以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動車両駆動装置の構成と、電動車両駆動装置が第1変速状態の時に回転力が伝わる経路とを示す説明図である。図1に示すように、インホイールモータである電動車両駆動装置10は、ケーシングGと、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構13と、ホイール軸受50とを含む。ケーシングGは、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構13とを収納する。第1モータ11は、第1回転力TAを出力できる。第2モータ12は、第2回転力TBを出力できる。変速機構13は、第1モータ11と連結される。これにより、変速機構13は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる(入力される)。なお、ここでいうモータの作動とは、モータに電力が供給されて出力軸が回転することをいう。また、変速機構13は、第2モータ12と連結される。これにより、変速機構13は、第2モータ12が作動すると、第2回転力TBが伝えられる(入力される)。そして、変速機構13は、ホイール軸受50と連結され、変速された回転力をホイール軸受50に伝える(出力する)。ホイール軸受50は、電動車両のホイールHが取り付けられる。
変速機構13は、第1遊星歯車機構20と、第2遊星歯車機構30と、クラッチ装置40とを含む。第1遊星歯車機構20は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構20は、第1サンギア21と、第1ピニオンギア22と、第1キャリア23と、第1リングギア24とを含む。第2遊星歯車機構30は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構30は、第2サンギア31と、第2ピニオンギア32aと、第3ピニオンギア32bと、第2キャリア33と、第2リングギア34とを含む。
第1サンギア21は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第1サンギア21は、第1モータ11と連結される。よって、第1サンギア21は、第1モータ11が作動すると、第1回転力TAが伝えられる。これにより、第1サンギア21は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。第1ピニオンギア22は、第1サンギア21と噛み合う。第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア22を保持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば、回転軸Rと平行である。
第1キャリア23は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が第1サンギア21を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第1ピニオンギア22を保持することになる。第1リングギア24は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第1リングギア24は、第1ピニオンギア22と噛み合う。また、第1リングギア24は、第2モータ12と連結される。よって、第1リングギア24は、第2モータ12が作動すると第2回転力TBが伝えられる。これにより、第1リングギア24は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。
クラッチ装置40は、第1キャリア23の回転を規制できる。具体的には、クラッチ装置40は、回転軸Rを中心とした第1キャリア23の回転を規制(制動)する場合と、前記回転を許容する場合とを切り替えできる。以下、クラッチ装置40は、前記回転を規制(制動)する状態を係合状態といい、前記回転を許容する状態を非係合状態という。クラッチ装置40の詳細については後述する。
第2サンギア31は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第2サンギア31は、第1サンギア21を介して第1モータ11と連結される。具体的には、第1サンギア21と第2サンギア31とは、同軸(回転軸R)で回転できるようにサンギアシャフト14に一体で形成される。そして、サンギアシャフト14は、第1モータ11と連結される。これにより、第2サンギア31は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。
第2ピニオンギア32aは、第2サンギア31と噛み合う。第3ピニオンギア32bは、第2ピニオンギア32aと噛み合う。第2キャリア33は、第2ピニオンギア32aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア32aを保持する。また、第2キャリア33は、第3ピニオンギア32bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア32bを保持する。第2ピニオン回転軸Rp2及び第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸Rと平行である。
第2キャリア33は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第2キャリア33は、第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bが第2サンギア31を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bを保持することになる。また、第2キャリア33は、第1リングギア24と連結される。これにより、第2キャリア33は、第1リングギア24が回転(自転)すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。第2リングギア34は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第2リングギア34は、第3ピニオンギア32bと噛み合う。また、第2リングギア34は、ホイール軸受50と連結される。これにより、第2リングギア34が回転(自転)すると、ホイール軸受50は回転する。次に、電動車両駆動装置10における回転力の伝達経路について説明する。
