JP5527220B2 - ブロック共重合体組成物およびホットメルト粘接着剤組成物 - Google Patents

ブロック共重合体組成物およびホットメルト粘接着剤組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ホットメルト粘接着剤組成物に関し、さらに詳しくは、紙おむつや生理用品などを構成するための部材を接着するためなどに好適に用いられる、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力が高い、ホットメルト粘接着剤に関する。
ホットメルト粘接着剤は、短時間で固化することから、種々の製品を効率的に接着させることが可能であり、しかも、溶剤を必要としないことから、人体への安全性が高い接着剤であるので、様々な分野で用いられている。例えば、紙おむつや生理用品などの衛生用品を製造する際には、それらを構成するための部材を接着させるために、ホットメルト粘接着剤が賞用されている。また、各種の粘着テープや事務用や工業用のラベルなどに用いられる粘着剤としても、ホットメルト粘接着剤は賞用されている。
ホットメルト粘接着剤を構成するためのベースポリマーとしては、種々の重合体が用いられる。衛生用品を製造するために用いられるホットメルト粘接着剤としては、衛生用品の部材の材料としてよく用いられるポリオレフィンの接着性に優れる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)やスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)などの芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体をベースポリマーとするホットメルト粘接着剤が多く用いられている。
ところで、衛生用品を製造するために用いられるホットメルト粘接着剤には、種々の性能が要求されるが、なかでも、比較的に低温での塗工が容易であること、塗工後のオープンタイムが長いこと、保持力やタック性に優れることなどの性能が強く要求されている。このような要求性能を達成すべく、芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体をベースポリマーとするホットメルト粘接着剤について、様々な研究がなされている。
例えば、特許文献1には、2つの芳香族ビニルブロックの分子量が異なる芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を用いて、ホットメルト接着剤を構成することにより、低温接着力に優れ、溶融時の粘度が低く、高接着力・高タック力を備えるホットメルト接着剤が得られることが開示されている。この特許文献1に記載されたホットメルト接着剤は、160℃での粘度は低いものの、それ以下の温度では、急激に粘度が高くなるため、より低温での塗工は困難であり、また、塗工後のオープンタイムが充分ではないという問題があった。
また、特許文献2には、分岐状の芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体と、線状の芳香族ビニル−イソプレンブロック共重合体と、ポリイソプレンとを含有してなるエラストマー組成物が、良好な保持力および初期接着力(タック性)を有し、比較的に低温での粘度が低いホットメルト接着剤として用いられることが開示されている。この特許文献2に記載されたエラストマー組成物によれば、比較的に低温での粘度を低くすることが可能であるものの、その改良の程度が十分であるとはいえず、さらなる改良が望まれていた。
特開平8−283685号公報 特開2006−274158号公報
本発明は、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力が高い、ホットメルト粘接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、2つの芳香族ビニル重合体ブロックが異なる重量平均分子量を有する非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と、これと異なる特定の構成を有する芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体とを特定の割合で配合してなるブロック共重合体組成物に、粘着付与樹脂を配合すれば、比較的に低温での溶融粘度が低く、しかも、温度の低下に伴う溶融粘度の上昇が緩やかであることからオープンタイムが長く、さらには、接着後の保持力が高いホットメルト粘接着剤組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、下記の一般式(A)で表されるブロック共重合体Aおよび下記の一般式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるホットメルト粘接着剤組成物であって、ブロック共重合体組成物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が25/75〜90/10であり、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量が41%以上であるホットメルト粘接着剤組成物が提供される。
Ar1−D−Ar2 (A)
(Ar−D−X (B)
(一般式(A)および(B)において、Ar1 およびAr 、それぞれ、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、DおよびDは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数である。)
また、本発明によれば、ブロック共重合体組成物が、ブロック共重合体組成物中の重合体成分をなす全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合が20〜70重量%である上記のホットメルト粘接着剤組成物が提供される。
また、本発明者らは、2つの芳香族ビニル重合体ブロックが異なる重量平均分子量を有する非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と、これと異なる特定の構成を有する芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と、特定の構成を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体と、を特定の割合で配合して、ブロック共重合体組成物を構成し、これに粘着付与樹脂を配合すれば、比較的に低温での溶融粘度が低く、しかも、温度の低下に伴う溶融粘度の上昇が緩やかであることからオープンタイムが長く、さらには、タック性や接着後の保持力に優れるホットメルト粘接着剤組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、下記の一般式(P)で表されるブロック共重合体P、下記の一般式(Q)で表されるブロック共重合体Q、および下記の一般式(R)で表されるブロック共重合体Rを含有してなるブロック共重合体組成物であって、ブロック共重合体Pとブロック共重合体Qとの重量比(P/Q)が25/75〜90/10であり、ブロック共重合体Rとブロック共重合体Pおよびブロック共重合体Qの合計重量との重量比(R/(P+Q))が10/90〜70/30であり、ブロック共重合体Pの芳香族ビニル単量体単位含有量が41重量%以上であり、ブロック共重合体組成物の重合体成分全体に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合が15〜80重量%であるブロック共重合体組成物が提供される。
Ar1−D−Ar2 (P)
(Ar−D−X (Q)
Ar−D (R)
(一般式(P)、(Q)、および(R)において、Ar1、Ar、およびArは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D、D、およびDは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、mは2以上の整数である。)
本発明によれば、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力やタック性に優れる、ホットメルト粘接着剤を与えることができるブロック共重合体組成物が得られる。
また、本発明によれば、上記のブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを含有してなるホットメルト粘接着剤組成物が提供される。
本発明によれば、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力が高い、ホットメルト粘接着剤組成物が得られる。
本発明は、ブロック共重合体組成物およびそれを用いたホットメルト粘接着剤組成物に関するものである。
以下、本発明のブロック共重合体組成物およびホットメルト粘接着剤組成物について説明する。
A.ブロック共重合体組成物
本発明のブロック共重合体組成物は、少なくとも、以下に詳述するブロック共重合体P〜Rの3種のブロック共重合体からなるものである。本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Pは、下記の一般式(P)で表される、互いに異なる重量平均分子量を持つ2つの芳香族ビニル重合体ブロックを有する芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
Ar1−D−Ar2 (P)
上記の一般式(P)において、Ar1は、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Qは、下記の一般式(Q)で表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
(Ar−D−X (Q)
上記の一般式(Q)において、Arは、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、mは2以上の整数である。
本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Rは、下記の一般式(R)で表される芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体である。
Ar−D (R)
上記の一般式(R)において、Arは、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
ブロック共重合体P〜Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1,Ar2,Ar,Ar)は、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、同じ芳香族ビニル単量体を用いても良いし、異なる芳香族ビニル単量体を用いても良い。
ブロック共重合体P〜Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1,Ar2,Ar,Ar)は、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。各芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
ブロック共重合体P〜Rの共役ジエン重合体ブロック(D,D,D)は、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックである。共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエンとしては、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックをイソプレン単位で構成することにより、得られるブロック共重合体組成物が柔軟性に富んだものとなり、それより得られるホットメルト粘接着剤組成物が、接着性と柔軟性に優れるものとなる。これらの共役ジエン単量体は、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、同じ共役ジエン単量体を用いても良いし、異なる共役ジエン単量体を用いることもできる。さらに、各共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部に対し、水素添加反応を行っても良い。
