JP5924140B2 - 電気自動車用駆動装置 - Google Patents
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Description
近年に於ける化石燃料の消費量低減化の流れを受けて、電気自動車の研究が進み、一部で実施されている。電気自動車の動力源である電動モータは、化石燃料を直接燃焼させる事により動く内燃機関(エンジン)とは異なり、出力軸のトルク及び回転速度の特性が自動車用として好ましい(一般的に、起動時に最大トルクを発生する)ので、必ずしも内燃機関を駆動源とする一般的な自動車の様な変速機を設ける必要はない。但し、電気自動車の場合でも、変速機を設ける事により、加速性能及び高速性能を改善できる。具体的には、変速機を設ける事で、車両の走行速度と加速度との関係を、ガソリンエンジンを搭載すると共に、動力の伝達系統中に変速機を設けた自動車に近い、滑らかなものにできる。この点に就いて、図11を参照しつつ説明する。
そして、前記回転伝達装置3は、前記従動側回転軸5の回転をデファレンシャルギヤ8の入力部に伝達し、左右1対の駆動輪を支持した出力軸9a、9bを回転駆動する。
図13〜15は、この様な事情に鑑みて開発され、特願2011−208415に開示された、電気自動車用駆動装置に関する先発明の構造を示している。本発明は、この先発明の構造に改良を加えたものであり、構造及び機能の多くの部分が共通するので、先ず、この先発明に係る構造に就いて説明する。この先発明に係る電気自動車用駆動装置は、第一、第二両電動モータ10、11と、遊星歯車式変速機12と、回転伝達装置3aとを備える。このうちの第一、第二電動モータ10、11は互いに同心に配置され、それぞれの出力軸を回転駆動する事で、これら両出力軸と同心に設けられた、前記遊星歯車式変速機12の第一、第二両駆動側回転軸13、14をそれぞれ回転駆動する。
この一方向クラッチ18の断接(係脱)に基づいて、前記第一キャリア19が所定方向とは逆方向に回転する傾向の場合には、前記第一太陽歯車20と前記第一リング歯車22との間で動力が伝達される状態となる。これに対して、前記第一キャリア19が前記所定方向に回転する場合には、前記両歯車20、22の間で動力が伝達されない状態となる。
この低速モードでは、図14に示す様に、前記第一太陽歯車20を回転駆動する前記第一電動モータ10の出力軸と、前記第一リング歯車22を回転駆動する前記第二電動モータ11の出力軸との回転方向及び回転速度の差を適切に規制して、前記第一キャリア19を前記所定方向と逆方向に回転する傾向にする事で、前記一方向クラッチ18を接続する。そして、前記第一キャリア19を前記車体に固定の部分27に対し回転不能とする。この結果、前記第一太陽歯車20と前記第一リング歯車22との間で、前記第一遊星歯車21、21を介して動力が伝達される。この様な低速モード状態に於ける前記両電動モータ10、11の動力の伝達経路は、次の通りである。
(A) 第一電動モータ10→第一駆動側回転軸13→第二太陽歯車24→第二遊星歯車25a、25b→第二リング歯車26→従動側回転軸15
(B) 第一電動モータ10→第一駆動側回転軸13→第二太陽歯車24→第二遊星歯車25a、25b→第二キャリア23→第一リング歯車22→第一遊星歯車21、21→第一太陽歯車20
(C) 第二電動モータ11→第二駆動側回転軸14→第一リング歯車22→第一遊星歯車21、21→第一太陽歯車20
この高速モードでは、図15に示す様に、前記第一太陽歯車20を回転駆動する前記第一電動モータ10の出力軸と、前記第一リング歯車22を回転駆動する前記第二電動モータ11の出力軸との回転方向及び回転速度を同じにし、前記第一キャリア19を前記所定方向に回転させる事で、前記一方向クラッチ18を切断する。そして、この第一キャリア19を前記車体に固定の部分27(図13参照)に対し回転させる。この結果、前記第一太陽歯車20と前記第一リング歯車22とが同じ角速度で同じ方向に回転する状態となり、これら第一太陽歯車20と第一リング歯車22との間で動力が伝達されなくなる。この様な高速モード状態での前記両電動モータ10、11の動力伝達経路は、次の通りである。
(D) 第一電動モータ10→第一駆動側回転軸13→第二太陽歯車24→第二遊星歯車25a、25b→第二リング歯車26→従動側回転軸15
