本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に関する記載の内容に限定されるものではない。また、以下に記載された構成要素は、当業者が容易に想定できるもの、及び実質的に同一のものを備える。さらに、発明の要旨を逸脱しない範囲で、以下に記載された構成要素を省略、置換又は変更することが可能である。
図1は、本実施形態の電動車両駆動装置の構成を示す模式図である。電動車両駆動装置10は、ケースGと、第1モータ11と、第2モータ12と、変速機構13と、減速機構40と、ホイール軸受50と、ホイール入出力軸16と、制御装置1と、を備える。ケースGは、第1モータ11、第2モータ12、変速機構13及び減速機構40を支持している。
第1モータ11は、第1トルクTAを出力できる。第2モータ12は、第2トルクTBを出力できる。変速機構13は、第1モータ11に連結されている。これにより、第1モータ11が作動すると、第1モータ11から変速機構13に第1トルクTAが伝えられる(入力される)。また、変速機構13は、第2モータ12に連結されている。これにより、第2モータ12が作動すると、第2モータ12から変速機構13に第2トルクTBが伝えられる(入力される)。ここでいうモータの作動とは、第1モータ11又は第2モータ12に電力が供給されて第1モータ11又は第2モータ12の入出力軸が回転することをいう。
変速機構13は、第1モータ11、第2モータ12及びホイール入出力軸16に連結されており、減速比(変速機構13への出力角速度に対する入力角速度の比)を変更できる。変速機構13は、サンギアシャフト14と、第1遊星歯車機構20と、第2遊星歯車機構30と、クラッチ装置60と、を備える。
サンギアシャフト14は、第1モータ11に連結されている。第1モータ11が作動すると、サンギアシャフト14が回転軸Rを中心に回転する。
第1遊星歯車機構20は、例えばシングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車機構20は、第1サンギア21と、第1ピニオンギア22と、第1キャリア23と、第1リングギア24と、を備える。
第1サンギア21は、サンギアシャフト14に連結されている。第1サンギア21は、サンギアシャフト14と共に回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第1モータ11が作動すると、第1モータ11から第1サンギア21に第1トルクTAが伝えられる。これにより、第1モータ11が作動すると、第1サンギア21が回転軸Rを中心に回転(自転)する。第1ピニオンギア22は、第1サンギア21と噛み合っている。
第1キャリア23は、サンギアシャフト14に支持されている。第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が第1ピニオン回転軸Rp1を中心に回転(自転)できるように第1ピニオンギア22を支持する。第1ピニオン回転軸Rp1は、例えば回転軸Rと平行である。また、第1キャリア23は、第1ピニオンギア22が回転軸Rを中心に公転できるように第1ピニオンギア22を支持する。
第1リングギア24は、第1ピニオンギア22に噛み合っている。第1リングギア24は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。また、第1リングギア24は、第2モータ12に連結される。第2モータ12が作動すると、第2モータ12から第1リングギア24に第2トルクTBが伝えられる。これにより、第2モータ12が作動すると、第1リングギア24が回転軸Rを中心に回転(自転)する。
クラッチ装置60は、例えばワンウェイクラッチ装置であって、第1方向のトルクのみを伝達し、第1方向とは逆方向である第2方向のトルクを伝達しない。クラッチ装置60は、ケースGと第1キャリア23との間に配置される。クラッチ装置60は、第1キャリア23の回転を規制できる。具体的には、クラッチ装置60は、回転軸Rを中心とした第1キャリア23の回転を規制(制動)する状態と、前記回転を許容する状態とを切り替えることができる。すなわち、クラッチ装置60は、ケースGに対して第1キャリア23を回転自在とすることができ、且つケースGに対して第1キャリア23を回転不能にすることができる。以下の説明において、クラッチ装置60は、回転を規制(制動)する状態を制動状態といい、前記回転を許容する状態を非制動状態という。
第2遊星歯車機構30は、例えばダブルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車機構30は、第2サンギア31と、第2ピニオンギア32aと、第3ピニオンギア32bと、第2キャリア33と、第2リングギア34と、を備える。
第2サンギア31は、サンギアシャフト14に連結されている。第1モータ11が作動すると、第1モータ11から第2サンギア31に第1トルクTAが伝えられる。第2サンギア31は、サンギアシャフト14及び第1サンギア21と共に回転軸Rを中心に回転(自転)できる。第2ピニオンギア32aは、第2サンギア31と噛み合っている。第3ピニオンギア32bは、第2ピニオンギア32aと噛み合っている。
第2キャリア33は、サンギアシャフト14に支持されている。第2キャリア33は、第2ピニオンギア32aが第2ピニオン回転軸Rp2を中心に回転(自転)できるように第2ピニオンギア32aを支持する。また、第2キャリア33は、第3ピニオンギア32bが第3ピニオン回転軸Rp3を中心に回転(自転)できるように第3ピニオンギア32bを支持する。第2ピニオン回転軸Rp2及び第3ピニオン回転軸Rp3は、例えば、回転軸Rと平行である。また、第2キャリア33は、第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bが回転軸Rを中心に公転できるように第2ピニオンギア32a及び第3ピニオンギア32bを支持する。また、第2キャリア33は、第1リングギア24に連結される。これにより、第2キャリア33は、第1リングギア24が回転(自転)すると、回転軸Rを中心に回転(自転)する。
