JP5830945B2 - Fcレセプターの精製方法 - Google Patents

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本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを用いてFcレセプターを精製する方法に関する。
Fcレセプターは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する一群の分子である。Fcレセプターはその結合する免疫グロブリンの種類によって分類されており、IgGのFc領域に結合するFcγレセプター、IgEのFc領域に結合するFcεレセプター、IgAのFc領域に結合するFcαレセプター等がある(非特許文献1)。また、各レセプターは、その構造の違いによりさらに細かく分類され、Fcγレセプターの場合、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIの存在が報告されている(非特許文献1)。
Fcγレセプターの一つであるFcγRIは単球とマクロファージ中で発現しており、好中球ではγインターフェロンにより誘導的に発現される(非特許文献1)。また、FcγRIはIgGに対する結合親和性が高く、その平衡解離定数(K)は10−8M以下である(非特許文献2)。FcγRIは、細胞外領域、細胞膜貫通領域、細胞質内領域に区分され、IgGとの結合は、IgGのFc領域とFcγRIの細胞外領域で起こり、その後細胞質へとシグナルが伝達される。FcγRIはIgGとの結合に直接関わる分子量約42000のα鎖と、γ鎖の2種類のサブユニットによって構成されており、γ鎖は細胞膜と細胞外領域との境界で共有結合することでホモダイマーを形成している(非特許文献3)。FcγRIはIgG1からIgG4まであるサブクラスのうち、特にIgG1およびIgG3と強く結合し、IgG2およびIgG4との結合は弱いことが知られている。
ヒトFcγRIのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列(配列番号1)はExPASy(Primary accession number:P12314)などの公的データベースに公表されている。また、FcγRIの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列、細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されており、図1にヒト型FcγRIの構造略図を示す。なお、図1中のアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸番号に対応する。すなわち、配列番号1中の1番目のメチオニン(Met)から15番目のグリシン(Gly)までがシグナル配列、16番目のグルタミン(Gln)から289番目のバリン(Val)までが細胞外領域、290番目のトリプトファン(Trp)から374番目のスレオニン(Thr)までが細胞膜貫通領域および細胞内領域とされている。またFcγRIα鎖のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列(非特許文献4)はJanet等により明らかにされ、その後、遺伝子工学的手法により、大腸菌(特許文献1)または動物細胞を利用した発現が報告されている。
近年になり、Fcレセプターの予想外の免疫抑制的な生物学的特性は、特に自己免疫疾患または自己免疫症候群、移植物の拒絶および悪性リンパ増殖の領域において医薬として注目を浴びつつある(非特許文献2)。また、FcγRIの機能である抗体の吸着能は各種抗体精製用クロマトグラフィー担体の捕捉機能を担うタンパク質としても利用することができる。しかしながら、前記目的でFcγRIを利用するには、FcγRIを高純度に精製することが重要である。
特開2008−245580号公報
J.V.Ravetch等,Annu.Rev.Immunol.,9,457,1991 Toshiyuki Takai,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318,2005 A.Paetz等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1811,2005 J.M.Allen等,Science,243,378,1989
遺伝子工学的手法を用いてタンパク質を生産させる場合、通常、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドを導入することにより宿主を形質転換して得られる形質転換体を培養することで当該タンパク質を発現し生産する。培養液中には、培養する際の栄養源(アミノ酸類、糖類、微量金属類など)や、宿主自身が生産する副生成物といった様々な夾雑物が存在する。そのため、前記形質転換体により形質転換体外へ当該タンパク質が発現される場合は、培養液を遠心分離するなどにより培養上清を得た後、前記夾雑物を除去する精製を行なう必要がある。一方、前記形質転換体により形質転換体内に当該タンパク質が発現される場合は、培養液を遠心分離するなどにより培養細胞を得た後、機械的せん断、浸透圧ショック、酵素処理、薬剤処理などにより培養細胞を破砕する必要がある。なお、前記破砕操作により、細胞内の全ての内容物が破砕液中に放出するため、形質転換体外へ発現する場合よりも複雑な精製方法が必要となる場合がある。
