JP2010048279A - サイクロイド減速機およびインホイールモータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】外周係合部材をサイクロイド減速機の軸線に平行に配置する外周係合部材保持部が、横力や曲げモーメントなどの外力を受ける場合であっても、外周係合部材保持部に作用する力の不平衡を解消することができるサイクロイド減速機およびインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】外周係合部材保持部45は、ケーシング22との間に軸線Oを中心として径方向に開いた隙間51を伴って、周方向相対回転不能にケーシング22に固定される。
【選択図】図5
【解決手段】外周係合部材保持部45は、ケーシング22との間に軸線Oを中心として径方向に開いた隙間51を伴って、周方向相対回転不能にケーシング22に固定される。
【選択図】図5
Description
本発明は、サイクロイド減速機の外周係合部材の支持構造に関する。
従来のサイクロイド減速機およびインホイールモータ駆動装置は、例えば、特開2008−44537号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載されているインホイールモータ駆動装置は、駆動モータと、この駆動モータから駆動力を入力されて回転数を減速して車輪側に出力する減速機と、減速機の出力軸と結合する車輪のハブ部材とが同軸かつ直列に配列されている。この減速機はサイクロイド減速機構であり、従来の減速機として一般的な遊星歯車式減速機構と比較して高減速比が得られる。したがって、駆動モータの要求トルクを小さくすることができ、インホイールモータ駆動装置のサイズおよび重量を低減することができるという点で頗る有利である。また、このサイクロイド減速機構は、外周係合部材がケーシングに針状ころ軸受によって回転自在に支持されている。したがって、公転部材と外周係合部材との接触抵抗を大いに低減することができ、減速機のトルク損失を防止することができる点で頗る有利である。
特開2008−44537号公報
このサイクロイド減速機構のケーシングは、その軸線方向一方側で駆動モータのケーシングと締結固定され、軸線方向他方側でハブ部材のケーシングと固定される。また、サイクロイド減速機構の外周係合部材は、ピン形状であり、インホイールモータ駆動装置の軸線と平行に支持されて、公転部材の外周に係合する。また、組立の都合上、サイクロイド減速機構のケーシングを軸線方向に2分割しておき、外周係合部材および公転部材をケーシングの内部に配設して、これら2つのケーシングを接合する必要がある。ここで、外周係合部材の軸線方向一方側を支持する一方側のケーシングと、外周係合部材の軸線方向他方側を支持する他方側のケーシングとを、位置関係につき精度良く組立てるのは困難であり、外周係合部材の延在方向が、軸線と僅かに不平行となる虞がある。軸線に対する平行度が悪いと、外周係合部材と公転部材との間で点接触によるエッジロードが作用して、サイクロイド減速機構の片摩耗および耐久性低下が懸念される。
このため、ケーシングの内壁に取り付けられて、外周係合部材の両端を共通に支持する外周係合部材保持部を、新たに設けることが考えられる。この外周係合部材保持部によれば、一方側ケーシングと他方側ケーシングとの組立精度に依存することなく、外周係合部材の延在方向を、軸線と平行にすることが可能である。
しかしながら、サイクロイド減速機構の出力軸あるいは入力軸に、サイクロイド減速機構の外部から、横力などの径方向力や、曲げモーメントが伝達された場合、これらの外力が外周係合部材を介して外周係合部材保持部に作用する。このため、外周係合部材保持部に作用する力の不平衡が生じる。この不平衡は、外周係合部材保持部の耐久性低下の原因となる。例えば、軸線方向で隣り合う2枚の公転部材が180°位相を変えて配置される場合、2枚の公転部材の間にあるこれらの重心を中心として、モーメントが公転部材から外周係合部材保持部に作用し、外周係合部材保持部が振動する虞がある。
本発明の目的は、入力軸等から横力や曲げモーメントなどの外力を受ける場合であっても、外周係合部材保持部に作用する力の不平衡を解消することができるサイクロイド減速機およびインホイールモータ駆動装置を提供することである。
この目的のため本発明によるサイクロイド減速機は、ケーシングと、一端がケーシングの内部に配置された入力軸と、入力軸の軸線から偏心して入力軸の一端に結合した円盤形状の偏心部材と、内周が偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、入力軸の回転に伴って軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、公転部材の自転運動を取り出す出力軸と、軸線を中心とするリング形状であって、ケーシングの内部に取り付けられて外周係合部材を支持する外周係合部材保持部とを備える。そして、外周係合部材保持部は、ケーシングの内壁との間に軸線を中心として径方向に開いた隙間を伴って、周方向相対回転不能にケーシングに固定される。
