JP5593551B2 - 耐久性及び耐熱性に優れた偏光素子、偏光板、画像表示装置及び偏光素子の製造方法 - Google Patents

耐久性及び耐熱性に優れた偏光素子、偏光板、画像表示装置及び偏光素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は耐久性及び耐熱性に優れた偏光素子、偏光板、画像表示装置及び偏光素子の製造方法に関し、より詳細には偏光素子中の亜鉛、ホウ素及びカリウム含量が特定の範囲に制御された耐久性及び耐熱性に優れた偏光素子、偏光板、画像表示装置及び偏光素子の製造方法に関する。
偏光板は液晶表示装置、有機発光(EL)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)などの画像表示装置に用いられるもので、色再現性に優れた画像を提供するために高い透過率及び偏光度を備え持つことが求められる。従来では、該偏光板はポリビニルアルコール系フィルムを二色性ヨウ素又は二色性染料等を用いて染色、架橋した後、一軸延伸等の方法により配向して製造された。
最近、偏光板を用いる画像表示装置はテレビ、モニター、自動車計器盤、コンピューター、ノート型コンピューター、PDA、電話機、オーディオ/ビデオ機器、各種事務用及び工業用機械の表示板に用いられている。このように画像表示装置の使用領域が拡大されるにつれ、高温、高湿等の苛酷な条件で長期間使用する場合が多くなった。従って、このような苛酷な環境で偏光板本来の機能をうまく発揮できるように優れた耐久性及び耐熱性が必要となった。
従来偏光板の耐久性は、ポリビニルアルコール系フィルム自体を改質するか、及び/又は昇華性のヨウ素系偏光素子の代わりに非昇華性二色性染料を使用する方法で改善されて来た。しかし、従来ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とする)系フィルム自体を改質する方法では、ヨウ素又は二色性染料が高分子マトリックスに十分に吸着されないため、偏光度が低くなったり、マトリックスの改質により透過度が落ちるという問題が生じ得る。非昇華性染料を用いる方法はPVA系フィルムを延伸する際、配向調節が難しくて十分な偏光度を得ることができないという問題がある。
本発明は優れた耐久性及び耐熱性を示す偏光素子を提供するものである。
本発明は優れた耐久性及び耐熱性を示す偏光素子を含む偏光板及び画像表示装置を提供するものである。
本発明は優れた耐久性及び耐熱性を示す偏光素子の製造方法を提供するものである。
本発明の一見地によると、偏光素子の重量を基準にして偏光素子中の亜鉛含量(重量%)xホウ素含量(重量%)/カリウム含量(重量%)の値は0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%である偏光素子が提供される。
本発明の他の見地によると、本発明の一具現による偏光素子を含む偏光板が提供される。
本発明のさらに他の見地によると、本発明の一具現による偏光素子又は偏光板を含む画像表示装置が提供される。
また、本発明のさらに他の見地によると、少なくとも染色段階、架橋段階、延伸段階及び水洗段階を含む偏光素子の製造方法において、上記染色段階はヨウ素濃度が0.05〜0.2重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.2〜1.5重量%で、温度が20〜40℃である染色水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを150秒〜300秒間浸漬することで行い、上記架橋段階はホウ素濃度が0.36〜0.83重量%、ヨウ化カリウムの濃度が4〜7重量%で、温度が15〜60℃である架橋水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを30秒乃至120秒間浸漬することで行い、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛で構成されるグループから選択された少なくとも一種の亜鉛塩が0.4〜7.0重量%の濃度で上記染色水溶液、架橋水溶液又は別途の亜鉛塩処理水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれ、上記水洗段階は25〜30℃の純水にポリビニルアルコール系フィルムを10〜30秒間浸漬することで行う偏光素子の製造方法が提供される。
偏光素子中の亜鉛含量(重量%)xホウ素含量(重量%)/カリウム含量(重量%)の値を0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%に制御することで、偏光素子、これを含む偏光板及び画像表示装置は優れた初期直交透過度及び色相を示し、該特性が保持される上、高温条件で放置されても、初期の優れた透過度、偏光度及び色相が保持される優れた耐久性及び耐熱性を示す。
比較例1、実施例1、9及び10の偏光素子の厚さによる(Zn+P)B値を示すグラフである。
本発明者らは、耐久性及び耐熱性に優れた偏光素子及び偏光板に対する研究結果、偏光素子中の亜鉛、ホウ素、カリウムの特定の含量関係が耐熱性及び耐久性と非常に密接な相関関係にあり、偏光素子の耐久性及び耐熱性を向上させるために偏光素子に含有されている亜鉛の含量そのものよりは亜鉛、ホウ素及びカリウムの特定の含量関係を制御することで、偏光素子の耐久性及び耐熱性が著しく向上することを見出した。
偏光素子のうち架橋剤として用いられるホウ酸、ホウ酸塩又はホウ砂は水溶液中でヒドロキシ基(OH)を発生させ、これによりポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)系樹脂が架橋される。また、ヨウ素がI 、I で存在するポリヨウ素はPVAとホウ素供与物質による架橋網状構造の間に挿入される。従って、架橋剤であるホウ素供与物質の含量が多くなるほど、PVA−ポリヨウ素の間の網状構造がより堅固となり、延伸後、PVA及びポリヨウ素の変形、そしてポリヨウ素の分解(degradation)及び/又は昇華が抑制されて耐熱性が向上するものと思われる。しかし、ホウ素(B)の含量が無限大に高くなるとしても耐熱特性が無限大に優れるようになることではなく、ホウ素を使用しすぎると、初期直交光学物性が脆弱となる副作用が発生する。また、ホウ素の含量が少なすぎると、初期直交特性だけではなく耐熱性も脆弱となる。従って、この点を考慮し、本発明は偏光素子中のホウ素含量を特定の範囲に調節することを特徴とする。
