JP2012072091A - 抗体の精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Fc結合性タンパク質を固定化した固相に抗体を含む溶液を添加して前記固相に前記抗体を吸着させ、前記固相に吸着した前記抗体をpHが3.5以下の溶出液を用いて溶出させる、抗体の精製方法により、前記課題を解決する。
【選択図】 図4
Description
Fc結合性タンパク質を固定化した固相に抗体を含む溶液を添加して前記固相に前記抗体を吸着させ、
前記固相に吸着した前記抗体を溶出液を用いて溶出させる、抗体の精製方法であって、
溶出液のpHが3.5以下である、前記精製方法である。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換されたタンパク質
である、第三の発明に記載の精製方法である。
(ア)配列番号1の20番目のスレオニンがプロリンに置換
(イ)配列番号1の25番目のスレオニンがリジンに置換
(ウ)配列番号1の38番目のスレオニンがアラニンまたはセリンに置換
(エ)配列番号1の46番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(オ)配列番号1の62番目のアラニンがバリンに置換
(カ)配列番号1の63番目のスレオニンがイソロイシンに置換
(キ)配列番号1の69番目のセリンがフェニルアラニンまたはスレオニンに置換
(ク)配列番号1の71番目のアルギニンがヒスチジンに置換
(ケ)配列番号1の77番目のバリンがアラニンまたはグルタミン酸に置換
(コ)配列番号1の78番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(サ)配列番号1の94番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に置換
(シ)配列番号1の100番目のイソロイシンがバリンに置換
(ス)配列番号1の110番目のセリンがアスパラギンに置換
(セ)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換
(ソ)配列番号1の125番目のヒスチジンがアルギニンに置換
(タ)配列番号1の131番目のロイシンがアルギニンまたはプロリンに置換
(チ)配列番号1の149番目のトリプトファンがロイシンに置換
(ツ)配列番号1の156番目のロイシンがプロリンに置換
(テ)配列番号1の160番目のイソロイシンがメチオニンに置換
(ト)配列番号1の163番目のアスパラギンがセリンに置換
(ナ)配列番号1の195番目のアスパラギンがスレオニンに置換
(ニ)配列番号1の199番目のスレオニンがセリンに置換
(ヌ)配列番号1の206番目のアスパラギンがリジン、セリンまたはスレオニンに置換
(ネ)配列番号1の207番目のロイシンがプロリンに置換
(ノ)配列番号1の218番目のロイシンがバリンに置換
(ハ)配列番号1の240番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(ヒ)配列番号1の248番目のロイシンがセリンに置換
(フ)配列番号1の283番目のロイシンがヒスチジンに置換
(ヘ)配列番号1の285番目のロイシンがグルタミンに置換
のいずれかのアミノ酸置換を一つ以上含む、タンパク質があげられる(特願2010−052789号)。なお、前記第一から第四の態様において、細胞外領域(図1のEC領域)のN末端側にあるシグナルペプチド領域(図1のSS領域)の全てまたは一部が含まれていてもよいし、細胞外領域(図1のEC領域)のC末端側にある膜貫通領域(図1のTM領域)の全てまたは一部や細胞内領域(図1のC領域)の一部が含まれていてもよい。また、ポリヒスチジンタグといった、精製などを行なうためのタグペプチドがN末端側またはC末端側に付加されていてもよい。
特許文献4に開示されている方法に従い、天然型Fc結合性タンパク質発現株を調製した。具体的な調製方法を以下に示す。
(1)天然型Fc結合性タンパク質として、ヒトFcγRIのうち細胞外領域を含む領域(具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含む領域)を選択し、当該領域をコードするポリヌクレオチドをpECEdhfrプラスミドに挿入することで、ヒトFcγRI発現ベクターpECEFcRdhfrを作製した。
(2)ヒトFcγRI発現ベクターpECEFcRdhfrで、dhfr遺伝子を欠損したCHO細胞DBX−11株(非特許文献2)を形質転換した。
(3)(2)で形質転換したCHO細胞を5nMのメソトレキセート(MTX)を含む培地で培養し、増殖した細胞株をモノクローナル化後、それぞれの細胞株について抗体結合活性を測定した。抗体結合活性は、下記の方法で測定した。
(3−1)マキシソープ96ウェルプレート(NUNC社製)に、10μg/mLのヒトガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)100μLを各ウェルに添加し、4℃で16時間静置することによってヒトガンマグロブリンをプレート固相に固定化した。
