以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1および図2は、本発明の第1実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ1は、半導体基板10上に絶縁体層20および半導体層30が積層された構造を有しており、空洞部13と、可動部31と、電極51,52と、を備えている。
半導体基板10は、たとえば単結晶シリコン(Si)基板であり、中央に積層方向(図2中の上下方向)に凹む凹部11が形成されている。この凹部11内に空洞部13が形成されている。空洞部13は真空となっている。空洞部13の上下方向長さは、たとえば1〜5μmであり、左右方向長さは、たとえば100〜500μmである。
一方、半導体層30は、たとえば多結晶シリコンにより形成されている。半導体層30の厚みは、たとえば、2〜10μmである。半導体層30は、半導体基板10の図2中の右端部を除くほぼ全面に渡って形成されている。ただし、後述する製造工程において形成される通気孔に相当する部分においても、半導体層30は欠落している。
絶縁体層20は、たとえば二酸化珪素(SiO2)により形成されている。絶縁体層20は、後述するように形成過程が異なる絶縁体層21,22,23,27により構成されている。
絶縁体層21は、半導体基板10の凹部11を除く部分と半導体層30との間を絶縁するように形成されている。絶縁体層21の厚みは、たとえば、0.3〜2.0μmである。絶縁体層22は、凹部11の表面を覆うように形成されている。絶縁体層22の厚みは、たとえば、0.3〜2.0μmである。絶縁体層23は、空洞部13に面する半導体層30の下面を覆うように形成されている。絶縁体層23の厚みは、たとえば、0.3〜2.0μmである。絶縁体層27は、半導体層30および半導体基板10の図2中の右端部を覆うように形成されている。半導体層30上の絶縁体層27の厚みは、たとえば、0.3〜2.0μmである。絶縁体層27には、後述する製造工程において形成される通気孔13Aに相当する部分を封止する複数の封止部27aが形成されている。封止部27aは、その周囲と比較して凹むように形成されている。なお、CMP(化学機械研磨)を施すことにより、封止部27aを平坦に形成することも可能である。さらに、絶縁体層27の図2中左端部には積層方向に貫通する貫通孔27bが形成されており、絶縁体層27の図2中右端部には積層方向に貫通する貫通孔27cが形成されている。
電極51は、貫通孔27bを通して半導体層30と導通するように形成されている。電極52は、貫通孔27cを通して半導体基板10と導通するように形成されている。
可動部31は、半導体層30の積層方向において空洞部13と重なる部分と、その上下の絶縁体層23,27とによって構成されている。この可動部31は、積層方向において上下に揺動可能となっている。
次に、圧力センサ1の製造方法について、図3〜図18を参照しつつ説明を行う。
まず、単結晶シリコンからなる半導体基板10を用意する。このとき用意する半導体基板10の厚みは、たとえば、300〜700μmである。次に、図3に示すように、半導体基板10の表面にSiO2からなる絶縁体層21を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体基板10の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図4に示すように、絶縁体層21に、半導体基板10の表面を露出させる開口部21aを形成する工程を行う。この工程は、開口部21aを形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設け、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを施すことにより行われる。
次に、図5に示すように、半導体基板10に凹部11を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ素単原子(F)を含有するガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。Fは、シリコン(Si)と反応する一方、SiO2とは反応しない。従って、絶縁体層21はエッチングされずに、開口部21aから露出する半導体基板10がエッチングされ、凹部11が形成される。この工程において、ドライエッチングを行う時間を調整することにより、凹部11の深さを任意の長さにすることが可能である。なお、Fを含むガスは、四フッ化炭素(CF4)ガスまたは六フッ化硫黄(SF6)ガスを放電によって分解することで得ることができる。
次に、図6に示すように、絶縁体層22を形成する工程を行う。この工程は、凹部11の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図7に示すように、凹部11に犠牲層12を形成する工程を行う。犠牲層12は、多結晶シリコンからなる層である。この工程は、たとえば、凹部11内に多結晶シリコンを埋め込むことにより行われる。凹部11に埋め込む多結晶シリコンには、予め、犠牲層12の表面の高さ位置が絶縁体層21の表面の高さ位置と同じとなるように加工を施しておく。あるいは、埋め込み後に研磨を施すことにより犠牲層12の表面の高さ位置が絶縁体層21の表面の高さ位置と同じとする。
次に、図8に示すように、SiO2からなる絶縁体層23を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図9に示すように、半導体層30を形成する工程を行う。この工程は、たとえば化学気相成長(CVD)法を用い、絶縁体層21,23の表面に多結晶シリコンを成長させることで行うことができる。
次に、図10に示すように、半導体層30の表面にSiO2からなる絶縁体層24を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体層30の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図11に示すように、絶縁体層24に複数の貫通孔24aを形成する工程を行う。この工程では、同時に、半導体層30の図中右端部が露出するように絶縁体層24の右端部を除去する。この工程は、たとえば、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングによって行うことができる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得られるF、フッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体層30は除去されずに残留する。
次に、図12に示すように、半導体層30に複数の貫通孔30aを形成する。各貫通孔30aの上端は各貫通孔24aに通じ、下端は絶縁体層23に達している。この工程は、HFを含むガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスに水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、この工程では、絶縁体層23,24は残留する。この工程では、同時に、半導体層30の右端部分が除去され、絶縁体層21の右端部分である絶縁体層21bが露出する。
次に、図13に示すように、SiO2からなる絶縁体層25,26を形成する工程を行う。絶縁体層25は、各貫通孔30aの内周面に形成される。絶縁体層26は、半導体層30の絶縁体層21,24から露出する部分に形成される。この工程は、半導体層30の絶縁体層21,24に覆われていない部分を熱酸化させることにより行われる。
次に、図14に示すように、レジスト40を設置する工程を行う。レジスト40は、たとえば樹脂製であり、各貫通孔24aを露出させるように、絶縁体層24および絶縁体層21bを覆っている。この工程は、絶縁体層24および絶縁体層21bの表面に液状化させた樹脂を塗布することにより行われる。
次に、図15に示すように、通気孔13Aを形成する工程を行う。通気孔13Aは、各貫通孔24aおよび各貫通孔30aと繋がるように、絶縁体層23に各貫通孔23aを形成することにより形成される。この工程は、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行うことができる。さらに、この工程では、通気孔13Aが形成された後に、レジスト40の除去を行う。
次に、図16に示すように、空洞部13を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12を除去することによって行われる。犠牲層12の除去は、Fを含有するガスを、通気孔13Aを通じて犠牲層12に送り込む気相エッチングによって行うことができる。Fは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得ることができる。なお、FとSiO2とが反応しにくいため、本工程では、絶縁体層21,22,23,24,25,26が残留し、これらに保護された半導体基板10及び半導体層30も残留する。空洞部13が形成されることにより、積層方向視において空洞部13と重なる半導体層30の一部およびその上下の絶縁体層23,24が可動部31となる。
次に、図17に示すように、絶縁体層27および封止部27aを形成する工程を行う。この工程では、たとえば、真空雰囲気中でプラズマCVD法を行う。この工程では、絶縁体層21b,24,25,26にさらにSiO2が蒸着される。絶縁体層25にSiO2が蒸着された結果、通気孔13Aが封止され、封止部27aが形成される。絶縁体層21b,24,26にSiO2が蒸着された結果、絶縁体層27が形成される。
次に、図18に示すように、貫通孔27b,27cを形成する工程を行う。この工程は、貫通孔27b,27cを形成したい部分のみを露出させる樹脂製レジストを設け、HF水を用いたウェットエッチング、または、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行うことができる。貫通孔27bは、半導体層30に到達しており、貫通孔27cは、半導体基板10に到達している。
以上の工程の後に、電極51,52を設置する工程を行うことにより図1および図2に示す圧力センサ1が完成する。電極51,52の形成は、たとえば、貫通孔27b,27cおよび絶縁体層27上にアルミニウム(Al)層を形成し、不要なAlをエッチングにより除去することにより行うことができる。
次に、圧力センサ1の作用について説明する。
本実施形態によれば、可動部31が上下に揺動すると、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が変化する。このため、圧力センサ1は、半導体基板10と半導体層30との間における静電容量の変化を検知することにより、可動部31にかかる圧力の変化を検知することができる。空洞部13が真空であることから、圧力センサ1は、たとえば、可動部31にかかる絶対圧力の測定を行う用途などに適している。
さらに、本実施形態によれば、空洞部13は、絶縁体層22,23によって囲まれている。このため、圧力センサ1では、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量がより大きな値となっている。半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が大きければ大きいほど、その値の変化をより検知しやすいため、圧力センサ1は、より精度の高い圧力測定を行うことが可能である。
さらに、本実施形態によれば、凹部11がエッチングによって形成されており、凹部11の底部は半導体基板10の表面と平行に形成される。さらに、半導体層30は、半導体基板10の表面を酸化させることにより形成された絶縁体層21およびそれに合わせて形成された絶縁体層23上に形成されている。このため、圧力センサ1では、空洞部13を挟んで凹部11の底面と半導体層30とが平行に配置されている。従って、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量の値を正確に設定することが可能であり、圧力センサ1は、より精密な圧力測定を行うことが可能である。
さらに、上記の製造方法によれば、1枚の半導体基板10から圧力センサ1を製造することが可能であり、圧力センサ1の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図りやすくなっている。
さらに、上記の製造方法によれば、エッチング時間を調整することにより、容易に凹部11の深さは自由に設定可能であり、空洞部13の上下方向長さを任意の好ましい値とすることが可能である。さらに、本製造方法によれば、CVD法の実施時間を調整することにより、良好に半導体層30の厚みを調整することができ、半導体層30の厚みを任意の好ましい値とすることが可能である。
なお、本実施形態では、半導体基板10に対してエッチングを行うことで凹部11を形成しているが、逆に、半導体基板10の中央部を除く他の部分において単結晶Siを成長させることにより凹部11を形成しても構わない。また、通気孔13Aの封止はLP−CVD法を用いても行うことが可能である。
図19および図20は、本発明の第2実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ2は、半導体基板10上に絶縁体層20および半導体層30が積層された構造を有しており、空洞部13と、可動部31と、電極51,52と、を備えている。
半導体基板10は、たとえば単結晶シリコン(Si)基板である。半導体基板10の中央の表層部分は、熱酸化されており、絶縁体層22が形成されている。絶縁体層22の厚みは、たとえば、0.3〜1μmである。
一方、半導体層30は、たとえば多結晶シリコン(Si)により形成されており、後述する絶縁体層21または絶縁体層23を間に挟んで半導体基板10上に積層されている。半導体層30の厚みは、たとえば、2〜10μmである。半導体層30は、半導体基板10の図20中の右端部を除くほぼ全面に渡って形成されている。ただし、後述する製造工程において形成される通気孔13Aに相当する部分においても、半導体層30は欠落している。
絶縁体層20は、たとえば二酸化珪素(SiO2)により形成されている。絶縁体層20は、後述するように形成過程が異なる絶縁体層21,22,23,27により構成されており、内部に真空の空洞部13を有している。なお、絶縁体層22は、上述したように半導体基板10の表層に形成されている。