第2リングギア34は、第3ピニオンギア32bに噛み合っている。第2リングギア34は、回転軸Rを中心に回転(自転)できる。また、第2リングギア34は、変速機構13の変速機構入出力軸15に連結されている。これにより、第2リングギア34が回転(自転)すると、変速機構入出力軸15が回転する。
減速機構40は、変速機構13と電動車両のホイールHとの間に配置される。減速機構40は、変速機構入出力軸15の角速度を減速し、ホイール入出力軸16へ出力する。ホイール入出力軸16は、電動車両のホイールHに連結されており、減速機構40とホイールHとの間で動力を伝達する。第1モータ11及び第2モータ12の少なくとも一方で発生したトルクは、変速機構13及び減速機構40を介してホイールHへ伝達される。一方、電動車両が下り坂等を走行中にホイールHで発生するトルクは、減速機構40及び変速機構13を介して第1モータ11及び第2モータ12の少なくとも一方に伝達される。この場合、第1モータ11及び第2モータ12の少なくとも一方は、発電機として作動する。発電時の回転抵抗は、回生ブレーキとして電動車両に制動力として作用する。減速機構40は、第3サンギア41と、第4ピニオンギア42と、第3キャリア43と、第3リングギア44とを備える。
第3サンギア41は、変速機構入出力軸15に連結されている。すなわち、第3サンギア41は、変速機構入出力軸15を介して第2リングギア34に連結される。第4ピニオンギア42は、第3サンギア41と噛み合っている。第3キャリア43は、第4ピニオンギア42が第4ピニオン回転軸Rp4を中心として自転できるように、且つ第4ピニオンギア42が第3サンギア41を中心に公転できるように第4ピニオンギア42を支持する。第3リングギア44は、第4ピニオンギア42と噛み合い、且つケースGに固定されている。第3キャリア43は、ホイール入出力軸16を介してホイールHに連結されている。また、第3キャリア43は、ホイール軸受50によって回転可能に支持される。
減速機構40は、変速機構入出力軸15の角速度よりも遅い速度でホイール入出力軸16を回転させることでホイールHを駆動する。このため、第1モータ11及び第2モータ12の最大トルクが小さい場合でも、電動車両駆動装置10は、発進時や登坂時(坂道を登る時)に必要なトルクをホイールHに伝えることができる。その結果、第1モータ11及び第2モータ12を作動させるための電流が小さくて済むと共に、第1モータ11及び第2モータ12が小型化及び軽量化する。ひいては、電動車両駆動装置10の製造コスト低減及び軽量化が実現される。
制御装置1は、電動車両駆動装置10の動作を制御する。具体的には、制御装置1は、第1モータ11及び第2モータ12の角速度、回転方向及び出力を制御する。制御装置1は、例えば、マイクロコンピュータである。
図2は、本実施形態に係る電動車両駆動装置が第1変速状態にある場合に、トルクが伝わる経路を示す説明図である。電動車両駆動装置10は、第1変速状態と第2変速状態との2つの変速状態を実現できる。
第1変速状態は、いわゆるローギアの状態であって、減速比を大きくすることができる。すなわち、第1変速状態においては、変速機構入出力軸15に伝わるトルクが大きくなる。第1変速状態は、電動車両が走行時に大きな駆動力を必要とする場合に主に用いられる。大きな駆動力を必要とする場合とは、例えば、坂道を発進する時又は登坂時(坂道を登る時)等である。第1変速状態では、第1モータ11及び第2モータ12で発生するトルクの大きさが等しく、且つトルクの向きが反対になる。第1モータ11で発生したトルクは、第1サンギア21に入力される。第2モータ12で発生したトルクは、第1リングギア24に入力される。第1変速状態において、クラッチ装置60は制動状態である。すなわち、第1変速状態において、第1ピニオンギア22は自転できるが公転できない状態である。
第1変速状態の時に、第1モータ11が出力するトルクを第1トルクT1とし、第2モータ12が出力するトルクを第2トルクT5とする。第1モータ11から出力された第1トルクT1は、サンギアシャフト14を介して第1サンギア21に入力される。そして、第1トルクT1は、第1サンギア21で循環トルクT3と合流することで、合成トルクT2となる。合成トルクT2は、第1サンギア21から出力される。循環トルクT3は、第1リングギア24から第1サンギア21に伝えられたトルクである。
第1サンギア21及び第2サンギア31は、サンギアシャフト14で連結されている。このため、第1変速状態において、第1サンギア21から出力された合成トルクT2は、サンギアシャフト14を介して第2サンギア31に伝えられる。そして、合成トルクT2は、第2遊星歯車機構30によって増幅される。また、合成トルクT2は、第2遊星歯車機構30によって第1分配トルクT6と第2分配トルクT4とに分配される。第1分配トルクT6は、合成トルクT2が第2リングギア34に分配されて増幅されたトルクであり、変速機構入出力軸15から出力される。第2分配トルクT4は、合成トルクT2が第2キャリア33に分配され且つ増幅されたトルクである。
第1分配トルクT6は、変速機構入出力軸15から減速機構40に出力される。そして、第1分配トルクT6は、減速機構40で増幅されて、図1に示すホイール入出力軸16を介してホイールHに出力される。その結果、電動車両は走行する。
第2キャリア33及び第1リングギア24は、一体に回転する。第2キャリア33に分配された第2分配トルクT4は、第1リングギア24で第2モータ12の第2トルクT5と合成される。第2トルクT5(第2モータ12のトルク)の向きは、第1モータ11のトルクの向きとは反対である。
第1遊星歯車機構20によって、第2トルクT5及び第1リングギア24に戻ってきた第2分配トルクT4の合成トルクの大きさが減少し、第2トルクT5及び第2分配トルクT4の合成トルクの向きが逆転する。第2トルクT5及び第2分配トルクT4の合成トルクは、第1サンギア21における循環トルクT3となる。このようにして、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間でトルクの循環が発生するので、変速機構13は、減速比を大きくすることができる。すなわち、電動車両駆動装置10は、第1変速状態のときに大きなトルクを発生させることができる。