(3−2)ヒトガンマグロブリンを固定化したプレートを0.2% Tween20、150mM NaClを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)(以下、TBST)で洗浄した。
(3−3)Starting Block(PIERCE社製)200μLを各ウェルに添加し、30℃で2時間静置することによりブロッキング工程を行ない、Fc結合性タンパク質定量用ELISAプレートを作製した。
(3−4)形質転換したCHO細胞の培養上清を適当な倍率で希釈し、(3−3)で作製したELISAプレートの各ウェルに100μLずつ添加し、30℃で1時間反応させた。
(3−5)(3−4)の反応後、TBSTにて洗浄し、10000倍希釈したHis−probe(H−15)HRP抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)100μLを各ウェルに添加し、30℃で1時間反応させた。
(3−6)TBSTによりプレートを洗浄後、HRPの基質(TMB:ナカライテスク社製)を添加し、2分間放置後、1Mのリン酸水溶液で反応を停止した。
(3−7)450nmの吸光度を測定した。なお、定量のための標準物質として市販のヒトFcγRI(R&D SYSTEMS社製)を使用し、その吸光度との比較からFc結合性タンパク質を定量した。
(4)(3)の結果得られた、Fc結合性タンパク質発現量が多い細胞株について、50nMのMTXを含む培地で培養し、(3)の方法でMTX耐性を獲得した細胞株の抗体結合活性を測定した。
(5)(3)と(4)の操作を繰り返すことにより、培地中のMTX濃度を上昇させ、最終的には5μM(初期スクリーニング濃度の1000倍)のMTX存在下においても増殖する細胞株、すなわち、MTX耐性の獲得と連動し、Fc結合性タンパク質を大量に発現するCHO細胞株を調製した。
実施例1で調製した天然型Fc結合性タンパク質を発現する細胞株より、以下の方法で前記タンパク質の生産を行なった。
(1)実施例1で調製したFc結合性タンパク質を発現するCHO細胞株を、高密度培養システムBelloCell(CESCO社製)を用い、5%透析ウシ胎児血清入りD−MEM/F12培地(GIBCO社製)にて培養した(37℃、5日間)。
(2)培養した細胞株の培地を、5%透析ウシ胎児血清入りD−MEM/ExCell302(SAFCバイオサイエンス社製)の等量混合培地に交換し、BelloCell(CESCO社製)用い、さらに培養した(37℃、30日間)。なお、培養中、栄養源が枯渇する前に培養上清を回収し、新たな培地と交換している。
(3)(2)の培養で得られた、Fc結合性タンパク質を含む培養上清(合計10L)を、20mM 酢酸緩衝液(pH5.2)で透析することで脱塩処理を施し、あらかじめ前記緩衝液で平衡化したSTREAMLINE SPゲル(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)300mLを充填した吸着流動床システム(STREAMLINE C−50、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に前記脱塩処理した培養上清を添加した。
(4)20mM酢酸緩衝液(pH5.2)で洗浄後、10% グリセロール、1M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)によりFc結合性タンパク質を溶出させた。
(5)(4)で得られたFc結合性タンパク質を含む画分を、20mM イミダゾール、0.5M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で透析し、前記緩衝液で平衡化したHisTrap HPゲルを充填したカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加した。
(6)20mMイミダゾールと0.5M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄後、500mM イミダゾールと0.5M NaClを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)でFc結合性タンパク質を溶出させた。
本実施例では、発現させるFc結合性タンパク質を天然型(実施例1から2)から変異型に変更した。
(ア)配列番号1の20番目のスレオニンがプロリンに置換(Thr20Pro)
(イ)配列番号1の25番目のスレオニンがリジンに置換(Thr25Lys)
(ウ)配列番号1の38番目のスレオニンがセリンに置換(Thr38Ser)
(エ)配列番号1の46番目のロイシンがプロリンに置換(Leu46Pro)
(オ)配列番号1の63番目のスレオニンがイソロイシンに置換(Thr63Ile)
(カ)配列番号1の69番目のセリンがスレオニンに置換(Ser69Thr)
