JP2014049147A - 磁気記憶装置及びその製造方法 - Google Patents

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Yoshihiro Shiroishi
芳博 城石
Katsuro Watanabe
克朗 渡邉
Kazusukatsu Igarashi
万壽和 五十嵐
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Abstract

【課題】マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを搭載し、高い遠隔トラック干渉耐力を有する大容量磁気記憶装置を、磁気ヘッド、磁気記憶装置ともに高い歩留りとする制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】記録磁界はマイクロ波アシスト部を非動作にしたときに遠隔トラック干渉が実質的に発生しないバイアス記録電流によって記録磁極から発生させ、その記録磁界とマイクロ波アシスト効果とを併用することによって垂直磁気記録媒体に情報を記録する。
【選択図】図12

Description

本発明は、磁気記憶装置、磁気記憶装置に搭載する磁気ヘッド及びその製造方法に関するものである。
インターネット環境の進化、クラウドコンピューティングの浸透などによるデータセンタの増設などにより、生成される情報量が近年急増している。記録密度が最も高く、ビットコストに優れた磁気ディスク装置(HDD)などの磁気記憶装置が“ビッグデータ時代”のストレージの主役であることは間違いない。このためには、磁気記憶装置の大容量化、及びそれを支える高記録密度化が必須である。
新たな高密度化磁気記録技術として、マイクロ波帯の高周波磁界を磁気記録媒体に印加して媒体磁化の歳差運動を励起し、スウィッチング磁界を下げながら磁気異方性の大きな垂直磁気記録媒体に磁気記録を行うマイクロ波アシスト磁気記録方式(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)が提案されている。近年、直流電源に駆動されてスピン注入層から注入されるスピンのスピントルクによって、高周波磁界発生層(FGL:Field Generation Layer)のスピンを高速回転して高周波磁界を発生する、スピントロニクス技術を応用した実用的な微小構造のスピントルク型高周波発振素子(STO:Spin Torque Oscillator)が特許文献1などで提案された。ここで、スピン注入層とFGLは、例えば、Cu,Pt,Au,Ag,Pd,Ru等の貴金属、もしくはCr,Rh,Mo,W等の非磁性遷移金属からなる導電性中間層を介して積層される(特許文献2)。また特許文献3には、数原子層レベルの膜厚のCo,Ni層を基板上にCo層よりもNi層の厚さが大きくなるように積層した[Co/Ni]磁性人工格子からなるスピン注入層の下地として、下部Ta層とその上に形成されfcc[111]結晶構造又はhcp[001]結晶構造を有する金属層を含む複合シード層を用いるマイクロ波アシスト記録用スピントロニクス素子が開示されている。
さらに特許文献4では、高周波磁界発振素子から、磁化反転させたい磁気記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ方向に回転する高周波磁界(円偏光磁界)を、記録磁界極性に応じて発生せしめることで磁化反転をさらに効率よく誘起する方法も開示され、マイクロ波アシスト磁気記録方式を実用化すべく研究開発が活発になっている。
米国特許7616412号明細書 特開2009−70541号公報 特開2011−3869号公報 特許第4255869号公報 特許第4355012号公報 特開2012−28001号公報
現状の垂直磁気記録方式において高密度化、大容量化を目指し、垂直磁気記録媒体の一層の高異方性エネルギー化、高保磁力化と、それに記録可能な主磁極・シールド型磁気ヘッドの記録磁界強度の改善が進んでいる。ところが、高密度化のために垂直磁気ヘッドからの記録磁界強度を大きくしようとすると、主磁極近傍からの漏れ磁界や、シールド部の一定領域に磁区構造が集中して強い漏れ磁界(磁気的ホットスポット)が発生し、特定の記録トラックに繰り返し多数回(数百〜数千回)の記録を行なうと、最隣接トラックでエラーレートが劣化もしくは記録済みデータが消去される隣接トラック干渉(ATI:Adjacent Track Interference)や、記録トラック位置から数トラック以上も遠く離れたトラックでエラーレートが劣化もしくは記録済みデータが消去される遠隔トラック干渉(FTI:Far Track Interference)が発生するという問題があった。
ATIに対しては、特許文献5記載のように同一トラックに特定の回数だけ繰り返し記録が行なわれた場合には、適宜近隣トラックを書き直すことで信頼性を確保できるが、遠方のトラックを消去してしまうFTIに関しては、この書き直し範囲が広域に及ぶため磁気記憶装置のパフォーマンスが劣化し易い、という問題があった。このため、FTIに対する耐力を確保することは、高密度化を図り、さらに信頼性やパフォーマンスを確保するうえで極めて重要な問題であった。このため例えば、シールド部の両外側に永久磁石を設けることで、優れた磁気性能を維持、改善しつつこれを最小化しようとする磁気ヘッドなどが提案されている(特許文献6)。
しかし記録密度が500kTPI,1Tb/in2に近づくと、狭トラック磁気記録を行なう上で、磁極内に磁束を溜め込んで強い記録磁界を強制的に出さざるを得ないため、現状方式では、シールド部での磁区構造の抑制、さらには記録トラック外での記録磁界漏れの抑制が極めて困難であった。
本発明の目的は、マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを用いて、高保磁力の垂直磁気記録媒体に対してもFTIによる特性劣化のない磁気記録方式、さらには高い記録密度、パフォーマンスを有する大容量磁気記憶装置を高い製造歩留りで提供することにある。
本発明の磁気記憶装置は、垂直磁気記録媒体と、垂直磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、記録磁界を発生する記録磁極、記録磁極を励磁するバイアス記録電流を通電するためのコイル及び記録磁極の近傍に配置され高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備える記録ヘッド部と、磁気再生素子を備える再生ヘッド部とを有する磁気ヘッドと、磁気ヘッドの動作を制御するヘッド駆動制御部と、遠隔トラック干渉を生じることのないバイアス記録電流値及び当該バイアス記録電流値と対になる前記高周波磁界発生素子の駆動電流値を記憶した記憶部とを有し、ヘッド駆動制御部は、記憶部から読み出したバイアス記録電流値と駆動電流値を用いて記録磁極と高周波磁界発振素子を駆動して垂直磁気記録媒体への情報記録を行うものである。
また、本発明による磁気記録ヘッドの製造方法は、記録磁界を発生する記録磁極、記録磁極を励磁するバイアス記録電流を通電するためのコイル及び記録磁極の近傍に配置され高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備える記録ヘッド部と、磁気再生素子を備える再生ヘッド部と、記録ヘッド部及び再生ヘッド部と垂直磁気記録媒体とのクリアランスを制御する熱膨張素子とを有する磁気記録ヘッドを製造する方法であって、バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を第1の値に設定して磁気記録媒体の自己トラックを間に挟んだ複数のトラックに記録を行う工程と、バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を第1の値より大きな第2の値に設定して自己トラックに複数回の記録を行う工程と、自己トラックを間に挟んだ複数のトラックを再生してエラーレートを評価し、遠隔トラック干渉の有無を検出し、FTIを誘起しない磁気ヘッドが所定の割合以上で得られる上限のバイアス記録電流を決定する工程と、遠隔トラック干渉が生じた磁気記録ヘッドを、そのエラーレート劣化量に応じて不良品として除外する工程とを有する。
また、本発明によるマイクロ波アシスト記録ヘッド選別用の記録再生評価装置は、バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を調整する機能を有し、設定したオーバシュート部の半値幅を有するバイアス記録電流を用いて記録磁極を励磁して磁気記録媒体の複数のトラックに記録を行い、トラック毎のエラーレートから遠隔トラック干渉の有無を評価するものである。
本発明によると、記録再生特性に優れた高いマイクロ波アシスト磁気記録再生ヘッドと高保磁力の垂直磁気記録媒体によって、遠隔トラック干渉(FTI)によるパフォーマンスや信頼性劣化のない大容量・高信頼性の磁気記憶装置を、高い製造歩留りで提供することができる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと垂直磁気記録媒体の例を示す概念図。 MWWの評価結果の一例を示す図。 MRWの評価結果の一例を示す図。 オフトラック特性(OTC)の評価結果の一例を示す図。 MCW(747曲線)の評価結果の一例を示す図。 遠隔トラック干渉とバイアス記録電流の関係を示す図。 マイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと垂直磁気記録媒体の例を示す概念図。 (a)は磁気ヘッド記録ギャップ近傍のABS面から見た構造を示す図、(b)は断面図。 バイアス記録電流波形のオーバシュート部の半値幅とFTIによるエラーレート劣化量との関係の一例を示す図。 磁気記憶装置の構成例を示す概念図。 パラメータ設定のためのフローチャートの例を示す図。 IIWB,IISTO最適化のためのパラメータテーブル(表1)を示す図。 FTIによりエラーレートが劣化したデータ領域書き直しのためのフローチャートの例を示す図。 記録再生特性の評価設備の構成例を示す概念図。 サーボ情報を記録できる記録再生特性の評価設備におけるサーボ情報記録機能部構成例を示す概念図。
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
〔実施例1〕
本実施例では、リング型記録磁極を有するマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド、その記録再生特性評価装置、及び性能選別法について説明する。
(マイクロ波アシスト磁気記録再生ヘッド)