ブロック共重合体P〜Rの共役ジエン重合体ブロック(D,D,D)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。各共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Pは、上記一般式(P)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)、特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)が、この順で連なって構成される非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))は、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜16000であることがより好ましい。Mw(Ar1)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力の低いものとなるおそれがあり、大きすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがある。また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))は、40000〜400000であり、42000〜370000であることが好ましく、45000〜350000であることがより好ましい。Mw(Ar2)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が、保持力が低く、比較的に低温での溶融粘度が高いものとなるおそれがあり、Mw(Ar2)が大きすぎるブロック共重合体Pは、製造が困難である場合がある。
なお、本発明において、重合体や重合体ブロックの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値に基づいて求めるものとする。
ブロック共重合体Pにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))との比(Mw(Ar2)/Mw(Ar1))は、特に限定されないが、通常2〜67であり、3〜40であることが好ましく、4〜35であることがより好ましい。ブロック共重合体Pをこのように構成することによって、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が、比較的に低温での溶融粘度が低く、しかも、オープンタイムが長い、塗工性に優れるものとなる。
ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、ブロック共重合体組成物が硬質すぎるものとなり、それを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が接着力に劣るものとなるおそれがある。
ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。
ブロック共重合体Pの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、41重量%以上であることが必要であり、45〜87重量%であることが好ましく、50〜85重量%であることがより好ましい。ブロック共重合体Pの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量をこの範囲にすることにより、得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力に優れるものとなる。
ブロック共重合体P全体としての重量平均分子量は、特に限定されないが、通常70000〜500000であり、80000〜470000であることが好ましく、90000〜450000であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Qは、上記一般式(Q)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合してなるジブロック体(Ar−D)が、2個以上、直接単結合で、もしくはカップリング剤の残基を介して結合することにより構成されるブロック共重合体である。ブロック共重合体Qを構成する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量(Mw(Ar))は、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜16000であることがより好ましい。Mw(Ar)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物の保持力が低くなり、また、せん断破壊温度が低い、高温下における接着強度に劣るものとなるおそれがあり、大きすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがある。ブロック共重合体Qが複数有する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar))は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいものであることが好ましい。また、これらの芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar))は、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))と、実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、このビニル結合含有量が高すぎると、ブロック共重合体組成物が硬質すぎるものとなり、それを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が接着力に劣るものとなるおそれがある。また、ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
ブロック共重合体Qは、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合してなるジブロック体(Ar−D)が、直接単結合で、またはカップリング剤の残基を介して、結合してなるものである。なお、カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、後述するものが挙げられる。ジブロック体(Ar−D)が結合する数(すなわち、一般式(Q)におけるm)は、2以上であれば特に限定されず、異なる数でジブロック体が結合したブロック共重合体Qが混在していても良い。一般式(Q)におけるmは、2以上の整数であれば特に限定されないが、通常2〜8の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))と実質的に等しいことが好ましい。なお、ブロック共重合体Qとして、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を用いる場合、それに含まれる共役ジエン重合体ブロックは全ての単量体単位が直接結合したものとなり、実体上、2つの共役ジエン重合体ブロック(D)からなるものではない。但し、本発明では、そのような共役ジエン重合体ブロックであっても、概念上、実質的に等しい重量平均分子量を有する2つの共役ジエン重合体ブロック(D)が単結合で結合されたものであるとして、取扱うものとする。したがって、例えば、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体であるブロック共重合体Qにおいて、共役ジエン重合体ブロックが全体として100000の重量平均分子量を有する場合、そのMw(D)は、50000であるとして取扱うものとする。
ブロック共重合体Qの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、14〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Q全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常50000〜400000であり、60000〜350000であることが好ましく、70000〜300000であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Rは、上記一般式(R)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合して構成されるブロック共重合体である。ブロック共重合体Rを構成する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量(Mw(Ar))は、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜16000であることがより好ましい。Mw(Ar)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物の保持力が低くなり、また、せん断破壊温度が低い、高温下における接着強度に劣るものとなるおそれがあり、大きすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがある。また、ブロック共重合体Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量(Mw(Ar))は、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))およびブロック共重合体Qの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量(Mw(Ar))の少なくとも一方と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方と実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、ブロック共重合体組成物が硬質すぎるものとなり、それを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が接着力に劣るものとなるおそれがある。また、ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)およびブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)の少なくとも一方のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方のビニル結合含有量と実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))およびブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))の少なくとも一方と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方と実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Rの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、14〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Rの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Qの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量と実質的に等しいことが好ましい。ブロック共重合体R全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常25000〜200000であり、45000〜175000であることが好ましく、55000〜150000であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物の成分であるブロック共重合体P〜Rを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
