JP5808273B2 - 磁気ヘッド、ヘッド駆動制御装置、磁気記憶装置、その制御方法 - Google Patents

磁気ヘッド、ヘッド駆動制御装置、磁気記憶装置、その制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、垂直磁気記録媒体に対し高周波磁界を印加することにより磁化反転を誘導する機能を有する磁気ヘッド、その磁気ヘッドを搭載した磁気記憶装置、ヘッド駆動制御装置並びにその制御方法に関するものである。
インターネット環境の進化、クラウドコンピューティングの浸透などによるデータセンタの増設などにより、生成される情報量が近年急増している。記録密度が最も高く、ビットコストに優れた磁気ディスク装置(HDD)などの磁気記憶装置が“ビッグデータ時代”のストレージの主役であることは間違いない。このためには、磁気記憶装置の大容量化、それを支える高記録密度化が必須である。
2005年に面内リング型磁気ヘッドと面内磁気記録媒体による面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式への移行が始まり、高記録密度化の主体は主磁極・シールド磁極型の磁気記録ヘッドと磁性層表面層(キャップ層とも呼ばれる)側で結晶磁気異方性エネルギーHkを小さくして記録し易さを飛躍的に改善したECC(Exchange Coupled Composite)媒体と呼ばれる垂直磁気記録媒体による垂直磁気記録方式の性能向上で、高記録密度化が達成されてきた。高記録密度化の基本はスケーリング則であって、垂直磁気記録ヘッド主磁極のトラック幅、ヘッド・媒体間のスペーシング、ECC型垂直磁気記録媒体の結晶粒などを小さくする事が必須である。しかし、垂直磁気記録媒体の結晶粒を小さくすると、磁化状態を保とうとする異方性エネルギーが小さくなり、熱擾乱により、記録された磁化状態が乱されやすくなる。この現象は超常磁性効果と呼ばれる。このため、非特許文献1に記載されているように、1Tb/in2程度の時代になると現状技術の単なる延長では実用限界の壁があるとされる。この実用限界は、超常磁性限界、トリレンマ(trilemma)などと呼ばれる。
高記録密度化のためには上記限界を越える技術を開発することが最大の課題であり、これに対して特許文献1では、外部に設けた高周波源を磁気ヘッドの動きに追従させることで、磁気共鳴条件を満たす高周波磁界を磁気記録媒体に供給し、磁気記録媒体のスピンが高周波磁界のエネルギーを吸収して保磁力が実効的に低下することを利用して、媒体の温度を事実上上昇させることなく高保磁力媒体にも低磁界で書き込みが行えるスピン加熱記録方法が提案されていた。このようなスピン加熱記録方法では、磁気共鳴条件を満たす周波数範囲にパワーが集中した高周波電磁界を加えられるので、伝導電子のプラズマ振動や格子振動などの、スピン以外の内部自由度をあまり励起することなく、スピンのみを選択的に励起することができ、一般の加熱のように媒体全体の温度が上昇することはないとされる。このように、マイクロ波帯の高周波磁界を磁気記録媒体に印加して媒体磁化の歳差運動を励起し、スウィッチング磁界を下げながら磁気異方性の大きな垂直磁気記録媒体に情報を磁気記録し高記録密度化を図る方法は、マイクロ波アシスト磁気記録方方式(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)と呼ばれる(非特許文献1)。
近年、スピントルクによってスピンを高速回転して高周波磁界を発生する、高周波磁界発生層(FGL:Field Generation Layer)を利用した微小構造の実用的なスピントルク型高周波発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)が特許文献2、3、非特許文献2などで提案され、さらに、特許文献4では、高周波磁界発振素子から、磁化反転させたい磁気記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ方向に回転する高周波磁界(円偏光磁界)を、記録磁界極性に応じて発生せしめることで磁化反転をさらに効率良く誘起する方法も開示され、最近、上記の特長を有するマイクロ波アシスト磁気記録方式を実用化すべく研究開発が活発になっている。例えば、特許文献3や特許文献5では、低い保磁力を有するSTOを垂直磁気ヘッドの主磁極に隣接して配置、もしくはさらにシールド(補助磁極)を設けて主磁極との間に配置する構造とすることにより、安定した高周波磁界アシスト記録を可能する磁気ヘッドが提案されている。ここで、STOは、主磁極の媒体走行方向側もしくは反対側に設ける構造や、STO膜の積層方向が媒体移動方向に対して略垂直な方向や平行な方向の構造も開示されている。
上記のように、マイクロ波アシスト記録方式においては、133Gb/in2の記録密度で2005年から実用化が開始された垂直記録方式の延長としての高記録密度化を前提として検討がなされていた。それ以前に面内磁気記録方式で用いられていた、リング型(C字型)磁気コアを形成し、その記録ギャップから出る強い面内記録磁界で記録を行うリング型磁気ヘッドでは記録磁界勾配が小さく垂直磁気記録の高記録密度化には適していないとされていたことから、現在垂直磁気記録方式の標準として広く使われており、主磁極から出る強い垂直記録磁界で記録を行う垂直磁気記録ヘッド(主磁極・シールド型磁気ヘッド)を中心に従来提案のマイクロ波アシスト記録ヘッドが検討されていた。
特開平7−244801号公報 特許第4677589号 米国特許7616412B2 WO 2010/053187 A1 特開2009−70541号公報 特開2007−220232号公報
Y. Shiroishi, et al, "Future Options for HDD Storage", IEEE Trans. Magn., Vol.45, No.10, pp.3816-3822 (2009) X.Zhu and J.-G.Zhu, "Bias-field-free microwave oscillator driven by perpendicularly polarized spin current", IEEE Trans. Magn., Vol.42, pp.2670-2672 (2006) Y.Tang and J.-G. Zhu, "Narrow Track Confinement by AC Field Generation Layer in Microwave Assisted Magnetic Recording", IEEE Trans. Magn., Vol.44, pp.3376-2379 (2008) J-G.Zhu, X.Zhu and Y.Tang, "Microwave Assisted Magnetic Recording", IEEE Trans. Magn., Vo.l44, No.1, pp.125-131 (2008)
以上の背景のもと、本発明者らは、垂直磁気記録に適した主磁極・シールド型磁極(以下、主磁極型磁極という)をベースに、記録ギャップ部内にSTOを設置する、いわゆるインギャップSTO型のマイクロ波アシスト記録磁気ヘッドを適用することで、鋭意、磁気記憶装置の高記録密度化を図るべき検討を行った。
磁気記憶装置において高記録密度化を図るには、磁気ヘッド走行方向の線記録密度の向上と、トラック幅方向のトラック密度の向上の2つの方法がある。マイクロ波アシスト記録方式が熱アシスト方式と大きく異なる点は、前記のようにトラック密度を磁気的に決めることができることであり、実際、非特許文献3の記載によれば、STOからの記録磁界は主磁極からのもの比べ急峻で、書き滲みが小さく、より狭トラック化に適していることがLLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)シミュレーションで示されている。さらに、STO素子の厚さは記録磁極よりも1桁程度小さいので、狭トラックのパターンが形成しやすいという利点もある。そこで、主磁極型磁極構造のSTOにより記録トラック幅を決めることができれば、狭トラック、高記録密度の磁気記録が実現可能になると考えられた。以上のことから、本発明者らは、主磁極・シールド型記録ヘッド(以下、主磁極型磁気ヘッドという)によるマイクロ波アシスト記録方式により高トラック密度化を図ることを目的に検討を行った。
本発明者らは、特許文献3,5や非特許文献4に開示されている主磁極型磁極構造のマイクロ波アシスト記録ヘッドとして、図35及び図36、図37に示す磁気ヘッドをまず試作した。図36、図37は、図35の記録ギャップ125近傍の磁気ヘッドと垂直磁気記録媒体の構造例と磁界の様子を示した図である。図中、110は再生ヘッド部、120は記録ヘッド部、124はシールド、130は垂直磁気記録媒体、133はキャップ層、134は高Hk磁性層、135は軟磁性下地層などである。なおここでは、非特許文献3に記載のような狭トラック記録化を目指し、記録トラック幅40〜70nmの主磁極122、及び20〜40nmと狭いトラック幅のSTO素子140を40nmの記録ギャップ125内に有する主磁極型磁気ヘッドを、前記文献などで開示されている公知技術によって試作した。そしてこれらの磁気ヘッドと、垂直磁気記録の標準として用いられている垂直磁気記録媒体やその性能向上媒体(130)とを組み合わせ、スピンスタンド(記録再生特性テスタ)やHDD装置にそれらを組み込み、その記録再生特性、性能を実験的に評価した。
図38に、保磁力5.5kOeの従来型垂直磁気記録媒体に対し、記録トラック幅略45nmの主磁極と幅略20nmのSTOを有するマイクロ波アシスト記録ヘッドで記録再生した記録トラックプロファイルの一例を示す。マイクロ波アシスト素子を動作させることで、記録トラック中央部に再生ヘッドが位置するオントラック時にはその高密度信号出力が10%程度向上し、それに伴って出力ノイズ比(S/N)も略記録トラック中央部で約1dB向上するが、マイクロ波アシスト素子動作の有無に関わらず記録トラックの半値幅はほぼ同一で60nm程度であった。すなわち、いずれの場合にも、記録トラック幅は主磁極のトラック幅で決まってしまっており、主磁極のトラック幅よりも非常に大きい。このように従来の主磁極型構造のマイクロ波アシスト記録ヘッドと従来型ECC媒体の組み合わせでは、その記録トラック幅は主磁極の幅で決まり、より狭く設定したSTO素子幅よりも非常に大きく広がってしまい、非特許文献3に記載のようにトラック幅方向の高記録密度化は図れないことが判明した。
そこで本発明者らは、この根本原因について、記録磁界解析や、記録再生過程を加味したLLGシミュレーションにより鋭意検討を行った。その結果、記録し易さを追及した従来型の高保磁力ECC垂直媒体に対しては、図35に示した従来の主磁極型マイクロ波アシスト記録ヘッドでは主磁極122でも磁気記録が行われ、そのため記録トラック幅は主磁極122からの磁界で主に決まってしまい、トラック幅が広くなっていることが判明した。なおここで垂直磁気記録媒体は、その平均結晶粒ピッチを5〜6nm、粒径分散を10〜20%とし、キャップ層133は膜厚10nm、飽和磁化500〜800emu/cm3、ハード層134は膜厚6nm、飽和磁化500〜800emu/cm3、異方性磁界Hk30〜50kOe、ダンピング定数0.01〜0.02などとし、磁気ヘッドは、飽和磁束密度2.4TのCoFeからなり、トラック幅40〜70nmの従来の主磁極型磁極において、その30〜40nmの記録ギャップ部125内の主磁極近傍に膜厚10〜15nm、幅20〜40nmのFGL搭載STO140を設けたものを用いてシミュレーションを行った。
すなわちこの現象は、(1)ECC媒体では、磁化反転しやすいキャップ層からの強い反磁界と主磁極からの記録磁界の影響を受けやすく、媒体反磁界の強い主磁極側面直下の領域で媒体粒子が磁化反転しやすく、記録トラック幅が主磁極からの磁界で決まる(フットプリント)、(2)ECC媒体の磁化が反転してしまうと、逆向き磁化に対してはマイクロ波アシストの効果は得られないため、マイクロ波アシスト効果によるゲインが小さい、ためであることが明らかになった。
この現象の物理的イメージについて以下に説明する。図39に、外部から均一磁界を印加して評価した、従来型ECC媒体におけるスウィッチング磁界Hswの印加磁界角度依存性を△で示す。磁気ヘッドからの記録磁界には方向性があるため、この角度依存性は極めて重要である。一般に異方性磁界Hkを有する単軸の磁性粒子は、外部からの印加磁界に対して、式(1) で与えられるストーナー・ウォルファス(SW:Stoner Wohlfarth)モデルと呼ばれる磁化反転機構に従い磁化反転することが知られている。
Figure 0005808273
図39から、従来型ECC媒体では、そのスウィッチング磁界はいずれも浅い角度依存性を示すことがわかる。この結果から、式(2) の拡張ストーナー・ウォルファス(SW)モデルで定義されるストーナー・ウォルファス(SW)指数nSWは、およそ0.9程度であると考えてよいことがわかる。
Figure 0005808273
ここで磁気ヘッドからの記録磁界が、式(2) のアステロイド曲線で与えられるスウィッチング磁界を超えると、垂直磁気記録媒体の磁化反転が概ね起きると考えてよい(微視的には分散があるため)。そこで次にこの結果を用い、図35に示した従来のマイクロ波アシスト磁気ヘッドで、予期に反して狭トラック記録ができなかった現象の本質について検討した。
図40に、従来のECC型媒体に前記の主磁極型磁気ヘッドの主磁極からの記録磁極121で記録する場合の記録ギャップ125部近傍の記録磁界の様子を示す。また図41に、この記録磁界121によって媒体磁化反転を上向きから下向きに反転する場合において、記録磁化状態を決定付けると考えてよい垂直磁気記録媒体膜厚方向の高さ位置600での記録磁界強度とその方向を記録磁化ベクトルの軌跡(極図形)として表したものを示す。図41には、従来の垂直磁気記録媒体の代表的SW指数nSWとして0.9を仮定した時の磁気記録媒体のアステロイド曲線も併せて示す。ここでスウィッチング磁界Hswは、準静的なVSM法で測定した保磁力の絶対値を周波数特性補正した。以下に、主磁極型磁気ヘッドにより、従来の垂直磁気記録媒体にそのスウィッチング磁界を超える記録磁界を印加した場合の磁化反転を考える。
図6は、STOからの高周波磁界の回転方向を示す図、図7は、その強度の位置依存性を示す図である。図7から、高周波発振磁界はFGLの膜厚程度の領域で強く、垂直磁気記録媒体に対してこの領域近傍でのみアシスト効果を発揮することがわかる。
このため、図36において、マイクロ波アシスト磁界は記録磁極(主磁極)122直下で実効記録磁界が強く、しかもFGLに充分近い位置Cでは効果を発揮するが、実効記録磁界だけが強い領域A〜Bでは機能しない。マイクロ波アシスト記録の磁気記録過程については、後に図6を用いて詳しく説明する。図38では、主磁極型磁気ヘッドでマイクロ波アシスト記録を行った場合にも、マイクロ波アシスト素子をオフにした通常の記録とほぼ同じトラックプロファイルが得られており、図36の領域A〜Bにおいて、主磁極磁界による通常の磁気記録で何が起きているのかを明らかにすることがきわめて重要となる。そこで、主磁極からの記録磁界と媒体スウィッチング磁界との関係を示す図41を用い、この点に注目して検討した結果について以下に説明する。
図35及び図36に示した主磁極型磁気ヘッドでは、記録磁極122を(狭トラック)主磁極とし、124を単なるシールドとしているため、記録磁界は記録磁極122からの垂直磁界成分が強く、シールド124近傍では弱いという非対称性を有し、その流れも複雑である。そのため、図36における記録磁界の流れや図40に121で示した記録磁界ベクトルの軌跡から理解できるように、ヘッド・媒体の相対的な移動100に伴い、媒体が受ける記録磁界121はその強度、角度が複雑に変化する。図41に示したように、複雑で垂直成分の強い記録磁界121を受け、まず280°付近で媒体磁化反転が上向から下向きに始まり、次いで、磁化反転を起こした媒体領域(磁極形状を反映するため、フットプリント、記録バブルと呼ばれる)がさらに強い記録磁界を受けて拡大する。最後に、主磁極型磁気ヘッドでは垂直記録磁界の裾野がシールドに吸い込まれる構造にしてあるため、比較的鋭い磁界勾配のなかで、記録磁化状態が☆印位置(315°)で確定することになる。
さらに、従来型の高保磁力垂直磁気記録媒体130では磁化反転を助けるために高飽和磁化で低Hkの磁性層をキャップ層133に用いるため、その反磁界は6〜10kOe程度にも達する。このため、強い実効記録磁界が発生している記録磁極122側面の領域A〜B(図36)では、この強い反磁界の助けを借りて、マイクロ波アシスト記録位置Cでの記録に先行して、主磁極122からの強い記録磁界単独でも主磁極の略輪郭(フットプリント)に沿って記録がなされてしまうことになる。
さらにこれに続いて高周波磁界でアシスト記録がなされる場合にも、図36の構造の主磁極型磁気ヘッドでは、記録磁界のベクトル軌跡が非対称で、記録磁極122からの記録磁界と媒体のスウィッチング磁界との乖離、すなわち図41の記録磁界が最大となる位置602と記録確定位置601の差、が大きくなってしまう、という問題がある。すなわち、この記録位置では、磁極のフットプリント(記録バブル)が記録確定位置(601)でのものに比べ大きくなり、記録にじみ、記録トラック幅が一層拡大してしまう。
以上のように、記録トラック幅(記録トラック両端の幅)は、記録磁極122の周辺部の領域A〜Bでの最大記録磁界と媒体からの強い反磁界とで決まり、主磁極の略輪郭に沿って記録がなされてしまうため、結果としてトラック幅が狭トラック主磁極のトラック幅より非常に広くなり、狭トラック記録、高トラック密度化が困難になることがわかった。
なお、特許文献5には、STOと主磁極との前後の位置関係を図36と入れ替えた、図37に示す主磁極型磁気ヘッドも開示されている。この構造では、記録磁極122とシールド124がヘッド走行方向に対し図36と逆配置となっており、図36のようにマイクロ波アシスト記録に先行して記録磁界によって記録されることはない。ところがこの構造では、記録ビット長よりも記録磁極(主磁極)122の厚さが大きく、さらに磁界勾配も低いため、新たに情報を記録する場合(例えば、下向きから上向きに媒体磁化を変化させる場合)などでは、マイクロ波アシストで充分に記録された図37のD位置での記録トラック中央の記録ビットが、磁気ヘッドの移動100とともに主磁極122のE,F位置での強い記録磁界によって消磁されるとともに、記録トラックの幅も図36と同様の理由で広がってしまう。実際、図37のヘッドによる実験結果では、トラック幅は図36の場合と同様に略60nmと広く、さらに図36の場合よりも高密度信号出力やS/Nが2dB程度悪いという最悪の結果となった。
以上のように、従来提案されていた、特許文献5などの主磁極型磁気ヘッド技術(第一世代マイクロ波アシスト記録方式)を適用した場合には、アシスト効果、出力、S/Nの向上はある程度は認められるものの、単層垂直記録媒体に対して2kOeと非常に強い高周波磁界を印加するLLGシミュレーションにより非特許文献3で予測された高トラック密度化に関しては、従来技術と同等でしかないという大きな問題があることが明らかになった。この課題の本質は、上述のように従来型垂直磁気記録媒体において、マイクロ波の効果が発揮される前に部分的な磁化反転が主磁極からの強い記録磁界で起こり、記録トラック幅が主磁極のトラック幅で決まってしまうことにあると考えられる。このことは、従来のマイクロ波アシスト記録方式では、製造時の特性ばらつきなどがあると、記録時に隣接トラックを減磁(出力減少)させる、いわゆるATI(Adjacent Track Interference)問題を引き起こす懸念があることを意味する。従って、マイクロ波アシスト記録方式の特徴をフルに活用し、従来技術のトレンド以上に高トラック密度化を図るためには、上記の本質を踏まえたうえで磁気ヘッド及び磁気記録装置や記録再生方式での対策を実施することが必須であり、これが本発明で解決しようとする課題である。