また、偏光素子内のカリウム(K)はKI(ニュートラルグレー(neutral gray)を作るために添加されるもの)に起因するもので、カリウム(K)含量が少なすぎると、初期色相、偏光度などの物性及び耐熱性が脆弱となるため、画像表示装置に使用できなくなる。また、カリウムが多量含有されても初期色相、偏光度などの物性が脆弱となり、耐熱特性も脆弱となる。従って、本発明の一具現において、偏光素子中のカリウム含量は特定の範囲に調節することを特徴とする。
また、亜鉛が添加されるため、偏光素子の耐久性及び耐熱性は改善されるが、亜鉛が適量を超えて添加されると、偏光素子の初期光学物性が脆弱となる。従って、偏光素子中の亜鉛含量の制御は偏光素子の初期光学物性と耐久性及び耐熱性制御の側面から適量に制御されなければならない。
このように、偏光素子中の亜鉛、ホウ素及びカリウム含量はそれぞれ偏光素子中の初期光学物性、高温条件における耐熱性及び耐久性に係るもので、偏光素子中のこれら成分含量が特定の関係式を満たすように制御することで、偏光素子が初期色相及び偏光度等の優れた初期光学物性を示すだけでなく、高温条件下で放置しても初期の優れた光学物性の変化が最小化される優れた耐久性及び耐熱性を示す。
上記のような研究結果に従って、本発明の一具現において、偏光素子の重量を基準にして偏光素子中の亜鉛含量(重量%)xホウ素含量(重量%)/カリウム含量(重量%)(以下、「ZnB/K」という)の値は0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%である偏光素子が提供される。
本発明において偏光素子の基材であるポリビニルアルコール系フィルムの材料としてはポリビニルアルコール又はその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコール誘導体は、この技術分野で一般的に知られている如何なるものも用いることができる。これに限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体、不飽和スルホン酸又はその誘導体、エチレン、プロピレン等のオレフィン等と共重合した変性ポリビニルアルコール等を用いることができる。
本発明の一具現による偏光素子は、偏光素子の重量を基準にして偏光素子中のZnB/K値は0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%に調節される。即ち、偏光素子における亜鉛、ホウ素及びカリウムの特定の含量関係は偏光素子の初期光学特性、耐熱性及び耐久性と非常に密接な相関関係を有するもので、偏光素子の重量を基準にして偏光素子中のZnB/K値が0.1〜4.0であることを特徴とする。
偏光素子中のZnB/K値が0.1未満では耐熱性の改善効果が微々たるものであり、4.0を越えると、初期色相及び偏光度が保持されない。0.1〜4.0範囲でZnB/K値が大きいほど、高温条件における透過度、偏光度及び色相変化の少ない優れた耐久性及び耐熱性を有する。
また、偏光素子の初期偏光度及び色相が保持されるように偏光素子の総重量を基準にした偏光素子中のホウ素含量は1.0〜5.0重量%、好ましくは2.0〜5.0重量%に、カリウム含量は0.3〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.0重量%に調節される。偏光素子中のホウ素含量が上記範囲である偏光素子を含む偏光板は優れた初期直交色相及び偏光度を示す。即ち、ホウ素含量が1.0重量%未満であれば、初期直交特性だけではなく、耐熱性が脆弱となり、5.0重量%を超えると、初期直交光学物性が脆弱となる。0.3重量%〜2.0重量%のカリウム含量において、優れながら安定した初期色相、偏光度及び耐熱性を示し、カリウム含量が0.3重量%未満又は2.0重量%を超えると、初期色相、偏光度及び耐熱性が脆弱となる。
上記本発明による偏光素子中のZnB/K値、亜鉛、ホウ素及びカリウムの含量は、ICP法により測定されたものである。即ち、これら含量はICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometer)を用いた誘導結合プラズマ分光法(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)により測定される。
さらに、本発明に他の具現において、偏光素子の表面から中心に深さ(D)1nm≦D≦60nm(深さが1nm以上60nm以下)の各地点において、[亜鉛含量(重量%)+リン含量(重量%)]xホウ素含量(重量%)(以下、「[Zn+P]B」という)の値が0.2〜14.0、より好ましくは1.5〜14.0である偏光素子が提供される。
偏光素子中のZnB/K値だけではなく、偏光素子の表面から中心に深さ(D)1nm≦D≦60nmに該当する各地点において、[Zn+P]B値が0.2〜14.0である偏光素子はさらに改善された耐久性及び耐熱性を有する。Pがさらに含有される場合、[Zn+P]B値は耐久性及び耐熱性の更なる改善という側面で0.2以上であることが好ましく、優れた初期光学物性及び色相の面から14.0以下であることは好ましくない。
偏光素子の表面から中心に深さ(D)が1nm≦D≦60nmの各地点において、[Zn+P]B値はESCA法により測定されたものである。光電子分光器(XPS又はESCA)ESCALAB 250(Vg))を用いてESCA法により偏光素子中の[Zn+P]B値、亜鉛、リン及びホウ素の含量を得る。具体的には、[Zn+P]B値は重量で計算したが、実際にはESCA法により偏光素子の各地点で亜鉛、リン及びホウ素の原子%(at%)を測定し、これから各元素成分の重量に換算して計算した値である。
一方、本発明の一具現による偏光素子は、上記のZnB/K値、[Zn+P]B値(但し、偏光素子の深さ(D)は1nm≦D≦60nm)、ホウ素含量及びカリウム含量の範囲を満たすように次のような方法で製造されることができる。
偏光素子は一般的に延伸されないポリビニルアルコール(PVA)系フィルムを染色、架橋、延伸、水洗及び乾燥して製造する。但し、染色、架橋、延伸段階は個別的に、又は同時に行われることができ、各段階が行われる順序も可変的で、反応段階の順序は固定されたものではない。
染色段階はポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素又は染料を染色する工程であって、二色性を有するヨウ素分子又は染料をポリビニルアルコール系フィルムに染着させる段階である。
上記ヨウ素分子又は染料分子は、偏光板の延伸方向に振動する光は吸収し、延伸方向に対して垂直方向に振動する光は透過させることで、特定の振動方向を有する偏光が得られるようにする。