図3は、本実施形態に係る電動車両駆動装置が第2変速状態にある場合に、トルクが伝わる経路を示す模式図である。第2変速状態は、いわゆるハイギアの状態であり、減速比を小さくすることができる。すなわち、変速機構入出力軸15に伝わるトルクは小さくなるが、変速機構13の摩擦損失が小さくなる。第2変速状態では、第1モータ11及び第2モータ12が発生するトルクの大きさ及びトルクの向きは等しい。第2変速状態のときに、第1モータ11が出力するトルクを第1トルクT7とし、第2モータ12が出力するトルクを第2トルクT8とする。図3に示す合成トルクT9は、変速機構入出力軸15から出力されて減速機構40に伝えられるトルクである。
第2変速状態において、第1モータ11のトルクは、第1サンギア21に入力され、第2モータ12のトルクは、第1リングギア24に入力される。第2変速状態において、クラッチ装置60は非制動状態である。すなわち、第1変速状態において、第1ピニオンギア22は、自転でき且つ公転できる状態である。これにより、第2変速状態では、第1遊星歯車機構20と第2遊星歯車機構30との間におけるトルクの循環が遮断される。また、第2変速状態では第1キャリア23が公転できるため、第1サンギア21及び第1リングギア24は相対的に自由に自転できる。
第2変速状態では、第1トルクT7に対する第2トルクT8の比は、第2サンギア31の歯数に対する第2リングギア34の歯数の比で定まる。第1トルクT7は、第2キャリア33で第2トルクT8と合流する。その結果、第2リングギア34に合成トルクT9が伝わる。
変速機構入出力軸15の角速度は、第1モータ11によって駆動される第2サンギア31の角速度と、第2モータ12によって駆動される第2キャリア33の角速度とによって決定される。したがって、変速機構入出力軸15の角速度を一定としていても、第1モータ11の角速度と第2モータ12の角速度との組み合わせを変化させることができる。
このように、変速機構入出力軸15の角速度と第1モータ11の角速度と第2モータ12の角速度との組み合わせは一意に決定されない。このため、制御装置1が第1モータ11の角速度及び第2モータ12の角速度を連続して滑らかに制御すると、第1変速状態と第2変速状態との間で変速機構13の状態が変化した場合でも、いわゆる変速ショックが小さくなる。
第2サンギア31の角速度を一定とした場合、第2キャリア33の角速度が速くなるほど、第2リングギア34の角速度は遅くなる。また、第2キャリア33の角速度が遅くなるほど、第2リングギア34の角速度は速くなる。このため、第2リングギア34の角速度は、第2サンギア31の角速度と、第2キャリア33の角速度とに応じて連続的に変化する。したがって、電動車両駆動装置10は、第2モータ12が出力する第2トルクT8の角速度を変化させることで、減速比を連続的に変更できる。
また、電動車両駆動装置10は、第2リングギア34の角速度を一定にしようとする際に、第1モータ11が出力する第1トルクT7の角速度と、第2モータ12が出力する第2トルクT8の角速度との組み合わせを複数有する。すなわち、例えば第1モータ11が出力する第1トルクT7の角速度が変化しても、第2モータ12が出力する第2トルクT8の角速度が変化することで第2リングギア34の角速度が一定に維持される。このため、電動車両駆動装置10は、第1変速状態から第2変速状態に切り替わる際に、第2リングギア34の角速度の変化量を低減できる。その結果、電動車両駆動装置10は、変速ショックを低減できる。
図4は、本実施形態に係る電動車両駆動装置の正面図である。図5は、図4におけるA−A断面図である。次の説明において、上述した構成要素については重複する説明は省略し、図中において同一の符号で示す。また、第1モータ11の軸方向(回転軸Rに沿った方向)は、単に軸方向と記載される。第1モータ11の径方向(回転軸Rに対して直交する方向)は、単に径方向と記載される。第1モータ11の周方向(回転軸Rを中心とした円の接線方向)は、単に周方向と記載される。
図5に示すように、ケースGは、ケースG1と、ケースG2と、ケースG3と、を備える。ケースG1は、筒状の部材であって、内壁から突出する環状の隔壁G11を備える。隔壁G11は、第1モータ11と第2モータ12を隔てている。すなわち、第1モータ11が隔壁G11の一方側に配置され、第2モータ12が隔壁G11の他方側に配置されている。ケースG2は、筒状の部材であって、ケースG1よりもホイールH側に設けられる。ケースG1及びケースG2は、例えば複数のボルトで締結される。ケースG3は、ケースG1の2つの端面のうちケースG2とは反対側の端面、すなわちケースG1の電動車両の車体側の端面に設けられる。ケースG1及びケースG3は、例えば複数のボルトで締結される。ケースG3は、ケースG1の一方の開口を塞ぐ。
図5に示すように、第1モータ11は、第1ステータコア111と、第1コイル112と、第1ロータコア113と、第1マグネット114と、第1被検出部材115と、第1ロータ保持部材70と、を備える。第1ステータコア111は、筒状の部材である。第1ステータコア111は、ケースG1の内周面に嵌め込まれる。第1コイル112は、第1ステータコア111の複数個所に設けられる。第1コイル112は、インシュレータを介して第1ステータコア111に巻きつけられる。
第1ロータコア113は、径方向内側に配置される。第1ロータコア113は、筒状の部材である。第1マグネット114は、例えば第1ロータコア113の外周面に複数設けられる。第1被検出部材115は、第1ロータコア113の回転角度を検出するために用いられる。第1被検出部材115は、例えば環状の部材であって、第1ロータコア113と共に回転する。
図6は、図5のうち第1ロータ保持部材を拡大して示す断面図である。第1ロータ保持部材70は、第1ロータコア113を回転軸Rを中心に回転できるように支持する部材である。図5に示すように、第1ロータ保持部材70は、軸受51を介してケースG3に支持されており、且つサンギアシャフト14に連結されている。図6に示すように、第1ロータ保持部材70は、第1外側部材71と、第1内側部材72と、第1ピン73と、第1位置決めリング74と、を備える。
