけるアミノ酸置換が生じたタンパク質、
があげられる。
Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、直接ヒト細胞から抽出して得てもよいが、前記ヒト細胞からの抽出物を核酸増幅することで得る方法や、既知のヌクレオチド配列を基に人工的に直接得た方が好ましい。前記ポリヌクレオチドを人工的に合成するには、前記ポリヌクレオチドの全長をDNA自動合成機などで直接合成してもよいが、化学合成した数十塩基からなるオリゴヌクレオチド群をPCR法によりアッセンブリーさせることによって完全長の遺伝子を作製する、DNAWorks法(Nucleic Acid Res.,30,e43,2002)やSynthetic Gene Designer法(Protein Expr Purif.,47,441−445,2006)を用いると、より効率的な合成が可能である。
Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を、Fc結合性タンパク質のアミノ酸配列情報から変換して得る場合、アミノ酸配列として変化しない範囲であれば任意のヌクレオチド配列が選択できるが、好ましくは発現させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮の上、変換するのが好ましい。コドンの使用頻度は公的データベース(Codon Usage Database かずさDNA研究所HP参照)を用いることで解析することができる。
本発明においてFc結合性タンパク質は、抗体結合活性を損なわない範囲で任意のオリゴペプチドを付加してもよい。前記任意のオリゴペプチドの例として、6残基程度のヒスチジンからなるHisタグ配列やc−myc抗原配列といった分析や精製を容易にするためのタグ配列、微生物での分泌発現を促すためのシグナルペプチドなどが挙げられる。Fc結合性タンパク質に前記タグ配列を付加する場合は、N末端側またはC末端側に付加してもよいし、抗体結合活性を失わない範囲であればタンパク質内に挿入してもよい。Fc結合性タンパク質に前記シグナルペプチドを付加する場合はN末端側に付加すればよく、公知のシグナルペプチドの中から発現に用いる宿主に応じて適宜選択して用いればよい。
本発明においてFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換する際、Fc結合性タンパク質のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミドなど)の適切な位置にポリヌクレオチドを挿入したものを用いるとより好ましい。尚、前記発現ベクターは形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合はpETプラスミドベクターが例示できる。また前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターにポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモーターといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。宿主が大腸菌である場合の前記プロモーターの例として、lacプロモーター、T7プロモーターが挙げられる。
前記方法により作製したFc結合性タンパク質のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクターで宿主を形質転換するには当業者が通常用いる方法で行えばよい。例えば、コンピテントセル法、ヒートショック法、エレクトロポレーション法などにより形質転換すればよい。
本発明の製造方法では、Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換して得られた大腸菌を適切な培地で培養することで、Fc結合性タンパク質を発現させ製造する。前記大腸菌を培養するのに用いる培地の組成としては形質転換体が増殖し、かつFc結合性タンパク質が発現し得るものであればよい。炭素源としては、糖蜜、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロール、酢酸などが用いられる。窒素原としては酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ペプトン、コーンスティープリカー、酵母エキスなどが用いられる。無機塩としてはリン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウムなどのリン酸塩、塩化ナトリウムなどが用いられる。金属塩としては塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化カルシウム・二水和物、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、塩化マンガンなどが用いられる。ビタミン類としては酵母エキス、ビオチン、ニコチン酸、チアミン、リボフラビン、イノシトール、ピリドキシンなどが用いられる。