絶縁体層21は、半導体基板10と半導体層30との間を絶縁するように形成されている。ただし、半導体基板10上の絶縁体層22が設けられている領域には、絶縁体層21は設けられていない。絶縁体層21の厚みは、たとえば1〜2μmである。絶縁体層23は、半導体層30の下面のうち、絶縁体層21と接していない領域を覆うように形成されている。絶縁体層23の厚みは、たとえば0.3〜0.5μmである。空洞部13は、直方体状であり、図20に示すように、上下方向において半導体層22,23に挟まれるように、絶縁体層21内に形成されている。空洞部13の上下方向長さは、たとえば1〜1.7μmであり、左右方向長さは、たとえば300〜500μmである。絶縁体層27は、半導体層30および半導体基板10の図20中の右端部を覆うように形成されている。半導体層30上の絶縁体層27の厚みは、たとえば、0.3〜0.5μmである。絶縁体層27には、後述する製造工程において形成される通気孔13Aに相当する部分を封止する複数の封止部27aが形成されている。封止部27aは、その周囲と比較して凹むように形成されている。なお、CMPを施すことにより、封止部27aを平坦に形成することも可能である。さらに、絶縁体層27の図2中左端部には積層方向に貫通する貫通孔27bが形成されており、絶縁体層27の図2中右端部には積層方向に貫通する貫通孔27cが形成されている。
電極51は、貫通孔27bを通して半導体層30と導通するように形成されている。電極52は、貫通孔27cを通して半導体基板10と導通するように形成されている。
可動部31は、半導体層30の積層方向において空洞部13と重なる部分と、その上下の絶縁体層23,27とによって構成されている。この可動部31は、積層方向において上下に揺動可能となっている。
次に、圧力センサ2の製造方法について、図21〜図35を参照しつつ説明を行う。
まず、単結晶シリコンからなる半導体基板10を用意する。このとき用意する半導体基板10の厚みは、たとえば、300〜700μmである。次に、図21に示すように、半導体基板10の表面にSiO2からなる絶縁体層21を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体基板10の上面付近を熱酸化させることにより行うことができる。本工程で、半導体基板10の上面を均一に加熱することにより、絶縁体層21の厚みを一定とすることができる。さらに、本工程で、加熱時間を調整することにより、絶縁体層21の厚みを調整することも可能である。
次に、図22に示すように、絶縁体層21に、半導体基板10の表面を露出させる開口部21aを形成する工程を行う。この工程は、開口部21aを形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設け、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを行うことにより行われる。あるいは、この工程は、たとえば、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングによっても行うことができる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスまたは六フッ化硫黄(SF6)ガスを放電によって分解することによってF、フッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、このエッチング工程によって半導体基板10は削られない。
次に、図23に示すように、絶縁体層22を形成する工程を行う。この工程は、半導体基板10の開口部21aから露出する部分を熱酸化させることによって行われる。
次に、図24に示すように、犠牲層12を形成する工程を行う。犠牲層12は、多結晶シリコンからなる層である。この工程は、たとえば、開口部21aに多結晶シリコンを埋め込むことにより行われる。開口部21aに埋め込む多結晶シリコンには、予め、犠牲層12の表面の高さ位置が絶縁体層21の表面の高さ位置と同じとなるように加工を施しておく。
次に、図25に示すように、SiO2からなる絶縁体層23を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12の表面を熱酸化させることにより行うことができる。この工程により、犠牲層12は、絶縁体層21,22,23によって密封された状態となる。
次に、図26に示すように、半導体層30を形成する工程を行う。この工程は、たとえば化学気相成長(CVD)法を用い、絶縁体層21,23の表面に多結晶シリコンを成長させることで行うことができる。
次に、図27に示すように、半導体層30の表面にSiO2からなる絶縁体層24を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体層30の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図28に示すように、絶縁体層24に複数の貫通孔24aを形成する工程を行う。この工程では、同時に、半導体層30の図中右端部が露出するように絶縁体層24の右端部を除去する。この工程は、たとえば、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングによって行うことができる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得られるフッ素単原子(F)、フッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体層30は除去されずに残留する。
次に、図29に示すように、半導体層30に複数の貫通孔30aを形成する。各貫通孔30aの上端は各貫通孔24aに通じ、下端は絶縁体層23に達している。この工程は、HFを含むガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスに水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、この工程では、絶縁体層23,24は残留する。この工程では、同時に、半導体層30の右端部分が除去され、絶縁体層21の右端部分である絶縁体層21bが露出する。
次に、図30に示すように、SiO2からなる絶縁体層25,26を形成する工程を行う。絶縁体層25は、各貫通孔30aの内周面に形成される。絶縁体層26は、半導体層30の絶縁体層21,24から露出する部分に形成される。この工程は、半導体層30の絶縁体層21,24に覆われていない部分を熱酸化させることにより行われる。
次に、図31に示すように、レジスト40を設置する工程を行う。レジスト40は、たとえば樹脂製であり、各貫通孔24aを露出させるように、絶縁体層24および絶縁体層21bを覆っている。この工程は、絶縁体層24および絶縁体層21bの表面に液状化させた樹脂を塗布することにより行われる。
次に、図32に示すように、通気孔13Aを形成する工程を行う。通気孔13Aは、各貫通孔24aおよび各貫通孔30aと繋がるように、絶縁体層23に各貫通孔23aを形成することにより形成される。この工程は、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エ
ッチングを施すことにより行うことができる。さらに、この工程では、通気孔13Aが形成された後に、レジスト40の除去を行う。
次に、図33に示すように、空洞部13を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12を除去することによって行われる。犠牲層12の除去は、Fを含有するガスを、通気孔13Aを通じて犠牲層12に送り込む気相エッチングによって行うことができる。Fは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得ることができる。なお、FとSiO2とが反応しにくいため、本工程では、絶縁体層21,22,23,24,25,26が残留し、これらに保護された半導体基板10および半導体層30も残留する。空洞部13が形成されることにより、積層方向視において空洞部13と重なる半導体層30の一部およびその上下の絶縁体層23,24が可動部31となる。
次に、図34に示すように、絶縁体層27および封止部27aを形成する工程を行う。この工程では、たとえば、真空雰囲気中でプラズマCVD法を行う。この工程では、絶縁体層21b,24,25,26にさらにSiO2が蒸着される。絶縁体層25にSiO2が蒸着された結果、通気孔13Aが封止され、封止部27aが形成される。絶縁体層21b,24,26にSiO2が蒸着された結果、絶縁体層27が形成される。
次に、図35に示すように、貫通孔27b,27cを形成する工程を行う。この工程は、貫通孔27b,27cを形成したい部分のみを露出させる樹脂製レジストを設け、HF水を用いたウェットエッチング、または、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行うことができる。貫通孔27bは、半導体層30に到達しており、貫通孔27cは、半導体基板10に到達している。
以上の工程の後に、電極51,52を設置する工程を行うことにより図19および図20に示す圧力センサ2が完成する。電極51,52の形成は、たとえば、貫通孔27b,27cおよび絶縁体層27上にAl層を形成し、不要なAlをエッチングにより除去することにより行うことができる。
次に、圧力センサ2の作用について説明する。
本実施形態によれば、可動部31が上下に揺動すると、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が変化する。このため、圧力センサ2は、半導体基板10と半導体層30との間における静電容量の変化を検知することにより、可動部31にかかる圧力の変化を検知することができる。空洞部13が真空であることから、圧力センサ2は、たとえば、可動部31にかかる絶対圧力の測定を行う用途などに適している。
さらに、本実施形態によれば、空洞部13は、絶縁体層21,22,23によって囲まれている。このため、圧力センサ2では、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量がより大きな値となっている。半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が大きければ大きいほど、その値の変化をより検知しやすいため、圧力センサ2は、より精度の高い圧力測定を行うことが可能である。
さらに、本実施形態によれば、絶縁体層22が半導体基板10の表面の一部を酸化させることにより形成されており、その厚みを一定とするのは容易である。さらに、半導体層30が高さの揃えられた絶縁体層21,23上に形成されている。このため、圧力センサ2では、空洞部13を挟んで半導体基板10と半導体層30とが平行に配置されている。従って、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量の値を正確に設定することが可能であり、圧力センサ2は、より精密な圧力測定を行うことが可能である。
さらに、上記の製造方法によれば、1枚の半導体基板10から圧力センサ2を製造することが可能であり、圧力センサ2の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図りやすくなっている。
さらに、上記の製造方法によれば、空洞部13の上下方向長さは、絶縁体層21の厚みによって決定される。絶縁体層21の厚みは、熱酸化を行う時間を調整することにより、比較的容易に制御することが可能である。さらに、本製造方法によれば、CVD法の実施時間を調整することにより、良好に半導体層30の厚みを調整することができ、半導体層30の厚みを任意の好ましい値とすることが可能である。
上記実施形態では、通気孔13Aの封止をプラズマCVD法で行っているが、たとえば減圧化学気相成長(LPCVD)法を用いても行うことが可能である。
図36および図37は、本発明の第3実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ3は、半導体基板10上に絶縁体層20および半導体層30が積層された構造を有しており、空洞部13と、可動部31と、電極51,52と、を備えている。
半導体基板10は、たとえば単結晶シリコン(Si)基板であり、中央に積層方向(図37中の上下方向)に凹む凹部11が形成されている。凹部11の深さは、たとえば、5〜15μmとなっている。この凹部11内には、空洞部13および半導体層30が設けられている。空洞部13は真空であり、凹部11の底部寄りに形成されている。空洞部13の上下方向長さは、たとえば2〜5μmであり、左右方向長さは、たとえば300〜500μmである。半導体層30は、たとえば多結晶シリコン製であり、凹部11に蓋をするように形成されている。半導体層30の厚みは、たとえば2〜10μmである。半導体層30の表面の高さ位置は、半導体基板10の凹部11以外の部分における表面の高さ位置と同じとなっている。
絶縁体層20は、たとえば二酸化珪素(SiO2)により形成されている。絶縁体層20は、後述するように形成過程が異なる絶縁体層22,23,27により構成されている。
絶縁体層22は、凹部11の空洞部13に接する面を覆うように形成されている。絶縁体層22の厚みは、たとえば0.3〜1.0μmである。絶縁体層23は、半導体層30の空洞部13に対向する面を覆うように形成されている。絶縁体層23の厚みは、たとえば0.3〜1.0μmである。絶縁体層27は、半導体基板10の表面および半導体層30の表面を覆うように形成されている。絶縁体層27の厚みは、たとえば1〜2μmである。絶縁体層27には、後述する製造工程において形成される通気孔13Aに相当する部分を封止する複数の封止部27aが形成されている。封止部27aは、その周囲と比較して凹むように形成されている。なお、CMPを施すことにより、封止部27aを平坦に形成することも可能である。さらに、絶縁体層27の図37中央部には積層方向に貫通する貫通孔27bが形成されており、絶縁体層27の図37中右方には積層方向に貫通する貫通孔27cが形成されている。
電極51は、貫通孔27bを通して半導体層30と導通するように形成されている。電極52は、貫通孔27cを通して半導体基板10と導通するように形成されている。
可動部31は、半導体層30と、その上下の絶縁体層23,27とによって構成されている。この可動部31は、積層方向において上下に揺動可能となっている。