すなわち本発明の目的は、マイクロ波アシスト記録方式において、従来技術のトレンドを凌駕する高トラック密度記録を可能とし、1Tb/in2以上の高記録密度を可能とする磁気ヘッド、さらには大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することにある。
本発明のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極部と高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備え、記録磁極部はその記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とするリング型(C字型)磁気コアを形成し、高周波磁界発振素子をその記録ギャップ内に設けた。
また、本発明の磁気記憶装置は、上記磁気コアを形成する記録磁極、その記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子、垂直磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子、及び高周波磁界発振素子と垂直磁気記録媒体とのクリアランス(スペーシング)を制御するTFC(Thermal Flying Height Controller)素子を備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、記録磁極動作だけでは十分な記録ができない垂直磁気記録媒体と、記録磁極及び高周波磁界発振素子による記録動作、磁気再生ヘッド再生動作を制御・処理する手段と、TFC素子への投入電力制御手段を備える。さらにより好ましくは、製造工程、使用環境においてその調整機能を持たせる。
上記調整は、例えば磁気コアに記録信号を供給する記録信号供給手段と、高周波磁界発振素子に駆動信号を供給する駆動制御手段とを具備したヘッド駆動制御装置において、MPUからの直接の命令で予備動作電流を磁気コアに供給し、さらにHDCから出力されるライトゲートのタイミングにあわせてそれぞれ独立に記録信号と高周波発振素子駆動信号を供給する手段を具備することで実現できる。
本発明によると、磁気コアのトラック幅よりも格段に狭い記録トラックの記録が可能となり、結果として従来技術のトレンドを凌駕する高トラック密度化を図り、容易に1Tb/in2以上の高記録密度化を実現することができる。
さらに本発明のリング型磁気コアでは、その記録ギャップ部内に従来ヘッドに比べSTO膜に略垂直で均一な強い発振制御磁界を発生できるため、記録ギャップ内に設けたSTOをより安定に発振せしめることができ、高保磁力の垂直磁気記録媒体の記録に必要な強い記録磁界を容易に得ることができる。また、このようにして得られた高周波磁界発振素子からの高周波磁界は記録磁極からの記録磁界に比べ急峻なため、記録にじみや記録トラック端部の磁化の湾曲を低減でき、記録トラック端部からの読み込みノイズ成分を低減でき、従来の垂直ヘッド構造(主磁極・シールド構造)のマイクロ波アシストヘッド以上に高いS/Nを得ることが出来る。
本発明の磁気記憶装置においては、装置組立時にアダプティブに記録電流、クリアランス、STO電流(電圧)を調整、環境変化、過渡現象がある場合には、記録磁界だけでは記録できない本発明の特徴を活かしてこれらを調整することで、記録トラックプロファイルや記録トラック幅方向の記録磁界分布を調整することができ、磁気ヘッド製造ばらつきを吸収して装置としての歩留りやパフォーマンスを飛躍的に向上、さらに、温度・気圧などの環境変化や、記録再生休止状況からの復帰時における過渡現象などに対するロバスト性を飛躍的に向上することができる。
以上のように、本発明の第二世代マイクロ波アシスト記録ヘッドは、従来の垂直ヘッド構造の第一世代マイクロ波アシスト方式に比べて優れた性能を有するもので、特にトラック密度を中心に記録密度を大きく向上することができる。さらに、磁気ヘッド駆動制御装置、評価・調整方式やこれらに関する製造設備と組み合わせることで、特に高い記録密度、パフォーマンス、製造歩留り、信頼性を有する大容量・高信頼性の磁気記憶装置を提供することもできる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの一例を示す概念図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ部近傍の磁界の様子を示す模式図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドによる記録磁界のベクトル軌跡と垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界Hswとの関係(磁気記録過程)を示す図。 主磁極型磁気ヘッドのフットプリント示す図。 リング型磁気ヘッドのフットプリント示す図。 高周波磁界発生素子からの高周波磁界の回転方向を示す図。 高周波磁界強度の位置依存性を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの実効記録磁界強度の位置及び起磁力依存性を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドにおいて、実効記録磁界と実効高周波磁界の重畳効果を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ内の磁界分布を比較例と比較して示した図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ内の磁界分布を示す図。 高周波磁界印加時の媒体スウィッチング磁界の記録磁界角度依存性を示す図。 高保磁力垂直磁気記録媒体と本発明によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの組み合わせの例を示す図。 高保磁力垂直磁気記録媒体と本発明によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの組み合わせの例を示す図。 高保磁力垂直磁気記録媒体と本発明によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドの組み合わせの例を示す図。 積層FGL構造のSTOの断面模式図。 反強磁性結合構造のSTOの断面模式図。 本発明のヘッド駆動制御装置及び磁気記憶装置の一例の概念図。 本発明のヘッドジンバルアセンブリを示す図。 高保磁力垂直磁気記録媒体に対してマイクロ波アシスト磁気記録を行う際の記録磁界、高周波磁界の関係の一例を示す図。 高保磁力垂直磁気記録媒体に対してマイクロ波アシスト磁気記録を行う際の記録磁界、高周波磁界の関係の一例を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの実効記録磁界の勾配の位置依存性を示す図。 装置製造パラメータ設定フローチャートの例を示す図。 WB,ISTO最適化のためのテーブルを示す図。 記録動作休止時からの記録動作を示すタイムチャート。 パラメータ制御用テーブルの例を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例を示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例を示す図。 環境温度に対し記録電流を調整する実施例を示す図。 環境温度の変化に対応して記録電流、STO駆動電流、TFC投入電力を調整するフローチャートを示す図。 本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの別の実施例を示す図。 環境温度の変化に対応して記録電流、STO駆動電流、TFC投入電力を調整する実施例の説明図。 従来の主磁極型のマイクロ波アシスト磁気ヘッドと垂直磁気記録媒体の構造を示す図。 従来型マイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例と磁界の様子を示す模式図。 従来型マイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ近傍の構造例と磁界の様子を示す模式図。 従来型垂直磁気記録媒体の記録トラックプロファイルに対する、従来型マイクロ波アシスト磁気ヘッドによるアシスト記録の効果を示す図。 従来型ECC媒体におけるスウィッチング磁界Hswの印加磁界角度依存性を示す図。 従来の主磁極型磁気ヘッドの記録ギャップ部近傍の磁界の様子を示す模式図。 従来の主磁極型磁気ヘッドの記録磁界のベクトル軌跡と垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界Hswとの関係(磁気記録過程)を示す図。
以下、本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッド、磁気記憶装置などの実施例についてそれぞれ図面を用いて説明する。
[実施例1]
図1に、垂直磁気記録媒体と本発明の磁気ヘッドの一実施例の概略図を示す。
(垂直磁気記録媒体)
垂直磁気記録媒体30は、ガラス、Si、プラスチックスやNiPメッキAlなどから構成される超平滑・耐熱非磁性基板36上に、FeCoTaZrなどからなる軟磁性下地層35、CoCrPt,L12−Co3Pt基合金,L12−(CoCr)3Pt基合金,L11−Co50Pt50基合金,m−D019型Co80Pt20基合金,CoCrSiO2/Pt,CoB/Pd磁性人工格子,L10型FePt、などを主な構成要素とし、SiO2,TiO2,C,B,Ag,Cu,Au,Ni,Fe,Cr,Mn,Pdなどを適宜添加物として含有する磁性膜からなる第一、第二の記録層34,33、さらにC、FCAC(Filtered Cathodic Arc Carbon)などからなる保護層32、及び潤滑層31などから構成され、それぞれ超高真空チャンバーを有するマグネトロンスパッタリング設備、保護層形成設備や、潤滑層形成設備などを用いて形成される。上記垂直磁気記録層はターゲット材料にTi,Nb,Zr,Cu,Si,Alなどの適切な酸化物、炭化物、窒化物、硼化物もしくはそれらの混合物などを混入し、製膜条件を調整することで、非磁性材料を結晶粒界に0.5〜2nm適宜偏析させることにより結晶粒間の磁気交換相互作用を制御して製膜した。矢印37,38は、それぞれ垂直磁気記録媒体に記録された上向きの磁化、下向きの磁化を示す。
本実施例では、磁性膜の平均的な異方性磁界を高めて高保磁力とすることで、従来の主磁極型磁気ヘッドからの磁界では充分な記録ができないようにせしめ、第2世代マイクロ波アシスト方式による狭トラック磁気記録に適した構造とした。図2は、本実施例のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの記録ギャップ部近傍の磁界の様子を示す模式図である。図3に、本実施例の高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界の極図形ベクトル軌跡(アステロイド)の一例を示す。高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界は、従来の垂直媒体に比べて角度依存性はやや深いが、その大きさや異方性磁界Hkが30〜40%程度高い。そのため図41に示した主磁極からの磁界強度ではスウィッチング磁界(アステロイド)を超えることができず、充分な記録ができないことがわかる。なお後述の本発明のリング型磁極ヘッドであれば磁界が強いので、充分ではないが記録はできる。
なお、垂直磁性膜の構造は2層構造に限るものではなく、高い保磁力を有するものであれば、単層構造、組成傾斜型膜構造、もしくは3層以上の多層構造としても良い。さらに、磁気的な結合を制御するための中間層を必要に応じて各層の間に設けてもよい。ここでその構成や垂直磁気記録の磁気特性が単層媒体に近い場合には、その磁化の共鳴周波数と高周波発振素子(STO)40の高周波磁界の発振周波数は大きくは違わないことが好ましい。多層構造の場合には垂直磁気記録媒体磁性層のダンピング定数αを相対的に大きくするによって、高周波磁界からのエネルギー吸収の自由度を調整でき、STOの発振周波数を低くすることが出来る。
さらに、軟磁性下地層35と基板36との間に少なくとも一層の特性制御用の非磁性層を設け、また、磁性層34,33の結晶配向性、結晶粒径、磁気特性やその均一性などを高めるために、軟磁性下地層35と磁性層34との間にRuなどの少なくとも一層の特性制御用非磁性中間層や、さらにそれに加えて非磁性もしくは磁性材からなる中間層などを設けても良い。さらにCoFeTaZrなどからなる軟磁性下地層35は、その軟磁気特性や均一性を向上するためにRuなどを介した2層構造としてもよい。図1では基板36の片面に磁性層33,34などを設けた例を示したが、これらを非磁性基板36の両面に設けても良い。また本実施例では、垂直磁気記録媒体30において磁性層が連続膜である例を示したが、ディスクリートトラック膜や基板上に10nm程度の磁性パターンを設けたパターン膜などでもよい。
(磁気ヘッド)
磁気ヘッドは、垂直磁気記録媒体30上をクリアランス01で矢印100の方向に走行するスライダ50上に形成された、再生ヘッド部10、リング型磁気コアから形成される記録ヘッド部20、及び特許文献4に記載のような、クリアランス制御用の熱膨張素子部(TFC:Thermal Flying Height Controller)02などから構成される。ここでTFCは、NiCr,Wなどの高比抵抗、高熱膨張材料からなり、アルミナ膜などで絶縁した50〜150Ω程度の発熱抵抗体薄膜で構成され、記録ヘッド部、再生ヘッド部と垂直磁気記録媒体30とのクリアランスを0.5〜2nm程度に調整するものである。TFCは2ヶ所以上に設けても良く、この場合、それぞれの配線接続は独立でも直列でも良い。なお投入電力入力用の配線は省略した。
ヘッド保護層51はCVD−C,FCACなどからなり、底面52は磁気ヘッドの浮上面(ABS:Air Baring Surface)である。ヘッド保護層は無くても良い。スライダ50はAl23−TiCセラミックスなどからなり、特許文献6に記載のように、磁気ヘッド磁極部の浮上量が垂直磁気記録媒体全周に亘って5〜10nm程度になるように、そのABS面に負圧が発生するようにエッチング加工を施したもので、素子駆動用配線を有するサスペンション(板ばね)に搭載され、後述(図18、図19)のようにヘッドジンバルアセンブリ(HGA)として磁気記憶装置に搭載される。なお、本実施例ではスライダを0.85mm×0.7mm×0.23mm程度のフェムト(femto)型としたが、用途に応じてその高さを0.2mm程度とした薄型フェムト型や、その長さを1mm程度としたロングフェムト型などとしても良い。
再生ヘッド部10は、再生ヘッド部を記録ヘッド部からシールドする磁気シールド層11、再生センサ素子12、再生分解能を高めるための上部磁気シールド13、下部磁気シールド14などからなる。再生センサ素子12は媒体からの信号を再生する役割を担うもので、その構成としては、TMR(Tunneling Magneto-Resistive)効果、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR(Giant Magneto-Resistance)効果、ないしはEMR(Extraordinary Magneto-Resistive)効果を有するもの、さらにはSTO(Spin Torque Oscillator)効果を応用したセンサや、ホイスラー合金膜を積層したCo2Fe(Al0.5Si0.5)/Ag/Co2Fe(Al0.5Si0.5)シザーズ型や差動型でも良い。その素子幅Twr、素子高さHsやシールド間隔Gs(再生ギャップ)は、目標とする記録トラック密度や記録密度に応じて設計及び、加工され、例えばTwrの大きさは50nm〜5nm程度である。なお、再生出力の取り出し端子は図示を省略した。
記録ヘッド部20は本発明の最も重要な部分の一つで、記録ギャップ部25での強く均一なSTO発振制御磁界(以下、発振制御磁界)26及び記録磁界21を発生するための第1、第2の記録磁極22,24、高周波磁界45の回転方向、発振周波数などを発振制御磁界26で制御するために記録ギャップ25内に設けられた高周波磁界発振素子部(STO)40、記録磁極を励磁するためのコイル23などから構成される。ここで第1、第2の記録磁極22,24は、記録ギャップ部25近傍で体積を大きく、磁気的に略対称なリング型構造とした。コイル23はCu薄膜などを用いて記録磁極24を巻くように形成した実施例を示したが、記録磁極の後端部27や第1の記録磁極22を周回するように形成してもよく、またさらに多層巻き線としても良い。記録ギャップ25はスパッタリング法やCVD法で製膜されるAl23,Al23−SiO2膜などの非磁性薄膜で形成される。
本実施例では、均一で強い記録ギャップ内磁界などを確保するため、ギャップ部近傍での各磁極の磁性層膜厚を40nm〜3μmとした。記録ギャップ長GLはSTO40の厚さ、記録ギャップ内のSTO発振制御磁界26の均一性、強度、記録磁界21の強度及び記録磁界勾配、トラック幅、ギャップデプスGdなどを考慮して決めた。ギャップデプスGdは、記録磁極のトラック幅やギャップ長以上にすることが磁界の均一性の観点で好ましい。本実施例では、トレーリング側(ヘッド走行方向の後方側)の第1の記録磁極22のトラック幅を40〜250nm、より好ましくは50〜100nm、ギャップデプスを40〜700nm、より好ましくは50〜500nm、ギャップ長を20〜200nm、より好ましくは30〜80nmとした。また周波数応答を高めるために、ヨーク長YL、コイル巻き線数は小さいことが好ましく、それぞれ0.5〜10μm、2〜8とした。特にサーバ、エンタプライズ用途などの高速転送対応磁気記憶装置の磁気ヘッドにおいては、ヨーク長を0.5μm以上、4μm以下、より望ましくは2μm以下とし、さらに必要に応じて比抵抗の高い磁性、もしくは非磁性中間層を介して高飽和磁束磁性薄膜を積層する多層構造とした。
第1の記録磁極22は、FeCoNi,CoFe,NiFe合金などの高飽和磁束軟磁性膜を、メッキ法、スパッタ法、イオンビームデポジション法などの薄膜形成プロセスで単層もしくは多層製膜するもので、記録素子の幅TWWは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計して、半導体プロセスで加工され、その大きさは200nm〜30nm程度である。記録ギャップ部近傍の磁極形状は、記録ギャップ面に対して平行かつ平坦な膜構造でも、STO40の周囲を囲った構造でも良い。なお記録磁界強度を高めるために記録ギャップ部近傍には高飽和磁束材料を用い、その形状を記録ギャップ部に向かって絞り込むような構造とすることが特に好ましい。第2の記録磁極24も第1の記録磁極22と同様に、CoNiFe合金や、NiFe合金などの軟磁性合金薄膜で形成し、形状を制御した。
従来の主磁極型磁気ヘッドでは、これまで説明してきたように記録磁界は主磁極に集中しているために磁気記録は主磁極で決まり、図4に示すように、垂直磁気記録媒体180が記録可能であれば、それに静止記録するとその記録跡(磁化反転領域、フットプリント、記録バブル)183は略主磁極の形状となる。これに対し、上記の本実施例のリング型磁気ヘッドでは、記録磁界は記録ギャップ部に集中しているために磁気記録は記録ギャップで決まり、図5に示すように、垂直磁気記録媒体180が記録可能であれば、それに静止記録するとその記録跡、フットプリント182は略記録ギャップの形状となる。
