JP2008044537A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型軽量で耐久性に優れ信頼性の高いインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】インホイールモータ駆動装置21は、ケーシング22と、モータ部Aと、減速部Bとを備える。減速部Bは、モータ側回転部材25の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板26a,26bと、ケーシング22に針状ころ軸受27cによって回転自在に支持され、曲線板26a,26bの外周部に係合して曲線板26a,26bの自転運動を生じさせる外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を、モータ側回転部材25の回転軸心を中心とする回転運動に変換して車輪側回転部材28に伝達する運動変換機構とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、電動モータの出力軸と車輪のハブとを減速機を介して同軸上に連結したインホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特開2005−7914号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されているインホイールモータ駆動装置は、駆動力を発生させるモータと、タイヤを接続するホイールハブと、モータおよびホイールハブの間に、モータのロータの回転を減速してタイヤに伝達する減速機とを備える。この減速機は、歯数の異なる複数の歯車を組み合わせてなる平行軸歯車機構を採用している。
このような電動モータの出力軸と車輪のハブとを減速機を介して同軸上に連結したインホイールモータ駆動装置は、プロペラシャフトやデファレンシャル等の大がかりな動力伝達機構が不要となるので、車両の軽量化やコンパクト化等の面から注目されている。しかしながら、車両のばね下に取り付けられるインホイールモータ駆動装置は、ばね下重量の増加によって乗り心地が悪くなる難点があり、未だ実用化には至っていない。
電動モータの出力トルクとモータ容積(重量)はほぼ比例関係にあり、小さなモータ容積で車両の車輪を駆動するのに足る大きな出力を得るためには、高速回転化が避けられず、電動モータの出力軸とハブとの間に減速機を組み込む必要がある。このため、組み込む減速機の重量が大きくなっては意味がないので、インホイールモータ駆動装置では、コンパクトで大きな減速比の得られる減速機が求められている。
また、電気自動車用減速装置として、電動モータの出力軸と車輪のハブとの間に減速機として遊星歯車減速機を組み込んだものがある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたものは、電動モータと減速機がばね下に取り付けられるインホイールモータ駆動装置ではないが、遊星歯車減速機を2段に設け、2段目の遊星歯車減速機からの出力をドライブシャフトを介してばね下の左右の車輪に分配している。
特開2005−7914号公報 特開平5−332401号公報(第1−3図)
上記の各公報に記載された減速機に採用されている平行軸歯車機構や遊星歯車機構の減速比は、歯車の強度等の観点から前者が1/2〜1/3、後者が1/3〜1/6程度に設定されるのが一般的である。これは、インホイールモータ駆動装置に搭載する減速機の減速比としては不十分であり、十分な減速比を得るためには、減速機を多段構成とする必要がある。これは、減速機の重量およびサイズの増大を招き、コンパクト化が必要なインホイールモータ駆動装置には不適切である。
また、特許文献2に記載された遊星歯車減速機は平行軸歯車と比較すると大きな減速比を得ることができるが、遊星歯車減速機はサンギヤ、リングギヤ、ピニオンギヤおよびピニオンギヤのキャリヤとで構成されるので、部品点数が多くコンパクト化が難しいという問題がある。
そこで、本発明の目的は、小型軽量で耐久性に優れ、信頼性の高いインホイールモータ駆動装置を提供することである。
この発明に係るインホイールモータ駆動装置は、ケーシングと、偏心部を有するモータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備える。そして、減速部は、偏心部に回転自在に保持されて、モータ側回転部材の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、軸受によってケーシングに回転自在に支持され、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、公転部材の自転運動を、モータ側回転部材の回転軸心を中心とする回転運動に変換して車輪側回転部材に伝達する運動変換機構とを含む。
上記構成のような、コンパクトで高減速比が得られる減速部とすることによって、モータ部が低トルクであっても、駆動輪に十分なトルクを伝達することが可能となる。その結果、軽量で小型のインホイールモータ駆動装置を得ることができる。
また、外周係合部材をケーシングに回転自在とすることにより、公転部材との係合による接触抵抗を低減することができる。これにより、公転部材と外周係合部材との接触によるトルク損失を抑えたインホイールモータ駆動装置を得ることができる。
