以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動車両駆動装置の構成と、電動車両駆動装置が第1変速状態の時に回転力が伝わる経路とを示す説明図である。図1に示すように、インホイールモータである電動車両駆動装置10は、ケーシングGと、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構13と、ホイール軸受50とを含む。ケーシングGは、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構13とを収納する。第1モータ11は、第1回転力TAを出力できる。第2モータ12は、第2回転力TBを出力できる。変速機構13は、第1モータ11と連結される。これにより、変速機構13は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる(入力される)。なお、ここでいうモータの作動とは、モータに電力が供給されて出力軸が回転することをいう。また、変速機構13は、第2モータ12と連結される。これにより、変速機構13は、第2モータ12が作動すると、第2回転力TBが伝えられる(入力される)。そして、変速機構13は、ホイール軸受50と連結され、変速された回転力をホイール軸受50に伝える(出力する)。ホイール軸受50は、電動車両のホイールHが取り付けられる。
変速機構13は、第1遊星歯車機構20と、第2遊星歯車機構30と、クラッチ装置40とを含む。第1遊星歯車機構20は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構20は、第1サンギア21と、第1ピニオンギア22と、第1キャリア23と、第1リングギア24とを含む。第2遊星歯車機構30は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構30は、第2サンギア31と、第2ピニオンギア32aと、第3ピニオンギア32bと、第2キャリア33と、第2リングギア34とを含む。
第1サンギア21は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第1サンギア21は、第1モータ11と連結される。よって、第1サンギア21は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる。これにより、第1サンギア21は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。第1ピニオンギア22は、第1サンギア21と噛み合う。第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア22を保持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば、回転軸Rと平行である。
第1キャリア23は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が第1サンギア21を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第1ピニオンギア22を保持することになる。第1リングギア24は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第1リングギア24は、第1ピニオンギア22と噛み合う。また、第1リングギア24は、第2モータ12と連結される。よって、第1リングギア24は、第2モータ12が作動すると第2回転力TBが伝えられる。これにより、第1リングギア24は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。
クラッチ装置40は、第1キャリア23の回転を規制できる。具体的には、クラッチ装置40は、回転軸Rを中心とした第1キャリア23の回転を規制(制動)する場合と、前記回転を許容する場合とを切り替えできる。以下、クラッチ装置40は、前記回転を規制(制動)する状態を係合状態といい、前記回転を許容する状態を非係合状態という。クラッチ装置40の詳細については後述する。
第2サンギア31は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第2サンギア31は、第1サンギア21を介して第1モータ11と連結される。具体的には、第1サンギア21と第2サンギア31とは、同軸(回転軸R)で回転できるようにサンギアシャフト14に一体で形成される。そして、サンギアシャフト14は、第1モータ11と連結される。これにより、第2サンギア31は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。
第2ピニオンギア32aは、第2サンギア31と噛み合う。第3ピニオンギア32bは、第2ピニオンギア32aと噛み合う。第2キャリア33は、第2ピニオンギア32aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア32aを保持する。また、第2キャリア33は、第3ピニオンギア32bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア32bを保持する。第2ピニオン回転軸Rp2及び第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸Rと平行である。
第2キャリア33は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第2キャリア33は、第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bが第2サンギア31を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bを保持することになる。また、第2キャリア33は、第1リングギア24と連結される。これにより、第2キャリア33は、第1リングギア24が回転(自転)すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。第2リングギア34は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第2リングギア34は、第3ピニオンギア32bと噛み合う。また、第2リングギア34は、ホイール軸受50と連結される。これにより、第2リングギア34が回転(自転)すると、ホイール軸受50は回転する。次に、電動車両駆動装置10における回転力の伝達経路について説明する。
電動車両駆動装置10は、第1変速状態と第2変速状態との2つの変速状態を実現できる。まずは、電動車両の発進時や登坂時(坂道を登る時)に用いられる第1変速状態、いわゆるローギア状態を電動車両駆動装置10が実現する場合を説明する。第1変速状態では、第1モータ11は作動する。第1変速状態の時に、第1モータ11が出力する回転力を第1回転力T1とする。また、第1変速状態の時、第2モータ12は作動しない、すなわち空転する。また、クラッチ装置40は係合状態である。すなわち、第1変速状態では、第1ピニオンギア22は、ケーシングGに対して公転できない状態となる。なお、図1に示す第1回転力T1と、循環回転力T3と、合成回転力T4と、第1分配回転力T5と、第2分配回転力T6との各回転力は、各部位に作用するトルクを示し、単位はNmである。
第1モータ11から出力された第1回転力T1は、第1サンギア21に入力される。そして、第1回転力T1は、第1サンギア21で循環回転力T3と合流する。循環回転力T3は、第1リングギア24から第1サンギア21に伝えられた回転力である。循環回転力T3の詳細については後述する。これにより、第2サンギア31は、第1回転力T1と循環回転力T3とが合成された合成回転力T4が伝えられる。合成回転力T4は、第2遊星歯車機構30によって増幅される。また、合成回転力T4は、第2遊星歯車機構30によって第1分配回転力T5と第2分配回転力T6とに分配される。第1分配回転力T5は、第2リングギア34に分配された回転力である。第2分配回転力T6は、第2キャリア33に分配された回転力である。
第1分配回転力T5は、第2リングギア34からホイール軸受50に伝えられる。これにより、ホイールHは回転し、電動車両は走行する。第2分配回転力T6は、第1遊星歯車機構20に入力される。具体的には、第2分配回転力T6は、第1リングギア24に伝えられる。第2分配回転力T6は、第1遊星歯車機構20によって減少される。具体的には、第2分配回転力T6は、第1リングギア24から第1ピニオンギア22を介して第1サンギア21に伝わる際に変速されることで減少される。また、第2分配回転力T6は、第1リングギア24から第1ピニオンギア22を介して第1サンギア21に伝わる際に、自身(第2分配回転力T6)の回転方向が逆転される。これにより、第2分配回転力T6は、循環回転力T3となって第1サンギア21に伝えられる。
このように、第1モータ11から第1サンギア21に入力された第1回転力T1は、増幅されつつ、増幅された回転力の一部が第1分配回転力T5として出力される。そして、増幅された回転力の残りの回転力は、第2キャリア33から第1リングギア24及び第1ピニオンギア22を介して循環回転力T3として第1サンギア21に伝えられる。第1サンギア21に伝えられた循環回転力T3は、第1回転力T1と合流して合成回転力T4となり第2サンギア31に伝えられる。
以上のように、電動車両駆動装置10は、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間で、回転力の一部が循環する。これにより、電動車両駆動装置10は、より大きな変速比を実現できる。すなわち、電動車両駆動装置10は、第1変速状態の時に、より大きな回転力をホイールHに伝達できる。以下に、第1回転力T1から第2分配回転力T6の値の一例を説明する。
第2サンギア31の歯数をZ1とし、第2リングギア34の歯数をZ4とし、第1サンギア21の歯数をZ5とし、第1リングギア24の歯数をZ7とする。以下に、電動車両駆動装置10の各部に作用する回転力(図1に示す循環回転力T3、合成回転力T4、第1分配回転力T5、第2分配回転力T6)の第1回転力T1に対する比を数式で示す。なお、下記の式(1)〜式(4)で負の値となるものは、第1回転力T1とは逆方向の回転力である。