通常、培養液から目的とするタンパク質を精製分離するには、硫安分画や限外ろ過による大まかな分離を行なった後、モードの異なる2種類以上のクロマトグラフィーを組み合わせて行なわれる。クロマトグラフィーによる精製分離は、電荷、親水性/疎水性の差、タンパク質分子の大きさなどにより目的タンパク質を精製分離する。なお、各クロマトグラフィーにおける溶媒の種類や吸着/洗浄/溶出方法は、適宜検討の上行なわれる。クロマトグラフィーによる精製分離の中でも、疎水性相互作用を利用したクロマトグラフィー(疎水クロマトグラフィー)は、試料溶液中に高濃度の塩類が添加されている場合であっても希釈や透析による塩濃度を下げる操作が不要であり、低い塩濃度の緩衝液で目的タンパク質の溶出が行なえるなどの利点があるため、初期段階の精製に用いる手段として好ましい。一方、タンパク質の電荷の違いを利用して精製分離を行なうイオン交換クロマトグラフィーは、交換容量が大きく低い塩濃度の緩衝液で開始できること、疎水クロマトグラフィーの次の段階の精製で使用しやすいこと、宿主が大腸菌の場合それに由来する多くの夾雑タンパクが酸性であり塩基性タンパクを分離しやすいことなどから、中間または最終段階の精製に用いる手段として好ましい。
Fcレセプターの精製に関しては、以前本出願人が、疎水クロマトグラフィーを用いたヒトFcγRIの精製について検討を行なっており、疎水クロマトグラフィー用担体に吸着したヒトFcγRIを10%(w/v)以上のグリセロールを含む緩衝液で溶出させることでヒトFcγRIの高純度かつ高効率な精製を実現している(特願2009−287774号)。しかしながら、疎水クロマトグラフィーを用いて精製したFcレセプターの更なる高純度化を目的として、当該Fcレセプターを含む溶液をイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製を試みたところ、導入したFcレセプターの多くが、イオン交換クロマトグラフィー用担体に吸着せずそのまま素通りする現象が生じ、結果としてFcレセプターの回収率が低下する問題が発生した。
そこで本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、Fcレセプターを高回収率かつ高純度に精製する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、イオン交換クロマトグラフィー用担体を用いてFcレセプターを精製する際、前記担体にFcレセプターを吸着させる際用いる緩衝液、および吸着させるFcレセプターを溶出させる際用いる緩衝液、の組成および濃度について鋭意検討した結果、本発明を見出した。
すなわち本発明は、以下の態様を包含する:
第一の態様は、
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して、前記担体にFcレセプターを吸着させ、
前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、
Fcレセプターの精製方法であって、
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液が尿素を含んでいる、前記精製方法である。
第二の態様は、
Fcレセプターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された宿主の培養液から疎水クロマトグラフィー用担体を用いて精製することで、Fcレセプターを含む溶液を調製し、
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して、前記担体にFcレセプターを吸着させ、
前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、
Fcレセプターの精製方法であって、
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液が尿素を含んでいる、前記精製方法である。
第三の態様は、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液に含まれる尿素の濃度がそれぞれ1mol/L以上である、前記第一または第二の態様に記載の精製方法である。
第四の態様は、前記第一から第三のいずれかの態様に記載の精製方法で得られた、Fcレセプターである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して前記担体にFcレセプターを吸着させ、前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、Fcレセプターの精製方法において、通常の緩衝液成分からなるFcレセプターを含む溶液を前記担体に添加してFcレセプターを吸着させようとしても、添加したFcレセプターの多くが吸着せずに素通りし、結果としてFcレセプターの回収率が著しく低くなる問題があった。そこで、Fcレセプターを含む溶液および溶出液に、尿素や塩酸グアニジンといったタンパク質変性剤を添加して、Fcレセプターの回収率および精製度を評価した結果、尿素が添加剤として好ましいことを見出した。さらに添加する尿素量について検討した結果、終濃度1mol/L以上となるように尿素を添加すると好ましく、終濃度1mol/Lから2mol/Lとなるように尿素を添加すると回収率および精製度がさらに向上することを見出した(後述の実施例および比較例参照)。
本発明において、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加する、Fcレセプターを含む溶液としては、Fcレセプターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された宿主の培養液(後述する粗精製Fcレセプター溶液を含む)でもよいし、前記培養液(後述する粗精製Fcレセプター溶液を含む)を陽イオン交換クロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーを用いて精製して得られた溶液でもよいが、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体の特徴を考慮すると、後者の溶液のほうが好ましい。ここでいう、陽イオン交換クロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィーや疎水クロマトグラフィー等があげられるが、Fcレセプターの工業的生産に適している点で、疎水クロマトグラフィーが特に好ましい。