次に、圧力センサ3の製造方法について、図38〜図53を参照しつつ説明を行う。
まず、単結晶シリコンからなる半導体基板10を用意する。このとき用意する半導体基板10の厚みは、たとえば、300〜700μmである。次に、図38に示すように、半導体基板10の表面にSiO2からなる絶縁体層21を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体基板10の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図39に示すように、絶縁体層21に、半導体基板10の表面を露出させる開口部21aを形成する工程を行う。この工程は、開口部21aを形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設け、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを施すことにより行われる。
次に、図40に示すように、半導体基板10に凹部11を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ素単原子(F)を含有するガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。Fは、シリコン(Si)と反応する一方、SiO2とは反応しない。従って、絶縁体層21はエッチングされずに、開口部21aから露出する半導体基板10がエッチングされ、凹部11が形成される。この工程において、ドライエッチングを行う時間を調整することにより、凹部11の深さを任意の長さにすることが可能である。なお、Fを含むガスは、四フッ化炭素(CF4)ガスまたは六フッ化硫黄(SF6)ガスを放電によって分解することによって得ることができる。
次に、図41に示すように、絶縁体層22を形成する工程を行う。この工程は、凹部11の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図42に示すように、凹部11に犠牲層12Aを形成する工程を行う。犠牲層12Aは、多結晶シリコンからなる層である。この工程は、たとえば、凹部11に多結晶シリコンを埋め込むことにより行われる。この工程では、凹部11の内部全体を多結晶シリコンで充填する。さらに、この工程では、犠牲層12Aの表面に研磨を施すことにより、犠牲層12Aの表面の高さ位置と絶縁体層21の表面の高さ位置とを揃えておく。
次に、図43に示すように、犠牲層12Aから犠牲層12を形成する工程を行う。この工程は、HFを含むガスを用いた気相エッチングにより、犠牲層12Aの表面寄りの部分を除去することにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスに水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、このエッチングにより絶縁体層21,22は除去されない。この工程において、エッチングを行う時間を制御することにより、犠牲層12の厚みを調整することが可能である。
次に、図44に示すように、SiO2からなる絶縁体層23を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12の表面を熱酸化させることにより行うことができる。
次に、図45に示すように、半導体層30を形成する工程を行う。この工程は、たとえば凹部11の上部に多結晶シリコンを埋め込むことにより行われる。なお、本工程における凹部11の上部は、凹部11のうち絶縁体層23よりも上方の部分である。
次に、図46に示すように、SiO2からなる絶縁体層24を形成する工程を行う。この工程では、まず、半導体層30の表面を熱酸化させる。このとき、絶縁体層21の厚みと同程度の厚み分だけ熱酸化させるのが好ましい。半導体層30の表面を均一に加熱することにより、形成される酸化層の厚みを一定とすることができる。次に、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いて減圧化学気相成長(LPCVD)法を行うことにより、先に形成した酸化層および絶縁体層21に対してさらにSiO2を積層させ絶縁体層24を形成する。なお、絶縁体層24の厚みは、絶縁体層23の厚みよりも十分に大きくなるように形成される。
次に、図47に示すように、絶縁体層24に複数の貫通孔24aを形成する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングによって行うことができる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得られるF、フッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体層30は除去されずに残留する。
次に、図48に示すように、半導体層30に複数の貫通孔30aを形成する。各貫通孔30aの上端は各貫通孔24aに通じ、下端は絶縁体層23に達している。この工程は、HFを含むガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスに水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、この工程では、絶縁体層23,24は残留する。
次に、図49に示すように、SiO2からなる絶縁体層25を形成する工程を行う。絶縁体層25は、各貫通孔30aの内周面に形成される。この工程は、半導体層30の絶縁体層24に覆われていない部分を熱酸化させることにより行われる。
次に、図50に示すように、通気孔13Aを形成する工程を行う。通気孔13Aは、各貫通孔24aおよび各貫通孔30aと繋がるように、絶縁体層23に各貫通孔23aを形成することにより形成される。この工程は、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エ
ッチングを行うことにより行うことができる。このエッチングでは、特にレジストを設けることなく、絶縁体層23と絶縁体層24の厚みの差を利用して実施することが可能である。この工程により、絶縁体層24の一部が除去される。
次に、図51に示すように、空洞部13を形成する工程を行う。この工程は、犠牲層12を除去することによって行われる。犠牲層12の除去は、Fを含有するガスを、通気孔13Aを通じて犠牲層12に送り込む気相エッチングによって行うことができる。Fは、たとえば、CF4ガスまたはSF6ガスを分解して得ることができる。なお、FとSiO2
とが反応しにくいため、本工程では、絶縁体層22,23,24,25が残留し、これらに保護された半導体基板10および半導体層30も残留する。空洞部13が形成されることにより、積層方向視において空洞部13と重なる半導体層30およびその上下の絶縁体層23,24が可動部31となる。
次に、図52に示すように、絶縁体層27および封止部27aを形成する工程を行う。この工程では、たとえば、真空雰囲気中でプラズマCVD法を行う。この工程では、絶縁体層24,25にさらにSiO2が蒸着される。絶縁体層25にSiO2が蒸着された結果、通気孔13Aが封止され、封止部27aが形成される。絶縁体層24にSiO2が蒸着
された結果、絶縁体層27が形成される。
次に、図53に示すように、貫通孔27b,27cを形成する工程を行う。この工程は、貫通孔27b,27cを形成したい部分のみを露出させる樹脂製レジストを設け、HF水を用いたウェットエッチング、または、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッ
チングを施すことにより行うことができる。貫通孔27bは、半導体層30に到達しており、貫通孔27cは、半導体基板10に到達している。
以上の工程の後に、電極51,52を設置する工程を行うことにより図36および図3
7に示す圧力センサ3が完成する。電極51,52の形成は、たとえば、貫通孔27b,27cおよび絶縁体層27上にAl層を形成し、不要なAlをエッチングにより除去することにより行うことができる。
次に、圧力センサ3の作用について説明する。
本実施形態によれば、可動部31が上下に揺動すると、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が変化する。このため、圧力センサ3は、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が変化を検知することにより、可動部31にかかる圧力の変化を検知することができる。空洞部13が真空であることから、圧力センサ3は、たとえば、可動部31にかかる絶対圧力の測定を行う用途などに適している。
さらに、本実施形態によれば、空洞部13は、絶縁体層22,23によって囲まれている。このため、圧力センサ3では、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量がより大きな値となっている。半導体基板10と半導体層30との間の静電容量が大きければ大きいほど、その値の変化をより検知しやすいため、圧力センサ3は、より精度の高い圧力測定を行うことが可能である。
さらに、本実施形態によれば、凹部11は、エッチングにより形成されているため、その底面は、半導体基板10の表面と平行に形成される。さらに、犠牲層12が、半導体基板10の表面に合わせて研磨された犠牲層12Aをエッチングすることにより形成されている。このため、犠牲層12の表面を熱酸化することにより形成される絶縁体層23の表面は半導体基板10の表面と平行に形成される。これらのことから、圧力センサ3では、空洞部13を挟んで凹部11の底面と半導体層30とが平行に配置されている。従って、半導体基板10と半導体層30との間の静電容量の値を正確に設定することが可能であり、圧力センサ3は、より精密な圧力測定を行うことが可能である。
さらに、上記の製造方法によれば、1枚の半導体基板10から圧力センサ3を製造することが可能であり、圧力センサ3の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図りやすくなっている。
さらに、上記の製造方法によれば、各工程におけるエッチング時間を調整することにより、容易に凹部11の深さおよび犠牲層12の厚みを制御可能であり、空洞部13の上下方向長さおよび半導体層30の厚さを好ましい値とすることが可能である。
なお、本実施形態では、半導体基板10に対してエッチングを行うことで凹部11を形成しているが、逆に、半導体基板10の中央部を除く他の部分において単結晶Siを成長させることにより凹部11を形成しても構わない。また、通気孔13Aの封止はLPCVD法を用いても行うことが可能である。
本発明に係る圧力センサは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る圧力センサの各部の具体的な構成およびその製造方法の各工程の具体的な方法は、種々に設計変更自在である。たとえば、上述した実施形態では、静電容量式の圧力センサを示しているが、ピエゾ抵抗素子を用いた圧力センサの場合にも本発明は応用可能である。また、上述した実施形態では空洞部13は真空であるが、既知の圧力の気体を封入しても構わない。
また、たとえば、上記実施形態では、半導体基板10を単結晶Siで形成し、半導体層30を多結晶Siで形成しているが、半導体基板1を多結晶Siで形成し、半導体層30を単結晶Siで形成しても構わない。また、さらに、犠牲層12を単結晶Siで形成しても構わない。
図54および図55は、本発明の第4実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ101は、半導体基板110上に酸化膜121および半導体層130が積層された構造を有しており、封止部材141と、可動部161と、ピエゾ抵抗171,172,173,174と、を備えている。さらに、圧力センサ101は、ピエゾ抵抗171,172,173,174が組み込まれたブリッジ回路を備えている。このブリッジ回路は、半導体層130上に設置されており、出力端子Vout+,Vout−、バイアス電圧印加用端子Vdd、接地端子151,152,153、および、リード線154,155,156,157,158により構成されている。なお、接地端子151,152,153はグラウンド接続される。
半導体基板110は、たとえば、積層方向(図55中の上下方向)における厚さが300μm程度の単結晶シリコン(Si)基板であり、内部が真空または一定気圧である空洞部111を有している。空洞部111は、半導体基板110の表面に開口するように形成されており、その積層方向における深さは、たとえば1〜50μmである。空洞部111は、積層方向視において円形となるように形成されており、その直径は、たとえば100〜数千μmである。なお、この空洞部111の積層方向視における形状は円形に限らず、長方形などの多角形であっても構わない。
半導体層130は、たとえば、単結晶シリコンからなり、厚さが1μm〜50μm程度となるように半導体基板110上に積層されている。半導体層130には、積層方向視において空洞部111と重なる領域内に複数の貫通孔130aが形成されている。各貫通孔130aは、積層方向において半導体層130を貫通しており、その内周面に厚さ0.2μm程度の酸化膜131が形成されている。貫通孔130aの積層方向視における形状は、たとえば、直径が0.2μm〜5μmの円形あるいは同程度の大きさの楕円形である。
酸化膜121は、たとえば二酸化ケイ素(SiO2)により形成されており、半導体基板110と半導体層130との間に、たとえば0.1〜3μm程度の厚さとなるように形成されている。酸化膜121には、積層方向視において複数の貫通孔130aと重なる貫通孔121aが形成されている。貫通孔121aは積層方向において酸化膜121を貫通しており、その上端は貫通孔130aに到達し、その下端は空洞部111に到達している。
封止部材141は、たとえば、二酸化ケイ素(SiO2)からなり、各貫通孔130aの上端部を封止している。
可動部161は、半導体層130および酸化膜121の積層方向視において空洞部111と重なる部分により構成されている。この可動部161は、空洞部111と重なっているため、積層方向に変形可能となっている。また、可動部161の積層方向視における形状は空洞部111と同じ形状である。