一例として、歯数Z1を31、歯数Z4を71、歯数Z5を37、歯数Z7を71とする。また、第1回転力T1を75Nmとする。すると、循環回転力T3は154.0Nm、合成回転力T4は229.0Nm、第1分配回転力T5は524.4Nm、第2分配回転力T6は、−295.4Nmとなる。このように、電動車両駆動装置10は、一例として第1モータ11が出力する第1回転力T1を6.99倍に増幅してホイールHに出力できる。次に、共線図を用いて第1変速状態での各部の角速度を説明する。
図2は、実施形態1の電動車両駆動装置が第1変速状態での各部の各回転速度を示す共線図である。以下、一例として、第1サンギア21の角速度をV[rad/s]とする。また、負の値となる角速度は、第1回転力TAとは逆方向の回転であることを示す。図2に示すように、第1サンギア21の角速度はV[rad/s]である。第1キャリア23は、クラッチ装置40により回転が規制されている。よって、第1キャリア23の角速度は0[rad/s]である。第1リングギア24の角速度は0.521V[rad/s]である。第2サンギア31は、第1サンギア21と連結されている。よって、第2サンギア31の角速度はV[rad/s]である。第2キャリア33は、第1リングギア24と連結されている。よって、第2キャリア33の角速度は0.521V[rad/s]である。
第2遊星歯車機構30は、ピニオンギアを2つ有するダブルピニオン式の遊星歯車機構であるため、第2サンギア31から第2リングギア34に伝わる回転力は第2キャリア33で反転する。回転力は、第2キャリア33から第2リングギア34へ伝わる際、第2サンギア31から第2キャリア33へ伝わる時の変化率に−1を乗算した変化率で反転して伝わる。すなわち、図2中では、θ1とθ2とが等しくなる。これにより、第2リングギア34の角速度は0.143V[rad/s]となる。以上により、変速機構13の変速比は、V/0.143V=6.99となる。次に、第2変速状態について説明する。
図3は、実施形態1の電動車両駆動装置が第2変速状態の時に回転力が伝わる経路を示す説明図である。第2変速状態では、第1モータ11は作動する。第2変速状態の時に、第1モータ11が出力する回転力を第1回転力T7とする。また、第2変速状態では、第2モータ12は作動する。第2変速状態の時に、第2モータ12が出力する回転力を第2回転力T8とする。また、クラッチ装置40は非係合状態である。すなわち、第2変速状態では、第1ピニオンギア22は、ケーシングGに対して回転できる状態となる。これにより、第2変速状態では、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間における回転力の循環が遮断される。また、第2変速状態では、第1キャリア23が自由に公転(回転)できるため、第1サンギア21と第1リングギア24とは相対的に自由に回転(自転)できる。なお、図3に示す合成回転力T9は、ホイール軸受50に伝えられるトルクを示し、単位はNmである。
第2変速状態では、第1回転力T7と第2回転力T8との比は、第2サンギア31の歯数Z1と第2リングギア34の歯数Z4との比で定まる。第1回転力T7は、第2キャリア33で第2回転力T8と合流する。これにより、第2リングギア34に合成回転力T9が伝わる。第1回転力T7と、第2回転力T8と、合成回転力T9とは、下記の式(5)を満たす。
ここで、第1サンギア21と第1リングギア24とは、互いに反対方向に回転(自転)するため、第2サンギア31と第2キャリア33とも、互いに反対方向に回転(自転)する。第2サンギア31の角速度を一定とした場合、第2キャリア33の角速度が速くなるほど、第2リングギア34の角速度は遅くなる。また、第2キャリア33の角速度遅くなるほど、第2リングギア34の角速度は速くなる。このように、第2リングギア34の角速度は、第2サンギア31の角速度と、第2キャリア33の角速度とによって連続的に変化する。すなわち、電動車両駆動装置10は、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度が変化することで、変速比を連続的に変更できる。
また、電動車両駆動装置10は、第2リングギア34の角速度を一定にしようとする際に、第1モータ11が出力する第1回転力T7の角速度と、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度との組み合わせを複数有する。すなわち、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度が変化することで、第1モータ11が出力する第1回転力T7の角速度が変化しても、第2リングギア34の角速度を一定に維持できる。これにより、電動車両駆動装置10は、第1変速状態から第2変速状態に切り替わる際に、第2リングギア34の角速度の変化量を低減できる。結果として、電動車両駆動装置10は、変速ショックを低減できる。
次に、第2モータ12が出力する第2回転力T8について説明する。第2モータ12は、下記の式(6)を満たす第2回転力T8以上の回転力を出力する必要がある。なお、下記の式(6)中の、1−(Z4/Z1)は、第2サンギア31と第2リングギア34との間の回転力比を示す。
したがって、第1モータ11が任意に回転する際に第2リングギア34の回転力及び角速度を調節するためには、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とは、下記の式(7)を満たせばよい。なお、第1回転力TAは第1モータ11の任意の角速度での回転力であり、第2回転力TBは第2モータ12の任意の角速度での回転力である。
図4は、実施形態1の第1モータ及び第2モータの角速度−回転力特性の一例を示すグラフである。モータの出力軸の角速度と、その角速度で出力できる最大回転力とは、互いに関係する。この関係をモータの角速度−回転力特性(回転数−トルク特性、NT特性)という。よって、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とは、第1モータ11の出力軸の角速度が0から想定される最大角速度Nmaxの範囲内で、上記の式(7)を満たす必要がある。図4に示す角速度−回転力特性は、第1モータ11の出力軸の角速度が0から想定される最大角速度Nmaxの範囲内で、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とが上記の式(7)を満たす場合の第1モータ11及び第2モータ12の角速度−回転力特性の一例である。次に、クラッチ装置40について説明する。
クラッチ装置40は、例えば、ワンウェイクラッチ装置である。ワンウェイクラッチ装置は、第1方向の回転力のみを伝達し、第1方向とは逆方向である第2方向の回転力を伝達しない。すなわち、ワンウェイクラッチ装置は、図1及び図3に示す第1キャリア23が第1方向に回転しようとする際に係合状態となり、第1キャリア23が第2方向に回転しようとする際に非係合状態となる。ワンウェイクラッチ装置は、例えば、カムクラッチ装置や、ローラクラッチ装置である。以下、クラッチ装置40はカムクラッチ装置であるものとして、クラッチ装置40の構成を説明する。
図5は、実施形態1のクラッチ装置を示す説明図である。図6は、実施形態1のクラッチ装置のカムを拡大して示す説明図である。図5に示すように、クラッチ装置40は、第2部材としての内輪41と、第1部材としての外輪42と、係合部材としてのカム43とを含む。なお、内輪41が第1部材として機能し、外輪42が第2部材として機能してもよい。内輪41及び外輪42は、筒状部材である。内輪41は、外輪42の内側に配置される。内輪41と外輪42とのうちの一方は、第1キャリア23に連結され、他方はケーシングGに連結される。本実施形態では、内輪41は第1キャリア23に連結され、外輪42はケーシングGに連結される。カム43は、略円柱状の棒状部材である。但し、棒状部材の中心軸に直交する仮想平面で切ったカム43の断面形状は、真円ではなく歪な形状である。カム43は、内輪41の外周部と外輪42の内周部との間に、内輪41及び外輪42の周方向に沿って複数設けられる。
図6に示すように、クラッチ装置40は、ワイヤゲージ44と、ガータスプリング45とを含む。ワイヤゲージ44は、弾性部材である。ワイヤゲージ44は、複数のカム43が分散しないようにまとめる。ガータスプリング45は、カム43が内輪41及び外輪42に常に接触するようにカム43に力を与える。これにより、内輪41又は外輪42に回転力が作用した際に、カム43は迅速に内輪41及び外輪42と噛み合うことができる。よって、クラッチ装置40は、非係合状態から係合状態に切り替わる際に要する時間を低減できる。なお、非係合状態では、内輪41と外輪42との間で力は伝達されていない。また、係合状態では、内輪41と外輪42との間で力は伝達されている。
クラッチ装置40は、内輪41に第1方向の回転力が作用すると、カム43が内輪41及び外輪42と噛み合う。これにより、内輪41と外輪42との間で回転力が伝達され、第1キャリア23は、ケーシングGから反力を受ける。よって、クラッチ装置40は、第1キャリア23の回転を規制できる。また、クラッチ装置40は、内輪41に第2方向の回転力が作用すると、カム43が内輪41及び外輪42と噛み合わない。これにより、内輪41と外輪42との間で回転力が伝達されず、第1キャリア23は、ケーシングGから反力を受けない。よって、クラッチ装置40は、第1キャリア23の回転を規制しない。このようにして、クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置としての機能を実現する。
本実施形態の場合、クラッチ装置40は、第1変速状態、すなわち第2モータ12が作動していない状態であって、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力する場合に、図1に示す第1キャリア23が回転(自転)する方向に内輪41が回転すると係合状態となる。すなわち、上述の第1方向は、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力し、かつ、第2モータが作動していない際に第2部材としての内輪41が回転する方向である。この状態で、第2モータ12が作動すると、第2キャリア33の回転方向は逆転する。これにより、クラッチ装置40は、第2変速状態の時、すなわち第2モータ12が作動し、かつ、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力する場合に非係合状態となる。以上により、クラッチ装置40は、第2モータ12が作動するか否かによって従動的に係合状態と非係合状態とを切り替えできる。