図1は、マイクロ波アシスト磁気記録再生ヘッドと垂直磁気記録媒体の一例を示す概念図である。磁気ヘッドは、垂直磁気記録媒体30上をクリアランス01で矢印100方向に走行するスライダ50上に形成された、再生ヘッド部10、記録ヘッド部20、及びクリアランス制御用の熱膨張素子部(TFC:Thermal Flying Height Control)02などから構成される。ここでTFC02は、NiCr,Wなどの高比抵抗、高熱膨張材料からなり、アルミナ膜などで絶縁した50〜150Ω程度の発熱抵抗体薄膜で構成され、記録ヘッド部20、再生ヘッド部10と垂直磁気記録媒体30とのクリアランスを0.5〜2nm程度に調整するものである。TFCは2ヶ所以上に設けてもよく、この場合、それぞれのTFCの配線接続は独立でも直列でもよい。なお、TFC投入電力入力用の配線は省略した。ヘッド保護層51はCVDC(Chemical Vapor Deposition Carbon)、FCAC(Filtered Cathodic Arc Carbon)などからなり、底面52は磁気ヘッドの浮上面(ABS:Air Bearing Surface)である。
スライダ50はAl23−TiCセラミックスなどからなり、磁気ヘッド磁極部の浮上量が磁気記録媒体全周に亘って5〜10nm程度になるように、そのABS面に負圧が発生するようにエッチング加工したもので、素子駆動用配線を有するサスペンションに搭載され、HGA(Head Gimbal Assembly)として磁気記憶装置に組み込まれる。なお、本実施例では、スライダを0.85mm×0.7mm×0.23mm程度のフェムト型としたが、用途に応じてその高さを0.2mm程度とした薄型フェムト型や、その長さを1mm程度としたロングフェムト型などとしてもよい。本実施例では、磁気記録再生ヘッドは再生ヘッド部10が先頭で記録ヘッド部20が後方になる向きに磁気記録媒体30が相対的に移動する構成としているが、逆構成であってもよく、またヘッド保護層はなくてもよい。
再生ヘッド部10は、記録ヘッド部20との間を磁気シールド層11によってシールドされ、再生センサ素子12、再生分解能を高めるための上部磁気シールド13及び下部磁気シールド14を備える。再生センサ素子12は媒体からの信号を再生する役割を担うもので、その構成としては、TMR(Tunneling Magneto-Resistive)効果、CPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR(Giant Magneto-Resistance)効果、ないしはEMR(Extraordinary Magneto-Resistive)効果を有するもの、さらにはSTO(Spin Torque Oscillator)効果を応用したセンサや、ホイスラー合金膜を積層したCo2Fe(Al0.5Si0.5)/Ag/Co2Fe(Al0.5Si0.5)もしくはCo2Mn(Ge0.75Ga0.25)/Ag/Co2Mn(Ge0.75Ga0.25)などのシザーズ型や、差動型でもよい。その素子幅Trw、素子高さやシールド間隔(再生ギャップ長Gs)は、目標とする記録トラック密度や記録密度に応じて設計及び加工され、例えば素子幅Trwは50nm〜5nm程度である。なお、再生出力の取り出し端子は図示を省略した。
記録ヘッド部20は、記録ギャップ部25で記録磁界21及び強く均一なSTO発振制御磁界26を発生するための第1の記録磁極22及び第2の記録磁極24、記録ギャップ25内に設けられた高周波磁界発振素子部(STO)40、記録磁極を励磁するためのコイル23などから構成される。記録磁極の近傍に設けられたSTO40によって発生される高周波磁界47の回転方向、発振周波数などは、STO発振制御磁界26によって制御される。ここで第1の記録磁極22及び第2の記録磁極24は、記録ギャップ部25近傍で体積が大きく、磁気的に略対称なリング型構造とした。このため、磁極部で記録可能な低保磁力垂直磁気記録媒体に対しては、その記録フットプリントは略ギャップ形状となる。コイル23は、Cu薄膜などを用いて第2の記録磁極24を巻くように形成した例を示したが、記録磁極の後端部27や第1の記録磁極22などを周回するように形成してもよく、またさらに多層巻き線としてもよい。記録ギャップ25は、スパッタリング法やCVD法で製膜されるAl23,Al23−SiO2膜などの非磁性薄膜で形成される。
均一で強い記録ギャップ内磁界などを確保するため、ギャップ部近傍での各磁極の磁性層膜厚を40nm〜3μmとした。記録ギャップ長GLは、STO40の厚さ、記録ギャップ内のSTO発振制御磁界26の均一性、強度、記録磁界21の強度及び記録磁界勾配、トラック幅、ギャップデプスGdなどを考慮して決めた。ギャップデプスは記録磁極のトラック幅やギャップ長以上にすることが磁界の均一性の観点で好ましく、トレーリング側(ヘッド走行方向の後部)の第1の記録磁極22の幅Twwを30〜250nm、ギャップデプスを40〜700nm、ギャップ長を20〜200nmとした。また、周波数応答を高めるために、ヨーク長YL及びコイル巻き線数は小さいことが好ましく、ヨーク長を0.5〜10μm、コイル巻き線数を2〜8とした。特に、サーバやエンタプライズ用途などの高速転送対応磁気記憶装置の磁気ヘッドにおいては、ヨーク長を4μm以下とし、さらに必要に応じて比抵抗の高い磁性中間層もしくは非磁性中間層を介して高飽和磁束磁性薄膜を積層する多層構造とするのが好ましい。
第1の記録磁極22は、FeCoNi,CoFe,FeCo,NiFe合金などの高飽和磁束軟磁性膜を、メッキ法、スパッタ法、イオンビームデポジション法などの薄膜形成プロセスで単層もしくは多層製膜して製造される。記録ギャップ部近傍の磁極形状は、記録ギャップ面に対して平行かつ平坦な膜構造でも、STOの周囲を囲った構造でもよい。なお、記録磁界強度を高めるために記録ギャップ部近傍には高飽和磁束材料を用い、その形状を記録ギャップ部に向かって絞り込むような構造とすることが特に好ましい。第2の記録磁極24も第1の記録磁極22と同様に、CoNiFe合金やNiFe合金などの軟磁性合金薄膜で形成し、形状を制御した。
STO40は、高周波磁界発生層(FGL)41、中間層42、FGLにスピントルクを与えるためのスピン注入層43などから構成される。FGL41は、FeCo,NiFeなどの軟磁性合金、CoPt,CoCrなどの硬磁性合金、Fe0.4Co0.6,Fe0.01Co0.99,Co0.8Ir0.2などの負の垂直磁気異方性を有する磁性合金、CoFeAlSi,CoFeGe,CoMnGe,CoFeAl,CoFeSi,CoMnSiなどのホイスラー合金、TbFeCoなどのRe−TM系アルモファス系合金、あるいは[Co/Fe],[Co/Ir],[Co/Ni],[CoFeGe/CoMnGe]などの磁性人工格子などからなる。中間層42は、Au,Ag,Pt,Ta,Ir,Al,Si,Ge,Ti,Cu,Pd,Ru,Cr,Mo,Wやこれらの合金などの非磁性導電性材料などからなる。
各磁性層の材料、構成や磁気異方性については、スピン注入効率、高周波磁界強度、発振周波数や反磁界も含めた実効磁気異方性などが、マイクロ波アシスト記録に最も適するように決めた。例えば、FGLの飽和磁化に比例して高い高周波磁界が得られるため、FGL層の飽和磁化Msは高い方が好ましい。またFGLの膜厚は、厚い方が高い高周波磁界が得られるが、厚くなりすぎると磁化が乱れ易くなるので、1〜100nmとすることが好ましい。上記リング型磁極を用いて強いSTO発振制御磁界を印加すれば、軟磁性材料、硬磁性材料、又は負の垂直磁気異方性材料のいずれの材料でも安定して発振するようになることも確認された。
ここでFGL41の幅WFGLは、目標とする記録磁界や記録密度に応じて設計及び加工すればよく、その大きさを5nm〜50nmとした。WFGLが大きい場合には、STO発振制御磁界をより強くすることが好ましい。なお後述のように、瓦記録(SMR:Shingled Magnetic Recording)方式と併用する場合には、WFGLは記録トラック幅の2〜3倍とすることが好ましかった。非磁性中間層42の膜厚は、高いスピン注入効率を得るために0.2〜4nm程度とすることが好ましい。スピン注入層43としては、垂直磁気異方性を持った材料を用いることによりFGLの発振を安定させることが出来るので、[Co/Pt],[Co/Ni],[Co/Pd],[CoCrTa/Pd]などの磁性人工格子材料を用いることが好ましい。さらに、FGL41の高周波磁化回転を安定化させるため、スピン注入層43と同様の構成の回転ガイド強磁性層をFGL41に隣接して設けてもよい。また、スピン注入層43とFGL41の積層順は逆にしてもよい。
STOの駆動電流源(もしくは電圧源)や電極部を模式的に符号44で表したが、記録磁極22,24を、例えば記録ヘッド後端部27で磁気的には結合、電気的には絶縁せしめ、さらにギャップ部ではそれぞれをSTO側面と電気的に接続することで、記録磁極22,24に電極を兼用させてもよい。ここで、STOには直流電源(電圧駆動もしくは電流駆動)44により、スピン注入層側から電流を流し、FGLのマイクロ波発振を駆動した。
なお、FGL41を、FeもしくはFe0.8Co0.2などのFe基合金とCoもしくはCo0.94Fe0.01Pt0.05などのCo基合金との磁性人工格子薄膜のように、負の異方性磁界を持つ磁性材料からなる薄膜とし、更にスピン注入層43を、Ni0.99Rh0.01もしくはNi0.9Fe0.1などのNi基合金と、CoもしくはCo0.9Pd0.1などのCo基合金との磁性人工格子のように、膜面に垂直方向に磁気異方性軸を有する硬磁性薄膜とし、特にFGLにおいて、材料起因の磁気異方性磁界の大きさとスピン注入層43の膜面垂直方向の実効反磁界が逆方向でほぼ拮抗するようにせしめて実効的に負の異方性磁界を有するようにせしめ、FGL側からスピン注入層側に電流を付与する事で、記録磁極の磁化反転に追従して両層の磁化が瞬時に高速大回転に至るようにせしめる事もできる。この場合には、スピン注入層において、Co基合金磁性層をNi基合金磁性層よりも厚くし、材料に起因する磁気異方性磁界と前記FGLの膜面垂直方向の実効反磁界とが逆方向でほぼ拮抗するようにせしめることが好ましかった。
図1では省略したが、スピン注入層や高周波磁界発生層の膜質・膜特性の制御や発振効率、信頼性を高めるために、Cu,Au,Pt,Ir,Ru,Cr,Nb,Rh,Ti,Os,Irなどの金属やこれらの合金などからなる単層薄膜、もしくはこれらの積層薄膜による下地層やキャップ層を設けてもよい。
図では電流駆動を例としたが、定電圧駆動であれば電流密度を一定とできるので信頼性を確保する上で好ましい。
(垂直磁気記録媒体)