本発明のブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Pとブロック共重合体Qとの重量比(P/Q)は、25/75〜90/10であり、30/70〜85/15であることが好ましく、36/64〜80/20であることがより好ましく、38/62〜75/25であることが最も好ましい。このような比でブロック共重合体Pおよびブロック共重合体Qが含有されることにより、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が、比較的に低温での溶融粘度が低い塗工性に優れるものとなり、しかも、接着後の保持力が高いものとなる。一方、この比が小さすぎると、低温での溶融粘度が高くなるおそれがあり、この比が大きすぎると、保持力に劣るものとなるおそれがある。
本発明のブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Rの量は、ブロック共重合体Pおよびブロック共重合体Qの合計重量に対する重量比(R/(P+Q))として、10/90〜70/30であり、15/85〜68/32であることが好ましく、20/80〜65/35であることがより好ましい。このような比でブロック共重合体Rが含有されることにより、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が、タック性や接着力に優れるものとなり、さらには、低温での塗工容易性と保持力や高温下での接着強度とが両立されたものとなる。
本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体P〜Rのみを重合体成分として含むものであって良いが、ブロック共重合体P〜R以外の重合体成分を含むものであっても良い。本発明で用いるブロック共重合体組成物に含まれ得るブロック共重合体P〜R以外の重合体成分としては、ブロック共重合体Pおよびブロック共重合体Q以外の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、ブロック共重合体R以外の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、芳香族ビニル単独重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、およびこれらの分岐型重合体あるいは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。ただし、後述する粘着付与樹脂や軟化剤は、このブロック共重合体組成物を構成する重合体成分とは区別するものとする。本発明のブロック共重合体組成物において、ブロック共重合体P〜R以外の重合体成分の含有量は、重合体成分全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体組成物中の重合体成分をなす全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合(以下の記載において、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量ということがある)が、15〜80重量%であり、18〜70重量%であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましく、22〜50重量%であることが最も好ましい。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が小さすぎると、ブロック共重合体組成物を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力に劣るものとなるおそれがあり、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が大きすぎると、ブロック共重合体組成物が硬質すぎるものとなり、それを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物が接着力に劣るものとなるおそれがある。この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体P〜Rおよびこれら以外の重合体成分のそれぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。なお、ブロック共重合体組成物を構成する全ての重合体成分が、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位のみにより構成されている場合であれば、Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、ブロック共重合体組成物の重合体成分をオゾン分解し、次いで水素化リチウムアルミニウムにより還元すれば、共役ジエン単量体単位部分が分解され、芳香族ビニル単量体単位部分のみを取り出せるので、容易に全体の芳香族ビニル単量体単位含有量を測定することができる。
本発明のブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常50000〜500000であり、60000〜450000であることが好ましく、70000〜400000であることがより好ましい。また、本発明で用いるブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、通常1.01〜10であり、1.03〜5であることが好ましく、1.05〜3であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、従来のブロック共重合体の製法に従って、ブロック共重合体P〜Rのそれぞれを別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分などを配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ただし、特に望ましい構成を有するブロック共重合体組成物をより生産性よく得る観点からは、次に述べる製造方法が好適である。
すなわち、本発明のブロック共重合体組成物は、下記の(6)〜(10)の工程からなる製造方法を用いて製造することが好ましい。
(6):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(7):上記(6)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(8):上記(7)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、カップリング剤および重合停止剤を、それらの合計の官能基の量が、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して、1モル当量未満となるように添加し、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体Rを形成する工程
(9):上記(8)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Pを形成する工程
(10):上記(9)の工程で得られる溶液から、ブロック共重合体組成物を回収する工程
上記のブロック共重合体組成物の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する(工程(6))。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4−ジリチオ−エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
重合開始剤の使用量は、目的とする各ブロック共重合体の分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、通常、0.01〜20ミリモル、好ましくは、0.05〜15ミリモル、より好ましくは、0.1〜10ミリモルである。
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn−ブタン、イソブタン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、neo−ペンタン、n−ヘキサンなどの、炭素数4〜6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、重合反応後の溶液における全ブロック共重合体の濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%になるように設定する。
ブロック共重合体組成物を得る際に、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
また、重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すれば良い。例えば、重合を開始する前に予め添加しても良いし、一部の重合体ブロックを重合してから添加しても良く、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加しても良い。
重合反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5〜10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)、ブロック共重合体Qの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)、およびブロック共重合体Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
次の工程は、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程である(工程(7))。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)、およびブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量を有するように決定される。
次の工程では、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、カップリング剤および重合停止剤を、それらの合計の官能基の量が、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して、1モル当量未満となるように添加する(工程(8))。
この工程で添加されるカップリング剤は、特に限定されず、2官能以上の任意のカップリング剤を用いることができる。2官能のカップリング剤としては、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどが挙げられる。3官能のカップリング剤としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。4官能のカップリング剤としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。5官能以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、この工程で重合停止剤も、特に限定されず、従来公知の重合停止剤を特に制限無く用いることができる。特に好適に用いられる重合停止剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液にカップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の共役ジエン重合体ブロック同士がカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体組成物のブロック共重合体Qが形成される。また、この溶液に重合停止剤と添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端が失活し、その結果、ブロック共重合体組成物のブロック共重合体Rが形成される。なお、カップリング剤および重合停止剤を添加する順序は特に限定されず、どちらか一方を添加した後に他方を添加しても良いし、両方を同時に添加しても良い。