ピエゾ抵抗171,172,173,174は、図54に示すように複数の屈曲部を有するように蛇行する帯状に形成されており、それぞれ半導体層130に埋め込まれている。ピエゾ抵抗171,172,173,174の積層方向における厚さは、たとえば、0.1〜1μm程度に形成されている。ピエゾ抵抗171は可動部161の図54中上端部に設置されている。ピエゾ抵抗172は可動部161の図54中左端部に設置されている。ピエゾ抵抗173は可動部161の図54中下端部に設置されている。ピエゾ抵抗174は可動部161の図54中右端部に設置されている。なお、ピエゾ抵抗171,173は可動部161の範囲内に設置されており、ピエゾ抵抗172,174は可動部161の端縁に接するように設置されている。ピエゾ抵抗171,172,173,174は、たとえば、ドープドポリシリコン、あるいは、P型もしくはN型元素のドーピングにより形成されている。
ピエゾ抵抗171の一方の端部はリード線154を介して接地端子151に接続されており、他方の端部は出力端子Vout+に接続されている。
ピエゾ抵抗172の一方の端部はリード線155を介して出力端子Vout+に接続されており、他方の端部はリード線156を介してバイアス電圧印加用端子Vddに接続されている。
ピエゾ抵抗173の一方の端部はリード線156を介してバイアス電圧印加用端子Vddに接続されており、他方の端部は出力端子Vout−に接続されている。
ピエゾ抵抗174の一方の端部はリード線157を介して出力端子Vout−に接続されており、他方の端部はリード線158を介して接地端子152に接続されている。
次に、圧力センサ101の動作について、説明を行う。
圧力センサ101では、可動部161の表面に圧力が加わると、可動部161が変形し、その変形によってピエゾ抵抗171,172,173,174に歪みが生じる。ピエゾ抵抗171,172,173,174は、歪みによりその抵抗値が変化する。このピエゾ抵抗171,172,173,174の抵抗値の変化を、ブリッジ回路を利用してバイアス電圧印加用端子Vddに印加されたバイアス電圧に対する電圧変化として出力端子Vout+,Vout−から検出する。この検出結果から、可動部161に加わった圧力を算出することが可能である。なお、空洞部111が真空である場合に、可動部161に加わる圧力は周囲の気体の絶対圧力である。一方、空洞部111が一定気圧である場合、可動部161に加わる圧力は、周囲の気体と空洞部111内の気体との相対圧力である。
次に、圧力センサ101の製造方法について、図56〜図69を参照しつつ説明を行う。
まず、図56に示すように、表面に酸化層122を有する半導体層130が積層された半導体基板110を用意する。
次に、図57および図58に示すように、酸化膜22に複数の貫通孔122aを形成する工程を行う。貫通孔122aの積層方向視における形状は、上述の貫通孔130aの積層方向視における形状と同じである。この工程では、たとえば、貫通孔122aを形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設けた後に、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングを行う。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、三フッ化メタン(CHF3)ガスを分解して得られるF、フッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体層130は除去されずに残留する。なお、気相エッチングを行うかわりに、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
次に、図59に示すように、半導体層130に貫通孔130aを形成する工程を行う。この工程は、HFを含むガスを用いた気相異方性エッチングにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CHF3に水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、この工程では、酸化膜121および酸化層122は残留する。
次に、図60に示すように、貫通孔130aの内周面を酸化させ、酸化膜131を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、熱酸化処理により行われる。なお、酸化膜131は、後に行うエッチング作業において半導体層130を保護するためのものであり、たとえば、CVD法を用いて貫通孔130aの内周面にSiO2を積層して保護膜を形成しても同様の効果を得ることができる。
次に、図61および図62に示すように、通気孔111Aを形成する工程を行う。通気孔111Aは、貫通孔121a,122a,130aにより構成されている。この工程は、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相異方性エッチングによって行うことができる。この気相異方性エッチングでは、積層方向において酸化膜121の厚み分だけSiO2を除去する。なお、この工程では、酸化膜121に貫通孔121aが形成されると同時に、酸化層122の表層部が除去される。
次に、図63に示すように、空洞部111を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ素単原子(F)を含有するガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。Fは、Siと反応しやすい一方、SiO2とは反応しにくい。このため、SiO2に覆われた通気孔111Aを通してF含有ガスを半導体基板110に導入することにより、半導体層130が削られる前に半導体基板110がエッチングされて空洞部111が形成される。なお、Fを含むガスは、CHF3ガスを放電によって分解することで得ることができる。
空洞部111を形成する工程は、たとえば、フッ化キセノンガスを用いたエッチングによっても行うことが可能である。フッ化キセノンガスを用いる場合、CHF3ガスを用いる場合よりもSiとSiO2との反応性の差が大きいため、酸化膜131の厚みをより薄くすることが可能である。
次に、図64に示すように、通気孔111Aを封止する工程を行う。この工程は、たとえば、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いた減圧化学気相成長(LPCVD)法により行われる。この工程により、酸化層122および通気孔111AにSiO2が積層され、酸化層123および封止部140が形成される。真空または一定気圧雰囲気中において、封止部140により通気孔111Aを封止することによって、空洞部111を真空または一定気圧とすることができる。封止部140のうち通気孔111Aを封鎖する部分は、通気孔111Aの内周面から径方向に沿ってSiO2が成長するため、中央部が凹むように形成される傾向がある。
なお、通気孔111Aの封止は、上記手法以外にも、たとえば、熱酸化処理を行い、酸化部分の膨張を利用することによっても可能である。
次に、図65に示すように、酸化層123を除去する工程を行う。この工程は、研磨あるいは気相エッチングによって行うことが可能である。この工程では、封止部140の一部も同時に除去され、その結果、貫通孔130aの上端部に封止部材141が残留する。封止部材141は、たとえば、図65に示すように、図中上端部は平坦であり、下端部は中央ほど凹むような形状となる。また、この工程の結果、可動部161が形成される。
次に、ピエゾ抵抗171,172,173,174を形成する工程を行う。ピエゾ抵抗171,172,173,174の形成は、たとえば、多結晶シリコンを半導体層130に埋め込むことによって行うことができる。この工程では、まず、図66および図67に示すように、溝132,133,134,135を形成する工程を行う。具体的には、溝132,133,134,135に対応する部分だけを露出させる樹脂レジストを用い、HFを含むガスによる気相エッチングを行う。溝132,133,134,135は、それぞれ複数の屈曲部を有するように蛇行する形状に形成される。
次に、図68および図69に示すように、溝132,133,134,135に多結晶シリコンを埋め込む工程を行う。この工程で、溝132,133,134,135に埋め込まれた多結晶シリコンが、ピエゾ抵抗171,172,173,174となる。なお、ピエゾ抵抗171,172,173,174の形成は、たとえば、半導体層130にインプラント加工を施して拡散抵抗を形成することによっても行うことができる。
これらの工程の後に、半導体層130上に、たとえばアルミニウム(Al)層を形成する。さらに、このAl層にエッチングを施すことにより出力端子Vout+,Vout−、バイアス電圧印加用端子Vdd、接地端子151,152,153、および、リード線154,155,156,157,158を形成する。
以上の工程により、図54および図55に示す圧力センサ101は完成する。
次に、圧力センサ101の作用について説明する。
上述した製造方法によると、半導体層130に通気孔111Aを形成し、この通気孔111Aを介して半導体基板110をエッチングすることにより空洞部111および可動部161を形成することができる。このため、圧力センサ101は、従来のように複数の半導体基板を用いることなく、1枚の半導体基板110から製造することが可能である。従って、圧力センサ101は、製造工程の簡略化を図ることが可能であり、さらに製造コストの削減を図ることが可能となっている。
さらに、本実施形態によれば、ピエゾ抵抗171,172,173,174が複数の屈曲部を有し蛇行するように形成されており、可動部161の変形による歪みが生じやすくなっている。このため、ピエゾ抵抗171,172,173,174は、可動部161の変形による抵抗値の変化がより顕著なものとなっている。従って、圧力センサ101は、より精密な圧力測定を行うことが可能となっている。
図70〜図85は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図70および図71には、本発明の第5実施形態に基づく圧力センサを示している。図70および図71に示す圧力センサ102は、半導体層130が多結晶シリコンによって形成されており、溝132,133,134,135およびピエゾ抵抗171,172,173,174の構成が圧力センサ101と異なっている。図71に示すように、溝132,133,134,135とピエゾ抵抗171,172,173,174との間には絶縁物136が封入されている。圧力センサ102のその他の構成は圧力センサ101と同様である。
図72および図73には、圧力センサ102における溝132,133,134,135を形成する工程を示している。図72および図73によると、各溝132,133,134,135は、溝内部に、半導体層130の一部が残留するように形成される。溝132,133,134,135内の半導体層130の残留部分は、溝132,133,134,135によって半導体層130の本体部分から孤立するように形成される。さらに、これらの残留部分は、図72に示すように、複数の屈曲部を有するように蛇行する形状に形成される。このような溝132,133,134,135は、適切な樹脂レジストを用い、HFを含むガスによる気相エッチングを行うことによって形成可能である。圧力センサ102においては、各溝132,133,134,135内に残留した半導体層130が、ピエゾ抵抗171,172,173,174となる。
さらに、圧力センサ102の製造工程においては、図72および図73に示す工程の後に、溝132,133,134,135に絶縁物136を埋め込む工程を行う。この工程において、ピエゾ抵抗171,172,173,174が絶縁物136によって覆われることがある。このため、各ピエゾ抵抗171,172,173,174が露出するように絶縁物136をエッチングする工程を行った後に、Al層の形成を行う。このようにすることで、Al層から形成される出力端子Vout+,Vout−、および、リード線154,155,156,157,158と、各ピエゾ抵抗171,172,173,174との電気的接続を確保することができる。なお、絶縁物136のエッチングを行う際に、絶縁物136のピエゾ抵抗171,172,173,174を覆う部分全てを除去する必要はない。出力端子Vout+,Vout−、および、リード線154,155,156,157,158と、各ピエゾ抵抗171,172,173,174との接続部分が確保されれば十分である。
このような圧力センサ102は、圧力センサ101と同様に、複数の半導体基板を用いることなく、1枚の半導体基板110から製造することが可能である。従って、圧力センサ102は、製造工程の簡略化を図ることが可能であり、さらに製造コストの削減を図ることが可能となっている。
さらに、本実施形態においても、ピエゾ抵抗171,172,173,174が複数の屈曲部を有し蛇行するように形成され、可動部161の変形による歪みが生じやすくなっている。このため、本実施形態のピエゾ抵抗171,172,173,174も、可動部161の変形による抵抗値の変化がより顕著なものとなっている。従って、圧力センサ102は、より精密な圧力測定を行うことが可能となっている。
図74は、本発明の第6実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ103では、空洞部111が半導体基板110の裏面に開口しており、その開口部111aにパイプ163が連結されている。さらに、パイプ163は、ガス供給室162に連結されている。なお、圧力センサ103のその他の構成は圧力センサ101と同様となっている。
開口部111aは、たとえば、空洞部111を形成した後に、半導体基板110の裏面からエッチングを施す工程を行うことにより形成可能である。
圧力センサ103では、ガス供給室162内に圧力既知の気体を充填し、パイプ163を通して空洞部111内に既知の圧力の気体を導入することで、可動部161の裏面にかかる圧力を既知の値とすることができる。この場合、可動部161にかかる圧力は、可動部161の表面側にかかる外部の気体の圧力と、裏面側にかかる既知の圧力との相対圧力となる。このため、圧力センサ103は、空洞部111内の気体に対する外部の気体の相対圧力を検出することにより、外部の気体の圧力を算出することが可能である。
さらに、圧力センサ103では、可動部161の表面にかかる圧力を一定の値とし、ガス供給室162内に圧力未知の気体を充填し、パイプ163を通して空洞部111内に導入することで、圧力未知の気体の圧力を測定することも可能である。