(キ)配列番号1の71番目のアルギニンがヒスチジンに置換(Arg71His)
(ク)配列番号1の77番目のバリンがグルタミン酸に置換(Val77Glu)
(ケ)配列番号1の78番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換(Asn78Asp)
(コ)配列番号1の100番目のイソロイシンがバリンに置換(Ile100Val)
(サ)配列番号1の114番目のフェニルアラニンがロイシンに置換(Phe114Leu)
(シ)配列番号1の160番目のイソロイシンがメチオニンに置換(Ile160Met)
(ス)配列番号1の163番目のアスパラギンがセリンに置換(Asn163Ser)
(セ)配列番号1の195番目のアスパラギンがスレオニンに置換(Asn195Thr)
(ソ)配列番号1の206番目のアスパラギンがスレオニンに置換(Asn206Thr)
(タ)配列番号1の207番目のロイシンがプロリンに置換(Leu207Pro)
(チ)配列番号1の240番目のアスパラギンがアスパラギン酸に置換(Asn240Asp)
(ツ)配列番号1の283番目のロイシンがヒスチジンに置換(Leu283His)
(テ)配列番号1の285番目のロイシンがグルタミンに置換(Leu285Gln)
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む変異型ヒトFcγRI(以降、FcRm19とする)をコードするポリヌクレオチドを、下記に示す2段階のPCRにより、配列番号3から38に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて合成した。
(1−1)表1に示す反応液を用い、94℃で5分間熱処理後、94℃で30秒間の第1ステップ、62℃で30秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を25サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで、1段階目のPCR反応を行なった。なお、表1に記載のDNAミックスは、50pmoL/μLの前記36種類のオリゴヌクレオチド(配列番号3から38に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド)溶液を同量ずつ採取し混合した溶液である。
(3)pET26b(+)プラスミドベクターを基に、下記の方法により、FcRm19を大腸菌(E.coli)で発現させるためのベクターを作製した。
(3−1)配列番号41に記載のアミノ酸配列(MKIKTGARILALSALTTMMFSASALA、UniProt No.P0AEX9の1番目から26番目までのアミノ酸配列に相当)からなるMalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製するために、配列番号42に記載の配列(5’−TATA[CATATG]AAAATAAAAACAGGTGCACGCATCC−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NdeIサイト)、配列番号43に記載の配列(5’−GCATTAACGACGATGATGTTTTCCGCCTCGGCTCTCGCC−3’)、配列番号44に記載の配列(5’−ATCGTCGTTAATGCGGATAATGCGAGGATGCGTGCACCTG−3’)、および配列番号45に記載の配列(5’−TTGTC[CCATGG]CTTCTTCGATTTTGGCGAGAGCCG−3’;角かっこ内の塩基は制限酵素NcoIサイト)からなる各オリゴヌクレオチドを、PCR法により連結した。PCR反応は表3に示す反応液を用い、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なった。
(3−3)(3−2)で調製したMalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとNcoIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとNcoIで消化したpET26b(+)プラスミドベクター(Novagen社製)にライゲーションし、ヒートショック法により大腸菌(E.coli) JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。
(3−4)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し、培養した形質転換体からプラスミドDNAを抽出することで、ベクターpETMalEを調製した。pETMalEの概略を図2に示す。
(3−5)pETMalEベクターを制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化したFcRm19をコードするポリヌクレオチドをライゲーション反応により挿入した。