第1外側部材71は、第1金属で形成された部材である。第1金属は、例えばアルミニウム合金である。第1ロータコア113の内周面及び第1外側部材71の外周面の一方に設けられた凸部が、他方に設けられた凹部に嵌まっている。すなわち、第1ロータコア113及び第1外側部材71がいわゆるインロー継手により連結されている。図6に示すように、第1外側部材71は、外管部711と、内管部712と、連結部713と、リブ714と、フランジ715と、を備える。外管部711、内管部712、連結部713、リブ714及びフランジ715は、一体に形成されている。外管部711は、筒状の部材であって、第1ロータコア113の内周面に接している。内管部712は、筒状の部材であって、第1内側部材72の外周面に接している。内管部712には、第1凹部71aが設けられている。第1凹部71aは、例えば円柱状の窪みである。連結部713は、外管部711の一端と内管部712の一端とを連結している。具体的には、連結部713は湾曲しており、外管部711及び内管部712よりも隔壁G11に近い。リブ714は、連結部713から回転軸Rに沿う方向に突出する環状の部材である。リブ714は、図5に示す第1被検出部材115を支持するための部材である。フランジ715は、外管部711の他端(連結部713と接続された端部とは反対側の端部)から径方向に突出する環状の部材である。フランジ715は、第1ロータコア113の位置決めに用いられる。
第1内側部材72は、第2金属で形成された部材である。第2金属は、上述した第1金属の比重よりも大きな比重を有する金属であって、例えば炭素鋼である。図6に示すように、第1内側部材72は、小管部721と、大管部722と、フランジ723と、を備える。小管部721、大管部722及びフランジ723は、一体に形成されている。小管部721は、筒状の部材であって、内周面にスプライン7211を備える。スプライン7211は、サンギアシャフト14の端部に設けられたスプラインに嵌まっている。大管部722は、筒状の部材であって、第1外側部材71の内管部712の内周面に接している。大管部722には、第1孔72aが設けられている。第1孔72aは、例えば内管部712の第1凹部71aの直径に等しい直径を有する円柱状の貫通孔であって、第1凹部71aに重なっている。フランジ723は、大管部722の外周面から径方向に突出する環状の部材である。フランジ723は、第1外側部材71の位置決めに用いられる。
第1ピン73は、第1外側部材71と第1内側部材72との間でトルクを伝達しやすくするための部材である。第1ピン73は、第1凹部71a及び第1孔72aに跨る位置に配置されている。第1ピン73は、例えば第1凹部71a及び第1孔72aの直径に略等しい直径を有する円柱状のピンである。例えば、第1内側部材72は、圧入により第1外側部材71に固定される。より具体的には、大管部722が、焼き嵌めによって内管部712の内周面に固定される。これにより、大管部722の外周面と内管部712の内周面との間に摩擦力が生じるので、第1外側部材71と第1内側部材72との間である程度のトルクが伝達する。しかしながら、内管部712がアルミニウム合金であることから、大管部722の外周面と内管部712の内周面との間に生じる摩擦力を大きくさせることは困難である。そこで、第1内側部材72が第1外側部材71に圧入された後、第1ピン73が第1孔72aから第1凹部71aに向かって圧入される。これにより、第1外側部材71及び第1内側部材72との間で第1ピン73を介してトルクが伝達される。この時、第1ピン73にはせん断力が生じている。第1ピン73が設けられていることで、第1外側部材71及び第1内側部材72が圧入のみで固定されている場合に比較して、第1外側部材71と第1内側部材72との間でトルクがより伝達しやすくなる。また、第1凹部71aが第1孔72aに対して径方向外側に位置しているので、第1ピン73が遠心力により脱落することが防止されている。
第1位置決めリング74は、第1ロータコア113の位置決めのための部材である。第1ロータコア113は、第1位置決めリング74及びフランジ715に挟まれることで位置決めされる。第1位置決めリング74は、例えばアルミニウム合金で形成された環状の部材である。例えば、第1位置決めリング74は、圧入により外管部711の外周面に嵌められている。第1位置決めリング74は、第1ロータコア113に対してリブ714側の位置に配置されている。より具体的には、第1位置決めリング74は、径方向で内管部712及び連結部713に重なる位置に配置されている。リブ714の近傍は、剛性が比較的高くなっている。剛性は、例えば断面2次モーメントを意味する。このため、外管部711は、連結部713に近い部分ほど径方向の力に対して変形しにくい。このため、第1位置決めリング74が第1ロータコア113よりもリブ714側の位置に配置されることで、第1位置決めリング74を外管部711に圧入するときの圧入力を大きくすることが容易である。
図5に示すように、第2モータ12は、第2ステータコア121と、第2コイル122と、第2ロータコア123と、第2マグネット124と、第2被検出部材125と、第2ロータ保持部材80と、を備える。第2ステータコア121は、筒状の部材である。第2ステータコア121は、ケースG1の内周面に嵌め込まれる。第2コイル122は、第2ステータコア121の複数個所に設けられる。第2コイル122は、インシュレータを介して第2ステータコア121に巻きつけられる。
第2ロータコア123は、第2ステータコア121の径方向内側に設けられる。第2ロータコア123は、筒状の部材である。第2マグネット124は、例えば第2ロータコア123の外周面に複数設けられる。第2被検出部材125は、第2ロータコア123の回転角度を検出するために用いられる。第2被検出部材125は、例えば環状の部材であって、第2ロータコア123と共に回転する。
図7は、図5のうち第2ロータ支持部材を拡大して示す断面図である。第2ロータ保持部材80は、第2ロータコア123を回転軸Rを中心に回転できるように支持する部材である。図5に示すように、第2ロータ保持部材80は、軸受52を介してクラッチ装置60に支持されており、且つ第1リングギア24に連結されている。図7に示すように、第2ロータ保持部材80は、第2外側部材81と、第2内側部材82と、第2ピン83と、第2位置決めリング84と、を備える。