一般的に染色はポリビニルアルコール系フィルムを染色溶液に含浸させることで行う。本発明による偏光素子を製造するにおいて、染色段階はヨウ素濃度が0.05〜0.2重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.2〜1.5重量%、温度が20〜40℃、好ましくは20〜35℃の染色水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを150秒〜300秒間浸漬することで行う。
上記染色段階における染色水溶液のヨウ素濃度が0.05重量%未満であれば、偏光素子の透過度が高くなりすぎるため、好ましくない。また、0.2重量%を超えると、偏光素子の透過度が低くなりすぎるため、好ましくない。また、ヨウ化カリウム濃度が0.2重量%未満であれば、ヨウ素の溶解補助剤として用いられるヨウ化カリウムの量が不十分でヨウ素が適切に溶解されず、1.5重量%を超えると、ヨウ化カリウム自体の水に対する溶解度の問題と、これにより異物が発生し得るため、好ましくない。染色水溶液の温度が20℃未満であれば、ヨウ素及びヨウ化カリウムの水に対する溶解度が脆弱となり、PVA系フィルムに対する染色(染着)速度が遅くなるため、好ましくない、また、40℃を超えると、高温によりヨウ素が昇華することがあるため、好ましくない。一方、上記染色水溶液に対するポリビニルアルコール系フィルムが十分染着されるように150秒以上浸漬することが好ましい。また、偏光素子の透過度の側面から300秒以下浸漬することが好ましい。
架橋段階ではホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂などのホウ素供与物質によりヨウ素分子又は染料分子がPVCフィルムの高分子マトリックスに吸着される。ヨウ素分子や染料分子が高分子マトリックスにうまく吸着されないと、偏光度が低下し偏光板が本来の役割を行うことができない。
架橋はポリビニルアルコール系フィルムをホウ素成分供与物質を含む架橋水溶液に浸積させることで行う浸積法が一般的に用いられるが、PVA系フィルムに架橋水溶液を噴射又は塗布して行うこともできる。
本発明による偏光素子を製造するにおいて、上記架橋段階はホウ素濃度が0.36〜0.83重量%、ヨウ化カリウムの濃度が4〜7重量%で、温度が15〜60℃の架橋水溶液にPVA系フィルムを30秒〜120秒間浸漬することで行う。
上記架橋段階における架橋水溶液のホウ素濃度が0.36重量%未満であれば、PVA系フィルムを十分架橋させることができず、初期光学物性及び耐久性が脆弱となるため、好ましくない。また、0.83重量%を超えると、水に対する溶解度が低くなるため、好ましくない。これに限定されないが、例えば、ホウ素成分供与物質としてはホウ酸、ホウ酸塩及びホウ砂で構成されるグループから選択された少なくとも一種以上を用いることができる。
また、上記架橋段階では架橋水溶液にヨウ化カリウムなどを添加することで、上記架橋水溶液にヨウ素イオンを含ませることもできる。このようにヨウ素イオンが含有された架橋水溶液を用いると、少ない着色を有する偏光子、即ち、可視光の全波長領域に対し、略一定の吸光度を提供するニュートラルグレー偏光素子を得ることができる。このような適切なニュートラルグレーが具現できるように架橋水溶液中のヨウ化カリウムの濃度が4重量%以上であることが好ましい。一方、ヨウ化カリウムの濃度が7重量%を超えると、ヨウ化カリウムにより過量のIが提供され、過量のIにより高温で下記反応式1の正反応が加速化され、高温で放置した後の色相変化及び偏光度の低下が引き起こされる。
[反応式1]
+I →I+I +I
架橋水溶液の温度が15℃未満ではホウ素成分供与物質が十分に溶解されず、60℃を超えると、高温によりフィルムにホウ素成分供与物質が流入されて架橋される反応よりもフィルムからホウ素成分供与物質が溶出される反応が多く行われるため、適切な架橋反応が起きない。
一方、上記架橋水溶液に対するポリビニルアルコール系フィルム又は染色されたポリビニルアルコール系フィルムの浸漬時間が30秒未満ではPVA系フィルムの深さ方向にホウ素成分供与物質が十分浸透できないため、適切に架橋されず、120秒を超えると、PVA系フィルムへの過度なホウ素成分供与物質の流入により架橋が過度に行われ、偏光素子の初期光学物性が脆弱となる。
延伸段階とはフィルムの高分子が一定の方向に配向されるようにフィルムを一軸に引き伸ばすことである。延伸によりヨウ素分子又は染料分子が延伸方向に並んで配列されてヨウ素分子(I)又は染料分子が二色性を示すため、延伸方向に振動する光は吸収し、延伸方向に対して垂直方向に振動する光は透過する機能を有するようになる。
延伸方法には湿式延伸法と乾式延伸法があり、乾式延伸法はロ−ル間(inter−roll)延伸方法、加熱ロール(heating roll)延伸方法、圧縮延伸方法、テンター(tenter)延伸方法などに分かれ、湿式延伸方法はテンター延伸方法、ロ−ル間延伸方法などに分かれる。
本発明において、延伸方法は特に制限されず、この技術分野で知られている如何なる延伸方法を用いることができる。また、湿式延伸法と乾式延伸法を全て用いることができ、必要に応じて、これらを組み合わせて用いることもできる。延伸は4倍〜6倍の延伸比率で行うことが好ましい。延伸比率が4倍未満ではPVA系フィルムの延伸が不十分で、6倍を超えると、過度な延伸によりPVA系フィルムが破断されたり、PVA分子の配向がずれ、結果的にヨウ素イオン種の配向が脆弱となって初期光学物性が悪くなる。
上記延伸工程は上記染色工程又は架橋工程と同時に、又は別途に行われることができる。また、湿式延伸を別途に行う場合、延伸浴の温度は35℃〜60℃、好ましくは40℃〜60℃であることができる。延伸浴の温度はPVA系フィルムの円滑な延伸、延伸工程の効率、延伸中のフィルム破断防止などの側面から35℃〜60℃にすることが好ましい。延伸工程が染色工程と同時に行われる場合、上記延伸工程は染色水溶液内で行われることが好ましい。延伸工程が架橋工程と同時に行われる場合は架橋水溶液内で行われることが好ましい。また、染色工程、架橋工程、後述する亜鉛塩処理工程又は後述する任意のリン酸化合物処理工程と延伸工程が同時に行われる場合、水溶液の温度は同時に行われる工程温度と重複するさらに狭い温度条件で行うことが好ましい。
例えば、架橋工程と湿式延伸工程が同時に行われる場合は、延伸工程の延伸浴の水溶液温度で架橋及び延伸を行うことができる。一方、延伸が他の工程とともに行われる場合に、様々な工程条件のうち、特に円滑に行いたい工程があるときには該当工程の条件に従ってもよい。延伸時間は特に限定されず、染色、架橋、別途の亜鉛塩処理、又は別途のリン酸化合物処理工程とともに行われる場合、上記染色、架橋、別途の亜鉛塩処理、又は別途のリン酸化合物処理工程の時間範囲で行うこともできる。湿式延伸工程を別途に行う場合は、特に限定されないが、PVA系フィルムの配向性、偏光素子の光学的特性及び工程効率などを考慮し、60秒〜120秒の範囲で延伸することができる。