かかる本発明によれば、外周係合部材保持部とケーシングとの間に軸線を中心として径方向に開いた隙間を有することから、車両の旋回走行または急加減速などによって、入力軸または出力軸からサイクロイド減速機に外力が作用する場合であっても、外周係合部材保持部がケーシングから反力を受けることなく外力を受け止めることができる。したがって、外周係合部材保持部に作用する力が不平衡になることを防止して、外周係合部材保持部の耐久性を向上させることができる。また、この隙間によって、外周係合部材保持部をケーシングに容易に取り付けることが可能となり、サイクロイド減速機の組立効率が向上する。さらに、外周係合部材保持部は周方向相対回転不能にケーシングに固定されることから、公転部材の自転運動を生じせしめて、サイクロイド減速機として高減速比が得られる。
本発明は一実施形態に限定されるものではなく、この隙間に弾性部材が介挿されてもよい。これにより、外周係合部材保持部が軸線に一致するよう、外周係合部材保持部の配置を好適にすることが可能になり、外周係合部材保持部の耐久性を一層向上させることができる。
好ましくは、弾性部材は、軸線を中心とするリング形状であり、より好ましくはOリングであり、軸線方向に離れた2箇所に設けられる。あるいは、軸線を中心として周方向および軸線方向に広がるシート状である。
外周係合部材保持部は、軸線と同軸に配置されて偏心部材、公転部材、および外周係合部材を収容する円筒部と、円筒部の軸線方向両端部から径方向内側にそれぞれ突出して相互に対面する一対のリング部と、一対のリング部の周方向同位置に、軸線と平行に延在して、外周係合部材の両端をそれぞれ支持する1対の外周係合部材保持孔とを有する。これにより、サイクロイド減速機の主要部品をモジュール化して、サイクロイド減速機の組立および分解の作業効率の向上を図ることができる。
好ましくは、外周係合部材保持部は、軸線方向一端でケーシングに嵌合固定され、軸線方向他端でケーシングから離隔する。これにより、外周係合部材保持部は周方向相対回転不能にケーシングに固定されるとともに、軸線方向一端よりも他端側でケーシングとの間に隙間を形成することが可能になる。したがって、外周係合部材保持部の耐久性向上を好適に実現することができる。
また、本発明によるインホイールモータ駆動装置は、ケーシングと、モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備え、減速部は、モータ側回転部材の軸線から偏心してモータ側回転部材の一端に結合した円盤形状の偏心部材と、内周が偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、モータ側回転部材の回転に伴って軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、車輪側回転部材と結合し、公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材と、軸線を中心とするリング形状であって、ケーシングの内部に取り付けられて外周係合部材を支持する外周係合部材保持部とを有する。そして、外周係合部材保持部は、ケーシングの内壁との間に軸線を中心として径方向に開いた隙間を伴って、周方向相対回転不能にケーシングに固定される。
かかる本発明によれば、外周係合部材保持部とケーシングとの間に軸線を中心として径方向に開いた隙間を有することから、車両の旋回走行または急加減速などによって、入力軸または出力軸からサイクロイド減速機に外力が作用する場合であっても、外周係合部材保持部がケーシングから反力を受けることなく外力を受け止めることができる。したがって、外周係合部材保持部に作用する力が不平衡になることを防止して、外周係合部材保持部の耐久性を向上させることができる。
このように本発明のサイクロイド減速機およびインホイールモータ駆動装置の外周係合部材保持部は、ケーシングとの間に軸線を中心として径方向に開いた隙間を伴って、周方向相対回転不能にケーシングに固定される。したがって、外周係合部材保持部の耐久性が向上し、組立効率が向上し、高減速比が得られる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1は、本実施例のサイクロイド減速機を備えたインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。図2は、図1のII−IIにおける横断面図である。