図1に図示した垂直磁気記録媒体30は、ガラス、Si、プラスチックスやNiPメッキAl合金などから構成される超平滑・耐熱非磁性基板36上に、軟磁性下地層35、第1、第2の記録層33,34、保護層32、及び潤滑層31などを積層して構成される。軟磁性下地層35は、FeCoTaZrなどからなる。第1、第2の記録層33,34は、CoCrPt、L12型Co3Pt基規則合金、L12型(CoCr)3Pt基規則合金、L11型Co0.5Pt0.5基規則合金、m−D019型Co0.8Pt0.2基規則合金、[CoCr−SiO2/Pt]や[CoB/Pd]などの磁性人工格子、L10型FePt規則合金などを主な構成要素とし、SiO2,TiO2,C,B,Ag,Cu,Au,Ni,Fe,Cr,Mn,Pdなどを数体積%〜35体積%添加物として適宜含有する、例えばCoCrPt−SiO2,L10型FePt−Ag−C,L10型FePt−SiO2などの高Hk磁性膜からなる。保護層32は、C,FCACなどからなる。
それぞれの層は、超高真空チャンバを有するマグネトロンスパッタリング設備、保護膜形成設備や、潤滑層形成設備などを用いて形成される。垂直磁気記録層は、ターゲット材料にTi,Nb,Zr,Cu,Cr,Co,Si,Alなどの適切な酸化物、炭化物、窒化物、硼化物もしくはそれらの混合物などを混入し、製膜条件を調整することで、非磁性材料を結晶粒界に0.5〜2nm偏析させることにより、結晶粒間の磁気交換相互作用を制御して製膜した。矢印37,38は、それぞれ垂直磁気記録媒体に記録された上向き、下向きの磁化を示す。磁性膜の平均的な異方性磁界を高めて高保磁力とすることで、従来の主磁極型磁気ヘッドからの磁界では充分な記録ができないようにせしめ、特に狭トラック磁気記録に適した構造とした。
なお、垂直磁気記録層の構造は2層構造に限るものではなく、高い保磁力を有するものであれば、単層、組成傾斜型膜構造、もしくは3層以上の多層構造としてもよい。さらに、磁気的な結合を制御するための中間層を必要に応じて各層の間に設けてもよい。ここで、その構成や垂直磁気記録の磁気特性が単層媒体に近い場合には、記録磁化印加状態でのその磁化の実効共鳴周波数とSTO40の高周波磁界の発振周波数は、磁化反転時には大きくは違わないことが好ましい。また多層構造の場合には、最表層磁性層のHkを15kOeよりも大きく、より好ましくは20kOeよりも大きくし、隣接する下層よりも大きくすることによって、記録磁界に比べてスペーシング依存性の強いSTO高周波磁界からのエネルギー吸収を最も効率的に行う事ができ、特に好ましい。
さらに軟磁性下地層35と基板36との間に少なくとも一層の特性制御用の非磁性層を設け、また、磁性層33,34の結晶配向性、結晶粒径、磁気特性やその均一性などを高めるために、軟磁性下地層35と磁性層34との間にRuなどからなる少なくとも一層の特性制御用非磁性中間層や、更にそれに加えて非磁性もしくは磁性材からなる中間層などを設けてもよい。更に軟磁性下地層35は、その軟磁気特性や均一性を向上するためにRu,Ru合金などを介した2層構造としてもよい。図1には、基板36の片面に磁性層33,34などを設けた例を示したが、これらを非磁性基板36の両面に設けてもよい。また本実施例では、垂直磁気記録媒体30において磁性層が連続膜である例を示したが、ディスクリートトラック膜や基板上に10nm程度の磁性パターンを設けたパターン膜などでもよい。
本実施例では、図1に示した構成で、Agを主たる構成要素とする非磁性中間層を用いた下記の構成のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド及び垂直磁気記録媒体を試作し、その特性を評価した。
・スライダ50:薄型ロングフェムト型(1×0.7×0.2mm3
・ヘッド保護膜(FCAC):1.8nm
・再生ギャップ長Gs:18nm
・センサ素子12:CPP−GMR(Trw=30nm)
・第1の記録磁極22:FeCoNi(Tww=80nm)
・第2の記録磁極24:CoFe
・STO記録素子40:Cu0.99Au0.01(4nm)/Ru(6nm)/Co2Fe(Ga0.5Ge0.5)(10nm)/Ag0.8Cu0.170.03(2nm)/[Co0.85Pt0.15/Ni0.8Fe0.2](10nm)/Ti0.8Cr0.2(10nm)
・FGL:WFGL=36nm、素子高さ=40nm
・媒体基板:3.5インチNiPメッキAl合金基板
・媒体構造:潤滑膜(1nm)/C(2nm)/(Co0.5Pt0.5)−(CrSiTi)O2(2nm)/CoCrPt−SiO2C(10nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(10nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(10nm)
ここで非磁性中間層の添加元素Xとして、Au,Ru,Pd,Rhを用いた。また、垂直磁気記録媒体磁性層33,34のHkは、それぞれ22kOe,18kOeであった。
(記録再生特性評価装置)
本実施例の磁気ヘッドにおいては、記録はSTOの幅で決まるように、磁気ヘッド、垂直磁気記録媒体の材料、パラメータ及び特性としてあるが、製造工程のばらつきによって特性やパラメータが仕様を満たさない場合もあるので、図14に示す本実施例の記録再生特性評価装置で選別した。
図14で、記録再生特性評価装置は、筐体607内に、垂直磁気記録媒体501を着脱するスピンドル500、垂直磁気記録媒体501(その中心は602)を回転中心601の回りに回転駆動するスピンドルモータSPM(図示せず)、試験すべきマイクロ波アシスト記録素子搭載スライダ503を着脱できる機構を有するサスペンション504a、垂直磁気記録媒体に記録されたサーボ情報401を基に、装着したマイクロ波アシスト記録素子搭載スライダを所定の位置に位置決めするVCM(Voice Coil Motor)604、記録再生特性を評価するヘッド駆動制御装置508、ヘッドロードアンロード部608などを備える。これらは、上位システム(図示せず)からの命令で、制御ボード512に搭載されたマイクロプロセッサ(MPU)510、コンボドライバ520のVCM駆動制御部、SPM駆動制御部、及びHDC511などにより制御される。ヘッド駆動制御装置508は、マイクロ波アシスト記録ヘッドの記録磁極を励磁するバイアス記録電流、STO素子駆動電流、クリアランス素子に供給するTFC投入電力を適宜設定して、記録再生特性を評価することができる。なお上記においては、サスペンションにスライダを着脱して記録再生特性を評価する低コスト・簡易評価法(不良磁気ヘッドに対してサスペンションの再利用可能)の例を説明したが、スライダを装着したHGA(Head Gimbal Assembly)を着脱する機構を設け、HGA状態でより高い位置決め精度で特性を評価しても良い。
本実施例の磁気記録特性評価装置においては、特性評価時の位置決め精度を向上するため、予めメディアサーボライタなどにより高精度のサーボパターンをサーボ領域401などに記録しておいた垂直磁気記録媒体を用いる。なお図14では、内周から外周の全領域にサーボ情報を記録した例を示したが、所定の限られた領域のみに記録しても良い。
このようにサーボ情報を予め記録した磁気記録媒体をスピンドル500に装着する場合、その回転中心の芯出し調整を行う必要がある。しかし完璧な精度になるまで調整を行う事はコストが増加するため現実的ではなく、芯出し操作でも補正できない偏心量(数トラック分相当)が発生することは避けられない。そこで、図14において、磁気ヘッドアクチュエータを位置抑制部606に押し当てた状態で垂直磁気記録媒体を回転させ、磁気ヘッドが各サーボセクタS1、S2・・などを通過する時の各サーボセクタ先頭位置の信号、すなわちメディアサーボライタで記録され、その中心が601であるサーボトラックSTW上に並んでいるサーボセクタの先頭座標を測定する。磁気ヘッドがこの座標位置を通過するように制御して記録再生を行えば、磁気ヘッドをほぼ一定の状態に固定したままでも、磁気記憶装置に組み込まれた垂直磁気記録媒体の回転中心601を中心としたサーボトラックHDD(図14の同心円状軌跡603)に忠実に追従した情報の記録再生が可能となる。このように偏心補正情報を用いる偏心非追従制御記録再生方式においては、従来技術でデータトラックを決めるサーボトラックはサーボトラックSTWではなく、サーボトラックHDDとなる。
逆に、磁気ヘッドが各サーボセクタを通過する時に検出される、上記サーボトラックSTWを構成する各サーボセクタ先頭位置のサーボ関連信号は、磁気ヘッドがサーボトラックHDDを追従するためのサーボ信号として用いる事ができる。この信号には偏心変動成分以外に、サーボ情報記録時のメディアサーボライタの振動などのために、磁気記憶装置の回転周波数よりも高次の変動成分が含まれる。これらについては、サーボ帯域を回転周波数よりも低くして角度位置θkのサーボセクタSkでの位置誤差信号PES(Position Error Signal)を求め、この信号を多数回積算し平均化することでサーボセクタSk位置での偏心変動成分RROL(θk)を、また所定のハイパスフィルタを通して多数回積算し平均化することで高次変動成分RROH(θk)を求めることができる。なお、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は回転周波数f0の1〜2倍とした。ここで、制御信号の遅延による干渉に起因する過剰制御を防ぐために、RROLとRROHをそれぞれ別々に制御する事が特に好ましい。
上記のRROL(θk)及びRROH(θk)信号を各サーボセクタ領域(番号)と対応させて求め、サーボ信号の加減演算・制御用のパラメータテーブルとして不揮発性メモリ519に保管し、適宜読み出し、必要に応じてメモリ518に記憶してVCMによる位置決めを制御して記録再生を行い、以下のように磁気ヘッドの選別を行なった。
(磁気ヘッドの選別方法)
まず、予めサーボトラックライタによりサーボ情報を形成した垂直磁気記録媒体に対して、本評価設備によりサーボトラックHDDに追従した高精度の磁気ヘッド位置決め制御を行い、記録、再生時のクリアランスをそれぞれ実機と略同等の1.5nm,1nmとして、磁気ヘッドの記録再生基本特性を評価し、以下のように第1の選別を行なった。
まず、磁気ヘッドH0、ゾーンZ1における、TFC投入電力、記録磁極22,24の励磁のためにコイル23に通電するバイアス記録電流IWB及びSTO駆動電流ISTOのそれぞれの最適値PTFC(0,1),IWB(0,1)及びISTO(0,1)をヘッド駆動装置のレジスタに保管し、そのデータを用いてマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを駆動して、ゾーンZ1の所定のトラックにおいて、サーボ情報を用い、所定の記録パターンを所定の周波数、所定の記録トラック環境で記録し、セクタ毎もしくはトラック一周で以下の特性評価を行なう。図2に示すように、最高周波数の10〜20%程度の周波数で記録トラックを記録し(フルトラック)、そのプロファイルの半値幅から記録トラック幅MWW(0,1)(Magnetic Write Width)を求め、更に図3に示すように、上記周波数で記録した記録トラックを両側から部分的に消去し、その信号強度が10〜30%となる狭トラック(マイクロトラックと呼ぶ)を作成し、その半値幅から磁気再生トラック幅MRW(0,1)(Magnetic Read Width)を求める。