本発明の製造方法で大腸菌を培養する際、培養開始時に炭素源や窒素源といった栄養源を一度に培地に投入すると、大腸菌の増殖および前記大腸菌によるFc結合性タンパク質の発現が阻害され、酢酸などの副生成物が生産されるため、前記タンパク質の発現効率および得られた前記タンパク質の品質に悪影響を与える可能性がある。そのため、培養開始時に投入する栄養源は最小限とし、培養中に栄養源を追加供給(流加)しながら培養を行う流加培養により、Fc結合性タンパク質を製造すると好ましい。
本発明の好ましい製造方法である、流加培養によるFc結合性タンパク質製造の一例を詳細に示す。必要最小限の炭素源および窒素源を投入した培地に、無機塩や金属塩、ビタミン類等を添加した後、大腸菌の培養を開始する。大腸菌の増殖により炭素源が消費され所定の濃度まで低下した時点で、培養液中の炭素源を所定の濃度に維持しつつ、炭素源と窒素源および金属塩を供給(流加)して培養することで、大腸菌からFc結合性タンパク質を発現させ、前記タンパク質を製造する。
前述した流加培養によるFc結合性タンパク質製造において、培養開始時に投入する炭素源の濃度は、炭素源がグルコースの場合、0から20g/Lとすると好ましい。また供給(流加)する炭素源と窒素源は、高濃度の溶液とすると培養液の液量増加を抑えられるため好ましく、炭素源をグルコース、窒素源を酵母エキスとした場合、供給(流加)するグルコース溶液の濃度は300から900g/Lに、酵母エキス溶液の濃度は150から500g/Lに、それぞれすると好ましい。炭素源と窒素源を供給(流加)する際、維持する所定の濃度とは炭素源が枯渇せず有機酸などの副生成物が生産しない濃度をいう。炭素源をグルコースとした場合、炭素源濃度が5g/Lを超えた状態で培養を行なうと副生成物として有機酸が生産され、それが多量に蓄積することにより大腸菌の増殖やFc結合性タンパク質の生産を抑制する可能性があるため、好ましくない。よって、炭素源をグルコースとした場合の所定の濃度とは、少なくとも5g/L以下、好ましくは1g/L以下、さらに好ましくは0.5g/L以下、最も好ましくは0.1g/L以下である。炭素源供給量のモニターは、例えば、炭素源を供給するポンプの稼働時間より行なうことができる。炭素源の枯渇をモニターする方法は特に限定はなく、一例として呼吸活性の低下によりモニターすることができる。呼吸活性の低下は、例えば培養液の溶存酸素濃度(DO)の上昇、排ガス中の酸素濃度の上昇、炭酸ガス濃度の低下、pHの上昇として現れる。特に、DOは応答が速いことから、炭素源の枯渇をモニターするのに好ましい指標である。その理由として、炭素源の濃度が十分に維持されている場合には、微生物の呼吸により酸素が消費されるためDOは酸素飽和濃度より低い値に維持されるが、炭素源が枯渇すると微生物の呼吸活性が低下しDOが急激に上昇するためである。なお、DOの急激な上昇に連動させて基質を追加する方法をDOスタット法という。DO以外の指標(排ガス組成、炭酸ガス濃度、pH上昇)でモニターした場合は、DOを指標とした場合と比較し応答が遅いという欠点がある。窒素源の供給(流加)量は、炭素源供給(流加)量に比例した量を供給(流加)すればよい。窒素源の供給(流加)方法は特に限定はなく、例えば、炭素源水溶液と窒素源水溶液を任意の濃度で混合し、当該混合液を培地に供給(流加)する方法が例示できる。
本発明の製造方法における大腸菌の培養条件は、大腸菌が増殖しFc結合性タンパク質
を発現し得る条件であれば特に限定はないが、培養温度は10から40℃が好ましく、特に好ましい温度は20から33℃である。pHは6から8が好ましい。培養時間は任意に設定できるが、通常は数時間から200時間の間に設定される。
本発明の好ましい製造方法では、大腸菌からFc結合性タンパク質の発現を誘導するために、培養開始から一定時間経過後、IPTG(Isopropyl β−D−1−thiogalactopyranoside)を培養液に添加して、さらに培養する。IPTGの濃度は最終濃度として0.005から2.0mMが好ましく、特に好ましい濃度は最終濃度0.01から1.0mMである。
本発明の製造方法で大腸菌より発現したFc結合性タンパク質を定量する方法としては、ELISA法やHPLCによる定量方法などを用いることができるが、HPLCを用いた活性定量が簡便で好ましい。