車両減速部の一例としてのインホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を図示しない駆動輪に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備える。モータ部Aと減速部Bとはケーシング22に収納され、車輪ハブ軸受部Cはケーシング22に回転自在に支持されて、例えば電気自動車のホイールハウジング内に取り付けられる。あるいは鉄道車両の台車に取り付けられる。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されるステータ23と、ステータ23の内側に径方向に開いた隙間を介して対面する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の内側に固定連結されてロータ24と一体回転するモータ側回転部材25とを備えるラジアルギャップモータである。
モータ側回転部材25は、モータ部Aの駆動力を減速部Bに伝達するためにモータ部Aから減速部Bにかけて配置され、減速部Bの入力軸に相当する。そして、減速部B内部に配置される一端が偏心部材25a,25bと結合する。このモータ側回転部材25は、ロータ24と嵌合すると共に、減速部Bの両端で転がり軸受36a,36bによって支持される。さらに、2つの円盤形状の偏心部材25a,25bは、偏心運動による遠心力で発生する振動を互いに打ち消し合うために、周方向180°位相を変えて設けられている。
減速部Bは、偏心部材25a,25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a,26bと、曲線板26a,26bの外周部に係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を車輪側回転部材28に伝達する運動変換機構と、曲線板26a,26bの隙間に取り付けられてこれら曲線板26a,26bの端面に当接して曲線板の傾きを防止するセンターカラー29と、これらの部材を内部に収容するケーシング22bとを備える。ケーシング22の一部であるケーシング22bは、筒状であって、軸線O方向の一方側で、モータ部Aのケーシング22と嵌合し、他方側で、車輪ハブ軸受部Cのケーシング22cと結合する。具体的には、ケーシング22bの一端部が、モータ部Aのポンプケージング22aと結合する。ケーシング22の一部であるポンプケージング22aは、モータ部Aのケーシング22の端面を形成するとともに、オイルポンプ61を支持する。またケーシング22bの他端部に内向きフランジ22uを有し、車輪ハブ軸受部Cのケーシング22cの端部に外向きフランジ22sが形成され、ボルト34の締結により、フランジ22uとフランジ22sとが結合される。
車輪側回転部材28は、フランジ部28aと軸部28bとを有する。フランジ部28aの端面には、車輪側回転部材28の回転軸線Oを中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴が形成されている。軸部28bの外径面には、車輪ハブ32が固定されている。
図2を参照して、曲線板26bは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26bの自転軸心Xを中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、後述する内ピン31を受入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26bの中心Xに設けられており、曲線板26bの内周になる。曲線板26bは、偏心部材25bの外周に相対回転可能に取り付けられる。
曲線板26bは、転がり軸受41によって偏心部材25bに対して回転自在に支持されている。この転がり軸受41は、その内径面が偏心部材25bの外径面に嵌合し、その外径面に外側軌道面を有する内輪部材42と、外側軌道面および貫通孔30bの孔壁面の間に配置される複数のころ44と、周方向で隣り合うころ44の間隔を保持する保持器(図示省略)とを備える円筒ころ軸受である。あるいは深溝玉軸受であってもよい。曲線板26aについても同様である。
外ピン27は、モータ側回転部材25の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に設けられる。そして、曲線板26a,26bが公転運動すると、外周の曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。
なお、ケーシング22に配設された外ピン27は、減速部Bのケーシング22bに直接保持されているわけではなく、ケーシング22の内壁に嵌合固定されている外ピン保持部45に保持されている。より具体的には、軸線方向両端部を外ピン保持部45に設けられた針状ころ軸受27aによって回転自在に支持されている。このように、外ピン27を外ピン保持部45に回転自在に取り付けることにより、曲線板26a,26bとの係合による接触抵抗を低減することができる。