好ましくは、外周係合部材は、公転部材の外周部と直接接触する。外周係合部材は、公転部材との接触によって曲げ応力を受ける。また、この曲げ応力は公転部材の回転トルクに比例して大きくなる。したがって、外周係合部材の曲げ強度が低いと、減速部の最大伝達トルクを大きく設定することができないという問題がある。一方、最大曲げ応力は、外周係合部材の断面積に比例して大きくなる。ただし、外周係合部材の大きさは、公転部材の大きさに制限されて自由に設定することはできない。そこで、公転部材と外周係合部材との接触部分に他の部材を介在させることなく、両者を直接接触させることにより、外周係合部材の断面積を最大限大きく設定することができる。
さらに好ましくは、外周係合部材は、相対的に直径の大きい大径部と、相対的に直径の小さい小径部とを含む棒状部材である。そして、大径部は公転部材の外周部と係合し、小径部は軸受によってケーシングに回転自在に支持されている。外周係合部材の直径が大きくなると、外周係合部材を支持する軸受も大型化する。その結果、ケーシングの軸受収容スペースも大きくなるという問題がある。そこで、公転部材と接触する領域の直径を大きくして十分な最大曲げ応力を確保すると共に、軸受に支持される領域の直径を小さくして軸受収容スペースを小さくする。その結果、小型で伝達トルク容量の大きいインホイールモータ駆動装置を得ることができる。
この発明によれば、低トルクのモータを採用した場合でも駆動輪に十分なトルクを伝達可能なインホイールモータ駆動装置を得ることができる。また、外周係合部材をケーシングに回転自在とすることによって、小型で伝達トルクの大きいインホイールモータ駆動装置を得ることができる。
図6および図7を参照して、この発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を備えた電気自動車11を説明する。なお、図6は電気自動車11の平面図であって、図7は電気自動車11を後方から見た図である。
図6を参照して、電気自動車11は、シャーシ12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、左右の後輪14それぞれに駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置15とを備える。図7を参照して、後輪14は、シャーシ12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャーシ12の下部に固定されている。
懸架装置12bは、左右に伸びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャーシ12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等に車体の傾きを抑制するスタビライザーが設けられる。なお、懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、駆動輪の駆動力を効率良く路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
この電気自動車11は、ホイールハウジング12a内部に、左右の後輪14それぞれを駆動するインホイールモータ駆動装置15を設けることによって、シャーシ12上にモータ、ドライブシャフト、およびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の駆動輪の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
一方、この電気自動車11の走行安定性を向上するために、ばね下重量を抑える必要がある。また、さらに広い客室スペースを確保するために、インホイールモータ駆動装置15の小型化が求められる。そこで、インホイールモータ駆動装置15として、図1に示すようなこの発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を採用する。
図1〜図4を参照して、この発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を説明する。なお、図1はインホイールモータ駆動装置21の概略断面図であって、図2は図1のII−IIにおける断面図、図3は図1の偏心部25a,25b周辺の拡大図、図4および図5は外周係合部材の拡大図である。
まず、図1を参照して、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を駆動輪14に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備え、モータ部Aと減速部Bとはケーシング22に収納されて、図7に示すように電気自動車11のホイールハウジング12a内に取り付けられる。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されるステータ23と、ステータ23の内側に軸方向の隙間を空けて対向する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の内側に固定連結されてロータ24と一体回転するモータ側回転部材25とを備えるアキシアルギャップモータである。また、モータ部Aの減速部Bと反対側の端面には、モータ部Aの内部への塵埃の混入等を防止するために密封部材34が設けられている。
ロータ24は、フランジ形状のロータ部24aと円筒形状の中空部24bとを有し、複列の転がり軸受35によってケーシング22に対して回転自在に支持されている。また、ケーシング22とロータ24との間には、減速部Bに封入された潤滑剤のモータ部Aへの侵入を防止するために密封部材36が設けられている。