(E) 第二電動モータ11→第二駆動側回転軸14→第一リング歯車22→第二キャリア23→第二遊星歯車25b、25b→第二リング歯車26→従動側回転軸15
上述の様な、高速モード状態に於いては、後述する低速モード状態と高速モード状態との切り換え時を除き、前記両電動モータ10、11の回転方向及び回転速度を同じとする。この結果、前記第一遊星歯車機構16を構成する、前記第一キャリア19と前記第一太陽歯車20と前記第一リング歯車22との自転、及び、前記各第一遊星歯車21、21の公転の回転方向及び回転速度が同じとなって、これら各第一遊星歯車21、21が実質的に自転しない(1公転当り1自転し、前記第一キャリア19に設けた遊星軸に対し回転しない)状態となり、前記第一遊星歯車機構16全体が一体となって回転する、所謂のり付け状態となる。同様にして、前記第二遊星歯車機構17を構成する、前記第二キャリア23と前記第二太陽歯車24と前記第二リング歯車26との自転、及び、前記各第二遊星歯車25a、25bの公転も、回転方向及び回転速度が同じとなって、これら各第二遊星歯車25a、25bが実質的に自転しない状態となり、前記第二遊星歯車機構17全体が一体となって回転する。
この場合の前記第一電動モータ10の出力トルクτin1と、前記第二電動モータの出力トルクτin2と、図15に矢印で示す、前記従動側回転軸15の回転トルクτoutとの関係は次の(5)式で表わされる。
又、前記遊星歯車式変速機12の従動側回転軸15の回転速度は、前記第一駆動側回転軸13を介して前記第一電動モータ10により回転駆動される、第二太陽歯車24の回転速度と、前記第二駆動側回転軸14を介して前記第二電動モータ11により回転駆動される、第二キャリア23の回転速度とから決定される。従って、前記従動側回転軸15の回転速度を一定値としたまま、前記両電動モータ10、11の出力軸の回転速度及び回転方向をそれぞれ制御しながら前記第一太陽歯車20と前記第一リング歯車22との角速度を互いに一致させ、前記図14に示した低速モード状態から前記図15に示した高速モード状態への切り換えを滑らかに行う事ができる。同様に、高速モード状態から低速モード状態への切り換えも滑らかに行う事ができる。
又、変速機構として前記遊星歯車式変速機12を用いている為、動力を複数の遊星歯車21、25a、25bに分散して伝達する事ができ、一般的な歯車機構による変速機構を用いた場合と比較して、変速機構を小型化できる。更に、前記遊星歯車式変速機12を構成する第一、第二両遊星歯車機構16、17と、前記第一、第二両電動モータ10、11とを互いに同心に配置している。この為、これら各部材10、11、16、17の大きさや構造によっては、これら第一、第二両遊星歯車機構16、17を、これら第一、第二両電動モータ10、11の内径側に配置する等して、前記遊星歯車式変速機12を組み込んだ電気自動車用駆動装置を小型化する事が可能となる。
又、車両を後退させるべく、前記第一電動モータ10の回転方向を前記所定方向と逆方向に回転した状態で、前記第二電動モータ11の回転方向をこの第一電動モータ10の回転方向と逆方向、即ち、前記所定方向とし、更に、これら第一、第二両電動モータ10、11の回転トルクを同じとする。この状態では、前記第一キャリア19(19a)は、前記所定方向に回転する為、前記一方向クラッチ18が切断される。従って、車両を後退させる場合には、前記遊星歯車式変速機12(12a)内で、動力の一部が循環する低速モードでの走行も行えない。
このうちの両電動モータは、前記遊星歯車式変速機の第一、第二両駆動側回転軸を回転駆動する。
又、前記遊星歯車式変速機は、前記第一、第二両駆動側回転軸と、従動側回転軸と、第一、第二両遊星歯車機構と、クラッチ装置とを組み合わせて成るものである。
このうちの第一遊星歯車機構は、第一キャリアと、第一太陽歯車と、第一遊星歯車と、第一リング歯車とから構成され、この第一キャリアに回転可能に支持された第一遊星歯車を、前記第一太陽歯車に噛合させると共に前記第一リング歯車にも噛合させる、シングルピニオン式である。そして、前記第一太陽歯車を前記第一駆動側回転軸の軸方向中間部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する(この第一駆動側回転軸と同期して回転する)状態で設け、前記第一リング歯車を前記第二駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けている。