図75および図76は、本発明の第7実施形態に基づく圧力センサを示している。図75および図76に示す圧力センサ104では、半導体基板110に積層方向に突出し、互いに対向する1対の板状部材112,113が設けられている。1対の板状部材112,113の積層方向における高さは、たとえば数μm〜数十μmである。さらに、圧力センサ104では、可動部161および空洞部111の積層方向視における形状が長方形状となっている。可動部161および空洞部111は、1対の板状部材112,113の間に挟まれるように配置されている。また、さらに、本実施形態では、圧力センサ101〜103におけるピエゾ抵抗171,172,173,174にかえて、薄膜状のピエゾ抵抗175,176,177,178を用いている。図75および図76では省略しているが、半導体層130上にピエゾ抵抗175,176,177,178が組み込まれたブリッジ回路が形成されている。圧力センサ104のその他の構成は圧力センサ101と同様である。
図77〜図85では、圧力センサ104の製造工程の一部を示している。
まず、図77および図78は、1対の板状部材112,113を形成する工程を示している。この工程は、平板状の半導体基板110を用意する工程と、用意した半導体基板110の表面に、厚さ0.5μmの酸化層112a,113aを形成する工程と、Siをエッチングする工程と、を有している。酸化層112a,113aは、それぞれ、積層方向視において1対の板状部材112,113を形成したい部分を覆うように形成される。酸化層112a,113aを形成する工程は、たとえば、用意した半導体基板110の表面を熱酸化させた後に、不要な部分をエッチングすることにより得ることが可能である。Siをエッチングする工程では、たとえば、CHF3ガスを放電によって分解して得られるF含有ガスを用いた気相エッチングを行う。このエッチングでは、積層方向において酸化層112a,113aに覆われた部分が残留し、図78に示すような形状を得ることができる。
次に、図79に示すように、酸化膜121を形成する工程を行う。この工程は、半導体基板110の表面に熱酸化処理を施すことにより行うことができる。
次に、図80に示すように、半導体層130を形成する工程を行う。半導体層130を形成する工程は、たとえば、化学気相成長(CVD)法を用い、多結晶Siを成長させることにより行われる。さらに、この工程では、半導体層130の表面が酸化層112a,113aの表面と揃うように、化学機械研磨(CMP)処理を行う。
次に、図81に示すように、半導体層130の表面を熱酸化処理し、酸化層122を形成する工程を行う。
次に、図82および図83に示すように、酸化層122に貫通孔122aを形成する工程を行う。さらに、第4実施形態において図59〜図63を参照として説明したように、貫通孔130aを形成する工程、貫通孔130aの内周面を酸化させる工程、通気孔111Aを形成する工程、および、空洞部111を形成する工程を行うことにより、図84および図85に示す状態となる。その後、通気孔111Aを封止する工程と、半導体層130上の酸化層122および酸化層112a,113aを除去する工程と、ピエゾ抵抗175,176,177,178を形成する工程と、ブリッジ回路を形成する工程と、を経ることで図75および図76に示す圧力センサ104を製造することができる。
ピエゾ抵抗175,176,177,178を形成する工程は、たとえば、ピエゾ抵抗175,176,177,178の材料となる物質を、半導体層130の表面にドーピングし、それらを拡散させることにより行うことができる。
このような圧力センサ104は、圧力センサ101と同様に、半導体層130に通気孔111Aを形成し、この通気孔111Aを介して半導体基板110をエッチングすることにより空洞部111および可動部161を形成している。このため、圧力センサ104は、従来のように複数の半導体基板を用いることなく、1枚の半導体基板110から製造することが可能である。従って、圧力センサ104は、製造工程の簡略化を図ることが可能であり、さらに製造コストの削減を図ることが可能となっている。
本発明に係る圧力センサは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る圧力センサの各部の具体的な構成およびその製造方法の各工程の具体的な方法は、種々に設計変更自在である。たとえば、圧力センサ103は、圧力センサ101を基礎とする構成であるが、圧力センサ102を基礎とする構成であってもよい。また、たとえば、封止部材141が、貫通孔130a全体に充填されていてもよく、さらに貫通孔121aにまで延出していても構わない。
また、圧力センサ104においても、圧力センサ103のように開口部111a、パイプ163、およびガス供給室162を設けても構わない。さらに、圧力センサ101,102において、ピエゾ抵抗171,172,173,174を設けるかわりに、圧力センサ104で示したピエゾ抵抗175,176,177,178を設けても構わない。逆に、圧力センサ104において、ピエゾ抵抗175,176,177,178を用いる代わりに、圧力センサ102で示したピエゾ抵抗171,172,173,174を用いても構わない。
また、たとえば、上記実施形態では、半導体基板110を単結晶Siで形成しているが、多結晶Siを用いても構わない。
図86および図87は、本発明の第8実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ201は、半導体基板210、(第1の)絶縁体層221、絶縁カバー222、(第3の)絶縁カバー223、中間層230、および、電極層240を備えている。
半導体基板210は、たとえば、積層方向(図87中の上下方向)における厚さが300μm程度の単結晶シリコン(Si)基板であり、内部が真空または一定気圧である空洞部211を有している。空洞部211は、半導体基板210の表面に開口するように形成されており、その積層方向における深さは、たとえば5〜100μmである。空洞部211は、積層方向視において正方形または長方形、あるいは円形または楕円形となるように形成されており、図86中の左右方向における長さは、たとえば50μm〜数mmである。
中間層230は、半導体基板210上に積層された厚さ1μm〜50μm程度の層であり、半導体層230A、凹部231、(第2の)絶縁体層232、半導体層230Aに空けられた複数個の貫通孔233、保護膜234、封止部材235、および、空洞部237を備えている。この中間層230は、その大部分が多結晶Siからなる半導体層230Aによって構成されており、その他の部分は、後の製造方法の項目で記載するように、半導体層230Aに対する加工により形成されたものである。
凹部231は、積層方向視において空洞部211と重なる位置に形成されている。この凹部231は、中間層230の表面から積層方向にたとえば2μmだけ凹むように形成されている。この凹部231内に、空洞部237が形成されている。
絶縁体層232は、凹部231の表面を覆うように形成されている。絶縁体層232の厚さは、たとえば1.0μm程度である。絶縁体層232は、たとえば、二酸化ケイ素(SiO2によって形成されている。
複数の貫通孔233は、積層方向視において凹部231と重なる範囲内に形成されており、積層方向において中間層230の表面から凹部231に向かって延びるように形成されている。各貫通孔233の積層方向視における形状は、たとえば、直径が0.5μm〜5.0μmの円形あるいは同程度の大きさの楕円形である。
保護膜234は、各貫通孔233の内周面に形成された厚さ0.2μm程度のSiO2の膜である。
封止部材235は、たとえばSiO2によって形成されており、各貫通孔233の積層方向における上端部を封止している。封止部材235は、絶縁体層232および保護膜234と一体となっている。
絶縁体層221は、半導体基板210と中間層230との間に設けられており、たとえばSiO2により形成されている。絶縁体層221の厚みは、たとえば、0.1〜1.0μmである。絶縁体層221は、貫通孔233と繋がるように形成された貫通孔221aを有している。
絶縁カバー222は、凹部231の表面を除く中間層230の表面を覆うように設けられており、たとえばSiO2により形成されている。絶縁カバー222の厚みは、たとえば、0.1〜1μmである。絶縁カバー222は、半導体層230Aを露出させるように形成された開口部222bを有している。この開口部222bは、たとえば、図86中の右端部に設けられている。
絶縁カバー223は、たとえばSiO2からなり、空洞部237に対して蓋をするように形成されている。絶縁カバー223の厚みは、たとえば、0.1〜1μmである。絶縁カバー223は、積層方向視において凹部231の底面と同じ形状であり、その端縁は絶縁カバー222および絶縁体層232と一体となっている。絶縁カバー223は、積層方向における下端が空洞部237に到達する複数個の貫通孔223aを有している。
電極層240は、絶縁カバー222または絶縁カバー223上に形成されており、固定電極端子241、固定電極242、可動電極端子243、接続線244、および、充填部245を有している。電極層240は、たとえばアルミニウム(Al)により形成されている。
固定電極端子241は、絶縁カバー222上の適所に設置されており、たとえば外部との電気的接続を目的として使用される。固定電極242は、絶縁カバー223上に形成されており、固定電極端子241と導通している。さらに、固定電極242は、積層方向における下端が各貫通孔223aに到達する複数個の貫通孔242aを有している。なお、固定電極242は、絶縁カバー223の全域を覆うように形成されている。
可動電極端子243は、固定電極端子241および固定電極242と電気的に絶縁され、接続線244を介して充填部245と導通するように、絶縁カバー222上に形成されている。充填部245は、開口部222bを埋めるように形成されており、半導体層230Aに接触している。すなわち、可動電極端子243は、接続線244および充填部245を介して半導体層230Aと導通している。
次に、圧力センサ201の動作について、説明を行う。
圧力センサ201では、積層方向において空洞部211,237に挟まれた領域が、変形可能な可動部261となる。上記の構成によると、絶縁カバー223および固定電極242に貫通孔223a,242aが形成されているため、空洞部237内部は、外部から流入した気体が充填されている。一方、上述したように空洞部211は真空あるいは一定気圧である。このため、可動部261は、空洞部237内に流入した気体によって押圧されて変形する。可動部261には半導体層230Aの一部が含まれているため、可動部261に変形が生じると、固定電極242と半導体層230Aとの間の静電容量に変化が生じることになる。上述したように、半導体層230Aは可動電極端子243に導通しており、固定電極242は固定電極端子241に導通している。従って、圧力センサ201は、可動部261内の半導体層230Aを可動電極とし、可動部261と固定電極242との間の静電容量の変化を固定電極端子241および可動電極端子243から出力することにより、空洞部237内に流入した気体の絶対圧力を測定可能である。
次に、圧力センサ201の製造方法について、図88〜図106を参照しつつ説明を行う。
まず、平板状の半導体基板210を用意する工程と、半導体基板210の表面に絶縁体層221を形成する工程と、絶縁体層221上に半導体層230Aを形成する工程と、半導体層230A上に絶縁カバー222を形成する工程と、を行い、図88に示す状態とする。絶縁体層221を形成する工程は、たとえば、半導体基板210の表面を熱酸化させることにより行われる。半導体層230Aを形成する工程は、たとえば、化学気相成長(CVD)法を用い、多結晶Siを成長させることにより行われる。絶縁カバー222を形成する工程は、半導体層230Aの表面を熱酸化させることにより行われる。
次に、図89および図90に示すように、絶縁カバー222に開口部222aを形成する工程を行う。開口部222aは、半導体層230Aのうち凹部231の形成予定領域を露出させるように形成される。この工程は、たとえば、開口部222aを形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設けた後に、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、CHF3ガスを分解して得られるフッ素単原子(F)およびフッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体層230Aは除去されずに残留する。なお、気相エッチングを行うかわりに、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
次に、図91に示すように、凹部231を形成する工程を行う。この工程は、HFを含むガスを用いた気相異方性エッチングにより行うことができる。HFを含むガスは、たとえば、CHF3ガスに水蒸気を添加したガスを放電により分解することによって得ることができる。HFを乾燥状態としてHF2 -の発生を抑えてエッチングを行うことにより、SiO2がエッチングされることを防ぐことができる。このため、この工程では、絶縁カバー222は残留する。
次に、図92に示すように、絶縁体層232を形成する工程を行う。この工程は、たとえば熱酸化処理を行うか、CVD法を用いてSiO2を成長させることにより行うことが可能である。いずれの方法であっても、この工程では、絶縁体層232が形成されると同時に絶縁カバー222の厚みが増加する。
次に、図93および図94に示すように、複数個の貫通孔232aを形成する工程を行う。各貫通孔232aは、積層方向に絶縁体層232を貫通し、半導体層230Aの表面を露出させるように形成される。この工程は、開口部222aを形成する工程と同様に、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相異方性エッチングを施すことにより行われる。この場合、複数個の貫通孔232aに対応する複数個の開口部を有する樹脂製レジストを用いればよい。
次に、図95に示すように、複数個の貫通孔233を形成する工程を行う。この工程は、凹部231を形成する工程と同様に、HFを含むガスを用いた気相異方性エッチングにより行うことができる。
次に、図96に示すように、保護膜234を形成する工程を行う。この工程は、たとえば熱酸化処理を行うか、CVD法を用いてSiO2を成長させることにより行うことが可能である。