モータ側回転部材25は、モータ部Aから減速部Bを貫通して車輪側回転部材28の中空部28bにかけて配置され、減速部B内に偏心部25a,25bを有する。このモータ側回転部材25は、一端がロータ24と嵌合すると共に、減速部Bの両端で転がり軸受37,38によって支持される。さらに、2つの偏心部25a,25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、180°位相を変えて設けられている。
減速部Bは、偏心部25a,25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a,26bと、針状ころ軸受27cによってケーシング22に対して回転自在に支持され、曲線板26a,26bの外周部に係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を車輪側回転部材28に伝達する運動変換機構と、カウンタウェイト29とを備える。
車輪側回転部材28は、フランジ部28aと円筒状の中空部28bとを有する。フランジ部28aの端面には、車輪側回転部材28の回転軸心を中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴を有する。また、中空部28bの外径面は車輪ハブ32の内径面と嵌合し、中空部28bの内径面は、モータ側回転部材25の回転軸心と車輪側回転部材28の回転軸心とが一致するように、転がり軸受38によってモータ側回転部材25を回転自在に支持している。
図2を参照して、曲線板26aは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26aの自転軸心を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、後述する内ピン31を受け入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26aの中心に設けられており、偏心部25aを挿通する。
曲線板26aは、転がり軸受39によって偏心部25aに対して回転自在に支持されている。この転がり軸受39は、偏心部25aに嵌合し、外径面に内側軌道面を有する内輪39aと、貫通孔30bの内壁面に嵌合し、内径面に外側軌道面を有する外輪39bと、内輪39aおよび外輪39bの間に配置された複数の転動体としての玉39cと、複数の玉39cを保持する保持器(図示せず)とを備える深溝玉軸受である。
外ピン27は、モータ側回転部材25の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に配置されている。これは、曲線板26a,26bの公転軌道と一致するので、曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。
図4および図5を参照して、外ピン27を詳しく説明する。なお、図4は図1に示す外ピン27周辺の拡大図、図5は図4の比較例としての外ピン47周辺の拡大図である。
まず、図4を参照して、外ピン27は、中央部に相対的に直径の大きい大径部27aと、両端部に相対的に直径の小さい小径部27bと、大径部27aと小径部27bとの間にテーパ部27dとを含む棒状部材である。大径部27aは、曲線板26a,26bと接触する位置に配置され、両者は直接接触する。小径部27bは、針状ころ軸受27cによってケーシング22に回転自在に支持されている。このように、外ピン27をケーシング22に回転自在とすることにより、曲線板26a,26bとの係合による接触抵抗を低減することができる。
次に図5を参照して、外ピン27の比較例として、両端部がケーシング42に固定され、曲線板46a,46bと接触する中央部に針状ころ軸受47cを配置した外ピン47によっても曲線板46a,46bと外ピン47との接触抵抗を低減することができる。
図4および図5を参照して、両端支持されている外ピン27,47には、曲線板26a,26b,46a,46bとの接触部分の法線方向に荷重(曲げ応力)が負荷されるので、外ピン27,47の十分な最大曲げ応力を確保するために外ピン27,47の直径を大きくすることが望まれる。しかし、曲線板26a,26b,46a,46bと接触する領域の直径(図4においては大径部27aの直径d、図5においては針状ころ軸受47cを含む直径dを指す)は、曲線板26a,26b,46a,46bの大きさに制限されて自由に設定することはできない。
すなわち、曲線板26a,26b,46a,46bが同じ大きさであれば、図4に示す外ピン27の大径部の直径dと、図5に示す外ピン47の針状ころ軸受47cを含む直径dとは同じ大きさ(d=d)となる。そうすると、図4に示す外ピン27の直径dは、図5に示す外ピン47の直径dより大きく(d>d)設定することができる。その結果、図4に示す曲線板26a,26bと直接接触する外ピン27は、図5に示す外ピン47と比較して最大曲げ応力を大きくすることができる。
また、この発明の効果を得るためには、図4において大径部27aと小径部27bとを同じ直径としてもよい。しかし、小径部27bの直径が大きくなると外ピン27を支持する針状ころ軸受27cも大型化する。その結果、ケーシング22の針状ころ軸受27cを収容するスペースも大きくなるという問題がある。そこで、曲線板26a,26bと接触する大径部27aの直径を大きくして十分な最大曲げ応力を確保すると共に、針状ころ軸受27cに支持される小径部27bの直径を小さくして軸受収容スペースを小さくする。その結果、小型で伝達トルクの大きいインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。