ここで、本実施例の記録再生特性評価装置ではLDPC(low density parity check)符号を用いた非RS(Non Reed-Solomon)チャネルを用いており、エラー訂正後のエラーレートしか測定できない。一般にエラー訂正後のエラーレートは発生確率が極めて小さい(10-9程度)ので、選別試験などの短時間評価においてはエラーレートを正確に評価できない。そこで、図4に示すように、隣接トラック記録時のセクタ不良率を用いてオフトラックマージンを以下の様に評価した。すなわち、中央の記録トラック(自己トラック)に対し、両方の、片側から攻め込み(スクウィーズ)量を変えながら、隣接トラックを所定の線記録密度BPIで記録し、エラー訂正後のセクタ不良率(セクタエラーレート)を測定し、このセクタ不良率とトラック位置の関係、いわゆるバスタブカーブを求め、セクタ不良率が50%になるバスタブカーブ幅からオフトラック耐力OTC(Off-track Capability)を評価する。次いで、図5に示すように、OTC(Off-track Capability)の隣接攻め込み間隔依存性を評価し(747曲線評価)、中央の記録トラックのオフトラック特性が変化しない限界の隣接トラック間隔を外挿して磁気コア幅MCW(0,1)(Magnetic Core Width)を求める。なお評価法として、LDPC符号を用いた非RSチャネルのエラーレート訂正能力を制限し、意図的にエラーが起こりやすい条件でエラーレートを評価しても良い。
次いで、所定の基本性能を満たし、上記記録再生特性基本仕様に関する第1の選別試験に合格したマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドに対し、FTI特性基本仕様に関して第2の選別を行なった。すなわち、まずマイクロ波アシスト記録方法で、チャネルのパラメータを学習し、エラーレートが−5乗程度となる線記録密度を求め、その線記録密度で図6に示すように垂直磁気記録媒体に所定の本数(図では29本)のトラックの情報を記録した。次いで、バイアス記録電流IWBを数種類変えて、その中央位置の自己トラックに所定の回数記録(図6では2万回の例を示した)を行なった後に上記の全記録トラック(図6では29本)のエラーレートを評価した。図6から、バイアス記録電流をIWB(b)として記録した時にはエラーレートの劣化は認められないが、IWB(a)で記録した場合には中央の記録トラックの左右10トラックの位置でエラーレートが0.5〜0.6桁劣化していることがわかる。以上のように、遠隔トラックの記録磁化状態が影響を受けてエラーレートが劣化してしまうバイアス記録電流IWBが、装置を駆動するための所定の電流設定値の範囲内に存在するかどうか確認した。また前述のように、エラーレートとしてセクタ不良率を用いて評価しても同様の結果が得られた。なお、本明細書では、遠隔トラックとは自己トラックから3トラック以上離れたトラックをいう。
図1に示した垂直磁気記録媒体30においては、マイクロ波アシスト効果が最も強く働く表面側の磁性層33の異方性磁界Hkを大きくし、記録磁極22からの記録磁界では十分な記録ができず、STO40を同時に動作させることで始めて充分な記録ができるように磁性膜の構成元素や膜厚などを調整した。そのため、ABS面からみて面積の大きな記録磁極24に形成される磁区構造とその集中領域(磁気的ホットスポット)に発生する漏れ磁界があっても、STOに隣接する、もしくは遠隔のトラックにおける情報がそれによって干渉を受けてエラーレートが劣化する可能性は極めて低いが、環境温度が変化すると、製造時に特性ばらつきが生じるため、これをゼロとすることは極めて難しい。
そこで図6に示した例のように、多数回の記録を行なった場合にエラーレートが劣化することがあれば、その値をIWB(a)とし、次いでIWB(a)よりも小さく、しかも遠隔トラックのエラーレートが劣化せず、さらにSTOを同時に駆動した時に媒体に充分な記録が行なえる(所定のエラーレートが確保できる)バイアス記録電流IWB(b)を求めた。
以上のプロセスを多数の磁気ヘッドについて行い、IWB(a),IWB(b)の分布から、FTIを誘起しない磁気ヘッドが所定の割合(例えば99.5%)以上で得られる上限のバイアス記録電流IWB(b)を決定し、その値をIWB(max)とし、本マイクロ波アシスト記録ヘッドを組み込んだ磁気記憶装置はIWB(max)以下のバイアス記録電流で制御した。
(効果)
本実施例のプロセスによって、IWB(max)以下のバイアス記録電流であれば、FTIによるエラーレートの劣化を誘起する不良ヘッドの割合が0.5%未満と極めて低く、MWW39nm、MCW42nm、MRW19nmで、良好なエラーレートの記録が可能なマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドの選別ができていることが、実施例3で述べる磁気記憶装置の製造工程で確認された。
特に、高品質のサーボ情報を記録できるメディアサーボライタによりサーボ信号を形成した磁気記録媒体を用い、その回転中心を中心としたデータトラックHDDにマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを追従せしめる機能を有する本実施例の評価装置によって記録再生特性評価を行うことで、磁気ヘッド、垂直磁気記録媒体を搭載してからサーボ情報を記録する従来装置の従来評価方法に比べ、特性評価時の位置決め精度が向上し、第1、第2の磁気ヘッドの選別における選別総合歩留りを5%改善でき、好ましかった。
〔実施例2〕
本実施例では、記録磁極を図1のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドとは別の構成である、図7、図8(a)(b)に示す主磁極・補助磁極型の構造としたマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド、及びその効果的な選別法について説明する。
(マイクロ波アシスト磁気記録ヘッド)
図7に全体断面図、図8(a)にそのギャップ部近傍の下面図、図8(b)に図8(a)のAA’断面図を示したマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドは、記録磁極以外の基本的な構成は図1に示した実施例1と同様であり、例えば、50はスライダ、51はヘッド保護層、52は浮上面、40はSTO、10は再生ヘッド部、11はシールド層、12は再生センサ素子、13,14は上部、下部磁気シールド、02a、02bはTFC素子部などである。なお図7では、図8(a)(b)に示した、STOの下地層45、キャップ層46を省略して示した。
記録ヘッド部20は、図8(a)にABS面から見た磁極部構造を示すように、STOと略同じ幅にエッチングして高周波磁界と略同じ幅の垂直記録磁界121を発生するようにSTO部で整形された幅広記録磁極(主磁極)122、高周波磁界発振素子40の磁化回転方向などを制御するためのシールド磁極124及び、記録磁極を励磁するためのCuなどからなるコイル23で構成される。本構造では、図1の磁極構造に比べ、主磁極からの垂直記録磁界成分が強く、このため、磁極部で記録可能な低保磁力垂直磁気記録媒体に対しては、その記録フットプリントは略主磁極形状となる。エッチング深さdは、5〜40nm程度、より好ましくは10〜20nmとすることが磁界分布と磁界強度のバランスの面で好ましい。なお、磁気ギャップ125は、記録磁極122とシールド磁極124との間に設けられ、STO発振制御磁界126は高周波磁界発振素子40の磁化方向及び磁化回転方向などを制御する。
ここで記録磁極122は、FeCoNi,CoFe合金などの高飽和磁束軟磁性膜をメッキ法もしくはスパッタ法などで製膜し、ベベル角θが10〜20度の台形状であって、ABS面に近づくにつれその断面積が小さくなるように形成される。本実施例では、図7、図8(a)(b)に示すように、主磁極を磁気ヘッド走行方向、トラック幅方向の4方向から絞り込み、強い記録磁界が得られる構造とした。この場合には、磁気記録媒体の保磁力などを調整すれば、dを0nmとして用いることもできる。なお図8(a)において、台形状の記録磁極122の広い側の記録素子の幅TWWは、目標とする記録磁界や記録密度に応じて設計及び加工され、その大きさは10nm〜160nm程度である。また、記録磁極122は、シールド磁極124も含めてCoNiFe合金や、NiFe合金などの軟磁性合金薄膜で形成され、非磁性層を介してその周囲を囲った、いわゆるWAS構造(Wrap Around Structure)としてもよい。本磁極構造によれば、実施例1の磁極構造とは異なり、磁極のフットプリントは、前記のように最も強い記録磁界が集中する主磁極で決まる。
本実施例では図7、図8(a)(b)に示したように主磁極122をその4面とも絞り込んだため、STOを形成すべき面は、図8(b)に示すように10〜20度の角度βだけ傾斜している。このように傾斜した面にFGL41を含む高周波発振素子STOを形成すると、傾斜方向に垂直な方向に磁気異方性が発生し、STOの高周波発振効率が10〜20%劣化する。このため本実施例では、図8(a)(b)に示すように、主磁極122上に非磁性充填層45を形成しそれを平坦化して実施例1と同様にSTOを形成した。ここで、FGL41とスピン注入層43の積層順は逆にしてもよいが、STOは主磁極近傍に設置する事が好ましいので、非磁性充填材には下地層と同じ材料を用い、充填、ABS面に垂直となるように平坦化加工を施した後、FGL41をこの非磁性充填下地層45上に最初に形成し、その上に非磁性中間層42、スピン供給層43、キャップ層46を順次積層するSTO構造とすることが最も好ましい。
垂直磁気記録媒体130は、磁性層を133,139,134の3層とし、マイクロ波アシスト効果が最も強く働く最表面の異方性磁界Hkを大きくし、記録磁極からの記録磁界では十分な記録ができず、STO40を同時に動作させることで始めて充分な記録ができるように磁性膜の構成元素、膜厚などを調整し、磁性層最上層133、中間層139、最下層134のHkは、それぞれ21kOe、16kOe、18kOeとした。
以下に、本実施例のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド、垂直磁気記録媒体の構成、諸元を示す。
・スライダ50:薄型ロングフェムト型(1×0.7×0.2mm3