ここで、クラッチ装置40は、ローラクラッチ装置でもよい。但し、カムクラッチ装置は、回転力(トルク)容量がローラクラッチ装置よりも大きい。すなわち、カムクラッチ装置は、内輪41と外輪42との間で伝達できる力の大きさがローラクラッチ装置よりも大きい。よって、クラッチ装置40は、カムクラッチ装置である方が、より大きな回転力を伝達できる。
また、クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置ではなく、シリンダ内のピストンを作動流体によって移動させることで2つの回転部材を係合させたり、電磁アクチュエータによって2つの回転部材を係合させたりする方式のクラッチ装置でもよい。但し、このようなクラッチ装置は、ピストンを移動させるための機構が必要となったり、電磁アクチュエータを作動させるための電力が必要となったりする。しかし、クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置ならば、ピストンを移動させるための機構を必要とせず、電磁アクチュエータを作動させるための電力も必要としない。クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置ならば、内輪41又は外輪42(本実施形態では内輪41)に作用する回転力の方向が切り替えられることで、係合状態と非係合状態とを切り替えできる。よって、クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置である方が、部品点数を低減でき、かつ、自身(クラッチ装置40)を小型化できる。次に、電動車両駆動装置10の構造の一例を説明する。
図7は、実施形態1の電動車両駆動装置の外観を模式的に示す説明図である。図8は、図7のA−A断面図である。図9は、実施形態1の電動車両駆動装置を分解して示す説明図である。以下、上記で説明した構成要素については、重複する説明は省略し、図中において同一の符号で示す。図8に示すように、ケーシングGは、第1ケーシングG1と、第2ケーシングG2と、第3ケーシングG3と、第4ケーシングG4とを含む。第1ケーシングG1と、第2ケーシングG2と、第4ケーシングG4とは、筒状部材である。第2ケーシングG2は、第1ケーシングG1よりもホイールH側に設けられる。第1ケーシングG1と第2ケーシングG2とは、例えば4本のボルトで締結される。
第3ケーシングG3は、第1ケーシングG1の2つの開口端のうち第2ケーシングG2とは反対側の開口端、すなわち、第1ケーシングG1の電動車両の車体側の開口端に設けられる。第1ケーシングG1と第3ケーシングG3とは、例えば4本のボルトで締結される。これにより、第3ケーシングG3は、第1ケーシングG1の開口を塞ぐ。第4ケーシングG4は、第1ケーシングG1の内部に設けられる。第1ケーシングG1と第4ケーシングG4とは、例えば8本のボルトで締結される。
図8及び図9に示すように、第1モータ11は、第1ステータコア11aと、第1コイル11bと、第1インシュレータ11cと、第1ロータ11dと、第1モータ出力軸11eと、第1レゾルバ11fとを含む。第1ステータコア11aは、筒状部材である。第1ステータコア11aは、図8に示すように、第1ケーシングG1と第3ケーシングG3とに挟み込まれて位置決め(固定)される。第1コイル11bは、第1ステータコア11aの複数個所に設けられる。第1コイル11bは、第1インシュレータ11cを介して第1ステータコア11aに巻きつけられる。
第1ロータ11dは、第1ステータコア11aの径方向内側に配置される。第1ロータ11dは、第1ロータコア11d1と、第1マグネット11d2とを含む。第1ロータコア11d1は、筒状部材である。第1マグネット11d2は、第1ロータコア11d1の外周部に複数設けられる。第1モータ出力軸11eは、棒状部材である。第1モータ出力軸11eは、第1ロータコア11d1と連結される。第1レゾルバ11fは、第1ロータコア11d1に設けられる。第1レゾルバ11fは、第1ロータコア11d1の回転角度を検出する。
第2モータ12は、第2ステータコア12aと、第2コイル12bと、第2インシュレータ12cと、第2ロータ12dと、第2レゾルバ12fとを含む。第2ステータコア12aは、筒状部材である。第2ステータコア12aは、第1ケーシングG1と第2ケーシングG2とに挟み込まれて位置決め(固定)される。第2コイル12bは、第2ステータコア12aの複数個所に設けられる。第2コイル12bは、第2インシュレータ12cを介して第2ステータコア12aに巻きつけられる。
第2ロータ12dは、第2ステータコア12aの径方向内側に設けられる。第2ロータ12dは、クラッチ装置40と共に第4ケーシングG4によって、回転軸Rを中心に回転できるように支持される。第2ロータ12dは、第2ロータコア12d1と、第2マグネット12d2とを含む。第2ロータコア12d1は、筒状部材である。第2マグネット12d2は、第2ロータコア12d1の外周部に複数設けられる。第2レゾルバ12fは、第2ロータコア12d1に設けられる。第2レゾルバ12fは、第2ロータコア12d1の回転角度を検出する。
ここで、第1ステータコア11a及び第2ステータコア12aのより好ましい態様を説明する。インホイールモータは、小型化が求められると共に、より大きな回転力をホイールに伝達できることが要求される。このような、インホイールモータは、永久磁石同期モータを備える傾向がある。永久磁石同期モータは、渦電流によるエネルギーの損失を低減するために、プレス成形された薄板の電磁鋼板が積層されて、ステータコアやロータコアが形成される。
永久磁石同期モータのステータコアとロータコアとの間、いわゆるエアギャップで発生するせん断力は、エアギャップに面する部分の表面積に比例する。なぜならば、ステータコアとロータコアとの間に作用するせん断力のエアギャップでの密度は、エアギャップの磁束密度によって定まり、また、エアギャップの有効な磁束密度は、永久磁石の残留磁束密度とコア材料の無方向性電磁鋼板の飽和磁化(飽和磁束密度)などの材料特性で定まるためである。
また、永久磁石同期モータ用の永久磁石として用いることができる良好な特性を有する磁石としてネオジム磁石がある。しかしながら、ネオジム磁石の残留磁束密度は、1.4[T]程度である。一方、コア材料の無方向性電磁鋼板の飽和磁化(飽和磁束密度)は、1.9[T]程度である。以上により、特別に出力軸が高速で回転できるように設計されたモータや、特別に大きな回転力を出力できるように設計されたモータを除き、永久磁石同期モータのエアギャップ内でのせん断力の密度は、モータの大きさに関係なく略一定となる。
したがって、ステータコアの断面形状と、ロータコアの断面形状とが同一であれば、モータが出力できる回転力は、ステータコア及びロータコアの回転軸方向の寸法に比例する。これは、ステータコアの断面形状と、ロータコアの断面形状とが同一であれば、モータの大きさが異なっても、エアギャップの半径が等しいためである。なお、ここでいう断面形状は、モータの回転軸に直交する仮想平面における断面形状である。また、ここでいう同一には、製造誤差や寸法誤差により断面形状が異なる場合も含まれる。
以上により、電動車両駆動装置10は、回転軸R方向での第1ステータコア11aの寸法と、回転軸R方向での第2ステータコア12aの寸法とが調節されることで、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とが上記の式(7)を満たすように設計されてもよい。例えば、回転軸Rに直交する仮想平面で切った第1ステータコア11aの断面形状(以下第1ステータコア11aの断面形状という)と、回転軸Rに直交する仮想平面で切った第2ステータコア12aの断面形状(以下第2ステータコア12aの断面形状という)とが同一である場合、回転軸R方向での第1ステータコア11aの寸法と、回転軸R方向での第2ステータコア12aの寸法との比は、上記の式(7)で算出される第1回転力TAと第2回転力TBとの比と等しく設定される。これにより、電動車両駆動装置10は、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とが上記の式(7)を満たすことになる。
本実施形態では、電動車両駆動装置10は、第1ステータコア11aの断面形状と、第2ステータコア12aの断面形状とが同一である。これにより、電動車両駆動装置10は、以下に説明する効果を奏する。モータの設計では、ステータコアの断面形状がモータの磁気特性に大きく関係するため、ステータコアの断面形状を変更すると、モータの設計に要求される労力が増大する。よって、電動車両駆動装置10は、第1ステータコア11aの断面形状と、第2ステータコア12aの断面形状とが同一に形成されることで、設計に要する労力を低減できる。また、第1ステータコア11aの断面形状と、第2ステータコア12aの断面形状とが同一の場合、第1ステータコア11a及び第2ステータコア12aは、同一の金型で製造されることができる。よって、電動車両駆動装置10は、製造に要する労力を低減できる。また、電動車両駆動装置10は、製造に要するコストを低減できる。
ここで、上述のように、電動車両駆動装置10は、小型化が求められる。また、電動車両駆動装置10は、ショックアブソーバよりも鉛直方向下側に配置される。よって、電動車両駆動装置10は、軽量化が求められる。よって、第2ステータコア12aの回転軸R方向の寸法を過剰に大きくすることは好ましくない。さらに、上記の式(5)で示されるように、第2リングギア34に作用する回転力は、第2サンギア31の歯数Z1と第2リングギア34の歯数Z4との比で決定される。よって、第2モータ12が出力する回転力が増加しても、第2リングギア34がホイールHに伝達できる回転力の大きさは変化しない。以上により、第2ステータコア12aの回転軸R方向の寸法を過剰に大きくして第2モータ12が出力する第2回転力TBを第1モータ11が出力する第1回転力TAよりも過剰に大きくすることは好ましくない。以下に、第2ステータコア12aの回転軸R方向における好ましい寸法の設定方法を説明する。