本実施例では、上記のように記録磁界が記録ギャップ部に集中するような磁極構造とすることで、後に詳細に説明するようにSTO(FGL)の効率的な発振に必須の、ギャップ内での強く均一な磁界を得ることができ、従来の主磁極型ヘッド構造に比べSTO40の発振性能、記録アシスト効果を飛躍的に高めることができる。さらに、主磁極型磁気ヘッドでは、主磁極はより微細な記録を行うためにその大きさ、体積を小さくすることが必要であるのに対し、リング型磁極では記録ギャップ部で記録を決めることが出来るため、磁極の厚さ方向の制限が無く、磁極体積を大きくでき、記録磁界強度を高くできる。さらに後で詳細に説明するように、記録ギャップ内での極性がSTOとよく整合するため、垂直磁気記録媒体への記録磁界と高周波磁界の効果的な重畳、狭トラック記録が可能となり、特に好ましい。
高周波発振素子部(STO)40は、FeCo,NiFeなどの軟磁性合金、CoPt,CoCrなどの硬磁性合金、Fe0.4Co0.6,Fe0.01Co0.99,Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeAlSi,CoFeGe,CoMnGe,CoFeAl,CoFeSi,CoMnSiなどのホイスラー合金、TbFeCoなどのRe−TM系アルモファス系合金、あるいはCo/Fe,Co/Ir,Co/Ni,CoFeGe/CoMnGeなどの磁性人工格子などからなる高周波磁界発生層FGL41と、Au,Ag,Pt,Ta,Ir,Al,Si,Ge,Ti,Cu,Pd,Ru,Cr,Mo,Wなどの非磁性導電性材料などからなる中間層42と、さらに、高周波磁界発生層FGLにスピントルクを与えるためのスピン注入層43などから構成される。特別な場合を除き、STOには直流電源(電圧駆動もしくは電流駆動)44により、スピン注入層側から電流を流し、FGLのマイクロ波発振を駆動する。スピン注入層には垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来、例えばCo/Pt,Co/Ni,Co/Pd,CoCrTa/Pt,CoPt/Pdなどの磁性人工格子薄膜材料を用いることが好ましい。なお、発振の安定性は少し失われるが、FGLと同様の材料を用いることも出来る。
図1では省略したが、スピン注入層や高周波発振層の膜質・膜特性の制御や発振効率、信頼性を高めるために、Cu,Pt,Ir,Ru,Cr,Ta,Nbなどからなる単層薄膜、合金薄膜、もしくはこれらの積層薄膜による下地層やキャップ層を設けてもよい。なお、STOは再生素子の形成後に形成されるので、そのプロセスは再生素子の特性に悪影響を与えないようにすることが好ましい。また図1では、STOの駆動電流源(もしくは電圧源)や電極部を模式的に符号44で表したが、記録磁極22,24を、例えば記録ヘッド後端部27で磁気的には結合、電気的には絶縁せしめ、さらにギャップ部ではそれぞれをSTO側面と電気的に接続することで、記録磁極22,24に電極を兼用させてもよい。
各磁性層の材料、構成や磁気異方性については、スピン注入効率、高周波磁界強度、発振周波数や反磁界も含めた実効磁気異方性などが、高周波発振、マイクロ波アシスト記録に最も適するように決めた。例えば、FGLの飽和磁化に比例して高い高周波磁界が得られるため、FGLの飽和磁化Msは高い方が好ましい。また膜厚は、厚い方が高い高周波磁界が得られるが、厚くなりすぎると磁化が乱れ易くなるので、1〜100nm、より好ましくは5〜40nm、さらに好ましくは7〜25nmとすることが好ましい。素子寸法については、8〜9kOe程度以上の強いSTO発振制御磁界を印加すれば、FGL素子の大きさが100nm程度以下であれば、軟磁性材料、硬磁性材料、又は負の垂直磁気異方性材料のいずれの材料でも、FGL磁化の膜面内での均一回転を誘起することができ、STOが安定して発振するようになることも確認された。FGL41の幅WFGLは、目標とする記録磁界や、記録密度に応じて設計及び、加工すればよい。本実施例のリング型磁極によれば8〜9kOe程度以上の記録ギャップ内磁界が容易に得られるので、その大きさを100nm〜3nmとし、更に、FGL素子寸法が40nm程度以下になると磁区構造の発生も抑制できることから、より好ましい素子寸法は40nm〜5nmであった。ここで幅が3nmよりも狭くなると、熱揺らぎや素子側面の影響が大きくなり、発振が不安定になった。なお後述のように、瓦記録(SMR:Shingled Write Recording)方式と併用する場合には、WFGLは記録トラック幅の2〜3倍とすることが好ましかった。
非磁性中間層42の膜厚は、高いスピン注入効率を得るために、その膜厚を0.2〜4nm程度とすることが好ましく、スピン注入層43としては、垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来るので、Co/Pt,Co/Ni,Co/Pd,CoCrTa/Pdなどの磁性人工格子材料を用いることが好ましい。膜厚は5〜100nm、より好ましくは5〜40nmとすることで発振が安定する。さらに、FGL41の高周波磁化回転を安定化させるため、スピン注入層43と同様の構成の回転ガイド強磁性層をFGL41に隣接して設けても良い。ここで、スピン注入層43とFGL41の積層順は逆にしても良い。
(効果)
FGL41からの高周波磁界は垂直磁気記録媒体の最表面の磁化と最も強く相互作用し、磁化反転をアシストする。そこでまず垂直磁気記録媒体最表面での高周波磁界の状態について説明する。
実施例として図6及び図7に、膜厚10nmのCo/Fe膜を幅20nm、高さ20nmとして形成したFGL41を垂直磁気記録媒体の最上層磁性層33の表面から4nm上面に設置し、その磁化47(飽和磁化Ms:2.3T)を高速回転して高周波磁界を発生させた場合の、磁界計算による解析結果を示す。図6は垂直磁気記録媒体磁性層最表面の各位置で媒体磁化が受ける高周波磁界39の回転方向の解析結果であり、図7は磁界強度最大値の位置x依存性に関する解析結果である。この結果は下記のように理解できる。
FGLの磁化47が上(+z方向)を向いた状態では(図6で、Mz=+1)、FGLの右側の媒体位置では左向きの強いx成分の磁界が、左側の媒体位置では右向きの強いx成分磁界が発生する(図7で、Hx(Mz=+1))。次いで、磁化47が90度回転して奥(+y方向)の方を向くと(図6で、My=+1)、FGLの真下の媒体位置で手前向き(−y方向)の強いy成分磁界が発生する(図7で、Hy(My=+1))。更に磁化47が90度回転して下(−z方向)を向くと、磁界の方向は磁化が上向きの状態とは反転した状態のx成分磁界が発生する(図7のHx(Mz=−1))。最後に、磁化47が更に90度回転して手前側(−y方向)を向くと、FGLの真下の媒体位置で奥向き(+y方向)の強いy成分磁界が発生する(図7のHy(My=−1))。上記で、z成分磁界は、回転磁界としてアシスト効果にはあまり寄与しないので省略した。
このように、FGLの磁化Mの回転にともない、図6に示すように、FGLの左右の領域で回転方向の異なる高周波磁界が発生することになる。このため、FGLの左右の領域で磁化反転をアシストできる媒体磁化の方向が異なり、後述のようにヘッド設計には特に注意を要することになる。さらに図7で、FGLの両側のごく近傍、膜厚の1〜2倍の範囲で強い高周波アシスト磁界Hx,Hyが発生していることも定量的に理解できる。
以上のことから、FGL素子の両側で膜厚程度の非常に狭い領域でのみアシスト効果が得られることが明らかになった。このことを考慮して、後述のように、最も高いアシスト効果が得られるように記録磁極とFGLの位置関係を決める必要がある。
図8に、垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界の角度依存性(図3)を考慮して記録磁界のスウィッチング効率を反映させた、本実施例のリング型磁気ヘッドの実効記録磁界強度の位置、起磁力(MMF:Magneto-motive Force)依存性を示す。MMFは記録電流とコイル巻線数との積である。
FGLからの高周波発振磁界も上記のようにFGLの表と裏側でアシスト磁界(効果)が逆極性であり、本実施例では両者をきれいに重畳させることが可能となる。本実施例のリング型磁極構造では磁気ヘッドのトレーリング側の記録磁界で記録磁化状態が確定するので、その位置で高周波発振磁界が最も強くなるようにFGL(STO)の位置を微調整することが大切となる。すなわち、FGLからの高周波磁界成分のHx,Hy(より望ましくは実効磁界)が最大となる位置と、記録磁極からの実効記録磁界の強度が最大となる位置とを一致させることなどが好ましい。これは、記録ギャップ長をFGL膜厚の2〜5倍とし、必要記録磁界強度、スピン注入層や下地層膜厚などに応じて、適切な材料、膜厚、トラック幅、素子高さのFGLを略記録ギャップ中心に設置することで実現可能であり、その例を図9に示す。この効果については後で詳細に説明する。
さらにLLGシミュレーションによれば、強い高周波磁界を効率よく発生せしめるためには、FGL41は、その膜厚を1〜100nm、より好ましくは5〜40nmとし、さらに磁区構造が出来にくく、安定して磁化が回転できるように、その素子幅、素子高さを略等しくするとともに、STO40に印加される発振制御磁界26をSTOに垂直で、しかも面内で均一にすることが好ましいことが判明した。
これに対して図10、図11に、シミュレーションで求めた本実施例のリング型磁気コアの記録ギャップ部における磁界分布を示す。図11から、記録磁界は記録ギャップ部内で水平であって記録ギャップ内のSTO膜に垂直であり、記録ギャップ方向の磁界強度Hxが非常に均一であることがわかる。マイクロ波アシスト記録に影響を与える高周波磁界のHx,Hyの効果は若干異なるが、アシスト効果を最適化する考え方ついては同じなので、以下単純化のために、高周波磁界Hxを例に説明する。
高周波磁界Hxについてはその最も強い値がFGLから膜厚程度離れた位置で得られるため(図7)、最も高い実効記録磁界勾配を得るためには、前述のように、この位置を実効記録磁界の最も強い位置(図8のx=0)に合せることが好ましい。そこでSTO素子をx〜−10nm位置に設置した場合を例に、この位置での磁界強度の素子深さz方向依存性を調べた。本実施例において、STO発振制御磁界26に相当する記録ギャップ内磁界Hxは、比較例の主磁極型磁気ヘッドのものに比べて1桁程度強く、さらにx=−10nmの平面にほぼ垂直で、その強度分布も比較例に比べて均一性が高いことが定量的にわかる。例えばFGL素子高さを40nmとした場合には、本実施例の磁極構造でHxの分布は11%と比較例の構造の55%に比べ1/5になっている。このことから、本実施例のリング型磁気ヘッドでは、記録ギャップ内に設けたSTOの磁化回転はSTO膜内で従来ヘッドよりも格段に均一となり、発振が非常に安定することになる。
さらに、図11の記録磁界ベクトルの様子から容易に理解できるように、本実施例のリング型磁気ヘッドでは、記録ギャップ25内部でFGL膜厚に相当するx=−10〜−20nmの全領域でほぼ一様に記録磁界が略x軸方向を向いており、FGL膜面に±数度の範囲で垂直に磁界が印加できることがわかる。これに対し、従来の主磁極型磁気ヘッドでは、x=−10〜−20nmの範囲で急激に磁界の方向が変化し、記録磁極から離れるにしたがって記録磁界はFGL膜面に垂直に近くなるが、平均すると−y方向に10ないし20°傾いている。STOに印加される磁界がその膜面垂直方向から10°以上ずれるとFGL層の磁化回転方向が傾き、高周波発振磁界が半分程度以下に劣化してしまうので、本実施例のリング型磁極は従来の主磁極型磁気ヘッドに比べ、2倍程度高い発振磁界強度が得られることになる。このことは、高周波発振磁界強度が極めて重要な役割を果たすマイクロアシスト記録方式では極めて有効である。以上のように、本実施例のリング型磁極構造によれば、従来構造に比べてSTOがより安定に発振し、2倍程度強い高周波磁界を発生できることが確認され、マイクロ波アシスト記録用の磁極構造として特に好適であることがわかった。
なお図8から、本実施例の磁気ヘッドの実効記録磁界の絶対値は、記録ギャップ長GL、起磁力MMF、トラック幅TWWが大きくなると、大きくなることがわかる。本実施例ではこれらの記録ギャップ内の磁界の特徴、均一性、さらにSTOの厚さなどを勘案し、記録ギャップ長GLを20〜150nmの範囲とした。
以上のように、本実施例の磁気ヘッドによれば、従来の主磁極型磁気ヘッドに比べSTO発振制御磁界26を、格段に良好な状態でSTOに印加できる。実際に本実施例のマイクロ波アシスト記録ヘッドを試作、評価した結果、発振特性のバラツキが少なく、従来型の主磁極型磁極と組み合わせた場合に比べ、20〜30ポイント以上高い歩留りで強い高周波発振特性が得られることが確認された。さらに本実施例のマイクロ波アシスト磁気ヘッドでは、STO発振制御磁界26に相当するギャップ内磁界Hxは、図35に示した従来型マイクロ波アシストヘッド(比較例)に比べて一桁程度強いので、本構造のSTOと組み合わせることで、従来型の主磁極型磁極と組み合わせた場合に比べ、容易に10GHz以上高い周波数である、25〜30GHz以上の高い周波数のマイクロ波発振磁界を誘起することができた。このため、本STOと組み合わせた本実施例の磁極構造のマイクロ波アシスト記録ヘッドは、Hkが高く、高い周波数のマイクロ波アシストが必要な高保磁力垂直磁気記録媒体用の記録ヘッドとして、特に好適であることが判明した。
[実施例2]
本実施例では、実施例1で説明した本発明の磁気ヘッドのさらに詳細な構成例について説明する。
[発明が解決しようとする課題]の項において図38を参照して説明したように、従来型磁気ヘッドではその主磁極直下、特に垂直磁気記録媒体の反磁界の強い影響を受ける主磁極側面近傍の領域で、垂直磁気記録媒体の磁化が反転し、主磁極からの磁界だけでも記録がなされ、そのために記録トラック幅が主磁極からの磁界幅で決まってしまい、マイクロ波アシスト磁気記録によっても所望の狭トラック磁気記録ができない。そこでまず本発明では、垂直磁気記録媒体の結晶磁気異方性磁界Hk、飽和磁化Ms、保磁力Hc、ダンピング常数α、結晶粒径、配向性、Hkや粒径の分散、粒界偏析状態などの重要なパラメータに着目し、材料、製膜プロセス、膜厚、中間層、下地層や添加物などを調整することでその層構成や磁気特性を制御し、従来の主磁極型磁気ヘッドや本発明の記録磁極では充分な記録はできないが、STOからの記録磁界が重畳して印加された時にのみ充分に記録ができるような高保磁力の構成にした。以下に、この高保磁力垂直磁気記録媒体に対する、本発明の磁気ヘッドの磁気記録磁化過程、及び狭トラック記録などの効果について説明する。
まず本構造の磁気ヘッドにおける記録磁極及びSTO(FGL)からの実効記録磁界をシミュレーションで求めた。図9にトラック幅TWW=100nm、ギャップ長GL=40nmの記録ヘッドにおいて、そのギャップ部25に膜厚15nmのFGL41を第1の記録磁極22から10nm離した位置に設けた本実施例のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドの構造を示す。この磁気ヘッドを起磁力(MMF)0.12AT、FGL磁界1.3kOeで駆動とした場合の実効記録磁界を示す。
本磁気ヘッドではギャップ中央部を境に、極性の異なる記録磁界が印加される。そのため、第2の記録磁極24で逆向きの記録磁界91がまず印加されるので、図40の比較例の磁気ヘッドのように、垂直磁気記録媒体からの反磁界の助けを借りて主磁極で磁化反転がおきることはない。さらに図9に示したように、FGLからのアシスト磁界92もこれに同期して、磁化が“勝手に”反転しないようにサポートしている。すなわち、所望の反転を行う前に、最もアシスト効果が大きい方向に媒体磁化を揃える作用があることを意味しており、従来の主磁極型とは異なり、前歴によらず一定の条件で重ね書きができるという優れた特徴があることがわかった。
さらに本実施例のヘッドは、従来の主磁極型ヘッドに比べて磁界強度が強いので、記録磁界の記録極性が変化したときそれに追従してFGLが回転方向を変えて再発振するまでの遅延時間が小さくなり、磁化遷移領域を狭くするうえで好ましい。これらのために、本発明の磁気ヘッドでは、矢印100の方向に移動するに従い、記録ギャップ部25内に設けたFGLが第1の記録磁極22からの記録磁界93と同期して所望の方向(図9では下向き)の磁化反転を促すアシスト磁界94が有効かつ瞬時に印加され、記録磁化の前歴によらず、急峻な“磁界アシストマイクロ波記録”による狭トラックかつ高S/Nの重ね書き、磁気記録が実現できることになる。
本実施例のリング型磁気ヘッドでは、図8で示したように起磁力が0.12AT程度になるとほぼ記録磁界は飽和するので、起磁力をその2倍の0.24ATとしても記録磁界は2割程度しか増えない。以下、この特徴を活かした具体的な調整手順について説明する。
まず、(i)垂直磁気記録媒体にリング型磁気ヘッドのみで記録できる下限値である臨界実効記録磁界96を与える臨界起磁力(臨界記録電流の値はIWC(0))を求め、それよりも所定量小さいバイアス起磁力(本実施例では0.12AT。バイアス記録電流の値はIWB(0))を設定する。バイアス記録電流でリング型磁気ヘッドを励磁しても、垂直磁気記録媒体には実質的な記録ができない。なおここで、図3に示した垂直磁気記録媒体のスウィッチング特性は垂直磁気記録媒体全体の巨視的特性の平均値であり、数十nmの記録トラックにおける微細領域での磁気記録においては、結晶粒単位の特性分布のためにスウィッチング磁界が分布をもつ。このため記録再生実験では、臨界記録電流による記録で最大出力が得られるわけではなく、急に大きな再生出力が得られ始めると考えてよい。
以上の調整後に、(ii)STOに所定のSTO励磁電流ISTO、リング型磁気ヘッドに上記バイアス記録電流を通電し、バイアス実効記録磁界93に高周波磁界94を重畳することで、垂直磁気記録媒体にそのスウィッチング磁界95よりも大きな実効記録磁界(93+94)を印加し、急峻な磁気記録を行うことになる。
なお、(iii)上記臨界実効記録磁界96とバイアス実効記録磁界93の差はFGLからの高周波アシスト磁界の実効値94よりも小さく、望ましくは1/2程度とすることが好ましい。なお上記で記録電流にはオーバシュートを設けてもよく、この場合の電流値はその最大値となる。
一方、従来の主磁極型磁気ヘッド構造では、主磁極体積が相対的に小さいために記録磁界強度が小さく、さらに記録磁界が略飽和するような記録電流領域では、起磁力を高めても記録磁界はほとんど増えず、逆に磁極の他の位置から記録磁界が漏れ出してしまう。そのため記録磁界が漏れ出す磁極位置近接の記録トラックの情報を劣化させ(ATI:Adjacent Track Interference、FTI:Far Track Interference)、本発明のようにSTOとの相補的な最適化はほとんどできなかった。
以上のように、高保磁力垂直磁気記録媒体と本発明の磁気ヘッドでは、高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界95が、実効記録磁界93と高周波アシスト磁界94の重畳実効記録磁界の略中間になるように、高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界と記録磁界、高周波記録磁界を調整し、記録時にはリング型磁気コアからの強いバイアス磁界にSTOからの急峻な高周波アシスト磁界を印加して磁気記録を行えるので、従来技術に比べて格段に優れた狭トラック磁気記録が可能となる。また本発明の磁気ヘッドでは、実効記録磁界の最大値と記録確定磁界との差も小さい(図3)ので、記録にじみの影響が小さく、狭トラック化の観点で好ましい。更に、材料、構造、膜厚などを適正化したFGLを用いることで、記録磁界勾配を3kOe/nm程度と極めて高くでき、極めて高いS/Nも同時に実現できるので特に好ましい。