図3は外ピン保持部45を軸線O方向からみた状態を一部断面にして示す正面図である。図4は図3のIV−IVで切断して矢印の方向からみた状態を示す縦断面図である。図3および図4を参照して、外周係合部材保持部としての外ピン保持部45は、軸線Oを中心とするリング形状であって、円筒部46と、円筒部46の軸線方向両端部から径方向内側に延びる一対のリング部47,48とを備える。そして、外ピン保持部45は、ケーシング22の内壁に嵌合固定されている。
また、円筒部46の円周上の少なくとも一箇所には、曲線板26a,26bを挿入するために径方向に貫通するスリット46bが形成されている。これにより、曲線板26a,26bを外ピン保持部45の径方向から組み込むことが可能になる。なおスリット46bの幅L1は、曲線板26a,26bの軸線方向厚みよりも大きいこと勿論である。
リング部47,48には、それぞれ厚み方向に貫通する複数の外ピン保持孔47a,48aが設けられている。外ピン保持孔47a,48aは、それぞれモータ側回転部材25の回転軸線Oと平行な方向に延びて、針状ころ軸受27aの外輪を保持する。また、対応する外ピン保持孔47a,48aは周方向同位置に設けられて互いに対面する。つまり、1対の外ピン保持孔47a,48aの中心軸線O2は一致する。また、外ピン保持部45をケーシング22に取り付けると、この中心軸線O2は、モータ側回転部材25の回転軸線Oと平行になる。
これにより、外ピン27をモータ側回転部材25の回転軸線Oと平行に保持することができる。なお、外ピン保持孔47a,48aは同時加工で同時に形成することができるので、中心軸線O2を一致させるのは比較的簡単である。
さらにリング部47には、厚み方向に貫通する複数の孔47bが設けられている。孔47bの内径面にはねじ溝が設けられている。雄ねじになるボルト34は、外向きフランジ22sに配設された孔および内向きフランジ22uに配設された孔を挿通し、ボルト34の先端が雌ねじになる孔47bと螺合する。そして、外向きフランジ22sと内向きフランジ22uとリング部47とを結合する。これにより内向きフランジ22uの端面に外ピン保持部45が結合する。
インホイールモータ駆動装置21の軽量化の観点から、ポンプケーシング22a、ケーシング22b,22cを含むケーシング22は、アルミ合金やマグネシウム合金等の軽金属で形成する。一方、高い強度が求められる外ピン保持部45は、炭素鋼で形成するのが望ましい。
図5は、図1のVで示す領域を拡大して示す図である。ケーシング22bの内壁には、内向きフランジ22uと隣接して軸線Oを中心とする環状案内面22nが設けられている。内径面になる環状案内面22nは、外ピン保持部45の外径面と嵌合して、外ピン保持部45を位置決めする。これにより、外ピン保持部45はケーシング22bの内部に取り付けられる。環状案内面22nよりもモータ部A寄りには、軸線Oを中心として案内面22nよりも大きな内径の内壁面22mが形成される。内壁面22mと外ピン保持部45の外径面との間には、軸線Oを中心として径方向に開いた環状の隙間51が形成される。外ピン保持部45の軸線O方向一端が環状案内面22nおよび内向きフランジ22uに嵌合固定した状態で、隙間51によって、外ピン保持部45の軸線O方向中程および他端がケーシング22bから離隔する。外ピン保持部45の軸線O方向他端は、ポンプケーシング22aおよびケーシング22と結合しない。
ケーシング22bのモータ部Aに隣接する側の端部には、環状の突条22tが形成される。また、モータ部Aのポンプケーシング22aには、環状の内周案内面22rが形成される。突条22tが内周案内面22rと嵌合して、ケーシング22bがモータ部Aのケーシング22と結合する。
本実施例によれば、外ピン保持部45が、ケーシング22との間に軸線Oを中心として径方向に開いた隙間51を伴って、周方向相対回転不能にケーシング22にボルト34で固定される。これにより、車両の旋回走行または急加減速などによって、車輪側回転部材28から減速部Bに横力や曲げモーメントなどの外力が作用する場合であっても、外力が外ピン27を介して外ピン保持部45に伝達され、外ピン保持部45が隙間51で追従変位することが可能になる。したがって、ケーシング22bから外ピン保持部45に径方向の反力が作用して不平衡になることを解消することができ、減速部Bを保護する。
例えば旋回走行中に、外力が車輪側回転部材28と、曲線板26a,26bと、外ピン27とを順次経由して、外ピン保持部45に伝達し、軸線Oに直角な横力が外ピン保持部45に作用しても、外ピン保持部45自身が横力を受け止める。また例えば、2枚の曲線板26a,26bの重心を中心とするモーメントが曲線板26a,26bから外ピン27に作用しても、外ピン保持部45が振動する虞を解消することができる。この結果、外力に対する外ピン27および外ピン保持部45の耐久性を向上させることができる。また、隙間51によって、外ピン保持部45をケーシング22bの内壁に容易に取り付けることが可能となり、減速部Bの組立効率が向上する。