図10は、モータが出力する回転力の個体差の出現確率を示すグラフである。図10では、モータが出力する回転力T[Nm]と設計値での回転力Tdとの比である無次元回転力がどの程度の個体差を有するかを示している。図10の縦軸は、個体差の出現確率密度を示し、横軸は無次元回転力を示す。モータが出力する回転力は、モータの寸法や、磁気特性などの要因により、図10に示すように、設計値に対して最大で18%程度の誤差が生じる。図10に示すように、無次元回転力の標準偏差σは、0.06程度である。
そこで、第1回転力TAと第2回転力TBとの比は、第2サンギア31と第2キャリア33との間に作用する回転力比の82%以上に設定される。本実施形態では、第1ステータコア11aの断面形状と第2ステータコア12aの断面形状とが同一であるため、第1ステータコア11aの回転軸R方向の寸法と第2ステータコア12aの回転軸R方向の寸法との比は、上記の式(7)から算出される第1回転力TAと第2回転力TBとの比に対して3σすなわち18%以内に設定される。すなわち、第1ステータコア11aの回転軸R方向の寸法と第2ステータコア12aの回転軸R方向の寸法との比は、前記回転力比の82%以上118%以下に設定される。これにより、電動車両駆動装置10は、第1モータ11及び第2モータ12の個体差により第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とが上記の式(7)を満たさせなくなるおそれを低減できる。
また、本実施形態では、第1ステータコア11aの断面形状と第2ステータコア12aの断面形状とが同一である場合を説明したが、さらに、第1ロータコア11d1の断面形状と第2ロータコア12d1の断面形状も同一である。これにより、電動車両駆動装置10は、第1モータ11及び第2モータ12の設計及び製造に要する労力を低減できる。また、第1モータ11及び第2モータ12を製造するために要するコストを低減できる。
電動車両駆動装置10は、さらに、図7と図8と図9とに示すスタットボルト51と、図7及び図8に示すボルト52と、ショックアブソーバ取付部53と、第1セレーション54と、図7に示す防水パネルコネクタ55と、図8に示す第2セレーション56と、ロックナット57とを含む。図7に示すように、ホイール軸受50は、例えば8本のボルト52で第2ケーシングG2に締結される。防水パネルコネクタ55は、第1ケーシングG1に設けられる。防水パネルコネクタ55は、電力源と電気的に接続されることで、ケーシングG内に設けられる第1モータ11及び第2モータ12に電力を供給する。
図8に示すように、ホイール軸受50は、外輪50aと、第1内輪50bと、第2内輪50cとを含む。外輪50aと、第1内輪50bと、第2内輪50cとは、筒状部材である。第1内輪50bは外輪50aよりも径方向内側(回転軸R側)に設けられ、第2内輪50cは第1内輪50bよりも径方向内側(回転軸R側)に設けられる。また、第2内輪50cは、第2遊星歯車機構30を覆うように設けられる。すなわち、第2遊星歯車機構30は、第2内輪50cよりも径方向内側(回転軸R側)に設けられる。
第1内輪50b及び第2内輪50cは、自身(第1内輪50b及び第2内輪50c)の外周部と外輪50aの内周部との間に転動体が設けられることで、外輪50aに対して回転軸Rを中心に回転(自転)できる。また、第2内輪50cは、自身(第2内輪50c)の内周部に第2リングギア34が設けられる。第2リングギア34は、例えば、第2内輪50cと一体に形成される。スタットボルト51は、第2内輪50cのフランジ部分に例えば4本設けられる。スタットボルト51は、図示しないホイールに設けられた孔に挿入され、ホイールナットがねじ込まれる。これにより、ホイールは、ホイール軸受50に取り付けられる。ロックナット57は、ホイール軸受50に適当な予圧を与える。これにより、ホイール軸受50は、剛性が高められる。
ショックアブソーバ取付部53は、第1ケーシングG1に設けられる。具体的には、ショックアブソーバ取付部53は、第1ケーシングG1のうち、電動車両駆動装置10が電動車両の車体に取り付けられた際に鉛直方向上側となる部分に設けられる。ショックアブソーバ取付部53は、第1ボルト孔53aと、第2ボルト孔53bとを含む。この第1ボルト孔53a及び第2ボルト孔53bにボルトが挿入され、前記ボルトにナットがねじ込まれることで、電動車両駆動装置10は、電動車両の車体に締結される。
第1セレーション54は、第2キャリア33に形成される。具体的には、第2キャリア33の両端部のうち、電動車両の車体側の端部の外周部に形成される。第1セレーション54は、第2モータ12の第2ロータ12dに形成されたセレーションと嵌合する。これにより、第2ロータ12dの回転力は、第2キャリア33に連結される。また、第2キャリア33は、第1セレーション54が設けられる部分の内周部に第1リングギア24が形成される。第2セレーション56は、サンギアシャフト14のうち、第1モータ出力軸11e側の端部に形成される。第2セレーション56は、第1モータ出力軸11eと嵌合する。これにより、サンギアシャフト14は、第1モータ11に連結される。
上記の構成により、電動車両駆動装置10は、ホイールを保持し、かつ、第1モータ11及び第2モータ12から出力された回転力を前記ホイールに伝えることで、電動車両を走行させることができる。なお、本実施形態では、第1モータ11と、第2モータ12と、第1サンギア21と、第1キャリア23と、第1リングギア24と、第2サンギア31と、第2キャリア33と、第2リングギア34と、ホイール軸受50とがすべて同軸上に配置されているが、電動車両駆動装置10は、必ずしもこれらの構成要素が同軸上に配置されなくてもよい。また、本実施形態の電動車両駆動装置10は、第2リングギア34がホイール軸受50に直接連結されているが、第2リングギア34が歯車や継手を介してホイール軸受50に連結されてもよい。
(実施形態2)
図11は、実施形態2の電動車両駆動装置の構成を示す説明図である。図11に示す実施形態2の電動車両駆動装置60は、実施形態1の電動車両駆動装置10と変速機構の構成が異なる。以下、実施形態1の電動車両駆動装置10が有する構成要素と同様の構成要素は、同一の符号を付して説明を省略する。電動車両駆動装置60は、変速機構63を含む。変速機構63は、第1モータ11と連結されて第1モータ11が出力した回転力が伝えられる(入力される)。また、変速機構63は、第2モータ12と連結されて第2モータ12が出力した回転力が伝えられる(入力される)。そして、変速機構63は、ホイール軸受50と連結され、変速された回転力をホイール軸受50に伝える(出力する)。ホイール軸受50は、電動車両のホイールHが取り付けられる。
変速機構63は、第1遊星歯車機構70と、第2遊星歯車機構80と、クラッチ装置90とを含む。第1遊星歯車機構70は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構70は、第1サンギア71と、第1ピニオンギア72と、第1キャリア73と、第1リングギア74とを含む。第2遊星歯車機構80は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構80は、第2サンギア81と、第2ピニオンギア82aと、第3ピニオンギア82bと、第2キャリア83と、第2リングギア84とを含む。第2遊星歯車機構80は、第1遊星歯車機構70よりも第1モータ11及び第2モータ12側に配置される。
第2サンギア81は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第2サンギア81は、第1モータ11と連結される。よって、第1モータ11が作動すると、第2サンギア81は、第1回転力TAが伝えられる。これにより、第2サンギア81は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。第2ピニオンギア82aは、第2サンギア81と噛み合う。第3ピニオンギア82bは、第2ピニオンギア82aと噛み合う。第2キャリア83は、第2ピニオンギア82aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア82aを保持する。第2キャリア83は、第3ピニオンギア82bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア82bを保持する。第2ピニオン回転軸Rp2は、例えば、回転軸Rと平行である。第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸Rと平行である。
第2キャリア83は、回転軸Rを中心に回転できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第2キャリア83は、第2ピニオンギア82a及び第3ピニオンギア82bが第2サンギア81を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第2ピニオンギア82a及び第3ピニオンギア82bを保持することになる。第2リングギア84は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第2リングギア84は、第3ピニオンギア82bと噛み合う。また、第2リングギア84は、第2モータ12と連結される。よって、第2モータ12が作動すると、第2リングギア84は、第2回転力TBが伝えられる。これにより、第2リングギア84は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。
第1サンギア71は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第1サンギア71は、第2サンギア81を介して第1モータ11と連結される。具体的には、第1サンギア71と第2サンギア81とは、同軸(回転軸R)で回転できるようにサンギアシャフト64に一体で形成される。そして、サンギアシャフト64は、第1モータ11と連結される。これにより、第1サンギア71は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。