・FCAC51:1.8nm
・再生ギャップ長Gs:17nm
・再生素子12:TMR(Trw=30nm)
・第1の記録磁極122:FeCoFe(Tww=60nm)、d=15nm、θ=15°、β=15°
・第2の記録磁極124:FeCoNi
・STO記録素子40:Cu0.99Au0.01(2nm)/Rh(2nm)/[Co0.95Pt0.05/Ni0.95Pt0.05](3nm)/Cu0.980.01(2nm)/[Co0.95Ir0.05/Fe0.95Ir0.05](13nm)/Ti0.950.05(4nm)
・FGLの幅:WFGL=36nm
・媒体基板:3.5インチNiPメッキAl合金基板
・媒体構造:潤滑層(1nm)/C(2nm)/CoCrPt−(SiTi)O2B(4nm)/CoCrPt−(SiTa)O2(4nm)/CoCrPt−SiO2C(4nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(10nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(10nm)
上記で、添加元素Lは、V,Nb,Ta,Ru,Os,Pd,Rh,Irとした。また磁気ヘッドスライダ50には、クリアランス制御用に、抵抗80ΩのNiCr薄膜による熱膨張素子部TFC02a,02bを図7のように配置した。
(記録再生特性評価装置と磁気ヘッド選別方法)
本実施例では、基本的な機構、制御機能は図14と同様であるが、ヘッド駆動制御装置にはバイアス記録電流オーバシュートの半値幅T50制御機能を有するものを用い、更に図15に示すサーボ情報記録制御機能を有するサーボ情報記録制御ボード部、及びサーボ情報記録のタイミング制御用のクロックヘッド609を追加した記録再生評価装置によって磁気ヘッドを選別する方法について説明する(図15においては、図14に示した記録再生特性評価機能の図示を省略した)。
まずマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドのクリアランスを1.5nmとし、サーボ情報記録制御機能を用いてサーボ情報を垂直磁気記録媒体のサーボ領域401に記録した。図15では内周から外周の全領域にサーボ情報を記録した例を示したが、所定の限られた領域(特定ゾーンなど)のみにサーボ情報を記録しても良い。次いでこのサーボ情報を用いて従来方式による位置決めを行い、所定のIWB(max),MWW,MCW,MRWを有し、良好なエラーレートの記録が可能なマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを選別した(第1の選別プロセス)。
本選別試験に合格したマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドに対し、FTI特性を短時間でより精度良く選別できる第2の選別プロセスについて検討した。本発明者らが鋭意検討した結果、図9の挿入図に示すバイアス記録電流IWBの波形において、(a)バイアス記録電流IWB波形のオーバシュート部の半値幅T50を通常の記録時より大きくして立下り時間を長くし、そのバイアス記録電流波形を用いて自己トラックに所定の回数だけ記録を行ってFTI特性を評価することで、より短時間(より少ない記録回数)で精度良くFTI不良品を選別できることが判明した。さらに、(b)記録時のクリアランスも小さくすることを併用して評価することにより、より短時間で精度良くFTI不良品を選別できることも判明した。ただし記録時のクリアランスをあまり小さくすると磁気ヘッドが評価用垂直磁気記録媒体に接触し磨耗してしまうので、クリアランス削減量は0.5nm程度が好ましく、この場合にクリアランス削減の時間短縮効果は全体の30%程度であった。
磁界解析などにより本現象のメカニズムについて検討した結果、記録信号の立下がり時間が大きい場合には記録磁極内に過剰な磁束が残留し、磁極部に何らかの欠陥がある場合には、それの位置で記録磁極端部からの漏洩磁界が大きくなる。特にオーバシュート部の半値幅T50を通常の記録時より大きくすると共にクリアランスを小さくすることにより、その影響度を格段に高めることができるため、結果として、遠隔トラック干渉FTIの発生確率を実用レベルにまで高くできるためであることが明らかになった。
(選別方法と効果)
本節では、選別方法の実施例とその効果について説明する。バイアス記録電流オーバシュートの半値幅T50制御機能を持たせたヘッド駆動制御装置を搭載した上記記録再生評価装置により、まず装置と略同じ半値幅T50(例えば実施例3記載のように200ps以下)で記録再生特性を評価してIWB(max)を選定するとともに磁気ヘッドの選別(第1の選別)を行った。次いでこの試験の合格品について、磁気ヘッドのクリアランスを0.5nm狭くするとともに、半値幅T50を種々変えることで記録ヘッドの立下がり時間を変えて200回同一トラックに記録を行い、FTI特性について図6に示すような評価を行なった。
その結果、図9に示すように半値幅T50を300ps、より望ましくは400psよりも大きくすることにより、遠隔トラック干渉FTIの発生確率を大きくできることを確認できた。更に本実施例の記録再生特性評価装置に温度制御機構を設け、30〜50℃程度の高温条件で同様に評価を行なった所、50回程度と非常に短時間の記録で選別できることも確認された。なおこれらのFTI異常は、スライダ加工プロセスのバラツキにより記録磁極部の絞り部が極端にABS面に近くなってしまっているものや、磁性膜の製膜プロセスのバラツキにより磁性膜に段差を生じ、そこに磁区がトラップされる事などによって発生していることが確認された。
以上の知見に基づき、第2の選別評価として、クリアランス第1の選別試験よりも0.5nm狭くするとともに、バイアス記録電流の半値幅T50を400psとして、図6に示した方法でFTIによるエラーレートの劣化を評価した。ここで自己トラックの記録回数は、100、200、500、1000、2000回とした。その結果、200回の記録でもエラーレートの劣化が認められる磁気ヘッドがあることが確認された。劣化が認めら得ない磁気ヘッド(ランクA)、劣化量が所定値(例えば0.1桁)よりも小さければ(ランクB)その劣化量は2000回の記録を行なっても大きくはならないことが確認された。そこで、本実施例の第2の選別法においては、200回の記録でエラーレートが0.2桁以上劣化したものを不良品(ランクC)として除外することにした。なお、記録回数、半値幅の選定は上記の値に限るものではなく、媒体特性、装置の要求仕様などに応じて適正化することが好ましい。
以上の選別プロセスによって、所定の半値幅設定(例えば実施例3記載のように200ps以下)でかつ電流値の仕様上限であるIWB(max)以下のバイアス記録電流で磁気ヘッドを駆動する磁気記憶装置の製造出荷試験(実施例3参照)において、FTIが誘起される不良ヘッドの割合が0.2%未満と極めて低いことが確認された。これにより、装置仕様としたMWW39nm、MCW42nm、MRW19nmで、FTI耐性が高く、良好なエラーレートの記録が可能なマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドが選別できていることを確認できた。
さらに、メディアサーボライタでサーボ信号を形成した垂直磁気記録媒体に対し、評価装置搭載時のその回転中心を中心としたデータトラックHDDに磁気ヘッドを追従せしめる機能を有する記録再生特性評価装置(図14)に、バイアス記録電流オーバシュート部の半値幅T50制御機能を持たせた本実施例のヘッド駆動制御装置を搭載して記録再生特性評価を行うことで、特性評価時の位置決め精度を向上することができ、磁気ヘッドの第1、第2の選別総合歩留りを10%改善できたので、特に好ましかった。
なお本実施例によるFTI耐性に関する磁気ヘッド選別法をSTOのない従来の垂直磁気記録ヘッドに対して適用した所、装置状態で消費電力の増大、若干のパフォーマンス劣化などが認められたものの、上記とほぼ同様の効果が得られることが確認できた。
〔実施例3〕
実施例1ないし2のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド及び垂直磁気記録媒体を搭載した磁気記憶装置の実施例を図10により説明する。
(磁気記憶装置)
図10に示す本実施の磁気記憶装置は、スピンドルモータ500、垂直磁気記録媒体501、高剛性アーム502、HGA(以下、磁気ヘッドと略称することがある)505、HSA(Head Stack Assembly)506、ヘッド駆動制御装置(R/W−IC)508、R/Wチャネル509、マイクロプロセッサ(MPU)510、ディスクコントローラ(HDC)511、バッファメモリを制御するバッファメモリ制御部516、ホストインタフェース制御部517、RAMなどを用い制御プログラム及び制御データ(パラメータテーブル)を格納するメモリ部518、フラッシュメモリやFROMなどを用い制御プログラムや制御データ(パラメータテーブル)を格納する不揮発性メモリ部519、VCM(Voice Coil Motor)駆動制御部、SPM(Spindle Motor)駆動制御部などから構成されるコンボドライバ520、MPUのバス515などから構成される。
HGA505は、STO、記録再生素子、TFCなどを有するスライダ503と高剛性サスペンション504を具備する。ヘッド駆動制御装置508は、STOを駆動するための駆動信号(駆動電流又は駆動電圧信号)を生成するSTO駆動制御機能や記録アンプ、再生プリアンプなどを有する。R/Wチャネル509は、記録変調部、及び順方向誤り訂正符号の一種であるリードソロモン符号を用いたRS(Reed Solomon)チャネル、もしくは最新のLDPC符号を用いた非RSチャネルなどの信号処理、再生復調部として機能する。
HGA505は、ヘッド駆動制御装置508に対して信号線接続されており、上位装置となるホスト(図示せず)からの記録命令、再生命令に基づくヘッドセレクタ信号で一つの磁気ヘッドを選択して記録、再生を行う。R/Wチャネル509、MPU510、HDC511、バッファメモリ制御部516、ホストインタフェース制御部517、メモリ518は一つのLSIであるSoC(System on Chip)521として構成される。512はこれと駆動制御部、不揮発性メモリなどを搭載した制御ボードである。なお、必要に応じて高剛性サスペンションや高剛性アームには、振動吸収・抑制体などで構成され、一層の振動抑制を目的とするダンパが貼り付けられる。さらに、高剛性サスペンション504やスライダ503に、圧電素子、電磁素子、熱変形素子などによる位置微動調整機構(デュアルアクチュエータ、マイクロステージアクチュエータ)を設けることで、高トラック密度時の高速、高精度位置決めが可能となるので好ましい。