(3−6)ライゲーション後、ヒートショック法により大腸菌(E.coli) JM109株(タカラバイオ社製)を形質転換した。
(3−7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地にて培養後、定法に従いプラスミドを抽出する(Qiaprep Spin Miniprep Kit、キアゲン社製)ことで、発現ベクターpETFcRm19を調製した。pETFcRm19の概略を図3に示す。
(4)ヒートショック法によりpETFcRm19で大腸菌(E.coli) BL21(DE3)株を形質転換した。
発現ベクターpETFcRm19(図3)に挿入されているポリヌクレオチドの塩基配列を、チェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)にて解析した。なお、シークエンス用プライマーとして、配列番号46に記載の配列(5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’)と配列番号47に記載の配列(5’−TATGCTAGTTATTGCTCAG−3’)からなる各オリゴヌクレオチドを用いた。
(1)実施例3で作製したFcRm19を発現する形質転換体(大腸菌)を、50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY液体培地に接種し、37℃で一晩振とう培養することで前培養を行なった。
(2)前培養液を50μg/mLのカナマイシンを添加した2×TY培地(500mL)に添加し、37℃で振とう培養した。培養開始1.5時間後に培養温度を20℃に切り換えるとともにIPTGを終濃度0.01mMとなるよう添加し、引き続き20℃で一晩振とう培養した。
(3)培養終了後、遠心分離操作(10000rpm、20分間)により得られた湿菌体を、500mM NaCl、0.1mM PMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride)および20mM イミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に懸濁し、タンパク質抽出液を調製するために4℃に冷却しながら超音波破砕処理した。
(4)超音波破砕処理液を遠心分離操作(10000×g、20分、4℃)により、破砕物からFc結合性タンパク質を含む溶液を遠心上清として回収した。
(5)遠心上清を500mM NaCl、0.1% Tween20および20mM イミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したニッケルキレートカラム(His・Bind Resin、Novagen社製)に添加し、前記緩衝液で洗浄後、500mM NaCl、0.1% Tween20および500mM イミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いて、吸着したFc結合性タンパク質を溶出した。
(6)(5)の溶出液を、あらかじめ150mM NaClと0.05% Tween20を含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化したIgG Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加し、前記緩衝液で洗浄後、0.05% Tween20と10% グリセリンを含む20mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)でFc結合性タンパク質を溶出した。なお溶出する際、あらかじめ溶出量の1/4量の1M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)を入れた試験管に集めることで、溶出液をただちに中和した。
(7)溶出したタンパク質の純度を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびクマシーブリリアントブルー染色(CBB染色)により確認し、抗体結合活性の確認は実施例1の方法と同様に行なった。
実施例2で調製した天然型Fc結合性タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー用リガンドとしての性能を評価するために、前記タンパク質をクロマトグラフィー用ゲルに固定化した。
(1)実施例2で調製した天然型Fc結合性タンパク質溶液1000μL(濃度:12.1mg/mL)に、エポキシトヨパールゲル(東ソー社製)0.5g(乾燥重量)と3M リン酸緩衝液(pH7.5)1500μLとを添加し、25℃で16時間反応した。エポキシトヨパールへの天然型Fc結合性タンパク質の固定化量を、HPLC法[カラム:TSKgel SP−STAT(3.0mmID×3.5cm、東ソー社製)、溶離液A:20mM 酢酸緩衝液(pH5.5)、溶離液B:1M NaClを含む溶離液A、溶出条件:10分間の直線濃度勾配;B 0%からB 100%、検出:UV220nm]により反応液中の残存量を求めることで算出した結果、投入した天然型Fc結合性タンパク質の約80%以上がエポキシトヨパールゲルと反応しており、固定化が良好であることを確認した。