電動車両駆動装置10は、第1変速状態と第2変速状態との2つの変速状態を実現できる。まずは、電動車両の発進時や登坂時(坂道を登る時)に用いられる第1変速状態、いわゆるローギア状態を電動車両駆動装置10が実現する場合を説明する。第1変速状態では、第1モータ11は作動する。第1変速状態の時に、第1モータ11が出力する回転力を第1回転力T1とする。また、第1変速状態の時、第2モータ12は作動しない、すなわち空転する。また、クラッチ装置40は係合状態である。すなわち、第1変速状態では、第1ピニオンギア22は、ケーシングGに対して公転できない状態となる。なお、図1に示す第1回転力T1と、循環回転力T3と、合成回転力T4と、第1分配回転力T5と、第2分配回転力T6との各回転力は、各部位に作用するトルクを示し、単位はNmである。
第1モータ11から出力された第1回転力T1は、第1サンギア21に入力される。そして、第1回転力T1は、第1サンギア21で循環回転力T3と合流する。循環回転力T3は、第1リングギア24から第1サンギア21に伝えられた回転力である。循環回転力T3の詳細については後述する。これにより、第2サンギア31は、第1回転力T1と循環回転力T3とが合成された合成回転力T4が伝えられる。合成回転力T4は、第2遊星歯車機構30によって増幅される。また、合成回転力T4は、第2遊星歯車機構30によって第1分配回転力T5と第2分配回転力T6とに分配される。第1分配回転力T5は、第2リングギア34に分配された回転力である。第2分配回転力T6は、第2キャリア33に分配された回転力である。
第1分配回転力T5は、第2リングギア34からホイール軸受50に伝えられる。これにより、ホイールHは回転し、電動車両は走行する。第2分配回転力T6は、第1遊星歯車機構20に入力される。具体的には、第2分配回転力T6は、第1リングギア24に伝えられる。第2分配回転力T6は、第1遊星歯車機構20によって減少される。具体的には、第2分配回転力T6は、第1リングギア24から第1ピニオンギア22を介して第1サンギア21に伝わる際に変速されることで減少される。また、第2分配回転力T6は、第1リングギア24から第1ピニオンギア22を介して第1サンギア21に伝わる際に、自身(第2分配回転力T6)の回転方向が逆転される。これにより、第2分配回転力T6は、循環回転力T3となって第1サンギア21に伝えられる。
このように、第1モータ11から第1サンギア21に入力された第1回転力T1は、増幅されつつ、増幅された回転力の一部が第1分配回転力T5として出力される。そして、増幅された回転力の残りの回転力は、第2キャリア33から第1リングギア24及び第1ピニオンギア22を介して循環回転力T3として第1サンギア21に伝えられる。第1サンギア21に伝えられた循環回転力T3は、第1回転力T1と合流して合成回転力T4となり第2サンギア31に伝えられる。
以上のように、電動車両駆動装置10は、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間で、回転力の一部が循環する。これにより、電動車両駆動装置10は、より大きな変速比を実現できる。すなわち、電動車両駆動装置10は、第1変速状態の時に、より大きな回転力をホイールHに伝達できる。以下に、第1回転力T1から第2分配回転力T6の値の一例を説明する。
第2サンギア31の歯数をZ1とし、第2リングギア34の歯数をZ4とし、第1サンギア21の歯数をZ5とし、第1リングギア24の歯数をZ7とする。以下に、電動車両駆動装置10の各部に作用する回転力(図1に示す循環回転力T3、合成回転力T4、第1分配回転力T5、第2分配回転力T6)の第1回転力T1に対する比を数式で示す。なお、下記の式(1)〜式(4)で負の値となるものは、第1回転力T1とは逆方向の回転力である。
一例として、歯数Z1を31、歯数Z4を71、歯数Z5を37、歯数Z7を71とする。また、第1回転力T1を75Nmとする。すると、循環回転力T3は154.0Nm、合成回転力T4は229.0Nm、第1分配回転力T5は524.4Nm、第2分配回転力T6は−295.4Nmとなる。このように、電動車両駆動装置10は、一例として第1モータ11が出力する第1回転力T1を6.99倍に増幅してホイールHに出力できる。次に、共線図を用いて第1変速状態での各部の角速度を説明する。
図2は、実施形態1の電動車両駆動装置が第1変速状態での各部の各回転速度を示す共線図である。以下、一例として、第1サンギア21の角速度をV[rad/s]とする。また、負の値となる角速度は、第1回転力TAとは逆方向の回転であることを示す。図2に示すように、第1サンギア21の角速度はV[rad/s]である。第1キャリア23は、クラッチ装置40により回転が規制されている。よって、第1キャリア23の角速度は0[rad/s]である。第1リングギア24の角速度は0.521V[rad/s]である。第2サンギア31は、第1サンギア21と連結されている。よって、第2サンギア31の角速度はV[rad/s]である。第2キャリア33は、第1リングギア24と連結されている。よって、第2キャリア33の角速度は0.521V[rad/s]である。
第2遊星歯車機構30は、ピニオンギアを2つ有するダブルピニオン式の遊星歯車機構であるため、第2サンギア31から第2リングギア34に伝わる回転力は第2キャリア33で反転する。回転力は、第2キャリア33から第2リングギア34へ伝わる際、第2サンギア31から第2キャリア33へ伝わる時の変化率に−1を乗算した変化率で反転して伝わる。すなわち、図2中では、θ1とθ2とが等しくなる。これにより、第2リングギア34の角速度は0.143V[rad/s]となる。以上により、変速機構13の変速比は、V/0.143V=6.99となる。次に、第2変速状態について説明する。