又、前記第二遊星歯車機構は、第二キャリアと、第二太陽歯車と、第二、第三遊星歯車と、第二リング歯車とから構成され、この第二キャリアに回転可能に支持されて対となる第二、第三遊星歯車を互いに噛合させると共に、このうちの内径寄りの第二遊星歯車を前記第二太陽歯車に、同じく外径寄りの第三遊星歯車を前記第二リング歯車に、それぞれ噛合させるダブルピニオン式である。又、前記第二太陽歯車を前記第一駆動側回転軸の端部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設け、前記第二キャリアを前記第一リング歯車と同期して回転する状態で設けている。そして、前記第二リング歯車により、前記従動側回転軸を回転駆動する様にしている。
又、前記クラッチ装置は、前記第一キャリアを車体に固定の部分に対し回転が阻止される状態と、同じく回転が許容される状態とを切り換えるツーウェイクラッチである。そして、前記クラッチ装置は、減速比の大きい低速モード状態では、前記第一キャリアを前記第一駆動側回転軸と反対方向に回転する傾向とする事により接続(係合)し、この第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを阻止する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達する。一方、減速比の小さい高速モード状態では、前記第一キャリアを前記第一駆動側回転軸と同じ方向に回転する傾向とする(この第一キャリアの回転速度をこの第一駆動側回転軸の回転速度と同じにする)事により前記クラッチ装置を切断し、前記第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを許容する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達しない様にする。
前記回転伝達装置は、前記従動側回転軸の回転を、左右1対の駆動輪に伝達する。
このうちの外径側部材は、内周面に外輪軌道を有する。
又、前記内径側部材は、前記外径側部材の内側にこの外径側部材と同心に配置され、外周面に周方向に亙る凹凸であるカム面を形成する。
又、前記各転動体は、このカム面と前記外輪軌道との間の周方向複数箇所に配置される。
又、前記保持器は、前記各転動体を転動自在に保持する。
そして、前記外径側部材を前記車体に固定の部分に、前記内径側部材を前記第一キャリアに、それぞれ支持固定する。又、前記保持器と、前記第一駆動側回転軸、第一太陽歯車及び第二太陽歯車のうちの何れか1個である相手部材とを、この保持器が、この相手部材の回転方向と同じ方向に回転する傾向となる様に摩擦係合させる。そして、この保持器が前記カム面と前記各転動体との係合に基づき、前記車体に固定の部分に対して回転するのを阻止された状態で、前記相手部材を前記保持器に対し摺動可能としている。尚、前記摩擦係合状態は、この保持器に回転方向の軽い力を付与できれば良く、軽い摩擦状態で足りる。
又、前記第二遊星歯車機構は、第二キャリアと、第二太陽歯車と、第三遊星歯車と、第二リング歯車とから構成され、この第二キャリアに回転可能に支持された第三遊星歯車を、前記第二太陽歯車に噛合させると共に前記第二リング歯車にも噛合させる、シングルピニオン式である。又、前記第二太陽歯車を前記第一駆動側回転軸の端部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設け、前記第二キャリアを前記第一リング歯車と同期して回転する様に設けている。そして、前記第二リング歯車により前記従動側回転軸を回転駆動する様にしている。