MPU510は、磁気記憶装置の主制御装置であり、記録再生動作や磁気ヘッドの位置決めに必要なサーボ制御などを行う。たとえば、MPUは、ヘッド駆動制御装置508に含まれるレジスタ514にその動作に必要なパラメータを設定する。各種レジスタには、後述のように、所定の温度、垂直磁気記録媒体領域毎のクリアランス制御値(TFC投入電力値に相当)、STO駆動電流値、予備電流値、記録電流値、それらのオーバシュート量、タイミング時間、環境変化に対する時定数などが、必要に応じて独立に設定される。
R/Wチャネル509は信号処理回路であり、情報記録時にはディスクコントローラ511から転送された記録情報を符号化した信号513をヘッド駆動制御装置508に出力し、情報再生時には磁気ヘッド505から出力された再生信号をヘッド駆動制御装置508で増幅した後に、復号化した再生情報をHDC511に出力する。
HDC511は、垂直磁気記録媒体上に記録データ513を書き込む情報記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートをR/Wチャネル509に出力することなどにより、記録再生情報の転送制御、データ形式の変換、ECC(Error Check and Correction)などの処理を行う。
ヘッド駆動制御装置508は、ライトゲートの入力に応じて、少なくともR/Wチャネル509から供給される記録データ513に対応する少なくとも1種の記録信号(記録電流)を生成し、通電タイミングを制御されたSTO駆動信号とともに磁気ヘッドに供給する駆動集積回路で、少なくとも、ヘッド駆動回路、ヘッド駆動電流供給回路、STO遅延回路、STO駆動電流供給回路、STO駆動回路などを含み、MPUから記録電流値、STO駆動電流値、TFC投入電力値、動作タイミングなどが設定されるレジスタを有する。ここで各レジスタ値は、垂直磁気記録媒体の領域、環境温度、気圧などの条件毎に変化させることができる。さらに、ホストシステムとのインターフェースを構成し、磁気記憶装置のメイン制御装置として記録再生動作(記録再生データの転送など)制御、磁気ヘッドの位置決めサーボ制御を実行するMPUからの直接の命令でバイアス記録電流を磁気ヘッドに供給し、さらにHDCから出力されるライトゲートのタイミングにあわせて記録動作を開始する機能も持たせることが好ましい。これらにより、磁気記憶装置の動作を指示するMPUや情報記録を指示するライトゲートの入力に応じてバイアス記録電流や記録信号を供給する手段とSTO駆動制御手段の動作タイミング、それらの電流波形と電流値、クリアランス制御電力、及び記録磁極への予備電流、記録電流などを自由に設定できる。
なお本実施例のヘッド駆動制御装置では、図9の結果を用い、バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を250ps以下、より望ましくは200ps以下とし、記録磁極内の余分な磁束の残留、それに伴う記録磁極端部からの漏洩、遠隔トラック干渉FTIの発生確率を低減した。なお記録信号の該半値幅が200psよりも大きい場合には、実施例2に述べた方法で磁気ヘッドのFTI特性を加速評価、選別しておくことで、磁気記憶装置においてFTI耐性を確保することもできる。但し、高温でのFTI特性劣化を防ぐために、室温での記録再生特性の選別仕様を過剰に厳しくする必要があり、磁気ヘッドの歩留りが5%程度低下した。また温度センサはHDA内などに設けられる。
本実施例では、磁気記録媒体が2個、磁気ヘッドが4個の場合を示したが、磁気記録媒体1個に対し磁気ヘッドスライダが1個でも良く、また磁気記録媒体、磁気ヘッドを目的に応じて複数個に適宜増やしても良い。
(磁気記憶装置の調整方法)
前記選別試験に合格したマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド4本及び垂直磁気記録媒体2枚を図10に示した2.5型もしくは3.5型のHDAもしくは磁気記憶装置に組み込み、サーボトラックライタもしくはセルフサーボライト方式により、所定のサーボ情報を記録した。
上記サーボ情報記録工程では、特定の磁気ヘッドのトラック幅に従い、特定のトラックピッチでサーボトラックが形成される。ところが、本実施例のように磁気記憶装置には記録トラック幅の異なる複数の磁気ヘッドが搭載されており、上記トラックピッチは、異なる記録トラック幅を有するその他の磁気ヘッドに対する最適トラックピッチとは必ずしも一致しない。そこで、磁気記憶装置の製造工程で、それぞれの磁気ヘッドのスクウィーズ特性、隣接トラック干渉ATI、遠隔トラック干渉FTI、747特性などを評価し、最適のデータトラックピッチ(トラックプロファイル)を決定し、前記サーボトラックプロファイルからの変換式を求め、この変換式にしたがって垂直磁気記録媒体データトラックプロファイルを決定する。このデータトラックは、サーボ情報とこの変換式を用いて位置決めされる磁気ヘッドにより、ユーザデータの記録再生が行われるもので、プリアンブル・サーボ部、512Bもしくは4kBのデータ部、パリティ、ECC及びCRC部、及びデータセクタギャップ部で較正される複数のデータセクタから構成される。
最後に、所定の面記録密度を満たす範囲で、全磁気ヘッドにおいて、全ゾーンでのエラーレートが略均一となるように、磁気ヘッド、ゾーン毎にマージンを融通しあい、磁気記憶装置トータルとして最高のパフォーマンスが得られるように、それぞれのトラック密度、線記録密度プロファイルを決定(アダプティブフォーマット)し、そのパラメータを適宜メモリ部に保管、所定の容量を有する磁気記憶装置とした。
なお上記で、図11に示すように各磁気ヘッドに関して装置動作に必要なパラメータの学習を行なった。すなわち、
(1)まず予め、本発明の垂直磁気記録媒体、マイクロ波アシスト磁気ヘッドにおいて、垂直磁気記録媒体のゾーンZp(p=1,…,P)の所定のトラックj、TFC投入電力PTFC(p)(クリアランス)、所定の線記録密度で、IWB(max)以下であり、かつ最も良好な特性が得られる記録電流IWB(p,j)と、STO駆動電流ISTO(p,j)を求め、特性ばらつきを考慮し、所定のゾーンZp毎に、検討すべき記録電流IIWB(m)、STO駆動電流IISTO(n)の組を表1(図12)のパラメータテーブルとして図10の所定のメモリ部に適宜格納しておく。
(2)磁気記憶装置にHGAを組み込んだ時に一般に磁気ヘッドの浮上姿勢が変わり、クリアランス−TFCプロファイルが変化する。そこで所定のゾーンZp(p=1,…,P)の所定のトラックにおいて、所定のバイアス記録電流IIWB (0)、所定のSTO駆動電流IISTO (0)の条件下で、所定のクリアランスとなるTFC投入電力を評価、その値を初期値PPTFC(0)として設定するとともに、この値を用いてクリアランス−TFCプロファイルの較正を行なった。
(3)所定のゾーンZp(p=1,…,P)において表1(図12)のパラメータテーブルに従い、磁気ヘッドHk(k=1,…,K)に関して、上記の較正済みTFC投入電力PTFC(p)(p=1,…,P)で、表1のIWB(m)に従って、所定の線記録密度でFTIを評価し、FTIが発生しない電流値の組を幾つか選択する。
(4)所定のゾーンZp(p=1,…,P)において、上記の較正済みTFC投入電力PTFC(p)(p=1,…,P)で、上記FTIが発生しない電流値の組に対して、表の矢印のようにIWB(m),ISTO(n)の組み合わせに従って、所定の線記録密度でエラーレート、ATIなどの記録再生特性を評価する。本実施例では、LDPC符号を用いた非RSチャネルを用い、セクタエラーレートを指標として評価した。
(5)全セクタで、FTIによるエラーレートの劣化がなく、セクタ不良率が0の状態となるIIWB(m),IISTO(n)の組の中から、STO駆動電流が小さい(すなわちnが小さい)バイアス記録電流との組を複数組選定する。
(6)その組合せのヘッド動作条件でクリアランスCL、及びその時のTFC投入電力PPTFCを評価する。
(7)上記クリアランスCLの値が、予め求めておいた信頼性を確保できる最小クリアランスCL(c)以上で、かつCL(c)+δ以下である組を複数選び、上記合格値の中でm,nの最も小さな(バイアス記録電流とSTO駆動電流の最も小さな)パラメータをPTFC,IWB及びISTOとし、図10のメモリ部518もしくは519のパラメータテーブルに格納した。
ここで、本実施例ではオーバシュートを含むバイアス記録電流は5〜100mA、STO駆動電流は1〜15mAの範囲で検討した。またSTO駆動電流にオーバシュートIISOVを設けて立ち上がり時間を速くし、上記の諸特性を最適化すればより好ましい。LDPC符号を用いた非RSチャネル方式においてはECCの概念がなく、エラーはリードチャネル内において、繰り返し復号アルゴリズムにより訂正されるためにエラー訂正後のエラーレートしか測定できず、セクタ不良率を指標として記録性能を評価した。しかし、LDPC符号を用いた非RSチャネルでもエラーレート訂正能力を制限して意図的にエラーが起こりやすい条件とした場合や、RSチャネルを用いた場合には、通常のエラーレートを指標として評価しても良い。またゾーンZp毎のパラメータについては、内周、中周、外周の代表的な3つのゾーンの所定のトラックでパラメータ設定を行い、その値をパラメータテーブルに格納し、それ以外のゾーンにおいては、その値を予め求めておいた変換式を用いて補正して用いても良い。さらに記録、再生時のTFCプロファイルなどに関しては、必要に応じて本補正をゾーン内の各トラックでのパラメータ補正に用いて、トラック毎にTFCを調整すれば、より好ましい。
(磁気記憶装置の制御)
以下、上記データを用いて磁気記憶装置に記録再生を行う本発明の制御方法について説明する。パソコンなどのホスト、上位システムからの情報の記録や再生の命令に従い、磁気記憶装置のメイン制御装置であるMPU510による制御で、垂直磁気記録媒体501が所定の回転数でスピンドルモータ500により回転する。次いで、所定の情報の記録再生を行なう磁気ヘッドHkが磁気記録媒体上にロードされ、垂直磁気記録媒体のサーボ情報からの再生信号を用いて媒体上の位置を検出する。その位置信号を基に目標位置までの軌跡を計算し、駆動制御部520のVCM駆動制御部がVCM522を制御し、高剛性HSA506、磁気ヘッドHGA505を、垂直磁気記録媒体の所定のゾーンZpにおける所定記録トラック上に高速・高精度に移動(シーク動作)させ、そのトラック位置に磁気ヘッドを追従(フォローイング)させる。そして、そのトラック上の所定のセクタSjにおいて、MPUのファームウェアプログラムによって情報の記録再生を以下のように行なう。