水洗段階は25〜30℃のイオン交換水、蒸留水等の純水に染色、架橋及び延伸されたポリビニルアルコール系フィルムを10〜30秒間浸漬することで行う。純水の温度が25℃未満では異物の溶解及び除去が微々たるものであるため、好ましくない。また、30℃を超えると、PVA系フィルムからのホウ素、カリウム、亜鉛、リンなどが溶出しすぎるため、好ましくない。純水に対するポリビニルアルコール系フィルムの浸漬時間が10秒未満では水洗効果が微々たるもので、30秒を超えると、PVA系フィルムからのホウ素、カリウム、亜鉛、リンなどが溶出しすぎるため、好ましくない。
水洗は染色、架橋及び延伸段階の後、偏光素子の表面に残存している異物を除去するために行われる。水洗段階では偏光素子の表面に残存する異物が除去されるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルム内に含まれているホウ酸、ヨウ素、ヨウ化カリウム、亜鉛塩及びリン成分が水洗溶液に溶出されてポリビニルアルコール系フィルム(偏光素子)から一部除去される。水洗溶液に対する偏光素子の浸漬時間が長く、水洗溶液の温度が高いほど偏光素子から溶出されるホウ酸、ヨウ素、ヨウ化カリウム、亜鉛塩及びリンの含量が増加し、結果的に、最終偏光素子内に残留する含量が減少する。従って、水洗は染色段階及び架橋段階で用いられたヨウ素、ヨウ化カリウム、ホウ酸化合物、亜鉛塩及びリン塩などの含量を考慮し、偏光素子中のZnB/K値が0.1〜4.0、[Zn+P]B値(1nm≦D1≦60nm)が0.2〜14、ホウ素含量が1.0〜5.0重量%、カリウム含量が0.3〜2.0重量%になるよう25〜30℃温度の純水にPVCフィルムを10〜30秒浸漬することが好ましい。水洗段階はその手順が変わると、偏光素子内の物質含量の制御が変わるため、染色、架橋及び延伸工程後の乾燥直前に行うことが好ましい。
本発明による偏光素子は亜鉛成分も含むもので、上記染色段階、架橋段階、延伸段階及び別途の亜鉛塩処理段階のうち少なくとも1つ以上の段階で亜鉛塩を偏光素子中のZnB/K値が0.1〜4.0になるよう添加することができる。亜鉛塩は上記染色段階、架橋段階、湿式延伸段階及び別途の亜鉛塩処理段階のうち何れの段階で添加されてもよく、複数の段階で添加されることがより好ましい。
亜鉛塩は各段階で予め作られた水溶液(例えば、染色段階の染色水溶液、架橋段階の架橋水溶液、湿式延伸浴)に添加されるか、又は各段階の水溶液製造時に添加されてもよい。また、上記亜鉛塩はヨウ素、ヨウ化カリウム及び/又はホウ素成分供与物質とともに添加されてもよい。
水溶液における亜鉛塩は0.4重量%〜7.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%、より好ましくは0.5〜3.0重量%であることができる。亜鉛塩の含量が0.4重量%未満では耐久性の向上効果が微々たるものであり、7重量%を超えると、溶解度の問題などにより偏光素子の表面に異物が形成され得るため、好ましくない。亜鉛塩が2以上の工程に添加される場合も、各工程の水溶液の0.4重量%〜7重量%添加されることができる。
上記亜鉛塩処理を染色、架橋又は湿式延伸工程とともに行う場合には、染色、架橋又は湿式延伸工程の条件(水溶液温度及び浸漬時間)で行うことができる。
一方、亜鉛塩を別途の工程で処理する場合、別途の亜鉛塩処理工程は水洗段階前の如何なる段階で行うことができるが、水洗段階の直前段階で行うことが最も効果的である。別途の亜鉛塩処理工程を行う場合、特に、水洗段階の直前段階で亜鉛塩処理段階を別途の工程で行う場合はこれに限定されないが、例えば、亜鉛塩の溶解度、偏光素子に対する亜鉛塩の浸透性、工程効率及び偏光素子の光学的特性を考慮し、15℃〜40℃の亜鉛塩水溶液にPVA系フィルムを20〜60秒間浸漬して行うことができる。上記亜鉛塩としては塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛などを単独で、又は2種以上をともに用いることができる。
本発明による偏光素子は、必要に応じて、任意にリン成分を含むことができる。リン成分は上記染色段階、架橋段階、延伸段階及び別途のリン酸化合物処理段階のうち少なくとも1つ以上の段階でリン酸化合物を偏光素子中の[Zn+P]B値(但し、偏光素子の深さ(D)は1nm≦D≦60nm)が0.2〜14.0になるよう添加することができる。リン酸化合物は上記染色段階、架橋段階、延伸段階及び別途のリン酸化合物処理段階のうち何れの段階で添加されてもよく、複数の段階で添加されることがより好ましい。
リン酸化合物は各段階で予め作られた水溶液(例えば、染色段階のヨウ素水溶液、架橋段階の架橋水溶液)に添加されるか、又は各段階の水溶液の製造時に添加されることができる。また、上記リン酸化合物はヨウ素、ヨウ化カリウム及び/又はホウ素成分供与物質とともに添加されることもできる。
水溶液にリン酸化合物がさらに添加される場合、リン酸化合物は10重量%以下、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜3.0重量%の範囲で添加することができる。リン酸化合物は、必要に応じて、さらに添加されるものであるため、水溶液中の下限濃度に対しては特に規定しないが、更なる耐久性及び耐熱性の改善効果が十分に発現できるようリン酸化合物の含量は、少なくとも0.2重量%であることが好ましく、水に対する溶解度及び初期直交光学物性を考慮し、10重量%以下であることが好ましい。リン酸化合物が2以上の工程で添加される場合にも、各工程の水溶液における上記のリン酸化合物の濃度範囲と同様に、10重量%以下添加されることができる。
上記リン酸化合物を染色、架橋及び湿式延伸工程に添加し、リン酸化合物処理工程をこれらの工程とともに行う場合は、染色、架橋又は湿式延伸の工程の条件(水溶液温度及び浸漬時間)に従って行うことができる。
また、リン酸化合物を別途の工程で処理する場合、別途のリン酸化合物処理工程は水洗段階前の如何なる段階で行ってもよいが、水洗段階の直前段階で行うことが最も効果的である。別途のリン酸化合物処理を行う場合、特に、水洗段階の直前段階でリン酸化合物処理を別途の工程で行う場合は、これに限定されないが、例えば、リン酸化合物の溶解度、偏光素子に対するリン酸化合物の浸透性、工程効率及び偏光素子の光学的特性を考慮し、15℃〜40℃のリン酸化合物水溶液にPVA系フィルムを20〜60秒間浸漬することで行うことができる。