次に本発明の変形例を説明する。図6は本発明の変形例を示す縦断面図であり、図7は、図6にVIIで示す領域を拡大して示す図である。この変形例につき、上述した実施例と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では図7に示すように、内壁面22mに、環状の条溝52を形成し、条溝52にゴムなどの弾性素材からなるリング53を配置する。リング53は、条溝52に収容されて、ケーシング22bおよび外ピン保持部45を径方向に押圧する。これら条溝52およびリング53は、1ないし複数配置される。好ましくは図6および図7に示すように、軸線O方向一端側および他端側に離して2箇所に設けられる。
リング53はOリングであることが好ましい。またリング53は、コイルスプリングの両端を接続したトロイダルコイルであってもよい。あるいはリング形状の弾性素材に代えて、条溝52または隙間51に、複数の弾性片を周方向に間隔をあけて介挿してもよい。
この変形例によれば、ケーシング22bと外ピン保持部45との隙間に弾性部材になるリング53が介挿されることから、外力によって外ピン保持部45が隙間51で追従変位しても、外ピン保持部45の配置が軸線Oに一致するように付勢することが可能になり、外ピン保持部45の耐久性を一層向上させることができる。更に2枚の曲線板26a,26bの重心を中心とするモーメントが曲線板26a,26bから外ピン27に作用しても、外ピン保持部45が振動するのを制振する効果が期待できる。
次に本発明の変形例を説明する。図8は本発明の変形例を示す縦断面図であり、図9は、図8にIXで示す領域を拡大して示す図である。この変形例につき、上述した実施例と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では図9に示すように、内壁面22mよりも大きな内径の内径面54を形成し、内径面54に沿って全周にゴムなどの弾性素材からなるシート55を配置する。シート55は軸線Oを中心として周方向および軸線方向に広がり、内径面54および外ピン保持部45を径方向に押圧する。あるいはシート55を周方向に間隔をあけて複数枚設けてもよい。あるいは径方向に間隔をあけて複数枚設けてもよい。
この変形例によれば、ケーシング22bと外ピン保持部45との隙間に弾性部材になるシート55が介挿されることから、前述したリング53と同様の効果が得られる。
説明を図1および図2に戻すと、減速部Bの運動変換機構は、車輪側回転部材28に保持された複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。内ピン31は、車輪側回転部材28の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、その軸方向一方側端部が車輪側回転部材28に固定されている。曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減するために、内ピン31に係る曲線板26a,26bの貫通孔30aの内壁面に当接する位置に針状ころ軸受31aが設けられている。一方、貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)より所定分大きく設定されている。内ピン31は、外ピン27よりも内径側にあり、曲線板26a,26bの貫通孔30aと係合する内側係合部材である。
車輪ハブ軸受部Cは、車輪側回転部材28に固定連結された車輪ハブ32と、車輪ハブ32を回転自在に保持する車輪ハブ軸受33と、車輪ハブ軸受33を支持するケーシング22cとを備える。ケーシング22の一部であるケーシング22cは、筒状であって、ボルト34で減速部Bのケーシング22bと締結される。車輪ハブ軸受33は複列アンギュラ玉軸受であって、その外輪33gがケーシング22cの内径面に嵌合固定され、その内輪33cが車輪ハブ32の外径面に嵌合固定される。車輪ハブ32は、円筒形状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって図示しない駆動輪が固定連結される。
上記構成のインホイールモータ駆動装置21の作動原理を詳しく説明する。
モータ部Aは、例えば、ステータ23のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または磁性体によって構成されるロータ24が回転する。
これにより、ロータ24に接続されたモータ側回転部材25が回転すると、曲線板26a,26bはモータ側回転部材25の回転軸線Oを中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と転がり接触するよう係合して、曲線板26a,26bをモータ側回転部材25の回転とは逆向きに自転運動させる。