第2外側部材81は、第3金属で形成された部材である。第3金属は、例えばアルミニウム合金である。第2ロータコア123の内周面及び第2外側部材81の外周面の一方に設けられた凸部が、他方に設けられた凹部に嵌まっている。すなわち、第2ロータコア123及び第2外側部材81がいわゆるインロー継手により連結されている。図7に示すように、第2外側部材81は、厚肉部811と、薄肉部812と、フランジ813と、突起814と、を備える。厚肉部811、薄肉部812、フランジ813及び突起814は、一体に形成されている。厚肉部811は、筒状の部材であって、第2ロータコア123の内周面及び第2内側部材82の外周面に接している。厚肉部811には、第2凹部81aが設けられている。第2凹部81aは、例えば円柱状の窪みである。薄肉部812は、筒状の部材であって、第2ロータコア123の内周面に接している。薄肉部812は、厚肉部811に対して隔壁G11とは反対側に配置されている。薄肉部812の肉厚は、厚肉部811の肉厚よりも小さい。フランジ813は、薄肉部812の厚肉部811とは反対側の端部から径方向に突出する環状の部材である。フランジ813は、第2ロータコア123の位置決めに用いられる。突起814は、厚肉部811の内周面から径方向に突出する環状の部材である。突起814は、軸受52に接している。突起814は、軸受52の位置決めに用いられる。
第2内側部材82は、第4金属で形成された部材である。第4金属は、上述した第3金属の比重よりも大きな比重を有する金属であって、例えば炭素鋼である。図7に示すように、第2内側部材82は、嵌合部821と、フランジ822と、を備える。嵌合部821及びフランジ822は、一体に形成されている。嵌合部821は、筒状の部材であって、内周面に凹部8211を複数備える。凹部8211は、第1リングギア24の外周面に設けられた凸部に嵌まっている。嵌合部821には、第2孔82aが設けられている。第2孔82aは、例えば厚肉部811の第2凹部81aの直径に等しい直径を有する円柱状の貫通孔であって、第2凹部81aに重なっている。フランジ822は、嵌合部821の外周面から径方向に突出する環状の部材である。フランジ822は、厚肉部811と薄肉部812との間の段差に接している。フランジ822は、第2内側部材82の位置決めに用いられる。
第2ピン83は、第2外側部材81と第2内側部材82との間でトルクを伝達しやすくするための部材である。第2ピン83は、第2凹部81a及び第2孔82aに跨る位置に配置されている。第2ピン83は、例えば第2凹部81a及び第2孔82aの直径に略等しい直径を有する円柱状のピンである。例えば、第2内側部材82は、圧入により第2外側部材81に固定される。より具体的には、嵌合部821が、焼き嵌めによって厚肉部811の内周面に固定される。これにより、嵌合部821の外周面と厚肉部811の内周面との間に摩擦力が生じるので、第2外側部材81と第2内側部材82との間である程度のトルクが伝達する。しかしながら、厚肉部811がアルミニウム合金であることから、嵌合部821の外周面と厚肉部811の内周面との間に生じる摩擦力を大きくさせることは困難である。そこで、第2外側部材81及び第2内側部材82が固定された後、第2ピン83が第2孔82aから第2凹部81aに向かって圧入される。これにより、第2外側部材81及び第2内側部材82との間で第2ピン83を介してトルクが伝達される。この時、第2ピン83にはせん断力が生じている。第2ピン83が設けられていることで、第2外側部材81及び第2内側部材82が圧入のみで固定されている場合に比較して、第2外側部材81と第2内側部材82との間でトルクがより伝達しやすくなる。また、第2凹部81aが第2孔82aに対して径方向外側に配置されているので、第2ピン83が遠心力により脱落することが防止されている。
第2位置決めリング84は、第2ロータコア123の位置決めのための部材である。第2ロータコア123は、第2位置決めリング84及びフランジ813に挟まれることで位置決めされる。第2位置決めリング84は、例えばアルミニウム合金で形成された環状の部材である。例えば、第2位置決めリング84は、圧入により厚肉部811の外周面に嵌められている。より具体的には、第2位置決めリング84は、径方向で嵌合部821に重なる位置に配置されている。厚肉部811のうち径方向で嵌合部821に重なる部分は、嵌合部821に重ならない部分よりも径方向の力に対して変形しにくい。このため、第2位置決めリング84が径方向で嵌合部821に重なる位置に配置されることで、第2位置決めリング84を厚肉部811に圧入するときの圧入力を大きくすることが容易である。
図8は、第1モータ側から隔壁、クラッチ装置及び第1回転角検出器を見た斜視図である。図9は、第2モータ側から隔壁、クラッチ装置及び第2回転角検出器を見た斜視図である。図10は、第1モータ側からクラッチ装置及び第1回転角検出器を見た斜視図である。図11は、第2モータ側からクラッチ装置及び第2回転角検出器を見た斜視図である。図12は、第1モータ側からクラッチ装置を見た斜視図である。図13は、第2モータ側からクラッチ装置を見た斜視図である。
図8及び図9に示すように、クラッチ装置60は、隔壁G11に固定されている。図8から図13に示すように、クラッチ装置60は、いわゆるカム式のクラッチ装置であって、内輪61と、外輪62と、ローラー63と、を備える。内輪61は、第1キャリア23に連結されている。具体的には、内輪61の内周面にスプラインが設けられており、スプラインが第1キャリア23の外周面に設けられたスプラインに嵌められている。外輪62は、隔壁G11に連結されている。ローラー63は、内輪61と外輪62との間に配置されている。ローラー63は、内輪61に支持されており、内輪61と共に回転する。内輪61が第1方向に回転したとき、ローラー63は外輪62に噛み合う。これにより、内輪61が回転できなくなるので、第1キャリア23も回転できなくなる。一方、内輪61が第2方向に回転したとき、ローラー63は外輪62に噛み合わない。これにより、内輪61が回転できるので、第1キャリア23も回転できる。