(2)固定化反応終了後、ゲルスラリーをフィルター付きのカラムに移して余分な反応液をろ過して除去した。
(3)水、引き続き20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)をそれぞれ(2)のカラムに通液してゲルを充分に洗浄後、空カラムに天然型Fc結合性タンパク質を固定化したエポキシトヨパールゲル500μL容量を充填した。
(1)実施例6で作製した天然型Fc結合性タンパク質固定化ゲル(Fc結合性タンパク質の固定化量:20mg/mLゲル)を充填したカラム(500μL容量)に、50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を5mL添加し、引き続き50mM リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解したヒトポリクローナル抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)を30mg添加し、10分間静置した。
(2)50mM リン酸緩衝液にて充分に洗浄することで未吸着の抗体をカラムから溶出させた後、100mMのクエン酸緩衝液(pH3.0)をカラムに添加することで、ゲルに吸着した抗体を溶出させた。溶出液中の抗体濃度は280nmの吸光度を測定し、1%濃度の抗体液の280nmにおける吸光度(光路長:10mm)14.0を基に算出した。結果、ゲル1mLあたり約22.0mgの抗体を吸着したことが判明した。
実施例5で調製した変異型Fc結合性タンパク質(FcRm19)のアフィニティクロマトグラフィー用リガンドとしての性能を評価するために、前記タンパク質をクロマトグラフィー用ゲルに固定化した。
(1)実施例5で調製したFcRm19溶液550μL(濃度:4.6mg/mL)に、エポキシトヨパールゲル(東ソー社製)0.15g(乾燥重量)と3Mのリン酸緩衝液(pH8.0)175μLを添加し、20℃で14時間反応させた。エポキシトヨパールへのFcRm19の固定化量を、HPLC法[カラム:TSKgel SP−STAT(3.0mmID×3.5cm、東ソー社製)、溶離液A:20mM 酢酸緩衝液(pH5.5)、溶離液B:1M NaClを含む溶離液A、溶出条件:10分間の直線濃度勾配;B 0%からB 100%、検出:UV220nm]により反応液中の残存量を求めることで算出した結果、投入したFcRm19の約90%以上がエポキシトヨパールゲルと反応しており、固定化が良好であることを確認した。
(2)固定化反応終了後、ゲルスラリーをフィルター付きのカラムに移して余分な反応液をろ過して除去した。
(3)水、引き続き20mMのリン酸緩衝液(pH7.0)をそれぞれ(2)のカラムに通液してゲルを充分に洗浄後、FcRm19を固定化したエポキシトヨパールゲル150μL容量を空カラムに充填した。
(1)実施例8で作製した変異型Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲル(FcRm19の固定化量:15mg/mLゲル)を充填したカラム(150μL容量)に、50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を5mL添加し、引き続き50mM リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解したヒトポリクローナル抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)を15mg添加し、10分間静置した。
(2)50mM リン酸緩衝液(pH7.0)にて充分に洗浄することで未吸着の抗体をカラムから溶出させた後、100mM クエン酸緩衝液(pH3.0)をカラムに添加することで、ゲルに吸着した抗体を溶出させた。溶出液中の抗体濃度は280nmの吸光度を測定し、1%濃度の抗体液の280nmにおける吸光度(光路長:10mm)14.0を基に算出した。結果、ゲル1mLあたり約18.0mgの抗体を吸着したことが判明した。
(1)実施例8で作製した変異型Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲル(FcRm19の固定化量:15mg/mLゲル)を充填したカラム(150μL容量)に、実施例9と同量のヒトポリクローナル抗体を添加し、ゲルに吸着させた。
(2)50mM リン酸緩衝液(pH7.0)にて充分に洗浄することで未吸着の抗体をカラムから溶出させた後、100mM クエン酸緩衝液(pH3.0からpH4.6)をそれぞれカラムに添加し、ゲルから溶出した液を分取した(以降、抗体溶出液1とする)。
(3)最後に50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)をカラムに添加することで、ゲルに吸着したままの抗体を完全に溶出させた(以降、抗体溶出液2とする)。