この工程で添加されるカップリング剤および重合停止剤の量は、それらの合計の官能基の量が、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して、1モル当量未満となる量とする必要がある。次の工程であるブロック共重合体Pを形成する工程を行なうために、溶液中に活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が残存させる必要があるからである。カップリング剤および重合停止剤の量は、重合体の活性末端に対してそれらの合計の官能基の量が0.10〜0.90モル当量となる範囲が好ましく、0.15〜0.70モル当量となる範囲であることがより好ましい。なお、この工程で添加されるカップリング剤の量は、得られるブロック共重合体組成物中のブロック共重合体Qの量を決定するものであり、また、反応停止剤の量は、ブロック共重合体組成物中のブロック共重合体Rの量を決定するものであるので、それぞれの量は、目的とするブロック共重合体組成物の組成に応じて決定すれば良い。
カップリング反応や重合停止反応の反応条件は特に限定されず、通常は前述の重合反応条件と同様の範囲で設定すれば良い。
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する(工程(9))。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤や重合停止剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Pの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Pを構成することとなる、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体P〜Rを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、カップリング剤や重合停止剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加しても良い。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量を大きくすることができる。
次の工程では、以上のようにして得られるブロック共重合体P〜Rを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体組成物を回収する(工程(10))。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、ブロック共重合体組成物がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体組成物は、常法に従い、ペレットなどに加工してから、ホットメルト粘接着剤組成物などの製造に供しても良い。
以上の製造方法によれば、ブロック共重合体P〜Rの全てを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれのブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体組成物を得ることができる。しかも、得られるブロック共重合体組成物は、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量が、本発明のブロック共重合体組成物として特に望ましいバランスを有するものとなり、特に塗工性に優れ、さらには、保持力と接着力とのバランスに優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
本発明のブロック共重合体組成物の用途は、特に限定されず、従来の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が用いられる用途に用いることができ、例えば、伸縮性フィルム、手袋、エラスティックバンド、コンドーム、OA機器、事務用などの各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材などに用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラーなどに用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品などに用いられる弾性繊維用途などの用途に用いることができる。なお、本発明のブロック共重合体組成物は、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、押出成形などの分子配向が起こり易い成形法を適用した場合であっても、均質な力学的性質を有する、等方性の高い成形体を与えることができるものである。したがって、本発明のブロック共重合体組成物は、紙おむつや生理用品などの衛生用品などに用いられる伸縮性のフィルムの材料としても好適に用いられる。
本発明のブロック共重合体組成物は、これらの用途のなかでも、次に述べる本発明のホットメルト粘接着剤組成物を構成するために特に好適に用いられるものである。
B.ホットメルト粘接着剤組成物
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、粘着付与樹脂を含むものであるが、少なくとも2種のブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物を含有する態様(第1態様)と、上述のブロック共重合体組成物を含有する態様(第2態様)とに分けることができる。以下、本発明のホットメルト粘接着剤組成物を、各態様に分けて説明する。
1.第1態様
まず、本発明のホットメルト粘接着剤組成物の第1態様について説明する。本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、少なくとも2種のブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるものである。
本態様で用いられるブロック共重合体組成物を構成する2種のブロック共重合体の一方であるブロック共重合体Aは、下記の一般式(A)で表される、互いに異なる重量平均分子量を持つ2つの芳香族ビニル重合体ブロックを有する芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
Ar1−D−Ar2 (A)
上記の一般式(A)において、Ar1は、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
また、本態様で用いられるブロック共重合体組成物を構成する2種のブロック共重合体の他方であるブロック共重合体Bは、下記の一般式(B)で表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
(Ar−D−X (B)
上記の一般式(B)において、Arは、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数である。
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1,Ar2,Ar)は、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1,Ar2,Ar)は、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体およびその含有量としては、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D,D)は、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックである。共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエンおよび共役ジエン単量体としては上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D,D)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体および含有量としては、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aは、上記一般式(A)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)、特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)が、この順で連なって構成される非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))は、6000〜15000であり、7000〜14000であることが好ましく、8000〜13000であることがより好ましい。Mw(Ar1)が小さすぎると、得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力の低いものとなるおそれがあり、大きすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがある。また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))は、40000〜400000であり、42000〜370000であることが好ましく、45000〜350000であることがより好ましい。Mw(Ar2)が小さすぎると、得られるホットメルト粘接着剤組成物が、保持力が低く、比較的に低温での溶融粘度が高いものとなるおそれがあり、Mw(Ar2)が大きすぎるブロック共重合体Aは、製造が困難である場合がある。
なお、本態様において、重合体や重合体ブロックの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
ブロック共重合体Aにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量(Mw(Ar2))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))との比(Mw(Ar2)/Mw(Ar1))は、特に限定されないが、通常2.6〜67であり、4〜40であることが好ましく、4.5〜35であることがより好ましい。ブロック共重合体Aをこのように構成することによって、得られるホットメルト粘接着剤組成物が、比較的に低温での溶融粘度が低く、しかも、オープンタイムが長い、塗工性に優れるものとなる。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D)と同様とすることができる。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、30000〜150000であることが好ましく、35000〜100000であることがより好ましい。
ブロック共重合体Aの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のブロック共重合体Pと同様とすることができる。
ブロック共重合体A全体としての重量平均分子量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のブロック共重合体Pと同様とすることができる。
本態様で用いるブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Bは、上記一般式(B)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合してなるジブロック体(Ar−D)が、2個以上、直接単結合でもしくはカップリング剤の残基を介して結合することにより構成されるブロック共重合体である。ブロック共重合体Bを構成する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量(Mw(Ar))は、6000〜15000であり、7000〜14000であることが好ましく、8000〜13000であることがより好ましい。Mw(Ar)が小さすぎると、得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力の低いものとなるおそれがあり、大きすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがある。ブロック共重合体Bが複数有する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar))は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいものであることが好ましい。また、これらの芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar))は、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量(Mw(Ar1))と、実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D)と同様とすることができる。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