まず情報記録時には、ホストからの記録命令と記録データをホストインタフェース制御部517で受け取ると、記録命令をMPU510で解読し、必要に応じて受信した記録データをバッファメモリに格納する。RSチャネルの場合には、HDC511でCRC(Cyclic Redundancy Check)付加、RLL符号変換(Run-Length Limited coding)後にECC符号を付加し、R/Wチャネル509の記録変調系でパリティ付加、記録補償(ライトプリコンペ)などを行い記録データとする。また非RSチャネルの場合には、HDCでCRCを付加、RLL符号変換後にR/WチャネルでLDPCが付加され、記録補償などを行ない記録データとする。
次いで、HDCから垂直磁気記録媒体上のセクタSjに磁気ヘッドHk503により記録データ513を書き込むデータ記録の開始(記録のタイミング)を指示するためのライトゲートが、R/Wチャネル509に出力され、ライトゲートの入力に応じて、R/Wチャネル509から供給される上記記録データ513に対応する記録信号(記録電流)が生成され、通電タイミングを制御されたSTO駆動信号(駆動電流信号又は駆動電圧信号)とともに駆動信号がFPC配線507を通じて磁気ヘッドHkの記録ヘッド部に供給され、垂直磁気記録媒体上の所定のゾーンの記録トラック内のセクタSjにマイクロ波アシスト方法で記録される。ここで、上記工程で求めた、磁気ヘッドHk及びゾーンZpにおけるTFC投入電力、バイアス記録電流及びSTO駆動電流のそれぞれの最適値SPTFC(k,m),SIWB(k,m)及びSISTO(k,m,n)をメモリ部からヘッド駆動装置のレジスタに保管し、そのデータを用いてマイクロ波アシスト記録ヘッドを以下のように駆動した。
なお情報再生時には、ホストからの再生命令をホストインタフェース制御部517で受け取ると、記録時と同様に選択、位置決め、再生用にクリアランス制御された磁気ヘッドHk503により再生信号が読み取られ、R/W−ICで増幅され、RS符号を用いたRSチャネル、LDPC符号を用いた非RSチャネルなどのR/Wチャネル509に伝送される。ここでRSチャネルの場合には、信号処理による復号化、パリティのデコードなどが行なわれ、次いでHDCで、ECCによるエラー訂正、RLLデコード、CRCによるエラーの有無確認が行なわれる。一方、非RSチャネルの場合には、エラーはR/Wチャネル内でLDPCにより訂正され、次いでHDCで、RLLデコード、CRCによるエラーの有無確認が行なわれる。最後に、これらの情報はバッファメモリ521にバッファリングされ、ホストインタフェース制御部517からホストに再生データとして転送される。
(効果)
本実施例の磁気記憶装置において、所定のゾーン(例えば最内周ゾーンZ0)の所定のトラック位置に上記のパラメータを用いて室温で記録した自己トラックに対し、数百ないし数千回の記録を行ない、遠隔トラックのエラー耐性を評価するFTI特性を評価したところ、所定のFTI耐性が確保できている事を確認できた。
〔実施例4〕
本実施例では、実施例3の磁気記憶装置において、よりロバスト性の高い装置として、装置アイドル時に再記録を行なう方法について説明する。
(磁気記憶装置の調整方法)
まず、同一トラックに特定の回数だけ繰り返し記録が行なわれた場合の書き直し(再記録)をアイドル状態時に行なう適切なタイミングについて説明する。磁気記憶装置においては、書き直し中に電源遮断があった場合に対処するため、該当するトラックのデータをまず再生用のセクタバッファ領域に読み込み、それを磁気記録媒体のリザーブ領域に一旦記録してから、該当トラックに再記録を行っている。このため、データの再記録中にキャッシュされていた情報の読み出し命令が来た場合には、必要なキャッシュ情報が読み出せず、パフォーマンスの劣化を招くことになる。このため、アイドル時に書き直し(再記録)を行なう際に、アイドル状態になった直後に読み出し命令などがこないタイミングを選ぶことが望ましい。
磁気記憶装置においては、一般にアイドルモードなどに移行して消費電力を制御する機能があり、この機能でタイミングを制御すれば上記の危険性は低減できることになる。アイドルモードには、例えば、サーボ機能もオンとして直ちに通常モードに復帰できるパフォーマンスアイドルモード、サーボ機能をオフにし限定した回路のみオンとして消費電力を約1/2に抑えたアクティブアイドルモード、スピンドルは定常回転するが磁気ヘッドをアンロードしてしまう低パワーアイドルモードなどがある。ところが、パフォーマンスアイドルモードでは、再記録時に上記パフォーマンス劣化の危険性が高い。このため上記の再記録を行なうアイドルモードとして、記録再生が可能なアクティブアイドルモードが好ましく、本実施例では再記録が必要な場合には、アクティブアイドルモード移行時に実施することにした。
図13に、そのフローチャートに示す。すなわち、同一トラックに繰り返し行なわれた磁気記録の回数(繰り返し記録回数)を計測しておき、再記録が必要な可能性のあるトラックは予め複数登録しておく。記録時にその回数が、FTIの影響を評価すべき所定の回数(評価移行回数)を超え、所定の領域でのFTIを評価し書き換える必要があると判断された場合には、装置がアクティブアイドル状態にあるかどうかを判定する。装置がアクティブアイドル状態にあれば、FTIによるエラーレート劣化が所定値を超えていれば書き直し(再記録)を行い、上記繰り返し記録回数をリセットする。
一方、記録後に装置がなかなかアクティブアイドル状態にならずに、記録が繰り返される場合には、記録回数が所定の臨界回数を超えたか否かを判定し、所定の臨界回数を超えた場合には、強制的に装置をアクティブアイドルモードに移行してFTIによるエラーレート劣化量の評価プロセスを実行し、FTIによるエラーレート劣化量が所定値(図13のCritical値)を超えた場合には再記録を行い、上記繰り返し記録回数をリセットすることにした。
(効果)
実施例3の磁気記憶装置においては、実施例1、2で説明した磁気ヘッド選別試験を行なった場合にはFTIによるエラーレート劣化の問題は起きず、例えば評価移行回数を1000回、臨界回数を1500回とした本方式では、室温ではパフォーマンス劣化を起こさずに装置動作を確保できることを確認した。
そこで選別仕様を大きく緩和し、高温条件でFTIによるエラーレートの劣化が僅かに観察された磁気ヘッドを磁気記憶装置に組み込み、更にクリアランスを標準条件よりも0.5nm小さくし、かつ、装置環境温度50℃で200本の任意の位置にある同一トラックにそれぞれ10万回の記録を行い、FTI耐力を加速評価した。その結果、本方式を用いない場合には、FTIによるエラーレートの劣化が1〜2桁発生し、本方式の効果を確認できた。
また図13に示した、アクティブアイドル時間を利用して再記録(書き直し)を行なう方法においては一般に消費電力は増大するが、実施例1、2で説明した磁気ヘッド選別試験に合格した磁気ヘッドにおいては、その増加の悪影響は実質的に認められず、本方式と実施例1、2で説明した磁気ヘッド選別試験の組み合わせは、特に好ましかった。
上記の効果を勘案し、上記の高温加速試験でFTIによるエラーレートの劣化が生じない範囲で磁気ヘッドの選別仕様を緩和したところ、磁気ヘッドの歩留りを7%改善する事ができ、非常に好ましかった。なお本選別ヘッドを実施例3の磁気記憶装置に組み込んで特性を評価した所、パフォーマンス、消費電力の劣化、及びFTIは認められないことも確認した。
以上のように、マイクロ波アシスト記録ヘッドを用いた本実施例の方法により、遠方のトラックを消去してしまい、この書き直し範囲が広域に及ぶFTIに関しても、磁気記憶装置のパフォーマンスを劣化することなく、必要に応じて情報の書き直しができ、高い信頼性を有する大容量磁気記憶装置、及びマイクロ波アシスト記録ヘッドを高い製造歩留りで提供できる事が確認できた。
〔実施例5〕
本実施例では、実施例3、4の磁気記憶装置において、環境温度調整を行なう方法について説明する。
(磁気記憶装置の調整方法)
実施例3で説明したパラメータテーブルの値は、初期値として装置内常温(30℃)での制御値が登録される。ところが実際には、クリアランスは温度変化時の熱膨張によって変化する。さらに、垂直磁気記録の保磁力においては、その温度依存性が20Oe/℃程度と大きく、高温では保磁力が低下して記録しやすくなるために、FTIの耐性が劣化する。逆に低温では保磁力が高くなるため記録がより困難となる。そこで本実施例では、これらの温度補正を行うようにした。
すなわち、まず別途組み立てた磁気記憶装置において、予め各温度でクリアランス評価試験、記録再生特性評価試験を行い、単位温度当りの制御値への変換式を実験的に求めた。最後に、このパラメータを磁気記録装置のパラメータテーブルに組み込み、これに従って温度補正を行うようにファームウェアプログラムを組んだ。
磁気記憶装置の実機動作状態で環境温度が変化した場合には、記録再生時に、装置内に設置された温度センサにより温度Tを読み込んで常温との温度差ΔTを算出し、温度補正値を初期値に加えて温度補正した。例えばTFC投入電力においては、低温ほど大きく、高温になるほど小さくなるような温度依存性を持たせ、バイアス電流においては、略一定とした。またSTO駆動電流は、低温ほど大きく、高温になるほど小さくなるような温度依存性を持たせた。なお、機構系の共振も温度特性変化が大きいため、NRRO(Non-repeatable run-out)の影響を抑制するため、温度に応じて特性を変えるサーマルノッチフィルタを同時に導入して適宜学習を行い、より安定な磁気ヘッド位置決め制御系を構成した。
(効果)
本実施例の温度補正を行う事により、低温において記録性能を向上することが可能となり、より磁気性能の高い(保磁力の高い)磁性材料を垂直磁気記録媒体に用いる事ができるようになった。このように垂直磁気記録媒体の磁気異方性定数Hkを高くして設計の自由度を大きく改善できたため、磁気記憶装置の平均的なエラーレートを約0.5桁改善できた。さらに高温で懸念されるFTIのマージンも60℃においても充分確保でき、逆に低温で懸念される記録能力不足についても−5℃で問題なく記録再生ができることが確認され、実施例3、4のいずれの磁気記憶装置においても、−5℃から+60℃の広い温度範囲で磁気記憶装置の信頼性を充分確保できている事が確認できた。
特に実施例4の磁気記憶装置においては、磁気ヘッド、磁気記録媒体の選別仕様を緩和できたため、装置としてのパフォーマンス、歩留りの劣化を招くことなく、磁気ヘッドの歩留りを実施例3の磁気記憶装置に比べて総合的に10%向上でき、特に好ましかった。
〔実施例6〕
本実施例では、幅広のFGLを有するマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドを用いて、その略1/2〜1/3の大きさのピッチで重ね記録を行なう、いわゆる瓦記録方式の磁気記憶装置について説明する。
(磁気ヘッド及び垂直磁気記録媒体)
マイクロ波アシスト磁気記録再生ヘッドを図7に示すものとし、記録ギャップ長GLを45nm、磁極122先端からFGL表面までの距離を15nm、STO素子高さを40nm、FGL幅WFGLを50nmとした。