次に、図97に示すように、通気孔211Aを形成する工程を行う。通気孔211Aは、外部から半導体基板210にエッチングガスを導入するためのものであり、貫通孔221a,232a,233によって構成されている。先の工程で貫通孔232a,233は形成されているため、本工程では複数個の貫通孔221aを形成する。この工程は、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。本工程では、同時に絶縁カバー222および絶縁体層232の一部もエッチングされて薄くなる。なお、絶縁カバー222あるいは絶縁体層232の厚みが不十分である場合、貫通孔232aを形成する際に用いたレジストと同形状のレジストを用いればよい。
次に、図98に示すように、空洞部211を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ素単原子(F)を含有するガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。Fは、Siと反応しやすい一方、SiO2とは反応しにくい。このため、SiO2に覆われた通気孔211Aを通してF含有ガスを半導体基板210に導入することにより、半導体層230Aが削れる前に半導体基板210がエッチングされて空洞部211が形成される。なお、Fを含むガスは、CHF3ガスを放電によって分解することで得ることができる。
空洞部211を形成する工程は、たとえば、フッ化キセノンガスを用いたエッチングによっても行うことが可能である。フッ化キセノンガスを用いる場合、CHF3ガスを用いる場合よりもSiとSiO2との反応性の差が大きいため、保護膜234の厚みをより薄くすることが可能である。
次に、図99に示すように、通気孔211Aを封止する工程を行う。この工程では、絶縁体層232の一部の厚みが増加するとともに、封止部材235が形成される。この工程は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いて減圧化学気相成長(LPCVD)法を行うことにより、絶縁体層232および通気孔211AにSiO2を積層させることにより行われる。真空または一定気圧雰囲気中において、通気孔211Aを封止することにより、空洞部211を真空または一定気圧とすることができる。
なお、通気孔211Aの封止は、上記手法以外にも、たとえば、熱酸化処理を行い、酸化部分の膨張を利用する方法や、プラズマCVD法によっても可能である。
次に、図100に示すように、犠牲層236を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、凹部231および開口部222aに多結晶Siを埋め込むことにより行うことができる。なお、本工程では、犠牲層236の表面が絶縁カバー222の表面と揃うように研磨しておく。
次に、図101に示すように、絶縁カバー223を形成する工程を行う。この工程は、たとえば犠牲層236の表面を熱酸化させることにより行うことができる。この工程では、絶縁カバー223の厚みが絶縁カバー222と同程度となるように行う。その結果、開口部222aが絶縁カバー223で充填され、凹部231が犠牲層236に充填された状態となる。
次に、図102および図103に示すように、貫通孔223aおよび開口部222bを形成する工程を行う。この工程は、たとえば、貫通孔223aおよび開口部222bに対応する開口部を有する樹脂製レジストを設置し、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。
次に、図104に示すように金属層240Aを積層する工程を行う。金属層240Aは、Alからなる層であり、絶縁カバー222および絶縁カバー223を覆うように形成される。なお、貫通孔223aにおいては、金属層240Aは犠牲層236に直接積層され、開口部222bにおいては半導体層230A上に直接積層されている。この工程は、たとえばCVD法によりAlを積層させることによって行われる。
次に、図105および図106に示すように、金属層240Aから電極層240を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、積層方向視において電極層240と同形状のレジストを設置し、気相エッチングによって不要なAlを除去することにより行われる。上述したように、固定電極242は各貫通孔223aと重なる貫通孔242aを有しているため、この工程の終了後には、貫通孔223aおよび貫通孔242aを通気孔として犠牲層236のエッチングを行うことが可能な状態となっている。この工程の終了後に、犠牲層236を除去し、空洞部237を形成する工程を行う。犠牲層236を除去する工程は、HFを含むガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。空洞部237が形成されたことにより中間層230が完成し、図86および図87に示す圧力センサ201が完成する。
次に、圧力センサ201の作用について説明する。
上述した製造方法によると、空洞部211は、通気孔211Aを介して半導体基板210をエッチングすることにより形成可能であり、かつ、空洞部237は、凹部231に埋め込まれた犠牲層236をエッチングすることにより形成可能である。このため、圧力センサ201は、従来のように複数の半導体基板を用いることなく、1枚の半導体基板210から製造することが可能である。従って、圧力センサ201は、製造工程の簡略化を図ることが可能であり、さらに製造コストの削減を図ることが可能となっている。
本実施形態によれば、凹部231は気相エッチングにより形成されており、その底面は、自然に絶縁カバー222の表面と平行な面となる。一方、固定電極242は、絶縁カバー222の表面と揃うように形成されている絶縁カバー223上に積層されたものである。このため、固定電極242の裏面と、圧力センサ201における可動電極の表面に相当する凹部231の底面とは自然に平行となっている。さらに、凹部231の深さは、エッチングを行う時間を調整することで容易に制御可能である。従って、固定電極242と可動部261との間の静電容量の値を正確に設定することが可能であり、圧力センサ201は、より精密な圧力測定を行うことが可能である。
さらに、本実施形態によれば、凹部231が絶縁体層232によって覆われており、かつ、固定電極242の裏面は絶縁カバー223によって覆われているため、固定電極242と可動部261との間の静電容量がより大きな値となっている。固定電極242と可動部261との間の静電容量が大きければ大きいほど、その値の変化をより検知しやすいため、圧力センサ201は、より精度の高い圧力測定を行うことが可能である。
図107〜図124は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図107は、本発明の第9実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ202は、圧力センサ201における絶縁カバー223を備えていないこと以外は圧力センサ201と同様の構成を備えている。絶縁カバー223が設けられていないため、圧力センサ202における固定電極242は、積層方向視において凹部231よりも大きく、絶縁カバー222に支持されるように形成されている。このような圧力センサ202は、圧力センサ201における絶縁カバー223を形成する工程および貫通孔223aを形成する工程を省略することにより、製造することが可能である。このような圧力センサ202は、より一層の製造工程の簡略化を図るのに適している。
図108は、本発明の第10実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ203では、空洞部211が半導体基板210の裏面に開口しており、その開口部211aにパイプ263が連結されている。さらに、パイプ263は、ガス供給室262に連結されている。なお、圧力センサ203のその他の構成は圧力センサ201と同様となっている。
開口部211aは、たとえば、半導体基板210に半導体層230Aを積層する前に、半導体基板210の裏面に対してエッチングを行い、後に形成される空洞部211と繋がるような凹部を設けておくことにより、形成可能である。
ガス供給室262は、空洞部211に圧力既知の気体を供給する。このため、圧力センサ203における空洞部211の内部は、圧力センサ201の場合と異なり、既知の圧力の気体によって満たされている。このとき、可動部261は、空洞部211,237内の気体のそれぞれから圧力を受け、その相対圧力に応じて変形する。従って、圧力センサ230は、外部の気体の圧力と空洞部211内のガス供給室262から供給された気体との相対圧力を測定することが可能である。
また、圧力センサ203を真空雰囲気中に設置した場合、ガス供給室262から空洞部211に圧力未知の気体を導入することにより、その圧力未知の気体の絶対圧力を測定することも可能である。圧力センサ203の完成後に、さらに空洞部237を真空封止した場合にも同様に、空洞部211内の圧力未知の気体の絶対圧力を測定することが可能となる。
図109および図110は、本発明の第11実施形態に基づく圧力センサを示している。図109および図110に示す圧力センサ204は、1対の板状部材212,213、保護層224、接地電極端子246、接続線247、および、充填部248を備えており、その他の構成は圧力センサ201と同様である。なお、接地電極端子246、接続線247、および、充填部248は電極層240の一部である。
図110に示すように、1対の板状部材212,213は、半導体基板210の表面から積層方向に7μmほど突き出すように形成されている。図110における左右方向において、1対の板状部材212,213の間には、可動部261および空洞部237が設置されている。
保護層224は、1対の板状部材212,213の積層方向における頂上部分を覆うように積層形成されている。保護層224は、たとえばSiO2により形成されている。板状部材212に積層された保護層224には、開口部224aが形成されている。この開口部224aを埋めるように充填部248が形成されている。
接地電極端子246は、外部のグラウンドに接続される端子であり、絶縁カバー222上の適所に設置されている。接地電極端子246は、接続線247を介して充填部248に導通している。接地電極端子246、接続線247、および充填部248は、たとえばAl製であり、固定電極端子241および可動電極端子243の双方に対して電気的に絶縁されるように配置されている。
次に、圧力センサ204の製造方法について、主に圧力センサ201の製造方法との相違点を中心に、図111〜図124を参照しつつ説明を行う。
まず、厚さ100〜1000μm程度の一様な板状の半導体基板210を用意し、この半導体基板210を上記1対の板状部材212,213を有する形状に加工する工程を行う。この工程では、図111および図112に示すように保護層224を形成する工程と、図113に示すように半導体基板210を積層方向に削る工程と、を行う。保護層224を形成する工程は、たとえば、CVD法あるいは熱酸化処理により、半導体基板210の表面に厚さ0.5μm程度のSiO2層を形成し、不要な部分をエッチングすることにより行われる。このエッチング作業では、たとえば、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相異方性エッチングを行う。半導体基板210を積層方向に削る工程は、たとえば、F単原子を含有するガスを用いた気相異方性エッチングにより行うことができる。
次に、図114に示すように、絶縁体層221を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体基板210の表面を熱酸化させることにより行われる。なお、この工程では、板状部材212,213の側面にも絶縁体層221が形成される。
次に、図115に示すように、半導体層230Aを形成する工程を行う。この工程は、半導体基板210上の板状部材212,213以外の領域に、多結晶Si材料を埋め込み、成長させることにより行われる。さらに、この工程では、半導体層230Aが十分に成長したのちに、保護層224の表面を基準として、半導体層230Aの表面をCMPにより平坦化する。
次に、図116に示すように、絶縁カバー222を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体層230Aの表面を熱酸化させることによって行われる。この工程で形成される絶縁カバー222の厚みは、たとえば0.5μmである。
次に、図117および図118に示すように、開口部222aを形成する工程を行う。開口部222aは、1対の支持部材212,213のそれぞれに積層された保護層224に挟まれるように形成される。この工程の後、圧力センサ201の製造工程における図91〜図101に示す工程を順次行うことにより、図119に示す状態を得ることができる。
次に、図120および図121に示すように、貫通孔223aおよび開口部222b,開口部224aを形成する工程を行う。この工程は、たとえば、貫通孔223aおよび開口部222b,224aに対応する開口部を有する樹脂製レジストを設置し、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。
次に、図122に示すように、金属層240Aを形成する工程を行う。金属層240Aは、Alからなる層であり、絶縁カバー222、絶縁カバー223および保護層224を覆うように形成される。なお、金属層240Aは、開口部224aにおいては、板状部材212に直接積層されている。この工程は、たとえばCVD法によりAlを積層させることによって行われる。
次に、図123および図124に示すように、金属層240Aから電極層240を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、積層方向視において電極層240と同形状のレジストを設置し、気相エッチングによって不要なAlを除去することにより行われる。さらにその後、犠牲層236を除去することにより、図109および図110に示す圧力センサ204が完成する。
このような圧力センサ204では、接地電極端子246を介して半導体基板210を外部のグラウンドに接続することが可能となる。このため、圧力センサ204では、固定電極242と可動部261との間の静電容量をさらに正確な値に設定することが可能である。従って、圧力センサ204は、より精密な測定を行うことが可能である。