ブロック共重合体Bは、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)と共役ジエン重合体ブロック(D)とが結合してなるジブロック体(Ar−D)が、直接単結合で、またはカップリング剤の残基を介して、結合してなるものである。なお、カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項で例示したものが挙げられる。ジブロック体(Ar−D)が結合する数(すなわち、一般式(B)におけるn)は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のmと同様とすることができる。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、30000〜150000であることが好ましく、35000〜100000であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量(Mw(D))と実質的に等しいことが好ましい。なお、ブロック共重合体Bとして、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を用いる場合、それに含まれる共役ジエン重合体ブロックは全ての単量体単位が直接結合したものとなり、実体上、2つの共役ジエン重合体ブロック(D)からなるものであるとは言えない。但し、本態様では、そのような共役ジエン重合体ブロックであっても、概念上、実質的に等しい重量平均分子量を有する2つの共役ジエン重合体ブロック(D)が単結合で結合されたものであるとして、取扱うものとする。したがって、例えば、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体であるブロック共重合体Bにおいて、共役ジエン重合体ブロックが全体として100000の重量平均分子量を有する場合、そのMw(D)は、50000であるとして取扱うものとする。
ブロック共重合体Bの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体B全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常50000〜400000であり、60000〜350000であることが好ましく、70000〜300000であることがより好ましい。
本態様で用いるブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
本態様で用いるブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項のブロック共重合体Pとブロック共重合体Qとの重量比(P/Q)と同様とすることができる。
本態様で用いるブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bのみを重合体成分として含むものであって良いが、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分を含むものであっても良い。本態様で用いるブロック共重合体組成物に含まれ得るブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分としては、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、芳香族ビニル単独重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、およびこれらの分岐型重合体あるいは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。ただし、後述する粘着付与樹脂や軟化剤は、このブロック共重合体組成物を構成する重合体成分とは区別するものとする。本態様で用いるブロック共重合体組成物において、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分の含有量は、重合体成分全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
本態様で用いるブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体組成物中の重合体成分をなす全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合(以下の記載において、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量ということがある)が、20〜70重量%であり、22〜60重量%であることが好ましく、25〜50重量%であることがより好ましい。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が小さすぎると、得られるホットメルト粘接着剤組成物が保持力に劣るものとなるおそれがあり、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が大きすぎると、得られるホットメルト粘接着剤組成物が硬質すぎるものとなり、接着力に劣るものとなるおそれがある。この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体A、ブロック共重合体Bおよびこれら以外の重合体成分、それぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。
本態様で用いるブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常50000〜500000であり、60000〜450000であることが好ましく、70000〜400000であることがより好ましい。また、本態様で用いるブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、通常1.01〜10であり、1.03〜5であることが好ましく、1.05〜3であることがより好ましい。
本態様で用いるブロック共重合体組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、従来のブロック共重合体の製法に従って、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとをそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分などを配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ただし、特に望ましい構成を有するブロック共重合体組成物をより生産性よく得る観点からは、次に述べる製造方法が好適である。
すなわち、本態様で用いるブロック共重合体組成物は、下記の(1)〜(5)の工程からなる製造方法を用いて製造することが好ましい。
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(2):上記(1)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(3):上記(2)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加し、ブロック共重合体Bを形成する工程
(4):上記(3)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Aを形成する工程
(5):上記(4)の工程で得られる溶液から、ブロック共重合体組成物を回収する工程
上記のブロック共重合体組成物の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する。用いられる重合開始剤、その使用量、重合に用いる溶媒およびその量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
ブロック共重合体組成物を得る際に、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物およびその添加する時期は上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
重合反応温度は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)とブロック共重合体Bのビニル重合体ブロック(Ar)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
次の工程は、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程である。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量を有するように決定される。
次の工程では、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加する。
添加されるカップリング剤およびその量は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
以上のように、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)のうちの一部の共重合体において、共役ジエン重合体ブロック同士がカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体組成物のブロック共重合体Bが形成される。そして、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の残り一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Aを構成することとなる、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加しても良い。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量を大きくすることができる。また、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、活性末端の当量より少ない量で重合停止剤(水、メタノールなど)を添加してもよい。このように重合停止剤を添加すると、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端が失活し、それにより得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)が、ブロック共重合体組成物に含有されることとなる。
次の工程では、以上のようにして得られるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体組成物を回収する。回収の方法は、常法に従えばよく、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載したものと同様とすることができる。