本発明において、Fcレセプターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換する宿主とは、COS細胞やCHO細胞に代表される動物細胞、バチルス属(ブレビバチルス属細菌やパエニバチルス属細菌のような広義のバチルス属細菌も含む)や大腸菌に代表される細菌、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属に代表される酵母、麹菌に代表される糸状菌が例示できるが、取扱いの簡便な大腸菌を宿主とするのが好ましい。
前記宿主の培養液から、クロマトグラフィー用担体に添加するための粗精製Fcレセプター溶液を得るには、宿主細胞外にFcレセプターを発現するときは培養液を遠心分離することで得ることができる。一方、宿主細胞内にFcレセプターを発現するときは培養液を遠心分離して得られる培養細胞を適切な緩衝液で懸濁し細胞破砕(物理的破砕、薬剤による破砕など)後遠心分離により破砕残渣を除去することで得ることができる。
本発明において、精製に用いる陽イオン交換クロマトグラフィー用担体は、カルボキシメチル基、スルホプロピル基、スルホン酸基といった陽イオン交換基を担体に導入したものであれば特に限定はなく、具体例として、TOYOPEARL CM−650、TOYOPEARL SP−650、TOYOPEARL GigaCap S−650M(以上、東ソー社製)、CM Sepharose Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)があげられる。なお、前記陽イオン交換クロマトグラフィー用担体を用いて、本発明の精製方法を実施する際は、前記担体へのFcレセプターを含む溶液(アプライ液)の添加量や、前記担体のタンパク吸着性能等によって決定した量の担体を、適切なオープンカラム等に充填して行なえばよい。また、前記陽イオン交換クロマトグラフィー用担体は、アプライ液を添加する前に、あらかじめ、尿素を含む適切な緩衝液(Tris−HCl緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液、リン酸塩緩衝液等)により平衡化するとよい。
本発明の精製方法では、前述した緩衝液であらかじめ平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に、Fcレセプターを含む溶液(アプライ液)を添加して、前記担体にFcレセプターを吸着させ、前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させるが、溶出させる前に平衡化に用いた緩衝液で洗浄すると、前記担体に吸着しないタンパク質を溶出操作前に除去できる点で好ましい、
本発明の精製方法において、溶出液で溶出した画分中のFcレセプターを定量するには、従来から知られている安定かつ効率的に定量できる方法の中から適宜選択すればよいが、ELISA法(酵素結合免疫吸着法)による分析方法が好ましい。
本発明の精製方法により得られたFcレセプターは、医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、またはアフィニティーリガンド(分離剤)など様々な用途に用いることができる。使用の際の形態や純度はその用途により異なり、本発明の精製方法により得られたFcレセプターをそのまま用いてもよいし、さらに高度に精製したものを用いてもよいし、またその中間の純度の精製度合いのものを用いてもよい。
本発明は、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して前記担体にFcレセプターを吸着させ、前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、Fcレセプターの精製方法であって、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液が尿素を含んでいることを特徴としている。本発明の精製方法により、高純度かつ高い回収率でFcレセプターを精製することができる。また、本発明の精製方法は前記担体に導入するFcレセプターを含む溶液量(アプライ量)に係わらず適用可能な方法であるため、Fcレセプターの分析目的に適用できることはもちろん、工業的なFcレセプター生産の一工程にも適用することができる。
本発明の精製方法で得られたFcレセプターは、そのまま、またはさらなる精製により、医薬品、臨床検査薬、バイオセンサー、またはアフィニティーリガンド(分離剤)など様々な用途に用いることができる。
ヒトFcレセプターFcγRIの構造を示す図。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)ヒトFcレセプターFcγRIをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された大腸菌を2YT培地(Tryptone 16g/L、酵母エキス 10g/L、塩化ナトリウム 5g/L)に植菌し、OD660nm=3になるまで30℃で培養した。
(2)15℃に冷却後、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を終濃度0.05mmol/Lになるように添加し、さらに一晩培養した。
(3)培養液より菌体を回収後、抽出液(0.6% Triton X−100、0.02%デオキシコール酸ナトリウム、1mmol/L EDTA、0.1mmol/L PMSF、0.3mg/mL リゾチーム、0.001% Benzonaseを含む20mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH 8.0))に菌体を懸濁し、撹拌することで菌体内からタンパク質を抽出し、遠心分離により無細胞抽出液を調製した。
(4)1mLのTOYOPEARL Phenyl−650C(東ソー株式会社製)ゲルをオープンカラムに充填し、5mLの緩衝液A(6%硫酸アンモニウムを含む20mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH 8.0))にてゲルを平衡化した。