又、前記クラッチ装置は、前記第一キャリアを車体に固定の部分に対し回転が阻止される状態と、同じく回転が許容される状態とを切り換えるツーウェイクラッチである。そして、前記クラッチ装置は、減速比の大きい低速モード状態では、前記第一キャリアを前記第二駆動側回転軸と反対方向に回転する傾向とする事により接続(係合)し、この第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを阻止する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達する。一方、減速比の小さい高速モード状態では、前記第一キャリアを前記第二駆動側回転軸と同じ方向に回転する傾向とする事により前記クラッチ装置を切断し、この第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを許容する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達しない様にする。
又、上述の様な請求項4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記各揺動部材の先端部に永久磁石を設ける。そして、この永久磁石と前記相手部材との間に作用する磁気吸引力により、これら各揺動部材の先端部内周面を前記相手部材の外周面に当接させる。
上述の様な請求項7に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項8に記載した発明の様に、前記低速モード状態で、前記両電動モータの回転方向を互いに逆方向とし、同じく回転トルクの大きさを同じとして、前記第一、第二両遊星歯車変速機構のうちの第一遊星歯車変速機構の遊星比(=リング歯車の歯数/太陽歯車の歯数)を2.8以上、3.2以下とし、同じく第二遊星歯車式変速機構の遊星比を1.9以上、2.1以下とする。
更に、請求項3〜5に記載した発明によれば、クラッチ装置を切り換える為のアクチュエータが必要ない為、前記遊星歯車式変速機を組み込んだ電気自動車用駆動装置を、より一層小型且つ軽量にできる。
図1〜6は、請求項1、3、4、6〜8に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、車両の前進時及び後退時の双方に於いて、遊星歯車式変速機12bの減速比の切り換えを可能とする構造を実現する点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図13〜16に示した先発明に係る構造と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
又、前記保持器32は、1対のリム部39a、39b同士の間に複数本の柱部40、40を、周方向に等間隔に互いに平行に設けて成る。そして、前記両リム部39a、39bと周方向に隣り合う柱部40、40とにより囲まれる部分を、それぞれ前記各転動体31、31を転動自在に保持する為のポケット41、41としている。又、前記保持器32の一方のリム部39aの軸方向片側面の周方向複数箇所(図示の例では3箇所)に等間隔に、部分円筒状の揺動部材42、42の基端部を、枢軸43、43を中心とした揺動変位を自在に支持している。そして、これら各揺動部材42、42の先端部内周面に、相手部材である前記第一駆動側回転軸13の外周面と摩擦係合する、摩擦係合部44、44を設けている。
車両の前進時・後退時のそれぞれに於ける、低速モード状態及び高速モード状態での前記両電動モータ10、11の動力伝達経路やこれら両電動モータ10、11の出力トルクと従動側回転軸15の回転トルクとの関係は、前述した先発明に係る構造の場合と同様(前記各摩擦係合部44、44と前記第一駆動側回転軸13の外周面との係合部に於ける摩擦損失を除く)である。即ち、前述した先発明に係る構造の説明では、車両を前進させる場合のトルクの関係式を示したが、本例の構造に於いて車両を後退させる場合には、前述した各式のトルクの値の符号が逆転するだけである。
又、本例の場合、減速比の異なる低速モードと高速モードとを切り換えるクラッチ装置として、ツーウェイクラッチ28を用いている。この為、低速モードと高速モードとの切り換えを、車両が前進時及び後退時の双方に於いて実現できる。従って、前記第一、第二両遊星歯車機構16、17に於ける歯車の噛み合いによるエネルギ損失を小さい高速モード(のり付け状態)での運転を、車両を前進させる場合だけでなく後退させる場合にも実現できて、前記電気自動車用駆動装置の効率を向上させる事ができる。又、減速比の大きい低速モードを、車両の前進時及び後退時の双方に於いて、前記第一、第二両電動モータ10、11の出力トルクτin1、τin2の大きさ(これら両出力トルクτin1、τin2の絶対値)を互いに同じとした状態で実現できる。特に、本例の場合、前記ツーウェイクラッチ28の断接(係合)状態の切り換えを、アクチュエータによらず、前記両電動モータ10、11の出力(回転方向及び回転速度)を制御する事で行う。この為、前記両モードを切り換える為の構造を簡単にできて、前記遊星歯車式変速機12bを組み込んだ電気自動車用駆動装置の小型・軽量化を図れる。