以上の製造方法によれば、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれのブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体組成物を得ることができる。しかも、得られるブロック共重合体組成物は、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量が、本態様のホットメルト粘接着剤組成物を得るために特に望ましいバランスを有するものとなるので、特に、塗工性に優れ、さらには、保持力と接着力とのバランスに優れたホットメルト粘接着剤組成物を得ることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、上記のブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるものである。本態様で用いる粘着付与樹脂としては従来公知の粘着付与樹脂が使用できる。具体的には、ロジン;不均化ロジン、二量化ロジンなどの変性ロジン類;グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとロジンまたは変性ロジン類とのエステル化物;テルペン系樹脂;脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族−芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物;フェノール樹脂;クマロン−インデン樹脂などが挙げられる。特に好ましく用いられる粘着付与樹脂は、上記のブロック共重合体組成物と相溶性のよい脂肪族系または脂肪族−芳香族共重合系の炭化水素樹脂である。本態様のホットメルト粘接着剤組成物における粘着付与樹脂の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体組成物100重量部当り、通常50〜400重量部であり、好ましくは60〜350重量部であり、より好ましくは70〜300重量部である。なお、粘着付与樹脂は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、さらに軟化剤を含有してなるものであることが好ましい。軟化剤としては従来公知の軟化剤が使用できる。具体的には、通常ホットメルト粘接着剤組成物に添加される、芳香族系、パラフィン系またはナフテン系の伸展油(エクステンダーオイル);ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体などを使用することができる。軟化剤の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体組成物100重量部当り、500重量部以下であり、好ましくは10〜350重量部であり、より好ましくは30〜250重量部である。なお、軟化剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物には、必要に応じ酸化防止剤を添加することができる。その種類は特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、ブロック共重合体組成物100重量部当り、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5〜5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、本態様のホットメルト粘接着剤組成物には、さらに、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。なお、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、ブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂や各種添加剤を混合する方法は特に限定されず、例えば、各成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで加熱溶融混合する方法を挙げることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物を用いるにあたり、各種部材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、Tダイコーティング、ロールコーティング、マルチビードコーティング、スプレーコーティング、フォームコーティングなどの手法により、塗布を行なうことができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力が高いものである。したがって、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の部材の接着に簡便に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行なうことができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、比較的に低温での塗工性が良好であることから、高温下での燃焼や劣化のおそれがある部材のホットメルト接着に好適に使用され、特に、使い捨ておむつや生理用ナプキンの製造において、熱可塑性樹脂シートや不織布の接着に好適に使用することができる。
2.第2態様
次に、本発明のホットメルト粘接着剤組成物の第2態様について説明する。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、上述のブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるものである。
なお、上記ブロック共重合体については、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本態様で用いる粘着付与樹脂としては従来公知の粘着付与樹脂が使用できる。具体的には、上記「2.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、さらに軟化剤を含有してなるものであることが好ましい。軟化剤およびその使用量は、上記「2.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物には、必要に応じ酸化防止剤を添加することができる。その種類およびその使用量は、上記「2.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
また、本態様のホットメルト粘接着剤組成物には、さらに、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。なお、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、ブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂や各種添加剤を混合する方法は特に限定されず、上記「2.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤を用いるにあたり、各種部材への塗布方法は特に限定されないが、上記「2.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、比較的に低温での塗工が容易であり、オープンタイムが長く、しかも、保持力やタック性に優れるものである。したがって、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の部材の接着に簡便に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行なうことができる。さらに、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、せん断破壊温度が高いものとなり、高温下における接着強度にも優れるものである。
本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、比較的に低温での塗工性が良好であることから、高温下での燃焼や劣化のおそれがある部材のホットメルト接着に好適に使用され、特に、使い捨ておむつや生理用ナプキンの製造において、熱可塑性樹脂シートや不織布の接着に好適に使用することができる。さらに、本態様のホットメルト粘接着剤組成物は、保持力やタック性に優れ、比較的に低温での塗工性が良好であることから、各種の粘着テープやラベルの粘着剤としても好適に使用され、省エネルギーかつ高生産性で、保持力やタック性に優れた粘着テープやラベルを与えることができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
〔ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。装置は、東ソー社製HLC8220、カラムは昭和電工社製Shodex KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
〔ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
〔スチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
〔イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいて、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
〔ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
〔ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔ホットメルト粘接着剤組成物のタック性〕
FINAT−1991 FTM−9(Quick−stick tack measurement)に準じてループタックを測定し、タック性を評価した。値が大きいものほど、タック性に優れる。
〔ホットメルト粘接着剤組成物の接着力〕
常温での剥離接着強さ(N/m)を、23℃で、被着体として硬質ポリエチレン板を使用してPSTC−1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて測定することにより、接着力を評価した。値が大きいものほど、接着力に優れる。
〔ホットメルト粘接着剤組成物の保持力〕
試料を幅10mmの粘着テープとし、被着体として硬質ポリエチレンを使用して、PSTC−6(米国粘着テープ委員会による保持力試験法)に準じ、接着部が10×25mm、負荷が3.92×10Pa、温度40℃にて、剥がれるまでの時間(分)により、保持力を評価した。値が大きいものほど、保持力に優れる。
〔ホットメルト粘接着剤組成物のせん断破壊温度(SAFT)〕
被着体としてステンレス鋼を使用し接着部が10×25mm、負荷が3.92×10Pa、温度上昇速度0.5℃/minにてせん断破壊温度(SAFT)を測定した。値が大きいものほど、高温での接着力に優れる。
〔ホットメルト粘接着剤組成物の溶融粘度〕
試料を加熱溶融させ、120℃、140℃、160℃における溶融粘度(mPa・s)を、ローターNo.27を使用し、サーモセル型ブルックフィールド粘度計により測定した。値が小さいものほど、塗工容易性に優れる。
〔製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)2.6ミリモルおよびスチレン1.43kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム176.2ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100重量%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン6.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン61.7ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Bとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン2.07kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール352.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、各ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量、各スチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量ならびにイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量を求めた。これらの値は、表2に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、製造例1のブロック共重合体組成物を回収した。