上記リン酸化合物としてはリン酸、第2リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム及び第1リン酸アンモニウムで構成されるグループから選択された少なくとも一種を、単独で、又は混合して使用することができる。
但し、亜鉛塩とリン酸化合物は同じ工程に同時に添加することができない。即ち、染色、架橋又は延伸段階に亜鉛塩とリン酸化合物がそれぞれ添加されることができるが、同時に同じ工程に添加することはできない。例えば、亜鉛塩とリン酸化合物を両方とも染色段階の染色水溶液に添加することができない。これは溶液中で亜鉛塩とリン酸化合物が反応して水に不溶のリン酸亜鉛(zinc phosphate)を生成するためである。
上記の本発明による偏光素子の製造方法において、偏光素子中のZnB/K値が0.1〜4.0、ホウ素含量が1.0〜5.0重量%、カリウム含量が0.3〜2.0重量%になるよう、また[Zn+P]B値(但し、偏光素子の深さ(D)は1nm≦D≦60nm)が0.2〜14.0になるよう上記染色段階、架橋段階、延伸段階及び別途の亜鉛塩処理段階又は別途のリン酸化合物処理段階のうち少なくとも1つ以上の段階でヨウ素成分の含量 、ヨウ化カリウムの含量 、ホウ素成分供与物質の含量 、亜鉛塩の含量 、任意のリン酸化合物の含量、染色水溶液の温度 、架橋水溶液の温度、これら水溶液に対するポリビニルアルコール系フィルムの浸漬時間、水洗温度及び水洗時間などを上記範囲で制御することができる。
PVA系フィルムの染色、架橋、延伸及び水洗段階が完了すると、PVA系フィルムをオーブンに入れて乾燥させ、偏光素子を得る。乾燥段階は一般的に40〜100℃の温度で、10〜500秒間行う。乾燥温度が40℃未満では、PVA系フィルム内に残留する水分が十分に乾燥されないため、フィルムにしわが発生し、偏光素子の色相がニュートラルグレー(neutral gray)を帯びず、青色を帯びるようになるため、初期直交物性が脆弱となる。具体的には、上記反応式1のような反応を通じて各ヨウ素イオン種の比率が適切に調節され、ニュートラルグレーを帯びるようになる。一方、このような反応はPVA系フィルム乾燥過程で供給される熱によりさらに加速化され、このような原理による色相調節以前段階において、偏光フィルムは青色に近い。従って、乾燥段階の温度が低いと、上記反応式のような反応が円滑に起きないため、偏光素子の色相は青色(bluish)を帯び、これにより、初期直交物性が脆弱となる。乾燥温度が100℃を超えると、過度な乾燥によりフィルムが割れやすく、偏光素子の初期色相がニュートラルグレーからはずれ赤色を帯びるようになる。これにより初期光学物性が脆弱となる。乾燥時間が10秒未満では乾燥が不十分であり、500秒を超えると、過度な乾燥によりフィルムが割れやすく、偏光素子の初期色相がニュートラルグレーからはずれ赤色を帯びるようになる。これにより初期光学物性が脆弱となる。
上記方法により製造された偏光素子の一面又は両面に接着剤を利用して保護フィルムを積層させることで偏光板が製造される。保護フィルムは工程を行う際、偏光板の外側面の露出を防止するためのもので、汚染物質が流入されることを防ぎ、偏光素子及び偏光板の表面を保護する役割をする。
保護フィルムの樹脂フィルム基材としては、フィルム基材として製造することが容易で、且つPVA系フィルム(偏光素子)と接着性がよく、光学的に透明なものを好ましくも用いることができる。これに限定されないが、例えば、セルロースエステルフィルム、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチルレンナフタレートフィルム)、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)、セロハン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン重合体フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミド系フィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリアクリルフィルム基材などを挙げることができる。
特に、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)、セルロースアセテートプロピオネートフィルムなどのセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム(PCフィルム)、ポリスチレンフィルム、ポリアリレートフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム及びポリスルホンフィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がないという点などから好ましい。トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)及びポリカーボネートフィルム(PCフィルム)が除幕性がよく、加工性に優れるため、より好ましく用いられ、TACフィルムが最も好ましく用いられる。
上記偏光板保護フィルムは保護フィルムが接着されるPVA系フィルムに対する接着力を向上させるために、表面改質処理を施すことができる。表面処理の具体的例としては、コロナ放電処理、グロー(glow)放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理及び紫外線照射処理などがある。また、アンダーコート層を提供することも好ましく用いられる。中でも、アルカリ溶液を利用した表面改質処理は疎水性保護フィルムに−OHグループを導入して保護フィルムの表面を新水性に改質することで保護フィルムの偏光フィルム(偏光素子)に対する接着力を増加させる。
接着剤としては一般的に水系接着剤が使用される。水系接着剤としては、この技術分野で一般的に用いられる如何なる水系接着剤も使用することができ、これに限定されないが、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系、ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示することができる。この中でもポリビニルアルコール系接着剤が好ましく用いられる。水系接着剤は架橋剤を含むことができる。上記接着剤は通常水溶液として用いられる。接着剤水溶液の濃度は特に制限されないが、塗布性や放置安全性などを考慮すると、一般的に0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。また、上記接着剤にはさらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤などを配合することもできる。
上記のように偏光素子、又は偏光素子の一面又は両面に保護フィルムが接着された偏光板は、これに制限されないが、例えば、液晶表示装置、有機発光(EL)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)などに用いることができる。
以下、実施例を通じて本発明についてより詳細に説明する。但し、下記の実施例に本発明が限定されるものではない。
比較例1
ヨウ素を0.1重量%、ヨウ化カリウムを1重量%含む水溶液が入っている染着槽に厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを30℃で5分間浸漬させて染色した(A.染色段階)。染色されたポリビニルアルコールフィルムを50℃のヨウ化カリウムを5重量%、ホウ素を0.64重量%含む架橋水溶液に120秒間浸漬させて5倍延伸処理した(B.架橋及び延伸段階)。上記過程により得られたPVAフィルム(偏光素子)をオーブンに入れ、80℃で5分間乾燥させた。PVAフィルム(偏光素子)が乾燥すると、上記偏光素子の両面に厚さ75μmのTACフィルムをポリビニルアルコール接着剤で貼り合せ、80℃で5分間乾燥して偏光板を製造した。
比較例2
架橋及び延伸段階(B)でホウ素の濃度を0.22重量%に調整し、硝酸亜鉛を2.5重量%添加することを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
比較例3
架橋及び延伸段階(B)でヨウ化カリウム濃度を1.5重量%に調整し、硝酸亜鉛を2.5重量%添加することを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
比較例4
架橋及び延伸段階(B)で硝酸亜鉛を2.5重量%添加してから、25℃の蒸留水に100秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
比較例5
染色段階(A)でヨウ素濃度は0.03重量%、ヨウ化カリウム濃度は7重量%、架橋及び延伸段階(B)でホウ素濃度は0.92重量%、ヨウ化カリウム濃度は10重量%にそれぞれ調整し、塩化亜鉛を0.16重量%添加し、水洗段階(C)では40℃の蒸留水に60秒間浸漬したことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
比較例6
架橋及び延伸段階(B)でヨウ化カリウム濃度を0.01重量%に調整し、塩化亜鉛を1.0重量%添加したことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
比較例7
染色段階(A)でヨウ素濃度を0.3重量%、架橋及び延伸段階(B)でホウ素濃度を2.5重量%にそれぞれ調整し、塩化亜鉛を2.5重量%添加し、水洗段階(C)は25℃の蒸留水に20秒間浸漬したことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例1
架橋及び延伸段階(B)で硝酸亜鉛を2.5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例2
架橋及び延伸段階(B)で硝酸亜鉛を5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例3
架橋及び延伸段階(B)でヨウ化カリウム濃度を7.0重量%に調整し、硝酸亜鉛を5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例4
架橋及び延伸段階(B)でホウ素濃度を0.46重量%に調節し、硫酸亜鉛を2.5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例5
架橋及び延伸段階(B)でホウ素濃度を0.46重量%、ヨウ化カリウム濃度を7.0重量%にそれぞれ調節し、硫酸亜鉛を2.5重量%添加してから、25℃の純水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例6
染色段階(A)で塩化亜鉛を3重量%添加し、架橋及び延伸段階(B)でヨウ化カリウム濃度を7.0重量%、ホウ素濃度を0.46重量%にそれぞれ調節し、水洗段階(C)で25℃の蒸留水に20秒間浸漬したことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例7
架橋及び延伸段階(B)で硫酸亜鉛を5重量%添加してから、25℃の蒸留水に10秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例8
架橋及び延伸段階(B)で硫酸亜鉛を5重量%添加してから、25℃の蒸留水に30秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例9
染色段階(A)で塩化亜鉛を3重量%添加し、架橋及び延伸段階(B)で第1リン酸アンモニウムを0.5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
実施例10
染色段階(A)で塩化亜鉛を3重量%添加し、架橋及び延伸段階(B)で第1リン酸アンモニウムを1.5重量%添加してから、25℃の蒸留水に20秒間浸漬する水洗工程(C)を施すことを除き、上記比較例1と同じ方法で偏光素子及び偏光板を製造した。
下記表2に比較例1〜7及び実施例1〜10のA.染色段階及びB.架橋及び延伸段階の処理液のうちリン酸化合物の種類、亜鉛塩、リン酸化合物、I、KI及びホウ素の含量、C:水洗段階の浸漬時間を示した。
[試験例:耐熱性評価]
上記比較例1〜7及び実施例1〜10の方法で製造された偏光板を50mmx50mmのサイズに切断し、これをアクリル粘着剤でガラスに貼り合わせて試片を用意した。その後、各偏光板の初期光学物性、即ち、単体透過度(Ts)、直交透過度(Tc)、単体色相(a、b)、直交色相(x、y)を測定した。その後、偏光板を100℃のオーブンに500時間放置した後、上記光学物性を再び測定し、耐熱前/後の光学物性を比べてBZn/K値による△Lab相対変化量、直交色相x相対変化量及びTc相対変化量をそれぞれ表3に示した。
上記光学物性はN&K分析機(analyzer)(N&K Technology Inc.)で測定した。単体光特性であるL、a、bは偏光板一枚で測定し、直交透過度(Tc)と直交色相(x、y)は一枚の偏光板は延伸された方向に、残り一枚は延伸方向の直交方向に裁断し、裁断した偏光板二枚を吸収軸が90゜になるよう直交させた後、透過度を測定した。