(1)模擬培養液として、CHO細胞(DBX−11株)を、10%のウシ胎児血清(GIBCO社製)を含むα−MEM(GIBCO社製)培地で常法に従い培養し、これにヒトポリクローナル抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)1mg/mLとなるよう添加したものを調製した。
(2)模擬培養液を遠心分離操作(10000rpm、10分)することにより、培養液中のCHO細胞を取り除いた。
(3)あらかじめ50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化した、実施例8で作製した変異型Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲルを充填したカラムに、(2)の遠心上清10mL添加した。
(4)0.01% Tween20を含む50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄することで、ゲルに非特異的に吸着する夾雑成分を取り除いた後、50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)でゲルに吸着した抗体を溶出させた。なお、溶出液はただちに50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で透析することで、pHを中性に戻した(抗体回収溶液)。
(5)模擬培養液、カラム通過液および抗体回収溶液をサイズ排除クロマトグラフィー[カラム:TSKgel G3000SWXL 7.8mmIDx30cm(東ソー社製)、溶離液:150mMのNaClを含むリン酸緩衝液(pH7.0)、流速:1.0ml/分、検出波長:280nm]による成分分析で各液中のタンパク質組成を確認した。
(1)以下に示す方法により、模擬培養液を調製した。
(1−1)大腸菌(E.coli) BL21(DE3)株を100mLのLB培地を添加した500mL容量のバッフル付き三角フラスコに接種し、37℃にてOD3.0になるまで振とう培養した。この大腸菌培養液から遠心分離操作(8000rpm、15分間)により大腸菌菌体を回収した。
(1−2)得られた菌体を50mM リン酸緩衝液(pH7.0)20mLに懸濁し、超音波破砕法により菌体を破砕した。
(1−3)菌体破砕液から遠心分離操作(12000rpm、15分間)により遠心上清(大腸菌タンパク質抽出液)を得た。
(1−4)遠心上清にヒトポリクローナル抗体(ガンマグロブリン製剤、化学及血清療法研究所製)を1mg/mLの終濃度となるように添加したものを模擬培養液とした。
(2)あらかじめ50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化した、実施例8で作製した変異型Fc結合性タンパク質(FcRm19)固定化ゲルを充填したカラムに、模擬培養液10mL添加した。
(3)0.01% Tween20を含む50mM リン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄することで、ゲルに非特異的に吸着する夾雑成分を取り除き、さらに0.01% Tween20を含む50mM 酢酸緩衝液(pH5.5)で洗浄した後、50mM クエン酸緩衝液(pH3.0)でゲルに吸着した抗体を溶出させた。なお、溶出液はただちに50mM リン酸緩衝液(pH7.0)にて透析することで、pHを中性に戻した(抗体回収溶液)。
(4)模擬培養液、カラム通過液および抗体回収溶液を、実施例11と同様のサイズ排除クロマトグラフィーによる成分分析で各液中のタンパク質組成を確認した。
Claims (5)
- Fc結合性タンパク質を固定化した固相に抗体を含む溶液を添加して前記固相に前記抗体を吸着させ、
前記固相に吸着した前記抗体を溶出液を用いて溶出させる、抗体の精製方法であって、
溶出液のpHが3.5以下である、前記精製方法。 - Fc結合性タンパク質を固定化した固相に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる前に、pH4.5以上の洗浄液を用いて前記固相に吸着した夾雑物質を除去する、請求項1に記載の精製方法。
- Fc結合性タンパク質がヒトFcγRIであり、抗体が完全ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1または2に記載の精製方法。
- ヒトFcγRIが、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換されたタンパク質、
である、請求項3に記載の精製方法。 - 配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換されたヒトFcγRIを固定化した、抗体を精製するための固相。
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