より具体的には、外輪62は複数の鍔部69を備える。鍔部69は、外輪62から径方向に突出し且つ隔壁G11に対向している。例えば、複数の鍔部69は、周方向に沿って並んでいる。鍔部69は、ボルト等によって隔壁G11に締結されている。また、図9及び図11に示すように、周方向の一端の鍔部69から他端の鍔部69までの距離C1は、その他の鍔部69同士の間の間隔よりも大きい。すなわち、複数の鍔部69は、周方向で一部に偏在して配置されている。これにより、鍔部69が外輪62の全周に亘って等間隔に配置されている場合に比較して、クラッチ装置60が軽量化する。
図8及び図9に示すように、隔壁G11には、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92が固定されている。これにより、隔壁G11の周辺がデッドスペースである場合に比較して、軸方向でのケースG1の長さが小さくなる。第1回転角度検出器91は、図5に示した第1被検出部材115に対向している。第1回転角度検出器91は、第1被検出部材115の磁束を検出することで第1ロータコア113の絶対角度(1極対における絶対電気角)を算出できる。第2回転角度検出器92は、図5に示した第2被検出部材125に対向している。第2回転角度検出器92は、第2被検出部材125の磁束を検出することで第2ロータコア123の絶対角度を算出できる。また、図1に示す制御装置1は、第1回転角度検出器91が検出した第1ロータコア113の絶対角度、及び第2回転角度検出器92が検出した第2ロータ123の絶対角度に基づき、第1コイル112及び第2コイル122に流す電流を制御する。
図8から図11に示すように、第1回転角度検出器91は、周方向に沿う帯状の形状を有する。例えば、軸方向から見て、第1回転角度検出器91の外周面は、中心角が約90°である扇形の円弧を描いている。図10及び図11に示すように、第1回転角度検出器91は、周方向の両端に設けられた締結部材910によって隔壁G11に固定されている。第1回転角度検出器91の第1面911(表面)が第1被検出部材115に対向しており、第1回転角度検出器91の第2面912(裏面)が隔壁G11に対向している。
図10及び図11に示すように、第1回転角度検出器91には、電気信号を出力するための第1信号線93が接続されている。第1信号線93の一端は第1回転角度検出器91の外周面に接続されており、第1信号線93の他端はケースGの外部に配置されている。第1信号線93は、例えば、第1回転角度検出器91の外周面における周方向の一端に接続されている。より具体的には、第1面911側から見て、第1回転角度検出器91に対する第1信号線93の接続位置は、第1回転角度検出器91の外周面の周方向における中央から時計回りの向きにずれている。
図8から図11に示すように、第2回転角度検出器92は、第1回転角度検出器91と同様に周方向に沿う帯状の形状を有する。図10及び図11に示すように、第2回転角度検出器92は、周方向の両端に設けられた締結部材920によって隔壁G11に固定されている。第2回転角度検出器92の第1面921(表面)が第2被検出部材125に対向しており、第2回転角度検出器92の第2面922(裏面)が隔壁G11に対向している。また、図9に示すように、第2回転角度検出器92は、クラッチ装置60の外輪62に沿うように配置されている。図9及び図11に示すように、周方向における第2回転角度検出器92の内周面の長さC2は、鍔部691から鍔部629までの距離C1より小さい。これにより、第2回転角度検出器92は、鍔部691と鍔部692との間に配置されている。このため、第2回転角度検出器92の位置が径方向内側になりやすい。このため、第2回転角度検出器92の小型化が容易となる。
図10及び図11に示すように、第2回転角度検出器92には、電気信号を出力するための第2信号線94が接続されている。第2信号線94の一端は第2回転角度検出器92の外周面に接続されており、第2信号線94の他端はケースGの外部に配置されている。第2信号線94は、例えば、第2回転角度検出器92の外周面における周方向の一端に接続されている。より具体的には、第1面921側から見て、第2回転角度検出器92に対する第2信号線94の接続位置は、第2回転角度検出器92の外周面の周方向における中央から時計回りの向きにずれている。また、軸方向で見て、第1信号線93の第1回転角度検出器91側の根本931と回転軸Rとを通る第1直線L1は、第2信号線94の第2回転角度検出器92側の根本941と回転軸Rとを通る第2直線L2に重なっている。
ただし、必ずしも図10及び図11に示すように根本931の中央を通る第1直線L1が、根本941の中央を通る第2直線L2に重なっていなくてもよい。図14は、第1信号線の位置に対する第2信号線の位置の一例を示す模式図である。図14に示すように、軸方向で見て、根本931の端部を通る第1直線L1が、根本941の端部を通る第2直線L2に重なっていてもよい。すなわち、軸方向で見て、複数ある第1直線L1のうちの1本が、複数ある第2直線L2のうちの少なくとも1本に重なっていればよい。
第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92が上述したように配置されているので、周方向において第2回転角度検出器92が第1回転角度検出器91に対してずれている。言い換えると、軸方向で見て、第2回転角度検出器92の一部は第1回転角度検出器91に重なり、且つ第2回転角度検出器92のその他の部分は第1回転角度検出器91に重なっていない。このため、周方向において締結部材920が締結部材910に対してずれるので、締結部材920と締結部材910との干渉が防がれる。
なお、第1金属及び第3金属は、必ずしもアルミニウム合金でなくてもよく、マグネシウム合金等のその他の金属であってもよい。また、第1金属及び第3金属は、互いに異なる金属であってもよい。また、第2金属及び第4金属は、必ずしも炭素鋼でなくてもよく、合金鋼等のその他の金属であってもよい。また、第2金属及び第4金属は、互いに異なる金属であってもよい。
なお、第1凹部71a、第1孔72a、第2凹部81a及び第2孔82aの形状は、必ずしも円柱状でなくてもよく、例えば角柱状であってもよい。また、第1ピン73は、必ずしも円柱状でなくてもよく、第1凹部71a及び第1孔72aに嵌合する形状であればよい。第2ピン83は、必ずしも円柱状でなくてもよく、第2凹部81a及び第2孔82aに嵌合する形状であればよい。