なお、上記の実施形態においては、外ピン27を支持する軸受として針状ころ軸受27cを用いた例を示したが、これに限ることなく、その他のあらゆる軸受を採用することができる。ただし、針状ころ軸受27cを採用することにより、軸受収容スペースをさらに小さくすることができる。
また、大径部27aと小径部27bとの間に垂直な段差部を設けてもよいが、この境界部分への応力集中を緩和するためには、図4に示すように両者の境界部分にテーパ部27dを設けるのが望ましい。
カウンタウェイト29は、円板状で、中心から外れた位置にモータ側回転部材25と嵌合する貫通孔を有し、曲線板26a,26bの回転によって生じる偶力を打ち消すために、各偏心部25a,25bの外側に偏心部と180°位相を変えて配置される。
ここで、曲線板26a,26bとカウンタウェイト29とは、図3に示すように、2枚の曲線板26a,26b間の中心点をGとし、中心点Gと各曲線板26a,26b中心との距離をL1、中心点Gと各カウンタウェイト29との距離をL2とし、曲線板26a,26bの質量をm1、カウンタウェイト29の質量をm2とし、これらの重心の回転軸心からの偏心量をそれぞれε1、ε2とすると、L1×m1×ε1=L2×m2×ε2を満たす関係となっている。
運動変換機構は、車輪側回転部材28に保持された複数の内ピン31と曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。内ピン31は、車輪側回転部材28の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、一端が車輪側回転部材28に固定され、他端には貫通孔30aからの抜けを防止する抜け止め部31bが設けられている。また、曲線板26a,26bとの接触抵抗を低減するために、曲線板26a,26bの貫通孔30aの内壁面に当接する位置に針状ころ軸受31aが設けられている。一方、貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(針状ころ軸受31aを含む最大外径)より所定分大きく設定されている。
なお、内ピン31の外径寸法は貫通孔30aの内径寸法より小さく、内ピン31と貫通孔30aの内周面とは接触状態と非接触状態とを繰り返しながら回転するので、モータ部Aの回転を円滑に駆動輪14に伝達する観点からは、内ピン31を複数設けることが望ましい。
車輪ハブ軸受部Cは、車輪側回転部材28に固定連結された車輪ハブ32と、車輪ハブ32をケーシング22に対して回転自在に保持する車輪ハブ軸受33とを備える。車輪ハブ32は、円筒形状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。中空部32aの内径面には車輪側回転部材28が嵌合し、フランジ部32bにはボルト32cによって駆動輪14(図示省略)が固定連結される。また、中空部32aの開口部分には、インホイールモータ駆動装置21の内部への塵埃の混入等を防止するために密封部材32dが設けられている。
車輪ハブ軸受33は、転動体としての玉33eを採用する複列のアンギュラ玉軸受である。玉33eの軌道面としては、第1外側軌道面33a(図中右側)および第2外側軌道面33b(図中左側)とが外方部材22aの内径面に設けられており、第1外側軌道面33aに対向する第1内側軌道面33cが車輪側回転部材28の外径面に、第2外側軌道面33bに対向する第2内側軌道面33dが車輪ハブ32の外径面にそれぞれ設けられている。そして、玉33eは、第1外側軌道面33aと第1内側軌道面33cとの間、および第2外側軌道面33bと第2内側軌道面33dとの間にそれぞれ複数個配置される。また、車輪ハブ軸受33は、左右の列の玉33eそれぞれを保持する保持器33fと、軸受内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩や、外部からの塵埃の混入を防止する密封部材33gとを含む。さらに、第1および第2外輪軌道面33a,33bを有する外方部材22aは、車輪ハブ軸受33の組込性の観点から、ケーシング22にボルト22bによって固定される。
上記構成のインホイールモータ駆動装置21は、車輪ハブ軸受33の外側軌道面33a,33bを外方部材22aに設け、内側軌道面33c,33dを車輪側回転部材28および車輪ハブ32に設けることにより、軸受の構成要素としての外輪および内輪を省略することができる。その結果、車輪ハブ軸受33の径方向の寸法を小さくすることができる。または、径方向の寸法を同寸法とする場合には、玉33eの径を大きくすることができるので、負荷容量を増大することが可能となる。さらには、部品点数の削減による組立性の改善効果も期待できる。
なお、上記構成のインホイールモータ駆動装置21において、車輪側回転部材28の外径面と車輪ハブ32の内径面とは、車輪側回転部材28を拡径加締めすることによって塑性結合される。
まず、車輪ハブ軸受部Cの組立方法としては、まず、車輪側回転部材28に設けられた第1内側軌道面33c上に玉33eを収容した保持器33fを置く。次に、外方部材22aを第1外側軌道面33aが玉33eに適正に接触する位置に配置し、ボルト22bによってケーシング22に固定する。次に、第2内側軌道面33d上に玉33eを収容した保持器33fを置いた状態で、玉33eが第2外側軌道面33bに適正に接触するように車輪ハブ32を車輪側回転部材28に嵌め込む。
この状態では、車輪側回転部材28と車輪ハブ32とは嵌め合いによって固定されているに過ぎないので、電気自動車11の旋回時等に大きなモーメント荷重が負荷されると、車輪ハブ32が軸方向にずれる恐れがある。これは、車輪ハブ軸受33の回転不良の原因となり、車輪ハブ32を安定して保持することができない。