第1ピニオンギア72は、第1サンギア71と噛み合う。第1キャリア73は、第1ピニオンギア72が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア72を保持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば、回転軸Rと平行である。第1キャリア73は、回転軸Rを中心に回転できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第1キャリア73は、第1ピニオンギア72が第1サンギア71を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第1ピニオンギア72を保持することになる。
また、第1キャリア73は、第2リングギア84と連結される。これにより、第1キャリア73は、第2リングギア84が回転(自転)すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。第1リングギア74は、第1ピニオンギア72と噛み合う。また、第1リングギア74は、ホイールHと連結される。これにより、第1リングギア74が回転(自転)すると、ホイールHは回転する。クラッチ装置90は、第2キャリア83の回転を規制できる。具体的には、クラッチ装置90は、回転軸Rを中心とした第2キャリア83の回転を規制(制動)する場合と、前記回転を許容する場合とを切り替えできる。次に、参考として、共線図を用いて第1変速状態での各部の角速度を説明する。
図12は、実施形態2の電動車両駆動装置が第1変速状態での各部の各回転速度を示す共線図である。以下、一例として、第2サンギア81の角速度をV[rad/s]とする。また、Z1と、Z4と、Z5と、Z7とは、実施形態1のものと同一である。図12に示すように、第2サンギア81の角速度はV[rad/s]である。第2キャリア83は、クラッチ装置90により回転が規制されている。よって、第2キャリア83の角速度は0[rad/s]である。第2遊星歯車機構80は、ピニオンギアを2つ有するダブルピニオン式の遊星歯車機構であるため、第2サンギア81から第2リングギア84に伝わる回転力は第2キャリア83で反転する。回転力は、第2キャリア83から第2リングギア84へ伝わる際、第2サンギア81から第2キャリア83へ伝わる時の変化率に−1を乗算した変化率で反転して伝わる。すなわち、図12中では、θ3とθ4とが等しくなる。これにより、第2リングギア84の角速度は0.437V[rad/s]である。
第1サンギア71は、第2サンギア81と連結されている。よって、第1サンギア71の角速度はV[rad/s]である。第1キャリア73は、第2リングギア84と連結されている。よって、第1キャリア73の角速度は0.437V[rad/s]である。また、第1リングギア74の角速度は0.143V[rad/s]となる。以上により、変速機構63の変速比は、V/0.143V=6.99となる。このように、電動車両駆動装置60は、実施形態1の電動車両駆動装置10と同様の原理により、実施形態1の電動車両駆動装置10が奏する効果と同様の効果を奏する。
(実施形態3)
図13は、実施形態3の電動車両駆動装置の断面図である。図13は、回転軸Rを含む平面で電動車両駆動装置を切断したときの断面を示すものである。図13に示すように、電動車両駆動装置100は、第1モータMo1及び第2モータMo2を含む。第1モータMo1は、第1回転力TAを出力できる。第2モータMo2は、第2回転力TBを出力できる。変速機構13は、第1モータMo1及び第2モータMo2と連結される。変速機構13は、実施形態1と同様の構成であるので、説明を省略する。なお、変速機構13に変えて、実施形態2の変速機構63を用いてもよい。変速機構13の第3ピニオンギア32bは、第2リングギア34と噛み合っている。第2リングギア34は、ホイール軸受102と連結される。第2リングギア34が回転すると、ホイール軸受102は回転する。
第1モータMo1は、第1ロータ103と、第1モータステータ104と、第1レゾルバ105とを含む。第1モータステータ104は、第1ステータコア104aと、第1コイル104bと、第1インシュレータ104cとを含む。第1ステータコア104aは、磁性体で形成された筒状部材であり、例えば電磁鋼板を積層したもので構成されている。第1コイル104bは、第1ステータコア104aの複数箇所に設けられる。第1コイル104bは、第1インシュレータ104cを介して第1ステータコア104aに巻き付けられる。
第1ロータ103は、第1ロータコア103aと第1ロータディスク103bとを含む。第1ロータコア103aは、筒状部材であり、第1ステータコア104aの径方向内側に、径方向にある空隙を隔てて第1ステータコア104aと同軸に配置される。すなわち、第1モータステータ104は、第1ロータコア103aの径方向外側に配置される。第1ロータコア103aは、磁性体であり、例えば電磁鋼板を積層したもので形成されている。第1ロータコア103aの内部には、第1マグネット103cが複数埋め込まれている。第1ロータコア103aの径方向内側には、円盤状の第1ロータディスク103bが配置され、第1ロータディスク103bが第1ロータコア103aを支持している。第1ロータディスク103bは、フランジを備えた筒状部が周囲に組み合わされた円盤部材と、リング状部材とで構成されている。筒状部は、軸を含む断面がL字形である。第1ロータコア103aの軸方向側面は円盤部材のフランジに突き当てられている。第1ロータコア103aは円盤部材のフランジとリング状部材とに挟まれて、円盤部材のフランジとリング状部材とがねじ止め固定されることで第1ロータディスク103bに第1ロータコア103aが支持される。
第1ロータディスク103bの中心、詳しくは円盤部材の中心には、第1モータ出力軸106がキーなどの連結部材を用いて固定されており、第1モータMo1の出力が第1モータ出力軸106へ出力される。第1ロータディスク103bの形態や、第1ロータディスク103bと第1ロータコア103aとの結合の形態は、以上述べたものには限定されない。第1ロータディスク103bは、第1ロータコア103aを支持するものであればよい。
第1ロータディスク103bは、非磁性体であり、磁界に相互作用をほとんど及ぼさない性質を持つ材料で形成されている。第1ロータディスク103bは、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、樹脂から形成されている。第1ロータディスク103bに強度が必要とされる場合には、第1ロータディスク103bはオーステナイト系ステンレスで形成されることが好ましい。第1ロータディスク103bを軽量にするためには、第1ロータディスク103bをアルミニウムで形成することが好ましい。
第1レゾルバ105は、第1ロータコア103aの回転角度を検出する。第1ロータディスク103bには、第1モータ出力軸106に近接するように第1レゾルバロータ105aがねじ止めにより固定されている。第1レゾルバロータ105aに対向するように、第1レゾルバステータ105bが配置されている。第1レゾルバロータ105aと第1レゾルバステータ105bとは、径方向にある空隙を隔てて同軸に配置されている。第1レゾルバロータ105aが第1ロータディスク103bに固定されているため、第1レゾルバロータ105aは第1ロータコア103aと一体となって回転し、第1レゾルバロータ105aと第1レゾルバステータ105bとの磁気的関係を検出することにより、第1ロータコア103aの回転角度を検出することができる。第1レゾルバロータ105aと第1レゾルバステータ105bとの磁気的関係を検出することから、第1レゾルバ105の検出精度を向上させるためには、第1レゾルバ105付近に強い外部磁界が存在しないことが好ましい。第1ロータディスク103bを、非磁性体により形成することで、第1ロータコア103aに設けられた第1マグネット103cからの磁束の一部が、第1ロータディスク103bを通って第1レゾルバステータ105bに流れることが低減されるため、第1レゾルバ105の検出精度を向上させることができる。その結果、第1レゾルバ105を第1ロータディスク103bに近接して配置することができるため、電動車両駆動装置100の軸方向寸法を短くすることができる。
第2モータMo2は、第2ロータ107と、第2モータステータ108と、第2レゾルバ109とを含む。第2モータステータ108は、第2ステータコア108aと、第2コイル108bと、第2インシュレータ108cとを含む。第2ステータコア108aは、磁性体で形成された筒状部材であり、例えば電磁鋼板を積層したもので構成されている。第2コイル108bは、第2ステータコア108aの複数箇所に設けられる。第2コイル108bは、第2インシュレータ108cを介して第2ステータコア108aに巻き付けられる。第2ロータ107は、第2ロータコア107aと第2ロータディスク107bとを含む。第2ロータコア107aは、筒状部材であり、第2ステータコア108aの径方向内側に配置される。すなわち、第2モータステータ108は、第2ロータコア107aの径方向外側に配置される。第2ロータコア107aは、磁性体であり、例えば電磁鋼板を積層したもので形成されている。第2ロータコア107aの内部には、第2マグネット107cが複数埋め込まれている。第2ロータコア107aの径方向内側には、円盤状の第2ロータディスク107bが配置され、第2ロータディスク107bが第2ロータコア107aを支持している。第2ロータディスク107bは、フランジが形成された円筒部材と、リング状部材とで構成されている。円筒部材は、軸を含む断面がL字形である。第2ロータコア107bの軸方向側面は円筒部材のフランジに突き当てられている。第2ロータコア107bは円筒部材のフランジとリング状部材とに挟まれて円筒部材のフランジとリング状部材とがねじ止め固定されることで第2ロータディスク107bに第2ロータコア107aが支持される。第2ロータディスク107bの形態や、第2ロータディスク107bと第2ロータコア107aとの結合の形態は、以上述べたものには限定されない。第2ロータディスク107bは、第2ロータコア107aを支持するものであればよい。