耐熱変化量は下記のように計算した。
△Lab=[(L 500−L +(a 500−a +(b 500−b 0.5
(式中、L、a、bは単体状態の色相値で、L、a、bはColor Space色座標(defined by the CIE in 1976)の色相のL値、a値、b値である。これはN&K分析機を用いて一枚の偏光板試片で測定した。L 、a 及びb は偏光板の初期単体状態の色相値であり、L 500、a 500、b 500は100℃のオーブンで、500時間放置した後測定した単体状態の色相値である。)
Tc(%)=100(Tc500−Tc)/Tc
(式中、Tcは各偏光板の初期直交透過度であり、Tc500は100℃のオーブンで、500時間放置した後測定した直交透過度であり、直交透過度(Tc)は同じ単体透過度(Ts.)値で測定した。)
x(%)=100(x500−x)/x
(式中、xは偏光板二枚の直交状態の色相値である。xはxyz Chromaticity coordinatesの色相値を示し、N&K分析機により二枚の偏光素子の直交色相値から計算される。xは偏光板の初期直交状態の色相値であり、x500は100℃のオーブンで、500時間放置した後測定した偏光板の直交状態の色相値である。)
△Lab相対変化率=実施例△Lab/比較例1△Lab
Tc相対変化率=実施例Tc(%)/比較例1Tc(%)
x相対変化率=実施例x(%)/比較例1x(%)
[無機含量分析]
比較例1〜7及び実施例1〜10の偏光素子内の残存無機含量(亜鉛、ホウ素、カリウムの含量)をICP−AES法(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectroscophy)で分析して求め、それから偏光素子中のZnB/K値を計算して下記表2に示した。具体的には測定する試料(偏光素子)0.1gを容器に取り、これに蒸留水2mlと濃い硝酸3mlを添加して容器に蓋をし、試料を溶解させた。その後、試料が完全に溶解すると、超純水50mlを添加して希釈した。次いで、上記希釈した溶液にさらに10倍希釈をしてからICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectroscometer)で分析した。ICP−AES(ICP 5300DV、Perkinelemer)は次のような条件で運転した。順方向電力(Forward Power)1300W;トーチ高さ(Torch Height)15mm;プラズマガスの流れ15.00L/min;試料ガスの流れ0.8L/min;補助ガスの流れ0.20L/min及びポンプの速度1.5ml/min。
比較例1、実施例1、9及び10の偏光素子内の残存無機含量はESCA(Electron Spectroscopy of Chemical Analysis)法で分析して[Zn+P]B 値を図1に示した。ESCA(Electron Spectroscopy of Chemical Analysis)分析法は光電子分光器(XPS又はESCA、モデル名ESCALAB250(VG))を使用し、下記表1のように段階別に偏光素子の表面をエッチングして偏光素子の各地点で亜鉛、リン及びホウ素の原子%(at%)を測定し、それから各元素成分の重量を計算して[Zn+P]B値を求めた。一方、ESCA分析条件は次のようにした。
<ESCA分析条件>
(1)全体ESCAシステム条件
ベースチャンバ圧力:2.5x10−10mbar
X−レイ供給源:monochromatic Al Kα(1486.6 eV)
X−レイスポット(spot)サイズ:400μm
レンズモード:LargeAreaXL
オペレーションモード:CAE(Constant Analyzer Energy)モード
Arイオンエッチング:エッチング速度〜0.1nm/sec(Mag 10)SiO2基準
電荷補償(Charge Compensation):低エネルギー電子フラッドガン(low energy flood gun)使用、イオンフラッドガン使用せず。
(2)偏光素子のエッチング
下記表1のエッチング時間で偏光素子をエッチングし、偏光素子の表面から深さ200nmまでにおける亜鉛、リン及びホウ素の含量を測定した。10秒間エッチングすることで、偏光素子の1nmがエッチングされる。本試験では下記表1に示したような段階で、200nm深さ(2000秒)までエッチングし、偏光素子の各地点における亜鉛、リン及びホウ素の含量を測定した。
Figure 0005593551
Figure 0005593551
(1)実施例9及び10はリン酸化合物が追加される。
Figure 0005593551
Tc/Tc比較例1は比較例1の方法で製作した偏光板の初期直交透過度をTc比較例1=1.0とし、比較例2〜7と実施例1〜10の方法で製造された偏光板の初期直交透過度比を測定した値である。ここで、Tcは各偏光板の直交透過度を、Tc比較例1は比較例1の直交透過度を示す。実施例と比較例の直交透過度(Tc)は同じ単体透過度(Ts.)値から測定する。同じ単体透過度で直交透過度が低いということは光を吸収する成分の配向性が向上したことを意味する。
Tc相対変化率は耐熱の前と後のTc変化率である。
上記表2、3及び図1で分かるように、BZn/K値、[B+P]Zn値、ホウ素含量及びカリウム含量が本発明の一具現による範囲を満たす偏光素子を含む偏光板は初期光学特性に優れる上、耐熱後の色相、直交透過度の変化率などが比較例に比べて小さいことが確認できた。このように本発明の一具現による偏光素子及び偏光板は耐久性及び耐熱性に優れ、高温高湿での光学物性の変化が小さいため、苛酷な条件でも優れた物性が確保できることが分かる。
[項目1]
偏光素子の重量を基準にして亜鉛含量(重量%)xホウ素含量(重量%)/カリウム含量(重量%)の値は0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%である偏光素子。
[項目2]
上記偏光素子の表面から中心に深さ(D)が1nm≦D≦60nmの各地点で偏光素子の重量を基準にして[亜鉛含量(重量%)+リン含量(重量%)]xホウ素含量(重量%)の値が0.2〜14.0であることを特徴とする項目1に記載の偏光素子。
[項目3]
上記亜鉛は塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする項目1に記載の偏光素子。
[項目4]
上記ホウ素はホウ酸、ホウ酸塩及びホウ砂で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする項目1に記載の偏光素子。
[項目5]