図3は、実施形態1の電動車両駆動装置が第2変速状態の時に回転力が伝わる経路を示す説明図である。第2変速状態では、第1モータ11は作動する。第2変速状態の時に、第1モータ11が出力する回転力を第1回転力T7とする。また、第2変速状態では、第2モータ12は作動する。第2変速状態の時に、第2モータ12が出力する回転力を第2回転力T8とする。また、クラッチ装置40は非係合状態である。すなわち、第2変速状態では、第1ピニオンギア22は、ケーシングGに対して回転できる状態となる。これにより、第2変速状態では、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間における回転力の循環が遮断される。また、第2変速状態では、第1キャリア23が自由に公転(回転)できるため、第1サンギア21と第1リングギア24とは相対的に自由に回転(自転)できる。なお、図3に示す合成回転力T9は、ホイール軸受50に伝えられるトルクを示し、単位はNmである。
第2変速状態では、第1回転力T7と第2回転力T8との比は、第2サンギア31の歯数Z1と第2リングギア34の歯数Z4との比で定まる。第1回転力T7は、第2キャリア33で第2回転力T8と合流する。これにより、第2リングギア34に合成回転力T9が伝わる。第1回転力T7と、第2回転力T8と、合成回転力T9とは、下記の式(5)を満たす。
ここで、第1サンギア21と第1リングギア24とは、互いに反対方向に回転(自転)するため、第2サンギア31と第2キャリア33とも、互いに反対方向に回転(自転)する。第2サンギア31の角速度を一定とした場合、第2キャリア33の角速度が速くなるほど、第2リングギア34の角速度は遅くなる。また、第2キャリア33の角速度が遅くなるほど、第2リングギア34の角速度は速くなる。このように、第2リングギア34の角速度は、第2サンギア31の角速度と、第2キャリア33の角速度とによって連続的に変化する。すなわち、電動車両駆動装置10は、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度が変化することで、変速比を連続的に変更できる。
また、電動車両駆動装置10は、第2リングギア34の角速度を一定にしようとする際に、第1モータ11が出力する第1回転力T7の角速度と、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度との組み合わせを複数有する。すなわち、第2モータ12が出力する第2回転力T8の角速度が変化することで、第1モータ11が出力する第1回転力T7の角速度が変化しても、第2リングギア34の角速度を一定に維持できる。これにより、電動車両駆動装置10は、第1変速状態から第2変速状態に切り替わる際に、第2リングギア34の角速度の変化量を低減できる。結果として、電動車両駆動装置10は、変速ショックを低減できる。
次に、第2モータ12が出力する第2回転力T8について説明する。第2モータ12は、下記の式(6)を満たす第2回転力T8以上の回転力を出力する必要がある。なお、下記の式(6)中の、1−(Z4/Z1)は、第2サンギア31と第2リングギア34との間の回転力比を示す。
したがって、第1モータ11が任意に回転する際に第2リングギア34の回転力及び角速度を調節するためには、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とは、下記の式(7)を満たせばよい。なお、第1回転力TAは第1モータ11の任意の角速度での回転力であり、第2回転力TBは第2モータ12の任意の角速度での回転力である。
図4は、実施形態1の第1モータ及び第2モータの角速度−回転力特性の一例を示すグラフである。モータの出力軸の角速度と、その角速度で出力できる最大回転力とは、互いに関係する。この関係をモータの角速度−回転力特性(回転数−トルク特性、NT特性)という。よって、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とは、第1モータ11の出力軸の角速度が0から想定される最大角速度Nmaxの範囲内で、上記の式(7)を満たす必要がある。図4に示す角速度−回転力特性は、第1モータ11の出力軸の角速度が0から想定される最大角速度Nmaxの範囲内で、第1回転力TAと、第2回転力TBと、歯数Z1と、歯数Z4とが上記の式(7)を満たす場合の第1モータ11及び第2モータ12の角速度−回転力特性の一例である。次に、クラッチ装置40について説明する。
クラッチ装置40は、ワンウェイクラッチ装置である。ワンウェイクラッチ装置は、第1方向の回転力のみを伝達し、第1方向とは逆方向である第2方向の回転力を伝達しない。すなわち、ワンウェイクラッチ装置は、図1及び図3に示す第1キャリア23が第1方向に回転しようとする際に係合状態となり、第1キャリア23が第2方向に回転しようとする際に非係合状態となる。
本実施形態の場合、クラッチ装置40は、第1変速状態、すなわち第2モータ12が作動していない状態であって、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力する場合に、図1に示す第1キャリア23が回転(自転)する方向に内輪41が回転すると係合状態となる。すなわち、上述の第1方向は、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力し、かつ、第2モータが作動していない際に第2部材としての内輪41が回転する方向である。この状態で、第2モータ12が作動すると、第2キャリア33の回転方向は逆転する。これにより、クラッチ装置40は、第2変速状態の時、すなわち第2モータ12が作動し、かつ、電動車両を前進させるように第1モータ11が回転力を出力する場合に非係合状態となる。以上により、クラッチ装置40は、第2モータ12が作動するか否かによって従動的に係合状態と非係合状態とを切り替えできる。