以上、主に記録ヘッドの磁界ベクトルの軌跡に着目して記録磁化過程を議論してきた。詳細な解析では、マイクロ波アシストが印加されている状態での媒体磁化のスウィッチング特性、アステロイド曲線を用いて議論する必要がある。図12のシミュレーションによる計算結果から、1〜1.2kOe程度以上の高周波磁界が印加されている場合には、垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界の絶対値は、外部磁界の印加方向が30±15°程度であれば実質的にスウィッチング磁界は最低になると考えて良いことがわかった。一方、本発明のリング型磁気ヘッド磁極からの実効磁界では、図3に示したように45±15°(225±15°)で実質的にスウィッチング磁界は最小となる。このため、30〜60°中心の角度の磁界が印加されている微小な領域で残留磁化が確定することを考えると、これまでの記録ヘッドの磁界ベクトルの軌跡に着目した考え方で全体を整理して差し支えないことがわかる。本実施例では、さらに以上のような仮定を用いないLLGシミュレーションも並行して行い、上記の考え方で本質を定量的に正しく表現できていることも確認した。
図13〜15に、本発明による磁気記憶装置の磁気ヘッド及び垂直磁気記録媒体30の例の断面模式図を示す。ここで磁気ヘッドは、幅0.7mmのフェムト型スライダ50に搭載した。記録部のリング型磁極は、第1の磁極の主要部および第2の記録磁極24をFeCoNiとし、記録トラック幅TWWをそれぞれ変えた。図14と図15の磁気ヘッドでは、記録ギャップ部近傍で第1の記録磁極22の磁性材料を、FeCoNiからCoFeに変えた。また、クリアランス制御用に、抵抗100ΩのW薄膜によるTFC02を図示のように配置した。ヘッド保護膜51は、いずれもFCAC(1nm)である。垂直磁気記録媒体30は、基板上にスパッタリング法でCoFeTaZr軟磁性薄膜をRu中間層を介して形成した軟磁性下地層、配向性・結晶粒径制御層としてのRu層(10nm)、2層あるいは単層の磁性層、C保護層、潤滑層を形成したものである。各装置の詳細は以下のとおりである。
(1) 図13に示した磁気記憶装置の構成
・スライダ50:フェムト型(0.85×0.7×0.23mm)
・センサ素子12:TMR(Twr=20nm)
・第1の記録磁極22:FeCoNi(Tww=100,80nm)
・STO40:CoFeGe(10nm)/Cu(2.5nm)/Co/Ni(10nm)
・FGLの幅:WFGL=24nm
・媒体基板:3.5インチNiPメッキAl合金基板
・媒体構造:潤滑層(1nm)/C(1.2nm)/CoCrPt(SiTi)O2C(2nm)/CoCrPtSiO2C(10nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(10nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(10nm)
(2) 図14に示した磁気記憶装置の構成
・スライダ50:薄型フェムト型(0.85×0.7×0.2mm)
・センサ素子12:CPP−GMR(Twr=18nm)
・第1の記録磁極22:CoFe(Tww=100,65nm)
・STO40:Co/Fe(11nm)/Cu(3nm)/Co/Ni(9nm)
・FGLの幅:WFGL=22nm
・媒体基板:2.5インチガラス基板
・媒体構造:潤滑層(0.7nm)/C(1nm)/CoCrPtNi(SiTi)O2C(11nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(15nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(15nm)
(3) 図15に示した磁気記憶装置の構成
・スライダ50:薄型ロングフェムト型(1×0.7×0.2mm)
・センサ素子12:TMR(Twr=20nm)
・第1の記録磁極22:CoFe(Tww=100,50nm)
・STO40:Co/Fe(12nm)/Cu(2nm)/Ni/Co(8nm)
・FGLの幅:WFGL=20nm
・媒体基板:2.5インチガラス基板
・媒体構造:潤滑層(0.5nm)/C(1nm)/CoCrPtFe(SiTi)O2C(3nm)/CoCrPtAuSiO2C(7nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(20nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(20nm)
上記スライダを、図19を参照して後述する本発明のサスペンションに搭載し、本発明のHGAとした。上記垂直磁気記録媒体をスピンスタンド(記録再生特性評価テスタ)に搭載し、リング型磁気コアへの記録電流、スピン注入層からFGL層へのSTO駆動電流ISTO、TFC制御電力PTFCなどを調整、最適化してそれぞれの記録再生特性を評価した。その結果、記録トラック幅は、図13〜15の装置構成において、それぞれ27nm,25nm,23nmであった。リング型磁気ヘッドの磁極幅TWWは、図13の場合には100nm,80nm、図14の場合には100nm,65nm、図15の場合には100nm,50nmであり、図38に示した垂直記録ヘッド型マイクロ波アシスト記録とは異なり、いずれの場合にも記録トラック幅は、それぞれのSTO素子幅WFGLである24nm,22nm,20nmで決まっており、飛躍的な狭トラック化が達成できることが確認された。さらに詳細に記録トラックの磁化状態を評価したところ、その記録トラック端部においては、比較例の従来型マイクロ波アシスト記録技術に比べ記録磁化の湾曲も50%程度少なく、さらに記録トラック中央での記録磁化状態が良好で、S/Nが2dB程度良好であることが確認された。
[実施例3]
本実施例では、特に強い高周波発振磁界が得られる別の磁気ヘッドについて説明する。
強い高周波磁界を発生するためには、FGLの磁区構造発生を抑制しつつ、特に飽和磁束密度、膜厚が大きな構成とすることが好ましい。本発明者らは鋭意検討した結果、図16に示すように、Fe0.4Co0.6,Fe0.01Co0.99,Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeGe,CoMnGe,CoFeAl,CoFeSi,CoMnSiなどのホイスラー合金、あるいはCo/Fe,Co/Ir,Co/Ni,CoFeGe/CoMnGeなどの磁性人工格子などからなり、反磁界も加味してその磁化が面内に配向しやすい第1及び第2のFGL162,164を、Au,Ag,Pt,Ta,Nb,Ir,Al,Si,Ge,Ti,Cu,Pd,Ru,Rh,Cr,Mo,Wなどの非磁性導電性材料からなる結合層163を介して各FGLが強磁性的に結合するようにその膜厚を調整して積層することで、磁区構造の発生を抑制できること見出した。168a,168bは互いに強い強磁性結合をしている第1、第2のFGL層の磁化、160はスピン注入層166の垂直磁化である。
STOには直流電源により、スピン注入層166側から駆動電流を流し、FGLのマイクロ波発振を駆動する。ここで第1及び第2のFGL162,164の膜厚は、2〜25nmとすることが磁区構造抑制の点で好ましかった。図16中、161及び167は、Pt,Ir,Ru,Cr,Ta,Nb,Zrなどからなる単層薄膜、合金薄膜、もしくはこれらの積層薄膜による下地層及びキャップ層であり、165はAu,Ag,Pt,Ta,Ir,Al,Si,Ge,Ti,Cu,Pd,Ru,Cr,Mo,Wなどの非磁性導電性材料などからなる中間層である。
スピン注入層166は垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来、例えばCo/Pt,Co/Ni,Co/Pd,CoCrPt/Pdなどの磁性人工格子材料を用いることが好ましい。ただし、発振の安定性は若干失われるもののFGLと同様の材料を用いることも出来る。下地層やキャップ層の膜厚は厚い方が好ましいが、記録ギャップ長との兼ね合いで適切な膜厚が設定され、1〜15nmとすれば充分な効果が得られる。
結合層の膜厚は、例えばCoFeとCu,CoIrとTaの積層構造で、CuやTaを0.1nm以上0.7nm以下、もしくは1.2nm以上1.6nm以下、もしくは2.7nm以上3.2nm以下など特定の膜厚領域で良好な磁気的結合が確認され、特に0.2nm以上0.6nm以下とした時に最も良好な磁区制御効果が得られた。また、Co/Ni人工格子膜とTa膜、Co/Fe人工格子膜とCu膜、CoFeGe層とAu薄膜、及びCoMnGe層とAg薄膜の積層構造や、CoMnGeやCoFeGeを3層とした場合などでも同様な効果が得られた。ただし、Agを中間層とした場合には、その膜厚は大きめの方が好ましかった。さらに中間層をFeSiやNiFeなどの磁性薄膜としても類似の現象が認められたが、磁区構造抑制効果はあまり大きくはなかった。
以上のように、積層FGLでその磁区構造を抑制することで実効的にFGLの厚膜化を図ることが可能となり、1.8倍以上の強い高周波発振磁界を得ることができた。そこで本発見に基づき、CoFeGe,Co/Feからなり、膜厚10nmの第1,第2のFGL層を膜厚0.2nm,0.3nm,0.4nm,0.6nmのCuもしくはTaからなる結合層を介して積層し、さらに膜厚2nmのCu層を介して膜厚12nmのCo/Niスピン注入層と積層して形成したSTOを、記録ギャップ長GLを40nmとして、図13〜15に示す構造のリング型磁気コア内に設けたマイクロ波アシスト磁気ヘッドを作成した。なお、磁極22先端からFGL表面までの距離は10nm、STO素子高さは30nmとした。この記録部と、記録再生部、TFC部などを備えたスライダをサスペンションに設置してHGAとし、同図で説明した高保磁力垂直磁気記録媒体を用い、スピンスタンドで、それぞれのリング型磁気コアへの記録電流、STO駆動電流、TFC制御電力などを調整、最適化してその記録再生特性を評価した。その結果、いずれの磁気ヘッドの構造でも、実施例2に比べ相対的に低いSTO駆動電流でも実施例2のヘッドの場合に比べ0.5nm程度狭い狭トラックを形成でき、さらに1dB程度高い高S/N化も確認され、優れたマイクロ波アシスト記録が出来ることが確認された。
さらに結晶磁気異方性磁界Hkを2割程度高めた高保磁力垂直磁気記録媒体を用いて本実施例の磁気ヘッドの記録能力を評価したところ、実施例1及び2で説明した磁気ヘッドでは記録し難かったのに対し、本実施例の磁気ヘッドでは充分良好な記録ができ、実施例1及び2に対し、それぞれ2dB及び1dB程度高いS/Nが得られることが確認された。このように本実施例の積層FGLを有する磁気ヘッドは、FGL膜厚に略比例して高周波発振磁界を強くできるために記録能力が高く、7〜8kOe以上の非常に高い保磁力を有する垂直磁気記録媒体にも充分な記録ができることが確認でき、特に好ましかった。
[実施例4]
本実施例では、特に磁界勾配に優れたさらに別の構造の磁気ヘッドについて説明する。
図17に構造を示す。Fe0.4Co0.6,Fe0.01Co0.99,Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeGe,CoMnGe,CoFeAl,CoFeSi,CoMnSiなどのホイスラー合金、あるいはCo/Fe,Co/Ir,Co/Ni,CoFeGe/CoMnGeなどの磁性人工格子などからなり、反磁界も加味してその磁化が実効的に面内に配向しやすいFGL172と、膜面の面内方向に磁化が配向するようにせしめた磁性膜からなるスピン注入層174を、Au,Ag,Pt,Ta,Nb,Ir,Al,Si,Ge,Ti,Cu,Pd,Ru,Rh,Cr,Mo,Wなどの非磁性導電性材料からなりその膜厚を1〜4nmとした非磁性中間層173を介してFGL172とスピン注入層174の磁化が反強磁性的に結合するように構成した。そして、実施例3や通常のSTOとは逆にFGL172からスピン注入層174側に駆動電流を流すことで、FGL172だけでなくスピン注入層174の磁化も反強磁性結合しつつ高速で回転する構成とした。
なお、スピン注入層にはFGLと類似の材料を用い、さらにFGLよりも膜厚を薄くする、またFGLを、材料起因の磁気異方性磁界の大きさとスピン注入層の膜面垂直方向の実効反磁界が逆方向でほぼ拮抗するように設計することで、高い周波数でもより安定に発振させることができることを確認した。スピン注入層174とFGL172の膜厚は3〜30nmとすれば安定性結合し、同時に高速回転するので好ましい。図中、171及び175はPt,Ir,Ru,Cr,Ta,Nb,Zrなどからなる単層薄膜、合金薄膜、もしくはこれらの積層薄膜による下地層及びキャップ層で、その膜厚は厚い方が好ましいが、記録ギャップ長との兼ね合いで適切な膜厚が設定され、1〜15nmとすれば充分な効果が得られる。
以上のように、FGLだけでなくスピン注入層の磁化も高速で回転する本実施例のSTOは、直線偏向に近いがSTO直下で10%程度高い発振磁界、10〜20%程度高い磁界勾配を有するので、強いベース磁界を発生できるリング型磁極との相性は特に優れている。
実際、図17に示す素子構造で、FGL172を膜厚12nmのFe/Co磁性人工格子薄膜、スピン注入層174を膜厚9nmのNi/Co磁性人工格子としてFGLよりもその膜厚を薄くしたものを膜厚3nmのCuを挟んで積層した構造とし、図15に示したリング型磁極と組み合わせ、磁極22,24でSTOに通電できる構成とした。記録ギャップ長GLは45nm、磁極22先端からFGL表面までの距離は15nm、STO素子高さは20nmとした。また、FGL172とスピン注入層174の磁極24からの積層順は、下地層、キャップ層の膜厚などを適宜調整し、172/174,174/172の二通りについて検討した。
本実施例の記録再生部、TFC部を備えたスライダをサスペンション(後述、図19)に設置してHGAとし、図15で説明した高保磁力垂直磁気記録媒体を用い、スピンスタンドで、リング型磁気コアへの記録電流、FGLへの発振制御電流、TFC制御電力などを調整、最適化してその記録再生特性を評価した。その結果、実施例2に比べ1nm程度狭い狭トラック化、2dB高い高S/N化が確認され、記録磁界勾配が10%程度高いことに相当する、記録磁界の急峻性に優れたマイクロ波アシスト記録が出来ることが確認された。
さらに、その優れた記録磁界勾配を活かし、本発明のHGA(以下、磁気ヘッドと略称することがある)と図15で説明した高保磁力垂直磁気記録媒体を用い、トラックピッチをFGL素子幅の略1/2とした瓦記録方式(Shingled Write Recording)でその記録再生特性の評価を行ったところ、FGLのトラック幅24nm,22nm,20nmよりも格段に狭い15nm,14nm,13nm程度の記録トラックでの記録ができることが確認され、瓦方式ではない方式に比べ2倍程度の高いトラック密度で急峻な記録が出来ることが確認された。
[実施例5]
実施例1ないし4記載のように、本発明の磁気ヘッド、高保磁力垂直磁気記録媒体は高トラック密度化に優れた基本特性を有することがスピンスタンドによる評価で確認された。本実施例では、本発明の磁気ヘッド駆動制御装置及び磁気記憶装置の構成と、高保磁力垂直磁気記録媒体の記録再生に適した本発明の磁気ヘッドによる磁気記録過程、及びその特徴を活かした本発明の装置の調整法及び性能最適化法とその効果について説明する。
(磁気ヘッド駆動制御装置及び磁気記憶装置)
図18に、図13〜15に示した本発明の磁気ヘッド、高保磁力垂直磁気記録媒体を搭載した、本発明による磁気記憶装置及び磁気ヘッド駆動制御装置の実施例を示す。この磁気記憶装置は、スピンドルモータ500、高保磁力垂直磁気記録媒体501、高剛性アーム502、STO、記録再生素子や、クリアランス制御用TFCなどを有する磁気ヘッドスライダ503と高剛性サスペンション504を具備したHGA(以下、磁気ヘッドと略称することがある)505、アクチュエータ506、STOを駆動するための駆動信号(駆動電流信号又は駆動電圧信号)を生成するSTO駆動制御機能や記録アンプ、再生プリアンプなどを有する本発明の磁気ヘッド駆動制御装置(R/W−IC)508、記録変調部及び再生復調部として機能するR/Wチャネル509、マイクロプロセッサ(MPU)510、ディスクコントローラ(HDC)511、バッファメモリ521部を制御するバッファメモリ制御部516、ホストインタフェース制御部517、RAMなどを用いた制御プログラム及び制御データを格納するメモリ部518、フラッシュメモリやFROMなどを用いて制御プログラムを格納する不揮発性メモリ部519、ボイスコイルモータ(VCM)ドライバ、スピンドルモータドライバなどから構成される駆動部520、MPUのバス515などから構成される。
HGA505はヘッド駆動制御装置508に対して信号線接続されており、上位装置となるホスト(図示せず)からの記録命令、再生命令に基づくヘッドセレクタ信号で一つの磁気ヘッドを選択して記録、再生を行う。R/Wチャネル509、MPU510、HDC511、バッファメモリ制御部516、ホストインタフェース制御部517、メモリ518は一つのLSI(SoC:System on Chip)として構成される。512はこれと駆動部、不揮発性メモリなどを搭載した制御ボードである。なお必要に応じて高剛性サスペンションや高剛性アームには、振動吸収・抑制体などで構成され、いっそうの振動抑制を目的とするダンパが貼り付けられる。さらに、高剛性サスペンション504やスライダ503に、圧電素子、電磁素子、熱変形素子などによる位置微動調整機構(デュアルアクチュエータ、マイクロステージアクチュエータ)を設けることで、高トラック密度時の高速、高精度位置決めが可能となるので好ましい。
ただし、スライダ503にマイクロステージアクチュエータを搭載すると、図19に示すように、配線241の総数が10となる。ここで、垂直磁気記録媒体上を安定かつ高速でシークするためには、フレクシャやサスペンション上で配線241をシーク性能確保のために対称とする必要があり、スライダの上下で配線パターンを242,243のように5本ずつに2分する必要があり、このため記録用、再生用、マイクロアクチュエータ制御用などの配線のうち、いずれかを分割する必要がある。本発明のフェムト型のスライダ503のスライダ幅は0.7mmと小さく、スライダ接続パッド及び配線243の配線実装密度が極めて高くなり高周波信号の干渉が急増するため、接続パッド、配線の配列には注意が必要である。このため少なくとも、記録用2配線(W,W)、再生用2配線(R,R)、マイクロアクチュエータ制御用2配線(M,M)は、それぞれ隣接する組み合わせとして一つの隣接するペア配線として扱い、直流低電圧もしくは低電流駆動で再生信号系への干渉が少ない、TFC駆動用2配線(T,T)、STO駆動用2配線(S,S)の少なくとも一方を適宜分割して上記ペア配線の間に配置することが望ましい。更にペアとする配線は、積層配線もしくは同一平面上に並列に並べる構成のいずれでも良い。なお積層配線とする場合には、これら積層配線の間にTFC駆動用積層配線、STO駆動用配線を適宜に配置することが望ましい。