そこで、車輪側回転部材28の外径面と車輪ハブ32の内径面とを拡径加締めによって塑性結合する。具体的には、インホイールモータ駆動装置21を固定しておき、車輪側回転部材28の中空部28bの内径より僅かに大きい外径を有する加締め冶具(図示せず)を中空部28bに圧入する。
これにより、塑性結合部40で車輪側回転部材28と車輪ハブ32とが塑性結合する。上記方法で車輪側回転部材28と車輪ハブ32とを固定連結することにより、嵌め合いで固定する場合と比較して、結合強度を大幅に高めることができる。これにより、車輪ハブ32を安定して保持することが可能となる。
また、上記の実施形態においては、車輪側回転部材28の中空部28bに転がり軸受38を介在させてモータ側回転部材25を支持しているが、車輪ハブ32の一部を車輪側回転部材28の内径側から拡径させて拡径加締めを行い塑性結合するものとしてもよい、この場合は、車輪ハブ32の中空部32aに転がり軸受を配置してモータ側回転部材25を支持する構造となる。
上記構成のインホイールモータ駆動装置21の作動原理を詳しく説明する。
モータ部Aは、例えば、ステータ23のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または直流電磁石によって構成されるロータ24が回転する。このとき、コイルに高周波数の電圧を印加する程、ロータ24は高速回転する。
これにより、ロータ24に接続されたモータ側回転部材25が回転すると、曲線板26a,26bはモータ側回転部材25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と係合して、曲線板26a,26bをモータ側回転部材25の回転とは逆向きに自転運動させる。
貫通孔30aに挿通する内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面に当接する。このとき、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法より大きく設定されているので、内ピン31と貫通孔30aの内壁面とは、接触状態と非接触状態とを繰り返しながら相互に運動する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが車輪側回転部材28を介して車輪ハブ32に伝達される。
このとき、モータ側回転部材25の回転が減速部Bによって減速されて車輪側回転部材28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
上記の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を電気自動車11に採用することにより、ばね下重量を抑えることができる。その結果、走行安定性に優れた電気自動車11を得ることができる。
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZ、曲線板26a,26bの波形の数をZとすると、(Z−Z)/Zで算出される。図2に示す実施形態では、Z=12、Z=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置を得ることができる。また、外ピン27をケーシング22に回転自在とし、内ピン31の曲線板26a,26bに当接する位置に針状ころ軸受31aを設けたことにより、接触抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
上述した実施形態では、減速部Bの曲線板26a,26bを180°位相を変えて2枚設けたが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相を変えて設けるとよい。
また、上記の実施形態における運動変換機構は、車輪側回転部材28に固定された内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される例を示したが、これに限ることなく、減速部Bの回転を車輪ハブ32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板に固定された内ピンと、出力部材に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
なお、上記の実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから駆動輪に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
また、上記の実施形態における作動の説明では、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を駆動輪14に伝達させたが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、駆動輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電しても良い。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させたり、車両に備えられた他の電動機器等の作動に用いてもよい。
さらに、上記の実施形態の構成にブレーキを加えることもできる。例えば、図1の構成において、ロータ24の図中右側の空間に、ロータ24と一体的に回転する回転部材と、ケーシング22に回転不能にかつ軸方向に移動可能なピストンと、このピストンを作動させるシリンダとを配置して、車両停止時にピストンと回転部材とを嵌合させてロータ24をロックするものとするパーキングブレーキであってもよい。