貫通孔30aに挿通される内ピン31は、貫通孔30aの内径よりも十分に細く、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの孔壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが車輪側回転部材28を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。
このとき、軸線Oと同軸に配置された車輪側回転部材28は、減速部Bの出力軸として曲線板26a,26bの自転を取り出し、モータ側回転部材25の回転が減速部Bによって減速されて車輪側回転部材28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪に必要なトルクを伝達することが可能となる。
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a,26bの波形の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。図2に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27を外ピン保持部45に対して回転自在とし、内ピン31の曲線板26a,26bに当接する位置に針状ころ軸受31aを設けたことにより、摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
本実施例に係るインホイールモータ駆動装置21を電気自動車に採用することにより、ばね下重量を抑えることができる。その結果、走行安定性に優れた電気自動車を得ることができる。
また、本実施例においては、減速部Bの曲線板26a,26bを180°位相を変えて2枚設けたが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相を変えて設けるとよい。
また、本実施例における運動変換機構は、車輪側回転部材28に固定された内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される例を示したが、これに限ることなく、減速部Bの回転を車輪ハブ32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板に固定された内ピンと、車輪側回転部材に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
なお、本実施例における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから駆動輪に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
また、本実施例における作動の説明では、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を駆動輪に伝達させたが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、駆動輪側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電しても良い。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させたり、車両に備えられた他の電動機器等の作動に用いてもよい。
さらに、本実施例の構成にブレーキを加えることもできる。例えば、図1の構成において、ケーシング22を軸方向に延長してロータ24の図中右側に空間を形成し、ロータ24と一体的に回転する回転部材と、ケーシング22に回転不能にかつ軸方向に移動可能なピストンと、このピストンを作動させるシリンダとを配置して、車両停止時にピストンと回転部材とを嵌合させてロータ24をロックするパーキングブレーキであってもよい。
または、ロータ24と一体的に回転する回転部材の一部に形成されたフランジおよびケーシング22側に設置された摩擦板をケーシング22側に設置されたシリンダで挟むディスクブレーキであってもよい。さらに、この回転部材の一部にドラムを形成すると共に、ケーシング22側にブレーキシューを固定し、摩擦係合およびセルフエンゲージ作用で回転部材をロックするドラムブレーキを用いることができる。
また、本実施例において、曲線板26a,26bを支持する軸受41として円筒ころ軸受の例を示したが、これに限ることなく、例えば、すべり軸受、深溝玉軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受、アンギュラ玉軸受、4点接触玉軸受等、すべり軸受であるか転がり軸受であるかを問わず、転動体がころであるか玉であるかを問わず、さらには複列か単列かを問わず、あらゆる軸受を適用することができる。また、その他の場所に配置される軸受についても、同様に任意の形態の軸受を採用することができる。