図7〜9は、請求項1、3〜8に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、ツーウェイクラッチ28aの保持器32に揺動自在に支持した揺動部材42a、42aの先端部外周面に永久磁石48、48を設けている。そして、これら各永久磁石48、48と、鋼製である第一駆動側回転軸13との間に作用する磁気吸引力により、前記各揺動部材42a、42aの摩擦係合部44、44を、この第一駆動側回転軸13の外周面に(軽く)押し付けている。この為、長期間の使用により、これら各摩擦係合部44、44が摩耗した場合であっても、これら各摩擦係合部44、44と前記第一駆動側回転軸13の外周面との係合部の当接圧を一定の値に保ち易い。即ち、上述した実施の形態の第1例の構造の様に、前記各揺動部材42、42の摩擦係合部44、44をワイヤー47(図3参照)により軽く押圧する場合、長期間の使用によって弾性疲労(金属疲労)が発生し、このワイヤー47により適切な押圧力を得られなくなる可能性がある。これに対し、本例の構造の様に、前記各揺動部材42a、42aの摩擦係合部44、44を前記各永久磁石48、48により(軽く)押し付ければ、長期間使用する事による影響を抑えられる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
図10は、本発明に関連する参考例の1例を示している。本参考例の遊星歯車式変速機12cは、第一、第二両電動モータ10、11の側に設けられた第一遊星歯車機構16cを、第一キャリア19cに回転可能に支持されて対となる第一遊星歯車21a、21bを互いに噛合させると共に、このうちの内径寄りの第一遊星歯車21a、21aを第一太陽歯車20aに、同じく外径寄りの第一遊星歯車21b、21bを第一リング歯車22aに、それぞれ噛合させる、ダブルピニオン式としている。又、従動側回転軸15の側に設けられた第二遊星歯車機構17aを、第二キャリア23aに回転可能に支持された第二遊星歯車25c、25cを、第二太陽歯車24aに噛合させると共に第二リング歯車26aにも噛合させる、シングルピニオン式としている。そして、ツーウェイクラッチ28bを構成する内径側部材30(図2〜7参照)を、前記第一キャリア19cに支持固定し、保持器32(図2〜7参照)を第二駆動側回転軸14に摩擦係合している。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
先ず、第一、第二両電動モータ10、11の出力トルクτin1、τin2、及び、第一遊星歯車機構16の第一太陽歯車20、第一リング歯車22の歯数Z20、Z22、第二遊星歯車機構17の第二太陽歯車24、第二リング歯車26の歯数Z24、Z26に就いて、以下の様に規制する。
τin1=50(N/m)
τin2=−50(N/m)
Z20=24
Z22=76
Z24=47
Z26=97
ここで、前述した(1)式〜(4)式より、各部のトルクは以下の通りとなる。
τ1=99.1(N/m)
τ2=49.1(N/m)
τ3=−105.4(N/m)
τout=204.5(N/m)
尚、トルクの符号が負(マイナス)となっているものは、トルクの向き(回転方向)が反対となっている事を示している。
2 変速装置
3、3a 回転伝達装置
4 駆動側回転軸
5 従動側回転軸
6a、6b 歯車伝達機構
7a、7b クラッチ機構
8、8a デファレンシャルギヤ
9a〜9d 出力軸
10 第一電動モータ
11 第二電動モータ
12、12a〜12c 遊星歯車式変速機
13 第一駆動側回転軸
14 第二駆動側回転軸
15 従動側回転軸
16、16a〜16c 第一遊星歯車機構
17、17a 第二遊星歯車機構
18 一方向クラッチ
19、19a〜19c 第一キャリア
20、20a 第一太陽歯車
21、21a〜21b 第一遊星歯車
22、22a 第一リング歯車