次に、図5及び図6を用いて電動車両駆動装置10の変速機構13の一例を説明する。図5は、実施形態1の電動車両駆動装置の変速機構の概略構成を示す断面図である。図6は、実施形態1の電動車両駆動装置の変速機構を分解して示す説明図である。以下、上記で説明した構成要素については、図中において同一の符号で示し、重複する説明は省略する。また、図5には、第1モータ11と第2モータ12とサンギアシャフト14とも示す。電動車両駆動装置10は、さらに、軸受15と、軸受16と、キャリア軸受52と、を有する。
図5に示すように、第1モータ11は、第1ステータ11aと、第1ロータ11bと、第1モータ出力軸11cと、を有する。第1ステータ11aは、筒状部材であり、径方向外側がケーシングGに固定されている。第1ステータ11aは、第1ステータコアに第1インシュレータを介して巻きつけられた第1コイルが複数配置されている。第1ロータ11bは、第1ステータコア11aの径方向内側に配置される。第1ロータ11bは、第1ロータコアと、第1マグネットとを含む。第1ロータコアは、筒状部材である。第1マグネットは、第1ロータコアの外周部に複数設けられる。第1モータ出力軸11cは、棒状部材である。第1モータ出力軸11cは、第1ロータ11bの第1ロータコアと連結される。また、第1モータ11には、第1ロータコアに第1ロータコアの回転角度を検出する第1レゾルバが設けられる。
第2モータ12は、第2ステータ12aと、第2ロータ12bと、を有する。第2ステータ12aは、筒状部材であり、径方向外側がケーシングGに固定されている。第2ステータ12aは、第2ステータコアに第2インシュレータを介して巻きつけられた第2コイルが複数配置されている。
第2ロータ12bは、第2ステータ12aの径方向内側に設けられる。第2ロータ12bは、クラッチ装置40と共にケーシングGによって、回転軸Rを中心に回転できるように支持される。第2ロータ12bは、第2ロータコア12b1と、第2マグネット12b2と、バランスディスク12b3と、ボルト12b4と、ナット12b5と、を有する。
第2ロータコア12b1は、筒状部材である。第2マグネット12b2は、第2ロータコア12b1の外周部に複数設けられる。バランスディスク12b3は、第2ロータコア12b1の回転不釣り合いを調整する部材であり、第2ロータコア12b1の軸方向の両端に配置されている。また、第2マグネット12b2とバランスディスク12b3とは、ボルト12b4とナット12b5で第2ロータコア12b1に固定されている。また、第2モータ12には、第2ロータコア12b1に第2ロータコア12b1の回転角度を検出する第2レゾルバが設けられる。
サンギアシャフト14は、第1モータ出力軸11cと連結しており、第1モータ出力軸11cと共に回転する。サンギアシャフト14は、変速機構13の内部に挿入されており、第1サンギア21と第2サンギア31と連結している。また、サンギアシャフト14は、第1キャリア23と第2キャリア33を相対回転可能な状態で支持している。また、サンギアシャフト14のホイールH側には、軸受15と軸受16とを有する。軸受15は、転がり玉軸受であり、サンギアシャフト14と図示しないハブ軸受のハウジングとを相対回転可能な状態で支持している。軸受16は、サンギアシャフト14と第2遊星歯車機構30の第2キャリア33とを相対回転可能な状態で支持している。
変速機構13は、上述したように、第1遊星歯車機構20と、第2遊星歯車機構30と、クラッチ装置40と、を有する。第1遊星歯車機構20は、第2遊星歯車機構30よりも電動車両の車体側に配置されている。つまり、第2遊星歯車機構30は、第1遊星歯車機構20よりホイールH側に配置されている。また、第2遊星歯車機構30は、第3ピニオンギア32bの外周側に第2リングギア(図示省略)が配置されている。第2リングギアは、上述したようにホイール軸受50と連結している。変速機構13は、第1モータ11及び第2モータ12の回転を伝達し、第2リングギアを回転させホイール軸受50を回転させることで、ホイールHを回転させる。
第2遊星歯車機構30の第2キャリア33は、第1遊星歯車機構20の外周に延在する突出部33aを有する。突出部33aは、第1遊星歯車機構20の第1キャリア23と対面する位置に配置されている。つまり第2キャリア33の突出部33aは、第1遊星歯車機構20の第1キャリア23、第1サンギア21等と回転軸方向における位置が重なる位置に配置されている。突出部33aは、第1リングギア24の機能を備え、外周面に第2モータ12の第2ロータ12bの各部が固定され、内周面に内歯車33bが形成されている、突出部33aは、内歯車33bが第1ピニオンギア22と係合している。
また、第2キャリア33は、突出部33aの基端の径方向内側の面に軸受取付部33cが形成されている。また、第1キャリア23も軸受取付部33cと対面する係方向外側の面に軸受取付部23aが形成されている。
キャリア軸受52は、軸受取付部23aと軸受取付部33cとの間に配置されている。キャリア軸受52は、転がり玉軸受であり、内周面及び電動車両の車体側の面(第1サンギア21側の面)が軸受取付部23aと接し、外周面及びホイールH側の面(第2サンギア31側の面)が軸受取付部33cと接している。キャリア軸受52は、第1キャリア23と第2キャリア33との間で生じるラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重を支持し、第1キャリア23と第2キャリア33とをサンギアシャフト14と同一軸上に回転可能な状態で支持している。第1キャリア23と第2キャリア33との位置が回転軸に対してずれないように回転可能な状態で両者の間隔を維持している。