本実施例においては、高精度位置決めのためにマイクロアクチュエータをHGA505に搭載し、記録用2配線(W,W)、再生用2配線(R,R)、マイクロアクチュエータ制御用2配線(M,M)、TFC駆動用2配線(T,T)、STO駆動用2配線(S,S)に対して、図19に示した配線(1)〜(10)を順番にSTTWWSMMRR,TSSWWTMMRR,STTRRSMMWW,SWWTTSRRMM,TWWSSTMMRR,TRRMMSSWWなどとし、もしくは一配線を接地配線GとしてSTO配線と共有し、GTWWSMMRR,GTRRSMMWW,SGWWTMMRRなどとした。ここでGはTFC,STOの共通接地配線である。なお必要に応じマイクロアクチュエータの替わりに接触検知用のECS(Embedded Contact Sensor)(E,E)を設けてもよい。この場合も分割が可能で、例えば、TRREETSSWW,ETTRRESSWW,SEERRSTTWW、もしくは一配線をTFC配線と接地配線Gとして共有し、RRSSETGWWとしてもよい。
以上の配置により、磁気コアへの高周波記録電流記録時の高周波成分がSTOに混入したり、逆にSTO配線と再生素子配線の隣接部を接地線とすることでSTO配線からの影響が再生素子に回りこんで再生素子が誤動作することを抑制でき、常に安定した装置動作が可能となった。マイクロアクチュエータと再生素子の配線が隣接する場合も同様であった。また以上は、デュアルステージアクチュエータをサスペンションに設けた場合も同様であった。
図18に戻り、MPU510は磁気記憶装置の主制御装置で、記録再生動作や磁気ヘッドの位置決めに必要なサーボ制御などを行うものである。たとえば、MPUは、R/W−ICに含まれるレジスタ514にその動作に必要なパラメータを設定する。各種レジスタには、後述のように、所定の温度、垂直磁気記録媒体領域毎のクリアランス制御値(TFC投入電力値)、STO駆動電流値、予備電流値、記録電流値、それらのオーバシュート量、タイミング時間、環境変化に対する時定数などが、必要に応じて独立に設定される。
R/Wチャネル509は信号処理回路であり、情報記録時にはディスクコントローラ511から転送された記録情報を符号化した信号513をR/W−ICに出力し、情報再生時には磁気ヘッド505から出力された再生信号をヘッド駆動制御装置で増幅した後に復号化した再生情報をHDC511に出力する。
HDC511は、磁気記憶装置と上位のホストシステム(図示せず)とのインターフェースを構成し、垂直磁気記録媒体上に記録データ513を書き込む情報記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートをR/Wチャネル509に出力することなどにより、記録再生情報の転送制御、データ形式の変換、ECC処理を行う。
ヘッド駆動制御装置(R/W−IC)508は、ライトゲートの入力に応じて、少なくともR/Wチャネル509から供給される記録データ513に対応する少なくとも1種の記録信号(記録電流)を生成し、通電タイミングを制御されたSTO駆動信号(駆動電流信号又は駆動電圧信号)とともに磁気ヘッドに供給する駆動集積回路で、少なくとも、リング型ヘッド駆動回路、リング型ヘッド駆動電流供給回路、STO遅延回路、STO駆動電流供給回路、STO駆動回路などを含み、MPUから記録電流値、STO駆動電流値、TFC投入電力値、動作タイミングなどが設定されるレジスタを有する。ここで各レジスタ値は、垂直磁気記録媒体の領域、環境温度、気圧などの条件毎に変化させることができる。さらに、ホストシステムとのインターフェースを構成し、磁気記憶装置のメイン制御装置として記録再生動作(記録再生データの転送など)制御、磁気ヘッドの位置決めサーボ制御を実行するMPUからの直接の命令でバイアス記録電流を磁気ヘッドに供給し、さらにHDCから出力されるライトゲートのタイミングにあわせて記録動作を開始する機能も持たせることが好ましい。本発明のヘッド駆動制御装置では、これらにより、磁気記憶装置の動作を指示するMPUや情報記録を指示するライトゲートの入力に応じて予備電流や記録信号を供給する手段とSTO駆動制御手段の動作タイミング、それらの電流波形と電流値、クリアランス制御電力、及び記録磁極への予備電流、記録電流などを自由に設定できる。
以下、本実施例の磁気記憶装置における記録再生動作の概略を説明する。パソコンなどのホスト、上位システムからの情報の記録や再生の命令に従い、磁気記憶装置のメイン制御装置であるMPU510による制御で、垂直磁気記録媒体501が所定の回転数でスピンドルモータ500により回転し、さらに、再生素子により、予め磁気記憶装置の製造工程で垂直磁気記録媒体に記録されたサーボ情報からの信号を用いて媒体上の位置を検出するとともに、駆動部520のモータドライバによって駆動されるVCM522により高剛性アクチュエータ506が高剛性アーム502を介して磁気ヘッドHGA505を移動、制御することで、垂直磁気記録媒体の所定の記録トラック上に高速・高精度に磁気ヘッドを移動(シーク動作)させ、その位置で磁気ヘッドの安定したフォローイング動作を行う。次いでそのトラック上で、情報の記録再生がMPUのファームウェアプログラムによって以下のように行われる。
情報記録時には、ホストからの記録命令と記録データをホストインタフェース制御部517で受け取ると、記録命令をMPU510で解読し、必要に応じて受信した記録データをバッファメモリ521に格納した後、HDC511で所定のデータ形式に変換するとともにECC処理によりECC符号を付加し、R/Wチャネル509の記録変調系でスクランブル、RLL符号変換、記録補償(ライトプリコンペ)を行うとともに、HDCから垂直磁気記録媒体上に記録データ513を書き込むデータ記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートがR/Wチャネル509に出力される。このライトゲートの入力に応じて、R/Wチャネル509から供給される記録データ513に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御されたSTO駆動信号(駆動電流信号又は駆動電圧信号)とともに駆動信号がFPC配線507を通じて磁気ヘッド503の記録ヘッド部に供給され、垂直磁気記録媒体上の所定記録トラックにマイクロ波アシスト方法で記録される。
一方、情報再生時には、ホストからの再生命令をホストインタフェース制御部517で受け取ると、記録時と同様に選択、位置決めされた磁気ヘッド503により、垂直磁気記録媒体に記録された磁化情報が読み取られた再生信号がR/W−ICで増幅され、R/Wチャネル509に伝送され、復号化される。HDCでECC処理によりエラーを検出訂正した後、バッファメモリ521にバッファリングし、ホストインタフェース制御部517からホストに再生データが転送される。
(磁気記録過程)
高保磁力の垂直磁気記録媒体に本発明のSTOでマイクロ波アシスト磁気記録を行う際の、高周波磁界発生素子の各層の磁化状態を図20、図21に模式的に示す。ここで、矢印46a,46bはスピン注入層43の磁化、47a,47bはFGL41の磁化、矢印48a,48bはFGLの磁化47a,47bの回転方向、矢印49はSTOに電源44から供給される直流電流(STO駆動電流)の方向を示している。
ここでインギャップ型のFGL41においては、STO駆動電流49が印加されている状態で記録磁界が所定の水準を超えると、所定の遅延時間後にFGLが高周波発振して高周波磁界が垂直磁気記録媒体に印加される。記録電流の方向(極性)が反転すると、前とは逆向きの記録磁界を記録磁極が発生し、FGLはこの逆向きの記録磁界に応じて所定の遅延時間後に高周波磁界発振を起こす。以後、記録電流反転に伴って、これらの動作を繰り返すことになる。本発明では、図11に示したように、磁気コアからのFGL駆動制御磁界26a,26bがFGL面に垂直かつ均一に印加されるため、非常に効率よく強い高周波磁界を安定して発生できる。さらにFGL駆動制御磁界の強度も従来の主磁極型に比べ数十%大きいので、高周波発振磁界の記録信号への追従性(高周波回転磁界方向のスウィッチング性能)も高いという特徴がある。本特徴、本過程を踏まえて、垂直磁気記録媒体の磁化反転、すなわち磁気記録が行われる磁気記録過程について以下に説明する。
まず図20に、垂直磁気記録媒体の磁性層に記録された上向きの磁化37を下向きに書き換える場合の概念図を示す。この場合には、第1の記録磁極22から下向きの記録磁界21aが発生するようにリング型記録ヘッドのコイルに記録電流を通電する。このとき、強い発振制御磁界26aが記録ギャップ部内のSTOに略垂直かつ均一に印加され、スピン注入層43及びFGL41の磁化は左向きに配向する。このときSTOに事前に電流49を通電しておくことにより、記録信号に対して追従性良くFGL41の磁化47aが反時計回り(矢印48aの方向)に高速回転し、垂直磁気記録媒体の上向き磁化37が反時計回りに歳差運動するのをアシストする性質の強い円偏向高周波磁界45aがFGLの右側領域に発生する(図6参照)。最終的に、この高周波磁界(マイクロ波記録アシスト磁界)45aのアシスト効果に助けられ、下向きの記録磁界21aによって垂直磁気記録媒体の上向き磁化37は下向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。
なおここで、上記の発振周波数は発振制御磁界26aとFGL41の異方性磁界の和によって決まる。このため、例えば軟磁性材料や負の垂直磁気異方性材料でFGL41を構成した場合にはその異方性磁界が小さいので、FGL41の発振周波数は発振制御磁界26aの強さに応じて決まることになる。なお、図20で媒体磁化が下向きの場合にはこのようなアシスト効果は働かない。
次にこれとは逆に、磁気記録媒体の磁性層に記録された下向きの磁化38を上向きに書き換える場合について、図21の概念図を用いて説明する。まずスピン注入層43及びFGL41に、図20と逆向き(右向き)で、均一かつ強い発振制御磁界26bを印加し、スピン注入層43及びFGL41の磁化46b及び47bの向きを図20とは逆向き(右向き)になるように高速でスウィッチングさせる。この状態になると、通電状態のFGL41の磁化47bは、記録信号に従い磁気記録媒体から見て図20とは逆向き(矢印48bの方向)に高速回転することになる。この逆回転のFLG41の磁化47bから、FGLの右側の領域で図20とは反対の性質、すなわち下向きの記録磁化38の歳差運動をアシストする(上向きへの反転をアシストする)性質を有する円偏向高周波磁界が発生する。最終的に、応答性が良く強いこの高周波磁界45bによる効率的なアシスト効果により、上向きの記録磁界21bによって磁気記録媒体の下向き磁化38は上向きに反転し、情報の書き換えが行われることになる。
なお以上の磁化反転機構によって、[発明が解決しようとする課題]の項で述べた、磁気記録媒体の磁化が主磁極からの磁界でマイクロ波が印加される前に反転してしまうと、マイクロ波アシストの効果が得られないことが説明できる。
図3に、本実施例の高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界の極図形ベクトル軌跡(アステロイド)を示したが、その異方性磁界Hk、保磁力Hcが従来媒体に比べ30〜40%程度高く、図41から理解できるように、従来の主磁極型磁気ヘッドでは全く記録できない。これに対し、図1、図2や図13〜15に示した本発明のリング型磁気ヘッドでは、記録磁極の体積が従来の主磁極型磁気ヘッドに比べて圧倒的に大きいため数十%程度高い記録磁界が得られ、高磁界記録ヘッドとして適しているといえる。しかも、図3に示したように、磁界強度は面内記録磁界成分(θ=180°)が強く、x軸に対する対称性が高いので、第2、第3象限で磁化反転が起きる。記録が確定する第3象限では、210°付近で磁化反転が始まり、230°付近で記録が確定し(☆印)、非常に効率よく記録できることがわかる。すなわち、本発明のリング型磁気ヘッドは、従来の主磁極型磁気ヘッドでは充分に記録することができない高Hk・高S/Nの垂直磁気記録媒体に対しても磁化反転を促すことができる高いポテンシャルを有することが確認された。さらに本磁気ヘッドでは、最大実効記録磁界(602)と記録確定磁界(601)との乖離も小さく、記録磁界により記録トラック幅が過度に広がることも抑制できるため、特に好ましい。
しかし、実際の磁気記録過程においては、記録磁界強度に加え、最終的に記録磁界勾配でS/Nなどの記録密度関連特性が決まるので、記録磁界勾配を評価することが重要である。そこで本発明のリング型磁気ヘッドにおいて、垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界の角度依存性を考慮して実効記録磁界の急峻さを求めた。その結果を図22に示す。図22から、本発明の磁気ヘッドでは実効記録磁界勾配は100Oe/nmと従来技術(200−300Oe/nm)よりも低い値となっている。ただし、図8から分るように、TWW:180nm、GL:80nm、MMF:0.24ATでは、その実効記録磁界は15kOeと従来ヘッドの1.5倍程度にも達し、記録磁界勾配を高く出来れば、従来技術に対してこの効果だけで2倍程度以上の高記録密度化が可能となる。
このように本構造の記録ヘッドでは、15kOe程度以上の極めて高い記録磁界が容易に得られるが、従来、リング型磁極構造が垂直磁気記録で採用されなかったことからも理解されるように、その記録磁界勾配は従来主磁極型磁気ヘッドの数分の一と非常に低い。実効記録磁界勾配は、磁極の飽和しにくさ、磁界の引きの強さなどに関係する磁極構造敏感な特性であり、必要に応じてある程度の改善はできるが、大幅な向上は見込めないので、本構造の記録磁極は磁界勾配に問題があることが改めて確認された。
一方、本発明の高周波発振磁界の特徴は下記の通りである。図7に、膜厚を10nmとしたFGLから発生する高周波磁界の位置依存性を示した。マイクロ波アシスト記録に影響を与える高周波磁界のHx,Hyの効果は若干異なるが、アシスト効果を最適化する考え方ついては同じなので、以下単純化のために、高周波磁界Hxを例に説明する。FGLの断面積が小さいため、その磁界強度はHx成分で1.1kOe程度で、その磁界勾配も最大で100Oe/nm程度とこのままでは大きくはない。しかし、図12に垂直磁気記録媒体スウィッチング磁界の外部印加磁界角度依存性を示したように、30°〜40°近傍でのスウィッチング磁界は1.1kOe程度の高周波磁界のアシスト効果により、Hkの22〜27%にまで減少している。このため、その実効磁界強度は実磁界の約4倍の4kOe程度、実効記録磁界勾配は400Oe/nm程度に達する。
さらに例えば、FGL膜厚を14nmとして実磁界強度を1.5倍の1.5kOe程度にすると、図12でHFGLを1.5kOeとしたときの30°〜40°近傍でのスウィッチング磁界がHkの10%程度にまで激減することから、アシスト効果は飛躍的に向上し、実効記録磁界勾配は1.5kOe/nmにも達することになる。実際、FGLの膜厚やSTO駆動用直流電流値などを変えて図7と同様のシミュレーションを行い、FGLの膜厚を30nmとすれば3kOe/nm程度の実効記録磁界勾配が得られることも確認した。以上のことから、マイクロ波アシスト記録(FGL記録)においては実効記録磁界を最大3kOe/nm程度にまで飛躍的に高めることが可能であることがわかった。HYによるマイクロ波アシスト効果についても考え方は同様である。
以上から、磁界強度と磁界勾配に関して相補な関係にある両者をうまく組み合わせ、(1)ブロードだが従来ヘッドよりも極めて強い記録磁界をスウィッチング磁界ぎりぎりにまで印加し、強度は弱いが鋭いマイクロ波磁界をこのベースラインに重畳させることで、高保磁力垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界を超える急峻な実効磁界を生成し、磁気記録を行えるように設計すること、及び、(2)マイクロ波アシスト効果が発現する前に記録磁極からの磁界で垂直磁気記録媒体の磁化が反転することがないようにするとともに、FGLによる記録完了後には記録磁極からのブロードな磁界で減磁させないようにすること、が出来れば、それぞれの欠点を補いつつ両者の良いところをフルに引き出すことが可能となる。
これが本発明の主眼点であり、FGLからの高周波発振磁界(マイクロ波)で磁極磁界による記録をアシストする“マイクロ波アシスト磁気記録”というよりも、記録磁界でFGLによる記録をアシストする“磁界アシストマイクロ波磁気記録”というコンセプトに近い。その意味で、本方式の概念を第二世代マイクロ波アシスト記録と言うことができる。
(最適化法及び効果)
図13〜15で、記録ギャップ長を40nmとした本発明のリング型磁気ヘッドを、スウィッチング磁界が略11kOeである高保磁力垂直磁気記録媒体(図3)を用いて、磁気ヘッド選別用のスピンスタンドで評価、選別し、以下の手順で図18に示した磁気記憶装置に搭載して本発明の効果を確認した。
すなわち、まず高保磁力垂直磁気記録媒体を用い、磁気ヘッド選別用のスピンスタンドでクリアランスを1.5nmとして磁気ヘッドの記録再生実験、選別を行った。次いで、仕様に合格した磁気ヘッドに関して、その臨界記録電流IWC(0)、バイアス記録電流IWB(0)及び略最大の出力(飽和出力、Emax)が得られるSTO駆動電流ISTO(0)、及び実効的なトラック幅MCW(Magnetic Core Width)を求めた。ここで前述のようなスウィッチング磁界の分布などを考慮し、バイアス記録電流IWB(0)の値は、STO駆動電流をオフにしてIWB(0)だけで記録再生を行った場合に、その再生出力が飽和出力Emaxの10%以下、より好ましくは5%以下となるように調整することが好ましい。また必要に応じて、磁気ディスクを上記合格品相当の磁気ヘッドで選別することが好ましい。なお、本発明の媒体は従来型の主磁極型垂直磁気記録ヘッドでは記録再生がほとんどできないので、磁気ヘッド、垂直磁気記録媒体選別用のテスタ(スピンスタンドなど)は、本発明の調整の手順を備えたものとした。
次いで、リング型磁極の記録ギャップ内に配置されて、データ記録時に高周波磁界を磁気ディスク上に印加するためのSTOを有する複数の磁気ヘッドを、外乱に対して剛性を高めた高剛性サスペンション及び高剛性アームに設けた記録再生機能部(必要に応じてダンパも設けた)と、シュラウドなどの磁気ディスクフラッタ振動抑制機構、高慣性モーメントアクチュエータ、データ記録時に垂直磁気記録媒体への記録限界下限に略相当する起磁力をリング型磁極に供給する少なくとも一式の記録信号供給手段、データ記録時にSTOによって高周波磁界を磁気ディスク上に印加する少なくとも一つの駆動制御手段などを具備し、複数枚の磁気ディスクを設置して高品位のサーボ信号を同時に記録する機能を有するメディアサーボトラックライタに、上記磁気ディスクを複数枚組み込み、上記と同様の手順で求めたバイアス記録電流IWB(0)及びSTO駆動電流ISTO(0)を用い、MCWの値を参考にして所定のサーボ情報を記録した。サーボ情報の記録に関しては、例えば、所定の原盤の情報を基準としてまず等速でスパイラル上基準パターンを垂直磁気記録媒体上に記録し、これを元に4バースト1/2、2/3ピッチ、位相差バーストパターンなどからなるサーボ情報を垂直磁気記録媒体全面に記録した。ここで記録再生回路系などは前記スピンスタンドと該メディアサーボライタとでは異なるので、適正記録条件はそれぞれで異なる。また磁気ヘッドや垂直磁気記録媒体の評価は、生産効率向上のため、抜き取り検査、もしくは簡易検査で済ますこともある。そのため、本発明の狭トラック記録に適した最高品質のサーボパターンを得るためには、IWB(0)、STO駆動電流ISTO(0)、MCWなどのキーパラメータは、垂直磁気記録媒体に応じてスピンスタンドと同様の機能を付与したメディアサーボトラックライタ自身で、必要に応じて適宜評価、調整することが望ましい。