本発明はFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換して得られた大腸菌を培養して前記タンパク質を製造する方法において、細胞密度(濁度、OD600nm、600nmにおける吸光度)が120から160の状態で誘導することを特徴としており、前記製造方法により大腸菌の効率的な培養および前記大腸菌からの効率的なFc結合性タンパク質の発現を実現することができる。また、これらの指標により発現誘導後の培養時間を最適化することが可能となり、その結果培養終了後、培養液から菌体を集める場合、或いは菌体をはじめとする固形分を除去する場合の何れにおいても菌体が溶菌することによる培養液の粘度上昇を抑制できるため、遠心分離やろ過といった後工程の固液分離操作を簡便にする効果がある。
本発明の製造方法で得られたFc結合性タンパク質は、臨床検査薬、バイオセンサー、または免疫グロブリン(抗体)を分離精製するためのリガンドとして用いることができる。
ヒトFcγRIIIaの概略構造図。 実施例1の製造方法における、撹拌回転数、溶存酸素濃度および排ガス中の二酸化炭素濃度の経時変化を示した図。図中、横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸のうち、実線(左軸目盛)は撹拌回転数(単位:rpm)を、破線(右軸目盛)は溶存酸素濃度(単位:%)を、点線(右軸目盛)は排ガス中の二酸化炭素濃度(単位:%)をそれぞれ示す。 実施例1から3および比較例1の製造方法における、大腸菌の増殖を示した図。図中、横軸は時間(単位:時間)を示し、縦軸は微生物の増殖量を濁度(600nmにおける吸光度)で示す。凡例に示した数値はそれぞれ発現誘導時の濁度を示す(◇は濁度100で、□は濁度117で、△は濁度136で、×は157で誘導)。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが本発明は当該例に限定されるものではない。
実施例1
Fc結合性タンパク質を発現可能な大腸菌(特開2016−23152)を、細胞密度が136に達した時、培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度で0.83mMとなるように培養液に添加することでFc結合性タンパク質の生産誘導を行なった。
(1)Fc結合性タンパク質を生産する組換え大腸菌(形質転換体)を、100mLの培地(16g/L ファイトンペプトン、10g/L 酵母エキス(以下、オリエンタル酵母工業製)、5g/L 塩化ナトリウム)を入れた、500mL容バッフル付三角フラスコに植菌し、30℃で9時間、毎分130回の回転速度で前培養を行なった。
(2)20g/L 酵母エキス、3g/L りん酸三ナトリウム・12水和物、9g/Lりん酸水素二ナトリウム・12水和物、1g/L 塩化アンモニウムを投入した培地0.9Lを3Lの発酵槽に入れ、121℃で20分間滅菌後、20g/L グルコース、1g/L 硫酸マグネシウム七水和物、0.01g/L 硫酸鉄(II)七水和物および0.005g/L 塩化マンガン(II)四水和物をそれぞれ添加し、さらに(1)の前培養液90mLを添加して本培養を行なった。培養装置はエイブル社製BMS−10PIを使用し、通気した空気速度は1.8L/分に、培養温度は30℃に、pHは6.9から7.1にそれぞれ設定し、培養中におけるpHの変動は、14% アンモニア水または50% リン酸の添加により前記範囲に制御した。炭素源の供給には425g/Lのグルコースを、窒素源の供給には142g/Lの酵母エキスを、また金属塩として12g/Lの硫酸マグネシウム七水和物をそれぞれ供給した。エイブル社製DO(溶存酸素)電極による信号を、エイブル社製培養制御プログラムをインストールしたパーソナルコンピューターにより検出することで、本培養初期に投入したグルコース(20g/L)が消費されたことを検知し、溶存酸素濃度が40%飽和を超えた時点で流加ポンプを起動して前記炭素源、窒素原および金属塩の混合液を供給した。供給にはWATSON MARLOW社製チュービングポンプ101U/Rの高速型を使用した。微生物の増殖は培養液の600nmの濁度(OD600nm)により測定した。
(3)OD600nmが136に達したとき、すなわち培養開始から24.6時間後に培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度0.83mMとなるよう培養液に添加することで、Fc結合性タンパク質の生産誘導を行った。