Figure 0005527220
Figure 0005527220
〔製造例2〜4〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様にして、製造例2〜4のブロック共重合体組成物を回収した。製造例2〜4のブロック共重合体組成物については、製造例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
〔製造例5〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA1.8ミリモルおよびスチレン1.23kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム117.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100重量%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.60kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン19.4ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Bとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。次いで、反応器にメタノール14.1ミリモルを添加することにより、一部のスチレン−イソプレンブロック共重合体の活性末端を失活させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン3.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール235.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、製造例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、製造例1と同様にして、製造例5のブロック共重合体組成物を回収した。
〔比較製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA2.5ミリモルおよびスチレン1.50kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム169.9ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100重量%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン7.00kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール339.8ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、製造例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、製造例1と同様にして、比較製造例1のブロック共重合体組成物を回収した。
〔比較製造例2,3〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレンおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は比較製造例1と同様にして、比較製造例2,3のブロック共重合体組成物を回収した。比較製造例2,3のブロック共重合体組成物については、製造例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
〔比較製造例4,5〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は製造例1と同様にして、比較製造例4,5のブロック共重合体組成物を回収した。比較製造例4,5のブロック共重合体組成物については、製造例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
〔比較製造例6,7〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレンおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は比較製造例1と同様にして、比較製造例6,7のブロック共重合体組成物を回収した。比較製造例6,7のブロック共重合体組成物については、製造例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
〔実施例1〕
製造例1で得られたブロック共重合体組成物100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに粘着付与樹脂(商品名「アルコンM100」、水素添加石油系樹脂、荒川化学社製)167部、軟化剤(商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、パラフィン系プロセスオイル、出光興産社製)67部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、チバスぺシャリティーケミカルズ社製)3部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160〜180℃で1時間混練することにより、実施例1のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物の一部を用いて、溶融粘度を評価した。また、厚さ25μmのポリエステルフィルムに得られたホットメルト粘接着剤組成物を塗工し、これにより得られた試料について、接着力および保持力を評価した。その結果を表3に示す。
Figure 0005527220
〔実施例2〜5,比較例1〜5〕
用いるブロック共重合体組成物を製造例2〜5,比較製造例1〜5で得られたものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5,比較例1〜5のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例1と同様に評価を行なった。その結果を表3に示す。
〔比較例6〕
用いるブロック共重合体組成物を比較製造例6のブロック共重合体組成物53部と比較製造例7のブロック共重合体組成物47部とを混合したものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例1と同様に評価を行なった。その結果を表3に示す。
表3から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、接着力および保持力に優れ、広い温度範囲で低い溶融粘度を有するので、比較的低い温度での塗工が容易であり、オープンタイムも長いと言える(実施例1〜5)。これに対して、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を含有しないブロック共重合体組成物を用いたものは、特に120℃における溶融粘度が高く、比較的低温での塗工が困難なものである(比較例1,2)。非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を含有していても、それのみからなるブロック共重合体組成物を用いたものは、溶融粘度が高い傾向がある上に、保持力が極めて低いものである(比較例3)。本発明で用いるブロック共重合体Aとは異なる非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と、対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体からなるブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物を用いたものは、特に120℃および140℃における溶融粘度が高く、保持力も低い傾向がある(比較例4〜6)。
〔製造例6〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)4.50ミリモルおよびスチレン1.33kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム151.5ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100重量%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン7.00kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてテトラクロロシラン24.2ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Qとなる分岐状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。このカップリング反応の後、反応器に重合停止剤としてメタノールを36.4ミリモル添加して1時間重合停止反応を行い、活性末端を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体の一部の活性末端を失活させることにより、ブロック共重合体Rとなるスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.67kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Pとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール303.0ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表4にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、各ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量、各スチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量ならびにイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量を求めた。これらの値は、表5に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、製造例6のブロック共重合体組成物を回収した。
Figure 0005527220
Figure 0005527220
〔製造例7〜10〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表4に示すように変更したこと以外は製造例6と同様にして、製造例7〜10のブロック共重合体組成物を回収した。製造例7〜10のブロック共重合体組成物については、製造例6と同様の測定を行った。その結果を表5に示す。
〔参考製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA2.60ミリモルおよびスチレン1.83kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム175.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン55.8ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Qとなる直鎖状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン2.97kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Pとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール351.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、製造例6と同様の測定を行なった。これらの値は、表5に示した。以下の操作は、製造例6と同様にして、参考製造例1のブロック共重合体組成物を回収した。