なお、必ずしも第2回転角度検出器92が鍔部691と鍔部692との間に配置されなくてもよく、第1回転角度検出器91が鍔部691と鍔部692との間に配置されていてもよい。このような場合、鍔部69は、隔壁G11のうち第1モータ11側の表面に対向することになる。また、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92の両方が鍔部691と鍔部692との間に配置されなくてもよい。このような場合、隔壁G11のうち第1モータ11側の表面に対向する鍔部69と、隔壁G11のうち第2モータ12側の表面に対向する鍔部69とが設けられればよい。
以上で説明したように、電動車両駆動装置10は、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11及び第2モータ12に連結されており且つ減速比を切り替えることができる変速機構13と、を備える。変速機構13は、第1モータ11に連結されるサンギアシャフト14と、サンギアシャフト14と共に回転する第1サンギア21と、第1サンギア21と噛み合っている第1ピニオンギア22と、第1ピニオンギア22と噛み合い且つ第2モータ12に連結される第1リングギア24と、を備える。第1モータ11は、第1ステータコア111と、第1ステータコア111の径方向内側に配置された第1ロータコア113と、第1ロータコア113及びサンギアシャフト14を連結する第1ロータ保持部材70と、を備える。第1ロータ保持部材70は、第1ロータコア113に接する第1外側部材71と、サンギアシャフト14に接する第1内側部材72と、を備える。第1外側部材71の材料は第1金属であって、第1内側部材72の材料は第1金属の比重よりも大きな比重を有する第2金属である。
これにより、サンギアシャフト14に接する第1内側部材72の材料が比較的大きな比重を有する第2金属であるため、第1内側部材72の摩耗が抑制される。一方、第1内側部材72よりも体積が大きくなりやすい第1外側部材71の材料が比較的小さな比重を有する第1金属であるため、第1ロータ保持部材70の重量の増加が抑制される。このため、電動車両駆動装置10が軽量化する。したがって、電動車両駆動装置10は、変速機構13を備え且つ電動車両のばね下重量を低減できる。
また、電動車両駆動装置10において、第1ロータ保持部材70は、第1外側部材71に設けられる第1凹部71aと、第1内側部材72に設けられ且つ第1凹部71aに重なる第1孔72aと、に跨る位置に配置された第1ピン73を備える。
これにより、第1外側部材71及び第1内側部材72が圧入のみで固定されている場合に比較して、第1外側部材71と第1内側部材72との間でトルクがより伝達しやすくなる。また、第1凹部71aが第1孔72aに対して径方向外側に位置するので、第1ピン73が遠心力により脱落することが防止される。
また、電動車両駆動装置10において、第1外側部材71は、第1ロータコア113に接する外管部711と、第1内側部材72に接する内管部712と、外管部711及び内管部712を連結する連結部713と、連結部713から軸方向に沿って突出するリブ714と、を備える。第1ロータ保持部材70は、第1ロータコア113に対してリブ714側の位置で外管部711の外周面に嵌められ且つ第1ロータコア113に接する第1位置決めリング74を備える。
これにより、第1位置決めリング74によって、第1ロータコア113が位置決めされる。また、外管部711において、リブ714の近傍の剛性が比較的高くなる。このため、第1位置決めリング74が第1ロータコア113よりもリブ714側の位置に配置されることで、第1位置決めリング74を外管部711に圧入するときの圧入力を大きくすることが容易となる。このため、第1位置決めリング74の脱落が抑制される。
また、電動車両駆動装置10において、第2モータ12は、第2ステータコア121と、第2ステータコア121の径方向内側に配置された第2ロータコア123と、第2ロータコア123及び第1リングギア24を連結する第2ロータ保持部材80と、を備える。第2ロータ保持部材80は、第2ロータコア123に接する第2外側部材81と、第1リングギア24に接する第2内側部材82と、を備える。第2外側部材81の材料は第3金属であって、第2内側部材82の材料は第3金属の比重よりも大きな比重を有する第4金属である。
これにより、第1リングギア24に接する第2内側部材82の材料が比較的大きな比重を有する第4金属であるため、第2内側部材82の摩耗が抑制される。一方、第2内側部材82よりも体積が大きくなりやすい第2外側部材81の材料が比較的小さな比重を有する第3金属であるため、第2ロータ保持部材80の重量の増加が抑制される。このため、電動車両駆動装置10が軽量化する。したがって、電動車両駆動装置10は、変速機構13を備え且つ電動車両のばね下重量を低減できる。
また、電動車両駆動装置10において、第2ロータ保持部材80は、第2外側部材81に設けられる第2凹部81aと、第2内側部材82に設けられ且つ第2凹部81aに重なる第2孔82aと、に跨る位置に配置された第2ピン83を備える。
これにより、第2外側部材81及び第2内側部材82が圧入のみで固定されている場合に比較して、第2外側部材81と第2内側部材82との間でトルクがより伝達しやすくなる。また、第2凹部81aが第2孔82aに対して径方向外側に位置するので、第2ピン83が遠心力により脱落することが防止される。
また、電動車両駆動装置10において、第2ロータ保持部材80は、第2モータ12の径方向で第2内側部材82に重なる位置において第2外側部材81の外周面に嵌められ且つ第2ロータコア123に接する第2位置決めリング84を備える。
これにより、第2位置決めリング84によって、第2ロータコア123が位置決めされる。また、第2外側部材81において、径方向で第2内側部材82に重なる部分の剛性が比較的高くなる。このため、第2位置決めリング84が径方向で第2内側部材82に重なる位置に配置されることで、第2位置決めリング84を第2外側部材81に圧入するときの圧入力を大きくすることが容易となる。このため、第2位置決めリング84の脱落が抑制される。