なお、磁気ヘッドスライダ50には、クリアランス制御用に、抵抗80〜120ΩのWもしくはNiCr薄膜からなる熱膨張素子部TFC02a,02bを図7に示したように配置し、クリアランスを制御した。
垂直磁気記録媒体130は、磁性層を133,139,134の3層とし、マイクロ波アシスト効果が最も強く働く最表面の異方性磁界Hkを大きくし、記録磁極からの記録磁界では十分な記録ができず、STO40を同時に動作させることで始めて充分な記録ができるように磁性膜の構成元素、膜厚などを調整し、磁性層最上層133、中間層139、最下層134のHkは、それぞれ21kOe,16kOe,18kOeとした。
以下に、本実施例のマイクロ波アシスト磁気記録ヘッド、垂直磁気記録媒体の構成、諸元を示す。
・スライダ50:薄型ロングフェムト型(1×0.7×0.2mm3
・FCAC51:1.8nm
・再生ギャップ長Gs:17nm
・再生素子12:TMR(Trw=30nm)
・第1の記録磁極122:FeCoFe(Tww=60nm)、d=15nm、θ=15°、β=15°
・第2の記録磁極124:FeCoNi
・STO記録素子40:Cu0.99Au0.01(2nm)/Rh(2nm)/[Co0.95Pt0.05/Ni0.95Pt0.05](3nm)/Cu0.98Ru0.01(2nm)/[Co0.95Ir0.05/Fe0.95Ir0.05](13nm)/Ti0.950.05(4nm)
・FGLの幅:WFGL=50nm
・媒体基板:3.5インチNiPメッキAl合金基板
・媒体構造:潤滑層(1nm)/C(2nm)/CoCrPt−(SiTi)O2B(4nm)/CoCrPt−(SiTa)O2(4nm)/CoCrPt−SiO2C(4nm)/Ru(10nm)/CoFeTaZr(10nm)/Ru(0.5nm)/CoFeTaZr(10nm)
(磁気記憶装置及びその調整方法)
上記WFGL50nmのマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドと、サーボ情報を記録していない消磁状態の垂直磁気記録媒体を、それぞれ2.5型、3.5型磁気記憶装置に組み込み、38nmのトラックピッチ(TPop)で瓦記録方式によりサーボパターンを記録し、実施例3と同様の方法で瓦記録方式の磁気記憶装置を組み立て、実施例3〜5と同様に調整し、38nmのトラックピッチ38nmの瓦記録方式の磁気記憶装置とした。
(効果)
瓦記録方式により、幅広のFGLによる強いマイクロ波アシスト記録を行なうことにより、WFGLを36nmとして同じトラックピッチの装置を構成した場合に比べ、装置のエラーレートを1桁高くでき、同じ装置容量とした場合にその装置歩留りを10%程度高くできた。
さらに本磁気記憶装置においては、−5℃から+65℃の広い温度範囲で耐食性、遠隔トラック干渉FTIを含めた環境温度変化への追従性、連続記録再生信頼性、HDI信頼性を確保できている事も確認できた。
なお実施例1〜6で説明した本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である
02:熱膨張素子部(TFC)
12:センサ素子
22:第1の記録磁極
24:第2の記録磁極
26:STO発振制御磁界
30:磁気記録媒体
40:高周波磁界発振素子部(STO)
41:高周波磁界発生層(FGL)
43:スピン注入層
47:高周波磁界
50:スライダ
100:ヘッド走行方向
130:磁気記録媒体
500:スピンドルモータ
505:HGA(Head Gimbal Assembly)
506:HSA(Head Stack Assembly)
522:VCM(Voice Coil Motor)

Claims (10)

  1. 垂直磁気記録媒体と、
    前記垂直磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、
    記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極を励磁するバイアス記録電流を通電するためのコイル及び前記記録磁極の近傍に配置され高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備える記録ヘッド部と、磁気再生素子を備える再生ヘッド部とを有する磁気ヘッドと、
    前記磁気ヘッドの動作を制御するヘッド駆動制御部と、
    遠隔トラック干渉を生じることのないバイアス記録電流値及び当該バイアス記録電流値と対になる前記高周波磁界発生素子の駆動電流値を記憶した記憶部とを有し、
    前記ヘッド駆動制御部は、前記記憶部から読み出したバイアス記録電流値と駆動電流値を用いて前記記録磁極と前記高周波磁界発振素子を駆動して前記垂直磁気記録媒体への情報記録を行うことを特徴とする磁気記憶装置。
  2. 請求項1記載の磁気記憶装置において、
    前記記録ヘッド部及び再生ヘッド部と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを調整する熱膨張素子を備え、前記記憶部に前記熱膨張素子への投入電力が記憶されていることを特徴とする磁気記憶装置。
  3. 請求項1記載の磁気記憶装置において、
    前記垂直磁気記録媒体の同一トラックに特定の回数だけ繰り返し記録が行なわれた場合に、アクティブアイドル時間を利用して当該トラックの遠隔トラックを記録し直す機能を有することを特徴とする磁気記憶装置。
  4. 請求項1記載の磁気記憶装置において、
    装置内の温度を検出する温度センサを備え、
    前記温度センサによって検出した温度に応じて前記記憶部に記憶した電流値を調整する機能を有することを特徴とする磁気記憶装置。
  5. 請求項1記載の磁気記憶装置において、
    前記高周波発振素子は前記垂直磁気記録媒体のデータトラックピッチよりも広いトラック幅を有することを特徴とする磁気記憶装置。
  6. 請求項1記載の磁気記憶装置において、
    前記ヘッド駆動制御部は前記バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を調整する機能を有し、該半値幅を200ps以下として記録を行なうことを特徴とする磁気記憶装置。
  7. 記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極を励磁するバイアス記録電流を通電するためのコイル及び前記記録磁極の近傍に配置され高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備える記録ヘッド部と、磁気再生素子を備える再生ヘッド部と、前記記録ヘッド部及び再生ヘッド部と前記垂直磁気記録媒体とのクリアランスを制御する熱膨張素子とを有する磁気記録ヘッドを製造する方法であって、
    前記バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を第1の値に設定して磁気記録媒体の自己トラックを間に挟んだ複数のトラックに記録を行う工程と、
    前記バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を前記第1の値より大きな第2の値に設定して前記自己トラックに複数回の記録を行う工程と、
    前記自己トラックを間に挟んだ複数のトラックを再生してエラーレートを評価し、遠隔トラック干渉の有無を検出し、FTIを誘起しない磁気ヘッドが所定の割合以上で得られる上限のバイアス記録電流を決定する工程と、
    前記遠隔トラック干渉が生じた磁気記録ヘッドをそのエラーレート劣化量に応じて不良品として除外する工程と、
    を有することを特徴とする磁気記録ヘッドの製造方法。
  8. 磁気記録媒体を着脱、駆動する媒体駆動部と、
    サーボ情報を用いて記録再生時の磁気ヘッド位置を制御する位置決め制御部と、
    記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極を励磁するバイアス記録電流を通電するためのコイル及び前記記録磁極の近傍に配置され高周波磁界を発生する高周波磁界発振素子を備える記録ヘッド部と、磁気再生素子を備える再生ヘッド部とを有する磁気ヘッドを着脱するヘッド着脱部と、
    前記ヘッド着脱部に装着した磁気ヘッドによる記録再生条件を設定するヘッド駆動制御部とを備え、
    前記ヘッド駆動制御部は、前記バイアス記録電流のオーバシュート部の半値幅を調整する機能を有し、
    設定したオーバシュート部の半値幅を有するバイアス記録電流を用いて前記記録磁極を励磁して磁気記録媒体の複数のトラックに記録を行い、トラック毎のエラーレートから磁気ヘッドの記録再生特性、及び遠隔トラック干渉の有無を評価することを特徴とする評価装置。
  9. 前記磁気記録媒体において、予めメディアサーボライタでサーボ情報を記録しておき、
    前記媒体駆動部に前記垂直磁気記録媒体を装着した時、回転中心に対して偏心して観測される前記サーボ情報トラックの位置情報を用いてデータトラックに位置決めするための偏心情報及び高次の変動情報を格納した不揮発性メモリ部を備え、
    磁気ヘッド評価時に前記不揮発性メモリ部に格納された情報を装置メモリ部に記憶して磁気ヘッドの記録再生特性を評価することを特徴とする請求項8記載の評価装置。
  10. 記録磁界を発生する記録磁極、前記記録磁極の記録ギャップ内に設けられ高周波磁界を発生する高周波発振素子、磁気記録媒体から情報を読み取る磁気再生素子、及び前記高周波発振素子と磁気記録媒体とのクリアランスを調整する熱膨張素子を備えるマイクロ波アシスト磁気記録ヘッドの動作条件を調整して磁気記憶装置を製造する方法であって、
    前記記録磁界を発生させるために前記記録磁極を励磁する第1の電流の値を変えて垂直磁気記録媒体に情報の記録再生を行なって遠隔トラック干渉特性を評価し、遠隔トラック干渉が発生しない上限の前記第1の電流の値を決定する第1の工程と、
    前記第1の工程で上限の値を決定した前記第1の電流の値と前記高周波発振素子を駆動制御する第2の電流の値を変えて前記垂直磁気記録媒体に記録再生を行ない、適正な記録が行なえる第1、第2の電流からなる複数の組を選定する第2の工程と、
    前記クリアランスが所定の値になるまでゾーン単位で前記熱膨張素子への投入電力を変えながら、前記第2の工程で決定した前記第1の電流の値を可変して前記垂直磁気記録媒体に記録再生を行ない、ゾーン毎に最も高い記録再生特性が得られる前記第1の電流の値と前記第2の電流の値の組合せを、少なくとも上記複数の組から決定する第3の工程と、
    を有することを特徴とする磁気記憶装置の製造方法。
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