培養開始から58時間培養を行なったところ、培養液の濁度は214に達した。この時、供給した炭素源、窒素源、金属塩の混合液量は601gであった。また、培養終了後(培養開始から58時間)の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量はHPLCを用いた定量結果より、培養液1Lあたり3.6gであった。
ここで培養した時の培養データ(回転数、溶存酸素濃度および排ガス中の二酸化濃度)を図2に示す。
比較例1
Fc結合性タンパク質を発現可能な大腸菌を、細胞密度が100に達した時、すなわち培養開始から18.8時間後に培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度で0.83mMとなるように培養液に添加した以外は実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質の生産誘導を行なった。
その結果、培養開始から45時間培養を行ったところで培養液の濁度が195に達した一方で、培養開始から58時間後には濁度が169まで低下し菌体の溶菌が確認された。この時、供給した炭素源、窒素源、金属塩の混合液量は462gであった。これらのことから、細胞密度が100以下で生産誘導すると呼吸活性を指標とした流加法では基質供給量が減少し、その結果培養後期に増殖能が落ちることが考えられた。また、培養終了後(培養開始から58時間)の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量はHPLCを用いた定量結果より、培養液1Lあたり2.3gであった。
実施例2
Fc結合性タンパク質を発現可能な大腸菌を、細胞密度が117に達した時、すなわち培養開始から24.2時間後に培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度で0.83mMとなるように培養液に添加した以外は実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質の生産誘導を行なった。
その結果、培養開始から58時間培養を行なったところ、培養液の濁度は207に達した。この時、供給した炭素源、窒素源、金属塩の混合液量は601gであった。また、培養終了後(培養開始から58時間)の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量はHPLCを用いた定量結果より、培養液1Lあたり3.2gであった。
実施例3
Fc結合性タンパク質を発現可能な大腸菌を、細胞密度が157に達した時、すなわち培養開始から28.9時間後に培養温度を25℃に下げ、IPTGを終濃度で0.83mMとなるように培養液に添加した以外は実施例1と同様な方法でFc結合性タンパク質の生産誘導を行なった。
その結果、培養開始から58時間培養を行なったところ、培養液の濁度は222に達した。この時、供給した炭素源、窒素源、金属塩の混合液量は623gであった。また、培養終了後の培養液に含まれるFc結合性タンパク質の生産量はHPLCを用いた定量結果より、培養液1Lあたり3.7gであった。
実施例1から3および比較例1の結果をまとめたものを表1に示す。表1から分かるように、細胞密度が120から160に達した時、発現誘導することで濁度200以上の細胞密度で培養液1Lあたり3.2から3.7gのFc結合性タンパク質が得られることが分かる。また、実施例1から3および比較例1で得られた大腸菌の増殖について図3に示す。
上記の結果から、Fc結合性タンパク質を発現可能な大腸菌が十分な増殖期ではない場合、発現誘導をしたとしても効率的にFc結合性タンパク質を発現できないことが確かめられた。
Figure 2018011515

Claims (2)

  1. Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換して得られた大腸菌を使用してFc結合性タンパク質を生産する方法であって、細胞密度(濁度、OD600nm、600nmにおける吸光度)が120から160の状態で誘導することによりFc結合性タンパク質の生産を開始する製造方法。
  2. Fc結合性タンパク質が、
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質である、
    請求項1に記載の方法。
JP2016141152A 2016-07-19 2016-07-19 大腸菌を用いた遺伝子組換えタンパク質の製造方法 Pending JP2018011515A (ja)

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