さらに、圧力センサ204では、中間層230を積層方向に貫通するように比較的強度の高い板状部材212,213が設けられているため、その強度が増している。特に、可動部261が板状部材212,213の間に保持されているため、中間層230に不当な圧力がかかった場合にも、可動部261が不当に変形しにくくなっている。このため、圧力センサ204では、固定電極242と可動部261との間の静電容量をさらに正確な値に設定することが可能である。従って、圧力センサ204は、より精密な測定を行うことが可能である。
本発明に係る圧力センサは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る圧力センサの各部の具体的な構成およびその製造方法の各工程の具体的な方法は、種々に設計変更自在である。たとえば、圧力センサ202,203は、圧力センサ201を基礎とする構成であるが、圧力センサ204を基礎とする構成であっても構わない。
また、たとえば、上記実施形態では、半導体基板210を単結晶Siで形成し、半導体層230Aを多結晶Siで形成しているが、半導体基板210を多結晶Siで形成し、半導体層230Aを単結晶Siで形成しても構わない。また、さらに、犠牲層236を、単結晶Si、あるいは、HF2 -との反応性が低い樹脂によって形成しても構わない。
図125および図126は、本発明の第12実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ301は、半導体構造体310と、絶縁体層320、半導体膜331,332、接続端子341,344,345、接続線342,346、導通部343,347、気体導入空間351,352,354、および、密閉空間353を備えている。気体導入空間351,352,354には圧力センサ301の外部の空気が充填されている。密閉空間353は、真空となっている。
半導体構造体310は、たとえば、単結晶ケイ素(Si)からなる単一の半導体材料から形成されており、平板状の半導体基板311、板状部材312、および、壁部313,314によって構成されている。半導体基板311の表面には、たとえば二酸化ケイ素(SiO2)からなる厚さ0.2μm程度の酸化膜311aが形成されている。以下の説明において、x方向を半導体基板311の面内方向の1つとし、y方向をx方向と直交する半導体基板311の面内方向とし、z方向をx,y方向と直交する方向とする。図125に示すように、半導体構造体310は、z方向視においてx方向を長辺方向とする長方形状となっている。また、図126に示すように、z方向は、半導体基板311の積層方向となっている。
板状部材312は、半導体基板311のx方向における中央からz方向に垂直に起立するように形成されている。この板状部材312は、半導体基板311のy方向における略全長に渡って形成されている。板状部材312のx方向における長さは、たとえば10μmであり、z方向における長さは、たとえば、100μmである。板状部材312のx方向における両側面には、たとえばSiO2からなり厚さ0.2μm程度の酸化膜312aが形成されている。
壁部313は、半導体基板311のx方向における図126中左側の端部からz方向に垂直に起立するように形成されている。この壁部313は、半導体基板311のy方向における略全長に渡って形成されている。壁部313のx方向における右側面には、たとえばSiO2からなり厚さ0.2μm程度の酸化膜313aが形成されている。
壁部314は、半導体基板311のx方向における図126中右側の端部からz方向に突出するように形成されている。この壁部314は、半導体基板311のy方向における略全長に渡って形成されている。壁部314のx方向における左側面には、たとえばSiO2からなり厚さ0.2μm程度の酸化膜314aが形成されている。
図125および図126中には表れていないが、半導体基板311のy方向における両端にも壁部313,314と同様の壁部が形成されており、半導体構造体310は、4方の壁部に囲まれた領域内に板状部材312で仕切られた2つの凹部を有する構造となっている。x方向において板状部材312と壁部313との間に挟まれた凹部内には、半導体膜331および気体導入空間351,352が収容されている。x方向において板状部材312と壁部314との間に挟まれた凹部内には、半導体膜332、密閉空間353および気体導入空間354が収容されている。
半導体膜331は、x方向における厚みが4μm程度の多結晶Siからなる膜である。この半導体膜331のz方向における長さは、たとえば、100μmであり、y方向において半導体基板311の略全長に渡って延びている。x方向における半導体膜331の両側面には、たとえばSiO2からなり厚さ0.2μm程度の酸化膜331aが形成されている。半導体膜331は、x方向において板状部材312と壁部313との間に設置されている。半導体膜331のx方向における図126中右側面は、板状部材312の左側面と平行な面となっており、その間隔は、たとえば2μmである。一方、半導体膜331の左側面と壁部313の右側面との間隔は、たとえば3〜8μmである。
半導体膜331は、上述した凹部の一方をさらに2つに仕切っており、壁部313と半導体膜331との間が気体導入空間351に、半導体膜331と板状部材312との間が気体導入空間352となっている。
半導体膜332は、x方向における厚みが4μm程度の多結晶Siからなる膜である。この半導体膜332のz方向における長さは、たとえば、100μmであり、y方向において半導体基板311の略全長に渡って延びている。x方向における半導体膜332の両側面には、たとえばSiO2からなり厚さ0.2μm程度の酸化膜332aが形成されている。半導体膜332は、x方向における板状部材312と壁部314との間に設置されている。半導体膜332のx方向における図126中左側面は、板状部材312の右側面と平行な面となっており、その間隔は、たとえば2μmである。一方、半導体膜332の右側面と壁部314の左側面との間隔は、たとえば3〜8μmである。
半導体膜332は、上述した凹部の他方をさらに2つに仕切っており、半導体膜332と板状部材312との間が密閉空間353に、半導体膜332と壁部314との間が気体導入空間354となっている。
絶縁体層320は、たとえば、SiO2からなり、半導体構造体310に積層されている。絶縁体層320は、z方向における気体導入空間351,352,354の上方に、開口部320a,320b,320cを備えている。気体導入空間351,352,354は、開口部320a,320b,320cを通して外部から空気が流入可能となっている。さらに、絶縁体層320は、接続端子341,344,345、接続線342,346、導通部343,347を露出させる開口部320dを備えている。
接続端子341は、外部との電気的接続を行うための端子であり、接続線342を介して導通部343と連結されている。導通部343は、半導体膜331と導通する部分である。
接続端子344は、外部との電気的接続を行うための端子であり、たとえば壁部314のz方向上端部と導通している。半導体構造体310は一体として形成されているため、接続端子344は、板状部材312とも導通している。
接続端子345は、外部との電気的接続を行うための端子であり、接続線346を介して導通部347と連結されている。導通部347は、半導体膜332と導通する部分である。
次に、圧力センサ301の動作について、説明を行う。
圧力センサ301では、半導体膜331,332がx方向に固定されておらず、かつ、x方向における厚みが小さいため変形可能であり、それぞれ可動電極として機能する。半導体膜331が、壁部313よりも板状部材312に近いことから、板状部材312のx方向左側面が半導体膜331に対する固定電極として機能する。同様に、半導体膜332が、壁部314よりも板状部材312に近いことから、板状部材312のx方向右側面が半導体膜332に対する固定電極として機能する。さらに、板状部材312は、接続端子344に導通しており、かつ、半導体膜331,332はそれぞれ接続端子341,345と導通しているため、各固定電極と各可動電極との間の静電容量変化を好ましく検出することができる。
上述したように、板状部材312のx方向左側面と半導体膜331との間隔と、板状部材312のx方向右側面と半導体膜332との間隔とは、同じであり、x方向視における半導体膜331,332は同じ大きさ形状である。このため、半導体膜331,332が変形していない状態では、接続端子341,345から得られる出力値はほぼ同じ値となる。
半導体膜331は、気体導入空間351,352間に導入された気体の双方からx方向に圧力を受ける。本実施形態では、気体導入空間351,352の双方に同じ外気が導入されているため、半導体膜331にかかる圧力は釣り合った状態となっている。このため、半導体膜331と板状部材312との間の静電容量は変化せず、接続端子341から得られる出力値は一定の基準値となる。
一方、半導体膜332は、真空である密閉空間353と、外気が取り込まれた気体導入空間354とにx方向に挟まれている。このため、半導体膜332は、気体導入空間354内の外気からx方向に外気の気圧に相当する圧力を受けて変形する。このため、半導体膜332と板状部材312との間の静電容量は、外気の気圧に応じて変化し、接続端子345から得られる出力値は変化した静電容量に応じた値となる。この値と接続端子341から得た基準値とを比較することにより、半導体膜332と板状部材312間の静電容量変化量を算出し、さらにその静電容量変化量から、外気の気圧を算出することが可能である。従って、圧力センサ301は、好ましく外気の絶対圧を測定することが可能である。
次に、圧力センサ301の製造方法について、図127〜図145を参照しつつ説明を行う。
まず、単結晶Siからなる直方体状の半導体材料310Aを用意し、この半導体材料310Aを加工することにより半導体構造体310を形成する工程を行う。
半導体材料310Aの加工を行うために、まず、半導体材料310Aの表面にSiO2からなる絶縁体層321を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体材料310Aの表面を熱酸化させることによって行うことができる。あるいは、化学気相成長(CVD)法を用いても構わない。
次に、図127および図128に示すように、絶縁体層321に半導体材料310Aの表面を露出させる開口部322,323を形成する。開口部322は、z方向視において、気体導入空間351,352および半導体膜331が形成される領域と重なる領域に形成される。開口部323は、z方向視において、密閉空間353、気体導入空間354および半導体膜332が形成される領域と重なる領域に形成される。この工程は、たとえば、開口部322,323を形成する領域を露出させる樹脂製レジストを設けた後に、フッ素系分子イオン(HF2 -)とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。HF2 -は、たとえば、フッ化水素(HF)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。HFは、たとえば、四フッ化炭素(CF4)ガスまたは三フッ化メタン(CHF3)ガスを分解して得られるフッ素単原子(F)およびフッ素分子(F2)を水蒸気と反応させることにより得ることができる。酸化されていないSiは、HF2 -とは反応しにくいため、これらのエッチング工程によって半導体材料310Aは除去されずに残留する。なお、気相エッチングを行うかわりに、フッ酸(HF)水を用いたウェットエッチングを行ってもよい。
次に、図129に示すように、半導体材料310Aに対しz方向を侵食方向としてエッチングを施す工程を行う。この工程では、半導体材料310Aの残部として半導体構造体310が形成される。この工程は、たとえば、ボッシュプロセス(ボッシュは登録商標)を用いたSi−DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)により行うことができる。ボッシュプロセスはエッチングと側壁保護を繰り返し行うプロセスであり、アスペクト比の高いエッチングを行うことが可能である。この工程の結果、半導体材料310Aのうち絶縁体層321に覆われた部分が残留し、板状部材312、壁部313,314、および、y方向両端の壁部が形成される。さらに、半導体材料310Aをz方向に貫通しないようにエッチング時間を調整することにより、半導体材料310Aの底部が半導体基板311となる。
次に、図130に示すように、酸化膜311a,312a,313a,314aを形成する工程を行う。この工程は、たとえば、半導体構造体310の表面を熱酸化させることにより行うことができる。なお、CVD法を用いてSiO2を積層させることによっても同様の膜を形成することが可能である。
次に、図131に示すように、半導体層331Aおよび半導体層332Aを形成する工程を行う。半導体層331Aは、多結晶Siからなり、壁部313と板状部材312との間を充填するように形成される。半導体層332Aは、多結晶Siからなり、壁部314と板状部材312との間を充填するように形成される。この工程は、たとえば、CVD法を用い、半導体基板311上に多結晶Siをエピタキシャル成長させることにより行うことができる。なおこの工程では、半導体層331A,332Aの表面を平坦化させる工程も行う。この平坦化工程は、たとえば、化学機械研磨(CMP)によって行われる。
次に、図132に示すように、半導体層331Aの表面に絶縁体層324Aを形成し、半導体層332Aの表面に絶縁体層325Aを形成する工程を行う。絶縁体層324Aは半導体層331Aの絶縁体層321に覆われていない部分を全て覆うように形成される。絶縁体層325Aは半導体層332Aの絶縁体層321に覆われていない部分を全て覆うように形成される。絶縁体層324A,325Aは、いずれもSiO2からなり、たとえば厚さ0.8μm程度である。この工程は、たとえば、熱酸化処理またはCVD法により行うことができる。この工程により、開口部322,323は、絶縁体層324A,325Aによって封止される。
次に、図133および図134に示すように、絶縁体層324,325および開口部322a,322b,323a,323bを形成する工程を行う。絶縁体層324は、z方向視において半導体膜331が形成される領域と重なる領域に形成されている。絶縁体層325は、z方向視において半導体膜332が形成される領域と重なる領域に形成されている。開口部322aは、半導体層331Aを露出させるように、z方向視において気体導入空間352が形成される領域と重なる領域に形成されている。開口部322bは、半導体層331Aを露出させるように、z方向視において気体導入空間351が形成される領域と重なる領域に形成されている。開口部323aは、半導体層332Aを露出させるように、z方向視において密閉空間353が形成される領域と重なる領域に形成されている。開口部323bは、半導体層332Aを露出させるように、z方向視において気体導入空間354が形成される領域と重なる領域に形成されている。この工程は、開口部322,323を形成する際に用いた手法と同様の手法で行うことが可能である。