23、23a 第二キャリア
24、24a 第二太陽歯車
25a〜25c 第二遊星歯車
26、26a 第二リング歯車
27 車体に固定の部分
28、28a、28b ツーウェイクラッチ
29 外径側部材
30 内径側部材
31 転動体
32 保持器
33 取付部
34 カム面
35 転がり軸受
36 係止溝
37 止め輪
38 外輪軌道
39a、39b リム部
40 柱部
41 ポケット
42、42a 揺動部材
43 枢軸
44 摩擦係合部
45 雌スプライン部
46 凹溝
47 ワイヤー
48 永久磁石
Claims (8)
- 1対の電動モータと、これら両電動モータの出力軸によりそれぞれ回転駆動される第一、第二両駆動側回転軸を有する遊星歯車式変速機と、この遊星歯車式変速機の従動側回転軸の回転を、左右1対の駆動輪に伝達する為の回転伝達装置とを備えた電気自動車用駆動装置に於いて、
前記遊星歯車式変速機は、前記第一、第二両駆動側回転軸と、前記従動側回転軸と、軸方向に離隔した状態で、互いに同心に配置された第一、第二両遊星歯車機構と、クラッチ装置とを組み合わせて成り、
このうちの第一遊星歯車機構は、第一キャリアと、第一太陽歯車と、第一遊星歯車と、第一リング歯車とから構成され、この第一キャリアに回転可能に支持された第一遊星歯車を、前記第一太陽歯車に噛合させると共に前記第一リング歯車にも噛合させる、シングルピニオン式であり、この第一太陽歯車は前記第一駆動側回転軸の軸方向中間部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、前記第一リング歯車は前記第二駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、
前記第二遊星歯車機構は、第二キャリアと、第二太陽歯車と、第二、第三遊星歯車と、第二リング歯車とから構成され、この第二キャリアに回転可能に支持されて対となる第二、第三遊星歯車を互いに噛合させると共に、このうちの内径寄りの第二遊星歯車を前記第二太陽歯車に、同じく外径寄りの第三遊星歯車を前記第二リング歯車に、それぞれ噛合させるダブルピニオン式であり、前記第二太陽歯車は前記第一駆動側回転軸の端部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、前記第二キャリアは前記第一リング歯車と同期して回転する様に設けられており、前記第二リング歯車により前記従動側回転軸を回転駆動する様にしており、
前記クラッチ装置は、前記第一キャリアを車体に固定の部分に対し回転が阻止される状態と、同じく回転が許容される状態とを切り換えるツーウェイクラッチであって、減速比の大きい低速モード状態では、前記第一キャリアを前記第一駆動側回転軸と反対方向に回転する傾向とする事により接続し、前記クラッチ装置によりこの第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを阻止する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達し、減速比の小さい高速モード状態では、前記第一キャリアを前記第一駆動側回転軸と同じ方向に回転する傾向とする事により切断し、前記クラッチ装置によりこの第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを許容する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達しない事を特徴とする電気自動車用駆動装置。 - 1対の電動モータと、これら両電動モータの出力軸によりそれぞれ回転駆動される1対の駆動側回転軸を有する遊星歯車式変速機と、この遊星歯車式変速機の従動側回転軸の回転を、左右1対の駆動輪に伝達する為の回転伝達装置とを備えた電気自動車用駆動装置に於いて、
前記遊星歯車式変速機は、前記第一、第二両駆動側回転軸と、前記従動側回転軸と、軸方向に離隔した状態で、互いに同心に配置された第一、第二両遊星歯車機構と、クラッチ装置とを組み合わせて成り、