または、ロータ24と一体的に回転する回転部材の一部に形成されたフランジおよびケーシング22側に設置された摩擦板をケーシング22側に設置されたシリンダで挟むディスクブレーキであってもよい。さらに、この回転部材の一部にドラムを形成すると共に、ケーシング22側にブレーキシューを固定し、摩擦係合およびセルフエンゲージ作用で回転部材をロックするドラムブレーキを用いることができる。
上記の実施形態において、車輪ハブ軸受33の外側軌道面33a,33bを外方部材22aに形成し、内側軌道面33c,33dを車輪側回転部材28および車輪ハブ32に形成した例を示したが、これに限ることなく、任意の形態とすることができる。例えば、ケーシングに嵌合する外輪に外側軌道面を形成し、車輪側回転部材または車輪ハブに嵌合する内輪に内側軌道面を設けてもよい。
また、上記の実施形態において、車輪側回転部材28と車輪ハブ32とは、拡径加締めによって固定連結した例を示したが、これに限ることなく、任意の方法で両者を固定することとしてもよい。
また、上記の実施形態において、車輪ハブ軸受33には、アンギュラ玉軸受を採用した例を示したが、これに限ることなく、例えば、すべり軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、4点接触玉軸受等、転動体がころであるか玉であるかを問わず、すべり軸受であるか転がり軸受であるかを問わず、さらには複列か単列かを問わず、あらゆる軸受を適用することができる。また、その他の場所に配置される軸受についても、同様に任意の形態の軸受を採用することができる。
また、上記の実施形態においては、モータ部Aにアキシアルギャップモータを採用した例を示したが、これに限ることなく、任意の構成のモータを適用可能である。例えばケーシングに固定されるステータと、ステータの内側に径方向の隙間を空けて対向する位置に配置されるロータとを備えるラジアルギャップモータであってもよい。
さらに、図6に示した電気自動車11は、後輪14を駆動輪とした例を示したが、これに限ることなく、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含むものとして理解すべきである。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置の概略断面図である。 図1のII−IIにおける断面図である。 図1の偏心部周辺の拡大図である。 図1の外周係合部材周辺の拡大図である。 図4の比較例としての外周係合部材の拡大図である。 図1のインホイールモータ駆動装置を有する電気自動車の平面図である。 図6の電気自動車の後方断面図である。
符号の説明
11 電気自動車、12 シャーシ、12a ホイールハウジング、12b 懸架装置、13 前輪、14 後輪、15,21 インホイールモータ駆動装置、22 ケーシング、22a 外方部材、23 ステータ、24 ロータ、24a,28a,32b フランジ部、24b,28b,32a 中空部、25 モータ側回転部材、25a,25b 偏心部、26a,26b,46a,46b 曲線板、27,47 外ピン、27a 大径部、27b 小径部、27c,31a,47c 針状ころ軸受、27d テーパ部、28 車輪側回転部材、29 カウンタウェイト、30a,30b 貫通孔、31 内ピン、32d,33g,34,36 密封部材、33 車輪ハブ軸受、33a 第1外側軌道面、33b 第2外側軌道面、33c 第1内側軌道面、33d 第2内側軌道面、33e,39c 玉、33f 保持器、35,37,38,39,41 転がり軸受、39a 内輪、39b 外輪、22b ボルト、40 塑性結合部。

Claims (3)

  1. ケーシングと、
    偏心部を有するモータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、
    前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、
    前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備え、
    前記減速部は、
    前記偏心部に回転自在に保持されて、前記モータ側回転部材の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、
    軸受によって前記ケーシングに回転自在に支持され、前記公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、
    前記公転部材の自転運動を、前記モータ側回転部材の回転軸心を中心とする回転運動に変換して前記車輪側回転部材に伝達する運動変換機構とを含む、インホイールモータ駆動装置。
  2. 前記外周係合部材は、前記公転部材の外周部と直接接触する、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記外周係合部材は、相対的に直径の大きい大径部と、相対的に直径の小さい小径部とを含む棒状部材であって、
    前記大径部は、前記公転部材の外周部と係合し、
    前記小径部は、前記軸受によってケーシングに回転自在に支持されている、請求項1または2に記載のインホイールモータ駆動装置。
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