次に、図135に示すように、半導体膜331および半導体膜332を形成する工程を行う。この工程では、半導体層331A,332Aに対してz方向を侵食方向としてエッチングを行う。この際に行うエッチングは、たとえば、ボッシュプロセスを用いたSi−DRIEにより行うことができる。このため、この工程では、絶縁体層324,25の下にある半導体層30が残留し、その残部として半導体膜331,332が形成される。
次に、図136に示すように、酸化膜331a,32aを形成する工程を行う。この工程は、たとえば、熱酸化処理またはCVD法により行うことができる。
次に、図137に示すように、犠牲層326A,327A,328A,329Aを形成する工程を行う。犠牲層326A,327A,328A,329Aは、たとえば多結晶Siあるいはポリイミドなどの樹脂によって形成されている。犠牲層326Aは、気体導入空間351が形成される予定の領域を充填するように形成される。犠牲層327Aは、気体導入空間352が形成される予定の領域を充填するように形成される。犠牲層328Aは、密封空間353が形成される予定の領域を充填するように形成される。犠牲層329Aは、気体導入空間354が形成される予定の領域を充填するように形成される。
次に、図138に示すように、犠牲層326A,327A,328A,329Aの表面に絶縁体層326,327,328,329を形成する工程を行う。この工程は、熱酸化処理またはCVD法により行うことができる。
次に、図139および図140に示すように、絶縁体層326,327,328,329に開口部326a,327a,328a,329aを形成し、絶縁体層324に開口部324aを形成し、絶縁体層325に開口部325aを形成し、絶縁体層321に開口部321aを形成する工程を行う。この工程は、開口部321a,324a,325a,326a,327a,328a,329aと対応する開口部を有する樹脂製レジストを用いて、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッ
次に、図141に示すように、金属層340を形成する工程を行う。金属層340は、たとえば、Alからなる層であり、絶縁体層321,324,325,326,327,328,329を覆うように形成される。この工程は、たとえばCVD法によりAlを積層させることによって行われる。
次に、図142および図143に示すように、金属層340から接続端子341,344,345、接続線342,346、導通部343,347を形成する工程を行う。この工程は、たとえば、接続端子341,344,345、接続線342,346、導通部343,347の形状と対応する形状のレジストを設置し、気相エッチングによって不要なAlを除去することにより行われる。
次に、図144に示すように、犠牲層326A,327A,328A,329Aを除去する工程を行う。この工程は、たとえば、フッ化キセノン(XeF2)を含むガスを用いた気相エッチングにより行うことができる。犠牲層326A,327A,328A,329Aが除去されることにより、空洞部351A,352A,353A,354Aが形成される。
次に、図145に示すように、開口部326a,327a,328a,329aを封止し、絶縁体層320を形成する工程を行う。この工程は、真空雰囲気中において、減圧化学気相成長(LPCVD)法あるいはプラズマCVD法を行うことにより絶縁体層321,324,325,326,327,328,329にさらにSiO2を積層することにより行われる。この工程では、開口部326a,327a,328a,329aの周縁からその中心に向かってSiO2が成長するため、この工程で形成される封止部分は、その中央部が薄くなる傾向がある。また、本実施形態では、この工程で形成される絶縁体層320は、接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347を覆う程度に厚く形成される。なお、マスクを用いた場合には、接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347上にSiO2が積層されないこともある。
この工程の後に、開口部320a,320b,320c,320dを形成する工程を行うことにより、図125および図126に示す圧力センサ301を形成することができる。開口部320a,320b,320c,320dを形成する工程は、開口部320a,320b,320c,320dと対応する開口部を有する樹脂製レジストを用いて、HF2 -とSiO2との反応を利用した気相エッチングを施すことにより行われる。なお、本実施形態では、先の工程で接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347上にSiO2が積層されている。このため、開口部320dを形成することにより、接続端子341,344,345を絶縁体層320の外部に露出させている。このような製造方法によると、図126に示すように、接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347の表面は、絶縁体層320の表面よりも低い位置となる。なお、先の工程で、接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347上にマスクを設けた場合、接続端子341,344,345、接続線342,346、および、導通部343,347上にSiO2が積層されないことがある。このような場合、開口部320dを形成する工程が不要なこともある。
次に、圧力センサ301の作用について説明する。
上述したように、圧力センサ301では、固定電極が半導体基板311の表面から起立する板状部材312のx方向における左右の側面であり、可動電極が半導体膜331,332のx方向における板状部材312の方を向く側面である。このため、圧力センサ301では、固定電極および可動電極が半導体基板311に対してz方向に起立する面となっており、固定電極および可動電極を形成するために必要な半導体基板311のz方向視における面積を小さくすることが可能となっている。従って、圧力センサ301は、z方向視における面積を小さくすることにより小型化を図ることが可能であり、電子機器などに設置するために必要な面積を小さくすることができる。
さらに、本実施形態における製造方法によれば、半導体材料310Aに対してz方向を侵食方向とするエッチングを施すことにより、容易にz方向に起立する板状部材312を形成することが可能である。また、さらに、半導体層331A,332Aに対してz方向を侵食方向とするエッチングを施すことにより、容易に半導体膜331,332を形成することが可能である。
なお、上述した実施形態では板状部材312と半導体膜332との間を密閉空間353とし、半導体膜332と壁部314との間を気体導入空間354としているが、これを入れ替えても構わない。また、密閉空間353に予め圧力既知の気体を封入し、その気体と外気との相対圧を測定する構成としても構わない。
図146〜図153は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図146および図147は、本発明の第13実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ302は、密閉空間353の代わりに気体導入空間353’を有し、開口部320a,320b,320cの代わりに開口部320e,320fが設けられている。圧力センサ302のその他の構成は、圧力センサ301と同様である。
開口部320eは、x方向における、壁部313と半導体膜331との間と、板状部材312と半導体膜332との間に設けられている。この開口部320eは、たとえばパイプ等を介して、圧力既知の気体を供給可能な気体供給源に連結される。このため、気体導入空間351,353’には、上記気体供給源から供給された圧力既知の気体が充填される。
開口部320fは、x方向における、半導体膜331と板状部材312との間と、半導体膜332と壁部314との間に設けられている。この開口部320fからは、外気が取り込まれ、気体導入空間352,354には、測定したい圧力未知の外気が導入される。
このような圧力センサ302では、気体導入空間351に導入された圧力既知の気体と、気体導入空間352に導入された圧力未知の外気との圧力差により、半導体膜331が変形する。この変形によって生じた半導体膜331と板状部材312との間の静電容量変化は接続端子341を通して検出可能である。一方、気体導入空間353’に導入された圧力既知の気体と、気体導入空間354に導入された圧力未知の外気との圧力差により、半導体膜332が変形する。この変形によって生じた半導体膜332と板状部材312との間の静電容量変化は接続端子345を通して検出可能である。
たとえば、上記圧力既知の気体の気圧が、外気の気圧よりも大きかった場合、半導体膜331は、x方向において板状部材312に接近するように変形し、半導体膜332は、x方向において板状部材312にから遠ざかるように変形する。このため、半導体膜331と板状部材312との間の静電容量は、圧力既知の気体と外気との気圧差に応じて大きくなり、半導体膜332と板状部材312との間の静電容量は、逆に小さくなる。上記圧力既知の気体の気圧が、外気の気圧よりも小さい場合は逆の挙動となる。
従って、接続端子341,345より検出される静電容量変化の差は、半導体膜331,332の一方における静電容量変化を倍にしたものに相当すると考えられる。圧力センサ302では、接続端子341,345より検出される静電容量変化の差を半分にした値から、外気の上記圧力既知の気体に対する相対圧を算出する。
このような圧力センサ302では、比較的小さな値となりがちな静電容量変化を倍の大きさの値として計測可能であるため、より精密な測定を行うことが可能となっている。
なお、開口部320eから外気を導入し、開口部320fから圧力既知の気体を導入しても構わない。
図148は、本発明の第14実施形態に基づく圧力センサを示している。本実施形態の圧力センサ303では、板状部材312が半導体構造体310の一部ではなく、多結晶Siにより形成されている。圧力センサ303のその他の構成は、圧力センサ301と同様である。ただし、圧力センサ303では、板状部材312が壁部314と導通していないため、接続端子344は、板状部材312と導通するようにz方向における板状部材312の真上に形成されている。
このような圧力センサ303の製造工程においては、半導体材料310Aにエッチングを施す際に、x方向において壁部313と壁部314との間を全てエッチングする。その後、壁部313と壁部314との間を充填する半導体層330Aを形成し、図149に示すように半導体層330Aの表面に、絶縁体層324,325とともに絶縁体層321’を形成する。その後に、半導体層330Aに対してz方向を侵食方向とするエッチングを施すことにより、半導体層330Aの残部として、半導体膜331,332とともに板状部材312が形成される。
このような圧力センサ303では、より精密な加工が要求される可動電極および固定電極の形成を一度に行うことができるため、製造工程の簡略化を図ることが可能である。
図150は、本発明の第15実施形態に基づく圧力センサを示している。図150に示す圧力センサ304では、板状部材312および壁部313,314が多結晶Siで形成されており、接続端子344が板状部材312と導通するようにz方向における板状部材312の真上に形成されている。さらに、圧力センサ304では、板状部材312と半導体膜331,332とを絶縁するために、圧力センサ301において設けられていたy方向両端の壁部は設けられていない。なお、圧力センサ304のその他の構成は圧力センサ301と同様である。
このような圧力センサ304は、図128に示す単結晶Siからなる半導体材料310Aの代わりに、図151に示す半導体材料310Bから製造される。半導体材料310Bは、平板状の半導体基板311と、半導体基板311の表面に形成された酸化膜311aと、酸化膜311a上に積層された半導体層330Aとによって構成されている。
このような圧力センサ304を製造する際には、図152および図153に示すような絶縁体層321を形成し、半導体層330Aに対してz方向を侵食方向とするエッチングを施す。本実施形態の絶縁体層321には、開口部322a,322b,323a,323bの代わりに、y方向に貫通する開口部322c,322d,323c,323dが設けられている。このようにすると、半導体層330Aの残部として、半導体膜331,332、板状部材312、壁部313,314が一挙に形成される。その後の工程は圧力センサ301の場合と同様であるが、絶縁体層320を形成する際あるいはその前に、密閉空間353を形成するために、y方向における両端において半導体膜332と板状部材312との間を絶縁物によって封止する工程を行う。
このような圧力センサ304では、圧力センサ301を製造する場合と比較して、エッチング作業の工程数を減らすことが可能であり、製造工程の簡略化をさらに図ることが可能である。
なお、半導体材料310Bを半導体材料310Aと同様に扱い、圧力センサ301,303と同様の圧力センサを製造することも可能である。この場合、半導体構造体310を形成する工程において、半導体材料310AをF含有ガスによりエッチングする工程を、半導体材料310BをHF含有ガスによりエッチングする工程に置き換えればよい。
本発明に係る圧力センサは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る圧力センサの各部の具体的な構成およびその製造方法の各工程の具体的な方法は、種々に設計変更自在である。たとえば、圧力センサ303,304は、圧力センサ301を基礎とする構成であるが、圧力センサ302を基礎とする構成であっても構わない。
さらに、圧力センサ301では、基準値を出力するために半導体膜331を設けているが、基準値と同じ値を出力可能なコンデンサを圧力センサが設置される回路内に設置してもよい。この場合、圧力センサ301の図126中左半分を省略可能である。