第2ロータディスク107bは、非磁性体である。第2ロータディスク107bは、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、樹脂から形成されている。第2ロータディスク107bに強度が必要とされる場合には、第2ロータディスク107bはオーステナイト系ステンレスで形成されることが好ましい。第2ロータディスク107bを軽量にするためには、第2ロータディスク107bをアルミニウムで形成することが好ましい。
第2レゾルバ109は、第2ロータコア107aの回転角度を検出する。第2ロータディスク107bには、第2レゾルバロータ109aが固定されている。第2レゾルバロータ109aに対向するように、第2レゾルバステータ109bが配置されている。第2レゾルバロータ109aと第2レゾルバステータ109bとは、径方向にある空隙を隔てて同軸に配置されている。第2レゾルバロータ109aが第2ロータディスク107bに固定されているため、第2レゾルバロータ109aは第2ロータコア107aと一体となって回転し、第2レゾルバロータ109aと第2レゾルバステータ109bとの磁気的関係を検出することにより、第2ロータコア107aの回転角度を検出することができる。第2レゾルバロータ109aと第2レゾルバステータ109bとの磁気的関係を検出することから、第2レゾルバ109の検出精度を向上させるためには、第2レゾルバ109付近に強い外部磁界が存在しないことが好ましい。第2ロータディスク107bを、非磁性体により形成することで、第2ロータコア107aに設けられた第2マグネット107cからの磁束の一部が、第2ロータディスク107bを通って第2レゾルバステータ109bに流れることが低減されるため、第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。その結果、第2レゾルバ109を第2ロータディスク107bに近接して配置することができるため、電動車両駆動装置100の軸方向寸法を短くすることができる。
第2ロータディスク107bの内径側には、変速機構13が配置されており、第1モータMo1のようにロータディスクの内径側にレゾルバを配置することが困難である。そのため第2レゾルバ109を第2ロータディスク107bに固定すると、第2レゾルバ109は、第2ロータコア107a及び第2モータステータ108aそれぞれの側面に対向するような位置に配される。対向する第2レゾルバ109と第2ロータコア107a及び第2モータステータ108aとのそれぞれの側面とを空間的に遮るように、磁性体で形成された板状の磁気シールド部材110(板状部材)が設けられている。具体的には、磁気シールド部材110は、ドーナツ状の板状部材であり、例えば電磁鋼板の薄板をプレス等して成型することにより製造される。磁気シールド部材110の径方向外側端部110aは、第2ステータコア108aに磁気的に通じる位置に配されている。磁気シールド部材110の端部110aが第2ステータコア108aに接触していなくても、第2ステータコア108aに非常に近い位置に配されることで、磁気シールド部材110は第2ステータコア108aと磁気的に通じることができる。
本実施形態では、磁気シールド部材110の端部110aは第2ステータコア108aに非常に近接して配置されており、磁気シールド部材110の径方向外側の端部110aは、後で詳しく説明する第1ケーシング100G1に固定されているが、磁気シールド部材110が固定される部材と、第2モータステータ108が固定される部材とを共に磁性体で形成し、磁気シールド部材110と第2ステータコア108aとが磁気的に通じるようにして、磁気シールド部材110と第2モータステータ108とで磁束の通りやすいループを形成してもよい。磁気シールド部材110が、第2レゾルバ109と第2ロータコア107a及び第2モータステータ108とを磁気的に遮蔽し、磁性体で形成されて端部110aが第2モータステータ108と磁気的に通じる位置に配されていることで、第2ロータ107と第2モータステータ108との間で生じる漏れ磁束が、磁気シールド部材110に流れ込む。その結果、漏れ磁束が第2レゾルバ109に影響することを低減でき、第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。その結果、第2レゾルバ109を第2モータMo2に隣接して設けることができ、電動車両駆動装置100の軸方向寸法を短くすることができる。
なお、本実施形態では第1モータMo1には磁気シールド部材は設けられていないが、第1レゾルバ105と第1ロータコア103a及び第1モータステータ104とを磁気的に遮蔽し、かつ磁性体で形成されて端部が第1モータステータ104と磁気的に通じる位置に配された磁気シールド部材を第1モータMo1に設けてもよい。これにより、漏れ磁束が第1レゾルバ105に影響することを低減でき、第1レゾルバ105の検出精度を向上させることができる。
第1モータMo1及び第2モータMo2は、ケーシング100Gに収納されている。ケーシング100Gは、第1ケーシング100G1と、第2ケーシング100G2と、第3ケーシング100G3とを含む。第1ケーシング100G1(非磁性体部材)は、筒状部材であり、第1モータステータ104及び第2モータステータ108を固定する筒状部111(モータステータ固定部、非磁性体部材)の内部に、第1レゾルバステータ105b及び第2レゾルバステータ109bを固定する円盤状の円盤部112(レゾルバステータ固定部、非磁性体部材)が形成されているものである。本実施形態では、筒状部111と円盤部112とは、一体の構成であり、非磁性体で形成されている。したがって、第1モータステータ104と第1レゾルバステータ105bとは、及び第2モータステータ108と第2レゾルバステータ109bとは、それぞれ非磁性体部材である第1ケーシング100G1を介して結合されていることになる。このように、第1モータステータ104と第1レゾルバステータ105bと、及び第2モータステータ108と第2レゾルバステータ109bとが、それぞれ非磁性体部材である第1ケーシング100G1を介して結合されていることで、第1モータMo1又は第2モータMo2の磁束が、ケーシング100Gを通して第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109に流れ込むことを低減することができる。その結果、第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。
第2ケーシング100G2は筒状部材である。第2ケーシング100G2は、第1ケーシング100G1よりもホイールH側に設けられる。第1ケーシング100G1と第2ケーシング100G2とは、例えば4本のボルトで締結される。
第3ケーシング100G3は、第1ケーシング100G1の2つの開口端のうち第2ケーシング100G2とは反対側の開口端、すなわち、第1ケーシング100G1の電動車両の車体側の開口端に設けられる。第1ケーシング100G1と第3ケーシング100G3とは、例えば4本のボルトで締結される。これにより、第3ケーシング100G3は、第1ケーシング100G1の開口を塞ぐ。
ケーシング100Gには、変速機構13が収納されている。第1サンギア21は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシング100G内に支持される。第1キャリア23は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシング100G内に支持される。第2サンギア31は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシング100G内に支持される。第2キャリア33は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシング100G内に支持される。電動車両駆動装置100が第1変速状態の時に回転力が伝わる経路及び第2変速状態の時に回転力が伝わる経路については、ケーシングGの代わりにケーシング100Gが、ホイール軸受50の代わりにホイール軸受102が用いられている他は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
(変形例1)
図14は、実施形態3の変形例1に係る電動車両駆動装置120の部分断面図である。図14は、電動車両駆動装置120の第1モータMo1及び第2モータMo2付近を示すものである。電動車両駆動装置120においては、ケーシング100Gの代わりに、ケーシング120Gが用いられている。ケーシング120Gは、第1ケーシング120G1と、第2ケーシング100G2と、第3ケーシング100G3とを含む。第1ケーシング120G1は、2つの部材を含んでいる。すなわち、第1モータステータ104及び第2モータステータ108を固定する筒状部(モータステータ固定部)と、第1レゾルバステータ及び第2レゾルバステータを固定する円盤部122(レゾルバステータ固定部)とは、別の部材として構成されている。本実施形態では、筒状部121が磁性体で形成され、円盤部122が非磁性体で構成されている。そのため、第1モータステータ104と第1レゾルバステータ105bとは、及び第2モータステータ108と第2レゾルバステータ109bとは、非磁性体部材である円盤部122を介して結合されていることになる。その結果、第1モータMo1又は第2モータMo2の磁束が、ケーシング120Gを通して第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109に流れ込むことを低減することができ、第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。
筒状部121が非磁性体で形成され、円盤部122が非磁性体で構成されていても、同様の効果が得られる。すなわち、第1モータステータ104と第1レゾルバステータ105bとは、及び第2モータステータ108と第2レゾルバステータ109bとは、非磁性体部材である円盤部122を介して結合されていることになる。その結果、第1モータMo1又は第2モータMo2の磁束が、ケーシング120Gを通して第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109に流れ込むことを低減することができ、第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。