このうちの第一遊星歯車機構は、第一キャリアと、第一太陽歯車と、第一、第二遊星歯車と、第一リング歯車とから構成され、この第一キャリアに回転可能に支持されて対となる第一、第二遊星歯車を互いに噛合させると共に、このうちの内径寄りの第一遊星歯車を前記第一太陽歯車に、同じく外径寄りの第二遊星歯車を前記第一リング歯車に、それぞれ噛合させるダブルピニオン式であり、前記第一太陽歯車は前記第一駆動側回転軸の軸方向中間部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、前記第一リング歯車は前記第二駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、
前記第二遊星歯車機構は、第二キャリアと、第二太陽歯車と、第三遊星歯車と、第二リング歯車とから構成され、この第二キャリアに回転可能に支持された第三遊星歯車を、前記第二太陽歯車に噛合させると共に前記第二リング歯車にも噛合させる、シングルピニオン式であり、前記第二太陽歯車は前記第一駆動側回転軸の端部に、この第一駆動側回転軸により回転駆動する状態で設けられており、前記第二キャリアは前記第一リング歯車と同期して回転する様に設けられており、前記第二リング歯車により前記従動側回転軸を回転駆動する様にしており、
前記クラッチ装置は、前記第一キャリアを車体に固定の部分に対し回転が阻止される状態と、同じく回転が許容される状態とを切り換えるツーウェイクラッチであって、減速比の大きい低速モード状態では、前記第一キャリアを前記第二駆動側回転軸と反対方向に回転する傾向とする事により接続し、前記クラッチ装置によりこの第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを阻止する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達し、減速比の小さい高速モード状態では、前記第一キャリアを前記第二駆動側回転軸と同じ方向に回転する傾向とする事により切断し、前記クラッチ装置によりこの第一キャリアが前記車体に固定の部分に対し回転するのを許容する事で、前記第一リング歯車に入力された動力を前記第一太陽歯車に伝達しない事を特徴とする電気自動車用駆動装置。 - 前記クラッチ装置は、内周面に外輪軌道を有する外径側部材と、この外径側部材の内側にこの外径側部材と同心に配置され、外周面に周方向に亙る凹凸であるカム面を形成した内径側部材と、このカム面と前記外輪軌道との間の周方向複数箇所に配置された、複数の転動体と、これら各転動体を転動自在に保持する保持器とを備えるものであって、
前記外径側部材を前記車体に固定の部分に、前記内径側部材を前記第一キャリアに、それぞれ支持固定し、前記保持器と、前記第一駆動側回転軸、第一太陽歯車及び第二太陽歯車のうちの何れか1個である相手部材とを、この保持器がこの相手部材の回転方向と同じ方向に回転する傾向となる様に摩擦係合し、この保持器が前記カム面と前記各転動体との係合に基づき、前記車体に固定の部分に対して回転するのを阻止された状態で、前記相手部材を前記保持器に対し摺動可能としている、請求項1に記載の電気自動車用駆動装置。 - 前記保持器の片側面の周方向複数箇所に、その基端部を枢支した揺動部材を設け、これら各揺動部材の先端部内周面を前記相手部材の外周面に当接させる事で、前記保持器とこの相手部材とを摩擦係合している、請求項3に記載の電気自動車用駆動装置。
- 前記各揺動部材の先端部に永久磁石を設け、この永久磁石と前記相手部材との間に作用する磁気吸引力により、これら各揺動部材の先端部内周面をこの相手部材の外周面に当接させる、請求項4に記載の電気自動車用駆動装置。
- 前記高速モード状態で前記両電動モータの回転方向及び回転速度を同じとする、請求項1〜5のうち何れか1項に記載の電気自動車用駆動装置。
- 前記遊星歯車式変速機の、前記低速モード状態での総合減速比を、同じく前記高速モード状態での総合減速比で除した値である、段間比を、2若しくは2の近傍とする、請求項1〜6のうち何れか1項に記載の電気自動車用駆動装置。
- 前記低速モード状態での前記両電動モータの回転方向を互いに逆方向とし、同じく回転トルクの大きさを同じとする事ができ、前記第一遊星歯車機構の遊星比を2.8以上、3.2以下とし、前記第二遊星歯車機構の遊星比を1.9以上、2.1以下とする、請求項6を引用した請求項7に記載の電気自動車用駆動装置。
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