さらに上記本発明の磁気ヘッドを2本、垂直磁気記録媒体を1枚、図18に示した本発明の2.5型もしくは3.5型の磁気記憶装置に組み込み、まず媒体側のサーボトラック軌跡と磁気記憶装置の回転軌跡の不一致に対し、芯ずれによる一次偏心については各ゾーンでRRO(Repeatable Run Out)補正を行い、高次の偏心についてはフィードフォワード補正を行い、記録再生特性を評価した。その結果、記録トラック幅は図13、図14、図15の装置でそれぞれ27nm,25nm,23nmであった。リング型ヘッドの磁極幅TWWは、図13の場合には100,80nm、図14の場合には100nm,65nm、図15の場合には100nm,50nmであり、いずれも記録トラック幅は、それぞれのSTO素子幅WFGL24nm,22nm,20nmで決まっており、飛躍的な狭トラック化が達成できることが確認された。さらにS/Nも図36に示した比較例の主磁極型磁気ヘッドでの値にくらべ2dBほど高い値が得られ、スピンスタンドでの評価と同様に、高トラック密度化のみならず高S/N化にも優れた特性を示し、大容量の装置を提供できることが確認された。
また、本発明の磁気ヘッドと従来型ECC媒体を本発明の磁気記憶装置に組み込んで特性を評価したところ、従来の主磁極型磁気ヘッドと従来型ECC媒体の組み合わせに比べ1dB程度高い性能が得られ、本発明の磁気ヘッド、本発明の磁気ヘッド駆動装置を備えた磁気記憶装置及びその調整方法は優れた効果を示すことが確認された。
なお、図13〜15の各構成要素、例えばTFC22の位置、磁極構造、再生素子材料、FGLの幅、位置、などをそれぞれの構成で入れ替えても同様の効果が得られた。
本実施例では、スライダにデュアルステージアクチュエータを搭載しない例を用いて説明したが、例えば圧電素子からなるデュアルステージアクチュエータをサスペンションに搭載した場合には、前記の調整手段を追加するだけでよく、最適化の基本的な方法は変わらないことは言うまでもない。また垂直磁気記録媒体が1個、磁気ヘッドスライダが2個の場合を示したが、垂直磁気記録媒体1個に対し磁気ヘッドスライダが1個でも良く、また垂直磁気記録媒体、磁気ヘッドを目的に応じて複数個に適宜増やしても良い。また、本実施例では磁気ディスク装置(HDD)を例に本発明の構成を説明したが、磁気テープ装置など他の磁気記憶装置にも適用できることは言うまでもない。
[実施例6]
以上のように、本発明の磁気ヘッド、磁気記憶装置は本質的に高トラック密度化に優れた基本特性を有し、大容量の装置を提供できることがわかった。ところが、磁気記憶装置の量産時においては、実際の垂直磁気記録媒体の磁気特性やアステロイド曲線は製造ばらつきや環境温度などによって変化する。また磁気ヘッドにも、記録磁極や高周波発振素子の製造プロセスばらつきに起因する性能ばらつきや環境温度依存性が存在する。比較例で書き広がりのために狭トラック化が困難であったことから容易に理解できるように、従来のマイクロ波アシスト記録方法では全く問題にならないが本発明の狭トラック化記録方式で対策が必要となる本発明固有の課題として、図9に示したスウィッチング磁界95などの変化を抑制し、書きにじみ、書き広がりを抑制することがある。すなわち、マイクロ波アシスト記録方式のメリットを最大限引き出し、さらに、書き広がりによって隣接トラックの記録情報を劣化させることなく本発明の特徴である高いトラック密度での記録再生を行うためには、記録ヘッドや垂直磁気記録媒体の製造プロセスばらつきに起因する性能ばらつきを補償するとともに、垂直磁気記録媒体への記録磁化過程によって決まる記録磁化状態確定位置(図3の☆印)を装置レベルで微調整することが必須となる。
以下に、図13〜15で説明した垂直磁気記録媒体と本発明の磁気ヘッドの組み合わせにおいて、記録磁極22(コイル23)への記録電流IWB、STO40の駆動電流ISTO、並びにTFC02によるクリアランス補正の方法、さらには近接トラックに複数回記録した場合にも、狭トラックの磁化状態が幅広のリング型磁気コアからの記録磁界で実質的に劣化しないように装置パラメータを調整、最適化し、高い装置組立歩留りで高性能・大容量・高信頼の磁気記憶装置を供給する方法について説明する。
(最適化方法及び効果)
選別試験に合格した垂直磁気記録媒体と本発明の磁気ヘッドを、本発明のヘッド駆動制御装置を具備した1.8型、2.5型、3.5型などの磁気記憶装置に組み込み、磁気記憶装置でサーボトラックライトも含めて磁気記憶装置の調整を行う、本発明の実施例のフローチャートを図23に示す。本実施例ではスライダにMEMS型のマイクロステージアクチュエータを搭載し、磁気記憶装置にはその制御システムを搭載した。ここで、それぞれの装置の回転数は4200rpm,15000rpm,7200rpmとしたが、5400rpm,10000rpm,5400rpm、もしくは可変としてもよい。また垂直磁気記録媒体と磁気ヘッドの搭載数は、1と2,2と4,5と10としたが、その他の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
本実施例のヘッド駆動制御装置では、図25のタイムチャートに示すように、少なくとも情報記録を指示するライトゲートの入力に応じて記録信号供給手段とSTO駆動制御手段の動作タイミング、その通電の電流波形と電流値、クリアランス制御電力、及び記録磁極への記録電流などが設定される。このヘッド駆動制御装置、及び前記の磁気ヘッドを4本、垂直磁気記録媒体を2枚用いて図18の磁気記憶装置を組み立てた後に、まず垂直磁気記録媒体の所定の領域で、予め決めておいたバイアス記録電流IWB(00)及びSTO駆動電流ISTO(0)を印加した状態で、STOが垂直磁気記録媒体から所定のクリアランス(本実施例では1.2nmとした)を確保するようにTFCの投入電力を調整する(PTFC(0))。これは例えば、TFCに電力を順次投入し、垂直磁気記録媒体との接触を検知したら、その時の投入電力から所定のクリアランスに相当する電力を低減することで行う。なお、事前に、クリアランス、熱膨張量とTFCへの投入電力量との関係は明らかにしておくものとする。
次に、上記初期設定のバイアス記録電流IWB(00)、STO駆動制御電流ISTO(0)、TFC投入電力PTFC(0)で充分な記録が出来るか確認し、このベース記録電力ではSTOにより充分な記録が行えない場合には、充分な出力が得られるまで、記録電流を5%程度上乗せして上記作業を繰り返し、バイアス記録電流IWB(0)を決定する。バイアス記録電流決定後、記録STO幅(MCW)の値を参考に、IWB(0),ISTO(0),PTFC(0)でサーボ情報を垂直磁気記録媒体の所定位置に記録、必要に応じてMCWの値を再評価し、最終的に確認したMCWの値をベースに、1/2ピッチパターン、位相差パターン、ヌルパターンなどからなるサーボ信号を磁気ディスク全面に記録する。なお本発明のいずれの工程においても、マイクロステージアクチュエータは標準的な方法で制御した。なお、位相差パターンは信号振幅が小さくても高い位置決め精度が得られ、今後の更なる狭トラック化も見込めるサーボパターンとして、特に好ましかった。なお、以上の制御用機能は、磁気記憶装置にサーボ情報を記録する本発明対応のサーボトラックライト(STW:Servo Track writer)機能として特に設けておくことが好ましい。
さらに、垂直磁気記録媒体内周から外周に亘る各ゾーン(円周方向の領域)における所定のトラック位置、もしくは領域(ゾーン)で、図24に示したIWB,ISTO最適化のためのテーブルに記載のバイアス記録電流IWB(m)、STO駆動電流ISTO(n)の各組み合わせでIWB,ISTOを変えて記録再生特性を評価し、出力、オーバライト(O/W)、ビットエラーレートなどの所定の性能が特に良好となる組み合わせをいくつか決定する。なお図24のテーブルの値はパラメータ制御用テーブル(図26参照)としてメモリ518に格納しておき、必要に応じて適宜必要パラメータをレジスタ514に設定して評価を行う。得られたパラメータは、バッファ521もしくはメモリ518に格納する。また、ここではIWBを一定にしてISTOを変えた例を示したが、ISTOを一定にしてIWBを変える操作としても良い。ただし前者の方がより安定した結果が得られることが多かった。
次に上記と同様に、IWBのバイアス記録電流として、ATI,FTIなどの近接トラック記録干渉特性の最も少ない電流値を決定する。すなわち、STO駆動電流ISTOをゼロ(=ISTO(1))として記録磁極だけに通電し、再生出力の記録電流依存性を評価、最大出力Emaxの所定の値MIN(例えばEmaxの5%)以下となる記録電流IWBを求め、前記の組み合わせの中でこのIWBを含む組み合わせを選定する。複数の組み合わせがある場合には、最も低いIWBの組み合わせを最適値として選定した。ここで近接トラック記録干渉特性(ATI,FTI)を同時に評価し、最も良好な耐ATI特性が得られる最適のIWB(m),ISTO(n)の組み合わせを選定してもよい。なお前者の方法で、万一ATIが所定の値を満たさない場合には、上記MINやIWBの値を適宜下げて調整、同様の最適化、性能確認を行えばよい。得られたパラメータはバッファ521もしくはメモリ518に格納する。
次いでこのパラメータの組み合わせに対し、TFCへの投入電力PTFC、クリアランスを再度計測し、装置仕様の所定の値(ここでは1nmとした)よりもクリアランスがずれていれば(投入電力PTFC(i)が所定値の範囲でなければ)、記録電流IWBを一水準下げてSTOへの通電量ISTOを最適化し、再度クリアランスが所定の範囲にあるか評価する。このプロセスをクリアランスが所定の範囲に収まるまで繰り返し、IWB,ISTO,PTFCの最終的な最適値を決定する。なお、ここでは説明しなかったが、記録パターンに応じ記録電流IWタイミングを補償する、いわゆるライトプリコンペ(write pre-compensation)も自動的に行うものとする。以上の最適値は、メモリ部518にパラメータテーブルとして格納され、記録再生動作時にMPUによりヘッド駆動制御装置のレジスタに適切に設定され、磁気記憶装置動作の制御に用いる。
以上の調整を行った本実施例の磁気記憶装置の特性を評価したところ、トラック密度、記録密度ともに極めて良好で、それぞれで2.2Tb/in2,2.5Tb/in2,2.8Tb/in2の記録密度が確認され、従来のマイクロ波アシスト技術の1.5倍程度の高記録密度が達成できることが確認された。さらに同一トラックで200回記録再生を繰り返し、近接トラックでのビットエラーレート(Bit Error rate)を評価したが、図13、図14、図15の実施例装置のいずれの場合にも、劣化量は誤差の範囲で、実用上問題となる劣化は認められなかった。さらに、磁気記憶装置の製造歩留りも従来技術に比べ20ポイント以上高いことが確認され、大容量・高信頼性の磁気記憶装置が高い歩留りで得られることが確認された。なお、マイクロアクチュエータを動作せしめた場合には、非動作の場合に比べて位置決め精度やパフォーマンスが15%程度向上したので特に好ましかった。
なお、本発明のヘッド駆動制御装置を具備した磁気記憶装置に、VCMで評価した保磁力が5〜5.5kOe程度の垂直磁気記録媒体を搭載せしめた場合には、1.1Tb/in2,1.2Tb/in2,1.4Tb/in2と1Tb/in2程度と、1Tb/in2以上の記録密度が実現できることが確認された。
[実施例7]
本実施例では、さらに本発明の別の高トラック密度磁気記憶装置の例を示す。
図13で説明した構成で、その記録ギャップ部22近傍の構造を図27〜30に示すようにした磁気ヘッド、図14で説明した高保磁力垂直磁気記録媒体、さらに本発明のヘッド駆動制御装置などを用いて、図18に示した本発明の磁気記憶装置を組み立てた。図27〜30において、上の図は側断面図、下の図はABS面から見た図である。
ここで、第1、第2の記録磁極22,24は、CoFe高飽和磁束密度の軟磁性膜を単層、メッキ法で形成した。図27は、STO40(特にFGL)を第1、第2の磁極22,24の略中央に設置し、記録磁界とFGLの対称的な特性を活かした構造である。図28は、STO40(特にFGL)の位置をギャップ中央に対し非対称とし、例えばFGLを第1の磁極22の近傍に設置した構造である。図29は、第2の磁極をSTOと同じトラック幅の突起部を有する構造とし、該突起部に接してSTO40(特にFGL)を第1、第2の磁極の略中央もしくは第2の磁極近傍に設置し、記録磁化による記録磁界領域とFGLのアシスト磁界領域を略一致せしめた構造である。図30は、第2の磁極にSTOの幅よりも広い凹部を有する構造とし、該凹部に実質的に囲まれるようにSTO40(特にFGL)設置し、FGLのサイド磁界をより急峻にした構造である。なお第1、第2の磁極をSTO駆動用端子と共通にするため、STOと磁極は導電性材料60a,60bで電気的に接続されており、磁気ヘッドのバックギャップ部(図1の27近傍)では電気的に絶縁されている構造とした。ここでFGLの幅WFGLを40nm、再生素子幅Twrを33nm、リング型記録磁極22aの幅TWWを120nmとした。
磁気記憶装置は、高さ略5mm、5400回転、垂直磁気記録媒体1枚、磁気ヘッド1本の2.5型HDD、及び、高さ26.1cm、5400回転、垂直磁気記録媒体5枚、磁気ヘッド10本の3.5型HDDとした。さらに図23に示したフローチャートにより、磁気記憶装置によるサーボトラックライトも含めて磁気記憶装置の調整を行った。これらの磁気記憶装置の特性を評価したところ、図27〜30のいずれの構造でも、実施例5と同様に記録トラック幅はFGLの幅で決まり、それぞれ44nm,43nm,42nm,42nmとなり、良好な狭トラックマイクロ波アシスト記録が出来ることが確認され、特に、図29及び図30の構造では、記録磁界幅の広がり抑制効果が高く、より高い狭トラック効果が認められた。S/Nは、図27の構造に比べ、図29及び図30の構造で1dB高く最も優れた特性を示し、図28の構造では0.5dB良好と、やや良好な特性を示した。
さらに上記の記録部構成で再生素子12の幅を20%狭くし、再生素子特性の厳しい選別を行った磁気ヘッドと、図15で説明した構成で、保磁力を10%高めた高保磁力垂直磁気記録媒体と、本発明のヘッド駆動制御装置などを搭載し、トラックピッチを20%狭くした瓦記録方式(Shingled Write Recording)と図23に示したフローチャートによる調整法を組み合わせて装置を組み立て、調整した。その結果、FGLのトラック幅よりも狭い記録トラック幅で記録ができ、前記装置に比べ20%程度高いトラック密度、10%程度高い線記録密度が実現出来ることが確認された。これとダンパ付の高剛性サスペンション・アーム、垂直磁気記録媒体の回転振動を抑制する装置シュラウドなどを組み合わせることで、位置決め精度を15%向上でき、瓦記録方式に相応しい高精度位置決めが実現できた。
[実施例8]
本実施例では、室温での動作だけでなく装置保証温度範囲全域でも優れた特性を有する装置を提供できる磁気記憶装置の実施例について説明する。
垂直磁気記録媒体の保磁力はおよそ20Oe/℃で変化する。その為、室温で6kOe程度の高保磁力垂直磁気記録媒体では、磁気記憶装置の環境温度が80℃から−20℃まで変化すると、その保磁力は2kOeも変化することになる。このように外部環境変化によって保磁力が30%程度も変化してしまうと、磁化反転アステロイド曲線が大きく変化するため、図9で詳しく説明したように、高トラック密度記録に適するように磁化反転を決めるベースとなる実効磁界、起磁力の適正値も大きく変化することになる。そこで、第2世代マイクロ波アシスト記録方式により狭トラック記録を可能とする本発明においては、温度変化に追従して起磁力を調整することが特に重要となる。
本実施例の磁気記憶装置は、実施例1〜7で説明した磁気ヘッド、垂直磁気記録媒体を用いて実施例5,6と同様に磁気記憶装置を組立てたが、さらに追加機能として、外部環境及び装置内部環境検知機能により、装置外部及び内部の環境変化を検知した情報をもとに各パラメータを再調整する補正機能をもたせた。本実施例では、磁気ディスク装置HDDの形態を例に、図18に示したHDDディスクエンクロージャ内に設置された信号供給用配線部FPC507に設けられた温度センサなどにより検知される環境温度に応じて、特にバイアス記録電流IWB、STO駆動制御電流(必要に応じて制御電圧でもよい)、TFC駆動電力を調整する機能を持たせたヘッド駆動制御装置(R/W−IC)を図18の磁気記憶装置に搭載することで、これを実現した。
バイアス記録電流の調整は、本機能を用いて次のようにして行った。すなわち、装置製造時において環境温度を変化させる際の初期製造試験時などにおいて、温度毎に記録電流の最適化を行い、装置固有のパラメータを抽出して、メモリ518に温度パラメータテーブルとして保管しておく。そして、装置出荷後の装置使用環境において、装置内部環境温度が一定量変化した場合には、該パラメータをヘッド駆動制御装置(R/W−IC)のレジスタに設定し、適宜記録条件を変えるものである。なお、より簡略な方法としては、温度領域を例えば5つに分割し、各温度領域で図31に示すように例えばバイアス記録電流IWBを調整しても良い。ここで本実施例では、領域分割温度を−10度,10℃,30℃,55℃とした。
図32には、装置動作環境が変化する場合、温度領域をQ+1に分割してバイアス記録電流、STO駆動電流、TFC投入電力を調整する、本発明のパラメータ設定のより一般的な実施例をフローチャートとして示す。
まず、全温度範囲をT1,T2,…,TQの境界温度によってQ+1(Q:0,1,2,…)の領域に分割する。Q=0の場合には分割しない。各温度領域T≦T,…,Tq-1<T≦Tq,…,TQ<Tを、それぞれの温度領域A[1],…,A[q],…,A[Q+1]として定義する。
まず、各パラメータを、磁気記憶装置の製造工程で図23に示したフローにより決定し、バイアス記録電流、STO駆動電流、TFC投入電力の初期値を、それぞれIWB(IN),ISTO(IN),PTFC(IN)に設定する。さらに、その製造工程や、検査工程など所定の工程で、上記温度領域で適切な代表点を決め、それら代表温度において最適なパラメータを予め図23に示したフローにより求め、メモリ518にパラメータテーブルとして保管しておく。そして、温度が所定の設定値を越えて変化した場合には、該パラメータをヘッド駆動制御装置(R/W−IC)のレジスタに設定し、適宜記録条件を最適化する。なお、パラメータテーブルには装置内常温30℃でのパラメータを登録、記録再生時には温度センサを用いて装置内温度Tを読み込み、常温との温度差ΔTを算出し、予め多数の試料を用いて実験で求めておいた、単位温度当りの平均的な変換係数を乗算して求めた温度補正値を加えて温度補正し、各温度でのパラメータを決定しても良い。
次いで、フィールドでの磁気記憶装置の実動作環境において、外部環境温度が変化し、磁気記憶装置の磁気記録ヘッド、及び垂直磁気記録媒体を囲む装置内部環境温度Tが温度領域A[q]となれば、記録磁極に通電するバイアス記録電流を、それぞれの温度領域に対応した電流値IWB(q)に変更し、記録再生を行う。一般に、TFC設定値やSTO駆動電流の最適値も温度に応じて変化するので、TFC投入電力PTFCやSTO駆動電流ISTOも連携を取って調整するとさらに好ましい。また調整を行う場合には、安定するまでの時定数が0.1〜0.2ms程度と長いTFCの制御電力の変更を最初に行うなど、動作タイミングをずらしてパラメータの変更を行うことが極めて重要である。
なお、ここでは各領域で一つの代表パラメータで動作せしめる例を示したが、パラメータを内挿もしくは外挿し、もしくは、各パラメータを近似曲線で近似し、その近似式に従って該温度でのパラメータ値を決定し、動作条件をその値に設定してもよく、これらの方がより好ましかった。また、本実施例ではパフォーマンスを重視し、環境温度が2℃以上変化した時に設定値を変更したが、用途に応じて初期設定を変更しても良いし、適宜学習効果を付与してもよい。