次に、図7から図12を用いて本実施形態のクラッチ装置40について説明する。図7は、実施形態1の第1遊星歯車機構及びクラッチ装置の外観を模式的に示す説明図である。図8は、図7のX1−X1断面図である。図9は、実施形態1のクラッチ装置の外観を模式的に示す説明図である。図10は、図9のX2−X2断面図である。図11は、実施形態1のクラッチ装置の外観を模式的に示す上面図である。図12は、実施形態1のクラッチ装置を分解して示す説明図である。なお、図10は、クラッチ装置40を図8とは反対向きで示している。
クラッチ装置40は、図7及び図8に示すように、第1遊星歯車機構20の第1キャリア23の外周に配置されており、第1キャリア23の回転を規制する。クラッチ装置40は、スプラグ式ワンウェイクラッチであり、第1内輪(第2部材)41と、第1外輪(第1部材)42と、クラッチ機構43と、第1軸受44と、第2軸受45と、クラッチ支持部46と、弾性体47と、止め輪48と、を有する。
第1内輪41は、筒形形状であり、径方向内側の面(内周面)が第1キャリア23に連結され、径方向外側の面(外周面)がクラッチ機構43と第1軸受44と第2軸受45とに連結されている。第1内輪41は、径方向外側の面(外周面)が、第1軸受44と接触する第1面41a、クラッチ機構43と接触する第2面41b、第2軸受45と接触する第3面41cで、異なる径(回転軸Rからの距離が異なる状態)となる。第1内輪41は、第1面41aの径が第2面41bの径よりも大きくなり、第2面41bの径が第3面41cの径よりも大きくなる。つまり、第1内輪41は、電動車両の車体側からホイールH側に行くに従って、外周面の径が小さくなる。第1内輪41は、第1面41aと第2面41bとの境界、第2面41bと第3面41cとの境界が段差となる。第1面41aは、図10に示すように電動車両の車体側の一部で、第1軸受44と接触する領域がホイールH側に向かうに従って径が小さくなり、かつ回転軸R側に凸となる曲面である。また、第1内輪41は、内周面にキー溝41dが形成されている。キー溝41dは、回転軸Rに平行な方向に延在する溝であり、周方向に等間隔に離れた位置に3本形成されている。キー溝41dは、サンギアシャフト14に形成されたキー溝と同一間隔で形成されており、キーを挿入することで、回転方向において第1内輪41をサンギアシャフト14に固定することができる。また、第1内輪41gは、内周面にクラッチ機構43に作動油を供給する給油穴41eが形成されている。
第1外輪42は、第1内輪41の径方向外側に配置されている。第1外輪42は、筒形形状であり、内周面がクラッチ機構43と第1軸受44と第2軸受45とに連結されている。第1外輪42は、図9から図12に示すように、径方向外側の面(外周面)が、フランジ42aと、円周部42bとで構成される。フランジ42aは、ケーシングGに固定される。円周部42bは、径の異なる2つの円柱状が接続された形状である。また、フランジ42aと円周部42bとの接続部には、円周部42bよりも径が小さいにげ42cが形成されている。第1外輪42は、径方向内側の面(内周面)が、第1軸受44と接触する第1面42d、クラッチ機構43と接触する第2面42e、第2軸受45と接触する第3面42fで、異なる径(回転軸Rからの距離が異なる状態)となる。第1外輪42は、第1面42dの径が第2面42eの径よりも小さくなり、第2面42eの径が第3面42fの径よりも小さくなる。つまり、第1外輪42は、電動車両の車体側からホイールH側に行くに従って、内周面の径が大きくなる。第1外輪42は、第1面42dと第2面42eとの境界、第2面42eと第3面42fとの境界が段差となる。第1面41dは、図10に示すようにホイールH側の一部で、第1軸受44と接触する領域が電動車両の車体側に向かうに従って径が大きくなり、かつ外径側に凸となる曲面である。なお、クラッチ機構43と第1軸受44と第2軸受45とは、いずれも内周面と外周面とを相対的に回転させることができる部材であり、第1内輪41と第1外輪42とは相対回転可能な状態で配置されている。
クラッチ機構43は、スプラグ式ワンウェイクラッチであり、第1内輪41と、第1外輪42との間に配置された伝達部を含む。クラッチ機構43は、第2面41bと第2面42eとの間に配置されている。伝達部は、複数のスプラグで構成される。スプラグは、摩擦により第1内輪41と第1外輪42とを係合させる摩擦係合部材である。スプラグは、柱状の部材であり、底面の中央がくびれた繭状の形状である。スプラグの側面のうち、スプラグが第1内輪41に接触する面である内輪接触面は、円を底面とした円柱が有する側面の曲率よりも大きい曲率を持つ曲面である。スプラグの側面のうち、スプラグが第1外輪42に接触する面である外輪接触面も、円を底面とした円柱が有する側面の曲率よりも大きい曲率を持つ曲面である。ただし、内輪接触面の曲率と外輪接触面の曲率とは異なっていてもよい。複数のスプラグは、第1内輪41の外周部と第1外輪42の内周部との間に、第1内輪41及び第1外輪42の周方向に沿って等間隔に配置される。
クラッチ機構43は、第1内輪41と第2外輪42とが一方向のみに相対回転可能な機構である。クラッチ機構43は、第1内輪41に第1方向の回転力が作用すると、伝達部が第1内輪41及び第1外輪42と噛み合う。これにより、第1内輪41と第1外輪42との間で回転力が伝達される。これにより、クラッチ機構43を介して第1内輪41と第1外輪42との間で力が伝達する状態となり、第1キャリア23は、ケーシングGから反力を受ける。よって、クラッチ機構43は、第1キャリア23の回転を規制できる。また、クラッチ機構43は、第1内輪41に第2方向の回転力が作用すると、伝達部が第1内輪41及び第1外輪42と噛み合わない。これにより、第1内輪41と第1外輪42との間で回転力が伝達されず、第1キャリア23は、ケーシングGから反力を受けない。よって、クラッチ機構43は、第1キャリア23の回転を規制しない。このようにして、クラッチ機構43は、ワンウェイクラッチ装置としての機能を実現する。なお、クラッチ機構43は、第1内輪41を第1部材、第1外輪42を第2部材として用いたが、第1内輪41と伝達部との間に第2内輪を設け、第1外輪42と伝達部との間に第2外輪を設けてもよい。