また、電動車両駆動装置10は、ケースG1と、第1モータ11と、第1回転角度検出器91と、第1信号線93と、第2モータ12と、第2回転角度検出器92と、第2信号線94と、変速機構13と、を備える。ケースG1は、内側に隔壁G11を備える筒状の部材である。第1モータ11は、回転軸Rを中心に回転できる第1ロータコア113及び第1ロータコア113と共に回転する第1被検出部材115を備える。第1回転角度検出器91は、隔壁G11に連結されており且つ第1被検出部材115に対向する。第1信号線93は、第1回転角度検出器91に接続されている。第2モータ12は、回転軸Rを中心に回転できる第2ロータコア123及び第2ロータコア123と共に回転する第2被検出部材125を備え、第1モータ11に対して隔壁G11を挟んだ反対側に配置されている。第2回転角度検出器92は、隔壁G11に連結されており且つ第2被検出部材125に対向する。第2信号線94は、第2回転角度検出器92に接続されている。変速機構13は、第1モータ11及び第2モータ12に連結されており且つ減速比を切り替えることができる。軸方向から見て、第1信号線93の第1回転角度検出器91側の根本931と回転軸Rとを通る第1直線L1が、第2信号線94の第2回転角度検出器92側の根本941と回転軸Rを通る第2直線L2に重なる。
これにより、第1回転角度検出器91が隔壁G11の一方側に固定され、第2回転角度検出器92が隔壁G11の他方側に固定されるので、第1回転角度検出器91から第2回転角度検出器92までの距離が小さくなりやすい。その上で第1信号線93及び第2信号線94が同じ方向に取り出されるので、第1信号線93及び第2信号線94の長さが短くなりやすい。このため、第1信号線93及び第2信号線94の出力に生じるノイズが低減される。したがって、電動車両駆動装置10は、変速機構13を備えながらも回転角度検出器の出力に生じるノイズを低減できる。
また、電動車両駆動装置10において、周方向で、第2回転角度検出器92の位置は第1回転角度検出器91の位置に対してずれている。
これにより、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92が同じ装置である場合でも、第2回転角度検出器92を隔壁G11に固定する締結部材920の位置が、第1回転角度検出器91を隔壁G11に固定する締結部材910の位置に対してずれる。このため、隔壁G11に対する第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92の固定が容易である。また、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92に同じ装置を用いることが可能であるので、量産時のコストが低減される。
また、電動車両駆動装置10において、変速機構13は、第1モータ11に連結されるサンギアシャフト14と、サンギアシャフト14と共に回転する第1サンギア21と、第1サンギア21と噛み合う第1ピニオンギア22と、第1ピニオンギア22が自転できるように、且つ第1ピニオンギア22が第1サンギア21を中心に公転できるように第1ピニオンギア22を保持する第1キャリア23と、第1キャリア23の回転を規制できるクラッチ装置60と、を備える。クラッチ装置60は、第1キャリア23に連結される内輪61と、隔壁G11に連結される外輪62と、外輪62から径方向に突出し且つ隔壁G11に対向する複数の鍔部69と、を備える。複数の鍔部69は、周方向の一部に偏在して配置されている。第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92の少なくとも一方は、周方向の一端の鍔部691と他端の鍔部692との間に配置されている。
これにより、複数の鍔部69により外輪62が隔壁G11に固定される。さらに、鍔部69が周方向の全周に亘って等間隔に配置されている場合に比較して、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92の少なくとも一方の位置が、径方向内側になりやすい。これにより、第1回転角度検出器91及び第2回転角度検出器92の少なくとも一方が小型化する。このため、電動車両駆動装置10が軽量化する。
(変形例)
図15は、変形例に係る第1ロータ保持部材を一方側から見た斜視図である。図16は、変形例に係る第1ロータ保持部材を他方側から見た斜視図である。図15に示すように、変形例に係る電動車両駆動装置10は、上述した第1ロータ保持部材70とは異なる第1ロータ保持部材70Aを備える。図15及び図16に示すように、第1ロータ保持部材70Aは、第1外側部材71Aと、第1内側部材72Aと、を備える。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第1外側部材71Aは、第1金属で形成された部材である。図15及び図16に示すように、第1外側部材71Aは、内管部712Aを備える。内管部712Aは、筒状の部材であって、第1内側部材72Aの外周面に接している。内管部712Aには、第1凹部71bが設けられている。第1凹部71bは、例えば軸方向に沿った矩形の窪みである。
第1内側部材72Aは、第2金属で形成された部材である。図15及び図16に示すように、第1内側部材72Aは、大管部722Aを備える。大管部722Aは、筒状の部材であって、内管部712Aの内周面に接している。大管部722Aには、第1凸部72bが設けられている。第1凸部72bは、例えば軸方向に沿った矩形の突起である。
第1凹部71b及び第1凸部72bは、第1外側部材71Aと第1内側部材72Aとの間でトルクを伝達しやすくするための部材である。第1凸部72bは、第1凹部71aに嵌合している。これにより、第1外側部材71A及び第1内側部材72Aとの間で、第1凹部71b及び第1凸部72bを介してトルクが伝達される。この時、第1凹部71b及び第1凸部72bにはせん断力が生じている。第1凹部71b及び第1凸部72bが設けられていることで、第1外側部材71A及び第1内側部材72Aが圧入のみで固定されている場合に比較して、第1外側部材71Aと第1内側部材72Aとの間でトルクがより伝達しやすくなる。
なお、第1凹部71b及び第1凸部72bを有する構造は、第2ロータ保持部材80に適用されてもよい。すなわち、第2ロータ保持部材80の第2外側部材81が第1凹部71bに対応する第2凹部を備え、第2内側部材82が第1凸部72bに対応する第2凸部を備えていてもよい。