記録磁界幅の広がり抑制効果の高い図27の磁極構造で、FGLを30nm、記録磁極幅を80nmとしたリング型マイクロ波アシスト磁気ヘッドと、FGL、主磁極幅とも30nmとした従来の主磁極型磁極によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドを、本発明のヘッド駆動制御装置を搭載した磁気ディスク装置に搭載し、まず図41に示した実効異方性磁界12kOeの垂直磁気記録媒体を用いて、各温度でその特性を評価した。その結果、保磁力が高くなる低温領域でいずれのヘッドでもマイクロ波アシスト効果がより大きくなり、例えば−10℃で、従来の主磁極型磁気ヘッドと本発明のリング型磁気ヘッドの記録トラック幅はそれぞれ35nm,33nmであり、それぞれ1.5桁、3桁程度のSER改善が認められた。しかし、従来の主磁極型磁気ヘッドでは、室温での評価合格品であっても、製造時の加工プロセスのばらつき(STO高さなど)に応じて、低温でのマイクロ波発振動作が不良になるものや、大きな性能向上が認められないものが10ポイント程度存在した。これは、記録ギャップ部内でのSTO駆動磁界の方向、分布が大きいために、FGL発振特性の温度依存性が見かけ上大きくなるためである。これに対して、本発明のリング型マイクロ波アシスト磁気ヘッドでは、このような不良、劣化は全く認められなかった。また高温では、いずれのヘッドでも問題は確認されなかった。以上のように、本発明のリング型ヘッドでは、温度環境変化に対しても優れた特性を有することが確認できた。
次に、図3の実効異方性磁界Hkが16kOeの垂直磁気記録媒体を用いて同様の評価を行ったところ、比較例の主磁極型磁極によるマイクロ波アシスト磁気ヘッドではオーバライト(O/W)が20dB以下と充分な記録が行えなかったのに対し、本発明のリング型マイクロ波アシスト磁気ヘッドでは、実施例2で説明したように、40dB以上の極めて高いO/Wを確保でき、充分な記録が行えることを確認した。
そこで、本発明のリング型マイクロ波アシスト磁気ヘッドを搭載した磁気ディスク装置において、各温度で本実施例の調整を実施する場合としない場合とで、垂直磁気ディスクの全ゾーンでの平均的なSERを評価した。その結果、リング型ヘッドからの磁界だけで記録し、その大きさを調整しただけでは、最大でもO/Wは20dB(55℃)〜10dB(−10℃)程度と十分な記録が行えないにも関わらず、マイクロ波と同時に本実施例の調整法に従ってリング型ヘッドのバイアス電流、バイアス磁界を調整した場合には、−10℃で2桁SERが向上することが確認された。さらに高温では、調整を行わない場合には、磁気ヘッドに通電することによる発熱で磁極が突出し、クリアランスがばらつきの下限の磁気ヘッドでは、3〜5%程度の割合で、垂直磁気記録媒体が接触してヘッドや媒体が磨耗することがあり、特性劣化、信頼性の面で問題が発生したが、本調整法により、SERやO/Wの劣化を引き起こすことなくクリアランスを余裕を持って確保でき、信頼性の問題がないことを確認した。
通常、磁気記憶装置内の温度変化は緩慢で、上記実施例の調整で対応可能であるが、劣悪な環境化で急激な環境温度変化が生じた場合には、追従しきれないことがある。このような場合には、垂直磁気記録方式の磁気記憶装置では、再生機能に比べてより温度感度の高い記録機能関係で問題を生じることが多く、その対策が有効である。外部環境温度の変化をディスクエンクロージャ外部に設けた温度センサを用いて検知し、内部環境温度と比較することで、予め実験的に求めておいた予測式を用いて温度変化から予測されるディスクエンクロージャ内部の特性変化、一定時刻後の必要パラメータを計算した。そして、メモリからヘッド駆動制御装置のレジスタに適切なパラメータを適宜格納して補償するように、少なくともバイアス記録電流、STO駆動電流を変更し、特性が過渡的に変化して安定するまで、パラメータテーブルを用いて適宜バイアス記録電流、STO駆動電流を定常温度に対応する設定値に制御することで、特性が変化して再記録を行うなどの回転待ち(5ms程度のロス)動作によるパフォーマンスの劣化を最小限にすることができた。さらに、緩急変化に追従できずに過剰なバイアス電流となり、クリアランス減、ヘッド磨耗、信頼性劣化といった問題に対しても対応することもでき、装置のロバスト性を格段に高めることができた。
同様に、急激な気圧変化が生じた場合には、エンクロージャ内外に気圧センサを設けることで、気圧変化から予測されるクリアランス変化に対応して、これまでの実施例で説明してきたように、予測される適切なパラメータをメモリからヘッド駆動制御装置のレジスタに格納し、バイアス記録電流、STO駆動電流、TFC投入電力を変更し、クリアランスが過渡的に変化して気圧変化に追従するまで、適宜バイアス記録電流、STO駆動電流を適切に制御することで、この場合にも同様にパフォーマンスの劣化を最小限にすることができ、磁気記憶装置のロバスト性を格段に高めることができた。
さらに、記録性能が突然劣化する現象が一定期間内で繰り返され、有機物の異物(スメア)が付着して一時的にHGAの浮上量、クリアランスが変化する状態になっていることが疑われた場合にも、所定の領域に退避して異物を除去する、もしくは元の状態に復帰するまで、バイアス記録電流、STO駆動電流を該クリアランスに相当する値に調整することで、磁気記憶装置のロバスト性を格段に高めることができた。
上記の実施例では磁気ディスク装置(HDD)を例に本発明の構成を説明したが、磁気テープ装置など他の磁気記憶装置にも適用できる。
[実施例9]
図33に、本発明のマイクロ波アシスト磁気ヘッドの別の実施例を示す。この磁気ヘッドと、図15で説明した垂直磁気記録媒体を図18の磁気ディスク装置に組み込み、ディスクエンクロージャ内に設置された信号供給用配線部FPCに設けられた温度センサなどにより検知される環境温度の変化に対応して、バイアス記録電流IWB、TFC投入電力PTFC、STO駆動電流ISTOを調整する別の実施例を示す。
本実施例の磁気ヘッドは、図15の基本構成で、コイル巻き線数を4とし、TFC素子02e,02fを記録素子側、再生素子側にそれぞれ設け、記録素子、再生素子のクリアランスをそれぞれ調整できようにした。これは、高周波磁界のクリアランス依存性が、特にリング型磁極からの記録磁界のクリアランス依存性に比べて大きいので、性能改善に効果かある。ここで2つのTFCは配線を独立に設けても良いが、記録ヘッド、再生ヘッドの両方が動作時に最下点になるように、NiCr,Wなど抵抗値の異なる別材料を用いる、もしくは組成、線幅や膜厚を変えて抵抗値を調整するとともに、TFC素子の位置をそれぞれ最適化し、両者を直列につないで動作するようにすることで、端子数を減らすこともできる。
図18に示した磁気記憶装置に、上記スライダをHGAとしたものを6本、図15で説明した2.5型垂直磁気記録媒体を3枚、毎分15000回転の3.5型の筐体に組み込み、実施例6で述べた方法で調整した。なお本装置は、製造時に実施例5で説明した方法で調整し、さらに実施例6の方法と同様の方法で−10℃、10℃、30℃、55℃、及び80℃で最適のTFC投入電力、バイアス記録電流IWB、及びSTO駆動電流ISTOを求めた。さらにこれらの値をスムーズにつなぐ近似曲線、例えば4次近似曲線の係数をパラメータテーブルに格納した。図34に各温度でのその設定結果を示すが、低温でバイアス記録電流IWB、TFC投入電力PTFC、STO駆動電流ISTOいずれも線形性良く増大するように設定され、全体の制御系が安定であることがわかる。図中の星印、菱形のデータについては実施例10で説明する。また、TFC02e,02fも同様の温度依存性を示し、直列配線でも問題ないこともわかる。ここで、実施例8と同様に、パラメータテーブルには装置内常温30℃でのパラメータを登録、記録再生時には温度センサを用いて装置内温度Tを読み込み、常温との温度差ΔTを算出し、予め実験で求めておいた、単位温度当りの変換係数を乗算して求めた温度補正値を加えて温度補正して各温度でのパラメータを決定しても良い。
本実施例の磁気記録装置において温度環境を変えて評価したところ、いずれの温度でも記録、再生素子のクリアランスのバランスがよく、記録再生条件が適正化できるので、TFC素子を一つとした実施例9の場合に比べて各温度での平均的なSERが、全ての温度で0.5桁程度向上し、良好な動作が確認された。なお同様の効果は、本発明の磁気ヘッド駆動装置を具備した磁気記憶装置に本発明の磁気ヘッドと現在標準的に用いられている垂直磁気記録媒体を搭載しても認められた。
[実施例10]
従来の垂直磁気記憶装置では、高周波で記録素子を励磁(高密度記録)すると、磁気ロスのためにTFCと同程度にまで記録素子が発熱し、磁極部が突出する。そこで一般に、このような通電記録動作を前提とした熱平衡状態でTFCの投入電力(すなわち主磁極突出量、クリアランス)を調整、設定している。このため、磁気記憶装置が低温休止状態や、低温もしくは常温で一定時間フォローイングしているなどの非記録動作状態にある場合には、ホストシステムからの記録再生命令に基づきHDCから出力されるライトゲートのタイミングで記録素子に通電、記録を開始しても、主磁極が相対的に縮んでいるために媒体とのクリアランスが大きく、記録開始直後には記録不良に陥りやすいという深刻な問題があった。
FGLからの高周波磁界は主磁極からの記録磁界に比べて小さく、またそのスペーシング(クリアランス)依存性も主磁極からの記録磁界よりも大きい。そのため主磁極型磁気ヘッドによるマイクロ波アシスト記録の初期検討時に、この現象は従来のマイクロ波アシスト方式においてはさらに深刻な問題であることが判明した。本実施例の磁気記憶装置では、バイアス記録電流をリング型磁気コアに通電しても垂直磁気記録媒体の減磁などが起きないという特徴をフルに利用し、バイアス記録電流を記録に先駆けて所定のタイミングで通電して、記録動作開始時には素子温度、クリアランスが実用上問題のない値となっているように調整することで、本問題を解決できた。
以下、本発明の第2世代マイクロ波アシスト記録方式による磁気記憶装置が低温休止状態もしくは低温もしくは常温での非記録動作状態などにあるときに、コンピュータなどのホストシステムからの記録再生命令がでた場合を例に、本実施例の調整方法について説明する。
従来の磁気記憶装置では、記録動作はHDCから出力されるライトゲートのタイミングで開始される。ライトゲートは、ヘッド駆動制御装置に供給され、記録情報に応じた記録電流を磁気ヘッドに供給する標準機能しか有しない。そこで本実施例では、コンピュータなどのホストシステムからの記録再生命令に直接対応して予備動作電流とバイアス記録電流を供給する機能を、図18で述べた磁気記憶装置の磁気ヘッド駆動制御装置508に付与した。さらにこの機能を用い、以下に述べるように、ホストシステムとのインターフェースを構成し、磁気記憶装置のメイン制御装置として記録再生動作制御、磁気ヘッドの位置決めサーボ制御などを実行するMPU510からの直接の命令により、ヘッド駆動制御装置508で予備動作電流を磁気ヘッドに供給し、さらにHDC511から出力されるライトゲートのタイミングにあわせて記録動作を開始するようにした。MPUはヘッド駆動制御装置に含まれる各種レジスタに、ヘッド駆動制御装置の動作に必要な情報(パラメータ)である予備電流値及びその電流パターン、バイアス記録電流値、オーバシュート値、駆動電流値(駆動信号のレベル)などを独立して設定する。
以上の機能を持たせた磁気記憶装置を、実施例5,6で述べた方法で組み立て、調整して本実施例の磁気記憶装置とした。以下に、本装置の基本動作について説明する。装置動作は、エンクロージャ内の温度センサを用い、記録磁極と高周波磁界発振素子と垂直磁気記録媒体の環境温度を測定することから始める。簡単のために環境温度が0℃であった場合について、図18の装置構成図、図34の設定パラメータ図、図25のタイムチャートを用いて、磁気記憶装置が一定時間記録動作休止状態にあり、そこから記録動作を開始する本発明の調整シーケンスの概要を説明する。
コンピュータなどのホストシステムからMPU510に命令が出されると、実施例9で説明した調整法で求めた図26のパラメータテーブルを用いて、媒体所定のゾーンZjの記録トラックにある所定のセクタに磁気ヘッドHiで記録を行うように、環境温度に対して最適の電流値IWB及びISTO、さらにTFC投入電力PTFCの値の組合せを決定する(図34の☆印)。このパラメータ決定動作は、装置が一定時間休止状態に入ったときなどに実施しておいても良い。なお図25では、フォローイング時にもTFCはこのパワーを投入して待機している例を示したが、待機時間が所定の時間を超えた場合、その待機時間に応じて段階的に投入電力を落としておき、記録命令と同時にPTFCを投入すれば、フォローイング時のヘッド接触磨耗などによる耐摺動信頼性劣化を回避できるので、より好ましい。ただし、TFCを動作させてから熱が定常状態になり磁極突出量が一定になるのには0.1ms程度の時間を要するので、記録動作開始までこの所定時間記録動作開始を遅らせる必要がある。
MPU510からヘッド駆動制御装置508に、TFC02e,02fには0℃での上記TFC投入電力PTFC(図34の☆印)、リング型磁気コアにはバイアス記録電流IWBの所定値(図34の☆印)の予備動作電流IPRを通電する命令を出す。図25では、IPRをIWBの75%とした場合を示した。この時、予備動作電流の信号パターンは平均的な記録パターンのものであればどんなパターンでも良いが、記録電流の絶対値を極力小さくするために記録周波数は高くする方が好ましく、ここでは1Tの最短ビットパターン(101010・・)とした。さらにオーバシュートも記録時の設定でよいが、状況に応じて適宜調整してもよい。また、信号STO駆動電流ISTOはゼロ、もしくは逆方向の微小印加とした(図34の☆印)。なお、これら所定の値は事前に実験的に評価、決定しておき、必要に応じて適宜学習して決定できるようにプログラミングしておくことが好ましい。
さらに適切なタイミング、遅延時間TWGで、記録のタイミングを指示するためのライトゲートをR/Wチャネル509に出力するようにHDC511に命令を出し、この記録のタイミングに応じて所定の値のISTOをSTOに通電し、さらに記録のタイミングで記録情報を含むバイアス記録電流IWBをリング型磁気コアに通電して記録を行うように設定した。記録コアに通電して温度が定常状態になる時間は記録条件にもよるが概ね0.01〜0.1ms程度であるので、記録再生素子の周辺温度が略定常状態になり、安定した記録ができるようになるまでの遅延時間TWGは、装置の外部環境、周速、転送速度に応じて数セクタ(最大0.1ms)程度の範囲で調整することで、前記記録不良の問題を完全に回避できた。図25では4kBセクタフォーマットの場合に2セクタ遅延させる例を示したが、1セクタでも良かった。なおISTOを通電するタイミングは、記録バイアス電流IWBを通電するタイミングよりもtBだけ早くすることがSTOの安定発振のために好ましく、逆にISTOの通電を終了するタイミングはtAだけ遅くすることが書き込み不良をなくすために好ましい。この遅延時間やタイミング時間は、装置の用途や製造時のプロセス設定時に適正化、一定値を初期設定しておいても良いし、装置使用環境に応じて適宜調整できるようにしておいても良い。なお定常状態では、このような調整は特に必要はないことは言うまでもない。またTFCで突出量を調整し、この問題の回避を試みたが、TFCが通電後に突出量が定常状態に至るまでの時間は概ね0.1〜0.2ms程度と長く、TFCでの調整に加えて記録動作を行うと、TFC電力を微妙に調整しても過剰に磁極が突出しすぎてヘッドが磨耗することがあり、好ましくなかった。
従来は、上記の低温書き出し時の記録不良を防ぐために、記録電流やTFC投入電力などをやや過剰に設定せざるを得ず、ややもすると磁気ヘッドが垂直磁気記録媒体に接触し、磁気ヘッドの異物付着、磨耗やクラッシュなど、HDI(Head Disk Interface)問題を引き起こすこともあったが、本実施例ではこの問題も回避でき、不良率を半減することができた。
さらに、磁気記憶装置が低温休止状態もしくは非動作状態から再生動作を開始する場合においても、記録情報再生ゲートオン(サーボ情報とは別)のタイミングtRGを上記と同様のシーケンスで調整することで対応可能であった。ただし、再生時にはISTOをゼロ、もしくは逆方向の微小電流を印加した。これは、記録時のSTO通電時の発熱量が記録磁極からの発熱に比べて極めて少ないことによる。所定のタイミングで記録や再生ができずに回転待ちになってしまう場合には、平均待ち時間は4500rpm(回転/分)で6.7ms、5400rpmで5.6ms、7200rpmで4.2ms、10000rpmで3ms、15000rpmで2msにも達する。このため、上記のように定常状態になるまでライトゲートを遅延させる本実施例により、パフォーマンスを極端に劣化させずに装置を安定動作させることが可能となった。
上記では、問題の大きな低温での対策を例に説明したが、影響は少ないものの常温や高温でも同様であった。さらに本調整法を実施例8もしくは実施例9に示した調整法と組み合わせることで、種々の環境変化に対するロバスト性が全体的に向上するとともに装置の設計自由度が格段に高くなり、特に好ましかった。上記実施例では磁気ディスク装置(HDD)を例に本発明の構成を説明したが、磁気テープ装置など他の磁気記憶装置にも適用できることは言うまでもない。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
01:磁気ヘッドと垂直磁気記録媒体のクリアランス
02:熱膨張素子部(TFC)
10:再生ヘッド部
11:磁気シールド層
12:センサ素子
13:上部磁気シールド
14:下部磁気シールド
20:記録ヘッド部(リング型磁気コア部)
21:記録磁界
22:第1の記録磁極
23:コイル
24:第2の記録磁極
25:記録ギャップ部
26:STO発振制御磁界
27:記録磁極(リング型磁気コア)の後端部
30:垂直磁気記録媒体
31:潤滑層
32:保護層
33:第2の磁性層
34:第1の磁性層
35:軟磁性下地層
36:非磁性基板
37:上向き磁化
38:下向き磁化
39:媒体磁性層最表面位置でのSTOからの高周波磁界
40:高周波発振素子部(STO)
41:高周波磁界発生層(FGL)
42:中間層
43:スピン注入層
44:STO駆動用直流電源
45:高周波磁界(マイクロ波)
46a,46b:スピン注入層の磁化
47a,47b:FGLの磁化
48a,48b:FGLの磁化の回転方向
49:STO駆動電流
50:スライダ
51:ヘッド保護膜
52:磁気記録再生ヘッド浮上面(ABS)
60:STOへの電流供給を行う導電性電極
91:記録磁極からの逆方向実効記録磁界
92:FGLからの逆方向実効アシスト磁界
93:記録磁極からの記録方向実効記録磁界(0.12AT)
94:FGLからの記録方向実効アシスト磁界
95:垂直磁気記録媒体のスウィッチング磁界
100:磁気ヘッドの走行方向
101:クリアランス
102:熱膨張素子部(TFC)
110:再生ヘッド部
111:磁気シールド層
112:センサ素子
113:上部磁気シールド
114:下部磁気シールド
120:記録ヘッド部
121:記録磁界
122:主磁極
123:コイル
124:シールド
125:記録ギャップ部
126:STO発振制御磁界
130:垂直磁気記録媒体
131:潤滑層
132:保護層
133:キャップ層
134:高Hk磁性層
135:軟磁性下地層
136:非磁性基板
137:上向き磁化
138:下向き磁化
140:高周波発振素子部(STO)
141:高周波磁界発生層(FGL)
142:中間層
143:スピン注入固定層
144:STO駆動用直流電源
145:高周波磁界
150:スライダ
151:ヘッド保護膜
152:浮上面(ABS)
160:磁化
161:下地層
162:第1のFGL
163:結合層
164:第2のFGL