電動車両駆動装置120が第1変速状態の時に回転力が伝わる経路及び第2変速状態の時に回転力が伝わる経路については、ケーシングGの代わりにケーシング120Gが、ホイール軸受50の代わりにホイール軸受102が用いられている他は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
(変形例2)
図15は、実施形態3の変形例2に係る電動車両駆動装置の部分断面図である。図15は、電動車両駆動装置130の第1モータMo1及び第2モータMo2付近を示すものである。電動車両駆動装置130においては、第1モータステータ104及び第2モータステータ108を固定する筒状部131(モータステータ固定部)と第1レゾルバステータ105b及び第2レゾルバステータ109bを固定する円盤部132(レゾルバステータ固定部)とが一体となって第1ケーシング130G1を構成しており、第1ケーシング130G1は、磁性体により形成されている。磁性体とは、磁束を通しやすい性質を持つ物質であり、例えば強磁性体である。第1ケーシング130G1の円盤部132は、第1スペーサ133を介して第1レゾルバステータ105bを、第2スペーサ134を介して第2レゾルバステータ109bをケーシング130Gに固定している。第1スペーサ133及び第2スペーサ134は、非磁性体で形成されている。第1スペーサ133は第1レゾルバステータ105bと接し、第2スペーサ134は第2レゾルバステータ109bと接する。このように非磁性体で形成された第1スペーサ133を介して第1レゾルバステータ105bが、非磁性体で形成された第2スペーサ134を介して第2レゾルバステータ109bが円盤部132(レゾルバステータ固定部)に固定されることで、第1モータステータ104と第1レゾルバステータ105bとは、及び第2モータステータ108と第2レゾルバステータ109bとは、非磁性体部材である第1スペーサ133又は第2スペーサ134を介して結合されていることになる。その結果、第1モータMo1又は第2モータMo2の磁束が、ケーシング130Gを通して第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109に流れ込むことを低減することができ、第1レゾルバ105又は第2レゾルバ109の検出精度を向上させることができる。また、ケーシング130G1を磁性体で形成することができるので、ケーシング130G1の材料の選択の幅が広がる。
ケーシング130Gは、第1ケーシング130G1と、第2ケーシング100G2と、第3ケーシング100G3とを含む。電動車両駆動装置130が第1変速状態の時に回転力が伝わる経路及び第2変速状態の時に回転力が伝わる経路については、ケーシングGの代わりにケーシング130Gが、ホイール軸受50の代わりにホイール軸受102が用いられている他は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態及びその変形例に係る構成は、すでに述べた実施態様1、実施態様2、これから述べる実施態様4、又は実施形態5に係る電動車両駆動装置に適用することが可能であり、適用された電動車両駆動装置は、本実施形態と同様の効果を奏する。
(実施形態4)
図16は、実施形態4に係る電動車両駆動装置153の部分断面図である。図16は、電動車両駆動装置153の回転軸Rを含む断面であり、ホイール軸受140付近を示すものである。以下の説明では、図13も参照されたい。本実施形態に係るホイール軸受140は、第1内輪141(第1の軸受内輪)と、第2内輪142(第2の軸受内輪)と、外輪143(軸受外輪)と含む。第1内輪141、第2内輪142及び外輪143は、筒状である。第1内輪141の径方向内側(回転軸R側)に第2内輪142が設けられる。第2内輪142は、第2遊星歯車機構30を覆うように設けられる。第1内輪141及び第2内輪142の径方向外側に、第1内輪141及び第2内輪142を囲むようにして外輪143が設けられる。
第1内輪141の外周部及び第2内輪142の外周部と、外輪143の内周部との間には、複数の転動体144が配置されている。第1内輪141の外周部及び第2内輪142の外周部と、外輪143の内周部とに、軌道面が形成されており、軌道面に挟まれて保持器145により保持された転動体144(鋼球)が、軌道面を転動することにより、第1内輪141及び第2内輪142と、外輪143とは、互いに回転自在となっている。第1内輪141は、ロックナット57(ベアリングナット)により与圧され、位置決めされている。第2内輪142は、内周部に第2リングギア34が設けられる。第2リングギア34には、第3ピニオンギア32bが噛み合う。第2内輪142は、第2リングギア34と一体になって同軸で回転する。なお、変速機構13の代わりに変速機構63を用いた場合には、第2内輪142の内周部には第1リングギア74が設けられ、第1ピニオンギア72と噛み合う。本実施形態では、第2リングギア34と第2内輪142とは、同一部材であるが、別部材として形成されていてもよい。例えば、第2リングギアと第2内輪142とが別部材として形成されて、溶接などで固定されてもよく、キーなどの連結部材により連結固定されてもよい。
スタットボルト51は、第2内輪142のフランジ部分に例えば4本設けられる。スタットボルト51は、ブレーキディスクに設けられた孔148に挿入される。これにより、ホイール軸受140に、ブレーキディスク149が取り付けられる。ホイール軸受140には、図示しないホイールHも取り付けられる。
第2内輪142と外輪143との間には間隙150があり、ブレーキディスク149側に開口している。この間隙150を閉塞するように、シール部151が設けられている。シール部151は、例えばスチールの心金とゴムとから形成されており、第2内輪142と外輪143とで形成された円環状の間隙150に納められている。シール部151により、ホイール軸受140の内部(すなわち外輪143と、第2内輪142及び第1内輪141との間隙)に、外部からダスト、水などが浸入すること低減されている。シール部151は、ブレーキディスク149と対向するように配置されている。シール部151とブレーキディスク149との間には、外輪143のブレーキディスク149側の端部と、シール部151とを覆うように第1シールド部152が設けられる。
ここで、一般にブレーキディスクは、ブレーキディスクとブレーキパッドとの摩擦により制動力を発生させる。この際、摩擦により熱が発生し、ブレーキディスクは高温になる。一般に、インホイールモータでは、ホイール内の限られた空間を利用するため、インホイールモータの軸方向寸法をできるだけ短くすることが好ましい。このため、ホイール軸受の内輪は円筒形状になっており、内径側の空間に変速機構が配置される。本実施形態の電動車両駆動装置153においても、ホイール軸受140は一般的な車両に用いられるホイール軸受よりも転動体軌道径が大きい。その結果、本実施形態においては、ブレーキディスク149とホイール軸受140の転動体軌道部分が接近して配置される。本実施形態においては、第1シールド部152が、シール部151とブレーキディスク149との間に設けられているので、シール部151にブレーキディスク149の熱が直接伝わらず、シール部151がブレーキディスク149の熱により劣化することが低減される。
図17は、実施形態4に係る第1シールド部152の斜視図である。第1シールド部152は、円筒154の一端の縁に、ドーナツ状の円板部155を形成したもので、軸を含む断面が略L字状、好ましくはL字状の円筒状部材である。第1シールド部152は、外輪143のブレーキディスク149側の端部156に固定される。また、第1シールド部152は、第2内輪142とは接触しないように第2内輪142に沿った形状であり、第1シールド部152は、第2内輪142とは第2内輪142の回転を妨げない程度の所定の隙間157を空けて配置される。この隙間157は、できるだけ狭くすることが好ましい。これにより、大きなダスト等がホイール軸受140の内部に侵入することを低減することができる。第1シールド部152は、種々の材料から形成される。例えばSPCC鋼板(冷間圧延鋼板)、各種樹脂から製造される。第1シールド部152の耐熱性を向上させるには、第1シールド部152は、鋼、特にSPCC鋼板から形成されていることが好ましい。
ブレーキディスク149とは反対側、すなわち車体側には、第1内輪141と外輪143との間とに開口部156が形成されている。ブレーキディスク149とは反対側の外輪143の端部159及び開口部158は、第2シールド部160で覆われる。ここで、一般にホイール軸受の内部には潤滑のためのグリースが充填されており、第2シールド部160は、充填されたグリースがブレーキディスク149とは反対側の開口部158から、変速機構13が納められたケーシング内の空間へ流出することを低減させ、ホイール軸受140の良好な潤滑を維持する。また、ケーシング内は、変速機構13の潤滑のために供給される潤滑油が飛散する空間であり、第2シールド部160は、飛散した潤滑油がホイール軸受140内に侵入することを低減させる。
図18は、実施形態4に係る第2シールド部160の斜視図である。第2シールド部160は、短い円筒の両端を、軸方向に向かってすぼめた形状をしており、断面は略U字状、好ましくはU字状の部材である。第2シールド部160は、外輪143と第2ケーシング100G2とに挟まれて固定される。第2シールド部160は、第1内輪141の外周とは接触しないように、第1内輪141の外周に沿った形状であり、第2シールド部160は、第1内輪141とは第1内輪141の回転を妨げない程度の所定の隙間161を空けて配置される。この隙間161は、できるだけ狭くすることが好ましい。第2シールド部160が、第1内輪141と所定の隙間161を空けて配置され、第1内輪141の外周に沿った形状であることで、より一層グリースの流出を低減させて、ホイール軸受140の良好な潤滑を維持する。また、飛散した潤滑油がホイール軸受140内に侵入することをより低減させる。
第2シールド部160は、種々の材料から形成される。例えばSPCC鋼板(冷間圧延鋼板)、各種樹脂から製造される。第2シールド部160の耐熱性を向上させるためには、第2シールド部160は、鋼、特にSPCC鋼板で形成されていることが好ましい。
本実施形態の第1シールド部152又は第2シールド部160は、すでに述べた実施態様1、実施態様2、実施態様3、実施形態3の変形例、又は、これから述べる実施態様5に係る電動車両駆動装置に適用することが可能であり、適用された電動車両駆動装置は、本実施形態と同様の効果を奏する。