(5)(3)で調製したヒトFcγRIを含む無細胞抽出液に、硫酸アンモニウムを終濃度6%となるよう添加したアプライ液10mLをゲルに添加し、10mLの緩衝液Aにより洗浄後、10%(w/v)グリセロールを含む20mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH 8.0)5mLによりヒトFcγRIを溶出することで、ヒトFcγRI粗精製溶液を得た。
(6)(5)のヒトFcγRI粗精製溶液を20mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)で透析後、尿素を終濃度2mol/Lとなるよう添加し、これをアプライ液とした。
(7)1mLのTOYOPEARL CM−650M(東ソー株式会社製)ゲルをオープンカラムに充填し、5mLの緩衝液A(2mol/L尿素を含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH 6.0))にてゲルを平衡化した。
(8)(6)で調製したアプライ液5mLを導入し、10mLの緩衝液Aにより洗浄後、2mol/L尿素および1mol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH 8.0)5mLによりヒトFcγRIを溶出した。溶出したヒトFcγRIの回収率を算出した結果、55%であった。また、粗精製溶液中におけるヒトFcγRIの全タンパクに対する割合(比活性)は4.5倍へと向上した。
実施例2
実施例1(6)における20mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)で透析したヒトFcγRI粗精製溶液に添加する尿素の量を終濃度1mol/Lとし、実施例1(8)におけるヒトFcγRIを溶出させる緩衝液の組成を1mol/L尿素および1mol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH 8.0)とした他は、実施例1と同様の実験を行なった。結果、ヒトFcγRIの回収率は50%であり、粗精製溶液中におけるヒトFcγRIの全タンパクに対する割合(比活性)は3.2倍へと向上した。
比較例1
実施例1(6)における20mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)で透析したヒトFcγRI粗精製溶液に尿素は添加せず、実施例1(8)におけるヒトFcγRIを溶出させる緩衝液の組成を1mol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH 8.0)とした他は、実施例1と同様の実験を行なった。結果、ヒトFcγRIの回収率は31%であり、粗精製溶液中におけるヒトFcγRIの全タンパクに対する割合(比活性)は3.0倍となった。
比較例2
実施例1(6)における20mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)で透析したヒトFcγRI粗精製溶液に塩酸グアニジンを終濃度1mol/Lとなるよう添加し、実施例1(8)におけるヒトFcγRIを溶出させる緩衝液の組成を1mol/L塩酸グアニジンおよび1mol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸緩衝液(pH 8.0)とした他は、実施例1と同様の実験を行なった。結果、ヒトFcγRIの回収率は21%であり、粗精製溶液中におけるヒトFcγRIの全タンパクに対する割合(比活性)は1.5倍となった。
実施例1および2ならびに比較例1および2の結果を表1にまとめた。なお表1において、回収向上率は比較例1におけるヒトFcγRI回収率を100%としたときの値である。表1からわかるように、ヒトFcγRIを含む溶液を陽イオン交換クロマトグラフィー用担体を用いて精製する際、ヒトFcγRIを含む溶液および前記担体に吸着したヒトFcγRIの溶出液に尿素を含んでいると、ヒトFcγRIの回収率および精製度が向上することがわかる。一方、尿素と同様にタンパク質変性剤として用いられる塩酸グアニジンを添加するとヒトFcγRIの回収率は逆に低下した。
Figure 0005830945

Claims (2)

  1. 陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して、前記担体にFcレセプターを吸着させ、
    前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、
    Fcレセプターの精製方法であって、
    陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液が1mol/L以上2mol/L以下の尿素を含んでおり、
    Fcレセプターを含む溶液がFcレセプターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された大腸菌の培養液から得られる無細胞抽出液である、前記精製方法。
  2. Fcレセプターをコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された宿主の培養液から得られる無細胞抽出液を、疎水クロマトグラフィー用担体を用いて精製することで、Fcレセプターを含む溶液を調製し、
    陽イオン交換クロマトグラフィー用担体にFcレセプターを含む溶液を添加して、前記担体にFcレセプターを吸着させ、
    前記担体に吸着したFcレセプターを溶出液を用いて溶出させる、
    Fcレセプターの精製方法であって、
    宿主が大腸菌であり、陽イオン交換クロマトグラフィー用担体に添加するFcレセプターを含む溶液および溶出液が1mol/L以上2mol/L以下の尿素を含んでいる、前記精製方法。
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