上記リンはリン酸、第2リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム及び第1リン酸アンモニウムで構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする項目2に記載の偏光素子。
[項目6]
項目1〜5の何れか1項に記載の偏光素子を含む偏光板。
[項目7]
項目1〜5の何れか1項に記載の偏光素子を含む画像表示装置。
[項目8]
少なくとも染色段階、架橋段階、延伸段階及び水洗段階を含む偏光素子の製造方法において、上記染色段階はヨウ素濃度が0.05〜0.2重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.2〜1.5重量%で、温度が20〜40℃である染色水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを150秒〜300秒間浸漬することで行い、
上記架橋段階はホウ素濃度が0.36〜0.83重量%、ヨウ化カリウムの濃度が4〜7重量%で、温度が15〜60℃である架橋水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを30秒〜120秒間浸漬することで行い、
塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛で構成されるグループから選択された少なくとも一種の亜鉛塩が0.4〜7.0重量%濃度で上記染色水溶液、架橋水溶液又は別途の亜鉛塩処理水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれ、
上記水洗段階は25〜30℃温度の純水にポリビニルアルコール系フィルムを10〜30秒間浸漬することで行う偏光素子の製造方法。
[項目9]
上記ホウ素はホウ酸、ホウ酸塩及びホウ砂で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする項目8に記載の偏光素子の製造方法。
[項目10]
リン酸、第2リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム及び第1リン酸アンモニウムで構成されるグループから選択された少なくとも一種のリン酸化合物が10重量%以下の濃度で上記染色水溶液、架橋水溶液及び別途のリン酸化合物水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれることを特徴とする項目8に記載の偏光素子の製造方法。

Claims (9)

  1. 亜鉛、リン、ホウ素及びカリウムを含み、
    偏光素子の重量を基準にして亜鉛含量(重量%)×ホウ素含量(重量%)/カリウム含量(重量%)の値は0.1〜4.0、ホウ素含量は1.0〜5.0重量%、カリウム含量は0.3〜2.0重量%であり、
    前記偏光素子の表面から中心に深さ(D)が1nm≦D≦60nmの各地点で偏光素子の重量を基準にして[亜鉛含量(重量%)+リン含量(重量%)]×ホウ素含量(重量%)の値が0.2〜14.0である、
    偏光素子。
  2. 前記亜鉛は塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする請求項1に記載の偏光素子。
  3. 前記ホウ素はホウ酸、ホウ酸塩及びホウ砂で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする請求項1に記載の偏光素子。
  4. 前記リンはリン酸、第2リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム及び第1リン酸アンモニウムで構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする請求項1に記載の偏光素子。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の偏光素子を含む偏光板。
  6. 請求項1〜4の何れか1項に記載の偏光素子を含む画像表示装置。
  7. 少なくとも染色段階、架橋段階、延伸段階及び水洗段階を含む偏光素子の製造方法において、前記染色段階はヨウ素濃度が0.05〜0.2重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.2〜1.5重量%で、温度が20〜40℃である染色水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを150秒〜300秒間浸漬することで行い、
    前記架橋段階はホウ素濃度が0.36〜0.83重量%、ヨウ化カリウムの濃度が4〜7重量%で、温度が15〜60℃である架橋水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを30秒〜120秒間浸漬することで行い、
    塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び酢酸亜鉛で構成されるグループから選択された少なくとも一種の亜鉛塩が0.4〜7.0重量%濃度で前記染色水溶液、架橋水溶液又は別途の亜鉛塩処理水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれ、
    リン酸化合物が、前記染色水溶液、前記架橋水溶液又は別途のリン酸化合物水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれ、
    前記水洗段階は25〜30℃温度の純水にポリビニルアルコール系フィルムを10〜30秒間浸漬することで行い、
    前記偏光素子の表面から中心に深さ(D)が1nm≦D≦60nmの各地点で偏光素子の重量を基準にして[亜鉛含量(重量%)+リン含量(重量%)]×ホウ素含量(重量%)の値が0.2〜14.0である、偏光素子の製造方法。
  8. 前記ホウ素はホウ酸、ホウ酸塩及びホウ砂で構成されるグループから選択された少なくとも一種から由来することを特徴とする請求項7に記載の偏光素子の製造方法。
  9. リン酸、第2リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム及び第1リン酸アンモニウムで構成されるグループから選択された少なくとも一種のリン酸化合物が10重量%以下の濃度で前記染色水溶液、架橋水溶液及び別途のリン酸化合物水溶液のうち少なくとも一種の水溶液に含まれることを特徴とする請求項7に記載の偏光素子の製造方法。
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