(実施形態5)
図19は、実施形態5に係る電動車両駆動装置の断面図である。以下の説明では、図13も適宜参照されたい。電動車両駆動装置170のホイール軸受175には、第2リングギア171が固定されている。第2リングギア171は、第2リングギア34と同様の機能を果たしており、第3ピニオンギア32bと噛み合っている。図20は、実施形態5に係る第2リングギア171の斜視図である。第2リングギア171は、はす歯歯車である。第2リングギア171を、はす歯歯車として構成することで、平歯車として構成する場合と比較して、平歯車と同じ歯幅で許容伝達トルクを増すことができる。第2リングギア171は、第2内輪172とは別体として形成されている。はす歯歯車の歯形はねじれ角を有しているために、トルク伝達時にアキシャル荷重が生じる。第2リングギア171と第2内輪172を別体として形成する場合は、アキシャル荷重を受けられる構造とする必要があるため、Cリングなどの単純な抜け止め部材を用いることができない。
本実施形態の第2リングギア171及び第2内輪172は、以下の構成により、アキシャル荷重を支持することが可能である。第2リングギア171の外周には、周方向に等間隔で、複数の突起部173が設けられている。突起部173は、本実施形態では6個形成されている。突起部173は、第2リングギア171の軸方向長さの全部に形成されているのではなく、一部に形成されている。突起部173の周方向長さ174については後述する。本実施形態において、突起部173は、第2リングギア171の片端に形成されているが、第2リングギア171の軸方向中央に形成されていてもよい。この場合、突起部の断面は、略凸形、好ましくは凸形である。本実施形態では、ホイール軸受175には変速機構13が接続されているが、変速機構63が接続される場合には、第1ピニオンギア72と噛み合う第1リングギア74が、第2リングギアと同様な形状に形成され、ホイール軸受175に接続される。
図21は、実施形態5に係る第2内輪172の正面図である。図22は、図21のX−X断面図である。図23は、実施形態5に係る第2内輪172のカットモデル斜視図である。図24は、第2内輪172の形状を説明する説明図であり、第2内輪172を、軸に垂直な平面で切断したときの断面を簡略に表したものである。図25は、実施形態5に係るキー部材の斜視図である。図26は、実施形態5に係るホイール軸受175の一部の組み立て方を示す説明図である。図27は、実施形態5に係るホイール軸受175の一部を示す説明図である。
第2内輪172(軸受内輪)は、円筒状の円筒部176と、円筒部の一方の開口を閉じるホイール取付部177とを有する。円筒部176の内周には、軸方向に伸びた、第2リングギア171の突起部173と同数の凹部178(キー溝部)が形成されている。本実施形態では、凹部178は6つ形成されている。凹部178が円筒部176の内周に形成されている結果、突起部173と同数の凸部179も円筒部176の内周に形成されていることになる。凹部178は、各凹部178の周方向長さ180を弧とし軸Rを中心としたときの中心角αが互いに同一となるように形成されている。また、凸部179は、各凸部179の周方向長さ181を弧とし軸Rを中心としたときの中心角βが互いに同一となるように形成されている。また凹部178と凸部179はそれぞれ、中心角αと中心角βとが同一となるように形成されている。
本実施形態では、中心角α及び中心角βは、30°である。中心角α及び中心角βは、凹部178及び凸部179の数により適宜変更される。凹部178の周方向長さ180は、突起部173の周方向長さ174よりも大きく形成されている。すなわち、突起部173の周方向長さ174は、凹部178の周方向長さ180よりも小さく形成されている。すなわち、突起部173の外径は、凹部178の内径よりも小さく形成されている。その結果、突起部173は凹部178に軸方向から挿入することができる。凹部178の周方向長さ180は、突起部174を凹部178に挿入する際に必要十分な程度に、突起部173の周方向長さ174よりも大きく形成されていることが好ましい。凹部178の内半径と、凸部179の内半径との差は、突起部173を支持する面の大きさに関係する。すなわち、トルク伝達により第2リングギア171に生じるラジアル荷重及びアキシャル荷重に応じて、突起部173の数及び径方向寸法を適切に決める。
凹部178の加工を容易にするために、凹部178の軸方向端部に径方向に溝を形成して、スロッターなどの工作機械で加工するようにしてもよい。
第2内輪172の円筒部176の内周には、周方向に環状に環状凹部182(第1の環状凹部、溝段部)が形成されている。環状凹部182の内径は、凹部178の内径と同じであるか、凹部178の内径よりも大きい。環状凹部182は、凹部178と連続した部分を有する。本実施形態では、凹部178は、環状凹部182よりもホイール取付部177寄りまで形成されている。したがって、環状凹部182と凹部178とで、連続する十字状の溝が形成されている。第2リングギア171が作動するとき、ラジアル荷重は、突起部173の周方向端面183にかかって、後で説明するキー部材184の周方向端面185で受けられる。(キー部材184について周方向というときは、第2リングギア171と第2内輪174とキー部材184とを組み合わせた後の、第2内輪174の周方向をいう。またキー部材184について軸方向というときは、第2リングギア171と第2内輪174とキー部材184とを組み合わせた後の、第2内輪174の軸方向をいう。以下同様である。)したがって、凹部178が環状凹部182よりもホイール取付部177寄りまで形成されていることで、キー部材184の周方向端面185は、ラジアル荷重を環状凹部182と凹部178とが交差する位置を中心として両持ちで受けることができる。キー部材184の周方向端面185が、環状凹部182の位置を中心として片持ちでラジアル荷重を受けることができる場合には、凹部178は環状凹部182までのみ形成されていればよい。
第2内輪174の円筒部176の内周には、周方向に環状のCリング溝186(第2の環状凹部)が形成されている。Cリング溝186は、環状凹部182よりも第2内輪172のホイール取付部177とは反対側にある端面189から近い位置に形成されている。Cリング溝186には、第2内輪172と第2リングギア171とキー部材184とが組み立てられた後、キー部材184の抜け止めのためにCリング190が嵌め込まれる。Cリングによってキー部材184の抜け止めを行うことで、第2内輪172と第2リングギア171とが簡便に結合される。Cリング190の代わりに、例えばリング状の抜け止め部材を溝に圧入してもよい。
図25に示すように、キー部材184は、湾曲した板状の部材である。キー部材184は、凹部178とわずかな隙間で嵌め合う寸法に形成されている。キー部材184の曲面は、凹部178の底面に対応した形状であり、曲面の曲率半径は、凹部178の曲率半径と略一致、好ましくは一致している。キー部材184の軸方向長さ191は、Cリング溝186のホイール取付部177側の軸方向端面192から凹部178の軸方向端面193までの長さ194と等しくなるように形成されている。環状凹部182よりホイール取付部177側の凹部178を先細りの略テーパ状に形成し、キー部材184の一部を先細りの略テーパ状に形成して、キー部材184が凹部178のテーパ部分で嵌め合わされるようにしてもよい。
次に、第2内輪172と第2リングギア171とキー部材184とを組み立てる手順について図26を用いて説明する。まず、第2内輪172の凹部178に、第2リングギア171の突起部173をホイール取付部側とは反対方向から環状凹部182の位置まで挿入する(矢印A)。第2リングギア171の突起部173を、凹部178と環状凹部182とが交差する位置Pまで挿入したら、突起部173が環状凹部182の軸方向端面195に支持されるように第2リングギア171を回転させ、突起部173を環状凹部182の位置で回転させる(矢印B)。1ピッチ、すなわち30°だけ第2リングギア171を回転させると、突起部173で塞がれていた凹部178が空き、突起部173は環状凹部182に嵌め合わされた状態となる。空いた凹部178にキー部材184を凹部178の軸方向端面193に突き当たるまで挿入する(矢印C)。キー部材184が凹部178に挿入されると、第2リングギア171は第2内輪172に対して回転不能となる。キー部材184を凹部178に挿入した後、Cリング溝186にCリング190を嵌め込んでキー部材184を抜け止めする。
第2リングギア171が作動した場合のラジアル荷重は、第2リングギア171の突起部173の周方向端面183から、キー部材184の周方向端面185へ伝わり、キー部材184の周方向端面185から凹部178の周方向側面196へと伝わって受けられる。第2リングギア171が作動した場合のアキシャル荷重は、第2リングギア171の突起部173の軸方向端面197から、環状凹部182の軸方向端面195へ伝わって受けられる。キー部材184はアキシャル荷重を受けないので、キー部材184の抜け止めのための部材は、Cリング190などの部材で十分である。
本実施形態に係るホイール軸受175は、第2リングギア171と第2内輪と172とが別体で構成されている。一般に、本実施形態の第2内輪172のように、円筒部の開口の一方が閉じられた構造は、その内周に歯車を形成するための加工が難しい。歯車における騒音低減や、伝達トルク向上のためには、歯車を研削して精度よく仕上げることが好ましいが、円筒部の開口の一方が閉じられた構造では研削加工をすることが難しい。本実施形態においては、第2リングギア171と第2内輪172とが別体として構成されているため、第2リングギア172を精度よく形成することが容易である。
本実施形態に係るホイール軸受175は、上記のように第2リングギア171、第2内輪172及びキー部材184を構成することで、第2リングギア171と第2内輪172とが別体として構成されていても、ラジアル荷重及びアキシャル荷重を受けることができる。
本実施形態に係るホイール軸受175の構成は、すでに述べた実施態様1、実施態様2、実施態様3、実施形態3の変形例、又は、実施態様4に係る電動車両駆動装置に適用することが可能であり、適用された電動車両駆動装置は、本実施形態と同様の効果を奏する。