ここで、クラッチ機構43は、伝達部の機構として種々の機構を用いることができ、本実施形態のようにスプラグを用いた構成に限定されず、ローラクラッチ装置でもカムクラッチ装置でもよい。但し、カムクラッチ装置は、回転力(トルク)容量がローラクラッチ装置よりも大きい。すなわち、カムクラッチ装置は、第1内輪41と第1外輪42との間で伝達できる力の大きさがローラクラッチ装置よりも大きい。よって、クラッチ装置40は、カムクラッチ装置である方が、より大きな回転力を伝達できる。また、クラッチ機構43は、摩擦係合部材としてスプラグを用いることで、円に類似した底面を持つカムの数よりも多数のスプラグを配置することができる。その結果、クラッチ機構43と同一の取り付け寸法を持つカムクラッチ装置のトルク容量よりも、クラッチ機構43のトルク容量を大きくすることができる。
クラッチ機構43は、ワンウェイクラッチ装置とすることで、ピストンを移動させるための機構を必要とせず、電磁アクチュエータを作動させるための電力も必要としない。クラッチ機構43は、ワンウェイクラッチ装置とすることで、第1内輪41または第1外輪42(本実施形態では第1内輪41)に作用する回転力の方向が切り替えられることで、係合状態と非係合状態とを切り替えできる。よって、クラッチ装置40をワンウェイクラッチ装置とすることで部品点数を低減でき、かつ、自身(クラッチ装置40)を小型化できる。
第1軸受44は、クラッチ機構43よりも電動車両の車体側に配置された転がり玉軸受であり、内輪41と外輪42とを相対回転可能な状態で支持している。第1軸受44は、第1面41aと第1面42dとの間に配置されている。第1軸受44は、内輪41が、第1軸受44の内輪となり、外輪42が、第1軸受44の外輪となる。つまり、第1軸受44の内輪とクラッチ装置40の第1内輪41とが一体となり、第1軸受44の外輪とクラッチ装置40の第1外輪42とが一体となる。つまり、第1軸受44は、転がり玉軸受のたま部分が直接、第1内輪41と第1外輪42と接触し、ハウジングがない形状である。
第2軸受45は、クラッチ機構43よりもホイールH側に配置された転がり玉軸受であり、第1内輪41と第1外輪42とを相対回転可能な状態で支持している。第2軸受45は、転がり玉軸受のたま部分と、内輪ハウジングと、外輪ハウジングと、を含み、内輪ハウジングが第1内輪41と対面し、外輪ハウジングが第1外輪42と対面している。第2軸受45は、第3面41cと第3面42fとの間に配置されている。本実施形態の第1軸受44、第2軸受45は、アンギュラコンタクトボールベアリングである。
クラッチ支持部(クラッチリテーナ)46は、リング状の板状部材であり、クラッチ機構43と第2軸受45との間に配置されている。クラッチ支持部46は、クラッチ機構43の第2軸受45側の面と対面して配置されている。クラッチ支持部46は、第2面41bと第2面42eとを結んだ線よりも幅が大きく、第3面41cと第3面42fとを結んだ線よりも幅が小さいリング形状である。クラッチ支持部46は、弾性体47によりクラッチ機構43側に付勢されることで、クラッチ機構43の弾性体47側への移動を規制する。つまり、クラッチ支持部46は、クラッチ機構43を第2面41bと第2面42eと間に支持する。
弾性体47は、クラッチ支持部46と第2軸受45との間に配置されており、クラッチ支持部46をクラッチ機構43側に付勢する。弾性体47としては、ウェーブワッシャーを用いることができる。弾性体47は、クラッチ支持部46と第2軸受45との空間よりも大きい自然長を有しており、クラッチ支持部46と第2軸受45との間に配置されることで縮められ、クラッチ支持部46と第2軸受45とを離す方向の力を付与する。これによりクラッチ支持部46をクラッチ機構43側に付勢し、第2軸受45をホイールH側に付勢する。
止め輪48は、C型の止め輪であり、内輪41の第3面41cよりもホイールH側となる位置に形成された溝にはめ込まれている。止め輪48は、一部が外周側に突出しており、第2軸受45と対面している。止め輪48は、第2軸受45がホイールH側に移動することを規制する。
上記の構成により、電動車両駆動装置10は、ホイールHを保持し、かつ、第1モータ11及び第2モータ12から出力された回転力をホイールHに伝えることで、電動車両を走行させることができる。
また、クラッチ装置40は、クラッチ機構43の両側に第1軸受44と第2軸受45を配置している。つまり、第1軸受44と第2軸受45とでクラッチ機構43を挟んだ構成としている。これにより、クラッチ機構40は、クラッチ機構40に係るラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重等を第1軸受44と第2軸受45とで受けることができる。また、軸受とクラッチ機構を一体化することで、取付容積を小さくすることができ、装置を小型化、軽量化することができる。
また、クラッチ装置40は、第1軸受44とクラッチ機構43と第2軸受45との配置領域を徐々に大きくする機構とすることで、製造時に、小さい部材から順番にはめ込むことで製造することができる。これにより製造を簡単にすることができる。
クラッチ装置40は、外輪42を、第1軸受44との接触部分が、第2軸受45に向かうに従って内径側に小さくなる曲面とし、内輪41を、第1軸受44との接触部分が、第2軸受45に向かうに従って外径側に大きくなる曲面とすることで、第1軸受44を、外輪42との接触領域の中心が、内輪41との接触領域の中心よりも、第2軸受45側とすることができる。このように、第1軸受44の接触軸をずらすことで、各方向に対する荷重を受けることができる。また、第2軸受45は、外輪42との接触領域の中心が、内輪41との接触領域の中心よりも、第1軸受44側とすることが好ましい。このように、両者の軸の方向が回転軸Rに直交する軸に対して異なる向きとすることで、回転軸Rに平行な方向の力をそれぞれの軸受で受けることができ、装置の耐久性を高くすることができる。