〔参考製造例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA1.39ミリモルおよびスチレン1.50kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム92.6ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン8.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール185.2ミリモルを添加してよく混合し反応を停止させることにより、ブロック共重合体Rとなるスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。得られた反応液の一部を取り出し、製造例6と同様の測定を行なった。これらの値は、表5に示した。以下の操作は、製造例6と同様にして、参考製造例2のブロック共重合体を回収した。
〔比較製造例8〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA3.26ミリモルおよびスチレン3.70kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム217.4ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン6.30kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてテトラメトキシシラン18.5ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、分岐状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、重合停止剤としてメタノール434.8ミリモルを添加してよく混合し反応を停止させることにより、スチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。得られた反応液の一部を取り出し、製造例6と同様の測定を行なった。これらの値は、表5に示した。以下の操作は、製造例6と同様にして、比較製造例8のブロック共重合体組成物を回収した。
〔比較製造例9〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA1.20ミリモルおよびスチレン4.15kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム77.9ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。さらに引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン0.65kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール155.9ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、製造例6と同様の測定を行なった。これらの値は、表5に示した。以下の操作は、製造例6と同様にして、比較製造例9のブロック共重合体組成物を回収した。
〔比較製造例10,11〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表4に示すように変更したこと以外は参考製造例1と同様にして、比較製造例10,11のブロック共重合体組成物を回収した。比較製造例10,11のブロック共重合体組成物については、製造例6と同様の測定を行った。その結果を表5に示す。
〔実施例6〕
製造例6で得られたブロック共重合体組成物100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに粘着付与樹脂(商品名「アルコンM100」、水素添加石油系樹脂、荒川化学社製)167部、軟化剤(商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、パラフィン系プロセスオイル、出光興産社製)67部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、チバスぺシャリティーケミカルズ社製)3部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160〜180℃で1時間混練することにより、実施例6のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、厚さ50μmのポリエステルフィルムに30μmの厚さで塗工し、これにより得られた試料について、タック性、接着力、保持力、せん断破壊温度および溶融粘度を評価した。その結果を表6に示す。
Figure 0005527220
〔実施例7〜10〕
用いるブロック共重合体組成物を製造例7〜10で得られたものに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、実施例7〜10のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
〔実施例11〕
製造例6のブロック共重合体組成物100部に代えて、参考製造例1のブロック共重合体組成物80部および参考製造例2のブロック共重合体20部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例6のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
〔比較例7〕
製造例6のブロック共重合体組成物100部に代えて、比較製造例8の重合体組成物100部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、比較例7のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
〔比較例8〕
製造例6のブロック共重合体組成物100部に代えて、比較製造例9のブロック共重合体組成物60部および参考製造例2のブロック共重合体40部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、比較例8のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
〔比較例9〕
製造例6のブロック共重合体組成物100部に代えて、比較製造例10のブロック共重合体組成物60部および参考製造例2のブロック共重合体40部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、比較例9のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
〔比較例10〕
製造例6のブロック共重合体組成物100部に代えて、比較製造例11の重合体組成物100部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、比較例10のホットメルト粘接着剤組成物を調製した。得られたホットメルト粘接着剤組成物は、実施例6と同様に評価を行なった。その結果を表6に示す。
表6から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、接着力および保持力に優れ、広い温度範囲で低い溶融粘度を有するので、比較的低い温度での塗工が容易であり、オープンタイムも長いと言え、さらに、タック性やせん断破壊温度にも優れる(実施例6〜11)。これに対して、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を含有しないブロック共重合体組成物を用いたものは、特に120℃における溶融粘度が高く、比較的低温での塗工が困難なものであり、せん断破壊温度にも劣る(比較例7)。また、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有していても、ブロック共重合体Qに相当するブロック共重合体を含有しないブロック共重合体組成物を用いたものは、溶融粘度が高い傾向がある上に、接着力が極めて低いものである(比較例8)。本発明で用いるブロック共重合体Pとは異なる非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体と、対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体からなるブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物を用いたものは、特に120℃および140℃における溶融粘度が高く、比較的低温での塗工が困難なものである(比較例9、10)。
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、比較的に低温での塗工性が良好であることから、高温下での燃焼や劣化のおそれがある部材のホットメルト接着に好適に使用され、特に、使い捨ておむつや生理用ナプキンの製造において、熱可塑性樹脂シートや不織布の接着に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 下記の一般式(A)で表されるブロック共重合体Aおよび下記の一般式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなるホットメルト粘接着剤組成物であって、
    ブロック共重合体組成物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が25/75〜90/10であり、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量が41%以上であるホットメルト粘接着剤組成物。
    Ar1−D−Ar2 (A)
    (Ar−D−X (B)
    (一般式(A)および(B)において、Ar1 およびAr 、それぞれ、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、DおよびDは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数である。)
  2. ブロック共重合体組成物が、ブロック共重合体組成物中の重合体成分をなす全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合が20〜70重量%である請求項1に記載のホットメルト粘接着剤組成物。
  3. 下記の一般式(P)で表されるブロック共重合体P、下記の一般式(Q)で表されるブロック共重合体Q、および下記の一般式(R)で表されるブロック共重合体Rを含有してなるブロック共重合体組成物であって、ブロック共重合体Pとブロック共重合体Qとの重量比(P/Q)が25/75〜90/10であり、ブロック共重合体Rとブロック共重合体Pおよびブロック共重合体Qの合計重量との重量比(R/(P+Q))が10/90〜70/30であり、ブロック共重合体Pの芳香族ビニル単量体単位含有量が41重量%以上であり、ブロック共重合体組成物の重合体成分全体に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合が15〜80重量%であるブロック共重合体組成物。
    Ar1−D−Ar2 (P)
    (Ar−D−X (Q)
    Ar−D (R)
    (一般式(P)、(Q)、および(R)において、Ar1、Ar、およびArは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2は、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D、D、およびDは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、mは2以上の整数である。)
  4. 請求項3に記載のブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを含有してなるホットメルト粘接着剤組成物。
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