165:非磁性中間層
166:スピン注入層
167:キャップ層
168:磁化
171:下地層
172:FGL
173:非磁性中間層
174:スピン注入層
175:キャップ層
176:磁化
177:磁化
180:垂直磁気記録媒体
182:フットプリント
183:フットプリント
241,242,243:サスペンションの配線
500:スピンドルモータ
501:垂直磁気記録媒体
502:アーム
503:磁気記録再生素子搭載スライダ
504:高剛性サスペンション
505:HGA
506:高剛性アクチュエータ
507:駆動信号用配線(FPC)
508:ヘッド駆動制御装置(R/W−IC)
509:信号処理回路(R/Wチャネル)
510:マイクロプロセッサ(MPU)
511:ディスクコントローラ(HDC)
512:制御ボード
513:符号化した信号
514:レジスタ
515:バス
516:バッファメモリ制御部
517:ホストインタフェース制御部
518:メモリ部
519:不揮発性メモリ部
520:駆動部
521:バッファメモリ
522:ボイスコイルモータ
600:記録磁界解析位置
601:記録磁化状態が確定する実効記録磁界
602:記録時の実効記録磁界最大値

Claims (24)

  1. 垂直磁気記録媒体に書き込むための記録磁界を発生する記録磁極部と、高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子とを備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記記録磁極部は、その記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成し、
    前記磁気コアは、前記高周波磁界発振素子に対し、ほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されており、
    前記高周波磁界発振素子は前記記録ギャップ内に設けられていることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  2. 請求項1記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記磁気コアを記録電流で励磁して記録可能な垂直磁気記録媒体に静止記録した時の当該垂直磁気記録媒体磁化反転領域が前記記録ギャップの形状をしていることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  3. 請求項1又は2記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記磁気コアは、トレーリング側記録磁極のトラック幅が40〜250nm、ギャップデプスが40〜700nm、記録ギャップ長が20〜200nmであることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記磁気コアは、ヨーク長が0.5μm以上、4μm以下であることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記高周波磁界発振素子は、2層の高周波磁界発振層を非磁性体からなる結合層を介して積層した構成体と、中間層と、スピン注入層とを備え、前記スピン注入層側から前記中間層を介して前記構成体側に電流を流すことを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  6. 請求項5記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記結合層の膜厚は、0.1nm以上0.7nm以下、1.2nm以上1.6nm以下、2.7nm以上3.2nm以下のいずれかであることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記高周波磁界発振素子は、面内方向に磁化容易軸を有する磁性膜からなる高周波磁界発振層と、非磁性中間層と、スピン注入層とを備え、
    前記スピン注入層は、膜面の面内方向に磁化が実効的に配向するようにせしめた磁性膜からなり、その磁化が前記高周波磁界発振層の磁化と反強磁性的に結合するように前記非磁性中間層を介して前記高周波磁界発振層と積層され、
    前記高周波磁界発振層側から前記スピン注入層側に電流を流すことにより、前記高周波磁界発振層の磁化と前記スピン注入層の磁化が反平行状態を保ちながら高速で回転するようにせしめたことを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドにおいて、
    前記高周波磁界発振素子の幅が3nm〜100nmであることを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド。
  9. 10以上の配線を有するマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド用サスペンションにおいて、
    前記マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドは、記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成する記録磁極と、前記記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子とを備え、前記磁気コアは前記高周波磁界発振素子に対しほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されており、
    少なくとも記録用2配線、再生用2配線をそれぞれ隣接する組み合わせとして一つのペア配線として扱い、マイクロ波アシスト素子駆動用2配線が前記記録用配線もしくは前記再生用配線と隣接するときは接地線側で隣接し、必要に応じてTFC駆動用2配線、もしくはマイクロ波アシスト素子駆動用2配線は分割して接地線側を上記ペア配線の間に配置した配線パターンを設けたことを特徴とするマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド用サスペンション。
  10. 請求項9記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド用サスペンションに、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを接続したスライダを搭載したヘッドジンバルアセンブリ。
  11. 記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成する記録磁極と、前記記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子と、垂直磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子と、前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整するTFC素子とを備え、前記磁気コアは前記高周波磁界発振素子に対しほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されているマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、
    前記記録磁極からの磁界だけでは十分な記録ができない垂直磁気記録媒体と、
    前記記録磁極及び前記高周波磁界発振素子による記録動作、並びに前記磁気再生素子による再生動作を制御・処理する手段と、
    前記TFC素子の動作を制御するTFC制御手段と
    を有することを特徴とする磁気記憶装置。
  12. 請求項11記載の磁気記憶装置において、
    少なくとも前記記録動作時に前記垂直磁気記録媒体への記録が可能な下限値よりも小さい記録電流を前記磁気コアに供給し、
    少なくとも製造工程中に、前記記録電流、前記高周波磁界発振素子の駆動電流、及び前記TFC素子に供給する電力のそれぞれの値を、当該磁気記憶装置の所定の領域の記録再生特性を最適化する値に調整せしめたことを特徴とする磁気記憶装置。
  13. 請求項12記載の磁気記憶装置において、
    温度センサ及び/又は気圧センサを装置内に有し、当該磁気記憶装置の環境が変化したとき、前記磁気コアに供給する記録電流、前記高周波磁界発振素子の駆動電流、並びに前記TFC素子への投入電力の値を再調整することを特徴とする磁気記憶装置。
  14. 請求項11〜13のいずれか1項記載の磁気記憶装置において、
    所定の時間上位システムからの記録再生命令がない休止状態から記録再生命令を受けて記録再生を行う場合に、前記磁気コアに所定の条件下で予め所定の通電を開始し、さらに所定の遅延時間の後に情報記録を指示するライトゲートの入力に応じて、前記高周波磁界発振素子を動作させ、次いで前記磁気コアを動作させることで記録動作を開始することを特徴とする磁気記憶装置。
  15. 請求項11〜14のいずれか1項記載の磁気記憶装置において、
    急激な気圧変化やコンタミによるクリアランス変化に基づく特性劣化が確認された場合に、クリアランスが初期値に復帰するまで、出力変化などから予測されるクリアランス変化量に対応して、前記磁気コアに供給する記録電流、前記高周波磁界発振素子の駆動電流、前記TFC素子への投入電力を変更しておくことを特徴とする磁気記憶装置。
  16. 請求項11〜15のいずれか1項記載の磁気記憶装置において、
    急激な温度変化による特性劣化が確認された場合に、温度変化から予測される特性変化を補償するように前記磁気コアに供給する記録電流、前記高周波磁界発振素子の駆動電流を調整し、特性が安定するまで所定の方法で、前記磁気コアに供給する記録電流、前記高周波磁界発振素子の駆動電流を環境温度に対応する設定値に移行せしめることを特徴とする磁気記憶装置。
  17. 記録磁極に記録信号を供給する記録信号供給手段と、高周波磁界発振素子に駆動信号を供給する駆動制御手段とを備えるヘッド駆動制御装置において、
    前記記録磁極は、その記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型のリング型磁気コアを形成し、
    前記リング型磁気コアは、前記高周波磁界発振素子に対し、ほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されており、
    MPUからの直接の命令で予備動作電流を前記リング型磁気コアに供給し、さらに所定の時間後にHDCから出力されるライトゲートのタイミングに応じて適宜前記記録信号と前記動信号を供給する手段を具備することを特徴とするヘッド駆動制御装置。
  18. 記録磁極に記録信号を供給する記録信号供給手段と、高周波磁界発振素子に駆動信号を供給する駆動制御手段とを備えるヘッド駆動制御装置において、
    前記記録磁極は、その記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成し、
    前記磁気コアは、前記高周波磁界発振素子に対し、ほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されており、
    磁気記憶装置の内外に設置された温度センサ、もしくは気圧センサからの情報を元に、前記記録信号供給手段と前記動制御手段の動作を環境が定常状態になるまで所定のタイミングで調整する手段を具備することを特徴とするヘッド駆動制御装置。
  19. 請求項17又は18記載のヘッド駆動制御装置において、
    前記高周波磁界発振素子と垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整するTFC素子に投入する電力の値、前記動信号の値、前記記録信号の値、及びこれらの動作タイミングの値を保持するレジスタを有することを特徴とするヘッド駆動制御装置。
  20. 請求項14〜16のいずれか1項記載の磁気記憶装置において、
    請求項2〜8のいずれか1項記載の磁気記録ヘッドを搭載したことを特徴とする磁気記憶装置。
  21. 請求項11〜16、20のいずれか1項記載の磁気記憶装置において、
    請求項17〜19のいずれか1項記載のヘッド駆動制御装置を搭載したことを特徴とする磁気記憶装置。
  22. 垂直磁気記録媒体に情報を書き込むための記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極の記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子、前記垂直磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子、及び前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整するTFC素子を備え、前記記録磁極は前記記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成し、前記磁気コアは前記高周波磁界発振素子に対しほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されているマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、前記記録磁極からの記録磁界だけでは十分な記録ができない垂直磁気記録媒体と、前記記録磁極及び前記高周波磁界発振素子による記録動作、前記磁気再生素子の再生動作を制御・処理する手段と、前記TFC素子への投入電力を制御する手段とを備える磁気記憶装置の制御パラメータを、磁気記憶装置の製造工程において決定する方法において、
    前記記録磁界を発生させるための第1の電流の値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流の値の組合せを変えて前記垂直磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる前記第1の電流の値と前記第2の電流の値の組合せを決定する第1のステップと、
    前記第1のステップで決定した前記第1の電流の値と前記第2の電流の値によって前記垂直磁気記録媒体に記録再生を行なう際に、前記第1の電流の値を変えることによって、近接トラック消磁効果の最も少ない前記第2の電流値との組合せを決定する第2のステップと、
    前記TFC素子への投入電力を制御する手段によって前記クリアランスが所定の値になるまで投入電力を変えながら、前記第2のステップで決定した前記第1の電流の値を可変して前記垂直磁気記録媒体に記録再生を行なって、高い記録再生特性が得られる、前記第1の電流の値と前記第2の電流の値の組合せを決定する第3のステップと、
    を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
  23. 垂直磁気記録媒体に情報を書き込むための記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極の記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子、前記垂直磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子、及び前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整するTFC素子を備え、前記記録磁極は前記記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成し、前記磁気コアは前記高周波磁界発振素子に対しほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されているマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、前記記録磁極からの記録磁界だけでは十分な記録ができない垂直磁気記録媒体と、前記記録磁極及び前記高周波磁界発振素子による記録動作、前記磁気再生素子の再生動作を制御・処理する手段と、前記TFC素子への投入電力を制御する手段とを備える磁気記憶装置の制御パラメータを、磁気記憶装置の使用環境において決定する方法において、
    装置内に設けた温度センサを用いて前記記録磁極と前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体の環境温度を測定する第1のステップと、
    予め設定したパラメータテーブルを用いて前記環境温度に対して最適の、前記記録磁界を発生させるための第1の電流値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流値及び前記TFC素子への投入電力の値の組合せを決定する第2のステップと、
    前記第のステップで決定した前記第1の電流値、前記第2の電流値及び前記TFC素子への投入電力の値を用いて記録再生を行う第3のステップと、
    を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
  24. 垂直磁気記録媒体に情報を書き込むための記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極の記録ギャップ内に設けられた高周波磁界発振素子、前記垂直磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子、及び前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整するTFC素子を備え、前記記録磁極は前記記録ギャップから出る面内記録磁界成分を主たる記録磁界成分とする面内記録型の磁気コアを形成し、前記磁気コアは前記高周波磁界発振素子に対しほぼ垂直に磁界が印加されるように構成されているマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、前記記録磁極からの記録磁界だけでは十分な記録ができない垂直磁気記録媒体と、少なくともホストシステムからの記録再生命令に直接対応して予備動作電流通電動作、前記記録磁極及び前記高周波磁界発振素子による記録動作、前記磁気再生素子の再生動作を制御・処理する手段と、前記TFC素子への投入電力を制御する手段とを備える磁気記憶装置の制御パラメータを、当該磁気記憶装置の記録再生動作開始時において決定する方法において、
    装置内に設けた温度センサを用いて前記記録磁極と前記高周波磁界発振素子と前記垂直磁気記録媒体の環境温度を測定する第1のステップと、
    予め設定したパラメータテーブルを用いて前記環境温度に対して最適の、前記記録磁界を発生させるための第1の電流値と前記高周波磁界を発生させるための第2の電流値及び前記TFC素子への投入電力の値の組合せを決定する第2のステップと、
    MPUからの直接の命令で、前記環境温度での設定TFC素子投入電力、前記記録磁極への所定の予備動作電流を通電する第3のステップと、
    所定のタイミングで出力されるライトゲートのタイミングに応じて所定の値の駆動電流を前記高周波磁界発振素子に通電し、記録のタイミングで記録情報を含むバイアス記録電流を前記記録磁極に通電して記録を行う第4のステップと、
    を有することを特徴とする磁気記憶装置を制御するためのパラメータの決定方法。
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