また、クラッチ装置40は、クラッチ支持部46と弾性部47と止め輪48をそれぞれ設けることで、クラッチ機構43、第1軸受44と、第2軸受45と、を所定の位置に支持することができ、それぞれの部材に過剰な負荷がかかることを抑制することができる。なお、クラッチ装置の構造は、上記実施形態に限定されない。
図13は、他の実施形態のクラッチ装置の外観を模式的に示す説明図である。図14は、図13のX3−X3断面図である。なお、図13および図14に示すクラッチ装置210の基本的な構成は、クラッチ装置40と同様である。以下、クラッチ装置210に特有の点を説明する。クラッチ装置210の内輪212は、内周面にセレーション212aが形成されている。内輪212は、セレーション212aをサンギアシャフト14に形成されたセレーションと係合させることで、内輪212とサンギアシャフト14とが一体に回転する状態とする。つまり、内輪212とサンギアシャフト14と回転力が、係合しているセレーションを介して一方から他方に伝達する構成となる。このように、キー溝に代えてセレーションを形成しても上記と同様の効果を得ることができる。なお、セレーションを設ける場合、セレーションの端部ににげを設けることで製造時にセレーションの端部が所定の領域を超えることを抑制することができる。
図15は、他の実施形態のクラッチ装置の外観を模式的に示す説明図である。図16は、図15のX4−X4断面図である。なお、図15および図16に示すクラッチ装置230は、基本的な構成はクラッチ装置210と同様である。以下、クラッチ装置230に特有の点を説明する。クラッチ装置230の内輪241は、内周面にセレーション241aが形成されている。また、クラッチ装置230の第2軸受45は、内輪241の第3面241bと外輪242の第3面242aとの間に圧入で固定されている。また、内輪241には、第2軸受45の位置決め用の段差241cが形成されている。このように第2軸受45を圧入で固定することで、止め輪を用いなくても第2軸受45を固定することができる。
また、電動車両駆動装置10は、変速機構13の第2キャリア33に突出部33aを設け、突出部33aを第1キャリア23の外周面側に配置して第1リングギア24として用いることで、つまり、第2キャリア33と第1リングギア24との機能を1つの部材で実現し、第2モータ12を第2キャリア33の外周側に配置することで、軸方向における変速機構13の大きさを小さくすることができ、装置を小型化、軽量化することができる。また、第2モータ12の第2ロータ12bを第2キャリア33と連結する機構とすることで、第2モータ12から出力される動力を第2キャリア33に伝達するための部材を省略することができ、装置を小型化、軽量化することができる。
また、電動車両駆動装置10は、第1キャリア23と第2キャリア33との間にキャリア軸受52を設けることで、第1キャリア23と第2キャリア33とがサンギアシャフト14に対して振れ回ることを抑制することができる。これにより、第2キャリア33に固定されている第2モータ12の第2ロータ12bをサンギアシャフト14に対して適切に支持することができ、第2ロータ12bがサンギアシャフト14に対して振れ回ることを抑制することができる。これにより、ケーシングGに固定されている第2ステータ12aと第2キャリア33に固定された第2ロータ12bとの回転精度が悪化することを抑制することができ、モータトルクを好適に伝達することができる。
なお、本実施形態では、第1モータ11と、第2モータ12と、第1サンギア21と、第1キャリア23と、第1リングギア24と、第2サンギア31と、第2キャリア33と、第2リングギア34と、ホイール軸受50とがすべて同軸上に配置されているが、電動車両駆動装置10は、必ずしもこれらの構成要素が同軸上に配置されなくてもよい。また、本実施形態の電動車両駆動装置10は、第2リングギア34がホイール軸受50に直接連結されているが、第2リングギア34が歯車や継手を介してホイール軸受50に連結されてもよい。
(実施形態2)
図17は、実施形態2の電動車両駆動装置の構成を示す説明図である。図17に示す実施形態2の電動車両駆動装置60は、実施形態1の電動車両駆動装置10と変速機構の構成が異なる。以下、実施形態1の電動車両駆動装置10が有する構成要素と同様の構成要素は、同一の符号を付して説明を省略する。電動車両駆動装置60は、変速機構63を含む。変速機構63は、第1モータ11と連結されて第1モータ11が出力した回転力が伝えられる(入力される)。また、変速機構63は、第2モータ12と連結されて第2モータ12が出力した回転力が伝えられる(入力される)。そして、変速機構63は、ホイール軸受50と連結され、変速された回転力をホイール軸受50に伝える(出力する)。ホイール軸受50は、電動車両のホイールHが取り付けられる。
変速機構63は、第1遊星歯車機構70と、第2遊星歯車機構80と、クラッチ装置90とを含む。第1遊星歯車機構70は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構70は、第1サンギア71と、第1ピニオンギア72と、第1キャリア73と、第1リングギア74とを含む。第2遊星歯車機構80は、ダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構80は、第2サンギア81と、第2ピニオンギア82aと、第3ピニオンギア82bと、第2キャリア83と、第2リングギア84とを含む。第2遊星歯車機構80は、第1遊星歯車機構70よりも第1モータ11及び第2モータ12側に配置される。
第2サンギア81は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第2サンギア81は、第1モータ11と連結される。よって、第1モータ11が作動すると、第2サンギア81は、第1回転力TAが伝えられる。これにより、第2サンギア81は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。第2ピニオンギア82aは、第2サンギア81と噛み合う。第3ピニオンギア82bは、第2ピニオンギア82aと噛み合う。第2キャリア83は、第2ピニオンギア82aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア82aを保持する。第2キャリア83は、第3ピニオンギア82bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア82bを保持する。第2ピニオン回転軸Rp2は、例えば、回転軸Rと平行である。第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸Rと平行である。
第2キャリア83は、回転軸Rを中心に回転できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第2キャリア83は、第2ピニオンギア82a及び第3ピニオンギア82bが第2サンギア81を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第2ピニオンギア82a及び第3ピニオンギア82bを保持することになる。第2リングギア84は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第2リングギア84は、第3ピニオンギア82bと噛み合う。また、第2リングギア84は、第2モータ12と連結される。よって、第2モータ12が作動すると、第2リングギア84は、第2回転力TBが伝えられる。これにより、第2リングギア84は、第2モータ12が作動すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。
第1サンギア71は、回転軸Rを中心に回転(自転)できるようにケーシングG内に支持される。第1サンギア71は、第2サンギア81を介して第1モータ11と連結される。具体的には、第1サンギア71と第2サンギア81とは、同軸(回転軸R)で回転できるようにサンギアシャフト64に一体で形成される。そして、サンギアシャフト64は、第1モータ11と連結される。これにより、第1サンギア71は、第1モータ11が作動すると、回転軸Rを中心に回転する。
第1ピニオンギア72は、第1サンギア71と噛み合う。第1キャリア73は、第1ピニオンギア72が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア72を保持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば、回転軸Rと平行である。第1キャリア73は、回転軸Rを中心に回転できるようにケーシングG内に支持される。これにより、第1キャリア73は、第1ピニオンギア72が第1サンギア71を中心に、すなわち回転軸Rを中心に公転できるように第1ピニオンギア72を保持することになる。
また、第1キャリア73は、第2リングギア84と連結される。これにより、第1キャリア73は、第2リングギア84が回転(自転)すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。第1リングギア74は、第1ピニオンギア72と噛み合う。また、第1リングギア74は、ホイールHと連結される。これにより、第1リングギア74が回転(自転)すると、ホイールHは回転する。クラッチ装置90は、第2キャリア83の回転を規制できる。具体的には、クラッチ装置90は、回転軸Rを中心とした第2キャリア83の回転を規制(制動)する場合と、前記回転を許容する場合とを切り替えできる。次に、参考として、共線図を用いて第1変速状態での各部の角速度を説明する。
図18は、実施形態2の電動車両駆動装置が第1変速状態での各部の各回転速度を示す共線図である。以下、一例として、第2サンギア81の角速度をV[rad/s]とする。また、Z1と、Z4と、Z5と、Z7とは、実施形態1のものと同一である。図18に示すように、第2サンギア81の角速度はV[rad/s]である。第2キャリア83は、クラッチ装置90により回転が規制されている。よって、第2キャリア83の角速度は0[rad/s]である。第2遊星歯車機構80は、ピニオンギアを2つ有するダブルピニオン式の遊星歯車機構であるため、第2サンギア81から第2リングギア84に伝わる回転力は第2キャリア83で反転する。回転力は、第2キャリア83から第2リングギア84へ伝わる際、第2サンギア81から第2キャリア83へ伝わる時の変化率に−1を乗算した変化率で反転して伝わる。すなわち、図12中では、θ3とθ4とが等しくなる。これにより、第2リングギア84の角速度は0.437V[rad/s]である。
第1サンギア71は、第2サンギア81と連結されている。よって、第1サンギア71の角速度はV[rad/s]である。第1キャリア73は、第2リングギア84と連結されている。よって、第1キャリア73の角速度は0.437V[rad/s]である。また、第1リングギア74の角速度は0.143V[rad/s]となる。以上により、変速機構63の変速比は、V/0.143V=6.99となる。このように、電動車両駆動装置60は、実施形態1の電動車両駆動装置10と同様の原理により、実施形態1の電動車両駆動装置10が奏する効果と同様の効果を奏する。
また、電動車両駆動装置60も、クラッチ装置90として、上述したクラッチ装置40等と同様の構成を用いることで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、電動車両駆動装置60も、よりホイールH側に配置される第1遊星歯車機構70の第1キャリア73を第2モータ12(サンギアシャフト14に連結していない側のモータ)に対面する位置に配置し、第1キャリア73と第2リングギア84とを一体の部材として第1キャリア73の外周に第2モータ12の第2ロータを固定する構成とすることで、上記と同様に装置を小型化、軽量化する効果を奏することができる。このように、電動車両駆動装置は、変速機構の構成によらず、第2モータ(サンギアシャフトに連結していない側のモータ)を、ホイール側に配置されるキャリアの外周面に配置することで、同様の効果を得ることができる。