また、本実施例においては、モータ部Aにケーシングに固定されるステータと、ステータの内側に径方向の隙間を空けて対面する位置に配置されるロータとを備えるラジアルギャップモータを採用した例を示したが、これに限ることなく、任意の構成のモータを適用可能である。例えばステータとロータとが軸方向に開いた隙間を介して対向配置されるアキシアルギャップモータであってもよい。
さらに、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車は、後輪を駆動輪としてもよく、また、前輪を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含むものとして理解すべきである。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
本発明は、インホイールモータ駆動装置などに用いられるサイクロイド減速機に採用することができる。
21 インホイールモータ駆動装置、22 ケーシング、22b 減速部ケーシング、22c 車輪ハブ軸受部ケーシング、23 ステータ、24 ロータ、25 モータ側回転部材、25a,25b 偏心部材、26a,26b 曲線板、27 外ピン、27a 針状ころ軸受、28 車輪側回転部材、29 センターカラー、30a,30b 貫通孔、31 内ピン、31a 針状ころ軸受、32 車輪ハブ、33 車輪ハブ軸受、34 ボルト、45 外ピン保持部、46 円筒部、46b スリット、47,48 リング部、47a,48a 外ピン保持孔、47b 貫通孔、51 隙間、53 リング、55 シート。
Claims (9)
- ケーシングと、
一端が前記ケーシングの内部に配置された入力軸と、
前記入力軸の軸線から偏心して入力軸の一端に結合した円盤形状の偏心部材と、
内周が前記偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、前記入力軸の回転に伴って前記軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、
前記公転部材の外周部に係合して前記公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、
前記公転部材の自転運動を取り出す出力軸と、
前記軸線を中心とするリング形状であって、前記ケーシングの内部に取り付けられて前記外周係合部材を支持する外周係合部材保持部とを備え、
前記外周係合部材保持部は、前記ケーシングの内壁との間に前記軸線を中心として径方向に開いた隙間を伴って、周方向相対回転不能にケーシングに固定された、サイクロイド減速機。 - 前記隙間に弾性部材が介挿された、請求項1に記載のサイクロイド減速機。
- 前記弾性部材は、前記軸線を中心とするリング形状である、請求項2に記載のサイクロイド減速機。
- 前記弾性部材はOリングである、請求項3に記載のサイクロイド減速機。
- 前記弾性部材は、軸線方向に離れた2箇所に設けられる、請求項4に記載のサイクロイド減速機。
- 前記弾性部材は、前記軸線を中心として周方向および軸線方向に広がるシート状である、請求項2に記載のサイクロイド減速機。
- 前記外周係合部材保持部は、
前記軸線と同軸に配置されて前記偏心部材、前記公転部材、および前記外周係合部材を収容する円筒部と、
前記円筒部の軸線方向両端部から径方向内側にそれぞれ突出して相互に対面する一対のリング部と、
前記一対のリング部の周方向同位置に、前記軸線と平行に延在して、前記外周係合部材の両端をそれぞれ支持する1対の外周係合部材保持孔とを有する、請求項1〜6のいずれかに記載のサイクロイド減速機。 - 前記外周係合部材保持部は、軸線方向一端で前記ケーシングに嵌合固定され、軸線方向他端でケーシングから離隔する、請求項1〜7のいずれかに記載のサイクロイド減速機。
- ケーシングと、モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備え、
前記減速部は、前記モータ側回転部材の軸線から偏心してモータ側回転部材の一端に結合した円盤形状の偏心部材と、
内周が前記偏心部材の外周に相対回転可能に取り付けられ、前記モータ側回転部材の回転に伴って前記軸線を中心とする公転運動を行う公転部材と、
前記公転部材の外周部に係合して前記公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、
前記車輪側回転部材と結合し、前記公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材と、
前記軸線を中心とするリング形状であって、前記ケーシングの内部に取り付けられて前記外周係合部材を支持する外周係合部材保持部とを有し、
前記外周係合部材保持部は、前記ケーシングの内壁との間に前記軸線を中心として径方向に開いた隙間を伴って、周方向相対回転不能にケーシングに固定された、インホイールモータ駆動装置。
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